説明

モノクローナル抗体を使用するアルツハイマー病のinvitro診断の方法

本発明は、モノクローナル抗体を用いるアルツハイマー病のin vitro診断の方法に関する。前記抗体は、β−アミロイドペプチドのアミノ酸12〜16に少なくとも結合することができ、アルツハイマー病に特有な神経炎性プラークを特異的に検出し、該疾患の特性を定義しないび漫性プラークを検出しない。神経炎性プラーク内で、該モノクローナル抗体は、疾患の進行の段階に関連するβ−アミロイドペプチドの異なる沈着イソ型の組成物における異なるサブグループを検出することができる。さらに、該抗体は、尿などの生物学的液体中のβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合することができる。結果として、本発明のモノクローナル抗体、前記抗体を産生する細胞系及び同じものを含む組成物は、アルツハイマー病のin vitro診断及び該疾患の進行の段階を判断するのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、該疾患に関連する特定のペプチドと相互作用することができる抗体による神経疾患の診断、特にアルツハイマー病の診断に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、脳のニューロンの死を引き起こす神経疾患である。一般的に、アルツハイマー病は、徐々に進行するものであり、50歳以後に発症し、その最初の症状は高齢又は通常の健忘症に帰せられることがある。疾患が進行するにつれて、決定を下し、毎日の仕事を行う能力を含む認知能力の緩やかな低下があり、人格の変化並びに行動上の問題がある可能性がある。その進展した段階では、ADは痴呆及び最終的に死亡をもたらす。現在のところ、該疾患は、不治であり、主要な死亡原因を構成する。
【0003】
現在のところ、確定診断は、脳組織におけるその独特の特徴の存在を明らかにする、脳サンプル(剖検又は生検)の組織学的検査に基づいて行うことができるにすぎないので、アルツハイマー病は通常、臨床像から診断されている。生存患者における脳生検に伴うリスクを考慮して、この方法は非常にまれにしか用いられておらず、したがって、この疾患のin vivo診断の過誤率は約20〜30%であると推定されている。
【0004】
アルツハイマー病の人の脳は、プラーク(び漫性プラーク及び神経炎性プラーク、これらの最後に言及した形態が該疾患に特有のものであり、それらがニューロンの間及び内部に出現するので、それとして称される)の形態及び血管沈着物(脳血管の壁に発生する)の形態の2つの主要な病理学的マーカー、すなわち、神経原線維変性(線維状封入体、異栄養神経線維及び神経網糸状体の存在により確認される)及びアミロイド物質の沈着物(すなわち、いわゆるβ−アミロイドペプチド(一般的にAβと略記される)の沈着物)を示す。神経原線維変性及びアミロイド沈着は、脳の正常な老化にも関連する変性過程を構成する。痴呆に罹患していない高齢対象において、Aβペプチドは主としてび漫性プラークの形態で沈着する。この種の沈着は、正常な認知能力を有する一部の対象において特に顕著であり、一部の著者にとっては、脳の正常な老化とADの中間とみなされる「病的老化」の過程を構成する[1]。神経炎性プラークの何年もの前のび漫性プラークの特に強い早期の発生は、アミロイド前駆体タンパク質(β−APP)の過剰発現をもたらす第21染色体のトリソミーに起因するダウン症候群(DS)においても起ると思われる。正常な認知能力を有する対象の脳に少数の神経炎性プラークが認められることがあるが、高齢においてADに罹患した脳並びにDSに罹患した脳は、大量の成熟神経炎性プラークの発生を特徴とする[2、3]。非原線維形のAβ(「プレアミロイド」と称する)[4]を含むび漫性プラークと対照的に、血管アミロイド沈着物及び神経炎性プラークは、原線維形のAβペプチドを含み、コンゴレッド及びチオフラビンTなどのアミロイド物質の染料と反応する。
【0005】
ADにおける認知低下は、神経原線維変化及び皮質シナプス喪失の進行と直線的に相関する[5]。び漫性プラークに関連する局所的なシナプス喪失は認められなかった[6]。これと対照的に、神経炎性プラークは、シナプス密度減少、神経原線維変化及び小神経膠細胞の活性化に関連している[7]。純粋な神経原線維変化及びAβの沈着は、ADの進行の十分に立証されている連続的パターンに従う[8、9]。しかし、認知低下の程度は神経原線維変化に基づく一連の病期とよく相関する[5]が、ADの神経病理学的確定診断は、それにもかかわらず、痴呆の臨床像内で患者の年齢群に従って予想されるものと比較して、新皮質連合領域における神経炎性プラークの有意に高い密度の組織学的実証に基づいている(CERAD:アルツハイマー病の登録を確立するためのコンソーシアム(Consortium to Establish a Registry for Alzheimer’s Disease)の合意基準)[10]。神経炎性プラークの形成はADにおける中心的な病原性過程であり、したがって、これらのβ−アミロイド沈着物の分子組成及び前記組成に関するび漫性プラークとの差はADの現在の研究における主な関心分野の1つである。
【0006】
アルツハイマー病患者の脳組織におけるβ−アミロイド沈着物の分子組成に関する知識は、近年根本的に変化した。異なる形のAβペプチドを同定することを目的とした生化学的又は免疫組織化学的方法を用いた種々の試験は、古典的な形態学的所見の分子的解釈を可能にするかなり一貫性のある全体像を提供した。最近、主要な病原体としての可溶性Aβオリゴマーの新たな役割を含めるために最初の仮説が再び公式化された[12]が、アミロイド仮説[11]と呼ばれている該疾患の統一病原理論の基礎を提供したのはこれらの試験であった。ADにおけるAβペプチドの中心的かつ主要な病原としての役割の仮説は、今や、これらの沈着物の予防又は除去に向けた新たな治療戦略につながっている。
【0007】
ADに罹患している脳において知られているAβペプチドの沈着の局所解剖学的分布及び時間順序は、Aβ分子のカルボキシル末端、アミノ末端又は内部セグメントに対する抗体、並びに生化学的方法によるAβのイソ型の分離及び精製により解明された。それらのカルボキシル末端の特徴によって特徴づけられるペプチドの組織分布は、かなり規則的なよく定義されたパターンを示す。AβX−40は血管沈着物における支配的な形であり、CSF(脳脊髄液)中で遭遇する主な形であるが、AβX−42は脳組織沈着物(び漫性プラーク及び神経炎性プラーク)中に検出される主な形である[13]。AD、ダウン症候群(DS)[13、14]及び正常な老化[1]において、AβX−42はび漫性プラークの唯一の成分及び神経炎性プラークの主な成分である。後者は、主としてそれらの中心核の領域にAβX−40も含むこともある。AβX−42は初期に沈着する形であることも確認された。
【0008】
AβX−40及びAβX−42はアミノ酸Asp1とともにほぼ完全に始まったと最初は考えられたが、アミノ末端で修飾され、切り詰められたAβペプチドの様々な異種のイソ型がび漫性及び神経炎性プラークの構成に関与していることが免疫組織化学的及び生化学的に十分に立証された[15]。これらのイソ型はび漫性プラークと神経炎性プラークとの間の分布の規則的パターンを示す傾向もあり、その結果、様々なAβペプチドの局所解剖学的分布の完全な全体像が最終的に明らかになり始めた。それにもかかわらず、び漫性プラークを構成し、それらの各々のアミロイド沈着物の相対量が表す、ペプチドのアミノ末端の特に特性に関して、試験の間にいくつかの矛盾がある。
【0009】
これらの矛盾は、特にp3ペプチド(Aβ17−42)を含む。一部の試験でAβ17−42がび漫性プラークの主成分である可能性があることが示唆されている[16]が、他の試験ではこのレベルで比較的より大量のより長い形(Asp1で始まる、又はアミノ末端で切り詰められた、若しくは他の修飾イソ型)が認められた[15]。Aβ17−42は、α−セクレターゼによるβ−APPの除去により産生され(いわゆる非アミロイド生産経路)、Aβのより長いイソ型と全く異なる物理化学的特性を示す(後者はγ−セクレターゼによるβ−APPの除去により産生される)が、び漫性プラークにおけるその選択的存在は、プラークの発生において非常に重要な病原としての意味があると思われる。
【0010】
Gowingら[17]は、ADに罹患したび漫性プラークに富む脳から回収された支配的な形としてのAβ17−42ペプチドを最初に分離した。この沈着物は、血管アミロイド沈着物又は神経炎性プラークには認められなかった。Aβ1−17を認識する市販のモノクローナル抗体6E10は、AD及びDSに罹患した一連の脳における(新皮質でも小脳でもない)び漫性プラークの免疫染色をもたらさなかった[18]。しかし、神経炎性プラークが欠けた状態で、び漫性プラークが特に豊富である線条体は、6E10抗体に対して陽性であるいくつかのプラークを示した。HPLC及び免疫組織化学的定量法を用いて、Lalowskiら[19]はAβ17−42は小脳のび漫性プラークにおける総アミロイド含量の70%を占めるが、Aβ1−42は12%を占め、AβX−42の他の切り詰められた形は5%以下を占めることを示した。DSに罹患した高齢者の脳において、Saidoら[20]は、抗AβN(1)抗体によるよりも特異的抗AβN3(pyroGlu)抗体によるび漫性プラークの大きい染色を認めた。Iwatsuboら[15]は、アミノ末端において切り詰められ、修飾された形のAβを認識する抗体のパネルを用いてADに罹患した、及びDSに罹患した高齢者の一連の脳におけるび漫性プラークを試験した。この試験は、人工産物の出現に対するホルムアルデヒドを用いた常法による固定の影響を試験できるように、免疫組織化学的検査に用いた脳組織を70%エタノール又は4%ホルムアルデヒドで固定した点が独特である。70%エタノールで固定したすべての組織サンプルにおいて、び漫性プラークは、AβN1(L−Asp)、AβN1(L−isoAsp)、AβN1(D−Asp)、AβN3(pyroGlu)及びAβX−42の存在により強く染色された。弱い染色は、AβN11(pyroGlu)及びAβN17により得られた。しかし、ホルムアルデヒドで固定した物質において、一部のび漫性プラークはAβN1(L−Asp)で染色され、AβN1(L−isoAsp)又はAβN1(D−Asp)については染色は得られなかったが、カルボキシル末端の染色のパターンは変化しなかった。著者らはアミノ末端の修飾はホルムアルデヒドで固定した組織の免疫染色の結果を変化させ得ることを示したが、彼らはエタノールで固定した物質においてさえAβN17について弱い反応性を得た。p3(Aβ17−42)に対して特異的なモノクローナル抗体[16]を用いて、彼らは、このペプチドの沈着は主として、扁桃、海馬及び傍海馬の領域におけるび漫性プラーク、異栄養神経線維及び神経炎性プラークのコロナに限られていたことを見いだした。著者らは、アミロイド物質の初期の沈着及び神経炎性プラークの起始におけるp3の特異的な役割を示唆した。Tekirianら[21]は、ADに罹患した一連の脳及び対照において、び漫性プラークにおけるAβN3(ペプチド)>AβN1(D)>AβN17(L)>AβN1(rD)の存在を示した。
【0011】
カルボキシル末端における変動に関しては、AβX−40、AβX−42又はAβX−43に対する抗体を用いた試験において、Parvathyら[22]は、AβC40抗体に対してのみ反応する神経炎性プラークのサブグループ及びAβC40とAβC42の両方に対して反応するプラークのより大きいサブグループを見いだした。
【0012】
