説明

モップ用糸及びそれを用いる清掃用モップ

【課題】ダストの吸塵性に優れるとともに、吸塵されたダストの保持性にも優れるモップ用糸及びそれを用いる清掃用モップを提供する。
【解決手段】モップ用糸は、清掃用モップの柄の端部に取付けられるモップ部を形成するためのものである。該モップ用糸は、紡績糸と水溶性糸とを撚り合わせて形成された複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去して空隙部を形成してなる糸により構成されている。前記紡績糸は天然繊維より形成された糸であるとともに、水溶性糸はポリビニルアルコール系繊維により形成された糸であることが好ましい。前記複合撚糸の撚り方向が紡績糸の撚り方向と逆であり、紡績糸の撚数Aに対する複合撚糸の撚数Bの比(B/A)が好ましくは1.3〜3であり、かつ複合撚糸の質量に基づいて紡績糸の割合が好ましくは98〜20質量%及び水溶性糸の割合が好ましくは2〜80質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面等の被清掃面に存在する塵埃などのダストを捕集するためのモップ用糸及びそれを用いる清掃用モップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、清掃用モップは長い柄の先端に撚糸などで形成されたモップ部が取着されて構成され、該モップ部によって被清掃面に存在する塵埃等のダストが捕集され、除去されるようになっている。モップ部を形成する撚糸としては、天然繊維の単糸を2〜15本撚糸した糸とナイロン接着糸とを撚り合わせ、80〜120℃で熱融着させたモップ用のパイル糸である。また、例えば次のような撚糸が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
すなわち、かかる撚糸は、ポリエステル樹脂製の単糸を400〜500本撚糸したポリエステルマルチフィラメントと、バインダー合成繊維とを撚り合わせ、100〜150℃で熱融着させたダストコントロールモップ用のパイル糸である。これらのパイル糸を用いることにより、該パイル糸が洗濯によりほつれることなくその太さを維持することができるとともに、掃除効率を持続させることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているパイル糸では、ポリエステルマルチフィラメントがバインダー合成繊維で熱融着されていることから、フィラメント間にダストを十分に吸塵することができず、従って掃除能力が不足する。加えて、パイル糸に吸塵されたダストはフィラメント間に吸着された状態が維持され難いため、ダストの保持性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−217827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、ダストの吸塵性に優れるとともに、吸塵されたダストの保持性にも優れるモップ用糸及びそれを用いる清掃用モップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のモップ用糸は、清掃用モップの柄の端部に取付けられるモップ部を形成するためのモップ用糸であって、紡績糸と水溶性糸とを撚り合わせて形成された複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去して空隙部を形成してなる糸により構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明のモップ用糸は、請求項1に係る発明において、前記紡績糸は天然繊維より形成された糸であるとともに、水溶性糸はポリビニルアルコール系繊維により形成された糸であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明のモップ用糸は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記複合撚糸の撚り方向が紡績糸の撚り方向と逆であり、紡績糸の撚数Aに対する複合撚糸の撚数Bの比(B/A)が1.3〜3であり、かつ複合撚糸の質量に基づいて紡績糸の割合が98〜20質量%及び水溶性糸の割合が2〜80質量%であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明のモップ用糸は、請求項3に係る発明において、前記紡績糸の撚数Aに対する複合撚糸の撚数Bの比(B/A)が1.5〜2であるとともに、複合撚糸の質量に基づいて紡績糸の割合が90〜50質量%及び水溶性糸の割合が10〜50質量%であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明の清掃用モップは、柄の端部に取付けられるモップ部が請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモップ用糸で形成されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明の清掃用モップは、請求項5に係る発明において、前記モップ部を形成するモップ用糸の先端部は切断されて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明のモップ用糸は、紡績糸と水溶性糸とを撚り合わせて形成された複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去して空隙部を形成してなる糸により構成されている。従って、このモップ用糸を用いて清掃用モップのモップ部を作製し、その清掃用モップを使用したとき前記空隙部にダストを十分に吸塵することができる。その上、モップ部に吸塵されたダストはモップ部を振っても振り落とされることなく、前記空隙部に良好に保持される。
【0013】
よって、本発明のモップ用糸は、ダストの吸塵性に優れるとともに、吸塵されたダストの保持性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のモップ用糸は、清掃用モップの柄の端部に取付けられるモップ部を形成するためのものである。このモップ用糸は、紡績糸と水溶性糸とを撚り合わせて形成された複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去して空隙部を形成してなる糸により構成されている。モップ用糸がこの空隙部を有することにより、ダストを該空隙部に吸い込むことができ、ダストの捕集性能を高めることができる。
【0015】
前記複合撚糸を構成する紡績糸は、水(冷水、温水又は熱水)に溶解しない繊維から形成される。かかる紡績糸を形成する繊維としては、木綿、麻等の天然繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維などが用いられる。これらのうち、天然繊維より形成された紡績糸は、モップ用糸の吸放湿性等を良好にすることができる。紡績糸は、これらの繊維を1種用いる単独紡績糸又はこれらの繊維を複数用いる混紡紡績糸が使用され、単糸、双糸又は3本以上の合撚糸のいずれであってもよい。
【0016】
紡績糸の撚数は、紡績糸を製造するときに最後にかけられた撚りの撚数を意味する。すなわち、紡績糸が単糸である場合には紡績時にかけられた撚数を意味し、双糸の場合には双糸を製造するために2本の糸を撚り合わせたときの撚数を意味し、3本以上の合撚糸の場合には合撚糸を製造するために3本以上の糸を撚り合わせたときの撚数を意味する。紡績糸の撚数は、その撚数をT(回/2.54cm)、綿番手をS(番手)、撚係数をKとしたとき、K=T/S1/2で表される。この撚係数Kが2〜4の紡績糸は、紡績糸の品質、生産性などの点で好ましい。綿番手としては、5〜200番のものが好ましい。
【0017】
複合撚糸を構成する水溶性糸は水(冷水、温水又は熱水)に溶解する繊維から形成され、この水溶性糸を80℃以上の温度の水に浸漬して30分間放置したとき、85質量%以上溶解するものが好ましい。この溶解性が85質量%未満となる水溶性糸は、複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解するとき、溶解に時間を要したり、水溶性糸の除去が不十分になったりして好ましくない。
【0018】
水溶性糸を形成する繊維としては、水可溶性ポリビニルアルコール系繊維、水可溶性エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維、水可溶性ポリアミド繊維等が用いられる。これらの繊維のうち、水可溶性ポリビニルアルコール系繊維が、水への溶解性、繊維強度、生分解性などの点から好ましい。特に、水可溶性ポリビニルアルコール系繊維は生分解性を有しているため、水可溶性ポリビニルアルコール系繊維を水で溶解除去したときに排出される廃液を微生物により処理して浄化することができる。
【0019】
この水溶性糸は、紡績糸であってもフィラメント糸であってもよい。水溶性糸の太さは、紡績糸との撚り合わせの容易性、複合撚糸の強度、水溶性糸の水による除去の容易性などの点から好ましくは15〜200dtex、より好ましくは25〜100dtexである。
【0020】
