説明

モップ用パイル布帛

【課題】この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、床面等を清掃するための掃除用具に用いられる基布にパイルを植毛したモップ用パイル布帛であって、綿埃や塵埃の捕集性能に優れるモップ用パイル布帛を提供する。
【解決手段】基布にパイル糸が植設されたパイル布帛であって、パイル布帛を構成するパイル糸の少なくとも一部はポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を含み、該ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸に加熱処理が施されて、捲縮したことを特徴とするモップ用パイル布帛である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、床面等を清掃するための掃除用具に用いられる、基布にパイルを植毛したモップ用パイル布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内等において綿埃や塵埃等を効果的に捕集する清掃用モップが用いられている。モップに使用される布帛として、パイル織編物や基布にパイルを植毛したパイル布帛や不織布が一般に知られている。パイル糸に用いられる繊維は、綿などの天然繊維、ポリエステルなどの合成繊維がある。そして合成繊維では、長繊維を合撚糸してパイル糸とし、短繊維では紡績しパイル糸として供される。長繊維からなるパイル糸を用いたパイル布帛は、埃を捉え易いので埃捕集性能が優れている。
【0003】
特許文献1には、使用済みレンタルモップに付着した繊維屑が洗浄・再生工程で確実に脱落し、しかも再付着することが防止されたレンタル用モップとして、単繊維繊度が5デニール以下の捲縮ナイロンマルチフィラメント糸の撚糸をポップコードとしたレンタル用モップが開示されている。
【0004】
特許文献2には、パイル糸が洗濯によりほつれることなく太さを維持して清掃効率を持続する、マルチフィラメントとバインダー合成繊維とが十分に熱融着されたパイル糸と該パイル糸を用いたダストコントロールモップが開示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、使用済みレンタルモップに付着した繊維屑が洗浄・再生工程で脱落し、再付着することが防止されたモップであった。また、特許文献2の技術では、繰り返しの洗濯によるパイル糸のほつれが発生せず、掃除効率が維持されるものであるものの、熱融着糸をパイル糸として撚り合わせるのでコストアップという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−189823号公報
【特許文献2】特開2007−217827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、床面等を清掃するための掃除用具に用いられる基布にパイルを植毛したモップ用パイル布帛であって、綿埃や塵埃の捕集性能に優れるモップ用パイル布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]基布にパイル糸が植設されたパイル布帛であって、パイル布帛を構成するパイル糸の少なくとも一部はポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を含み、該ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸に加熱処理が施されて、捲縮したことを特徴とするモップ用パイル布帛。
【0010】
[2]前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸が、次の(1)〜(5)の特性を同時に満たす前項1に記載のモップ用パイル布帛。
(1)乾熱捲縮率が10〜30%
(2)単糸繊度が0.3〜50dtex
(3)総繊度が75〜4000dtex
(4)強度が2.5cN/dtex以上
(5)単繊維の断面形状が、該繊維断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した異形度が3.0未満の異形断面または円形状
【0011】
[3]前記パイル糸は、少なくとも前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の、無撚糸および/または撚糸を、単糸および/または2本以上の撚糸として使用したものである前項1または2に記載のモップ用パイル布帛。
【0012】
[4]前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の、パイル布帛を構成するパイル糸に占める割合が、70質量%〜100質量%である前項1〜3のいずれか1項に記載のモップ用パイル布帛。
【0013】
[5]前記パイル布帛のパイルの形態は、ループパイルおよび/またはカットパイルである前項1〜4のいずれか1項に記載のモップ用パイル布帛。
【0014】
[6]前記パイル布帛の平均パイル長さが5mm〜50mm、パイル目付けが250g〜1000g/mである前項1〜5のいずれか1項に記載のモップ用パイル布帛。
