説明

モジュラープラスチックベルトコンベアの駆動装置

【課題】 前後従動ローラ間に無端状に掛け渡されたモジュラープラスチックコンベアベルトの駆動装置であって、モジュラープラスチックコンベアベルトに摩損や欠損等の発生を抑制しながら安定した状態で走行駆動することができる装置を提供する。
【解決手段】 モジュラープラスチックコンベアベルト4の戻り側において、駆動用スプロケット11の前周部から下周部に亘ってモジュラープラスチックコンベアベルト4を掛け渡し、このモジュラープラスチックコンベアベルト4を駆動用スプロケット11の後周部から下周部に沿って配設している爪形状に形成した係合解除部材14の先端部によって駆動用スプロケット11の下周部からの係合を解除しながらこの係合解除部材14の外面に沿って後側のガイドローラ16側に巡回、走行させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモジュラープラスチックコンベアベルトを無端状に掛け渡してなるベルトコンベア、特に、幅方向に湾曲することなく水平面上を直線状に走行するベルトコンベアの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種のモジュラープラスチックコンベアベルトとしては、例えば、特許文献1に記載されているように、多数のプラスチックベルトモジュールをロッド軸によって順次、関節状に屈折可能に連結してなる構造のものが知られている。
【0003】
具体的には、上記プラスチックベルトモジュール(以下、ベルトモジュール40という)は、図5〜図7に示すように、ベルトの走行方向に向けた複数の頂面部43a と走行方向とは逆方向に向けた複数の頂面部43b とを脚片部43c 、43c を介してベルト幅方向に交互に形成してなる中間部43と、この中間部43における上記各頂面部43a 、43b に突設し、且つ、ベルト幅方向に貫通した連結用横孔46、47を設けてなる前後リンク端部41、42とを備えてなり、このベルトモジュール40をベルトの長さ方向に順次、配設して、先行するベルトモジュール40のベルト走行方向(以下、前側とする)とは逆方向(以下、後側とする)に突設した隣接するリンク端部42、42間の間隔部に、後続するベルトモジュール40の前側リンク端部41を挿嵌させ、ベルト幅方向に連なるこれらのリンク端部41、42の連結用横孔46、47に軸ロッド48を挿入してベルトモジュール40、40 どうしを上下方向に関節状に屈折可能に連結することにより、モジュラープラスチックコンベアベルト4を構成している。
【0004】
さらに、このように構成しているモジュラープラスチックコンベアベルト4において、ベルト幅方向に隣接するリンク端部の対向する側面間の幅間隔を一つのリンク端部の幅に略等しくして連結した隣接するベルトモジュールのリンク端部どうしが互いに対向する側面を摺接状態となるように形成してあり、従って、ベルトモジュール40において、これらの前後リンク端部41、42間を交互に連続させている上記脚片部43c はベルト幅方向に傾斜した傾斜脚片部に形成されていて、先行するベルトモジュール40の後側リンク端部42、42間に挿入した後続するベルトモジュール40の前側のリンク端部41の後端面と、傾斜脚片部43c の対向側壁面間とで囲まれた空間部によって上下方向に貫通した平面台形状の係合孔44が形成され、この係合孔44に後述するように駆動スプロケット11' の歯を係合させることによってコンベアベルトを駆動している。
【0005】
一方、特許文献2に記載されているように、前後に回転自在に配設したガイドプーリ間にコンベアベルトを無端状に掛け渡すと共に、コンベアベルトの戻り側におけるこれらの前後ガイドプーリ間の中間部に駆動用プーリを配してこの駆動用プーリによりコンベアベルトを走行駆動するように構成したベルトコンベアが広く知られている。そして、近年、上記モジュラープラスチックコンベアベルト4をこの特許文献2に記載されているようなコンベアベルトに採用し、軽量で且つ耐薬品性に優れ、洗浄が容易なベルトコンベアを構成することが行われている。
【0006】
