説明

モアレ拡大素子

【課題】セキュリティ素子として使用できるモアレ拡大素子を実現すること。
【解決手段】本発明によるモアレ拡大素子は透明な基材を有し、この基材は、第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、これらの合焦要素は焦点面を規定している微細合焦要素の配列と、第1色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致したプレーン内に配置された微細画像要素の対応する第1配列と、第1色とは異なる第2色の、かつ、合焦要素の前記焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第2配列であって、第1配列から横方向にオフセットしている第2配列と、を担持している。非零幅の割込ゾーンが、第1の微細画像配列の拡大されたバージョンと、第2の微細画像配列の拡大されたバージョンとの間に知覚され、いずれの微細画像配列の拡大されたバージョンも呈示されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、銀行券、小切手、パスポート、身分証明書、正規品証明書(certificate of authenticity)、収入印紙、並びに、価値又は身元を保証するその他の文書などのセキュリティ文書及びその他の有価物品において使用されるセキュリティ素子などのモアレ拡大素子に関する。また、本発明は、包装又はこれに類似したものに使用される光学素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
モアレ拡大は、多年にわたってセキュリティ素子の原理として使用されている。いくつかの例が国際特許出願公開第1994/27254号パンフレット及び欧州特許出願公開第1695121号明細書に記述されている。このような素子においては、焦点面を規定する微細合焦要素の規則的な配列が、合焦要素の焦点面と実質的にアライメントされたプレーン内に配置された画像要素の対応する配列の上方に設けられている。画像要素の配列のピッチ又は周期性は、合焦要素のピッチ又は周期性とわずかに異なるように選択されており、かつ、この不整合は、画像要素の拡大されたバージョンが生成されることを意味している。
【0003】
拡大倍率は、周期性又はピッチの間の差によって左右される。微細レンズ配列と微細画像配列との間のピッチ不整合は、微細レンズ配列及び微細画像配列が回転ミスアライメントを有するように、微細レンズ配列に対して微細画像配列を回転させることによって、又はこの逆を実行することによって、簡便に生成することもできる。回転ミスアライメント又はわずかなピッチ不整合は、結果的に、眼が画像の異なる部分をそれぞれの隣接するレンズ内において観察することをもたらし、この結果、拡大された画像が得られる。そして、眼がレンズ/画像配列に対して移動した場合には、画像の異なる部分が観察され、これによって、画像が異なる位置に存在しているという印象がもたらされる。眼が滑らかに移動した場合には、一連の画像が観察され、これによって、画像が表面に対して移動しているという印象がもたらされる。ピッチ不整合を回転ミスアライメントによって生成した場合には、拡大された画像の配列が微細画像配列に対して回転し、かつ、この結果、拡大された画像の見かけの動きを結果的にもたらすパララックス効果も回転することになる。これをスキューパララックスとして知られている。モアレ拡大素子内において観察される拡大された画像の拡大及び回転に対するピッチ不整合及び回転ミスアライメントの影響については、M. Hutley,R Hunt、R F Stevens及びP Savander,“The Moire Magnifier”,Pure Appl. Opt. 3(1994),133〜142,IOP Publishing Limited社、に記述されている。
【0004】
動き及び向きの変化の特性については、モアレの理論から説明することが可能であり、これについては、I. Amidror,“The theory of the Moire phenomemon”(ISBN 0−7923−5949−6),Kluiver Academic Publishers社,2000年、に詳細に記述されている。2つの周期的な構造体のモアレ効果は、2つの構造体の周波数ベクトルを検討することによって説明/予測することができる。周波数ベクトルの向きは、周期性の方向を表しており、かつ、長さは、周波数(すなわち、1/周期)を表している。このベクトルは、そのデカルト座標(u,v)によって表現され、ここで、u及びvは、周波数の水平及び垂直成分である。
【0005】
関係する原理については、国際特許出願公開第2005/106601号パンフレットに更に詳細に記述されている。
【0006】
通常、合焦要素は、微細レンズ又は微細ミラーを有し、かつ、画像要素は、単純なアイコン又はこれに類似したものによって規定されている。
【0007】
また、複数の画像をモアレ拡大素子内に設けることも知られている。例えば、国際特許出願公開第1994/27254号パンフレットは、素子の傾斜に対する画像切り替え効果を示している。国際特許出願公開第2005/106601号パンフレットは、素子が傾斜したとき、2つの拡大された画像の組を異なる速度で移動させる方法について記述している。別の例が国際特許出願公開第2009/139396号パンフレットに記述されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ただし、既知の素子に伴う問題点は、異なる色において複数の画像を得る多色効果を実現することが非常に困難であるという点にある。これは、主には、相互に見当が合っているが異なる色の2つの微細画像配列を印刷することの難しさに起因している。その理由は、これには、別個の印刷実行が必要となるためである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、モアレ拡大素子は透明な基材を有し、この基材は、
i)第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、これらの合焦要素は、焦点面を規定している、微細合焦要素の配列と、
ii)第1色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致したプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第1配列と、
iii)第1色とは異なる第2色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第2配列であって、第1配列から横方向にオフセットを有する第2配列と、
を担持しており、
微細合焦要素及び微細画像要素の第1及び第2配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、微細合焦要素の配列が微細画像要素の第1及び第2配列のそれぞれと協働してモアレ効果に起因してそれぞれの配列の微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するように、かつ、非零幅の割込ゾーンは、第1微細画像配列の拡大されたバージョンと、第2微細画像配列の拡大されたバージョンとの間に知覚される。
【0010】
二つの異なる横方向にオフセットした配列に異なる色をした微細画像を配置し、配列の二つの拡大されたバージョンを配列の二つの拡大されたバージョンの間に知覚されるように割り込みゾーンを設定することによって、二つの色の間の横方向の位置ずれ+/−Σから生じる光学散乱効果を制御し、受容可能なレベルまで減少させるか、又は完全に除去することができる。したがって、素子は、強力で即時に認識できる視覚効果を与える多色の外観を与える。したがって、視覚効果が極めて明白であり、容易に説明でき、かつ偽造の企てから容易に区別できるため、素子は(例えば物品の真正性を照明するための)セキュリティ素子として特に良く適している。素子はまた、強化された装飾的品質も提供する。
【0011】
割込ゾーンはいくつかの方法で生成することができる。どのように割込ゾーンが生成されたかによって、横方向にオフセットした微細要素配列自身が互いに部分的に重複してもよいし、しなくてもよい。しかし、好適な第1実施形態においては、微細画像要素がない非零幅の境界領域によって、微細画像要素の第1配列は微細画像要素の第2配列から横方向に隔てられており、そのため観察者が知覚する意図的なゾーンを生じさせる。
【0012】
微細画像要素がない境界領域の幅は、境界領域を横断する方向のいずれかの微細画像要素配列の最大反復距離より大きいことが有利である。裸眼で容易に見える尺度の位置合わせ誤差Σ(例えば、約75〜100μm(ミクロン)より大きい)を扱う、特に好適な場合、微細画像要素がない境界領域の幅は、第2微細画像要素配列に対する第1微細画像要素配列の位置合わせ誤差Σよりも大きい。境界領域幅は、位置合わせ誤差よりも数倍大きいことが有利である。最も好適には、微細画像要素がない境界領域の幅は、実質的に次の式を満足する幅2Δ(「設計幅」)を有するように設計される。
(2Δ−Σ)/(2Δ+Σ)=ξ≧0.8
素子が微細画像要素配列のいずれかの側に二つのこのような境界領域を含む例においては、この基準によって境界領域が観察者に対して実質的に対象又は少なくとも互いに類似であることが確実になる。
【0013】
位置合わせ誤差が、人間の目が容易に解像できる大きさより小さいとき(例えば、Σ≦≒50〜100μm(ミクロン))、微細画像要素がない境界領域の設計幅2Δは、約0.5Σより大きいか等しいことが望ましい。例えば、境界ゾーンの幅が位置合わせ誤差の値に近い、例えば2Δ=Σ、であることを確かめることがより視覚的に有利である。
【0014】
位置合わせ誤差Σは、微細画像要素が形成される製造過程、例えば印刷に関係する。通常、Σは製造過程の平均最大位置合わせ誤差の尺度である(これは経験的に決定してもよいし、既知であってもよい)。
【0015】
好適な例において、微細画像要素のない境界領域の幅は25μm(ミクロン)と3000μmの間であり、当該範囲の下限は好適に50μm、より好適には100μmであり、当該範囲の上限は好適には1500μm、より好適には1000μm、さらに好適には300μm、最も好適には150μmである。
【0016】
微細画像要素がない境界領域は空白であってもよいが、好適な例においては割込層を有し、該割込層は好適には、均一又はパターン化された印刷又は被覆の形態をとる。割込層が基材と、微細画像要素の第1配列又は第2配列のうち少なくとも一つとの間に配置されると、特に有利である。割込層は、所望であれば、秘密のセキュリティ機能、好適には低倍率拡大下で観察するための図形を有してもよい。
【0017】
別の好適な実施形態において、割込ゾーンは代わりに、微細合焦要素配列を変更することによって生成される。この場合、どのように微細画像配列を配置するかについては制約がなく、微細画像配列は部分的に互いに重複してもよい。好適には、微細合焦要素の規則的な配列は、機能している微細合焦要素がない、非零幅の境界領域によって互いに横方向に間隔を置いた微細合焦要素の第1配列及び第2配列を有する。境界領域は、微細画像要素の第1配列と第2配列との間の遷移を伴って整列しており、それによって観察者が知覚する割込ゾーンを生じる。これは、微細画像要素配列の間の境界ゾーンを提供することの代替として、又は追加で用いてもよい。
【0018】
好適には、微細合焦要素がない境界領域の幅は、個々の微細画像要素の最大寸法より大きい。代替又は追加で、微細合焦要素がない境界領域の幅は、微細画像要素配列のいずれかの最大ピッチより大きい。特に好適な例において、微細合焦要素がない境界領域の幅Δrは、第2微細画像要素配列に対する第1微細画像要素は配列の位置合わせ誤差Σより大きい。微細合焦要素がない境界領域の幅Δrは、次の式によって計算すると有利である。
Δr≧2(Σ+δ)
ここで、δは第1及び第2微細画像配列に対する微細合焦要素配列の位置合わせ誤差である。
【0019】
特に好適な例において、微細合焦要素がない境界領域の幅は、25μm(ミクロン)と3000μmの間であり、当該範囲の下限は好適には50μm、より好適には100μmであり、当該範囲の上限は好適には1500μm、より好適には1000μm、更に好適には300μm、最も好適には150μmである。
【0020】
微細合焦要素配列の境界領域はいくつかの方法で形成することができる。一つの好適な実施形態において、微細合焦要素がない境界領域は当該領域内の微細合焦要素の上に形成された素材の層を有し、該素材は実質的に微細合焦要素の素材と同一の屈折率であり、そのため境界領域内の微細合焦要素は機能しない。代替として、微細合焦要素がない境界領域は微細合焦要素がない領域を含んでもよい。
【0021】
割込ゾーン(したがって、微細画像及び/又は微細合焦要素配列内の境界領域)はまっすぐ(例えば長方形)であってもよいが、これは本質的ではない。好適には、割込ゾーンは直線、曲線、正弦波、矩形波又は階段状である。二つの配列が一つの軸に沿って(しかし、他の軸に沿ってではなく)接触している「組み合う(interlocking)」ゾーン構成も可能である。何故なら、一般に製造過程を通じて、進行方向と垂直な方向には位置合わせが正確に維持できるからである。重要なことは、隣接する配列間において、少なくとも一つの軸に沿って境界領域が存在することであり、当該一つの軸は通常、製造過程を通じて基材が進行する方向に平行な軸である。
【0022】
第1及び第2の微細画像配列の拡大された画像は、同一画像プレーン(すなわち、素子の表面に対して同一の「深度」だけ後又は前)にあるように構成してもよい。しかし、好適な例においては、配列間のピッチ不整合は、第1微細画像配列の拡大されたバージョンが、第2微細画像配列の上又は下に見えるように選択される。
【0023】
素子の視覚効果は、実在する配列のいずれか又は双方と整列している「背景」又は「前景」を提供することによって更に増加させることができる。したがって、好適な例において、素子は合焦素子の焦点面と実質的に一致するプレーンに配置された、微細画像要素の第3配列を有し、該微細画像要素の第3配列は、微細画像要素の第1及び/又は第2配列と少なくとも部分的に重複し、
微細合焦要素及び微細画像要素の第3配列のピッチ並びにその相対位置は、微細合焦要素の配列が微細画像要素の第3配列と協働して、モアレ効果による第3配列の微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するようになっており、
第3配列の微細画像要素の拡大されたバージョンが、第1及び/又は第2配列によって生じる画像の上又は下の画像プレーンにあるように知覚されるように、第3配列のピッチと微細合焦要素配列のピッチとのピッチ不整合は、第1配列のピッチと微細合焦要素配列のピッチとのピッチ不整合、及び/又は第2配列のピッチと微細合焦要素配列のピッチとのピッチ不整合とは異なる。
【0024】
第3配列は、第1及び/又は第2配列とは異なる色をしていてもよく、第3配列が、それと重複する配列と位置合わせをする必要がないため、別個の作業において形成してもよい。
【0025】
素子は、上述の二つの横方向にオフセットした配列(及び重複する配列)だけを含む。しかし、好適な例において素子は、二つの上述の配列を超えて、既に述べた配列のうち一つ又は双方の側に1又は複数の配列だけ延伸する。したがって、好適には素子は、合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーンに配置された微細画像要素の更なる配列を更に有し、微細画像要素の更なる配列は第1及び第2配列から横方向にオフセットしており、
微細合焦要素及微細画像要素の更なる配列のピッチ並びにその相対位置は、微細合焦要素の配列が微細画像要素の更なる配列と協働して、モアレ効果によって配列の微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するように、かつ
非零幅の更なる割込ゾーンが、第1又は第2の微細画像配列の拡大されたバージョンと、更なる微細画像配列の拡大されたバージョンとの間に知覚され、割込ゾーンはどの微細画像配列の拡大されたバージョンも提示しないようになっている。
【0026】
特に好適な例において、配列は素子に沿って交番する。すなわち、「更なる」配列は第1又は第2の配列のいずれかと(少なくとも色が)同一である。例えば、特に好適な実施例において、素子は、第1配列の反復/交番パターン(“R”と呼ぶ)及び第2の色付きの配列(“B”と呼ぶ)並びにR及びG双方と重複する「第3の」微細画像配列によって形成された任意選択の背景色(“G”と呼ぶ)を有する。製造過程において、第1の2色配列/パネルが巻取紙上に交互に印刷され、1機械工程によって横方向のR,B,R,B,R,B交番が与えられ、第3機械工程において任意選択の第3の背景色Gが付着される。R,B,R,B交番はセキュリティ素子自体の上を進み、一例においては素子は、R及びBのパネル(通常パッチとして提供されたとき)若しくはR,B,Rだけ、又は恐らくはB部分の色パターン若しくはその逆を提示する(ストリップ又はスレッド形式で提供されたときだけ)。この例において、「更なる」配列は第1又は第2の配列の一つと同一であり、“R”のうち一つ又は“B”の反復のうち一つのいずれかを形成する。
【0027】
それでも、別の(「更なる」)横方向に間隔を空けた色を加えることも可能である。例えば、第1及び第2が赤及び青であり、第3が黄であるとき、製造過程(例えば巻取紙印刷)において、1機械工程でR,B,Y,R,B,Y,R…の微細画像パネルの横方向交番を印刷する三つの印刷ヘッドを備えることができる(パネルのすべて又はいずれかはまた、上述の任意選択の背景(G)を含んでもよい)。このようにして、更なる配列が第1又は第2の配列と同一の色であるとき、更なる配列は同一の個別の作業において作成することができる。更なる配列が異なる色であるときは、別個の作業(しかし好適には、依然として同一の機械工程)において作成される。
素子が(上記の二つの例のように)交番する一連の配列を含む場合、配列はそれぞれ(連鎖の二つの端部における配列を除いて)、好適には境界領域によって、双方の側の配列から分離される。すなわち、配列はそれぞれ、二つの境界領域に隣り合う。
【0028】
いずれかの配列の微細画像要素は、通常、記号、幾何学図形、英数字、などのようなアイコンを含み、最も好適には情報を提供する。代替として、1又は複数の配列の微細画像要素は、対応する共通の、通常は実質的に統一された背景、好適には線パターン、例えば平行する(直)線、単純な幾何学図形、又はギロシェパターンのような複雑な線構造、を規定してもよい。
【0029】
好適な例においては、微細画像要素は、グラビア、湿式又は乾式リソグラフ印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、及びフレキソ印刷などの任意の適切な印刷プロセスを使用し、基材上に印刷される。ただし、微細画像要素の配列のうちの1つ又は複数の配列は、基材上の格子構造体、凹部、又はその他のレリーフパターンとして形成することもできる。また、国際特許出願公開第2005/106601号パンフレットに記述されているように、反射防止構造体を使用してもよい。
