説明

メール発信装置、メール発信方法及びプログラム

【課題】適切かつ簡単に音声による通報ができる、メール発信システムを提供する。
【解決手段】受信した通話音声データを記憶する音声データ記憶部と、語句と送信先との対応を記憶する送信先情報記憶部とを備えて、音声データ記憶部が記憶した音声データを音声解析する。その音声解析した音声から、送信先情報記憶部に記憶された語句の音声を検出した場合に、送信先情報記憶部がその語句に対応して記憶したアドレスを電子メールの送信先とし、その解析した音声データを添付データとした電子メールを作成し、作成した電子メールを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メール発信装置及びメール発信方法、並びにそのメール発信方法を実行するプログラムに関し、特に、救急医療通報システムに適用して好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、救急医療通報システムでは、救急患者を搬送する救急車などから救急隊員が電話をすることで、医療機関や消防本部に救急患者の症状などを知らせ、救急患者を受け入れる医療機関を探し出し、その探し出した医療機関に搬送することを行っている。
【0003】
この場合、救急患者を受け入れる医療機関は、受け入れが可能な患者の数に制限があるため、多数の医療機関に電話をするなどの処理が必要で、受け入れ可能な医療機関を見つけるまでには、時間がかかるという問題がある。
【0004】
特許文献1には、通話内容の音声データをデータファイルとして記憶すると共に、その記憶したデータの送信先を決定する属性データを登録し、その属性データを基に対応するアクセス端末に音声データを送信するシステムについての記載がある。また、属性データの登録処理は、通話の発信先が、ダイヤルボタンをプッシュする操作で、数字などによるコードを入力して行う構成としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−42188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の音声通話による救急医療通報システムを効率化する手法として、例えば特許文献1に記載されるように、通話内容の音声データをデータファイル化して、その音声データを、登録先の端末に送信するシステムが考えられる。この場合、その音声データを登録する際に、どのような医療機関に対して送るデータであるのか等の属性を、ダイヤルボタンのプッシュ操作で入力する必要があり、操作が簡単でないという問題がある。
【0007】
具体的には、属性データを入力するために、その属性とコードとの対応表を救急隊員が持参して、通話を行うごとに、その対応表を見て、適切な属性を入力する必要があり、非常に手間と時間がかかる問題がある。また、このような属性データを手作業で入力する場合には、万一、属性コードを間違って入力すると、適切な端末に送信ができない問題がある。
【0008】
なお、ここでは救急医療通報システムを例にして問題点を説明したが、音声通話により通報を行うシステムにおいては、いずれのシステムでも同様の問題がある。
【0009】
本発明は、適切かつ簡単に必要な通報ができる、メール発信装置、メール発信方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のメール発信装置は、音声通話を受信する通話受信処理部と、通話受信処理部で受信した音声データを記憶する音声データ記憶部と、語句と送信先との対応を記憶する送信先情報記憶部と、音声データ記憶部が記憶した音声データを音声解析する音声解析処理部と、音声解析処理部が解析した音声から送信先情報記憶部に記憶された語句の音声を検出した場合に、送信先情報記憶部がその語句の音声に対応して記憶したアドレスを電子メールの送信先とし、その解析した音声データを添付データとした電子メールを作成し、作成した電子メールを送信するメール送信部とを備えた構成とする。
【0011】
また本発明のメール発信方法は、音声通話を受信して得た音声データを記憶する音声データ記憶手順と、音声データ記憶手順で記憶した音声データを音声解析する音声解析手順と、音声解析手順で解析した音声から、予め登録された語句の音声を検出した場合に、その語句の音声に対応して登録されたアドレスを電子メールの送信先とし、その解析した音声データを添付データとした電子メールを作成する電子メール作成手順と、電子メール作成手順で作成した電子メールを送信するメール送信手順とを行う。
【0012】
また本発明のプログラムは、音声通話を受信して得た音声データを記憶する音声データ記憶手順と、音声データ記憶手順で記憶した音声データを音声解析する音声解析手順と、音声解析手順で解析した音声から、予め登録された語句の音声を検出した場合に、その語句の音声に対応して登録されたアドレスを電子メールの送信先とし、その解析した音声データを添付データとした電子メールを作成する電子メール作成手順と、電子メール作成手順で作成した電子メールを送信するメール送信手順とを、コンピュータに実行させるプログラムとしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、受信した通話音声を音声解析した結果に基づいて決定した送信先アドレスに対して、その通話音声データが添付された電子メールが自動的に送信されるので、その通話音声を送るのに適した相手が自動的に選択されて、適切な相手に通話音声が送信されるようになる。
例えば、本発明を救急医療用通報システムに適用することで、発信元の救急隊員が患者を搬送する病院を選ぶ操作を行うことなく、候補となる医療機関に自動的に通話音声が伝わり、複数の医療機関に同時に音声で問い合わせることが可能になり、搬送先の医療機関の探索を短時間に効率よく行える。救急医療用通報システム以外の各種通報システムに適用した場合にも、通報の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態によるシステム全体の例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態による送信先情報管理データベースの例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態による音声通話受信時の処理例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施の形態によるメール作成時の処理例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施の形態による送信先検索時の表示処理例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態による送信先登録時の表示処理例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.システム全体の構成例]
以下、本実施の形態の例を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態を救急医療用通報システムに適用した場合の構成例である。
本実施の形態の例では、救急車などにいる救急隊員などが発信端末201を所持して、その発信端末201から電話網200を介して救急医療情報システム100に発信を行う。
発信端末201は、例えば無線電話網を使用した携帯電話端末を使用する。この場合、発信端末201の現在位置を測位する機能がある端末を使用してもよい。この現在位置を測位する機能がある端末を使用した場合には、発信時に、通話相手に現在位置のデータを送信する。
【0016】
発信端末201から電話網200を介して救急医療情報システム100に発信を行い、救急医療情報システム100が備える通話受信処理部101がその通話を受けた場合、発信端末201からの通話音声を、通話受信処理部101の処理で自動的に記憶する。この通話音声の記憶には、音声データ記憶部である、音声データ管理データベース102が使用される。音声データ管理データベース102は、救急医療情報システム100の通話受信処理部101が受信した通話音声を記憶する。なお、通話受信処理部101が通話を受けた際に、発信端末201の現在位置のデータが送信された場合には、記憶する通話音声に、端末位置のデータが付加される。なお、通話受信処理部101が受信する通話は、どの端末からの発信を受け付けるようにしてもよいが、例えば予め登録された発信端末201からの発信だけを受け付けるようにして、このシステムにアクセスできる端末を、予め登録された救急隊員などが所持する特定の発信端末201に制限してもよい。
【0017】
そして、音声データ管理データベース102に新たな通話音声の記憶がある場合には、その記憶した通話音声を、音声解析処理部103で直ちに音声解析処理を行う。この音声解析処理を行う際には、予め送信先情報管理データベース120に記憶された語句が通話音声中に有るか否かを音声解析結果から判断する。送信先情報管理データベース120は、送信先情報記憶部であり、予め特定の語句と、その語句に対応した送信アドレスなどの情報を記憶したデータベースである。この送信先情報管理データベース120の記憶データの具体例については後述する。
【0018】
そして、通話音声から送信先情報管理データベース120に記憶された語句がある場合には、送信先情報管理データベース120で、その語句に対応して記憶した送信アドレスなどを読み出し、音声付メール作成部104に送信アドレスのデータを送る。複数の送信アドレスが存在する場合には、全ての送信アドレスを送る。
【0019】
音声付メール作成部104は、送信アドレスが供給されると、供給された送信アドレスを送信先とした電子メールを作成する。但し、予め特定の数の送信アドレスに制限する設定がされている場合には、語句から取り出された複数の送信アドレスから、予め決められた条件で特定の数の送信アドレスを抽出して、その特定の数の送信アドレスだけを送信先とした電子メールを作成する。このとき作成した電子メールには、添付ファイルで通話音声よりなる音声データを付加する。このとき付加する通話音声の音声データは、通話受信処理部101が受信して音声データ管理データベース102が記憶した、元の通話音声の音声データである。なお、音声データを添付した電子メールの本文には何も記載がなくてもよいが、例えば音声解析した語句や、発信端末の情報(電話番号など)を本文に記載してもよい。あるいは、その他の付加情報を本文やメールタイトルとして記載した電子メール文を作成してもよい。
【0020】
音声付メール作成部104が電子メールを作成した際には、この救急医療情報システム100が備える表示装置110で、電子メールの送信先の一覧や、電子メール文などを表示する。救急医療情報システム100の操作者は、その表示装置110での表示を見ながら、電子メールの送信先の一部を削除したり、追加するなどの編集を行うことができる。
【0021】
また、音声付メール作成部104は、メール送信部としての機能も備え、音声データが添付された電子メールの作成が完了すると、その作成した電子メールを、所定のネットワーク300を介して、予め用意された受信端末301に送信する。電子メールの送信先が複数である場合には、同報送信で同時に送信する。
本実施の形態の例を救急医療情報システム100に適用した場合、受信端末301は、救急病院などの医療機関に設置される。ネットワーク300としては、本システム専用に用意された回線や無線システムでもよいが、電話回線によるネットワークを適用してもよい。あるいはまた、インターネットなどのネットワークを使用してもよい。
【0022】
受信端末301は、電子メールを受信する端末であり、音声発生装置302と回転灯303とを備える。受信端末301が電子メールを受信すると、その電子メールに添付された音声データを音声発生装置302に送り、音声データによる音声を音声発生装置302が備えるスピーカから出力する。また、受信端末301での電子メールの受信と同時に、回転灯303を点灯させて、電子メールの受信を、医療機関内の対象者に報知する。
【0023】
なお、図1では説明を簡単にするために、発信端末201や受信端末301は1台だけ記載した例としたが、実際にはそれぞれの端末が、システム構成に応じて任意の台数用意される。
【0024】
[2.送信先情報管理データベースの構成例]
次に、図2を参照して、送信先情報管理データベース120の構成例について説明する。
本実施の形態の例の送信先情報管理データベース120は、データを記憶するテーブルとして、送信先管理テーブル10と、医療機関マスタテーブル20と、地域マスタテーブル30と、診療科マスタテーブル40と、症状マスタテーブル50と、送信履歴テーブル60とを備える。各テーブル10〜60のデータは、例えば表示装置110と図示しない操作部を使用して、操作者が事前に登録処理を行う。
【0025】
送信先管理テーブル10は、管理コードフィールド11で示された管理コードごとに、送信先メールアドレスフィールド12と医療機関コードフィールド13と地域コードフィールド14と診療科コードフィールド15と症状コードフィールド16とを備える。送信先管理テーブル10で、このシステムに登録された、救急搬送する可能性がある全ての医療機関の電子メールアドレスが示される。また、各フィールド12〜16のデータで、そのアドレスの医療機関が、どの地域を担当し、どの診療科や症状の患者を受け入れ可能であるかが示される。
【0026】
医療機関マスタテーブル20は、医療機関コードフィールド21で示された医療機関コードごとに、医療機関名称フィールド22と医療機関キーワードフィールド23とを備える。医療機関名称フィールド22で、該当する医療機関の名称が示され、医療機関キーワードフィールド23で、その医療機関を音声で特定する際の語句の読みに相当するキーワードが示される。
【0027】
地域マスタテーブル30は、地域コードフィールド31で示された地域コードごとに、地域名称フィールド32と地域キーワードフィールド33とを備える。地域名称フィールド32で、その地域コードの地域が示され、地域キーワードフィールド33で、その地域を音声で特定する際の語句に相当するキーワードが示される。
【0028】
診療科マスタテーブル40は、診療科コードフィールド41で示された診療科コードごとに、診療科名称フィールド42と診療科キーワードフィールド43とを備える。診療科名称フィールド42で、医療機関が救急患者を受け入れ可能な診療科目が示され、診療科キーワードフィールド43で、その診療科を音声で特定する際の語句に相当するキーワードが示される。
【0029】
症状マスタテーブル50は、症状コードフィールド51で示された症状コードごとに、症状名称フィールド52と症状キーワードフィールド53とを備える。症状名称フィールド52で、医療機関が救急患者を受け入れ可能な症状が示され、症状キーワードフィールド53で、その症状を音声で特定する際の語句に相当するキーワードが示される。
【0030】
送信履歴テーブル60は、音声データコードフィールド61で示された音声データごとに、送信時間フィールド62と送信先管理コード1フィールド63と送信先管理コード2フィールド64などを備える。この送信履歴テーブル60では、音声付メールを送信した際の応答状況などの履歴が記録される。この送信履歴テーブル60を使用した処理の例については後述する。
【0031】
図2に示した各テーブル10〜60は、図2の右端に線で結んで示すように同じフィールドがリンクさせてあり、各テーブル10〜60のデータを使用して、医療機関の詳細が示される。
【0032】
[3.通話の受信からメール送信までの処理の例]
次に、図3及び図4のフローチャートを参照して、通話の受信からメール送信までの処理の流れの例を説明する。
まず、救急医療情報システム100の通話受信処理部101で、発信端末201からの着信があるか否かを判断する(ステップS11)。この判断で着信がない場合には、着信があるまで待機する。そして、着信があった場合には、そのときの発信端末201からの通話内容の音声データを、音声データ管理データベース102が保存する(ステップS12)。また、発信端末201の発信場所が判る場合には、その発信場所も保存する。
【0033】
この音声データの保存があると、音声データ管理データベース102が保存した音声データの音声解析を実行する(ステップS13)。なお、ステップS12の音声データ保存とステップS13の音声解析は、それぞれの処理を順に実行するのではなく、通話音声の保存を行う処理と並行して解析を行うようにして、保存と解析がほぼ同時に行われるようにしてもよい。
【0034】
そして、音声解析の結果で、医療機関マスタテーブル20の医療機関キーワードフィールド23(図2参照)に登録された医療機関名の語句の音声が検出されたか否かを判断する(ステップS14)。この判断で、該当する医療機関名の語句の音声が検出された場合には、検出された医療機関のコードを医療機関マスタテーブル20から判断して登録する(ステップS15)。
【0035】
また、音声解析の結果で、地域マスタテーブル30の地域キーワードフィールド33(図2参照)に登録された地域名の語句の音声が検出されたか否かを判断する(ステップS16)。この判断で、該当する地域名の語句の音声が検出された場合には、検出された地域のコードを地域マスタテーブル30から判断して登録する(ステップS17)。
【0036】
また、音声解析の結果で、診療科マスタテーブル40の診療科キーワードフィールド43(図2参照)に登録された診療科の語句の音声が検出されたか否かを判断する(ステップS18)。この判断で、該当する診療科の語句の音声が検出された場合には、検出された診療科のコードを診療科マスタテーブル40から判断して登録する(ステップS19)。
【0037】
さらに、音声解析の結果で、症状マスタテーブル50の症状キーワードフィールド53(図2参照)に登録された症状の語句の音声が検出されたか否かを判断する(ステップS20)。この判断で、該当する症状の語句の音声が検出された場合には、検出された症状のコードを症状マスタテーブル50から判断して登録する(ステップS21)。
ここまでが、音声通話の着信時の音声の保存と解析の処理である。
【0038】
次に、音声解析された結果に基づいて、電子メールを作成して送信する処理の例を、図4のフローチャートに従って説明する。
まず、ステップS12で保存した音声データが含まれたファイルを、添付ファイルとした電子メール作成処理を行う(ステップS31)。そして、ステップS15,S17,S19,S21で登録されたコードに対応した送信先メールアドレスを、送信先管理テーブル10から選定する(ステップS32)。例えば、図2の送信先情報管理データベース120に示した例で説明すると、音声解析で「AAA地区」(エーエーエーチク)が検出され、その「AAA地区」の地域コード[001]が登録された場合に、その地域コード[001]に対応した送信アドレス[mail@mail.co.jp]が、送信先管理テーブル10から取り出される。
【0039】
このステップS32での送信先メールアドレスの選定は、音声解析で得られた語句を複合条件として選択して得られたアドレスとする。具体的には、地区と診療科と病状の語句については、全ての条件を満たすように複合検索を行ってアドレスを選択し、医療機関の語句で直接特定の医療機関が指定された場合には、その特定された医療機関を選択する。
例えば、音声解析で、「AAA地区」(エーエーエーチク)と「外科」(ゲカ)が検出された場合には、「AAA地区」の地域コードを有し、かつ「外科」の診療科コードを有する医療機関の送信先メールアドレスを選定する。このような複合的な条件による検索に合致する医療機関が検出されない場合には、音声解析で得られた地区(地域)に隣接した別の地区で、地区以外の条件に合致する医療機関の送信先メールアドレスを選定する。
【0040】
また、音声解析で医療機関を特定する語句がある場合には、その医療機関だけを送信アドレスとする。例えば、音声解析で「AAA病院」(エーエーエービョウイン)が検出され、その「AAA病院」の医療機関コード[0001]が登録された場合に、その医療機関コード[0001]に対応した送信アドレス[mail@mail.co.jp]だけが、送信先管理テーブル10から取り出される。
【0041】
このようにして、ステップS32で1つ又は複数の送信先メールアドレスを選定する。そして、ステップS32で選定された送信先候補が、予め設定された規定の数を超えているか否かを判断する(ステップS33)。例えば、ここでは同報送信を行う規定数として、10アドレスが設定されているとすると、10を超えるアドレスが選定されたか否かを判断する。この判断で規定数を超えるアドレスが選定されている場合には、発信端末201の位置(位置情報が得られた場合)や、アドレスで示された医療機関に付与された優先順位などに従って、規定数のアドレスだけを選定する(ステップS34)。
【0042】
例えば、発信端末201の現在位置の情報が得られる場合には、その現在位置に最も近い医療機関から順に10個の医療機関のアドレスを選択する。
また、登録された医療機関の中で、優先的に選ぶ医療機関として予め登録がある場合には、その優先的に選ぶ医療機関のアドレスを選択する。この優先的に選ぶ医療機関としては、例えば本実施の形態の例の救急医療通報を行って、その通報で患者を受け入れた確率が高い医療機関や、規模の大きな医療機関などを選定する。逆に、通報を行っても応答がほとんどない医療機関については、優先順位が低い医療機関に設定する。
【0043】
このようにして最大で10個の送信アドレスが選定されると、その送信アドレスの一覧を表示装置110で表示する(ステップS35)。この送信アドレスの一覧表示を行うことで、その一覧表示を確認した操作者による操作で、いずれかの送信先を削除したり、あるいは別の送信先の追加などの修正が可能になる。救急医療情報システム100では、送信アドレスの修正操作が行われたか否かを判断し(ステップS36)、修正が行われた場合には、ステップS35に戻って修正された送信アドレスの表示を行う。
【0044】
ステップS36で表示されたアドレスの修正がない場合には、その表示された送信アドレスに、ステップS31で作成された音声データ付の電子メールを送信する(ステップS37)。送信先が複数である場合には、その複数のアドレスに対して同時に送信する同報送信を行う。
【0045】
このようにして電子メールの送信を行うことで、その電子メールを受信した医療機関に設置された受信端末301では、その電子メールに添付された音声データを音声発生装置302から出力させると共に、回転灯303を点灯させる。このような処理が行われることで、救急患者の搬送依頼があることを告知する処理が、その救急患者に適した医療機関を自動的に選んで行われる。救急患者の搬送依頼に応じる場合には、該当する医療機関が救急医療情報システム100に対して電話をかける等の処理を行う。あるいは、例えば救急医療情報システム100から送信した電子メールの本文中に発信端末201の電話番号を記載しておき、発信端末201に直接電話できるようにしてもよい。
【0046】
[4.表示画面の例]
図5は、表示装置110において送信先情報検索画面111の例を示したものである。
送信先の医療機関は、それぞれの医療機関ごとに、管理コードと送信先メールアドレスと医療機関名称と所在地の地域と診療科と得意な症状を登録する。診療科や症状については、複数の登録が可能である。
図5の例では、画面111の下半分に、登録された医療機関の一覧が表示される。この一覧表示の下側には、新規作成ボタンと編集ボタンと削除ボタンが表示される。
新規作成ボタンが選ばれた場合には、新規の医療機関の入力画面となり、削除ボタンが選ばれた場合には、選択された医療機関のデータが削除される。
【0047】
図6は、図5に示した一覧から、1つの医療機関の編集が選ばれた場合や、新規作成を行う際などの、医療機関について登録(新規登録や登録の修正)を行う場合の、表示装置110の送信先情報検索画面112の例を示した図である。
この図6に示した画面では、医療機関の管理コードと、送信先メールアドレスと、医療機関名称と、地域と、診療科と、症状との詳細が表示されている。それぞれの項目について、操作者が表示装置110に接続された操作部(キーボードなど)を使用して、入力や修正を行うことができる。診療科や症状については、複数設定してもよい。それぞれの項目は、例えばプルダウンメニューで入力可能な項目の一覧を表示し、その一覧から選択する形式でもよい。
