説明

モノアミン神経伝達物質再取込み阻害剤としての新規な置換アリールオキシアルキルアミン及びそれらの使用

本発明は、モノアミン神経伝達物質再取込み阻害剤として有用な新規な置換アリールオキシアルキルアミンに関する。他の態様において、本発明は、治療方法におけるこれらの化合物の使用に、及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモノアミン神経伝達物質再取込み阻害剤として有用な新規な置換アリールオキシアルキルアミンに関する。
【0002】
他の態様において、本発明はこれらの化合物の治療方法における使用及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第4,500,541号(Merck)は薬学的に活性なシクロプロパン誘導体を記載している。
【0004】
欧州特許第273658号(Eli Lilly and Co)は、セロトニン及びノルエピネフリンの取込みを阻害できる3−アリールオキシ−3−置換プロパンアミンを記載している。
【0005】
WO01/62714(AstraZeneca AB)はNOS阻害剤として活性なフェニルヘテロアルキルアミン誘導体を記載している。
【0006】
WO02/094262(Eli Lilly and Co)は、セロトニン及びノルエピネフリン再取込み阻害剤としてのヘテロアリールオキシ3−置換プロパンアミンを記載している。
【0007】
WO2004/043904(Eli Lilly and Co)は、3−アリールオキシ/チオ−3−置換プロパンアミンを、並びにセロトニン及びノルエピネフリンの再取込み阻害におけるその使用を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、セロトニン再取込み対ノルアドレナリン及びドーパミン再取込みの活性比などの、モノアミン神経伝達物質のセロトニン、ドーパミン及びノルアドレナリンの再取込みの活性に関して最適化された薬理学的プロファイルを有する化合物に対する強い要望が未だなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、式Iの化合物:
【化1】


その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容し得るその塩(式中、R、R、R、R、R、R及びnは後で定義するものである)を提供する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、本発明の化合物、その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容し得るその塩の治療有効量を、少なくとも1種の薬学的に許容し得る担体、賦形剤又は希釈剤と共に含む医薬組成物を提供する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、ヒトを含む動物生体の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答性の疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減を目的とする医薬組成物の製造のための、本発明の化合物、その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容し得るその塩の使用を提供する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、ヒトを含む動物生体の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答性の疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減を目的とする方法であって、本発明の化合物、その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容し得るその塩の治療有効量を、それを必要とするような動物生体に投与する段階を含む方法に関する。
【0013】
本発明の他の目的は、次の詳細な説明及び実施例から、当業者には明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
置換アリールオキシアルキルアミン
第1の態様において、本発明は、式Iの化合物:
【化2】


その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容し得るその塩を提供する
(式中、
はアリール基を表し、そのアリール基は、
が2,5−二置換フェニル又は2,4,5−三置換フェニルでないという条件で、
ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニル
からなる群から独立に選択された1つ又は複数の置換基によって、場合により置換され、
nは1又は2であり、
及びRは互いに独立に水素又はアルキルを表し、
結合線・・・・・は一重又は二重結合を表し、
及びRは互いに独立に水素又はアルキルを表し、或いはR及びRが一緒になってそれらが結合している炭素原子と共に3員炭素環式環を形成し、
は水素又はアルキルを表す)。
【0015】
1つの実施形態において、Rは場合により置換されているフェニル基を表す。さらなる実施形態において、Rは場合により置換されているナフチル基を表す。
【0016】
さらなる実施形態において、Rは2,3−二置換フェニル又は3,4−二置換フェニルなどの二置換フェニルを表す。さらなる実施形態において、Rはジクロロフェニル、ジフルオロフェニル又はブロモクロロフェニルなどのジハロフェニルを表す。特別の実施形態において、Rは2,3−ジハロフェニルなどの2,3−二置換フェニルを表す。特別の実施形態において、Rは2,3−ジクロロフェニル又は2,3−ジフルオロフェニルを表す。さらなる実施形態において、Rは3,4−ジハロフェニルなどの3,4−二置換フェニルを表す。特別の実施形態において、Rは3,4−ジクロロフェニル又は4−ブロモ−3−クロロフェニルを表す。
【0017】
さらなる実施形態において、Rはナフタレン−1−イルなどのナフチルを表す。
【0018】
さらなる実施形態において、nは1である。さらなる実施形態において、nは2である。
【0019】
さらなる実施形態において、Rは水素を表す。さらなる実施形態において、Rはメチルなどのアルキルを表す。
【0020】
さらなる実施形態において、Rは水素を表す。さらなる実施形態において、Rはメチルなどのアルキルを表す。
【0021】
さらなる実施形態において、Rは水素を表す。さらなる実施形態において、Rはメチルなどのアルキルを表す。さらなる実施形態において、R及びRは一緒になってそれらが結合している炭素原子と共に3員炭素環式環を形成する。
【0022】
さらなる実施形態において、Rはメチルなどのアルキルを表す。
【0023】
