説明

モジュール式の電池構造

【課題】 車両用等の改善された蓄電池・冷却システムを提示する。
【解決手段】 この課題は、少なとも1つのモジュール支持体(102)と前記少なとも1つのモジュール支持体に接続された少なとも1つのエネルギー貯蔵モジュール(104)とを備えたモジュールシステムであって、前記モジュール支持体(102)と前記エネルギー貯蔵モジュール(104)とが、互いに適合された冷却流体接続部、電気接点および連結要素を有するモジュールシステム(100)によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のモジュールシステム用モジュール支持体、請求項8の上位概念に記載のモジュールシステム用エネルギー貯蔵モジュールおよび請求項12の上位概念に記載のモジュールシステムに関する。すなわち、本発明は、複数のエネルギー貯蔵モジュールを少なくとも1つのモジュール支持体によって保持することができ、その際、前記エネルギー貯蔵モジュールの各々が2つのモジュール側冷却流体接続部、1つのモジュール側電気接点および1つのモジュール側連結要素を有するモジュールシステム用モジュール支持体と、複数のエネルギー貯蔵モジュールを少なくとも1つのモジュール支持体によって保持することができ、その際、前記モジュール支持体の各々が2つの支持体側冷却流体接続部、1つの支持体側電気接点および1つの支持体側連結要素を有し、かつ、前記エネルギー貯蔵モジュールが、少なくとも1つの電気化学エネルギー貯蔵ユニットを収容できるように構成されているモジュールシステム用エネルギー貯蔵モジュールと、前述の少なくとも1つのモジュール支持体、および、その少なくとも1つのモジュール支持体に接続された、前述の少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュールを備えたモジュールシステムのモジュールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のHEV/EV車両では、高性能のエネルギー貯蔵装置、例えばリチウムイオン蓄電池やニッケル水素蓄電池あるいはスーパーキャパシタが用いられる。これらの場合、急速な充電および放電を行う際、セルの内部および外部の抵抗によって加熱が生じる。50℃超の温度は、エネルギー貯蔵装置に対して永続的に損傷を与える。エネルギー貯蔵装置の機能を保証するためには、エネルギー貯蔵装置を冷却しなければならない。そのために、エネルギー貯蔵装置は、冷媒または冷却剤が貫流するプレートに熱接触させることで冷却される。
【0003】
セルを冷却する際、全てのセルが均一に冷却されることが重要である。セルの冷却が不均一である場合、各セルは異なった速さで老朽化が進み、これが、エネルギー貯蔵装置の機能および性能に悪影響を及ぼす。さらに、上述のエネルギー貯蔵装置は、確実な固定を保証してエネルギー貯蔵装置の損傷を回避できるように、機械技術的に車両に結合されねばならない。その際、印加される力と加速および発生する力と加速が吸収されねばならず、また、エネルギー貯蔵装置の適当な幾何公差が遵守されねばならない。さらに、この場合、当該のエネルギー貯蔵装置は、意図された用途に従って任意の構造様式において実施され得る。
【0004】
上述の蓄電システムに関して現在一般的に用いられている冷却システムは、大抵、それぞれの用途に密接に適合された構造形態を有しており、これは、セルの個数、エネルギー容量および冷却に関連する。特に、この場合、冷却部は、大抵、冷却剤または冷媒が貫流する単一または複数の冷却板として実施され、この冷却板が、通例、蓄電システム全体に対応する。
【0005】
非特許文献1はモジュール式の電池構造について述べているが、この電池構造の場合、ヒートシンクは予めモジュール内に組み込まれている。電池を完成する際は、個々の冷却通路を接続するだけでよい。
【0006】
特許文献1は電池のモジュール構造を開示しており、この電池の場合、モジュールはセルと冷却金属薄板とからなる。完成した電池は空気で冷却される。
【0007】
前記諸モジュールは、予め冷却通路あるいは蒸発器プレートを含んでいる。個々のモジュールを交換する際、電気的および機械的接続部以外に、各モジュール間の冷却剤接続部も分離しなければならない。このことは、各モジュールの交換に関するコストを著しく増大させ、また漏出の危険性を孕んでいる。
【0008】