【0030】
微細レンズ及び凹面鏡などの微細合焦要素は、好ましくは、基材表面内へのエンボス加工、注型硬化(cast−curing)、又はこれらに類似したものによって、形成される。好適には、微細合焦要素は球面レンズレット、円柱状レンズレット、平凸レンズレット、両凸レンズレット、フレネルレンズレット及びフレネルゾーンプレートのような微細レンズを含む。各微細レンズは、1〜100μm(ミクロン)、好適には1〜50μm、更に好適には10〜30μmの範囲の直径を有すると有利である。
【0031】
本発明によって生成されるモアレ拡大素子は、2次元(2D)又は1次元(1D)構造体であってよい。球面レンズを使用する2Dモアレ拡大構造体が欧州特許出願公開第1695121号明細書及び国際特許出願公開第1994/27254号パンフレットに更に詳細に記述されている。2Dモアレ拡大素子においては、微細画像は、すべての方向において拡大される。1Dモアレ拡大構造体においては、球面微細レンズ又は微細ミラーが、円筒形の微細レンズ又は微細ミラーの反復配列によって置換される。この結果は、1つの軸だけにおいて、微細画像要素にモアレ拡大が適用されるというものであり、この軸は、ミラーがその曲がり又はレリーフの周期的変動を示す軸である。この結果、微細画像は、拡大軸に沿って強力に圧縮又は拡大解除(de−magnify)されるが、拡大軸に垂直の軸に沿った微細画像要素のサイズ又は寸法は、観察者から見て、実質的に同一であり、すなわち、拡大又は引き伸ばしが発生しない。
【0032】
本発明によって生成されるモアレ拡大素子は、それ自体としてセキュリティ素子を形成することができるが、ホログラム、回折格子、及びその他の光学可変効果生成構造体などのその他のセキュリティ機能との関連において使用することもできる。
【0033】
本発明の光学素子を使用することによって、基材の特性、具体的には、光学素子の対応する特性に影響を及ぼすその厚さ及び柔軟性によって、様々な基材を真贋判定することができる。
【0034】
本発明は、紙、特に、銀行券などの曲がり易い基材の保護において特別な価値を有しており、この場合に、本素子は、パッチ、ストリップ、又はスレッドを規定することができる。本素子の厚さは、銀行券の印刷プロセスにおける紙の連形状(paper ream shape)の変形を回避するために本素子が銀行券内において用いられる方法と、更には、銀行券自体の形態及び柔軟性と、の影響を受けることになるが、本素子の厚さは、銀行券自体の厚さ(通常は、85〜120μm)の半分を超過しないことが望ましく、したがって、任意の実施形態において、本光学素子は、固定接着剤を含んで50μm未満となるものと予想され、かつ、実質的にそのようになることが好ましい。
【0035】
例えば、銀行券に適用されるパッチとしては、望ましい厚さは、ラベルの場合には、数μm(ミクロン)(固定接着剤を除く)から最大で35〜40μm(この場合にも、接着剤を除く)の範囲となる。ストリップの場合には、厚さは、この場合にも、箔押し(hot−stamped)又は転写されるストリップの場合における数μmから最大では非転写型ストリップの場合の35〜40μmの範囲をとることになり(この場合にも、固定接着剤を除く)、この場合に、ストリップを銀行券の基材内の機械的開口部上に貼付する場合には、必要に応じて、支持担持層が保持される。
【0036】
窓を有するスレッド(windowed thread)の場合には、好ましい最終厚さは、20〜50μmの範囲である。
【0037】
パスポートの紙のページ、プラスチックのパスポートカバー、査証、身分証明書、ブランド識別ラベル、改竄防止ラベル、任意の視覚的に真贋判定可能な物品を含む用途においては、セキュリティ素子の更に厚いバージョン(最大で300μm)を利用することもできる。
【0038】
更には、本素子をセキュリティ文書の透明な窓内に設けることによって、本素子を透過状態において観察できるようにすることもできる。
【0039】
本発明の第2態様によれば、モアレ拡大素子を製造する方法が提供される。この方法は、
a)透明基材の第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、これらの合焦要素は焦点面を規定している、微細合焦要素の配列を形成するステップと、
b)透明基材の第2表面上に、第1色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第1の配列を第1工程において形成するステップと、
c)透明基材の第2表面上に、第1色とは異なる第2色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第2の配列であって、第1の配列から横方向にオフセットしている第2の配列を形成するステップと、
を任意の順序で有しており、
微細合焦要素及び微細画像要素の第1及び第2配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、微細合焦要素の配列が微細画像要素の第1及び第2配列のそれぞれと協働し、モアレ効果に起因してそれぞれの配列の微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成する。
【0040】
このようにして、本方法は、上記のとおり素子のセキュリティレベルを増加させる相応に強力な視覚効果を有する多色素子に帰着する。微細画像配列から生じる隣接する画像間の境界は、いくつかの方法で扱うことができる。用いる技法に依存して、横方向にオフセットした微細画像配列は、互いに部分的に重複することもあるし、しないこともある。
【0041】
第1の例において、第1工程と第2工程との最大位置合わせ誤差(Σ)は、100μm(ミクロン)、好適には75μm、より好適には50μmより大きい。このようにして、第1微細画像要素配列と第2微細画像要素配列との重複から起きる拡大された画像のどの干渉も可視化しきい値以下になり、観察者の観点からは、配列は事実上位置合わせされている。したがって、このような条件下において、画像パネル間の割込ゾーンは必要がない。本発明者らは、以降説明するとおり、これが達成される装置を発明した。代替又は追加で、微細合焦要素及び微細画像要素の第1及び第2配列のピッチ並びにそれらの相対位置は、素子が、第1微細画像配列の拡大されたバージョンと、第2画像配列の拡大されたバージョンとの非零幅の割込ゾーンを表示し、割込ゾーンはいずれの微細画像配列の拡大されたバージョンも提示しないようになっている。これは、本発明の第1態様に関して説明した割込ゾーンに対応する。
【0042】
上述のとおり、割込ゾーンは微細画像配列の間の境界領域を組み込むことによって、若しくは微細合焦要素配列を変形することによって、又はその双方によって、生成することができる。したがって一つの好適な例においては、微細画像要素の第1及び第2配列は、各配列において微細画像要素の所望の位置を規定する設計テンプレートに従って、基材上に形成される。設計テンプレートは微細画像要素の第1配列及び第2配列の間の微細画像要素がない非零設計幅2Δの境界領域を含み、配列が基材上に形成されると、観察者に知覚される割込ゾーンを生じさせる境界領域として示される。ここで形成された境界領域は幅(2Δ±Σ)を有し、Σは、ステップ(b)及び(c)において配列を形成することと関係して第2微細画像要素配列に対する第1微細画像要素配列の位置合わせ誤差である。
【0043】
例えば、二つの配列が素子にそって交番する実施例においては、微細画像配列はそれぞれ、設計幅2Δの二つの対応する境界ゾーン内に含まれる。しかし、微細画像要素配列間の位置合わせ変動Σによって、微細画像配列の反復距離を保つために、実際上一つの境界領域が(2Δ+Σ)に増加し、他方が(2Δ−Σ)に減少することになる。
【0044】
好適には、微細画像要素がない境界領域の設計幅は、個々の微細画像要素の最大寸法より大きいか、及び/又は微細画像要素配列のいずれかの最大ピッチより大きい。微細画像要素がない境界領域の設計幅は、位置合わせ誤差Σより大きいと有利である。特に好適な例においては、Σ≧100μm(ミクロン)の値に対して(又は、より好適にはΣ≧150μmのいくつかの場合)、微細画像要素がない境界領域の設計幅2Δは、次の式によって計算される。
(2Δ−Σ)/(2Δ+Σ)=ξ≧0.8
【0045】
Σ≦100μm(ミクロン)の値に対して、微細画像要素がない境界領域の設計幅2Δは、好適には0.5Σ、より好適には少なくともΣ、より大きいか等しく、である。100μm以下の位置合わせ誤差というこのより緩和された基準は、このような小さな寸法においては、人間の目は通常割込に気付くことがないことによる。したがって、目が何とか割込に気付くときは、パネル間の空げき(void)の対称性をそれほど心配する必要はない。もう一つの重要な要素は境界領域の視覚的コントラストである。モアレ拡大器において、拡大された画像要素は、画像のコントラストを最大化するために、明るい背景に対して特徴的に暗い色をしている。画像間の背景空間(画像「カンバス」)は画像空げきであるため、微細画像の境界領域空げきは、隣接する画像ソーンによって提供される背景色に対して置かれたとき、より低いコントラストの特徴に見える。したがって、境界領域は目立たず、見えにくい。対照的に、二つの配列の間の重複領域は、(微細画像要素の範囲が増大したため)コントラストが非常に暗く、観察者に目立つ。
【0046】
既に述べたとおり、このように小さな位置合わせ誤差においては、代替として境界領域の全体を省略してもよい。例えば、Σ≦50μmの値は、可視化又は知覚のしきい値以下と考えてもよく、したがって、二つの配列の位置ずれ及び重複によって生じるどのような有害な影響も、解像するには狭すぎる重複帯域しか生成しないため、設計幅はゼロにすることができる(すなわち、配列は互いに隣接するように設計される)。
【0047】
好適な実施形態において、微細画像要素がない境界領域の設計幅は25μm(ミクロン)と3000μmの間であり、当該範囲の下限は好適には50μm、より好適には100μmであり、当該範囲の上限は好適には1500μm(ミクロン)、より好適には1000μm、更に好適には300μm、最も好適には150μmである。
【0048】
上述のとおり、境界領域は割込層を含んでもよい。その場合、割込層は微細画像要素の第1及び第2配列の少なくとも一つが形成される前に、基材上に配置することが好ましい。割込層は微細画像要素の第1配列の形成と同一の工程、かつ、第2配列の形成の前に形成されると有利である。
【0049】
割込ゾーンが微細合焦要素配列の修正によって生成されるときは、好適には方法のステップ(a)は、微細合焦要素の第1及び第2の規則的な配列を、機能する微細合焦要素がない、非零幅Δrの境界領域によって互いに横方向に隔てられるように形成するステップであって、該境界領域は微細画像要素の第1配列と第2配列との間の遷移を含むように整列しており、それによって観察者が知覚する割込ゾーンが生じるようになっている、ステップを有する。
【0050】
好適には、微細合焦要素がない境界領域の幅は、個々の微細合焦要素の最大寸法より大きいか、及び/又は微細合焦要素配列のいずれかの最大ピッチよりも大きい。前と同様に、微細合焦要素がない境界領域の幅Δrは、好適には第2微細画像要素配列に対する第1微細画像要素配列の位置合わせ誤差Σより大きい。微細合焦要素がない境界領域の幅Δrは、次の式によって計算される。
Δr≧2(Σ+δ)
ここで、δは第1及び第2微細画像配列に対する微細合焦要素配列の位置合わせ誤差である。
【0051】
微細合焦要素配列内の境界層は、前に述べた技法のいずれかを用いて形成することができる。
【0052】
ここでも割込ゾーンはまっすぐである必要はない。
【0053】
微細画像要素の第3配列を、前に述べたとおり第1及び第2配列の一方(又は双方)と重複して用意してもよい。さらに、横方向にオフセットした配列もまた、上述のとおり用意してもよい。
【0054】
特に好適な実施形態においては、ステップ(b)及び(c)において、第1及び第2の微細画像要素配列が、一方が他方の下流にある第1及び第2のオンライン印刷機を備える装置を用いて順に形成される。印刷機はそれぞれ、好適には表面の半分を超えない表面の一部だけに整列した印刷要素を有する印刷ローラを備える。
【0055】
好適には、装置は、第1及び第2の印刷機の間の経路長を調整するようにした経路長調整ユニットを更に備える。経路長調整ユニットは、第1及び第2の印刷機の間に、基材巻取材料(web)を担持する少なくとも一つのテンションローラを備える。少なくとも一つのテンションローラは巻取材料のプレーンからはずれた方向に移動でき、それによって経路長を調整する。特に好適な実施形態においては、経路長調整ユニットは、第1及び第2微細画像要素配列の間の距離を検出するようにした、第2印刷機の下流の、好適にはカメラである検出器と、検出した距離に基づいて経路長を調整するようにしたコントローラとを更に備える。これによって、二つの配列の間の特に正確な位置合わせができる。
【0056】
本発明の第3態様によれば、互いに離れた少なくとも二つの透明又は半透明の窓を有する文書基材を有するセキュリティ文書が提供され、素子は、
i)第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、これらの合焦要素は焦点面を規定している、微細合焦要素の配列と、
ii)第1色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致したプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第1配列と、
iii)第1色とは異なる第2色の、かつ、合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第2配列と、
を担持する透明基材を有しており、
微細画像要素の第1配列の少なくとも一部は第2配列と重複しておらず、微細画像要素の第2配列の少なくとも一部は第1配列と重複しておらず、
微細合焦要素及び微細画像要素の第1及び第2配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、微細合焦要素の配列が微細画像要素の第1及び第2の配列のそれぞれと協働してモアレ効果に起因してそれぞれの配列の微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するようになっている。
【0057】
素子は、文書基材に、少なくとも二つの窓と整列して組み込まれるか、付着され、素子は、第1微細画像要素配列の拡大されたバージョンが二つの窓の第1を介して見え、第2微細画像配列の拡大されたバージョンが二つの窓の第2を介して見えるように、文書基材に位置合わせされている。二つの微細画像要素配列の間の遷移は、二つの窓の間の文書基材によって隠されている。
【0058】
この構成は、二つの微細画像要素配列の拡大された画像が互いに接近する(そして、割込ゾーンがなく、位置合わせが不良であるとき、恐らく重複する)素子の部分が観察者に見えず、文書基材によって隠されるといく大きな利点を提供する。したがって、正確な位置合わせを達成し、又は割込ゾーンを用いてその効果を軽減させることはもはや必要ではない。したがって、本発明のこの態様に組み込まれた素子は、単体で見たとき、二つの配列(重複を含む)の拡大されたバージョンの間の干渉又はほかの効果を表示する。それでもなお、本発明の第1又は第2の態様による素子を、勿論この目的のために使用してもよい。
【0059】
好適には、素子は文書基材内に埋め込まれたスレッド又は挿入物の形態であって、二つの窓は基材内の当該スレッド又は挿入物と同じ側に形成される。窓は基材(例えばポリマー)の開口部又は透明部分であってよい。
【0060】
別の実施系体においては、素子は文書基材の表面に貼り付けられたパッチ又はストライプの形態であって、二つの窓は基材の全厚みを貫通して形成される。
【0061】
好適には、素子は少なくとも、微細画像の横方向に隔てられた第1、第2及び第3の配列を有し、文書基材は少なくとも三つの対応する窓を有し、微細画像及び結果として目に見える拡大された画像は、一つの窓から次の窓へ、色、記号、パターン及び/又は方向が交番する。特に好適な例において、配列は交番する色の拡大されたパネルが見えるように、素子の長さ方向に沿って交番する。第3配列は第1配列と同一であってもよいし、異なっていてもよい(例えば異なる色)。
【0062】
以下、本発明によるセキュリティ素子のいくつかの例について添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】銀行券の概略平面図である。
【図2】(a)は素子の第1実施例の外観平面図であり、(b)は微細画像配列の一部を概略示す図である。
【図2(c)】例示の拡大された画像を重畳した微細画像配列の更なる部分を描いた図である。
【図3(a)】観察者に向かって傾斜した図2の(a)の素子の外観を示す図である。
【図3(b)】観察者から遠ざかって傾斜した図2の(a)の素子の外観を示す図である。
【図3(c)】例示の拡大された画像を重畳した微細画像配列の更なる部分を描いた図である。
【図4(a)】位置ずれした微細画像配列の例を概略示す図である。
【図4(b)】例示の拡大された画像を重畳した微細画像配列の更なる部分を描いた図である。
【図4(c)】例示の拡大された画像を重畳した微細画像配列の更なる部分を描いた図である。
【図5(a)】素子の第2実施例の微細画像配列の設計テンプレートを概略示す図である。
【図5(b)】図5(a)の詳細を拡大した図である。
【図6(a)】図5(a)の詳細を拡大した別の図である。
【図6(b)】位置ずれして形成された同一の部分を示す図である。
【図7(a)】種々の位置合わせ誤差を含んで形成された第1例示境界ゾーンを有する素子の第3実施例における微細画像配列を示す図である。
【図7(b)】種々の位置合わせ誤差を含んで形成された第1例示境界ゾーンを有する素子の第3実施例における微細画像配列を示す図である。
【図7(c)】種々の位置合わせ誤差を含んで形成された第1例示境界ゾーンを有する素子の第3実施例における微細画像配列を示す図である。
【図8(a)】種々の位置合わせ誤差を含んで形成された第2例示境界ゾーンを有する素子の第4実施例における微細画像配列を示す図である。
【図8(b)】種々の位置合わせ誤差を含んで形成された第2例示境界ゾーンを有する素子の第4実施例における微細画像配列を示す図である。
【図8(c)】種々の位置合わせ誤差を含んで形成された第2例示境界ゾーンを有する素子の第4実施例における微細画像配列を示す図である。
【図9(a)】種々の位置合わせ誤差を含んで形成された第3例示境界ゾーンを有する素子の第5実施例における微細画像配列を示す図である。