【0048】
このような画面を使用して登録や修正を行うことで、送信先情報管理データベース120に登録される送信先情報が更新される。
【0049】
なお、このような送信先情報を登録する際には、図4のフローチャートのステップS34での送信先選択時にも説明したように、医療機関毎に、優先順位などを登録してもよい。例えば、過去の救急医療通報で患者を受け入れた確率が高い医療機関を、優先順位が高い医療機関として登録する。あるいは、規模の大きな医療機関などを、優先順位が高い医療機関として登録してもよい。
そして、音声解析で得た語句から医療機関を検索する際には、この優先順位が高い医療機関を優先的に選ぶ。
また、過去に通報を行った際の応答率が悪い医療機関については、優先順位が低い医療機関に設定する。これらの優先順位の情報についても、送信先情報管理データベース120に登録する。
【0050】
また、このような優先順位などを付与する上で必要な、救急医療通報時(つまりメール送信時)の情報を、自動的に送信先情報管理データベース120が登録してもよい。
すなわち、例えば図2に示した送信先情報管理データベース120では、送信履歴テーブル60を設けて、このシステムが音声付メールを送信させた際の、応答状況などの詳細を収集して記録できる構成とする。具体的には、図2に示すように、音声データコードフィールド61で示された音声データごとに、送信時間フィールド62と送信先管理コード1フィールド63と送信先管理コード2フィールド64などを備える。送信先管理コードフィールドは、図2では2つのフィールド63,64だけを示すが、電子メールを送信した送信先の数だけ用意する。これらのフィールドを使用して、応答状況などを記録して管理することができる。
【0051】
例えば、2011年1月にどの医療機関に何回のメールが送信されたかの統計情報を集計する場合、送信時間フィールド62が「201101XXXXXXXX」のレコードを検索し、該当レコードの送信先管理コードフィールド63,64を管理コード毎に集計する。
【0052】
このような管理結果を帳票に出力するための医療機関名称は、以下に説明する処理により取得される。
送信履歴テーブル60の送信先管理コードフィールド63,64のコードと送信先管理テーブル10の管理コードフィールド11が一致するレコードから、医療機関コードフィールド13を取得する。そして、取得した送信先管理テーブル10の医療機関コードフィールド13と医療機関マスタテーブル20の医療機関コードフィールド21が一致するレコードの医療機関名称フィールド22から医療機関名称を取得する。
【0053】
このようにして取得された医療機関名ごとに、何回のメールが送信されたかを集計でき、その送信回数などの集計結果を、表示や印刷することで、帳票出力を行うことができる。また、メールが送信された回数だけでなく、応答があった回数や、実際に患者を搬送した回数なども記録して、表示することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態の例による救急医療用通報システムによると、救急隊員はシステム側に電話の発信を行って、患者の搬送依頼を音声で話すだけで、自動的に適切な搬送先の候補が選び出されて、候補の医療機関に対して一斉に音声付メールが送信される。したがって、従来のように、候補となる医療機関に対して1件ごとに順に電話で搬送依頼を行い、搬送先が見つかるまで医療機関への電話を繰り返す場合に比べて、患者を搬送する医療機関を見つけるまでにかかる時間を大幅に短縮でき、効率のよい救急医療用通報システムを構築することができる。しかも、発信操作を行う救急隊員は、システム用の特定の電話番号に発信して、音声で状況を話すだけでよく、送信先を特定するコード入力操作などが一切必要なく、非常に簡単にシステムを運用できる。
【0055】
[5.変形例]
なお、上述した実施の形態の例では、本発明による電子メール送信処理を、救急医療用通報システムに適用した例について説明したが、その他の各種通報や連絡を行うシステムに適用してもよい。すなわち、発信元から音声通話で何らかの依頼があった場合に、その依頼に応答する応答先を問い合わせる各種システムに適用が可能である。
【0056】
また、上述した実施の形態の例で説明した音声解析で検出する語句は一例を示したものであり、その他の語句を検出するようにしてもよい。特に、適用されるシステムが医療機関以外である場合には、検出する語句を対応して変更する必要がある。
【0057】
また、上述した実施の形態の例では、システムを適用した地域内の全ての医療機関が受信端末301を備えていることを想定したが、例えば、一部の医療機関については、受信端末301が未設置で電子メールを受信できない場合には、その端末未設置の医療機関に対して、電子メール以外の処理で、搬送依頼を通知してもよい。例えば、端末未設置の医療機関が搬送先の候補となったとき、その医療機関に電話の発信を自動的に行い、電子メールに添付した音声と同じ音声を発信した電話で相手に連絡してもよい。あるいは、音声解析した結果などを表示した文面を、ファクシミリで端末未設置の医療機関に送信してもよい。
【0058】
また、音声付電子メールを医療機関などに送信する場合、このシステム専用の受信端末301に音声付メールを送信すると同時に、受信端末301とは別の携帯端末(例えば医療機関の責任者が所持する携帯端末)に対して、搬送依頼があることをメールで通知してもよい。
【0059】
また、図1に示した構成では、救急医療情報システム100を専用の装置で構成した例について説明したが、例えば汎用のコンピュータ装置を用意し、そのコンピュータ装置に、図3や図4に示した各処理手順を実行するプログラムをインストールすることで、本発明による電子メール送信処理を行うシステムを構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
100…救急医療情報システム、101…通話受信処理部、102…音声データ管理データベース、103…音声解析処理部、104…音声付メール作成部、105…メールサーバ、110…表示装置、120…送信先情報管理データベース、200…電話網、201…発信端末、300…ネットワーク網、301…受信端末、302…音声発生装置、303…回転灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声通話を受信する通話受信処理部と、
前記通話受信処理部で受信した音声データを記憶する音声データ記憶部と、
前記通話受信処理部で受信される語句と送信先との対応を記憶する送信先情報記憶部と、
前記音声データ記憶部が記憶した音声データを音声解析する音声解析処理部と、
前記音声解析処理部が解析した音声から、前記送信先情報記憶部に記憶された語句の音声を検出した場合に、前記送信先情報記憶部がその語句の音声に対応して記憶したアドレスを電子メールの送信先とし、その解析した音声データを添付データとした電子メールを作成し、作成した電子メールを送信するメール送信部とを備えた
メール発信装置。
【請求項2】
前記送信先情報記憶部が記憶する語句は、少なくとも地域名と診療科目と症状名との語句であり、これらの語句を使用した複合条件で送信先を選定する
請求項1記載のメール発信装置。
【請求項3】
前記送信先情報記憶部が記憶する語句は、さらに医療機関名の語句を含み、該当する医療機関名の語句の音声を検出した場合には、その医療機関名で登録された送信先を選定する
請求項2記載のメール発信装置。
【請求項4】
前記通話受信処理部は、発信元の位置を特定し、
前記送信先情報記憶部が記憶する送信先に、それぞれ位置の情報を付加し、
語句の音声に対応して検出した電子メールの送信先が複数存在する場合に、前記メール送信部で、前記発信元の位置に近い送信先を特定の数だけ選択して、その特定数の電子メールを同報送信する
請求項1記載のメール発信装置。
【請求項5】
前記メール送信部が候補とした送信先の一覧を表示する表示部を備え、
前記表示部に表示された一覧から、送信先を削除又は追加する修正を可能とした
請求項1記載のメール発信装置。
【請求項6】
前記送信先情報記憶部が記憶する送信先に、優先順位の情報を付加し、
その優先順位が高い送信先を優先的に送信先として選択する
請求項1記載のメール発信装置。
【請求項7】
音声通話を受信して得た音声データを記憶する音声データ記憶手順と、
前記音声データ記憶手順で記憶した音声データを音声解析する音声解析手順と、
前記音声解析手順で解析した音声から、予め登録された語句の音声を検出した場合に、その語句の音声に対応して登録されたアドレスを電子メールの送信先とし、その解析した音声データを添付データとした電子メールを作成する電子メール作成手順と、
前記電子メール作成手順で作成した電子メールを送信するメール送信手順とを行う
メール発信方法。
【請求項8】
音声通話を受信して得た音声データを記憶する音声データ記憶手順と、
前記音声データ記憶手順で記憶した音声データを音声解析する音声解析手順と、
前記音声解析手順で解析した音声から、予め登録された語句の音声を検出した場合に、その語句の音声に対応して登録されたアドレスを電子メールの送信先とし、その解析した音声データを添付データとした電子メールを作成する電子メール作成手順と、
前記電子メール作成手順で作成した電子メールを送信するメール送信手順とを、
コンピュータに実行させる
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−55583(P2013−55583A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193785(P2011−193785)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】