複合撚糸は、その質量に基づいて紡績糸の割合が98〜20質量%及び水溶性糸の割合が2〜80質量%であることが好ましく、紡績糸の割合が95〜30質量%及び水溶性糸の割合が5〜70質量%であることがより好ましく、紡績糸の割合が90〜50質量%及び水溶性糸の割合が10〜50質量%であることが特に好ましい。紡績糸の割合が98質量%を上回る場合すなわち水溶性糸の割合が2質量%を下回る場合には、複合撚糸中の水溶性糸の割合が少なくなり過ぎて水溶性糸を溶解させて形成される空隙部が不足し、防塵性やダストの保持性が低下する。その一方、紡績糸の割合が20質量%を下回る場合すなわち水溶性糸の割合が80質量%を上回る場合には、撚りの安定性に欠けるとともに、複合撚糸の強度が低下する傾向を示す。
【0021】
複合撚糸を構成する紡績糸と水溶性糸の本数は、撚糸機の構造、撚糸条件の点から、紡績糸が1〜3本で水溶性糸が1〜3本であることが好ましく、紡績糸が1〜2本で水溶性糸が1〜2本であることがさらに好ましい。なお、撚糸機の種類としては、リングツイスター、ダブルツイスター、アップツイスター等の汎用の撚糸機が用いられる。
【0022】
前記複合撚糸の撚り方向は紡績糸の撚り方向とは逆に設定される。このように撚り方向を逆に設定することにより、撚りを実施する際のトルクを低減することができるとともに、複合撚糸の風合いを向上させることができる。ここで、複合撚糸の撚り方向とは、紡績糸と水溶性糸とを撚り合わせるときの撚り方向を意味する。
【0023】
前述のように、紡績糸の撚数Aに対する複合撚糸の撚数Bの比(B/A)は1.3〜3であることが好ましく、1.4〜3であることがさらに好ましく、1.5〜2であることが特に好ましい。ここで、複合撚糸の撚数とは、紡績糸と水溶性糸を撚り合わせたときの撚数を意味する。この比が1.3未満の場合には、複合撚糸の撚りが不十分になりやすく、複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去した場合に紡績糸の撚りが不足する傾向を示す。一方、この比が3を超える場合には、撚りを実施するときに糸切れを生じる傾向があり、複合撚糸の生産性の悪化や強度の低下を招くおそれがある。
【0024】
次に、清掃用モップは、長い柄の端部にモップ部が取付けられて構成され、そのモップ部が床面等の被清掃面上を摺接して清掃するために使用される。前記モップ部は、前述したモップ用糸で平面形状が例えば長さ400mm、幅170mmに形成され、モップ用糸の重さは350g程度である。モップ用糸としては、例えば太さが9〜11番手で5〜8本束ねたものが用いられる。モップ用糸の先端部は切断したもの(カット品)とループ状にしたもの(ツイスト品)とがあるが、ダストの吸塵量及び保持量の点から切断したものが好ましい。
【0025】
以上の実施形態により発揮される作用及び効果について以下にまとめて説明する。
(1) 本実施形態におけるモップ用糸は、紡績糸と水溶性糸とを撚り合わせて形成された複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去して空隙部を形成してなる糸により構成されている。従って、このモップ用糸を用いて清掃用モップのモップ部を作製し、その清掃用モップで床面を清掃したとき、ダストはモップ用糸の先端部からモップ用糸間の空隙部へと吸塵され、十分な量のダストが吸塵される。さらに、その空隙部に吸塵されたダストはモップ部を上下に振っても振り落とされることなく、前記空隙部に良好に保持される。
【0026】
よって、本実施形態のモップ用糸は、ダストの吸塵性に優れるとともに、吸塵されたダストの保持性にも優れている。
(2) 前記紡績糸は天然繊維より形成された糸であることにより、モップ用糸は吸放湿性等に優れている。また、水溶性糸はポリビニルアルコール系繊維により形成された糸であることにより、水溶解性、繊維強度、生分解性等に優れている。特に、生分解性に優れていることから、水可溶性ポリビニルアルコール系繊維を水で溶解除去したときの廃液を微生物により容易に浄化処理することができる。
【0027】
(3) 前記紡績糸の撚数Aに対する複合撚糸の撚数Bの比(B/A)が好ましくは1.3〜3、より好ましくは1.5〜2であることにより、複合撚糸の撚りを十分にして複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去した場合に紡績糸の撚りが不足することなく、撚りを行う際に糸切れを生じることなく、複合撚糸の生産性や強度を向上させることができる。また、複合撚糸の質量に基づいて紡績糸の割合が好ましくは98〜20質量%、より好ましくは90〜50質量%及び水溶性糸の割合が好ましくは2〜80質量%、より好ましくは10〜50質量%である。このように構成した場合、複合撚糸中の水溶性糸を溶解させて十分な空隙部を形成し、防塵性やダストの保持性を向上させることができるとともに、撚りの安定性及び複合撚糸の強度を向上させることができる。