【図9(b)】種々の位置合わせ誤差を含んで形成された第3例示境界ゾーンを有する素子の第5実施例における微細画像配列を示す図である。
【図9(c)】種々の位置合わせ誤差を含んで形成された第3例示境界ゾーンを有する素子の第5実施例における微細画像配列を示す図である。
【図10】素子の第2から第5の実施例のいずれかの概略断面図である。
【図11】素子の第6実施例における微細画像配列を示す図であって、(i)は拡大した詳細を示す図である。
【図12】素子の第7実施例における微細画像配列を示す図である。
【図13】第6又は第7の実施例の概略断面図である。
【図14】素子の第8の実施例の概略断面図である。
【図15】素子の第9実施例の概略断面図である。
【図16】素子の第10実施例における微細画像配列を概略示す図である。
【図17(a)】素子の第11実施例における微細画像配列を示す図である。
【図17(b)】素子の第12実施例における微細画像配列を示す図である。
【図18】素子の第13実施例の概略断面図である。
【図19】任意の実施例において微細画像配列を形成するために用いることができる装置を概略示す図である。
【図20】レリーフ微細画像の種々のタイプを示す図である。
【図21】任意の実施例による素子を担持する物品の例を示す図である。
【図22】図21の線X−Xに沿った概略断面図である。
【図23】任意の実施例による素子を有する物品の別の例を示す図である。
【図24】任意の実施例による素子を有する物品の更なる例を示す図である。
【図25】図24の線Y−Yに沿った概略断面図である。
【図26】図24の線Y−Yに沿った代替概略断面図である。
【図27】ホログラムセキュリティ素子を組み合せたモアレ拡大セキュリティ素子の別の例を示す図である。
【図28】ホログラムセキュリティ素子を組み合せたモアレ拡大セキュリティ素子の別の例を示す図である。
【図29】ホログラムセキュリティ素子を組み合せたモアレ拡大セキュリティ素子の別の例を示す図である。
【図30(a)】図29の線A−Aに沿った断面図である。
【図30(b)】図29の線B−Bに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、窓において露出したセキュリティスレッド2と、更なる透明な窓3と、を有する銀行券1を概略的に示している。銀行券1は、紙又はポリマー(二軸配向されたポリプロピレンなど)から製造してもよく、かつ、セキュリティスレッド2及び窓3のいずれか又は両方は、本発明によるセキュリティ素子を内蔵する。
【0065】
図2(a)は、セキュリティ素子の第1実施例の外観を示す平面図である。上で説明したとおり、モアレ拡大素子の外観は素子に含まれる微細画像要素配列の性質に依存する。したがって、以降の説明は、図2(a)に示すような素子自体の外観及び図2(b)に例を示す下にある微細画像要素配列の配置によってしばしば変化する。明解にするため、特に指定しない限り各図を通して、素子の外観は実線の太い外枠で描かれ、背景の陰影はないが、微細画像配列(及び微細画像が基づいているテンプレート)は破線の外枠で示され、明るい背景の陰影が付けられている。
【0066】
また、図面は正確な縮尺ではなく、実際上、個々の微細画像要素は観察者が見る拡大されたバージョンより非常に小さいことにも注意されたい。さらに、断面図は種々の部分の相対的な厚みを正確には表していない。
【0067】
図2(a)に、合成的に拡大された画像の二つの交番するセット11,12を含むセキュリティ素子10(ここでは、ストリップ形式を有する)の第1実施例の平面図を示す。この例において、選択された画像は、第1の拡大された画像パネル11内のアイコン、すなわち数字「20」と、第2の拡大された画像パネル12内の「波頭(crest)」記号である。これは、例えば、素子が最終的に付着される物品の額面値と、当該セキュリティ文書が属する適切な地域のアイコンとを表してもよい。アイコンは、分離された、重複しないゾーン11,12に配置され、異なる色、好適には、例えば赤及び青の対照的な色をしていることが重要である。
【0068】
画像パネル11,12が生成された微細画像要素配列100を図2(b)に示す。それぞれ対応する画像に属するパネル11,12は、対応する色及び対応するピッチで印刷又は別様に形成された微細画像要素の配列又は格子110,120である。微細画像配列110,120はそれぞれ別個の工程において形成される。したがって、一例においては、赤の「20」記号からなる配列110が、配列120の青の「波頭」記号の前に置かれる。
【0069】
図2(c)は、約10の拡大係数Mを用いて拡大した、素子10の例示部分及び下にある微細画像配列を示している。勿論、実際には拡大された画像11,12だけが見え、微細画像要素配列110,120は見えない。破線の円は微細合焦要素22の配列(以降、より詳しく説明する)を表す。小さな「波頭」及び「20」は、対応する個々の微細画像要素であり、より大きな「波頭」及び「20」は拡大された画像11,12である。レンズ配列22に対する対応する微細画像要素の位置が、対応する拡大された画像の位置を決定する。この場合、微細画像要素に対する微細合焦要素22の配置は、各配列110,120の上に要素記号11,12の完全に拡大されたバージョンがあり、二つの画像パネルを分割する概念的境界線の上に第1配列110の拡大された数字「20」11があり、線の下に拡大された「波頭」記号12がある。二つの微細画像配列110,120の間には、本質的、かつ意図的な間げきはない。
【0070】
本実施例において、画像パネル11,12間のいかなる可視インタフェースも、互いに正確に位置揃えされた周波数帯域にある微細画像要素110,120を形成することによって避けられる。すなわち、配列間の最大位置合わせ誤差は、100μm(ミクロン)より小さいか、等しい。これは、従来技法を用いては困難であることが証明されているが、図19を参照して以降説明するとおり、本発明者らは、これが可能になる方法を発明した。対応する微細画像配列110,120は互いに正確に配置されるため、得られる画像パネル11,12の重複は最小化され、一つの配列が他の配列によって視覚的干渉を受け、又は不明瞭になることはない。実際には、上述のとおり二つの配列間に非常に小さい重複があり、これは人の目では解像できない。このことは、各微細画像要素に属する複雑な設計規則は必要なく、実際、双方の画像配列はある場合、色だけによって区別される同一記号タイプからなる。
【0071】
この例において、双方の対応する画像配列のピッチは、二つの合成的に拡大された画像パネル11,12は、素子の後又は前のある距離にある同一のプレーンに配置されているように見える。しかし一般に、別個の画像プレーン上に配置された二つの画像パネル11,12を有することが好ましく、これは、以降更に説明するように、別個の微細画像要素配列ピッチを用いることによって達成される。別の例においては、対応する微細要素配列のうち任意の一つによって生成された合成画像パネルは、当業において既知の方法(例えば、欧州特許公開第169512号を参照)を用いて、1以上のプレーンにあるように見える領域を含んでもよい。例えば、拡大された「20」の画像配列の交番する要素を、二つの別個の画像プレーン上に提供してもよい。
【0072】
このようにして、二つの微細画像配列を正確な位置合わせで形成することは、素子を見たとき、画像パネル間に視覚的干渉(すなわち重複)がないことを確実にする。このことは顕著な視覚的外観となり、したがって、素子は多くの応用に効果的である。しかし、それでも素子は、種々の角度で見たとき、又は微細画像配列と微細合焦要素配列との位置ずれがある場合は、垂直線に沿って見たときでさえ、ほかの混乱させる効果の影響を受ける。
【0073】
上述のとおり、図2は離散的に交番する色の配列を有する素子に関係し、この場合、微細合焦要素配列及び/又は特定の視線方向に対する各微細画像配列の位置が、拡大された画像要素が完全に対応する微細画像配列内に位置することを確実にする。すなわち、「20」アイコン及び「波頭」記号の合成的に拡大されたバージョンは、各画像パネル内の中央に位置する。換言すれば、パネル境界をはさんで、設計/画像の連続性が失われることはない。
【0074】
しかし、図3には同一レベルの制御が達成されない、より典型的なシナリオが示されている。図3(a)及び3(b)は図2に示したものと同一の素子の断面を示している。しかし、視角の変化、又は二つの微細画像配列110及び120に対する微細合焦要素配列22の位置合わせの垂直偏移のいずれかによって、拡大された画像要素11,12の、関連する微細画像配列パネル110,120に対する垂直転移が生じる。実際上、微細合焦要素(例えば微細レンズ)配列と微細画像要素配列とのこのような位置ずれは、除去することが禁止的に困難である。
【0075】
外観については、素子を傾斜させる効果及び微細合焦要素配列と微細画像配列との位置ずれの効果は類似しており、拡大された画像の横方向転移を生じさせる。この垂直画像転移の結果、二つの合成画像パネル11,12は通常、境界ゾーンに対して審美的に好適な位置に留まることはない。
【0076】
素子を傾斜させる例を最初に取り上げると、視線方向が垂直線から移動するにつれて、合成的に拡大された画像は、知覚される素子の面からの深度又は距離に比例した視差運動を呈する。特に、垂直方向に見た拡大された画像が図2(a)に示すように配置されていても、視差運動は、パネル境界に隣接する拡大された画像要素が順次パネル境界を横切り、そして、拡大された画像の更なる可視化をサポートするために、境界の反対側に必要な関係する微細画像パターンがないために、拡大された画像要素は不完全又は分割されて可視化される。このことが図3に示されており、図3(a)は視点の変化が、拡大された画像の動きが次のパネルによって阻止され、拡大された画像が不完全になる程度まで、拡大された画像を下方向に動かす。図3(b)は、反対のシナリオを示し、この場合は視線方向の変化が拡大された画像を上方向に動かす。
【0077】
図3(a)及び3(b)に示したものと同一の効果は、代わりに、微細合焦配列22と微細画像要素配列110,120との相対位置の偏移によってもたらしてもよい。これは図3(c)の(i)及び(ii)に示されており、これらは、どのようにして微細画像の位置が、微細画像要素配列110,120の微細合焦要素配列22との位置合わせを追跡するかを示す(明瞭性のために、一つの配列120だけが描かれているが、実際には、他の配列110もまた図2(c)に示したとおり存在する。図3(c)の(i)は、微細画像配列120が合焦配列22と位置合わせされているX印の位置(120と記されている)を示している。ここで、拡大された画像12は当該位置を中心とし、したがって拡大された画像12の全体が見える。これは図2のシナリオに対応する。図3(c)の(ii)は微細画像配列120の位置又は見当が位置合わせ誤差δだけ上に移動しているシナリオを示す。ここで、位置合わせ誤差は、「波頭」微細画像要素のうち一つの高さの半分に対応する。微細画像配列と微細合焦配列との相互位置合わせの新しい位置120は、ここでもX印でマーク付けされている。このようにして、拡大された画像12は、そのアートワーク中心が新しい見当位置120の上に配置されるように上昇させられる。微細画像配列は境界に隣接するが交差することはないため、拡大された画像12は境界線に達したとき、「分割」されるか又は終了させられる。したがって、境界の可視化をサポートするために境界の他方の側には「波頭」微細画像要素はない。これは、図3(b)に示すように素子全体を横断して見られる効果に対応する。勿論、反対方向に見当偏移が生じたときは、図3(a)に示すとおり下方偏移が起きる。
【0078】
合成拡大画像の転移は、視角の変化だけでなく、微細合焦要素配列と対応する微細画像要素配列との位置合わせの変化、又は実際双方の組み合わせによっても起きることを理解されたい。実際には、微細画像幅の例えば半分に等しい、微細合焦要素配列と微細画像要素配列との位置合わせの偏移は、合成的に拡大された画像の等価な相対転移となる。例として、モアレ拡大の設計レベルがx100であるとすると、微細画像配列と微細合焦要素配列との位置合わせの(パネルの境界線に対して直交する方向の)たった0.015mmの(意図しない)変化が、合成画像配列の位置に1.5mmの偏移を生じさせる。したがって、端又は周囲が境界の1.5mm以内に入る任意の画像は、境界と重複し、境界によって分割されることになる。
【0079】
実際上、これが意味するところは、観察ゾーン内又は実際のところ対応する画像パネル内に合成的に拡大された画像を好適に配置するために、微細画像要素配列と微細合焦要素配列との相互位置合わせ精度が、配列の反復距離の半分(通常<20μm(ミクロン))より小さいことが必要であり、これは現在は達成可能ではない。
【0080】
したがって、合成的に拡大された画像をその対応する画像パネル内の所定の位置に配置し、境界ゾーンのいずれかの側で最小の画像不連続性を得ることは、著しい製造の挑戦で配置と、間隔とによって、このような境界不連続性の有害な効果を観察者が混乱しないレベルまで減少させることができ、実際、説明できる視覚的セキュリティ効果として提示することができる。したがって、図2及び3を参照して説明したような素子は依然として有用である。
【0081】
しかし、微細合焦要素配列と微細画像要素配列との完全な位置合わせを達成する必要なく、画像パネル境界におけるこのような「分割」を制御できる素子を提供することが望ましい。さらに、実際上、二つの微細画像要素配列間の位置合わせ誤差Σを最小化又は除去することは常に望ましい訳ではなく、常に可能でもない。例えば、微細画像配列が既存の印刷装置を用いた印刷によって形成される場合、当該装置が達成できる最小の位置合わせを決定することになる。したがって、本願発明はまた、不可避な位置合わせ誤差から生じる問題を除去する技法、すなわち、隣接する印刷された微細画像パネルが相互位置合わせを維持せず、したがって互いに正確に接合しないとき(図2(b)に示したとおり)に発生する視覚効果を除去すること、及び微細合焦要素と微細画像要素との位置ずれから生じる視覚効果を緩和すること、も提供する。
【0082】
微細画像の位置ずれの例を図4に示す。ここで、微細画像要素の中央微細画像配列110(「20」アイコンを有する画像パネル11に対応する)が、二つの「波頭」配列120’及び120”に対して下方に偏移し、このためギャップGが配列110と120”との間に意図せずに現れるようになり、より重要なことには下側の画像ゾーンにおいて二つの微細画像配列110及び120’の重複OVを生じさせることがわかる。これは制御されていない重複となり、二つの合成的に拡大された画像パネル11,12の間の制御されていない干渉が画像の完全性の欠如又は減少につながる。観察者にとって、画像パネル間の干渉の外観の非対称性及び画像品質/完全性の欠如は、最善でも視覚的に目立つ製造上の誤差として分かり、最悪の場合は観察者がどの光学可変セキュリティ効果を観察するつもりであるかについて、観察者を混乱させることになる。
【0083】
図4(b)は、微細画像配列110と120”との間のキャップGの領域における、図4の素子の拡大された部分を示しており、ここで上側の微細画像配列120”は、ギャップ又は空げきが、二つの配列の間の遷移ゾーン内に生成されるように、上側の微細画像配列120”の位置又は見当は下側の配列110から上方又は遠ざかって遷移している。このような空げきが観察者に視覚的に許容されるためには、空げきの幅が、拡大された画像11,12と関連する画像間ギャップとの垂直寸法よりも明らかに小さいことが望ましい。
【0084】
図4(b)は、微細画像配列110と120’との重複OVの領域における、図4の素子の更に拡大された部分を示している。図2(c)及び3(c)の場合と同様に、この図は拡大された画像要素11,12及び微細画像要素配列110,120双方を示しているが、実際には拡大された画像だけが見える。上側の配列110と位置ずれして付着された下側の微細画像要素120’によって、下側の配列は上方に偏移して概念的な境界線を横切り、上側微細画像配列と重複又は衝突する。重複は二つの相関のない画像配列の間であるため、一つの配列の効果は他方と競合し、他方を覆う。すなわち、二つの配列は非協力的に干渉し、お互いから制御されていない画像の寄与を受けた拡大された画像ゾーン又は画像帯を生成する。このような重複の有害な影響を軽減させるため、本発明者らは微細画像配列のいずれかの拡大されたバージョンが生成されない、拡大された画像パネル11,12間の割込ゾーンの生成を提案する。これによって、拡大された画像の重複が除去され、したがって上述の課題が緩和される。これは、微細画像配列の修正、又は微細合焦要素配列の修正のいずれかによって達成でき(どちらの選択肢も以降詳細に説明する)、後者の場合、微細画像要素配列自体の重複を除去する必要はないことに注意されたい。割込ゾーンは、好適には素子に沿って、画像がある色から次の色へ変化する位置ごとに提供される。例えば上述の例においては、割込ゾーンは画像パネル11と画像パネル12との境界ごとに提供される。
【0085】
各割込ゾーンは、微細画像要素配列100の設計に境界領域を組み込むか、若しくは微細合焦要素配列の「ギャップ」に組み込みかのいずれか、又は双方によって生成することができる。
【0086】
したがって、本発明の第2実施例においては、素子は隣接した画像パネル11,12の間に割込ゾーンを組み込み、割込ゾーンは、第1及び第2微細画像要素配列110,120に間の境界領域であって、いずれかに隣接する配列と関係する微細画像要素のない境界領域の提供によって形成される。図5(a)は、第2実施例において素子の上に(例えばテンプレートに従って印刷装置を制御することによって)微細画像要素配列を形成するために用いることができる設計テンプレートDの例を示す。微細画像用配列が位置合わせ誤差がないテンプレートに従って素子上に形成できるときは、得られる微細画像要素配列は設計テンプレートと同一である(しかし、既に示したように、また以降示すように、このことは通常、真ではない)。
【0087】
設計テンプレートDは、「第1」微細画像要素配列120’と「第2」微細画像要素配列110との間に境界領域150を含み、「第2」微細画像要素配列と「第3」配列120”の間に別の境界領域を含む。設計テンプレートにおける境界領域150の幅(2Δと記す)は、好適には、微細画像要素配列が互いに対して形成(例えば印刷)される相対的な見当(すなわち、位置合わせ誤差Σ)を超える。第1及び第3配列120’,120”は一つの工程で形成され、第2配列110は別の工程で形成されることに注意されたい。通常、当業において既知の技法を用いるとき期待される、互いに対する配列の位置合わせ誤差Σは、最小25μm(ミクロン)〜最大1000μm、又はそれ以上まで変化する。
【0088】
このように、製造過程に依存して、境界領域150の設計幅2Δは25μm(ミクロン)と3000μmとの間であってよい。この範囲の中で、設計幅は好適には少なくとも50μm、より好適には100μmである。しかし、割込ゾーンの視覚的影響を減少させるために、好適には設計幅は1500μm(ミクロン)、より好適には1000μm、更に好適には300μm、最も好適には150μmを超えない。一例において、設計幅は100μmと200μmとの間である。しかし、設計の観点からは、境界領域の幅は、素子の外観上の影響を減少させるために最小にすることが望ましい。
