説明

モナチン卓上甘味料組成物およびその製造方法

【課題】モナチンを含有する新規な甘味料組成物およびそうした組成物の製造方法、並びに特定のモナチン立体異性体、特定のモナチン立体異性体ブレンド、および/またはインビボ(in vivo;例えば細胞内)またはインビトロ(in vitro)で生合成経路により生産されるモナチンを含有する甘味料組成物を提供する。
【解決手段】特定のモナチン立体異性体、特定のモナチン立体異性体ブレンドおよび/またはインビボ(例えば細胞内)またはインビトロの生合成経路で生産されるモナチンを含有する甘味料組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本願は2003年8月1日提出の米国仮特許出願第60/492,014号の優先権を主張する。なお同願明細書は参照をもってその全体がここに開示される。
【0002】
本発明はモナチンを含有する新規な甘味料組成物およびそうした組成物の製造方法に関する。本発明はまた、特定のモナチン立体異性体、特定のモナチン立体異性体ブレンド、および/またはインビボ(in vivo;例えば細胞内)またはインビトロ(in vitro)で生合成経路により生産されるモナチンを含有する甘味料組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
小児肥満、II型糖尿病、および関連疾病への健康上の懸念を反映してノンカロリー高甘味度甘味料の使用がふえている。従って、グラニュー糖(ショ糖)などのような普通の甘味料よりも甘味が著しく強い甘味料が求められる。高甘味度甘味料は不快な異臭をおびたり、予想外の、期待はずれの甘味プロファイルを示したりするものも多い。これらの問題を克服するために業界は苦味抑制剤、異臭マスキング技術、およびショ糖並みの甘味プロファイルを実現するための甘味料ブレンドなどの研究を続けている。
【0004】
モナチン(2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−アミノグルタル酸)は、南アフリカのトランスバール地域で発見された植物Sclerochiton ilicifoliusから分離される天然の、高甘味度甘味料である。モナチンはショ糖または他の同等甘味度の栄養性甘味料と違って炭水化物または糖質を含まず、ノーカロリーに近い。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、次の式で示されるモナチンすなわち2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−アミノグルタル酸、別名4−アミノ−2−ヒドロキシ−2−(1H−インドール−3−イルメチル)−ペンタン二酸、または別の位置番号付与システムにより4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−グルタミン酸を含有する甘味料組成物に関する。
【0006】
【化1】

