説明

モニタリングシステムおよびモニタリング方法

【課題】空気に含まれる揮発性有機化合物の濃度の上昇を遅滞なく検出でき、また、揮発性有機化合物の濃度が上昇した原因となる物質を特定できるモニタリングシステムを提供すること。
【解決手段】予め設定された計測時間ごとに監視対象となる空気に含まれる揮発性有機化合物の濃度を計測する計測装置2と、予め設定された捕集時間ごとに監視対象となる空気に含まれた揮発性有機化合物を逐次捕集する捕集装置3と、捕集装置3が逐次捕集した揮発性有機化合物をその捕集時刻と関連付けて管理し、計測装置2が計測した揮発性有機化合物の濃度が予め設定された濃度以上となった場合にその計測時刻を含む計測時間帯に捕集管により捕集した揮発性有機化合物を特定する管理装置4と、管理装置4が特定した揮発性有機化合物を定性定量分析する分析装置5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に含まれる有機化合物のモニタリングに好適なモニタリングシステムおよびモニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶デバイスを生産するクリーンルーム内の空気が分子状またはガス状の有機化合物によって汚染されると、生産される半導体や液晶デバイスに影響を与えることになり好ましくない。このため、クリーンルーム内の空気に含まれる有機化合物の濃度を計測し、有機化合物の濃度が予め設定された濃度以上となった場合に適切な処置を施すことが望まれている。
【0003】
クリーンルーム内の有機化合物の濃度をリアルタイムで計測する計測装置が知られている。たとえば、水晶振動子を用いた計測装置は、水晶振動子の共振周波数の変化から水晶振動子に付着した有機化合物の重量を求めることにより、有機化合物の濃度を計測する。水晶振動子はクリーンルーム内に設置され、共振周波数の変化は常時計測されるので、この計測装置は有機化合物の濃度をリアルタイムで計測する(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、空気に含まれる有機化合物を定性定量分析し、有機化合物を構成する物質とその物質量を分析する分析装置が知られている。分析装置は、ガスクロマトグラフと称されるもので、空気に含まれる有機化合物を分離・精製することにより、有機化合物を構成する物質とその物質量を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−180332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した計測装置は、計測した有機化合物を定性定量分析することができない。このため、計測装置だけでは、有機化合物の濃度が上昇した原因となる物質を特定できない。一方、上述した分析装置は、すぐに分析結果を得られない。このため、分析装置だけでは、有機化合物の濃度の上昇を遅滞なく検出できない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、空気に含まれる有機化合物の濃度の上昇を遅滞なく検出でき、また、有機化合物の濃度が上昇した原因となる物質を特定できるモニタリングシステムおよびモニタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、予め設定された計測時間ごとに監視対象となる空気に含まれる有機化合物の濃度を計測する計測装置と、予め設定された捕集時間ごとに監視対象となる空気に含まれた有機化合物を逐次捕集する捕集装置と、前記捕集装置が逐次捕集した有機化合物をその捕集時刻と関連付けて管理し、前記計測装置が計測した有機化合物の濃度が予め設定された濃度以上となった場合にその計測時刻を含む計測時間帯に捕集管により捕集した有機化合物を特定する管理装置と、前記管理装置が特定した有機化合物を定性定量分析する分析装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記モニタリングシステムにおいて、前記管理装置は、前記計測装置が計測した有機化合物の濃度が予め設定された濃度未満の場合にその計測時間帯に捕集管により捕集した有機化合物を特定し、前記捕集装置は、前記管理装置が特定した有機化合物を脱離することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、予め設定された計測時間ごとに監視対象となる空気に含まれる有機化合物の濃度を計測するとともに、予め設定された捕集時間ごとに監視対象となる空気に含まれる有機化合物を逐次捕集する一方、計測した有機化合物の濃度が予め設定された濃度以上となった場合にその計測時刻を含む計測時間帯に捕集管により捕集した有機化合物を定性定量分析することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記モニタリング方法において、計測した有機化合物の濃度が予め設定された濃度未満の場合にその計測時間帯に捕集した有機化合物を脱離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるモニタリングシステムは、予め設定された計測時間ごとに監視対象となる空気に含まれる有機化合物の濃度を計測するので、有機化合物の濃度の上昇を遅滞なく検出できる。