説明

モジュラーミクロ流体サンプル調整システムおよびサンプル流体の混合および分配方法

【課題】従来のシステムの欠点の少なくとも一部を解消できる新規で改善されたモジュラーミクロ流体サンプル調整システムを提供することにある。
【解決手段】第1調整モジュール(2)を備えたモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。第1調整モジュール(2)は、第1表面および反対側の第2表面を有しかつ第1側面(7)により区切られている。第1調整モジュール(2)は、該モジュール(2)の第2表面に配置された出口および入口を有し、入口および出口は第1ミクロ流体チャネルシステムを介して連結されている。第2調整モジュール(3)は、第1表面および反対側の第2表面を有しかつ第1側面(8)により区切られている。第2調整モジュール(3)は更に取入れ口(10)を有し、該取入れ口(10)は第2ミクロ流体チャネルシステムに連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュラーミクロ流体サンプル調整システムに関し、該システムは、
第1平面内に配置される第1調整モジュールを有し、
該第1調整モジュールは、第1表面および反対側の第2表面を備えかつ第1側面により区切られており、
第1調整モジュールは更に、第1調整モジュールの第2表面に配置された出口および入口を備え、入口および出口は第1ミクロ流体チャネルシステムを介して連結されており、
第1平面に対して実質的に平行な第2平面内に配置される第2調整モジュールを有し、
該第2調整モジュールは、第1表面および反対側の第2表面を備えかつ第2側面により区切られており、
第2調整モジュールは更に、第2調整モジュールの第1表面に配置された取入れ口を備え、取入れ口は第2ミクロ流体チャネルシステムに連結されている。
また本発明は、サンプル流体と添加剤とを第1調整モジュール内で混合しかつこの混合されたサンプル流体および添加剤を、モジュラーミクロ流体サンプル調整システムを用いて第2調整モジュールに分配する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロ流体(microfluidic)システムは、更に分析するための流体サンプルの調整(preparation)のような、多くの研究所の自動化用途に使用されている。このようなミクロ流体サンプル調整システムは、ミクロ流体システムにより調整されたサンプルの実際の測定および分析を行う装置の協働スロット内に挿入されるカートリッジとして形成できる。
また、例えば特殊な測定/分析を行う血液サンプルの調整のような錯流体のサンプル調整は、しばしば、多くの段階を必要とする。これらのサンプル調整段階の幾つかは一般的な性質を有し、通常、異なる測定/分析形式について実質的に同じ態様で行われるのに対し、他のサンプル調整段階は特殊であり、特殊な測定/分析が行われる。
多くの処理段階は、ミクロ流体チップ上で実施するための大きな予定区域を必要とする複雑なミクロ流体システムとする原因となる。このような複雑なミクロ流体システムは製造が困難であり、その結果として処理量が小さいという処理上の大きい問題がある。したがって、このようなシステムの製造は、製造設備の能力については高い規格が定められている。
【0003】
これに加え、システムの種々の部品は製造システムの種々の能力を必要とし、例えば、活性流体をシステムのリザーバ内に充填する必要がある場合には、一般に、これらのリザーバは、システムの壊れ難い部品例えば一般的なプラスチック部品とは異なる取扱いをする必要がある。ミクロ流体サンプル調整システムの部品の製造時に、最も厳格な部品は、システムの全部品についてパラメータの一般的規格を定めている。このようなパラメータとして、例えば、製造時の清浄レベル、感熱性、感圧性または同様なパラメータがある。しかしながら、殆どの部品にとって実際に非常に規格でシステムを製造すると高価なものとなる。また、例えば、システムを、水分または温度に対して調節された環境内に保管する必要がある場合には、システムの種々の部品は異なる保管設備を必要とする。敏感な部品と敏感でない部品の両方を調節された環境内に保管することは、保管設備内にスペースを要し、かつ標準環境内での保管よりもはるかに高価な調節された環境内での保管は非効率的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一目的は、上記システムの欠点の少なくとも一部を解消できる新規で改善されたモジュラーミクロ流体サンプル調整システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、第1調整モジュールの第2表面が第2調整モジュールの第1表面に対面しかつ第1調整モジュールの出口が第2調整モジュールの取入れ口に対面するようにして、第1調整モジュールが第2調整モジュールに連結されるように構成された上記形式のモジュラーミクロ流体サンプル調整システムにより達成される。
【0006】
本発明によるモジュラーミクロ流体サンプル調整システムにより遂行される調整には、添加剤または試薬の投薬、混合および添加、光学窓等を備えたサンプルチャンバのような測定ポートでの調整されたサンプルの培養、濾過、温度安定化および提供が含まれる。
【0007】
このようにして、第1調整モジュールおよび第2調整モジュールは、別々に製造し、後で相互に連結できる。調整モジュールは、製造工場において例えば異なる清浄度レベルが要求される。カートリッジを少なくとも2つのモジュールに分割することにより、異なる標準製造条件に応じた異なる場所で調整モジュールを製造できる。第1調整モジュールの出口は、第1モジュール内でプリコンディショニングされた例えば血液サンプルのような流体が、第1調整モジュールの出口から分配されかつ第2調整モジュールの取入れ口により受入れられるように構成されており、流体は、取入れ口から第2調整モジュールのミクロ流体チャネルシステム内に搬送される。
【0008】
また、サンプル調整システムを異なる段階の調整プロセスに分けることにより、別々に作ることができる各調整モジュールの複雑さが緩和され、これにより調整モジュールを製造するプロセスの複雑さが緩和される。これにより、製造が簡単化され、したがってサンプル調整システム全体の生産性が向上する。
