説明

モノクローナル抗体及びその使用

【課題】アミロイドベータタンパク質単量体に対してよりもアミロイドベータ(Aβ)タンパク質球状凝集体に対して高い特異性で結合する単離抗体を提供する。
【解決手段】American Type Culture Collection指定番号PTA−7238又はPTA−7407を有するハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であって、アルツハイマー病又はその他の神経変性疾患の予防、治療及び診断において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、アルツハイマー病又はその他の神経変性疾患の、予防、治療及び診断において使用され得るモノクローナル抗体(例えば、8F5及び8C5)に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、進行性の認知能力喪失及び脳のいくつかの領域での、アミロイド沈着、神経原線維のもつれ及びニューロン欠損を含む特徴的な神経病理学的特性を特徴とする神経変性疾患である(Hardy及びSelkoe(Science 297、353(2002);Mattson(Nature 431、7004(2004)参照)。アミロイド沈着の主要な構成因子はアミロイドベータペプチド(Aβ)であり、42アミノ酸長型(Aβ1−42)が最も顕著である。
【0003】
特に、アミロイドβ(1−42)タンパク質は、タンパク質分解性プロセシングによるアミロイド前駆体タンパク質(APP)由来の42アミノ酸を有するポリペプチドである。これにはまた、ヒト変異型に加え、ヒト以外の生物(特にその他の哺乳動物、とりわけラット)に存在するアミロイドβ(1−42)タンパク質のアイソフォームも含まれる。このタンパク質は、水性の環境で重合する傾向があり、非常に様々な分子形態で存在し得る。
【0004】
例えばアルツハイマー病などの認知症の発症又は進行と不溶性タンパク質の沈着との単純な相互関係は疑わしいことが分かっている(Terryら、Ann.Neurol.30.572−580(1991);Dicksonら、Neurobiol.Aging 16、285−298(1995))。一方、シナプス欠損及び知的知覚は、Aβ(1−42)の可溶型とより相関すると思われる(Lueら、Am.J.Pathol.155、853−862(1999);McLeanら、Ann.Neurol.46、860−866(1999))。
【0005】
過去にポリクローナル及びモノクローナル抗体がAβ(1−42)に対して作製されてきたが、動物及び/又はヒトにおいて重篤な副作用も起こさずに所望の治療効果をもたらすことが証明されているものはない。例えば、5ヵ月間、週に1回、N−末端特異的抗−Aβ(1−42)抗体の投与を受けた老齢APP23マウスでの前臨床研究からの受動免疫付与の結果から、治療的に関連のある副作用が示されている。特に、これらのマウスは、食塩水処置マウスと比較して、微小出血の数及び重症度が上昇していた(Pfeiferら、Science 2002 298:1379)。同様の出血の増加は、最近、老齢(>24ヵ月)Tg2576及びPDAPPマウスに対しても報告された(Wilcockら、J Neuroscience 2003、23:3745−51;Rackeら、J Neuroscience 2005、25:629−636)。両系統において、抗−Aβ(1−42)の注射の結果、微小出血が顕著に増加した。このように、ヒトの身体においてネガティブで潜在的な致死的影響を誘発することなく疾患の進行を予防又は遅らせる生物製剤の開発に対して非常に大きい治療ニーズがある。一般集団の寿命が長くなっており、この長寿化とともに、アルツハイマー病と診断される年間患者数が上昇しているという観点で、このようなニーズは特に明白である。さらに、このような抗体により、アルツハイマー病の症状があった患者においてアルツハイマー病の適切な診断が可能となろう(この診断は、現在、剖検でのみ確認することができる。)。さらに、このような抗体により、本タンパク質の生物学的特性及びこの衰弱性疾患に関与するその他の生物学的因子を解明することが可能となろう。本明細書中で言及する全ての特許及び刊行物は、参照によりその全体を本明細書中に組み込む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hardy及びSelkoe(Science 297、353(2002)
【非特許文献2】Mattson(Nature 431、7004(2004)
【非特許文献3】Terryら、Ann.Neurol.30.572−580(1991)
【非特許文献4】Dicksonら、Neurobiol.Aging 16、285−298(1995)
【非特許文献5】Lueら、Am.J.Pathol.155、853−862(1999)
【非特許文献6】McLeanら、Ann.Neurol.46、860−866(1999)
【非特許文献7】Pfeiferら、Science 2002 298:1379
【非特許文献8】Wilcockら、J Neuroscience 2003、23:3745−51
【非特許文献9】Rackeら、J Neuroscience 2005、25:629−636
【発明の概要】
【0007】
本発明は、アミロイドベータタンパク質単量体に対してよりもアミロイドベータ(Aβ)タンパク質球状凝集体に対して高い特異性で結合する単離抗体を含む。従って、選択的結合が観察される。本抗体は、例えば、8F5又は8C5などのモノクローナル抗体であり得る。単量体と対比した球状凝集体の結合特異性の比は少なくとも1.4である。特に、この比は、好ましくは、少なくとも約1.4から少なくとも約16.9である。(1.0−17.5(両端を含む。)の比もまた、本発明の範囲内であるとみなされる(同時にその小数%範囲内)。例えば、1.1、1.2、1.3、...、2.0、2.1、2.2...、17.1、17.2、17.3、17.4、17.5ならびにそれらの間及び%の全ての整数は、本発明の範囲内に入るとみなされる。)。アミロイドベータタンパク質単量体は、例えば、Aβ(1−42)単量体又はAβ(1−40)単量体であり得る。
【0008】
さらに、本発明はまた、American Type Culture Collection指定番号PTA−7238を有するハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体(本明細書中で「8F5」と呼ぶ。)ならびにこのモノクローナル抗体(即ち8F5)を産生するハイブリドーマを包含する。また、本発明は、American Type Culture Collection指定番号PTA−7407を有するハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体(本明細書中で「8C5」と呼ぶ。)ならびにこのモノクローナル抗体(即ち8C5)を産生するハイブリドーマも含む。
【0009】
さらに、本発明は、配列番号1によりコードされる可変重鎖を含むモノクローナル抗体を含む。この抗体は、マウス、ヒト又はヒト化であり得る。さらに、本発明は、配列番号2によりコードされる可変軽鎖を含むモノクローナル抗体を含む。この抗体もまた、マウス、ヒト又はヒト化であり得る。この抗体は、配列番号1によりコードされる可変軽重鎖をさらに含み得、ヒト又はヒト化であり得る。
【0010】
さらに、本発明は、配列番号3を含むモノクローナル抗体を含む。この抗体は、マウス、ヒト又はヒト化であり得る。
【0011】
さらに、本発明は配列番号4を含むモノクローナル抗体を包含する。この抗体は、マウス、ヒト又はヒト化であり得る。この抗体は配列番号3をさらに含み得、マウス、ヒト又はヒト化であり得る。
【0012】
さらに、本発明は、配列番号11によりコードされる可変重鎖を含むモノクローナル抗体を含む。この抗体は、マウス、ヒト又はヒト化であり得る。
【0013】
さらに、本発明は、配列番号12によりコードされる可変軽鎖を含むモノクローナル抗体を含む。この抗体もまた、マウス、ヒト又はヒト化であり得る。この抗体は、配列番号11によりコードされる可変重鎖をさらに含み得、ヒト又はヒト化であり得る。
【0014】
さらに、本発明は配列番号19を含むモノクローナル抗体を含む。この抗体は、マウス、ヒト又はヒト化であり得る。
【0015】
さらに、本発明は、配列番号20を含むモノクローナル抗体を包含する。この抗体は、マウス、ヒト又はヒト化であり得る。この抗体は配列番号19をさらに含み得、マウス、ヒト又はヒト化であり得る。
【0016】
本発明はまた、アミロイドベータタンパク質原線維に対してよりもアミロイドベータタンパク質球状凝集体に対して高い特異性で結合する単離抗体も含む。この抗体は、例えばモノクローナルであり得、American Type Culture Collection指定番号PTA−7243を有するハイブリドーマ又はAmerican Type Culture CollectionPTA−7407を有するハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体であり得る。これらのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマもまた本発明の範囲内に入る。
【0017】
さらに、本発明は、可変重鎖の相補性決定領域(CDR)の少なくとも1つが、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択される抗体を含む。
【0018】
さらに、本発明はまた、可変軽鎖のCDRの少なくとも1つが配列番号8、配列番号9及び配列番号10からなる群から選択される抗体も含む。この抗体は、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択される可変重鎖の少なくとも1つのCDRをさらに含み得る。
【0019】
本発明はまた、可変重鎖のCDRの少なくとも1つが配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群から選択される抗体も含む。
【0020】
さらに、本発明はまた、可変軽鎖のCDRの少なくとも1つが配列番号16、配列番号17及び配列番号18からなる群から選択される抗体も包含する。この抗体は配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群から選択される可変重鎖の少なくとも1つのCDRをさらに含み得る。
【0021】
さらに、本発明は、アルツハイマー病の治療又は予防を必要とする患者においてアルツハイマー病を治療又は予防する方法を包含する。この方法は、治療又は予防を達成するのに十分な量で患者に上述の単離抗体の何れか1以上を投与することを含む。
【0022】
例えば筋肉内投与、静脈内投与及び皮下投与からなる群から選択される経路を介して本単離抗体を投与し得る。
【0023】
本発明はまた、アルツハイマー病の疑いがある患者においてアルツハイマー病を診断する方法も含む。この方法は、1)患者から生体試料を単離する段階;2)抗原/抗体複合体の形成に十分な時間及び条件下で、上述の抗体の少なくとも1つと該生体試料を接触させる段階;3)該試料中の抗原/抗体複合体の存在(該複合体の存在は患者におけるアルツハイマー病の診断を示す。)を検出する段階を含む。この抗原は、例えば、球状凝集体又は、完全な球状凝集体と同じ機能特性(例えば結合活性)を有する、その一部もしくは断片であり得る。
【0024】
さらに、本発明は、アルツハイマー病の疑いがある患者においてアルツハイマー病を診断する別の方法を含む。この方法は、1)患者から生体試料を単離する段階;2)抗体/抗原複合体の形成に十分な時間及び条件下で、抗原と該生体試料を接触させる段階;3)共役物を結合抗体に結合させるのに十分な時間及び条件下で、得られた抗体/抗原複合体に共役物を添加する段階(この共役物は、上述の抗体の1つを含み、検出可能なシグナルを生成することができるシグナル生成化合物に結合されている。);4)シグナル生成化合物により生成されたシグナルを検出することにより、該生体試料に存在し得る抗体の存在を検出する(このシグナルは、該患者においてアルツハイマー病の診断を示す。)段階を含む。この抗原は、球状凝集体又は、完全な球状凝集体と同じ機能特性(例えば結合活性)を有するその一部もしくは断片であり得る。
【0025】
本発明は、アルツハイマー病の疑いがある患者においてアルツハイマー病を診断するさらなる方法を含む。この方法は、1)患者から生体試料を単離する段階;2)抗−抗体/抗体複合体(該複合体は該生体試料中に存在する抗体を含有する。)を形成させるのに十分な時間及び条件下で、抗−抗体と生体試料を接触させる段階(該抗−抗体は、上述の抗体の1つに特異的である。);2)共役物(conjugate)を結合抗体に結合させるのに十分な時間及び条件下で、得られた抗−抗体/抗体複合体に共役物を添加する段階(該共役物は抗原を含み、これは、検出可能なシグナルを生成することができるシグナル生成化合物に結合されている。);3)シグナル生成化合物により生成されたシグナルを検出する(このシグナルは、該患者においてアルツハイマー病の診断を示す。)段階を含む。
【0026】
さらに、本発明は、上述の抗体の何れか1以上を含有する組成物を含む(例えば、8F5及び8C5)。
【0027】
本発明は、アルツハイマー病の予防又は治療を必要とする患者においてアルツハイマー病を予防又は治療する別の方法を含む。この方法は、予防又は治療を達成するのに十分な量で患者に直上の組成物を投与する段階を含む。
【0028】
さらに、本発明は、上述の抗体の少なくとも1つと、医薬的に許容可能なアジュバントと、を含むワクチンを包含する。
【0029】
さらに、本発明は、アルツハイマー病の予防又は治療を必要とする患者においてアルツハイマー病を予防又は治療するさらなる方法を含む。この方法は、予防又は治療を達成するのに十分な量で患者に上述のワクチンを投与する段階を含む。さらに、本発明は、アルツハイマー病が発現することが予測される患者の能動免疫化に適切な化合物を同定する方法を包含する。この方法は、1)1以上の化合物が上述の抗体の1以上に結合するのに十分な時間及び条件下で、関心のある1以上の化合物を上述の抗体の1以上に曝露する段階;2)該抗体に結合する化合物を同定する(同定された化合物は、アルツハイマー病を発現すると予測される患者での能動免疫化において使用される。)段階を含む。
【0030】
また、本発明は、a)上述の単離抗体の少なくとも1つと、b)シグナル生成化合物に結合された抗体を含む共役物(この共役物の抗体はa)の単離抗体とは異なる。)と、を含む、キットを含む。このキットは、このキットの成分の利用方法に関する説明付きの添付文書も含み得る。
【0031】
本発明はまた、a)上述の抗体の1つに対する抗−抗体と、b)シグナル生成化合物に結合された抗原を含む共役物と、を含むキットも包含する。この抗原は、球状凝集体又は、球状凝集体と同じ機能特性(例えば結合活性)を有するその一部もしくは断片であり得る。また、このキットは、このキットの成分の利用方法に関する説明付きの添付文書も含み得る。
【0032】
図面の簡単な説明
図1は、Aβ(1−42)単量体、Aβ(1−40)及びsAPPと対比した、球状凝集体への、8F5の選択性を示す。EC50値間の比として、8F5に対する選択性係数を計算することができる(HFIP中でAβ(1−42)単量体に対して:555.8/90.74=6.1;NHOH中でAβ(1−42)単量体に対して:1007/90.74=11.1;Aβ(1−40)単量体に対して:667.8/90.74=7.4;sAPPに対して:>100)。
【0033】
図2は、上清中の、原線維結合重及び軽鎖抗体(レーン4、6、8)及び対応する非結合遊離断片(レーン3、5、7)のSDS−PAGE分析を示す。
【0034】
図3は、軽度認知障害(MCI、左)又はアルツハイマー病(AD、右)の患者由来のCSF試料中のAβ42及びAβ40含量を示す。標準抗体6E10と比較した場合、又は同じELISAを用いた直接試料分析と比較した場合、両群とも、8F5はAβ(1−42)の割合がより高く、Aβ(1−40)の量が少ないか又は同等であることが観察され得る。
【0035】
図4は、APPトランスジェニックマウスの3群(即ち、6G1、8F5、PBS)及び非トランスジェニックの同腹仔(野生型)の1群における、既知の物体と対比した未知の物体と過ごす時間としての、新規物体認識指数を示す。3週間にわたる、1週間に1回の腹腔内注射により、動物(数は下記カラムで与える。)に対して、モノクローナル抗体6G1もしくは8F5で免疫付与を行うか又はビヒクル(即ち、リン酸緩衝食塩水;PBS、及び野生型)での処置を行った。注射の最終日に、新規物体認識テストを行った。PBS群と野生型群との間の相違から、この範例において、APPトランスジェニックマウスの認知障害が示された。PBSを注射したマウスはチャンスレベルであったが(即ち、50と有意差はなかった。)、一方、他の全てのマウスは物体認識を示した(t検定;星印)。抗体処置APPトランスジェニックマウスのパフォーマンスを対照群と比較したところ、PBS処置マウスと対比して有意差が見られたが、野生型マウスと対比した場合有意差は見られず(事後t検定を用いたANOVA;丸印)、このことから、これらのAPPトランスジェニックマウスにおいて、抗体処置により認知障害が軽減したことが示唆される。
【0036】
図5(A)は本明細書中で「8F5」と呼ぶモノクローナル抗体をコードする可変重鎖のDNA配列(配列番号1)を示し、図5(B)は、モノクローナル抗体8F5をコードする可変軽鎖のDNA配列(配列番号2)を示す。(各配列において相補性決定領域(CDR)に下線を付す。図6も参照のこと。)。
【0037】
図6(A)はモノクローナル抗体8F5の可変重鎖のアミノ酸配列(配列番号3)を示し、図6(B)はモノクローナル抗体8F5の可変軽鎖のアミノ酸配列(配列番号4)を示す。可変重鎖の1つのCDRは、アミノ酸配列SYGMS(配列番号5)により表される。可変重鎖の別のCDRは、アミノ酸配列ASINSNGGSTYYPDSVKG(配列番号6)により表され、可変重鎖の別のCDRは、アミノ酸配列SGDY(配列番号7)により表される。可変軽鎖のあるCDRは、アミノ酸配列RSSQSLVYSNGDTYLH(配列番号8)により表される。可変軽鎖の別のCDRは、アミノ酸配列KVSNRFS(配列番号9)により表され、可変軽鎖の別のCDRは、アミノ酸配列SQSTHVPWT(配列番号10)により表される。上述のCDRの全てに図6(A)及び6(B)で下線を付す。
【0038】
図7は、アルツハイマー病(AD)患者又は老齢APPトランスジェニックマウスの新皮質の横断面に対する、様々な濃度での抗体の結合を示す。特に、図7(A)は、APPトランスジェニックマウス系統Tg2576及びAD患者(RZ55)での、脳組織の斑としての、及び脳血管での大脳アミロイド血管障害(CAA)としての、コンゴレッド染色による、アミロイド沈着の検証を示す。図7(B)は、AD患者(RZ16)におけるAβ(アミロイド斑)の実質性沈着の染色が6G1及び市販の抗体6E10によってのみ起こり、一方、8F5及び8C5では染色が非常に弱いことを示す。図7(C)は、TG2576マウスにおけるAβ(アミロイド斑)の実質性沈着の強い染色が6G1及び市販の抗体6E10によってのみ起こり、一方、8F5及び8C5では染色が非常に弱いことを示す。図7(D)−(G)は、画像解析を用いた組織学的画像におけるAβ斑染色の分析の定量を示す。斑のグレースケール値からバックグラウンド組織のグレースケール値を差し引くことにより、光学密度値(0%=染色なし)を計算した。(図(D)=Tg2576マウスにおける0.7μg/mL抗体の結合;図(E)=APP/Lマウスにおける0.07−0.7μg/mL抗体の結合;図(F)=AD患者(RZ55)における0.7μg/mL抗体の結合;及び図(G)=AD患者(RZ16)における0.07−0.7μg/mL抗体の結合)。市販の抗体6E10(星印)及び4G8(丸)及び抗体6G1、8C5及び8F5の染色間の差異を統計的に評価した(対照と対比して、星印1個/丸印:p<0.05、星印2個/丸印:p<0.01及び星印3個/丸印:p<0.001;p<0.001でのANOVA後の、事後ボンフェローニt検定)(図(D)及び図(E))。図(E)及び(G)において、抗体8C5及び8F5は常に、市販の抗体6E10及び4G8よりも有意に弱い染色を示した(ANOVAでのp<0.001後、事後t検定において、p<0.05)。図(H)は、Aβの血管沈着(矢印)の強い染色が6G1及び市販の抗体6E10でのみ起こり、一方、8F5又は8C5での染色は非常に弱かったことを示す。Tg2576マウスにおいて、量的に同様の状況が見られた(ここでは示さない。)。
【0039】
図8は、Aβ(1−42)単量体、Aβ(1−40)及びsAPPと対比した、球状凝集体に対する8C5の選択性を示す。EC50値間の比として、8C5に対する選択性係数を計算することができる(HFIP中でAβ(1−42)単量体に対して:2346/568.2=4.1;NHOH中でAβ(1−42)単量体に対して:>100;Aβ(1−40)単量体に対して:>100;sAPPに対して:>100)。
【0040】
図9(A)は、8C5の重鎖をコードするヌクレオチド配列(配列番号11)を示し、図9(B)は、8C5の軽鎖をコードするヌクレオチド配列(配列番号12)を示す。図10(A)及び10(B)で述べる対応するCDRをコードするヌクレオチド配列に下線を付す。
【0041】
図10(B)は、モノクローナル抗体8C5の可変重鎖のアミノ酸配列(配列番号19)を示し、図10(B)は、モノクローナル抗体8F5の可変軽鎖のアミノ酸配列(配列番号20)を示す。可変重鎖の1つのCDRは、アミノ酸配列SYGMS(配列番号13)で表される。可変重鎖の別のCDRはアミノ酸配列SIKNNGGSTYYPDSLKG(配列番号14)で表され、可変重鎖の別のCDRはアミノ酸配列SGDY(配列番号15)で表される。可変軽鎖の1つのCDRはアミノ酸配列RSSQSLVHSNGDTFLH(配列番号16)で表される。可変軽鎖の別のCDRはアミノ酸配列KVSNRFS(配列番号17)で表され、可変軽鎖の別のCDRはアミノ酸配列SQSIHVPWT(配列番号18)で表される。上述のCDRの全てに図10(A)及び10(B)で下線を付す。
【0042】
発明の詳細な説明
本発明は、本明細書中で「8F5」と呼ぶモノクローナル抗体ならびにその他の関連抗体(例えば8C5)に関する。例えば、アルツハイマー病及びその他の神経変性疾患の、診断、予防及び治療において、これらの抗体を使用し得る。
【0043】
モノクローナル抗体8F5ならびにモノクローナル抗体8C5は、多くの興味深い特性を有し、このため、これらは非常に興味深い治療薬候補であり、同時に非常に有用な診断薬候補である。例えば、モノクローナル抗体8F5及び8C5は、単量体又は原線維と比較して、Aβ(1−42)球状凝集体に対して選択的な結合を有する。
【0044】
「Aβ(X−Y)」という用語は、本明細書中で、ヒトアミロイドβタンパク質のアミノ酸位置Xからアミノ酸位置Y(X及びYの両方を含む。)のアミノ酸配列を指し、特に、アミノ酸配列DAEFRHDSGY EVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV IA又はその天然の変異体の何れかの、アミノ酸位置Xからアミノ酸位置Yのアミノ酸配列を指し、特に、A2T、H6R、D7N、A21G(「Flemish」)、E22G(「Arctic」)、E22Q(「Dutch」)、E22K(「Italian」)、D23N(「Iowa」)、A42T及びA42Vからなる群から選択される少なくとも1つの突然変異があるもの(ここで、数字は、Aβペプチドの開始位置に対応し、位置X及び位置Yの両方を含む。)又は3個以下のさらなるアミノ酸置換(これらの中に球状凝集体形成を妨害し得るものはない。)を有する配列を指す。「さらなる」アミノ酸置換とは、本明細書中で、自然には見られない規範的な配列からの何らかの逸脱として定義する。
【0045】