また、予め設定された捕集時間ごとに監視対象となる空気に含まれた有機化合物を逐次捕集し、その捕集時刻と関連付けて管理するので、計測した有機化合物の濃度が予め設定された濃度以上となった場合にその計測時刻を含む計測時間帯に捕集管により捕集した有機化合物を特定し定性定量分析できる。これにより、有機化合物の濃度が上昇した原因となる物質を特定できる。
【0013】
本発明にかかるモニタリング方法は、予め設定された計測時間ごとに監視対象となる空気に含まれる有機化合物の濃度を計測するので、有機化合物の濃度の上昇を遅滞なく検出できる。また、予め設定された捕集時間ごとに監視対象となる空気に含まれた有機化合物を捕集し、計測した有機化合物の濃度が予め設定された濃度以上となった場合にその計測時刻を含む計測時間帯に捕集管により捕集した空気に含まれる有機化合物を定性定量分析できる。これにより、有機化合物の濃度が上昇した原因となる物質を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるモニタリングシステムを示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示した捕集装置の構造を示す概念図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態であるモニタリング方法を示すフローチャートである。
【図4】図4は、計測装置が計測した揮発性有機化合物の濃度を示す図である。
【図5】図5は、計測装置が計測した揮発性有機化合物の濃度を示す図である。
【図6−1】図6−1は、図5のA時に捕集した揮発性有機化合物の分析結果を示す図である。
【図6−2】図6−2は、図5のB時に捕集した揮発性有機化合物の分析結果を示す図である。
【図6−3】図6−3は、図5のC時に捕集した揮発性有機化合物の分析結果を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態であるモニタリング方法における計測時刻と捕集時刻との関係、計測時刻と分析に必要な時間との関係を示すタイムチャートである。
【図8】図8は、図7に示した計測時刻に得られた揮発性有機化合物の濃度を示す図である。
【図9】図9は、図8のD時に捕集した揮発性有機化合物の分析結果を示す図である。
【図10】図10は、図8のE時に捕集した揮発性有機化合物の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかるモニタリングシステムおよびモニタリング方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、半導体や液晶デバイスの生産または開発に用いるクリーンルーム内の空気に含まれる揮発性有機化合物(ケミカル汚染物質)のモニタリングに好適なモニタリングシステムおよびモニタリング方法を例に説明するが、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態であるモニタリングシステムを示すブロック図である。図1に示すように、本発明の実施の形態であるモニタリングシステムは、クリーンルーム内の空気に含まれる揮発性有機化合物をモニタリングするもので、計測装置2、捕集装置3、管理装置4、分析装置5を備えている。
【0017】
計測装置2は、監視対象となる空気に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の濃度をオンサイト(現地)でリアルタイムに計測するものである。計測装置2は、水晶振動子を用いたものや、光イオン化検出器を用いたもの等、任意のものを採用可能であるが、本実施の形態では、光イオン化検出器を用いた計測装置2を採用する。なお、光イオン化検出器を用いた計測装置2は、装着するPIDランプの種類(ガスの分離電圧)によって計測可能な揮発性有機化合物が異なるので、適切なPIDランプを装着する。
【0018】
計測装置2は、予め設定された計測時間ごとにクリーンルーム内の空気に含まれる揮発性有機化合物の濃度を計測し、その計測結果を管理装置4に出力する。計測時間は、1秒から30分の間で任意に設定可能である。なお、計測時間は、濃度を計測した時刻(計測時刻)からつぎに濃度を計測する時刻(計測時刻)までの時間であり、設定後は一定に保たれる。
【0019】