サンプル調整システムのモジュラー構造はまた、異なる形式の第1調整モジュールと第2調整モジュールとの組合せを可能にする。例えば、第1調整モジュールは、該モジュールからの出力が、異なる特定サンプル調整段階の入力として使用するのに適した予配置された流体サンプルとなるように全段階を遂行する設計にできる。異なる形式の測定/分析についての特定のサンプル調整段階は第2調整モジュールで実施できる。或いは、異なる形式のサンプル予構成(sample pre-configuration)のための第1調整モジュールであって、同じ形式の第2調整モジュールと互換性を有する第1調整モジュールを設けることができる。
【0009】
本発明による他の実施形態では、第1調整モジュールおよび第2調整モジュールは、第1調整モジュールと第2調整モジュールとを着脱可能に連結する連結手段を有している。これにより、各モジュールを、他のモジュラーサンプル調整システムと一緒に使用することが可能になる。着脱可能な第1および第2調整モジュールは、調整モジュールを、他のサンプル調整モジュールまたはサンプルシステムと一緒に使用することを可能にする。
調整モジュールには、解放可能な連結手段、例えばスナップロック連結構造を設けることができる。このため、必要な形式の第1および第2調整モジュールを選択しかつ連結することにより、エンドユーザは、所望のサンプル調整システムの容易な組立て/構成を行うことができる。かくして、エンドユーザはまた、異なる形式の調整モジュールの上記容易な組合せ/構成も利用できる。
【0010】
また、調整モジュールが故障した場合には、調整モジュールを他の調整モジュールに交換できる。連結手段はまた、調整モジュールを互いに正しく位置決めする。また、調整モジュールを別々に保管して、使用の直前に連結することを可能にする。これにより、調整モジュールを特定調整モジュールに丁度適した設備に保管でき、したがって保管コストを最適化できる。例えば、モジュール内に供給される試薬の内容物に基づいて、異なる調整モジュールに異なる貯蔵寿命を与えることができる。モジュール内に活性内容物または時間敏感内容物が収容される場合には、このようなモジュールは、このような内容物の耐久寿命内の要求を満たすのに充分な保管数を維持するのが有利である。しかしながら、第2調整モジュールに比べて第1調整モジュールの方が長期間保管できる場合には、感応性の低い方のモジュールを1バッチで多数作ることにより製造コストを低減できる。かくして、出荷の直前にまたはエンドユーザのところで、敏感な調整モジュールと敏感でない調整モジュールとを組立てることすなわち連結することは、モジュラーミクロ流体サンプル調整システムの全コストに影響を与える。
【0011】
本発明による一実施形態では、第1調整モジュールの第1側面に、第2調整モジュールの第2側面の凹部領域に連結する連結手段(ビードまたは隆起部)を設けることができる(またはこれとは逆の構成にすることもできる)。これにより、2つの調整モジュールを連結する簡単で信頼性のあるシステムが提供される。このような連結手段の製造は成形時に行うことができ、したがって安価に製造できる。
【0012】
本発明の他の実施形態では、システムの調整モジュールは、連結されたときにカートリッジを形成する。使用時に、エンドユーザは正に一方の物体に対面して取扱う。ミクロ流体サンプル調整システムがモジュラーであっても、エンドユーザは依然として正に一方の物体に対面して取扱う。
カートリッジは、サンプルの調整プロセス中に全ての試薬および/または添加剤がサンプルと混合され、したがって、カートリッジの入力ポートで、分析すべき流体サンプルのみが必ず取扱われかつ表示されることが確保されるのが好ましい。カートリッジは、サンプル調整プロセス中に必要な全てのことおよび調整サンプルに関する測定を行う測定ポートを与える。
【0013】
好ましくは、このような測定は光学的測定であり、カートリッジは、用意されたサンプルを、光学的アクセスポート/窓が設けられたサンプルチャンバ/チャネル内に与える。カートリッジは、例えば機械的、電気的および/または光学的手段により、放射線および/または温度制御によりサンプル調整プロセスを付勢/駆動する協働分析装置内に挿入できる。分析装置は更に、光学的または電気的測定のような上記測定ポートでの調整サンプルに関する測定を行う。カートリッジを、添加剤/試薬隔室を一体化するように構成することにより、あらゆる流体取扱いを、カートリッジを分析すべきサンプルで充填することに限定することも達成される。カートリッジと分析装置との間の任意の流体交換または分析装置による任意の流体取り扱いが回避され、これにより、分析装置の複雑さが低減され、分析装置のラップスペースフットプリントが縮小されかつ分析装置を浄化しかつ最小に維持する必要性が低減される。
【0014】
本発明の他の実施形態では、モジュラーミクロ流体サンプル調整システムは、モジュラーミクロ流体血液サンプル調整システムとすることができる。
本発明による更に別の実施形態では、第1調整モジュールの出口を、第2調整モジュールの取入れ口から一定距離に位置決めできる。
【0015】
第1および第2調整モジュールは、連結されると整合し、第1調整モジュールの出口は第2調整モジュールの取入れ口に向かって開口する。第2調整モジュールの取入れ口は、第1調整モジュールの出口から流体を受入れることができる受入れ手段と、流体を第2調整モジュールのミクロ流体チャネルシステムに分配する分配手段とを有している。
【0016】
一般に、第2調整モジュールの取入れ口/受入れ手段の面積は、第1調整モジュールの出口の断面積より大きい。出口と、第2調整モジュールの取入れ口の受入れ手段の表面との間に距離を設けることにより、受入れ手段の表面/第2調整モジュールの取入れ口上での第1調整モジュールの出口から押出された流体サンプルの横方向分散が容易になる。
【0017】
流体は、次のようにして第1モジュールから第2調整モジュールに搬送される。流体は、第1調整モジュールに加えられる静圧のような駆動力により、第1調整モジュールの出口から押出される。第1調整モジュールの出口から押出された流体は、流体が第2調整モジュールの取入れ口の表面と接触する前に、第1調整モジュールの出口の周囲に蓄積される。第2調整モジュールの取入れ口の表面と接触すると、流体は、取入れ口受入れ手段の表面上で分散される。取入れ口には、受入れた流体サンプルを、第2調整モジュールのミクロ流体チャネルシステムに搬送する分配手段が設けられている。本発明のモジュラーミクロ流体サンプル調整システムによる第1調整モジュールから第2調整モジュールへの流体搬送の1つの長所は、第1調整モジュールのミクロ流体チャネルシステムと第2調整モジュールのミクロ流体チャネルシステムとの間のシールされた流体相互連結を必要としないこと、または第1モジュールを第2調整モジュールに取付けるときに、厳格な圧力/流体密封シールを全く必要としないことである。これにより、エンドユーザが、特殊な製造技量または専用設備を必要とすることなく、予組立てされた第1および第2調整モジュールからサンプル調整システムを容易に組立てることができる。