より具体的には、本明細書中で「Aβ(1−42)」という用語は、ヒトアミロイドβタンパク質の、アミノ酸位置1からアミノ酸位置42(1及び42の両方を含む。)のアミノ酸配列を指し、特に、アミノ酸配列DAEFRHDSGY EVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV IA(アミノ酸位置1から42に対応する。)又はその天然の変異体の何れかの、アミノ酸位置1からアミノ酸位置42のアミノ酸配列を指す。このような変異体は、例えば、A2T、H6R、D7N、A21G(「Flemish」)、E22G(「Arctic」)、E22Q(「Dutch」)、E22K(「Italian」)、D23N(「Iowa」)、A42T及びA42Vからなる群から選択される少なくとも1つの突然変異を有するもの(ここで、数字は、Aβペプチドの開始位置に対応し、位置1及び位置42の両方を含む。)又は3個以下のさらなるアミノ酸置換(これらの中に球状凝集体形成を妨害し得るものはない。)を有する配列であり得る。同様に、「Aβ(1−40)」という用語は、ここで、ヒトアミロイドβタンパク質の、アミノ酸位置1からアミノ酸位置40(1及び40の両方を含む。)のアミノ酸配列を指し、特に、アミノ酸配列DAEFRHDSGY EVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV又はその天然の変異体の何れかの、アミノ酸位置1からアミノ酸位置40のアミノ酸配列を指す。このような変異体は、例えば、A2T、H6R、D7N、A21G(「Flemish」)、E22G(「Arctic」)、E22Q(「Dutch」)、E22K(「Italian」)及びD23N(「Iowa」)からなる群から選択される少なくとも1つの突然変異を有するもの(ここで、数字は、Aβペプチドの開始位置に対応し、位置1及び位置40の両方を含む。)又は3個以下のさらなるアミノ酸置換(これらの中に球状凝集体形成を妨害し得るものはない。)を有する配列を含む。「Aβ(X−Y)球状凝集体」(「Aβ(X−Y)球状オリゴマー」としても知られる。)という用語は、本明細書中で、上記で定義されるように、均一性及び個別の物理的特性を有する、Aβ(X−Y)ペプチドの可溶性の球状の非共有結合を指す。Aβ(X−Y)球状凝集体は、陰イオン性界面活性剤とインキュベートすることにより得られるAβ(X−Y)ペプチドの安定な非原線維性のオリゴマー集合体である。単量体及び原線維とは異なり、これらの球状凝集体は、サブユニットの定められた集合体数を特徴とする(例えば、PCT国際出願公開WO04/067561に記載のように、初期集合形態、n=3−6、「オリゴマーA」及び後期集合形態、n=12−14、「オリゴマーB」。)。球状凝集体は、3次元球状型構造を有する(「モルテングロビュール」、Barghornら、2005、J Neurochem、95、834−847参照)。これらはさらに、次の特性の1以上をさらに特徴とする:
−短縮型Aβ(X−Y)球状凝集体を生じる広域プロテアーゼ(サーモリシン又はエンドプロテイナーゼGluCなど)でのN−末端アミノ酸X−23の切断可能性;
−広域プロテアーゼ及び抗体とのC末端アミノ酸24−Yの非近接性;及び
−これらのAβ(X−Y)球状凝集体の短縮型が、球状凝集体の3次元コア構造(その球状凝集体配座におけるコアエピトープAβ(20−Y)の近接性がより優れている。)を維持する。
【0046】
本発明によると、及び、特に本発明の抗体の結合親和性を評価する目的のために、「Aβ(X−Y)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、国際出願公開WO04/067561(参照により、その全体を本明細書中に組み込む。)に記載のようなプロセスにより得ることができる産物を指す。このプロセスは、天然、組み換え又は合成Aβ(X−Y)ペプチドもしくはその誘導体をアンフォールディングすること;アンフォールディングしたAβ(X−Y)ペプチド又はその誘導体を界面活性剤に少なくとも部分的に曝露し、その界面活性剤作用を低下させ、インキュベートを続けることを含む。
【0047】
ペプチドのアンフォールディングのために、例えばヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)などの水素結合破壊剤をタンパク質に対して作用させ得る。作用温度が約20から50℃、特に約35から40℃である場合、数分、例えば10から60分の作用時間で十分である。蒸発乾固した残渣を、好ましくは濃縮形態で、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)などの水性緩衝剤と混ざり合う適切な有機溶媒中で続いて溶解することにより、結果として、その後に使用できる、少なくとも部分的にアンフォールディングされたペプチド又はその誘導体の懸濁液が得られる。必要ならば、保存用懸濁液を低温、例えば約−20℃でしばらくの間保存し得る。
【0048】
あるいは、ペプチド又はその誘導体を僅かに酸性の、好ましくは水性の、溶液、例えば約10mM HCl水溶液中で溶解させ得る。およそ数分間インキュベートした後、不溶性成分を遠心により除去する。10,000gで数分が好都合である。これらの方法の段階を好ましくは室温、即ち20から30℃の範囲の温度で行う。遠心後に得られる上清は、Aβ(X−Y)ペプチド又はその誘導体を含有し、低温、例えば約−20℃でしばらくの間保存し得る。
【0049】
オリゴマー(国際出願公開WO04/067561、オリゴマーAと呼ばれる。)の中間型を与えるための、界面活性剤への続く曝露は、ペプチド又はその誘導体のオリゴマー化に関連する。このために、十分な中間体オリゴマーが生じるまで、場合によっては少なくとも部分的にアンフォールディングされたペプチド又はその誘導体に対して界面活性剤を作用させる。イオン性界面活性剤、特に陰イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0050】
特定の実施形態によると、式(I):
R−X
の界面活性剤が使用される(式中、基「R」は、6から20、好ましくは10から14個の炭素原子を有する非分枝もしくは分枝アルキル又は6から20、好ましくは10から14個の炭素原子を有する非分枝もしくは分枝アルケニルであり、基「X」は酸性基又はその塩であり、Xは好ましくは−COC、−SOの中から選択され、最も好ましくは−OSOであり、Mは、水素陽イオン又は無機もしくは有機陽イオンであり、好ましくは、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン及びアンモニウム陽イオンから選択される。)。最も有利であるのは、特にRが非分枝アルキルである(そのalk−l−yl基を言及しなければならない。)、式(I)の界面活性剤である。特に好ましいのは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。ラウリン酸及びオレイン酸も有利に使用できる。界面活性剤ラウロイルサルコシンのナトリウム塩(サルコシルNL−30又はGardol(R)としても知られている。)もまた特に有利である。
【0051】
界面活性剤作用時間は、特に、アンフォールディングされているならば、オリゴマー化に供されるペプチド又はその誘導体がどの程度までアンフォールディングされているかに依存する。アンフォールディング段階に従い、ペプチド又はその誘導体が水素結合破壊剤で(即ち、特にヘキサフルオロイソプロパノールで)既に処理されているならば、作用温度が約20から50℃、特に約35から40℃である場合、数時間の範囲の作用時間、有利には約1から20、特に約2から10時間で十分である。アンフォールディングの程度が小さいか又は基本的にアンフォールディングされていないペプチド又はその誘導体が出発点である場合、同様に、作用時間が長い方が好都合である。例えばHFIP処理に代わる手段として上記手順に従いペプチドもしくはその誘導体が前処理されているか、又は該ペプチドもしくはその誘導体がオリゴマー化に直接供されるならば、作用温度が約20から50℃、特に約35から40℃である場合、約5から30時間、特に約10から20時間の作用時間で十分である。インキュベート後、不溶性成分を遠心により有利に除去する。10,000gで数分が好都合である。
【0052】
選択すべき界面活性剤濃度は使用する界面活性剤に依存する。SDSを使用する場合、0.01から1重量%、好ましくは、0.05から0.5重量%の範囲、例えば、約0.2重量%の濃度が好都合である。ラウリン酸又はオレイン酸を使用する場合、例えば、0.05から2重量%、好ましくは0.1から0.5重量%の範囲、例えば約0.5重量%の、幾分高い濃度が好都合である。界面活性剤作用は、生理的範囲前後の塩濃度で起こるはずである。従って、特に50から500mM、好ましくは100から200mMの範囲、より具体的には約140mMのNaCl濃度が好都合である。
【0053】
続く界面活性剤作用の低下及びインキュベートの継続は、本発明のAβ(X−Y)球状凝集体(国際出願公開WO04/067561において、オリゴマーBと呼ばれる。)を与えるためのオリゴマー化にさらに関連する。前段階から得られる組成物は通常界面活性剤及び生理的範囲の塩濃度を含有するので、界面活性剤作用を低下させ、好ましくは塩濃度も低下させることが好都合である。例えば、水又は低塩濃度の緩衝液(例えばTris−HCl、pH7.3)で好都合に希釈することにより界面活性剤及び塩の濃度を低下させることによって、これを行い得る。約2から10の範囲、有利には、約3から8の範囲、特に約4の、希釈係数が適切であることが分かっている。この界面活性剤作用を中和することができる物質を添加することによっても、界面活性剤作用の低下を達成し得る。これらの例には、一連の精製及び抽出手段において細胞を安定化させることができる物質のような界面活性剤を錯化することができる物質(例えば、特定のEO/POブロックコポリマー、特に、Pluronic(R)F68の商標名のブロックコポリマー)が含まれる。特定の臨界ミセル濃度前後又はそれ以上の濃度の、アルコキシル化及び、特に、エトキシル化アルキルフェノール(Triton(R)Xシリーズのエトキシル化t−オクチルフェノール、特にTriton(R)X100、3−(3−コラミドプロピルジメチルアンモニオ)−1−プロパンスルホネート(CHAPS(R))など)又はアルコキシル化及び、特に、エトキシル化ソルビタン脂肪エステル(Triton(R)シリーズのもの、特にTween(R)20など)も同様に使用し得る。
【0054】
続いて、十分なAβ(X−Y)球状凝集体が産生されるまでこの溶液をインキュベートする。作用温度が約20から50℃、特に約35から40℃である場合、数時間の範囲、好ましくは約10から30時間、特に約15から25時間の範囲の作用時間で十分である。次にこの溶液を濃縮し得、得られるであろう残渣を遠心により除去し得る。繰り返すが、10,000gで数分間が好都合であることが分かっている。遠心後に得られた上清は、本明細書中に記載のようなAβ(X−Y)球状凝集体を含有する。
【0055】
例えば超遠心、透析、沈殿又は遠心により、Aβ(X−Y)球状凝集体を最終的に回収することができる。変性条件下でのAβ(X−Y)球状凝集体の電気泳動による(例えばSDS−PAGEによる)分離によって2重のバンドが得られれば(例えば、Aβ(1−42)に対して38/48kDaの見かけの分子量を有する。)さらに好ましく、分離前にオリゴマーのグルタールアルデヒド処理においてこれらの2本のバンドが1本にまとまれば特に好ましい。球状凝集体のサイズ排除クロマトグラフィーの結果、1本のピークになる場合も好ましい(例えば、Aβ(1−42)に対するおよそ60kDaの分子量に対応する。)。Aβ(1−42)ペプチドから開始する場合、本プロセスは、特にAβ(1−42)球状凝集体を得るために適切である。好ましくは、この球状凝集体は、神経細胞に対して親和性を示し、また、神経調節作用も示す。「神経調節作用」は、神経可塑性に関してニューロンの機能不全を導く、ニューロンの長期にわたる阻害作用として定義される。
【0056】
本発明の別の態様によると、「Aβ(X−Y)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、基本的にAβ(X−Y)サブユニットからなる球状凝集体を指し、これは、平均で12サブユニットのうち少なくとも11がAβ(X−Y)タイプであれば好ましく、より好ましくはこの球状凝集体の10%未満が何らかの非Aβ(X−Y)ペプチドであり、最も好ましくは、この調製物の非Aβ(X−Y)ペプチドの含量が検出閾値以下である。より具体的には、「Aβ(1−42)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、上記で定義されるような、Aβ(1−42)ユニットを含有する球状凝集体を指し;「Aβ(12−42)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、上記で定義されるような、Aβ(12−42)ユニットを含有する球状凝集体を指し;「Aβ(20−42)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、上記で定義されるような、Aβ(20−42)ユニットを含有する球状凝集体を指す。
【0057】
「架橋Aβ(X−Y)球状凝集体」という用語は、本明細書中で、球状凝集体の構成単位の、架橋により、好ましくは化学的架橋により、より好ましくはアルデヒド架橋により、最も好ましくはグルタールアルデヒド架橋により、上述のようなAβ(X−Y)球状凝集体から得られる分子を指す。本発明の別の態様において、架橋球状凝集体は基本的に、その単位が、非共有結合相互作用のみによって一緒になっているのではなく、少なくとも一部が共有結合により連結されている球状凝集体である。
【0058】
「Aβ(X−Y)球状凝集体誘導体」という用語は、本明細書中で、特に、検出を容易にする基に共有結合されることにより標識されている球状凝集体(好ましくは、フルオロフォア、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、フィコエリスリン、オワンクラゲ(Aequorea victoria)蛍光タンパク質、Dictyosoma蛍光タンパク質もしくは何らかの組み合わせ又はその蛍光活性誘導体;発色団;化学発光団、例えば、ルシフェラーゼ、好ましくはPhotinus pyralis(ホタル)ルシフェラーゼ、Vibrio fischeri(発光細菌)ルシフェラーゼもしくは何らかの組み合わせ又はその化学発光活性誘導体;酵素活性基、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ又はその酵素活性誘導体;高電子密度基、例えば、金含有基などの重金属含有基;ハプテン、例えば、フェノール誘導化ハプテン;強い抗原性のある構造、例えば、Kolaskar及びTongaonkarのアルゴリズムなどにより抗原性があると予想されるペプチド配列;別の分子に対するアプタマー;キレート基、例えば、ヘキサヒスチジニル;さらに特異的なタンパク質−タンパク質相互作用に介在する天然もしくは天然由来タンパク質構造、例えば、fos/junペアのメンバー;磁気群、例えば、強磁性体群;又はH、14C、32P、35Sもしくは125I又はそれらの何らかの組み合わせを含む基などの放射活性基);又は共有結合により、もしくは高親和性相互作用による非共有結合によりフラッグ化されている、好ましくは、不活性化、金属イオン封鎖、分解及び/又は沈降を促進する基に共有結合されている、好ましくは、インビボでの分解を促進する基(より好ましくは、ユビキチン)でフラッグ化されている球状凝集体(このフラッグ化オリゴマーがインビボでアセンブルされている場合、特に好ましい。);又は何らかの上記の組み合わせにより修飾されている球状凝集体を指す。このような標識及びフラッグ化基及びこれらをタンパク質に結合するための方法は当技術分野で公知である。球状化の前、最中又は後に、標識及び/又はフラッグ化を行い得る。本発明の別の態様において、球状凝集体誘導体は、標識及び/又はフラッグ化反応により球状凝集体から得ることができる分子である。従って、「Aβ(X−Y)単量体誘導体」という用語は、本明細書中で、特に、球状凝集体に対して述べたように標識又はフラッグ化されたAβ単量体を指す。
【0059】
「より高い親和性」という用語は、本明細書中で、一方の未結合抗体及び未結合球状凝集体と、他方の抗体−球状凝集体複合体との間の平衡が、抗体−球状凝集体複合体にさらに偏っている、相互作用の程度を指す。同様に、「より小さい親和性」という用語は、本明細書中で、一方の未結合抗体及び未結合球状凝集体と、他方の抗体−球状凝集体複合体との間の平衡が、未結合抗体及び未結合球状凝集体にさらに偏っている相互作用の程度を指す。
【0060】
「Aβ(X−Y)単量体」という用語は、本明細書中で、Aβ(X−Y)ペプチドの単離形態、好ましくは、その他のAβペプチドとの基本的に非共有相互作用に関与していないAβ(X−Y)ペプチドの形態を指す。実際に、Aβ(X−Y)単量体は通常、水溶液の形態で与えられる。好ましくは、水性単量体溶液は、例えば本発明の抗体の結合親和性を調べるために使用する場合、0.05%から0.2%、より好ましくは、約0.1% NaOHを含有する。別の好ましい状況において、水性単量体溶液は、0.05%から0.2%、より好ましくは、約0.1% NaOHを含有する。使用する場合、適切な形式で溶液を希釈することが好都合であり得る。さらに、通常、溶液調製後、2時間以内、特に1時間以内、とりわけ30分以内に溶液を使用することが好都合である。
【0061】
「原線維」という用語は、本明細書中で、電子顕微鏡下で原線維性構造を示す非共有結合した個々のAβ(X−Y)ペプチドの集合体を含む分子構造を指し、これはコンゴレッドに結合し、偏光下で複屈性を示し、そのX−線回折パターンはクロス−β構造である。原線維はまた、24単位を超える、好ましくは、100単位を超える凝集体の形成を導く、変性剤非存在下での、例えば0.1M HCl中での、適切なAβペプチドの自己誘導重合体凝集を含むプロセスにより得られる分子構造とも定義され得る。このプロセスは当技術分野で周知である。好都合に、Aβ(X−Y)原線維は、水溶液の形態で使用される。本発明の特に好ましい実施形態において、0.1%NHOH中でAβペプチドを溶解し、20mM NaHPO、140mM NaCl、pH7.4で1:4に希釈し、次いでpH7.4に再調整し、37℃にて20時間インキュベートし、次いで10000gで10分間遠心し、20mM NaHPO、140mM NaCl、pH7.4で再懸濁することにより、水性原線維溶液を調製する。
【0062】
「Aβ(X−Y)原線維」という用語は、本明細書中で、Aβ(X−Y)サブユニットを含む原線維を指し、この場合、平均でサブユニットの少なくとも90%がAβ(X−Y)型のものであれば好ましく、サブユニットの少なくとも98%がAβ(X−Y)型のものであればより好ましく、非Aβ(X−Y)ペプチドの含量が検出閾値以下であれば最も好ましい。
【0063】
8F5に戻って、図1ならびに8C5(図8)により明らかなように、Aβ(1−42)球状凝集体特異的抗体モノクローナル抗体8F5及び8C5は、非特異的抗体6G1及び6E10とは異なり、主にAβ(1−42)球状凝集体型を認識し、凝集したAβ(1−42)を含むAβ(1−40)又はAβ(1−42)単量体の標準的調製物を認識しない。特に、8F5は、ネイティブPAGE−ウェスタンブロットによりAβ(1−42)球状凝集体のみを検出し、SDS−PAGEウェスタンブロット分析では検出しないので、このことから、コアAβ(1−42)球状凝集体構造における、より複雑な界面活性剤−解離可能なサブユニット間エピトープへの結合が示唆される。サブユニット間エピトープは、少なくとも2個のサブユニットに位置する、複雑な非線形性スルースペース(through space)エピトープとして定義される。より具体的に、様々なAβ(1−42)及びAβ(1−40)標準的調製物に対するドットブロット分析から、特異的8F5及び8C5の場合、非球状Aβ型(標準的Aβ(1−40)/(1−42)単量体調製物)、凝集Aβ(1−42)と対比してAβ(1−42)球状凝集体の認識に顕著な差があるが、アイソフォーム非特異的抗体6G1及び6E10の場合は顕著な差がないことが示される。8F5及び8C5は球状凝集体特異性があるが6G1及び6E10は球状凝集体特異性がないことは、サンドイッチELISAにおいて、Aβ(1−42)球状凝集体、Aβ(1−42)単量体、Aβ(1−40)単量体及び可溶性アミロイド前駆体タンパク質α結合を定量することにより確認された。さらに、これらの抗体は、ネイティブウェスタンブロッティング後には球状凝集体に接近するが、SDSウェスタンブロッティング後には接近しないので、各抗体が、Aβ(1−42)のアミノ酸20から30の領域で、サブユニットの間の構造的非線形性エピトープを認識すると思われる。例えば8F5又は8C5などの球状凝集体選択的抗体によってAβの球状凝集体型を特異的に標的とすることにより、1)不溶性アミロイド沈着を標的とすることが避けられ(これに結合することは、不溶性Aβで免疫付与する際中に観察される炎症性の副作用の原因となり得る。);2)予知的な生理的機能を有することが報告されているAβ単量体及びAPPを使用せず(Planら、J.of Neuroscience 23:5531−5535(2003);3)不溶性沈着への大量の結合により隠されないか又は接近不可能でないため、抗体のバイオアベイラビリティーが向上するので、球状凝集体に対するこのような特異性は重要である。
【0064】
本発明はまた、モノクローナル抗体8F5及び8CDの可変軽鎖及び重鎖をコードする単離ヌクレオチド配列(又はその断片)ならびに、これらのコードヌクレオチド配列と少なくとも約70%(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%又は79%)、好ましくは少なくとも約80%(例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%又は89%)、より好ましくは少なくとも約90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)同一であるものを含むか、これらに相当するか、これらと、同一であるか、ハイブリダイズ可能であるか又は相補的である、配列を有するヌクレオチド配列(又はその断片)も含む。(70%と100%との間及びこれらを含む全ての整数(及びその一部)は、%同一性に関して本発明の範囲内であるとみなされる。)。このような配列は、あらゆる源由来であり得る(例えば、天然源から単離されるか、半合成経路介して産生されるか、又は合成デノボをの何れか。)。特に、実施例に記載のもの以外の源からこのような配列を単離し得るか又はこのような配列は実施例に記載のもの以外の源由来であり得る(例えば、細菌、真菌、藻類、マウス又はヒト)。
【0065】
上述のヌクレオチド配列に加えて、本発明はまた、モノクローナル抗体8F5及びモノクローナル抗体8C5の可変軽及び重鎖のアミノ酸配列(又はこれらのアミノ酸配列の断片)も含む。さらに、本発明はまた、本発明のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%及びより好ましくは少なくとも約90%同一であるものを含むか、これらに相当するか、これらと、同一であるか又は相補的である、アミノ酸配列(又はその断片)も含む(繰り返すが、70%と100%との間及びこれらを含む全ての整数(及びその一部)も(上記のヌクレオチド配列同一性に関連して引用される場合)、%同一性に関して本発明の範囲内であるとみなされる。)。
【0066】
本発明の目的に対して、ヌクレオチド配列の「断片」は、特定のヌクレオチド配列の領域に相当する、およそ、少なくとも6、好ましくは少なくとも約8、より好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも約15ヌクレオチドの連続する配列として定義される。
【0067】
「同一性」という用語は、特定の比較枠又はセグメントにわたる、ヌクレオチドごとの2つの配列の関連性を指す。従って、同一性は、2つのDNAセグメント(又は2つのアミノ酸配列)の同じ鎖(センス又はアンチセンスの何れか)間の、同一性、対応性又は同等性の程度として定義される。「配列同一性の%」は、特定の領域にわたり2つの最適にアラインされた配列を比較し、一致している位置の数を得るために両配列において同一の塩基又はアミノ酸がある位置の数を調べ、このような位置の数を比較しているセグメント中の位置の総数で割り、その結果に100を掛けることにより計算される。Smith&Waterman、Appl.Math.2:482(1981)のアルゴリズムにより、Needleman&Wunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)のアルゴリズムにより、Pearson&Lipman、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:2444(1988)の方法により、及び、関連するアルゴリズムを実行するコンピュータプログラムにより(例えば、Clustal Macaw Pileup(http://cmgm.stanford.edu/biochem218/11Multiple.pdf;Higginsら、CABIOS.5L151−153(1989))、FASTDB(Intelligentics)、BLAST(National Center for Biomedical Information;Altschulら、Nucleic Acids Research 25:3389−3402(1997))、PILEUP(Genetics Computer Group、Madison、WI)又はGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、Madison、WI)、配列の最適アラインメントを行い得る。(米国特許第5,912,120号参照)。
