説明

メータクラスタの取付構造

【課題】がたつきによる異音の発生を防止することができながら、インストルメントパネルに容易に着脱することができる、メータクラスタの取付構造を提供する。
【解決手段】メータユニット3には、係合部10が後方に向けて突設されている。メータクラスタ4は、メータユニット3の上方で後方に向けて庇状に張り出した中空の張出部13を有している。張出部13の内面には、第1リブ16Aおよび第2リブ16Bが形成されている。第1リブ16Aおよび第2リブ16Bは、車幅方向に係合部10の幅よりも小さい間隔を空けて、それぞれ係合部10に向けて前後方向に沿って延びている。メータクラスタ4がインストルメントパネル1に装着された状態で、係合部10が第1リブ16Aと第2リブ16Bとの間に差し込まれて、第1リブ16Aの前端部の平行面18および第2リブ16Bの前端部の上面20が上下から係合部10に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネルにおけるメータクラスタの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前席の前方(車室の最前部)には、インストルメントパネル(ダッシュボード)が車幅方向の全幅にわたって設けられている。インストルメントパネルには、運転席の前方に、速度計、距離計および燃料計などの計器類を備えるメータユニットと、メータユニットの周囲を取り囲むメータクラスタとが装着されている。
【0003】
メータクラスタにおいて、外観および計器類の視認性の向上のために、メータユニットの上方に運転席側に庇状に張り出した張出部を有するものがある。張出部は、通常、中空に形成され、前後方向および上下方向に延びる平面で切断したときの断面形状が前方に向かって開いた略V字状をなしている。そのため、張出部の張り出し量が大きいと、張出部の下部(屈曲した部分よりも下方の部分)がその前端が下がるように撓み変形するおそれがある。
【0004】
そこで、張出部の下部の内面に前後方向に延びる複数のリブを形成し、そのリブの先端部をインストルメントパネルに形成された係合穴に係合させる構成が提案されている。この構成によれば、張出部の下部の強度が増すとともに、その前端の位置がインストルメントパネルに対して固定されるので、張出部の下部の撓み変形を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−236184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リブの先端部の形状と係合穴の形状とが合致しておらず、リブの先端部と係合穴との間に遊びがあると、車両の走行時などに、メータクラスタのがたつきによる異音が発生するおそれがある。一方、リブの先端部と係合穴との間にある程度の遊びがなければ、リブの先端部と係合穴との係合/離脱が困難となり、インストルメントパネルに対するメータクラスタの着脱の作業性が低下する。
【0007】
本発明の目的は、がたつきによる異音の発生を防止することができながら、インストルメントパネルに容易に着脱することができる、メータクラスタの取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、メータユニットが装着されたインストルメントパネルにおけるメータクラスタの取付構造において、前記メータクラスタは、前記メータユニットの上方において後方に向けて庇状に張り出した中空の張出部を有し、前記メータユニットには、車幅方向に幅を有する係合部が後方に向けて突設されており、前記張出部の内面には、前後方向に延び、その前端部が前記係合部に上方から当接する第1リブと、前記第1リブと車幅方向に間隔を空けて、前後方向に延び、その前端部が前記係合部に下方から当接する第2リブとが形成され、前記第1リブの前記前端部の下面および前記第2リブの前記前端部の上面の少なくとも一方は、前方に向けて前記係合部から離れるように傾斜していることを特徴とする。
【0009】