【0018】
第2調整モジュールの取入れ口の受入れ手段は、流体サンプルの少なくとも一部を吸収し/摂取し/浸潤することができる織布繊維/不織布繊維のシートで形成できる。このシートは、第2調整モジュールの取入れ口内に配置されかつ両調整モジュールが連結されるときに出口開口の方を向く。シートは、繊維質材料により吸収されたときに流体サンプルが、受入れ手段を第2調整モジュールのミクロ流体チャネルシステムに連結する取入れ口の毛管に到達するような寸法を有している。取入れ口の毛管は、繊維質材料のシートの一縁部に配置できる。毛管作用により、取入れ口の毛管が、吸収された流体サンプル、または多成分流体の場合には多成分流体の少なくとも1つの成分を回収し、かつこれを第2調整モジュールのミクロ流体チャネルシステムに分配して、更なる処理を行う。
前記距離は、例えば第2調整モジュールの取入れ口が、流体と接触したときに膨張する膨潤材料からなる場合に充分なスペースを与える。これにより、第2調整モジュールの取入れ口に種々の材料を使用できる。
【0019】
本発明による有利な実施形態では、第1調整モジュールの出口と第2調整モジュールの取入れ口との間の距離は、0.05mm-1mmまたは0.1mm-0.9mmまたは0.15mm-0.8mmにすることができる。これにより、自由スペースが形成され、該自由スペース内では、第1調整モジュールの出口からの流体は、第2調整モジュールの取入れ口に分配される前に、出口と接触した状態のまま膨出する。また、膨張できる充分なスペースが形成される。第2調整モジュールの取入れ口が、例えば約0.32mmの厚さを有するフィルタである場合には、該フィルタは、濡れたときに膨潤により約0.15mm膨張する。
【0020】
本発明による他の実施形態では、第2調整モジュールの取入れ口は、血液分離フィルタを有している。これにより、第2調整モジュールの取入れ口が、第2調整モジュール内で行われるサンプルの調整のために、サンプル(例えば血液)を調整する。したがって、第2調整モジュールの取入れ口は、第2調整モジュール内で行われる調整の第1段階として機能する。
血液は複雑な多成分流体である。異なる成分への多成分流体の分離は、好ましくは、第1調整モジュールから受けた流体サンプル内に存在する残余の成分と比較して1つ以上の所望の成分を搬送するように構成された受入れ手段および/または分配手段を設けることにより第2調整モジュールの取入れ口内で行うことができる。より詳しくは、血液フィルタは、白血球および/または赤血球を保持する一方、血漿は第2調整モジュールのミクロ流体チャネルシステムに選択的に搬送される。
【0021】
フィルタ内での血漿の選択的搬送は、好ましくは、血漿を吸収する一方、フィルタ材料の架橋繊維により白血球を保持するフィルタの毛管効果により行われる。過剰量の混合サンプル流体、すなわち第1調整モジュールの添加剤(単一または複数)と予形成された血液サンプルが、第2調整モジュールの取入れ口およびフィルタ上に供給され、これにより、血漿が、フィルタの縁部に連結された取入れ口の毛管に到達するようにフィルタ材料を飽和させる。
【0022】
前述のように、第1調整モジュールの出口と第2調整モジュールの取入れ口の血液フィルタの表面との間には、一定距離が設けられる。この距離は、血液フィルタに大きい圧力を加えることなく、混合された流体サンプルを血液フィルタ上に分配することを可能にし、これにより、血球がフィルタを通過して第2ミクロ流体チャネルシステム内に流入することが回避される。フィルタの寸法は、血漿によるフィルタ材料の飽和が、第2調整モジュールの取入れ口に分配される混合されたサンプル流体の量により維持されるように定められる。飽和は、所望量の血漿を第2調整モジュールに回収するのに必要とされる限り維持すべきである。
【0023】
飽和されたフィルタ材料と接触している取入れ口の毛管の毛管吸引力により、流体は第2調整モジュールのミクロ流体チャネルシステム内に吸引される。第2ミクロ流体チャネルシステムに設けることができる毛管ストップは、取入れ口から第2モジュール内に搬送されるサンプル流体(ここでは血漿)の体積を制限/制御できる。
血液フィルタは取入れ口の受入れ手段を形成し、この場合、血液フィルタは、作動時に出口開口に対面するように取入れ口内に配置された受入れ部分を備えたフィルタウェブのシートである。一般に、受入れ部分の横方向寸法は、第1調整モジュールの出口の対応する横方向寸法より大きい。したがって、フィルタウェブは、受入れ部分上の流体の分散が改善されるように、出口開口の外縁部から一定距離に配置されるのが有利である。また、フィルタウェブのシートは分配タブを形成する形状を有し、分配タブは、受入れ部分から外方に延びておりかつフィルタウェブと取入れ口の毛管との間の流体連通を確立すべく取入れ口の毛管に連結されている。
【0024】
一実施形態によれば、血液フィルタの幾何学的形状はテーパ状の輪郭を有し、テーパ状輪郭の幅広部分は受入れ部分を形成しかつ尖った部分は分配部分を形成する。この構成により、血液フィルタは、フィルタ内に収容された流体を、所望の方向例えばテーパ状部分に指向させることができる。他の実施形態では、フィルタは、血漿の5-50%出力または10-25%出力の効率を呈する。フィルタは、例えば0.2mm-0.5mmの厚さにすることができる。フィルタの毛管吸引力により、フィルタは、流体の分散力により濡らされるであろう。
【0025】
本発明による更に別の実施形態では、第1調整モジュールの出口は実質的に円形の断面形状を有している。これにより、第1調整モジュールの出口から分配されたサンプル流体は、該出口から第2調整モジュールの取入れ口に分配されるとき、出口から等しく分配される。出口の直径は、0.5mm-2mmまたは0.75mm-1.75mmまたは1mm-1.5mmにすることができる。
【0026】
本発明の他の実施形態によれば、第1調整モジュールの出口は実質的に楕円形の断面形状にすることができる。これにより、第1調整モジュールの出口から分配されたサンプル流体は、或る方向に流れを定めるようにして第2調整モジュールの取入れ口に分配される。
【0027】
本発明による他の実施形態では、第1調整モジュールは、第1ミクロ流体チャネルシステムと流体連通している受動ミクロ流体混合セクションを有している。これにより、第1調整モジュールに供給される流体および/または添加剤は、第1調整モジュールの入口を通って供給される流体と混合される。
【0028】