【0089】
より一般的には、境界領域150の設計幅は、配列間の間隔方向における、いずれかの配列の個々の微細画像要素のサイズより大きいことが好ましい(ここでは、関係する寸法は、図5(b)において示したとおり要素の高さhであるが、別の場合には、配列がx軸ではなくy軸に沿って間隔を有しているときは、幅wであってもよい)。また、境界領域の設計幅は、関係する方向における微細画像要素のピッチA(ここではA)より大きいことが望ましい。特にこの点に関して、図5は正確な縮尺ではないことに注意されたい。
【0090】
位置合わせ誤差Σが、人間の目でみえるほど十分大きいとき(例えば約100μm(ミクロン)〜150μmより大きいとき)、境界領域150の設計幅はまた、素子内の対称性を考慮に入れるために調整してもよい。ここで、素子の対称性を考慮に入れるために、境界領域の幅が配列間印刷位置合わせ誤差Σをどれだけ超えなければならないかを、図5を参照して検討する。このことは、配列110,120’,120”の場合のように、素子が三つの微細画像要素配列を含み、中央の配列がいずれかの側の配列とは別の工程で形成される場合に特に関係がある。
【0091】
上述のとおり、図5(a)は、配列が素子上に厳密な相互位置合わせで置かれているときの、微細画像要素配列100と同一の設計テンプレートDを示している。交番する色の隣接するゾーン間の境界領域150は、幅2Δの微細画像要素のないゾーンによってそれぞれ規定される。この検討のために、図5(b)の拡大された詳細に示されている、幅Δの部分境界領域150a,150bを各配列110,120’,120”のいずれかの端と関係付けることが便利である。
【0092】
このように関係付けることによって、二つの色配列が厳密な位置合わせをされているシナリオに関しては、部分境界領域150a,150bは互いに接合することが分かる。
【0093】
また、各配列110,120’,120”の長さはPであり、したがってP=配列110(「20」アイコン)の長さであり、P=配列120’,120”(「波頭」アイコン)それぞれの長さであるとき、次の反復長Rはパネル間位置合わせの変動にかかわらず維持されることが分かる。
=P+P+2Δ
【0094】
このことを、素子上に形成された微細画像要素配列を示す図6を参照して説明する。図6(a)は、印刷パネルそれぞれに関係する部分境界領域が接合し、したがって二つの色のパネルが相互に位置合わせされていると考えられるシナリオである。したがって、仕上げられた(例えば印刷された)配列は、図5(a)の設計テンプレートと同一に見える。
【0095】
次に、一つの印刷された色配列の他の配列に対する位置合わせ誤差のモジュロ値Σのを加えると仮定する。この位置合わせ偏移の向き(sense)又は方向は図6(b)に示すとおりである。
【0096】
結果として、仕上げされた配列110と120”との間の実際の境界領域150’は(2Δ+Σ)に増加し、下側の遷移ゾーンにおいては、境界領域150”の幅は(2Δ−Σ)に減少する。したがって、素子の上に形成された配列は、(少なくとも配列間位置合わせに関しては)基礎とした設計テンプレートDと同一ではない。
【0097】
上側の空げきゾーンと下側の空げきゾーンとの間の知覚される非対称性は、比ξ=(2Δ−Σ)/(2Δ+Σ)で表される。
【0098】
この比ξが1に等しいときは、上側境界領域と下側境界領域との間には、配列間の位置ずれに関係する知覚される非対称性はない。すなわち、観察者には、境界対称性が、設計の規則的かつ反復する設計特性の一部として知覚され、心理光学用語で言えば、よく耐えられる(well tolerated)。換言すれば、位置合わせ変動が可視化されるほど十分に大きい(例えばΣ>100μm)シナリオに関しては、境界ゾーン比が1に近づくことを確かめることが望ましい。
【0099】
ここで、比ξは、一般に条件ξ≦1.0を満足する値を有することは明白である。
【0100】
この比の値を1より小さくすることは、二つの境界の間の対象性を減少させることを示す。例えば、Σ>2Δのとき(すなわち、配列が一つの境界線を越えて重複するとき)、比は負になる。これは、Σ=Δのとき(すなわち、配列が同一のパネル上で接合するとき)よりも非対称性の程度が大きいことを示す。
【0101】
値が1に近づくためには、境界領域の設計幅が位置合わせ誤差よりも相当に大きい(すなわち、2Δ>>Σ)ことが必要であり、したがって、理想的には、
・位置合わせ変動Σを空げきゾーン幅2Δと比べて極めて小さくするか、
・境界領域設計幅を位置合わせ変動よりも非常に大きくするか、
のいずれかである。
【0102】
しかし実際には、位置合わせ変動Σは製造システムの技術限界によって設定される最小値を有し、境界幅は、合成的に拡大された画像配列と調和するためのサイズの必要性によって設定される最大値を有する。
【0103】
例として、近代的なポリマー巻取材料(web)ベースの印刷システムにおける順次印刷ヘッド間の典型的な位置合わせ許容誤差シグマは、±0.15mmのオーダである。
【0104】
本願において開示される素子を窓の開いたスレッド形状(feature)として用いたときは、スレッド窓の寸法は拡大された画像要素のサイズ及びその反復間隔を設定する。窓の寸法が典型値幅3〜4mm、高さ4〜6mmを有するとしよう。すると、光学素子設計者は、拡大された画像サイズおよそ2〜3mm、画像反復4mm未満を選ぶであろう。
【0105】
したがって、仕上げられた境界領域幅は、好適には拡大された画像要素の寸法及びその対応する画像間ギャップより小さいことが望ましく、それによって空げきゾーンが素子像の残りの部分と自然に適合するように見える。目的は、最小の効果的な空げきゾーン、より詳細には比ξ=(2Δ−Σ)/(2Δ+Σ)の最大許容値を決定することである。
【0106】
本発明者らは、ξ≧0.8の値で許容可能な視覚的対称性が得られることを発見した(知覚可能であるために、位置合わせ誤差が十分大きい、例えばΣ≧150μmのとき)。
【0107】
このように本例においては、Σ=150μmとし、ξが最小値0.8の値を有するように選ぶことによって、ξの式から、境界領域設計幅1.35mmに対する最小許容値を得た。この値は、拡大された画像要素の寸法より明らかに小さく、また、拡大されたパネル内の画像間間隔より小さくなる。
【0108】
図7〜9は、対称性基準の有効性を示している。図7(a),(b)及び(c)は、最大配列間印刷位置合わせ誤差Σが、境界領域の設計幅に等しい、すなわち、Σ=2Δである概念的例を示している。したがって、ξ=0であり、このシナリオにおいて、位置合わせは二つの微細画像配列が一つの境界で接合し、別の境界においては量4Δだけ離れるようにすることができる(図7(b)及び7(c)の場合のとおり)。したがって、二つの画像配列境界は極めて非対称に見え、観察者を混乱させる(「心理光学」妨害)。
【0109】
図8(a),(b)及び(c)は、最大配列間印刷位置合わせ誤差が境界領域設計幅の約1/4、すなわち、Σ=0.5Δ、したがってξ=0.6である概念的例を示している。このシナリオにおいて、位置合わせ誤差は配列間ギャップを双方の対応する境界領域において25%増加及び減少させる。対称性は前の例よりも明らかではないが、依然として容易に識別可能である。
【0110】
図9(a),(b)及び(c)は、最大配列間印刷位置合わせ誤差が境界領域設計幅の約1/10、すなわちΣ=0.2Δ、したがってξ=0.82である実施例を示している。このシナリオにおいて、位置合わせ誤差は、初期検査時にほとんど識別できず、したがって観察者に迷惑をかけ、又は混乱させることはないレベルの境界非対称性を生成する。したがって、これは好適な実施例を表している。
【0111】
したがって、配列間位置合わせの潜在的に有害な非対称効果を管理するために、本発明者らは、境界領域設計幅2Δが最低でも、位置合わせ誤差の値の9倍でなければならないという設計規則を作った。この規則は、位置合わせ変動Σが裸眼で可視化できるサイズである場合に適用され、このサイズは一般に正常な視力の人については、100μm又は150μmより一般に大きい。
【0112】
しかし、裸眼で識別できない尺度の位置合わせ誤差(すなわち、Σ≦100μm、又は≦150μm)については、潜在的非対称性を処理することは必要ない。このような環境においては、境界領域を用いて画像パネルの重複のコントラストだけを減少させることが望ましい。この場合、境界領域設計幅(2Δ)が位置合わせ変動Σに等しいか、少しだけ超過すれば十分である。
【0113】
図10は、図2〜9に関して上で参照した素子10のいずれかの概略全体構造の断面図である。例として、素子は透過性レンズを介して動作する2色モアレ拡大器として描かれている。すなわち、これらのレンズは、以降更に説明するとおり、恐らく球面(2Dモアレ)又は円柱状(1Dモアレ)であろう。したがって、素子10は、典型的にはPET又は双軸OPPからなる透明基材を有し、素子の上表面の上に球面微細レンズの二次元配列22が形成されている。この配列は例えば、エンボス加工(この場合、樹脂は熱可塑性を有する必要がある)、又は注型硬化複製(UV硬化処理は遊離基又は陽イオン性であってよい)の処理によってレンズ配列が中に形成された透明樹脂を有してもよい。微細レンズ22の寸法は、通常1〜100μm(ミクロン)、好適には1〜50μm、より好適には10〜30μmの範囲にあり、したがって、類似の範囲のピッチを規定する。
【0114】
微細レンズ22の焦点距離(平坦な背面から測定)は、光学スペーサ層の厚みtに実質的に等しい。光学スペーサ層の厚みは、この例においては、印刷受容層の表面と実質的に一致する焦点面24を規定するために、基材20の厚みと、微細レンズ配列22に対して基材20の反対面にある印刷受容層21の厚みを加えたものである。印刷受容層21の上には微細画像要素配列100が形成される。例えば、「20」アイコンの第1微細画像配列110は、第1工程として赤色で印刷してもよい。次に、微細画像配列120’,120”を第2工程として青色で印刷する。図10において、配列は焦点面24と一致する印刷受容層21の上にそれぞれ印刷されていることが分かる。
【0115】
原理的には、印刷受容層21は本質的ではないが、実際には、PET及びBOPPのような基材材料は通常いくつかの標準厚み又はゲージ、最も典型的には19μm及び23μmで供給され、したがって、印刷がレンズ配列の焦点面に一致又は同一平面にあることを確実にするために、基材の厚み自体を調整又は一致させることができないことに順応させるために存在する。したがって、透明印刷受容層の厚みは、レンズの焦点が、この被覆に後から付着される印刷された微細画像と一致することが確実になるように調整される。
【0116】
各微細画像要素と次の配列との間(すなわち、隣接する配列対の間)に、微細画像要素がない境界領域150がある。図10に示した例においては、位置合わせ誤差による偏移はなく(すなわち、Σ=0)、したがって、境界領域150の幅は設計幅2Δに等しい。しかし、より一般的には、境界領域それぞれの幅は(2Δ+/−Σ)であり、ここで、形成される境界領域が非零幅を有するように、2Δは好適にはΣより大きい。この例において、各境界領域150は均一に透明であり、印刷されたか、又はほかの印(indicia)を担持していない。しかし以降示すようにこのことは真である必要はない。上述のとおり、境界領域150は、微細画像要素配列110,120,等に対応する拡大された画像パネル11,12間の干渉を防ぎ、各画像パネルは次のパネルから完全に分離されて知覚される。
【0117】
モアレ拡大の現象を生成し、かつ、移動する画像の生成を可能にするために、ピッチ不整合を微細画像配列と微細レンズ配列との間に導入する。1つの方法は、実質的に同一のピッチを有する微細レンズ及び微細画像配列を有するというものであり、この場合に、ピッチ不整合は、微細画像と微細レンズ配列との間に小さな回転ミスアライメントを導入することによって実現される。微細画像と微細レンズ配列との間の回転ミスアライメントの程度は、好ましくは、15°〜0.05°の範囲であり、これは、結果的に、微細画像配列の〜4×−1000×という拡大範囲をもたらす。更に好ましくは、回転ミスアライメントは、2°〜0.1°の範囲であり、これは、結果的に、微細画像配列の〜25×−500×という拡大範囲をもたらす。
【0118】
又は、この代わりに、微細画像配列及び微細レンズ配列は、実質的に完全な回転アライメント状態にあるが、わずかなピッチ不整合を有する。わずかなピッチ不整合は、25%〜0.1%の範囲の微細レンズ配列との関係における微細画像配列のピッチの比率増大/減少と等しく、これは、結果的に、微細画像配列の〜4×−1000×という拡大範囲をもたらす。更に好ましくは、微細レンズ配列に対する微細画像配列のピッチの比率増大/減少は、4%〜0.2%の範囲であり、これは、結果的に、微細画像配列の〜25×−500×という拡大範囲をもたらす。
【0119】
わずかなピッチ不整合とわずかな回転ミスアライメントとの組合せを使用することによって、モアレ拡大の現象を生成すると共に移動する画像の生成を可能にすることもできる。
【0120】
配列110、120と球面レンズ配列22との間のピッチ不整合の結果として、(図3に示されているように)異なる深度において微細画像のモアレ拡大が生成される。
【0121】
実現される拡大の程度は、M. Hutley、R Hunt、R Stevens、及びP Savanderによる“The Moire magnifier”(Pure Appl. Opt. 3(1994)、133〜142頁)において導出されている式によって規定される。
【0122】
この式の関係する部分を要約すれば、微細画像ピッチ=Aであり、かつ、微細レンズピッチ=Bであると仮定したときに、拡大Mは、次式によって得られる。
M=A/SQRT[(Bcos(θ)−A)2−(Bsin(θ))2
ここで、θは、2つの配列の間の回転角に等しい。
A≠Bであり、かつ、cos(θ)≒1及びsin(θ)≒0となるように、θが非常に小さい場合には、次式のとおりである。
M=A/(B−A)=S/(1−S)
ここで、S=B/Aである。
しかしながら、M>>10というようにMが大きい場合には、S≒1でなければならず、したがって、次式が得られる。
M≒1(1−S)
【0123】
表面プレーンに対する合成画像の深度は、焦点距離fのレンズのプレーンから距離vに位置する画像の拡大に関係するなじみ深いレンズ等式から導出される。これは、次式のとおりである。
M=v/f−1
又は、通常は、v/f>>1であるため、次式が得られる。
M≒v/f
したがって、合成的に拡大された画像の深度vは=M*fである。
【0124】
例として、図10の構造が、40μm又は0.04mmの焦点距離fを有する微細レンズ22から構成されていると仮定しよう。更には、微細レンズ及び支持基材20の両方が、いずれも、1.5の屈折率nを有する材料から構成されていると仮定しよう。この結果、レンズの基部直径Dは、式
D≦f*2(n−1)
によって制約されることになり、かつ、したがって、D≦0.04*2(1.5−1)であり、これによって、D≦0.04mmが得られる。
【0125】
この結果、本発明者らは、0.035mmのDの値と、(それぞれの軸に沿って)0.04mmのレンズピッチBと、を選択し、これによって、妥当な最密充てん(レンズ間ギャップ:5μm)を有する1に近いf/#値を有するレンズ配列が結果的に得られることになろう。
【0126】
第1の例において、本発明者らが、第1画像配列10が基材の表面プレーンの背後の2mmに位置することを、そして、第2画像配列11が表面プレーンの背後の6mmに位置することを必要としたと仮定しよう(表面プレーンの背後の画像は、定義によれば虚像であり、かつ、更に詳細な分析は、これらが、微細画像オブジェクト配列に対して非倒立型となることを示している)。
更に説明をわかりやすくするために、本発明者らは、微細画像配列110,120それぞれのピッチがx軸及びy軸方向において等しいと仮定する(すなわち、A1y=A1xかつ、A2y=A2x)。
【0127】
M=v/fとすると、f=0.04mmであり、かつ、v=2mmである場合には、M=2/0.04=50となる。したがって、第1画像パネル11は、50倍に拡大された微細画像配列110を表示するに違いない。
【0128】
したがって、M=A/(B−A)=50であるため、50(B−A)=Aであり、これによって、A=B(50/51)が得られることになる。B=0.04mmを代入することによって、本発明者らは、A=0.0392mmを得る。これは、第1配列110における微細画像要素間の必要なピッチである。
【0129】
同様に、M=6/0.04=150であり、かつ、したがって、150(B−A)=Aであり、これによって、A=B(150/151)=0.0397mmが得られる。これは、第2配列120における微細画像要素間の必要なピッチである。
【0130】
第2の例において、本発明者らが、第2画像配列12が表面プレーンの背後の6mmに位置した状態に留まっている間に、第1画像配列11が表面プレーンの前面の2mmに位置することを必要としたと仮定しよう。
【0131】
以前の例とは対照的に、ここでは、第1画像配列10は、実像の倒立画像を形成することになり、かつ、したがって、拡大の符号が負となる(これは、以前の拡大の式の画像距離vに負の値を割り当てることの結果として生じる)。
【0132】
したがって、M=−2/0.04=−50であり、したがって、−50(B−A)=Aであり、これによって、A=50/49B=0.0408mmが得られる。
【0133】
したがって、第1画像パネル11が表面プレーンの前面に位置するためには(すなわち、浮かんでいるように見えるためには)、その微細画像配列110がレンズピッチよりも大きなピッチを有する必要があることがわかる。逆に、画像ピッチがレンズピッチを下回っている場合には、画像配列は、表面プレーンの下方に位置しているように見えることになる。
【0134】
本発明は、任意の特定のタイプ又は形状の微細レンズに限定されるものではなく、唯一の要件は、微細レンズを使用して画像を形成することができるというものである。本発明に適した微細レンズは、平凸レンズレット、両凸レンズレット、及びフレネルレンズなどの均質な材料の適切に湾曲した表面において光を屈折させるものを含む。好ましくは、本発明は、球面微細レンズを有することになるが、円柱形レンズを含む任意の対称性を有するレンズを利用することもできる。球面及び非球面表面の両方を本発明に適用可能である。微細レンズが湾曲した表面を有することは不可欠ではない。傾斜屈折率(Gradient Refractive Index:GRIN)レンズは、屈折率の小さな変動の結果として材料の容積の全体を通じた漸進的な屈折によって光を結像する。フレネルゾーンプレートなどの回折に基づいた微細レンズを使用することもできる。GRINレンズ及び振幅又はマスクに基づいたフレネルゾーンプレートは、微細レンズ配列を含む表面が平坦になることを可能にし、かつ、印刷受容性及び耐久性における利点を提供する。