【0007】
モナチンは天然の高甘味度甘味料である。モナチンには次の4立体異性体がある:2R,4R型(R,R立体異性体またはR,Rモナチン)、2S,4S型(S,S立体異性体またはS,Sモナチン)、2R,4S型(R,S立体異性体またはR,Sモナチン)および2S,4R型(S,R立体異性体またはS,Rモナチン)。モナチンは本明細書では特に断らない限り、モナチンの4立体異性体すべてとモナチン立体異性体の任意の組み合わせからなるブレンド(例えばR,R型およびS,S型モナチン立体異性体のブレンド)をいう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はモナチンおよび/またはインドール−3−ピルビン酸の生産に使用される生合成経路を示す。一経路ではトリプトファン経由でインドール−3−ピルビン酸が生産され、別の経路ではインドール−3−乳酸経由でインドール−3−ピルビン酸が生産される。最後にはモナチンがMP中間体を経由して生産される。 囲みの中の化合物は基質および生合成経路で生産される生成物である。矢印の横に記した組成物は基質の生成物への変換に際して使用しうる補因子または試薬である。使用補因子または試薬は、生合成経路の特定ステップで使用されるポリペプチド次第であろう。補因子PLP(ピリドキサル5’−リン酸)はポリペプチドとは無関係に反応を触媒しうるので、PLPを用意するだけで基質から生成物への進行を可能にすることができる。
【図2】図2はMP中間体を利用する生合成経路の更に詳細な図解である。該経路中の各ステップに対応する基質は囲みで示す。基質間の変換を可能にするポリペプチドは基質間の矢印の横に記す。各ポリペプチドは一般名と酵素(EC)番号で示す。
【図3】図3はインドール−3−乳酸のインドール−3−ピルビン酸への変換という生合成経路の更に詳細な図解である。該経路中の各ステップに対応する基質は囲みで示す。基質間の変換を可能にするポリペプチドは基質間の矢印の横に記す。各ポリペプチドは一般名と酵素(EC)番号で示す。
【図4】図4は化学的手段でMPを製造するための可能な反応の1つを示す。
【図5A】図5Aは酵素的に生産したモナチンのLC/MS同定を示すクロマトグラムである。
【図5B】図5Bは酵素的に生産したモナチンのLC/MS同定を示すクロマトグラムである。
【図6】図6は酵素的に合成したモナチンのエレクトロスプレー質量スペクトルである。
【図7A】図7Aは酵素混合物中で生産されたモナチンのLC/MS/MS娘イオン解析のクロマトグラムである。
【図7B】7Bは酵素混合物中で生産されたモナチンのLC/MS/MS娘イオン解析のクロマトグラムである。
【図8】図8は酵素的に生産したモナチンの高分解能質量測定を示すクロマトグラムである。
【図9A】図9AはR−トリプトファン(A)のキラル分割を示すクロマトグラムである。
【図9B】図9BはS−トリプトファン(B)のキラル分割を示すクロマトグラムである。
【図9C】図9Cはおよび酵素的に生産したモナチン(C)のキラル分割を示すクロマトグラムである。
【図10】図10はIPTG誘導後に細菌細胞中で生産されたモナチンの相対量を示す棒グラフである。(−)は基質添加の欠如(トリプトファンまたはピルビン酸が添加されなかったこと)を示す。
【図11】図11はトリプトファンまたはインドール−3−ピルビン酸から生産されるモナチンの収率を高めるために用いた経路の図解である。
【図12】図12はトリプトファンまたはインドール−3−ピルビン酸から生産されるモナチンの収率を高めるために用いた経路の図解である。
【図13】図13はトリプトファンまたはインドール−3−ピルビン酸から生産されるモナチンの収率を高めるために用いることができる経路の図解である。
【図14】図14はR,R立体異性体のモナチンで得られた用量反応曲線である。
【図15】図15はR,R/S,S立体異性体混合物のモナチンで得られた用量反応曲線である。
【図16】図16はR,R/S,S立体異性体混合物のモナチンで得られた用量反応曲線とサッカリンで得られた用量反応曲線の比較である。
【図17】図17は合成モナチン標準品の逆相クロマトグラフィーを示す。
【図18】図18はモナチン標準品のキラルクロマトグラフィーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
モナチンは卓越した甘味質を有する。モナチンの風味プロファイルは他の既知高甘味度甘味料に優るとも劣らないほどすっきりしている。その用量反応曲線はサッカリンなどのような他の高甘味度甘味料よりももっと線形であり、従ってショ糖のそれに近い。モナチンはその卓越した甘味プロファイル故に卓上甘味料、食品、飲料、その他製品への使用に好適である。
【0010】
種々のモナチン立体異性体はR,R型やS,S型を含めて甘味料業界で別個の成分として、またはブレンドとして、使用される可能性がある。モナチンは、またモナチン立体異性体と他甘味料とのブレンドも、他の高甘味度甘味料に匹敵する優れた食味特性および/または物性をもつと考えられる。例えば、モナチンはEqual(登録商標)またはNutraSweet(登録商標)(アスパルテーム、ASMともいう)よりも安定性が高く、食味がSweet N’ Low(登録商標)(サッカリン)よりもすっきりしており、またSplenda(登録商標)(スクラロース)よりも甘味が強い。同様に、モナチン甘味料はサッカリン特有の苦い後味がなく、また他のある種の高力価甘味料に特有の舌を刺すような、酸っぱい、渋い、またはのどがぴりぴりするような後味もない。加えて、モナチン甘味料はステビオシドやグリチルリチンなどのようなある種の天然甘味料に特有の甘草の後味も示さない。更にモナチン甘味料は、アスパルテーム甘味料と違って、フェニルアラニンを含むという警告文が不要である。特にR,R型立体異性体はその強烈な甘さのために、他の高甘味度甘味料に対し経済競争力をもつはずである。
【0011】
本発明は一態様で、R,Rモナチンおよび/またはS,Sモナチンを含有する甘味料組成物を提供する。そうした組成物は例えばグラニュー糖(ショ糖)に匹敵する甘味を示すので、スプーン単位またはカップ単位で砂糖の1対1代替品として使用可能である。「匹敵する甘味」は、経験豊かな官能評価員の平均的な判定によれば第1組成物の甘さが第2組成物の甘さの80%〜120%の範囲内にあることを意味する。「匹敵する甘味」は、2〜10%の範囲のショ糖等価濃度を有する組成物(例えば溶液)を用いて行われる後述のような甘味マッチング試験で5人以上の経験豊かな官能評価員によって確認される判定に関する。従って、例えばモナチンを含有する組成物100mg/mLは、該モナチン組成物の甘さがショ糖80〜120mg/mLの範囲内の甘さであれば、ショ糖100mg/mLに「匹敵する甘味」を呈することになる。
【0012】
ショ糖との比較による甘味料の相対的な甘味評価は、甘味評価試験の訓練を受け、経験を積んだ官能評価員のパネルを使用して行う。サンプルはすべて(バッファーに溶かして)22℃±1℃の温度で2回、試験に供する。試験溶液は3桁の乱数コードを付してあり、パネリストに対し個別に、無作為順に供する。濃度が0.5%(w/v)刻みで上昇する4.0〜10.0%(w/v)の範囲内のショ糖標準品もまた供する。パネリストは試験溶液をショ糖標準品と比較して甘味を評価するよう求められる。これは試験溶液を3口、水を1口、ショ糖標準品を3口、水を1口順次飲むといった手順で行う。パネリストは甘味を小数第1位まで、例えば6.8、8.5というように判定する。試験溶液の評価は5分間の休憩時間を間に挟んで行う。パネリストはまた、口を充分にすすぎ、クラッカー1個を食べて、潜在的な持ち越し効果を小さくするよう求められる。パネリストから得た情報を基にして、用量反応曲線の特定ポイントにおける%モナチンでショ糖等価濃度(SEV)(例えば%ショ糖)を割って甘味の強度または力価を計算する。
【0013】
実施態様により、組成物は基本的にS,SまたはR,Rモナチンからなるモナチンを含有する場合もあれば、主にS,SまたはR,Rモナチンを含有する場合もある。「主に」は、組成物中のモナチン立体異性体のうち特定の立体異性体の含量が90%を超えることを意味する。実施態様によっては、組成物はS,SまたはR,Rモナチンを実質的に含まない。「実質的に含まない」は組成物中のモナチン立体異性体のうち特定の立体異性体の含量が2%未満であることを意味する。加えてまたは代りに、「実質的に含まない」は、生合成経路で生産されるモナチンの記述に用いられる場合には、キラル特異的酵素(例えばD−アミノ酸デヒドロゲナーゼまたはD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼ)および/またはキラル特異的基質(例えばR−立体配置に炭素を有する基質)を使用して特定の立体異性体(例えばR,Rモナチン)を生産しようとする生合成経路で副生物として生産される別の立体異性体(例えばS,Sモナチン)の量についてもいう。
【0014】
本発明の別の態様では、生合成経路で生産される立体異性体濃縮型モナチン混合物を含む甘味料組成物が提供される。「立体異性体濃縮型モナチン混合物」は、該混合物が複数のモナチン立体異性体を含有し、かつR,R型、S,S型、S,R型またはR,S型といった特定のモナチン立体異性体を少なくとも60%含むことを意味する。他の実施態様では、該混合物は特定のモナチン立体異性体を65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%超含有する。別の実施態様では、甘味料組成物は立体異性体濃縮型R,RまたはS,Sモナチンを含有する。「立体異性体濃縮型」R,Rモナチンは、R,Rモナチン含量が少なくとも60%であるモナチンを意味する。「立体異性体濃縮型」S,Sモナチンは、S,Sモナチン含量が少なくとも60%であるモナチンを意味する。他の実施態様では、立体異性体濃縮型モナチンはR,RまたはS,Sモナチンを65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%超含有する。
【0015】
別の態様では、本発明はやはり、R,RまたはS,S型モナチンを含有する甘味料組成物を、例えば分割包装または即使用可能タイプの調製品の形で提供する。例えば使いきり個包装タイプの調製品(通常は約1グラム)はグラニュー糖(ショ糖)小さじ2杯分に匹敵する甘味を呈しうる。技術上周知のように、ショ糖の場合小さじ1杯は約4グラムに相当する。あるいは、即使用可能タイプの調製品の分量は同分量のグラニュー糖に匹敵する甘味を呈しうる。あるいは、使いきり個包装タイプのモナチン組成物(例えば1グラム)はグラニュー糖約0.9グラム〜9.0グラムに匹敵する甘味を呈しうる。用語「約」は計測に付き物の実験誤差の範囲を包摂する。特に断らない限り、諸々の計測値は数値の前に用語「約」を、たとえ明示に使用されていない場合でも、伴うものとする。
【0016】
別の態様では、本発明はモナチンを含有する均一な卓上甘味料を提供する。「均一な」組成物は一様な組成物をいう。例えば「均一な」卓上甘味料組成物(例えば液体)は組成物の全体にわたり同一濃度のモナチンを含有する(すなわち該組成物に由来する任意のサンプルはその濃度になる)であろう。
【0017】
本発明は別の態様で、甘味料組成物の製造方法を提供する。該方法はインビボまたはインビトロでの生合成経路によるモナチンの生産を含む。「生合成経路」は少なくとも1つの生物変換ステップを含む。実施態様によっては、生合成経路はマルチステップ過程であり、そのうちの少なくとも1つが生物変換ステップである。他の実施態様では、生合成経路は生物変換、化学変換の両ステップを含むマルチステップ過程である。実施態様によっては、生産されるモナチンは立体異性体濃縮型のモナチン混合物である。
【0018】
本発明の別の態様では、ブドウ糖、トリプトファン、インドール−3−乳酸、更にはインドール−3−ピルビン酸および2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸(モナチン前駆体、MP、またはアルファケト体モナチンともいう)から選択される基質からモナチンを製造するためのいくつかの生合成経路が存在する。モナチンまたはその中間体を製造または生産するための生合成経路の例は図1〜3および11〜13で開示するが、図中の囲みは潜在的な中間体および最終生成物を示す。これらの生合成経路では、例えばブドウ糖からトリプトファンへの、トリプトファンからインドール−3−ピルビン酸への、インドール−3−ピルビン酸からMPへの、MPからモナチンへの、またはインドール−3−乳酸からインドール−3−ピルビン酸への変換といった、ある生成物から別の生成物への変換が起こる。
【0019】
生合成経路内のこれらの変換は化学変換および/または生物変換によって促進することができる。用語「変換する」は、反応に少なくとも1つのポリペプチドを使用して第1中間体を第2中間体に変化させることをいう。変換はインビボ、インビトロのいずれで起きてもよい。用語「化学変換」はポリペプチドによる積極的な促進を受けない反応をいう。用語「生物変換」は1つまたは複数のポリペプチドによる積極的な促進を受ける反応をいう。生物変換を使用するときは、ポリペプチドおよび/または細胞を担体上に、高分子担体上への化学結合などにより、固定化することができる。変換には技術上周知の任意のリアクター例えばバッチ式または連続式のリアクターを使用することができる。
【0020】
生物変換への使用が可能なポリペプチドおよびそのコード配列の例は図1〜3および11〜13に示すとおりである。ポリペプチドの基質特異性および/または活性の改変を可能にするような点突然変異を1つまたは複数含むポリペプチドはモナチンの製造に使用することができる。そうしたポリペプチドを発現する単離および遺伝子組み換え細胞はモナチンの生産に使用することができる。これらの細胞は任意の細胞例えば植物、動物、酵母、藻類、古細菌または真菌の細胞などでよい。
【0021】
例えばモナチン生産細胞は次のうち1つまたは複数(例えば2つ以上または3つ以上)の活性を含むことができる:トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.27)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.5)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.19)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.2,1.4.1.3,1.4.1.4)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.20)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.28)、多基質アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.−)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.1)、L−アミノ酸オキシダーゼ(EC 1.4.3.2)、トリプトファンオキシダーゼ(酵素番号なし;Hadar et al., J. Bacteriol 125:1096−1104,1976およびFuruya et al., Biosci Biotechnol Biochem 64:1486−93,2000)、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(Kohiba and Mito, Proceedings of the 8th International Symposium on Vitamin B and Carbonyl Catalysis, Osaka, Japan 1990)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.99.1)、D−アミノ酸オキシダーゼ(EC 1.4.3.3)、D−アラニンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.21)、シンターゼ/リアーゼ(EC 4.1.3.−)例えば4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC 4.1.3.16)または4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC 4.1.3.17)など、および/またはシンターゼ/リアーゼ(4.1.2−)。
【0022】
別の例では、細胞は次のうち1つまたは複数(例えば2つ以上または3つ以上)の活性を含むことができる:インドール乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.110)、R−4−ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.222)、3−(4)−ヒドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼ(EC 1.1.1.237)、乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.127,1.1.1.28,1.1.2.3)、(3−イミダゾール−5−イル)乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.111)、乳酸オキシダーゼ(EC 1.1.3.−)、シンターゼ/リアーゼ(4.1.3.−)例えば4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC 4.1.3.16)または4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC 4.1.3.17)など、シンターゼ/リアーゼ(4.1.2−)、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.27)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.5)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.19)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.2,1.4.1.3,1.4.1.4)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.20)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.28)、多重基質アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.−)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.1)、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.99.1)、および/またはD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.21)。
【0023】
加えて、細胞は次のうち1つまたは複数(例えば2つ以上または3つ以上)の活性を含むことができる:トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.27)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.5)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.19)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.2,1.4.1.3,1.4.1.4)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.20)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.28)、多重基質アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.−)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.1)、L−アミノ酸オキシダーゼ(EC 1.4.3.2)、トリプトファンオキシダーゼ、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.99.1)、D−アミノ酸オキシダーゼ(EC 1.4.3.3)、D−アラニンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.21)、インドール乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.110)、R−4−ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.222)、3−(4)−ヒドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼ(EC 1.1.1.237)、乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.127,1.1.1.28,1.1.2.3)、(3−イミダゾール−5−イル)乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.111)、乳酸オキシダーゼ(EC 1.1.3.−)、シンターゼ/リアーゼ(4.1.3.−)例えば4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC 4.1.3.16)または4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC 4.1.3.17)など、シンターゼ/リアーゼ(4.1.2−)。
【0024】
さらなる例として、細胞は次のうち1つまたは複数のアルドラーゼ活性を含むことができる:KHGアルドラーゼ、ProAアルドラーゼ、KDPGアルドラーゼおよび/または関連ポリペプチド(KDPH)、トランスカルボニルベンザルピルビン酸ヒドラターゼ−アルドラーゼ、4−(2−カルボキシフェニル)−2−オキソブタ−3−エノアート=アルドラーゼ、トランス−O−ヒドロキシベンジリデンピルビン酸ヒドラターゼ−アルドラーゼ、3−ヒドロキシアスパラギン酸アルドラーゼ、ベンゾインアルドラーゼ、ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ、L−トレオ−3−フェニルセリン=ベンズアルデヒド−リアーゼ(フェニルセリンアルドラーゼ)、4−ヒドロキシ−2−オキソ吉草酸アルドラーゼ、1,2−ジヒドロキシベンジルピルビン酸アルドラーゼ、および/または2−ヒドロキシベンザルピルビン酸アルドラーゼ。
【0025】
モナチンは、トリプトファンおよび/またはインドール−3−乳酸を第1ポリペプチドと接触させ、該第1ポリペプチドの働きでトリプトファンおよび/またはインドール−3−乳酸をインドール−3−ピルビン酸へと変換するステップ(D−型またはL−型のトリプトファンおよび/またはインドール−3−乳酸はインドール−3−ピルビン酸へと変換される基質として使用することができる;このステップに使用するポリペプチドは、当業者には自明であろうが、適切な特異性を示すのが理想である)、生成したインドール−3−ピルビン酸を第2ポリペプチドと接触させ、該第2ポリペプチドの働きでインドール−3−ピルビン酸を2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸(MP)へと変換するステップ、およびMPを第3ポリペプチドと接触させ、該第3ポリペプチドの働きでMPをモナチンへと変換するステップを含む方法によって生産することができる。これらの変換に使用することができる例示的なポリペプチドは図2および3に示す。
【0026】
生合成経路での、1つまたは複数の生物変換によるモナチンの生産にはある種の利点がある。例えば生合成経路で特異的ポリペプチドおよび/またはある種の基質を使用することにより、特定の立体異性体を濃縮した混合物を、および/または1つまたは複数の立体異性体を実質的に含まないモナチン混合物を、生産することができる。
【0027】
モナチン組成物はモナチン合成に使用した方法の結果としての不純物を含むかもしれない。純粋に合成的な(すなわち少なくとも1つの生物変換を伴わない)手段によって生産されるモナチン組成物は、生合成経路によって生産されるモナチン組成物とは異なる不純物を含もう。例えば、純粋に合成的な手段で生産されるモナチン組成物は使用原料次第で人間による消費には不適切な石油化学系の、有毒な、および/または他の有害な不純物を含むかもしれない。そうした不純物の例はLDA、水素−Pd/C、ジアゾメタン、KCN、グリニャール試薬およびNa/Hgなどのような有害化学物質である。他方、生合成経路で生産されるモナチン組成物は食用または飲用に適した不純物を含む場合もあるが、石油化学系の、有毒な、および/または他の有害な不純物を含むことはないと見られる。
【0028】
生合成経路で1つまたは複数の生物変換によりモナチンを生産する方法では純粋に合成的な手段と比較して、有毒または有害不純物の生成が少ない、および/または特定立体異性体の濃度を高くすることが可能である、と見込まれる。例えばD−アミノ酸デヒドロゲナーゼ、D−アラニン(アスパラギン酸)アミノトランスフェラーゼ、D−芳香族アミノトランスフェラーゼまたはD−メチオニンアミノトランスフェラーゼを使用してモナチンを製造するときは、少なくとも60%のR,Rモナチンと40%未満のS,S、S,Rおよび/またはR,Sモナチンが得られると見込まれる。また、例えば前述のD−型酵素の他にR−立体配置に1個の炭素を有する少なくとも1つの基質(例えばモナチン前駆体)と使用してモナチンを製造するときは、少なくとも95%のR,Rモナチンと5%未満のS,S、S,Rおよび/またはR,Sモナチンが得られると見込まれる。それに対して、純粋に合成的な手段でモナチンを製造するときは、得られる所期立体異性体の濃度は約25%〜50%と見込まれる。
【0029】
一実施態様では、生合成経路でモナチンを生産する方法は、例えば1つまたは複数の生物変換を伴うが、石油化学系の、有毒な、または他の有害な不純物を生成しない。「石油化学系の、有毒な、または他の有害な不純物」は原料として供給された物質または純粋に合成的な手段でモナチンを製造する際に生成した物質を含めて、石油化学系の、有毒な、および/または他の意味で人間による消費には不適切な、任意の物質を意味する。別の実施態様では、生合成経路でモナチンを生産する方法は、例えば1つまたは複数の生物変換を伴うが、食用または飲用に適した物質だけを生成する。「食用または飲用に適した物質」は、人間による飲食に適した、または他の意味で人間が消費しても安全である、1つまたは複数の化合物または物質をいう。食用または飲用に適した物質の例はモナチン、トリプトファン、ピルビン酸、グルタミン酸、または他のアミノ酸、それに人体内に天然に存在する他の化合物または物質などである。
【0030】
ある種の実施態様では、モナチン甘味料組成物の例は卓上分割包装および立方体タイプの甘味料、それに容量ベースでショ糖(砂糖)とほぼ同じ甘さを有し卓上グラニュー糖の代用となりうる即使用可能タイプの卓上代用甘味料などである。そうした卓上甘味料は(ホットおよびアイス)コーヒー/紅茶やシリアル食品、フルーツおよび家庭用焼き菓子(クッキー、マフィン、ケーキなど)、デザートを甘くするために使用される。
【0031】
一実施態様では、卓上甘味料組成物はモナチンまたはその塩を含有し、約0.9〜約9.0グラムのグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する。別の実施態様では、1グラム分量のモナチン卓上甘味料は小さじ2杯分のグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する。別の実施態様では、1グラム分量のモナチン卓上甘味料は約0.9〜約9.0グラムのグラニュー糖に匹敵する甘さをもたらし、また約1グラムのグラニュー糖よりも低カロリー、低糖質である。
【0032】
別の実施態様では、モナチンまたはその塩を含有する卓上甘味料組成物は約0〜約200mgのS,Sモナチンまたはその塩と約0〜約5mgのR,Rモナチンまたはその塩とを含有してよい。例えば1グラムの卓上甘味料組成物は約3〜約200mgのS,Sモナチンまたはその塩と約0〜約5mgのR,Rモナチンまたはその塩とを含有してよい。あるいは、例えば1グラムの卓上甘味料組成物は約0〜約200mgのS,Sモナチンまたはその塩と約0〜約5mgのR,Rモナチンまたはその塩とを含有してよい。
【0033】
別の実施態様では、1グラムのモナチン卓上甘味料組成物は約200mg以下のS,Sモナチンまたはその塩を含有し、かつR,R、S,RまたはR,Sモナチンまたはその塩を実質的に含まない。別の実施態様では、1グラムのモナチン卓上甘味料組成物は約5mg以下のR,Rモナチンまたはその塩を含有し、かつS,S、S,RまたはR,Sモナチンまたはその塩を実質的に含まない。
【0034】
別の実施態様では、モナチンまたはその塩を含有する組成物は、増量剤、キャリアー、繊維、糖アルコール、オリゴ糖、糖質、非モナチン高甘味度甘味料、栄養性甘味料、香料、風味増進剤、風味安定剤、酸味料、固結防止剤および易流動剤から選択される少なくとも1つの成分を更に含有する。例えばモナチン卓上甘味料組成物はマルトデキストリンを加えた造粒デキストロースを更に含有してもよい。
【0035】
一実施態様では、甘味料組成物はモナチンとエリトリトールを含有する。他の実施態様ではモナチン組成物はエリトリトールを含有する。一実施態様ではモナチン組成物はエリトリトールを最高99.7%含有する。別の実施態様ではモナチン組成物はトレハロースを含有する。別の実施態様ではモナチン組成物はチクロ(シクラミン酸塩)を含有する。
【0036】
他の実施態様では、卓上甘味料組成物はモナチンまたはその塩を含有し、該モナチンまたはその塩は基本的にR,Rモナチンまたはその塩からなる。あるいは、卓上甘味料組成物はモナチンまたはその塩を含有し、該モナチンまたはその塩は基本的にS,Sモナチンまたはその塩からなる。他の実施態様では、卓上甘味料組成物はモナチンまたはその塩を含有し、該モナチンまたはその塩は立体異性体濃縮型のR,RまたはS,Sモナチンまたはその塩である。例えばモナチン卓上甘味料組成物は少なくとも95%のR,Rモナチンまたはその塩を含有してもよい。
【0037】
他の実施態様では、卓上甘味料組成物はモナチンまたはその塩を含有し、その甘さは生合成経路で生産されるモナチンまたはその塩によってもたらされる。
【0038】
他の実施態様では、即使用可能タイプの甘味料組成物はモナチンまたはその塩を含有し、該組成物のある分量は同分量のグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する。別の実施態様では、小さじ1杯の即使用可能タイプの甘味料組成物は約小さじ1杯のグラニュー糖よりも低カロリーおよび低糖質である。
【0039】
他の実施態様では、即使用可能タイプの甘味料組成物はモナチンまたはその塩を含有し、該組成物1グラムは約3〜約25mgのS,Sモナチンまたはその塩と約0〜約0.625mgのR,R S,Sモナチンまたはその塩を含有する。あるいは、例えば即使用可能タイプのモナチン甘味料は基本的にS,Sモナチンまたはその塩、またはR,Rモナチンまたはその塩からなる。他の実施例では、即使用可能タイプのモナチン甘味料組成物1グラムは約5〜約25mgのS,Sモナチンまたはその塩を含有する。あるいは、例えば即使用可能タイプのモナチン甘味料組成物1グラムは約0.4〜約0.625mgのR,Rモナチンまたはその塩を含有し、かつS,S、S,RまたはR,Sモナチンまたはその塩を実質的に含まない。あるいは、例えば即使用可能タイプのモナチン甘味料組成物1グラムは約0.5〜約1mgのR,Rモナチンまたはその塩を含有し、かつS,S、S,RまたはR,Sモナチンまたはその塩を実質的に含まない。
【0040】
他の実施態様では、甘味料組成物は立体異性体濃縮型モナチン混合物を含有し、該モナチン混合物は生合成経路で生産される。一実施態様では、該生合成経路はマルチステップ経路であり、そのうちの少なくとも1つのステップは化学変換ステップである。別の実施態様では、立体異性体濃縮型モナチン混合物は主にR,Rモナチンまたはその塩である。
【0041】
他の実施態様では、均一な卓上甘味料組成物はモナチンまたはその塩を含有し、該組成物のサンプルは2mg超〜約200mgの範囲の量のモナチンまたはその塩を含有し、また該サンプル中のモナチンまたはその塩は約0.9〜9.0グラムのグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する。例えば均一な卓上甘味料組成物は小さじ2杯分のグラニュー糖に匹敵する甘さをもたらしてもよい。別の実施態様では、均一な卓上甘味料組成物のサンプルは重量が約1グラム、または容量が約0.35mLである。別の実施態様では、均一な卓上甘味料組成物のサンプルは2mg超〜約5mgの範囲の量のモナチンまたはその塩を含有する。別の実施態様では、均一な卓上甘味料組成物はS,Sモナチンまたはその塩を実質的に含まない、またはR,Rモナチンまたはその塩を実質的に含まない。
【0042】
他の実施態様では、卓上甘味料組成物はモナチンまたはその塩を含有し、該組成物のサンプルは2mg超〜約105mgの範囲の量のモナチンまたはその塩を含有し、また該サンプル中のモナチンまたはその塩は小さじ1杯分のグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する。別の実施態様では、均一な卓上甘味料組成物のサンプルは容量が約0.35mLであるか、または粒状物からなる立方体である。
【0043】
他の実施態様では、卓上甘味料組成物は生合成経路で生産されるモナチン組成物を含有し、該モナチン組成物は石油化学系の、有毒な、または有害な不純物を含まない。モナチンまたはその塩を含有するモナチン卓上甘味料組成物は例えば、石油化学系の、有毒な、または有害な不純物を含まない遺伝子組み換え細胞から生合成経路で産生させ、分離するようにしてもよい。
【0044】
他の実施態様では、甘味料組成物を製造する方法はモナチンまたはその塩を含有し、該方法はブドウ糖、トリプトファン、インドール−3−乳酸、インドール−3−ピルビン酸およびモナチン前駆体から選択される少なくとも1つの基質からモナチンまたはその塩を生産するステップを含む。他の実施態様では、該方法はモナチンまたはその塩をエリトリトールと混合するステップを更に含む。他の実施態様では、該方法はモナチンまたはその塩をトレハロースと混合するステップを更に含む。他の実施態様では、該方法はモナチンまたはその塩をチクロと混合するステップを更に含む。他の実施態様では、該方法はモナチンまたはその塩を、モナチンでもその塩でもない少なくとも1つの他成分と混合するステップを更に含む。そうした成分の例は増量剤、キャリアー、繊維、糖アルコール、オリゴ糖、糖質、非モナチン高甘味度甘味料、栄養性甘味料、香料、風味増進剤、風味安定剤、酸味料、固結防止剤、易流動剤、およびそれらの任意の組み合わせである。一実施態様では、少なくとも1つの他成分はマルトデキストリン、デキストロース、エリトリトールおよび繊維から選択される。
【0045】
他の実施態様では、甘味料組成物を製造する方法において、該甘味料組成物の分量約1グラムは約0mg〜約200mgのS,Sモナチンまたはその塩と約0mg〜約5mgのR,Rモナチンまたはその塩とを含有し、該分量は小さじ2杯分のグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する。
【0046】