初期の試験で、び漫性プラークはカルボキシル末端において高度に特異的なAβのプロファイル及びアミノ末端においてかなり特異的なプロファイルを示し、後者は患者間及び脳の異なる領域間のある程度の異質性にさらされることが確認された。それらにおけるより短いAβ17−42ペプチドの相対的含量に関して試験の間にかなりの変動があるが、Aβ17−42の存在は主としてび漫性プラークに限られているように思われる。Kidaら[18]により実施された試験において、皮質及び皮質下領域のび漫性プラークにおける配列12〜16を含むAβペプチドについて染色は得られなかった。
【0013】
全体として考えると、最先端技術(SA)の結果は、Larner[23]により提案されたように、アミノ末端において特異的であるAβペプチドの形はび漫性プラークの発生に本質的な役割を果たすことができ、そのためそれらが神経炎性プラークに変換されることを示唆している。したがって、切り詰められたアミノ末端を有する形を特異的に検出し、したがって、び漫性プラークと神経炎性プラークとを明確に区別することができる抗体は、アルツハイマー病の診断におけるツールとして極めて有用である。とりわけ、カルボキシル末端で終わるアミノ酸が異なるアミロイドペプチドの異なる形の割合によって神経炎性プラークのサブグループを区別することができるものは、特に、それらが特異的な疾患マーカーを構成するプラークのサブセットの定義に用いることができるならば、特に有用であると思われる。β−アミロイドペプチドのアミノ酸12〜16から構成された配列に対して誘導され、Aβ40形よりAβ42形に対してより大きい親和力を有する本発明のモノクローナル抗体は、両特性を満たしている。
【0014】
β−アミロイドペプチドの形を検出することができる抗体が特に有用である他の態様は、生物学的液体中のこのペプチドの異なる形の濃度の分析によるアルツハイマー病の診断にあると思われ、生化学的パラメーターに基づいて診断を促進し、病状発現前症例又は該疾患を発現する特別のリスクがある症例を特定するために、また臨床試験に登録された患者をモニタリングするために検討されている態様である。この目的のために、多くの試験が脳脊髄液(CSF)に焦点を合わせており、患者と健常対照とを区別することを可能にするこの液体中に存在するβ−アミロイドペプチドの可溶性の形の濃度の変動があるかどうかを検出することを目標としている。しかし、侵襲的な手技である腰椎穿刺を用いることを必要とするCSFの分析を臨床診療におけるアルツハイマー病患者の診断及び日常的モニタリングに適用することはむしろ考え難い。したがって、現在までにほとんど研究が公表されていないが、他の系統の研究は、該疾患の出現及び発生と相関すると思われる生物学的マーカー(β−アミロイドペプチドの可溶性の形を含む)の血液及び尿中の濃度の変動の検討に焦点を合わせている。これらによれば、AβX−42及びAβX−40の血漿中濃度は、ダウン症候群が存在する場合には増加するように思われ、また、正常者において年齢とともに増加する。血漿中のこれらの種の濃度の測定は現在診断に適用することができないが、AβX−42の血漿中濃度(AβX−40の血漿中濃度はそうではない)はアルツハイマー病患者において上昇し、疾患が進展するにつれて低下する[28、29]。患者と対照との比較試験は未だ実施されていないが、β−アミロイドペプチドの可溶性の形の存在が尿中にも検出された[30]。血漿及び尿中に検出されるβ−アミロイドペプチドの濃度の大きさの程度が、健常者及び該疾患の異なる病期にある患者に対応するプロファイルを定義することを困難にしており、β−アミロイドペプチドの可溶性形と前記生物学的液体中に存在する他のタンパク質との可能な関連性は克服すべき他の困難であるが、これは積極的に追求されているアプローチであり、そのため、β−アミロイドペプチドを検出することを可能にするための、生物学的液体中に存在するβ−アミロイドペプチドの形と相互作用することができるモノクローナル抗体は、アルツハイマー病の診断における非常に有用なツールであり得る。β−アミロイドペプチドの可溶性形と相互作用し、尿などの生物学的液体中のそれらの存在を検出することができる本発明の抗体は、これらの診断技術を実施するために有用であると思われる抗体の1つである。さらに、それがβ−アミロイドペプチドのアミノ末端に近い領域に対して特異的に誘導されているという事実は、前記末端が切り詰められている形のアミノ末端を保存するβ−アミロイドペプチドの形の区別における問題に特有なものである。
【0015】
β−アミロイドペプチドのアミノ末端に近い領域に対して特異的に誘導された他のモノクローナル抗体並びにADに関連する診断法におけるそれらの使用が記載された。例えば、米国特許第4,666,829号は、アミノ末端に最も近いアミロイドペプチドの一部に対して発生するモノクローナル抗体の生産を記載している。具体的には、配列番号1によって表される前記ペプチドの最初の10残基(Asp−Ala−Glu−Phe−Arg−His−Asp−Ser−Gly−Tyr)を含む合成ペプチドを調製した。この抗体によって認識されるエピトープはこれらのアミノ酸1〜10に含まれるが、本発明において請求する抗体は12〜16のアミノ酸を含むエピトープを少なくとも認識する。このモノクローナル抗体を認識する特定の配列と本発明のそれとが異なることと同様に、確定するものは、異なる長さ及び/又はアミノ及びカルボキシル末端の変化を有するペプチドの他の形に対する結合を考慮することなく、アミロイドペプチドのアミノ酸1〜28により構成されているアルツハイマー病に特有なペプチドである、この特許で考慮されているものに対する用いる抗体の結合のみであるので、提案された診断技術のデザインも異なる。さらに、生物学的液体中に存在するアミロイドペプチドの形を検出するその能力を実証する実験的な証明は示されていない。
【0016】
さらに、特許出願PCT WO90/12871は、SV17−6E10と称するモノクローナル抗体の調製を記載している。この抗体は、アミロイドペプチドのアミノ酸1〜17の配列と同等であるとみなされる配列番号2により表されるペプチド配列Asp−Ala−Glu−Phe−Arg−His−Asp−Ser−Gly−Tyr−Gln−Val−His−His−Gln−Lys−Leuで免疫化することにより発生する。アミノ酸1〜17を含む領域に対する他のモノクローナル抗体は、前述の市販のモノクローナル抗体6E10であり、これは、該製品に対応するデータシートの記述http://www.alexis_corp.com/monoclonal:antibodies−SIG−9320/opfa.1.1.SIG−9320.386.4.1.html.に指摘されているように、特に、β−アミロイドペプチドのアミノ酸1〜17内でアミノ酸3〜8を含むエピトープを認識する。このエピトープは、本発明のEMSモノクローナル抗体の領域よりアミノ末端に近い異なる領域に対応する。それは、び漫性プラークを染色せず、神経炎性プラーク及び血管沈着物の異なる染色をもたらすことができるが、この抗体はペプチドAβ42とAβ40との間の親和力の差を示すと思われない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、EM5と称される本発明のモノクローナル抗体は、β−アミロイドペプチドの配列における、既知の最先端技術において記述される抗体のいずれによっても認識されない少なくとも1つのエピトープを認識するので、新規のツールである。したがって、本発明の抗体は、アルツハイマー病の診断における適用に有用である。本発明の抗体は、該疾患に本質的に関連しないび漫性プラークを検出せずに、神経炎性プラークを本質的に検出する。神経炎性プラークのうちで、本発明のモノクローナル抗体は、β−アミロイドペプチドの沈着物と比較してそれらの分子組成が異なる神経炎性プラークのサブグループを検出することを可能にする。さらに、本発明のモノクローナル抗体は、溶液が尿などの生物学的液体である場合を含んで、溶液中に存在するβ−アミロイドペプチドの形に結合することが可能であり、前記ペプチドのその後の検出及び定量が可能である。
【0018】
本発明は、β−アミロイドペプチドにおける以下の配列に対応するエピトープを認識し、
Val−His−His−Gln−Lys (配列番号3)
Aβ40イソ型に対するよりAβ42イソ型に対して大きい親和力を示すが、ペプチドが可溶形、凝集形又はSDSにより変性されているかどうかにかかわりなく、前記配列を含むβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合することができるモノクローナル抗体に関する。
【0019】
本発明はまた、前記配列番号3を含むβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合することができる前記抗体のフラグメントに関する。
【0020】
本発明はまた、前記モノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞系に関し、また、該モノクローナル抗体の産生を可能にする条件でハイブリドーマ細胞系及び前記細胞系の培養を得ることによる前記抗体を産生する方法に関する。
【0021】
さらに、本発明は、配列番号3に結合することができる本発明の抗体又はその少なくとも1つのフラグメントを含む組成物に関する。本発明の組成物の可能な実施形態は、抗体又はそのフラグメントがそれを検出することができる物質に結合し、前記物質が、本発明の抗体又はそのフラグメントに結合することができ、特定の物質の検出することができる他の物質、例えば色素原への変換を触媒することができる酵素などのそれを検出することができる物質に結合している第2抗体であることである。本発明の組成物の可能な他の実施形態は、抗体又はそのフラグメントが、磁界が印加される場合に形成された抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメント複合体の溶液の分離を可能にする磁性粒子などの溶液中に存在するβ−アミロイドペプチドのイソ型の抜き出しを促進するある種の物質又は粒子に結合しており、それにより、前記溶液中に存在するβ−アミロイドペプチドのイソ型を濃縮し、それらのその後の検出、同定及び/又は定量を促進することが可能であることである。
【0022】
本発明はまた、配列番号3を含むβ−アミロイドペプチドのイソ型を検出するための配列番号3に結合することができる本発明のモノクローナル抗体又はその少なくとも1つのフラグメントの使用に関する。検出されるβ−アミロイドペプチドのイソ型は、個人から採取した脳組織のサンプル中に、生物学的液体のサンプルのような溶液又はそれから得られる溶液中に存在し得る、或いはβ−アミロイドペプチドのイソ型の可能な存在を検出することが同様に望ましいある種の他の非生物学的種類のサンプル中にさえ含まれ得る。
【0023】
最後に、本発明は、配列番号3に結合することができる本発明の抗体又はその少なくとも1つのフラグメントを使用することによるβ−アミロイドペプチドのイソ型の検出に基づくアルツハイマー病のin vitro診断の方法に関する。本発明の好ましい実施形態において、β−アミロイドペプチドのイソ型は個人から採取した脳組織のサンプル中に検出される。この場合、抗体又はそのフラグメントがそれらの検出を可能にすることができる物質に結合しており、前記物質が、本発明の抗体又はそのフラグメントに結合することができるおそらく第2抗体であり、その検出を可能にすることができる他の物質に結合している、本発明の組成物が特に有用であり得る。
【0024】
本発明の診断技術の他の好ましい実施形態において、β−アミロイドペプチドのイソ型は、溶液中、好ましくは脳脊髄液、尿又は血液などの生物学的液体のサンプルから得られる、或いは血漿などの生物学的液体から得られる溶液中に検出される。本発明のこの第2の実施形態において、抗体又はそのフラグメントが、磁界が印加される場合に、溶液から形成された抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメント複合体の分離を可能にする磁性粒子などの溶液中に存在するβ−アミロイドペプチドのイソ型の抜き出しを促進するある種の物質又は粒子に結合しており、それにより、前記溶液中に存在するβ−アミロイドペプチドのイソ型を濃縮し、それらのその後の検出、同定及び/又は定量を促進することが可能である、本発明の組成物を使用することが好ましい。したがって、本発明の診断の方法は以下の段階を含む。
a)生物学的液体又はそれから得られる溶液のサンプルに磁性粒子に結合した配列番号3に結合することができる本発明の抗体又はその少なくとも1つのフラグメントを含む組成物を加える段階と、
b)β−アミロイドペプチドの少なくとも1つのイソ型と組成物に含まれている抗体又は抗体のフラグメントとの間で抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメント複合体が形成するのに十分な時間待つ段階と、
c)溶液から抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメント複合体を抜き取るための磁界を印加する段階と、
d)溶液を除去する段階と、
e)β−アミロイドペプチドの分子から抗体又は抗体のフラグメントを分離する段階と、
f)生物学的液体又はそれから得られる溶液のサンプルから抜き取られたβ−アミロイドペプチドのイソ型を同定し、定量する段階。
【0025】
β−アミロイドペプチドのイソ型を抜き出す溶液は、脳脊髄液のサンプル、或いは血液サンプルから得られる血漿サンプルの場合よりも得ることが簡単であるので、血液又は尿のサンプルが好ましい。血液又は血漿及び尿の間では、生物学的液体のサンプルは、侵襲的方法を使用せずに得ることができる尿サンプルであることが特に好ましい。しかし、MALDI−TOF質量分析などのβ−アミロイドペプチドのイソ型を同定し、定量する非常に感度の高い方法を用いることが必須である。
【0026】
本発明者らによっても開発されたポリクローナル抗体EM2及びEM3は、本発明の診断の方法における付加的ツールとしても用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
既に述べたように、本発明は、β−アミロイドペプチドにおける以下の配列に対応するエピトープを認識するモノクローナル抗体EM5に関する。
Val−His−His−Gln−Lys (配列番号3)
【0028】
この配列は、ヒトβ−アミロイドペプチドの残基12〜16の配列に対応する。したがって、前記抗体は、前記配列を含むβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合することができ、それを欠くもの、例えば、いわゆるp3ペプチド(Aβ17−42)及び切り詰められたアミノ末端を有する他の形(Aβ17−X)を認識しないことが望まれる。下に示す実施例で詳細に述べるモノクローナル抗体の特性評価において、EM5は、ヒトAβの配列の残基12〜16を含むペプチド(この領域外の修飾を有するにもかかわらず)に結合し、前記領域を欠くペプチドを認識しないことが示されている。該領域が修飾されている場合、位置13並びに位置5及び10にアミノ酸の変化を有するペプチドAβ1−28(げっ歯類)の場合と同様に、該ペプチドはもはやEM5によって認識されない。
【0029】
さらに、試験により、該抗体は、可溶性形、凝集形又は変性された(SDSで)かどうかにかかわりなく、残基12〜16を含むAβペプチドのイソ型に結合することが示されている。特に、下に示す実施例で述べる試験は、本発明の抗体は、脳組織のサンプル中に存在するプラークの一部を構成する凝集したβ−アミロイドペプチドのイソ型、及び溶液が尿などの生物学的液体のサンプルである場合を含む、溶液中に存在するβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合することができることを示している。したがって、本発明の他の態様は、その検出及び/又はその濃縮を可能にする物質に結合した、配列番号3に結合することができる本発明の抗体又はその少なくとも1つのフラグメントを含む組成物に関し、また、アルツハイマー病の診断におけるその使用に関する。
【0030】
本発明の抗体又はそのフラグメントがそれを検出することを可能にする物質に結合しているとき、抗体又はそのフラグメントに結合したβ−アミロイドペプチドのイソ型の存在の検出及び/又はその定量は、本発明の抗体により認識される特定の配列を含むβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合した抗体又はそのフラグメントの検出及び/又は定量によって可能である。本発明の好ましい実施形態において、配列番号3に結合することができる抗体又はそのフラグメントが結合している物質は、本発明のモノクローナル抗体に結合することができる第2抗体であり、第2抗体は、特定の物質の、その存在の検出を促進する特性を有する他の物質への変換を触媒することができる酵素に結合している。本発明の最も好ましい実施形態において、酵素に結合した第2抗体がDako Laboratories製のEnvisionシステムの一部であり、変換が酵素によって触媒される物質が色素原であり、反応を触媒する酵素がアルカリホスファターゼ(ニトロブルーテトラゾリウムを色素原として用いる場合)又は西洋ワサビペルオキシダーゼ(ジアミノベンジジンを色素原として用いる場合)のいずれかである。
【0031】
他の可能性は、本発明の抗体又はそのフラグメントが、前記抗体又はそのフラグメントに結合したβ−アミロイドペプチドのイソ型の濃縮を促進する物質又は粒子に結合していることである。この実施形態は、本発明の組成物を、溶液、特に、血液又は血漿、尿又は脳脊髄液のようにそれらの濃度が低い溶液中に存在するβ−アミロイドペプチドのイソ型の検出及び/又は定量に用いる場合に好ましい。該物質又は粒子は、例えば、免疫沈降による前記溶液からの抗原−抗体複合体の容易な分離を可能にするようなものである。前記粒子の好ましい例は、本発明の抗体により認識される特定の配列を含むβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合することができる本発明の抗体又はそのフラグメントに結合しているとき、抗体又はそのフラグメントに結合したβ−アミロイドペプチドのイソ型が、適切な磁界が印加された場合に溶液から抜き出されることを可能にする磁性粒子である。その後、β−アミロイドペプチドのイソ型は、抗体又はそのフラグメントから分離することができ、次いで、検出、同定及び/又は定量することができる。適切な方法は、特に、MALDI−TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化時間飛行)として知られている質量分析である。
【0032】
既に述べたように、本発明の抗体により認識される特定の配列を含むβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合することができる本発明の抗体又はそのフラグメント、並びにそれらのうちの少なくとも1つを含む組成物は、アルツハイマー病のin vitro診断に用いることができる。本発明の抗体により認識される特定の配列を含むβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合することができる本発明の抗体又はそのフラグメントを利用する、並びに前記抗体又は前記フラグメントを含む組成物を利用するアルツハイマー病のin vitro診断の方法は、本発明の範囲内にある。前記診断は、本発明のモノクローナル抗体により認識される配列を含むアミロイドペプチドのイソ型が支配的である沈着物の存在(アルツハイマー病の発現に特有な沈着物である神経炎性プラーク及び血管沈着物)が選択的に明らかにされる脳組織において行うことができ、支配的イソ型が本発明のモノクローナル抗体により認識される配列を欠くもの、すなわち、該モノクローナル抗体又はそのフラグメントの結合を示さないイソ型Aβ17−Xである沈着物(び漫性プラーク)で起ることと対照的に、前記抗体により認識される特定の配列に結合することができる本発明のモノクローナル抗体又はそのフラグメントの前記沈着物に対する結合の存在を検出する。神経炎性プラーク及び血管沈着物に対する抗体の結合は、本発明の抗体又はそのフラグメントに加えて、本発明のモノクローナル抗体に結合することができ、定義された物質の、その存在の検出を促進する特性を有する色素原などの他の物質への変換を触媒することができる酵素に結合している第2抗体を含むものの1つのような組成物により明らかにされる。脳組織における本発明の診断技術の最も好ましい実施形態において、診断の方法は、AβX−42(EM3)又はAβX−40(EM2)のいずれかを認識するポリクローナル抗体EM2及びEM3の付加的使用により補足される。両抗体はまた、本発明の著者らのグループによって以前に開発された[24]。
【0033】
本発明の診断の方法の他の実施形態は、脳脊髄液、尿又は血液、或いはこの最後に言及した場合においては、それから得られる血漿などのβ−アミロイドペプチドのイソ型を含むことが知られている生物学的液体において実施することができる。脳脊髄液を得るために穿刺が必要であるので、侵襲的方法を用いずに得ることができる血漿又は尿、特に後者を使用することが好ましい。本発明の診断の方法は、本発明の抗体又はそのフラグメントに結合するβ−アミロイドペプチドのイソ型の濃縮を促進するある種の物質又は粒子に結合した前記抗体又はそのフラグメントを含む組成物を用いることが好ましい。既に述べたように、β−アミロイドペプチドのイソ型の濃縮を促進する粒子は、β−アミロイドペプチドのイソ型との間で形成する複合体を含む溶液に磁界の作用を受けさせるとき、吸引などの方法を用いて容易に廃棄することができる溶液から磁性粒子を抜き出すことができるように、抗体又はそのフラグメントに結合している磁性粒子であることが好ましい。完全な抗体を用いる場合、磁性粒子への抗体の結合がその安定性を増大させるために共有結合によってもたらされることが特に好ましいが、抗体の結合能力を低下させないように、前記共有結合の成立はできる限り抗原結合部位を避けるようにし、したがって、結合が抗体のFcフラグメントのヒスチジンに富むゾーン又は前記ゾーンのグリコシド鎖において優先的に起る方法が好ましい。これに関連して、Fuentesら[26]により記載された磁性粒子に抗体を結合させる方法が特に好ましい。
【0034】
β−アミロイドペプチドのイソ型の結合複合体が溶液から分離されたならば、アセトニトリル及びトリフルオロ酢酸を用いることができる、抜き取られたβ−アミロイドペプチドのイソ型の検出及び/又は定量の前に抗体又はそのフラグメントの前記イソ型の分離が好ましい。尿中のβ−アミロイドペプチドのイソ型の濃度は通常かなり低いので、検出及び/又は定量は、MALDI−TOF質量分析などの非常に感度の高い方法を用いて行うことが好ましい。
【0035】
本発明の他の態様は、本発明のモノクローナル抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞系である。本発明の好ましい実施形態において、前記細胞系は、KLH(スカシガイヘモシアニン)に結合したペプチドAβ1−40で免疫化したBALB/cマウスの脾細胞のマウスミエローマ系P3/X63−Ag.653との融合により得られる。
【0036】
最後に、本発明の他の態様は、ハイブリドーマ細胞から開始する本発明のモノクローナル抗体の産生及び精製の方法である。本発明の好ましい実施形態において、該方法は、前述のハイブリドーマ細胞系の生成、及び事前にプリスタンを投与したBALB/cマウスの腹水としてそれを増殖させることを含む。モノクローナル抗体は、プロテインA−セファロース(Pharmacia)のカラム中のアフィニティクロマトグラフィーによりこの復水から精製する。本発明の特に好ましい実施形態において、用いるハイブリドーマ細胞は、European Collection of Cell Cultures(ECACC)(CAMR、Porton Down、Salisbury、Wiltshire、United Kingdom)において2006年3月1日に寄託が要求され、アクセス番号06030101が付与された「EM5クローンA」と称される系統からのものである。
【0037】
本発明及びその好ましい実施形態を以下の実施例を用いてより詳細に述べる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
抗体の産生
本発明で用いるポリクローナル抗体EM2及びEM5は、以前に報告した方法[24]で生成させた。
【0039】
EM5モノクローナル抗体の産生のために以下の処置を行った。
【0040】
ハイブリドーマの生成
BALB/cマウスに、KLH(スカシガイヘモシアニン)に結合させ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、同量のフロイント完全アジュバントで乳化した40μgのペプチドAβ1−40を皮下注射した。マウスにフロイント不完全アジュバントで隔週ごとに3回注射を繰り返した。融合の3日前に、マウスにPBS中25μgのAβ1−40−KLHを腹腔内注射した。融合当日に、マウスミエローマ系P3/X63−Ag.653で免疫化した動物の脾細胞を確立された方法[25]に従ってポリエチレングリコール1400(Sigma)を用いて融合させた。融合細胞を1ウエル当たり105細胞の密度で無菌の96ウエルプレートに分配し、ヒポキサンチン、チミジン及びアミノプテリンを含む培地中で選択した。抗体産生ハイブリドーマは、後に述べるELISAにより同定した。
【0041】
ハイブリドーマのスクリーニング
ポリスチレン製マイクロタイタープレート(Maxisorb、Nunc)を炭酸緩衝液50mM、pH9.6(被覆緩衝液)中5μg/mlのAβ1−40で4℃で一夜被覆した。プレートをPBS中0.05%のTween20(PBS−T)で洗浄し、非特異的結合部位をPBS−T中2%のウシ血清アルブミン(BSA)(ブロッキング溶液)で37℃で1時間ブロックした。洗浄後、プレートを、ブロッキング溶液で2倍に希釈した組織培養上清とともに1時間インキュベートした。プレートを再び洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(Sigma)を結合させたヤギ抗マウスIgGとともに37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、基質(クエン酸緩衝液100mM、pH5.0中0.05%o−フェニレンジアミン及び0.015%過酸化水素)を溶液に加えた。10分後に2.5M硫酸を用いて反応を停止させ、492nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーにより測定した。上清が無関係のハイブリドーマ(抗グリアジン抗体)の上清について得られた値の少なくとも2倍の吸光度値をもたらしたハイブリドーマを選択した。特異抗体を産生したハイブリドーマを限界希釈法を用いて繰返しクローンし、ゲル免疫沈降により濃縮した細胞培養上清中のモノクローナル抗体のイソ型を特異抗血清(Sigma)を用いて定量した。選択したハイブリドーマを事前にプリスタンを投与したBALB/cマウスの腹水として増殖させた。
【0042】
モノクローナル抗体の精製
腹水からのEM5モノクローナル抗体をプロテインA−セファロース(Pharmacia)のカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。精製した抗体をPBS中で十分に透析し、使用するまで−85℃で保存した。
【0043】
(実施例2)
見かけの解離定数の計算:ペプチドAβ1−40及びAβ1−42に対する親和力
N−t−ブチルオキシカルボニル法を用いてYale大学のWM Keckプラントで合成された最近溶解した固定化ペプチドAβ1−40及びAβ1−42を用いてEM5及び6E10モノクローナル抗体の親和力を検討するためにELISAを用いた。
【0044】
ポリスチレンマイクロタイタープレート(Immulon2、Dynex Technology Inc.、Chantilly、VA)を炭酸/重炭酸緩衝液、pH9.6中で最近溶解又は凝集した0.5μgのペプチドAβ1−40又はAβ1−42で4℃で16時間被覆した。Superblock(Pierce Chemical Co.)でブロックした後、漸増濃度の精製EM5(TBS−T中0〜0.5nM、1ウエル当たり100μl)をAβで被覆したウエルに加え、37℃で3時間インキュベートした。結合したEM5を西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させたヤギ抗マウスIgGのF(ab’)2フラグメント(1:3000、Amersham)により検出した。3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)(BioRad、Hercules、CA)を用いて15分間反応を起こさせ、反応を2M硫酸を用いて停止させ、マイクロプレートリーダー(Cambridge Technology、Watertown、MA)で450nmで定量した。市販の抗体6E10(Senetek、PLC)の親和力を精製IgG抗体の調製物を用いて同様なプロトコールに従って検討した。非線型回帰分析、見かけの解離定数の推定及びF比を計算することにより統計的有意性を見いだすためのタンパク質結合データの比較をGraphPad製のPrismソフトウェア(GraphPad、San Diego、CA)を用いて評価した。
【0045】
図1に最近溶解し、凝集させたAβペプチドに対するEM5及び6E10モノクローナル抗体のELISAにおける結合に対応する飽和曲線を示す。すべての場合に高い親和力が認められ、見かけの解離定数はピコモル範囲にあった。これらの抗体のいずれも最近調製又は凝集形のAβに対する特異な親和性を示さなかった。興味深いことに、6E10はAβ1−40及びAβ1−42に対して同等の親和力を示したが、EM5はAβ42に対してAβ40に対するよりも大きい親和力を示した(p<0.01)(最近調製及び凝集したAβ42に対してそれぞれ13.7pM及び15.5pM、並びに最近調製及び凝集したAβ40に対してそれぞれ37.5pM及び37.0pM)。
【0046】
(実施例3)
免疫転移分析
EM5によるAβ1−40及びAβ1−42の特異的認識を検討し、免疫転移分析によりEM2及びEM3ポリクローナル抗体と比較した。このために、Aβペプチド(0.5μg/レーン)を16%アクリルアミド、トリス−トリシン−SDS中PAGE電気泳動に供した。10%メタノールを含む3−シクロヘキシルアミノ−1−プロパンスルホン酸、pH11を用いてペプチドを400mAで4℃で1時間電気泳動によりポリ(フッ化ビニリデン)膜(Immobilon−P、Millipore)に転移させた。膜を5%粉末スキムミルクを含むTBS−Tで4℃で16時間ブロックし、次いで、2μg/mlのIgGs EM2、EM3又はEM5とともに室温で1時間インキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼ(Amersham)に結合させ、1:2000に希釈したヤギ抗ウサギIgG(EM2及びEM3)又はヤギ抗マウスIgG(EM5)を第2抗体として用いた。製造業者の仕様に従って化学ルミネセンス(Amersham)により免疫転移を可視化した。
【0047】
結果を図2に示す。これに見られるように免疫転移実験において、EM5はAβ1−40及びAβ1−42ペプチドの両方に対する免疫反応性を示した(ELISAによって得られた結果を裏づけている)が、抗体EM2及びEM3は、以前に記載されたように[24]それぞれペプチドAβ1−40又はAβ1−42を認識することができたにすぎなかった。これらの結果は、EM5モノクローナル抗体が、SDSで処理したサンプル中で保存されている両ペプチドに共通の特定の直線エピトープに結合するという見解を裏づけている。全体として、本発明者らの結果は、EM5が可溶形、凝集形及び変性形(SDSで)のAβペプチドを認識することができることを示しており、Aβ42に対するわずかな優先的な結合はおそらく該ペプチドの疎水性の増加の結果であると考えられる。
【0048】
(実施例4)
エピトープの位置推定
EM5抗体により認識された正確なエピトープの正確な位置推定のために、一連の合成Aβペプチドに対する抗体の結合を解析した。ペプチドAβ1−16、Aβ1−28及びAβ25−35は、Sigma(San Luis、MO)から入手し、ペプチドAβ1−42、Aβ1−42(E22Q)、Aβ1−40、Aβ1−40(E22G)、Aβ1−40(E22Q)、Aβ1−28(げっ歯類)、Aβ1−28(E22Q)、Aβ17−40、Aβ16−42及びAβ25−35は、N−t−ブチルオキシカルボニル法を用いてYale大学のWM Keckプラントで合成され、Aβ21−28、Aβ21−28(E22Q)、Aβ37−41及びAβ37−40は、通常のFmoc法を用いてPeptide Synthesis Unit(National Biotechnology Center、Madrid)において合成された。ペプチドAβ37−42及びAβ37−49の設計は、配列CSGGSGGG(配列番号4)を有していた結合のためのシステイン残基を有するアミノ末端におけるテイルを含んでいた。すべてのペプチドを高速液体クロマトグラフィーにより逆相モードで精製し、それらの純度をMALDI−TOF質量分析により評価した。
【0049】
a)抗体捕捉ELISA
試験を行うために、平底ポリスチレン製マイクロタイタープレート(Immulon2、Dynex Technology Inc.、Chantilly、VA)を炭酸−重炭酸緩衝液0.1M、pH9.6中1μg/ウエルの対応するAβペプチドで4℃で16時間被覆した。2%BSAを含むNaCl150mM、トリス20mM、0.05%Tween20、pH7.4(TBST)でブロックした後、EM5抗体の連続希釈物(20〜0.02mg/mlのIgGフラクション)を37℃で1時間インキュベートした。ペルオキシダーゼに結合させた抗マウスIgG(Sigma、San Luis、MO)を1:2000に希釈し、37℃で30分間適用した。反応をTMB(BioRad、CA)で発生させ、2M硫酸で停止し、450nmで定量した。非特異的結合を測定し、第1抗体を除去した。
【0050】
結果を図3に示す。図の上部に各ペプチドと20μg/mlの抗体とのインキュベーションに対応して得られた吸光度値に対応する棒グラフを示す。EM5は、ヒトAβの配列の残基12〜16を含むペプチドに結合することが示され、この領域を欠くペプチドを認識することができなかった。さらに、この領域外の修飾を有する突然変異体(Aβ1−42(E22Q)、Aβ1−40(A21G)、Aβ1−40(E22G)、Aβ1−40(E22Q))は野生型ペプチドと比較したとき同様な結合を示したが、位置5、10及び13にアミノ酸の3つの変化を示すAβ1−28(げっ歯類)ペプチドはEM5により認識されなかった。
【0051】
b)消化し、免疫沈降させたβ−アミロイドペプチドの質量分析
結果を確認するために、トリプシン又はα−キモトリプシンによる消化により得られたAβ1−42由来の一連のペプチドを、EM5抗体を被覆した磁性粒子と接触させ、以下のステップを行う追加の試験を行った。
【0052】
ペプチドを消化するために、0.025μgの酵素を含む0.5μlのトリプシン又はα−キモトリプシンを、1μgのペプチドを含む重炭酸アンモニウム50mM中β−アミロイドペプチドの10μl分割量に加えた。インキュベーションは、37℃で2時間行った。行った消化の概略を表1に示す。
【0053】
EM5モノクローナル抗体を磁性粒子上に固定化するために、EM5の5μl分割量(1.1mg/ml)をヤギ抗マウスIgGを被覆した50μlのDynabeads M450とともに室温で2時間インキュベートした。複合体を二方向撹拌(ローターで)しながらPBSで4回洗浄した。
【0054】
免疫沈降を行うために、トリプシン(又はα−キモトリプシン)で消化したβ−アミロイドペプチドの10μl分割量を磁性粒子上に固定化した50μlのEM5とともにローターで37℃で1時間インキュベートした。磁性−免疫沈降物複合体を同じローターでPBSで4回洗浄し、上清を吸引し、廃棄した。
【0055】
消化免疫沈降β−アミロイドペプチドの質量分析のために、磁性複合体に含まれた免疫沈降ペプチドを20μlの50%アセトニトリル/0.3%トリフルオロ酢酸を用いて遊離させた。5μlのこの溶液を5μlの0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル(2:1)中飽和α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸と混合した。次いで、容積0.5μlのこの溶液を先細りステンレススチールプローブにのせ、室温で乾燥させた。可視化光学器械構成部分及びNレーザー(337nm)を備えたイオン源を装着したBruker製MALDI−TOF質量分析計Reflex IIでサンプルを測定した。質量スペクトルは、リニアディテクタで28.5kV及び1.5kVの加速電圧でポジティブリニアモードで記録し、放射束密度閾値以下の200レーザー単一ショットスペクトルを累積した。3〜5選択入射点から放射された高強度の良好な分解能を有する質量シグナルのみを考慮に入れた。すべてのMALDIスペクトルをペプチドの標準化混合物[アンジオテンシンII(1047.2)、副腎皮質刺激ホルモンの18〜39フラグメント(2466.7)及びインスリン(5734.6);Sigma]を用いて外部較正した。
【0056】
分析したぺプチドの特性並びに得られたデータを以下の表1に要約する。
【0057】
【表1】

【0058】
これらのペプチドの各々(1〜5)及び消化を行わなかったペプチド(6)の配列を図4に示す。図において免疫沈降物質のMALDI−TOF質量分析の結果により、EM5抗体によって認識されたエピトープに対応すると思われるゾーンに陰影を付した。
【0059】
前記図4でわかるように、MALDI−TOF質量分析による免疫沈降物質の分析は、EM5が消化混合物から残基11〜16(陰影を付した領域)を含むペプチドの各フラグメントを抜き出すことができたことを示す。この領域外のペプチドのフラグメントは溶液から回収されなかった。これらの結果は、ELISA及び免疫転移分析によって得られたデータを確認するものである。
【0060】
結論すると、一連のAβペプチドに対する抗体の差別的反応性は、EM5がAβペプチドの残基11〜16を認識することを示している。とりわけ、げっ歯類Aβ1−28ペプチド(1〜28R)における残基12の突然変異は抗体によるその認識を阻害するという事実によって示されるように、残基12〜16の関与が基本的である。得られたデータからは十分には確認されていないが、その一部として、エピトープのコンフォーメーションにおける残基11(E)の関与は除外することはできない。
【0061】
(実施例5)
免疫組織化学:抗体の組織反応性
び漫性プラークに対立するものとしてのアルツハイマー病に特有の沈着物(神経炎性プラーク及び血管沈着物)を明らかにするためのEM5抗体の妥当性を実証するために、アルツハイマー病に罹患した脳組織の切片の免疫染色を、抗体EM2(Aβ40ペプチドのカルボキシル末端に対するポリクローナル抗体)、EM3(Aβ42ペプチドのカルボキシル末端に対するポリクローナル抗体)及びEM5(Aβペプチドの残基12〜16に対する特異性が実証されたモノクローナル抗体)を用いて行った。EM2及びEM3は、初期の試験[24]で用いた。
【0062】
脳組織の処理及び免疫組織化学に選択した部位
脳組織は、Tissue Bank for Neurological Investigations(Madrid)により供給された。明確なADを有する男性3例、女性3例の6例の対象を試験に含めた。それらの年齢範囲は、68〜75歳であった。すべての場合に、ADの診断はCERAD(アルツハイマー病の登録を確立するためのコンソーシアム(Consortium to Establish a Registry for Alzheimer’s Disease))[10]の臨床病理ガイドラインに基づくものであった。いずれの患者も他の神経学的所見、例えば、パーキンソン病又は著しい血管変化を有さなかった。すべての脳を脳バンクの切断、固定及び包埋のプロトコールに従って組織学的検査用に処理した。死後期間は、10〜18時間であった。剖検直後に脳の半分(大脳半球、小脳及び脳幹の中央矢状切断により得た)を4%リン酸塩で緩衝したホルムアルデヒドで固定した。3〜4週間の固定後に、ADに有意な関わりのあるすべての皮質及び皮質下部位から組織のブロックを得、エタノールで徐々に脱水し、キシレンによる組織の清澄化した後、パラフィンに包埋した。すべての場合に、頭頂後頭外側皮質、側頭側方皮質(これらの2つの部位はCERADガイドライン[10]により推奨されている)、海馬、尾状核−被殻(尾状核の頭部)及び小脳半球の皮質に対応する5μm組織切片を免疫組織化学検査のために最初のパラフィンブロックから得た。非特異的アミロイド染色の対照として、アミロイド免疫組織化学用に処理したものに連続する切片について修正メテナミン−銀染色を行った。
【0063】
抗体及び免疫染色プロトコール
用いた一次抗体は、EM2、EM3及びEM5であった。EM2及びEM3は、初期の試験[24]で用いた。切片を一次抗体とともに室温で30分間インキュベートした。ポリクローナル抗体は、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)を色素原として用いてアルカリホスファターゼ(APh)を含むEnvisionシステム(Dako Laboratories)により検出し、EM5は、前述のシステム又はジアミノベンジジン(DAB)を色素原として用いて西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を含むEnvisionシステム(Dako Laboratories)のいずれかにより検出した。共局在法の場合、ポリクローナル抗体は常にAPhを含むEnvisionシステム(色素原としてNBTを用いた)により検出したが、EM5はHRPを含むEnvisionシステム(色素原としてDABを用いた)により検出した。
【0064】
二重及び単一免疫染色
抗体の各対の共局在の程度並びにそれらの各々の最適作業希釈の確立の目的のための予備的操作として、第1の一次抗体としてEM5を、第2の一次抗体としてEM2又はEM3を用いた二重免疫染色法を用いた。2症例の頭頂後頭皮質の組織切片に限定した試験のこの段階中、第1の一次抗体としてのEM5の使用は、二重免疫染色法において第1の抗体として用いたとき、他の2つの抗体のマスキング効果を除外したことが立証された。両選択パラフィンブロックの連続切片において、EM5の漸増希釈物(1:50、1:100、1:500、1:1000及び1:2000)をEM2又はEM3の漸減希釈物(1:2000、1:1000、1:500、1:100及び1:50)で共局在した。EM2抗体がEM5により高度に共局在されたことが認められたので、試験の残りは、EM5及びEM3により示される反応性の異なるパターンを実証することを目的とした。この目的のために、すべての選択した部位の切片におけるその後の二重免疫染色をすべての例において第1の一次抗体としてのEM5(1:1000希釈)及び第2の一次抗体としてのEM3(1:1000希釈)の使用に限定した。さらに、同じ組織における各抗体により示される反応性のパターンのより正確な可視化のために、EM5、EM2又はEM3を一次抗体として用いて各ブロックの連続切片における単一染色を行った。試験のこの部分の主目的が抗体の間の定量的な差ではなく、免疫反応性の異なるパターンを定性的に比較することであるので、染色の結果は定量化しなかった。
【0065】
結果
症例のうちの1例の結果は、前述した分布とともに示した図5で確認することができる、すなわち、
(A)及び(B):色素原としてNBTを用いて一次抗体としてのEM5(A)及びEM3(B)で免疫染色した後頭皮質の同じゾーンの連続切片。プラークの位置の推定を容易にするために血管(V)を標識している。EM3(B)は、び漫性プラーク(DP)及び神経炎性プラーク(NP)並びに血管(V)中の沈着物を明らかにしているが、EM5(A)は、び漫性プラークに対してはそうではないが、血管及び一部の神経炎性プラークのより強い染色をもたらす。
(C):一次抗体としてEM3(色素原としてNBT(青色)を用いた)及びEM5(色素原としてDAB(褐色)を用いた)を用いた二重免疫染色法の高倍率の顕微鏡写真。神経炎性プラーク及び血管の壁の二重免疫染色が認められる。
(D)及び(E):EM5(D)又はEM2(E)のいずれかを用いて免疫染色した後頭皮質の同じ部位の連続切片。再び、プラークの同定を促進するために血管(V)を標識した。血管及び神経炎性プラークが両抗体と反応することを確認することができる。より少数の神経炎性プラークがEM5よりEM2により染色され、び漫性プラークはそれらのいずれとも反応しない。
(F):後頭皮質の組織の同じ切片における一次抗体としてEM2(色素原としてNBT(青色)を用いた)及びEM5(色素原としてDAB(褐色)を用いた)を用いた二重免疫染色法による高倍率の顕微鏡写真。血管壁及び神経炎性プラークにおける両抗体の反応性の正確な共局在が認められる。
【0066】
1例を除くすべての症例が、試験したすべての抗体と反応する顕著な軟膜及び皮質内血管アミロイド沈着物を示している。すべての陽性症例において、血管アミロイド沈着物の免疫反応性は、EM3(図5B)とよりもEM2(図(5E))及びEM5(図(5A)及び(5D))との間で顕著(より広範かつより強い)であった。EM2及びEM5は、このレベルで顕著に共局在している(図(5F))。予想通り、新皮質領域及び海馬はび漫性及び神経炎性プラークの高い密度を示したが、小脳皮質及び線条体はび漫性アミロイド沈着物のみを示した。EM3抗体とともにインキュベートした切片は、び漫性及び神経炎性プラークとの反応性を示した(図(5B))。それらを修正メテナミン銀法により染色した連続切片と比較したとき、EM3は各切片に存在したすべてのプラークを染色したことが示された。さらに、EM3抗体は一部のニューロン体を染色した。EM2及びEM5は、未熟神経炎性プラーク(核を含まない)及び成熟経炎性プラーク(核を含む)を染色し、再び高度の共局在を示した(図(5F))。EM2は、皮質領域においても皮質下領域においてもび漫性プラークと反応しなかった(図(3E))。EM5及びEM2による二重免疫染色は、一部の神経炎性プラークにおいて両抗体の共局在を示しているが、EM5を非常に低い希釈度(1:50)でインキュベートしたとき、このレベルである程度の共局在が認められたが、び漫性プラークにおいては示していない(図(5C))。線条体の切片において豊富なEM3陽性び漫性プラークを示した1症例においてのみ、それらの一部が作業希釈度(1:500)でEM5によって非常にわずかに染色された。この同じ症例は、小脳皮質におけるび漫性プラークのEM5との反応性を示さなかった。線条体及び小脳の切片が可変量のび漫性プラークを示した他のすべての症例において、それらのいずれもEM5抗体に対して反応性でなかった。EM2もEM5も存在するすべての神経炎性プラークを染色するとは限らないように思われた(図(5A、D)を参照)。しかし、血管アミロイド沈着物の免疫反応性の場合に認められたように、EM2又はEM5に対して反応性の神経炎性プラークは、EM3によるより強く染色された。1症例におけるすべての抗体に対する血管の陰性及びこの同じ脳における線条体の一部のび漫性プラークの軽度の陽性は別として、すべての症例が試験した各抗体に対して染色の同様なパターンを示すとみなすことができる。
【0067】
したがって、び漫性プラークにおいて認められた染色のより均一なパターンと対照的に、抗体のパネルは神経炎性プラークにおける不均一性を検出した。これは、び漫性プラークの発生及び神経炎性プラークへのそれらの変換の過程における実際の段階を示すことが妥当であることを実証している。EM5抗体は、EM2により染色され、EM3により様々な程度に染色されたすべての構造(神経炎性プラーク及び血管壁)の強い染色をもたらした。神経炎性プラークのサブセットは、EM2及びEM5に対する反応性の高い共局在を有する血管アミロイドと同じ染色のパターンを有することが認められた。本発明は、EM5がAβ<11−40又はAβ<11−42を含むすべての構造と反応するはずであることを示している。実際、ここに示したELISA結果は、最近溶解し、凝集した形のAβペプチドをEM5抗体が認識することを示す。しかし、組織切片において、本発明者らは、EM5に対する強い反応性のEM2との高い共局在に加えて、ポリクローナル抗体によるよりもEM5による神経炎性プラーク間の染色の大きい変動を認めた(AβC40)。これらの陽性プラークにおける比較的により強い染色は、長Aβペプチドの特に高い含量又はAβC40の選択的に高い含量を有する神経炎性プラークのサブグループを、或いはAβ<11−40及びAβ<11−42のコード位置を示す構造(血管又はプラーク)におけるEM5によって認識されるエピトープの特別な接近可能性さえ明らかにすると思われる。本発明の抗体は、Parvathyら[22]によって以前に検出された神経炎性プラークAβC40(+)の同じサブセットを検出すると思われる。長Aβペプチドの特に高い含量を有する神経炎性プラークのこのサブセットは、本発明のモノクローナル抗体が検出することができるADにおけるアミロイド病変の進行における重要な里程標であると思われる。したがって、EM5の使用によって、疾患の進行の段階の特異的マーカーを構成するプラークのサブセットを定義することができる。
【0068】
(実施例6)
尿中のβ−アミロイドペプチドの形と反応する抗体の能力
生物学的液体中のβ−アミロイドペプチドの形の存在を検出するEM5抗体の有効性を実証するために、該尿サンプルを入手した後にβ−アミロイドペプチドの異なる長さの形に対応した合成ペプチドの混合物を加えた健常患者からの尿サンプル中のそれらを検出する試験を行った。このために、磁性粒子に結合させたモノクローナル抗体を尿サンプルに加え、結合したペプチドをMALDI−TOF質量分析を用いて検出した。用いた方法の詳細を下に示す。
【0069】
磁性粒子への抗体の結合
免疫グロブリンのグリコシド残基の緩やかな酸化によりアルデヒド基を生成させ、これを、エチレンジアミンによる修飾により表面上にアミノ基を生成させた磁性粒子と反応させることに基づく、Fuentesら[26]によって記載された方法に従って、EM5抗体に結合した磁性粒子を調製した。簡単に述べると、EM5抗体の酸化は、過ヨウ素酸ナトリウム10mMとともに2時間インキュベートすることにより誘発し、その後、酸化抗体を4℃の蒸留水中で透析した。表面上にカルボキシル基を有するEM/100−30磁性粒子(Merck Co、France)を10mg/mlの濃度で1MエチレンジアミンpH4.75とともに90分間インキュベートして修飾した後、蒸留水で十分に洗浄する前に、固体EDCl(1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド)を10mMの最終濃度で加え、90分間放置して反応させた。
【0070】
pH7.5のリン酸ナトリウム緩衝液150mMに溶解した10mgの酸化EM5抗体を表面上にアミノ基を有する2mlの磁性粒子(10mg/ml)に4℃で加え、一夜インキュベートした後に抗体を磁性粒子上に固定化した。形成したシッフ塩基及び未反応アルデヒド基を1mg/mlの濃度に達するまで水素化ホウ素ナトリウムを加えてpH8.5、4℃で還元した。調製物を十分な量の蒸留水で洗浄した。固定化抗体の量は、Bradfordの方法[27]を用いて固定化の前後の上清中のタンパク質の濃度の差を定量することにより測定した。
【0071】
溶液中のβ−アミロイドペプチドの検出
尿などの生物学的液体のサンプル中に存在するβ−アミロイドペプチドのイソ型に対する結合に関するその有効性を確認する前に、本発明者らは、溶液中のβ−アミロイドペプチドの形に結合する本発明の抗体の能力、並びにその後の同定及び/又は定量に進むために、磁性粒子に結合した抗体が、β−アミロイドペプチドが発生した溶液からβ−アミロイドペプチドの形を抜き出すことを可能にするかどうかを試験した。したがって、蒸留水に溶解したβ−アミロイドペプチドの形Aβ12−29、Aβ1−40及びAβ1−42に対応した合成ペプチドをともに蒸留水に混合して、Aβ12−29及びAβ1−42の0.44μg/μl並びにAβ1−40の0.11μg/μlの最終濃度を有する混合物を得た。4μlのこのペプチドの混合物を981μlの水に加えた。
【0072】
次に、水中溶液中に存在するβ−アミロイドペプチドの形を磁性粒子に結合した本発明の抗体を用いて分離した。溶液から分離されたペプチドの混合物の質量分析を図6に示す。図中部分Aは抗体で事前に処理しなかった溶液(Ctrl.)の分析に対応し、部分Bは磁性粒子に結合した抗体(EM5+PM)の使用に対応する。わかるように、抗体は、溶液中のβ−アミロイドペプチドの形に結合し、それらと複合体を形成することができ、そのため、それらを前記溶液から分離することができる。
【0073】
尿サンプルの調製
別の日に、尿の10mlのサンプルを健常者から採取し、室温で3500rpmで5分間遠心分離した。尿をPBS緩衝液中1MNaOHでpH7.0に中和した。
【0074】
β−アミロイドペプチドの形Aβ12−28、Aβ1−40及びAβ1−42に対応した合成ペプチドをともに蒸留水中で混合して、Aβ12−28及びAβ1−42の0.44μg/μl並びにAβ1−40の0.11μg/μlの最終濃度を有する混合物を得た。4μlのこのペプチドの混合物を981μlの尿に加えた。
【0075】
尿中のβ−アミロイドペプチドの形の最終濃度は、Aβ12−18及びAβ1−42の場合は1.76μg/mlであり、Aβ1−40の場合は0.44μg/mlであった。
【0076】
免疫沈降
EM5モノクローナル抗体を被覆した15μlの磁性粒子(PBS緩衝液で1:4に希釈した)を、3種のβ−アミロイドペプチド(Aβ12−18、Aβ1−40及びAβ1−42)を含んでいた上記の981μlの尿サンプルとともに37℃で1時間インキュベートした。
【0077】
インキュベーションの後に、管を磁性粒子の磁気分離器に入れ、尿をピペットを用いて注意深く抜き出した。
【0078】
分離器の磁界の作用により保持された、ペプチドが結合した磁性粒子をHOで3回洗浄した。
【0079】
磁性粒子に結合したペプチドを、0.1%(v/v)のトリフルオロ酢酸(TFA)を含む30%(v/v)の水性アセトニトリル中α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸のマトリックスの12μlの溶液を用いて磁性粒子から分離し、MALDI−TOF質量分析により分析した。
【0080】
質量分析による免疫沈降ペプチドの検出
α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸のマトリックス中の免疫沈降により得られた1.5μlのサンプル混合物を、100サンプルの容量を有するステンレススチールプローブに入れ、室温で5分間乾燥させた。
【0081】
サンプルは、機器のデフォルト構成を用いたPE Biosystems製のMALDI−TOF質量分析Voyager DE−PRO用ワークステーションで測定した。質量スペクトルは、20kVの加速電圧、75%のコレクタ電圧、0.002%のガイドフィラメント、150ナノ秒の遅れ時間でポジティブレフラクタモードで記録し、閾照射を下回る個別レーザー点火の200スペクトルを累積した。3〜5選択入射点から放射された高強度の良好な分解能を有する質量シグナルのみを考慮に入れた。装置は、アンジオテンシン(1297Da)、ACTH1〜17(2094Da)、ACTH18〜39(2466Da)、ACTH7〜38(3660Da)及びウシインスリン(2867Da)からなる、Applied Biosystems(Tres Cantos、Madrid、Spain)により供給された較正混合物を用いて外部較正した。
【0082】
図7に他を代表するサンプルのうちの1つを用いて得られたグラフを示す。尿サンプルに加えたペプチドに対応するピークを確認することができ、これは、本発明の抗体の尿サンプル中のそれらに結合する能力を実証するものである。生物学的液体のサンプルを用いて分析を行ったので、サンプル中に自然に存在し、磁性粒子に結合した抗体にも結合した他の分子に対応する他のピークも確認することができる。
【0083】
ハイブリドーマの寄託
EM5抗体を産生するハイブリドーマをEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)(CAMR、Salisbury、Wiltshire、United Kingdom)に寄託した。寄託の日付及びアクセス番号は以下のとおりである。
ハイブリドーマの名称 寄託の日付 アクセス番号
EM5クローンA 2006年3月1日 06030101
【0084】
前述したように、これらのハイブリドーマ細胞は、a)KLH(スカシガイヘモシアニン)に結合した、β−アミロイドペプチドのアミノ酸1〜40を含むAβ1−40と称するβ−アミロイドペプチドの形を免疫原として用いたマウスの免疫化の後に得られたBALB/cマウスの脾臓リンパ球とb)融合における不死部分として働いたマウス骨髄腫系P3/X63−Ag653の細胞の2種の細胞の融合によって得た。種々のクローンが得られ、本発明者らはそれらから「EM5クローンA」と称されるクローンを選択した。これは、ELISA型の抗体捕捉試験により確認されるペプチドAβ1−40である、免疫化のために用いる抗原を特異的に認識することができる典型的IgG1抗体である「EM5」と称するモノクローナル抗体を産生する。このクローンは、10%ウシ胎児血清、10%DMSO、グルタミン2mM及びピルビン酸ナトリウム1mMを含むRPMI1640培地中、5%COを含む雰囲気中37℃で、細胞の95%が懸濁液中で生育し、残りの5%が培養容器に付着する条件で増殖させた。細胞を限界希釈法により2回クローンし、その後、4×10細胞の分割量を取り、バイアルに入れた。細菌の非存在、マイコプラスマの非存在及び真菌の非存在の管理の後、これらのバイアルのいくつかを、それらの寄託の許可を要求したEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)に送った。
【0085】
(参考文献)

【0086】

【0087】

【0088】

【0089】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】固定化されたAβペプチドに対する抗体EM5(上部)及び6E10(下部)の結合の曲線を示す図である。両方の場合に凝集した(△)又は凝集しない(□)、Aβ40ペプチド(塗りつぶし記号)及びAβ42ペプチド(中抜き記号)に対する抗体の異なる濃度(横軸;濃度nM単位)に対応する結果を示す。各ポイントは、3回行った実験の平均値を表す。450nmにおける光学濃度(O.D.)を縦軸に示す。
【図2】合成ペプチドAβ1−40及びAβ1−42に対する抗体EM2、EM3及びEM5の免疫転移分析の結果を示す図である。
【図3】上は、20μg/mlの抗体に対応する吸光度(450nmにおけるO.D.)の値を用いたELISAによる一連の合成Aβペプチドに対するEM5の反応性の棒グラフであり、下は、このELISAで得られた結果によるEM5により認識されたエピトープの局在化を示す図である。1−28R=げっ歯類Aβ1−28。カッコ内は種々の変異体。
【図4】説明における表に示した種々のタンパク質分解酵素で消化した免疫沈降β−アミロイドペプチド(ペプチド1〜5)の質量分析の解析により決定されたEM5モノクローナル抗体により認識されたAβペプチドのエピトープの局在化を示す図である。配列6は、消化しなかったβ−アミロイドペプチドに対応する。
【図5】EM2、EM3、EM5及び前記の各々とEM5との組合せを用いたアルツハイマー病に罹患した脳組織の免疫染色を示す写真である。染色された構造は、V(血管)、DP(び漫性プラーク)及びNP(神経炎性プラーク)として表示する。写真は以下に対応する。 (A)及び(B):色素原としてニトロブルーテトラゾリウム(NBT)を用いて一次抗体としてEM5(A)及びEM3(B)で免疫染色した後頭皮質の同じゾーンの連続切片。 (C):一次抗体としてEM3(色素原:NBT)及びEM5(色素原:DAB)を用いた二重免疫染色法による高倍率の顕微鏡写真。 (D)及び(E):EM5(D)又はEM2(E)のいずれかを用いて免疫染色した後頭皮質の同じ部位の連続切片。 (F):EM2(色素原:ニトロブルーテトラゾリウム、NBT)及びEM5(色素原:ジアミノベンジジン、DAB)を用いた二重免疫染色法による高倍率の顕微鏡写真。
【図6】異なる長さのβ−アミロイドペプチドの形のMALDI−TOF質量分析による分析で得られたグラフである。各場合に、縦軸は質量/電荷比(m/z)から得られた異なる質量(Mas.)のピークの各々に対応する相対強度(%Int.)を示す。文字Aで示し、右に「Ctrl.」と記した上のグラフは、β−アミロイドペプチドのアミノ酸12〜29(Pep.Aβ.12〜29)、1〜40(Pep.Aβ.1〜40)及び1〜42(Pep.Aβ.1〜42)を含むペプチドを含む溶液から得られた。文字Bで示し、右に「EM5+PM」と記した下のグラフは、磁性粒子に共有結合したEM5抗体及び磁界を用いることによる形成した複合体の分離を用いることによりそれらを含む溶液のペプチドの濃縮の後に得られた。右下の図は考慮しているぺプチドの各々に対する抗体の結合領域を表す。
【図7】β−アミロイドペプチドのアミノ酸12〜28(ピークはPep.12〜28と記す)、1〜40(ピークはPep.1〜40と記す)及び1〜42(ピークはPep.1〜42と記す)を含む付加的な量のペプチドを加え、その後サンプルを磁性粒子に共有結合したEM5抗体で処理し、形成した複合体を磁界の印加により分離した健常者の尿サンプルのMALDI−TOF質量分析による分析により得られたグラフである。縦軸は、質量/電荷比(m/z)から得られた異なる質量(Ms.)のピークの各々に対応する相対強度(%Int.)を示す。尿サンプルに加えたβ−アミロイドペプチドの形の各々に対応するピークを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−アミロイドペプチドにおいて、少なくとも配列
Val−His−His−Gln−Lys(配列番号3)
に対応するエピトープを認識し、前記配列を含有するヒトβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合することができる、モノクローナル抗体。
【請求項2】
アルツハイマー病に罹患した人の脳組織におけるヒトβ−アミロイドペプチドの沈着物に結合することができる請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
β−アミロイドペプチドにおいて、少なくとも配列
Val−His−His−Gln−Lys(配列番号3)
に対応するエピトープを認識し、前記配列を含有するヒトβ−アミロイドペプチドのイソ型に結合することができる、モノクローナル抗体のフラグメント。
【請求項4】
アルツハイマー病に罹患した人の脳組織におけるヒトβ−アミロイドペプチドの沈着物に結合することができる請求項3記載のモノクローナル抗体のフラグメント。
【請求項5】
請求項1記載のモノクローナル抗体又は請求項3記載のモノクローナル抗体のフラグメントを産生することができるハイブリドーマ細胞系。
【請求項6】
配列Val−His−His−Gln−Lys(配列番号3)を含有する少なくとも1つのペプチドで免疫化したBALB/cマウスの脾臓細胞のマウス骨髄腫系P3/X63−Ag.653との融合により得られる、請求項5記載のハイブリドーマ細胞系。
【請求項7】
ペプチドAβ1−40で免疫化したBALB/cマウスの脾臓細胞のマウス骨髄腫系P3/X63−Ag.653との融合により得られる、請求項6記載のハイブリドーマ細胞系。
【請求項8】
KLHに結合したペプチドAβ1−40で免疫化したBALB/cマウスの脾臓細胞のマウス骨髄腫系P3/X63−Ag.653との融合により得られる、請求項7記載のハイブリドーマ細胞系。
【請求項9】
アルツハイマー病に罹患した人から採取した脳組織のサンプルからの前記疾患のイン・ビトロ(in vitro)診断における、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体あるいは少なくとも1つの請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体のフラグメントの使用。
【請求項10】
アルツハイマー病に罹患した人から採取した脳組織のサンプルからの前記疾患のイン・ビトロ(in vitro)診断における、β−アミロイドペプチドと異なる少なくとも1つの配列領域に対して特異的な少なくとも1つの他の抗体と組み合わせた、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体あるいは少なくとも1つの請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体のフラグメントの使用。
【請求項11】
抗体EM2と及び/又は抗体EM3と組み合わせた、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体あるいは少なくとも1つの請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体のフラグメントの請求項10記載の使用。
【請求項12】
前記抗体又はそのフラグメントが検出されることを可能にする物質に結合した、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体あるいは少なくとも1つの請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体のフラグメントを含む、組成物。
【請求項13】
モノクローナル抗体又はそのフラグメントが結合した物質が第1抗体又は抗体のフラグメントに結合することができる第2抗体であり、この第2抗体が、特定の物質の、検出することができる他の物質への変換を触媒することができる酵素に結合している、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
変換が酵素により触媒される物質が色素原である請求項13記載の組成物。
【請求項15】
第2抗体がアルカリホスファターゼに結合しており、用いる色素原がニトロブルーテトラゾリウムである、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
第2抗体が西洋ワサビペルオキシダーゼに結合しており、用いる色素原がジアミノベンジジンである、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項17】
β−アミロイドペプチドと異なる少なくとも1つの配列領域に対して特異的な少なくとも1つの他の抗体を含む、請求項12〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
検出することができる物質に結合している請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体あるいは請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体のフラグメント、及び同様に検出することができる種々の物質に結合している、β−アミロイドペプチドと異なる1以上の配列領域に対して特異的なもう1つの抗体又は他の複数の抗体を含む、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
β−アミロイドペプチドと異なる配列領域を対象とする第2抗体が抗体EM2である請求項18記載の組成物。
【請求項20】
請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体あるいは請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体のフラグメントが、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合している第2抗体に結合しており、色素原ジアミノベンジジン(DAB)を、検出することができる変換のための物質として用い、抗体EM2が、アルカリホスファターゼに結合している第2抗体に結合しており、色素原ニトロブルーテトラゾリウムを、検出することができる変換のための物質として用いる、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
β−アミロイドペプチドと異なる配列領域を対象とする第2抗体が抗体EM3である請求項18記載の組成物。
【請求項22】
請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体あるいは請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体のフラグメントが、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合している第2抗体に結合しており、色素原ジアミノベンジジン(DAB)を、検出することができる変換のための物質として用い、抗体EM3が、アルカリホスファターゼに結合している第2抗体に結合しており、色素原ニトロブルーテトラゾリウムを、検出することができる変換のための物質として用いる、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
アルツハイマー病に罹患した人から採取した脳組織のサンプルからの前記疾患の診断における、請求項12〜22のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
アルツハイマー病に罹患した人から採取した脳組織のサンプルからの前記疾患のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法であって、前記サンプルから、少なくとも配列Val−His−His−Gln−Lys(配列番号3)を含有するβ−アミロイドペプチドの少なくとも1つのイソ型を、その請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体あるいは請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体のフラグメントへの結合により検出することを含む、方法。
【請求項25】
アルツハイマー病に罹患した人から採取した脳組織のサンプルからの前記疾患のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法であって、前記サンプルから、少なくとも配列Val−His−His−Gln−Lys(配列番号3)を含有するβ−アミロイドペプチドの少なくとも1つのイソ型を、その請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体あるいは請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体のフラグメントへの結合により検出することを含み、前記抗体又は抗体のフラグメントは請求項12〜22のいずれか一項に記載の組成物中に含有される、方法。
【請求項26】
アルツハイマー病に罹患した人から採取した脳組織のサンプルからの前記疾患のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法であって、前記サンプルから、少なくとも配列Val−His−His−Gln−Lys(配列番号3)を含有するβ−アミロイドペプチドの少なくとも1つのイソ型を、その請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体あるいは請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体のフラグメントへの結合により検出すること、並びにβ−アミロイドペプチドの少なくとも1つのイソ型を、そのβ−アミロイドペプチドと異なる領域を対象とする少なくとも1つの第2抗体への結合により検出することを含み、両方の抗体又は請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体のフラグメント及び第2抗体又はアミロイドペプチドと異なる領域を対象とする他の付加的な抗体は請求項17〜22のいずれか一項に記載の組成物中に含有される、方法。
【請求項27】
発明のモノクローナル抗体が結合することができる、β−アミロイドペプチドの沈着物の存在が脳組織において検出される、請求項24〜26のいずれか一項に記載のアルツハイマー病のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法。
【請求項28】
発明のモノクローナル抗体が結合することができる、β−アミロイドペプチドの沈着物の存在が、請求項12〜23のいずれか一項に記載の組成物の使用によって脳組織において検出される、請求項27記載のアルツハイマー病のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法。
【請求項29】
発明のモノクローナル抗体が結合することができる、β−アミロイドペプチドの沈着物の存在、並びに前記ペプチドと異なる領域を対象とする少なくとも1つの第2抗体が結合することができるβ−アミロイドペプチドの少なくとも1つの付加的なイソ型を含有する沈着物の存在が、請求項17〜22のいずれか一項に記載の組成物の使用によって脳組織において検出される、請求項28記載のアルツハイマー病のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法。
【請求項30】
生物学的液体又はそれから得られる溶液のサンプル中の可溶型のヒトβ−アミロイドペプチドに結合することができる、請求項1記載のモノクローナル抗体。
【請求項31】
脳脊髄液、血液、血漿又は尿のサンプル中の可溶型のヒトβ−アミロイドペプチドに結合することができる、請求項30記載のモノクローナル抗体。
【請求項32】
尿のサンプル中の可溶型のヒトβ−アミロイドペプチドに結合することができる請求項31記載のモノクローナル抗体。
【請求項33】
生物学的液体又はそれから得られる溶液のサンプル中の可溶型のヒトβ−アミロイドペプチドに結合することができる、請求項3記載のモノクローナル抗体のフラグメント。
【請求項34】
脳脊髄液、血液、血漿又は尿のサンプル中の可溶型のヒトβ−アミロイドペプチドに結合することができる、請求項33記載のモノクローナル抗体のフラグメント。
【請求項35】
尿のサンプル中の可溶型のヒトβ−アミロイドペプチドに結合することができる請求項34記載のモノクローナル抗体のフラグメント。
【請求項36】
請求項30〜32のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又は請求項33〜35のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体のフラグメントを含む組成物であって、抗体又はそのフラグメントが、抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメントの複合体が発生する溶液からの該抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメントの複合体の抜き取りを促進する物質又は粒子に結合している、組成物。
【請求項37】
抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメントの複合体が発生する溶液からの該抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメントの複合体の抜き取りを促進する物質又は粒子が磁性粒子である、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
抗体又はそのフラグメントと磁性粒子との結合が共有結合である請求項37記載の組成物。
【請求項39】
生物学的液体又はそれから得られる溶液のサンプルからのアルツハイマー病のイン・ビトロ(in vitro)診断における、請求項30〜32のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又は請求項33〜35のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体のフラグメントの使用。
【請求項40】
モノクローナル抗体又はそのフラグメントが、請求項36〜38のいずれか一項に記載の組成物に含有される、請求項39記載の使用。
【請求項41】
モノクローナル抗体又はそのフラグメントが請求項38記載の組成物に含有される請求項40記載の使用。
【請求項42】
生物学的液体又はそれから得られる溶液のサンプル中に存在するβ−アミロイドペプチドの型と抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメントの複合体を形成するために、請求項38記載の組成物を生物学的液体又はそれから得られる溶液のサンプルに加える、請求項41記載の使用。
【請求項43】
抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメントの複合体が発生する生物学的液体又は溶液からの形成した該抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメントの複合体の抜き取りが磁界の使用によってもたらされる、請求項42記載の使用。
【請求項44】
抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメントの複合体の形で生物学的液体又はそれから得られる溶液から抜き取られるβ−アミロイドペプチドの型を、それらが発生した生物学的液体又は溶液からのそれらの抜き取りの後、それらの同定及び/又は定量を受ける前に抗体又は抗体のフラグメントから分離する、請求項43記載の使用。
【請求項45】
β−アミロイドペプチドの型をMALDI−TOF質量分析により同定及び/又は定量する、請求項44記載の使用。
【請求項46】
生物学的液体のサンプルが尿のサンプルである、請求項39〜45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
生物学的液体又はそれから得られる溶液のサンプルからのアルツハイマー病のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法であって、
a)生物学的液体又はそれから得られる溶液のサンプルに請求項37又は38に記載の組成物を加える段階と、
b)β−アミロイドペプチドの少なくとも1つのイソ型と組成物に含有される抗体又は抗体のフラグメントとの間で抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメントの複合体が形成するのに十分な時間待つ段階と、
c)溶液から抗原−抗体又は抗原−抗体フラグメントの複合体を抜き取るための磁界を印加する段階と、
d)溶液を除去する段階と、
e)β−アミロイドペプチドの分子から抗体又は抗体のフラグメントを分離する段階と、
f)生物学的液体又はそれから得られる溶液のサンプルから抜き取られたβ−アミロイドペプチドのイソ型を同定し、定量する段階、
を含む、少なくとも配列Val−His−His−Gln−Lys(配列番号3)を含有するβ−アミロイドペプチドの少なくとも1つのイソ型を、その請求項30〜32のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又は請求項33〜35のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体のフラグメントへの結合により検出することを含む、方法。
【請求項48】
生物学的液体のサンプルが尿のサンプルである、請求項47記載のアルツハイマー病のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法。
【請求項49】
段階a)で加える組成物が、モノクローナル抗体のFc領域に存在する1以上の残基の修飾により、対応する磁性粒子に共有結合している請求項30〜32のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を含む、請求項48記載のアルツハイマー病のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法。
【請求項50】
尿のサンプルから抜き取られたβ−アミロイドペプチドのイソ型の同定及び定量をMALDI−TOF質量分析により行う、請求項49記載のアルツハイマー病のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法。
【請求項51】
β−アミロイドペプチドの分子から抗体又は抗体のフラグメントを分離する段階e)を、トリフルオロ酢酸を含有する水性アセトニトリル中α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸中で行う、請求項50記載のアルツハイマー病のイン・ビトロ(in vitro)診断の方法。
【請求項52】
ECACC06030101の実質的に純粋なサンプルを含む、請求項8に記載のハイブリドーマ細胞系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−532984(P2008−532984A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500220(P2008−500220)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/ES2006/070027
【国際公開番号】WO2006/095041
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507301176)
【Fターム(参考)】