この場合、図8、図9に示すように、前後に回転自在に配設した従動ローラ2'、3'間にモジュラープラスチックコンベアベルト4を水平方向に無端状に掛け渡すと共に、コンベアベルト4の戻り側におけるこれらの前後従動ローラ2'、3'間の中間部に駆動スプロケット11' を配設して、戻り側においてはモジュラープラスチックコンベアベルト4を弛緩させながら走行させ、駆動スプロケット11' の前後側における上方に前後一対のガイドローラ13' 、14' を配設して前側ガイドローラ13' によってコンベアベルト4を駆動スプロケット11' の前周部に係合させると共に後側ガイドローラ3'と後側従動ローラ3'間に弛んだ状態で掛け渡しているコンベアベルト部分の重量による引張力によってモジュラープラスチックコンベアベルト4を駆動スプロケット11' の歯に強制的に係合させ、かつ、前後ガイドローラ13' 、14' によってモジュラープラスチックコンベアベルト4を駆動スプロケット11' に略270 度の円弧長範囲に亘って掛け渡した状態にして駆動スプロケット11' の回転によってモジュラープラスチックコンベアベルト4を走行駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−12134号公報
【特許文献2】実用新案登録第2556944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようにモジュラープラスチックコンベアベルト4を駆動スプロケット11' の下周部から上周部の両側部に至る略270 度の円弧長範囲に亘って掛け渡した状態にして駆動スプロケット11' によりモジュラープラスチックコンベアベルト4を走行駆動すると、モジュラープラスチックコンベアベルト4に必要以上の引張力が作用して伸びが生じる虞れがあるばかりでなく、欠損や折損が生じ易くなって長期の使用に供することができなくなるといった問題点がある。
【0009】
特に、モジュラープラスチックコンベアベルト4を後方側に送り出す駆動スプロケット11' の後側周面の上周部においては、モジュラープラスチックコンベアベルト4を構成している前後に隣接するベルトモジュール40、40が駆動スプロケット11' の後周部上方に配している上記ガイドローラ14' によって互いに駆動スプロケット11' の外周面に沿う方向に軸ロッド48を支点として屈折し、駆動スプロケット11' に係合するベルト内面側においてはベルト長さ方向に収縮力が発生する一方、外面側においては拡張力が発生して駆動スプロケット11' の歯が係合している上記係合孔44に面した前側リンク端部41の後端面が駆動スプロケット11' の歯に食い込むように一層強く圧着、係止し、駆動スプロケット11'
からの離脱が円滑に行えなくなるばかりでなく、リンク端部が摩損したり、欠損するといった問題点が生じる。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、駆動スプロケットとモジュラープラスチックコンベアベルトとの間に必要以上の強力な係合力を生じさせることなく、安定した係止状態にして摩損や欠損の発生を防止しながら円滑に走行駆動することができるモジュラープラスチックベルトコンベアの駆動装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明のモジュラープラスチックベルトコンベアの駆動装置は、請求項1に記載したように、搬送始端部側と搬送終端部側とにそれぞれ配設した従動ローラ間にモジュラープラスチックコンベアベルトを無端状に掛け渡していると共に搬送終端部から搬送終端部に戻る中間部に駆動スプロケットを配設し、この駆動スプロケットにおけるモジュラープラスチックコンベアベルト進入側の上方にモジュラープラスチックコンベアベルトを駆動スプロケットに送り込むガイドローラを配設している一方、モジュラープラスチックコンベアベルトの送り出し側に先端が駆動スプロケットの下周部に臨ませて駆動スプロケットからのモジュラープラスチックコンベアベルトの係合を解く係合解除部材を配設してあり、係合を解いたモジュラープラスチックコンベアベルトをこの係合解除部材の外面上を通過させて搬送始端部側の上記従動ローラ側に送り込むように構成している。
【0012】
このように構成したモジュラープラスチックベルトコンベアの駆動装置において、請求項2に係る発明は、上記係合解除部材の構造として、内面を駆動スプロケットの周面に沿う湾曲面に形成し、外面を凸円弧状に湾曲させてモジュラープラスチックコンベアベルトの摺動ガイド面に形成していると共に駆動スプロケットの下周部に臨ませている先部を先端に向かって薄肉となった爪形状に形成していることを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項3に係る発明は、上記係合解除部材の先端近傍部における駆動スプロケットの下周部下方に駆動スプロケットと共にモジュラープラスチックコンベアベルトを挟持する受けローラを配設していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、搬送始端部側と搬送終端部側とにそれぞれ配設した従動ローラ間にモジュラープラスチックコンベアベルトを無端状に掛け渡していると共に搬送終端部から搬送終端部に戻る中間部に駆動スプロケットを配設し、この駆動スプロケットにおけるモジュラープラスチックコンベアベルト進入側の上方にモジュラープラスチックコンベアベルトを駆動スプロケットに送り込むガイドローラを配設している一方、モジュラープラスチックコンベアベルトの送り出し側に先端が駆動スプロケットの下周部に臨ませて駆動スプロケットからのモジュラープラスチックコンベアベルトの係合を解く係合解除部材を配設しているので、ガイドローラから送り込まれたモジュラープラスチックコンベアベルトを搬送終端部側に面している駆動スプロケットの前周部から下周部に亘って掛け渡した状態にして駆動スプロケットの下周部から駆動スプロケットとの係合が解かれる直前においては、モジュラープラスチックコンベアベルトを構成しているベルトモジュール列における隣接するベルトモジュールどうしを軸ロッドを中心として必要以上に駆動スプロケットの歯に食い込む方向に屈折させることなく、駆動スプロケットから離脱させることができ、従って、駆動スプロケットの歯との係止によって走行方向に押圧されるベルトモジュールのリンク端部の摩損や欠損を抑制しながら駆動することができる。
【0015】
さらに、モジュラープラスチックコンベアベルトの送り出し側に先端が駆動スプロケットの下周部に臨ませた係合解除部材を配設しているので、駆動スプロケットの下周部に達したモジュラープラスチックコンベアベルトをこの係合解除部材の先端によって水平状に復帰させて駆動用スプロケットに係合するベルト内面側を拡張させながら駆動スプロケットの歯から円滑に離脱させることができると共に、安定した走行状態を維持しながらモジュラープラスチックコンベアベルトを駆動スプロケットからこの係合解除部材の外周面上を通じて搬送始端部側の上記従動ローラ側に送り込むことができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、上記係合解除部材は、内面が駆動スプロケットの円周面に沿う湾曲面に形成され、外面がモジュラープラスチックコンベアベルトの凸円弧状摺動面に形成されていると共に先部を先端に向かって薄肉となった爪形状に形成されているので、その爪形状の先端部によって、駆動スプロケットの下周部に達したモジュラープラスチックコンベアベルトを駆動スプロケットの下周部から簡単且つ確実に離脱させることができると共に、この係合解除部材の凸円弧状摺動面を通じて搬送始端部側の上記従動ローラに向かって円滑に走行させることができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明によれば、上記係合解除部材の先端近傍部における駆動スプロケットの下周部下方に駆動スプロケットと共にモジュラープラスチックコンベアベルトを挟持する受けローラを配設しているので、この受けローラによってモジュラープラスチックコンベアベルトを駆動スプロケットに確実に係合させた状態を保持しながら駆動スプロケットにより走行駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】モジュラープラスチックベルトコンベアの簡略側面図。
【図2】その駆動装置部分の側面図。
【図3】その斜視図。
【図4】駆動スプロケット部分の平面図。
【図5】モジュラープラスチックコンベアベルトの一部分の平面図。
【図6】その裏面図。
【図7】ベルトモジュールの斜視図。
【図8】公知の駆動装置を備えたモジュラープラスチックベルトコンベアの簡略側面図。
【図9】その駆動装置部分の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1〜図4において、モジュラープラスチックベルトコンベアは、機台1の前端部と後端部とに従動ローラ2、3を回転自在に軸支していると共に、これらの前後従動ローラ2、3間にモジュラープラスチックコンベアベルト4を無端状に掛け渡して後側の従動ローラ3側から前側の従動ローラ2に向かって機台1上を該機台1の長さ方向に走行させ、前側の従動ローラ2から後側の従動ローラ3に向かって機台1の下面に沿って巡回、走行させるように構成してあり、さらに、前側の従動ローラ2から後側の従動ローラ3に向かって走行するモジュラープラスチックコンベアベルト4の戻り路の中間部にモジュラープラスチックコンベアベルト4の駆動装置10を配設している。
【0020】