【0135】
複製プロセスによって生成されたレンズの周期的な配列を使用することが好ましい。光熱法、フォトレジストの溶解及びリフロー、及びフォトレジストの彫塑などのいくつかの技法によって、マスタ微細レンズ配列を製造することができる。このような技法については、当業者に知られており、かつ、1998年に再版されたTaylor and Francis社から刊行されているHans Peter Herzig編集による“Micro−Optics: Elements, Systems, and Applications”の第5章に詳述されている。次いで、ホットエンボス加工、成形、又は鋳造などの市場において入手可能な複製法によって、マスタ微細レンズ構造を物理的に複写することができる。微細レンズ構造をその内部に複製することができる材料は、限定を伴うことなしに、ホットエンボス加工及び成形プロセス用のポリカーボネート及びポリメチルメタクリレート(PMMA)などの熱可塑性ポリマー及び鋳造プロセス用の熱又は放射線によって硬化可能なアクリル化エポキシ材料を含む。好ましいプロセスにおいては、微細レンズ配列は、鋳造によって、PETなどの担持体ポリマー薄膜に適用されたUV硬化可能な被覆内に複製される。
【0136】
簡単にするため、図17(b)を参照して説明したものを除いて、ここでの例及び実施例はすべて、球面微細レンズを使用するものとする。
【0137】
図11は、素子の第6実施例に用いられる微細画像要素配列シーケンス100の例を示している。前の実施例と同様、第1及び第2微細画像要素配列110,120があり、それぞれ異なる色をしており、異なる工程で置かれる。ここでも、境界領域150は隣接する配列対の間に組み込まれる。しかし、境界領域を何もなく、透明にしておく代わりに、この例においては、各境界領域150は割込層155を担持する。割込層155は例えば、境界領域を横断して形成された印刷されたストリップ又は画像パターンである。すなわち、このストリップは、微細画像配列がなく、したがって対応する合成/モアレ拡大がないという点で、隣接する配列110,120とは異なっている。図11の実施例において、割込層155はアートワークがないように示されている。しかし図12(第7実施例)に示すように、割込層は、見るために低倍率拡大器を必要とする縮尺であってよい設計アートワーク又は画像を含むことができる(例えば、「金銭出納係支援」機能)。
【0138】
割込層からは合成拡大が生じないため、ストリップ内のどの画像又はパターン要素の視差運動もない。すなわち、拡大された画像の視差運動を拘束する静止基準面を提供する。したがって、隣接する微細画像配列の拡大されたバージョンが遷移によって中断又は分割されたとき(図3を参照して説明したとおり、観察者に対して拡大されたバージョンは所定の、すなわち設計が意図した、触(eclipsing)事象を経験するように見える。例えば、いくつかの例において、微細画像要素は静止境界領域の下を移動するように見える。
【0139】
第6及び第7実施例において、割込層155(又は「遷移帯」)は、好適には第1モアレ(又は統合された)微細画像配列110とタンデムに、すなわち、例えば同一工程において構造体に対して付着(例えば印刷)される。例えば、割込層及び第1微細画像要素配列110は同一の印刷ローラに存在してもよく、したがって、割込層155と第1微細画像配列110との間には位置合わせ変動がない。すなわち、事実上、遷移帯155がいずれかの端において第1配列110を縁取る又は終了させる。しかしこの方法はまた、両端における遷移帯は必然的に望ましくない、第1微細画像配列110と同一の色を有する。したがって、割込層は別個の工程において(そして別個の色で)交互に付着させてもよい。好適には、これは、微細画像配列110,120のいずれかの前に付着される。
【0140】
第1印刷微細画像配列110及び関係する遷移帯155の付着に続いて、第2印刷微細画像配列120を付着させる。図13は素子の断面を示し、この図から第2微細画像配列120は隣接する遷移帯155と重複又は重ね刷りしてもよいことは明らかである。割込層は好適には実質的に不透明であり、どの重複する要素も観察者から隠される。
【0141】
境界領域に割込層155を用いることによって、そうでなければパネル間境界を越えて発生する画像の不連続性又は干渉を管理する特に汎用的かつ実践的な方法が提供される。特に、遷移帯155は第2印刷配列120の端を隠し、したがって第1印刷パネルに対する位置合わせ誤差のいかなる可視化も防止するため、遷移帯の幅についての要求条件を緩和することができる。したがって、本実施例においては、遷移帯の幅(単一工程の結果であるため、設計テンプレート及び仕上げられた製品において同一)は、パネル間印刷位置合わせ変動±Σを超えるだけでよい。したがって、図13において、2Δ≧2Σである。したがって、シグマが例えば150μmに等しいとき、遷移帯155の幅は300μmを超えるだけでよい。
【0142】
上記の例のすべてにおいて、拡大された画像パネル11,12間の割込ゾーンは、微細画像配列間に微細画像要素のない境界領域を組み込むことによって形成される。しかし、代わりに微細合焦(例えば、微細レンズ)配列を修正することによって、代わりに(又は追加的に)割込ゾーンを形成してもよい。
【0143】
図14及び15は、このことが真である、本発明の第8及び第9実施例による素子の断面を示している。一般に、素子の外観の平面図は図2(a)において示した素子の場合に類似している(隣接画像パネル11,12間の「ギャップ」の包含を除く)。したがって、遷移のゾーンは微細画像配列100ではなく微細レンズ配列22に生成される。微細レンズ配列22は、境界領域250によって互いに分離された二つ(又はそれ以上)の配列22’,22”,22’’’、等を有すると効果的である。これらの境界領域250においては、微細レンズ22は機能しない。このことは次の二つの異なる方法を用いて達成することができる。
・図14に示すとおり、高分子樹脂255又はラッカーを用いて、境界領域250内の微細レンズを「除外指定(index out)」又は上塗りする
・図15に示すとおり、境界領域内のレンズ22を省略する
【0144】
より詳細には、レンズの動作はレンズの材料と空気との屈折率の差に依存する。空気を、レンズ22に用いられるポリマー材料と実質的に同一の屈折率を有する樹脂255で置き換えたとき、光線は樹脂/レンズ境界において著しく屈折せず、微細レンズは機能しない。したがって、第8実施例(図14)においては、樹脂ストリップを、二つの色付き微細画像配列110,120間の境界又は遷移ゾーンTの上に配置されている微細レンズ配列の領域に付着(例えば印刷)させる。樹脂帯255をレンズに付着させることは、樹脂帯の下に配置されたゾーンにおけるレンズ微細画像配列22のモアレ拡大効果を「停止(switch off)」する。端的に言えば、各パネル境界において、樹脂帯255の幅によって幅が決定される拡大画像パターンに空げきを生成する。
【0145】
しかし、樹脂255が透明又は非常に半透明であるときは、対応する微細画像配列110,120それぞれの境界端は依然として識別可能であり、(前に説明したとおりの)パネル間印刷位置ずれのために、各境界において配列間のギャップは量Σだけ交互に増加又は減少するため、これは大衆の認識の観点では好ましくない。したがって、本実施例の変形として、無色の光を散乱させる顔料(例えば二酸化チタン(TiO))を樹脂255に加えて実質的に不透明にし、樹脂帯の存在が容易に観察者に見えないようにして、下にある印刷の識別を防いでもよい。代替として、樹脂帯を機能の設計に組み込んでもよく、この場合、適切な顔料又は染料を組み込むことによって、(半透明又は不透明の)色を有するように形成してもよい。別の例においては、インクのような別の不透明な被覆を樹脂の代わりに用いてもよく、不透明さのレベルが十分に高いときは、被覆の屈折率がレンズ材料の屈折率と一致するという要求条件は緩和又は削除できる。
【0146】
樹脂帯155によって規定される境界領域250内には活性な結像はないため、この帯255の幅Δrは、色パネル印刷位置合わせ変動(±Σ)と、印刷された樹脂と下にある色パネルとの位置合わせ変動(δと呼ぶ)との和を超えるだけでよい。すなわち、Δr≧(2Σ+2δ)である。
【0147】
第9実施例(図15)において、境界領域250は当該領域内の微細レンズ22を省略することによって配列間境界Tの上に形成される。このようにして、微細レンズがない空げきゾーンが生成され、再度拡大された画像がない空げきゾーンが得られる。前と同様に、各境界領域250内には合成結像は生じず、したがって、配列間位置合わせと関係する有害な視覚効果は、観察者に対してより明らかではない。
【0148】
第8実施例と同様に、空げきゾーンの幅Δrは、配列間位置合わせ±シグマと、パネル間境界位置に対するレンズ空げきゾーンの位置合わせ又は配置の変動±δの合計、すなわち、Δr=2(Σ+δ)を丁度超える必要がある。
【0149】
双方の実施例において、境界領域250の反復距離は、配列間反復距離R/2(=P+Δ)と一致する。
【0150】
上述のとおり、レンズ配列22内の境界領域250は、単独で、又は微細画像要素配列110,120間の境界領域150と組み合わせて、割込ゾーンを生成するために用いてもよい。しかし、いずれの場合においても、微細レンズ配列の各部分22’,22”,22’’’の下にある微細画像配列110,120は、微細レンズ配列の対応する部分を越えて横方向に伸びることが望ましい。例えば、図14及び15において、微細画像配列110がその直上にある微細レンズ22の一部22”より更に左及び右横方向に伸びていることが分かる。双方の配列120及びその対応するレンズ配列22’及び22’’’についても、同じことが真である。この配列によって、素子が傾斜しているとき、微細画像配列の全範囲を見えることが確実になり、これによって、拡大された画像が境界領域250によって「分離」されて見える。
【0151】
これまでの実施例においては、境界領域150及び250は素子の幅を横断するまっすぐな(直線の)線で伸びているように描かれている。例えば、境界領域は湾曲していてもよいし、ジグザグであってもよい。重要なことは、境界領域が少なくとも一つの軸に沿って隣接配列間に存在することである。この軸は通常、基材が製造過程を通じて進行する方向と平行な軸である。これは、二つの連続する工程間の位置合わせが保証できないのがこの方向に沿ってであるためである。すなわち,通常直交方向の位置合わせはずっと正確である。しかし、ほかの例においては、直交軸に沿ったいかなる位置ずれも扱うことができるように、境界領域は双方の軸に沿って伸びていてもよい。
【0152】
図16は、二つの画像パネル310,320の間に割込ゾーン350を有する例を示している(拡大された画像のすべては図示されていない)。割込ゾーン350は、ずれた位置にある四つの範囲からなっており、組み合うパターンとなる。これは、上述の実施例のいずれかの原理を用いて、微細画像要素配列間、及び/又は微細合焦要素配列内に対応する境界領域を提供することによって形成することができる。ここで、境界領域はy軸に沿って一つのパネルを次のパネルから分離するだけである。すなわち、パネルは三つの取り囲む位置においてx軸方向に互いに接合する。上で示したように、素子がy軸方向だけに移動する巻取材料上で形成されるときは通常問題にはならない。
【0153】
したがって、パネル間割込ゾーンを直線又は長方形ゾーンに限定する必要はなく、より複雑な組み合うパターンであってもよい。組み合うパターンもまた、直線状の部分からなってもよいが、曲線形態、例えば組み合う正弦波状境界であることも可能である。
【0154】
このような組み合う境界の一つの利点は、割込ゾーンを空間的により小さく規定され、かつより唐突でなく、したがって観察者がより容易に識別できないか、又は検知できないようにすることができることである。
【0155】
これまで説明してきた素子は、すべて二次元(2D)モアレ拡大効果を用いている。しかし、既に述べたように、代わりに一次元(1D)拡大を用いてもよい。図17(a)及び17(b)は、2D素子(a)及び1D素子(b)に用いるのに適した微細画像配列の例を示している。双方の場合とも、上の図5について説明したとおり、「空の」境界領域150が配列間に組み込まれている。しかし、微細画像配列の間に形成されているか、微細レンズ配列内に形成されているかに関わらず、前の実施例に記載された種々の境界領域のいずれを代わりに用いてもよい。
【0156】
したがって、図17(a)は2Dモアレ拡大器素子に属する対応する微細画像配列の概略図を示している。2Dモアレ素子については、結像レンズ(又は鏡、以降を参照)は、円形の基部外形(レンズ又は鏡の平面外形)を有する概略球面又は非球面のものであり、当業において周知のとおり、x−y平面内の規則的二次元格子状又は行列状に配置されている。一般に、微細画像配列はレンズ配列の格子形式に一致する格子形式で配置される。レンズの性質によって、モアレ拡大の大きさはx軸及びy軸双方において類似しており、その結果、微細画像要素は拡大されたバージョンの均等に縮小されたバージョンである。
【0157】
図17(b)は、1Dモアレ拡大器素子に属する対応する微細画像配列の概略図である。1Dモアレ素子については、結像レンズ(又は鏡)は円柱状のものであり、したがってモアレ拡大は、東西方向に選ばれた一つの軸(レンズの曲線の軸)に沿ってだけ生じる。したがって、微細画像要素はレンズの曲線の軸に沿って高レベルの拡大(通常、x50〜x200)を達成し、一方、横軸に沿った拡大は1に近い。したがって、拡大された画像が歪まないで見えるように、対応する微細画像は非常に歪んでいる必要がある。特にこの例においては、微細画像は、観察者が見た拡大された画像と同じ高さを有し、横の東西方向には、拡大されて見える画像のサイズの1/M倍である(Mは当該軸に沿ったモアレ拡大の程度である)。
【0158】
上記の例において、微細合焦要素は微細レンズの形態をとっている。しかし、すべての場合において、セキュリティ素子は代替として鏡ベースのモアレ素子として製造してもよく、その例を図18に示す。この場合、球面微細レンズ配列22は、透明ポリマー基材20の一つの表面上に形成された球面又は非球面凹面鏡に置き換えられる。他方の表面には、前と同様に印刷された微細画像配列110,120が提供される。図18の例において、境界領域150は微細画像配列の隣接対それぞれの間に組み込まれる。しかし、代わりに割込ゾーンを鏡配列40の領域を(例えば、脱金属又は被覆によって)不活性にすることによって生成してもよい。さらに、境界領域が微細画像要素配列の間に組み込まれているときは、図11〜13を参照して説明したように、鏡開領域が割込層155を含んでもよい。
【0159】
凹面鏡の焦点距離は、その曲率半径Rの半分に等しく、かつ、したがって、ミラー基部の直径の4分の1に近接した制限最小値を有することができることに留意されたい。要すれば、所与の基部直径において、ミラーの焦点距離及びF値は、(1.5という一般的な屈折率を仮定した場合に)等価なレンズの値の4分の1となろう。ただし、F値の低減は、焦点深度の低減と等しいことから、実際には、多くの場合に、2Rを格段に下回るミラー基部直径を有することが望ましくなる。
【0160】
例えば、先程引用された好ましい素子厚さを検討することによって、本発明者らは、ミラーの焦点距離が40μmとなることを必要とすることになり、この場合に、これは、ミラーの半径Rが80μmという値を有することを必要とし、かつ、したがって、160μmに近接する最大理論直径と、したがって、F値f/#=0.25mmと、を必要とする。しかし、基部直径を80μmに限定するように選択してもよい。
【0161】
この構造は、反射モードにおいてだけ観察することを意図しており、かつ、したがって、不透明な基材上への適用(ストリップ及びパッチ)又は不透明な基材への部分的な埋め込み(窓を有するスレッド)に最も適している。レンズシステムと同様に、印刷された微細画像は、ミラーシステムの焦点深度又は視野によって決定される精度においてミラーの焦点面と一致しなければならない。
【0162】
割込層が組み込まれているときは、これは好適には最初に印刷受容層23又は基材20に付着させるか、又は第1微細画像配列110と同時に付着させ、次の第2微細画像配列120を付着させることが望ましい。これによって、割込層に属する反射像が、位置ずれによって割込層の上に付着した第2微細画像配列の位置を形成するいずれかの要素の前にあるように可視化されることが確実になる。
【0163】
また、入射光は、ミラー配列によってコリメート光として反射される前に、印刷された微細画像配列110、120を通過するか又は透過しなければならないため(すなわち、空間的に変調されなければならないため)、印刷微細画像が実質的に不透明である場合には、合成的に拡大された画像は、ミラー背景によって提供されるメタメリズム色相に対して黒っぽい色又は色相を帯びることになる。合成的に拡大された画像がその対応する微細画像配列の色を有するように見えるためには、微細画像は、少なくとも部分的に半透明である必要がある。微細画像が半透明の程度が高いほど、合成画像の色は明るくなるが、背景に対する画像コントラストの低減という犠牲を払うことになる。割込層が含まれるときは、上にある微細画像要素が現れることを防ぐために、これは好適には実質的に不透明である。
【0164】
ミラー上の金属被覆がアルミニウムなどの「白色」反射器である場合には、合成画像を取り囲む背景の色相又は色は、見かけ上、銀−白色又は無色である。ただし、銅又はその合金などのその他の手頃な価格の有色金属を使用してもよいことを認識されたい。必要であれば、銀、金、プラチナ、クローム、ニッケル、ニッケル−クローム、パラジウム、すずなどのその他の金属を使用してもよい。
【0165】
すべての実施例において、微細レンズ配列22又は凹面鏡配列40は、ポリマー基材20内に一体的に成形することが可能であり、又は、例えば、注型硬化又はこれに類似したものによって、基材20の表面上に形成することもできる。
【0166】
上記実施例のそれぞれにおいて、各拡大された画像のパネルを形成するために、一つの微細画像配列110,120が用いられ、2以上の配列は互いに横方向に間隔を有する。しかし、実施例のいずれにおいても、第1及び第2配列のいずれか又は双方の「背後」に第3微細画像配列を備えることもできることを認識されたい。すなわち、配列110,120のいずれか又は双方と少なくとも部分的に重複する第3(そして、恐らくは第4、等の)微細画像配列を形成してもよい。好適には、第3微細画像配列は、それと重複する配列とは異なる色をしており、別の工程において形成される。第1及び第2の配列の拡大されたバージョンと干渉しないように、第3配列は好適には、それと重複する配列とは異なるピッチで形成される。前に述べたとおり、観察者が知覚する拡大された画像の「深度」は、微細画像配列と微細合焦要素配列とのピッチ不一致に依存し、したがって第3配列の拡大されたバージョンは、第1及び/又は第2配列とは異なるプレーンにあるように見え、これによって混乱が避けられる。例えば、設計は、青の「20」記号(第1配列110)と赤の「波頭」記号(第2配列120)との交番するパネル、及び「星」若しくはほかのアイコンの第3の共通層又は最初の二つの画像配列の背後に配置された線パターンを有してもよい。別の例においては、第3配列は、拡大されたバージョンが第1及び/又は第2配列の前に現れるようなピッチで配置してもよい。
