説明

モアレ拡大素子

【課題】セキュリティ素子として使用できるモアレ拡大素子を実現すること。
【解決手段】本発明によるモアレ拡大素子は透明な基材を有し、この基材は、i)第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、これらの合焦要素は焦点面を規定している微細合焦要素の配列と、ii)第1色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致したプレーン内に配置された微細画像要素の対応する第1配列と、iii)第1色とは異なる第2色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第2配列と、を担持している。モアレ効果に起因してそれぞれの配列の微細画像要素の個別の拡大されたバージョンが生成される。素子が傾斜した際に、第1配列の要素の拡大されたバージョンが、第2配列の要素の拡大されたバージョンの上方又は下方に見える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、銀行券、小切手、パスポート、身分証明書、正規品証明書(certificate of authenticity)、収入印紙、並びに、価値又は身元を保証するその他の文書などのセキュリティ文書及びその他の有価物品において使用されるセキュリティ素子などのモアレ拡大素子に関する。また、本発明は、包装又はこれに類似したものに使用される光学素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
モアレ拡大は、多年にわたってセキュリティ素子の原理として使用されている。いくつかの例が国際特許出願公開第1994/27254号パンフレット及び欧州特許出願公開第1695121号明細書に記述されている。このような素子においては、焦点面を規定する微細合焦要素の規則的な配列が、合焦要素の焦点面と実質的にアライメントされたプレーン内に配置された画像要素の対応する配列の上方に設けられている。画像要素の配列のピッチ又は周期性は、合焦要素のピッチ又は周期性とわずかに異なるように選択されており、かつ、この不整合は、画像要素の拡大されたバージョンが生成されることを意味している。
【0003】
拡大倍率は、周期性又はピッチの間の差によって左右される。微細レンズ配列と微細画像配列との間のピッチ不整合は、微細レンズ配列及び微細画像配列が回転ミスアライメントを有するように、微細レンズ配列に対して微細画像配列を回転させることによって、又はこの逆を実行することによって、簡便に生成することもできる。回転ミスアライメント又はわずかなピッチ不整合は、結果的に、眼が画像の異なる部分をそれぞれの隣接するレンズ内において観察することをもたらし、この結果、拡大された画像が得られる。そして、眼がレンズ/画像配列に対して移動した場合には、画像の異なる部分が観察され、これによって、画像が異なる位置に存在しているという印象がもたらされる。眼が滑らかに移動した場合には、一連の画像が観察され、これによって、画像が表面に対して移動しているという印象がもたらされる。ピッチ不整合を回転ミスアライメントによって生成した場合には、拡大された画像の配列が微細画像配列に対して回転し、かつ、この結果、拡大された画像の見かけの動きを結果的にもたらすパララックス効果も回転することになる。これをスキューパララックスとして知られている。モアレ拡大素子内において観察される拡大された画像の拡大及び回転に対するピッチ不整合及び回転ミスアライメントの影響については、M. Hutley,R Hunt、R F Stevens及びP Savander,“The Moire Magnifier”,Pure Appl. Opt. 3(1994),133〜142,IOP Publishing Limited社、に記述されている。
【0004】
動き及び向きの変化の特性については、モアレの理論から説明することが可能であり、これについては、I. Amidror,“The theory of the Moire phenomemon”(ISBN 0−7923−5949−6),Kluiver Academic Publishers社,2000年、に詳細に記述されている。2つの周期的な構造体のモアレ効果は、2つの構造体の周波数ベクトルを検討することによって説明/予測することができる。周波数ベクトルの向きは、周期性の方向を表しており、かつ、長さは、周波数(すなわち、1/周期)を表している。このベクトルは、そのデカルト座標(u,v)によって表現され、ここで、u及びvは、周波数の水平及び垂直成分である。
【0005】
関係する原理については、国際特許出願公開第2005/106601号パンフレットに更に詳細に記述されている。
【0006】
通常、合焦要素は、微細レンズ又は微細ミラーを有し、かつ、画像要素は、単純なアイコン又はこれに類似したものによって規定されている。
【0007】
また、複数の画像をモアレ拡大素子内に設けることも知られている。例えば、国際特許出願公開第1994/27254号パンフレットは、素子の傾斜に対する画像切り替え効果を示している。国際特許出願公開第2005/106601号パンフレットは、素子が傾斜したとき、2つの拡大された画像の組を異なる速度で移動させる方法について記述している。別の例が国際特許出願公開第2009/139396号パンフレットに記述されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ただし、既知の素子に伴う問題点は、異なる色において複数の画像を得る多色効果を実現することが非常に困難であるという点にある。これは、主には、相互に見当が合っているが異なる色の2つの微細画像配列を印刷することの難しさに起因している。その理由は、これには、別個の印刷実行が必要となるためである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、モアレ拡大素子は、透明な基材を有し、この基材は、
i)第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、これらの合焦要素は、焦点面を規定している、微細合焦要素の配列と、
ii)第1色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致したプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第1配列と、
iii)第1色とは異なる第2色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第2配列と、
を担持しており、
微細合焦要素及び微細画像要素の第1及び第2配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、微細合焦要素の配列が微細画像要素の第1及び第2の配列のそれぞれと協働してモアレ効果に起因してそれぞれの配列の微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するように、かつ、微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンが微細画像要素の第2配列の拡大されたバージョンによって規定された背景を伴って観察されるように、なっており、微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンは、素子が傾斜した際に、背景に対して動きを示し、かつ、配列の間のピッチ不整合は、第1配列の要素の拡大されたバージョンが第2配列の要素の拡大されたバージョンの上方又は下方に見えるように、選択されている。
【0010】
本発明者らは、結果的に得られる配列の拡大されたバージョンが、観察された際に、異なる深度に又は異なるプレーン内に見えるように、微細画像配列を配置することによって、モアレ拡大素子において多色画像を得ることができることに気が付いた。これによって、相互に見当を合わせる必要がなくなる。
【0011】
配列の間のピッチ不整合を適切に選択することによって、第1配列は、第2配列の上方又は下方に見えることができる。
【0012】
その他の色の個別の微細画像要素の1つ又は複数の更なる配列を設けることもできる。例えば、特に好ましい方式においては、本素子は、
iv)第1及び第2色とは異なる第3色の、かつ、(II及びIIIと一貫性を有するようにするために)微細合焦要素の焦点面と実質的に一致したプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第3の配列、
を更に有し、
微細合焦要素及び微細画像要素の第3の配列のピッチは、これらが協働してモアレ効果に起因して第3配列の画像要素の拡大されたバージョンを生成するように、かつ、微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンが微細画像要素の第2及び第3配列の拡大されたバージョンによって規定された背景を伴って観察されるように、なっており、微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンは、素子が傾斜した際に、背景に対して動きを示す。
【0013】
通常は同一である微細画像要素の第3配列を設けることによって、それぞれの配列の拡大された画像は、それぞれの配列のピッチに応じて、相互の関係において異なる深度に見えることができる。したがって、一例においては、微細合焦要素の配列及び微細画像要素の第1、第2、及び第3配列のピッチは、微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンが第2及び第3配列の微細画像要素の拡大されたバージョンの間に見えるように、選択されている。
【0014】
別の例においては、合焦要素の配列及び微細画像要素の第1、第2、及び第3配列のピッチは、第1配列の画像要素の拡大されたバージョンが第2及び第3配列の画像要素の拡大されたバージョンの上方に見えるように、選択されている。
【0015】
少なくとも第1及び第3配列の微細画像要素は、同一であってもよく、又は、その配列にわたって徐々に変形していてもよい。
【0016】
前述のように、本発明は、1つ又は複数の配列を規定する背景の見当を第1配列と合わせる必要がない場合に、特に有利であり、かつ、これは、背景配列が、例えば、線パターン、単純な幾何学的図形、又はギロシェパターンなどの更に複雑な線構造体などの対応する共通の背景を規定している場合に、特に容易に実現することができる。
【0017】
いくつかのケースにおいては、配列のうちの少なくとも2つの配列の微細画像要素は、色においてだけ異なっていてもよい。ただし、好適な例においては、第1、第2、及び第3配列の微細画像要素は、更に、形状、サイズ、及び向きのうちの1つ又は複数のものにおいて相互に異なっている。
【0018】
少なくとも第1配列の微細画像要素は、通常、シンボル、幾何学的図形、英数字、及びこれらに類似したものなどのアイコンを有してもよく、かつ、最も好ましくは、情報を提供する。また、その他の配列のうちの1つ又は複数の配列の微細画像要素も、前述のように、アイコン又は更に共通的なパターンとして形成してもよい。
【0019】
好適な例においては、微細画像要素は、グラビア、湿式又は乾式リソグラフ印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、及びフレキソ印刷などの任意の適切な印刷プロセスを使用し、基材上に印刷される。ただし、微細画像要素の配列のうちの1つ又は複数の配列は、基材上の格子構造体、凹部、又はその他のレリーフパターンとして形成することもできる。また、国際特許出願公開第2005/106601号パンフレットに記述されているように、反射防止構造体を使用してもよい。
【0020】
微細レンズ及び凹面鏡などの微細合焦要素は、好ましくは、基材表面内へのエンボス加工、注型硬化(cast−curing)、又はこれらに類似したものによって、形成される。
【0021】
本発明によって生成されるモアレ拡大素子は、2次元(2D)又は1次元(1D)構造体であってよい。球面レンズを使用する2Dモアレ拡大構造体が欧州特許出願公開第1695121号明細書及び国際特許出願公開第1994/27254号パンフレットに更に詳細に記述されている。2Dモアレ拡大素子においては、微細画像は、すべての方向において拡大される。1Dモアレ拡大構造体においては、球面微細レンズ又は微細ミラーが、円筒形の微細レンズ又は微細ミラーの反復配列によって置換される。この結果は、1つの軸だけにおいて、微細画像要素にモアレ拡大が適用されるというものであり、この軸は、ミラーがその曲がり又はレリーフの周期的変動を示す軸である。この結果、微細画像は、拡大軸に沿って強力に圧縮又は拡大解除(de−magnify)されるが、拡大軸に垂直の軸に沿った微細画像要素のサイズ又は寸法は、観察者から見て、実質的に同一であり、すなわち、拡大又は引き伸ばしが発生しない。
【0022】
本発明によって生成されるモアレ拡大素子は、それ自体としてセキュリティ素子を形成することができるが、ホログラム、回折格子、及びその他の光学可変効果生成構造体などのその他のセキュリティ機能との関連において使用することもできる。
【0023】
本発明の光学素子を使用することによって、基材の特性、具体的には、光学素子の対応する特性に影響を及ぼすその厚さ及び柔軟性によって、様々な基材を真贋判定することができる。
【0024】
本発明は、紙、特に、銀行券などの曲がり易い基材の保護において特別な価値を有しており、この場合に、本素子は、パッチ、ストリップ、又はスレッドを規定することができる。本素子の厚さは、銀行券の印刷プロセスにおける紙の連形状(paper ream shape)の変形を回避するために本素子が銀行券内において用いられる方法と、更には、銀行券自体の形態及び柔軟性と、の影響を受けることになるが、本素子の厚さは、銀行券自体の厚さ(通常は、85〜120μm)の半分を超過しないことが望ましく、したがって、任意の実施形態において、本光学素子は、固定接着剤を含んで50μm未満となるものと予想され、かつ、実質的にそのようになることが好ましい。
【0025】
例えば、銀行券に適用されるパッチとしては、望ましい厚さは、ラベルの場合には、数μm(ミクロン)(固定接着剤を除く)から最大で35〜40μm(この場合にも、接着剤を除く)の範囲となる。ストリップの場合には、厚さは、この場合にも、箔押し(hot−stamped)又は転写されるストリップの場合における数μmから最大では非転写型ストリップの場合の35〜40μmの範囲をとることになり(この場合にも、固定接着剤を除く)、この場合に、ストリップを銀行券の基材内の機械的アパーチャ上に貼付する場合には、必要に応じて、支持担持層が保持される。
【0026】
窓を有するスレッド(windowed thread)の場合には、好ましい最終厚さは、20〜50μmの範囲である。
【0027】
パスポートの紙のページ、プラスチックのパスポートカバー、査証、身分証明書、ブランド識別ラベル、改竄防止ラベル、任意の視覚的に真贋判定可能な物品を含む用途においては、セキュリティ素子の更に厚いバージョン(最大で300μm)を利用することもできる。
【0028】
更には、本素子をセキュリティ文書の透明な窓内に設けることによって、本素子を透過状態において観察できるようにすることもできる。
【0029】
以下、本発明によるセキュリティ素子のいくつかの例について添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】銀行券の概略平面図である。
【図2A】セキュリティ素子の第1の例の3つのバージョンの外観を示す平面図である。
【図2B】セキュリティ素子の第1の例の3つのバージョンの外観を示す平面図である。
【図2C】セキュリティ素子の第1の例の3つのバージョンの外観を示す平面図である。
【図2D】図2A〜図2Cのバージョンの外観を、ただし、すべてのアイコンが同一色である状態において、示す図である。
【図3】図2に示されている拡大された画像の場所を概略的に示す図である。
【図4A】図2及び図3に示されている素子の背景を単位セル及び部分的な配列として示す図である。
【図4B】図2及び図3に示されている素子の背景を単位セル及び部分的な配列として示す図である。
【図4C】図2及び図3に示されている画像の前景画像を単位セル及び部分的な配列として示す図である。
【図4D】図2及び図3に示されている画像の前景画像を単位セル及び部分的な配列として示す図である。
【図5】本発明によるセキュリティ素子の第2の例の外観を示す平面図である。
【図6A】図5に示されている例の背景の単位セル及び一部分を示す図である。
【図6B】図5に示されている例の背景の単位セル及び一部分を示す図である。
【図7】本発明によるセキュリティ素子の第3の例の外観を、画像の1つの組が省略された状態において示す平面図である。
【図8A】第3の例の第1の背景の配列の単位セル及び一部分を示す図である。
【図8B】第3の例の第1の背景の配列の単位セル及び一部分を示す図である。
【図8C】第3の例の第2の背景の配列の単位セル及び一部分を示す図である。
【図8D】第3の例の第2の背景の配列の単位セル及び一部分を示す図である。
【図9】異なる角度において観察された際の図7の例を示す図である。
【図10】図2の例に使用される透過に基づいたセキュリティ素子の断面を示す概略図である。
【図10A】基材表面及び窓に適用された際の図10の素子を示す図である。
【図10B】基材表面及び窓に適用された際の図10の素子を示す図である。
【図11】反射に基づいたセキュリティ素子の断面を示す概略図である。
【図12A】図1〜図11に示されているセキュリティ装置の一部分を印刷するための装置の2つの例を概略的に示す図である。
【図12B】図1〜図11に示されているセキュリティ装置の一部分を印刷するための装置の2つの例を概略的に示す図である。
【図13】異なるタイプのレリーフ微細画像を示す図である。
【図14】ホログラムセキュリティ素子と組み合わせられたモアレ拡大セキュリティ素子のその他の例の図である。
【図15】ホログラムセキュリティ素子と組み合わせられたモアレ拡大セキュリティ素子のその他の例の図である。
【図16】ホログラムセキュリティ素子と組み合わせられたモアレ拡大セキュリティ素子のその他の例の図である。
【図17】図14の線A−A及びB−Bに沿った断面を示す図である。
【図18】背景画像配列及び対応する単位セルの更なる例を示す図である。
【図19】背景画像配列及び対応する単位セルの更なる例を示す図である。
【図20】背景画像配列及び対応する単位セルの更なる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、窓において露出したセキュリティスレッド2と、更なる透明な窓3と、を有する銀行券1を概略的に示している。銀行券1は、紙又はポリマー(二軸配向されたポリプロピレンなど)から製造してもよく、かつ、セキュリティスレッド2及び窓3のいずれか又は両方は、本発明によるセキュリティ素子を内蔵する。
【0032】
図2〜図4は、本発明によるセキュリティ素子の第1の例を示している。図2Aにおいて観察することができるように、通常通りに、すなわち、垂直方向において、観察された際のセキュリティ素子の外観は、拡大された画像要素の第1配列10であり、これは、この場合には、大きな星と小さな星のペアである青色の星の拡大された組によって形成された背景11を伴う数字“5”の形態の赤色のアイコン10Aである。アイコン10A及び背景11の相対的な深度は、図3において更に明瞭に観察することが可能であり、この場合には、“5”アイコン11は、基材7の上部表面の下方に見えており、背景プレーン11は、“5”アイコン10Aの下方に位置している。
【0033】
図4は、セキュリティ素子の構成要素を更に詳細に示している。この図は、背景11が、図4Bに示されているように、1つの配列内において隣り合った状態に配置された単位セル11A(図4A)の配列によって形成されていることを示している。“5”アイコン10Aは、図4C及び図4Dに示されているように、単位セルの1つの配列として形成されている。図4に示されているように、X及びY方向における背景配列11の単位セル11Aのピッチは、A2x、A2yである。“5”アイコン10Aのピッチは、A1x、A1yである。通常、A2xは、A2yに等しく、かつ、A1xは、A1yに等しい。ただし、一方における“5”アイコン10Aのピッチと、他方における背景10の単位セルのピッチとの間には、わずかな差が存在している。
【0034】
図10は、図2〜図4に示されている素子の全体的な構造を断面において示している。すなわち、本素子は、透明なPET又はその他のポリマー層20(基材7に対応している)を有し、その上部表面上には、球面微細レンズ22の二次元配列が形成されている。微細レンズ22の直径は、通常、1〜100μm(ミクロン)、好ましくは、1〜50μm(ミクロン)、かつ、場合によっては、更に好ましくは、10〜30μm(ミクロン)の範囲であり、これによって、類似した範囲のピッチを規定している。
【0035】
微細レンズ22の焦点距離(その平坦な背面から計測したもの)は、印刷受容層の表面と実質的に一致する焦点面24を規定するように、この例においては基材20の厚さに微細レンズ配列22とは反対側の基材20の表面上の印刷受容層21の厚さを加えたものを有する光学スペーサ層の厚さtに実質的に等しい。印刷受容層21上には、まず、赤色で“5”アイコン10Aの微細画像配列を印刷する。次いで、背景配列11を青色で印刷する。2つの配列は、それぞれ、焦点面24と一致する印刷受容層21上に印刷されているが、背景印刷11は、参照符号25によって示されているように、“5”アイコンの配列10と重複していることを図10において観察されたい。
【0036】
本発明は、任意の特定のタイプ又は形状の微細レンズに限定されるものではなく、唯一の要件は、微細レンズを使用して画像を形成することができるというものである。本発明に適した微細レンズは、平凸レンズレット、両凸レンズレット、及びフレネルレンズなどの均質な材料の適切に湾曲した表面において光を屈折させるものを含む。好ましくは、本発明は、球面微細レンズを有することになるが、円柱形レンズを含む任意の対称性を有するレンズを利用することもできる。球面及び非球面表面の両方を本発明に適用可能である。微細レンズが湾曲した表面を有することは不可欠ではない。傾斜屈折率(Gradient Refractive Index:GRIN)レンズは、屈折率の小さな変動の結果として材料の容積の全体を通じた漸進的な屈折によって光を結像する。フレネルゾーンプレートなどの回折に基づいた微細レンズを使用することもできる。GRINレンズ及び振幅又はマスクに基づいたフレネルゾーンプレートは、微細レンズ配列を含む表面が平坦になることを可能にし、かつ、印刷受容性及び耐久性における利点を提供する。
【0037】
複製プロセスによって生成されたレンズの周期的な配列を使用することが好ましい。光熱法、フォトレジストの溶解及びリフロー、及びフォトレジストの彫塑などのいくつかの技法によって、マスタ微細レンズ配列を製造することができる。このような技法については、当業者に知られており、かつ、1998年に再版されたTaylor and Francis社から刊行されているHans Peter Herzig編集による“Micro−Optics: Elements, Systems, and Applications”の第5章に詳述されている。次いで、ホットエンボス加工、成形、又は鋳造などの市場において入手可能な複製法によって、マスタ微細レンズ構造を物理的に複写することができる。微細レンズ構造をその内部に複製することができる材料は、限定を伴うことなしに、ホットエンボス加工及び成形プロセス用のポリカーボネート及びポリメチルメタクリレート(PMMA)などの熱可塑性ポリマー及び鋳造プロセス用の熱又は放射線によって硬化可能なアクリル化エポキシ材料を含む。好ましいプロセスにおいては、微細レンズ配列は、鋳造によって、PETなどの担持体ポリマー薄膜に塗付されたUV硬化可能な被覆内に複製される。
【0038】
分かり易くするために、以下の例及び実施形態においては、球面微細レンズの使用について説明する。
【0039】
モアレ拡大の現象を生成し、かつ、移動する画像の生成を可能にするために、ピッチ不整合を微細画像配列と微細レンズ配列との間に導入する。1つの方法は、実質的に同一のピッチを有する微細レンズ及び微細画像配列を有するというものであり、この場合に、ピッチ不整合は、微細画像と微細レンズ配列との間に小さな回転ミスアライメントを導入することによって実現される。微細画像と微細レンズ配列との間の回転ミスアライメントの程度は、好ましくは、15°〜0.05°の範囲であり、これは、結果的に、微細画像配列の〜4×−1000×という拡大範囲をもたらす。更に好ましくは、回転ミスアライメントは、2°〜0.1°の範囲であり、これは、結果的に、微細画像配列の〜25×−500×という拡大範囲をもたらす。
【0040】
又は、この代わりに、微細画像配列及び微細レンズ配列は、実質的に完全な回転アライメント状態にあるが、わずかなピッチ不整合を有する。わずかなピッチ不整合は、25%〜0.1%の範囲の微細レンズ配列との関係における微細画像配列のピッチの比率増大/減少と等しく、これは、結果的に、微細画像配列の〜4×−1000×という拡大範囲をもたらす。更に好ましくは、微細レンズ配列に対する微細画像配列のピッチの比率増大/減少は、4%〜0.2%の範囲であり、これは、結果的に、微細画像配列の〜25×−500×という拡大範囲をもたらす。
【0041】
わずかなピッチ不整合とわずかな回転ミスアライメントとの組合せを使用することによって、モアレ拡大の現象を生成すると共に移動する画像の生成を可能にすることもできる。
【0042】
配列10、11と球面レンズ配列22との間のピッチ不整合の結果として、(図3に示されているように)異なる深度において微細画像のモアレ拡大が生成される。
【0043】
実現される拡大の程度は、M. Hutley、R Hunt、R Stevens、及びP Savanderによる“The Moire magnifier”(Pure Appl. Opt. 3(1994)、133〜142頁)において導出されている式によって規定される。
【0044】
この式の関係する部分を要約すれば、微細画像ピッチ=Aであり、かつ、微細レンズピッチ=Bであると仮定したときに、拡大Mは、次式によって得られる。
M=A/SQRT[(Bcos(θ)−A)2−(Bsin(θ))2
ここで、θは、2つの配列の間の回転角に等しい。
A≠Bであり、かつ、cos(θ)≒1及びsin(θ)≒0となるように、θが非常に小さい場合には、次式のとおりである。
M=A/(B−A)=S/(1−S)
ここで、S=B/Aである。
しかしながら、M>>10というようにMが大きい場合には、S≒1でなければならず、したがって、次式が得られる。
M≒1(1−S)
【0045】
表面プレーンに対する合成画像の深度は、焦点距離fのレンズのプレーンから距離vに位置する画像の拡大に関係するなじみ深いレンズ等式から導出される。これは、次式のとおりである。
M=v/f−1
又は、通常は、v/f>>1であるため、次式が得られる。
M≒v/f
したがって、合成的に拡大された画像の深度vは=M*fである。
【0046】
図2A〜図2Cは、第1配列10に対して異なる見当合わせ位置にある第2配列11を示している。重要な点は、第1及び第2配列要素又はアイコン10A、11Aの設計及び選択肢は、1つの配列の位置がもう1つの配列に対して変化した際に、情報、内容、象徴的関連性、又は審美的外観が大きく変化しないようなものになっている、すなわち、2つの配列は、見当合わせの影響を受けにくいか、又は非常に好ましい見当合わせ要件を有しているということである。第2配列11は、第1配列10によって見にくくなっているか又は遮られているため、例えば、額面金額の又は英数字のシンボルなどの特に情報を有するアイコンタイプは、第2配列11の前面に位置していことから可視状態になっている第1配列10内に配置されることが好ましいことに留意されたい。更には、図2に示されている例においては、第2配列11のそれぞれの単位セル11Aは、2つの同一のアイコン、すなわち、大きい星と小さい星から構成されており、この結果、情報の観点において、それぞれの単位セル内に情報の冗長性が存在している。この冗長性特性は、2つの配列の間のなんらかの相対的な見当合わせ状態において、第1配列のアイコンパターン(5)が大きな星の配列を実質的に見にくくした場合に、第1配列からの著しい妨害又は干渉を伴うことなしに、小さな星のアイコン配列を容易に可視状態にすることができるということを意味している。この結果、観察者は、偏移した表面プレーンの背後又は前面における所与の深度に位置した赤色の5の第1パターンと、異なる画像深度においてこのパターンの背後に位置した青色の(50%だけ大きく、かつ、50%だけ小さい)星の第2パターンと、を有する2つの合成的に拡大されたアイコン配列をはっきりと観察することになる。公的認知の観点において、視覚的効果又は外観は、第2パターンに対する第1パターンの位置に伴って大幅に異なることにはならない。
【0047】
図2に示されている画像設計を要約すれば、記述可能な光学可変効果は、第2配列11に対する第1アイコン配列10の見当合わせ状態の制御されていない製造変動の影響を受けにくい(すなわち、実質的に不変である)。これは、本発明の重要な側面である。
【0048】
第1及び第2画像配列10、11に対照的な色を使用することは、観察者が、特に個々の要素が重複している領域内において2つの配列を弁別するのに有用であり、かつ、したがって、このような素子の公的認知及び検証に有用である。色による弁別の利益の理解を促進するために、本発明者らは、図2Dに、従来と同一の2つの画像配列を示しており、この場合には、第1及び第2配列の両方が、単一の色によって提供/又は印刷されている(図2Aと同様に、配列の3つの異なる相対的な位置が示されている)。観察することができるように、第1及び第2パターンの画像要素が重複しているところにおいては、上部の第1配列要素のアウトラインと下部の第2配列要素を弁別することが困難であり、これは、観察者又は閲覧者を混乱させるように作用し、その結果、複数の画像プレーンを有することの有効性が低減される可能性がある。
【0049】
例:
図2及び図10の構造が、40μm又は0.04mmの焦点距離fを有する微細レンズ22から構成されていると仮定しよう。更には、微細レンズ及び支持基材20の両方が、いずれも、1.5の屈折率nを有する材料から構成されていると仮定しよう。この結果、レンズの基部直径Dは、式D≦f*2(n−1)によって制約されることになり、かつ、したがって、D≦0.04*2(1.5−1)であり、これによって、D≦0.04mmが得られる。
この結果、本発明者らは、0.035mmのDの値と、(それぞれの軸に沿って)0.04mmのレンズピッチBと、を選択し、これによって、妥当な最密充てん(レンズ間ギャップ:5μm)を有する1に近いf/#値を有するレンズ配列が結果的に得られることになろう。
【0050】
第1の例において、本発明者らが、第1画像配列10が基材の表面プレーンの背後の2mmに位置することを、そして、第2画像配列11が表面プレーンの背後の6mmに位置することを必要としたと仮定しよう(表面プレーンの背後の画像は、定義によれば虚像であり、かつ、更に詳細な分析は、これらが、微細画像オブジェクト配列に対して非倒立型となることを示している)。
更に説明をわかりやすくするために、本発明者らは、A1y=A1xであり、かつ、A2y=A2xであると仮定する。
M=v/fとすると、f=0.04mmであり、かつ、v=2mmである場合には、M1=2/0.04=50となる。
したがって、M1=A/(B−A)=50であるため、50(B−A1)=A1であり、これによって、A1=B(50/51)が得られることになる。
B=0.04mmを代入することによって、本発明者らは、A1=0.0392mmを得る。
同様に、M2=6/0.04=150であり、かつ、したがって、150(B−A2)=A2であり、これによって、A2=B(150/151)=0.0397mmが得られる。
【0051】
第2の例において、本発明者らが、第2画像配列11が表面プレーンの背後の6mmに位置した状態に留まっている間に、第1画像配列11が表面プレーンの前面の2mmに位置することを必要としたと仮定しよう。
【0052】
以前の例とは対照的に、ここでは、第1画像配列10は、実像の倒立画像を形成することになり、かつ、したがって、拡大の符号が負となる(これは、以前の拡大の式の画像距離vに負の値を割り当てることの結果として生じる)。
したがって、M1=−2/0.04=−50であり、したがって、−50(B−A1)=A1であり、これによって、A1=50/49B=0.0408mmが得られる。
【0053】
したがって、第1画像配列が表面プレーンの前面に位置するためには(すなわち、浮かんでいるように見えるためには)、その微細画像配列がレンズピッチよりも大きなピッチを有する必要があることがわかる。逆に、画像ピッチがレンズピッチを下回っている場合には、画像配列は、表面プレーンの下方に位置しているように見えることになる。
【0054】