【発明の効果】
【0015】
[1]の発明では、パイル布帛を構成するパイル糸の少なくとも一部はポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を含み、該ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸に加熱処理が施され、十分捲縮しているので優れた捕集性能を発揮するモップ用パイル布帛とすることができる。
【0016】
[2]の発明では、前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を構成する単繊維の断面形状と異形度を特定構成に限定すると共に、乾熱捲縮率を特定範囲に限定し、かつ単糸繊度、総繊度及び強度をそれぞれ特定の範囲に限定しているから、綿埃や塵埃の捕集性能が一段と優れるモップ用パイル布帛とすることができる。
【0017】
[3]の発明では、前記パイル糸は、少なくとも前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の、無撚糸および/または撚糸を、単糸および/または2本以上の撚糸として使用したものであるので、綿埃や塵埃の捕集性能及び耐久性をさらに優れたものとすることができる。
【0018】
[4]の発明では、前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の、パイル布帛を構成するパイル糸に占める割合が、70質量%〜100質量%であるので、綿埃や塵埃の捕集性能を十分発揮することができる。
【0019】
[5]の発明では、前記パイル布帛のパイルの形態は、ループパイルおよび/またはカットパイルであるので、綿埃や塵埃などの捕集に適している。
【0020】
[6]の発明では、前記パイル布帛の平均パイル長さが5mm〜50mm、パイル目付けが250g〜1000g/mであるので、綿埃や塵埃の捕集性能が一段と向上するとともに、十分な耐久性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明は、床面等を清掃するための掃除用具に用いられる基布にパイルを植毛したモップ用パイル布帛について、鋭意検討し、パイル布帛を構成するパイル糸の少なくとも一部はポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を含み、該ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸に加熱処理が施されて、捲縮したモップ用パイル布帛とすることで、綿埃や塵埃の捕集性能に優れるモップ用パイル布帛を提供することができた。この発明に係るモップ用パイル布帛について、さらに詳しく説明する。
【0022】
この発明に係るパイル糸としては、パイル布帛を構成するパイル糸の少なくとも一部はポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を含むパイル糸が使用され、前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸は加熱処理が施されて、捲縮している。前記加熱処理は、乾熱処理、湿熱処理、そして乾熱処理と湿熱処理の組み合せのいずれであってもよい。ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を紡糸し延伸・捲縮する加工工程で、延伸の終了の後に加熱流体捲縮付与装置に導入され、捲縮が付与され、続いて冷却ドラム等で冷却される。加熱流体は、加熱された空気が好ましく、その温度は140℃〜220℃の範囲が好ましい。処理速度等に応じて適切な条件を選択すればよい。さらに、製糸されたポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を、パイル布帛を構成するパイル糸の少なくとも一部に用いたパイル布帛に湿熱処理を施してもよい。湿熱処理は、例えば蒸気雰囲気下にさらすことにより、あるいは、蒸気をパイル布帛に噴きつけることにより施すことができる。前記蒸気の温度は、100℃〜150℃が好ましく、処理時間は10秒〜30秒が好ましい。加熱処理を施すことで、ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸に潜在化している捲縮を発現させることができ、一段と優れた捕集性能を発揮することができる。
【0023】
また、前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸は、着色剤を含有させた原着ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸でもよく、公知の方法で染色してもよい。色を付与することで、意匠性を向上させることができる。原着ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸は摩擦堅牢度の点で優れているので好ましい。
【0024】
ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を、パイル糸の少なくとも一部に用いた本発明のモップ用パイル布帛は、ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸が、次の(1)〜(5)の特性を同時に満たすモップ用パイル布帛である。
(1)乾熱捲縮率が10〜30%
(2)単糸繊度が0.3〜50dtex
(3)総繊度が75〜4000dtex
(4)強度が2.5cN/dtex以上
(5)単繊維の断面形状が、該繊維断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した異形度が3.0未満の異形断面または円形状
【0025】
前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の乾熱捲縮率は10〜30%の範囲が好ましい。乾熱捲縮率が10%未満では捲縮が不充分であり、モップ用パイル布帛としての綿埃や塵埃の捕集性能が低下する。乾熱捲縮率が30%を超えるポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を製造するのは困難である。
【0026】
前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の単糸繊度は0.3〜50dtexの範囲が好ましい。単糸繊度が0.3dtex未満では、捲縮糸を安定的に製糸することが困難である。単糸繊度が50dtexを超えると、延伸不良による引張強度、引張伸度並びに捲縮率のばらつきが大きくなり好ましくない。
【0027】
前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の総繊度が75〜4000dtexの範囲が好ましい。総繊度をこの範囲にすることで、モップ用パイル布帛の綿埃や塵埃の捕集性能及び耐久性を確保することができる。
【0028】
前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の強度が2.5cN/dtex以上が好ましい。強度が2.5cN/dtex未満では、モップ用パイル布帛とした時に耐久性が劣り、使用時に捲縮糸の一部が擦り切れてしまうおそれがある。
【0029】
前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の単繊維の断面形状は異形度が3.0未満の異形断面または円形状が好ましい。このような単繊維の断面形状を採用することでモップ用パイル布帛とした時の耐久性を向上させることができる。単繊維の断面形状が、該繊維断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した異形度が3.0未満の異形断面または円形状であるのが好ましい。異形度が3.0を超えるとフィブリル化が起こり易くなるので、糸の劣化が速くなり好ましくない。
【0030】
この発明に係る基布としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル繊維やポリプロピレン繊維等の合成繊維、麻、綿等の天然繊維からなる織基布、編基布、不織布等通常使用される基布を挙げることができる。中でも、素材としてはポリエステル繊維が、加熱時の寸法安定性に優れていることから好ましい。
【0031】
この発明に係るパイル糸としては、パイル布帛を構成するパイル糸の少なくとも一部はポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を含むパイル糸が使用される。該ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸以外のパイル糸を構成する素材及び形態は特に限定されない。例えば、綿などの天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、レーヨン繊維等の再生繊維を挙げることができる。また、パイル糸のいずれかに、抗菌、抗アレルゲン、消臭等の機能性が付与れた糸を用いてもよい。
【0032】
この発明に係るパイル布帛において、パイルの形態はカットパイル、ループパイル、カットパイルとループパイルの組み合わせのいずれも採用できるが、カットパイルはループパイルに比べて埃捕集性が良好である。一方、ループパイルはカットパイルに比べて埃捕集性は劣るものの、砂等の捕集後の保持性が良好である。床面等の掃除に際する目的に応じて適宜選択すればよい。
【0033】
この発明のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を用いたパイル糸は、モップ用パイル布帛の製造規格にもと基づき、パイル糸の色、総繊度(dtex)、ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の状態(無撚糸または撚糸等)、ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の合糸本数、撚糸の条件などを決める。ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸は、無撚糸と他の無撚糸をエアータングル設備で混繊糸とし、該混繊糸を無撚糸/または撚糸して使用してもよい。