本発明による一実施形態では、第1調整モジュールは混合セクションと流体連通する添加剤リザーバを設けることができる。これにより、第1調整モジュールにより添加剤をサンプル流体に添加させることができる。混合セクションと流体連通している添加剤リザーバは、例えばサンプル流体を添加剤リザーバに導いて、添加剤リザーバの内容物を追い出すか、混合セクション内に押出すことにより添加剤を混合セクション内に導くことができる。添加剤がひとたびサンプル流体に接触されかつサンプル流体と混合されると、混合物は、第2調整モジュールに供給される適当に混合されたサンプル流体をつくるべく培養する必要がある。例えば、添加剤はマーカーを含んだ試薬とし、目標分子へのマーカー分子の適当な結合は、所与の培養時間中にこのような培養を必要とする。培養は、温度の安定性を必要とする。必要な培養時間は、取扱う添加剤に基づいて定まる。例えば、サンプル流体として全血液を分析するとき、マーカー添加剤は、数分間の培養時間を必要とするHRPとすることができる。或いは、添加剤リザーバは、例えば核酸増幅によりサンプルの分子分析を行うのに適した成分で構成できる。このような試薬として、例えば核酸ポリメラーゼ、ヘリカーゼ、プライマーゼおよび/またはプローブがある。一実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction:PCR)によるサンプル材料の分析に適した試薬は、添加剤リザーバを通して供給される。より好ましい実施形態では、等温増幅によるサンプル材料の分析に適した試薬が使用される。このような増幅技術として、例えばヘリカーゼ依存増幅(バイオヘリックス)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(TwistDx)、核酸シーケンスベース増幅(NASBA)(Merieux)、スタンドディスプレースメント増幅(SDA:Becton Dickinson)、転写仲介増幅(TMA:Gen-Probe)およびループ仲介等温増幅(LAMP:Eiken)がある。
【0029】
本発明による他の実施形態では、第1調整モジュールには、第1調整モジュールの第1ミクロ流体チャネルシステムの入口および第1ミクロ流体チャネルシステムと流体連通する入口リザーバを設けることができる。これにより、第1調整モジュール内にサンプル流体を蓄積することができる。
【0030】
本発明による更に別の実施形態では、第1調整モジュールは、混合セクションから入口リザーバを区切る毛管ストップを有している。これにより、静圧のような駆動力が加えられて内容物を毛管ストップを通して押出さない限り、第1調整モジュールの入口リザーバがその内容物を次の混合セクションに分配しないことが達成される。したがって、エンドユーザは、サンプル流体を混合セクション内に流入させることなく、サンプル流体入口リザーバ内に充填できる。かくして、入口リザーバは、予め定めた用量体積の流体でサンプル調整システムを充填するのに使用できる。予め定めた用量体積は、入口リザーバの全体積により決定される。入口リザーバの全体積は、200μlより小さく、或いは100μlより小さく、好ましくは約50μlより小さくできる。
【0031】
また本発明によれば、添加剤リザーバにはプランジャを設けることができる。これにより、プランジャが添加剤リザーバをシールすることが達成される。
本発明による他の実施形態では、プランジャは、添加剤リザーバの内容物を混合セクション内に押し込むことができるように配置される。プランジャが内容物を添加剤リザーバ内に押しやるとき、プランジャは、内容物を添加剤リザーバから押出す。プランジャは添加剤リザーバ内に圧力を発生させる。例えばプランジャを添加剤リザーバ内に押し込むときに或る圧力が発生されると、添加剤リザーバのフィルムまたは箔により形成された壁は、添加剤リザーバの内容物を第1調整モジュールの混合セクションに分配することができる。
【0032】
本発明による更に別の実施形態では、第1調整モジュールに、この入口を遮断する閉塞手段を設けることができる。これにより、ポンピング圧力が加えられるまで、サンプル流体を第1モジュールの第1リザーバ内に維持しておくことが達成される。したがって、他のサンプルまたはオペレータが汚染される危険が最小になる。また、閉じられた入口を通して空気を導入し、空気が入口を通って逃散する危険なくして例えば流体を第1調整モジュールの回りに押しやることが達成される。他の実施形態では、閉塞手段はヒンジ連結された蓋で構成できる。これにより、閉塞手段が使用場所の近くに維持され、閉塞手段の置き忘れの危険を最小にできる。他の実施形態では、閉塞手段は、箔またはフィルムを接着することにより構成でき、更に別の実施形態では閉塞手段は入口内に挿入される突出部で構成し、気密閉塞することができる。
【0033】
本発明による特定実施形態では、第1調整モジュールは、エンドユーザが見ることができる透明チャネルで構成できる。これにより、エンドユーザが、流体がシステムに流入したか否か、すなわち第1ミクロ流体チャネルシステムの一部に流入したか否かを容易に決定できる。
【0034】
他の実施形態では、透明チャネルは第1調整モジュールの入口リザーバで構成できる。これにより、ユーザは、サンプル流体の分析を行うのにサンプルは充分であるか否かを容易に決定できる。
【0035】
本発明による一実施形態では、少なくとも1つの調整モジュールには識別手段を設けることができる。これにより、サンプルを分析する機械を、特定試験を遂行するように調節できる。本発明による他の実施形態では、識別手段はバーコード、チップまたはRFIDタグで構成できる。これにより識別は、遂行すべき分析に関連して多数の情報、例えば調整モジュールのエイジ、リザーバ(単一または複数)内の内容物の種類、またはリザーバ(単一または複数)内の内容物のバッチ数について行うことができる。
また、本発明による一実施形態では、第1調整モジュールには更にポンピング手段を設けることができ、これにより、第1調整モジュールの入口リザーバ内にある流体すなわち毛管によりストップされた流体が、毛管ストップを通って第1調整モジュールの混合セクション内に押しやられることが確保される。ポンピング手段は、例えば、空気が充填された袋またはポンプで構成するか、可撓性膜または空気が充填されたリザーバをカバーする箔または第1調整モジュールのキャビティで構成できる。
【0036】
本発明の一実施形態では、毛管ストップは入口リザーバとポンピング手段とを区切ることにより、サンプル流体がポンピング手段に流入しないようにすることができる。