従来技術は、それぞれの用途に非常に密接に適合させた蓄電・冷却システムを形成しており、これらのシステムの開発および製造は、とりわけこれまで生産量がまだ比較的僅かなので、非常に高コストで高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0090137号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「The Impact of Simulation Analysis an the Development of Battery Coolinq Systems for Hybrid Vehicles」 Peter Pichler, Product Manager Battery Systems, MAGNA STEYR Fahrzeugtechnik AG & Co. KG von der AABC (Advanced Automotive Battery Conference) 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、車両用等の改善された蓄電池・冷却システムを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1に記載のモジュールシステム用モジュール支持体、請求項8に記載のモジュールシステム用エネルギー貯蔵モジュールおよび請求項12に記載のモジュールシステムによって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る概念の中心思想は、セルモジュールレベルに全ての主要機能を統合すること、すなわち冷却ならびに熱的および電気的接触を統合することである。根本となる思想は、他のセルサイズに対する適応コストが低く、量産性の高い標準モジュールを開発することである。その際、重要な基準点は、高いモジュール性、故障時におけるセルモジュールの非常に迅速かつ容易な交換性、および高い標準化と低い適用コストとによる製造の有利性である。
【0014】
本発明の根底となる認識は、蓄電池・冷却システムのモジュール化の程度を明確に高めることによって、小さな統一的構造群、例えば全ての関連インタフェース、特に電気的、機械的および熱的インタフェースを予め含んだ構造群に基づくシステムを提示できるということである。このユニットは、任意に拡張することが可能であり、非常に僅かなコストで各用途に適合させることができる。さらに、これにより生産量が大きくなることによって、経済的かつ費用対効果に優れた製造および開発が実現可能である。
【0015】
本発明の前述の課題は、多かれ少なかれ小さな基本ユニットによって解決可能である。この基本ユニットは、1つまたは複数のエネルギー貯蔵装置と必要なインタフェースとを含む構造群からなる。この場合、電気的、機械的および熱的なインタフェースはいずれも、前もってこの基本ユニットに組み込んでおくことができる。また、この基本ユニットは基礎フレームに組み込むことができ、この基礎フレームは、1つまたは複数の基本ユニットを収容し、当該の用途に従って任意に拡張できる。本発明は、モジュール性が高いハイブリッド用および電気用電池システムの新たな種類の設計を従来の構造形態の代替形態として提示する。
【0016】
有利には、本発明に係る前記概念によって、構造スペースおよび重量が比較的小さな電池システムが実現できる。また、この種のシステムは設計面での高い柔軟性を特徴とする。本発明に係る前記方式では、同一の要素を大量に製造することができ、これにより、生産の経済性を向上させることができる。本発明に係る前記方式によるモジュール式の蓄電池・冷却システムによって、各用途に対する適用コストを低減することができ、従って開発時間も短縮できる。これらのエネルギー貯蔵ユニットにおける力の導入および伝達ならびに公差補償は、有利には1つの概念に統合されている。最後に、本発明に係る前記方式で製造されて利用される蓄電池・冷却システムは、保守および点検の容易性が著しく向上するという点で秀でている。
【0017】
本発明では、ガルバニセル、特にリチウムイオンセルを接続して機械的モジュールとして構成することができる。これらのモジュールは、再分離可能なセルコネクタ基板を介して電気的に並列および/または直列に配線し、さらにヒートシンクに接続することができる。前記モジュールは、1つまたは複数のセルに不具合がある場合に僅かなコストで冷却板から個々に分離して交換することが可能である。従って、前記冷却板および前記セルコネクタ基板を再度使用することができる。また、様々な冷却板を用途に応じて設置することが可能である。
【0018】
有利には、前記セルモジュールは、単にセルを機械的に結合したものである。セルコネクタ基板および冷却板は、個々のモジュールを交換する際にもそのまま保持しておくことができる。これにより、故障時には個々のモジュールのみを交換すればよく、冷却通路を新たに接続する必要がないので、電池交換のためのコストが格段に低減される。同一のセルモジュールから、(性能)要件に応じて特殊な電池を構成することも可能である。
【0019】
本発明は、モジュールシステム用モジュール支持体を提示し、このモジュール支持体の場合、複数のエネルギー貯蔵モジュールを少なくとも1つのモジュール支持体によって保持することができ、その際、前記エネルギー貯蔵モジュールの各々が2つのモジュール側冷却流体接続部、1つのモジュール側電気接点および1つのモジュール側連結要素を有することができ、また、前記モジュール支持体は、以下の特徴、すなわち、2つの互いに対向する側壁を備えた支持体ハウジング、冷却流体を案内するための冷却通路であって、前記支持体ハウジング内に配置されて前記側壁間に延在することができる冷却通路、前記モジュール側冷却流体接続部に接続できるように構成可能な2つの支持体側冷却流体接続部であって、前記支持体ハウジングの前記側壁の1つに配置されて前記冷却通路に接続しておくことができる支持体側冷却流体接続部、前記モジュール側電気接点に接続できるように構成可能な支持体側電気接点、電線路を前記支持体側電気接点にまで案内するための通路であって、前記支持体ハウジング内に配置されて前記側壁間に延在することができる通路、および、前記モジュール側連結要素に接続できるように構成可能な支持体側連結要素であって、これにより、前記エネルギー貯蔵モジュールを前記側壁の1つに保持することができ、かつ、前記支持体側冷却流体接続部が流体密に前記モジュール側冷却流体接続部に接続されている支持体側連結要素を有することができる。
【0020】
前記モジュール支持体は、モジュールシステムの部分要素であってもよく、1つまたは複数のエネルギー貯蔵モジュールを収容できるように構成しておくことが可能である。前記冷却流体接続部、電気接点および連結要素は、モジュール構造システムの所定のインタフェースであり得る。これはすなわち、前記モジュールシステムの個々の基本ユニットまたは基礎フレーム、つまり前記モジュール支持体および前記エネルギー貯蔵モジュールにおいて、前記諸インタフェースの位置および実施形態が予め定められているということである。従って、前記モジュール側接続部は、それぞれ、前記支持体側接続部の相手方部材となる。前記諸インタフェースは、前記基礎フレーム内への前記基本ユニットの容易な繋ぎ合わせ、例えばスライド結合や掛止によって、前記それぞれ所望の電気的、機械的または熱的接続が保証されるように構成しておくことができる。
【0021】
1実施形態では、前記冷却通路と前記電線路を案内するための通路とは、互いに隣接し合って前記支持体ハウジング内に配置することができる。その際、1つの共通の案内通路または複数の個別の案内通路を設けることが可能である。
【0022】
また別の実施形態では、前記支持体側冷却流体接続部がフランジを有することができる。これにより、モジュールと支持体との間において、取り扱いが容易でしかも流体密な接続が可能となる。
【0023】
さらに、前記支持体側連結要素は、少なくとも1つのレールとして構成することができ、このレールは、前記支持体ハウジングの前記側壁に対してほぼ直角に配置されている。こうして、前記エネルギー貯蔵モジュールは、前記モジュール側連結要素を前記少なくとも1つのレール内へスライドして挿入することで保持することが可能となる。
【0024】
あるいは、前記支持体側連結要素は、掛止要素を収容するための機構として構成することもできる。前記掛止要素を収容するための機構は、前記支持体ハウジングの前記側壁の1つに配置しておくことができ、これにより、前記掛止要素を収容するための機構内へ前記モジュール側連結要素を掛止することで、前記エネルギー貯蔵モジュールを保持することが可能となる。その際、前記諸インタフェースは、前記それぞれ所望の接続が前記掛止移動中に実現できるように実施しておくことが可能である。
【0025】
さらに、前記支持体ハウジングは少なくとも1つの接続要素を有することができ、この接続要素は、前記モジュール支持体の前記冷却通路とさらに別のモジュール支持体の前記冷却通路とが接続されるように前記モジュール支持体を前記別のモジュール支持体に接続可能に構成しておくことができる。このようにすることで、前記システムを任意に拡張することができる。
【0026】
1実施形態では、前記2つの互いに対向する側壁の各々が、少なくとも1つの支持体側冷却流体接続部、少なくとも1つの支持体側電気接点および少なくとも1つの支持体側連結要素を有することができる。このようにすることで、モジュールを前記支持体の両側に配置することが可能となる。
【0027】
本発明は、さらにモジュールシステム用エネルギー貯蔵モジュールを提示し、このエネルギー貯蔵モジュールの場合、複数のエネルギー貯蔵モジュールを少なくとも1つのモジュール支持体によって保持することができ、その際、前記モジュール支持体の各々が2つの支持体側冷却流体接続部、1つの支持体側電気接点および1つの支持体側連結要素を有することができ、かつ、その際、少なくとも1つの電気化学エネルギー貯蔵ユニットを収容できるように前記エネルギー貯蔵モジュールを構成しておくことが可能であり、また、前記エネルギー貯蔵モジュールは、以下の特徴、すなわち、複数の冷却流体通路を備えた冷却板であって、前記エネルギー貯蔵モジュールの基礎板を形成できる冷却板、前記エネルギー貯蔵モジュールの壁領域を形成するための少なくとも1つの保持面、前記支持体側冷却流体接続部に接続できるように構成可能な2つのモジュール側冷却流体接続部であって、また前記冷却板の前記冷却流体通路に連結可能でもあるモジュール側冷却流体接続部、前記支持体側電気接点に接続できるように構成可能なモジュール側電気接点であって、また前記少なくとも1つの電気化学的エネルギー貯蔵ユニットに接続可能でもあるモジュール側電気接点、前記支持体側連結要素に接続できるように構成可能なモジュール側連結要素であって、これにより、前記エネルギー貯蔵モジュールを前記支持体ハウジングの前記側壁の1つに保持することができ、かつ、前記モジュール側冷却流体接続部が流体密に前記支持体側冷却流体接続部に接続されているモジュール側連結要素を有することができる。