他の実施態様では、甘味料組成物を製造する方法において、該甘味料組成物1グラムは約0mg〜約25mgのS,Sモナチンまたはその塩と約0mg〜約0.625mgのR,Rモナチンまたはその塩とを含有し、該組成物のある分量は同分量のグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する。あるいは、甘味料組成物を製造する方法において、該組成物1グラムは約0〜約25mgのS,Sモナチンまたはその塩と約0〜約0.625mgのR,Rモナチンまたはその塩とを含有し、該組成物1グラムは約0.9〜9.0グラムのグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する。あるいは、甘味料組成物を製造する方法において、S,Sモナチンまたはその塩の含量は該組成物1グラムにつき約5mg〜約200mgである。
【0047】
他の実施態様では、甘味料組成物を製造する方法はS,Sモナチンまたはその塩を、増量剤、キャリアー、繊維、糖アルコール、オリゴ糖、糖質、非モナチン高甘味度甘味料、栄養性甘味料、香料、風味増進剤、風味安定剤、酸味料、固結防止剤、易流動剤、およびそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの他成分と混合するステップを更に含み、モナチンまたはその塩の含量は該組成物1グラムにつき約3mg〜約200mgである。他の実施態様では、甘味料組成物を製造する方法はR,Rモナチンまたはその塩を、増量剤、キャリアー、繊維、糖アルコール、オリゴ糖、糖質、非モナチン高甘味度甘味料、栄養性甘味料、香料、風味増進剤、風味安定剤、酸味料、固結防止剤、易流動剤、およびそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つの他成分と混合するステップを更に含み、R,Rモナチンまたはその塩の含量は該組成物1グラムにつき約3mg〜約5mgである。他の実施態様では、甘味料組成物を製造する方法は該組成物1グラムにつき約0.4〜約5mgのR,Rモナチンまたはその塩を含有する。
【0048】
他の実施態様では、甘味料組成物を製造する方法はモナチンまたはその塩を、デキストロースとマルトデキストリンから選択される少なくとも1つの増量剤と混合するステップを更に含み、モナチンまたはその塩の含量は該組成物1グラムにつき約5mgのR,Rまたはその塩である。他の実施態様では、甘味料組成物を製造する方法はモナチンまたはその塩をマルトデキストリンと混合するステップを更に含み、モナチンまたはその塩の含量は該組成物1グラムにつき約0.5〜約1mgのR,Rまたはその塩である。
【0049】
他の実施態様では、モナチン組成物を含有する甘味料組成物の製造方法において、該方法は該モナチン組成物を生合成経路で生産するステップを含み、また該モナチン組成物は石油化学系の、有毒な、または有害な不純物を含まない。または、該方法は該モナチン組成物をマルチステップ経路で基質から生産するステップを含み、該マルチステップ経路中の1つまたは複数のステップは生物変換ステップであり、また該モナチン組成物は石油化学系の、有毒な、または有害な不純物を含まない。
【0050】
他の実施態様では、モナチン組成物を含有する甘味料組成物の製造方法において、該方法は該モナチン組成物を生合成経路で生産するステップを含み、また該モナチン組成物はモナチンまたはその塩および他の食用または飲用に適した物質からなる。または、該方法は該モナチン組成物をマルチステップ経路で基質から生産するステップを含み、該マルチステップ経路中の1つまたは複数のステップは生物変換ステップであり、また該モナチン組成物はモナチンまたはその塩および他の食用または飲用に適した物質からなる。
【0051】
他の実施態様では、モナチン組成物を含有する甘味料組成物の製造方法において、該方法は:(a)遺伝子組み換え細胞において生合成経路でモナチンまたはその塩を産生させるステップ;(b)該遺伝子組み換え細胞から該モナチン組成物を分離するステップを含み、該モナチン組成物はモナチンまたはその塩および他の食用または飲用に適した物質からなる。
【0052】
本明細書中の教示から、本発明の具体的な実施態様を前記態様の、更には他態様の、1つまたは組み合わせに向けてもよいことは、当業者には自明であろう。
【0053】
[モナチン生産のための生合成経路の概要]
以下の用語と方法の説明は、本発明を更に充分に開示し、本発明の実施へと当業者を導くことが狙いである。本明細書では、用語「含む、包含する(including)」は「含む、含有する、具備する(comprising)」を意味する。更に、単数形の表記は文脈上明白な矛盾が見られない限り、複数形の表記を包含する。
【0054】
図1−3および図11−13に示すように、モナチンまたはその中間体(インドール−3−ピルビン酸またはMPなど)の生産には多数の生合成経路を使用することができる。各基質(例えばブドウ糖やトリプトファン、インドール−3−乳酸、インドール−3−ピルビン酸、MPなど)の各生成物(例えばトリプトファンやインドール−3−ピルビン酸、MP、モナチンなど)への変換には、数種のポリペプチドを使用することができる。更に、そうした変換はインビトロ、インビボ、またはインビボ + インビトロ反応で、例えば非酵素的化学反応を含むインビトロ反応で、行うことができる。従って図1−3および図11−13は例示であり、所期生成物を獲得するために使用しうる複数の異なる経路を示す。
【0055】
ブドウ糖→トリプトファン
多くの生物はブドウ糖からトリプトファンを合成することができる。そうした生物には、ブドウ糖および/またはトリプトファンからモナチン、MPおよび/またはインドール−3−ピルビン酸を産生させるための必要な遺伝子を含むコンストラクトをクローニングすることができる。ここでは、トリプトファンはモナチンへと変換されうることが示される。
【0056】
他の例では、公知のポリペプチドを使用して生物を改造し、トリプトファンを産生させる、またはトリプトファンを過剰に産生させることができる。例えば米国特許第4,371,614号明細書は、野生型トリプトファンオペロンを含むプラスミドで形質転換させたE. coli株を開示している。
【0057】
米国特許第4,371,614号明細書で開示されているトリプトファンの最大力価は約230ppmである。同様に、国際公開第WO 8701130号明細書はトリプトファンを産生するように遺伝子組み換えしたE. coli株を開示し、発酵法によるL−トリプトファンの増産を論じている。ブドウ糖からトリプトファンを合成しうる生物はブドウ糖またはフルクトース6−リン酸への変換が可能な他の炭素およびエネルギー源を利用して同様の結果をもたらしうることも、当業者には自明であろう。そうした炭素およびエネルギー源の非限定的な例はショ糖、果糖、でんぷん、セルロースまたはグリセロールである。
【0058】
トリプトファン→インドール−3−ピルビン酸
数種のポリペプチドがトリプトファンのインドール−3−ピルビン酸への変換に使用可能である。そうしたポリペプチドの非限定的な例は酵素番号(EC)2.6.1.27、1.4.1.19、1.4.99.1、2.6.1.28、1.4.3.2、1.4.3.3、2.6.1.5、2.6.1.−、2.6.1.1および2.6.1.21などのクラスの酵素である。これらのクラスに含まれる酵素の非限定的な例は、次のような名称のポリペプチド類である:L−トリプトファンおよび2−オキソグルタル酸をインドール−3−ピルビン酸およびL−グルタミン酸へと変換するトリプトファンアミノトランスフェラーゼ(別名:L−フェニルアラニン−2−オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ、トリプトファントランスアミナーゼ、5−ヒドロキシトリプトファン−ケトグルタル酸トランスアミナーゼ、ヒドロキシトリプトファンアミノトランスフェラーゼ、L−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、L−トリプトファントランスアミナーゼ、およびL−トリプトファン−2−オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ);D−トリプトファンと2−オキソ酸をインドール−3−ピルビン酸とアミノ酸へと変換するD−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ;トリプトファンデヒドロゲナーゼ(別名:NAD(P)−L−トリプトファンデヒドロゲナーゼ、L−トリプトファンデヒドロゲナーゼ、L−Trp−デヒドロゲナーゼ、TDHおよびNAD(P)オキシドレダクターゼ(脱アミノ基));D−アミノ酸とFADをインドール−3−ピルビン酸、NH、FADHへと変換するD−アミノ酸デヒドロゲナーゼ;L−トリプトファンとフェニルピルビン酸をインドール−3−ピルビン酸とL−フェニルアラニンへと変換するトリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(別名:L−トリプトファン−α−ケトイソカプロン酸アミノトランスフェラーゼおよびL−トリプトファン:フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ);L−アミノ酸、HOおよびOを2−オキソ酸、NH、Hへと変換するL−アミノ酸オキシダーゼ(別名:オフィオアミノ酸オキシダーゼおよびL−アミノ酸:酸素オキシドレダクターゼ(脱アミノ基));D−アミノ酸、HOおよびOを2−オキソ酸、NH、Hへと変換するD−アミノ酸オキシダーゼ(別名:オフィオアミノ酸オキシダーゼおよびD−アミノ酸:酸素オキシドレダクターゼ(脱アミノ基));L−トリプトファン、HOおよびOをインドール−3−ピルビン酸、NH、Hへと変換するおよびトリプトファンオキシダーゼ。これらのクラスにはチロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、D−アミノ酸(またはD−アラニン)アミノトランスフェラーゼ、および多重アミノトランスフェラーゼ活性をもつ広基質特異性(多基質)アミノトランスフェラーゼも含まれ、そのうちのいくつかトリプトファンと2−オキソ酸をインドール−3−ピルビン酸とアミノ酸に変換することができる。
【0059】
そうした活性をもつアミノトランスフェラーゼ・クラスの11メンバーはSEQ ID NO:11および12で示される新規なアミノトランスフェラーゼを含めて、実施例1で開示する。従って、本発明はSEQ ID NO:11および12でそれぞれ示される配列に対する相同性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、更には少なくとも99%である単離核酸およびアミノ酸配列を提供する。本発明には、SEQ ID NO:11および12で示される配列のうち、アミノトランスフェラーゼ活性を有するまたはアミノトランスフェラーゼ活性を保持する断片および融合もまた包摂される。そうした断片の非限定的な例はSEQ ID NO:11の少なくとも10、12、15、20、25、50、100、200、500または1000連続ヌクレオチド、またはSEQ ID NO:12の少なくとも6、10、15、20、25、50、75、100、200、300または350連続アミノ酸である。開示の配列(およびその変異形、断片、および融合)はベクターの一部でもよい。該ベクターは宿主細胞の形質転換に使用して、トリプトファンからインドール−3−ピルビン酸を、またいくつかの例ではMPおよび/またはモナチンを、生産しうるような、遺伝子組み換え細胞を生み出すことができる。
【0060】
L−アミノ酸オキシダーゼ(EC 1.4.3.2)は公知であり、次のような数種の源泉から単離することができる:Vipera lebetine(東方クサリヘビ)(spP81375)、Ophiophagus hannah(キングコブラ)(spP81383)、Agkistrodon rhodostoma(マレーマムシ)(spP81382)、Crotalus atrox(ニシタセイヤガラガラヘビ)(spP56742)、Burkholderia cepacia(セパシア菌)、Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)、Caulobacter cresentus(カウロバクター属細菌)、Chlamydomonas reinhardtii(コナミドリムシ)、Mus musculus(マウス)、Pseudomonas syringae(植物病原菌群)およびRhodococcus str.(ロドコッカス属細菌株)。加えて、トリプトファンオキシダーゼも文献で開示されており、また例えばヒトヨタケの一種(Coprinus sp. SF−1)、根こぶ病の白菜、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、および哺乳動物の肝臓などから単離することができる。トリプトファンをインドール−3−ピルビン酸へと変換することができるL−アミノ酸オキシダーゼの1つは、分子クローニング用の代替源としても、実施例3で取り上げる。多数のD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子が分子クローニング用としてデータベースで閲覧できる。
【0061】
トリプトファンデヒドロゲナーゼは公知であり、また例えばホウレンソウ、Pisum sativum(エンドウマメ)、Prosopis juliflora(ジュリフロラ)、マメ、メスキート、コムギ、トウモロコシ、トマト、タバコ、Chromobacterium violaceum(クロモバクテリウム・ビオラセウム)、およびLactobacilli(乳酸菌)などから単離することができる。数多くのD−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子の配列は周知である。
【0062】
図11−13に示すように、トリプトファンオキシダーゼなどのようなアミノ酸オキシダーゼがトリプトファンのインドール−3−ピルビン酸への変換に使用される場合には、過酸化水素の含量を減らすかまたは存在を一掃するためにカタラーゼを加えることができる。
【0063】
インドール−3−乳酸→インドール−3−ピルビン酸
インドール−3−乳酸をインドール−3−ピルビン酸へと変換する反応はEC 1.1.1.110、1.1.1.27、1.1.1.28、1.1.2.3、1.1.1.222、1.1.1.237、1.1.3.−または1.1.1.111クラスのポリペプチドなど種々のポリペプチドによって触媒することができる。EC 1.1.1.110クラスのポリペプチドはインドール乳酸デヒドロゲナーゼ(別名:インドール乳酸:NADオキシドレダクターゼ)を含む。EC 1.1.1.27、1.1.1.28および1.1.2.3クラスは乳酸(lactate)デヒドロゲナーゼ(別名:乳酸(lactic acid)デヒドロゲナーゼ、乳酸:NADオキシドレダクターゼ)を含む。EC 1.1.1.220クラスは(R)−4−ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ(別名:D−芳香族乳酸デヒドロゲナーゼ、R−芳香族乳酸デヒドロゲナーゼ、および(R)−3−(4−ヒドロキシフェニル)乳酸:NAD(P)2−オキシドレダクターゼ)を含み、またEC 1.1.1.237クラスは3−(4−ヒドロキシフェニルピルビン酸)レダクターゼ(別名:ドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼおよび4−ヒドロキシフェニル乳酸:NADオキシドレダクターゼ)を含む。EC 1.1.3.−クラスは乳酸オキシダーゼを含み、またEC 1.1.1.111クラスは(3−イミダゾール−5−イル)乳酸デヒドロゲナーゼ(別名:(S)−3−(イミダゾール−5−イル)乳酸:NAD(P)2−オキシドレダクターゼ)を含む。これらのクラスのいくつかのポリペプチドはおそらくインドール−3−乳酸からのインドール−3−ピルビン酸の生産を可能にしよう。この変換の例は実施例2で示す。
【0064】
インドール−3−乳酸からインドール−3−ピルビン酸への変換には化学反応を使用することもできる。そうした化学反応はいくつかの方法の使用によって実現しうる酸化ステップ例えばB2触媒(China Chemical Reporter,vol. 13,no. 28,p.18(1),2002)、希釈過マンガン酸塩および過塩素酸塩、または金属触媒の存在下の過酸化水素の使用による空気酸化を含む。
【0065】
インドール−3−ピルビン酸→2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸(MP)
【0066】
インドール−3−ピルビン酸のMPへの変換にはいくつかの公知ポリペプチドを使用することができる。そうしたポリペプチドのクラスはEC 4.1.3.−、4.1.3.16、4.1.3.17および4.1.2.−などである。これらのクラスは2つのカルボン酸基質の縮合を触媒するアルドラーゼなどのような炭素−炭素結合シンターゼ/リアーゼを含む。ポリペプチド・クラスEC 4.1.3.−はオキソ酸基質(インドール−3−ピルビン酸など)を求電子試薬として利用して炭素−炭素結合を形成するシンターゼ/リアーゼであり、EC 4.1.2.−はアルデヒド基質(ベンズアルデヒドなど)を求電子試薬として利用して炭素−炭素結合を形成するシンターゼ/リアーゼである。
【0067】
例えば欧州特許第EP 1045−029号明細書で開示されているポリペプチド(EC 4.1.3.16、4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸グリオキシル酸−リアーゼ、別名:4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ、2−オキソ−4−ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼまたはKHGアルドラーゼ)はグリオキシル酸およびピルビン酸を4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸へと変換し、またポリペプチド4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC 4.1.3.17、別名4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸−リアーゼまたはProAアルドラーゼ)は2個のケト酸例えば2個のピルビン酸を縮合して4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸とする。これらのリアーゼを利用する反応は本明細書で開示する。
【0068】
図1−2および11−13はこれらの反応の図解であり、そこでは3個の炭素を有する(C3)分子がインドール−3−ピルビン酸と結合される。EC 4.1.2.−および4.1.3.−クラスのメンバー特にPLP利用ポリペプチドは、セリン、システインおよびアラニン、またはそれらの誘導体などのようなアミノ酸であるC3分子を利用することができる。EC 4.1.2.− および4.1.3.−クラスの代表的メンバーによって触媒されるアルドール縮合は、この経路のC3分子がピルビン酸またはピルビン酸誘導体であることを要求する。しかし他化合物もC3炭素源として機能し、ピルビン酸へと変換されうる。アラニンは前記のものを含めた多数のPLP利用トランスアミナーゼのアミノ基転移作用を受けてピルビン酸を生成する。ピルビン酸とアンモニアはL−セリン、L−システイン、およびセリン/ステイン誘導体の、充分な脱離基例えばO−メルチ−L−セリン、O−ベンジル−L−セリン、S−メチルシステイン、S−ベンジルシステイン、S−アルキル−L−システイン、O−アシル−L−セリン、および3−クロロ−L−アラニンとの、ベータ脱離反応によって得られる。アスパラギン酸はPLP仲介ベータ−リアーゼ反応例えばトリプトファナーゼ(EC 4.1.99.1)および/またはβ−チロシナーゼ(EC 4.1.99.2、別名:チロシン−フェノールリアーゼ)によって触媒される反応でピルビン酸源として機能しうる。ベータリアーゼ反応の速度はMouratou et al.(J. Biol. Chem 274:1320−5,1999)により、また実施例8で、開示されているように、(EC 4.1.99.1−2)ポリペプチドに対する部位指定突然変異誘発の実行によって高めることができる。これらの修飾は該ポリペプチドによるジカルボン酸アミノ酸基質の受容を可能にする。乳酸もピルビン酸源として機能しうる。すなわち乳酸は乳酸デヒドロゲナーゼと酸化補因子の添加、または乳酸オキシダーゼと酸素の添加により、ピルビン酸へと酸化される。これらの反応例は以下で開示する。例えば図2および図11−13に示すように、ピルビン酸をC3分子として使用するときは、ProAアルドラーゼをインドール−3−ピルビン酸と接触させることができる。
【0069】
MPは実施例5で開示するアルドール縮合などのような化学反応を利用して生成させることもできる。
【0070】
MP→モナチン
MPのモナチンへの変換は次のうち1つまたは複数の酵素で触媒することができる:トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.27)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.19)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.99.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.2−4)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.20)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.28)、またはもっと一般的にはアミノトランスフェラーゼ・ファミリー(EC 2.6.1.−)のメンバー例えばアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.1)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.5)、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、またはD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.21)(図2)。このアミノトランスフェラーゼ・クラスの11メンバーは以下(実施例1)で、SEQ ID NO:11および12で示す新規なメンバーを含めて、開示するし、またアミノトランスフェラーゼおよびデヒドロゲナーゼ酵素の活性を明示する反応は実施例7で開示する。
【0071】
この反応は化学反応でも行うことができる。ケト酸(MP)のアミノ化はアンモニアとシアノ水素化ホウ素ナトリウムを使用する還元的アミノ化によって行うことができる。
【0072】
図11−13はMPのモナチンへの変換に、更にはインドール−3−ピルビン酸またはトリプトファンからのモナチンの収量増の実現に、使用することができる追加のポリペプチド類を示す。例えばアスパラギン酸をアミノ基供与体として使用する場合には、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを使用してアスパラギン酸をオキサロ酢酸へと変換することができる(図11)。オキサロ酢酸はデカルボキシラーゼ(オキサロ酢酸デカルボキシラーゼなど)によりピルビン酸および二酸化炭素への変換される(図11)。更に、リシンをアミノ基供与体として使用する場合には、リシンε−アミノトランスフェラーゼを使用してリシンをアリシンへと変換することができる(図12)。アリシンは自然に1−ピペリジン6−カルボン酸へと変換される(図12)。還元的アミノ化反応を触媒しうるポリペプチド(例えばグルタミン酸デヒドロゲナーゼ)を使用してMPをモナチンへと変換する場合には、NAD(P)Hをリサイクルしうるおよび/または揮発性生成物を生成しうるポリペプチド(図13)例えばギ酸デヒドロゲナーゼを使用することができる。
【0073】
生合成経路の設計における追加の検討事項
インドール−3−ピルビン酸、MPおよび/またはモナチンの生成に使用するポリペプチド次第で、生産細胞に補因子、基質および/または追加のポリペプチドをもたらし、以って生成物の形成を増進することができる。加えて、遺伝子組み換えによりインドール−3−ピルビン酸、MPおよび/またはモナチンの増産を図ることもできる。同様に、モナチンの生産に使用する宿主細胞を最適化することもできる。
【0074】
過酸化水素の除去
過酸化水素(H)は、万一生成すれば、生産細胞、ポリペプチドまたは生産される生成物(例えば中間体)に損傷を及ぼしかねない。前記のL−アミノ酸オキシダーゼはHを生成物として生成する。従って、L−アミノ酸オキシダーゼを使用する場合には、生成するHを除去するかまたはその濃度を低下させるかすれば、細胞または生成物に対する潜在的な損傷を少なくすることができる。
【0075】
細胞中のH濃度の引き下げにはカタラーゼを使用することができる(図11−13)。生産細胞は、HのHOとOへの分解を触媒するカタラーゼ(EC 1.11.1.6)をコードする遺伝子またはcDNA配列を発現することができる。例えばカタラーゼは生産細胞に導入したベクターから発現させることができる。使用可能カタラーゼの非限定的な例はtr|Q9EV50 (Staphylococcus xylosus)、tr|Q9KB8E (Bacillus halodurans)、tr|Q9URJ7 (Candida albicans)、tr|P77948(Streptomyces coelicolor)、tr|Q9RBJ5(Xanthomonas campestris)(SwissProt Accession Nos.)などである。L−アミノ酸オキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼまたはトリプトファンオキシダーゼを使用する生体触媒リアクターはカタラーゼポリペプチドをも含むことができる。
【0076】
ピリドキサル−5’−リン酸(PLP)アベイラビリティーの調節
図1に示すように、PLPは本明細書で開示の1つまたは複数の生合成ステップに使用しうる。PLPは総合的な反応効率への制限にならないよう、その濃度を補うことができる。
【0077】
ビタミンB(PLPの前駆体)の生合成経路はこれまでにE. coliで研究し尽くされており、すでに結晶化されているタンパク質もある(Laber et al.,FEBS Letters,449:45−8,1999)。関係遺伝子のうちの2つ(epdまたはgapBとserC)は他の代謝経路でも必要とされるが、3つの遺伝子(pdxA、pdxB、およびpdxJ)はピリドキサルリン酸の生合成に特有である。E. coli経路での出発物の1つは1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸(DXP)である。この前駆体の、一般的なC2またはC3中央代謝物からの合成は、ポリペプチド1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸シンターゼ(DXS)が触媒する。他の前駆体は四炭糖のD−エリトロース4−リン酸から形成されるトレオニン誘導体である。ホスホ−4−ヒドロキシル−L−トレオニン(HTP)への変換に必要とされる遺伝子はepd、pdxBおよびserCである。PLP形成の最終反応はpdxAとpdxJの遺伝子産物によって触媒される、DXPとHTPの間の複雑な分子間縮合および閉環反応である。
【0078】
PLPがモナチン生産のための発酵に際して制限的栄養物質となる場合には、生産宿主細胞における1つまたは複数の経路遺伝子の発現の増大を利用してモナチン収量を高めることができる。宿主生物は固有経路遺伝子の多数のコピーを含むことができるか、または該生物のゲノム中に外来経路遺伝子のコピーを組み込むことができる。加えて、サルベージ経路遺伝子の多数のコピーを宿主生物中にクローニングすることができる。
【0079】
あらゆる生物に保存されている一サルベージ経路は種々のビタミンB誘導体を活性PLP体に再生する。この経路に関与するポリペプチドはpdxKキナーゼ、pdxHオキシダーゼおよびpdxYキナーゼである。これらの遺伝子の1つまたは複数の過剰発現はPLPアベイラビリティーを高めることができる。
【0080】
ビタミンBの濃度は、宿主生物における固有生合成経路遺伝子の代謝調節の廃止または抑制によって高めることができる。細菌Flavobacterium sp. 238−7株ではPLPは前駆体トレオニン誘導体の生合成に関与するポリペプチドを抑制する。代謝調節を受けなくしたこの菌株はピリドキサル誘導体を過剰に産生し、また最高20mg/LのPLPを分泌することができる。モナチンを産生する宿主細胞の同様の遺伝子組み換えは、生合成経路遺伝子の過剰発現を伴わずにPLP産生の増大を可能にしよう。
【0081】
アンモニウムの利用
トリプトファナーゼ反応はアンモニア・アベイラビリティーの向上により、また脱水により、合成(インドールからのトリプトファンの生産)方向へと促進することができる。グルタミン酸デヒドロゲナーゼによって触媒されるものなどを含む還元的アミノ化反応もまた、過剰アンモニウムにより促進することができる。
【0082】
アンモニアは炭酸またはリン酸緩衝系では炭酸アンモニウムまたはリン酸アンモニウム塩として利用可能にしうる。アンモニアはピルビン酸アンモニウムまたはギ酸アンモニウムとして供給することもできる。あるいは、アンモニアを生成する反応例えばグルタミン酸デヒドロゲナーゼまたはトリプトファンデヒドロゲナーゼ反応と組み合わせた反応にすることでアンモニアを供給することも可能である。アンモニアは、フェノールまたはインドール、ピルビン酸およびNHへと加水分解するEC 4.1.99.−(チロシンまたはトリプトファン)の天然基質の添加によって、生成させることができる。これもまた、該酵素による特異的基質の加水分解を可能にすることにより通常の平衡量を上回る合成物の収量を実現可能にしよう。
【0083】
生成物と副生成物の除去
トリプトファンアミノトランスフェラーゼによるトリプトファンのインドール−3−ピルビン酸への変換はインドール−3−ピルビン酸の生産速度に悪影響を及ぼしかねない。というのは、この反応はグルタミン酸を生成し、補基質の2−オキソグルタル酸(α−ケトグルタル酸)を必要とするからである。グルタミン酸はアミノトランスフェラーゼの阻害を引き起こす可能性があり、またこの反応は大量の補基質を消費する可能性がある。また、高グルタミン酸濃度は後の分離工程に悪影響をもたらしかねない。
【0084】
ポリペプチドのグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)はグルタミン酸を2−オキソグルタル酸へと変換し、もってこの補基質が、トリプトファンアミノトランスフェラーゼによって触媒される反応で再利用されるようにする。GLDHはまた、好気性条件下で細胞用のエネルギー(ATP)を発生させるために使用される還元性の等価物(NADHまたはNAPPH)を生成する。GLDHによるグルタミン酸の利用は副生物の形成を減らす効果もある。加えて、この反応で発生するアンモニアは細胞用の窒素源として、または図1に示す最終ステップのための還元的アミノ化での基質として、役立ちうる。従って、GLDHポリペプチドを過剰発現する生産細胞を使用すれば、収量の増強と培地および/または分離工程のコストダウンを図ることができる。
【0085】
トリプトファン→モナチン経路では、適切な酵素クラスのアミノトランスフェラーゼを使用すれば、テップ3のアミノ基供与体(グルタミン酸またはアスパラギン酸など)はステップ1で必要とされるアミノ基受容体(2−オキソグルタル酸またはオキサロ酢酸)への再変換が可能である。この経路で2つの別々のトランスアミナーゼを、一方のトランスアミナーゼの基質が他方のトランスアミナーゼの活性を競合的に阻害しないように、使用するとこの経路の効率を高めることができる。
【0086】
開示の経路における反応の多くは可逆的であり、従って基質と生成物の間で平衡に達しうる。経路の収率はポリペプチドからの生成物の連続的除去により高めることができる。例えばパーミアーゼまたは他輸送タンパク質の使用による発酵液中へのモナチンの分泌、またはバイオリアクターのストリームからのモナチンの選択的結晶化と同時的な基質の再利用は反応収率を高めよう。
【0087】
追加の酵素的反応による、またはアミノ基供与体残基の置換による副生物の除去もまた反応収率を高める方法である。数例を実施例13で説明し、図11−13に示す。例えば副生物を、相変化(気化)により、または二酸化炭素などのような非反応性の最終生成物への自然変換により、逆方向の反応には利用できなくなるように、生成させることが可能である。
【0088】
基質プールの調節
インドールプールは、トリプトファンの生産を多くすることにより、および/またはインドール−3−ピルビン酸および/またはトリプトファンが関与する代謝経路を変化させることにより、調節することができる。例えばインドール−3−ピルビン酸からのインドール−3−酢酸の生産は、宿主細胞中のEC 4.1.1.74対応遺伝子を機能的に除去することにより、減らすまたは廃止することができる。トリプトファンからのインドールの生産は、宿主細胞中のEC 4.1.99.1対応遺伝子を機能的に除去することにより、減らすまたは廃止することができる。あるいは、過剰インドールをインビトロまたはインビボ法で基質として利用すると同時に、EC 4.1.99.1対応遺伝子の量を多くすることもできる(Kawasaki et al.,J. Ferm. and Bioeng.,82:604−6,1996)。更に、遺伝子組み換えによりD−エリトロース−4−リン酸およびコリスミ酸などのような中間体の濃度を高めるようにすることも可能である。
【0089】
ほとんどの生物ではトリプトファンの生産が調節を受ける。1つのメカニズムは経路内の特定酵素のフィードバック阻害によるものであり、それによればトリプトファン濃度が高まるとトリプトファン生産速度が低下する。従って、トリプトファン経由でモナチンを産生するように遺伝子組み換えした宿主細胞を使用するときは、トリプトファン濃度に対して非感受性の生物を使用することができる。例えば、種々のトリプトファンアナログによる増殖阻害に対して耐性のあるCatharanthus roseus株が、高濃度の5−メチルトリプトファンへの反復暴露にから選択されている(Schallenberg and Berlin,Z Naturforsch 34:541−5,1979)。得られた同株のトリプトファンシンターゼ活性は生成物阻害の影響を受けにくかったが、これは遺伝子の変異に起因するとみられる。同様にして、モナチン生産に使用される宿主細胞の最適化も可能である。
【0090】
トリプトファンの生産は、生成物阻害への感受性が低いポリペプチドを進化させるための定方向進化法の使用によって最適化することができる。スクリーニングは、例えば培地中にトリプトファンを含まないが高濃度の非代謝性トリプトファンアナログを含むプレートで行うことができる。米国特許第5,756,345号、第4,742,007号および第4,371,614号の各明細書は発酵生物のトリプトファン生産性を高めるための方法を開示している。トリプトファン生合成の最終ステップはインドールへのセリンの付加である。従ってセリンのアベイラビリティーを高めればトリプトファンの増産を図ることができる。
【0091】
発酵生物によるモナチンの生産量は該宿主生物によるピルビン酸の生産量をふやすことによって伸ばすことができる。ある種の酵母例えばTrichosporon cutaneum(Wang et al.,Lett. Appl. Microbiol. 35:338−42,2002)およびTorulopsis glabrata (Li et al.,Appl. Microbiol. Biotechnol. 57:451−9,2001)はピルビン酸を過剰生産するので、本明細書で開示の方法を実施するために使用できる。加えて、E. coli W1485lip2株の場合(Kawasaki et al.,J. Ferm. and Bioeng. 82:604−6,1996)のように、生物に対しピルビン酸の生産を促進させるための遺伝子組み換えを行うこともできる。
【0092】
キラリティーの制御
モナチンの味質プロファイルはその立体化学(キラリティー)を制御することにより変化させることができる。例えば種々の食品系には種々のモナチン異性体を種々の濃度でブレンドするのが好ましいかもしれない。キラリティーはpHとポリペプチドの組み合わせによって制御することができる。
【0093】
【化2】

【0094】
モナチン(上記の位置番号付き分子式を参照)のC−4位のラセミ化はα炭素の脱プロトン化と再プロトン化によって起こりうるが、脱/再プロトン化の引き金となるのはpHシフト、または溶液中のラセマーゼなどの酵素に結合したまたは遊離の補因子PLPとの反応である。微生物ではラセミ化を引き起こすに足るようなpHシフトは起こりそうもないが、PLPは豊富である。ポリペプチドによってキラリティーを制御する方法は、モナチン生産に利用する生合成経路次第である。
【0095】
図2に示す経路でモナチンが形成されるときは、次の点を考慮することができる。バイオリアクターによる反応では、C−2のキラリティーはインドール−3−ピルビン酸をMPへと変換する酵素によって決定することができる。多数の(例えばEC 4.1.2.−および4.1.3.−の)酵素がインドール−3−ピルビン酸をMPへと変換しうるので、所期の異性体を形成する酵素をその中から選ぶことができる。あるいは、インドール−3−ピルビン酸をMPへと変換する酵素のエナンチオ特異性を、定方向進化法の使用によって改変してもよいし、所期の反応を触媒するような抗体触媒を作り出してもよい。
【0096】
MPが(酵素的に、または化学的縮合により)生産され次第、トランスアミナーゼ例えば本明細書で開示するものなどを使用してアミノ基を立体異性的に付加することができる。D型、L型いずれかのアミノ酸のアミノトランスフェラーゼを使用するかにより、C−4のR型、S型いずれかの立体配置を生成することができる。ほとんどのアミノトランスフェラーゼはL−異性体に対して特異的であるが、ある種の植物にはD−トリプトファンアミノトランスフェラーゼが存在する(Kohiba and Mito,Proceedings of the 8th International Symposium on Vitamin B and Carbonyl Catalysis,Osaka,Japan 1990)。更に、D−アラニンアミノトランスファラーゼ(EC 2.6.1.21)、D−メチオニン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.41)、および(R)−3−アミノ−2−メチルプロパン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.61)と(S)−3−アミノ−2−メチルプロパン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.22)の両方が同定されている。ある種のアミノトランスフェラーゼはC−2炭素に特定立体配置を有する基質だけをこの反応用に受容するであろう。従って、たとえMPへの変換が立体特異的でないとしても、最終生成物の立体化学は適切なトランスアミナーゼの選択により制御することができる。これらの反応は可逆的であるため、未反応MP(非所期異性体)はその成分へと再生し、MPのラセミ体を再形成させることができる。
【0097】
基質の活性化
本明細書で開示される反応にはホスホエノールピルビン酸(PEP)などのようなリン酸化基質を使用することができる。リン酸化基質はエネルギー的により有利であり、従って反応速度および/または収量の向上に使用することができる。アルドール縮合では、リン酸基の付加は該求核基質のエノール型互変異性体を安定させ、その反応性を高める。他の反応では、リン酸化基質はより優れた脱離基をもたらすことができる。同様にして種々の基質はCoA誘導体またはピロリン酸誘導体への変換によって活性化することもできる。
【0098】
[甘味料組成物へのモナチンの使用]
重量ベースでは、モナチンのS,S立体異性体はショ糖の約50〜100倍も甘く、R,R異性体はショ糖の約2000〜2400倍も甘い。前述のように、モナチンの甘味は経験豊かな官能評価員を使用して、試験甘味料溶液を一連の標準溶液のうちの1つとマッチングして甘味を求めるという甘味比較法によって計算する。これらの溶液は例えば0.16%(v/w)クエン酸と0.02%(v/w)クエン酸ナトリウムとを含むバッファー(〜pH 3.0)を使用して調製する。甘味は用量反応曲線の勾配すなわち%ショ糖/%モナチンとして計算する。例えば図15(R,R/S,Sモナチン用量反応曲線)および図14(R,Rモナチン用量反応曲線)を参照。ショ糖の甘味と比較した場合の前述のモナチンの甘味は8%ショ糖等価濃度(SEV)での勾配の測定によって求めている。
【0099】
モナチンは水溶液に溶かして消費に適した濃度としやすい。ある種のマトリックス中では、または他甘味料とのブレンディングでは、モナチン立体異性体の様々なブレンドのほうが質的に優るかもしれない。モナチンの他甘味料とのブレンドは、甘味および/または甘味プロファイルを最大化し、またコストを最小化するために使用してもよい。モナチンは、ショ糖に似た時間的プロファイルを生み出すために、または他の利益のために、他甘味料および/または他成分と混合して使用してもよい。
【0100】
例えばモナチンは他の栄養性および非栄養性甘味料とブレンドして、特定の風味プロファイルまたはカロリー目標を達成するようにしてもよい。従って、甘味料組成物はモナチンと以下の甘味料1種または複数種との混合物を含んでよい:(1)糖アルコール(エリトリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルト、低血糖性シロップなど);(2)他の高甘味度甘味料(アスパルテーム、スクラロース、アセサルファム−K、ステビオシド、チクロ、ネオテーム、タウマチン、アリテーム、ジヒドロカルコン、モネリン、グリチルリチン、モグロシド、フィロズルチン、マビンリン、ブラゼイン、サークリン、ペンタジンなど);および(3)栄養性甘味料(ショ糖、タガトース、転化糖、果糖、コーンシロップ、高果糖コーンシロップ(HFCS)、ブドウ糖/デキストロース、トレハロース、イソマルツロースなど)。モナチンはそうしたブレンドに味覚修飾物質として使用して、後味の抑制、他の風味(レモン風味など)の増強、または時間的風味プロファイルの改善を図るようにしてもよい。データでは、モナチンは(欧州で使用されている)チクロとの量的相乗効果があるが、アスパルテーム、サッカリン、アセサルファム−K、スクラロース、または糖質甘味料とは有意の量的相乗効果は指摘されなかった。モナチンは糖質ではないので、糖質系甘味料に部分的または全面的に代用しうる。
【0101】
モナチンは乾燥状態で安定であり、単味で、または糖質と混合したときに、所期の味質プロファイルを示す。不可逆的に分解するようには見えず、むしろ低pH(の水性バッファー中)でラクトンおよび/またはラクタムを形成し、平衡に達する。モナチンは溶液中でゆっくりと時間をかけて、4位でラセミ化しうるが、これは一般に高pHで起こる。一般にモナチンの安定性はアスパルテーム(Equal(登録商標))に匹敵するかまたは優るし、またモナチンの味質プロファイルはアスパルテーム(Equal(登録商標))、アリテームおよびスクラロース(Splenda(登録商標))などのような他の高級甘味料に匹敵する。モナチンにはサッカリンやステビオシドなどのような他の一部の高甘味度甘味料に付随する好ましくない後味もない。
【0102】
モナチン甘味料の調製品は卓上砂糖代替品として使用してもよい。一般に、卓上砂糖代替品を製造するときは、モナチンを希釈し計量し易くするための増量剤および/またはキャリアーをも使用する。
【0103】
一実施態様では、グラニュー糖小さじ2杯分(〜8グラム)に匹敵する甘味をもたらすよう調合した使いきり個包装を調製してもよい。S,Sの甘味はショ糖の50−200倍であるため、グラニュー糖8グラムに匹敵する甘味をもたらすS,Sモナチンの量は40−160mgとなる。従って一実施態様では、±25%の甘味最適化を見込んで、使いきり個包装タイプのモナチン調製品1グラムは約40−200mgのS,Sモナチンを含有してよい。
【0104】
同様にして、R,Rの甘味はショ糖の2000−2400倍であるため、グラニュー糖8グラムに匹敵する甘味をもたらすR,Rモナチンの量は約3.3−5.0mgとなる。別の実施態様では、個包装タイプのモナチン調製品は約40−200mgのS,Sモナチン、3.3−5.0mgのR,Rモナチン、または全量gあたり同量以下の両異性体の混合物を含有し、以ってグラニュー糖小さじ2杯分に匹敵する甘味をもたらすようしてもよい。
【0105】
個包装タイプの卓上甘味料はしばしば全量が1グラムであり、高甘味度甘味料と1つまたは複数の増量剤またはキャリアーとの混合物を含む。該調製品の調製には多数の増量剤または増量剤の混合物を使用してもよい。例えば実施態様によってはモナチンをマルトデキストリンおよび/またはデキストロースと共に噴霧乾燥することができる。例えばデキストロースは密度を大きくしながらも、個包装1個(〜1g)分の甘味料を1回分当たり端数切捨てでゼロカロリーにする効果がある。
【0106】
一実施態様では、個包装(全1g)用の含モナチン調製品は次の成分を含有する:
デキストロース(栄養性)0−99.7wt%
マルトデキストリン 0−99.7wt%
R,Rモナチン3.3−5.0mg、S,Sモナチン40−200mg、または同量以下の両異性体の混合物。
【0107】
他の実施態様では、即使用可能タイプの卓上甘味料調製品がグラニュー糖(ショ糖)に匹敵する甘味および分量となるように設計される。そうした調製品はスプーン単位でグラニュー糖の1:1代替品として使えるので、ベーキングレシピに特に有用である。即使用可能タイプの1:1代替調製品は個包装タイプ(〜1g)の調製品と比べて一般に増量剤および/またはキャリアーなどのような希釈剤の含量が多く、小さじ、大さじ、カップなどによる家庭での通常の計量になじみやすい。これらの調製品は一般に個包装タイプよりも低密度、低粒状である。従って、即使用可能タイプの1:1代替調製品は密度を下げ、砂糖の1:1代替品として使えるようにするための異なる成分を含んでもよい。
【0108】
即使用可能タイプの1:1代替調製品の調製では、例えばデキストロースは高密度なので、マルトデキストリンだけを使用したいという場合もあろう。マルトデキストリンは低密度なので、それを含む甘味料調製品を砂糖と等量使用しても同(高)レベルのカロリーが蓄積することはない。このアプローチは、ベーキングの場合のようにモナチン甘味料をさじ単位またはカップ単位で使用するときには、特に有用である。
【0109】
S,Sの甘味はショ糖の50−200倍であるため、5−20mgのS,Sモナチンはグラニュー糖1グラムに匹敵する甘味をもたらす。従って一実施態様では、±25%の甘味最適化を見込んで、即使用可能タイプの1:1代替調製品は全量グラムあたり約5−25mgのS,Sモナチンを含有してよい。同様にして、R,Rの甘味はショ糖の2000−2400倍であるため、0.4−0.5mgのR,Rモナチンは砂糖1グラムに匹敵する甘味をもたらす。従って、別の実施態様では、±25%の甘味最適化を見込んで、即使用可能タイプの1:1代替調製品は約0.4−0.625mgのR,Rモナチンを含有してよい。別の実施態様では、即使用可能タイプの1:1代替調製品は約5−25mgのS,Sモナチン、0.4−0.625mgのR,Rモナチン、または全量gあたり同量以下の両異性体の混合物を含有し、以ってグラニュー糖に匹敵する甘味をもたらすようしてもよい。
【0110】
別の実施態様では、即使用可能タイプの甘味料調製品は使いきり量半グラムあたり約0.2−13mgのモナチンを、約500mgのマルトデキストリンの表面上に噴霧乾燥させて含む。
【0111】
他の実施態様では、例えば飲食店向けの立方体タイプのモナチン組成物を製造することができる。該立方体は重量が約8グラムであり、サイズは標準的な角砂糖と同じ2.2cm×2.2cm×1cmである。これらの立方体タイプの調製品は即使用可能タイプの調製品に関する前述の含量と同様のモナチンを含有し、その甘味は標準的な角砂糖のそれに匹敵する。あるいは1/2サイズの立方体(4グラム、1.1cm×2.2cm×1cm)としてもよい。これらの調製品は標準的な角砂糖のそれに匹敵する甘味を呈するように、(従って重量ベースではショ糖の約2倍の甘味を呈するように)調製してもよい。
【0112】
個包装タイプまたは即使用可能タイプの調製品などのような卓上モナチン調製品は更に他の増量剤またはキャリアーを含んでもよい。例えば該調製品はイヌリン、アラビノガラクタン、加水分解グアールガム、ポリデキストロース、微結晶セルロース、粉末セルロース(solka floc)、でんぷん、加工でんぷん、レジスタントスターチ、耐性マルトデキストリンなどのような食物繊維を1つまたは複数含んでもよい。多くの食物繊維は水易溶性、低粘性、無味である。食物繊維は他の増量剤よりも低カロリーなので、増量剤として特に有用である。
【0113】
例えばイヌリンはグラムあたり1.3カロリーにしかならないが、デキストロースはグラムあたり4カロリーになる。脱糖イヌリンは<2%の単糖および二糖を含むが、グラムあたり1.1カロリーにしかならないので、特に好適である。イヌリンなどのようなある種の食物繊維は、カップ単位で砂糖の1:1代替品として使用されるのが普通であるマルトデキストリンよりも、調製品に対し、よりグラニュー糖様の外観を付与する可能性を秘めている。食物繊維はまた食物繊維の強化、消化管の健康改善、およびカルシウム吸収の促進といった追加の効用ももたらす。食物繊維またはレジスタントスターチ誘導体などのような非消化性糖質の使用は血糖調節に不安のある人々(糖尿病患者など)には糖分の減少にもなる。例えば低カロリー、低血糖および低インスリン分泌性のキャリアーまたは希釈剤としてレジスタントスターチ、耐性マルトデキストリンおよびイヌリンを使用してもよい。
【0114】
同様にして、モナチン調製品はエリトリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトールなどのような糖アルコールを1つまたは複数含んでもよい。一実施態様ではエリトリトールを他のキャリアーまたは増量剤の代わりに使用してもよい。エリトリトールにはデキストロースまたはマルトデキストリンをしのぐ長所がある。例えばエリトリトールはデキストロースまたはマルトデキストリンと比べるとゼロ・カロリーに近く、そのグラムあたりカロリーは0−0.2であるが、デキストロース、マルトデキストリンのグラムあたりカロリーはそれぞれ4、2.8−3.2である。ALTERNATIVE SWEETNERS,3rd Ed.,edited by Lyn O’Brien Nabors,Chapter 13 “Erythritol” by M.E. Embuscado and S.K. Patil (Marcel Dekker,Inc,New York,2001)を参照。また、マルトデキストリンは噴霧乾燥するとグラニュー糖というよりも粉のようにみえるが、エリトルトールの場合は単結晶となるので砂糖に似てみえる。従って、エリトリトールの表面に直接モナチンを付加することができる。
【0115】
加えて、モナチン調製品はオリゴ糖類例えばフラクトオリゴ糖やマルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラクトオリゴ糖などを含んでもよい。該調製品はまた糖類例えばショ糖や転化糖、トレハロース、異性化糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、D−キシロース、異性化乳糖など含んでもよい。錠剤型の調製品を製造するときは、増量、賦形を目的に乳糖を加えることができる。
【0116】
モナチンと増量剤との混合調製品は、乾式混合法、同時噴霧乾燥法、同時凍結乾燥法、造粒法、ブレンド法、同時乾燥法、押出成形法など任意の手段で生産してよい。
【0117】
該混合調製品にはタルタルクリームなどのような香味料および酸味料を添加して風味、安定性および/またはベーキング性能の改善を図るようにしてもよい。更にSucramask(登録商標)などのような風味増進剤または安定剤を添加してもよい。
【0118】
該調製品は二酸化ケイ素(シリカ)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸カリウム、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、タルク、マンニトールなどのような固結防止剤または易流動剤を含んでもよい。
【0119】
実施態様によっては、モナチンはベーキングに使用する。実施態様しだいで、ベーキングレシピに蜂蜜または糖蜜を加えて褐変やテクスチャーの改善を図る。例えばレシピによっては大さじ1杯の糖蜜を加えて砂糖の通常の褐変による着色を模すようにしてもよい。
【0120】
別の実施態様では、現在キャンディーや他の無糖食品に使用されているポリオールの多くに代ってモナチンが使用される。これらのポリオールは便をゆるくする作用があり、またエリトリトールの場合には体を冷やす作用もある。エリトリトールの場合、便をゆるくする作用は他のポリオールよりもずっと小さいが、体を冷やす作用は他のポリオール並みである。エリトリトールはマルチトールなどのような従来型ポリオールに比べて低カロリー、低血糖インデックスである。モナチンではカロリー、血糖インデックスが更に低くなるが、発がん性の有意の上昇を伴うことはない。しかし、ポリオールまたは他の高甘味度甘味料の代用とするときは、製品の分量と口当たりの両方を維持するために増量剤が必要となる。最も一般的な増量剤はイヌリン、マルトデキストリン、ポリデキストロース、ソルビトールなどである。イヌリンには食事性カルシウムの体内吸収を高める働きもある。レジスタントスターチと緩消化性でんぷんもまた高甘味度甘味料の増量剤または希釈剤として使用することができる。モナチンは多数の甘味料、糖質および増量剤と組み合わせて使用することができる。
【0121】
卓上モナチンブレンドは他甘味料と比較して賞味期限が長く、耐熱・耐酸性が大きく、味質に優れ、マーケティングに有利であると見込まれる。
【実施例】
【0122】
[実施例1]
トリプトファンアミノトランスフェラーゼのクローニングと発現
この実施例では、トリプトファンのインドール−3−ピルビン酸への変換に使用しうるトリプトファンアミノトランスフェラーゼのクローニングに使用した方法を開示する。
【0123】
実験の概要
アミノトランスフェラーゼをコードする11の遺伝子をE. coli中にクローニングした。これらの遺伝子は次のとおりであった:Bacillus subtilis D−アラニンアミノトランスフェラーゼ(dat、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれGenbank Accession No. Y14082.1,bp 28622−29470、Genbank Accession No. NP_388848.1)、Sinorhizobium meliloti(別名Rhizobium meliloti)チロシンアミノトランスフェラーゼ(tatA、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NOS:1および2)、Rhodobacter sphaeroides 2.4.1株チロシンアミノトランスフェラーゼ(tatA、相同性により断定、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NOS:3および4)、R. sphaeroides 35053チロシンアミノトランスフェラーゼ(相同性により断定、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NOS:5および6)、Leishmania major広基質特異性アミノトランスフェラーゼ(bsat、L. mexicana由来のペプチド断片との相同性により断定、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NOS:7および8)、Bacillus subtilis 芳香族アミノトランスフェラーゼ(araT、相同性により断定、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NOS:9および10)、Lactobacillus amylovorus芳香族アミノトランスフェラーゼ(araT、相同性により断定、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NOS:11および12)、R. sphaeroides 35053多重基質アミノトランスフェラーゼ(相同性により断定、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NOS:13および14)、Rhodobacter sphaeroides 2.4.1株多基質アミノトランスフェラーゼ(msa、相同性により断定、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれGenbank Accession No. AAAE01000093.1,bp 14743−16155およびGenbank Accession No. ZP00005082.1)、E. coliアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspC、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれGenbank Accession No. AE000195.1,bp 2755−1565およびGenbank Accession No. AAC74014.1)、およびE. coliチロシンアミノトランスフェラーゼ(tyrB、核酸配列とアミノ酸配列はそれぞれSEQ ID NOS:31および32)。
【0124】
これらの遺伝子をクローニングし、発現させ、トリプトファンのインドール−3−ピルビン酸への変換活性を、市販酵素と並行的に試験した。11遺伝子はいずれも活性をもっていた。
【0125】
所期の活性をもつポリペプチドを含みうる菌株の同定
NCBI(National Center for Biotechnology Information)データベースにはトリプトファンアミノトランスフェラーゼと命名されている遺伝子はなかった。しかし、この酵素活性をもつ生物はすでに同定されている。L−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性は次の源泉に由来する細胞抽出物または精製タンパク質で測定した:Festuca octoflora由来の根圏微生物分離株、エンドウマメのミトコンドリアおよびサイトゾル、ヒマワリのクラウンゴール細胞、Rhizobium leguminosarum biovar trifoli、Erwinia herbicola pv gypsophilae、Pseudomonas syringae pv. savastanoi、Agrobacterium tumefaciens、Azospirillum lipferum & brasilense、Enterobacter cloacae、Enterobacter agglomerans、Bradyrhizobium elkanii、Candida maltosa、Azotobacter vinelandii、ラット脳、ラット肝、Sinorhizobium meliloti、Pseudomonas fluorescens CHA0、Lactococcus lactis、Lactobacillus casei、Lactobacillus helveticus、コムギ苗、オオムギ、Phaseolus aureus (マング・ビーン)、Saccharomyces uvarum (carlsbergensis)、Leishmania sp.、トウモロコシ、トマト芽、エンドウマメ植物体、タバコ、ブタ、Clostridium sporogenes、およびStreptomyces griseus。
【0126】
[実施例2]
インドール−3−乳酸のインドール−3−ピルビン酸への変換
図1および3に示すように、インドール−3−乳酸を使用してインドール−3−ピルビン酸を生産することができる。乳酸とピルビン酸の間の変換は可逆反応であり、インドール−3−ピルビン酸とインドール−3−乳酸の間の変換も同様である。一般にインドール乳酸の酸化が後に続いたが、これはインドール−3−ピルビン酸に由来する340nmでの大きなバックグラウンドに起因した。
【0127】
標準アッセイ混合液は0.1mL 中に100mMリン酸カリウム、pH 8.0、0.3mM NAD、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(Sigma−L2395,St. Louis,MO)7単位、および2mM基質を含んだ。アッセイはUV−透過性マイクロタイタープレートにより2連で、Molecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダーを使用して行った。ポリペプチドとバッファーを混ぜて、インドール−3−乳酸とNADを入れたウェルにピペットで分注し、ざっと混合した後、90秒間隔で各ウェルの340nmでの吸光度を読み取った。反応液は5分間、25℃に保持した。NADからNADHが生産されると340nmでの吸光度が上昇する。別個に陰性対照アッセイをNAD無しおよび基質無しで行った。Leuconostoc mesenteroides由来D−LDH (Sigmaカタログ番号L2395)はBacillus stearothermophilus由来L−LDH (Sigmaカタログ番号L5275)よりもインドール誘導体基質に対し、大きな活性を示したようである。
【0128】
同様の方法をD−LDHポリペプチドの天然基質であるD−乳酸とNADまたはNADHとピルビン酸でも用いた。ピルビン酸還元のVmaxは乳酸酸化のVmaxの100−1000倍であった。インドール−3−乳酸のD−LDHによる酸化反応のVmaxは乳酸のそれの約5分の1であった。インドール−3−ピルビン酸の存在量も、0.5mM EDTAと0.5mMヒ酸ナトリウムとを含有する50mMホウ酸ナトリウムバッファーを使用して327(エノール−ホウ酸塩誘導体)での吸光度の変化を追跡することにより、測定した。L−型、D−型の両LDHポリペプチドに関して、陰性対照との比較により、小幅ながらも反復的な吸光度変化が観測された。
【0129】
また、インドール−3−乳酸からインドール−3−ピルビン酸を生産するために、広特異性乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27、EC 1.1.1.28および/またはEC 1.1.2.3に関連する活性をもつ酵素)をクローニングし、使用することもできる。広特異性乳酸デヒドロゲナーゼの源泉にはE. coli、Neisseria gonorrhoeae、およびLactobacillus plantarumなどがある。
【0130】
またはインドール−3−乳酸を次の細胞抽出物と接触させてインドール−3−ピルビン酸を生産してもよい:インドール乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.110)を含むClostridium sporogenes由来の細胞抽出物;またはインドール−3−ピルビン酸に対する活性をもつことが知られているp−ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.222)を含むTrypanosoma cruzi epimastigotes細胞抽出物;またはイミダゾール−5−イル乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.111)を含むPseudomonas acidovoransまたはE. coli細胞抽出物;またはヒドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼ(EC 1.1.1.237)を含むColeus blumei;またはD−芳香族乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.222)を含むCandida maltosa。そうした活性を開示している参考資料の例はNowicki et al.(FEMS Microbiol Lett 71:119−24,1992)、Jean and DeMoss(Canadian J. Microbiol. 14,1964)、Coote and Hassall(Biochem. J. 111:237−9,1969)、Cortese et al. (C.R. Seances Soc. Biol. Fil.162 390−5,1968)、Petersen and Alfermann (Z. Naturforsch,C;Biosci. 43 501−4,1988)、およびBhatnagar et al. (J. Gen Microbiol 135:353−60,1989)などである。加えて、インドール−3−乳酸のインドール−3−ピルビン酸への酸化には乳酸オキシダーゼ例えばPseudomonas sp.に由来するもの(Gu et al. J. Mol. Catalysis B:Enzymatic:18:299−305,2002)などを使用することもできる。
【0131】
[実施例3]
L−アミノ酸オキシダーゼの使用によるL−トリプトファンのインドール−3−ピルビン酸への変換
【0132】
この実施例では、実施例1で開示したトリプトファンアミノトランスフェラーゼの代りにオキシダーゼ(EC 1.4.3.2)を使用してL−トリプトファンをインドール−3−ピルビン酸へと変換する方法を開示する。L−アミノ酸オキシダーゼはCrotalus durissusから精製した(Sigma,St. Louis,MO、カタログ番号A−2805)。分子クローニング用L−アミノ酸オキシダーゼのアクセッション番号はCAD21325.1,AAL14831,NP_490275,PAB78253,A38314,CAB71136,JE0266,T08202,S48644,CAC00499,P56742,P81383,O93364,P81382,P81375,S62692,P23623,AAD45200,AAC32267,CAA88452,AP003600およびZ48565などである。
【0133】
反応は全容積1mLのマイクロ遠心チューブ中で、37℃で振とうしながら10分間インキュベートするという形で行った。反応混合液は5mM L−トリプトファン、100mMリン酸ナトリウムバッファーpH 6.6、0.5mMヒ酸ナトリウム、0.5mM EDTA、25mM四ホウ酸ナトリウム、カタラーゼ0.016mg (83U,Sigma C−3515)、FAD(Sigma)0.008mg、およびL−アミノ酸0.005−0.125単位を含んだ。陰性対照はトリプトファンを除く全成分を含み、またブランクはオキシダーゼを除く全成分を含んだ。カタラーゼは酸化的脱アミノ反応で形成される過酸化水素を除去するために使用した。四ホウ酸ナトリウムとヒ酸ナトリウムは、327nmで最大吸光度を示すエノール−ホウ酸塩体のインドール−3−ピルビン酸を安定させるために使用した。インドール−3−ピルビン酸の標準品を、反応混合液を使用して0.1−1mMの濃度で調製した。
【0134】
購買L−アミノ酸オキシダーゼは非活性が540μg−インドール−3−ピルビン酸形成量/分/mg−タンパク質であった。これはトリプトファンアミノトランスフェラーゼ酵素の比活性とほぼ同じである。
【0135】
[実施例4]
アルドラーゼによるインドール−3−ピルビン酸の2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタミン酸への変換
【0136】
この実施例では、アルドラーゼ(リアーゼ)を使用してインドール−3−ピルビン酸をMPへと変換するための方法を開示する(図2)。アルドール縮合はアルデヒドまたはケトンのβ炭素と別のアルデヒドまたはケトンのカルボニル炭素との間に炭素−炭素結合を形成する反応である。第1基質のカルボニル基に隣接する炭素上にカルボアニオンが形成され、第2基質のカルボニル炭素(求電子性炭素)を攻撃する求核試薬として働く。最も一般的には、求電子性基質はアルデヒドであるため、ほとんどのアルドラーゼはEC. 4.1.2.−に分類される。実にしばしば求電子性基質はピルビン酸である。アルドラーゼが2ケト酸間または2アルデヒド間の縮合反応を触媒するのはあまり一般的ではない。
【0137】
しかし、2カルボン酸間の縮合反応を触媒するアルドラーゼはすでに同定されている。例えば欧州特許第1045−029号明細書はPseudomonas菌培養(EC 4.1.3..16)の使用によるグリオキシル酸とピルビン酸からのL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の生産を開示している。更に、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸リアーゼ、EC 4.1.3.17)は2ケト酸間の縮合反応を触媒することができる。そこで類似のアルドラーゼポリペプチドを使用して、インドール−3−ピルビン酸とピルピン酸の縮合反応を触媒させるようにした。
【0138】
クローニング
4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸リアーゼ(ProAアルドラーゼ、EC 4.1.3.17)および4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸グリオキシル酸リアーゼ(KHGアルドラーゼ、EC 4.1.3.16)は図2のアルドラーゼ反応と非常によく似た反応を触媒する。プライマーはオーバーハングをpET30 Xa/LICベクター(Novagen,Madison,WI)用に適合させて設計した。
【0139】
proA遺伝子産物の活性試験結果
C. testosteroni proA、S. meliloti SMc00502両遺伝子コンストラクトはIPTGで誘導すると高発現レベルとなった。これらの組み換えタンパク質は全タンパク質および細胞抽出物サンプルのSDS−PAGE分析結果によれば可溶性であった。C. testosteroni遺伝子産物は純度>95%まで精製した。S. meliloti遺伝子産物はHis−Bindカートリッジ使用のアフィニティー精製後の収率がきわめて低かったので、酵素活性試験には細胞抽出物を使用した。
【0140】
どちらの組み換えアルドラーゼもインドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸からMPの形成を触媒した。酵素活性には2価マグネシウムとリン酸カリウムの両方の存在が必要であった。インドール−3−ピルビン酸、ピルビン酸またはリン酸カリウムの不存在下では生成物は出現しなかった。酵素の不存在下でも少量の(一般に酵素の存在下と比べて1桁少ない)生成物が形成された。
【0141】
逆相C18カラムからの溶出画分のピークはインドール−3−ピルビン酸標準品のやや後に現れた。このピークの質量スペクトルは衝突誘起解離で生じた292.1の親イオン([M+H]+)であることを示しており、該親イオンは生成物のMPで見込まれた。質量スペクトル中に存在する主要な娘イオンはm/z=158(1H−インドール−3−カルバルデヒドのカルボニウムイオン)、168(3−ブタ−1,3−ジエニル−1H−インドールのカルボニウムイオン)、274(292−HO)、256(292−2HO)、238(292−3 HO)、228(292−CH)および204(ピルビン酸の消失)などであった。生成物はトリプトファンなどのようなインドール基をもつ他化合物のUVスペクトルをも示し、該スペクトルはλmaxが279−280nmに、またショルダーが290nm付近にあった。
【0142】
C. testosteroniアルドラーゼによるMP生産量は反応温度の室温から37℃への上昇、基質量およびマグネシウム量の増加に伴って増加した。酵素の合成活性はpHの上昇に伴い低下し、最高収率はpH 7で観測された。トリプトファン標準品に基づくと、精製タンパク質20μgを使用する標準試験でのMP生産量は反応液mLあたり約10−40μgであった。
【0143】
S. melilotiおよびC. testosteroni ProAアルドラーゼをコードする配列は前述の他遺伝子との相同性が高いため、組み換え遺伝子産物はどれもこの反応を触媒しうるものと見込まれる。更に、アルドラーゼは(C. testosteroni付番方式による)位置59および87にトレオニン(T)を、119にアルギニン(R)を、120にアスパラギン酸(D)を、また31と71にヒスチジン(H)をそれぞれ有するときは、類似の活性を示すものと見込まれる。
【0144】
khg遺伝子産物による活性試験結果
B. subtilis、E. coli両khg遺伝子コンストラクトはIPTGで誘導するとタンパク質を高レベルで発現したが、S. meliloti のkhgは発現レベルが低かった。これらの組み換えタンパク質は全タンパク質および細胞抽出物サンプルのSDS−PAGE分析結果によれば可溶性であった。B. subtilis、E. coli両khg遺伝子産物は純度>95%まで精製した。S. meliloti遺伝子産物はHis−Bindカートリッジ使用のアフィニティー精製後の収率がそれほど高くなかった。
【0145】
この酵素の活性にはマグネシウムとリン酸塩が必要であるとの証拠は存在しない。しかし、文献ではリン酸ナトリウムバッファー中での試験の実行が報告されており、それによれば該酵素は二官能性であり、また2−ケト−3−デオキシ−6−ホスホグルコン酸(KDPG)などのようなリン酸化基質に作用する。酵素活性試験は前述の要領で行ったが、場合によりリン酸塩を割愛した。その結果は、組み換えKHGアルドラーゼはMPを生産するものの、ProAアルドラーゼほどの活性はないことを示している。KHGによるMP生産量はマグネシウムおよびリン酸塩による生産量とほぼ等しいという場合もあった。リン酸塩はKHG活性を高めなかった模様である。Bacillus酵素は最も活性が高く、SRM(実施例10を参照)による測定では、マグネシウムまたはリン酸塩単体の場合よりも約20−25%高活性であった。活性が最も小さいのはSinorhizobium酵素であったが、それは発現時の折りたたみおよび溶解度の問題と関連付けることができる。3酵素はいずれも活性部位アミノ酸残基としてグルタミン酸を(B. subtilis付番方式で位置43に)有し、またピルビン酸とのシッフ塩基の形成に必要なリシンを(位置130に)有する。しかし、B. subtilis酵素は位置47に活性部位アミノ酸残基としてアルギニンではなくトレオニンを含む。このB. subtilis KHGは活性部位にトレオニンをもつ他のS. melilotiおよびE. coli酵素よりも小さく、また両酵素とは異なるクラスターに属する模様である。B. subtilis酵素の高活性は活性部位の差異に起因するかもしない。
【0146】
アルドラーゼ活性の向上
抗体触媒は天然アドラーゼと同程度に効率的であり、広範囲の基質を受容するし、また図2に示すような反応の触媒に使用することができる。
【0147】
アルドラーゼは定方向進化法によって、例えばDNAシャッフリングおよびエラープローンPCR法によってリン酸塩の必要性をなくしたりエナンチオ選択性を逆転させたりする方向へ進化させられた(前述のKHGとの相同性が高い)KDPGアルドラーゼ関する前述の要領で、改変することができる。KDPGアルドラーゼは供与体基質(この場合はピルビン酸)に対する特異性が高いのに、受容体基質(すなわちインドール−3−ピルビン酸)との関係は比較的柔軟であるため、生化学反応に有用である(Koeller & Wong,Nature 409:232−9,2001)。KHGアルドラーゼはピルビン酸の多数のカルボン酸との縮合反応に対する活性を有する。哺乳動物のKHGアルドラーゼは細菌のKHGアルドラーゼと比べると、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸に対するより高い活性および4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の両立体異性体の受容を含めて、特異性が広いと考えられる。源泉細菌はR異性体に対し10倍の選好性があるように見受けられる。ゲノムデータベースでは100近いKHGホモログが閲覧可能であり、その活性はPseudomonas、Paracoccus、Providencia、Sinorhizobium、Morganella、E. coli、および哺乳動物組織で実証済みである。これらの酵素はモナチン生産に望まれるエナンチオ特異性を調整するための出発点として使用することができる。
【0148】
ピルビン酸および別の(ケト酸であるおよび/またはインドール基などのような大きな疎水基をもつ)基質を利用するアルドラーゼは該ポリペプチドの特異性、反応速度、選択性を調整する方向へと「進化」させることができる。これらの酵素の比限定的な例は、本明細書で示したKHGおよびProAアルドラーゼ以外では、次のとおりである:KDPGアルドラーゼおよび関連ポリペプチド(KDPH);Nocardioides st由来のトランスカルボキシベンザルピルビン酸ヒドラターゼ−アルドラーゼ;ピルビン酸と2−カルボキシベンズアルデヒド(芳香環をもつ基質)を縮合する4−(2−カルボキシフェニル)−2−オキソブタ−3−エノアート=アルドラーゼ(2’−カルボキシベンザルピルビン酸アドラーゼ);やはりピルビン酸と含芳香環アルデヒドとを基質として利用する、Pseudomonas putidaおよびSphingomonas aromaticivorans由来のトランス−O−ヒドロキシベンジリデンピルビン酸ヒドラターゼ−アルドラーゼ;2−オキソ酸を基質として使用し、また生物Micrococcus denitrificans中に存在すると考えられる3−ヒドロキシアスパラギン酸アルドラーゼ(エリトロ−3−ヒドロキシ−L−アスパラギン酸グリオキシル酸リアーゼ);ベンジル基を含む基質使用するベンゾインアルドラーゼ(ベンズアルデヒドリアーゼ);グリシンをベンズアルデヒドと縮合させるL−トレオ−3−フェニルセリンベンズアルデヒド−リアーゼ(フェニルセリンアルドラーゼ);4−ヒドロキシ−2−オキソ吉草酸アルドラーゼ;1,2−ジヒドロキシベンジルピルビン酸アルドラーゼ;および2−ヒドロキシベンザルピルビン酸アルドラーゼ。
【0149】
所期の活性を有するポリペプチドは次の方法を用いた関心クローンのスクリーニングにから選択することができる。トリプトファン要求株に、関心クローンを発現カセット上に収めたベクターを導入し、少量のモナチンまたはMPを含む培地上で増殖させる。アミノトランスフェラーゼおよびアルドラーゼ反応は可逆的であるため、細胞はラセミ体のモナチンからトリプトファンを生産することができる。同様にして、炭素/エネルギー源としてのモナチンまたはMP利用能によって(組み換え型と野生型の両方の)生物をスクリーニングすることもできる。標的アルドラーゼの一源泉は種々のPseudomonas菌および根圏微生物株の発現ライブラリーである。シュードモナス菌は芳香族分子の分解のための特異な異化経路を多数もち、また多数のアルドラーゼを含む。一方、根圏微生物はアルドラーゼを含み植物の根圏内で増殖することが知られており、またモナチン生合成経路の構築用とされる遺伝子を多数もっている。
【0150】
[実施例5]
モナチン前駆体の化学合成
実施例4ではアルドラーゼを使用してインドール−3−ピルビン酸をMPに変換する方法を開示した。本実施例ではMPの化学合成という代替方法を開示する。MPは一般的なアルドール型縮合反応を用いて形成することができる(図4)。アルドール型反応は簡単にいえば、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、リチウムヘキサメチルジシラザンまたはブチルリチウムなどのような強塩基の使用によるピルビン酸エステルのカルボアニオンの生成を伴う。生成するカルボアニオンはインドール−ピルビン酸と反応してカップリング生成物を形成する。
【0151】
インドール窒素の保護に使用しうる保護基の比限定的な例はt−ブチルオキシカルボニル(Boc)やベンジルオキシカルボニル(Cbz)などである。カルボン酸用ブロック基の比限定的な例はアルキル(例えばメチル、エチル、ベンジル)エステルなどである。そうした保護基を使用するときは、形成される生成物の立体化学の制御は不可能である。しかし、R2および/またはR3が(S)−2−ブタノール、メタノールまたはキラルアミンなどのようなキラル保護基であるとすれば(図4)、あるMP鏡像異性体は他の鏡像異性体よりも有利に形成しうることになる。
【0152】
[実施例6]
トリプトファンまたはインドール−3−ピルビン酸のモナチンへの変換
アミノトランスフェラーゼとアルドラーゼという2つの酵素を使用するインビトロ法により、トリプトファンとピルビン酸からモナチンを生産した。第1ステップでは、アミノ基転移反応でα−ケトグルタル酸がトリプトファンからアミノ基を受け取りインドール−3−ピルビン酸とグルタミン酸を生成した。アルドラーゼは第2の反応を触媒したが、そこではピルビン酸がMg2+とリン酸塩の存在下にインドール−3−ピルビン酸と反応してモナチンのα−ケト誘導体(MP)、2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸を生成した。第1の反応で生成したグルタミン酸からのアミノ基の転移により所期の生成物モナチンが生産された。生成物の精製と特性解析により、形成された異性体はS,Sモナチンであることが明らかになった。以下では、この方法の改良だけでなく、代替基質、酵素および条件も開示する。
【0153】
酵素
Comamonas testosteroni由来のアルドラーゼ、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸リアーゼ(ProAアルドラーゼ、proA遺伝子)(EC 4.1.3.17)を実施例4の要領でクローニングし、発現させ、生成した。B. subtilis、E. coliおよびS. meliloti由来の4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸グリオキシル酸リアーゼ(KHGアルドラーゼ)(EC 4.1.3.16)を実施例4の要領でクローニングし、発現させ、生成した。
【0154】
モナチンを生産するためにアルドラーゼと共に使用したアミノトランスフェラーゼはE. coli aspC遺伝子がコードするL−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、E. coli typB遺伝子がコードするチロシンアミノトランスフェラーゼ、S. meliloti TatA酵素、L. major bsat遺伝子がコードする広基質アミノトランスフェラーゼ、またはブタ心臓由来のグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(タイプIIa)であった。これらの非哺乳動物タンパク質のクローニング、発現および精製は実施例1で開示している。ブタ心臓由来のグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(タイプIIa)はSigma(#G7005)から入手した。
【0155】
ProAアルドラーゼとL−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを使用する方法
反応混合液は50mM酢酸アンモニウムpH 8.0、4mM MgCl2、3mMリン酸カリウム、0.05mMピリドキサルリン酸、100mMピルビン酸アンモニウム、50mMトリプトファン、10mM α−ケトグルタル酸、組み換えC. testosteroni ProAアルドラーゼ(非精製細胞抽出物、〜30%アルドラーゼ)160mg、組み換えE. coli L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(非精製細胞抽出物、〜40%アルドラーゼ)233 mgを1リットル中に含む。酵素類を除くすべての成分を一緒に混合して30℃で、トリプトファンが分解するまで、インキュベートした。次いで酵素類を加え、反応溶液を30℃で、穏やかに振とうしながら3.5時間インキュベートした。酵素添加の0.5時間後と1時間後に一定分量(各50mmol)の固体トリプトファンを反応溶液に添加した。添加したトリプトファンは全量が溶解したわけではないが、その濃度は50mM以上に維持された。3.5時間後に、固体トリプトファンをろ去した。規定量のトリプトファンを標準として使用して反応混合液をLC/MSで分析すると、溶液中のトリプトファン濃度は60.5mMであり、モナチン濃度は5.81mM (1.05g)であると判明した。
【0156】
最終生成物の精製には次の方法を使用した。BioRad AG50W−X8レジンカラム(225mL;吸着容量1.7 meq/mL)に透明溶液90%を添加した。カラムを水で洗い、280nmの吸光度が第1フロースルー画分の<5%となるまで、300mLの画分を回収した。次いでカラムを1M酢酸アンモニウムpH 8.4で溶出し、4 300 mLの画分を回収した。4画分ともモナチンを含んでおり、ロータリーエバポレーター+微温浴で105mLまで濃縮した。この濃縮過程にわたり濃縮に伴って生じた沈殿をろ別した。
【0157】
カラム画分のLC/MS分析から、トリプトファンとモナチンの99%はカラムに吸着したことが明らかになった。濃縮工程で生じた沈殿は>97%のトリプトファンと<2%のモナチンを含んでいた。上清中のトリプトファン:生成物比は約2:1であった。
【0158】
100mL Fast Flow DEAE Sepharose (Amersham Biosciences)カラムに上清(7ml)を添加した。カラムは0.5Lの1M NaOH、0.2Lの水、1.0Lの1.0M酢酸アンモニウムpH 8.4および0.5Lの水で洗浄することにより、予め酢酸塩型に転換しておいた。上清の添加は<2mL/分で行い、カラムは280nmでの吸光度が〜0となるまで、水(3−4mL/分)で洗った。モナチンは100mM酢酸アンモニウムpH 8.4で溶出し、4 100mL画分を回収した。
【0159】
画分の分析により、フロースルー画分中のトリプトファン:モナチン比は85:15であり、また溶出画分中の比は7:93であることが明らかとなった。モナチンの280nmでの吸光係数がトリプトファンと同じであると仮定すると、溶出画分は0.146mmolを含んでいた。全1Lの反応溶液に外挿すると〜2.4mmol(〜710mg)のモナチンが生成し、68%が回収されることになろう。
【0160】
DEAE Sepharoseカラムからの溶出画分を<20mLに濃縮した。一定分量の生成物をC分取用逆相カラムに添加して、実施例10で分析用クロマトグラフィー開示したものと同じ条件を使用して更に精製した。Waters Fractionlynx(登録商標)ソフトウェアを使用して、m/z=293イオンの検出に基づいて自動モナチン画分回収を開始するようにした。モナチンに対応するプロトン化分子イオンを含むCカラム画分を回収し、蒸発乾固させ、次いで少量の水に溶解した。この画分を生成物の特性解析に使用した。
【0161】
生成物の特性解析は次の方法を用いて行った。
UV/可視光分光法:酵素的に生産したモナチンのUV/可視光分光計測はCary 100 Bio UV/visible分光光度計を用いて行った。水に溶解した精製生成物は280nmで吸光度のピークを、また288nmでショルダーを示したが、これはインドール基を含む化合物に特有の性質である。
【0162】
LC/MS分析:インビトロ生化学反応に由来する混合液を対象とするモナチン分析は実施例10の要領で行った。インビトロ酵素的合成反応混合液中のモナチンの一般的なLC/MS分析結果を図5に例示する。図5の下パネルはm/z=293でのモナチンのプロトン化分子イオンに対応する特定イオンクロマトグラムである。この混合液中のモナチンの同定は図6に示す質量スペクトルによって裏付けられた。精製生成物のLC/MS分析結果から、293の分子イオンの単一ピークと280nmでの吸光度が判明した。質量スペクトルは図6に示すものと同じであった。
【0163】
MS/MS分析:モナチンを対象に実施例10で開示するようなLC/MS/MS娘イオン実験も行った。モナチンの娘イオン質量スペクトルを図7に示す。図7で標示したすべてのフラグメントイオンについて暫定的な構造帰属を行った。これらには次のフラグメントイオンが含まれた:m/z=275(193−HO)、257(293−2×HO)、230(275−COOH)、212(257−COOH)、168(3−ブタ−1,3−ジエニル−1H−インドールカルボニウムイオン)、158(1H−インドール−3−カルボアルデヒドカルボニウムイオン)、144(3−エチル−1H−インドールカルボニウムイオン)、130(3−メチレン−1H−インドールカルボニウムイオン)、118(インドールカルボニウムイオン)。これらのイオンの多くは、モナチンのインドール部分から派生している場合には予想どおり、MPで得られるもの(実施例4)と同じである。ケトンの代わりにアミノ基が存在するため、MPで見られるイオンよりも1質量単位上回るイオンもある。
【0164】
モナチンの精密質量測定:図8はApplied Biosystems−Perkin Elmer Q−Starハイブリッド四極/飛行時間型質量分析計を使用して得られた精製モナチンの質量スペクトルを示す。内部質量校正標準としてのトリプトファンの使用によるプロトン化モナチンの実測質量は293.1144であった。プロトン化モナチンの計算質量は元素組成C1417を基にすると293.1137であった。これは2 ppm(百万分の一)未満の質量計測誤差であり、酵素的に生産されたモナチンの元素組成の確証となる。
【0165】
NMR分光法:Varian Inova 500 MHz装置を使用してNMR実験を行った。モナチンのサンプル(〜3mg)を0.5mlのDOに溶解した。まず、溶媒(DO)を4.75ppmに吸収線をもつ内部標準として使用した。水のピークは大きいので、水のピークを抑えてH−NMRを実行した。次に、水のピークが幅広であるため、モナチンのC−2プロトンを標準ピークとして使用し、公表値の7.192ppmにセットした。
【0166】
13C−NMRでは、最初の数百スキャンの実行によりサンプルが希釈しすぎて割り当て時間内には充分な13Cスペクトルを得られないことが判明した。そこで、HMQC (heteronuclear multiple quantum coherence)法を行ったが、これは水素と炭素の、それらの結合相手との相関関係の解明を可能にし、また炭素の化学シフトに関する情報をもたらしてくれた。
【0167】
HおよびHMQCデータのまとめを表2および3に示す。公表値との比較から、該NMRデータは酵素的に生産されたモナチンが(S,S)、(R,R)または両者の混合物のいずれかであること示した。
【0168】
キラルLC/MS分析:インビトロで生産されたモナチンは1つの異性体であって、(R,R)および(S,S)鏡像異性体の混合物ではないことを明確にするために、実施例10で開示の機器を使用してキラルLC/MS分析を行った。
【0169】
Chirobiotic T (Advanced Separations Technology)キラルクロマトグラフィーカラムを室温で使用してキラルLC分離を行った。供給元の公開プロトコールに基づく分離と検出は、トリプトファンのR−(D)およびS−(L)異性体で最適化した。LC移動相はA)水+0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸;B)メタノール+0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸からなった。溶離は70%A、30%Bでの均一濃度溶離であった。送液量は1.0mL/分であり、PDA吸光度を200nmから400nmまでモニターした。トリプトファンとモナチンのキラルLC/MS分析に使用した装置条件は実施例10のLC/MS分析の場合と同じである。m/z 150−400領域の質量スペクトルを利用した。プロトン化分子イオンに関する特定イオンクロマトグラム(R−、S−両トリプトファンは[M+H]=205、モナチンは[M+H]=293)は、混合液中のこれらの分析対象物の直接的な同定を可能にした。
【0170】
キラルクロマトグラフィーによって分離され、MSによってモニターされたR−およびS−トリプトファンそれにモナチンのクロマトグラムは図9に示す。モナチンのクロマトグラム中の単一ピークは、該化合物が1つの異性体であり、保持時間はS−トリプトファンとほぼ同じであることを示している。
【0171】
【化3】

【0172】
表2 H−NMRデータ
【0173】
【表1】

【0174】
Vleggaar et al. (J.S.C. Perkin Trans. 1:3095−8,1992).
【0175】
Takeshi and Shunsuke (JP20002060382,2002−02−26)
【0176】
表3 H−NMRデータ(HMQCスペクトルより)
【0177】
【表2】

【0178】
Vleggaar et al. (J.S.C. Perkin Trans. 1:3095−8,1992).
【0179】
偏光分析法:旋光度はRudolph Autopol III 偏光計で測定した。モナチンは14.6mg/mL水溶液として調製した。S,Sモナチン(塩形態)の比旋光度([α]20)の期待値は1g/mL水溶液なら−49.6である(Vleggaar et al.)。酵素的に生産された、精製後のモナチンの実測[α]20は−28.1であったが、これは該モナチンがS,S異性体であることを示唆する。
【0180】
改良
試薬および酵素濃度を含む反応条件を最適化して、次の試薬混合物を使用して5−10mg/mLの収量を実現した:50mM酢酸アンモニウムpH 8.3、2mM MgCl、200mMピルビン酸(ナトリウムまたはアンモニウム塩)、5mM α−ケトグルタル酸(ナトリウム塩)、0.05mMピリドキサルリン酸、酵素類添加後の最終容量を1mLとする量の脱気水、3mMリン酸カリウム、組み換えProAアルドラーゼ50μg/mL(細胞抽出物;全タンパク質濃度167 μg/mL)、E. coli aspC遺伝子がコードするL−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ1000μg/mL(細胞抽出物;全タンパク質濃度2500 μg/mL)、および濃度を>60mM(飽和;一部は反応時も終始未溶解)とする量の固体トリプトファン。この混合物を30℃で4時間、穏やかに撹拌または混合しながらインキュベートした。
【0181】
代用
α−ケトグルタル酸の濃度を1mMに引き下げ、9mMのアスパラギン酸で補っても、同等のモナチン収量が実現する。第1ステップでは、オキサロ酢酸などのような代替アミノ酸受容体を使用してもよい。
【0182】
組み換えL. major広基質アミノトランスフェラーゼをE. coli L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの代わりに使用しても、同様のモナチン収量が実現した。しかしLC/MSでは、分子質量292の未確認の第2生成物(主生成物の3−10%)も検出された。E. coli tyrBコード化酵素、S. meliloti tatAコード化酵素またはブタ心臓由来グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(タイプIIa)をアミノトランスフェラーゼとして添加すると、0.1−0.5 mg/mL濃度のモナチンが生産された。反応をインドール−3−ピルビン酸から出発させるときは、(実施例7の要領により)第1ステップでグルタミン酸デヒドロゲナーゼとNADHにより還元的アミノ化を行うことができる。
【0183】
モナチンの酵素的生産ではE. coli L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをB. subtilis、E. coliおよびS. melilotiに由来するKHGアルドラーゼとも併用した。使用した反応条件は次のとおりである:50mM NH−OAc pH 8.3、2mM MgCl、200mMピルビン酸、5mMグルタミン酸、0.05mMピリドキサルリン酸、酵素類添加後の最終容量を0.5mLとする量の脱気水、3mMリン酸カリウム、組み換えB. subtilis KHGアルドラーゼ(精製)20μg/mL、E. coli L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspC)約400μg/mL(細胞抽出物から未精製)、および12mMインドール−3−ピルビン酸。反応混合物を30℃で30分間、振とうしながらインキュベートした。B. subtilis酵素の使用によるモナチン生産量は80ng/mLであり、アルドラーゼ量の増加に応じて伸びた。インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸を飽和量のトリプトファンと5mM α−ケトグルタル酸で代替すると、モナチン生産量は360ng/mLに伸びた。50mM Tris pH 8.3に溶解した3種のKHGアルドラーゼ各々30μg/mL、および飽和量のトリプトファンを使用して反応を繰り返し、1時間進行させて、検出量を増大させるようにした。B. subtilis酵素は実施例4の場合と同様に、活性が最も高く、約4000ng/mLのモナチンを生産した。E. coli KHG、S. meliloti KHGのモナチン生産量はそれぞれ3000ng/mL、2300ng/mLであった。
【0184】
[実施例7]
MPとモナチンの間の相互変換
MPのアミノ化によるモナチンの形成は実施例1および6で特定したようなアミノトランスフェラーゼによって、またはNADHまたはNADPHなどのような還元性補因子を必要とするデヒドロゲナーゼによって、触媒することができる。これらの反応は可逆的であり、いずれの方向でも計測可能である。この方向性は、デヒドロゲナーゼ酵素を使用するときは、アンモニウム塩濃度によって大体制御することができる。
【0185】
デヒドロゲナーゼ活性:モナチンの酸化的脱アミノ化は、NAD(P)+の高発色性NAD(P)Hへの変換に伴う340nmでの吸光度の上昇を追跡することによりモニターした。モナチンは実施例6の要領で酵素的に生産し、精製した。
【0186】
代表的なアッセイ混合液は0.2mL中に50mM Tris−HCl,pH 8.0−8.9、0.33mM NADまたはNADP、2−22単位のグルタミン酸(Sigma)、および10−15mM基質を含んでいた。アッセイは2連で、UV透過性マイクロタイタープレートとMolecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダーを使用して行った。酵素、バッファーおよびNAD(P)+の混合物を、基質を入れたウェルに分注し、ざっと混合後に340nmでの吸光度を10秒間隔でモニターした。反応混合物は25℃で10分間インキュベートした。陰性対照アッセイは基質を添加せずに行い、また陽性対照にはグルタミン酸を使用した。ウシ肝臓由来のタイプIII グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(Sigma # G−7882)は、グルタミン酸のα−ケトグルタル酸への変換速度の約100分の1の変換速度でのモナチンのモナチン前駆体への変換を触媒した。
【0187】
アミノ基転移活性:モナチン・アミノトランスフェラーゼ・アッセイをE. coli由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspC)、E. coli由来のチロシンアミノトランスフェラーゼ(TyrB)、L. major由来の広基質アミノトランスフェラーゼ(BSAT)、および実施例1で開示した2つの市販(ブタ由来)グルタミン酸−オキサロ酢酸アミノトランスフェラーゼで行った。アミノ基受容体としてはオキサロ酢酸とα−ケトグルタル酸の両方を試験した。アッセイ混合物は(0.5mL中に)50mM Tris−HCl pH 8.0、0.05mM PLP、5mMアミノ基受容体、5mMモナチン、およびアミノトランスフェラーゼ25μgを含んでいた。アッセイ混合物を30℃で30分間インキュベートし、0.5mLのイソプロピルアルコールを添加して反応を止めた。モナチン消失量をLC/MSでモニターした(実施例10)。最高の活性量が認められたのはオキサロ酢酸をアミノ基受容体とするL. major BSATであり、それに続くのはα−ケトグルタル酸をアミノ基受容体とする同じ酵素であった。オキサロ酢酸をアミノ基受容体とするときの相対活性はBSTA>AspC>ブタ・タイプIIa>ブタ・タイプI=TyrBであった。α−ケトグルタル酸をアミノ基受容体とするときの相対活性はBSTA>AspC>ブタ・タイプI>ブタ・タイプIIa=TyrBであった。
【0188】
[実施例8]
トリプトファンからの、およびピルビン酸以外のC3源からのモナチンの生産
実施例で述べたように、インドール−3−ピルビン酸またはトリプトファンは、ピルビン酸をC3分子として使用すれば、モナチンへと変換することができる。しかし、ピルビン酸が望ましい原料ではない場合もあろう。例えばピルビン酸は他のC3炭素源よりも高価であるかもしれないし、また培地に添加すると発酵に悪影響を及ぼすかもしれない。アラニンは多数のPLP酵素によってアミノ基転移作用を受け、ピルビン酸を生成させることができる。
【0189】
トリプトファナーゼ様酵素はアミノトランスフェラーゼなどのような他のPLP酵素よりも高速でベータ脱離反応を起こす。このクラス(EC 4.1.99.−)に属する酵素はL−セリン、L−システインおよび優れた脱離基をもつセリン/システイン誘導体(例えばO−メチル−L−セリン、O−ベンジル−L−セリン、S−メチルシステイン、S−ベンジルシステイン、S−アルキル−L−システイン、O−アシル−L−セリン、3−クロロ−L−アラニン)などのようなアミノ酸からアンモニアピルビン酸を生成することができる。
【0190】
EC 4.1.99.−ポリペプチドの使用によるモナチン生産法はβ−チロシナーゼ(TPL)またはトリプトファナーゼをMouratou et al. (J. Biol. Chem. 274:1320−5,1999)の方法に従って変異させることにより改良することができる。Mouratou et al.はβ−チロシナーゼを自然界に存在するとの報告はまだないジカルボン酸型アミノ酸β−リアーゼへと変換する能力を開示している。こうした特異性の変化はバリン(V)283をアルギニン(R)に、またアルギニン(R)100をトレオニン(T)に、それぞれ変換することによって実現された。これらのアミノ酸変化は該リアーゼがジカルボン酸型アミノ酸(アスパラギン酸など)を受容して加水分解による脱アミノ化反応を起こすことを可能にする。従ってアスパラギン酸もまた後続のアルドール縮合反応のためのピルビン酸源として使用することができる。
【0191】
更に、細胞または酵素リアクターには乳酸や、乳酸またはピルビン酸を変換する酵素を供給することができる。この反応を触媒しうる酵素の例は乳酸デヒドロゲナーゼや乳酸オキシダーゼなどである。
【0192】
反応混合物は50mM Tris−HCl pH 8.3、2mM MgCl2、200mM C3炭素源、5mM α−ケトグルタル酸、ナトリウム塩、0.05mMピリドキサルリン酸、酵素類添加後の最終容量を3mLとする量の脱気水、3mMリン酸カリウム pH 7.5、実施例4で調製したような粗製組み換えC. testosteroni ProAアルドラーゼ25μg、実施例1で調製したような粗製L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspC)500μg、および濃度を>60mM(飽和;一部は反応時も終始未溶解)とする量の固体トリプトファン。この混合物を30℃で30分間、混合しながらインキュベートした。セリン、アラニンおよびアスパラギン酸をC3炭素源として供給した。アッセイは、β−脱離およびβ−リアーゼ反応を行いうる第2 の(精製物)PLP酵素(トリプトファナーゼ(TNA)、二重変異型トリプトファン、β−チロシナーゼ(TPL))を添加して、また添加せずに、行った。結果を表4に示す。
【0193】
表4 代替C3炭素源の使用によるモナチン生産
【表3】

【0194】
C3炭素源としてのアラニンおよびセリンから生産したモナチンはLC/MS/MS娘スキャン分析によって確認したが、実施例6で生産した特性解析済みモナチンと同じであった。アラニンは試験した中では最良の代替原料であり、AspC酵素のアミノ基転移作用を受けた。モナチン生産量は、二次活性としてアミノ基転移作用をもつトリプトファナーゼの添加により増加した。セリンを炭素源としたときのモナチン生産量はトリプトファナーゼ酵素の添加により、それがアミノトランスフェラーゼのわずか5分の1の添加量にもかかわらず、倍近くも増加した。AspCは単独で、ある程度のβ−脱離活性を示すことができる。アスパラギン酸を使用した場合の結果は、アスパラギン酸に対するトリプトファナーゼ活性がβ−チロシナーゼに関して前に指摘したような部位指定突然変異を以ってしても向上しないことを示唆している。変異型β−チロシナーゼはモナチン生産のための活性がもっと高くなると見込まれる。
【0195】
[実施例9]
モナチンの化学合成
インドール−3−ピルビン酸にアラニンを添加するとモナチンが生成するが、この反応はグリニャール試薬または有機リチウム試薬によって合成的に行うことができる。
【0196】
例えばカルボキシル基とアミノ基を適切にブロッキング処理した3−クロロ(または3−ブロモ)アラニンに無水条件下、マグネシウムを添加する。次いで(適切にブロッキングした)インドール−3−ピルビン酸を加えてカップリング生成物を形成させ、その後に保護基を除去してモナチンを形成させる。特に有用な保護基は着脱し易いTHP(テトラヒドロピラニルエーテル)などである。
【0197】
[実施例10]
トリプトファン、モナチンおよびMPの検出
この実施例ではモナチンまたはその前駆体2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸の存在を検出する方法を開示する。
【0198】
LC/MS分析
インビトロまたはインビボ生化学反応に由来するモナチン、MPおよび/またはトリプトファンを検出するための混合物分析は、Waters/Micromass液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析計(LC/MS/MS)システムを使用して行った。これにはWaters 2690液体クロマトグラフとMicromass Quattro Ultima三連四重極質量分析計、それに両者の間に直列に設けたWaters 996 Photo−Diode Array (PDA)吸光度モニターが含まれていた。LC分離はSupelco Discovery C18逆相クロマトグラフィーカラム2.1mm×150mmまたはXterra MC C逆相クロマトグラフィーカラム2.1mm×250mmを使用して室温で行った。LC移動相はA)水+0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸およびB)メタノール+0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸からなった。
【0199】
グラジエント溶離はリニア5%B→35%B (0−9分)、リニア35%B→90%B (9−16分)、均一濃度90%B (16−20分)、リニア90%B→5%B (20−22分)であり、各グラジエント溶離間には10分の再平衡化時間をおいた。送液量は0.25mL/分であり、PDA吸光度は200nm〜400nmの範囲内でモニターした。ESI−MS装置条件はどれも関心被分析物のプロトン化分子イオン([M+H])の発生と特徴的なフラグメントイオンの生成を基に最適化し、選定した。
【0200】
モナチンのLC/MS分析には次の装置条件を使用した:キャピラリー:3.5kV;コーン:40V;Hex 1:20V;アパーチャ:0V;Hex 2:0V;ソース温度:100℃;脱溶媒温度:350℃;脱溶媒ガス流量:500L/h;コーンガス流量:50L/h;低質量分解能(Q1):15.0;高質量分解能(Q1):15.0;イオンエネルギー:0.2;入口:50V;衝突エネルギー:2;出口:50V;低質量分解能(Q2):15;高質量分解能(Q2):15;イオンエネルギー(Q2):3.5;倍増管:650。質量/電荷比(m/z)および分子質量の報告値に関する不確実性は±0.01%である。
【0201】
混合物中のα−ケト酸型モナチン(MP)およびモナチンの初期検出はm/z 140−400領域内の質量スペクトルの収集を伴うLC/MSモニタリングで行った。プロトン化分子イオンの特定イオンクロマトグラム(MPは[M+H]=292、モナチンは[M+H]=293)は混合物中のこれらの被分析物の直接的な確認を可能にした。
【0202】
MS/MS分析
モナチンを対象とするLC/MS/MS娘イオン実験を次の要領で行った。娘イオン分析では関心親イオン(例えばモナチンではm/z=293)を質量分析計の第1質量分析部(Q1)から衝突セルへと透過させ、そこにアルゴンを導入して親イオンをフラグメント(娘)イオンへと化学的に解離させる。これらのフラグメントイオンは第2分析部(Q2)で検出されるが、親イオンの構造帰属の裏付けに使用することができる。同様に、トリプトファンの特性解析と定量もm/z=205の透過とフラグメンテーションによって行うことができる。
【0203】
モナチンのLC/MS/MS分析には次の装置条件を使用した:キャピラリー:3.5kV;コーン:40V;Hex 1:20V;アパーチャ:0V;Hex 2:0V;ソース温度:100℃;脱溶媒温度:350℃;脱溶媒ガス流量:500L/h;コーンガス流量:50L/h;低質量分解能(Q1):13.0;高質量分解能(Q1):13.0;イオンエネルギー:0.2;入口:−5V;衝突エネルギー:14;出口:1V;低質量分解能(Q2):15;高質量分解能(Q2):15;イオンエネルギー(Q2):3.5;倍増管:650。
【0204】
モナチンおよびトリプトファンの高速検出
インビトロまたはインビボ反応に由来するモナチンおよびトリプトファンを検出するための高速混合物分析は、前述の装置を使用して、LC/MS/MSの場合と同じ装置条件で行った。LC分離は4.6mm×50mm Advanced Separation Technologies Chirobiotic Tカラムを使用して、室温で行った。LC移動相はA)水+0.25%酢酸およびB)メタノール+0.0.25%酢酸からなった。均一濃度溶離は50%Bで、0−5分であった。送液量は0.6mL/分であった。ESI−MS/MS装置条件はどれも、トリプトファンおよび内部標準2H5−トリプトファンのプロトン化分子イオンの生成とMRM(multiple reaction monitoring、多重反応検出)法用のアミノ酸特異的フラグメントイオンの衝突誘起生成のための最適化イオン源を基に最適化し、選定した。正イオンMRMモードでのLC/MS/MSモナチンおよびトリプトファン分析には継ぎの装置条件を使用した:キャピラリー:3.5kV;コーン:20V;Hex 1:15V;アパーチャ:1V;Hex 2:0V;ソース温度:100℃;脱溶媒温度:350℃;脱溶媒ガス流量:500L/h;コーンガス流量:40L/h;低質量分解能(Q1):12.0;高質量分解能(Q1):12.0;イオンエネルギー:0.2;入口:−5V;衝突エネルギー:14;出口:1V;低質量分解能(Q2):15;高質量分解能(Q2):15;イオンエネルギー(Q2):0.5;倍増管:650。MRM条件:チャンネル間遅延:0.03 s;スキャン間遅延:0.03 s;ドウェルタイム:0.05 s。
【0205】
モナチンの精密質量測定
Applied Biosystems−Perkin Elmer Q−Starハイブリッド四極/飛行時間型質量分析計を使用して高分解能MS分析を行った。得られた精製モナチンの質量スペクトルを示す。プロトン化モナチンの実測質量 内部質量校正標準としてトリプトファンを使用した。プロトン化モナチンの計算質量は元素組成C1417を基にすると293.1137であった。実施例Aで開示した生体触媒法を使用して生産したモナチンの実測質量は293.1144であった。これは2 ppm(百万分の一)未満の質量計測誤差であり、酵素的に生産されたモナチンの元素組成の確証となる。
【0206】
[実施例11]
細菌によるモナチンの生産
この実施例ではE. coli細胞内でのモナチン生産に使用する方法を開示する。類似の方法が細菌細胞内でのモナチン生産にも使用しうることは当業者には自明であろう。加えて、モナチン合成経路(図2)内の他遺伝子を入れたベクターを使用することもできる。
【0207】
trp−1+ブドウ糖培地、すなわちE. coli細胞内でのトリプトファン生産の増大に使用されてきた最少培地(Zeman et al. Folia Microbiol. 35:200−4,1990)を次の要領で調製した。ナノピュア水700mLに次の試薬を加えた:(NHSO 2g、KHPO 13.6g、MgSO・7HO 0.2g、CaCl・2HO 0.01g、およびFeSO・7HO 0.5mg。pHを7.0に調整し、容量を850mLに増やし、培地をオートクレーブ処理した。50%ブドウ糖溶液を別個に調製し、フィルター滅菌した。40mLを基本培地(850mL)に加えて、最終容量を1Lとした。
【0208】
10g/LのL−トリプトファン溶液を0.1Mリン酸ナトリウムpH 7で調製し、フィルター滅菌した。一般に10分の1の容量を後述のように培養液に加えた。10%ピルビン酸ナトリウム溶液も調製し、フィルター滅菌した。これは一般に培養液1リットルあたり10mL使用した。アンピシリン、カナマイシンおよびIPTGの各ストック液(それぞれ100mg/mL、25mg/mL、840 mM)を調製し、フィルター滅菌し、使用前に−20℃で保存した。Tween 20(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)は終濃度0.2%(v/v)で使用した。アンピシリンは非致死濃度で、一般に1−10μg/mLの終濃度で使用した。
【0209】
50μg/mLカナマイシンを添加したLB培地でE. coli BL21 (DE3)::C. testosteroni proA/pET 30Xa/LIC(実施例4で開示)の新鮮な平板培地を調製した。終夜培養液を単一コロニーからカナマイシン添加LB培地に接種し、30℃で増殖させた。一般にtrp−1+ブドウ糖培地内での誘導には50倍希釈の接種菌液を使用した。新鮮な抗生物質を加えて終濃度を50mg/Lとした。誘導前に振とうフラスコにより37℃で増殖させた。
【0210】
細胞はOD600=0.35〜0.8になるまで1時間ごとにサンプル採取した。次いで細胞を0.1mM IPTGで誘導し、温度を34℃に下げた。誘導前(ゼロ時点)にサンプル(1mL)を採取し、5000×gで遠心分離した。上清をLC/MS分析用に−20℃で凍結させた。導入4時間後、更に1mLのサンプルを採取し、培養液を細胞ペレットから遠心分離した。トリプトファン、ピルビン酸ナトリウム、アンピシリン、およびTweenを前述のようにして添加した。
【0211】
細胞を誘導後48時間増殖させ、更に1mLのサンプルを採取し、前述のように処理した。48時間に、追加分量のトリプトファンとピルビン酸を加えた。(誘導後)約70時間増殖した後に全培養物を、20分間、4℃、3500rpmで遠心処理した。上清をデカントし、培養液と細胞の両方を−80℃で凍結させた。培養液画分はろ過し、LC/MSで分析した。[M+H]=293ピークの高さと面積を実施例10で開示した要領でモニターした。培地のバックグラウンドレベルは差し引いた。データは、[M+H]=293ピークの高さを培養液のOD600で割ってプロットすることにより、細胞増殖についての正規化も行った。
【0212】
ピルビン酸、アンピシリンおよびTweenを誘導時ではなく誘導4時間後に添加すると、モナチンレベルが高くなった。他の添加物例えばPLP、追加のリン酸、または追加のMgClはモナチンの生産を増やさなかった。インドール−3−ピルビン酸の代わりにトリプトファンを使用すると、またトリプトファン添加を接種時または誘導時ではなく誘導後に行うと、より高い力価のモナチンが得られた。誘導前と誘導4時間後(基質添加時)には、発酵液にも細胞抽出物にも検出可能レベルのモナチンは一般に存在しなかった。pET30aベクターだけを入れた細胞で、またトリプトファンとピルビン酸を添加しない培養液で、陰性対照実験も行った。(m+1)/z=293の化合物が更に大きな分子に由来するものではないことが親イオンMSスキャンにより明らかになったし、また(実施例10で実行した)娘イオンスキャンはインビトロで生産されたモナチンに類似していた。
【0213】
Tweenの効果は終濃度0%、0.2%(v/v)および0.6%のTween 20を使用して調べた。振とうフラスコ法によるモナチン生産量が最高となったのは0.2% Tweenのときであった。アンピシリン濃度は0〜10μg/mLの間で変化させた。細胞培養液中のモナチン量は0〜1μg/mLの間で急増(2.5倍)し、またアンピシリン濃度を1〜10μg/mLへと高めると1.3倍増加した。
【0214】
経時変動実験の代表的な結果を図10に示す。細胞培養液中へのモナチン分泌量は、数値を細胞増殖について正規化した場合でも、増加した。トリプトファンのモル吸光係数を用いることにより、培養液中のモナチン量を10μg/mL未満と推定した。同じ実験を、proAインサートを欠くベクターを入れた細胞でも繰り返した。マイナスとなった数値も多いが、それはこれらの培養液ではm/z=293でのピーク高さが培地だけの場合を下回ることを示す(図10)。トリプトファンとピルビン酸を欠くときは数値が一貫して低くなったが、それはモナチンの生産がアルドラーゼ酵素によって触媒される酵素反応の結果であることを示す。
【0215】
モナチンの細菌細胞内でのインビボ生産を800mL振とうフラスコ実験および発酵槽で繰り返した。250mLのモナチン/無細胞培養液サンプルを陰イオン交換クロマトグラフィーと分取用逆相液体クロマトグラフィーで精製した。このサンプルを濃縮し、(実施例6で開示の)高分解能質量分析にかけた。高分解能MSは生産中の代謝産物がモナチンであることを示した。
【0216】
インビトロアッセイは、アミノトランスフェラーゼをアルドラーゼよりも高濃度で存在させる必要がある(実施例6)ことを示しているので、E. coli由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをアルドラーゼ遺伝子と組み合わせて過剰発現させ、モナチン生産量を増やすようにした。aspC/pET30 Xa/LICによってC. testosteroni proAをオペロン中に導入するためのプライマーを、次のように設計した:5’プライマー:ACT CGG ATC CGA AGG AGA TAT ACA TAT GTA CGA ACT GGG ACT (SEQ ID NO:67);3’プライマー:CGG CTG TCG ACC GTT AGT CAA TAT ATT TCA GGC(SEQ ID NO:68)。5’プライマーはBamHI部位を、また3’プライマーはSalI部位を、それぞれクローニング用に含む。PCRは実施例4に記載の要領で行い、ゲルを精製した。aspC/pET30 Xa/LICコンストラクトをBamHIとSalIで消化し、PCR産物も同様にした。Qiagenスピンカラムを使用して消化産物を精製した。Roche(Indianapolis,IN)Rapid DNA Ligationキットを使用して添付説明書に従って、proA PCR産物をベクターにライゲートした。実施例1に記載の要領で、Novablues Singles (Novagen)を使用して化学的形質転換を行った。50mg/Lカナマイシン添加LB培地中でコロニーを増殖させ、Qiagen Spin Miniprep Kitを使用してプラスミドDNAを精製した。制限酵素消化産物の分析によりクローンをスクリーニングし、配列をSeqwrite(Houston,TX)で確認した。コンストラクトをBLR(DE3)、BLR(DE3)pLysS、BL21(DE3)およびBL21(DE3)pLysS (Novagen)にサブクローニングした。proA/pET30 Xa/LICコンストラクトもまたBLR(DE3)pLysSに導入した。
【0217】
前述の標準条件下でのBLR(DE3)振とうフラスコ法サンプルの当初比較から、第2遺伝子(aspC)の追加によりモナチン生産量が7倍も伸びたことが明らかになった。増殖を速めるためにBL21(DE3)由来の宿主株を使用した。proAクローンと2つの遺伝子オペロン・クローンを前述のようにTrp−1培地中で誘導し、pLysS宿主では培地にクロラムフェニコール(34mg/L)も添加した。振とうフラスコ実験は0.2% Tween−20および1mg/Lアンピシリン添加および無添加で行った。培養液中のモナチン量はインビトロで生産した精製モナチンを標準として使用して計算した。SRM分析を実施例10に記載の要領で行った。細胞のサンプリングは増殖0時間、4時間、24時間、48時間、72時間、96時間の各時点で行った。
【0218】
その結果を表5に培養液中の最大生産量として示す。ほとんどの場合、2遺伝子コンストラクトのほうがproA単独コンストラクトよりも高い値となった。pLysS株は漏れやすい細胞外被をもつはずであり、増殖速度は一般に低いにもかかわらずモナチン分泌量は多かった。Tweenとアンピシリンの添加は有効であった。
【0219】
表5 E. coliによるモナチン生産量
【0220】
【表4】

【0221】
[実施例12]
酵母によるモナチン生産
この実施例では真核細胞内でのモナチン生産に使用される方法を開示する。類似の方法が任意の関心細胞内でのモナチン生産にも使用しうることは当業者には自明であろう。加えて、この実施例で開示する遺伝子に加えて、または代りに、他の遺伝子(図2に記載のものなど)を使用することもできる。
【0222】
pESC酵母エピトープ標識ベクター系(Stratagene,La Jolla,CA)を使用してE. coli aspCおよびC. testosteroni proA遺伝子をSaccharomyces cerevisiae(出芽酵母)にクローニングし発現させた。このpESCベクターは対向鎖上のGAL1、GAL10両プロモーターを、2つのマルチクローニング部位と共に含んでおり、2つの遺伝子の同時発現を可能にする。pESC−Hisベクターは、宿主(YPH500)のヒスチジン要求性の相補性遺伝子であるHis3遺伝子を更に含む。GAL1およびGAL10プロモーターはブドウ糖によって抑制され、ガラクトースによって誘導されるが、酵母中での最適発現にはKozak配列が使用される。pESCプラスミドはシャトルベクターであり、当初のコンストラクトをE. coli中で(選択用のbla遺伝子を組み込んで)作製することを可能にする。しかし、マルチクローニング部位には細菌リボソーム結合部位は存在しない。
【0223】
pESC−Hisへのクローニング用に次のプライマーを設計した(制限酵素認識部位は下線で、またKozak配列は太字で、それぞれ示す):aspC (BamHI/SalI),GAL1:5’−CGC GGA TCC ATA ATG GTT GAG AAC ATT ACC G−3’ (SEQ ID NO:69)および5’−ACG CGT CGA CTT ACA GCA CTG CCA CAA TCG−3’ (SEQ ID NO:70)。proA (EcoRI/NotI),GAL10:CCG GAA TTC ATA ATG GTC GAA CTG GGA GTT GT−3’ (SEQ ID NO:71)および5’−GAA TGC GGC CGC TTA GTC AAT ATA TTT CAG GCC−3’ (SEQ ID NO:72)。
【0224】
両成熟タンパク質に対応する第2コドンはKozak配列の導入により芳香族アミノ酸からバリンに変化した。関心遺伝子は実施例1および実施例4に記載のクローンに由来するpET30 Xa/LICミニプレップDNAを鋳型として使用して増幅した。PCRはEppendorf Masterサイクラーグラジエントサーモサイクラーおよび50μL反応に関する次のプロトコールを使用して行った:1.0μL鋳型、1.0μMの各プライマー、0.4mM各dNTP、3.5U Expand High Fidelityポリメラーゼ(Roche,Indianapolis,IN)、および1×Expand(登録商標)バッファー+ Mg。使用したサーモサイクラープログラムは94℃、5分間のホットスタート、それに続く次のステップの29回反復:94℃30秒、50℃1分45秒、および72℃2分15秒。29回反復後に、サンプルを72℃に10分保持し、次いで4℃で保存した。PCR産物は1%TAE−アガロースゲルによる分離精製後、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen,Valencia,CA)使用して回収した。
【0225】
pESC−HisベクターDNA(2.7μg)を前述の要領でBamHI/SalIで消化し、ゲル精製した。aspC PCR産物はBamHI/SalIで消化し、QIAquick PCR Purification Columnで精製した。ライゲーションはRoche Rapid DNA Ligation Kitを使用し、同社のプロトコールに従って行った。脱塩後のライゲーション産物はエレクトロポレーションにより、Biorad Gene PulserII+パルスコントローラーを使用し同社の説明書に従って、0.2cm Bioradディスポーザブルキュベットに入れた40μl Electromax DH10Bコンピテントセル(インビトロgen)に導入した。1mLのSOC培地に回収して1時間後、形質転換体を100μg/mL添加LB培地にプレーティングした。クローン用のプラスミドDNA調製はQIAprep Spin Miniprep Kitを使用して行った。プラスミドDNAを制限消化によってスクリーニングし、配列を解析し(Seqwright)、前記ベクター向けに設計されたプライマーを使用して確認した。
【0226】
aspC/pESC−HisクローンはproA PCR産物と同様に、EcoRIとNotIで消化した。DNAを前述のように精製し、やはり前述のようにライゲートした。この2遺伝子コンストラクトをDH10B細胞に導入し、制限消化とDNA配列解析によってスクリーニングした。
【0227】
S.c.EasyComp(登録商標)Transformation Kit (インビトロgen)を使用して該コンストラクトをS. cerevisiae YPH500株に次の要領で導入した。同キットに従い、遺伝子導入反応液を2%ブドウ糖添加SC−His最少培地(インビトロgen pYES2マニュアル)にプレーティングした。前述のPCRプライマーを使用するコロニーPCR法により、個別酵母コロニーをproAおよびaspC遺伝子スクリーニングにかけた。細胞ペレット(2μl)を酵母溶解酵素(zymolase)1μl 添加Y−Lysis Buffer (Zymo Research)20μl中に懸濁させ、37℃に10分間保った。次いでこの懸濁液4μlを、前述のPCR反応混合物とプログラムとを使用する50μl PCR反応に使用した。
【0228】
5mLの培養物をSC−His+ブドウ糖培地により30℃、225rpmで終夜増殖させた。細胞をラフィノースによる増殖に徐々に適応させ、ガラクトースによる誘導前のラグ時間を最小限に抑えるようにした。約12時間の増殖後、600nmでの吸光度を測定し、適量の細胞を遠沈し、再懸濁させて新鮮SC−His培地をOD=0.4となるようにした。以下の炭素源を順次使用した:1%ラフィノース+1%ブドウ糖、0.5%ブドウ糖+1.5%ラフィノース、2%ラフィノース、最後に誘導用の1%ラフィノース+2%ガラクトース。
【0229】
誘導培地で約16時間の増殖後、50mLの培養物を25mL×2に等分し、等分培養物の一方に次のものを添加した:(終濃度)1g/L L−トリプトファン、5mMリン酸ナトリウムpH 7.1、1g/Lピルビン酸ナトリウム、1mM MgCl。陰性対照として、非誘導培地に由来する、およびモナチン合成経路用基質の添加前16時間の培養物に由来する、培養液と細胞ペレットのサンプルを保存した。更に、機能的aspC遺伝子(および短縮型proA遺伝子)だけを含むコンストラクトももう1つの陰性対照として使用した。細胞は誘導後合計69時間増殖させた。酵母細胞をもっと低いODで誘導し、わずか4時間増殖させた後にトリプトファンおよびピルビン酸を添加した場合もある。しかし、これらのモナチン基質は増殖を抑制する模様であり、高ODでの添加のほうがより効果的であった。
【0230】
培養物に由来する細胞ペレットは、YeastBuster(登録商標)5mL + 50μl THP (Novagen)/グラム(湿重量)−細胞によりメーカーのプロトコールに従って、従前の実施例で開示されているようにプロテアーゼインヒビターおよびベンゾナーゼ・ヌクレアーゼを添加して、溶解した。培養物に由来する培養液と細胞ペレットはろ過し、実施例10に記載の要領でSRMにより分析した。この方法を使用すると、培養液サンプルではモナチンは検出されなかった。これは、これらの条件下では細胞がモナチンを分泌できなかったことを示唆する。これらの条件下ではプロトン駆動力が足りないのか、あるいは一般的なアミノ酸輸送体がトリプトファンで飽和するのかもしれない。タンパク質の発現はSDS−PAGEの使用による変化の検出を可能にするほどのレベルではなかった。
【0231】
2機能遺伝子を使用した培養物の細胞抽出物では、培地にトリプトファンとピルビン酸を添加したときに、一時的にモナチンが(約60ng/mL)検出された。陰性対照の細胞抽出物ではいずれの場合もモナチンは検出されなかった。インビトロモナチン・アッセイを、2連で、全タンパク質濃度を4.4mg/mL (E. coli細胞抽出物で一般に使用される濃度の約2倍)として、実施例6に記載の最適化アッセイ法を使用して、行った。他のアッセイも、C. testosteroni ProAアルドラーゼ32μg/mLまたは400μg/mL AspCアミノトランスフェラーゼを添加して行い、細胞抽出物ではどちらが律速酵素となっているかを調べるようにした。陰性対照アッセイは酵素を添加しないで、またはAspCアミノトランスフェラーゼだけを添加して、行った(アルドール縮合は酵素がなくてもある程度起こりうる)。陽性対照アッセイはある程度(30−40%)純粋な酵素により、16μg/mLアルドラーゼまたは400μg/mLアミノトランスフェラーゼを使用して行った。
【0232】
インビトロ結果をSRMで分析した。細胞抽出物を分析すると、トリプトファンを誘導後に培地に添加すると細胞内に効果的に輸送され、追加的なトリプトファンの添加がない場合と比較して2桁も高いトリプトファン濃度となることが判明した。インビトロモナチン分析の結果を表6に示す(数字の単位はng/mL)。
【0233】
表6 酵母細胞抽出物によるモナチン生産
【0234】
【表5】