この駆動装置10は、モジュラープラスチックコンベアベルト4をベルト長方向に走行駆動するための駆動スプロケット11と、この駆動スプロケット11を回転駆動するための駆動モータ12と、前側従動ローラ2から駆動スプロケット11に向かって進入するモジュラープラスチックコンベアベルト4の進入側に面した駆動スプロケット11の前周部上方に配設している前側ガイドローラ13と、駆動スプロケット11からのモジュラープラスチックコンベアベルト4の送り出し側である該駆動スプロケット11の後側にその先端を駆動スプロケット11の下周部に臨ませるように配設して駆動スプロケット11からのモジュラープラスチックコンベアベルト4の係合を解く係合解除部材14と、駆動スプロケット11の下周部の下方に配設されて駆動スプロケット11と共にモジュラープラスチックコンベアベルト4を挟持する受けローラ15と、係合解除部材14の後側上方に配設されて駆動スプロケット11側から上記係合解除部材14の外面を介して送り出されるモジュラープラスチックコンベアベルト4を弛ませた状態で後側従動ローラ3に戻す後側ガイドローラ16とから構成されている。
【0021】
上記駆動スプロケット11と前側ガイドローラ13と受けローラ15とは、その回転中心軸を機台1の長さ方向の中間部に垂設している支持板材17に支持させていると共にこの支持板材17に上記係合解除部材14が装着されている一方、後側ガイドローラ16は機台1から垂設しているブラケット18にその回転中心軸を支持させてあり、駆動スプロット11の駆動モータ12は上記支持板材17の背面側に装着されている。また、駆動スプロケット11は、図3、図4に示すように、その円板部の中央部にこの駆動スプロケット11の軸心方向に一定間隔を存して周方向に連続した多数の歯11a 、11b をそれぞれ突設してあり、軸端側から見て手前側の歯11a と奥側の歯11b とは互いに重なるように設けられてなる構造を有しており、この駆動スプロケット11の上記歯11a 、11b 列を挟んで円板部の両側の外周面後周部側に上記係合解除部材14、14を配設している。
【0022】
これらの係合解除部材14、14は、駆動スプロケット11の略1/4の周長に等しい長さを有し、且つ、駆動スプロケット11における歯11a 、11b を突設していない円板部の両側部の厚みに略等しい厚みを有する短い角棒形状に形成されてあり、その内面を駆動スプロケット11の円板部の外周面に沿うように湾曲させていると共に駆動スプロケット11の下周部側に向けた先部を先端に向かって徐々に薄肉となる爪形状に形成されている。詳しくは、この係合解除部材14の内面は、駆動スプロケット11の円板部の円形周面と同一湾曲度でもって湾曲している湾曲面14a に形成されていると共に外面は先細に形成された先端から基端に向かって緩やかな凸円弧状に湾曲したモジュラープラスチックコンベアベルト4の摺動ガイド面14b に形成されている。
【0023】
この2個の係合解除部材14、14を取付部材19の下端部にその基端部が上記駆動スプロケット11の円板部の両側部間の間隔に等しい間隔を存するようにして固着してあり、これらの係合解除部材14、14を、駆動スプロケット11に突設している歯11a 、11b を挟むようにしてこれらの駆動スプロケット11a 、11b の円板部における後周部から下周部にその湾曲内面14a を沿わせ、且つ、その先端が駆動スプロケット11と上記受けローラ15との間に後側から臨ませた状態となるように、取付部材19を上記支持板材17に固定している。
【0024】
一方、前後従動ローラ2、3間に無端状に掛け渡されて上記駆動スプロケット11により駆動される上記モジュラープラスチックコンベアベルト4は、図5〜図7に示すように、一定幅を有する多数の成形プラスチックベルトモジュール(以下、ベルトモジュール40とする)をプラスチック製の軸ロッド48によって順次関節状に屈折自在に連結してなる構造を有する。
【0025】
ベルトモジュール40は、幅方向に一定間隔毎にベルトの走行方向に向けた複数個(図においては3個)の前側リンク端部41、41、41と、同じく幅方向に一定間隔毎にベルトの走行方向とは逆方向に向けた複数個(図においては3個)の後側リンク端部42、42、42とを中間部43を介して一体に設けてなる形状に形成されている。詳しくは、前後リンク端部41、42は、一定厚みを有する平面四角形状に形成されてあり、中間部43からの突出端面、即ち、前側リンク端部41の前端面と後側リンク端部42の後端面とは、駆動スプロケット11と対向する面側を内面として外面側からこの内面側に向かって凸円弧状に湾曲した湾曲面に形成されている。
【0026】
さらに、上記中間部43は走行方向に向けた前側頂面部43a と走行方向とは逆方向に向けた後側頂面部43b とを傾斜脚片部43c を介してベルト幅方向に交互にジグザグ状に連設してなり、上記各前側頂面部43a と各後側頂面部43b とにそれぞれ上記前側リンク端部41の基端と後側リンク端部42とを一体に設けてこれらの頂面部43a 、43b から前側リンク端部41と後側リンク端部42とをそれぞれベルト幅方向に対して直交する方向に突設している。