【0028】
前記電気化学的エネルギー貯蔵ユニットは、例えばリチウムイオン蓄電池またはニッケル水素蓄電池、スーパーキャパシタあるいは一般的にガルバニセルであり得る。前記エネルギー貯蔵ユニットの1つまたは複数を前記冷却板上に配置しておくことができ、従ってまた、この冷却板によって冷却することができる。前記エネルギー貯蔵ユニットと前記冷却板との間の前記接続は非固定式であってもよく、これにより、不具合があるエネルギー貯蔵ユニットを容易に交換することができる。前記保持面は、前記エネルギー貯蔵ユニットを側方において抱持して固定できるように構成しておくことができる。前記保持面は、金属製あるいはプラスチック製の保持薄板として実施することが可能である。
【0029】
1実施形態では、前記エネルギー貯蔵モジュールは、2つの冷却流体容器を有することができる。この場合、前記モジュール側冷却流体接続部のそれぞれ1つを、前記冷却流体容器のそれぞれ1つに配置することができる。それに応じて、前記エネルギー貯蔵モジュールも2つの保持薄板を有することができる。前記保持薄板は、それぞれ前記冷却流体容器の1つと前記冷却板との間に配置することができ、前記それぞれの冷却流体容器と前記冷却流体通路との間に冷却流体を通過案内するためのそれぞれ1つの貫通開口部を有することが可能である。前記冷却流体容器は、前記冷却板の中を導通される冷却流体を供給および排出するための可能な方法を提供する。
【0030】
例えば、前記モジュール側連結要素は、レール要素として構成することができる。このレール要素は、前記水容器の少なくとも1つに配置しておくことが可能であり、これにより、前記レール要素を前記支持体側連結要素内へスライドして挿入することができる。
【0031】
あるいは、前記モジュール側連結要素は、掛止要素として構成することも可能である。前記掛止要素は、前記エネルギー貯蔵モジュールの前記保持薄板に配置しておくことができ、これにより、前記掛止要素を前記支持体側連結要素内へ掛止することができる。
【0032】
最後に、本発明は、少なくとも1つの本発明に係るモジュール支持体と、前記少なくとも1つのモジュール支持体に接続可能な少なくとも1つの本発明に係るエネルギー貯蔵モジュールとを備えたモジュールシステムを提示する。
【0033】
本発明の有利な実施例について、以下において、添付した図面を参照しながらさらに詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の1実施例に係るモジュールシステムを示す斜視図である。
【図2】本発明の1実施例に係るモジュール支持体を示す斜視図である。
【図3】本発明の1実施例に係る拡張されたモジュールシステムの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の1実施例に係る、エネルギー貯蔵モジュールとモジュール支持体との掛止接続に関する構築ステップを示す斜視図である。
【図5】本発明の1実施例に係る、エネルギー貯蔵モジュールとモジュール支持体との掛止接続に関するまた別の構築ステップを示す斜視図である。
【図6】本発明の1実施例に係るエネルギー貯蔵モジュールを示す斜視図である。
【図7】本発明の1実施例に係る、図6のエネルギー貯蔵モジュールの一部分およびハウジング内に配置された電気化学的エネルギー貯蔵ユニットを示す斜視図である。
【図8】本発明の1実施例に係るエネルギー貯蔵モジュールの諸要素を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の1実施例に係る別態様のモジュールシステムを示す模式図である。
【実施例】
【0035】
本発明の好ましい実施例についての下記説明では、様々な図面に示された、類似の働きをする要素に対して同一または類似の符号が用いられており、これらの要素について繰り返し説明されることはない。
【0036】
図1は、本発明の1実施例に係るモジュールシステム100を示す斜視図である。モジュール支持体102が示されており、このモジュール支持体は2つのエネルギー貯蔵モジュール104を支持する。前記モジュール支持体102は、2つの互いに対向する側壁を備えた支持体ハウジング106と2本のレール108とを有し、これらのレールは、それぞれほぼ直角に前記支持体ハウジング106に配置されており、それぞれ反対方向に前記支持体ハウジング106から遠ざかるように延在する。前記エネルギー貯蔵モジュール104の各々は、前記支持体ハウジング106の前記側壁のそれぞれ1つに対して隣接して配置されている。前記エネルギー貯蔵モジュール104は、それぞれ反対方向から前記レール108内へスライドさせて挿入することによって前記モジュール支持体102に接続することができる。