また、本発明は、血液サンプルの調整を行う上記実施形態のいずれかによるモジュラーミクロ流体サンプル調整システムの使用方法に関する。ミクロ流体サンプル調整システムを用いて調整されたサンプルは、その後、血液分析装置で分析される。この目的のため、モジュラーミクロ流体サンプル調整システムは、カートリッジとして、このような血液分析装置の協働スロット内に挿入される。血液分析装置は更に、モジュラーミクロ流体サンプル調整システムと相互作用して、調整プロセスを付勢/駆動しかつサンプルを分析する。サンプル調整システムと分析装置との相互作用は、例えば、機械的、電気的、放射線、熱および/または光学的に行われる。
【0037】
また、本発明は、血液分析装置にモジュラーミクロ流体サンプル調整システムを使用する方法に関する。血液分析装置にこのようなミクロ流体サンプル調整システムを使用することにより、エンドユーザはサンプルを充填するだけでよく、分析装置が残りの過程を行って分析を遂行する。入口ポートを通してモジュラーミクロ流体サンプル調整システムに供給される流体の体積は100μlより小さい。
また、本発明は、モジュラーミクロ流体サンプル調整システムを用いた血液分析装置に関する。
【0038】
本発明による血液分析装置の他の実施形態では、第1調整モジュールのポンピング手段は、血液分析装置により付勢される。これにより、分析を行う特定時間は、分析機械により制御される。なぜならば、サンプル流体は、ポンピング手段が付勢されるまで、サンプル流体の入口リザーバ内、すなわち制御された損傷を与えない環境内に維持されるからである。
【0039】
また本発明は、サンプル流体および添加剤を第1調整モジュール内で混合し、かつ混合物されたサンプル流体を、モジュラーミクロ流体サンプル調整システムを用いて第2調整モジュールに分配する方法において、
第1ミクロ流体チャネルシステムを備えた第1調整モジュールを、第2ミクロ流体チャネルシステムを備えた第2調整モジュールに連結する段階と、
サンプル流体を、第1調整モジュールの入口を通して入口リザーバに供給する段階と、
第1調整モジュールの入口を、閉塞手段により閉じる段階と、
サンプル流体を、空気圧を用いて第1調整モジュールの混合セクション内に押しやる段階と、
添加剤を、添加剤リザーバから第1調整モジュールの混合セクション内に供給する段階と、
空気から混合セクション内の流体に加えられる圧力を変えることにより添加剤とサンプル流体とを混合する段階と、
任意であるが、培養時間中に、添加剤と混合されたサンプル流体を培養する段階と、
混合されたサンプル流体に静圧を付与する段階とを有し、前記静圧は、ポンピング手段により第1調整モジュール内に発生され、混合されたサンプル流体を、第1調整モジュールの出口を通して第2調整モジュールの取入れ口に押しやり、
混合されたサンプル流体の少なくとも一部を、毛管力により、取入れ口から第2調整モジュール内に設けられた第2ミクロ流体チャネルシステムに搬送する段階を更に有することを特徴とする方法に関する。これにより、第2調整モジュールの自動/受動取入れ手段と協働する第1調整モジュールのポンピング手段から加えられる圧力によってのみ、混合プロセスの制御および第1調整モジュールから第2調整モジュールへの分配の制御が行われることが達成される。モジュラーミクロ流体サンプル調整システムにより、調整を行うのに外部手段からの最小の作用で済む。また、1つの調整モジュールから他の調整モジュールへの分配の自動化された機能により、モジュールの増強が可能になる。
【0040】
血液分析装置で分析するためのモジュラーミクロ流体サンプル調整システムを用いて血液サンプルを調整する他の方法は、
第1調整モジュールの出口が第2調整モジュールの取入れ口から一定距離に位置決めされるように組立てられる第1調整モジュールおよび第2調整モジュールを用意する段階と、
分析すべきサンプル流体を第1調整モジュールの入口に供給して、サンプル流体を入口リザーバ内に収容する段階と、
閉塞手段により第1調整モジュールの入口を閉じる段階と、
第1調整モジュールおよび第2調整モジュールを備えたミクロ流体サンプル調整システムを分析装置に挿入する段階と、
ポンピング手段を付勢することにより第1調整モジュールの第1ミクロ流体チャネルシステムに圧力を加えて、サンプル流体を混合セクション内に押出す段階と、
分析装置により、添加剤リザーバの添加剤を第1調整モジュールの混合セクション内に放出する段階と、
サンプル流体が添加剤と混合されるように混合セクション内の圧力を変えて、混合されたサンプル流体を作る段階と、
任意であるが、培養時間中に、添加剤と混合されたサンプル流体を培養する段階と、
第2ミクロ流体調整システムのチャネルの毛管効果を用いて、混合されたサンプル流体を第2ミクロ流体調整モジュール内に引出すことにより、混合されたサンプル流体を第1調整モジュールの出口から第2調整モジュールの取入れ口に分配する段階と、
第2モジュールにより特定されたサンプル調整を行う段階と、
モジュラーミクロ流体サンプル調整システムにより調整された血液サンプルを、血液分析装置を用いて分析する段階とを有している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明によるモジュラーミクロ流体サンプル調整システムの一実施形態を示す図面である。
【図2A】本発明によるモジュラーミクロ流体サンプル調整システムの第1調整モジュールの一実施形態を示す分解図である。
【図2B】本発明によるモジュラーミクロ流体サンプル調整システムの一実施形態を示す図面である。
【図3A】本発明によるモジュラーミクロ流体サンプル調整システムの一実施形態を示す図面である。
【図3B】互いに連結されたときの第1および第2調整モジュールを示す断面図である。
【図4】第2調整モジュールの一実施形態の取入れ口に使用する血液フィルタを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、第1調整モジュール2および第2調整モジュール3を備えたモジュラーミクロ流体サンプル調整システム1を示す図面である。第1調整モジュール2は、閉塞手段5により閉じられる入口4(図2A)を有している。入口リザーバ6は、エンドユーザが見ることができる。この実施形態では、この実施形態では、入口リザーバ6は、第1調整モジュール2の透明チャネルである(以下、入口リザーバおよびチャネルの両方を参照番号6で示す)。第1調整モジュール2を第2調整モジュール3に連結するための第1側面7(一部のみを示す)が配置されている。第1側面7は、第2調整モジュール3の第2側面8に連結されるように構成されている。図示の実施形態では、第2調整モジュール3の第2側面8は、第1調整モジュール2の連結手段(図示せず)を受入れる凹領域9を有している。第2調整モジュール3は、第1調整モジュール2から分配される流体を受入れる取入れ口10を有している。第2調整モジュール3は更に、該モジュール3の調整プロセスで使用される流体を入れておくためのブリスタ11を有している。第1調整モジュール2が第2調整モジュール3に組付けられかつ連結されると、一般にカートリッジと呼ばれている結合組立体が形成される。
【0043】
図2Aには、第1調整モジュール2の一実施形態が分解図で示されている。この実施形態では、第1調整モジュール2は、入口プレート23に取付けられる閉塞手段5と、第1フィルム20と、第2フィルム21と、第3フィルム22とを有している。入口プレート23は、第1表面24および第2表面25(図2B)を有している。フィルム20、21、22は、第1調整モジュール2の第1ミクロ流体チャネルシステム26に区切り壁を形成する。第1ミクロ流体チャネルシステム26の展開が破線で示されている。図示の目的から、およびチャネル壁の部品は実際にフィルム20、21、22および入口プレート23の両方により形成されるという事実から、チャネルは、単に入口プレート23の開凹部すなわち切開部として示されている。
【0044】
ミクロ流体システムに区切り壁を形成するのにフィルム20、21、22を使用することにより、製造プロセスが簡単になる。第1調整モジュール2は、例えば射出成型法により作ることができる。第1ミクロ流体チャネルシステム26は、入口リザーバ6と流体連通するように配置された入口4を有している。貫通孔27が、第2調整モジュール3のブリスタ11へのアクセスを可能にしている。毛管ストップ28が、ミクロ流体チャネルシステム26の入口リザーバ6と混合セクション29との間の区切りを形成している。入口プレート23の凹領域が、ポンピング手段31のポンピング手段キャビティ30を形成している。ポンピング手段キャビティ30および第2フィルム21は、協働してポンピング手段31を形成する。このように、ポンピング手段キャビティ30は空気リザーバである。ポンピング手段31からの圧力は、圧力チャネル32を通って導かれる。サンプル流体33(図示せず)が入口4に導かれると、サンプル流体33は入口リザーバ6内に貯蔵される。実際には、入口リザーバ6のサイズは、200μlより小さく、或いは100μlより小さく、好ましくは約50μlにすることができる。サンプル流体33は毛管力により引出され、入口リザーバ6が充填される。サンプル流体33は、該サンプル流体33が混合セクション29内に押出されるようなことがあるときに制御できるようにするため、毛管ストップ28によりストップされる。
【0045】
このように、調整モジュール内で所望の段階を遂行するタイムラインは異なる付勢手段により制御され、サンプル流体が入口内に充填されるときに必ずしも瞬間的に行われるものではない。サンプル流体33は、ポンピング手段31から圧力チャネル32を通り、更に閉塞手段5により閉じられている入口4を通って加えられる圧力により混合セクション29内に押出される。ポンピング手段31は、例えば、単に第2フィルム21(例えば可撓性膜)を押すことにより、発生された空気圧が圧力チャネル32を通って導かれて、分析装置により付勢される。第2毛管ストップ19が、サンプル流体が圧力チャネル32に流入しないことを確保する。ポンピング手段31からの圧力は、次に、サンプル流体を、毛管ストップ28を通して混合セクション29内に押しやる。混合セクション29は、添加剤リザーバ34を有している。入口プレート35の第1表面24から第2表面25まで延びている貫通孔35により添加剤リザーバ34が形成されており、貫通孔35の第2表面25は第3フィルム22により閉じられている。貫通孔35内に配置されるプランジャ36は、第1表面24側から貫通孔35を閉じる。
【0046】
このようにして、例えばHRPトレーサーまたは同等物のような添加剤を収容するリザーバが形成される。プランジャ36に力を加えると、プランジャ36は第2表面25に向かって押しやられ、添加剤リザーバ34の内容物が、第2表面25上で貫通孔35をカバーする第3フィルム22に対して押付けられる。第3フィルム22は、貫通孔35をカバーする第3フィルム22に或る圧力が加えられると、第3フィルム22が入口プレート23の第2表面25から緩んで、添加剤リザーバ34の内容物が混合セクション29内に押しやられるように構成されている。これにより、およびポンピング手段31からの圧力を操作することにより、サンプル流体33および添加剤リザーバ34の内容物が混合セクション29内で前後に押され、これによりサンプル流体33および添加剤リザーバ34の内容物が混合され、混合されたサンプル流体37が形成される。ポンピング手段31からの圧力の操作は、血液分析器により行うことができる。混合が完了すると、ポンピング手段31からの圧力により、混合されたサンプル流体37が第1調整モジュール2の出口に向かって押しやられる。出口38に向かうミクロ流体チャネルシステム29の最終セクションは破線により示されている。これは、出口38が、第1調整モジュール2の第2表面25に位置していることによる。
【0047】
図2Bには、図2Aの第1調整モジュール2の第2表面25が示されている。第3フィルム22が、第2表面25の一部をカバーしている。入口4の位置が破線円で示されている。同様に、添加剤リザーバ34の位置が破線円で示されている。サンプル流体33(図示せず)は、第1表面24に設けられた入口4を通って第1調整モジュール2内に流入し、混合されたサンプル流体(図示せず)が、第2表面25に設けられた出口38を通って第1調整モジュール2を出る。円形断面を有する出口38の内径は、この実施形態では約1.3mmである。第1側面7は、第2調整モジュール3の第2側面8(図1)と係合するように構成された連結手段39を有している。第1側面7は、第1表面24および第2表面25を区切る面、したがって第1調整モジュール2の外周を形成するものであると理解すべきである。また、第1側面7には、第2表面25から突出した壁41を設けることができる。突出壁41は、第2調整モジュール3に対して第1調整モジュール2を正確に位置決めする機能を有する。
【0048】
図3Aは、図3Bの断面図を得る切断線を主として示している。第1調整モジュール2は、第2調整モジュール3に連結されている(第2調整モジュールは破線のみで示されている)。図3Aの細部は、図2Aにおいて詳細に説明されている。
【0049】
図3Bは、混合されたサンプル流体37、すなわち出口38から第2調整モジュール3の取入れ口10に分配される血液の分配を示すものである。血液フィルタ40は、約0.32mmの厚さにすることができる。ポンピングキャビティ30でのポンピング手段31からの圧力、したがって混合されたサンプル流体37は、静圧として取入れ口10に分配される。混合されたサンプル流体37に加えられる静圧と取入れ口10すなわち血液フィルタ40の毛管効果との組合せにより、混合されたサンプル流体37は、第2調整モジュール3の第2ミクロ流体チャネルシステム50に向かって引出される。混合されたサンプル流体37を出口38から第2ミクロ流体チャネルシステム50に引出す間、赤血球および白血球が血漿から濾過され、血漿のみが第2調整モジュール3の第2ミクロ流体チャネルシステム50に分配される。裏当て材料51は、フィルタ40が第2調整モジュール3に固定される表面が既知の状態を呈することを確保する。出口38と血液フィルタ40との間に距離dが存在することにより、第1調整モジュール2のミクロ流体チャネルシステム26と第2調整モジュール3のミクロ流体チャネルシステム50とが直接流体連通することはない。混合されたサンプル流体37は血液フィルタ40の頂面上に置かれる。血液フィルタ40が、混合されたサンプル流体37で充填されると、濾過された流体が、血液フィルタの毛管吸引力により押出され、第2ミクロ流体チャネルシステム50と接触される。濾過された血液すなわち血漿が第2ミクロ流体チャネルシステム50と接触されると、毛管力が、血漿を第2ミクロ流体チャネルシステム50内に引き入れる。混合されたサンプル流体37に作用する静圧および血液フィルタの特性を制御することにより、すなわち血液フィルタ40への混合されたサンプル流体37の一定供給を行うことにより、第1ミクロ流体チャネルシステム26および第2ミクロ流体チャネルシステム50のチャネルが直接流体連通することなく、濾過された混合サンプル流体37を、濾過された混合サンプル流体として、第1ミクロ流体チャネルシステム26の出口38からおよび第2ミクロ流体チャネルシステム50へと分配することができる。出口38と血液フィルタ40との間の距離dの存在により、混合されたサンプル流体37が、血液フィルタ40内に押しやられることなく、血液フィルタ40の頂面上に分配される。例えば0.32mmの厚さを有する血液フィルタ40は、流体が浸み込むと高さが約0.15mm増大する。第1ミクロ流体システム26から取入れ口10への分配により、血液フィルタ40への流体の供給を維持する、混合されたサンプル流体37からなる流体柱が形成される。流体柱が途切れることがない流量で、混合されたサンプル流体37の供給が続けられると、ミクロ流体チャネルシステム50の毛管吸引力および血液フィルタ40の毛管特性により、第2ミクロ流体チャネルシステム50への濾過された流体の供給が続けられる。血液フィルタ40は、この濾過効果が低下する前、すなわち例えば好ましくない赤血球が第2ミクロ流体チャネルシステム50内に引出され始める前に約4μlの血漿を第2ミクロ流体チャネルシステム50に分配できるものである。4μlの量は、第2調整モジュール3で特定されたサンプル調整を行うのに充分な量である。第1調整モジュール2から供給される静圧を停止させると、第2ミクロ流体チャネルシステム50への濾過されたサンプル流体の供給が停止される。血液フィルタは、15-20%の効率を有している。
【0050】
図4は、第2調整モジュール3の一実施形態の取入れ口の受入れ手段として使用する血液フィルタ40の輪郭形状を概略的に示すものである。血液フィルタ40は、幅広端部の受入れ部分42と、該受入れ部分42からテーパ状の輪郭を有する幅狭端部まで外方に延びている分配タブ43とを有している。第2モジュール3の取入れ口10内に装着されるとき、血液フィルタ40の受入れ部分42は取入れ口開口内に配置され、分配タブ43は、血液フィルタ40を第2ミクロ流体チャネルシステム50に連結する取入れ口毛管に連結される。
【0051】
以上、本発明を好ましい実施形態に関連して説明した。本発明の範囲から逸脱することなく多くの変更を考えることができる。当業者に明白な変更は、本発明の範囲内に包含されると考えられる。
【符号の説明】
【0052】
1 モジュラーミクロ流体サンプル調整システム
2 第1調整モジュール
3 第2調整モジュール
10 取入れ口
20 第1フィルム
21 第2フィルム
22 第3フィルム
26 第1ミクロ流体チャネルシステム
29 混合セクション
31 ポンピング手段
50 第2ミクロ流体チャネルシステ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1平面内に配置される第1調整モジュール(2)を有し、
該第1調整モジュール(2)は、第1表面(24)および反対側の第2表面(25)を備えかつ第1側面(7)により区切られており、
第1調整モジュール(2)は更に、第1調整モジュール(2)の第2表面(25)に配置された出口(38)および入口(4)を備え、入口(4)および出口(38)は第1ミクロ流体チャネルシステム(26)を介して連結されており、
第1平面に対して実質的に平行な第2平面内に配置される第2調整モジュール(3)を有し、
該第2調整モジュール(3)は、第1表面および反対側の第2表面を備えかつ第2側面(8)により区切られており、
第2調整モジュール(2)は更に、第2調整モジュール(3)の第1表面に配置された取入れ口(10)を備え、取入れ口(10)は第2ミクロ流体チャネルシステム(50)に連結されており、
第1調整モジュール(2)は、該第1調整モジュール(2)の第2表面(25)が第2調整モジュール(3)の第1表面に対面しかつ第1調整モジュール(2)の出口(38)が第2調整モジュール(3)の取入れ口(10)に対面するようにして第2調整モジュール(3)に連結されることを特徴とするモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。
【請求項2】
前記第1調整モジュール(2)および第2調整モジュール(3)は、第1調整モジュール(2)と第2調整モジュール(3)とを着脱可能に連結する連結手段(9、39)を有していることを特徴とする請求項1記載のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。
【請求項3】
前記第1調整モジュール(2)の出口(38)は、第2調整モジュール(3)の取入れ口(10)から距離(d)に位置決めされていることを特徴とする請求項1または2記載のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。
【請求項4】
前記第1調整モジュール(2)の出口(38)と第2調整モジュール(3)の取入れ口(10)との間の距離(d)は、0.05mm-1mmまたは0.1mm-0.9mmまたは0.15mm-0.8mmであることを特徴とする請求項3記載のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。