【0167】
第3配列は、通常の照明条件では見えないが、UV照明下では見えるインクで印刷してもよい。この場合、拡大された「背景」はUV照明下だけで観察される。代替として、第1及び第2の配列110,120のいずれか一つ又は双方を、拡大された画像の色の変化がUV照射下で観察されるように、UV照射に曝露されたとき色が変わるインクで印刷してもよい。
【0168】
図19は基材上に微細画像要素配列を印刷するための装置の一部を示している。上述のとおり、開示された装置は異なる微細画像要素間の位置ずれの程度を大いに減少させ、したがって、図2及び3に関して説明した種類の素子を製造するのに特に適している。しかし、この装置はまた、図5〜18のいずれかを参照して説明した割込ゾーンを含む素子を形成する際に用いるのにも適している。割込ゾーンの幅は既に説明した原理を用いて位置合わせ誤差をなくすように設計できるため、このような素子は、代替として、通常の印刷装置を用いて(例えば、2回の印刷によって、又は第2のオフライン印刷機を用いて)製造してもよいことを認識されたい。それでもなお、既に示したように、割込ゾーンの幅は、素子の外観への影響を減少させるために、できるだけ小さく保つことが好ましく、したがって、ここで説明したように非常に位置合わせ誤差が小さい製造過程が依然として好ましい。
【0169】
図19に示した装置は、基材20の上にそれぞれ第1工程及び第2工程を施すために、二つの印刷機90及び92を備える。基材は、一連のテンションローラTR1…TR4上を装置を通して搬送され、矢印MDによって示される方向(基材のy軸に平行)に進行する。二つの印刷機90,91の間に、二つの印刷機間の基材転送経路の長さを変えるために用いることができる経路長調整部91がある。
【0170】
第1印刷機90は、インク貯蔵部74に対してロールチェーン72を介して結合されたインキングロール70を有する。インクは、ロール70によって、関係する配列の微細画像要素に対応する突出した印刷要素78を担持する印刷ロール76上に転写される。ドクターブレード84は、インク又は着色材に接触し、それらを印刷ローラー82の凹んでいない部分から取り除く。基材20は、印刷ロール76とインプレッションローラー80との間に供給され、かつ、第1配列110の画像要素が基材20上に印刷される。
【0171】
第1印刷機の下流に提供された第2印刷機91は同一の部品、すなわち、凹んだ要素79,ドクターブレード84、及びインプレッションローラー81を備え、画像要素の第2配列120を印刷するために使用される。
【0172】
代替として、印刷機90,92は関係する配列の微細画像要素に対応する凹版印刷要素を担持する印刷ロール76,77を含んでもよい。この場合、ドクターブレード84は必要ない。
【0173】
二つの配列110,120が互いに隣接して印刷できるようにするため、各対応する印刷ローラ76,78の一部だけ(好適には半分を超えない)に印刷要素を用意し、それによってローラの円周の一部だけが基材巻取材料20に微細画像印刷物を加える。したがって、第1印刷機90の出力において、巻取材料は、該巻取材料の空の領域によって隔てられた第1微細画像要素配列110を担持する。第2印刷機92に到着したとき、第2微細画像要素配列が、第1微細画像要素配列の間の空白に印刷される。したがって、各印刷シリンダ76,77が交互に、長さPの微細画像パネルを巻取材料の上に印刷する。
【0174】
境界領域150が配列間に提供されるとき、特定色の印刷されたパネル間の反復距離Rpは、2(P+Δ)であり、2Δは境界領域150の設計幅である。境界領域が必要でないとき(例えば、図2(a),14又は15の素子を製造するとき)は、Δ=0である。
【0175】
二つの印刷ヘッド90,92の間の相対位置合わせを制御するために、経路長調整ユニット91が提供される。経路長調整ユニットは、いくつかの巻取材料転送ローラTR1〜TR4を備え、これらの動作は、機械方向MDにおける巻取材料の張力を調整することである。特にTR3は上又は下に(すなわち、z軸上で巻取材料の面から離れて)移動することができ、それによって二つの印刷機90,92間の経路長を増加又は減少させる。
達成された配列間ギャップ(境界領域)のサイズを検出し、検出されたギャップの大きさに対応する誤差信号を供給するために、カメラ95のような検出器を第2印刷機92の下流に設置してもよい。経路長調整ユニットは、当該ギャップの変動を最小化するため、カメラシステムによって供給される誤差信号に応答して、コントローラ(図示せず)によって制御される(すなわち、フィードバック制御)。
【0176】
印刷されたパネルが横方向に位置揃えされるように、いずれかのローラの軸に儲けられたトランスジューサの作用によって巻取材料の方向(すなわち、x軸方向)に対して横方向に印刷シリンダ76,77のうち一つ又は双方の位置を移動させてもよい。図16に関して説明したとおり、これは互いに組み合わされた割込ゾーンを形成を補助する。
【0177】
二つの印刷されたパネルを付着させた後、巻取材料は反転又は裏返しにされ、反対側に微細レンズ又は微細鏡配列が付着される。例えば、微細レンズ又は微細凹面鏡は、注型硬化、成形、又はこれらに類似したものによって、基材20の反対表面上に設けられる。
【0178】
上述の例においては、微細画像要素は、基材上に印刷することによって設けられている。画像要素の一部又はすべてをレリーフ構造体として設けることも可能であり、かつ、これらのいくつかの例が図13のA〜Jに示されている。これらの図において、“IM”は、画像を生成するレリーフの部分を示しており、“NI”は、画像を生成しない部分を示している。
【0179】
図13のAは、エンボス加工された又は凹入した画像要素を示している。図13のBは、デボス加工された画像要素を示している。図13のCは、格子構造体の形態を有する画像要素を示しており、図13のDは、蛾の目(moth−eye)又はその他の微細ピッチ格子構造体を示している。
【0180】
これらの構造体は、組み合わせることができる。例えば、図13のEは、凹部エリア内において格子によって形成された画像要素を示しており、図13のFは、デボス加工されたエリア上における格子を示している。
【0181】
図13のGは、粗いエンボス加工の使用を示している。
【0182】
図13のHは、エンボス加工されたエリア上における印刷の提供を示しており、図13のIは、“Aztec”形状の構造体を示している。
【0183】
図13のJは、インクが充填された凹部を示している。
【0184】
上述の素子構造の様々な実施形態は、既知の方法によって、プラスチック又は紙の基材に内蔵するために、パッチ、フォイル、ストライプ、ストリップ、又はスレッドに切り裂くか又は切断することができる。図21及び22は、前の実施例のいずれかによって製作された素子が、セキュリティ文書(例えば、銀行券、印紙、パスポートスタンプ、金融カード、等)のような物品1に、該物品の一つの端から他の端まで伸びる中断のないストリップ又はストライプとして付着される例を示している。素子10は、熱及び/又は圧力を加えることによって文書に付着させてもよく、したがって、適切な形態の接着剤を、文書基材に固定される素子の側に付着させてもよい。代替として、例えば低温接着剤又はほかの転写方法(例えば、ホットスタンプ)を用いてもよい。素子と文書とが、素子接着剤が熱及び圧力によって作用する回転ニップを通過する直前に接触するようにして、素子を基材上に「転が」してもよい。
【0185】
図22は、図21の線x−xに沿った断面図であり、反射限定モードで動作するレンズベースの実施例を示している。素子10は、接着層6によって物品1の実質的に不透明な紙又はポリマーベースの基材5に貼り付けられている。この場合、観察者Oが見る合成的に拡大された画像は、微細画像配列100及び微細画像配列の背景として作用する媒体から後方散乱又は反射された光から最終的に得られる。微細画像配列と周囲の背景媒体との反射コントラストが大きいほど、合成的に拡大された画像のコントラストも大きい。基材5の色又は反射特性は非最適であってもよい。例えば、基材は低反射性であってもよいし、微細画像配列のうち一つと類似した色であってもよい。このことを扱うために、微細印刷境界と素子を基材5に接着する接着材層との間に配置された任意選択のマスク被覆層7を加えることを図22に示す。マスク層7は通常、樹脂接合剤中に二酸化チタンのような、しかしそれに限定されない反射性不透明化顔料を含む。この層の色は単純に白であってもよいし、このマスク層又は背景反射層が、微細画像配列のうち一つ又は双方と対照する所望の色相を呈するように着色材を加えてもよい。
【0186】
更なる例において、マスク被覆及び微細画像配列のうち一つは明らかに同一色を有するが、一つ又は他のエンティティはメタメリズム性質を有してもよい。メタメリズムインクの例は、英国特許第1407065号に記載されている。したがって、通常の観察下では、関係する微細画像配列は、不透明なマスクの背景色に対して(できたとしても)わずかに識別できるだけである。しかし、メタメリズムフィルタ下で観察したときは、上記の微細画像配列、より適切にはその合成的に拡大された画像が非常に明白になる。代替として、蛍光灯下で観察したとき、吸収性微細画像配列が黒の合成的に拡大された画像を形成する蛍光背景を提供するように、マスク被覆に蛍光添加剤を加えてもよい。
【0187】
マスク被覆はまた、耐久性強化層としても機能する。
【0188】
再度図2を参照すると、第1微細画像配列110は第1のメタメリズムインクで印刷され、星の第2配列120は第2のメタメリズムインクで印刷されていてもよい。ここで、インクのメタメリズム特性は、昼光下で観察したときは二つのインクが同一の色に見え、フィルタされた光の下で観察したときは二つのインクが異なる反射色を有して見えるようになっている。
【0189】
別の実施例において、実施例のうちいずれかによる素子は、窓の開いたスレッドとしてセキュリティ文書に組み込まれてもよい。このような構成の例を図23,24及び25に示す。図23において、ここでも実施例のうちいずれかによる素子は、銀行券、印紙、正規品証明書又はパスポートのページのようなセキュリティ文書又はほかの物品の中又は上に提供される。窓8は、素子10のある部分を見せる。この例においては、素子設計は、紙又は基材統合過程において基材窓9の「南北」(すなわち、図に示すように上下)の位置に位置合わせされていない。その結果、製造者は、特定の画像パネル11,12が特定の窓8の中に全部かつ排他的に見えることを保証することができない。しかし、各窓に一つのパネルがあることを保証する可能性は、各対応する色のパネル11,12の長さがスレッド窓8の長さを大きく超え、一方同時に窓反復距離より短く留まるとき、増加する。
【0190】
図24は素子設計、より詳細にはその垂直色交番が、基材1内の窓の開いたゾーン8に位置合わせされている別の実施例を示している。この実施例は、各窓に一つの色のパネル11,12があることが、観察者が素早く認識できる、あいまいでなく、容易に説明できるセキュリティ特徴を提供するため、強く望まれる。例えば、一番上の窓8’は画像パネル12だけを見せ、一方、隣接する窓8”は画像パネル11だけを見せる。二つの画像パネルが接触する遷移ゾーンは、文書の窓のない(例えば完全に埋め込まれた)部分に配置され、したがって観察者による可視化から隠される。したがって、二つの微細画像配列110,120が互いに正確に位置合わせされているかどうか、又は素子が画像パネル11,12の間に割込ゾーンを含んでいるかどうかは、影響を受ける領域が隠されているため重要ではない。したがって、この実施例においては、素子は前の実施例のいずれかに従って作られる必要はなく、特定の位置合わせ要求条件又は境界領域、等なしに(例えば、配列は意図的かどうかに関わらず、互いに部分的に重複してもよい)、単に別の工程、別の色で形成された少なくとも二つの横方向に間隔を空けた微細画像要素配列を有するだけでよい。しかし、上記実施例のいずれかに従う素子は、もちろん目的によって選択される。
【0191】
図25及び26は、図24の線Y−Yに沿った二つの代替断面図である(異なる数の窓8が描かれているが、原理は同一であることに注意されたい)。図25の実施例において、素子10は基材5の表面に、文書の全厚みを貫通している窓8と位置揃えして貼り付けられている。窓8は開口部であってもよいし、基材5の透明領域(例えば、ポリマー)であってもよい。窓8は、素子10の付着に先立って形成してもよいし、後であってもよい(例えば、研磨による)。素子10は、図21及び22に関して前に述べた技法のうちいずれかを用いて、基材に貼り付けられ、通常は接着剤層が微細レンズ配列22と基材との間に提供される。意図せずにレンズの「屈折率整合」を行って、上述のようにレンズを機能しなくすることがないよう注意が必要である。したがって、接着剤の屈折率がレンズの屈折率と類似しているときは、レンズと接着剤との間に、異なる屈折率を有する被覆を含んでもよい。マスク層7は、前と同様に提供してもよいし、省略してもよい。
【0192】
上で説明したように、隣接する微細画像配列間の境界がそれぞれ、窓8の間の基材5によって隠されるように、素子10は当業において利用可能な技法を用いて基材5と位置合わせされる。各窓8は、第1配列110又は第2配列120のいずれかと位置揃えされる。
【0193】
この配置において、素子10は基材5内の透明開口部8の上に少なくとも部分的に付着されるため、素子は反射モード及び透過モード双方で動作することができる。この場合、合成的に拡大された画像は、基材5の観察開口部8を通して反射及び/又は透過で見ることができる。観察者は、位置Oにいるときだけ拡大された画像を見ることができる。不透明マスク被覆7が省略されたときは、同一の観察者がモアレ拡大系を透過で観察できる。接着剤層が良好な光学透明度(すなわち、低散乱、低吸収)を有することも必要である。
【0194】
印刷された微細画像110、120が、実質的に不透明なインク又は着色剤から形成されている場合には、合成的に拡大された画像は、反射状態において観察された際には、有色となるが、透過状態において観察された際には、高コントラストの基本的に黒色の画像を形成することになることに留意されたい。
【0195】
色付き画像が透過で見えるための要求条件は、微細画像がある程度の半透明性を有しなければならないことである。光は印刷された画像を貫通できなければならず、そうすると所望の色が透過する。領域内には二つの配列110,120があり、したがって拡大された画像が重複し、追加の色混合が起こることを認識されたい。例えば、二つの配列の色が赤及び青であるときは、重複した範囲では画像はマゼンタになるであろう。
【0196】
また、観察者が位置Oから素子を見たときは、合成的に拡大された画像は観察されず、代わりに微細画像パターンの変更されていない、すなわち直接の画像(又は、存在するときは単にマスク被覆7)が観察されることに注意されたい。
【0197】
図26の代替として、図10は文書内に部分的に埋め込まれる。これは、製紙の際に素子を組み込むか、層間に素子を積層して例えば文書を作成することによって達成される。ここで、基材5は二つの部分5a及び5b、一つは素子10の上、一つは下、に示されている。ここで、通常、素子10の両側に接着剤がある(層6だけが示されているが、レンズの屈折率整合に関して前に述べたのと同一の考慮をする必要がある)。ここでも窓8は、素子を含む文書の組み立ての前又は後に(例えば、穴あけ又は研磨によって)形成された基材の第1部分5aを貫通する開口部であってもよいし、ポリマー層の透明部分であってもよい。この場合、基材層5bが不透明なときは、素子10は位置Oから反射モードによってだけ見ることができる。
【0198】
更なる例においては、セキュリティ素子は、1つ又は複数のその他の光学セキュリティ機能をも含む。この例が図27に示されている。この例においては、モアレ拡大器素子10は、上記の実施例のいずれかを参照して説明したように形成されている。また、このセキュリティ素子は、いくつかのホログラム画像生成構造体400をも含む。これらのホログラム画像構造体400は、微細レンズと同一の樹脂内に鋳造又はエンボス加工することができるが、同様に、微細レンズを鋳造するのに適したものとホログラム構造体をエンボス加工するのに適したものという2つの異なる樹脂を見当の合った状態において適用することもできる。又は、この代わりに、ホログラム構造体は、微細レンズとは反対のポリマー層の面に位置したポリマーラッカー内にエンボス加工することもできる。
【0199】
ホログラム生成構造体400は、ホログラム又はDOVID画像要素の形態を有することができる。図14に示されているラベル構造においては、微細レンズと、2つの拡大された画像配列の可視化されたものと、は、中央の水平な帯又はラベルの領域内に配置されており、ホログラム生成構造体400は、両側部に配置されている。ただし、この例は、純粋に例示を目的としたものであり、かつ、例えば、モアレ拡大素子10が両側部上の1つ又は複数の領域内に設けられた状態において、ホログラム生成構造体400を中央の帯又はストリップ内に配置することもできることを理解されたい。又は、この代わりに、モアレ拡大された画像と、ホログラム生成構造体によって提供される画像と、を、単一画像のそれぞれの提供コンポーネントによって、単一画像に統合することもできる。図28はこのような統合された設計の一例を示している。この場合には、ホログラム生成構造体401は、ロールを形成しており、かつ、このロールの中間部分において、ホログラム構造体は、この場合には移動する“5”及び星であるモアレ拡大された画像を生成するために、モアレ拡大素子10によって置換されている。
【0200】
ホログラム構造体400、401の場合には、これらは、任意の従来の形態を有することが可能であり、かつ、完全に又は部分的に金属被覆することができる。又は、この代わりに、反射改善金属被覆層をZnSなどの実質的に透明な無機高屈折率層によって置換することもできる。
【0201】
どのような構成が規定されるのかとは無関係に、図27及び図28において2つの異なる光学効果に対して割り当てられている個々の領域は、それらの効果の明瞭な可視化を促進するために十分に大きいことが有利である。
【0202】
以上の図面に示されているセキュリティ素子は、保護対象文書に接触する素子の外側表面に対する感熱又は感圧接着剤の適用を通常必要とする文書を保護するためのラベルとして適用されるのに適している。更には、任意選択の保護被覆/ワニスを素子の露出した外側表面に適用することもできる。保護被覆/ワニスの機能は、セキュリティ基材上への転写の際及び流通の際の、素子の耐久性を増大させることである。