【0037】
図2は、図1のモジュール支持体102を示す斜視図である。前記モジュール支持体102は、冷媒用および電線路用の収集通路が組み込まれた、それぞれ2つずつの6連モジュールに対するモジュール式保持フレームとして構成されている。前記保持フレーム102の構造もやはり前記支持体ハウジング106と前記2本のレール108とを含む。前記モジュール支持体102の前記組み込まれた収集通路は、前記支持体ハウジング106内に配置されており、冷媒を案内するための冷却通路202と電気構成部品を案内するための通路204とで構成される。さらに、前記モジュール支持体102は、冷却流体接続部206および電気接点208を有する。
【0038】
前記冷却通路202と前記電気構成部品を案内するための通路204とは、前記支持体ハウジング106の長手方向に延在し、ハウジングブリッジによって互いに分離されている。図2では、前記電気構成部品を案内するための通路204が前記冷却通路202の上方に延在する。前記冷却流体接続部206は、前記冷却通路202の高さにおいて前記支持体ハウジング106の前記側壁を貫通している。前記冷却流体接続部206は接続フランジを有し、これにより、冷却通路202とさらに別の要素、例えばエネルギー貯蔵モジュールとの間における冷媒の流体密な移動が可能となる。図2に示された実施例の場合、前記冷却流体接続部206の下方にさらに別の冷却流体接続部206が配置されている。前記電気接点208は、前記電気構成部品を案内するための通路204の高さにおいて前記支持体ハウジング106の前記側壁を貫通している。前記電気接点208は、動作電流用およびデータ交換用の差込コネクタとして構成されている。前記組み込まれた接続フランジによって、モジュールを前記モジュール支持体102に嵌め込む際に前記インタフェース206、208を介する前記エネルギー貯蔵モジュールの自動的な電気接触および液圧接触が実現できる。
【0039】
前記2本のレール108は、それぞれ前記支持体ハウジング106の前記側壁の対向する端部に配置されており、前記支持体ハウジングから遠ざかるようにそれぞれ反対方向に延在する。前記レール108は、エネルギー貯蔵モジュールを収容するための溝を有することができる。前記モジュール支持体102のこの斜視図では、対向するもう一方の側壁は見えないが、この側壁は、また別の電気接点208と1つまたは複数のまた別の冷却流体接続部206とを有することができる。
【0040】
図3は、本発明の1実施例に係るモジュールシステム300の構造を示す。図3から見て取れるように、複数の保持フレーム102を4本、6本、8本等で組み合わせていくことによって、前記モジュールを列状に拡張していくことが可能である。従って、非常に様々な用途に適した前記モジュールシステム300の設計が実現できる。図3に示された矢印は、前記エネルギー貯蔵モジュール104が水平方向に組み立てられることを示し、これらのエネルギー貯蔵モジュールは、前記組み合わされたモジュール支持体102の前記レール内へスライドさせて挿入することによって、前記モジュール支持体102の前記支持体ハウジングに固定される。前記セルモジュール104の組立方向は、水平方向および垂直方向のいずれもが考えられる。
【0041】
図4および図5は、モジュール支持体とエネルギー貯蔵モジュールとの間において保持突起部の掛止およびそれに続く旋回係入によって固定するという別態様が可能であることを示す。
【0042】
図4は、本発明の1実施例に係る、エネルギー貯蔵モジュール104とモジュール支持体102との間の掛止接続に関する組立ステップを示す斜視図である。前記モジュール支持体102の図4に示された実施例と、先行する諸図に示された前記モジュール支持体102の実施例との相違点は、前記モジュール支持体102の前記支持体側連結要素が、レールの形態ではなく、掛止縁または掛止溝408として構成されているということである。それに応じて、前記エネルギー貯蔵モジュール104の図4に示された実施例は、1つの側面に掛止要素410を有し、この掛止要素は、掛止縁または掛止溝408に係入することができるように構成されている。従って、図4は、前記掛止要素410を前記掛止縁または掛止溝408内に掛止することによって前記エネルギー貯蔵モジュール104が前記モジュール支持体102に機械的に接続されることを示す。また、図4から見て取れるように、前記モジュール支持体102は前記支持体側冷却流体接続部206を有し、前記エネルギー貯蔵モジュール104はモジュール側冷却流体接続部412を有する。
【0043】
図5は、既に図4に示された実施例に係る、エネルギー貯蔵モジュールとモジュール支持体との掛止接続に関するまた別の構築ステップを示す斜視図である。図5は、前記機械的接続に加えて、次にまた、前記支持体モジュール102と前記エネルギー貯蔵モジュール104との間に液圧接続が行われることを示す。前記モジュール側冷却流体接続部412は、前記支持体側冷却流体接続部206内に嵌め込まれている。前記モジュール側冷却流体接続部412のフランジを介して、前記エネルギー貯蔵モジュール104と前記支持体モジュール102との間に流体密の接続が構築されている。
【0044】
従って、図4および図5に示された接続ステップによって、前記液圧接続部206、412による自動的な固定が可能である。
【0045】
図6は、モジュールカバーを備えた、前記代替態様の掛止部の実施例としての前記エネルギー貯蔵モジュール104を示す斜視図である。前記エネルギー貯蔵モジュール104の2つの掛止要素410および2つの冷却流体接続部412が明確に見て取れる。図6にはまた、前記エネルギー貯蔵モジュール104の電気接点602も示されており、この電気接点はモジュール支持体の電気接点に接続可能である。
【0046】
図7も前記代替態様の掛止部の前記実施例を示すが、ここでは、前記エネルギー貯蔵モジュール104の諸部材および前記モジュールカバーが取り去られており、これにより、前記エネルギー貯蔵モジュール104の内部が見通せる。図7に示された前記エネルギー貯蔵モジュール104の実施例は、6つの電気化学的エネルギー貯蔵ユニットが装備されている。前記エネルギー貯蔵モジュール104のまた別の実施例では、電気化学的エネルギー貯蔵ユニットを他の個数にすることも可能である。
【0047】
図8は、前記セルモジュール104の前記代替態様の掛止部に関する構造の実施例を示す分解斜視図である。また、冷却板802、2つの保持薄板804、およびそれぞれ1つの冷却流体接続部412を備えた2つの冷却流体通路806が示されている。
【0048】
前記冷却板802は冷却流体通路を有し、これらの冷却流体通路は、互いに平行に配置しておくことができ、前記冷却板802を長手方向に貫通することが可能である。前記冷却板802は、例えば層状薄板構造で形成することができる。それ以外にさらに他の構造も可能であり、例えば前記冷却板802を押出形材から製造することも可能である。前記保持薄板804は、それぞれ1つのより大きな壁部とより小さな壁部とで構成され、これらの壁部は互いにほぼ直角に結合されている。この場合、前記より大きな壁部は下縁に長手方向開口部を有し、この長手方向開口部は、この壁部のほぼ側長全体にわたって延在する。前記より小さな壁部の面はこの壁部の端部に向かって小さくなる。前記より小さな壁部はその上縁に屈曲部を有し、この屈曲部は、前記エネルギー貯蔵モジュール104の前記代替態様の掛止部の前記掛止要素410を形成する。前記保持薄板804は、前記セルモジュールの固定およびセルの緊締に用いられる。場合によっては、前記保持薄板はまた、補足的な冷却機能を担えるように構成することも可能である。前記冷却流体容器806は細長い容器として構成されており、これらの容器は、それぞれ一端が冷却流体接続部412として終端する。前記冷却流体容器806は前記長手方向側面の1つに沿って開放されており、これにより、冷却流体を前記冷却板802と交換することが可能である。前記開放された長手方向側面とは反対側の側面では、前記水容器412がそれぞれ1つのレール要素810を有し、これにより、組み立てられた状態において前記エネルギー貯蔵モジュール104をモジュール支持体の前記レール内へスライドさせて挿入することができる。
【0049】
前記セルモジュール104の組み立てのために、前記保持薄板804は、前記冷却板802の互いに対向する端部とそれぞれ1つの水容器806との間に配置される。その際、前記保持薄板804の各々は、前記保持薄板804の前記長手方向開口部が前記冷却板802における前記冷却流体通路の前記開口部と前記それぞれの冷却流体容器806の前記開放された側面との間に位置するように配置されている。この場合、前記保持薄板804の前記より小さな壁部は、互いに指し示し合うように整向されている。従って、組み立てられた状態において、前記冷却板802と前記2つの保持薄板804とは、ある個数の電気化学的エネルギー貯蔵ユニットを適切に保持するためのハウジングの基礎板および側壁を形成する。前記諸要素を結合するために、前記水容器806は、この冷却流体容器806が前記保持薄板804の前記長手方向開口部を介して前記冷却板802に接続されるように、密閉して前記保持薄板804に設置されている。
【0050】
図9は、本発明の1実施例に係る別態様のモジュールシステム900を示す模式図である。特に、ヒートシンクに対する電池モジュール、特にリチウムイオンセルからなる電池モジュールの結合が示されている。3つのセルモジュール902、903および904からなる電池901が示されており、これらのセルモジュールはヒートシンク905に接続されている。前記セルモジュール902、903および904は電気接続部906を有する。CSC(セル監視回路)基板907が、前記セル902、903および904を監視する。図9では、セルと電気的および/または冷却技術的構成部品と前記冷却板への着脱可能な接続ユニットとを備えたモジュールの構造が示されている。前記着脱可能な接続部は、例えば螺着によって実現可能である。冷却要素は、予めモジュールに含まれており、この接続ユニットを介して前記冷却板に熱的に接触することになる。従って、個々のセルまたは全モジュールを前記ヒートシンクに高コストで結合すること、および前記個々のモジュールを互いに接続することが不必要となる。