捕集装置3は、監視対象となる空気に含まれた揮発性有機化合物を逐次捕集するものである。
【0020】
捕集装置3は、予め設定された捕集時間ごとにクリーンルーム内の空気を導入するとともに、導入した空気に含まれる揮発性有機化合物を逐次捕集し、その捕集時刻情報と捕集した揮発性有機化合物を特定する情報とを管理装置4に出力する。捕集時間は任意に設定可能である。捕集装置3がクリーンルーム内の空気の捕集に要する時間は、1分〜数分であり、短時間での捕集が可能である。なお、捕集時間は、空気の導入を開始した時刻(捕集時刻)からつぎに空気の導入を開始する時刻(捕集時刻)までの時間であり、設定後は一定に保たれる。
【0021】
図2は、図1に示した捕集装置の構造を示す概念図である。図2に示すように、捕集装置3は、監視対象となる空気を導入する導入口31を有しており、クリーンルーム内の空気をこの導入口31から導入する。また、捕集装置3は、ターンテーブル32を備えている。ターンテーブル32は、監視対象となる空気を連続して捕集するためのもので、ターンテーブル32を周方向に等分する位置には、それぞれ捕集管33が搭載してある。そして、ターンテーブル32が停止すると、監視対象となる空気を導入する捕集管33が導入口31に臨み、クリーンルーム内の空気が捕集管33に導入可能となる。そして、捕集管33に導入された空気は捕集管33を流通することになる。
【0022】
捕集管33には、吸着剤34が充填してある。吸着剤34は、監視対象となる空気に含まれた揮発性有機化合物を吸着するもので、監視対象となる空気が吸着剤中を流通することにより、監視対象となる空気に含まれる揮発性有機化合物が吸着される。吸着剤34は、たとえば、Tenax−GR,Tenax−TA(商品名)などの固体吸着剤を用いる。
【0023】
吸着剤34に吸着された揮発性有機化合物は、加熱処理によって吸着剤34より脱離される。揮発性有機化合物の脱離に要する時間は、数秒から1分程度であり、短時間での脱離が可能である。分析装置5において揮発性有機化合物を定性定量分析する場合には、吸着剤34を加熱処理することにより、揮発性有機化合物を脱離させる。また、吸着剤34に吸着された揮発性有機化合物を解放する場合にも、吸着剤34を加熱処理することにより、揮発性有機化合物を脱離させる。このように揮発性有機化合物を脱離させた吸着剤34は再利用可能である。
【0024】
捕集装置3は、逐次捕集した揮発性有機化合物の捕集時刻と捕集した揮発性有機化合物を特定する情報とを管理装置4に出力する。揮発性有機化合物を特定する情報は、吸着剤34に揮発性有機化合物が吸着した捕集管33の情報であって、たとえば、捕集管33の搭載位置を特定することにより捕集した揮発性有機化合物を特定する。
【0025】
図1に示すように、管理装置4には、計測装置2および捕集装置3が接続してあり、計測装置2から出力した揮発性有機化合物の濃度情報と、捕集装置3から出力した捕集時刻情報および捕集した揮発性有機化合物を特定する情報とが入力される。
【0026】
管理装置4は、計測装置2が計測した揮発性有機化合物の濃度が予め設定された管理濃度値以上となった場合にその計測時刻を含む計測時間帯に捕集した揮発性有機化合物を特定するものである。管理装置4は、揮発性有機化合物の濃度と管理濃度値とを比較する比較手段41と、揮発性有機化合物の濃度が管理濃度値以上となった場合にその計測時刻を含む時間帯に捕集した揮発性有機化合物を特定する特定手段42とを備えている。
【0027】
比較手段41は、計測装置2から入力された揮発性有機化合物の濃度情報と予め設定された管理濃度値情報とを比較する。管理濃度値は任意に設定可能であり、管理装置4は揮発性有機化合物の濃度が管理濃度値以上となった場合に異常と判断する。なお、管理装置4は、異常と判断した場合に警告を発するようにしてもよい。
【0028】
特定手段42は、計測装置2から入力された揮発性有機化合物の濃度が管理濃度以上となった場合にその計測時刻を含む計測時間帯に捕集した揮発性有機化合物を特定する。計測時間帯は任意に設定可能であり、計測時刻以前の時間帯、計測時刻以後の時間帯、計測時刻前後の時間帯等任意に設定可能である。また、時間帯の長短についても任意に設定可能である。
【0029】
分析装置5は、管理装置4が特定した揮発性有機化合物を定性定量分析するもので、揮発性有機化合物を分離・精製することにより、揮発性有機化合物を構成する物質とその物質量を得る。分析装置5には、ガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
【0030】
図3は、本発明の実施の形態であるモニタリング方法を示すフローチャートである。
【0031】
図3に示すように、モニタリングを開始すると、計測装置2が計測を開始するとともに、捕集装置3が捕集を開始する。
【0032】