さらなる実施形態において、Rは水素を表す。さらなる実施形態において、Rはメチルなどのアルキルを表す。
【0024】
さらなる実施形態において、本発明は、一般式(II)の化合物
【化3】


その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容し得るその塩(式中、R、R、R、R及びnは上で定義されたものであり、
及びRは互いに独立に水素又はアルキルを表す)を提供する。
【0025】
さらなる実施形態において、本発明は、一般式(III)の化合物
【化4】


その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容し得るその塩(式中、R、R、R及びnは上で定義したものである)を提供する。
【0026】
特別の実施形態において、R及びRが一緒になってそれらが結合している炭素原子と共に3員炭素環式環を形成し、且つnが2であるとき、Rはジハロ置換フェニルを表す。
【0027】
特別の実施形態において、本発明の化合物は
(±)−[(E)−3−(3,4−ジクロロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−3−(2,3−ジクロロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−3−(2,3−ジフルオロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−3−(4−ブロモ−3−クロロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[3−シクロプロピル−3−(2,3−ジクロロ−フェノキシ)−プロピル]−メチルアミン;
(±)−[3−(2,3−ジクロロ−フェノキシ)−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[3−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[3−(4−ブロモ−3−クロロ−フェノキシ)−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−3−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−4−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−2−(2,3−ジクロロ−フェノキシ)−ペンタ−3−エニル]−メチルアミン;
又は薬学的に許容し得るその塩である。
【0028】
上記の実施形態の2つ又は3つ以上の任意の組合せは、本発明の範囲内と見なされる。
【0029】
置換基の定義
本発明に関連して、ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0030】
本発明に関連して、アルキル基は1価の飽和の直鎖又は分枝炭化水素鎖を意味する。前記炭化水素鎖は、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリーペンチル、ヘキシル及びイソヘキシルを含む、1個から6個までの炭素原子(C1〜6−アルキル)を含むことが好ましい。好ましい実施形態において、アルキルは、ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、及びターシャリーブチルを含む、C1〜4−アルキル基を表す。本発明の他の好ましい実施形態において、アルキルは、特にメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルであってよいC1〜3−アルキル基を表す。
【0031】
本発明に関連して、アルケニル基は、ジエン、トリエン及びポリエンを含む、1つ又は複数の二重結合を含む炭素鎖を意味する。好ましい実施形態において、本発明のアルケニル基は、少なくとも1つの二重結合を含み、2個から6個までの炭素原子を含む(C2〜6−アルケニル)。最も好ましい実施形態において、本発明のアルケニル基はエテニル;1−若しくは2−プロペニル;1−、2−若しくは3−ブテニル、又は1,3−ブタジエニル;1−、2−、3−、4−若しくは5−ヘキセニル、又は1,3−ヘキサジエニル、又は1,3,5−ヘキサトリエニルである。
【0032】
本発明に関連して、アルキニル基は1つ又は複数の三重結合を含む炭素鎖を指示し、ジイン、トリイン及びポリインを含む。好ましい実施形態において、本発明のアルキニル基は、少なくとも1つの三重結合を含み、2個から6個までの炭素原子を含む(C2〜6−アルキニル)。最も好ましい実施形態において、本発明のアルキニル基はエチニル;1−、若しくは2−プロピニル;1−、2−、若しくは3−ブチニル、又は1,3−ブタジイニル;1−、2−、3−、4−ペンチニル、又は1,3−ペンタジイニル;1−、2−、3−、4−、若しくは5−ヘキシニル、又は1,3−ヘキサジイニル又は1,3,5−ヘキサトリイニルである。
【0033】
本発明に関連して、シクロアルキル基は、好ましくは3個から7個までの炭素原子を含む(C3〜7−シクロアルキル)環状アルキル基を指示し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルを含む。
【0034】
アルコキシはアルキルが上で定義されたものであるO−アルキルである。
【0035】
シクロアルコキシは、シクロアルキルが上で定義されたものであるO−シクロアルキルを意味する。
【0036】
シクロアルキルアルキルは、シクロアルキルが上記のもので且つアルキルが上記のものを意味し、例えばシクロプロピルメチルを意味する。
【0037】
アミノはNH又はNH−アルキル又はN−(アルキル)であり、アルキルは上で定義したものである。
【0038】
本発明に関連して、アリール基はフェニル、ナフチル(1−ナフチル又は2−ナフチル)又はフルオレニルなどの炭素環芳香環系を意味する。
【0039】
薬学的に許容し得る塩
本発明の化合物は意図した投与に適した任意の形態で提供することができる。適当な形態には、本発明の化合物の薬学的に(即ち、生理学的に)許容し得る塩、及びプレ又はプロドラッグが含まれる。
【0040】
薬学的に許容し得る付加塩の例には、限定するものではないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコン酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン−p−スルホン酸塩などの非毒性の無機及び有機酸付加塩が挙げられる。そのような塩は当技術分野で周知の記述された方法によって形成することができる。
【0041】
薬学的に許容し得ると考えられないシュウ酸などの他の酸は、本発明の化合物及び薬学的に許容し得るその酸付加塩を得る際に中間体として有用な塩の調製において有用であることがある。
【0042】
本発明の化合物の薬学的に許容し得るカチオン塩の例には、限定するものではないが、アニオン性基を含む本発明の化合物の、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、コリン、リシニウム、及びアンモニウム塩などが挙げられる。そのようなカチオン塩は当技術分野で周知の記述された方法によって形成することができる。
【0043】
本発明に関連して、N含有化合物の「オニウム塩」もまた、薬学的に許容し得る塩として企図される。好ましい「オニウム塩」には、アルキル−オニウム塩、シクロアルキル−オニウム塩、及びシクロアルキルアルキル−オニウム塩が含まれる。
【0044】
本発明の化合物のプレ又はプロドラッグ形態の例には、本発明による物質の適当なプロドラッグの例が含まれ、親化合物の1つ又は複数の反応性の基若しくは誘導可能な基のところで修飾された化合物が含まれる。特に興味あるのは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はアミノ基のところで修飾された化合物である。適当な誘導体の例はエステル又はアミドである。
【0045】
本発明の化合物は、水、エタノールなどの薬学的に許容し得る溶媒と一緒に可溶性又は不溶性の形態で提供することができる。可溶性の形態には、一水和物、二水和物、ヘミ水和物、三水和物、四水和物等も含まれる。一般的に可溶性の形態は、本発明の目的に対して不溶性の形態と同等と考えられる。
【0046】
立体異性体
本発明の化合物が1つ又は複数のキラル中心を含むことができること及びそのような化合物は異性体の形態で存在することは、当業者により理解されるであろう。
【0047】
また、−C=C−二重結合を有する本発明の化合物の一部は、二重結合の周囲の置換基の配置に依存して、syn型及びanti型(Z型及びE型)という2つの形で存在できる。このように、本発明の化合物はsyn型又はanti型であるか、或いはその混合物であることがある。
【0048】
さらに、本発明の化合物は(+)及び(−)型並びにラセミ型(±)のエナンチオマーとして存在することがある。
【0049】
本発明は、そのようなすべての異性体とラセミ混合物を含むその任意の混合物とを含む。
【0050】
ラセミ型は、知られている方法及び技法によって光学対掌体に分割できる。異性体の塩を分離する1つの方法は、光学活性な酸の使用、及び塩基処理によって光学活性アミンを遊離させることによるものである。ラセミ体を光学対掌体に分割するもう1つの方法は、光学活性マトリックス上でのクロマトグラフィーによるものである。本発明のラセミ化合物は、このようにして、例えばd−又はl−塩(酒石酸塩、マンデル酸塩、又はカンファースルホン酸塩)の分別結晶法によって、その光学対掌体に分割できる。
【0051】
本発明の化合物はまた、本発明の化合物と(+)若しくは(−)フェニルアラニン、(+)若しくは(−)フェニルグリシン、(+)若しくは(−)カンファン酸から誘導されたものなどの光学活性の活性化カルボン酸との反応によるジアステレオ異性アミド形成、又は本発明の化合物と光学活性クロロギ酸エステル等との反応によるジアステレオ異性カルバミン酸エステル形成によっても分割できる。
【0052】
光学異性体を分割するためのその他の方法は当業者に知られている。そのような方法は「エナンチオマー、ラセミ体、及び分割(Enantiomers,Racemates,and Resolutions)」(John Wiley and Sons、New York (1981))でJaques J、Collet A、及びWilen Sにより述べられている。
【0053】
光学活性化合物は光学活性な出発原料から作製することもできる。
【0054】
標識された化合物
本発明の化合物は標識されたか又は標識されていない形態で使用できる。本発明に関連して、標識された化合物は、天然に通常見出される原子質量又は原子質量数とは異なる原子質量又は原子質量数を有する原子により置換された1つ又は複数の原子を有する。標識は前記化合物の容易な定量的検出を可能にするであろう。
【0055】
本発明の標識された化合物は、診断の手段、放射性トレーサー、又は種々の診断方法におけるモニタリング物質として、及びin vivoでのレセプターのイメージングのために役立てることができる。
【0056】
本発明の標識異性体は、標識として少なくとも1つの放射性核種を含むことが好ましい。陽電子放出放射性核種はすべて使用の候補である。本発明に関連して、放射性核種は、好ましくは、H(重水素)、H(トリチウム)、13C、14C、131I、125I、123I及び18Fから選択される。
【0057】
本発明の標識異性体を検出するための物理学的方法は、陽電子放出断層撮影法(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴分光法(MRS)、磁気共鳴イメージング(MRI)、及びコンピュータ体軸X線断層撮影法(CAT)、又はその組合せから選択することができる。
【0058】
調製方法
本発明の化合物は化学合成の通常の方法、例えば実施例に記載した方法によって調製できる。本発明の応用中で述べたプロセスのための出発原料は、知られているものであるか又は市販の化学物質から通常の方法により容易に作製できる。
【0059】
本発明の1つの化合物を、通常の方法を使用して本発明の他の化合物に変換することもできる。
【0060】
本明細書に記載する反応の最終生成物は、従来の技法例えば抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィー等によって単離できる。
【0061】
生物学的活性
本発明の化合物は、例えばWO97/30997(NeuroSearch A/S)に記載されているように、シナプトソームにおけるモノアミン、ドーパミン、ノルアドレナリン及びセロトニンの取込みを阻害する能力を試験することができる。これらの試験で観察された均衡のとれた活性に基づいて、本発明の化合物は、ヒトを含む哺乳動物の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答性の疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられる。
【0062】
特別の実施形態において、本発明の化合物は、気分障害、うつ病、非定型うつ病、疼痛に続発するうつ病、大うつ病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極性障害I型、双極性障害II型、循環病、全身的な病状に基づく気分障害、物質誘発気分障害、仮性認知症、ガンザー症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖を伴わないパニック障害、広場恐怖を伴うパニック障害、パニック障害歴のない広場恐怖症、パニック発作、記憶欠損、記憶喪失、注意欠陥過活動性障害、肥満症、不安症、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソン症候群、認知症、加齢性認知症、老年認知症、アルツハイマー病、後天性免疫不全症候群認知症複合症、加齢における記憶不全、特定の恐怖、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、薬物乱用、コカイン乱用、ニコチン乱用、タバコ乱用、アルコール嗜癖、アルコール依存症、疼痛、慢性的疼痛、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、片頭痛、緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、抑うつ関連痛、線維筋痛症、関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、背痛、癌性疼痛、過敏性大腸痛、過敏性大腸症候群、術後疼痛、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)、脳卒中後疼痛、薬物誘発神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経性持続痛、三叉神経痛、歯痛、顔面筋疼痛、幻肢疼痛、過食症、月経前症候群、黄体期後期症候群、外傷後症候群、慢性疲労症候群、尿失禁、緊張性尿失禁、切迫尿失禁、夜尿症、性機能障害、早漏、勃起困難、勃起不全、早発女性オルガズム、不穏下肢症候群、摂食障害、神経性食欲不振、睡眠障害、自閉症、無言症、抜毛癖、ナルコレプシー、脳卒中後抑うつ、脳卒中誘発脳損傷、脳卒中誘発神経損傷、又はジルドラツレット病の治療、予防又は軽減に有用と考えられる。好ましい実施形態において、前記化合物はうつ病の治療、予防又は軽減に有用と考えられる。
【0063】
現在のところ、この有効薬剤成分(API)の適当な投与量は、1日当たりAPI約0.1から約1000mgまで、より好ましくは1日当たりAPI約10から約500mgまで、最も好ましくは1日当たりAPI約30から約100mgまでの範囲内と企図されているが、厳密な投与方式、投与する形態、考慮される適応症、対象及び特に関与する対象の体重、並びにさらに担当する医師又は獣医師の優先傾向及び経験に依存する。
【0064】
本発明の好ましい化合物は、サブマイクロモル及びマイクロモルの範囲、即ち1μM未満から約100μMまでの範囲で生物学的活性を示す。
【0065】
医薬組成物
他の態様において、本発明は治療有効量の本発明の化合物を含む新規な医薬組成物を提供する。
【0066】
治療で使用するための本発明の化合物は未加工の化合物形態で投与することもできるが、有効成分を、場合により生理学的に許容し得る塩の形態で、1つ又は複数の補助剤、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤、及び/又は他の通常の製薬助剤と合わせて医薬組成物に導入することが好ましい。
【0067】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明の化合物又は薬学的に許容し得る塩若しくはその誘導体を、1つ又は複数の薬学的に許容し得る担体、及び場合により、当業者に知られ且つ使用されている他の治療用及び/又は予防用成分と合わせて含む医薬組成物を提供する。前記担体は、製剤の他の成分と適合性であるという意味で「許容し得る」ものでなければならず、且つその受容者に有害であってはならない。
【0068】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、気管支、経鼻、肺、局所(バッカル及び舌下を含む)、経皮、膣又は非経口(皮膚、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、動脈内、大脳内、眼内の注射又は注入を含む)投与に適した組成物であってよく、或いは散剤及び液剤エアロゾル投与を含む吸入若しくは通気法による又は徐放システムによる投与に適した形態の組成物であってよい。徐放システムの適当な例には、本発明の化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態にすることができる。
【0069】
このように本発明の化合物は、通常の助剤、担体、又は希釈剤と合わせて医薬組成物及びその単位投与量の形態に入れることができる。そのような形態には、すべて経口使用のための固形剤、及び特に錠剤、充填カプセル剤、散剤及びペレット形状、並びに液剤、特に水性又は非水性溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル剤、及びそれらを充填したカプセルが含まれ、直腸投与のための座剤、及び非経口使用のための無菌の注射可能な溶液がある。そのような医薬組成物及びその単位剤形は、追加的な活性化合物又は成分の有無にかかわらず、通常の成分を通常の比率で含むことができ、そのような単位剤形は、意図した使用されるべき1日投与量の範囲と釣り合いのとれた任意の適当な有効量の有効成分を含むことができる。
【0070】
本発明の化合物は非常に種々の経口及び非経口剤形で投与できる。次の剤形が、有効成分として本発明の化合物又は本発明の化合物の薬学的に許容し得る塩のいずれかを含むことができることは、当業者には明らかであろう。
【0071】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、薬学的に許容し得る担体は固体又は液体のいずれかにすることができる。固形製剤には散剤、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤、座剤、及び分散性顆粒が含まれる。固体担体は、希釈剤、着香剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても作用し得る1つ又は複数の物質であってよい。
【0072】
散剤においては、担体は細分した固体であり、それが細分した有効成分との混合物になっている。
【0073】
錠剤においては、有効成分を必要な結合能力を有する担体と適当な比率で混合して、所望の形及びサイズに圧縮する。
【0074】
散剤及び錠剤は、好ましくは、5又は10から約70パーセントまでの活性化合物を含む。適当な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバター等である。「製剤」という用語は、担体が添加されているか又はされていない有効成分が担体によって囲まれ、その結果、担体が有効成分と合体しているカプセルを提供する担体としてのカプセル化材料を用いた有効成分の製剤を含むことを意図している。同様にカシェ剤及びトローチ剤が含まれる。錠剤、散剤、カプセル、丸薬、カシェ剤、及びトローチ剤は、経口投与に適した固体形状として使用できる。
【0075】
座剤を調製するためには、脂肪酸グリセリド、又はカカオバターなどの低融点ワックスを最初に溶融して、攪拌などにより有効成分をその中に均一に分散する。それから、溶融した均一な混合物を都合の良いサイズの型に流し込み、放冷してそれにより固化させる。
【0076】
膣内投与に適した組成物は、有効成分に加えて、当業者に適当であると知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体又はスプレーとして提供することができる。
【0077】
液体製剤には、溶液剤、懸濁液剤、及びエマルション剤、例えば水又は水−プロピレングリコール溶液剤が含まれる。例えば、非経口注射液体製剤はポリエチレングリコール水溶液中の溶液として製剤化できる。
【0078】
本発明による化合物は、このように非経口投与(例えば注射、例を挙げれば大量瞬時投与又は連続注入による)のために製剤化でき、アンプル、充填済み注射器、少容量注入剤にして単位剤形で、又は保存料を添加して複数回投与量容器に入れて提供できる。組成物は、油性又は水性の媒体中の懸濁液、溶液、又はエマルションのような形態をとることができ、懸濁、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含むことができる。或いは、有効成分は、無菌固体の無菌的分離により又は溶液からの凍結乾燥により得られる、使用前に適当な媒体、例えば無菌で発熱物質を含まない水で復元するための散剤形態にすることができる。
【0079】
経口使用に適した水溶液剤は、有効成分を水に溶解して、適当な着色剤、着香剤、安定化剤及び増粘剤を添加することにより、所望のように調製することができる。
【0080】
経口使用に適した水性懸濁液剤は、天然若しくは合成のゴム質、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又は他の周知の懸濁剤などの粘性物質を含む水に、細分した有効成分を分散することにより作製できる。
【0081】
使用直前に経口投与のための液体製剤に変換することを意図した固形製剤もまた含まれる。そのような液剤形態には、溶液剤、懸濁液剤、及びエマルション剤が含まれる。そのような製剤は、有効成分に加えて、着色剤、着香剤、安定剤、緩衝剤、人工甘味剤又は天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含むことができる。
【0082】
表皮への局所投与のためには、本発明の化合物を、軟膏、クリーム若しくはローションとして、又は経皮パッチとして製剤化できる。軟膏及びクリームは、例えば、適当な増粘剤及び/若しくはゲル化剤を添加した水性又は油性基剤で製剤化できる。ローションは水性若しくは油性基剤で製剤化でき、通常、1つ又は複数の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤も含むことができる。
【0083】
口中における局所投与に適した組成物には、着香した基剤、通常スクロースとアラビアゴム若しくはトラガントとの中に有効成分を含むトローチ剤;ゼラチンとグリセリンと、又はスクロースとアラビアゴムとの不活性基剤中に有効成分を含むパステル剤;及び適当な液体担体中に有効成分を含むうがい薬が含まれる。
【0084】
溶液剤又は懸濁液剤は、従来の方法により、例えばスポイト、ピペット又はスプレーで鼻腔へ直接適用できる。前記組成物は単回又は複数回剤形で提供できる。
【0085】
気道への投与は、有効成分が、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、若しくはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適当なガスなどの適当な噴霧剤で加圧したパックで提供されるエアロゾル製剤によっても実行することができる。前記エアロゾルはレシチンなどの界面活性剤を都合よく含むことができる。薬物の投与量は目盛付きのバルブを備えることにより制御できる。
【0086】
もう1つの方法として、有効成分を、乾燥散剤、例えば、ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのデンプン誘導体及びポリビニルピロリドン(PVP)などの適当な散剤基剤中の本発明の化合物の散剤混合物の形態で供給することができる。散剤担体は、鼻腔中で都合よくゲルを形成するであろう。散剤組成物は、例えば、ゼラチンなどのカプセル若しくはカートリッジ、又は散剤を吸入器によって投与できるブリスター包装に入れた単位剤形で供給できる。
【0087】
鼻腔内投与組成物を含む気道への投与を意図した組成物において、前記化合物は、通常例えば5ミクロン以下の桁の小さな粒子サイズを有するであろう。そのような粒子サイズは当業者に知られた手段、例えば微粉化によって得ることができる。
【0088】
所望ならば、有効成分の徐放化に適合させた組成物を使用できる。
【0089】
薬物製剤は単位剤形であることが好ましい。そのような形態では、製剤は適当な量の有効成分を含む単位投与量に細分されている。単位剤形は包装した製剤にすることができ、その包装は包装した錠剤、カプセル、及びバイアル若しくはアンプルに入れた散剤などの個別の量を含む。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ剤、又はトローチ剤それ自体であってもよく、或いはこれらのいずれかが適当な数で包装中にある形態でもよい。
【0090】
経口投与のための錠剤若しくはカプセル並びに静脈内投与及び連続注入のための液剤は好ましい組成物である。
【0091】
製剤化及び投与のための技法についてのさらに詳細なことは、「Remingtonの製薬の科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」(Maack Publishing Co.、Easton、PA)の最新版で見ることができる。
【0092】
治療に有効な投与量とは、症状又は状態を回復させる有効成分の量のことである。治療効果及び毒性、例えばED50及びLD50は細胞培養又は実験動物で標準の薬理学的手順により決定できる。治療効果と毒性作用との間の投与量の比が治療指数であり、比LD50/ED50によって表すことができる。大きい治療指数を示す医薬組成物が好ましい。
【0093】
いうまでもなく、投与量は、治療する個々人の年齢、体重及び状態並びに投与経路、投薬形態及び投薬計画、及び所望の結果に合わせて注意深く調節しなければならず、的確な投与量は勿論開業医が決定すべきである。
【0094】
実際の投与量は、治療する疾患の性質及び重症度に依存して、医師の裁量内であり、所望の治療効果を挙げるために、本発明の個々の事情に対して投与量を漸増することにより変更することができる。しかしながら、現在のところ、個別投薬量当たり約0.1から約500mgまで、好ましくは約1から約100mgまで、最も好ましくは約1から約10mgまでの有効成分を含む医薬組成物が治療処置に適当であると考えられている。
【0095】
有効成分は、1日当たり1回又は数回の投薬で投与できる。或る場合には、0.1μg/kg i.v.及び1μg/kg p.o.という低投与量で満足な結果を得ることができる。投与量の範囲の上限は、現在のところ、約10mg/kg i.v.及び100mg/kg p.o.と考えられている。好ましい範囲は約0.1μg/kgから約10mg/kg/日i.v.まで及び約1μg/kgから約100mg/kg/日p.o.までである。
【0096】
治療方法
他の態様において、ヒトを含む動物生体の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答性の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減を目的とする方法であって、本発明の化合物の有効量を、それを必要とするようなヒトを含む動物生体に投与することを含む方法を、本発明は提供する。
【0097】
現在のところ、適当な投与量の範囲は、常のごとく厳密な投与方式、投与される形態、投与が指示される投薬計画、関与する対象及び関与する対象の体重、並びにさらに担当する医師又は獣医師の優先傾向及び経験に依存して、1日当たり0.1から1000ミリグラム、1日当たり10〜500ミリグラム、及び特に1日当たり30〜100ミリグラムであると考えられている。
【実施例】
【0098】
次の実施例を参照して本発明をさらに例示するが、いずれにしてもこれらの実施例は本発明の請求範囲を限定することを意図するものではない。
【0099】
方法A
(±)−[(E)−3−(3,4−ジクロロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミンフマル酸塩
(±)−(E)−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール(300mg、1.55mmol)をDMSO(8mL)に溶解し、氷浴上で冷却した。NaH(鉱油中60%、140mg、3.5mmol)を加え、混合物を30分間攪拌し、続いてDMSO(1ml)中の3,4−ジクロロフルオロベンゼン(760mg、4.6mmol)を加えた。その混合物を室温で18時間攪拌し、続いて水を加え、酢酸エチルで抽出した(4×50mL)。有機層を合わせて乾燥し(硫酸ナトリウム)、濾過して蒸発させると粗生成物が得られた。ジクロロメタン及びアンモニア(1%)含有5〜10%メタノールの勾配でフラッシュクロマトグラフィーにより生成物を淡黄色油状物として得た。対応する塩は、フマル酸で飽和したジエチルエーテルとメタノールの混合物(9:1)を加えることによって得た。収量120mg(20%)。Mp 100.8〜101.8℃。
【0100】
(±)−[(E)−3−(2,3−ジクロロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミンフマル酸塩
方法Aに従って(±)−(E)−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール及び2,3−ジクロロフルオロベンゼンから作製した。Mp 107.2〜107.9℃。
【0101】
(±)−[(E)−3−(2,3−ジフルオロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミンフマル酸塩
方法Aに従って(±)−(E)−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール及び1,2,3−トリフルオロベンゼンから作製した。Mp 92.2〜94.4℃。
【0102】
(±)−[(E)−3−(4−ブロモ−3−クロロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミンフマル酸塩
方法Aに従って(±)−(E)−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール及び1−ブロモ−2−クロロ−4−フルオロベンゼンから作製した。Mp 104.7〜105.4℃。
【0103】
(±)−[(E)−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミンフマル酸塩
方法Aに従って(±)−(E)−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール及び1−フルオロナフタレンから作製した。Mp 115.8℃。
【0104】
(±)−[3−シクロプロピル−3−(2,3−ジクロロ−フェノキシ)−プロピル]−メチルアミンフマル酸塩
方法Aに従って(±)−1−シクロプロピル−3−メチルアミノ−プロパン−1−オール及び2,3−ジクロロフルオロベンゼンから作製した。Mp 117.1℃。
【0105】
(±)−[3−(2,3−ジクロロ−フェノキシ)−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミンフマル酸塩
方法Aに従って(±)−5−メチル−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール及び2,3−ジクロロフルオロベンゼンから作製した。Mp 131.1〜131.5℃。
【0106】
(±)−[3−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミンフマル酸塩
方法Aに従って(±)−5−メチル−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール及び3,4−ジクロロフルオロベンゼンから作製した。Mp 132.8〜133.6℃。
【0107】
(±)−[3−(4−ブロモ−3−クロロ−フェノキシ)−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミンフマル酸塩
方法Aに従って(±)−5−メチル−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール及び1−ブロモ−2−クロロ−4−フルオロベンゼンから作製した。Mp 129.3〜130.2℃。
【0108】
(±)−[(E)−3−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−4−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミンフマル酸塩
方法Aに従って(±)−(E)−4−メチル−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール及び3,4−ジクロロフルオロベンゼンから作製した。Mp 136.8〜137.2℃。
【0109】
(±)−[(E)−2−(2,3−ジクロロ−フェノキシ)−ペンタ−3−エニル]−メチルアミンフマル酸塩
方法Aに従って(±)−(E)−1−メチルアミノ−ペンタ−3−エン−2−オール及び2,3−ジクロロフルオロベンゼンから作製した。Mp 144.3℃。
【0110】
方法B
(±)−5−メチル−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール
THF(300mL)中のアセトニトリル(11.5mL、219mmol)を−78℃に冷却して、n−BuLi(ヘキサン中2.5M、96mL)を徐々に加えた。その混合物を−78℃で2時間攪拌した。乾燥THF(50mL)中に溶解した3−メチル−2−ブテナール(25mL、262mmol)を徐々に加えて、15分後にHCl(3N、175mL)で反応を停止させた。溶媒の大部分を蒸発させた後、残渣をジエチルエーテルで2回抽出した。合わせたエーテル抽出物を乾燥し(硫酸ナトリウム)、濾過して濃縮すると粗3−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサ−4−エンニトリルが黄色油状物として得られた(29.6g、100%)。
【0111】
この油状物(29.6g、219mmol)をテトラヒドロフラン(250mL)に溶解して、還流を保ちながらLiAlH(ジエチルエーテル中1M、234mL)に加えた。還流は2時間継続した。この混合物を氷浴上で冷却して、白色沈殿が析出するまで15%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して加えた。その沈殿を濾過し、テトラヒドロフラン(3×)及びジエチルエーテル(3×)で洗浄した。洗浄液を合わせて蒸発させた。その結果得られた油状物をジエチルエーテルに再溶解して、乾燥(硫酸ナトリウム)、濾過して蒸発させると、黄色油状物として粗生成物(±)−1−アミノ−5−メチル−ヘキサ−4−エン−3−オールが得られた(28.5g、100%)。
【0112】
(±)−1−アミノ−5−メチル−ヘキサ−4−エン−3−オール(28.5g、219mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(45.9mL、263mmol)をジクロロメタン(400mL)に溶解し氷浴上で冷却した。ジクロロメタン(20mL)中のクロロギ酸メチル(17mL、219mmol)を徐々に加えた。この混合物を0℃で2時間攪拌した。炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液を加えると相分離が起こった。その水相をジクロロメタンで2回抽出した。有機相を乾燥し、濾過して蒸発させると、黄色油状物として、(±)−(3−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]カルバミン酸メチルエステルが得られた(38.9g、100%)。
【0113】
テトラヒドロフラン(150mL)に溶解した(±)−(3−ヒドロキシ−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]カルバミン酸メチルエステル(38.9g、219mmol)を、LiAlH(テトラヒドロフラン中1M、232mL)の還流している溶液に、還流を保ちながら滴下して加えた。2時間還流した後、その混合物を氷浴上で冷却して、白色沈殿が析出するまで15%水酸化ナトリウム水溶液(50mL)を滴下して加えた。その沈殿を濾過し、テトラヒドロフラン(2×200mL)、ジクロロメタン(2×200mL)及びジエチルエーテル(2×200mL)で洗浄した。洗浄液を合わせて蒸発させた。その結果得られた油状物をジエチルエーテルに再溶解して、乾燥(硫酸ナトリウム)、濾過して蒸発させると、黄色油状物として粗生成物が得られた(29.5g、100%)。この粗生成物をさらに精製せずに使用した。
【0114】
(±)−(E)−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール
方法Bに従って、クロトンアルデヒド及びアセトニトリルから作製した(Tamaru,Y.ら、J.Org.Chem.53、23、1988、5491〜5502)。
【0115】
(±)−(E)−4−メチル−1−メチルアミノ−ヘキサ−4−エン−3−オール
方法Bに従って、trans−2−メチル−2−ブテナール及びアセトニトリルから作製した。
【0116】
(±)−1−シクロプロピル−3−メチルアミノ−プロパン−1−オール
方法Bに従って、シクロプロパンカルボキシアルデヒド及びアセトニトリルから作製した。
【0117】
方法C
(±)−(E)−1−メチルアミノ−ペンタ−3−エン−2−オール
(E)−1−アミノ−3−ペンテン−2−オール(1.3g、12.9mmol) (Overman,L.E.、J.Am.Chem.Soc.55、22、1983、6622〜6629)及びジイソプロピルエチルアミン(2.7mL、15.4mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解した。クロロギ酸メチル(1mL、12.9mmol)を徐々に加え、その混合物を0℃で2時間攪拌した。水(25mL)を加えると相分離が起こった。ジクロロメタンで抽出し(3×25mL)、乾燥、濾過及び蒸発により、黄色油状物として粗生成物((E)−2−ヒドロキシ−ペンタ−3−エニル)カルバミン酸メチルエステルが得られた(2.1g、100%)。
【0118】
この油状物をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解し、LiAlH(THF中1M、14mL)に徐々に加えて、2時間還流を継続した。酒石酸二ナトリウム(飽和、25mL)を加えて、水相をジクロロメタンで抽出した(3×25mL)。合わせた有機相の乾燥、濾過及び蒸発により粗生成物が黄色油状物として得られた(1.1g、72%)。この粗生成物をさらに精製せずに使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】


その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、
又は薬学的に許容し得るその塩
(式中、
はアリール基を表し、そのアリール基は、
が2,5−二置換フェニル又は2,4,5−三置換フェニルでないという条件で、
ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニル
からなる群から独立に選択された1つ又は複数の置換基によって場合により置換されており、
nは1又は2であり、
及びRは互いに独立に水素又はアルキルを表し、
結合線・・・・・は一重又は二重結合を表し、
及びRは互いに独立に水素又はアルキルを表し、或いはR及びRが一緒になってそれらが結合している炭素原子と共に3員炭素環式環を形成し、
は水素又はアルキルを表す)。
【請求項2】
が場合により置換されているフェニル基を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が場合により置換されているナフチル基を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(II)の化合物である請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物