【0051】
上述した諸実施例は単に典型例として選定されており、互いに組み合わせることも可能である。
【0052】
本出願書類で説明された概念および方式は、技術的に可能な方法において有効な実施態様である。しかしまた、前記エネルギー貯蔵ハウジングまたは前記冷却構成部品の前記幾何学的構成を条件とする適当な代替態様も考えられる。
【0053】
前記基本ユニットのサイズは変更することが可能であり、また、その中に格納される前記エネルギー貯蔵装置の個数も変更可能である。また、組み込まれる前記機能およびインタフェースの規模を変更することも可能であり、例えば冷却部を外部に出すといったことも考えられる。さらにまた、その際、前記冷却は、技術的な観点から各用途にとって有効である通常の如何なる方式で行うことも可能である。この場合、可能な代替態様としては、自由対流または強制対流、潜熱冷却、冷却剤または冷媒などがある。
【符号の説明】
【0054】
100 モジュールシステム
102 モジュール支持体、保持フレーム
104 エネルギー貯蔵モジュール、セルモジュール
106 支持体ハウジング
108 レール、連結要素
202 冷却通路
204 電気構成部品を案内するための通路
206 冷却流体接続部、インタフェース、液圧接続部
208 電気接点、インタフェース
300 モジュールシステム
408 掛止縁、掛止溝、連結要素
410 掛止要素、連結要素
412 冷却流体接続部、液圧接続部、水容器
602 電気接点
802 冷却板
804 保持薄板
806 冷却流体通路、冷却流体容器、水容器
810 レール要素、連結要素
901 電池
902 セルモジュール、セル
903 セルモジュール、セル
904 セルモジュール、セル
905 ヒートシンク
906 電気接続部
907 CSC基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュールシステム(100;300)用モジュール支持体であって、複数のエネルギー貯蔵モジュール(104)を少なくとも1つのモジュール支持体によって保持することができ、その際、前記エネルギー貯蔵モジュールの各々が2つのモジュール側冷却流体接続部(412)、1つのモジュール側電気接点(602)および1つのモジュール側連結要素(410;810)を有し、前記モジュール支持体が以下の特徴、すなわち、
2つの互いに対向する側壁を備えた支持体ハウジング(106)、
冷却流体を案内するための冷却通路であって、前記支持体ハウジング内に配置されて前記側壁間に延在する冷却通路(202)、
前記モジュール側冷却流体接続部に接続できるように構成された2つの支持体側冷却流体接続部であって、前記支持体ハウジングの前記側壁の1つに配置されて前記冷却通路に接続された支持体側冷却流体接続部(206)、
前記モジュール側電気接点に接続できるように構成された支持体側電気接点(208)、
電線路を前記支持体側電気接点にまで案内するための通路であって、前記支持体ハウジング内に配置されて前記側壁間に延在する通路(204)、および、
前記モジュール側連結要素に接続できるように構成された支持体側連結要素であって、これにより、前記エネルギー貯蔵モジュール(104)が前記側壁の1つに保持され、かつ、前記支持体側冷却流体接続部が流体密に前記モジュール側冷却流体接続部に接続されている支持体側連結要素(108;408)、
を有するモジュール支持体(102)。
【請求項2】
前記冷却通路(202)と前記電線路を案内するための通路(204)とが、互いに隣接し合って前記支持体ハウジング(106)内に配置されている請求項1に記載のモジュール支持体(102)。
【請求項3】
前記支持体側冷却流体接続部(206)がフランジを有する請求項1または2に記載のモジュール支持体(102)。
【請求項4】
前記支持体側連結要素(108;408)が少なくとも1つのレールとして構成され、このレールが、前記支持体ハウジング(106)の前記側壁に対してほぼ直角に配置されており、これにより、前記エネルギー貯蔵モジュール(104)が、前記モジュール側連結要素(410;810)を前記少なくとも1つのレール内へスライドして挿入することで保持され得る請求項1〜3のいずれか1項に記載のモジュール支持体(102)。
【請求項5】
前記支持体側連結要素(108;408)が掛止要素を収容するための機構として構成され、この機構が、前記支持体ハウジング(106)の前記側壁の1つに配置されており、これにより、前記エネルギー貯蔵モジュール(104)が、前記モジュール側連結要素(410;810)を前記掛止要素を収容するための機構内へ掛止することで保持され得る請求項1〜3のいずれか1項に記載のモジュール支持体(102)。