【0027】
その上、ベルト幅方向に隣接する前側リンク端部41、41の対向する側面間の幅間隔と、後側リンク端部42、42の対向する側面間の幅間隔とは同一幅に形成していると共にこれらの幅間隔を一つのリンク端部の幅に略等しくして、モジュラープラスチックコンベアベルト の構成時に、前側のベルトモジュール40の後側リンク端部42、42間に後側のベルトモジュール40の前側リンク端部41を挿嵌させた場合、後側リンク端部42、42の対向側面に前側リンク端部41の両側面が摺接状態となるように形成している。そして、ベルトモジュール において、中間部43の後側頂面部43b の両側端と、この後側頂面部43b の前方における両側に配された前側頂面部43a 、43a の両側端とをそれぞれ連設させている上記傾斜脚片部43c 、43c は、後側頂面部43b の両側端から前側頂面部43a 、43a の対向する側端に向かって徐々に拡幅方向に傾斜している。
【0028】
従って、ベルトモジュール40における後側頂面部43b の前端面と、このベルトモジュール40における隣接する前側リンク端部41、41間に挿嵌した前側ベルトモジュール40の後側リンク端部42の後端面との対向面間と、この対向面間の両側に配している傾斜脚片部43c
、43c の対向側面間とで囲まれた空間部によって上下方向に貫通し、且つ、後方に向かって幅狭くなった平面台形状の係合孔44、44が形成され、この係合孔44、44に上記駆動スプロケット11の歯11a 、11b がそれぞれ噛み合うように係合可能に構成している。即ち、上記二つの係合孔44、44の間隔と、駆動スプロケット11の歯11a 、11b 列の間隔とを等しくしている。同様に、ベルトモジュール40における前側頂面部43a の後端面と、このベルトモジュール40における隣接する後側リンク端部42、42間に挿嵌した後側ベルトモジュール40の前側リンク端部41の前端面との対向面間と、この対向面間の両側に配している傾斜脚片部43c 、43c の対向側面間とで囲まれた空間部によって上下方向に貫通した平面台形状の孔45が形成される。なお、この孔45には駆動スプロケット11の歯11a 、11b は係合しない。
【0029】
また、全てのベルトモジュール40における前側リンク端部41と後側リンク端部42とにベルト幅方向に貫通した連結用横孔46、47をそれぞれ設けてあり、多数のベルトモジュール40をベルトの長さ方向に順次、並設して、前側のベルトモジュール40における隣接する後側リンク端部42、42間に、この後側リンク端部42、42間に対応する後側ベルトモジュール40における前側リンク端部41を挿嵌し、ベルト幅方向に連通したこれらの前後リンク端部41、42の連結用孔46、47に軸ロッド48を貫通状態に挿入して、この軸ロッド48を支点としてベルトモジュール40、40どうしを上下方向に関節状に屈折可能に連結することにより、モジュラープラスチックコンベアベルト4を構成している。なお、前後リンク端部41、42は、外面側から内面側に向かってその幅が徐々に狭くなるように、両側端面を傾斜させている。
【0030】
このように構成したモジュラープラスチックコンベアベルト4は、図1に示すように、機台1の水平面上にその外面が物品搬送面となるように上向きにした状態で前後従動ローラ2、3間に掛け渡すと共に、機台1の下面側においては、前側従動ローラ2からガイドローラ13、駆動スプロケット11、係合解除部材14の摺動ガイド面14a 、後側ガイドローラ16、後側従動ローラ3に順次、掛け渡して無端状に走行するベルトコンベアを構成している。なお、モジュラープラスチックコンベアベルト4は前後に隣接するベルトモジュール40、40間に設けている二つの係合孔44、44に上記駆動スプロケット11の両側の歯11a 、11b をそれぞれ係合させてあり、ベルトモジュール40の前側リンク端部41、41の頂面部43a
、43a の後端面に上記駆動スプロケット11の歯11a 、11b を噛み合わせるように押当させてモジュラープラスチックコンベアベルト4を走行駆動するように構成している。
【0031】
この状態において、駆動モータ12により駆動スプロケット11を回転駆動すると、モジュラープラスチックコンベアベルト4は、駆動スプロケット11の前周部上方に配設している前側ガイドローラ13上を通じて駆動スプロケット11に引き寄せられ、機台1の下面側においては前側従動ローラ2からこの前側ガイドローラ13を介して駆動スプロケット11に向かって走行する一方、機台1上においては、モジュラープラスチックコンベアベルト4は後側従動ローラ3から前側従動ローラ2に向かって走行して物品等を搬送する。
【0032】
