説明

メール取り出し方法

【課題】 PHS子機の所持者がメールホストに呼出を行って自身宛のメールを取り出す場合に無駄な通話料金を抑制する。
【解決手段】 交換網3と、交換網に接続される基地局2と、子機1と、交換網に接続され子機1宛のメールをその電話番号とともに登録するメールホスト4とを備え、メールホストは子機の発呼に基づき交換機から送信される発信者番号を受信すると、受信した発信者番号に対応してメールが登録されている場合は着信に応答し該当のメールを子機に伝達する。また、メールが登録されていない場合は着信鳴動が所定回数継続している間は着信に応答しないため、子機の所持者はこの間、自身宛のメールがまだ登録されていないと判断し発呼を放棄することからメールを取り出せないのに課金されるといった不具合を解消できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、PHS(パーソナル・ハンディホン・システム)に用いられるPHS電話機宛のメールを取り出して配信するメール取り出し方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、サービスが開始されたPHSシステムでは、PHS電話機(以下、PHS子機)を、所持者が携帯して最寄りの基地局を介して自在に通話できるため急速に普及しつつある。このようなPHS子機は、発信を行う場合は所持者が基地局の近傍で発呼操作を行うことで自在に相手に呼出を行うことができる。しかし、こうしたPHS子機の所持者に対し発呼した場合、被呼者であるこのPHS子機の所持者が例えば電車等で移動中の場合や基地局の電波の及ばないエリアに居る場合は着信不可となり、PHSシステムでは、こうした着信不可状態がしばしば発生するという問題がある。このため、メールホストを設け、そのメールホストに被呼者宛のメール(メッセージ)を予め記憶し、被呼者側がメールホストに呼出を行ってメッセージを取り出すようなシステムが考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、被呼者側が自身宛のメールを取り出すためにメールホスト宛に発呼し呼出を行うと、メールホスト側ではこの呼出に自動的に応答して被呼者宛のメールを取り出し被呼者に配信する。しかし、被呼者宛のメールが無い場合でもメールホスト側ではその呼出に自動応答するため、被呼者側では無駄な通話料金(例えば20円)がかかるという問題があった。従って本発明は、PHS子機の所持者がメールホストに呼出を行って自身宛のメールを取り出す場合に無駄な通話料金を抑えることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決するために本発明は、交換網と、交換網に接続される基地局と、基地局と無線通信を行う無線端末と、交換網に接続され前記無線端末宛のメールを該無線端末の電話番号とともに登録するメールホストとからなるシステムにおいて、メールホストは無線端末の発信に基づいて交換網から送信されてくる発信者電話番号を受信し、この受信した発信者電話番号に対応してメールが登録されている場合は、無線端末の発信に基づく着信に応答し該当のメールを読み出し発信側に伝達するようにした方法である。この結果、無線端末側からの着信があるとその無線端末宛のメール登録されている場合のみ着信に応答するため、無線端末の所持者がメールホストに呼出を行って自身宛のメールを取り出す場合に無駄な通話料金を抑えることが可能になる。また、メールホストは受信した発信者電話番号に対応してメールが登録されていない場合は、上記着信に基づく着信鳴動が所定回数継続している間は着信に対して不応答とする方法である。この結果、メールホスト側の速やかな着信応答が回避され、無線端末の所持者は、この着信の継続の間に自身宛のメールがまだ登録されていないと判断して発呼を放棄するため、自身宛のメールが登録されていないのに課金されるといった不具合を解消することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明について図面を参照して説明する。図1は、本発明のメール取り出し方法を適用したシステムの構成を示すブロック図である。同図において、1はPHS子機(無線端末)、2は基地局、3は交換網、4はPHS子機1を所持する被呼者宛のメールを記憶するメールホスト、5は例えば事務所内に配設されたボタン電話装置等の電話装置である。ところで、PHS子機1の所持者は、基地局の電波の及ぶ圏内に居るとは限らず、電車や車等で移動中の場合や基地局の電波の及ばないエリアに居ることが多い。そのため、事務所内の電話装置5から交換網3及び基地局2を介してその事務所の例えば外出中の営業マンが所持するPHS子機1宛に呼出を行っても呼出不可となる確率が高くなる。
【0006】本システムでは、以上のことに鑑み、メールホスト4を交換網3に接続すると共に、メールホスト4にPHS子機1宛のメールを電話装置4から予め登録し、PHS子機1が基地局2及び交換網3を介してメールホスト4に呼出を行って自身宛のメールを取り出しできるように構成する。
【0007】図4は、上記システムを構成するPHS子機1のブロック図であり、PHS子機1は、無線送受信部11、モデム変調器12、チャネルコーディック13,15、音声コーディック14、モデム変調器16、CPU17、キーボード18、表示器19等からなる。また、図5はPHS子機1との間で無線信号の伝送を行う基地局2の構成を示すブロック図であり、基地局2は、無線送受信部21、モデム変調器22、チャネルコーディック23,25、音声コーディック24、モデム変調器26、CPU27、2線4線変換部28、及び回線インタフェース29からなる。そして、基地局2は回線インタフェース29及び回線Lを介して交換網3に接続される。
【0008】次に図2は、上記システムを構成するメールホスト4のブロック図であり、メールホスト4は、複数の回線からなる回線群Lnのインタフェースである回線インタフェース41、メールの送受信を行うデータ送受信部42、メールを登録するメモリ43、及びこれらを制御する制御部44からなる。
【0009】さて、以上のように構成されたシステムでは、上述したように外出中の営業マンの所持するPHS子機1宛にメールを登録するために、事務所内の電話装置5で交換網3に対しメールホスト4宛に発呼を行う。メールホスト4の制御部44では、電話装置5の発呼に基づく交換網3側からの呼出を回線インタフェース41を介して検出すると、この呼出に応答し、その後、電話装置5側から送られてくるPHS子機1の電話番号及びその子機1宛のメールをデータ送受信部42に受信させてメモリ43に記憶させる。
【0010】その後、PHS子機1から基地局2に対しメールホスト4宛の発呼が行われると、この発呼は基地局2を経由して交換網3に伝達され、交換網3からメールホスト4に呼出が行われる。メールホスト4では、この呼出に応答するとメモリ43に記憶されているPHS子機1のメールを読み出して回線インタフェース41,交換網3及び基地局2を経由してPHS子機1に送信する。PHS子機1では、このメールが音声信号の場合は、そのままスピーカSPから放出する。また、そのメールが表示データの場合は表示器19に表示する。このようにして、PHS子機1を所持する営業マンに対し用件を伝達することができる。
【0011】ここで、メールホスト4にまだメールが登録されていない時点でPHS子機1がメールホスト4宛に呼出を行った場合でも、メールホスト4ではこの呼出に対して直ちに応答してメールが登録されていない旨のメッセージを伝達するため、PHS子機1側では、メールを取得できないのに課金されるという問題がある。このため、本発明では、PHS子機1側でメールホスト4に対して呼出を行った場合、メールホスト4ではその発信者の電話番号を受信してその電話番号に該当するメールが登録されていない場合は呼出に対して応答しないようにする。
【0012】ところで、ISDN回線では周知のように着信側に発信者電話番号を通知できる機能を有している。また、アナログ回線であっても、こうした発信者電話番号の通知サービスが開始されつつある。本発明は、このような発信者電話番号の通知サービスに着目し、着信時に予め発信者電話番号を受信すると共に、受信した発信者電話番号に対応するメールがメモリ43内に登録されている場合のみその着信に応答し、メールを発信者側に伝達するように構成する。
【0013】ここで、アナログ回線における発信者電話番号の通知機能についてメールホスト4の要部構成を示す図3のブロック図を用いて説明する。PHS子機1のメールホスト4宛の発呼により、交換網3から1回目の着信が回線L1,L2に到来すると、制御部44は回線インタフェース41内のダイオードブリッジDB2及び着信検出回路45を介し着信の到来を認識する。この場合制御部44は、回線インタフェース41内の回線捕捉回路46を駆動して回線L1,L2の直流ループを閉結し、この1回目の着信に応答(一次応答)する。
【0014】すると、交換網3ではPHS子機1の電話番号である発信者電話番号をモデム信号により送信する。制御部44ではこのモデム信号を回線インタフェース41内のトランスT及びモデム47を介して受信すると、回線捕捉回路46を駆動して閉結されている回線の直流ループを開放する。そしてこの直流ループの開放により、交換網から2回目の着信(呼出信号)が到来する。この場合、制御部44では受信した発信者電話番号がメモリ43に登録されていれば、回線捕捉回路46を駆動してこの2回目の着信に応答(二次応答)する。そして、データ送受信部42を制御してその電話番号に対応して登録されているメールをメモリ43から読み出させ、図中点線で示す方向から回線捕捉回路46,ダイオードブリッジDB1を経由して回線L1,L2側に送出させる。
【0015】図6はこのようなアナログ回線の発信者電話番号通知サービスに基づくメールホスト4の動作を示すフローチャートである。このフローチャート及び図3のブロック図に従って本発明の要部動作をさらに詳細に説明する。メールホスト4に対しPHS子機1から発信を行った結果、回線L1,L2に着信信号が到来すると、制御部44は上述したように着信検出回路45を介して着信の到来を認識し、回線捕捉回路46を駆動して回線L1,L2の直流ループを閉結する。回線閉結により交換網3から発信者電話番号が送信されてくるが、このとき制御部44はステップS1でコンデンサC2,トランスT及びモデム47を介しこの発信者電話番号を受信する。
【0016】その後、制御部44は、回線捕捉回路46を駆動して回線L1,L2の直流ループを開放する。回線L1,L2のループ開放が交換網3に伝達されることにより、交換網3から回線L1,L2に対し2回目の着信信号(呼出信号)が到来する。この場合、制御部44は受信した発信者電話番号に対応するメールがメモリ43内に登録されているか否かをステップS2で判断し、該当のメールが登録されている場合は、ステップS3で回線捕捉回路46を駆動して回線L1,L2のループを閉結することにより呼出に応答する。
【0017】続いて、制御部44はステップS4でデータ送受信部42を制御してその該当メールをメモリ43から読み出させ発信者側(即ち、PHS子機1側)に伝達する。そして該当メールの伝達終了後、回線L1,L2の直流ループを開放する。また、受信した発信者電話番号に該当するメールがメモリ43内に登録されていない場合は、制御部44は着信検出回路45の出力を監視し、着信鳴動が所定値(5回)鳴動する間はこの呼出に応答しない(ステップS5)。なお、この着信鳴動値5回は、例えば7回或いは10回等、状況に応じて可変設定することができる。
【0018】従って、着信が到来しても発呼側に伝達すべきメールが登録されていない場合は直ちに着信応答しないため、この呼出の間、PHS子機1の所持者側では自身宛のメールがまだメールホスト4に登録されていないと判断して発呼を放棄することができ、メールを取得できないのに課金されるという問題を解消できる。なお、この実施の形態では、アナログ回線に適用した例について説明したが、ISDN回線の場合は呼制御メッセージと同時に発信者電話番号が通知されてくるため、この発信者電話番号を受信することによりアナログ回線と同様に処理できる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、交換網と、交換網に接続される基地局と、基地局と無線通信を行う無線端末と、交換網に接続され前記無線端末宛のメールを該無線端末の電話番号とともに登録するメールホストとからなるシステムにおいて、メールホストは無線端末の発信に基づいて交換網から送信されてくる発信者電話番号を受信し、受信した発信者電話番号に対応してメールが登録されている場合は、無線端末の発信に基づく着信に応答し該当のメールを読み出し発信側に伝達するようにしたので、無線端末側からの着信があるとその無線端末宛のメールが登録されている場合のみ着信に応答するため、無線端末の所持者がメールホストに呼出を行って自身宛のメールを取り出す場合に無駄な通話料金を抑えることが可能になる。また、メールホストは受信した発信者電話番号に対応してメールが登録されていない場合は、上記着信に基づく着信鳴動が所定回数継続している間は着信に対して不応答とするので、メールホスト側の速やかな着信応答が回避され、無線端末の所持者は、この着信の継続の間に自身宛のメールがまだ登録されていないと判断して発呼を放棄するため、自身宛のメールが登録されていないのに課金されるといった不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のメール取り出し方法を適用したシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】 上記システムを構成するメールホストのブロック図である。
【図3】 メールホストの要部構成を示すブロック図である。
【図4】 PHS子機のブロック図である。
【図5】 基地局のブロック図である。
【図6】 メールホストの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…PHS子機、2…基地局、3…交換網、4…メールホスト、5…電話装置、41…回線インタフェース、42…データ送受信部、43…メモリ、44…制御部、45…着信検出回路、46…回線捕捉回路、47…モデム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 交換網と、交換網に接続される基地局と、前記基地局と無線通信を行う無線端末と、前記交換網に接続され前記無線端末宛のメールを該無線端末の電話番号とともに登録するメールホストとからなるシステムにおいて、前記メールホストは無線端末の発信に基づいて前記交換網から送信されてくる発信側の電話番号である発信者電話番号を受信し、この受信した発信者電話番号に対応してメールが登録されている場合はこの無線端末の発信に基づく着信に応答し該当のメールを読み出し発信側に伝達することを特徴とするメール取り出し方法。
【請求項2】 請求項1において、前記メールホストは受信した発信者電話番号に対応してメールが登録されていない場合は、前記着信に基づく着信鳴動が所定回数継続している間は着信に対して不応答とすることを特徴とするメール取り出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平9−219887
【公開日】平成9年(1997)8月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−23867
【出願日】平成8年(1996)2月9日
【出願人】(000003632)株式会社田村電機製作所 (18)