計測装置2が計測を開始すると、予め設定された計測時間ごとにクリーンルームの空気に含まれる揮発性有機化合物の濃度を計測する(ステップS1)。そして、計測により得た濃度情報は管理装置4に出力する。
【0033】
捕集装置3が捕集を開始すると、予め設定された捕集時間ごとにクリーンルームの空気を導入し、導入した空気に含まれた揮発性有機化合物を逐次捕集する(ステップS2)。具体的には、クリーンルームから導入した空気を捕集管33に導入し、導入した空気に含まれた揮発性有機化合物を捕集管33に充填した吸着剤34に吸着する。そして、吸着剤34に揮発性有機化合物が吸着した捕集管33は保管され、捕集時刻情報と揮発性有機化合物(捕集管33)を特定する情報とを管理装置4に出力する。なお、捕集に要する時間は、上述したように短時間であり、捕集時間(捕集時刻からつぎの捕集時刻までの時間)内に捕集可能である。
【0034】
管理装置4は、計測装置2から入力された揮発性有機化合物の濃度情報と予め設定された管理濃度値情報と比較する。そして、図4に示すように、揮発性有機化合物の濃度が管理濃度未満の場合に正常と判断し、図5に示すように、揮発性有機化合物の濃度が管理濃度値以上の場合に異常と判断する(ステップS3)。
【0035】
また、揮発性有機化合物の濃度が管理濃度値以上の場合には、その計測時刻を含む計測時間帯に捕集した揮発性有機化合物(捕集管33)を特定する(ステップS4)。
【0036】
分析装置5は、管理装置4が特定した揮発性有機化合物を定性定量分析する(ステップS5)。具体的には、特定された捕集管33を過熱処理することにより、捕集装置3において吸着剤34から揮発性有機化合物を脱離させ、分析装置5に供給する。分析装置5は捕集装置3から導入した揮発性有機化合物を定性定量分析することにより、揮発性有機化合物を構成する物質とその物質量を得る。なお、揮発性有機化合物の脱離に要する時間は、上述したように短時間であり、捕集時間(捕集時刻からつぎの捕集時刻までの間)内に脱離可能である。
【0037】
図5は、A時、B時、C時において、揮発性有機化合物の濃度が管理濃度値以上となった場合の例を示している。A時、B時、C時に捕集した揮発性有機化合物を定性定量分析すると、分析装置は図6に示す分析結果を得ることができる。なお、図6−1に示す分析結果はA時に捕集した揮発性有機化合物を構成する物質とその物質量を示すものであり、図6−2に示す分析結果はB時に捕集した揮発性有機化合物を構成する物質とその物質量を示すものである。また、図6−3に示す分析結果はC時に捕集した揮発性有機化合物を構成する物質とその物質量を示すものである。このようにして得られた分析結果は、予め標準物質により得られた検量線を用いて解析することにより、定性定量分析される。
【0038】
一方、揮発性有機化合物の濃度が管理濃度値未満の場合には、その計測時間帯に捕集した揮発性有機化合物(捕集管)を特定し(ステップS6)、当該揮発性有機化合物を脱離する。具体的には、吸着剤を加熱処理することにより、吸着剤から揮発性有機化合物を脱離させる(ステップS7)。
【0039】
図7は、本発明の実施の形態であるモニタリング方法における計測時刻と捕集時刻との関係、計測時刻と分析に必要な時間との関係を示すタイムチャートである。また、図8は、図7に示した計測時刻に得られた揮発性有機化合物の濃度を示す図である。図9は、図8のD時に捕集した揮発性有機化合物の分析結果(ガスクロマトグラム)を示す図、図10は、図8のE点における分析結果(ガスクロマトグラム)を示す図である。
【0040】
図7に示す例では、計測時間(計測時刻からつぎの計測時刻までの時間)および捕集時間(捕集時刻からつぎの捕集時刻までの時間)が20分に設定してあり、20分ごとにクリーンルームの空気に含まれる揮発性有機化合物の濃度を計測するとともにクリーンルームから導入した空気に含まれた揮発性有機化合物を捕集する。なお、図7に示す例では、計測時間と捕集時間とが同一の時間であり、計測時刻と捕集時刻とが同一の時刻となるが、計測時間と捕集時間とを同一に設定する必要はない。たとえば、計測時間を捕集時間より短く設定してもよいし、捕集時間よりも長く設定してもよい。
【0041】
そして、図8に示すように、D時(1:00)に計測した揮発性有機化合物の濃度が管理濃度値以上の場合には、D時を含む計測時間帯、たとえば、D時、に捕集した揮発性有機化合物を特定し、当該揮発性化合物を定性定量分析する。具体的には、D時に揮発性有機化合物を捕集した捕集管33を特定し、当該捕集管33に充填してある吸着剤34を過熱処理することにより、吸着剤34から揮発性有機化合物を脱離させ、定性定量分析する。なお、上述した例では、揮発性有機化合物の濃度が管理濃度以上となったD時に捕集した揮発性有機化合物を定性定量分析するが、D時以前(たとえば、0:40)に捕集した揮発性有機化合物を定性定量分析することも可能である。また、吸着剤34から揮発性有機化合物を脱離させるのに要する時間は、数秒〜1分程度の短時間であり、捕集時間内に吸着剤34から揮発性有機化合物を脱離させることが可能である。