【0235】
完全2遺伝子コンストラクトの細胞抽出物では増殖培地に基質を添加してもしなくても、良い結果が得られた。これらの結果は、陽性対象と比較すると、酵素が酵母中の全タンパク質の1%近いレベルで発現したことを示す。aspCコンストラクト(+短縮型proA)の細胞抽出物を、アルドラーゼを加えてアッセイしたときのモナチン生産量は抽出細胞を単独でアッセイしたときよりも有意に高かったが、これは組み換えAspCアミノトランスフェラーゼが約1−2%の酵母全タンパク質を含むことを示唆している。非誘発培養物の細胞抽出物はアルドラーゼを加えてアッセイしたときは、細胞中に天然アミノトランスフェラーゼが存在するために低活性量となった。AspCアミノトランスフェラーゼを加えてアッセイすると、非誘導細胞からの抽出物の活性はAspC添加陰性対照によるモナチン生産量まで増大した(約200 ng/mL)。対照的に、2遺伝子コンストラクト細胞抽出物をアッセイしたときの実測活性はアミノトランスフェラーゼを補充するときのほうがアルドラーゼを添加するときよりも、高くなる。両遺伝子は同レベルで発現するはずであるから、これはアミノトランスフェラーゼがアルドラーゼよりも高レベルのときにモナチン生産量が極大化することを示唆しており、実施例6の結果とも符合する。
【0236】
ピルビン酸およびトリプトファンの添加は細胞増殖を阻害するだけでなく、タンパク質の発現をも阻害するように見受けられる。pESC−Trpプラスミドの添加はYPH500宿主細胞のトリプトファン要求性の補正に使用して、増殖、発現および分泌に対するトリプトファンの作用を少なくする手段をもたらすことができる。
【0237】
[実施例13]
共役反応の使用による酵素法の改良
理論的には、基質または中間体の副反応または分解が起きないと仮定すれば、図11に示す酵素反応から形成される生成物の最大量は各反応の平衡定数に、またトリプトファンおよびピルビン酸の濃度に、正比例する。トリプトファンは高溶解性の基質ではないし、また200mMを超えるピルビン酸濃度は収量にマイナスの影響を及ぼす模様である(実施例6を参照)。
【0238】
理想的には、モナチン濃度を基質に対して極大化し、分離コストを引き下げるようにするのがよい。物理的な分離により、反応混合物からモナチンを除去して、逆反応が起こるのを防止するようにすることは可能である。その場合には原料と触媒は再生することができる。モナチンはいくつかの試薬および中間体とサイズ、電荷および疎水性が類似するため、(アフィニティークロマトグラフィー法などのように)モナチンに対する強力なアフィニティーが存在しない限り、物理的分離は困難であろう。しかし、モナチン反応を他の反応と共役させて、系の平衡をモナチン生産の側へとシフトさせることはできる。以下は、トリプトファンまたはインドール−3−ピルビン酸から得られるモナチンの収量を高める方法の例である。
【0239】
オキサロ酢酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.3)を使用する共役反応
図11はこの反応の図解である。トリプトファンオキシダーゼおよびカタラーゼを使用して反応をインドール−3−ピルビン酸生産の方向へ導く。カタラーゼは過剰に使用して、過酸化水素が逆方向の反応に、または酵素または中間体の破壊に、利用されないようにする。カタラーゼ反応時には酸素が再生される。あるいはインドール−3−ピルビン酸を基質として使用することができる。
【0240】
MPのアミノ化ではアスパラギン酸をアミノ基供与体として使用し、またアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを利用する。理想的には、MP→モナチン反応よりもトリプトファン/インドール−3−ピルビン酸反応に対する特異性が低いアミノトランスフェラーゼを使用して、アスパラギン酸がインドール−3−ピルビン酸の再アミノ化に利用されないようにする。オキサロ酢酸のピルビン酸と二酸化炭素への変換にはオキサロ酢酸デカルボキシラーゼ(Pseudomonas sp.由来)を添加することができる。COは揮発性であるため、酵素との反応には利用されず、逆反応を減らし、場合によって防止する。このステップで生産されるピルビン酸はアルドール縮合反応に利用することができる。他のデカルボキシラーゼ酵素を使用することもできるし、また以下の生物ではホモログの存在が知られている:Actinobacillus actinomycetemcomitans、Aquifex aeolicus、Archaeoglobus fulgidus、Azotobacter vinelandii、Bacteroides fragilis、Bordetella属の数種、Campylobacter jejuni、Chlorobium tepidem、Chloroflexus aurantiacus、Enterococcus faecalis、Fusobacterium nucleatum、Klebsiella pneumoniae、Legionella pneumophila、Magnetococcus MC−1、Mannheimia haemolytica、Methylobacillus flagellatus KT、Pasteurella multocida Pm70、Petrotoga miotherma、Porphyromonas gingivalis、Pseudomonas属の数種、Pyrococcus属の数種、Rhodococcus、Salmonella属の数種、Streptococcus族の数種、Thermochromatium tepidum、Thermotoga maritima、Treponema pallidum、およびVibrio属の数種。
【0241】
トリプトファンアミノトランスフェラーゼ・アッセイを、実施例1で開示したようなE. coli由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspC)、E. coli由来のチロシンアミノトランスフェラーゼ(TyrB)、L. major由来の広基質アミノトランスフェラーゼ(BSAT)、およびブタ心臓由来の2つのグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼを使用して行った。オキサロ酢酸とα−ケトグルタル酸は共にアミノ基受容体として試験した。モナチン使用の場合の活性(実施例7)とトリプトファン使用の場合の活性の比を比較して、モナチンアミノトランスフェラーゼ反応に対する特異性が最も高い酵素はどれかを調べた。これらの結果から、トリプトファン反応との対比でモナチン反応に対する特異性が最も高い酵素はブタtypeII−Aグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼGOAT (Sigma G7005)であると判明した。この特異性は使用アミノ基受容体の種類とは無関係であった。従って、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼとの共役反応にはこの酵素を使用した。
【0242】
インドール−3−ピルビン酸から出発する代表的な反応系は(終濃度)50mM Tris−HCl pH 7.3、6mMインドール−3−ピルビン酸、6mM ピルビン酸ナトリウム、6mMアスパラギン酸、0.05mM PLP、3mMリン酸カリウム、3mM MgCl、25μg/mL アミノトランスフェラーゼ、50μg/mL C. testosteroni ProAアルドラーゼ、および3 U/mLデカルボキシラーゼ(Sigma O4878)を含んだ。反応は26℃で1時間進行させた。場合によってはデカルボキシラーゼを省いたか、またはアスパラギン酸の代りにα−ケトグルタル酸を(陰性対照として)使用した。前述のアミノトランスフェラーゼ酵素もまた、GOATの代りに試験して、当初の特異性実験を確認するようにした。サンプルは実施例10に記載の要領でろ過し、LC/MSで分析した。その結果から、GOAT酵素は最大量のモナチン/mg−タンパク質を生産し、最小量のトリプトファンを副生物として生産することが明らかとなった。加えて、デカルボキシラーゼ酵素の添加には2〜3倍の利益があった。E. coli AspC酵素もまた他アミノトランスフェラーゼと比較して大量のモナチンを生産した。
【0243】
モナチン生産は次の方法によって増大した:1)追加量の2mMインドール−3−ピルビン酸、ピルビン酸およびアスパラギン酸の周期的な(半時間または1時間ごとの)添加、2)嫌気性環境または脱気バッファー中での反応の実行、3)終夜反応進行の許容、および凍結融解を何度も繰り返していない調製し立てのデカルボキシラーゼの使用。デカルボキシラーゼは12mM超の濃度のピルビン酸によって抑制された。4mM超のインドール−3−ピルビン酸濃度では、インドール−3−ピルビン酸との副反応が速まった。反応系へのインドール−3−ピルビン酸の使用量は、アルドラーゼの使用量を増やす限りで、増やすことができよう。高濃度のリン酸(50mM)およびアスパラギン酸(50mM)はデカルボキシラーゼ酵素に対し抑制作用を及ぼすことが判明した。デカルボキシラーゼ添加量は0.5U/mLに引き下げても、1時間の反応ではモナチン生産量の低下を招かなかった。温度を26℃から30℃へと、また30℃から37℃へと、高めるとモナチン生産量が増加したが、37℃ではインドール−3−ピルビン酸との副反応も速まった。モナチン生産量はpHを7から7.3に高めると増加し、pH 7.3−8.3では比較的安定した。
【0244】
トリプトファンから出発する代表的な反応系は(終濃度)50mM Tris−HCl pH 7.3、20mMトリプトファン、6mMアスパラギン酸、6mM ピルビン酸ナトリウム、0.05mM PLP、3mMリン酸カリウム、3mM MgCl、25μg/mL アミノトランスフェラーゼ、50μg/mL C. testosterone ProAアルドラーゼ、4 U/mLデカルボキシラーゼ、5−200mU/mL L−アミノ酸オキシダーゼ(Sigma A−2805)、168U/mLカタラーゼ(Sigma C−3515)、および0.008 mg FADを含んだ。反応は30℃で30分間進行させた。デカルボキシラーゼを添加すると改善が認められた。最高量のモナチンが生産されたのは50mU/mLのオキシダーゼを使用したときであった。インドール−3−ピルビン酸を基質として使用したときも同様の改善が認められた。更に、モナチン生産量は次の場合も増加した:1)トリプトファン濃度が低い(すなわちアミノトランスフェラーゼ酵素のKを下回り、従って活性部位においてMPと対抗しえない)、および2)オキシダーゼのアルドラーゼおよびアミノトランスフェラーゼに対する比が、インドール−3−ピルビン酸の蓄積を不可能にするようなレベルに維持される。
【0245】
インドール−3−ピルビン酸、トリプトファンのいずれから出発しようが、1−2時間のインキュベーションによるアッセイでのモナチン生産量は、酵素比を同じに保ったまま諸々の酵素の使用量を2−4倍にすると、増加した。いずれの基質を使用しても、約1mg/mLのモナチン濃度が達成された。インドール−3−ピルビン酸から出発する場合にはトリプトファン生産量は生成物の生産量の20%未満が一般的であったが、それは共役反応を使用することが有利であることを示す。中間体濃度および副反応のさらなる最適化と制御により、生産性と収量を大幅に改善することが可能である。
【0246】
リシンεアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.36)を使用する共役反応
リシンεアミノトランスフェラーゼ(L−リシン6−トランスアミナーゼ)は数種の生物例えばRhodococcus、Mycobacterium、Streptomyces、Nocardia、Flavobacterium、Candida utilisおよびStreptomycesなどで発見されている。生物はこの酵素をある種のβ−ラクタム抗体の産生で第1ステップとして利用している(Rius and Demain,J. Microbiol. Biotech.,7:95−100,1997)。この酵素はリシンのC−6のPLP依存性アミノ基転移反応により、α−ケトグルタル酸をアミノ基受容体として使用して、リシンをL−2−アミノアジピン酸6−セミアルデヒド(アリシン)へと変換する。アリシンは不安定であり、自然に分子内脱水を起こして1−ピペリジン6−カルボン酸という環状分子を形成する。これは逆反応の発生を効果的に抑制する。反応スキームは図12のとおりである。代替酵素として、リシン−ピルビン酸6−トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.71)を使用することもできる。
【0247】
代表的な反応系は1mL中に50mM Tris−HCl pH 7.3、20mMインドール−3−ピルビン酸、0.05mM PLP、6mMリン酸カリウムpH 8、2−50mMピルビン酸ナトリウム、1.5mM MgCl、50mMリシン、100μgアミノトランスフェラーゼ(リシンεアミノトランスフェラーゼLAT−101;BioCatalytics,Pasadena,CA)、および200μg C. testosterone ProAアルドラーゼ含んだ。モナチン生産量はピルビン酸濃度の上昇に伴って増加した。これらの反応条件(ピルビン酸濃度50mM)による最大生産量はオキサロ酢酸デカルボキシラーゼを使用する共役反応の場合の10分の1(約0.1mg/mL)であった。
【0248】
[M+H]=293のピークはモナチンに関する予期時点で溶出し、またその質量スペクトルは他の酵素法で観測されたものと同じフラグメントをいくつか含んでいた。正確な質量/電荷比(293)をもつ第2ピークは実施例6で生産されたS,Sモナチンの場合に一般的に観測されるよりもやや早めに溶出したが、もう1つのモナチン異性体の存在を示唆するかもしれない。この酵素ではトリプトファンはほとんど生産されなかった。しかし、ピルビン酸に対するなんらかの活性は存在しそうである(アラニンを副生物として生産)。また、この酵素は不安定であることが知られている。定方向進化実験により、安定性を高め、ピルビン酸に対する活性を低くし、MPに対する活性を高めるなどの改善を図ることができよう。これらの反応は前述のようにL−アミノ酸オキシダーゼ/カタラーゼと共役させることもできる。
【0249】
他の共役反応
トリプトファンまたはインドール−3−ピルビン酸から生産されるモナチンの収量を高めることができるもう1つの共役反応を図13に示す。ギ酸デヒドロゲナーゼ (EC 1.2.1.2または1.2.1.43)は一般的な酵素であり、NADHを必要とするものもあれば、NADPHを利用するものもある。グルタミン酸デヒドロゲナーゼはアンモニウム系バッファーを使用してモナチン前駆体とモナチンの間の相互変換を触媒した。ギ酸アンモニウムとギ酸デヒドロゲナーゼの存在は効率的な補因子再生系であり、二酸化炭素の生産は逆反応速度を低下させる効率的な方法である(Bommarius et al.,Biocatalysis 10:37,1994;Galkin et al. Appl. Environ. Microbiol. 63:4651−6,1997)。更に、大量のギ酸アンモニウムが該反応バッファー中に溶解可能である。グルタミン酸デヒドロゲナーゼ反応(または類似の還元的アミノ化反応)によって生産されるモナチンの収量はギ酸デヒドロゲナーゼおよびギ酸アンモニウムの添加によって高めることができる。
【0250】
他の方法も平衡をモナチン生産の方向へシフトするために使用しうる。例えば、米国特許第5,360,724号および5,300,437号明細書で開示されているものなどのようなω−アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.18)によるMP→モナチン変換でアミノプロパンをアミノ基供与体として利用する場合には、生成物の1つはアセトンであろうが、これは基質のアミノプロパンよりも更に揮発性である。温度を周期的に短時間上昇させればアセトンを瞬時に留去し、以って平衡の緩和を図ることができる。アセトンは沸点が47℃であり、この温度なら短時間使用しても中間体を分解する可能性はない。α−ケトグルタル酸に対して活性をもつほとんどのアミノトランスフェラーゼはモナチン前駆体に対しても活性をもつ。同様に、グリオキシル酸/アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.60)をアミノ基供与体としてのグリシンと併用する場合には、グリシル酸が生成されるが、それは比較的不安定で、沸点がグリシンよりもずっと低い。
【0251】
[実施例14]
モナチンを含有する個包装調製品
モナチンを含有する個包装調製品は、砂糖小さじ約2杯分(約8mg)の甘味をもたらすように調製する。
【0252】
A. S,Sモナチン個包装調製品(含有量/グラム)
デキストロース 787mg
S,Sモナチン 200mg
タルタルクリーム 10mg
ケイ酸カルシウム 3mg
B. R,R/S,Sモナチン個包装調製品(含有量/グラム)
デキストロース 700mg
マルトデキストリン 292mg
S,Sモナチン 4mg
R,Rモナチン 4mg
C. R,R/S,Sモナチン個包装調製品(含有量/グラム)
マルトデキストリン添加造粒デキストロース* 992mg
【0253】
S,Sモナチン 4mg
R,Rモナチン 4mg
* 例えばCPC International,Inc.のUnidex(登録商標)Agglomerated Dextrose 02540(2034)。
【0254】
D. R,Rモナチン個包装調製品(含有量/グラム)
デキストロース 500mg
マルトデキストリン 495mg
R,Rモナチン 5mg
E. R,Rモナチンのハーフサイズ立方体(含有量/グラム)
マルトデキストリン 999mg
R,Rモナチン 1mg
[実施例15]
モナチン使用の個包装調製品のためのレシピ
以下は前述のようなモナチン個包装調製品を砂糖代替品としてベーキング等のレシピに使用するための例である。以下のレシピに従って作られる含モナチン飲食品は満足な仕上がりになり、また砂糖を使用して作られる同飲食品に匹敵する品質を備えることが目指される。
【0255】
レモネード:
レモン果汁大さじ2杯とモナチン個包装調製品3個(3g)を背の高いグラスに入れ、水カップ3/4と混ぜる。氷を加える。このモナチン甘味レモネードは、小さじ6分(24g)のショ糖で甘味を付与したレモネードに比して、ほぼ同等の甘味を呈し同等に好まれようし、また著しく低カロリーであろう(96カロリー対約0カロリー)。
【0256】
ホイップクリーム:
冷水 カップ1/3
レモン果汁 小さじ1+1/4
バニラ 小さじ1/2
脱脂粉乳粉末 カップ1/3
個包装モナチン砂糖代替品3個(前記C例による)
水、レモン果汁、バニラを混ぜる。かき混ぜながら脱脂粉乳の粉末を入れる。10分間または固まるまで激しくかき混ぜる。モナチン砂糖代替品を加えて2分間激しくかき混ぜる。
【0257】
無ショ糖スポンジケーキのデータシート:
材料 %w/w
薄力粉 20.42
水 18.62
全卵 18.2
ポリデキストロース 17.23
ハイレシオショートニング 13.44
ソルビトール粉末 8.62
スキムミルク粉末 1.66
ベーキングパウダー 1.24
塩 0.31
R,Rモナチン(好みにより) 0.010−0.040
ケーキ100gにつき(例えば個包装の卓上モナチン甘味料3−10個分に相当する)10−40mgのR,Rモナチンが使用される。
【0258】
[実施例16]
モナチンを含有する即使用可能調製品
1対1代替タイプの即使用可能調製品はグラニュー糖の代用となる。モナチン調製品は砂糖と同じ容量にもなるため、グラニュー糖の直接同等代替品としてそのまま飲食品に添加し、またはベーキングにそのまま使用してもよい。
【0259】
A. S,Sモナチンの即使用可能調製品(含有量/グラム)
加水分解でんぷん 188mg
マルトデキストリン 800mg
S,Sモナチン 10mg
グルコン酸ナトリウム 2mg
B. R,Rモナチンの即使用可能調製品(含有量/グラム)
マルトデキストリン 999.5mg
R,Rモナチン 0.5mg
C. R,R/S,Sブレンドの即使用可能調製品(含有量/グラム)
マルトデキストリン 972.5mg
タルタルクリーム 20mg
ケイ酸カルシウム 4mg
S,Sモナチン 3.1mg
R,Rモナチン 0.4mg
[実施例17]
モナチンを含有する即使用可能調製品のためのレシピ
以下は前述のような1対1代替タイプのモナチン即使用可能調製品を砂糖代替品としてベーキング等のレシピに使用するための例である。以下のレシピに従って作られる含モナチン飲食品は満足な仕上がりになり、また砂糖を使用して作られる同飲食品に匹敵する品質を備えることが目指される。
【0260】
フレンチシルクパイ:
パイの皮
砕いたグラハムクラッカー カップ1
粗刻みのペカン カップ1
スティックバター 1本
以上のパイ皮材料を混ぜて、9インチのパイ皿に敷く。300℃で30分間焼く。
パイの詰め物
無糖チョコレート 2かけ
スティックバター 2本
モナチン即使用可能調製品 カップ1+1/2(実施例16−B)
バニラ 小さじ2
低温殺菌ずみ生卵 4個
無糖チョコレートを溶かし、室温に冷ます。バターと砂糖代替モナチンをクリーム状にする。クリーム状混合物にバニラと溶かしたチョコレートを加える。卵を1度に1個加え、各4分ずつ激しくかき混ぜる。冷えたパイ皮の上に流し込み、一晩冷蔵する。
【0261】
ブルーベリーマフィン:
注:砂糖は焼成食品には甘味の付与はもちろんテクスチャーや褐変でも重要である。このレシピでは砂糖の代りに少量の蜂蜜を使用して褐変と満足なテクスチャーを促進する。
【0262】
中力粉 カップ2
ベーキングパウダー 小さじ2
塩 小さじ3/4
ライトマーガリン(柔らかくしたもの) カップ1/2
モナチン即使用可能調製品 カップ1
蜂蜜 カップ1/4
大玉全卵 2個
バニラ 小さじ1
スキムミルク カップ1/2
ブルーベリー(生鮮または冷凍) カップ1
オーブンを350°Fに予熱する。マフィンカップ×10の内側にペーパーライナー入れる。別に、小麦粉、ベーキングパウダーおよび塩を一緒にふるいにかけておく。電動泡立て器でマーガリン、モナチン甘味料および蜂蜜を一緒に激しくかき混ぜ、軽くふわふわするまで泡立てる。卵を1個ずつ加えて、そのつど充分に泡立てる。バニラを加えてよくかき混ぜる。あるいは小麦粉ミックスとミルクを加えてかき混ぜるが、最初と最後には小麦粉ミックスがくるようにする。ブルーベリーを混ぜ入れる。ペーパーライナーを入れたマフィンカップに衣用生地をスプーンで入れ、25〜30分ほど焼く。表面がキツネ色になるか、また爪楊枝を中心まで差し込んで抜き取ったときに付着物が見られなくなれば焼き上がり。型に入れたまま、10分間、ワイヤーラック上で冷ます。マフィンを型から取り出す。ワイヤーラック上で完全に冷ます。マフィン10個の出来上がり。
【0263】
イチゴバナナスムージー:
オレンジ果汁 カップ1
無脂肪プレーンヨーグルト カップ1
冷凍バナナ 1本
冷凍イチゴ カップ1
個包装モナチン調製品 6個(または
モナチン即使用可能調製品 カップ1/4)
材料をすべてミキサーに入れ、滑らかになるまで混合する。これで2人前になる。このスムージーは同じレシピで甘味料を砂糖カップ1/4に代えて作った場合よりも約33%低カロリーである。
【0264】
パイナップルオレンジシャーベット:
潰したパイナップル 1+1/4オンス缶×1
冷凍濃縮オレンジ果汁、解凍済み 6オンス缶×1
スキムミルク カップ3
濃縮スキムミルク カップ3/4
モナチン即使用可能調製品(例Bによる)カップ1/3
バニラ 小さじ1/2
スキムミルク、水切りしていないパイナップル、濃縮スキムミルク、濃縮オレンジ果汁、モナチン砂糖代替品、およびバニラを大きなボウルに入れて、モナチン砂糖代替品が溶けるまでかき混ぜる。容量4−または5−クォートのアイスクリームフリーザーに入れて、メーカーの説明書に従って凍らせる。15人前(カップ1/2)になる。
【0265】
レモンムース:
エバミルク 12オンス缶×1
すりおろしたレモンの皮 大さじ2
レモン果汁 2個分
モナチン即使用可能調製品(例Aによる)カップ1
砕いたグラハムクラッカー 12枚分
ゼリーロール鍋にミルクを流し込み、フリーザーに入れて薄い氷が張るまで、約2時間冷やす。ミルクを冷やしたボウルに移し、泡立てる。レモンの皮と果汁を、かき混ぜながら徐々に加える。モナチン調製品を加え、柔らかい角が立つまで泡立て続ける。盛り付け用の器に移し、砕いたグラハムクラッカーをまぶす。冷やすか冷凍して出してもよい。
【0266】
[実施例18]
モナチンを使用したデザートおよび菓子類
即使用可能モナチン組成物は業務用として、加工飲食品の生産に使用してもよい。
インスタントチョコレートプリンのデータシート
材料 %w/w
低温膨潤性でんぷん(Ultratex 4) 5.00
脱脂粉乳 14.00
ココア粉 2.5
マルトデキストリン 3.5
チョコレート香料 0.4
キサンタンガム 0.20
塩 0.15
レシチン粉末 0.25
リン酸二ナトリウム 0.17
R,Rモナチン(好みにより) 0.005−0.010
水 (加えて全体で) 100(%となる量)
これはプリン100gにつき(例えば個包装タイプの卓上モナチン甘味料2−3個分に当たる)5−10mgのR,Rモナチンに相当する。
【0267】
無糖チョコレートコーティング:
材料:
牛乳固形分 4.0−10%
チョコレート香料またはチョコレートリキュール
15.0−20%
ココアバター 0−10%
ココア 0−2%
マンニトール 5−10%
レシチン 0.3−0.5%
ポリデキストロース(ポリデキストロースKなど)
12−25%
S,Sモナチン0.10−0.5% またはR,Rモナチン0.007−0.015%または両者のブレンド
【0268】
植物性油 20−60%
これはコーティング100mgにつき、個包装タイプの卓上モナチン甘味料2−4個分の使用量に当たる。
【0269】
無糖チョコレート:
材料:
ココア 大さじ2−3
バター(代用品は不可) 大さじ2
生クリーム 大さじ2
バニラエッセンス 小さじ1/4
ピーナッツバター(crunchy/creamy) 大さじ1
個包装タイプの卓上モナチン 6個
[実施例19]
卓上甘味料としてのモナチンの評価
R,RモナチンまたはR,Rモナチン/エリトリトールを含有する卓上モナチン調製品を、コーヒーとアイスティーに使用した場合で、他の公知甘味料(アスパルテームとスクラロース)と比較して評価した。評価対象の主要官能パラメーターは甘味の質、後味、苦味とその後味などである。定性的評価はすでに行われている。
【0270】
飲料の調製
(i)コーヒー
標準コーヒーを使用して甘味料の性能を評価した(表7)。
【0271】
表7 コーヒー飲料
【0272】
【表6】