【0203】
ラベルではなく転写要素の場合には、セキュリティ素子は、好ましくは、担持体基材上に予め製造され、かつ、後続の作業ステップにおいて基材に転写される。セキュリティ素子は、接着剤層を使用して文書に貼付することができる。接着剤層は、セキュリティ素子に、又はその素子が貼付される保護対象文書の表面に、適用される。露出した層、又はこの代わりに担持体層が、外側保護層として機能する構造の一部として留まることができるため、転写の後に、担持体ストリップを除去し、これによって、セキュリティ素子を残すことができる。微細光学構造体を有する注型硬化素子に基づいてセキュリティ素子を転写するための適切な方法が欧州特許第1897700号明細書に記述されている。
【0204】
また、本発明のセキュリティ素子は、セキュリティストリップ又はスレッドとして内蔵することもできる。いまや、セキュリティスレッドは、世界の多くの通貨だけでなく、証票、パスポート、トラベラーズチェック、及びその他の文書にも、存在している。多くの場合に、スレッドは、部分的に埋め込まれた方式又は窓を有する方式によって設けられており、この場合に、スレッドは、紙の内外に編み込まれているように見える。所謂窓を有するスレッドを有する紙を製造する1つの方法は、欧州特許第0059056号明細書において見出すことができる。欧州特許第0860298号明細書及び国際特許出願公開第2003/095188号パンフレットは、幅の広い部分的に露出したスレッドを紙の基材に埋め込むための様々な方法について記述している。更なる露出エリアが本発明などの光学的に変化可能な素子の良好な使用法を許容するため、通常は2〜6mmの幅を有する幅広のスレッドが特に有用である。図2〜18に示されている素子構造体は、透明な無色の接着剤の層を素子の外側表面のいずれか又は両方に適用することによって、スレッドとして使用することができる。微細レンズとの接触状態にある接着剤の光学特性の慎重な選択が重要である。接着剤は、微細レンズの材料よりも低い屈折率を有することを要し、かつ、微細レンズと接着剤との間の屈折率の差が大きいほど、レンズの背面焦点距離が短くなり、かつ、したがって、最終的なセキュリティ素子が薄くなる。
【0205】
本発明のセキュリティ素子は、いずれかの層に検出可能な材料を導入することによって、又は、別個の機械可読層を導入することによって、機械によって判読可能なものにすることができる。外部刺激に対して反応する検出可能な材料は、限定を伴うことなしに、蛍光性材料、燐光性材料、赤外線吸収材料、サーモクロミック材料、フォトクロミック材料、磁性材料、エレクトロクロミック材料、導電性材料、及びピエゾクロミック材料を含む。
【0206】
薄膜干渉要素、液晶材料、及びフォトニック結晶材料などの更なる光学的に変化可能な材料をセキュリティ素子に含むことができる。このような材料は、フィルミック層の形態であってもよく、又は、印刷による適用に適した着色された材料であってもよい。
【0207】
本発明のセキュリティ素子は、不透明な層を有してもよい。
【0208】
図29及び図30は、本発明のセキュリティ素子に内蔵された金属被覆が剥離された(demetallised)画像の形態を有する更なるセキュリティ機能を示している。素子10の拡大された画像配列が、この素子の中央の帯内において観察される。これは、強力なレンチキュラータイプのアニメーションに起因した第1セキュリティ効果を提供する。図30において観察することができるように、断面A−Aに沿った図29内に示されている機能の構造は、図10に示されているとおりである。モアレ拡大を示す中央の帯の外の領域においては(断面B−Bに沿って観察されるように。線B−Bは境界領域150と交差するため、微細画像配列要素は見えないことに注意されたい。)、印刷受容層23は、金属被覆されている410。金属層の各部分415の金属被覆を剥離させることによって、金属被覆が剥離された画像を規定しており、かつ、これによって、反射光において観察可能であるが更に好ましくは透過光においても観察可能である金属被覆が剥離された標識の生成を可能にしている。
【0209】
更なる例においては、かつ、図18に示されているミラーに基づいたモアレの例を参照すれば、微細ミラーを形成する金属被覆された層は、微細ミラーを超えて延在してもよく、かつ、次いで、この層の各部分の金属被覆を剥離させて金属被覆が剥離された画像を規定することができる。
【0210】
制御され且つ明確に規定されたエリア内に金属が存在していない部分的に金属被覆された/金属被覆が剥離された薄膜を製造するための1つ方法は、米国特許第4652015号明細書に記述されているものなどのレジスト及びエッチング法を使用して領域の金属被覆を選択的に剥離させるというものである。類似の効果を実現するためのその他の技法としては、例えば、アルミニウムをマスクを通じて真空堆積させることが可能であり、又は、アルミニウムをプラスチック担持体の複合ストリップから選択的に除去することが可能であり、かつ、アルミニウムをエキシマレーザーを使用して選択的に除去することができる。又は、この代わりに、Eckart社が販売するMetalstar(登録商標)インクなどの金属質の外観を有する金属効果インクを印刷することによって、金属質の領域を設けてもよい。
【0211】
金属質層の存在を使用して機械可能暗色磁性層の存在を隠蔽することができる。磁性材料を素子に内蔵する際には、磁性材料を任意の設計において適用することができるが、一般的な例は、暗号化された構造体を形成するための磁気トラムラインの使用又は磁気ブロックの使用を含む。適切な磁性材料は、酸化鉄顔料(Fe23又はFe34)、バリウム又はストロンチウムフェライト、鉄、ニッケル、コバルト、及びこれらの合金を含む。この文脈において、「合金」という用語は、ニッケル:コバルト、鉄:アルミニウム:ニッケル:コバルト、及びこれらに類似したものなどの材料を含む。ニッケルのフレーク材料を使用することが可能であり、更には、鉄のフレーク材料が適している。一般的なニッケルのフレークは、5〜50μm(ミクロン)の横寸法と、2μm(ミクロン)未満の厚さと、を有する。一般的な鉄のフレークは、10〜30μm(ミクロン)の範囲の横寸法と、2μm(ミクロン)未満の厚さと、を有する。
【0212】
代替機械可読実施形態においては、透明な磁性層を素子構造内の任意の位置に内蔵することができる。所定のサイズを有すると共に磁気層が透明な状態に留まる濃度において分布した磁性材料の粒子の分布を含む適切な透明磁性層が国際特許出願公開第2003/091953号パンフレット及び国際特許出願公開第2003/091952号パンフレットに記述されている。
【0213】
更なる例においては、本発明のセキュリティ素子は、その素子が文書の透明領域に内蔵されるように、セキュリティ文書に内蔵してもよい。セキュリティ文書は、紙及びポリマーを含む任意の従来の材料から形成された基材を有してもよい。当技術分野においては、これらのタイプの基材のうちのそれぞれの基材内に透明な領域を形成するための技法が知られている。例えば、国際特許出願公開第1983/00659号パンフレットは、基材の両面上に不透明被覆を有する透明基材から形成されたポリマー銀行券について記述している。基材の両面上の局所領域内において不透明被覆を省略し、透明領域を形成している。
【0214】
欧州特許第1141480号明細書は、紙の基材内に透明領域を製造する方法について記述している。紙の基材内に透明領域を形成するためのその他の方法は、欧州特許第0723501号明細書、欧州特許第0724519号明細書、欧州特許第1398174号明細書、及び国際特許出願公開第2003/054297号パンフレットに記述されている。
【0215】
本発明の微細画像配列のうちの1つ又は複数の配列は、非可視放射に対して可視的に応答する材料を有するインクによって印刷してもよい。当業者には、蛍光又は燐光特性を有する材料を含むものとして、ルミネセント材料が知られている。また、フォトクロミック材料及びサーモクロミック材料などの非可視放射に対して可視的に応答するその他の材料の使用も周知である。例えば、拡大された配列のうちの1つだけが通常の昼光条件において可視となり、第2の拡大された画像がUV照明下においてだけ可視になってもよいであろう。又は、この代わりに、2つの拡大された配列が、通常の昼光条件においては、同一色に見え、かつ、フィルタを使用して観察された際には、又は、UV照明下において観察された際には、異なる色に見えることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材を有するモアレ拡大素子であって、前記透明基材は、
i)第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、前記合焦要素は、焦点面を規定している、微細合焦要素の配列と、
ii)第1色の、かつ、前記合焦要素の前記焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第1配列と、
iii)前記第1色とは異なる第2色の、かつ、前記合焦要素の前記焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第2配列であって、前記第1配列から横方向にオフセットしている第2配列と、
を担持しており、
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素の第1及び第2配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、前記微細合焦要素の配列が前記微細画像要素の第1及び第2配列のそれぞれと協働し、モアレ効果に起因してそれぞれの配列の前記微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するように、かつ、
非零幅の割込ゾーンが、前記第1の微細画像配列の拡大されたバージョンと、前記第2の微細画像配列の拡大されたバージョンとの間に知覚され、前記割込ゾーンはいずれの微細画像配列の拡大されたバージョンも呈示しないようになっている、素子。
【請求項2】
前記微細画像要素の第1配列は、前記微細画像要素の第2配列から微細画像要素のない非零幅の境界領域によって隔てられ、それによって観察者が前記割込ゾーンを知覚するようになる、請求項1に記載の素子。
【請求項3】
前記微細画像要素のない境界領域の幅は、前記境界領域を横断する方向において、いずれの微細画像要素配列の最大反復距離より大きい、請求項2に記載の素子。
【請求項4】
前記微細画像要素のない境界領域の幅は、前記微細画像要素配列のいずれの最大ピッチより大きい、請求項2に記載の素子。
【請求項5】
前記微細画像要素のない境界領域の幅は、前記第2微細画像要素配列に対する前記第1微細画像要素配列の位置合わせ誤差Σより大きい、請求項2〜4のいずれか一項に記載の素子。
【請求項6】
前記微細画像要素のない境界領域の幅は、20μm(ミクロン)と3000μm(ミクロン)の間であり、当該範囲の下限は好適には50μm(ミクロン)、より好適には100μm(ミクロン)であり、当該範囲の上限は好適には1500μm(ミクロン)、より好適には1000μm(ミクロン)、更に好適には300μm(ミクロン)、最も好適には150μm(ミクロン)である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の素子。
【請求項7】
前記微細画像要素のない境界領域は割込層を担持し、該割込層は好適には均一又はパターンのある印刷物又は被覆の形態をとる、請求項2〜6のいずれか一項に記載の素子。
【請求項8】
前記微細画像要素のない境界領域において、前記割込層は、前記基材と、前記微細画像要素の前記第1及び第2配列のうち少なくとも一つとの間に配置される、請求項7に記載の素子。
【請求項9】
前記割込層は、好適には低倍率拡大下で観察するための図形である、隠れたセキュリティ機能を有する、請求項7又は8に記載の素子。
【請求項10】
前記微細合焦要素の規則的な配列は、機能する微細合焦要素のない非零幅の境界領域によって互いに横方向に隔てられた微細合焦要素の第1及び第2の規則的な配列を有し、前記境界領域は前記微細画像要素の第1配列と、前記微細画像要素の第2配列との間の遷移と位置揃えされており、それによって観察者が前記割込ゾーンを知覚するようになっている、請求項1に記載の素子。
【請求項11】
前記微細合焦要素のない境界領域の幅は、個々の微細合焦要素の最大寸法より大きい、請求項10に記載の素子。
【請求項12】
前記微細合焦要素のない境界領域の幅は、前記微細合焦要素配列のいずれかの最大ピッチより大きい、請求項10に記載の素子。
【請求項13】
前記微細合焦要素のない境界領域の幅Δrは、前記第2微細画像要素配列に対する前記第1微細画像要素配列の位置合わせ誤差Σより大きい、請求項10〜12のいずれか一項に記載の素子。
【請求項14】
前記微細合焦要素のない境界領域の幅Δrは、式
Δr≧2(Σ+δ)
に従って計算され、
ここでδは、前記第1及び第2微細画像配列に対する前記微細合焦要素配列の位置合わせ誤差である、請求項10〜13のいずれか一項に記載の素子。
【請求項15】
前記微細合焦要素のない境界領域の幅は、25μm(ミクロン)と3000μm(ミクロン)の間であり、当該範囲の下限は好適には50μm(ミクロン)、より好適には100μm(ミクロン)であり、当該範囲の上限は好適には1500μm(ミクロン)、より好適には1000μm(ミクロン)、更に好適には300μm(ミクロン)、最も好適には150μm(ミクロン)である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の素子。
【請求項16】
前記微細合焦要素のない境界領域は、当該領域内の微細合焦要素の上に形成された材料の層を有し、前記材料は、前記境界領域内の微細合焦要素が機能しないように、前記微細合焦要素の屈折率と実質的に同一の屈折率を有する、請求項10〜15のいずれか一項に記載の素子。
【請求項17】
前記微細合焦要素のない境界領域は、微細合焦要素のない領域を有する、請求項10〜15のいずれか一項に記載の素子。
【請求項18】
前記割込ゾーンは、直線、曲線、正弦波、矩形波、又は階段状である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の素子。
【請求項19】
前記配列間のピッチ不一致は、前記第1微細画像配列の拡大されたバージョンが、前記第2微細画像配列の拡大されたバージョンの上又は下に見えるように選ばれる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の素子。
【請求項20】
前記配列間のピッチ不一致は、前記第1及び第2の微細画像配列が、互いに同一の深度に見えるように選ばれる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の素子。
【請求項21】
前記合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーン内にある、微細画像要素の第3配列を更に有し、前記微細画像要素の第3配列は、前記微細画像要素の第1及び/又は第2配列と少なくとも部分的に重複しており、
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素の第3配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、前記微細合焦要素の配列が前記微細画像要素の第3配列と協働し、モアレ効果に起因して前記第3配列の微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するようになっており、
前記第3配列の微細画像要素の拡大されたバージョンが、前記第1及び/又は第2配列から得られる画像プレーンの上又は下にあるように知覚されるように、前記第3配列のピッチと前記微細合焦要素配列のピッチとの間のピッチ不一致が、前記第1配列のピッチと、前記微細合焦要素配列のピッチとのピッチ不一致、及び/又は前記第2配列のピッチと前記微細合焦要素配列のピッチとの間のピッチ不一致と異なる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の素子。
【請求項22】
前記合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された微細画像要素の更なる配列を更に有し、該微細画像要素の更なる配列は、前記第1及び第2配列から横方向にオフセットしており、
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素の更なる配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、前記微細合焦要素の配列が前記微細画像要素の更なる配列と協働し、モアレ効果に起因して前記配列の前記微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するように、かつ、
非零幅の更なる割込ゾーンが、前記第1又は第2の微細画像配列の拡大されたバージョンと、前記更なる微細画像配列の拡大されたバージョンとの間に知覚され、前記割込ゾーンは前記微細画像配列のいずれの拡大されたバージョンも呈示しないようになっている、請求項1〜21のいずれか一項に記載の素子。
【請求項23】
前記微細合焦要素は、球面レンズレット、円柱形レンズレット、平凸レンズレット、両凸レンズレット、フレネルレンズレット、及びフレネルゾーンプレートなどの微細レンズを有する請求項1〜22のいずれか一項に記載の素子。
【請求項24】
それぞれの微細レンズは、1〜100μm(ミクロン)、好ましくは1〜50μm(ミクロン)、更に好ましくは10〜30μm(ミクロン)の範囲の直径を有する、請求項23に記載の素子。
【請求項25】
前記微細合焦要素は、凹面鏡を有する請求項1〜22のいずれか一項に記載の素子。
【請求項26】
前記微細画像要素の第1配列の拡大されたバージョンは、前記微細画像要素の第2配列の拡大されたバーションの前面に(又は、上方に)見える請求項1〜25のいずれか一項に記載の素子。
【請求項27】
前記配列の少なくとも1つの中の微細画像要素は、同一である請求項1〜26のいずれか一項に記載の素子。
【請求項28】
それぞれの配列の微細画像要素は、それぞれの他の配列の微細画像要素とは異なっている請求項1〜27のいずれか一項に記載の素子。
【請求項29】
前記配列の1又は複数の微細画像要素は、シンボル、幾何学的図形、英数字、ロゴ、及び画像表現などのアイコンを有する請求項1〜28のいずれか一項に記載の素子。
【請求項30】
前記配列の1又は複数の微細画像要素は、好ましくは、例えば平行な(直)線などの線パターン、単純な幾何学的図形、又はギロシェパターンなどの複雑な線構造体である、対応する、共通の、通常は実質的に均一な背景を規定する、請求項1〜29のいずれか一項に記載の素子。
【請求項31】
前記微細画像要素は、前記基材上に印刷される請求項1〜30のいずれか一項に記載の素子。
【請求項32】
前記微細画像要素は、前記基材上の格子構造体、凹部、又はその他のレリーフパターンとして形成される請求項1〜30のいずれか一項に記載の素子。
【請求項33】
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びポリプロピレンのうちの1つなどのポリマーを有する請求項1〜32のいずれか一項に記載の素子。
【請求項34】
前記微細合焦要素配列の背面と前記微細画像要素配列との距離は、1〜50μm(ミクロン)、好ましくは、10〜30μm(ミクロン)の範囲である請求項1〜33のいずれか一項に記載の素子。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか一項に記載のセキュリティ素子。
【請求項36】
前記モアレ拡大素子に隣接して配置された又はこれと統合された1つ又は複数の光学的に変化可能な効果を生成する構造体を更に有する請求項35に記載のセキュリティ素子。
【請求項37】
セキュリティスレッド、ラベル、又はパッチとして形成された請求項35又は36に記載の素子。
【請求項38】
前記素子は、銀行券、身分証明書、又はこれらの類似物のようなセキュリティ文書の透明な窓内に設けられる、請求項35〜37のいずれか一項に記載のセキュリティ素子。
【請求項39】
好適には、銀行券、小切手、パスポート、身分証明書、正規品証明書、収入印紙、及びセキュリティ価値又は身元に関するその他の文書のうちの1つを有する、請求項1〜38のいずれか一項に記載の光学素子を有する物品。
【請求項40】
モアレ拡大素子を製造する方法であって、
a)第1表面上に微細合焦要素の規則的な配列を形成するステップであって、前記合焦要素は焦点面を規定している、ステップと、
b)第1工程において、前記透明基材の第2表面上に、第1色の、かつ、前記合焦要素の前記焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第1配列を形成するステップと、
c)第2工程において、前記透明基材の前記第2表面上に、前記第1色とは異なる第2色の、かつ、前記合焦要素の前記焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第2配列であって、前記第1配列から横方向にオフセットしている第2配列を形成するステップと、
を任意の順序で有しており、
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素の第1及び第2配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、前記微細合焦要素の配列が前記微細画像要素の第1及び第2配列のそれぞれと協働し、モアレ効果に起因してそれぞれの配列の前記微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成する、方法。
【請求項41】
前記第1及び第2工程の間の位置合わせの最大誤差(Σ)は、100μm(ミクロン)、好適には75μm、より好適には50μmを超えない、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素の更なる配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、前記素子が、前記第1微細画像配列の拡大されたバージョンと、前記第2微細画像配列の拡大されたバージョンとの間に非零幅の更なる割込ゾーンを表示し、前記割込ゾーンは前記微細画像配列のいずれの拡大されたバージョンも呈示しないようになっている、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記微細画像要素の第1及び第2配列は、各配列内の前記微細画像要素の所望の位置を規定する設計テンプレートに従って前記基材上に形成され、該設計テンプレートは、前記微細画像要素の第1及び第2配列間の微細画像要素がない非零設計幅2Δの境界領域を含み、該境界領域は、前記配列が前記基材上に形成された後、前記割込ゾーンを観察者が知覚するようにする境界領域として顕在化され、Σは、ステップ(b)及び(c)において前記配列を形成するステップと関連する、前記第2微細画像要素配列に対する前記第1微細画像要素配列の位置合わせ誤差である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記微細画像要素のない境界領域の設計幅は、個々の微細画像要素の最大寸法より大きい、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記微細画像要素のない境界領域の設計幅は、前記微細画像要素配列のいずれかの最大ピッチより大きい、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記微細画像要素のない境界領域の設計幅は、前記位置合わせ誤差Σより大きい、請求項43〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
Σ≧100μm(ミクロン)の値について、前記微細画像要素のない境界領域の設計幅2Δは、式
(2Δ−Σ)/(2Δ+Σ)=ξ≧0.8
によって計算される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
Σ≧100μm(ミクロン)の値について、前記微細画像要素のない境界領域の幅2Δは、約0.5Σより大きいか等しく、より好適には約Σより大きいか等しい、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
前記微細合焦要素のない境界領域の設計幅は、25μm(ミクロン)と3000μm(ミクロン)の間であり、当該範囲の下限は好適には50μm(ミクロン)、より好適には100μm(ミクロン)であり、当該範囲の上限は好適には1500μm(ミクロン)、より好適には1000μm(ミクロン)、更に好適には300μm(ミクロン)、最も好適には150μm(ミクロン)である、請求項43〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記微細画像要素のない境界領域に割込層を形成するステップを更に有し、該割込層は好適には均一又はパターンのある領域の形態をとる、請求項43〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記割込層は、前記微細画像要素の前記第1及び第2配列のうち少なくとも一つが形成される前に、前記基材上に配置される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記割込層は、前記微細画像要素の第1配列の形成と同一の工程において、かつ前記第2配列の形成の前に、配置される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記割込層は、隠れたセキュリティ機能、好適には低倍率拡大下で観察するための図形を有する、請求項50〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記ステップ(a)は、機能する微細合焦要素のない非零幅Δrの境界領域によって互いに横方向に隔てられた微細合焦要素の第1及び第2の規則的な配列を形成するステップを有し、前記境界領域は前記微細画像要素の第1配列と、前記微細画像要素の第2配列との間の遷移と位置揃えされており、それによって観察者が前記割込ゾーンを知覚するようになっている、請求項42に記載の方法。
【請求項55】
前記微細合焦要素のない境界領域の幅は、個々の微細合焦要素の最大寸法より大きい、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記微細合焦要素のない境界領域の幅は、前記微細合焦要素配列のいずれかの最大ピッチより大きい、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記微細合焦要素のない境界領域の幅Δrは、前記第2微細画像要素配列に対する前記第1微細画像要素配列の位置合わせ誤差Σより大きい、請求項54〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記微細合焦要素のない境界領域の幅Δrは、式
Δr≧2(Σ+δ)
に従って計算され、
ここでδは、前記第1及び第2微細画像配列に対する前記微細合焦要素配列の位置合わせ誤差である、請求項54〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記微細合焦要素のない境界領域の幅は、25μm(ミクロン)と3000μm(ミクロン)の間であり、当該範囲の下限は好適には50μm(ミクロン)、より好適には100μm(ミクロン)であり、当該範囲の上限は好適には1500μm(ミクロン)、より好適には1000μm(ミクロン)、更に好適には300μm(ミクロン)、最も好適には150μm(ミクロン)である、請求項54〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記微細合焦要素のない境界領域は、前記境界領域内の微細合焦要素が機能しないように、前記微細合焦要素の屈折率と実質的に同一の屈折率を有する材料の層を、前記境界領域内の微細合焦要素の上に付着させることによって形成される、請求項54〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記微細合焦要素のない境界領域は、前記の二つの微細合焦要素配列を互いに間隔を空けることによって形成され、微細合焦要素のない領域を残す、請求項54〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記割込ゾーンは、直線、曲線、正弦波、矩形波、又は階段状である、請求項40〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
d)前記基材上に、前記合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された微細画像要素の第3配列を形成するステップであって、該微細画像要素の第3配列は、前記微細画像要素の第1及び第2配列と少なくとも部分的に重複している、ステップ、を更に有し、
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素の第3配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、前記微細合焦要素の配列が前記微細画像要素の第3配列と協働し、モアレ効果に起因して前記第3配列の前記微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するようになっており、
前記第3配列の微細画像要素の拡大されたバージョンが、前記第1及び/又は第2配列から生じる画像プレーンの上又は下にある画像プレーンにあるように知覚されるように、前記第3配列のピッチと前記微細合焦要素配列のピッチとのピッチ不一致は、前記第1配列のピッチと、前記微細合焦要素配列のピッチとのピッチ不一致及び/又は前記第2配列のピッチと前記微細合焦要素配列のピッチとのピッチ不一致とは異なる、請求項40〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
e)前記基材上に、前記合焦要素の焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された微細画像要素の更なる配列を形成するステップであって、該微細画像要素の更なる配列は、前記第1及び第2配列から横方向にオフセットしている、ステップ、を更に有し、
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素の更なる配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、前記微細合焦要素の配列が前記微細画像要素の更なる配列と協働し、モアレ効果に起因して前記配列の前記微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成するように、かつ
前記第1又は第2微細画像配列の拡大されたバージョンと、前記更なる微細画像配列の拡大されたバージョンとの間に、非零幅の更なる割込ゾーンが知覚され、前記割込ゾーンは前記微細画像配列のいずれの拡大されたバージョンも呈示しないようになっている、請求項40〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記ステップ(b)及び(c)において、前記第1及び第2微細画像要素配列が、第1及び第2のオンライン印刷機を備える装置を用いて順に形成され、前記印刷機の一つは他の下流にあり、前記印刷機はそれぞれ印刷ローラを備え、該印刷ローラは、その表面の、好適には該表面の半分を超えない、一部だけに配列された印刷要素を有する、請求項40〜64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記装置は、前記第1及び第2オンライン印刷機間の経路長を調整するようにした経路長調整ユニットを更に備える、請求項66に記載の方法。
【請求項67】
前記経路長調整ユニットは、前記第1及び第2印刷機間に、基材巻取材料を担持する少なくとも一つのテンションローラを備え、前記少なくとも一つのテンションローラは、前記巻取材料の面からはずれた方向に移動可能であり、それによって前記経路長を調整する、請求項67に記載の方法。
【請求項68】
前記経路長調整ユニットは、好適にはカメラである検出器であって、前記第2印刷機の下流に設置され、前記第1及び第2微細画像要素配列間の距離を検出するようにした検出器と、前記の検出した距離に基づいて、前記経路長を調整するようにしたコントローラと、を更に備える、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
請求項19,20又は23〜34のいずれか一項に記載の特徴のいずれかを提供するステップを更に有する、請求項40〜68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記素子を、銀行券、身分証明書、等のセキュリティ文書に組み込むか、又は前記セキュリティ文書の上に付着させるステップを更に有する請求項40〜69に記載の方法。
【請求項71】
互いに間隔を空けた少なくとも二つの透明又は半透明の窓を有する文書基材を有するセキュリティ文書であって、前記素子は透明基材を有し、該透明基材は、
i)第1表面上の微細合焦要素の規則的な配列であって、前記合焦要素は、焦点面を規定している、微細合焦要素の配列と、
ii)第1色の、かつ、前記合焦要素の前記焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第1配列と、
iii)前記第1色とは異なる第2色の、かつ、前記合焦要素の前記焦点面と実質的に一致するプレーン内に配置された、微細画像要素の対応する第2配列と、
を担持しており、
前記微細画像要素の第1配列の少なくとも一部は、前記第2配列と重複しておらず、前記微細画像要素の第2配列の少なくとも一部は前記第1配列と重複しておらず、
前記微細合焦要素及び前記微細画像要素の第1及び第2配列のピッチ並びにこれらの相対的な場所は、前記微細合焦要素の配列が前記微細画像要素の第1及び第2配列のそれぞれと協働し、モアレ効果に起因してそれぞれの配列の前記微細画像要素の個別の拡大されたバージョンを生成し、
前記素子は、前記少なくとも二つの窓と位置揃えして、前記文書基材に組み込まれているか、前記文書基材の上に付着されており、前記素子は、前記第1微細画像要素配列の拡大されたバージョンが前記二つの窓のうち第1を通して観察され、前記第2美大画像要素配列の拡大されたバージョンが前記二つの窓のうち第2を通して観察されるように、前記文書基材に位置合わせされており、前記二つの微細画像要素配列間の遷移は、前記二つの窓の間の文書基材によって隠される、セキュリティ文書。
【請求項72】
前記素子は、請求項1〜38のいずれか一項に記載の素子、又は請求項40〜70のいずれか一項に記載の方法で製造された素子である、請求項71に記載のセキュリティ文書。
【請求項73】
前記素子は、前記文書基材内に埋め込まれたスレッド又は挿入物の形態であり、前記二つの窓は前記基材の、前記スレッド又は挿入物と同一の側に形成されている、請求項71又は72に記載のセキュリティ文書。
【請求項74】
前記素子は、前記文書基材の表面に貼り付けられたパッチ又はストライプの形態であり、前記二つの窓は前記基材の全厚みを貫通して形成されている、請求項71又は72に記載のセキュリティ文書。
【請求項75】
前記素子は、微細画像の第1、第2及び第3の横方向に間隔を空けた配列と、少なくとも三つの対応する窓を有する前記文書基材とを少なくとも有し、前記微細画像と、結果として、前記の見える拡大された画像とは、色、記号、パターン及び/又は方向が、一つの窓から次の窓へ交番する、請求項71〜74のいずれか一項に記載のセキュリティ文書。

【図1】
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【図2(a)−2(b)】
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【図2(c)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図8(c)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17(a)】
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【図17(b)】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30(a)】
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【図30(b)】
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【公表番号】特表2013−521528(P2013−521528A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555489(P2012−555489)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050399
【国際公開番号】WO2011/107783
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(598151304)ドゥ ラ リュ インターナショナル リミティド (20)
【Fターム(参考)】