このメータクラスタの取付構造では、メータユニットに、係合部が設けられている。係合部は、メータユニットから後方に向けて延び、車幅方向に幅を有している。メータクラスタは、メータユニットの上方において後方に向けて庇状に張り出した中空の張出部を有している。張出部の内面には、第1リブおよび第2リブが形成されている。第1リブおよび第2リブは、車幅方向に係合部の幅よりも小さい間隔を空けて、それぞれ係合部に向けて前後方向に沿って延びている。そして、メータクラスタがインストルメントパネルに装着された状態で、係合部が第1リブと第2リブとの間に差し込まれて、第1リブの前端部の下面および第2リブの前端部の上面が上下から係合部に当接する。これにより、係合部が上下方向において第1リブおよび第2リブに挟持された状態となり、第1リブの下方への移動が阻止されるとともに、第2リブの上方への移動が阻止される。その結果、メータクラスタがメータユニットを介してインストルメントパネルに対して上下方向に位置決めされるので、メータクラスタのがたつきによる異音の発生を防止することができる。
【0010】
そして、第1リブの前端部の下面および第2リブの前端部の上面の少なくとも一方は、前方に向けて係合部から離れるように傾斜する傾斜面とされている。そのため、インストルメントパネルに対するメータクラスタの装着の際に、メータクラスタの前方への移動に伴って、第1リブまたは第2リブの傾斜面上を係合部が摺動することにより、メータクラスタは、第1リブおよび第2リブの両方が係合部と当接する位置に案内される。また、メータクラスタの離脱の際には、メータクラスタの後方への移動に伴って、第1リブまたは第2リブの傾斜面上を係合部が摺動することにより、係合部が第1リブおよび第2リブに挟持された状態が解除される。よって、メータクラスタをインストルメントパネルに容易に着脱することができる。
【0011】
前記メータクラスタの取付構造では、前記第2リブの車幅方向の両側に前記第1リブが設けられており、1つの前記第2リブおよびその両側の2つの前記第1リブが同一の前記係合部に当接することが好適である。
【0012】
このようなメータクラスタの取付構造では、第1リブが2つ設けられているので、メータクラスタが重力の反力として係合部から与えられる上向きの力を2つの第1リブで分散して受けることができる。そのため、第1リブの厚さを小さくすることができる。その結果、メータクラスタの表面に第1リブの形成に起因するヒケが生じることを防止でき、メータクラスタの外観の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メータクラスタの張出部の内面に、第1リブおよび第2リブが形成されており、メータクラスタがインストルメントパネルに装着された状態で、メータユニットに突設されている係合部が第1リブおよび第2リブにより上下から挟持される。第1リブの前端部の下面および第2リブの前端部の上面の少なくとも一方が前方に向けて係合部から離れるように傾斜しているので、メータクラスタをインストルメントパネルに対して着脱する際(第1リブと第2リブとの間に係合部を差し込む際)に、その傾斜した面がメータクラスタの移動の案内となる。よって、メータクラスタのがたつきによる異音の発生を防止することができながら、メータクラスタをインストルメントパネルに容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るメータクラスタの取付構造が適用されたインストルメントパネルの斜視図である。
【図2】図2は、メータクラスタを前後方向および車幅方向に延びる平面で切断して、メータクラスタの内側の構造を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2に示す係合部、第1リブおよび第2リブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るメータクラスタの取付構造が適用されたインストルメントパネルの斜視図である。
【0017】
インストルメントパネル1は、自動車の前席の前方(車室の最前部)に、車幅方向の全幅にわたって設けられている。インストルメントパネル1には、運転席の前方において、ステアリングコラム2が挿通されている。また、インストルメントパネル1には、ステアリングコラム2の上方の部分に、速度計、メータユニット3と、メータユニット3の周囲を取り囲むメータクラスタ4とが装着されている。
【0018】
図2は、メータクラスタを前後方向および車幅方向に延びる平面で切断して、メータクラスタの内側の構造を示す斜視図である。
【0019】
メータユニット3は、インストルメントパネル1に形成されたユニット取付用開口5に嵌め込まれて、インストルメントパネル1に固定されている。メータユニット3は、図1,2に示すように、車幅方向に長い正面視矩形状のフレーム6と、フレーム6の周囲を取り囲むユニットケース7と、フレーム6内に配置された距離計および燃料計などの計器類8と、ユニットケース7の正面(運転席側の面)に配置された透明板9とを備えている。