【0068】
本発明の目的に対して、「相補性」は、2つのDNAセグメント間の関連性の程度として定義される。これは、二重らせんを形成するために、適切な条件下で、一方のDNAセグメントのセンス鎖が他方のDNAセグメントのアンチセンス鎖とハイブリダイズする能力を測定することにより決定される。「相補的である」とは、規範的な塩基対形成規則に基づきある一定の配列に対して対を形成する配列として定義される。例えば、あるヌクレオチド鎖中の配列A−G−Tは、他方の鎖のT−C−Aに対して「相補的」である。
【0069】
二重らせんにおいて、アデニンが一方の鎖に現れ、チミンが他方の鎖に現れる。同様に、グアニンが一方の鎖で見られる場合は常に、他方でシトシンが見られる。2つのDNAセグメントのヌクレオチド配列間の関連性が大きいほど、2つのDNAセグメントの鎖間でのハイブリッド二本鎖形成能が大きくなる。
【0070】
2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、一連の同一ならびに保存的アミノ酸残基が両配列において存在することとして定義される。2つのアミノ酸配列間の類似性の程度が高いほど、2つの配列の、対応性、同一性又は同等性が高くなる。(2つのアミノ酸配列の間の「同一性(identity)」は、一連の正確に等しい又は不変のアミノ酸残基が両配列において存在することとして意義される。)。「相補性」、「同一性」及び「類似性」の定義は、当業者にとって周知である。
【0071】
「によりコードされる」とは、ポリペプチド配列をコードする核酸配列を指し、このポリペプチド配列又はその一部は、その核酸配列によりコードされるポリペプチド由来の、少なくとも3アミノ酸、より好ましくは少なくとも8アミノ酸及びさらにより好ましくは少なくとも15アミノ酸のアミノ酸配列を含有する。
【0072】
さらに、核酸分子は、核酸分子の1本鎖形態が温度及びイオン強度の適切な条件下でその他の核酸分子とアニールすることができる場合、別の核酸分子にハイブリダイズ可能である(Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)を参照)。温度及びイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を定める。
【0073】
「ハイブリダイゼーション」という用語は、本明細書で使用する場合、当業者にとって容易に明らかになるであろうように、プローブ配列及び標的配列の性質に依存して、ストリンジェンシーの適切な条件での核酸のハイブリダイゼーションを意味するために通常使用される。ハイブリダイゼーション及び洗浄の条件は当技術分野で周知であり、インキュベート時間、温度及び/又は溶液のイオン強度を変化させることによる、所望のストリンジェンシーに依存した条件の調整は容易に行われる。例えば、上述のような、Sambrook、J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989を参照のこと(これを参照により本明細書中に組み込む。)。(Short Protocols in Molecular Biology、Ausbelら編及びTijssen、Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes、「Overview of principles of Hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1983)も参照のこと。両者とも参照により本明細書中に組み込む。)。具体的に、条件の選択は、ハイブリダイズさせる配列の長さ、特にプローブ配列の長さ、核酸の相対的G−C含量及び許容されるミスマッチの量による。低ストリンジェンシー条件は、相補性の程度がより低い鎖間の部分的ハイブリダイゼーションが望ましい場合に好ましい。完全又はほぼ完全な相補性が望ましい場合、高ストリンジェンシー条件が好ましい。典型的な高ストリンジェンシー条件の場合、ハイブリダイゼーション溶液は、6xS.S.C.、0.01M EDTA、1xDenhardt溶液及び0.5%SDSを含有する。クローン化DNAの断片の場合、約68℃で約3から4時間、トータル真核DNAの場合、約12から約16時間、ハイブリダイゼーションを行う。中程度のストリンジェンシーの場合、3x塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム(SSC)、50%ホルムアミド(pH7.5で、この緩衝液の0.1M)の溶液及び5xDenhardt溶液でのフィルタープレハイブリダイズ及びハイブリダイズを利用し得る。37℃で4時間プレハイブリダイズし、続いて3,000,000cpmトータルに等しい標識プローブ量と37℃で16時間ハイブリダイズし、次いで、2xSSC及び0.1%SDS溶液中で洗浄(室温で各1分間を4回及び60℃にて各30分間を4回)し得る。乾燥後、フィルムに曝露する。より低いストリンジェンシーの場合、ハイブリダイゼーション温度を2本鎖の融解温度(T)よりも約12℃低くする。Tは、G−C含量及び2本鎖の長さならびに溶液のイオン強度の関数として知られている。
【0074】
「ハイブリダイゼーション」には、2つの核酸が相補的配列を含有することが必要である。しかし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーによって、塩基間のミスマッチが起こり得る。上述のように、核酸をハイブリダイズさせるのに適切なストリンジェンシーは、核酸の長さ及び相補性の程度に依存する。このような可変性は当技術分野で周知である。より具体的には、2つのヌクレオチド配列間の類似性又はホモロジーの程度が大きいほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドに対するT値が大きくなる。100ヌクレオチド長を超えるハイブリッドの場合、Tを計算するための式がある(Sambrookら、前出参照)。短い核酸のハイブリダイゼーションの場合、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さによりその特異性が決まる(Sambrookら、前出参照)。
【0075】
本明細書で使用する場合、「単離核酸断片又は配列」は、1本鎖又は2本鎖であり、場合によっては合成、非天然又は改変ヌクレオチド塩基を含有する、RNA又はDNAのポリマーである。DNAのポリマーの形態の単離核酸断片は、cDNA、ゲノムDNA又は合成DNAの1以上のセグメントから構成され得る。(特定のポリヌクレオチドの「断片」とは、およそ少なくとも約6ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約8ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド及びさらにより好ましくは少なくとも約15ヌクレオチド、及び最も好ましくは少なくとも約25ヌクレオチドの、特定のヌクレオチド配列の領域と同一又は相補的な連続配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。)。ヌクレオチド(通常、その5’−モノリン酸形態で見出される。)は、次のように1文字表記で表される:アデニル酸又はデオキシアデニル酸に対して「A」(それぞれRNA又はDNAに対して)、シチジル酸又はデオキシシチジル酸に対して「C」、グアニル酸又はデオキシグアニル酸に対して「G」、ウリジル酸に対して「U」、デオキシチミジル酸に対して「T」、プリン(A又はG)に対して「R」、ピリミジン(C又はT)に対して「Y」、G又はTに対して「K」、A又はC又はTに対して「H」、イノシンに対して「I」及び何れかのヌクレオチドに対して「N」。
【0076】
「機能的に同等の断片又はサブフラグメント」及び「機能的に同等の断片又はサブフラグメント」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される。これらの用語は、その断片又はサブフラグメントが活性酵素をコードするか否かに関わらず、遺伝子発現を変化させるか又はある種の表現型を生じさせる能力が保持されている、単離核酸断片の一部又は部分配列を指す。例えば、形質転換された植物において所望の表現型を生じさせるためのキメラコンストラクトの設計において、断片又はサブフラグメントを使用することができる。活性酵素をコードするか否かに関わらず、植物プロモーター配列に対して適切な方向で、核酸断片又はそのサブフラグメントを連結することによるコサプレッション又はアンチセンスにおける使用のために、キメラコンストラクトを設計することができる。
【0077】
「ホモロジー」、「相同の」、「実質的に同様の」及び「実質的に一致する」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される。これらは、1以上のヌクレオチド塩基の変化が、その核酸断片の、遺伝子発現介在能力又はある種の表現型生成能に影響を与えない核酸断片を指す。これらの用語はまた、最初の、非修飾断片に対して、得られる核酸断片の機能特性を実質的に変化させない1以上のヌクレオチドの欠失又は挿入などの、本発明の核酸断片の修飾も指す。従って、当業者にとって当然のことながら、本発明は、具体的な代表的配列だけにとどまらないものを包含する。
【0078】
「遺伝子」とは、コード配列の前にある(5’非コード配列)及び後にある(3’非コード配列)制御配列を含む、特定のタンパク質を発現する核酸断片を指す。
【0079】
「ネイティブ遺伝子」とは、それ自身の制御配列とともに天然に見出されるような遺伝子を指す。一方、「キメラコンストラクト」とは、天然において通常は一緒に見出されない核酸断片の組み合わせを指す。従って、キメラコンストラクトは、異なる源由来の制御配列及びコード配列又は、同じ源由来であるが、天然で通常見られるものとは異なる方式で編成される制御配列及びコード配列を含み得る。(「単離された」という用語は、配列がその天然の環境から離されることを意味する。)。
【0080】
「外来」遺伝子とは、宿主生物において通常は見られない遺伝子を指すが、これは、遺伝子移入により宿主生物に導入される。外来遺伝子は、非ネイティブ生物又はキメラコンストラクトに挿入されたネイティブ遺伝子を含み得る。「トランス遺伝子」は、形質転換手順によりゲノムに導入されている遺伝子である。
【0081】
「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「制御配列」とは、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内、又はその下流(3’非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を指し、この配列は、転写、RNAプロセシング又は安定性又は関連するコード配列の翻訳に影響を及ぼす。制御配列には、以下に限定されないが、プロモーター、翻訳リーダー配列及びポリアデニル化認識配列が含まれ得る。
【0082】
「プロモーター」又は「制御遺伝子配列」とは、コード配列又は機能的RNAの発現を調節することができるDNA配列を指す。この配列は、隣接及びより遠位の上流エレメントからなり、後者のエレメントはエンハンサーと呼ばれることが多い。従って、「エンハンサー」は、プロモーター又は制御遺伝子配列活性を刺激することができ、プロモーターの生来のエレメント又はプロモーターのレベル又は組織特異性を促進するために挿入された異種エレメントであり得るDNA配列である。プロモーター配列はまた、遺伝子の転写部分内、及び/又は転写配列の下流にも位置し得る。プロモーターは、それらの全体において、ネイティブ遺伝子由来であるか、又は、天然で見られる様々なプロモーター由来の様々なエレメントからなるか、又は合成DNAセグメントを含み得る。当業者にとって当然のことながら、異なるプロモーターは、異なる組織又は細胞型において、又は発生の異なるステージにおいて、又は異なる環境条件に反応して、遺伝子の発現を支配し得る。殆どの場合に、殆どの宿主細胞型において遺伝子発現を引き起こすプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。植物細胞で有用な様々なタイプの新しいプロモーターが常に発見されている;Okamuro及びGoldberg、Biochemistry of Plants 15:1−82(1989)による編集物において、多くの例を見出すことができる。殆どの場合において、制御配列の正確な境界は完全に定められていないので、いくつかのバリエーションのDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることがさらに認められる。
【0083】
「イントロン」は、タンパク質配列の一部をコードしない遺伝子中の介在配列である。従って、このような配列は、RNAに転写されるが、その後切り出され、翻訳されない。この用語はまた、切り出されたRNA配列に対しても使用される。「エクソン」は、転写され、その遺伝子由来の成熟メッセンジャーRNAで見出される遺伝子配列の一部であるが、必ずしも最終遺伝子産物をコードする配列の一部である必要はない。
【0084】
「翻訳リーダー配列」とは、遺伝子のプロモーター配列とコード配列との間に位置するDNA配列を指す。翻訳リーダー配列は、完全にプロセシングされたmRNAの、翻訳開始配列の上流に存在する。翻訳リーダー配列は、mRNAに対する主要な転写産物のプロセシング、mRNA安定性又は翻訳効率に影響し得る。翻訳リーダー配列の例は、(Turner、R.及びFoster、G.D.(1995)Molecular Biotechnology 3:225)に記載されている。
【0085】
「3’非コード配列」とは、コード配列の下流に位置するDNA配列を指し、ポリアデニル化認識配列及びmRNAプロセシング又は遺伝子発現に影響を与え得る制御シグナルをコードするその他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸領域の付加に影響を与えることを特徴とする。様々な3’非コード配列の使用については、Ingelbrechtら、Plant Cell 1:671−680(1989)により例示されている。
【0086】
「RNA転写産物」とは、RNAポリメラーゼにより触媒されるDNA配列の転写により得られる産物を指す。RNA転写産物がDNA配列の完全な相補的コピーである場合、これは、一次転写産物と呼ばれるか、又は一次転写産物の転写後プロセシング由来のRNA配列であり得、成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA(mRNA)」とは、イントロンがなく、細胞によりタンパク質へと翻訳され得るRNAを指す。「cDNA」とは、mRNA鋳型に相補的であり、これから酵素逆転写酵素を用いて合成されるDNAを指す。cDNAは、1本鎖であるか、又はDNAポリメラーゼIのKlenow断片を用いて2本鎖形態に変換され得る。「センス」RNAとは、mRNAを含み、細胞内又はインビトロでタンパク質に翻訳され得るRNA転写産物を指す。「アンチセンスRNA」とは、標的の一次転写産物又はmRNAの全てもしくは一部に相補的であり、標的遺伝子の発現をブロックするRNA転写産物を指す(米国特許第5,107,065号)。アンチセンスRNAの相補性とは、具体的な遺伝子転写産物の何れかの部分との(即ち、5’非コード配列、3’非コード配列、イントロン又はコード配列での)ものであり得る。「機能的RNA」とは、アンチセンスRNA、リボザイムRNA又は、翻訳され得ないが、細胞性プロセスにおいて影響を有するその他のRNAを指す。「相補」及び「逆相補(reverse complement)」という用語は、mRNA転写産物に関して本明細書中で交換可能に使用され、メッセージのアンチセンスRNAを定義するものである。
【0087】
「内在性RNA」という用語は、天然であれ非天然であれ、本発明の組み換えコンストラクトにより形質転換される前に(即ち、組み換え手段、突然変異誘発などにより導入される。)、宿主のゲノムに存在する何らかの核酸配列によりコードされる何らかのRNAを指す。
【0088】
「非天然」という用語は、人工のものであり、天然で通常見られるものと一致しないことを意味する。
【0089】
「操作可能に連結」という用語は、一方の機能が他方により制御されるような1つの核酸断片における核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターがそのコード配列の発現を制御可能である場合、そのプロモーターはコード配列に操作可能に連結されている(即ち、コード配列がプロモーターの転写調節下にある。)。センス又はアンチセンス方向で、コード配列を制御配列に操作可能に連結することができる。別の例において、直接又は間接的に、標的mRNAに対して5’又は標的mRNAに対して3’に、又は標的mRNA内で、本発明の相補的RNA領域を操作可能に連結することができるか、又は標的mRNAに対して、第一の相補的領域が5’であり、その相補が3’である。
【0090】
「発現」という用語は、本明細書で使用する場合、機能的最終産物の産生を指す。遺伝子の発現は、遺伝子の転写及びmRNAの前駆体又は成熟タンパク質への翻訳を含む。「アンチセンス阻害」とは、標的タンパク質の発現を抑制することができるアンチセンスRNA転写産物の産生を指す。「コサプレッション」とは、同一又は実質的に同様の外来又は内在性遺伝子の発現を抑制することができるセンスRNA転写産物の産生を指す(米国特許第5,231,020号)。
【0091】
「成熟」タンパク質とは、翻訳後にプロセシングされたポリペプチド、即ち、一次転写産物において存在する何らかのプレ又はプロペプチドが除去されているものを指す。「前駆体」タンパク質とは、mRNAの転写の一次産物を指し、即ち、プレ及びプロペプチドがまだ存在するものである。プレ及びプロペプチドは、限定されないが、細胞内局在シグナルであり得る。
【0092】
「安定な形質転換」とは、結果として遺伝的に安定な遺伝形質が得られる、宿主生物のゲノムへの核酸断片の移入を指す。一方、「一時的形質転換」とは、結果として統合又は安定な遺伝なく遺伝子発現が起こる、宿主生物の核又はDNA含有細胞小器官への核酸断片の移入を指す。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」生物と呼ばれる。「形質転換」という用語は、本明細書で使用する場合、安定的形質転換及び一時的形質転換の両方を指す。
【0093】
本明細書中で使用される標準的組み換えDNA及び分子クローニング技術は当技術分野で周知であり、Sambrook、J.、Fritsch、E.F.及びManiatis、T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor、1989(本明細書中で以後「Sambrook」と呼ぶ。)においてより詳細に記載されている。
【0094】
「組み換え」という用語は、例えば、化学合成による、又は遺伝子操作技術による核酸の単離セグメントの操作による、2つの異なった個別の配列のセグメントの人工的組み合わせを指す。
【0095】
「PCR」又は「ポリメラーゼ連鎖反応」は、一連の繰り返しサイクルからなる、大量の特定DNAセグメントの合成のための技術である(Perkin Elmer Cetus Instruments、Norwalk、CT)。通常、2本鎖DNAを加熱変性させ、標的セグメントの3’境界に相補的な2つのプライマーを低温でアニーリングさせ、次いで中間温度で伸長させる。これらの連続的な3段階の1セットをサイクルと呼ぶ。
【0096】
ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)は、短時間で鋳型の複製を繰り返すことによってDNAを数百倍に増幅するために使用される強力な技術である。(Mullisら、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263−273(1986);Erlichら、欧州特許出願第50,424号;欧州特許出願第84,796号;欧州特許出願第258,017号;欧州特許出願第237,362号;Mullis、欧州特許出願第201,184号;Mullisら、米国特許第4,683,202号;Erlich、米国特許第4,582,788号;及びSaikiら、米国特許第4,683,194号)。このプロセスは、DNA合成を開始させるために、特異的なインビトロ合成オリゴヌクレオチドのセットを利用する。これらのプライマーの設計は、分析するDNA配列に依存する。高温で鋳型を融解させ、プライマーを鋳型内の相補的配列にアニーリングさせ、次いでDNAポリメラーゼにより鋳型を複製する、多くのサイクル(通常20−50)により、この技術を行う。
【0097】
アガロースゲルにおいて分離し、次いで臭化エチジウム染色し、UV透光で可視化することにより、PCR反応の産物を分析する。あるいは、産物に標識を組み込むために、放射性dNTPをPCRに添加することができる。この場合、X線フィルムにゲルを曝露することにより、PCRの産物を可視化する。放射性標識PCR産物のさらなる長所は、個々の増幅産物のレベルを定量できることである。
【0098】
「組み換えコンストラクト」、「発現コンストラクト」及び「組み換え発現コンストラクトという用語は、本明細書中で交換可能に使用される。これらの用語は、当業者にとって周知の標準的方法を用いて細胞のゲノムに挿入することができる遺伝物質の機能的単位を指す。このようなコンストラクトは、それ自身か、又はベクターと組み合わせて使用され得る。ベクターを使用する場合、ベクターの選択は、当業者にとって周知のように、宿主植物を形質転換するために使用するであろう方法に依存する。例えば、プラスミドを使用することができる。当業者は、首尾よく形質転換し、選択し、本発明の単離核酸断片の何れかを含有する宿主細胞を増殖させるために、ベクターに存在しなければならない遺伝的エレメントを十分認識している。当業者はまた、異なる独立の形質転換事象の結果、異なるレベル及びパターンの発現が得られること(Jonesら、(1985)EMBO J.4:2411−2418;De Almeidaら、(1989)Mol.Gen.Genetics 218:78−86)及び、従って、所望の発現レベル及びパターンを示す株を得るために複数の事象をスクリーニングしなければならないことも認識するであろう。DNAのサザン分析、mRNA発現のノザン分析、タンパク質発現のウエスタン分析又は表現型分析により、このようなスクリーニングを行い得る。
【0099】
「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用する場合、様々な抗体の混合物を含有する「ポリクローナル」抗体調製物とは異なり、共通の重鎖及び共通の軽鎖アミノ酸配列を共有する抗体を含有する抗体分子の調製物の1つを指すものとする。ファージ、細菌、酵母又はリボソームディスプレイなどのいくつかの新規技術ならびにハイブリドーマ由来抗体(例えば、標準的Kohler及びMilsteinハイブリドーマ法((1975)Nature 256:495−497)などのハイブリドーマ技術により調製されたハイブリドーマによって分泌される抗体)に代表される古典的方法により、モノクローナル抗体を生成させ得る。このように、非古典的方法により生じたものであり得るが、本発明の非ハイブリドーマ由来アゴニスト性抗体もモノクローナル抗体と呼ばれる。
【0100】