【0034】
また、この発明のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸は、撚糸(撚糸回数は50〜400T/mが好ましい)して使用してもよく、撚糸後2本以上に撚り(撚り回数は50〜400T/mが好ましい)を施して使用してもよい。たとえば、ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸2本を用い、下撚りと上撚りを施して双糸にし、その後撚り止めセット加工を施してモップ用パイル糸とする。撚り止めセット加工は、130〜200℃の熱風処理、または110〜150℃の真空蒸気処理にて施すことができる。
【0035】
この発明のモップ用パイル布帛のパイル布帛を構成するパイル糸に占めるポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の割合が、70質量%〜100質量%の範囲の構成が好ましい。この構成の範囲から、綿埃や塵埃の捕集性能の要求に合わせて色々な割合を選択することができる。捲縮糸の割合が70質量%未満では、綿埃や塵埃の捕集性能が低下するおそれがある。さらに好ましくは75質量%〜100質量%である。
【0036】
また、パイルの形態は、ループパイルおよび/またはカットパイルが好ましい。これらの形態のなかから、綿埃や塵埃をはじめゴミ、砂等の捕集性と耐久性及び洗濯耐久性との要求に合わせて色々なパイルの形態を選択することができる。
【0037】
この発明のモップ用パイル布帛は、平均パイル長さが5mm〜50mmが好ましい。この範囲にすることで、綿埃や塵埃の捕集性能が一段と向上するとともに、十分な耐久性を発揮するモップ用パイル布帛とすることができる。さらに好ましくは5mm〜30mmである。特に好ましくは5mm〜20mmである。平均パイル長さが5mm未満では、綿埃や塵埃の捕集性能が低下するおそれがある。平均パイル長さが50mmを超えると、綿埃や塵埃の捕集性能は向上するものの、徒にコストがかさみ好ましくない。
【0038】
この発明のモップ用パイル布帛は、パイル目付けが250g〜1000g/mが好ましい。この範囲にすることで、綿埃や塵埃の捕集性能が一段と向上するとともに、十分な耐久性を発揮するモップ用パイル布帛とすることができる。さらに好ましくは250g〜500g/mである。特に好ましくは270g〜400g/mである。パイル目付けが250g/m未満では、綿埃や塵埃の捕集性能が低下するおそれがある。パイル目付けが1000g/mを超えると、綿埃や塵埃の捕集性能は向上するものの、徒にコスト及び重量がかさみ好ましくない。
【0039】
この発明のモップ用パイル布帛は、例えばタフティング機を用いて造られる。タフト規格として、ゲージは4/16〜1/10(1インチ:2.54cm間の針数)が好ましく、さらに好ましくは、5/32〜1/10である。また、ステッチ数は20〜50ステッチ/10cmで、さらに好ましくは30〜45ステッチ/10cmがよい。
【0040】
この発明のモップ用パイル布帛は、パイル糸を固定するためにバッキング処理を施しても良い。バッキング処理は、バッキング樹脂を塗布し乾燥固着する方法や、ホットメルト樹脂を塗布する方法など公知の方法で処理すればよい。例えば、バッキング樹脂としては特に限定しないが、ゴム及び合成樹脂から選択される1種または2種以上の高分子成分を含むもので、高分子成分としては、SBR(スチレン−ブタジエン共重合体)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体)、MBR(メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体)、アクリル樹脂エマルジョン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、天然ゴム等が挙げられる。例えば、ホットメルト樹脂としては特に限定しないが、ポリウレタン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、これらの実施例のものに特に限定されるものではない。なお、試験方法及び評価は次の通りである。
【0042】
(乾熱捲縮率)
ボビンパッケージからカセ取りしたポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を、無荷重状態で100℃の熱風で10分間処理した後に、10分間自然放置する。これを乾熱処理後のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸とする。この試料糸に総繊度dtex×0.882mN(90mg/dtex)の張力を与える定荷重をかけ10秒経過した後に、試料長さ(L1)を測定する。次いで、同試料に総繊度dtex×0.0176mN(1.8mg/dtex)の張力を与える定荷重をかけ10分経過した後に、試料長さ(L2)を測定する。下記式より、乾熱捲縮率(%)を求める。
乾熱捲縮率(%)=((L1−L2)/L1)×100
【0043】
(繊度)
JIS L 1013に準拠して測定した。
【0044】
(強度)