【請求項5】
前記第2調整モジュール(3)の取入れ口(10)は、血液分離フィルタ(40)を有していることを特徴とする請求項1-4のいずれか1項記載のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。
【請求項6】
前記第1調整モジュール(2)は、第1ミクロ流体チャネルシステム(26)と流体連通している受動ミクロ流体混合セクション(29)を有していることを特徴とする請求項1-5のいずれか1項記載のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。
【請求項7】
前記第1調整モジュール(2)は、混合セクション(29)と流体連通している添加剤リザーバ(34)を有していることを特徴とする請求項6記載のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。
【請求項8】
前記第1調整モジュール(2)は、入口(4)と流体連通している入口リザーバ(6)および第1調整モジュール(2)の第1ミクロ流体チャネルシステム(26)を有していることを特徴とする請求項1-7のいずれか1項記載のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。
【請求項9】
前記第1調整モジュール(2)は更に、エンドユーザが見ることができる透明チャネル(6)を有していることを特徴とする請求項1-8のいずれか1項記載のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。
【請求項10】
前記第1調整モジュール(2)は更に、ポンピング手段(31)を有していることを特徴とする請求項1-9のいずれか1項記載のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)。
【請求項11】
血液サンプルの調整を行うことを特徴とする請求項1-10のいずれか1項記載のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)の使用方法。
【請求項12】
請求項1-10のいずれか1項のモジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)を用いたことを特徴とする血液分析装置。
【請求項13】
前記第1調整モジュール(2)のポンピング手段(31)は血液分析装置により付勢されることを特徴とする請求項12記載の血液分析装置。
【請求項14】
サンプル流体(33)および添加剤を第1調整モジュール(2)内で混合し、かつ混合物されたサンプル流体(37)を、モジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)を用いて第2調整モジュール(3)に分配する方法において、
第1ミクロ流体チャネルシステム(26)を備えた第1調整モジュール(2)を、第2ミクロ流体チャネルシステム(50)を備えた第2調整モジュール(3)に連結する段階と、
サンプル流体(33)を、第1調整モジュール(2)の入口(4)を通して入口リザーバ(6)に供給する段階と、
第1調整モジュール(2)の入口(4)を、閉塞手段(5)により閉じる段階と、
サンプル流体(33)を、空気圧を用いて第1調整モジュール(2)の混合セクション(26)内に押しやる段階と、
添加剤を、添加剤リザーバ(34)から第1調整モジュール(2)の混合セクション(26)内に供給する段階と、
空気から混合セクション(26)内の流体に加えられる圧力を変えることにより添加剤とサンプル流体(33)とを混合して、混合されたサンプル流体(37)を形成する段階と、
混合されたサンプル流体(37)に静圧を付与する段階とを有し、前記静圧は、ポンピング手段(31)により第1調整モジュール(2)内に発生され、混合されたサンプル流体(37)を、第1調整モジュール(2)の出口(38)を通して第2調整モジュール(3)の取入れ口(10)に押しやり、
混合されたサンプル流体(37)の少なくとも一部を、毛管力により、取入れ口から第2調整モジュール(3)内に設けられた第2ミクロ流体チャネルシステム(50)に搬送する段階を更に有することを特徴とする方法。
【請求項15】
血液分析装置内の血液サンプルを分析するための、請求項1-16記載のモジュラーサンプル調整システム(1)を用いて血液サンプルを調整する方法において、
第1調整モジュール(2)の出口(38)が第2調整モジュール(3)の取入れ口(10)から距離(d)に位置決めされるように組立てられる第1調整モジュール(2)および第2調整モジュール(3)を用意する段階と、
分析すべきサンプル流体(33)を第1調整モジュール(2)の入口(4)に供給して、サンプル流体(33)を入口リザーバ(6)内に収容する段階と、
閉塞手段(5)により第1調整モジュール(2)の入口(4)を閉じる段階と、
第1調整モジュール(2)および第2調整モジュール(3)を備えたミクロ流体サンプル調整システム(1)を分析装置に挿入する段階と、
ポンピング手段(31)を付勢することにより第1調整モジュール(2)の第1ミクロ流体チャネルシステム(26)に圧力を加えて、サンプル流体(33)を混合セクション(26)内に押出す段階と、
分析装置により、添加剤リザーバ(34)の添加剤を第1調整モジュール(2)の混合セクション(26)内に放出する段階と、
サンプル流体(33)が添加剤と混合されるように混合セクション(26)内の圧力を変えて、混合されたサンプル流体(37)を作る段階と、
第2ミクロ流体調整システム(50)のチャネルの毛管効果を用いて、混合されたサンプル流体(37)を第2ミクロ流体調整モジュール(3)内に引出すことにより、混合されたサンプル流体(37)を第1調整モジュール(2)の出口(38)から第2調整モジュール(3)の取入れ口に分配する段階と、
第2モジュール(3)により特定されたサンプル調整を行う段階と、
モジュラーミクロ流体サンプル調整システム(1)により調整された血液サンプルを、血液分析装置を用いて分析する段階とを有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−150089(P2012−150089A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−20191(P2011−20191)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(506388510)アトノミックス アクティーゼルスカブ (9)
【Fターム(参考)】