【化2】


その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、
又は薬学的に許容し得るその塩
(式中、R、R、R、R及びnは請求項1で定義されたものであり、
及びRは互いに独立に水素又はアルキルを表す)。
【請求項5】
一般式(III)の化合物である請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物
【化3】


その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、
又は薬学的に許容し得るその塩
(式中、R、R、R及びnは請求項1で定義されたものである)。
【請求項6】
(±)−[(E)−3−(3,4−ジクロロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−3−(2,3−ジクロロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−3−(2,3−ジフルオロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−3−(4−ブロモ−3−クロロフェノキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−3−(ナフタレン−1−イルオキシ)−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[3−シクロプロピル−3−(2,3−ジクロロ−フェノキシ)−プロピル]−メチルアミン;
(±)−[3−(2,3−ジクロロ−フェノキシ)−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[3−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[3−(4−ブロモ−3−クロロ−フェノキシ)−5−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−3−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−4−メチル−ヘキサ−4−エニル]−メチルアミン;
(±)−[(E)−2−(2,3−ジクロロ−フェノキシ)−ペンタ−3−エニル]−メチルアミン;
又は薬学的に許容し得るその塩である請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容し得るその塩の治療有効量を、少なくとも1種の薬学的に許容し得る担体、賦形剤又は希釈剤と共に含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容し得るその塩の、薬剤を製造するための使用。
【請求項9】
ヒトを含む哺乳動物の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答性の疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減を目的とする医薬組成物を製造するための請求項8に記載の使用。
【請求項10】
疾患、障害又は状態が、気分障害、うつ病、非定型うつ病、疼痛に続発するうつ病、大うつ病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極性障害I型、双極性障害II型、循環病、全身的な病状に基づく気分障害、物質誘発気分障害、仮性認知症、ガンザー症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖を伴わないパニック障害、広場恐怖を伴うパニック障害、パニック障害歴のない広場恐怖症、パニック発作、記憶欠損、記憶喪失、注意欠陥過活動性障害、肥満症、不安症、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソン症候群、認知症、加齢性認知症、老年認知症、アルツハイマー病、後天性免疫不全症候群認知症複合症、加齢における記憶機能不全、特定の恐怖、社会恐怖症、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、薬物嗜癖、薬物乱用、コカイン乱用、ニコチン乱用、タバコ乱用、アルコール嗜癖、アルコール依存症、疼痛、慢性的疼痛、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、片頭痛、緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、抑うつ関連痛、線維筋痛症、関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、背痛、癌性疼痛、過敏性大腸痛、過敏性大腸症候群、術後疼痛、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)、脳卒中後疼痛、薬物誘発神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経性持続痛、三叉神経痛、歯痛、顔面筋疼痛、幻肢疼痛、過食症、月経前症候群、黄体期後期症候群、外傷後症候群、慢性疲労症候群、尿失禁、緊張性尿失禁、切迫尿失禁、夜尿症、性機能障害、早漏、勃起困難、勃起不全、早発女性オルガズム、不穏下肢症候群、摂食障害、神経性食欲不振、睡眠障害、自閉症、無言症、抜毛癖、ナルコレプシー、脳卒中後抑うつ、脳卒中誘発脳損傷、脳卒中誘発神経損傷、又はジルドラツレット病である請求項9に記載の使用。
【請求項11】
ヒトを含む動物生体の、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取込みの阻害に応答性の疾患、障害又は状態の治療、予防又は軽減のための方法であって、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物、その任意の異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は薬学的に許容し得るその塩の治療有効量を、それを必要とする動物生体に投与する段階を含む上記方法。

【公表番号】特表2008−510775(P2008−510775A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528850(P2007−528850)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054151
【国際公開番号】WO2006/021564
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】