USTER社製TENSORAPID3の引張試験機を用い、試料長25cm、引張速度30cm/分の条件下で強力(cN)を測定した。測定した強力(cN)をその繊度で除して強度(cN/dtex)を算出した。
【0045】
(異形度)
単糸を切断して、光学顕微鏡を用いて単糸の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)を測定し、次の式を用いて算出した。
異形度=(B)/(A)
【0046】
(埃捕集試験)
柄の付いた保持具にモップ用パイル布帛を装着し、オレフィン樹脂製の床板(株式会社スミノエ スミリウム)上に長さ約20cmの髪の毛10本をランダムに散りばめ、70cmのストローク幅で1往復清掃して、モップ用パイル布帛に捕集された本数を数えた。同様に5回繰り返し、捕集率(%)を求めた。繰り返した結果捕集した合計本数(N)を、散りばめた総本数(M)で除した値に100を乗じて算出した値を捕集率(%)とした。
捕集率(%)=(N/M)×100
なお、洗濯後の埃捕集性能として、JIS L 0217 103法に準じる方法で洗濯を3回行った後、埃捕集試験を行い捕集率(%)を算出した。
【0047】
(耐久性)
JIS L 0217 103法に準じる方法で洗濯を3回行った後、モップ用パイル布帛のパイル糸の脱落の有無を目視で判定した。パイル糸の脱落が、認められるものを「×」とし、不合格、認められないものを「○」とし、合格とした。
【0048】
公知の紡糸装置を用いて、ポリエステルチップを溶融し、円形断面(丸断面)96ホールを有するノズルから吐出し、紡糸した。該紡糸糸を延伸倍率4.5倍に延伸し、続いて加熱流体捲縮装置にて、180℃、0.6MPaの加熱圧によって捲縮加工を施し、繊度1330dtex/96フィラメント(単糸繊度13.8dtex)のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を得た。異形度は2.7、乾熱捲縮率は25%、強度は2.7cN/dtexであった。
【0049】
<実施例1>
タフティング機を用い、ポリエステル編布よりなる布帛を一次基布として、上述の繊度1330dtex/96フィラメント(単糸繊度13.8dtex)のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸をパイル糸として用い、1/8ゲージ(針数/インチ)、10ステッチ(ステッチ数/インチ)、パイルの形態はカットパイル&ループパイルで、平均パイル長(カットパイル9mm、ループパイル7mm)でタフトし、パイル布帛を得た。その後、パイル布帛に110℃の蒸気中に15秒さらす湿熱処理を施したのち、吸引脱水し、室温28℃のもとで自然乾燥させてモップ用パイル布帛を得た。パイル目付は300g/mであった。加熱処理後の平均パイル長は、カットパイル7mm、ループパイル5mmであった。
【0050】
なお、パイル糸として単糸、双糸、撚糸等の条件を変更し、該糸をパイル糸として、パイル形態、ゲージ(針数/インチ)、ステッチ(ステッチ数/インチ)、平均パイル長(mm)、パイル目付け(g/m)の条件を変更した実施例、比較例及び性能評価を表1に示す。
【0051】
<実施例2>
実施例1において、パイル糸として、パイル糸Aとパイル糸Bの2種類を用いた。パイルAは繊度1330dtex/96フィラメント(単糸繊度13.8dtex)のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を用い、パイルBは繊度2200dtex/432フィラメント(単糸繊度5.0dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸を用い、パイル糸Aとパイル糸Bの質量割合は、パイル糸Aが75質量%、パイル糸Bが25質量%とし、1/10ゲージ(針数/インチ)、8ステッチ(ステッチ数/インチ)、パイルの形態はカットパイル&ループパイルでタフトした以外は実施例1と同様にして、モップ用パイル布帛を得た。パイル目付は360g/mであった。加熱処理後の平均パイル長は、カットパイル7mm、ループパイル5mmであった。
【0052】
<実施例3>
実施例1において、繊度1330dtex/96フィラメント(単糸繊度13.8dtex)のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸と繊度1330dtex/96フィラメント(単糸繊度13.8dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸とをそれぞれ下撚(Z160T/m)してから、1対1の割合で撚糸回数はZ160T/mで撚糸を施した。120℃の真空蒸気処理で撚り止めセット加工を施したパイル糸を用意し、1/8ゲージ(針数/インチ)、11ステッチ(ステッチ数/インチ)、パイルの形態はカットパイル、平均パイル長10mmでタフトした以外は実施例1と同様にして、モップ用パイル布帛を得た。パイル目付は880g/mであった。加熱処理後の平均パイル長は、9mmであった。
【0053】
<実施例4>