【請求項6】
前記支持体ハウジング(106)が少なくとも1つの接続要素を有し、この接続要素が、前記モジュール支持体とさらに別のモジュール支持体との前記冷却通路(202)が接続されるように前記モジュール支持体を前記別のモジュール支持体に接続可能に構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のモジュール支持体(102)。
【請求項7】
前記2つの互いに対向する側壁の各々が、少なくとも1つの支持体側冷却流体接続部(206)、少なくとも1つの支持体側電気接点(208)および少なくとも1つの支持体側連結要素(108;408)を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のモジュール支持体(102)。
【請求項8】
モジュールシステム(100;300)用エネルギー貯蔵モジュールであって、複数のエネルギー貯蔵モジュールを少なくとも1つのモジュール支持体(102)によって保持することができ、その際、前記モジュール支持体の各々が2つの支持体側冷却流体接続部(206)、1つの支持体側電気接点(208)および1つの支持体側連結要素(108;408)を有し、かつ、前記エネルギー貯蔵モジュールが、少なくとも1つの電気化学エネルギー貯蔵ユニットを収容できるように構成されており、また、以下の特徴、すなわち、
複数の冷却流体通路を備えた冷却板であって、前記エネルギー貯蔵モジュールの基礎板を形成する冷却板(802)、
前記エネルギー貯蔵モジュールの壁領域を形成するための少なくとも1つの保持面、特に保持薄板(804)、
前記支持体側冷却流体接続部に接続できるように構成された2つのモジュール側冷却流体接続部であって、前記冷却板の前記冷却流体通路に連結されたモジュール側冷却流体接続部(412)、
前記支持体側電気接点に接続できるように構成されたモジュール側電気接点であり、前記少なくとも1つの電気化学的エネルギー貯蔵ユニットに接続可能であるモジュール側電気接点(602)、
前記支持体側連結要素に接続できるように構成されたモジュール側連結要素であって、これにより、前記エネルギー貯蔵モジュールを前記モジュール支持体(102)の前記支持体ハウジング(106)の前記側壁の1つに保持することができ、かつ、前記モジュール側冷却流体接続部(412)が流体密に前記支持体側冷却流体接続部に接続されているモジュール側連結要素(410;810)、
を有するエネルギー貯蔵モジュール(104)。
【請求項9】
2つの冷却流体容器であって、そのそれぞれ1つに前記モジュール側冷却流体接続部(412)のそれぞれ1つが配置されている冷却流体容器(806)を有し、かつ、2つの保持薄板であって、それぞれ前記冷却流体容器の1つと前記冷却板(802)との間に配置されて前記それぞれの冷却流体容器と前記冷却流体通路との間に冷却流体を通過案内するためのそれぞれ1つの貫通開口部を有する保持薄板(804)を備えた請求項8に記載のエネルギー貯蔵モジュール(104)。
【請求項10】
前記モジュール側連結要素(410;810)がレール要素として構成され、このレール要素が、前記水容器の少なくとも1つに配置されており、これにより、前記レール要素を前記支持体側連結要素内へスライドして挿入することができる請求項9に記載のエネルギー貯蔵モジュール(104)。
【請求項11】
前記モジュール側連結要素(410;810)が掛止要素として構成され、この掛止要素が、前記エネルギー貯蔵モジュールの前記保持薄板(804)に配置されており、これにより、前記掛止要素を前記支持体側連結要素内へ掛止することができる請求項8または9に記載のエネルギー貯蔵モジュール(104)。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の少なくとも1つのモジュール支持体(102)と、前記少なくとも1つのモジュール支持体に接続された、請求項8〜11のいずれか1項に記載の少なくとも1つのエネルギー貯蔵モジュール(104)とを備えたモジュールシステム(100;300)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−504153(P2013−504153A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527349(P2012−527349)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063057
【国際公開番号】WO2011/026984
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(594042033)ベール ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー (222)
【Fターム(参考)】