【0273】
コーヒーに添加した甘味料の濃度は次のとおりである:
アスパルテーム 0.025%(w/v)
スクラロース 0.0082%(w/v)
R,Rモナチン 0.0020,0.0025,0.0030%(w/v)
【0274】
+ マルトデキストリン1g
R,Rモナチン/エリトリトール 0.0020,0.0025,0.0030%(w/v)
【0275】
+ エリトリトール
(ii)アイスティー飲料
アイスティーを調製して甘味料の性能を評価した(表8):
【0276】
表8 アイスティー飲料
【0277】
【表7】

【0278】
アイスティーに添加した甘味料の濃度は次のとおりである:
アスパルテーム 0.0450%(w/v)
スクラロース 0.0170%(w/v)
R,Rモナチン 0.0030,0.0035,0.0040%(w/v)
【0279】
+ マルトデキストリン1g
R,Rモナチン/エリトリトール 0.0030,0.0035,0.0040%(w/v)
【0280】
+ エリトリトール
官能評価
これらのコーヒー、アイスティー飲料の評価は経験を積んだ官能評価員の小規模(n=6)パネルによって、それぞれ試飲の機会を分けて行われた。評価結果を表9にまとめる。
【0281】
表9 コーヒーとアイスティー(1人前各200ml)の官能評価
【0282】
【表8】

【0283】
考察
モナチンは卓上甘味料調製品にすると、明確な官能面の利点を含めて、意外な性能面の利点をもたらす。コーヒーに加える卓上調製品に使用すると、コーヒーの風味が明らかに引き立つ。こうした利点は低濃度のエリトリトールを加えると更に強まる。このエリトリトールは風味をバランス良くし、まろやかにし、また甘味の到来を速める。アイスティー特に(レモンで)酸味を加えた酸性のアイスティーでは、モナチンはレモンの香りを引き立てる。この場合もモナチンにエリトリトールを混ぜると風味が更に引き立つ。
【0284】
モナチンは官能特性の改善(すなわち後味の抑制、味・香りの変化の抑制)および/または溶解度や安定性の向上をもたらす。
【0285】
モナチンで甘味を付与したコーヒーは0カロリーに近いが、ショ糖小さじ2杯(〜8g)で甘くしたコーヒーは32カロリーになる。
【0286】
[実施例20]
モナチンとサッカリンの甘味の用量反応曲線
訓練を積んだ官能評価員20人を使用して、2回判定してもらうことで、モナチンとサッカリンの甘味を評価した。クエン酸/クエン酸塩バッファーpH 3.2を使用して試験溶液と標準溶液を調製した。図16を参照。反応曲線はサッカリンと比べてR,R/S,Sモナチンのほうが直線的であり、これは、より砂糖に近い味質特性を示すことを反映している。10%SEVの上の高原横ばいは、味・香りの変化および後味「抑制混合物」の不存在/低濃度を示唆する。モナチンの用量反応曲線の形状はアスパルテーム、スクラロースおよびアリテームのそれに類似するが、それらはいずれも「高級」甘味料である。
【0287】
R,R/S,Sモナチンをモデル系(pH 3.2)の単一甘味料とした場合、風味付けしていない系で次のような特性が観測された:(1)甘味到来のわずかな遅延;(2)甘味消失がきわめて急速;(3)かすかな「アスパルテーム様」後味、かすかに甘い後味、苦味を伴わない後味;および(4)口中に残る清涼感。
【0288】
[実施例21]
pH 3で温度を高くした場合のモナチンの安定性
合成モナチンのサンプルについてpH 3のまま、温度を25℃、50℃および100℃にした場合の変化を調べた。室温では、48時間でモナチンが14%消失した。この消失はラクトンの形成に起因した。50℃では48時間で23%のモナチンの消失が観測された。この消失はラクトンの形成と約15.5分後の未知化合物の蓄積に起因した。100℃では、モナチンは24時間後にほぼすべて消失した。検出可能な主要化合物は15.5分後の未知化合物であった。
【0289】
[実施例22]
40℃でpH 2.5、3.0、4.0の場合のモナチンとアスパルテームの官能安定性
pH 2.5、3.0および4.0で調製し、40℃で保存したモナチン溶液の官能安定性を100日間モニターした。これらの溶液からの甘味の消失を同じ条件で調製し保存したアスパルテーム溶液からの甘味の消失と比較した。
【0290】
pH 2.5、3.0および4.0のリン酸/クエン酸バッファーで調製したモナチン(8%SEV、〜55ppm、2R,4R/2S,4S鏡像異性体ペア約96%と2R,4S/2S,4R鏡像異性体ペア約4%を含有する合成ブレンド)溶液の官能安定性を40℃で保存して調べた。その安定性を同じバッファーを使用して調製したアスパルテーム溶液(400ppm)の安定性と比較した。3種類のショ糖標準溶液を、モナチン溶液、アスパルテーム溶液の場合と同じバッファーを使用して調製した。調製した溶液はすべて暗所に保存した。
【0291】
バッファー組成:
pH 2.5 リン酸(75%溶液)0.127%(w/v)
クエン酸三ナトリウム一水和物0.005%(w/v)
pH 3.0 リン酸(75%溶液)0.092%(w/v)
クエン酸三ナトリウム一水和物0.031%(w/v)
pH 4.0 リン酸(75%溶液)0.071%(w/v)
クエン酸三ナトリウム一水和物0.047%(w/v)
ショ糖と比較した場合の各甘味料の甘味を、甘味評価法の訓練を受け経験を積んだ官能評価員の小パネル(n=8)に2回評価させた。サンプルはすべて(バッファーに溶かして)22℃±1℃の温度で2回、試験に供した。モナチン(試験)溶液は3桁の乱数コードを付し、パネリストに対し個別に、無作為順に供した。濃度が0.5%(w/v)刻みで上昇する4.0〜10.0%(w/v)の範囲内のショ糖標準品もまた供した。パネリストは試験溶液をショ糖標準品と比較して甘味を評価するよう求められた。これは試験溶液を3口、水を1口、ショ糖標準品を3口、水を1口順次飲むといった手順で行った。パネリストは甘味を小数第1位まで、例えば6.8、8.5というように判定するよう求められた。試験溶液の評価は5分間の休憩時間を間に挟んで行う。パネリストはまた、口を充分にすすぎ、クラッカー1個を食べて、潜在的な持ち越し効果を小さくするよう求められた。
【0292】
表10および11はクエン酸リン酸バッファーを使用した安定性試験の結果である。どのpHでも暗所に40℃で100日保存後は、モナチンの甘味維持率のほうがアスパルテームの甘味維持率よりも高かった。pH 4.0では、17日目〜100日目の間では甘味の評価値にほとんど変化がなかったので、モナチン溶液の甘味の消失はほぼ横ばいだった模様である。
【0293】
表10 モナチンの官能安定性:40℃で100日保存後の甘味
【0294】
【表9】

【0295】
A:pH 2.5
B:pH 3.0
C:pH 4.0
【0296】
表11 安定性:表示pH、40℃で100日保存後の甘味維持率
【0297】
【表10】

【0298】
表12に見られるように、各バッファーはpHの維持に有効であった。
【0299】
表12
【0300】
【表11】

【0301】
擬一次分解反応を想定すると、log維持率対時間(log %RTNv.t)のグラフから任意の設定条件下での甘味消失の半減期(t1/2)と速度定数(k)を推定することができる。そうすると、モナチンとアスパルテームの甘味消失の速度論は表13のようにまとめられよう。
【0302】
表13
【0303】
【表12】

【0304】
どのpHでも40℃で100日保存後は、モナチンの甘味維持率のほうがアスパルテームの甘味維持率よりも高い。pH 4.0では、17日目〜100日目の間で甘味の評価値にほとんど変化がなかったので、モナチン溶液の甘味消失はほぼ横ばいだった模様である。一方、アスパルテーム溶液では甘味の消失が続く。
【0305】
モナチンとアスパルテームの半減期の推定値は、モナチンに由来する甘味のほうがアスパルテームに由来する甘味よりも消失速度が遅いことを示す。pH 2.5、3.0および4.0でのモナチンの推定半減期はそれぞれ65日、115日および230日であった。同じ条件下でのアスパルテームの推定半減期はそれぞれ55日、75日および140日であった。
【0306】
従って酸性条件下、40℃での保存では、モナチンはアスパルテームよりもより安定した甘味を呈する。
【0307】
[実施例23]
エリトリトール/モナチン粉の生産
小タンクを使用してエリトリトール2000g、R,Rモナチン16gおよび水5Lの溶液を40℃で調製する。エリトリトール58kgを流動床のバスケットに入れる。流動床の空気温度は65℃に設定する。モナチン/エリトリトール溶液を流動床上に25kg/時で17分間噴霧する。粉末の乾燥には更に20分の加熱が必要である。生成物を1250mmの篩にかけて篩い分ける。欧州特許第0325791B1号明細書(Mitsubishi,Nikken 1993)を参照。モナチン/エリトリトール生成物の(ショ糖と比較した場合の)相対甘味計算値は約1.10である。2つのモナチン/エリトリトール・サンプルと1つのモナチン/マルトデキストリン・サンプルとで3点比較法を行う。3点比較法は技術上周知である。即使用可能タイプの立方体状モナチン/エリトリトールはショ糖に酷似する色および結晶性を有するものと期待される。
【0308】
[実施例24]
モナチン立体異性体のクロマトグラフィー
サンプルの調製−凍結乾燥品約50−75μgをマイクロ遠心チューブに入れた。これにHPLC用メタノール1.0mLを加えた。この溶液を30分間ボルテックスし、遠心分離し、上清を分析用に分取した。
【0309】
逆相HPLC−2.1×250mm Xterra(登録商標)MS C 5μm (Waters Corporation)HPLCカラムを使用して2つの特徴あるジアステレオマー・ピークのクロマトグラフィーを行った。検出はUltima(登録商標)三連四重極質量分析計(Micromass)を使用して行った。移動相には次のグラジエントを用いた:
【0310】
時間(分) 0 9 16 20 21
0.05%TFA A% 95 65 10 10 95
【0311】
メタノール、0.05%TFA B% 5 35 90 90 5
送液量、mL/分 0.25 0.25 0.25 0.25 0.25
キラルHPLC−250×4.6mm Chirobiotic T (Advanced Separations Technologies,Inc.)HPLCカラムを使用して2つの特徴ある立体異性体のクロマトグラフィーを行った。検出はUltima(登録商標)三連四重極質量分析計(Micromass)を使用して行った。移動相はメタノール(0.2%酢酸と0.05%水酸化アンモニウムとを添加)からなった。
【0312】
質量分析(MS/MS)−モナチンの存在はSRM(selected reaction monitoring、選択反応検出)法で検出した。モナチンのプロトン化分子イオンはm/z=293.3である。この分子イオンのフラグメンテーションにより、分子イオンの多重脱水に由来する主要イオンがm/z=257.3に生成する。この遷移はモナチンにきわめて特異的であることがすでに示されており、SRM法での検出のための遷移(293.3→257.4)に選択された。この検出法はモナチンの逆相分離とキラル分離の両方に使用した。
【0313】
結果−R,S/S,RおよびS,S/R,Rモナチンの標準サンプルを逆相HPLCで評価した。サンプルは誘導体化と酵素的光学分割により調製した。標準溶液のクロマトグラムを図17に示す。逆相分析に続いて、キラルクロマトグラフィーを行ってサンプル中の特定の異性体を評価した。標準S,SおよびR,Rモナチン溶液のキラルクロマトグラフィーを図18に示す。
【0314】
[実施例25]
高温(80℃)および中性pHでのモナチンの安定性
75ppmモナチンの100mL溶液pH 7をストック液として使用した。合成モナチンサンプルは約96%の2R,4R/2S,4Sエナンチオマー対と4%の2R,4S/2S,4Rエナンチオマー対を含んだ。サンプルは実験期間中、80℃、pH 7にインキュベートし、サンプル採取を0、1、2、3、4時間目、および1、2、4、7、14、21、35日目の各時点に行った。諸々の実験条件を2回繰り返した。
【0315】
逆相クロマトグラフィー使用のLC−MSによる分離と定量−合成モナチンの両ジアステレオマーピークについて反応曲線を確定した。5−150 ppmの範囲を一括し、合成モナチン標準品は脱イオン水に溶解した。2つのジアステレオマーピークの分離は3.9×150mm Novapak C18 (Waters Corporation)HPLCカラムを使用して行った。検出と定量には紫外−可視(UV)分光光度計および質量分析計(MS)の各検出部を直列に使用した。モナチンとそのラクトンの各ピークは279nmにUVmaxを有し、それが精密検出に役立った。定量は正イオンエレクトロスプレー法で293.3m/zおよび275.3m/zの選択イオン検出(SIM)スキャンによって行った。
【0316】
結果−中性pH(ベーキングやデザートでは一般的)では、モナチンの分解度は7−35日後でもわずかであると判明した。モナチンの経時的消失は、主要な副生物が環化反応とおそらくごく低レベルのラセミ化反応であるため、pHに大きく左右される。80℃、pH 7での実験中、ラセミ体RR/SSモナチンまたはそのラクトンの濃度変化は、定量に使用したLC−MSの精度限界内では、検出されなかった。このデータによれば、高温度、中性pHでのモナチンの安定性はベーキング条件に適うものと見込まれる。
【0317】
本発明の原理を適用しうる多数の可能な実施態様を考えると、例示の実施態様は本発明の具体例の一端にすぎないことは自明であり、本発明の範囲を限定するものと解されてはならない。例えば本明細書の開示から、モナチン甘味料組成物を固体形態ではなく濃縮液形態で製造し、特定の容量例えば1mLまたは0.35mLの該濃縮液が特定量例えば小さじ2杯分のグラニュー糖に匹敵する甘味を呈するようにもなしうることは当業者には自明であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モナチンまたはその塩、並びにエリトリトール、トレハロース、シクラミン酸塩、マルトデキストリン、デキストロースおよび繊維からなる群より選択される少なくとも1つの他成分を含有する即使用可能な(ready-to-use)甘味料組成物であって、該モナチンは立体異性的に過剰なR,Rモナチンであり、該組成物の一分量は同分量のグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する、即使用可能な甘味料組成物。
【請求項2】
小さじ1杯分に含まれるカロリーおよび糖質が小さじ1杯分のグラニュー糖の場合よりも少ない、請求項1に記載の即使用可能な甘味料組成物。
【請求項3】
1グラム中に0.4〜0.625mgのR,Rモナチンまたはその塩を含有する請求項1に記載の即使用可能な甘味料組成物であって、該モナチンまたは塩がS,S、S,RまたはR,Sモナチンまたはその塩を含まない、請求項1に記載の即使用可能な甘味料組成物。
【請求項4】
1グラム中に0.5〜1mgのR,Rモナチンまたはその塩を含有する請求項1に記載の即使用可能な甘味料組成物であって、該モナチンまたは塩がS,S、S,RまたはR,Sモナチンまたはその塩を含まない、請求項1に記載の即使用可能な甘味料組成物。
【請求項5】
エリトリトールを最高99.7%含有する、請求項に記載の即使用可能な甘味料組成物。
【請求項6】
モナチンまたはその塩を含有する均一な卓上甘味料組成物であって、該モナチンは立体異性的に過剰なR,Rモナチンであり、該組成物は(i)2mg超〜200mgの範囲の量のモナチンまたはその塩、該モナチンまたはその塩は0.9〜9.0グラムのグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する、並びに(ii)エリトリトール、トレハロース、シクラミン酸塩、マルトデキストリン、デキストロースおよび繊維からなる群より選ばれる少なくとも1つの他成分を含有する、卓上甘味料組成物。
【請求項7】
モナチンまたはその塩は小さじ2杯分のグラニュー糖に匹敵する甘味を呈する、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
2mg超〜5mgの範囲の量のモナチンまたはその塩を含有する、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
S,Sモナチンまたはその塩を含有しない、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
増量剤、キャリアー、繊維、糖アルコール、オリゴ糖、糖質、非モナチン高甘味度甘味料、栄養性甘味料、香料、風味増進剤、風味安定剤、酸味料、固結防止剤、および易流動剤から選択される少なくとも1つの他成分をさらに含む、請求項1または6に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1またはに記載の甘味料組成物を製造する方法であって、
ブドウ糖、トリプトファン、インドール−3−乳酸、インドール−3−ピルビン酸およびモナチン前駆体から選択される少なくとも1つの基質からモナチンまたはその塩を生産し;および
該モナチンと少なくとも1つの他成分とを混合して該甘味料組成物を製造すること、
を含む、ここで、該少なくとも1つの他成分は、エリトリトール、トレハロース、シクラミン酸塩、マルトデキストリン、デキストロースおよび繊維からなる群より選択される、方法。
【請求項12】
卓上甘味料であって、
8gのグラニュー糖と実質的に同一の甘味を有する組成物から本質的になる使いきり個包装調製物、該組成物は、2.0〜5.0mgの立体異性的に過剰なR,Rモナチンまたはその塩、および食物繊維を含有する、
を含む、卓上甘味料。
【請求項13】
即使用可能な(ready-to-use)甘味料組成物であって、
8gのグラニュー糖と実質的に同一の甘味を有する組成物から本質的になる使いきり個包装調製物、該組成物は、生合成経路で製造された2.0〜5.0mgの立体異性的に過剰なR,Rモナチンまたはその塩、およびモナチンを希釈するために使用される希釈剤、ここで、該希釈剤は、マルトデキストリン、デキストロース、エリトリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、アラビノガラクタン、グアールガム、ポリデキストロース、オリゴ糖、ラクトースおよびトレハロースから選択される少なくとも1つを含有する、
を含む、甘味料組成物。
【請求項14】
均一な卓上甘味料組成物であって、
8gのグラニュー糖と実質的に同一の甘味を有する組成物から本質的になる使いきり個包装調製物、該組成物は、生合成経路で製造された2.0〜5.0mgの立体異性的に過剰なR,Rモナチンまたはその塩、モナチンを希釈するために使用される希釈剤、および
食物繊維を含有する、
を含む、卓上甘味料組成物。
【請求項15】
均一な卓上甘味料であって、
8gのグラニュー糖と実質的に同一の甘味を有する組成物から本質的になる使いきり個包装調製物、該組成物は、生合成経路で製造された2.0〜5.0mgの立体異性的に過剰なR,Rモナチンまたはその塩、およびエリトリトールを含有する、
を含む、卓上甘味料。
【請求項16】
食物繊維をさらに含む、請求項13または15に記載の甘味料。
【請求項17】
増量剤、キャリアー、繊維、糖アルコール、オリゴ糖、糖質、非モナチン高甘味度甘味料、栄養性甘味料、香料、風味増進剤、風味安定剤、酸味料、固結防止剤、および易流動剤から選択される少なくとも1つの他成分をさらに含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の甘味料。
【請求項18】
マルトデキストリン、デキストロース、およびエリトリトールから選択される希釈剤をさらに含む、請求項12または15に記載の甘味料。
【請求項19】
前記希釈剤が、マルトデキストリンを加えた造粒デキストロースである、請求項14または18に記載の甘味料。
【請求項20】
前記モナチンが少なくとも90%のR,Rモナチンまたはその塩である、請求項12〜15のいずれか1項に記載の甘味料。
【請求項21】
前記モナチンが少なくとも95%のR,Rモナチンまたはその塩である、請求項20に記載の甘味料。
【請求項22】
前記使いきり個包装調製物が、1gの前記組成物を含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の甘味料。
【請求項23】
前記使いきり個包装調製物が、4gの前記組成物を含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の甘味料。
【請求項24】
前記使いきり個包装調製物が、8gの前記組成物を含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の甘味料。
【請求項25】
前記食物繊維が、イヌリン、アラビノガラクタン、加水分解グアールガム、ポリデキストロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、でんぷん、加工でんぷん、レジスタントスターチ、および耐性マルトデキストリンからなる群より選択される、請求項12、14および16のいずれか1項に記載の甘味料。
【請求項26】
前記モナチンが、石油化学系の、有毒な、または有害な不純物を含まない、請求項13または14に記載の甘味料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−95664(P2012−95664A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5608(P2012−5608)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【分割の表示】特願2006−522124(P2006−522124)の分割
【原出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(505040062)カーギル,インコーポレイティド (23)
【Fターム(参考)】