図10A及び図10Bは、レンズに基づいたモアレシステムが、それぞれ、反射限定モードにおいて、かつ、反射及び透過の両方において、動作する方法を示す2つの概略図を示している。図10Aは、反射限定のシナリオを示しており、この場合には、図10のものと類似した構造を有する素子30は、実質的に不透明な基材31上に適用されるか、又は接着剤層32を介して不透明な基材(例えば、窓を有するスレッド)に部分的に埋め込まれる。この場合には、観察者によって観察される合成的に拡大された画像は、微細画像配列10、11と、微細画像配列に対する背景として機能する媒体と、から後方散乱された又は反射された光から最終的に導出される。微細画像配列と、これを取り囲む背景媒体との間の反射コントラストが大きいほど、合成的に拡大された画像の視覚的なコントラストは大きくなる。ここで、基材31の色又は反射特性が最適なものではない場合があり、例えば、基材が、低反射率を有するか、又は、微細画像配列のうちの1つと類似した色を有する場合がある。これに対処するために、本発明者らは、図10Aに、微細印刷インターフェイスと、素子を基材31に接合させる接着剤層32との間に配置された任意選択のマスク被覆層33の追加を示している。マスク層33は、通常、限定を伴うことなしに、二酸化チタニウム粒子などの反射性の不透明顔料を樹脂バインダ中に含むことになる。この層の色は、単純に白色とすることもできるし、又は、着色料を追加することによって、このマスク層又は背景反射層が1つ又は両方の微細画像配列と対照をなす望ましい色相を有することを保証することもできる。
【0055】
更なる例においては、マスク被覆と、微細画像配列のうちの1つと、は、明白に同一の色を有しているが、この一方又は他方には、メタメリズム特性が提供されている。この結果、通常の観察状態においては、関連する微細画像配列は、不透明なマスクの背景色を伴ってわずかだけ弁別されるが(弁別可能な場合)、メタメリズムフィルタ下において観察された際には、前述の微細画像配列又は更に適切にはその合成的に拡大された画像は、くっきりと明白になる。又は、この代わりに、蛍光下において観察された際に、光を吸収する微細画像配列が黒色の合成的に拡大された画像を形成するための蛍光背景をマスク被覆が提供するように、蛍光添加剤をマスク被覆に提供してもよい。
【0056】
また、マスク被覆は、耐久性改善層として機能してもよい。
【0057】
メタメリズムインクの例は、英国特許第1407065号明細書に提供されている。再度図2を参照すれば、“5”の第1微細画像配列10は、第1メタメリズムインクによって、かつ、星の背景配列11は、第2メタメリズムインクによって、印刷することが可能であり、この場合に、これらのインクのメタメリズム特性は、昼光下において観察された際には、これらは、同一色として見えるが、濾過光において観察された際には、2つのインクが異なる反射色を有するように見えるようなものになっている。
【0058】
図10Bは、素子30が少なくとも部分的に基材31内の透明なアパーチャ3の上方に適用されるシナリオを示している。セキュリティ素子を保護対象の文書内の透明なアパーチャに内蔵することが周知である(以下を参照されたい)。この場合には、合成的に拡大された画像を基材31内の観察アパーチャ3を通じて反射及び/又は透過状態において観察してもよい。観察者は、位置#1に位置した際には、拡大された画像だけを観察することになる。図10Bにおいて観察することができるように、不透明なマスク被覆は、透過状態においてモアレ拡大システムを観察することができるように、省略されている。また、接着剤層34が良好な光学的透明性を有する(すなわち、低散乱、低吸収である)ことも1つの要件である。
【0059】
印刷された微細画像10A、11Aが、実質的に不透明なインク又は着色剤から形成されている場合には、合成的に拡大された画像は、反射状態において観察された際には、有色となるが、透過状態において観察された際には、高コントラストの基本的に黒色の画像を形成することになることに留意されたい。
【0060】
透過状態において有色画像を観察するための1つの要件は、微細画像がある程度の半透明性を有するというものである。光が、印刷された画像を通過可能でなければならず、かつ、望ましい色が透過可能でなければならない。2つの配列10、11が、したがって、拡大された画像が、重複している領域内においては、加法的な色の混合を有することになることを認識されたい。例えば、2つの配列の色が赤色と青色である場合には、重複領域内において、画像は、マゼンタ色となる。
【0061】
また、観察者が場所#2から素子を観察する場合には、合成的に/モアレ拡大された画像は観察されず、代わりに、微細画像パターンの変更されていない又は直接的な画像が観察されることに留意されたい。
【0062】
代替肢として、セキュリティ素子は、図11に示されているように、ミラーに基づいたモアレ素子として製造することもできる。この場合には、球面微細レンズ配列22が、透明なポリマー基材20の1つの表面上に形成された球面又は非球面凹面鏡配列40によって置換される。もう1つの表面には、従来同様に、印刷された微細画像配列10、11が設けられる。
【0063】
凹面鏡の焦点距離は、その曲率半径Rの半分に等しく、かつ、したがって、ミラー基部の直径の4分の1に近接した制限最小値を有することができることに留意されたい。要するに、所与の基部直径において、ミラーの焦点距離及びF値は、(1.5という一般的な屈折率を仮定した場合に)等価なレンズの値の4分の1となろう。ただし、F値の低減は、焦点深度の低減と等しいことから、実際には、多くの場合に、2Rを格段に下回るミラー基部直径を有することが望ましくなる。
【0064】
例えば、先程引用された好ましい素子厚みを検討することによって、本発明者らは、ミラーの焦点距離が40μmとなることを必要とすることになり、この場合に、これは、ミラーの半径Rが80μmという値を有することを必要とし、かつ、したがって、160μmに近接する最大理論直径と、したがって、F値f/#=0.25mmと、を必要とする。
【0065】
この構造は、反射モードにおいてだけ観察することを意図しており、かつ、したがって、不透明な基材上への適用(ストリップ及びパッチ)又は不透明な基材への部分的な埋め込み(窓を有するスレッド)に最も適している。レンズシステムと同様に、印刷された微細画像は、ミラーシステムの焦点深度又は視野によって決定される精度においてミラーの焦点面と一致しなければならない。
【0066】
極めて重要なことには、まず、プレーン1の微細画像配列10を印刷受容層21又は基材に適用し、次いで、この後に、プレーン2の微細画像配列11を適用しなければならない。この結果、微細画像の第2プレーンの前面に位置することから、微細画像の第1プレーン1の反射画像が可視状態となることが保証され、この画像の第1プレーンは、合成的に拡大された画像を生成する。
【0067】
また、入射光は、ミラー配列によってコリメート光として反射される前に、印刷された微細画像配列10、11を通過するか又は透過しなければならないため(すなわち、空間的に変調されなければならないため)、印刷微細画像が実質的に不透明である場合には、合成的に拡大された画像は、ミラー背景によって提供されるメタメリズム色相に対して黒っぽい色又は色相を帯びることになる。合成的に拡大された画像がその対応する微細画像配列の色を有するように見えるためには、微細画像は、少なくとも部分的に半透明である必要がある。微細画像が半透明の程度が高いほど、合成画像の色は明るくなるが、背景に対する画像コントラストの低減という犠牲を払うことになる。
【0068】
ミラー上の金属被覆がアルミニウムなどの「白色」反射器である場合には、合成画像を取り囲む背景の色相又は色は、見かけ上、銀‐白色又は無色である。ただし、銅又はその合金などのその他の手頃な価格の有色金属を使用してもよいことを認識されたい。銀、金、プラチナ、クローム、ニッケル、ニッケル−クローム、パラジウム、すずなどのその他の金属を使用してもよい。
【0069】
すべての例において、素子が傾斜した際に、“5”アイコン10Aは、背景11に対して移動するように見えることになる。
【0070】
それぞれのケースにおいて、微細レンズ配列22又は凹面鏡配列40は、ポリマー基材20内に一体的に成形することが可能であり、又は、例えば、注型硬化又はこれに類似したものによって、基材20の表面上に形成することもできる。
【0071】
第2の例が図5及び図6に示されている。これは、背景画像配列50が、単位セル52Aによって規定された一連の重複した青色の円5によって規定されていることを除いて、以前の例に類似している。前景配列10は、従来通りである。
【0072】
図7〜図9に示されている第3の例においては、更なる背景層が設けられている。すなわち、微細レンズ配列又は凹面鏡配列が、(図10及び図11におけるように)基材20の1つの表面上に設けられ、かつ、次いで、青色の円52の第2の画像要素配列50が基材の反対側の表面上に印刷される。次いで、緑色の円62の第3配列60が青色の円52の配列50上に印刷される。単位セル53A、62Aと、これらの第2及び第3層の配列の各部分と、が図8に更に詳細に示されている。
【0073】
青色の円52及び緑色の円62のピッチは、モアレ拡大された画像が、異なる深度に位置するように(青色の円52の下方に緑色の円62が位置するように)見えると共に、“5”アイコン10A(図面には示されていない)に対して異なる深度に位置するように、選択されている。この深度の違いの効果は、それぞれ、セキュリティ素子に対する垂線の左側において、アライメントした状態において、かつ、右側において、観察された際のセキュリティ素子の外観を示す図9において観察することができる。図9A〜図9Cにおいて観察することができるように、青色及び緑色の円は、相互の関係において動きしているように見える。更には、“5”アイコン10Aは、円52、62とは異なるピッチに位置しており、かつ、これらの円に対して異なる深度に見え、かつ、これらの円に対して移動することになる。
【0074】
1つのケースにおいては、相対的なピッチは、“5”アイコン10Aが、深度方向において、円52と円62との間に見えるように、選択されており、その他の例においては、“5”アイコン10Aは、両方の円52及び62の上方に見える。
【0075】
図18、図19、及び図20は、背景画像配列の更なる例を示している。図18においては、配列は、一般的な線パターンであり、かつ、図19及び図20においては、配列は、幾何学的形状の配列である。このような一般的なパターンは、背景パターンの各部分が第1画像配列によって隠蔽された場合に、多冗長性の利点を提供し、かつ、第1画像エリアと背景画像配列との間における見当合わせの要件も存在していない。
【0076】
図12Aは、基材上に画像要素を印刷するための装置の一部分を示している。図12に示されている装置は、インク貯蔵部74に対してロールチェーン72を介して結合されたインキングロール70を有する。インクは、ロール70によって、関係する配列の微細画像要素に対応する突出した印刷要素78を担持する印刷ロール76上に転写される。基材20は、印刷ロール56とインプレッションローラー80との間に供給され、かつ、画像要素が基材20上に印刷される。
【0077】
この装置の下流には、画像要素の次の配列を印刷するために、図12Aに示されているものに類似した第2装置が設けられる。
【0078】
図12Bは、画像要素を印刷するための代替装置を示している。インクは、ロール70によって、関係する配列の微細画像要素に対応する凹入した印刷要素を担持する印刷ロール82上に転写される。ドクタブレード84が、接触し、かつ、インク又は着色剤を印刷ローラー82の非凹入エリアから除去する。基材20は、印刷ローラー82とインプレッションローラー80との間に供給され、かつ、画像要素が基材上に印刷される。この装置の下流には、画像要素の次の配列を印刷するために、図12Bに示されているものに類似した第2装置が設けられる。
【0079】
本発明においては、2つの微細画像配列の間に見当合わせの要件が存在しておらず、かつ、したがって、2つの配列をインラインで印刷する必要はなく、かつ、第2配列は、第2のオフラインプロセスを使用して印刷することができる。
【0080】
微細レンズ又は微細凹面鏡は、注型硬化、成形、又はこれらに類似したものによって、基材20の反対表面上に設けられる。
【0081】
上述の例においては、微細画像要素は、基材上に印刷することによって設けられている。画像要素の一部又はすべてをレリーフ構造体として設けることも可能であり、かつ、これらのいくつかの例が図13のA〜Jに示されている。これらの図において、“IM”は、画像を生成するレリーフの部分を示しており、“NI”は、画像を生成しない部分を示している。
【0082】
図13のAは、エンボス加工された又は凹入した画像要素を示している。図13のBは、デボス加工された画像要素を示している。図13のCは、格子構造体の形態を有する画像要素を示しており、図13のDは、蛾の目(moth−eye)又はその他の微細ピッチ格子構造体を示している。
【0083】
これらの構造体は、組み合わせることができる。例えば、図13のEは、凹部エリア内において格子によって形成された画像要素を示しており、図13のFは、デボス加工されたエリア上における格子を示している。
【0084】
図13のGは、粗いエンボス加工の使用を示している。
【0085】
図13のHは、エンボス加工されたエリア上における印刷の提供を示しており、図13のIは、“Aztec”形状の構造体を示している。
【0086】
図13のJは、インクが充填された凹部を示している。
【0087】
上述の素子構造の様々な実施形態は、既知の方法によって、プラスチック又は紙の基材に内蔵するために、パッチ、フォイル、ストライプ、ストリップ、又はスレッドに切り裂くか又は切断することができる。
【0088】
一実施形態においては、本発明は、窓を有するスレッドとして証券用紙に内蔵することができる。
【0089】
更なる例においては、セキュリティ素子は、1つ又は複数のその他の光学セキュリティ機能をも含む。この例が図14に示されている。この例においては、モアレ拡大器素子30は、図2及び図10を参照して説明したように形成されている。また、このセキュリティ素子は、いくつかのホログラム画像生成構造体100をも含む。これらのホログラム画像構造体100は、微細レンズと同一の樹脂内に鋳造又はエンボス加工することができるが、同様に、微細レンズを鋳造するのに適したものとホログラム構造体をエンボス加工するのに適したものという2つの異なる樹脂を見当の合った状態において適用することもできる。又は、この代わりに、ホログラム構造体は、微細レンズとは反対のポリマー層の面に位置したポリマーラッカー内にエンボス加工することもできる。
【0090】
ホログラム生成構造体100は、ホログラム又はDOVID画像要素の形態を有することができる。図14に示されているラベル構造においては、微細レンズと、2つの拡大された画像配列の可視化されたものと、は、中央の水平な帯又はラベルの領域内に配置されており、ホログラム生成構造体100は、両側部に配置されている。ただし、この例は、純粋に例示を目的としたものであり、かつ、例えば、モアレ拡大素子30が両側部上の1つ又は複数の領域内に設けられた状態において、ホログラム生成構造体100を中央の帯又はストリップ内に配置することもできることを理解されたい。又は、この代わりに、モアレ拡大された画像と、ホログラム生成構造体によって提供される画像と、を、単一画像のそれぞれの提供コンポーネントによって、単一画像に統合することもできる。図15はこのような統合された設計の一例を示している。この場合には、ホログラム生成構造体101は、巻物(scroll)を形成しており、かつ、この巻物の中間部分において、ホログラム構造体は、この場合には移動する“5”及び星であるモアレ拡大された画像を生成するために、モアレ拡大素子30によって置換されている。
【0091】
ホログラム構造体100、101の場合には、これらは、任意の従来の形態を有することが可能であり、かつ、完全に又は部分的に金属被覆することができる。又は、この代わりに、反射改善金属被覆層をZnSなどの実質的に透明な無機高屈折率層によって置換することもできる。
【0092】
どのような構成が規定されるのかとは無関係に、図14及び図15において2つの異なる光学効果に対して割り当てられている個々の領域は、それらの効果の明瞭な可視化を促進するために十分に大きいことが有利である。
【0093】
以上の図面に示されているセキュリティ素子は、保護対象文書に接触する素子の外側表面に対する感熱又は感圧接着剤の適用を通常必要とする文書を保護するためのラベルとして適用されるのに適している。更には、任意選択の保護被覆/ワニスを素子の露出した外側表面に適用することもできる。保護被覆/ワニスの機能は、セキュリティ基材上への転写の際及び流通の際の、素子の耐久性を増大させることである。
【0094】
ラベルではなく転写要素の場合には、セキュリティ素子は、好ましくは、担持体基材上に予め製造され、かつ、後続の作業ステップにおいて基材に転写される。セキュリティ素子は、接着剤層を使用して文書に貼付することができる。接着剤層は、セキュリティ素子に、又はその素子が貼付される保護対象文書の表面に、適用される。露出した層、又はこの代わりに担持体層が、外側保護層として機能する構造の一部として留まることができるため、転写の後に、担持体ストリップを除去し、これによって、セキュリティ素子を残すことができる。微細光学構造体を有する注型硬化素子に基づいてセキュリティ素子を転写するための適切な方法が欧州特許第1897700号明細書に記述されている。
【0095】
また、本発明のセキュリティ素子は、セキュリティストリップ又はスレッドとして内蔵することもできる。いまや、セキュリティスレッドは、世界の多くの通貨だけでなく、証票、パスポート、トラベラーズチェック、及びその他の文書にも、存在している。多くの場合に、スレッドは、部分的に埋め込まれた方式又は窓を有する方式によって設けられており、この場合に、スレッドは、紙の内外に編み込まれているように見える。所謂窓を有するスレッドを有する紙を製造する1つの方法は、欧州特許第0059056号明細書において見出すことができる。欧州特許第0860298号明細書及び国際特許出願公開第2003/095188号パンフレットは、幅の広い部分的に露出したスレッドを紙の基材に埋め込むための様々な方法について記述している。更なる露出エリアが本発明などの光学的に変化可能な素子の良好な使用法を許容するため、通常は2〜6mmの幅を有する幅広のスレッドが特に有用である。図10及び図11に示されている素子構造体は、透明な無色の接着剤の層を素子の外側表面のいずれか又は両方に適用することによって、スレッドとして使用することができる。微細レンズとの接触状態にある接着剤の光学特性の慎重な選択が重要である。接着剤は、微細レンズの材料よりも低い屈折率を有することを要し、かつ、微細レンズと接着剤との間の屈折率の差が大きいほど、レンズの背面焦点距離が短くなり、かつ、したがって、最終的なセキュリティ素子が薄くなる。
【0096】
本発明のセキュリティ素子は、いずれかの層に検出可能な材料を導入することによって、又は、別個の機械可読層を導入することによって、機械によって判読可能なものにすることができる。外部刺激に対して反応する検出可能な材料は、限定を伴うことなしに、蛍光性材料、燐光性材料、赤外線吸収材料、サーモクロミック材料、フォトクロミック材料、磁性材料、エレクトロクロミック材料、導電性材料、及びピエゾクロミック材料を含む。
【0097】
薄膜干渉要素、液晶材料、及びフォトニック結晶材料などの更なる光学的に変化可能な材料をセキュリティ素子に含むことができる。このような材料は、フィルミック層の形態であってもよく、又は、印刷による適用に適した着色された材料であってもよい。
【0098】
本発明のセキュリティ素子は、不透明な層を有してもよい。
【0099】
図16及び図17は、本発明のセキュリティ素子に内蔵された金属被覆が剥離された(demetallised)画像の形態を有する更なるセキュリティ機能を示している。素子30の拡大された画像配列が、この素子の中央の帯内において観察される。これは、強力なレンチキュラータイプのアニメーションに起因した第1セキュリティ効果を提供する。図17において観察することができるように、断面A−Aに沿った図16内に示されている機能の構造は、図10に示されているとおりである。モアレ拡大を示す中央の帯の外の領域においては(断面B−Bに沿って観察されるように)、印刷受容層21は、金属被覆されている110。金属層の各部分115の金属被覆を剥離させることによって、金属被覆が剥離された画像を規定しており、かつ、これによって、反射光において観察可能であるが更に好ましくは透過光においても観察可能である金属被覆が剥離された標識(indicia)の生成を可能にしている。
【0100】
更なる例においては、かつ、図11に示されているミラーに基づいたモアレの例を参照すれば、微細ミラーを形成する金属被覆された層は、微細ミラーを超えて延在してもよく、かつ、次いで、この層の各部分の金属被覆を剥離させて金属被覆が剥離された画像を規定することができる。
【0101】
制御され且つ明確に規定されたエリア内に金属が存在していない部分的に金属被覆された/金属被覆が剥離された薄膜を製造するための1つ方法は、米国特許第4652015号明細書に記述されているものなどのレジスト及びエッチング法を使用して領域の金属被覆を選択的に剥離させるというものである。類似の効果を実現するためのその他の技法としては、例えば、アルミニウムをマスクを通じて真空蒸着させることが可能であり、又は、アルミニウムをプラスチック担持体の複合ストリップから選択的に除去することが可能であり、かつ、アルミニウムをエキシマレーザーを使用して選択的に除去することができる。又は、この代わりに、Eckart社が販売するMetalstar(登録商標)インクなどの金属質の外観を有する金属効果インクを印刷することによって、金属質の領域を設けてもよい。
【0102】
金属質層の存在を使用して機械可読暗色磁性層の存在を隠蔽することができる。磁性材料を素子に内蔵する際には、磁性材料を任意の設計において適用することができるが、一般的な例は、暗号化された構造体を形成するための磁気トラムラインの使用又は磁気ブロックの使用を含む。適切な磁性材料は、酸化鉄顔料(Fe23又はFe34)、バリウム又はストロンチウムフェライト、鉄、ニッケル、コバルト、及びこれらの合金を含む。この文脈において、「合金」という用語は、ニッケル:コバルト、鉄:アルミニウム:ニッケル:コバルト、及びこれらに類似したものなどの材料を含む。ニッケルのフレーク材料を使用することが可能であり、更には、鉄のフレーク材料が適している。一般的なニッケルのフレークは、5〜50μm(ミクロン)の横寸法と、2μm(ミクロン)未満の厚さと、を有する。一般的な鉄のフレークは、10〜30μm(ミクロン)の範囲の横寸法と、2μm(ミクロン)未満の厚さと、を有する。
【0103】
代替機械可読実施形態においては、透明な磁性層を素子構造内の任意の位置に内蔵することができる。所定のサイズを有すると共に磁気層が透明な状態に留まる濃度において分布した磁性材料の粒子の分布を含む適切な透明磁性層が国際特許出願公開第2003/091953号パンフレット及び国際特許出願公開第2003/091952号パンフレットに記述されている。
【0104】
更なる例においては、本発明のセキュリティ素子は、その素子が文書の透明領域に内蔵されるように、セキュリティ文書に内蔵してもよい。セキュリティ文書は、紙及びポリマーを含む任意の従来の材料から形成された基材を有してもよい。当技術分野においては、これらのタイプの基材のうちのそれぞれの基材内に透明な領域を形成するための技法が知られている。例えば、国際特許出願公開第1983/00659号パンフレットは、基材の両面上に不透明被覆を有する透明基材から形成されたポリマー銀行券について記述している。基材の両面上の局所領域内において不透明被覆を省略し、透明領域を形成している。
【0105】
欧州特許第1141480号明細書は、紙の基材内に透明領域を製造する方法について記述している。紙の基材内に透明領域を形成するためのその他の方法は、欧州特許第0723501号明細書、欧州特許第0724519号明細書、欧州特許第1398174号明細書、及び国際特許出願公開第2003/054297号パンフレットに記述されている。
【0106】
本発明の微細画像配列のうちの1つ又は複数の配列は、非可視放射に対して可視的に応答する材料を有するインクによって印刷してもよい。当業者には、蛍光又は燐光特性を有する材料を含むものとして、ルミネセント材料が知られている。また、フォトクロミック材料及びサーモクロミック材料などの非可視放射に対して可視的に応答するその他の材料の使用も周知である。例えば、拡大された配列のうちの1つだけが通常の昼光条件において可視となり、第2の拡大された画像がUV照明下においてだけ可視になってもよいであろう。又は、この代わりに、2つの拡大された配列が、通常の昼光条件においては、同一色に見え、かつ、フィルタを使用して観察された際には、又は、UV照明下において観察された際には、異なる色に見えることもできる。
【0107】
図2の例を参照すれば、星の第2の背景配列11は、通常の照明条件下においては非可視状態にあるがUV照明下においては可視状態にあるインクで印刷することが可能であり、この場合には、拡大された星は、UV照明下においてだけ観察されることになる。又は、この代わりに、拡大された画像の色の変化がUV放射下において観察されるように、第1及び第2配列10、11のいずれか又は両方を、UV放射に露出した際に色を変化させるインクで印刷することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材を有するモアレ拡大素子であって、前記透明基材は、
i)第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、前記合焦要素は、焦点面を規定している、微細合焦要素の配列と、
ii)第1色の、かつ、前記合焦要素の前記焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第1の配列と、
iii)前記第1色とは異なる第2色の、かつ、前記合焦要素の前記焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第2の配列と、
を担持しており、
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素の第1及び第2配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、前記微細合焦要素の配列が前記微細画像要素の第1及び第2配列のそれぞれと協働し、モアレ効果に起因してそれぞれの配列の前記微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するように、かつ、前記微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンが前記微細画像要素の第2配列の拡大されたバージョンによって規定された背景を伴って観察されるように、なっており、前記微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンは、前記素子が傾斜した際に、前記背景に対して動きを示し、かつ、前記配列の間のピッチ不整合は、前記第1配列の要素の拡大されたバージョンが前記第2配列の要素の拡大されたバージョンの上方又は下方に見えるように、選択されている、素子。
【請求項2】
前記微細合焦要素は、球面レンズレット、円柱形レンズレット、平凸レンズレット、両凸レンズレット、フレネルレンズレット、及びフレネルゾーンプレートなどの微細レンズを有する請求項1に記載の素子。
【請求項3】
それぞれの微細レンズは、1〜100μm(ミクロン)、好ましくは1〜50μm(ミクロン)、更に好ましくは10〜30μm(ミクロン)の範囲の直径を有する、請求項2に記載の素子。
【請求項4】
前記微細合焦要素は、凹面鏡を有する請求項1に記載の素子。
【請求項5】
前記微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンは、前記微細画像要素の第2配列の拡大されたバーションの前面に(又は、上方に)見える請求項1〜4のいずれか一項に記載の素子。
【請求項6】
iv)前記第1及び第2色とは異なる第3色の、かつ、前記微細合焦要素の前記焦点面と実質的にアライメントされたプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第3配列を更に有し、
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素の第3配列のピッチは、これらが協働し、モアレ効果に起因して前記第3配列の画像要素の拡大されたバージョンを生成するように、かつ、前記微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンが前記微細画像要素の第2及び第3配列の拡大されたバージョンによって規定された背景を伴って観察されるように、なっており、前記微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンは、前記素子が傾斜した際に、前記背景に対して動きを示す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の素子。
【請求項7】
前記微細合焦要素の配列及び前記微細画像要素の第1、第2、及び第3配列のピッチは、前記微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンが前記第2及び第3配列の微細画像要素の拡大されたバージョンの間に見えるように、選択されている請求項6に記載の素子。
【請求項8】
前記微細合焦要素の配列及び前記微細画像要素の第1、第2、及び第3配列のピッチは、前記第1配列の画像要素の拡大されたバージョンが前記第2及び第3配列の画像要素の拡大されたバージョンの上方に見えるように、選択されている請求項6に記載の素子。
【請求項9】
少なくとも1つの配列内の、好ましくは、前記第2配列内の、前記微細画像要素は、同一である請求項1〜8のいずれか一項に記載の素子。
【請求項10】
それぞれの配列の前記微細画像要素は、それぞれのその他の配列の前記微細画像要素とは異なっている請求項1〜9のいずれか一項に記載の素子。
【請求項11】
前記第1配列の微細画像要素は、シンボル、幾何学的図形、英数字、ロゴ、及び画像表現などのアイコンを有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の素子。
【請求項12】
前記第2及び/又は第3配列の微細画像要素は、対応する共通の、通常は実質的に均一である背景を規定する請求項1〜11のいずれか一項に記載の素子。
【請求項13】
前記共通の背景は、例えば、平行な(直)線などの線パターン、単純な幾何学的図形、又はギロシェパターンなどの複雑な線構造体によって規定される請求項12に記載の素子。
【請求項14】
前記第1、第2、及び第3配列の微細画像要素は、更に、形状、サイズ、及び向きのうちの1つ又は複数が、相互に異なっている請求項1〜13のいずれか一項に記載の素子。
【請求項15】
前記微細画像要素は、前記基材上に印刷される請求項1〜14のいずれか一項に記載の素子。
【請求項16】
前記微細画像要素は、前記基材上の格子構造体、凹部、又はその他のレリーフパターンとして形成される請求項1〜14のいずれか一項に記載の素子。
【請求項17】
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリプロピレンのうちの1つなどのポリマーを有する請求項1〜16のいずれか一項に記載の素子。
【請求項18】
前記微細合焦要素配列と前記微細画像のプレーンとの間の距離は、1〜50μm(ミクロン)、好ましくは、10〜30μm(ミクロン)の範囲である請求項17に記載の素子。
【請求項19】
前記微細画像要素の拡大されたバーションと共に観察される更なる背景を提供するために、前記微細画像要素の配列の下方に配置されたマスク層を更に有する請求項1〜18のいずれか一項に記載の素子。
【請求項20】
前記マスク層は、反射性不透明顔料及び蛍光材料のうちの1つ又は両方を含む請求項19に記載の素子。
【請求項21】
前記マスク層と、前記微細画像配列のうちの1つと、は、明白に同一色であるが、前記マスク層及び前記微細画像のうちの一方又は他方には、メタメリズム特性が提供されている請求項19又は20に記載の素子。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載のセキュリティ素子。
【請求項23】
前記モアレ拡大素子に隣接して配置された又はこれと統合された1つ又は複数の光学的に変化可能な効果を生成する構造体を更に有する請求項22に記載のセキュリティ素子。
【請求項24】
セキュリティスレッド、ラベル、又はパッチとして形成された請求項22又は23に記載の素子。
【請求項25】
前記素子は、銀行券、身分証明書、又はこれらの類似物のようなセキュリティ文書の透明な窓内に設けられる、請求項22又は23に記載のセキュリティ素子。
【請求項26】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の光学素子が設けられた物品。
【請求項27】
銀行券、小切手、パスポート、身分証明書、正規品証明書、収入印紙、及びセキュリティ価値又は身元に関するその他の文書のうちの1つを有する請求項26に記載の物品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−521158(P2013−521158A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555490(P2012−555490)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050404
【国際公開番号】WO2011/107788
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(598151304)ドゥ ラ リュ インターナショナル リミティド (20)
【Fターム(参考)】