実施例3において、繊度1330dtex/96フィラメント(単糸繊度13.8dtex)のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を撚糸(Z160T/m)してから、120℃の真空蒸気処理で撚り止めセット加工を施したパイル糸を用意し、5/32ゲージ(針数/インチ)、7ステッチ(ステッチ数/インチ)、パイルの形態はカットパイル、平均パイル長45mmでタフトした以外は実施例3と同様にして、モップ用パイル布帛を得た。パイル目付は950g/mであった。加熱処理後の平均パイル長は、42mmであった。
【0054】
<実施例5>
実施例1において、繊度1330dtex/96フィラメント(単糸繊度13.8dtex)のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸をパイル糸として、パイルの形態はループパイル、平均パイル長10mmでタフトした以外は実施例1と同様にして、モップ用パイル布帛を得た。パイル目付は350g/mであった。加熱処理後の平均パイル長は、8mmであった。
【0055】
<比較例1>
実施例1において、繊度1330dtex/96フィラメント(単糸繊度13.8dtex)のポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の代わりに、繊度2200dtex/192フィラメント(単糸繊度11.5dtex)のポリエステルマルチフィラメント糸をパイル糸として、タフトした以外は実施例1と同様にして、パイル布帛を得た。パイル目付は300g/mであった。加熱処理後の平均パイル長は、カットパイル9mm、ループパイル5mmであった。
【0056】
<比較例2>
実施例1において、タフト後のパイル布帛を110℃の蒸気中に15秒さらす湿熱処理を施さなかった以外は実施例1と同様にして、パイル布帛を得た。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から明らかなように、この発明の実施例1〜5のモップ用パイル布帛は、埃捕集試験において優れた捕集性能を発揮し、洗濯後の埃捕集試験においても、ほとんど性能が低下することなく優れた捕集性能を発揮していることが分かる。また、耐久性も合格であった。
【0059】
これに対して、ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を全く含まないパイル糸からなるパイル布帛の比較例1、及び加熱処理を施していない比較例2は、埃捕集試験において、洗濯後の埃捕集試験結果の両方とも捕集性能が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明のモップ用パイル布帛は、例えば柄の付いた保持具に保持し、屋内等において綿埃や塵埃等を効果的に捕集する清掃用モップに使用できる。各種の保持具によって床用、壁用、業務用、家庭用等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布にパイル糸が植設されたパイル布帛であって、パイル布帛を構成するパイル糸の少なくとも一部はポリエステルマルチフィラメント捲縮糸を含み、該ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸に加熱処理が施されて、捲縮したことを特徴とするモップ用パイル布帛。
【請求項2】
前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸が、次の(1)〜(5)の特性を同時に満たす請求項1に記載のモップ用パイル布帛。
(1)乾熱捲縮率が10〜30%
(2)単糸繊度が0.3〜50dtex
(3)総繊度が75〜4000dtex
(4)強度が2.5cN/dtex以上
(5)単繊維の断面形状が、該繊維断面の外接円の直径(B)と内接円の直径(A)の比(B/A)で表した異形度が3.0未満の異形断面または円形状
【請求項3】
前記パイル糸は、少なくとも前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の、無撚糸および/または撚糸を、単糸および/または2本以上の撚糸として使用したものである請求項1または2に記載のモップ用パイル布帛。
【請求項4】
前記ポリエステルマルチフィラメント捲縮糸の、パイル布帛を構成するパイル糸に占める割合が、70質量%〜100質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のモップ用パイル布帛。
【請求項5】
前記パイル布帛のパイルの形態は、ループパイルおよび/またはカットパイルである請求項1〜4のいずれか1項に記載のモップ用パイル布帛。
【請求項6】
前記パイル布帛の平均パイル長さが5mm〜50mm、パイル目付けが250g〜1000g/mである請求項1〜5のいずれか1項に記載のモップ用パイル布帛。

【公開番号】特開2013−75102(P2013−75102A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217991(P2011−217991)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】