本明細書で使用する場合、「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有するその他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする(例えば、球状凝集体に特異的に結合する単離抗体は、球状凝集体以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。)。しかし、球状凝集体に特異的に結合する単離抗体は、他の抗原に対して交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0101】
本明細書で使用する場合、抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって発揮され得ることが示されている。このような抗体実施形態はまた、二特異性、二重特異性又は多特異性形態でもあり得、2以上の様々な抗原に特異的に結合する。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価の断片;(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む2価の断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の1本のアームのVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)dAb断片(Wardら(1989)Nature 341:544−546)(これは1つの可変ドメインを含有する。);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは、別個の遺伝子によりコードされるが、これらは、組み換え法を使用して、VL及びVH領域が対になって1価の分子を形成する単一のタンパク質鎖にすることができる合成リンカーにより連結することができる(単一鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;及びHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883参照。)。このような1本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含されるものとする。1本鎖抗体の他の形態、例えばダイアボディーもこの範囲内に包含される。ダイアボディーは、2価で、二特異性の抗体であり、VH及びVLのドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、使用しているリンカーが短すぎるため、同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成できず、それによりドメインは別の鎖の相補的ドメインと対形成せざるを得ず、2つの抗原結合性部位が生じる(例えば、Holliger、P.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448;Poljak、R.J.ら(1994)Structure 2:1121−1123参照)。このような抗体結合特性は当技術分野で公知である(Kontermann及びDubel編、Antibody Engineering(2001)Springer−Verlag.New York.790pp.(ISBN3−540−41354−5)。
【0102】
またさらに、抗体又はその抗原結合部分は、1以上のその他のタンパク質又はペプチドと抗体又は抗体部分の共有又は非共有結合により形成されているより大きな免疫接着分子の一部であり得る。このような免疫接着分子の例には、四量体scFv分子を作るためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov、S.M.ら(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93−101)及び二価及びビオチン化scFv分子を作るための、システイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov、S.M.ら(1994)Mol.Immunol.31:1047−1058)が含まれる。全抗体の、それぞれパパイン又はペプシン消化などの従来技術を用いて、全抗体から、Fab及びF(ab’)断片などの抗体の一部を調製することができる。さらに本明細書中に記載のように、標準的組み換えDNA技術を用いて、抗体、抗体部分及び免疫接着分子を得ることができる。
【0103】
本明細書で使用する場合、「組み換えヒト抗体」という用語は、組み換え手段によって調製、発現、作製又は単離された全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞中にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組み換え体から単離された抗体、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリ(Hoogenboom H.R.、(1997)TIB Tech.15:62−70;Azzazy H.及びHighsmith W.E.、(2002)Clin.Biochem.35:425−445;Gavilondo J.V.及びLarrick J.W.(2002)BioTechniques 29:128−145;Hoogenboom H.及びChames P.(2000)Immunology Today 21:371−378)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対するトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor,L.D.ら(1992)Nucl.Acids Res.20、6287−6295;Kellermann S−A.及びGreen L.L.(2002)Current Opinion in Biotechnology 13:593−597;Little M.ら(2000)Immunology Today 21:364−370参照)又はヒト免疫グロブリン遺伝子の他のDNA配列へのスプライシングを含む何らかの他の手段によって調製、発現、作製又は単離された抗体を含むものとする。このような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する。しかし、ある実施形態において、このような組み換えヒト抗体はインビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列に対してトランスジェニックである動物を使用する場合は、インビボ体細胞変異)が起こりやすく、従って組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVH及びVL配列由来であり、これらと関連している一方で、天然ではインビボのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に存在し得ない配列である。(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242、1991も参照)。しかし、本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでの無作為もしくは部位特異的突然変異誘発又はインビボでの体細胞突然変異により導入された突然変異)。(Harlow及びLane、Antibodies:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1990も参照)。
【0104】
「キメラ抗体」という用語は、ある種からの重鎖及び軽鎖可変領域配列及び別の種からの定常領域配列を含む抗体、例えば、ヒト定常領域に連結されたマウス重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体など、を指す。
【0105】
「CDRグラフト抗体」という用語は、ある種からの重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、この中でV及び/又はVのCDR領域の1以上の配列が、別の種のCDR配列で置換された抗体、例えば、マウスCDRの1以上(例えば、CDR3)がヒトCDR配列で置換されたマウス重鎖及び軽鎖可変領域を有する抗体など、を指す。
【0106】
本発明の組み換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来の可変領域を有し、定常領域も含み得る(Kabatら(1991)前出参照)。しかし、ある実施形態において、このような組み換えヒト抗体はインビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列に対してトランスジェニックである動物を使用する場合、インビボ体細胞突然変異誘発)が起こりやすく、従って、組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VH及びVL領域由来であり、これらと関連する一方、ヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内にインビボでは天然に存在し得ない。しかし、ある実施形態において、このような組み換え抗体は、選択的突然変異誘発又は復帰突然変異又は両方の結果である。
【0107】
「復帰突然変異」という用語は、ヒト抗体の体細胞突然変異アミノ酸のいくつか又は全部を、相同生殖細胞系列抗体配列からの対応する生殖細胞系列残基で置換するプロセスを指す。最大のホモロジーを有する配列を同定するために、本発明のヒト抗体の重鎖及び軽鎖の配列を、個別に、VBASEデータバンク中の生殖細胞系列配列とアラインする。VBASEは、GenBank及びEMBLデータライブラリの最新情報を含む、公開されている配列から作成される全てのヒト生殖細胞系列可変領域配列の包括的ディレクトリである。このデータベースは、配列決定されたヒト抗体遺伝子の寄託先としてMRC Center for Protein Engineering(Cambridge、UK)で開発された(ウェブサイト、http://www.mrc−cpe.cam.ac.uk/vbase−intro.php?menu=901)。本発明のヒト抗体における差異は、このような異なるアミノ酸をコードする定められたヌクレオチド位置において突然変異誘発することにより生殖細胞系列配列に戻される。従って、最終的ヒト抗体において含まれるべきでないヒト抗体の何らかの所望の特性に影響を与えるために、抗原結合及び突然変異後に見いだされる何らかのアミノ酸における直接的又は間接的役割について、復帰突然変異に対する候補として同定された各アミノ酸の役割を調べるべきである。復帰突然変異を行うアミノ酸の数をできるだけ少なくするために、最も近い生殖細胞系列配列とは異なるが第二の生殖細胞系列配列の対応するアミノ酸配列と同一であるアミノ酸位置は不変のままであり得る(ただし、第二の生殖系列配列は、本発明のヒト抗体配列と、当該アミノ酸の両側において少なくとも10個、好ましくは12個のアミノ酸が同一であり同一線上であることが前提である。)。復帰突然変異は、抗体最適化の何れかの段階で行い得る。
【0108】
「標識結合タンパク質」は、本発明の抗体又は抗体部分が誘導化されるか又は別の機能的分子(例えば別のペプチド又はタンパク質)に連結される、タンパク質である。例えば、本発明の標識結合タンパク質は、本発明の抗体又は抗体部分を別の抗体などの1以上のその他の分子(例えば二特異的抗体又はダイアボディー)、検出可能な試薬、細胞毒性剤、医薬物質及び/又は、別の分子(例えばストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグ)と抗体又は抗体部分の会合を媒介するタンパク質もしくはペプチドに機能的に連結することにより(化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合などにより)得られ得る。
【0109】
本発明の目的に対して、「グリコシル化結合タンパク質」は、抗体又はその抗原結合部分が1以上の炭水化物残基を含有するタンパク質を含む。発生期のインビボタンパク質産生は、翻訳後修飾として知られるさらなるプロセシングを受け得る。特に、糖(グリコシル)残基が酵素により付加され得る(グリコシル化として知られるプロセス)。得られたタンパク質は、共有結合されたオリゴ糖側鎖を有し、グリコシル化タンパク質又は糖タンパク質として知られている。抗体は、Fcドメインならびに可変ドメインにおいて1以上の炭水化物残基を伴う糖タンパク質である。Fcドメインの炭水化物残基は、Fcドメインのエフェクター機能において重要な影響を有し、抗体結合又は抗体の半減期に対してはあまり影響がない(R.Jefferis、Biotechnol.Prog.21(2005)、pp.11−16)。一方、可変ドメインのグリコシル化は、抗体の抗原結合活性に対して影響を有し得る。可変ドメインにおけるグリコシル化は、抗体結合親和性にネガティブな影響を有し得る(これは立体障害によると思われる。)(Co、M.S.ら、Mol.Immunol.(1993)30:1361−1367)か又はこの結果、抗原に対する親和性が向上し得る(Wallick、S.C.ら、Exp.Med.(1988)168:1099−1109;Wright、A.ら、EMBO J.(1991)10:2717 2723)。さらに、結合タンパク質のO−又はN−結合グリコシル化部位が突然変異誘発されている、グリコシル化部位特異的突然変異誘発を行うことができる。当業者は、標準的な周知の技術を用いて、このような突然変異体を作製することができる。生物学的活性を保持するが結合活性が増減しているグリコシル化部位特異的突然変異誘発ももくろまれる。
【0110】
さらに、本発明の抗体又は抗原結合部分のグリコシル化を修飾することができる。例えば、アグリコシル化(aglycoslated)抗体を作製し得る(即ち、この抗体はグリコシル化されていない。)。例えば、抗原に対する抗体の親和性を向上させるために、グリコシル化を変化させることができる。例えば、抗体配列内で1以上のグリコシル化部位を変化させることにより、このような炭水化物修飾を行うことができる。例えば、結果として1以上の可変領域グリコシル化部位が除去され、それによりその部位のグリコシル化がなくなる、1以上のアミノ酸置換を行うことができる。このようなグリコシル化により、抗原に対する抗体の親和性が向上し得る。このようなアプローチについては、国際出願公開WO03/016466A2及び米国特許第5,714,350号及び同第6,350,861号(それぞれ、その全体を参照により本明細書中に組み込む。)において詳細に記載されている。
【0111】
さらに又はあるいは、フコシル残基の量が低下した低フコシル化抗体又は分岐GlcNAc構造が増加している抗体など、グリコシル化の改変型を有する修飾抗体を作製することができる。このような改変グリコシル化パターンにより、抗体のADCC能が向上することが示されている。例えば、グリコシル化機構が変化した宿主細胞において抗体を発現させることにより、このような炭水化物修飾を行うことができる。グリコシル化機構が変化した細胞は当技術分野で記載されており、本発明の組み換え抗体を発現させ、それによりグリコシル化が変化した抗体を産生させるために宿主細胞として使用することができる(例えば、Shields、R.L.ら(2002)J.Biol.Chem.277:26733−26740;Umanaら(1999)Nat.Biotech.17:176−1、ならびに、欧州特許EP1,176,195;国際出願公開WO03/035835及びWO99/5434280参照(それぞれ、その全体を参照により本明細書中に組み込む。))。
【0112】
タンパク質グリコシル化は、関心のあるタンパク質のアミノ酸配列ならびにタンパク質が発現される宿主細胞に依存する。異なる生物は、異なるグリコシル化酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼ)を産生し得、利用可能な基質(ヌクレオチド糖)が異なり得る。このような要素のために、特定のタンパク質を発現させる宿主の系に依存して、タンパク質グリコシル化パターン及びグリコシル残基の構成が異なり得る。本発明で有用なグリコシル残基には、以下に限定されないが、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、n−アセチルグルコサミン及びシアル酸が含まれ得る。好ましくはグリコシル化結合タンパク質は、グリコシル化パターンがヒトであるようなグリコシル残基を含む。
【0113】
異なるタンパク質グリコシル化の結果、タンパク質の特徴が異なり得ることは、当業者にとって公知である。例えば、酵母などの微生物宿主において産生され、酵母内在性の経路を利用してグリコシル化される治療用タンパク質の効力は、CHO細胞株などの哺乳動物細胞で発現される同じタンパク質の効力と比較して低くなり得る。このような糖タンパク質はまたヒトにおいて免疫原性であり得、投与後のインビボ半減期が低下し得る。ヒト及びその他の動物の特異的受容体は、特異的なグリコシル残基を認識し、血流からのそのタンパク質の急速な排出を促進し得る。その他の悪影響には、タンパク質折りたたみ、溶解性、プロテアーゼに対する影響の受けやすさ、トラフィッキング、輸送、コンパートメント化、分泌、その他のタンパク質又は因子による認識、抗原性又はアレルギー原性の変化が含まれる。従って、熟練者は、グリコシル化の特異的組成及びパターン、例えば、ヒト細胞又は意図する対象動物の種特異的細胞で産生されるグリコシル化組成及びパターンと同一であるか、少なくとも似ているグリコシル化組成及びパターンを有する治療タンパク質を好み得る。
【0114】
異種グリコシル化酵素を発現するように宿主細胞を遺伝子改変することにより、宿主細胞のものとは異なるグリコシル化タンパク質の発現を行い得る。当技術分野で公知である技術を用いて、熟練者は、ヒトタンパク質グリコシル化を示す、抗体又はその抗原結合部分を作製し得る。例えば、これらの酵母株で産生されるグリコシル化タンパク質(糖タンパク質)が動物細胞、特にヒト細胞と同一であるタンパク質グリコシル化を示すよう、非天然のグリコシル化酵素を発現するように、酵母株が遺伝子改変される(米国特許出願公開第20040018590号及び同第20020137134号及び国際出願公開WO05/100584A2)。
【0115】
さらに、当業者にとって当然のことながら、ライブラリのメンバー宿主細胞が様々なグリコシル化パターンの関心のあるタンパク質を産生するよう、様々なグリコシル化酵素を発現するように遺伝子操作された宿主細胞のライブラリを用いて、関心のあるタンパク質を発現させ得る。次いで、熟練者は、特定の新規グリコシル化パターンを有する関心のあるタンパク質を選択し単離し得る。好ましくは、特に選択された新規グリコシル化パターンを有するタンパク質は、生物学的特性が改善又は変化している。
【0116】
本発明はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒトトランスジェニック動物に免疫付与することにより、非ヒト、非マウス動物から、本発明のモノクローナル抗体を作製するための方法を提供する。当技術分野で公知である方法を用いて、このような動物を作製し得る。好ましい実施形態において、非ヒト動物は、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ又はウマであり得る。免疫付与動物から抗体産生不死化ハイブリドーマを調製し得る。免疫付与後、動物を屠殺し、当技術分野で周知であるように、脾臓B細胞を不死化骨髄腫細胞と融合させる。例えば、Harlow及びLane、前出を参照のこと。好ましい実施形態において、骨髄腫細胞は免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌性細胞株)。融合及び抗生物質選択後、抗原(例えば球状凝集体)もしくはその一部又は関心のある抗原を発現する細胞を用いて、ハイブリドーマをスクリーニングする。好ましい実施形態において、酵素結合免疫アッセイ(ELISA)又は放射性免疫アッセイ(RIA)、好ましくはELISAを用いて最初のスクリーニングを行う。ELISAスクリーニングの例は、国際出願公開WO00/37504(参照により本明細書中に組み込む。)で与えられる。
【0117】
抗体産生ハイブリドーマを選択し、クローニングし、下記で考察するように、強力なハイブリドーマ増殖、高抗体産生及び所望の抗体特性を含む所望の特性についてさらにスクリーニングする。ハイブリドーマを培養し、同系動物、免疫系を欠く動物(例えばヌードマウス)においてインビボで、又はインビトロで細胞培養により、増殖させ得る。ハイブリドーマを選択し、クローニングし、増殖させる方法は当業者にとって周知である。好ましくは、免疫付与される動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する非ヒト動物であり、脾臓B細胞をその非ヒト動物と同じ種由来の骨髄腫と融合させる。
【0118】
ある態様において、本発明は、アルツハイマー病の、治療、診断及び予防において使用されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供する。好ましい実施形態において、このハイブリドーマはマウスハイブリドーマである。別の好ましい実施形態において、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ又はウマなどの、非ヒト、非マウス種においてハイブリドーマを作製する。別の実施形態において、本ハイブリドーマはヒトハイブリドーマであり、球状凝集体に対する抗体を発現するヒト細胞とヒト非分泌性骨髄腫を融合させる。
【0119】
米国特許第5,627,052号、国際出願公開WO92/02551及びBabcock、J.S.ら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843−7848に記載のような、当技術分野で選択リンパ球抗体法(SLAM)と呼ばれる手順を用いて、単一の単離リンパ球から、組み換え抗体を生成させ得る。この方法において、抗原特異的溶血プラークアッセイを用いて、関心のある抗体を分泌する1個の細胞(例えば、免疫付与動物由来のリンパ球)をスクリーニンするが、ここで、抗原(例えば球状凝集体)又はその断片は、ビオチンなどのリンカーを用いてヒツジ赤血球細胞にカップリングされており、抗原に対する特異性を有する抗体を分泌する1個の細胞を同定するために使用される。関心のある抗体分泌細胞の同定後、逆転写酵素−PCRにより重及び軽鎖可変領域cDNAを細胞からレスキューし、次いで、COS又はCHO細胞などの哺乳動物宿主細胞において、適切な免疫グロブリン定常領域(例えばヒト定常領域)に関連して、これらの可変領域を発現させることができる。次に、例えばIL−18に対する抗体を発現する細胞を単離するためにトランスフェクト細胞を掬いだすことにより、インビボ選択リンパ球由来の増幅免疫グロブリン配列でトランスフェクトした宿主細胞をインビトロでさらに分析及び選択することができる。国際出願公開WO97/29131及び国際出願公開WO00/56772に記載のものなどのインビトロ親和性成熟法などによって、増幅免疫グロブリン配列をインビトロでさらに操作することができる。
【0120】
「キメラ抗体」という用語は、ある種からの重及び軽鎖の可変領域配列及び別の種からの定常領域配列を含む抗体、例えばヒトの定常領域に連結されたマウス重及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。
【0121】
「CDRグラフト抗体」という用語は、ある種からの重及び軽鎖の可変領域を含むが、VH及び/又はVLのCDR領域の1以上の配列が、別の種のCDR配列で置換された抗体、例えば、マウスCDRの1以上(例えば、CDR3)がヒトCDR配列で置換されているマウス重及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。
【0122】
「ヒト化抗体」という用語は、ヒト以外の種(例えばマウス)からの重及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部分が、より「ヒトに近い」、即ちよりヒト生殖細胞系列の可変配列に似ているように改変されている抗体を指す。ヒト化抗体のあるタイプは、ヒトCDR配列が非ヒトVH及びVLの配列中に導入されて対応する非ヒトCDR配列に置換されている、CDRグラフト抗体である。特に、「ヒト化抗体」という用語は、関心のある抗原に免疫特異的に結合し、実質的にヒト抗体のアミノ酸配列を有するフレームワーク(PR)領域及び実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその変異体、誘導体、類似体もしくは断片である。本明細書で使用する場合、「実質的に」という用語は、CDRに関して、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)、FabC、Fv)の実質的に全てを含み、ここでCDR領域の全て又は実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリン(即ちドナー抗体)のものに相当し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。好ましくは、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン(通常はヒト免疫グロブリン)定常領域(Fc)の少なくとも一部も含む。ある実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖ならびに、少なくとも重鎖の可変ドメインの両方を含有する。本抗体はまた、重鎖の、CH1、ヒンジ、CH2、CH3及びCH4領域も含み得る。ある実施形態において、ヒト化抗体はヒト化軽鎖のみを含有する。その他の実施形態において、ヒト化抗体はヒト化重鎖のみを含有する。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメイン及び/又はヒト化重鎖のみを含有する。
【0123】
このヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgE及び何らかのアイソタイプ(以下に限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。)を含む、免疫グロブリンの何らかのクラスから選択することができる。ヒト化抗体は、複数のクラス又はアイソタイプからの配列を含み得、当技術分野で周知である技術を用いて、所望のエフェクター機能を最適化するために特定の定常ドメインを選択し得る。
【0124】
ヒト化抗体の、フレームワーク及びCDR領域は、親配列に正確に対応する必要はなく、例えば、その部位でCDR又はフレームワーク残基がドナー抗体又はコンセンサスフレームワークの何れかに相当しないように、少なくとも1つのアミノ酸残基の、置換、挿入及び/又は欠失により、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークに対して突然変異誘発を行い得る。しかし、好ましい実施形態において、このような突然変異誘発は大規模ではない。通常、ヒト化抗体残基の、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が親FR及びCDR配列のものに相当する。本明細書で使用する場合、「コンセンサスフレームワーク」という用語は、コンセンサス免疫グロブリン配列のフレームワーク領域を指す。さらに、本明細書で使用する場合、「コンセンサス免疫グロブリン配列」という用語は、関連免疫グロブリン配列のファミリーにおいて最も高頻度に起こるアミノ酸(又はヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker、From Gene to Clones(Verlagsgesellschaft、Weinheim、Germany 1987参照)。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列の各位置には、そのファミリーのその位置で最も高頻度に起こるアミノ酸がある。2種類のアミノ酸が同等の頻度で起こる場合、何れかをコンセンサス配列に含めることができる。
【0125】
「活性」という用語は、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性などの活性を含む。
【0126】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン又はT細胞受容体と特異的に結合する能力があるあらゆるポリペプチド決定基を含む。ある実施形態においては、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面配置を含み、ある実施形態においては、特定の3次元構造的特徴及び/又は特定の電荷的特徴を有し得る。エピトープは、抗体が結合する抗原の領域である。ある実施形態において、抗体は、タンパク質及び/又は巨大分子の複雑な混合物中でその標的抗原を選択的に認識した際に抗原に特異的に結合すると言われる。
【0127】
本明細書で使用する場合、「表面プラズモン共鳴」という用語は、(例えば、BIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden及びPiscataway、NJ)を使用した、バイオセンサーマトリクス内のタンパク質濃度の変化の検出による)リアルタイムの生体特異性相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。さらなる説明については、Jonsson、U.ら(1993)Ann.Biol Clin.51:19−26;Jonsson、U.ら(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnsson,B.ら(1995)J.Mol.Recognit.8:125−131;及びJohnn son、B.ら(1991)Anal.Biochem.198、268−277を参照のこと。
【0128】
本明細書で使用する場合、「Kon」という用語は、当技術分野で公知のように、抗体/抗原複合体を形成するための抗体の抗原への会合に対する「会合速度」定数を指すものとする。
【0129】
本明細書で使用する場合、「Koff」という用語は、当技術分野で公知のように、抗体/抗原複合体からの抗体の解離に対する「解離速度」定数を指すものとする。
【0130】
本明細書で使用する場合、「K」という用語は、当技術分野で公知のように、特定の抗体−抗原相互作用の「解離定数」を指すものとする。
【0131】
「標識結合タンパク質」という用語は、本明細書で使用する場合、結合タンパク質の同定を可能にする標識が組み込まれたタンパク質を指す。好ましくは、この標識は、例えば、放射性標識アミノ酸の組み込み又はマークされたアビジンにより検出することができるビオチニル部分のポリペプチドへの結合など、検出可能マーカーである(例えば、光学的方法又は比色法により検出することができる、蛍光マーカー又は酵素活性を含有するストレプトアビジン)。ポリペプチドに対する標識の例には、以下に限定されないが、次のものが含まれる:放射性同位元素又は放射性核種(例えば、H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho又は153Sm);蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン又はランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ又はアルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基;第二のレポーターにより認識される予め定められたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン又はエピトープタグ);及びガドリニウムキレートなどの磁性物質。
【0132】
「抗体共役物」という用語は、治療剤又は細胞毒性薬剤などの第二の化学部分に化学的に連結された抗体などの、結合タンパク質を指す。「薬剤」という用語は、本明細書中で、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生物学的巨大分子又は生体物質から調製された抽出物を指すために使用される。好ましくは、治療用薬剤又は細胞毒性薬剤には、以下に限定されないが、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びプロマイシン、ならびにこれらの薬剤の類似物及びホモローグが含まれる。
【0133】
「結晶」及び「結晶化」という用語は、本明細書で使用する場合、結晶の形態で存在する、抗体又はその抗原結合部分を指す。結晶は、物質の固体状態の一形態である。
【0134】
「免疫付与する」という用語は、本明細書中で、その免疫レパートリーが天然の遺伝子改変されていない生物であれ、又は人工的なヒト免疫レパートリーを提示するように改変されたトランスジェニック生物であれ、免疫レパートリーに抗原を提示するプロセスを指す。同様に、「免疫原製剤」は、アジュバント又は抗原の免疫原性を促進するその他の添加物を含有する、抗原の処方物である。これの例は、GLP−1受容体の精製形態のフロイント完全アジュバントとのマウスへの同時注射である。本明細書中で定義する場合、「超免疫付与」は、強い免疫反応を発現させる意図での、宿主動物への、免疫原製剤における、連続的かつ複数回の抗原の提示の行為である。
【0135】
抗体の結合速度を測定するある方法は表面プラズモン共鳴による。「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書で使用する場合、例えば、Biacoreシステム(Biacore International、Upsala Sweden及びPiscataway、NJ)を使用した、バイオセンサーマトリクス内のタンパク質濃度の変化の検出によるリアルタイムの生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。さらなる説明については、Jonssonら(1993)Annales de Biologie Clinique(Paris)51:19−26;Jonssonら(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnssonら(1995)Journal of Molecular Recognition 8:125−131及びJohnnsonら(1991)Analytical Biochemistry 198:268−277を参照のこと。
【0136】
「医薬的に許容可能な担体」には、生理学的に適合性である、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。医薬的に許容可能な担体の例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにこれらの組合せの1以上が含まれる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトールなどのポリアルコール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。医薬的に許容可能な担体には、抗体又は抗体部分の貯蔵期間又は有効性を高める、湿潤剤又は乳化剤、保存料又は緩衝剤などの、湿潤化物質又は少量の補助物質などもさらに含まれ得る。
【0137】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体又は抗体部分の「治療的有効量」又は「予防的有効量」を含み得る。「治療的有効量」とは、必要な投与量及び期間で、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。抗体又は抗体部分の治療的有効量は、当業者により決定され得、個体の、疾病のステ―ジ、年齢、性別及び体重、個体において所望の反応を誘発するための抗体又は抗体部分の活性などの因子に従い変化し得る。治療的有効量はまた、治療上の有益な効果が抗体又は抗体部分の何らかの毒性又は有害な影響を上回るものでもある。「予防的有効量」とは、必要な投与量及び期間で、所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。通常、疾患の前又は初期段階では、対象において予防的用量を使用するので、予防的有効量は治療的有効量より少量となろう。
【0138】
本発明の抗体及び抗体部分を例えば非経口投与に適切な医薬組成物に組み込むことができる。好ましくは、本抗体又は抗体部分を0.1−250mg/mL抗体を含有する注射用溶液として調製する。注射用溶液は、フリントガラス又はアンバーバイアル、アンプル又はプレフィルドシリンジ中で、液体又は凍結乾燥製剤の何れかにより構成され得る。緩衝液は、pH5.0から7.0(最適にはpH6.0)のL−ヒスチジン(1−50mM、最適には5−10mM)であり得る。その他の適切な緩衝液には、以下に限定されないが、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムが含まれる。0−300mMの濃度(液状製剤の場合、最適には150mM)で溶液の毒性を変化させるために、塩化ナトリウムを使用することができる。凍結乾燥製剤の場合、凍結保護剤、基本的には0−10%スクロース(最適には0.5−1.0%)を含有することができる。その他の適切な凍結保護剤には、トレハロース及びラクトースが含まれる。凍結乾燥製剤の場合、充填剤、基本的には1−10%マンニトール(最適には2−4%)を含有することができる。安定化剤、基本的には1−50mM L−メチオニン(最適には5−10mM)を液状及び凍結乾燥製剤の両方で使用することができる。その他の適切な充填剤には、グリシン及びアルギニンが含まれ、0−0.05%ポリソルベート−80(最適には0.005−0.01%)として含まれ得る。さらなる界面活性剤には、以下に限定されないが、ポリソルベート20及びBRIJ界面活性剤が含まれる。
【0139】
本発明の組成物は様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体及び固体製剤、例えば溶液(例えば、注射用及び点滴用溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム及び座薬などが含まれる。好ましい剤形は、意図する投与方法及び治療用途に依存する。通常の好ましい組成物は、注射用又は点滴用溶液、例えば他の抗体によるヒトの受動免疫法のために使用されるものと類似の組成物などである。好ましい投与方法は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態において、本抗体は静脈内点滴又は注射によって投与される。別の好ましい実施形態において、本抗体は、筋肉内又は皮下注射によって投与される。
【0140】
治療用組成物は、通常、製造及び貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなければならない。本組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム又はその他の高い薬剤濃度に適した秩序構造として処方することができる。滅菌注射用溶液は、活性化合物(即ち抗体又は抗体部分)を、必要な量で、適切な溶媒中に、必要に応じて上記で列挙した成分の1つ又は組合せと共に配合し、続いてろ過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒及び上記で列挙したものからの必要なその他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に活性化合物を配合することにより調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌凍結乾燥粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分に何らかのさらなる所望の成分を加えた粉末を、予めろ過滅菌したこれらの溶液から得る、真空乾燥及び噴霧乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより、分散液の場合は必要な粒子サイズを維持することにより、及び、界面活性剤を使用することにより、維持することができる。組成物中に吸収を遅らせる物質、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを含むことにより、注射用組成物を持続的に吸収させるようにすることができる。
【0141】
本発明の抗体及び抗体部分は、当技術分野で公知の様々な方法により投与することができるが、多くの治療用途に対して、好ましい投与の経路/方法は、皮下注射、静脈内注射又は点滴である。当業者にとって当然のことながら、投与の経路及び/又は方法は、所望の結果に依存して変化する。ある実施形態において、インプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセル型送達系を含む制御放出製剤など、化合物を急速な放出から保護する担体を用いて活性化合物を調製し得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような処方物の調製のための多くの方法が特許取得されているか、又は当業者に一般に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978参照。
【0142】
ある実施形態において、例えば不活性希釈剤又は同化可能な可食担体と共に、本発明の抗体又は抗体部分を経口投与し得る。硬殻又は軟殻のゼラチンカプセル、圧縮錠剤にこの化合物(及び必要に応じてその他の成分)を封入するか、又は対象の食餌に直接混合し得る。治療剤の経口投与の場合、賦形剤とともにこの化合物を配合し、経口摂取錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形態で使用し得る。本発明の化合物を非経口投与以外によって投与するために、この化合物をその不活性化を防止する物質で被覆するか、又はこれらと一緒に投与することが必要であり得る。
【0143】
補助的な活性物質を組成物中に配合することもできる。ある実施形態において、アルツハイマー病又は関連疾患もしくは状態を治療するのに有用な1以上のさらなる治療剤と一緒に、本発明の抗体又は抗体部分を処方、及び/又は一緒に投与する。例えば、本発明の抗体の1つ又はその抗体部分を、その他の標的に結合する1以上のさらなる抗体とともに同時処方及び/又は同時投与し得る。
【0144】
ある実施形態において、本発明のモノクローナル抗体又はその断片を当技術分野で公知の半減期延長ビヒクルに連結し得る。このようなビヒクルには、以下に限定されないが、Fcドメイン、ポリエチレングリコール及びデキストランが含まれる。このようなビヒクルは、例えば、米国出願09/428,082及び公開PCR出願WO99/25044(これらをあらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込む。)に記載されている。
【0145】
上述の手順に加えて、熟練者は、巨大分子(例えばDNA分子、プラスミドなど)の構築、操作及び単離、組み換え生物の作製及びクローンのスクリーニング及び単離に対する具体的な条件及び手順を述べる標準的リソースに精通している(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1989);Maligaら、Methods in Plant Molecular Biology、Cold Spring Harbor Press(1995);Birrenら、Genome Analysis:Detecting Genes、1、Cold Spring Harbor、New York(1998);Birrenら、Genome Analysis:Analyzing DNA、2、Cold Spring Harbor、New York(1998);Plant Molecular Biology:A Laboratory Manual、Clark編、Springer、New York(1997)を参照)。
【0146】
モノクローナル抗体の使用
本発明のモノクローナル抗体(例えば8F5及び8CF)は、多くの興味深い有用性がある。例えば、上述のように、アルツハイマー病の、予防、治療及び診断において、本モノクローナル抗体を使用し得る。さらに、抗−抗体の開発において、本抗体を使用し得る。さらに、個々の抗体を産生するハイブリドーマにより、同一のモノクローナル抗体(即ち試薬)の継続的な源を安定して産生することができ、よって、様々な実験ならびに治療用途における抗体間の同一性が保証される。
【0147】
また、本発明の方法により、さらなる物質の調製での使用のための出発物質の適切な量を調製できるようになり、言い換えれば、これは、アルツハイマー病の治療のためのモノクローナル抗体(又はその他の抗体)の産生において利用され得る。上記のように、本抗体は、アルツハイマー病又は認知機能障害などのアルツハイマー病と同じ症状を特徴とするその他の関連する神経学的状態を予防するための受動免疫付与のためにも使用し得る。
【0148】
本発明のある診断実施形態において、本発明の抗体(例えば8F5)又はその一部で固相を被覆する(又は、液相に存在する。)。次に、試験又は生体試料(例えば、全血、脳脊髄液、血清など)を固相と接触させる。抗原(例えば球状凝集体)が試料中に存在する場合、このような抗原が固相上の抗体に結合し、次いで、直接的又は間接的方法の何れかにより検出される。直接法は、複合体そのものの存在、従って抗原の存在を単純に検出することを含む。間接的方法では、共役物を結合抗原に添加する。この共役物は、第二抗体を含み、これは、シグナル生成化合物又は標識に結合された結合抗原に結合する。第二抗体が結合抗原に結合すると、シグナル生成化合物が測定可能なシグナルを生成する。このようなシグナルは、試験試料中に抗原が存在することを示す。
【0149】
診断用免疫アッセイで使用される固相の例は、多孔及び非多孔材料、ラテックス粒子、磁性粒子、微小粒子(例えば米国特許第5,705,330号参照)、ビーズ、膜、マイクロタイターウェル及びプラスチックチューブである。固相材料の選択及び共役物中に存在する抗原又は抗体を標識する方法は、必要に応じて、所望のアッセイ方式の性能特性に基づき決定される。
【0150】
上述のように、共役物(又は指標試薬)は、シグナル生成化合物又は標識に連結された抗体(又はおそらく、アッセイによっては抗−抗体)を含む。このシグナル生成化合物又は「標識」は、そのものが検出可能であるか、又は検出可能な産物を生成するための1以上のさらなる化合物と反応し得る。シグナル生成化合物の例には、色原体、放射性同位元素(例えば、125I、131I、32P、H、35S及び14C)、化学発光化合物(例えばアクリジニウム)、粒子(可視性又は蛍光性)、核酸、錯化剤又は酵素などの触媒(例えば、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ及びリボヌクレアーゼ)が含まれる。酵素を使用する場合(例えば、アルカリホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ)、色原、蛍光又は化学発光生成基質を添加することにより、検出可能なシグナルが生じる。時間分解蛍光、内部反射蛍光、増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)及びラマン分光法などのその他の検出系も有用である。
【0151】
上記免疫アッセイにより試験され得る体液の例には、血漿、全血、乾燥全血、脳脊髄液又は組織及び細胞の水性もしくは有機−水性抽出物が含まれる。
【0152】
本発明はまた、試験試料中における抗体の存在を検出するための方法も包含する。この方法は次の段階を含む:(a)抗−抗体/抗体複合体を形成させるのに十分な時間及び条件下で、抗体を含有する疑いのある試験試料を患者試料中の抗体に特異的な抗−抗体と接触させる段階(この抗−抗体は、患者試料中の抗体に結合する本発明の抗体である。);(b)得られた抗−抗体/抗体複合体に共役物を添加する段階(この共役物は、検出可能なシグナルを検出することができるシグナル生成化合物に連結された(抗−抗体に結合する)抗原を含む。);及び(d)シグナル生成化合物により生じたシグナルを検出することにより試験試料中に存在し得る抗体の存在を検出する段階。抗−抗体に対する抗体を含む、対照又はキャリブレーターを使用し得る。
【0153】
本発明はまた、本明細書中に記載の抗体の1以上又はその一部と医薬的に許容可能なアジュバント(例えば、フロイントのアジュバント又はリン酸緩衝食塩水)と、を含有するワクチンも含む。
【0154】
キットも本発明の範囲内に含まれる。より具体的には、本発明は、アルツハイマー病又は認知機能障害を特徴とする別の状態である疑いのある患者において抗原(例えば球状凝集体)の存在を調べるためのキットを含む。特に、試験試料中の抗原の存在を調べるためのキットは、a)本明細書中で定義されるような抗体又はその一部;及びb)検出可能なシグナルを生成することができるシグナル生成化合物に連結された第二抗体(抗原に対する特異性を有する。)を含む共役物を含む。本キットは、抗原に結合する試薬を含む対照又はキャリブレーターならびにキットの利用法及びキットの成分を詳述する指示書も含有する。
【0155】
本発明はまた、試験試料中の抗体を検出するためのキットも含む。本キットは、a)関心のある抗体に特異的な抗−抗体(例えば本発明の1つ)及びb)上記で定義されるような抗原又はその一部を含み得る。抗原に結合する試薬を含有する対照又はキャリブレーターも含まれ得る。より具体的には、本キットは、a)抗体に特異的な抗−抗体(本発明の1つなど)及びb)検出可能なシグナルを生じさせることができるシグナル生成化合物に連結された抗原(例えば球状凝集体)を含有する共役物を含み得る。繰り返すが、本キットはまた、抗原に結合する試薬を含有するキャリブレータ―の対照も含み得、キットの使用法及びキットの成分を述べる指示書又は添付文書も含み得る。
【0156】
本キットはまた、各容器に前もってセットされた固相が付いた、バイアル、ボトル又はストリップなどの1つの容器及び個々の共役物を含有するその他の容器も含み得る。これらのキットはまた、洗浄、処理及び指標試薬など、本アッセイを行うのに必要なその他の試薬のバイアル又は容器も含有し得る。
【0157】
本発明が、上記の全長抗体を含むだけでなく、その一部又は断片、例えばそのFab部分も含むことにも注意されたい。さらに、本発明は、例えば結合特異性、構造などに関して、本発明の抗体と同じ特性を有するあらゆる抗体を包含する。
【0158】
寄託情報:モノクローナル抗体8F5を産生するハイブリドーマ(ML5−8F5.1F2.2A2)を、ブダペスト条約に基づき、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas、Virginia 20110に2005年12月1日付けで寄託し、ATCC番号PTA−7238が付与された。
【0159】
モノクローナル抗体8C5を産生するハイブリドーマ(ML5−8C5.2C1.8E6.2D5)を、ブダペスト条約に基づき、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas、Virginia 20110に2006年2月28日付けで寄託し、ATCC番号PTA−7407が付与された。
【0160】
次の非限定的な実施例により本発明を説明し得る。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、Aβ(1−42)単量体、Aβ(1−40)及びsAPPと対比した、球状凝集体への、8F5の選択性を示す。
【図2】図2は、上清中の、原線維結合重及び軽鎖抗体(レーン4、6、8)及び対応する非結合遊離断片(レーン3、5、7)のSDS−PAGE分析を示す。
【図3】図3は、軽度認知障害(MCI、左)又はアルツハイマー病(AD、右)の患者由来のCSF試料中のAβ42及びAβ40含量を示す。
【図4】図4は、APPトランスジェニックマウスの3群(即ち、6G1、8F5、PBS)及び非トランスジェニックの同腹仔(野生型)の1群における、既知の物体と対比した未知の物体と過ごす時間としての、新規物体認識指数を示す。
【図5A】図5(A)は本明細書中で「8F5」と呼ぶモノクローナル抗体をコードする可変重鎖のDNA配列(配列番号1)を示す。
【図5B】図5(B)は、モノクローナル抗体8F5をコードする可変軽鎖のDNA配列(配列番号2)を示す。
【図6A】図6(A)はモノクローナル抗体8F5の可変重鎖のアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【図6B】図6(B)はモノクローナル抗体8F5の可変軽鎖のアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
【図7A】図7Aは、アルツハイマー病(AD)患者又は老齢APPトランスジェニックマウスの新皮質の横断面に対する、様々な濃度での抗体の結合を示し、特に、APPトランスジェニックマウス系統Tg2576及びAD患者(RZ55)での、脳組織の斑としての、及び脳血管での大脳アミロイド血管障害(CAA)としての、コンゴレッド染色による、アミロイド沈着の検証を示す。
【図7B】図7Bは、アルツハイマー病(AD)患者又は老齢APPトランスジェニックマウスの新皮質の横断面に対する、様々な濃度での抗体の結合を示し、AD患者(RZ16)におけるAβ(アミロイド斑)の実質性沈着の染色が6G1及び市販の抗体6E10によってのみ起こり、一方、8F5及び8C5では染色が非常に弱いことを示す。
【図7C】図7Cは、アルツハイマー病(AD)患者又は老齢APPトランスジェニックマウスの新皮質の横断面に対する、様々な濃度での抗体の結合を示し、TG2576マウスにおけるAβ(アミロイド斑)の実質性沈着の強い染色が6G1及び市販の抗体6E10によってのみ起こり、一方、8F5及び8C5では染色が非常に弱いことを示す。
【図7D】図7Dは、アルツハイマー病(AD)患者又は老齢APPトランスジェニックマウスの新皮質の横断面に対する、様々な濃度での抗体の結合を示し、画像解析を用いた組織学的画像におけるAβ斑染色の分析の定量を示す。
【図7E】図7Eは、アルツハイマー病(AD)患者又は老齢APPトランスジェニックマウスの新皮質の横断面に対する、様々な濃度での抗体の結合を示し、画像解析を用いた組織学的画像におけるAβ斑染色の分析の定量を示す。
【図7F】図7Fは、アルツハイマー病(AD)患者又は老齢APPトランスジェニックマウスの新皮質の横断面に対する、様々な濃度での抗体の結合を示し、画像解析を用いた組織学的画像におけるAβ斑染色の分析の定量を示す。
【図7G】図7Gは、アルツハイマー病(AD)患者又は老齢APPトランスジェニックマウスの新皮質の横断面に対する、様々な濃度での抗体の結合を示し、画像解析を用いた組織学的画像におけるAβ斑染色の分析の定量を示す。
【図7H】図7Hは、アルツハイマー病(AD)患者又は老齢APPトランスジェニックマウスの新皮質の横断面に対する、様々な濃度での抗体の結合を示し、Aβの血管沈着(矢印)の強い染色が6G1及び市販の抗体6E10でのみ起こり、一方、8F5又は8C5での染色は非常に弱かったことを示す。
【図8】図8は、Aβ(1−42)単量体、Aβ(1−40)及びsAPPと対比した、球状凝集体に対する8C5の選択性を示す。
【図9A】図9(A)は、8C5の重鎖をコードするヌクレオチド配列(配列番号11)を示す。
【図9B】図9(B)は、8C5の軽鎖をコードするヌクレオチド配列(配列番号12)を示す。
【図10A】図10(A)は、モノクローナル抗体8C5の可変重鎖のアミノ酸配列(配列番号19)を示す。
【図10B】図10(B)は、モノクローナル抗体8F5の可変軽鎖のアミノ酸配列(配列番号20)を示す。
【実施例】
【0162】
(実施例I(a))
モノクローナル抗体8F5及び8C5の産生
CFA(Sigma)中の、Barghornら、2005、J Neurochem、95、834−847に記載のようなA−beta(1−42)球状凝集体50ミリグラムを用いて、Balb/cマウスにsub−qで免疫付与し、1ヵ月間隔で2回免疫促進した。脾臓を回収し、脾臓細胞をマウス骨髄腫SP2/0細胞と5:1の比でPEG法により融合させた。2x10個細胞/mL、ウェルあたり200mLで、アザセリン/ヒポキサンチン選択培地中で96ウェル皿に融合細胞をプレーティングした。目で見えるコロニーが形成されるように細胞を増殖させ、直接ELISAアッセイにより、A−betaオリゴマー反応性について上清をアッセイした。抗体発現が安定になったと思われるまで、限界希釈により、A−betaオリゴマーに対する抗体を分泌するハイブリドーマをサブクローニングした。
【0163】
(実施例II)
Aβ(1−40)及びAβ(1−42)の単量体調製物と比較した、8F5及び8C5の優先的な球状凝集体への結合
8F5の選択性を試験するために、2つの別々に溶解したAβ(1−42)単量体調製物、ならびに単量体に対する代替物として新たに調製したAβ(1−40)を使用した。2種類の実験を行った。第一の実験において、球状凝集体由来であるが配座異性体非特異的MAb 6G1(S.Barghornら、J.Neurochemistry、95:834(2005))を捕捉抗体として用いて、サンドイッチ−ELISAにより、Aβ球状凝集体選択性について8F5を試験した。ビオチン化8F5を第二及び配座異性体選択的抗体として使用した。この実験を下記実施例2.1で述べる。
【0164】
下記実施例2.2で述べる第二の例において、ドットブロット免疫アッセイにより、Aβ(1−42)単量体及びAβ(1−40)単量体と対比したオリゴマー選択性を調べた。この実験において、Aβ(1−42)単量体と比較した場合、ならびにAβ(1−40)単量体と比較した場合、8F5は、(8F5と同様の領域にマッピングされるが、線状ペプチドAβ(17-24)による免疫付与由来である既知の抗体4G8(Abcam Ltd.、Cambridge、MA)と比べて)Aβ(1−42)球状凝集体への優先的な結合を示した。
【0165】
(実施例2.1):モノクローナル抗体8F5及び8C5のオリゴマー選択性
a)Aβ(1−42)球状凝集体の調製:
9mg Aβ(1−42)Fa.Bachemを1.5mL HFIP(1.1.1.3.3.3ヘキサフルオロ−2−プロパノール)中で溶解し、37℃にて1.5時間インキュベートした。溶液をスピードバック中で蒸発させ、396μL DMSO中で懸濁した(5mM保存溶液)。超音波水浴中で20秒間、試料を超音波破砕し、10分間振盪し、−20℃で一晩保存した。
【0166】
4.5mL PBS(20mM NaHPO;140mM NaCl;pH7.4)で試料を希釈し、0.5mL 2%SDS水溶液を添加した(0.2%SDS含量)。混合物を37℃で7時間インキュベートし、16mL HOで希釈し、37℃で16時間さらにインキュベートした。その後、Aβ(1−42)球状凝集体溶液を3000gで20分間遠心した。30kDaセントリプレップにより上清を0.5mLに濃縮した。濃縮液を5mM NaHPO;35mM NaCl;pH7.4に対して6℃にて一晩透析した。続いて、Aβ(1−42)球状凝集体濃縮液を10000gで10分間遠心した。次に、上清を等分し、−20℃で保存した。
【0167】
b)HFIP前処理した単量体Aβ(1−42)の調製:
3mgヒトAβ(1−42)、(Bachem Inc)カタログ番号H−1368を1.7mLエッペンドルフチューブ中の0.5mL HFIP中で溶解し(6mg/mL懸濁液)、透明な溶液が得られるまで37℃にて1.5時間振盪(Eppendorff Thermo mixer、1400rpm)した。スピードバック濃縮器中で試料を乾燥させ(1.5時間)、13.2μL DMSO中で懸濁し、10秒間振盪し、次いで、超音波浴中で破砕処理(20秒)し、10分間振盪した(例えばEppendorff Thermo mixer中で、1400rpm)。
【0168】
6mL 20mM NaHPO;140mM NaCl;0.1%プルロニックF68;pH7.4を添加し、室温で1時間撹拌した。試料を3000gで20分間遠心した。上清を捨て、0.6mL 20mM NaHPO;140mM NaCl;1%プルロニックF68;pH7.4中で沈殿物を溶解させた。3.4mLの水を添加し、室温で1時間撹拌し、次いで3000gで20分間遠心した。上清の8x0.5mL分注物を−20℃で保存した。
【0169】
c)NHOH中の単量体Aβ(1−42)の調製
1mg Aβ(1−42)固形粉末(Bachem Inc.カタログ番号H−1368)を0.5mL 0.1%NHOH水(新たに調製)中で溶解し(2mg/mL)、すぐに30秒間室温で振盪し、透明な溶液を得た。さらなる使用のために−20℃で試料を保存した。
【0170】
d)単量体Aβ(1−40)の調製:
エッペンドルフチューブ中の0.25mL HFIP中で1mg ヒトAβ(1−40)、(Bachem Inc.カタログ番号H−1194)を懸濁した(4mg/mL懸濁液)。37℃にて1.5時間このチューブを振盪し(例えば、Eppendorff Thermo mixer中で、1400rpm)、透明な溶液を得て、その後、スピードバック濃縮器中で乾燥させた(1.5時間)。46μL DMSO中で試料を再溶解し(21.7mg/mL溶液)、10秒間振盪し、次いで超音波浴中で20秒間超音波破砕した。10分間振盪(例えばEppendorff Thermo mixer中、1400rpm)した後、さらなる使用のために−20℃で試料を保存した。
【0171】
e)抗AβマウスMAb 8F5のビオチン化:
水中で新たに溶解した2μL 20mg/mL スルホ−NHS−ビオチン(Pierce Inc.カタログ番号21420)にPBS中の500μL 抗AβマウスMAb 8F5(0.64mg/mL)を添加し、30分間振盪(例えばEppendorff Thermo mixer中、1400rpm)し、透析チューブ中で6℃で16時間、500mL 20mM Na Pi;140mM NaCl;pH7.4に対して透析した。さらなる使用のために−20℃で透析液を保存した。8C5を適宜にビオチン化した。
【0172】
f)Aβ試料に対するサンドイッチ−ELISA:
【0173】
g)試薬リスト:
1.F96 Cert.Maxisorp NUNC−Immuno Plate カタログ番号:439454
2.結合抗体:抗−AβマウスMAb 6G1、PBS中で溶解;濃度:0.4mg/mL;−20℃で保存。
3.コーティング緩衝液:100mM炭酸水素ナトリウム;pH9.6
4.ELISA用ブロッキング試薬;Roche Diagnostics GmbHカタログ番号:1112589
5.PBST−緩衝液:20mM NaHPO;140mM NaCl;0.05%Tween20;pH7.4
6.ウシアルブミン フラクションV、プロテアーゼ不含;Serva カタログ番号:11926.03;4℃で保存。
7.PBST+0.5%BSA−緩衝液:20mM NaHPO;140mM NaCl;0.05% Tween20;pH7.4+0.5%BSA
8.Aβ(1−42)−球状凝集体標準保存液:5mM NaHPO;35mM NaCl;pH7.4中の溶液;濃度:10.77mg/mL;−20℃で保存。
9.Aβ(1−42)単量体 HFIP処理標準保存液:3mM NaHPO;21mM NaCl;0.15%プルロニックF68;pH7.4中の溶液;濃度:0.45mg/mL;−20℃で保存。
10.NHOH中のAβ(1−42)単量体標準保存液;0.1%NHOH中の溶液、濃度:2mg/mL;−20℃で保存。
11.Aβ(1−40)単量体HFIP処理標準保存液;DMSO中の溶液;濃度:21.7mg/mL;−20℃で保存。
12.ビオチン化抗−AβマウスMAb クローン8F5;PBS中の溶液;濃度:0.24mg/mL;−80℃で保存。
13.ストレプトアビジン−POD共役物;Fa.Rocheカタログ番号:1089153。
14.染色:TMB;Roche Diagnostics GmbHカタログ番号:92817060;DMSO中42mM;水中3%H;100mM酢酸ナトリウムpH4.9。
15.2Mスルホン酸溶液添加により染色を停止。
【0174】
試薬の調製:次のプロトコールを利用した:
1.結合抗体:mMAb 6G1保存溶液を凍結融解し、コーティング緩衝液中で1:400希釈。
2.ブロッキング試薬:ブロッキング試薬を100mLの水中で溶解し、ブロッキング保存溶液を調製し、10mLずつ分注した液を−20℃で保存。ブロッキングするために各プレートに対して、27mL水で3mLブロッキング保存溶液を希釈。
3.Aβ標準溶液:
a)Aβ(1−42)−球状凝集体
−1076μL PBST+0.5%BSAに1μL Aβ(1−42)−球状凝集体標準保存液を添加=10μg/mL
−4950μL PBST+0.5%BSAに50μL 10μg/mL Aβ(1−42)−球状凝集体標準溶液を添加=100ng/mL
b)Aβ(1−42)単量体HFIP−処理
−440μL PBST+0.5%BSAに10μL Aβ(1−42)単量体HFIP−前処理標準保存液を添加=10μg/mL
−4950μL PBST+0.5%BSAに50μL 10μg/mL Aβ(1−42)単量体HFIP−前処理標準溶液を添加=100ng/mL
c)NHOH中のAβ(1−42)単量体
−995μL PBST+0.5%BSAにNHOH中の5μL Aβ(1−42)単量体標準保存液を添加=10μg/mL
−4950μL PBST+0.5%BSAにNHOH中の50μL 10μg/mL Aβ(1−42)単量体標準溶液を添加=100ng/mL
d)Aβ(1−40)単量体HFIP−前処理
−49μL PBST+0.5%BSAに1μL Aβ(1−40)単量体HFIP前処理標準保存液を添加=430μg/mL
−420μL PBST+0.5%BSAに10μL 430μg/mL Aβ(1−40)単量体HFIP前処理標準溶液を添加=10μg/mL
−4950μL PBST+0.5%BSAに50μL 10μg/mL Aβ(1−40)単量体HFIP前処理標準溶液を添加=100ng/mL
【0175】
【表1】

【0176】
1.一次抗体:ビオチン化mMAb 8F5:PBST+0.5%BSA−緩衝液中で濃縮ビオチン化抗−AβmAb 8F5を希釈した。希釈係数は1/1200=0.2μg/mLであった。抗体はすぐに使用した。
【0177】
2.標識試薬:0.5mL水中で凍結乾燥したストレプトアビジン−POD共役物を再構成。500μLグリセロールを添加し、100μL分注物をさらなる使用のために−20℃で保存。濃縮標識試薬をPBST−緩衝液中で希釈。希釈係数は1/10000。すぐに使用。
【0178】
3.染色溶液TMB:20mL 100mM酢酸ナトリウムpH4.9をTMB溶液200μL及び29.5μL 3%過酸化水素水と混合。すぐに使用。
【0179】
【表2】

【0180】
使用利用:
1.ウェルあたり100μLの抗−Aβ mMAb 6G1溶液を添加し、4℃で一晩インキュベート。
2.抗体溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
3.ウェルあたり260μLのブロッキング溶液を添加し、室温で2時間インキュベート。
4.ブロッキング溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
5.標準を調製後、ウェルあたり標準100μLをプレートに添加。室温で2時間及び4℃にて一晩インキュベート。
6.標準溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
7.ウェルあたり200μLの一次ビオチン化抗体 8F5溶液を添加し、室温で1.5時間インキュベート。
8.抗体溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
9.ウェルあたり200μLの標識溶液を添加し、室温で1時間インキュベート。
10.標識溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
11.各ウェルにTMB溶液100μLを添加し、室温でインキュベート(5−15分間)。
12.染色を観察し、バックグラウンド染色開始後、停止溶液をウェルあたり50μL添加。
13.450nmでUV読み取り。
14.標準曲線から結果を計算。
15.評価
【0181】
抗体8F5について図1で、抗体8C5について図8で結果を示す。LogEC50値は、別に調製した2種類のAβ(1−42)単量体(それぞれ2.745及び3.003)及びAβ(1−40)単量体(2.825)に対する換算値と比較して、Aβ(1−42)球状凝集体抗原に対して著しく低い(1.958)。これらのデータから、Aβ(1−42)単量体と対比して、Aβ(1−42)球状凝集体に対して抗体 8F5が約10倍の選択性を有することが示される。
【0182】
抗体8C5を用いてほぼ同様の結果が得られ、これらを図8で示す。
【0183】
(実施例2.2):モノクローナル抗体8F5及び8C5のオリゴマー選択性
−ドットブロット法によるAβ球状凝集体に対するAβ単量体の差別化:4G8に対する、8F5及び8C5の比較。
【0184】
PBS中100pmol/μLから0.01pmol/μLの範囲で、Aβ(1−42)球状凝集体、Aβ1−42単量体及びAβ1−40単量体の連続希釈液を調製した。各試料のうち1μLをニトロセルロース膜上にドット添加した。二次抗体としてアルカリホスファターゼにカップリングされた抗−マウスIgG及び染色試薬NBT/BCIP(Roche Diagnostics、Manheim)を用いて検出するために、マウスモノクローナル抗体4G8及び8F5(0.2μg/mL)を使用した。10pmolの抗原濃度において、濃度計(GS800、BioRad、Hercules、CA、USA)を使用して強度について検出シグナルを分析した(反射密度=RD)。全てのAβ型に対して、この濃度において、測定した反射密度は濃度計検出の直線範囲にあった。類似のプロトコールで他方の抗体8C5を使用した。結果を下記表1で示す。
【0185】
【表3】


【0186】
特に、上記の結果から、8F5及び8C5は、4G8(これは、Aβ(17−24)にマッピングされる。(即ち直鎖状配列))に対する市販の抗−Aβ(1−42)抗体と比較して、異なる結合プロファイルを示すことが分かる。より具体的には、8F5及び8C5は、Aβ42単量体と対比して球状凝集体結合に対する選択性(4段目参照;1.4と1を比較)ならびにAβ40と対比して球状凝集体結合に対する選択性(5段目;16.9と4.2を比較)を示す。標準的4G8よりもこれら2種類の結合選択性が向上していることから、上述のように、8F5及び/又は8C5の使用において副作用が減少するはずである(例えば斑結合)。
【0187】
(実施例III)
Aβ(1−42)原線維に対する8F5及び8C5の結合
8F5抗体は可溶性球状凝集体に対して生成されたので、8F5は沈着斑又は原線維物質に結合しないはずであるという仮説を立てた。従って、重合化Aβ原線維懸濁液に対する8F5の結合について次の実施例に記載のように試験を行った。
【0188】
Aβ(1−42)原線維の調製:1mg Aβ(1−42)(Bachem Inc.、カタログ番号:H−1368)を500μL 0.1%NHOH水溶液(エッペンドルフチューブ)中で溶解させ、試料を室温で1分間撹拌し、次いで10000gで5分間遠心した。上清をピペットで新しいエッペンドルフチューブに移し、Bradfordタンパク質濃度アッセイ(BIO−RAD Inc.アッセイ法)に従い、Aβ(1−42)濃度を測定した。
【0189】
この新たに調製したAβ(1−42)溶液100μLを300μL 20mM NaHPO;140mM NaCl;pH7.4で中和し、次いで2%HClでpH7.4に調整した。この試料を37℃にてさらに20時間インキュベートし、遠心した(10分間、10000g)。上清を捨て、ボルテックス撹拌機で1分間撹拌しながら、400μL 20mM NaHPO;140mM NaCl;pH7.4で原線維ペレットを再懸濁し、次いで遠心した(10分間、10000g)。上清を捨てた後、この再懸濁手順を繰り返し、最終原線維懸濁液をさらなる遠心により沈降させた(10分間、10000g)。上清をもう一度捨て、ボルテックス撹拌機で1分間撹拌しながら380μL 20mM NaHPO;140mM NaCl;pH7.4中で最終ペレットを再懸濁した。等量に分注した試料を冷凍庫で−20℃で保存した。
【0190】
80μL原線維懸濁液を320μL 20mM NaHPO;140mM NaCl;0.05%Tween20;pH7.4、緩衝液と混合し、室温で5分間撹拌し、次いで超音波破砕(20秒)した。遠心後(10分間、10000g)、ボルテックス撹拌機で撹拌しながら、190μL 20mM NaHPO;140mM NaCl;0.05%Tween20;pH7.4でペレットを再懸濁した。
【0191】
−Aβ(1−42)原線維への抗体の結合
この原線維懸濁液の10μL分注液を次のものとインキュベートした:
a)10μL 20mM Na Pi;140mM NaCl;pH7.4、
b)10μL 0.1μg/μL mMAb 6E10 Signet Inc.カタログ番号9320(20mM c)NaHPO;140mM NaCl;pH7.4中)、
d)10μL 0.1μg/μL mMAb 4G8 Signet Inc.カタログ番号9220(20mM Na Pi;140mM NaCl;pH7.4中)、
e)10μL 0.1μg/μL mMAb 8F5(8C5)(20mM Na Pi;140mM NaCl;pH7.4中)。
【0192】
37℃にて20時間試料をインキュベートした。最後に試料を遠心した(10000gで10分間)。未結合抗体分画を含有する上清を回収し、20μL SDS−PAGE試料緩衝液と混合した。ボルテックス撹拌機で1分間撹拌しながら50μL 20mM NaHPO;140mM NaCl;pH7.4緩衝液でペレット分画を洗浄し、次いで遠心した(10分間、10000g)。20μLの20mM Na Pi;140mM NaCl;0.025%Tween20;pH7.4緩衝液中で最終ペレットを再懸濁し、20μL SDS−PAGE緩衝液中で溶解させた。
【0193】
−SDS−PAGE分析
上清及び再懸濁ペレット試料を98℃にて5分間加熱し、次の条件下で4−20%Tris/グリシンゲルに添加した:
SDS−試料緩衝液:0.3g SDS;0.77g DTT;4mL 1M Tris/HCl pH6.8;8mLグリセロール;1mL 1%ブロモフェノールブルー(エタノール中);50mL 4−20%Tris/グリシンゲル:Invitrogen Inc.、番号EC6025BOXに水を添加。
ランニング緩衝液:7.5g Tris;36gグリシン;2.5g SDS;2.5Lまで水を添加。
20mAでPAGEを行った。クーマシーブルーR250によりゲルを染色した。
【0194】
結果:SDS−PAGEのクーマシー染色から、主に原線維懸濁液の上清に抗体の重及び軽鎖が存在することが示され(レーン7、図2)、残りの原線維懸濁液にはわずかな抗体物質しか示されず、同時に、4.5kDに部分的に脱重合したAβも示された。8F5及び8C5とは対照的に、他の抗−Aβ抗体は可溶性分画に現れなかった(6E10、レーン3、図2)か、又は原線維結合分画(レーン6、図2)と比較して少なかった(4G8、レーン5、図2)。
【0195】
原線維結合及び上清分画中の抗体の重鎖からの反射密度値を測定し、次の式に従い計算することにより、SDS−PAGE分析から原線維型Aβへの相対的結合を評価した:
原線維結合Ab分画=RD原線維分画x100%/(RD原線維分画+RD上清分画
【0196】
次の値を得た。
【0197】
【表4】

【0198】
これらのデータから、標準的抗体6E10と比較して、結合した8F5及び8C5が有意に少ないことが示される。
【0199】
(実施例IV)
Aβ(1−40)と比較した内在性Aβ(1−42)球状凝集体の選択的結合
Aβのオリゴマー概念に基づき、抗−Aβオリゴマー抗体がまたインビボでも、特に軽度認知障害及びAD患者において、Aβ(1−40)よりもAβ(1−42)オリゴマーに対して選択的結合を示し得ることが重要である。Aβ(1−40)よりもAβ(1−42)種を低下させる概念は、NSAIDを介したADの治療に対する治療アプローチにおいて使用されている(Weggenら、Nature 414、212−216(2001))。Aβ(1−40)との関連でAβ(1−42)を低下させるNSAIDは、アルツハイマー病の治療の中で最も高い有効性を示すことが確認されている。Aβ(1−42)/Aβ(1−40)比は、選択的治療ならびに診断目的のために重要である。
【0200】
アルツハイマー病患者及びMCIの患者からのCSF試料を用いて分析を行った。図3で示される結果及び下記で述べる結果から、8F5は、より凝集の少ないAβ(1−40)を上回りAβ(1−42)に対して高い比を検出するので、8F5は、6E10のようなAβ抗体を上回る大きな長所を有すると結論付けることができる。この長所によって、MCI及びAD患者において、Aβ(1−42)型オリゴマーをより選択的に診断し、中和することができるようになる。
【0201】
A)オリゴマー選択的抗AβマウスMAB 8F5を用いた免疫沈降後の、MCI及びAD患者のCSFにおける内在性アミロイドβ(1−42)及びアミロイドβ(1−40)レベル:
CNBr活性化セファロース4Bへの抗−Aβ mMAbの固定化:
a)mMAb 6E10 Signet Inc.、カタログ番号9320
b)mMAb 8F5
0.4g CNBr活性化セファロース4B(Amersham Pharmacia Bio−tech AB、Uppsala、Sweden、Inc.、No.17−0430−01)を10mLの1mM HCl水溶液に添加し、室温で30分間インキュベートした。CNBr活性化セファロース4Bを10mLの1mM HClで3回洗浄し、10mLの100mM NaHCO;500mM NaCl;pH8.3で2回洗浄した。各固定化抗体に対して、100mM NaHCO;500mM NaCl;pH8.3中の950μL 0.5mg/mL抗−Aβ mMAb溶液に、100μL CNBr活性化セファロース4Bマトリクスを添加した。室温で2時間振盪後、10000gで5分間、試料を遠心した。次に、500μL 100mMエタノールアミン;100mM NaHCO;500mM NaCl;pH8.3緩衝液をビーズに添加し、試料を室温で1時間振盪した。抗−Aβ mMAb−セファロース試料を10000gで5分間遠心し、500μLの20mM NaHPO;140mM NaCl;pH7.4で5回洗浄した。6℃で保存する前に、0.02%最終濃度までアジ化ナトリウムを添加することにより試料を安定化した。
【0202】
免疫沈降:
a)mMAb 6E10−セファロース
b)mMAb 8P5−セファロース
200μL 20mM NaHPONaHPO;140mM NaCl;0.05%Tween20;pH7.4でヒト脳脊髄液試料200μLを希釈した。2μL 抗−Aβ mMAb−セファロースマトリクスにこれらの試料を添加し、室温で2時間撹拌した。これらの試料を10000gで5分間遠心した。上清を捨て、50μL PBSで抗−Aβ mMAb−セファロースを2回洗浄し、1分間撹拌し、遠心した(10000gで5分間)。上清を捨て、50μL 2mM NaHPONaHPO;14mM NaCl、pH7.4中でセファロースビーズを懸濁し、次いで、室温で1分間撹拌して、10000gで5分間遠心した。次の段階において、抗−Aβ mMAb−セファロースビーズを50μL 50%CHCN;0.2%TFA(水中)で処理した。室温で10分間振盪した後、試料を10000gで5分間遠心した。上清を回収し、1.5mLエッペンドルフチューブに移した。50μLの水と試料を混合し、スピードバック濃縮器中で蒸発させた。4μL 70%HCOOH中でペレットを再溶解し、室温で10分間振盪し、76μL 1M Tris溶液及び720μL 20mM NaHPONaHPO;140mM NaCl;0.05%Tween20;pH7.4で中和した。
【0203】
CSF中のAβ(1−40);(1−42)単量体型の判定のための試料:
a)免疫沈降を行わないCSF試料中のAβ含量:
342μLの20mM NaHPO;140mM NaCl;0.05%Tween20;pH7.4で158μLのCSFを希釈した。この1:3.16希釈液をサンドイッチELISAに対して用い、評価中に考慮に入れた。
b)免疫沈降後のCSF試料中のAβ含量:
上述の手順からの試料を分析に用いた。
【0204】
CSF中のAβ(1−40)の判定のために使用したサンドイッチ−ELISAプロトコール
試薬リスト:
1.F96 Cert.Maxisorp NUNC−Immuno Plateカタログ番号:439454
2.結合抗体抗
抗−Aβ mAbクローン6E10;Signetカタログ番号9320;濃度:0.4mg/mL Bradford(BioRad);−20℃で保存。
3.カップリング緩衝液:100mM炭酸水素ナトリウム;pH9.6
4.ELISA用ブロッキング試薬;Roche Diagnostics GmbHカタログ番号:1112589
5.PBST−緩衝液:20mM NaHPONaHPO;140mM NaCl;0.05%Tween20;pH7.4
6.Aβ(1−40)標準物質:Aβ(1−40)固形粉末;Bachemカタログ番号:H−1194;−20℃で保存。
7.一次抗体:抗−Aβ(1−40)ウサギpAb;アフィニティー精製;PBS中の溶液;濃度:0.039mg/mL;Signetカタログ番号9130−005;−20℃で保存。
8.標識試薬:抗−ウサギ−POD共役物;Fa.Jackson ImmunoResearchカタログ番号:111−036−045;
9.染色:TMB;Roche Diagnostics GmbHカタログ番号:92817060;DMSO中42mM;3%H水;100mM酢酸ナトリウムpH4.9
10.停止溶液 2Mスルホン酸
【0205】
試薬調製のために使用したプロトコール:
1.結合抗体:抗−Aβ mAb 6E10(Signet Inc、カタログ番号9320)を0.7μg/mLの最終濃度に希釈する。
2.ブロッキング試薬:ブロッキング保存溶液の調製のために、100mL HO中でブロッキング試薬を溶解させ、10mLずつ分注して−20℃で保存する。1枚のELISAプレートをブロッキングするために、ブロッキング保存溶液3mLを27mL HOで希釈する。
3.Aβ(1−40)単量体型標準希釈液:
A)Aβ(1−40)単量体標準保存液:250μL 0.1%NHOH中で0.5mg Aβ(1−40)を溶解。濃度:2mg/mL;新たに調製;すぐに使用。
B)995μL PBSTに5μL Aβ(1−40)−単量体標準保存液を添加=10μg/mL。
C)4995μL PBSTに5μLの10μg/mL Aβ(1−40)−単量体標準溶液を添加=10ng/mL。
標準曲線
【0206】
【表5】

【0207】
【表6】

4.一次抗体:PBST緩衝液中で抗−Aβ(1−40)pAb濃縮液を希釈。希釈係数は1/200=0.2μg/mL。すぐに使用。
5.二次抗体:凍結乾燥抗−ウサギ−POD共役物を0.5mL HO中で溶解し、500μLグリセロールと混合する。次に抗体濃縮液を100μLずつ分注して−20℃で保存する。この濃縮液をPBST緩衝液中で1:10,000希釈する。この抗体溶液をすぐに使用する。
6.TMB溶液:100mM酢酸ナトリウム、pH4.9 20mLを200μL TMB溶液及び3%過酸化水素29.5μLと混合する。この溶液をすぐに使用する。
【0208】
【表7】


【0209】
使用手順:
1.ウェルあたり100μLの結合抗体溶液を添加し、4℃で一晩インキュベート。
2.抗体溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
3.ウェルあたり260μLのブロッキング溶液を添加し、室温で2時間インキュベート。
4.ブロッキング溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
5.標準物質及び試料調製後、標準及び試料をウェルあたり100μLプレートに添加し、室温で2時間、及び4℃で一晩インキュベート。
6.標準/試料溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
7.ウェルあたり200μLの一次抗体溶液を添加し、室温で1.5時間インキュベート。
8.抗体溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
9.ウェルあたり200μLの標識溶液を添加し、室温で1時間インキュベート。
10.標識溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
11.各ウェルにTMB溶液100μLを添加し、室温でインキュベート(5−15分間)。
12.発色を観察し、停止溶液をウェルあたり50μL添加。
13.450nmで読み取り。
14.標準曲線から結果を計算。
15.評価。
未知試料からの吸光度が検量線の直線範囲にない場合、適切な試料希釈でELISAを繰り返す。
【0210】
CSF中のAβ(1−42)単量体型の測定のために使用するサンドイッチ−ELISAプロトコール
試薬リスト:
1.F96 Cert.Maxisorp NUNC−Immuno Plateカタログ番号439454
2.結合抗体:抗−Aβ mAbクローン6E10;Signetカタログ番号9320;濃度:0.4mg/mL Bradford(BioRad);−20℃で保存。
3.コーティング緩衝液:100mM 炭酸水素ナトリウム;pH9.6
4.ELISA用ブロッキング試薬;Roche Diagnostics GmbHカタログ番号:1112589
5.PBST−緩衝液:20mM NaHPONaHPO;140mM NaCl;0.05%Tween20;pH7.4
6.Aβ(1−42)標準物質:Aβ(1−42)固形粉末;Bachemカタログ番号:H−1368;−20℃で保存。
7.一次抗体:抗−Aβ(1−42)ウサギpAb;アフィニティー精製;ビオチン化;50%グリセロールを含むPBS中の溶液;濃度:0.25mg/mL;Signetカタログ番号9137−005;−20℃で保存。
8.標識試薬:抗−ウサギ−POD共役物;Fa.Jackson ImmunoResearch カタログ番号:111−036−045
9.染色:TMB;Roche Diagnostics GmbHカタログ番号:92817060;DMSO中42mM 3% H(水中)100mM酢酸ナトリウム、pH4.9
停止溶液:2Mスルホン酸
【0211】
試薬調製で使用する方法:
1.結合抗体:抗−Aβ mAbクローン6E10をコーティング緩衝液中で1:400希釈。
2.ブロッキング試薬:100mL水中でブロッキング試薬を溶解し、ブロッキング保存溶液を調製し、10mLずつ分注して−20℃で保存。各プレートをブロッキングするために、3mLブロッキング保存溶液を27mLの水で希釈。
3.Aβ(1−42)単量体型、標準希釈液:
Aβ(1−42)単量体標準保存液:250μL 0.1%NHOH中で0.5mg Aβ(1−42)を溶解;濃度:2mg/mL;新たに調製;すぐに使用。
995μL PBSTに5μLのAβ(1−42)−単量体標準保存液を添加=10μg/mL。
4995μL PBSTに5μLの10μg/mL Aβ(1−42)−単量体標準溶液を添加=10ng/mL。
【0212】
【表8】

【0213】
【表9】

【0214】
使用手順:
1.一次抗体:PBST緩衝液中で抗−Aβ(1−42)pAb濃縮液を希釈。希釈係数は1/1250=0.2μg/mL。すぐに使用。
2.標識試薬:0.5mLの水中で抗−ウサギ−POD共役物の凍結乾燥物を再構成。500μLグリセロールを添加し、さらなる使用のために、−20℃で100μLずつ分注して保存。
PBST−緩衝液中で濃縮標識試薬を希釈。希釈係数は1/5000。すぐに使用。
3.TMB溶液:20mLの100mM酢酸ナトリウム pH4.9をTMB溶液200μL及び29.5μL 3%過酸化水素水と混合。すぐに使用。
【0215】
【表10】

【0216】
使用手順:
1.ウェルあたり100μLの結合抗体溶液を添加し、4℃にて一晩インキュベート。
2.抗体溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
3.ウェルあたり260μLのブロッキング溶液を添加し、室温で2時間インキュベート。
4.ブロッキング溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
5.標準物質及び試料を調製後、標準物質及び試料をウェルあたり100μLプレートに添加。室温で2時間及び4℃で一晩インキュベート。
6.標準/試料溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
7.ウェルあたり200μLの一次抗体溶液を添加し、室温で1.5時間インキュベート。
8.抗体溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
9.ウェルあたり200μLの標識溶液を添加し、室温で1時間インキュベート。
10.標識溶液を捨て、250μL PBST−緩衝液でウェルを3回洗浄。
11.各ウェルにTMB溶液100μLを添加し、室温でインキュベート(5−15分間)。
12.染色を観察し、停止溶液をウェルあたり50μL添加。
13.450nmで読み取り。
14.標準曲線から結果を計算。
15.評価。
未知試料からの吸光度が検量線の直線範囲にない場合、適切な試料希釈でELISAを繰り返す。
【0217】
【表11】

【0218】
上記の結果から、次のことが示される:
a.6E10のような非球状凝集体選択的抗体と比較して、8F5(又は8C5)のような球状凝集体優先的抗体は、病状とは独立に、Aβ40に比してAβ42に選択的に結合する。Aβ40よりもAβ42を優先的に排除することは、AD治療(例えば、R−フルビロフェン、Flurizan(Myriad Inc.により公開された臨床治験でのAD治療において有効性が示されている。)の使用による。)における概念に従うので、この結果は、アルツハイマー病に対する奏功する治療であることを示す。この概念は、S.Weggenら(J Biol Chem.(2003)278(34):31831−7)により発表された。結果を図3で示す。
【0219】
b.8F5(又は8C5)のような球状凝集体優先的抗体は、健常者対照と比較して患者において、Aβ40よりもAβ42に非常によく結合する。上述のように、Aβ40よりもAβ42を優先的に排除することは、AD治療(例えばR−フルビプロフェンのような非ステロイド系抗炎症剤の使用による。)における概念として続くので、この結果から、アルツハイマー病に対する奏功する治療であることがさらによく示唆される(図3参照。)。
【0220】
B)球状凝集体非選択的抗体6E10と比較した、球状凝集体選択的抗−AβマウスMAB 8F5又は8C5を用いた免疫沈降後の、ヒトCSF中の内在性アミロイドβ(1−42)及びアミロイドβ(1−40)レベル:
b1)ダイナビーズM−280 ヒツジ抗−マウスIgGによる免疫沈降(IP)
Aβ−抗体溶液:標準的精製手順に従い、ハイブリドーマから次の純粋な抗体を得た:
−mMAb 6E10;Fa.Signet番号9320;PBS緩衝液中1mg/mL
−mMAb 8F5;PBS緩衝液中1.65mg/mL
−mMAb 8C5;PBS緩衝液中1.44mg/mL
ダイナビーズ M−280ヒツジ抗−マウスIgG:
ヒツジ抗−マウスIgG(Invitrogen Inc.、カタログ番号:112.02)を磁気ビーズ(ダイナビーズ)に共有結合させる。
モノクローナルマウス抗体によるダイナビーズの活性化
−ダイナビーズ(ダイナビーズ M−280 ヒツジ抗−マウスIgG、Invitrogen;製品番号112.02)の保存懸濁液を泡立たないよう慎重に振盪した。
−1mLを無菌的に取り、1.5mL反応バイアルに移した。
−1mL免疫沈降(IP)−洗浄緩衝液(IP−洗浄緩衝液:PBS(20mM NaHPO、140mM NaCl、pH7.4)、0.1%(w/v)BSA)でダイナビーズを5分間3回洗浄した。
−洗浄手順中、上清を慎重に除去し、一方、磁気選別機スタンド(MSS)を用いてダイナビーズを反応バイアルの側面に固定化した。
−1mL PBS、0.1%(w/v)BSA中の40μg Aβ−抗体とともに、洗浄したダイナビーズをインキュベートした。
−4℃で振盪しながら、一晩インキュベートすることにより活性化を行った。
−1mL IP−洗浄緩衝液(PBS(20mM NaHPO、140mM NaCl、pH7.4)、0.1%(w/v)BSA)で活性化ダイナビーズを30分、4回洗浄した(再びMSSを使用)。
−活性化ダイナビーズを1mL PBS、0.1%(w/v)BSA、0.02(w/v)%Na−アジドで再懸濁し;ボルテックスにかけ、短時間遠心した。
−さらなる使用まで、抗体活性化ダイナビーズを4℃で保存した。
【0221】
CSF試料調製:
アルツハイマー病患者からの400μL CSFを4μL完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Inc.カタログ番号:1697498、1mLの水中で1錠を溶解)に添加し、0.8μLの500mM PMSFをメタノール中で溶解した。10分後、1.6mLの20mM NaHPO、140mM NaCl、0.05%Tween20、pH7.4(PBST)を添加した。
【0222】
ヒトAD−CSFからのAβ種の免疫沈降:
25μLの抗−Aβ−ダイナビーズ懸濁液に調製済みCSF試料の250μL分注液を添加した。
−6℃にて16時間撹拌しながら免疫沈降させた。5分間、3回、1mL PBS/0.1%(w/v)BSAを用いて、最後に1mL 10mM Tris/HCl pH7.5緩衝液を用いて3分間、1回、続くビーズの洗浄を行った。洗浄手順中、上清を慎重に除去し、一方、磁気選別機スタンド(MSS)を用いてダイナビーズを反応バイアルの側面に固定化した。
【0223】
最後の洗浄段階後、残渣上清を完全に除去した。β−メルカプトエタノール不含の25μL試料緩衝液(0.36Mビストリス、0.16M Bicine、1%SDS(w/v)、15%(w/v)スクロース、0.004%(w/v)ブロモフェノールブルー)をエッペンドルフチューブに添加し、ヒートブロック中で95℃にて5分間加熱することにより、Aβペプチド及び対応する抗体をダイナビーズから除去した。室温に冷ました後、磁気選別機スタンド(MSS)を用いてダイナビーズを反応バイアルの側面に固定化し、上清を別のエッペンドルフチューブに移した(IP溶出液)。
【0224】
尿素−PAGEとそれに続くウエスタンブロット法によるAβ免疫沈降の分析:
H.W.Klafkiら、Analytical Biochemistry 237、24−29(1996)により最初に記載された手順及び後にJ.Wiltfangら、J.of Neurochemistry 81、481−496、2002によっても使用された手順に従う、8M尿素ポリアクリルアミドゲル電気泳動系及び続くウエスタンブロット分析により、Aβ1−40及びAβ1−42種の定量を行った。実験手順において2点のみ細かい変更を行った:
1)スタッキングゲル中のSDS濃度を0.1%(w/v)から0.25%(w/v)に調整した。
2)ウエスタンブロットに対して、抗体1E8(Senetek Drug Delivery Technologies Inc.St.Louis、Mo、USA)を抗−ヒトアミロイドβ(N)(82E1)マウスIgG mAb(IBL、カタログ番号:10323)に変更した。
【0225】
免疫沈降試料の15μL IP溶出液分注物を8M尿素PAGEに添加した。100V(15分間)で電気泳動を行い、60Vで続けた。青色の試料ローディング色素の一番先頭がゲルの末端から0.5cmになったところで電気泳動を停止した。
【0226】
ウエスタンブロット手順:
7.5cmx9cmニトロセルロース0.45μm(BioRad Inc.)上でセミドライブロットチャンバー(BioRad Inc.、75mAで45分間)においてウエスタンブロット分析を行った。
ブロッティング緩衝液:6g Tris;28.1gグリシン;500mLメタノール;水で2.5Lに調整。
【0227】
ニトロセルロースブロットを10分間100℃にてPBS中で煮沸した。RTで1時間、PBST中の50mL 5%(w/v)BSAを用いて処理することによりこのブロットを飽和させた。液相を除去後、次の洗浄段階を2回行った:RTで10分間、50mL TTBS(25mM Tris/HCl;150mM NaCl緩衝液;0.05%Tween20;pH7.5)を用いて、及び続いて、RTにて10分間、50mL TBS(25mM Tris/HCl;150mM NaCl緩衝液;pH7.5)を用いた。さらなる発色のために、最終洗浄緩衝液をブロットから捨て、15mLの抗体I溶液(0.2μg/mL 82E1=1:500(15mLの3%(w/v)スキムミルク粉末(Lasana Inc.)含有TBS中)を6℃で20時間添加した。緩衝液を除去した後、上述の3回の洗浄段階を行った。RTで1時間、抗体溶液II(抗−マウス−PODの1:10000希釈液(15mLの3%(w/v)スキムミルク粉末(Lasana Inc.)含有TBS中)とともにこのブロットをインキュベートした。緩衝液を除去した後、上述の3回の洗浄段階を行った。
【0228】
最後の洗浄緩衝液を除去した後、2mL Super Signal West Femto Maximum Sensitivity Substrate Enhancer及び2mL過酸化水素水を混合した。暗所で5分間プレインキュベートしたブロット上に新たに調製した溶液を注いだ。VersaDocイメージングシステム(BioRad)を用いて化学発光を記録した。
【0229】
イメージングパラメータ:
−露光時間180秒
30秒、60秒、120秒及び180秒後に画像を記録
露光時間が180秒の画像から結果を得た。
【0230】
【表12】

【0231】
上記の結果から、8F5又は8C5などの球状凝集体優先的抗体は、6E10などの非球状凝集体選択的抗体と比較して、ヒトCSF中のAβ40よりもAβ42によく結合することが示される。上述のように、Aβ40よりもAβ42を選択的に排除することは、AD治療(例えばR−フルビプロフェンの使用による(上記参照)。)における概念として続くので、この結果から、アルツハイマー病に対して奏功する治療であることが示唆される。
【0232】
(実施例V)
8F5は、APPトランスジェニックマウスにおいて新規物体認識を向上させる。
【0233】
抗体8F5で内部Aβ(1−42)球状凝集体エピトープを中和することによる、認知に対する陽性効果を試験するために、APPトランスジェニックマウスを用いた受動免疫付与実験を行い、この実験において、マウスが以前に探知した物体を記憶する能力についてマウスを試験した。ある程度の1回目と2回目の物体遭遇の間の遅延の後、APPトランスジェニックマウスは既に探知した物体を認識することができない。この実験は、動物の本来の好奇心に基づくものであり、既に探知した物体への関心を著しく欠くことは、物体認識を示す。
【0234】
(実施例V.1):
モノクローナル抗体8F5による認識指数の向上:
動物:3ヵ月齢の、FVBxC57B1バックグラウンド(APP/L、ReMYND、Leuven、Belgium)のアルツハイマー病の単一のトランスジェニックマウスモデルの雌マウス及び、FVBxC57B1バックグラウンドの野生型対照として陰性同腹仔を使用した。全マウスの遺伝子型を3週齢でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により調べ、PCRの結果が分かり、試験開始前に2回目のPCRによって二重にチェックした後、固有の識別番号を与えた。全マウスを無作為化し、齢をマッチさせ、即ち、コンピュータによってこれらに無作為の番号を与え、処置に対して無作為に割り振った。動物を新しいケージの状況に慣れさせるために試験開始18日前に処置群により動物をケージに入れた。前もってろ過した滅菌水(UVランプ)及び標準的なマウス餌を自由に摂取できるようにした。通気の良い貯蔵室の乾燥し涼しい状態下で餌を保管した。水及び餌の量を毎日調べ、必要な場合に補給し、1週間に2回新しいものに交換した。標準的な金属性ケージタイプRVS T2(面積540cm)において逆転昼−夜リズム:(午後7時から開始し、14時間明るくし/10時間暗くする。)でマウスを飼育した。このケージに固体床及び層状の敷料を備え付けた。ケージあたりのマウス数は動物福祉の法律に従い制限した。行動テスト開始の5日前に、マウスをマクロロンタイプ2ケージに移し、行動テストに備え、実験室環境に適応させるために実験室に運んだ。
【0235】
処置(受動免疫付与):
3種類の別個の実験を行い、これらの実験において、マウス(少なくとも1群あたり9匹)に対して第1、8及び15日に腹腔内注射(240μL/マウスで500μg)を行った。モノクローナル抗体6G1、8P5及びその他の非開示抗体(全てリン酸緩衝食塩水中で溶解)又は320μLリン酸緩衝食塩水でマウスを処置した。
【0236】
新規物体認識テスト:
3回目の処置日に新規物体認識テストを行った。使用したプロトコールは、Dewachterら(Journal of Neuroscience、2002、22(9):3445−3453)により記載の方法に従った。垂直壁が黒色で、床が半透明であり、ボックスの下に置かれたランプで薄暗い照明が当てられているプレキシグラスのオープンフィールドボックス(52x52x40cm)に1時間マウスを慣らした。翌日、動物を同じボックスに入れ、10分間の獲得試行を行った。この試行中、2個の同一の物体A(オレンジ色の樽又は緑色の立方体、±4cmの同様のサイズ)があるオープンフィールドにマウスを個別に入れ、持続時間(timeAA)及び物体Aを探る頻度(FreqAA)(動物の鼻が<1cmの距離で物体に向けられ、マウスが物体の方に向いて活発にスニッフィングしている場合)をコンピュータ化システムにより記録した(Ethovision、Noldus information Technology、Wageningen、Netherlands)。2.5時間後に行った10分間の想起試行(2回目の試行)の間、新規物体(物体B、緑色の立方体又はオレンジ色の樽)をオープンフィールドに既に馴染んだ物体(物体A)と一緒に置いた(それぞれ、Freq及びFreq及びTime及びTime)。両方の物体を探った持続時間に対する新規物体を探った持続時間の比[Time/(Time+Time)x100]として定義した認識指数(RI)を使用して、非空間的記憶を測定した。獲得試行中に物体Aを探った持続時間及び頻度(TimeAA及びFreqAA)を使用して、好奇心を測定した。
【0237】
全3種類の試験(図4)から、モノクローナル抗体6G1もしくは8F5又はリン酸緩衝食塩水投与を受けたAPPトランスジェニックマウス及びリン酸緩衝食塩水投与を受けた非トランスジェニック同腹仔を組み合わせることにより、データ解析を行った。古い物体と新規の物体とを区別しないマウスの認識指数は50である。古い物体を認識するマウスは、好ましくは新規物体を探り、従ってその認識指数は>50となる。新規物体を専ら探るマウスの認識指数は100である。群ごとの平均認識指数をチャンスレベル、即ち50、に対してt検定により比較した。全群の平均認識指数もANOVA及び、続いて事後t検定により比較した。PBSと野生型群との間の差から、このパラダイムにおいてAPPトランスジェニックマウスの認知障害が示唆された。PBS注射マウスは、チャンスレベルであったが(即ち、50と有意差はない。)が、一方、その他の全てのマウスは物体認識を示した(図4:星印)。抗体処置APPトランスジェニックマウスのパフォーマンスを対照群と比較したところ、PBS処置群に対しては有意差が見られたが、野生型マウスに対しては見られず(図4:丸印)、このことから、これらのAPPトランスジェニックマウスにおいて、抗体8F5での処置により認知障害が軽減したことが示唆される。
【0238】
(実施例VI)
老齢APPトランスジェニックマウス及びアルツハイマー病患者の髄膜血管におけるアミロイド斑及びアミロイドの形態での、原線維性アミロイドベータペプチドに対する抗体8F5及び8C5の特異的反応のインシトゥ分析
抗体8F5及び8C5の原線維性Aβペプチド沈着に対する染色性が低いことから、これらの治療効果には、Aβペプチドの原線維性沈着型ではなく可溶性球状型への結合が介在することが示唆される。原線維性Aβペプチドへ結合する抗体により、凝集体の分解が速くなり得、可溶性Aβ濃度が続いて上昇し得るので(言い換えると、神経毒性であると考えられ、微小出血を導き得る。)、単量体ではなく可溶性球状凝集体に影響を与える抗体療法が好ましい。
【0239】
方法:
これらの実験に対して、いくつかの脳物質試料を使用した:2名のAD患者(RZ16及びRZ55)からの皮質組織及び19ヵ月齢のTg2576マウス(APPSWE#001349、Taconic、Hudson、NY、USA)又は12ヵ月齢のAPP/Lマウス(ReMYND、Leuven、Belgium)からの皮質組織。
【0240】
これらのマウスは、ヒトAPPを過剰発現し、家族性アルツハイマー病突然変異があり、約11ヵ月齢での脳実質でβ−アミロイド沈着が形成され、約18ヵ月齢ではより大きい大脳血管においてβ−アミロイド沈着が形成される。これらの動物に深く麻酔をかけ、血液を流し出すために経心臓的に0.1Mリン酸緩衝食塩水(PBS)を灌流させた。次に、頭蓋から脳を取り出し、縦方向に分けた。この脳の一方の半球を瞬間凍結し、4%パラホルムアルデヒドに浸漬することにより他方を固定した。PBS中の30%スクロースに浸すことによって、浸漬固定した半球を凍結防止し、凍結ミクロトーム上に置いた。前脳全体を40μm横断切片に切り、PBS中に回収し、続く染色手順に対して使用した。アルツハイマー病患者からの新皮質試料をBrain−Net、Munich、Germanyから凍結試料として得て、凍結融解中に4%パラホルムアルデヒド中で浸漬固定し、次いでマウス組織のように処理した。
【0241】
次のプロトコールを使用して、コンゴレッドで個々の切片を染色した:
材料:
−アミロイド色素コンゴレッドキット(Sigma−Aldrich;HT−60)、これはアルコール性NaCl溶液、NaOH溶液及びコンゴレッド溶液から成る。
−染色キュベット
−顕微鏡スライド SuperfrostPlus及びカバースリップ
−エタノール、キシロール、包埋剤
試薬:
−NaCl溶液でNaOHを1:100希釈し、アルカリ性食塩水を得る。
−コンゴレッド溶液でアルカリ性食塩水を1:100希釈して、アルカリ性コンゴレッド溶液を得る(調製後15分以内に使用、ろ過)
−切片をスライド上に置き、乾燥させる。
−最初にアルカリ性食塩水中で30−40分間、次いでアルカリ性コンゴレッド溶液中で30−40分間、染色キュベット中でスライドをインキュベート。
【0242】
−新鮮なエタノールで3回すすぎ、キシロールで包埋。
【0243】
Zeiss Axioplan顕微鏡(Zeiss、Jena、Germany)を用いて染色を最初に写真撮影し、定量的に評価。赤色は、斑の形態及びより大きい髄膜血管の両方においてアミロイド沈着を示す。後に、抗体染色の評価はこれらの構造に焦点を当てた。
【0244】
次のプロトコールに従い、個々の抗体の0.07−0.7μg/mLを含有する溶液とともに切片をインキュベートすることにより、染色を行った。
材料
−TBS洗浄溶液(Tween20含有Tris緩衝食塩水;10x濃縮液;DakoCytomation S3306、DAKO、Hamburg、Germany)Aqua bidest中で1:10)
−メタノール中0.3%H
−ブロッキング血清として、ロバ血清(Serotec、Dusseldorf、Germany)、TBST中5%
−TBST中で一定濃度に希釈したモノクローナルマウス−抗−球状凝集体抗体
−二次抗体:ビオチン化ロバ−抗−マウス抗体(Jackson Immuno/Dianova、Hamburg、Germany;715−065−150;TBST中で1:500に希釈)
−StreptABComprex(DakoCytomation K0377、DAKO、Hamburg、Germany)
−ペルオキシダーゼ基質キットジアミノベンジジン(=DAB;SK−4100;Vector Laboratories、Burlingame、CA、USA)
−SuperFrost Plus顕微鏡スライド及びカバースリップ
−キシロール不含包埋剤(Medite、Burgdorf、Germany;X−tra Kitt)
手順:
−浮いている切片を氷冷0.3%Hに移し、30分間インキュベート
−TBST緩衝液中で5分間洗浄
−ロバ血清/TBSTとともに20分間インキュベート
−一次抗体とともに室温で24時間インキュベート
−TBST緩衝液中で5分間洗浄
−ブロッキング血清とともに20分間インキュベート
−TBST緩衝液中で5分間洗浄
−二次抗体とともに周囲温度で60分間インキュベート
−TBST緩衝液中で5分間洗浄
−StreptABComprexとともに周囲温度で60分間インキュベート
−TBST緩衝液中で5分間洗浄
−DABとともに20分間インキュベート
−切片をスライド上に載せ、スライドを風乾させ、アルコールでスライドを脱水してスライドを包埋
【0245】
顕微鏡下での切片の視覚的な観察以外に、ImagePro5.0画像解析システムを用いて組織学的画像から無作為に選択した10個の斑を光学的に摘出し、その平均グレースケール値を調べることにより、さらにアミロイド染色を定量した。光学密度値は、染色物質の平均バックグラウンド密度をアミロイド斑の密度から差し引くことにより、グレースケール値から計算した(0%−周囲バックグラウンドを上回る斑染色なし、100%−透過なし/最高染色)。ANOVAを用いて、それぞれ抗体6E10/4G8と6G1、8C5及び8F5との間の差を統計的有意差について検定した。
【0246】
結果:
記載の全抗体染色物質がコンゴ染色性のアミロイド沈着であることが分かった(図7(A))。球状凝集体優先的抗体8F5及び8C5は、実質及び髄膜のAβペプチドの好コンゴ性の沈着の染色が抗体6G1及び6E10よりも有意に少なかった(図7(B)−(C)、(H))。実質アミロイド斑染色の定量的分析から、全ての抗体が斑に結合することが明らかになったが(対照を上回る統計的に有意な密度)、抗体8F5及び8C5の結合は、参照抗体6E10(AβのN−末端配列に対して作製)の結合よりも有意に低く、参照抗体4G8(AβのN−末端配列に対して作製)以下であった(図7(D)−図(G))。抗体8F5及び8C5は、Aβ単量体又はAβ配列の一部を認識する抗体よりもアミロイド沈着への結合が少ない。原線維性Aβペプチドに結合する抗体での処置によって、脳組織においてアミロイド斑が急速に分解し、次いで可溶性Aβ濃度が上昇し得(これは、言い換えると、神経毒性であると考えられ、微小出血を引き起こし得る。)及び/又は血管アミロイドが急速に分解し得る(これもまた、微小出血を引き起こし得る。)。従って、単量体でなはく可溶性球状凝集体に影響を与える抗体療法が好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイドベータタンパク質単量体に対してよりもアミロイドベータ(Aβ)タンパク質球状凝集体に対して高い特異性で結合する単離抗体。
【請求項2】
モノクローナルである、請求項1に記載の単離抗体。
【請求項3】
前記球状凝集体及び前記単量体に対する結合特異性の比が少なくとも1.4である、請求項2に記載の単離抗体。
【請求項4】
前記比が1.4から16.9である、請求項3に記載の単離抗体。
【請求項5】
前記アミロイドベータタンパク質単量体が、Aβ(1−42)単量体及びAβ(1−40)単量体からなる群から選択される、請求項4に記載の単離抗体。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体が、American Type Culture Collection指定番号PTA−7238又はPTA−7407を有するハイブリドーマにより産生される、請求項5に記載の単離抗体。
【請求項7】
American Type Culture Collection指定番号PTA−7238を有するハイブリドーマ。
【請求項8】
請求項7に記載のハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体(8F5)。
【請求項9】
配列番号1によりコードされる可変重鎖を含むモノクローナル抗体。
【請求項10】
ヒト又はヒト化である、請求項9に記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
配列番号2によりコードされる可変軽鎖を含むモノクローナル抗体。
【請求項12】
ヒト又はヒト化である、請求項11に記載のモノクローナル抗体。
【請求項13】
配列番号1によりコードされる可変軽重鎖をさらに含む、請求項11に記載のモノクローナル抗体。
【請求項14】
ヒト又はヒト化である、請求項13に記載のモノクローナル抗体。
【請求項15】
配列番号3を含むモノクローナル抗体。
【請求項16】
ヒト又はヒト化である、請求項15に記載のモノクローナル抗体。
【請求項17】
配列番号4を含むモノクローナル抗体。
【請求項18】
ヒト又はヒト化である、請求項17に記載のモノクローナル抗体。
【請求項19】
配列番号3をさらに含む、請求項17に記載のモノクローナル抗体。
【請求項20】
ヒト又はヒト化である、請求項19に記載のモノクローナル抗体。
【請求項21】
アミロイドベータタンパク質原線維に対してよりもアミロイドベータタンパク質球状凝集体に対して高い特異性で結合する単離抗体。
【請求項22】
モノクローナルである、請求項22に記載の単離抗体。
【請求項23】
前記モノクローナル抗体がAmerican Type Culture Collection指定番号PTA−7238又はPTA−7407を有するハイブリドーマにより産生される、請求項23に記載の単離抗体。
【請求項24】
American Type Culture Collection指定番号PTA−7407を有するハイブリドーマ。
【請求項25】
請求項24に記載のハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体(8C5)。
【請求項26】
配列番号11によりコードされる可変重鎖を含むモノクローナル抗体。
【請求項27】
ヒト又はヒト化である、請求項26に記載のモノクローナル抗体。
【請求項28】
配列番号12によりコードされる可変軽鎖を含む、モノクローナル抗体。
【請求項29】
ヒト又はヒト化である、請求項28に記載のモノクローナル抗体。
【請求項30】
配列番号11によりコードされる可変軽鎖をさらに含む、請求項28に記載のモノクローナル抗体。
【請求項31】
ヒト又はヒト化である、請求項30に記載のモノクローナル抗体。
【請求項32】
配列番号19を含む、モノクローナル抗体。
【請求項33】
ヒト又はヒト化である、請求項32に記載のモノクローナル抗体。
【請求項34】
配列番号20を含む、モノクローナル抗体。
【請求項35】
ヒト又はヒト化である、請求項34に記載のモノクローナル抗体。
【請求項36】
可変重鎖を含むモノクローナル抗体(該可変重鎖は、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。)。
【請求項37】
可変軽鎖を含むモノクローナル抗体(該可変軽鎖は、配列番号16、配列番号17及び配列番号18からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む。)。
【請求項38】
可変重鎖をさらに含む、請求項37に記載のモノクローナル抗体(該可変重鎖は、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む。)。
【請求項39】
可変重鎖を含むモノクローナル抗体(該可変重鎖は、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。)。
【請求項40】
可変軽鎖を含むモノクローナル抗体(該可変軽鎖は、配列番号8、配列番号9及び配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む。)。
【請求項41】
可変重鎖をさらに含む、請求項40に記載のモノクローナル抗体(該可変重鎖は、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択される少なくとも1つのCDRを含む。)。
【請求項42】
アルツハイマー病の治療又は予防を達成するのに十分な量でアルツハイマー病の治療又は予防を必要とする患者に請求項1又は請求項6に記載の単離抗体を投与することを含む、アルツハイマー病の治療又は予防を必要とする患者においてアルツハイマー病を治療又は予防する方法。
【請求項43】
前記単離抗体が、筋肉内投与、静脈内投与及び皮下投与からなる群から選択される経路を介して投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
a.アルツハイマー病を有する疑いのある患者から生体試料を単離する段階;b.抗原/抗体複合体の形成に十分な時間及び条件下で、請求項1又は請求項6に記載の単離抗体と該生体試料を接触させる段階;c.該試料中の該抗原/抗体複合体の存在(該複合体の存在は、該患者におけるアルツハイマー病の診断を示す。)を検出する段階を含む、アルツハイマー病を有する疑いのある患者においてアルツハイマー病を診断する方法。
【請求項45】
前記抗原が球状凝集体である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
a.アルツハイマー病を有する疑いのある患者から生体試料を単離する段階;b.抗体/抗原複合体の形成に十分な時間及び条件下で、抗原と該生体試料を接触させる段階;c.共役物を結合抗体に結合させるのに十分な時間及び条件下で、得られた抗体/抗原複合体に共役物を添加する段階(該共役物は、請求項1又は請求項6に記載の単離抗体を含み、検出可能なシグナルを生成することができるシグナル生成化合物に結合されている。);d.該シグナル生成化合物により生成されたシグナルを検出することにより、該生体試料中に存在し得る抗体の存在を検出する(該シグナルは、該患者においてアルツハイマー病の診断を示す。)段階を含む、アルツハイマー病を有する疑いのある患者においてアルツハイマー病を診断する方法。
【請求項47】
前記抗原が球状凝集体である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
a.アルツハイマー病を有する疑いのある患者から生体試料を単離する段階;b.抗−抗体/抗体複合体(該複合体は該生体試料中に存在する抗体を含有する。)の形成を可能にするのに十分な時間及び条件下で、抗−抗体と該生体試料を接触させる段階(該抗−抗体は、請求項1又は請求項6に記載の抗体に特異的である。);c.共役物を結合抗体に結合させるのに十分な時間及び条件下で、得られた抗−抗体/抗体複合体に共役物を添加する段階(該共役物は、抗原を含み、これは検出可能なシグナルを生成することができるシグナル生成化合物に結合されている。);d.該シグナル生成化合物により生成されるシグナルを検出する(該シグナルは、該患者においてアルツハイマー病の診断を示す。)段階を含む、アルツハイマー病を有する疑いのある患者においてアルツハイマー病を診断する方法。
【請求項49】
請求項1又は請求項6に記載の単離抗体を含有する組成物。
【請求項50】
アルツハイマー病の予防又は治療を達成するのに十分な量でアルツハイマー病の予防又は治療を必要とする患者に請求項49に記載の組成物を投与する段階を含む、アルツハイマー病の予防又は治療を必要とする患者においてアルツハイマー病を予防又は治療する方法。
【請求項51】
請求項1又は請求項6に記載の単離抗体と、医薬的に許容可能なアジュバントと、を含有するワクチン。
【請求項52】
アルツハイマー病の予防又は治療を達成するのに十分な量でアルツハイマー病の予防又は治療を必要とする患者に請求項51に記載のワクチンを投与する段階を含む、アルツハイマー病の予防又は治療を必要とする患者においてアルツハイマー病を予防又は治療する方法。
【請求項53】
a)関心のある1以上の化合物が請求項1又は請求項6に記載の単離抗体に結合するのに十分な時間及び条件下で、関心のある1以上の化合物を請求項1又は請求項6に記載の単離抗体に曝露する段階;b)請求項1又は請求項6に記載の単離抗体に結合する化合物を同定する(同定された化合物は、アルツハイマー病を発現すると予測される患者での能動免疫化において使用される。)段階を含む、アルツハイマー病が発現することが予測される患者の能動免疫化に適切な化合物を同定する方法。
【請求項54】
a)請求項1又は請求項6に記載の単離抗体と、b)シグナル生成化合物に結合された抗体を含む共役物(該共役物の該抗体は前記単離抗体とは異なる。)と、を含む、キット。
【請求項55】
a)請求項1又は請求項6に記載の単離抗体に対する抗−抗体と、b)シグナル生成化合物に結合された抗原を含む共役物と、を含む、キット。
【請求項56】
前記抗原が球状凝集体である、請求項55に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2013−47228(P2013−47228A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−208727(P2012−208727)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【分割の表示】特願2008−543522(P2008−543522)の分割
【原出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【出願人】(502104228)アボット ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (89)
【Fターム(参考)】