【0020】
ユニットケース7の上面は、後方(運転席側)に向けて突出し、その後端縁が円弧状に形成されている。そして、その円弧状の後端縁には、車幅方向に互いに間隔を空けた2つの位置に、車幅方向に長い平面視矩形状をなす板状の係合部10が後方に向けて突出して形成されている。
【0021】
メータクラスタ4は、樹脂成型品であり、メータユニット3のユニットケース7のさらに外側を取り囲むように設けられている。メータクラスタ4は、ユニットケース7の後上端部から後方に延びる平面視略半円形状の下延出部11と、下延出部11に対して上方に間隔を空けて、下延出部11の後端縁から前方に向けて延びる上延出部12とを一体的に備えている。これにより、メータクラスタ4は、メータユニット3の上方において、下延出部11および上延出部12からなり、後方に向けて平面視略半円形の庇状に張り出した中空の張出部13を有している。
【0022】
張出部13の内面には、複数のフック14が車幅方向に間隔を空けて形成されている。具体的には、張出部13の最も後方に膨出した位置およびその車幅方向の両側にそれぞれ間隔を空けた位置に、上方に向けて突出する側面視略三角形状の係止突起15を有するフック14が形成されている。各フック14がインストルメントパネル1に形成された係止用孔(図示せず)に挿入されて、その係止用孔の周縁に係止突起15が係止されることにより、メータクラスタ4がインストルメントパネル1に装着される。
【0023】
また、張出部13の内面、より具体的に下延出部11の上面には、複数のリブ16が車幅方向に間隔を空けて形成されている。各リブ16は、下延出部11の上面から上方に突出して、前後方向に細長く延びている。
【0024】
そして、複数のリブ16には、第1リブ16Aおよび第2リブ16Bが含まれる。第1リブ16Aおよび第2リブ16Bは、中央のフック14とその両側のフック14との各間に形成され、それぞれユニットケース7の係合部10に向けて延びている。
【0025】
図3は、係合部、第1リブおよび第2リブの斜視図である。
【0026】
中央のフック14とその両側のフック14との各間において、第1リブ16Aは、車幅方向に係合部10の幅よりも小さい所定間隔を空けて2つ設けられている。各第1リブ16Aは、その前端部のほぼ下半分の部分が矩形状に切り欠かれている。これにより、第1リブ16Aは、その前端部に、下延出部11の上面に対して垂直に延びる垂直面17と、垂直面17から下延出部11の上面とほぼ平行をなして前方に延びる平行面18と、平行面18の前端縁から前方に膨出しつつ上方に延びる膨出面19とを有している。そして、各第1リブ16Aは、前端部の平行面18が係合部10の上面に上方から接している。
【0027】
第2リブ16Bは、所定間隔を空けて配置される2つの第1リブ16Aの間に、各第1リブ16Aと車幅方向に間隔を空けて設けられている。第2リブ16Bの前端部は、前方に向けて先細りとなる側面視三角形状に形成されている。これにより、第2リブ16Bの前端部の上面20は、前側ほど下延出部11の上面に近づくように傾斜する傾斜面となっている。そして、第2リブ16Bは、その前端部の上面20が係合部の下面の前端縁に下方から当接している。
【0028】
このように、メータユニット3のユニットケース7には、係合部10が設けられている。係合部10は、メータユニット3から後方に向けて延び、車幅方向に幅を有している。メータクラスタ4は、メータユニット3の上方において後方に向けて庇状に張り出した中空の張出部13を有している。張出部13の内面には、第1リブ16Aおよび第2リブ16Bが形成されている。第1リブ16Aおよび第2リブ16Bは、車幅方向に係合部10の幅よりも小さい間隔を空けて、それぞれ係合部10に向けて前後方向に沿って延びている。そして、メータクラスタ4がインストルメントパネル1に装着された状態で、係合部10が第1リブ16Aと第2リブ16Bとの間に差し込まれて、第1リブ16Aの前端部の平行面18および第2リブ16Bの前端部の上面20が上下から係合部10に当接する。これにより、係合部10が上下方向において第1リブ16Aおよび第2リブ16Bに挟持された状態となり、第1リブ16Aの下方への移動が阻止されるとともに、第2リブ16Bの上方への移動が阻止される。
【0029】
その結果、メータクラスタ4がメータユニット3を介してインストルメントパネル1に対して上下方向に位置決めされるので、メータクラスタ4のがたつきによる異音の発生を防止することができる。