【0028】
(4) 清掃用モップは、柄の端部にモップ部を取付けて構成され、該モップ部が前述のモップ用糸で形成されている。この場合、モップ部を形成するモップ用糸の先端部が切断されて形成されていることにより、各モップ用糸が有効に機能し、ダストの吸塵量及び保持量を高めることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜3及び比較例1〜3)
下記に示すモップ用糸を用いて清掃用モップの先端部に取付けられるモップ部を製作し、そのモップ部について以下の方法に示す吸塵量及び保持量を測定した。
(モップ用糸)
紡績糸としては、撚数が600回/m(Z撚)の木綿100%の10番手紡績糸〔都築紡績(株)製、TS10単糸〕を用いた。この紡績糸は、2.54cm当たりの撚数T=15.24回であり、番手S=10であることにより、前述の式K=T/S1/2から算出される撚り係数Kは3.24である。
【0030】
水溶性糸としては、水可溶性ポリビニルアルコールマルチフィラメント〔56dtex、80℃の水に溶解可能、(株)クラレ製、水溶性ビニロン〕を用いた。
そして、紡績糸1本と水溶性糸1本をダブルツイスター〔村田機械(株)製、36M〕に供給し、撚数(上撚)が1000回/m(S撚)となるように撚り合わせて複合撚糸を製造した。紡績糸の撚数Aに対する複合撚糸の撚数Bの比(B/A)は1.67であった。また、複合撚糸から1mの糸を切り取って試料糸とし、その試料糸の上撚りを解除して紡績糸と水溶性糸に分離し、それぞれの糸の質量を測定した。その結果、複合撚糸の質量に基づいて紡績糸の割合が84質量%及び水溶性糸の割合が16質量%であった。
【0031】
モップ用糸は、複合撚糸を80℃の水に30分間浸漬して複合撚糸中の水溶性糸を溶解して除去し、150℃で乾燥したもの〔クラレトレーディング(株)製、セルナーレ〕を使用した。このモップ用糸として、実施例では次の3種類を用意した。
(a)10番手のモップ用糸を6本用いて撚り合わせ、先端部をループ状にした(ツイスト)もの(実施例1)。
(b)10番手のモップ用糸を6本用いて撚り合わせ、2本ずつ束ねてその先端部をカットしたもの(実施例2)。
(c)10番手のモップ用糸を7本用いて撚り合わせ、2本ずつ束ねてその先端部をカットしたもの(実施例3)。
【0032】
一方、モップ用糸として、比較例では次の3種類を用意した。
(d)10番手の綿糸を6本用いて撚り合わせ、先端部をループ状にした(ツイスト)もの(比較例1)。
(e)10番手の綿糸を10本用いて撚り合わせ、2本ずつ束ねてその先端部をカットしたもの(比較例2)。
(f)10番手の綿糸を7本用いて撚り合わせ、2本ずつ束ねてその先端部をカットしたもの(比較例3)。
【0033】
上記の各モップ用糸を用い、次に示すような大きさの清掃用モップのモップ部を作製した。
実施例1のモップ部:縦165mm、横418mm、質量350.4g
実施例2のモップ部:縦178mm、横433mm、質量319.7g
実施例3のモップ部:縦177mm、横429mm、質量355.3g
比較例1のモップ部:縦168mm、横421mm、質量340.3g
比較例2のモップ部:縦175mm、横432mm、質量319.7g
比較例3のモップ部:縦178mm、横427mm、質量335.7g
(吸塵量及び保持量の測定方法)
モップ用糸を用いた前記モップ部を備えたテスト用モップを用意するとともに、そのテスト用モップの柄を把持して試験するモップテスターを用意した。また、ダストとして、JIS試験用粉体I、2種細粒(粒子径5〜75μmのケイ砂)を用い、質量を計量するデジタル表示秤(1/10gまで表示できるもの)を用意した。
【0034】
そして、次に示す順序で吸塵量及び保持量を測定した。
1)モップテスターにモップ部を取付ける。
2)モップ部の真下のトレイ上に、幅10cm、長さ30cmの範囲でダスト150gを均等に分散する。
【0035】
3)モップ部をトレイ上に降ろした点を基点とし、トレイを左右に50cm移動させる(往復距離1m)。この往復動作を10回続ける。
4)この10回の往復動作を表1に示す回数繰り返し、各繰り返し回数におけるモップ部の質量を計測し、吸塵量とする(g/モップ部1枚)。
【0036】
5)計測後、モップ部を再度モップテスターに取付け、上下に10回振り(振幅20cm)、余剰ダストを振り落とす。
6)この10回の振り動作を表2に示す回数繰り返し、各繰り返し回数におけるモップ部の質量を計測して保持量とする(g/モップ部1枚)。
【0037】
吸塵量及び保持量は、各々飽和吸塵量及び飽和保持量に達するまで計測を実施した。また、吸塵量及び保持量は、同種のモップ用糸について上記の操作をそれぞれ5回行って得られた計測値の平均値である。実施例1〜3及び比較例1〜3のモップ用糸について、吸塵量を測定した結果を表1に示し、保持量を測定した結果を表2に示した。
【0038】
【表1】

表1に示したように、実施例1のモップ用糸では、飽和吸塵量(約28g/モップ部1枚)に達するまでの繰り返し回数が約35回である一方、比較例1のモップ用糸では飽和吸塵量に達するまでの繰り返し回数が約60回を要した。実施例2のモップ用糸では、飽和吸塵量が約40g/モップ部1枚である一方、比較例2のモップ用糸では、飽和吸塵量が約29g/モップ部1枚であった。実施例3のモップ用糸では、吸塵量が約31g/モップ部1枚に達するまでの繰り返し回数が約30回である一方、比較例3のモップ用糸では約60回を要した。しかも、実施例3のモップ用糸では、飽和吸塵量が約52g/モップ部1枚である一方、比較例3のモップ用糸では飽和吸塵量は約31g/モップ部1枚であった。
【0039】
【表2】

表2に示したように、実施例1のモップ用糸では、例えば測定を40回繰り返したときの保持量が26.9g/モップ部1枚である一方、比較例1のモップ用糸では、21.2g/モップ部1枚という低い保持量であった。実施例2のモップ用糸では、測定を40回繰り返したときの保持量が32.4g/モップ部1枚である一方、比較例2のモップ用糸では、26.3g/モップ部1枚という低い保持量であった。実施例3のモップ用糸では、測定を70回繰り返したときの保持量が45.5g/モップ部1枚である一方、比較例3のモップ用糸では、29.3g/モップ部1枚という低い保持量であった。
【0040】
なお、前記実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 紡績糸及び水溶性糸として、それぞれ複数の繊維を適宜組合せて用いることも可能である。
【0041】
・ 複合撚糸中の水溶性糸の割合が、モップ部を構成するモップ用糸の先端側(被清掃面側)ほど多くなるように形成し、モップ用糸の先端側ほど空隙部が多くなるように構成することも可能である。
【0042】
・ 複数のモップ用糸の長さを変えて束ね、モップ部の先端部を不揃いにしてダストの吸塵量や保持量を高めるように構成することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃用モップの柄の端部に取付けられるモップ部を形成するためのモップ用糸であって、
紡績糸と水溶性糸とを撚り合わせて形成された複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去して空隙部を形成してなる糸により構成されていることを特徴とするモップ用糸。
【請求項2】
前記紡績糸は天然繊維より形成された糸であるとともに、水溶性糸はポリビニルアルコール系繊維により形成された糸であることを特徴とする請求項1に記載のモップ用糸。
【請求項3】
前記複合撚糸の撚り方向が紡績糸の撚り方向と逆であり、紡績糸の撚数Aに対する複合撚糸の撚数Bの比(B/A)が1.3〜3であり、かつ複合撚糸の質量に基づいて紡績糸の割合が98〜20質量%及び水溶性糸の割合が2〜80質量%である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモップ用糸。
【請求項4】
前記紡績糸の撚数Aに対する複合撚糸の撚数Bの比(B/A)が1.5〜2であるとともに、複合撚糸の質量に基づいて紡績糸の割合が90〜50質量%及び水溶性糸の割合が10〜50質量%であることを特徴とする請求項3に記載のモップ用糸。
【請求項5】
柄の端部に取付けられるモップ部が請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモップ用糸で形成されていることを特徴とする清掃用モップ。
【請求項6】
前記モップ部を形成するモップ用糸の先端部は切断されて形成されていることを特徴とする請求項5に記載の清掃用モップ。

【公開番号】特開2011−226022(P2011−226022A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96935(P2010−96935)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(591121513)クラレトレーディング株式会社 (30)
【出願人】(504101005)浅野撚糸株式会社 (10)
【出願人】(390005212)株式会社トーカイ (5)
【Fターム(参考)】