さらに、駆動スプロケット11から送り出されるモジュラープラスチックコンベアベルト4は、後側従動ローラ3と後側ガイドローラ16との間で弛みながら後側ローラ3側に走行し、この間を走行するモジュラープラスチックコンベアベルト4の重量によってモジュラープラスチックコンベアベルト4を駆動スプロケット11の下周部に押し付けて駆動スプロケット11に係合させると共に受けローラ15によってその係合を確実に保持させる。
【0033】
前側ガイドローラ13側から下方に走行してこの駆動スプロケット11の前周部から下周部に亘って掛け渡されたモジュラープラスチックコンベアベルト4は、駆動スプロケット11の下周部に達すると、駆動スプロケット11と受けローラ15から送りだされた直後のモジュラープラスチックコンベアベルト4を、駆動スプロケット11の下周部に先端を臨ませている係合解除部材14によって駆動スプロケット11の歯11a 、11b からの係合を解除させながら駆動スプロケット11の下周部からこの係合解除部材14の凸円弧状に湾曲した摺動ガイド面14b 上を沿って後側ガイドローラ16側に送り出される。
【0034】
この際、駆動スプロケット11に掛け渡されているモジュラープラスチックコンベアベルト4のベルトモジュール40列部分は、この駆動スプロケット11の円形湾曲面に沿って軸ロッド48を支点として関節状に屈折し、その内面側においてはベルト長さ方向に収縮して駆動スプロケット11の歯11a 、11b に噛み合うように係合しながら、駆動スプロケット11によって走行駆動されるが、駆動スプロケット11からは上記係合解除部材14によって水平状に復帰させながら係合を解くので、モジュラープラスチックコンベアベルト4の内面が拡張されて、駆動スプロケット11の歯11a 、11b に係合している上記係合孔44、44の前壁面、即ち、ベルトモジュール40の前側リンク端部41、41の頂面部43a 、43a の後端面が駆動スプロケット11の歯11a 、11b から円滑に離脱させることができ、ベルトモジュール40のリンク端部の摩損や欠損を抑制しながら安定した走行駆動を維持することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 機台
2、3 前後従動ローラ
4 モジュラープラスチックコンベアベルト
10 駆動装置
11 駆動スプロケット
13 前側ガイドローラ
14 係合解除部材
15 受けローラ
16 後側ガイドローラ
40 ベルトモジュール
41、42 前後リンク端部
43 中間部
44 係合孔
46、47 連結用横孔
48 軸ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送始端部側と搬送終端部側とにそれぞれ配設した従動ローラ間にモジュラープラスチックコンベアベルトを無端状に掛け渡していると共に搬送終端部から搬送終端部に戻る中間部に駆動スプロケットを配設し、この駆動スプロケットにおけるモジュラープラスチックコンベアベルト進入側の上方にモジュラープラスチックコンベアベルトを駆動スプロケットに送り込むガイドローラを配設している一方、モジュラープラスチックコンベアベルトの送り出し側に先端が駆動スプロケットの下周部に臨ませて駆動スプロケットからのモジュラープラスチックコンベアベルトの係合を解く係合解除部材を配設してあり、係合を解いたモジュラープラスチックコンベアベルトをこの係合解除部材の外面上を通過させて搬送始端部側の上記従動ローラ側に送り込むように構成していることを特徴とするモジュラープラスチックコンベアベルトの駆動装置。
【請求項2】
係合解除部材は、その内面を駆動スプロケットの周面に沿う湾曲面に形成し、外面を凸円弧状に湾曲させてモジュラープラスチックコンベアベルトの摺動ガイド面に形成していると共に駆動スプロケットの下周部に臨ませている先部を先端に向かって薄肉となった爪形状に形成していることを特徴とする請求項1に記載のモジュラープラスチックコンベアベルトの駆動装置。
【請求項3】
係合解除部材の先端近傍部における駆動スプロケットの下周部下方に駆動スプロケットと共にモジュラープラスチックコンベアベルトを挟持する受けローラを配設していることを特徴とする請求項1に記載のモジュラープラスチックコンベアベルトの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−82521(P2013−82521A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222643(P2011−222643)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(596125756)株式会社日満車輌製作所 (1)
【Fターム(参考)】