【0030】
また、メータクラスタ4ががたつくと、メータクラスタ4の下延出部11の前端縁がメータユニット3の透明板9に擦れて、透明板9に傷がつくおそれがあるが、メータクラスタ4のがたつきがないので、そのような透明板9の傷つきを防止することができる。
【0031】
また、張出部13にその前端部が下がるように撓み変形が生じていても、第1リブ16Aと第2リブ16Bとの間に係合部10が差し込まれることにより、その撓み変形を矯正することができる。その結果、メータクラスタ4の外観を向上させることができる。
【0032】
そして、第2リブ16Bの前端部の上面20は、前側ほど下延出部11の上面に近づくように、言い換えれば、前方に向けて係合部10から離れるように傾斜する傾斜面とされている。そのため、インストルメントパネル1に対するメータクラスタ4の装着の際に、メータクラスタ4の前方への移動に伴って、第2リブの前端部の上面20上を係合部10が摺動することにより、メータクラスタ4は、第1リブ16Aおよび第2リブ16Bの両方が係合部10と当接する位置に案内される。また、メータクラスタ4の離脱の際には、メータクラスタ4の後方への移動に伴って、第2リブの前端部の上面20上を係合部10が摺動することにより、係合部10が第1リブ16Aおよび第2リブ16Bに挟持された状態が解除される。よって、メータクラスタ4をインストルメントパネル1に容易に着脱することができる。
【0033】
また、第1リブ16Aは、第2リブ16Bの車幅方向の両側に設けられているので、メータクラスタ4が重力の反力として係合部10から与えられる上向きの力を2つの第1リブ16Aで分散して受けることができる。そのため、第1リブ16Aの厚さを小さくすることができる。その結果、メータクラスタ4の表面に第1リブ16Aの形成に起因するヒケが生じることを防止でき、メータクラスタ4の外観のさらなる向上を図ることができる。
【0034】
なお、2つの第1リブ16Aの間に1つの第2リブ16Bが設けられ、これらを1セットとする構成を取り上げたが、1つの第1リブ16Aと1つの第2リブ16Bとが1セットとして設けられてもよい。すなわち、図3に示す構成から1つの第1リブ16Aが省略されてもよい。
【0035】
また、2つの第2リブ16Bが車幅方向に間隔を空けて設けられ、その2つの第2リブ16Bの間に1つの第1リブ16Aが設けられて、1つの第1リブ16Aおよび2つの第2リブ16Bが1セットとされてもよい。
【0036】
また、第1リブ16Aおよび第2リブ16Bのセットは、1セットだけ設けられてもよいし、3セット以上設けられてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 インストルメントパネル
3 メータユニット
4 メータクラスタ
10 係合部
13 張出部
16A 第1リブ
16B 第2リブ
18 平行面
20 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メータユニットが装着されたインストルメントパネルにおけるメータクラスタの取付構造であって、
前記メータクラスタは、前記メータユニットの上方において後方に向けて庇状に張り出した中空の張出部を有し、
前記メータユニットには、車幅方向に幅を有する係合部が後方に向けて突設されており、
前記張出部の内面には、前後方向に延び、その前端部が前記係合部に上方から当接する第1リブと、前記第1リブと車幅方向に間隔を空けて、前後方向に延び、その前端部が前記係合部に下方から当接する第2リブとが形成され、
前記第1リブの前記前端部の下面および前記第2リブの前記前端部の上面の少なくとも一方は、前方に向けて前記係合部から離れるように傾斜している、メータクラスタの取付構造。
【請求項2】
前記第2リブの車幅方向の両側に前記第1リブが設けられており、
1つの前記第2リブおよびその両側の2つの前記第1リブが同一の前記係合部に当接する、請求項1に記載のメータクラスタの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−168239(P2011−168239A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36084(P2010−36084)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】