【0042】
図9に示すように、分析結果(ガスクロマトグラム)からは、揮発性有機化合物を構成する物質とその物質量を得る。
【0043】
また、図8に示すように、E時(1:40)に計測した揮発性有機化合物の濃度が管理濃度値以上の場合には、E時を含む計測時間帯、たとえば、E時、に捕集した揮発性有機化合物を特定し、当該揮発性有機化合物を定性定量分析する。
【0044】
図10に示すように、分析結果(ガスクロマトグラム)からは、揮発性有機化合物を構成する物質とその物質量を得る。
【0045】
さらに、図8に示すように、F時(2:00)に計測した揮発性有機化合物の濃度も管理濃度値以上となるが、直前の計測時刻(E時)における揮発性有機化合物の濃度とほぼ同一の濃度であることから、F時に捕集した揮発性有機化合物の分析結果とE時に捕集した揮発性有機化合物の分析結果とはほぼ同一のものとなると想定できる。このため、F時に捕集した揮発性有機化合物の定性定量分析を省略してもよい。このように、一定の条件の下に定性定量分析を省略することにより、定性定量分析に要する作業負担は軽減する。なお、定性定量分析の省略は、マニュアルによるものでもよいし、一定条件を満たす場合に実行するプログラムによるものでもよい。
【0046】
上述した本発明の実施の形態であるモニタリングシステムおよびモニタリング方法は、予め設定された計測時間ごとにクリーンルーム内の空気に含まれる揮発性有機化合物の濃度を計測するので、揮発性有機化合物の濃度の上昇を遅滞なく検出できる。また、予め設定された捕集時間ごとにクリーンルーム内の空気に含まれた揮発性有機化合物を逐次捕集し、その捕集時刻と関連付けて管理するので、計測した揮発性有機化合物の濃度が予め設定された濃度以上となった場合にその計測時間を含む計測時間帯に捕集した揮発性有機化合物を特定し定性定量分析できる。これにより、空気に含まれる揮発性有機化合物の濃度の上昇を遅滞なく検出でき、また、揮発性有機化合物の濃度が上昇した原因となる物質を特定できる。
【0047】
また、計測装置2が計測した揮発性有機化合物の濃度が管理濃度値に満たない場合にその計測時間帯に捕集した揮発性有機化合物を吸着剤34から脱離(クリーニング)させるので、吸着剤34を再利用できる。
【0048】
なお、クリーンルームのモニタリングについて説明したが、これに限られるものではなく、室内環境中の揮発性有機化合物(VOC)のモニタリング、作業環境中の揮発性有機化合物(VOC)のモニタリング、土壌から発生する揮発性有機化合物(VOC)のモニタリングにも適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
2 計測装置
3 捕集装置
31 導入口
33 捕集管
34 吸着剤
4 管理装置
41 比較手段
42 特定手段
5 分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された計測時間ごとに監視対象となる空気に含まれる有機化合物の濃度を計測する計測装置と、
予め設定された捕集時間ごとに監視対象となる空気に含まれた有機化合物を逐次捕集する捕集装置と、
前記捕集装置が逐次捕集した有機化合物をその捕集時刻と関連付けて管理し、前記計測装置が計測した有機化合物の濃度が予め設定された濃度以上となった場合にその計測時刻を含む計測時間帯に捕集管により捕集した有機化合物を特定する管理装置と、
前記管理装置が特定した有機化合物を定性定量分析する分析装置と
を備えたことを特徴とするモニタリングシステム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記計測装置が計測した有機化合物の濃度が予め設定された濃度未満の場合にその計測時間帯に捕集管により捕集した有機化合物を特定し、前記捕集装置は、前記管理装置が特定した有機化合物を脱離することを特徴とする請求項1に記載のモニタリングシステム。
【請求項3】
予め設定された計測時間ごとに監視対象となる空気に含まれる有機化合物の濃度を計測するとともに、予め設定された捕集時間ごとに監視対象となる空気に含まれる有機化合物を逐次捕集する一方、
計測した有機化合物の濃度が予め設定された濃度以上となった場合にその計測時刻を含む計測時間帯に捕集管により捕集した有機化合物を定性定量分析することを特徴とするモニタリング方法。
【請求項4】
計測した有機化合物の濃度が予め設定された濃度未満の場合にその計測時間帯に捕集した有機化合物を脱離することを特徴とする請求項3に記載のモニタリング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図6−3】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate