説明

モノクローナル抗体生成におけるアジュバントとしてのプロスタグランジンE2(PGE2)

本発明は、宿主における免疫応答を高めるための新規アジュバントとしてのPGE2を提供し、ならびに、B細胞応答を高めかつそれにより所定の免疫原に対する抗体力価を増大するためのPGE2の使用方法、および本発明の最低1種の方法により製造された抗体もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の製造において補助するための宿主における免疫応答を高めるためのアジュバントとしてのPGE2の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用剤としてのモノクローナル抗体(mAb)の使用は多様な疾患の処置のための有効なアプローチとなってきた。加えて、mAbは多様な疾患の免疫病因論のより良好な理解を得るための強力なツールである。mAbの標準的生成方法は、免疫したBalb/cマウスから収集したリンパ節細胞若しくは脾細胞と骨髄腫細胞を融合することよりなる。Balb/cマウスは、それらが容易に入手可能であるためにmAbを生じさせるための選択すべき宿主を代表する。より重要なことに、外来のT依存性抗原で感作したBalb/cマウスにおける免疫応答は、それらのT細胞由来サイトカイン産生のTh2様表現型への極性化を特徴とする。このTh2様応答は高レベルの抗原特異的Abの生成に随伴し、これは抗原特異的B細胞クローンの頻度の増大およびmAbを得るためのB細胞融合後のハイブリッドの数の増大と相関する。
【0003】
しかしながら、多くの免疫原はマウスにおいて十分な抗体応答を誘発することが可能でない。これは、免疫原に対する抗体を産生するB細胞がわずかしか存在せず、ハイブリドーマを形成した後にこれらの細胞株を単離することを困難にすることを意味している。該低抗体応答は、該免疫原が免疫原に特異的なB細胞クローンを認めうる程度まで増殖させるのに十分なT細胞ヘルプを導き出さないため生じる。加えて、数種の免疫原に対するmAbの生成は反復注入後の毒性の問題により困難であることを示す。
【0004】
免疫原に対する抗体を産生するB細胞の数を増大させるために、免疫原に対して向上した抗体応答を引き起こすアジュバントをしばしば使用する。アジュバントは、免疫原とともに投与される場合により高い抗体力価を生じかつ宿主応答を延長するように免疫系の応答を高める化合物である。一般に使用されるアジュバントは、油中水乳剤よりなるフロイントの不完全アジュバント、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の添加とともにフロイントの不完全アジュバントの成分を含んでなるフロイントの完全アジュバント、およびミョウバンを包含する。しかしながら、規制当局はそれらの重大な副作用によりある種のアジュバントの使用を妨げる。さらに、これらのアジュバントは外来の免疫原に対する体液性応答を刺激し得る一方、それらはまた数種のタンパク質免疫原を変性もする。これは生物活性抗体の生成のための重要な免疫原エピトープのプロセシングおよび提示に影響し得る。従って、これらの問題のもう1つを克服する新たなアジュバントを提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
一つのアスペクトにおいて、本発明は宿主における免疫応答を高めるための新規アジュバントとしてのPGE2を提供する。一態様において、本発明は動物におけるB細胞応答を高めるためのアジュバントとしてのPGE2を提供する。
【0006】
別のアスペクトにおいて、本発明は宿主における所定の免疫原に対する免疫応答を高める方法を提供する。一態様において、該方法は目的の免疫原および有効補助量(adjuvanting amount)のPGE2を宿主に投与することを含んでなる。本発明の方法により高められる免疫応答はB細胞応答であることができ、および、増大された抗体力価により例示されうる。
【0007】
別のアスペクトにおいて、本発明は免疫原に対する抗体の改良された製造方法を提供し、該方法は、免疫原および有効補助量のPGE2を投与してそれにより該免疫原に対する免疫応答を増大させること、および該免疫原と特異的に反応性である抗体若しくは抗体を産生する細胞についてスクリーニングすることを含んでなる。本発明の方法は抗体のより効率的な生成方法を提供する。従って、別のアスペクトにおいて、本発明は本発明の改良された方法を使用して製造される抗体を提供する。本発明を使用して製造される抗体は治療、診断および/若しくは研究目的に使用し得る。
【0008】
[発明の詳細な記述]
本明細書に引用される全部の刊行物若しくは特許は、それらが本発明の時点での従来技術を示すため、ならびに/若しくは本発明の記述および実施可能性(enablement)を提供するために、引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる。
【0009】
本発明は、宿主における免疫応答を高めるのに効果的に使用し得る新規アジュバントとしてのPGE2を提供する。高められる免疫応答はB細胞応答でありうる。一態様において、本発明は、マウスにおける所定の免疫原に対する抗体力価を増大させるためのアジュバントとしてのPGE2を提供する。
【0010】
PGE2は多様な細胞型により産生されるアラキドン酸(AA)代謝物である。それは内分泌、心血管、胃腸、神経、生殖器および免疫系における広範な生理学的活動を調節し、ならびに局所恒常性を維持する。PGE2合成は3段階で起こる。第一にAAがホスホリパーゼA2の作用を介して膜リン脂質から遊離される。次に、AAがPGG2に、およびその後PGH2にシクロオキシゲナーゼ1および2(Cox−1およびCox−2)により転化される。最後にPGH2が終末(terminal)PGE合成酵素によりPGE2に異性化される。
【0011】
免疫系において、PGE2は主に単球、マクロファージおよび樹状細胞のようなAPCにより産生される。PGE2はTh1関連免疫応答に対し抑制性である。それはTh1クローンによるIL−2およびIFN−γ産生を抑制するがしかしTh2クローンによるIL−4およびIL−5産生を抑制しない。ナイーブなT細胞の分化期に、PGE2はcAMP蓄積を介してTh1の分化およびIL−12R発現を阻害する。PGE2はAPCによるLPS誘発性IL−12産生を抑制するがしかしIL−10産生を高める。B細胞では、PGE2はin vitroでIL−4およびLPSで刺激したB細胞によるIgE産生を高める。PGE2がTh2応答の生成における重要な演者として今や発見されている。
【0012】
本明細書で使用されるところの「免疫原」という用語は、被験体において免疫応答を潜在的に導き出し得るいかなる分子も意味している。数種の免疫原はアジュバントの非存在下に投与される場合に免疫応答を導き出さないため、「免疫原」という用語はアジュバントと共投与される場合にのみ免疫応答を導き出す分子を包含する。
【0013】
本明細書で使用されるところの「アジュバント」という用語は、免疫原の免疫刺激特性を高める物質を指す。アジュバントは、抗体力価、応答持続時間、アイソタイプ、アビディティーおよび免疫の他の特性に影響する能力を有する。アジュバントの使用は独力で弱く免疫原性である多くの免疫原に好ましいか若しくは必要である。アジュバントは多数の異なる機構により作用しうる。現在既知のかつ/若しくは利用されるアジュバントは毒性およびアレルギー誘発効果により制限されるか、若しくは製造するのが極めて高価である。
【0014】
本明細書で使用されるところの、免疫原に対する免疫応答に関する「高めること」若しくは「高められた」という用語は、該免疫原に対する免疫応答を増大、強化若しくは誘導することを記述する。本発明において、アジュバントとしてのPGE2は、強免疫原に対してのみならずしかしまた困難な/名目上の(nominal)免疫原に対する免疫応答も高める。
【0015】
本明細書で使用されるところの「抗体」という用語はポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を包含する。一般に、抗体は特定の一免疫原に対する結合特異性を表すタンパク質若しくはポリペプチドである。無傷の抗体は2本の同一のL鎖および2本の同一のH鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。典型的に、各L鎖は1個の共有ジスルフィド結合により1本のH鎖に連結される一方、ジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプのH鎖間で変動する。各HおよびL鎖はまた規則的に間隔を空けられた鎖間ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は一端に可変ドメイン(VH)次いで多数の定常ドメインを有する。各L鎖は一端に可変ドメイン(VL)およびその他端に1個の定常ドメインを有し;L鎖の定常ドメインはH鎖の第一の定常ドメインと整列され、およびL鎖可変ドメインはH鎖の可変ドメインと整列される。いかなる脊椎動物種の抗体L鎖も、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき2種の明確に異なる型すなわちκおよびλの一方に帰属し得る。
【0016】
免疫グロブリンはH鎖定常ドメインのアミノ酸配列に依存して5個の主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに帰属し得る。IgAおよびIgGはアイソタイプIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4としてさらに細分される。
【0017】
本明細書で使用されるところの「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は特定の一エピトープに対する単一結合特異性およびアフィニティーを表す。モノクローナル抗体は、マウス、ヒト、ヒト化およびキメラモノクローナル抗体を包含する。
【0018】
本発明は、宿主における所定の免疫原に対する免疫応答を高める方法もまた提供する。一態様において、該方法は、目的の免疫原および有効補助量のPGE2を宿主に投与することを含んでなる。本発明の方法により高められる免疫応答はB細胞応答であることができ、そして増大された抗体力価により例示されうる。
【0019】
本明細書で使用されるところの「有効補助量」という用語は、免疫原と同時に若しくは続けて投与される場合に、該免疫原単独で得られる効果の増強を生じるか、若しくは、あるいは、該免疫原に対する免疫応答を誘導するアジュバントの量を指す。当業者はある種の免疫原を補助するためのPGE2の適する量を容易に決定することが可能であることが期待される。こうした量は、典型的に、免疫原の性質、免疫原の投薬量、宿主の種および身体状態ならびに投与経路に依存することができる。例えば、本明細書に記述されるPGE2の有効補助量は、限定されるものでないが0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30nmol、あるいは、限定されるものでないが0.01〜10nmol、0.05〜5nmol、0.1〜2nmol、0.5〜0.9nmol、0.1〜1.0、0.01〜0.05、0.05〜0.1、0.1〜0.5、0.6〜1.0、1〜5、5〜10、10〜20、20〜30nmolまたはその中のいずれかの範囲若しくは値を挙げることができるその中のいずれかの範囲若しくは値を挙げることができる、約0.1nmolから約10nmolまでの範囲にわたることが
できる。
【0020】
PGE2は免疫原と同時に若しくは続けて投与しうる。PGE2を免疫原と同時に投与する場合、免疫原およびPGE2双方が同一組成物の一部を形成し得る。あるいは、PGE2の補助効果はPGE2を免疫原と別個に投与することにより使用しうる。別個に投与される場合、PGE2は好ましくは生理的食塩水若しくはPBSのような適する担体中で提供される。PGE2は免疫原と同時に、または、あるいは、免疫原投与の前若しくは後に投与しうる。免疫原およびPGE2の投与の間の時間間隔は免疫原に依存する。
【0021】
免疫原は該免疫原の免疫化スケジュールに従って投与する。例えば、効果的免疫応答を導き出すのに十分な量の免疫原の単回投与を使用しうる。あるいは、免疫原の初回投与、次いで1回若しくはそれ以上の追加免疫という他の投与計画を使用しうる。免疫原の複数回投与が望ましい場合、PGE2は、最初の投与内のみで若しくは計画された投与の全部でのいずれでも免疫原とともに投与し得る。投与は、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内、皮内若しくは足蹠注入によりのようないかなる適する経路も介しうる。
【0022】
本発明は免疫原に対する抗体の改良された製造方法をさらに提供し、該方法は、目的の免疫原および有効補助量のPGE2を投与すること、およびそれにより該免疫原に対する免疫応答を増大させること、ならびに該免疫原と特異的に反応性である抗体若しくは抗体を産生する細胞についてスクリーニングすることを含んでなる。
【0023】
引用:本明細書で引用される全部の刊行物若しくは特許は、それらが本発明の時点で従来技術を示すため、ならびに/若しくは本発明の記述および実現可能性を提供するために引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる。刊行物は、いかなる学術刊行物若しくは特許公開、または全部の記録、電子若しくは印刷形式を包含するいずれかの媒体形式で入手可能ないかなる他の情報も指す。以下の参考文献は引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる:Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley &
Sons,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(1987−2006);Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);HarlowとLane、Antibodies,a Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);Colliganら編、Current Protocols in Immunology、John Wiley &
Sons,Inc.、ニューヨーク(1994−2006);Colliganら、Current Protocols in Protein Science、John
Wiley & Sons、ニューヨーク州ニューヨーク(1997−2006)。
【0024】
一般に抗体の製造および特徴付け手段は当該技術分野で公知である(例えば、Ausubel、HarlowとLane、およびColligan、上記。しかしながら、ある種の免疫原は免疫学的に潜在的であり、そして一般に宿主に与えられる場合に満足な抗体応答を導き出さない。本発明は、免疫原に対する抗体応答を促進するように標準的方法を操作し得る抗体の改良された製造方法を提供する。
【0025】
本発明のポリクローナル抗体を製造するため、宿主に免疫原および有効補助量のPGE2を投与する。抗血清を宿主から収集する。広範な動物種を抗血清の製造に使用し得る。典型的には、抗血清の製造に使用される動物はウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット若しくはヤギである。ポリクローナル抗体の製造は、免疫化後の多様な時点で免疫した動物の血液をサンプリングすることによりモニターしうる。1回若しくはそれ以上の追加免疫注入もまた与えうる。追加免疫および力価測定(titering)の過程を
適する力価が達成されるまで反復する。例えばColligan、第2章、上記(引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)を参照されたい。
【0026】
本発明のモノクローナル抗体を製造するため、宿主に免疫原および有効補助量のPGE2を投与する。典型的にはマウスおよびラットのようなげっ歯類を使用しうる。免疫化後に抗体を産生するための能力をもつ体細胞、具体的にはBリンパ球(B細胞)をmAb生成プロトコルでの使用に選択する。これらの細胞は生検した脾、扁桃若しくはリンパ節または末梢血サンプルから得ることができる。
【0027】
免疫した動物からの抗体産生Bリンパ球をその後不死骨髄腫細胞株の細胞と融合する。ハイブリドーマを生じる融合処置での使用に適する骨髄腫細胞株は、好ましくは抗体を産生せず、高い融合効率、および所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支援するある種の選択培地中でそれらが増殖することを不可能にする酵素欠損を有する。例えば、免疫される動物がマウスである場合、P3−X63/Ag8、X63−Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulを使用しうる。
【0028】
抗体を産生する脾若しくはリンパ節細胞および骨髄腫細胞のハイブリッドの生成方法は当該技術分野で公知である。一般に、体細胞を2:1の比率で骨髄腫細胞と混合するとは言え、該比率は、細胞膜の融合を促進する剤(1種若しくはそれ以上、化学的若しくは電気的)の存在下でそれぞれ約20:1から約1:1まで変動しうる。センダイウイルスを使用する融合方法がKohlerとMilstein(1975;1976)により、および、37%(v/v)PEGのようなポリエチレングリコール(PEG)を使用するものがGefterら(1977)により記述されている。電気で誘発される融合法の使用もまた適切である(Goding pp.71−74、1986)。
【0029】
ハイブリドーマの集団を選択培地で培養しそして特定のハイブリドーマを選択する。典型的には、ハイブリドーマの選択は、マイクロタイタープレート中で単一クローン希釈により細胞を培養すること、次いで個々のクローンの上清(約2ないし3週後)を所望の反応性について試験することにより実施する。該アッセイは、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、細胞傷害性アッセイ、プラークアッセイ、ドット免疫結合アッセイなどでありうる。
【0030】
抗体産生細胞は、目的の抗原で免疫したヒト若しくは他の適する動物の末梢血または好ましくは脾若しくはリンパ節からもまた得ることができる。本発明の抗体、指定されるフラグメント若しくはそれらのバリアントをコードする異種若しくは内因性核酸を発現させるためのいかなる他の適する宿主細胞もまた使用し得る。融合細胞(ハイブリドーマ)若しくは組換え細胞は、選択的培養条件若しくは他の適する既知の方法を使用して単離し得、そして限界希釈若しくは細胞分取または他の既知の方法によりクローン化し得る。所望の特異性をもつ抗体を産生する細胞は適するアッセイ(例えばELISA)により選択し得る。
【0031】
必須の特異性の抗体の他の適する製造若しくは単離方法は当該技術分野(例えばColligan、HarlowとLane、Ausubel、上記(それらのそれぞれは引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)を参照されたい)で既知のとおり使用し得る。
【0032】
ヒト以外若しくはヒト抗体の工作若しくはヒト化方法もまた使用することができ、そして当該技術分野で公知である。一般に、ヒト化若しくは工作した抗体はヒト以外、例えば、限定されるものでないがマウス、ラット、ウサギ、ヒト以外の霊長類若しくは他の哺乳
動物である供給源からの1個若しくはそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらのヒトアミノ酸残基はしばしば「輸入」残基と称され、それらは典型的に既知のヒト配列の「輸入」可変、定常若しくは他のドメインから採られる。既知のヒトIg配列は当該技術分野で公知であり、そしていずれの既知の配列でもあり得る。例えば、限定されるものでないがKabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S.Dept.Health(1983)ならびにPCT公開第WO 05/33029号、および2004年6月21日に出願された米国特許第US 10/872,932号(引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)を参照されたい。
【0033】
こうした輸入された配列は、当該技術分野で既知のとおり、免疫原性を低下、または結合、アフィニティー、オン速度(on−rate)、オフ速度(off−rate)、アビディティー、特異性、半減期若しくはいずれかの他の適する特徴を低下する、高める若しくは改変するのに使用し得る。一般に、ヒト以外若しくはヒトCDR配列の一部若しくは全部が維持される一方、可変および定常領域のヒト以外配列がヒト若しくは他のアミノ酸で置き換えられる。抗体はまた、場合によっては抗原に対する高アフィニティーおよび他の好都合な生物学的特性の保持を伴いヒト化もし得る。この最終目標を達成するため、ヒト化抗体は、場合によっては、親およびヒト化配列の三次元モデルを使用する親配列および多様な概念的ヒト化生成物の解析の過程により製造し得る。三次元の免疫グロブリンモデルは一般に入手可能でありかつ当業者になじみがある。選択された候補免疫グロブリン配列のありそうな三次元コンホメーション構造を具体的に説明しかつ表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示の検査は候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の解析、すなわちその抗原を結合する候補免疫グロブリンの能力に影響する残基の解析を可能にする。こうして、標的抗原(1種若しくは複数)に対する増大されたアフィニティーのような所望の抗体の特徴が達成されるように、コンセンサスおよび輸入配列からFR残基を選択かつ組合せ得る。一般に、CDR残基は抗原結合に直接かつ最も実質的に影響することに関与する。本発明の抗体のヒト化若しくは工作は、限定されるものでないが、Winter(Jonesら、Nature 321:522(1986);Riechmannら、Nature 332:323(1988);Verhoeyenら、Science 239:1534(1988))、Simsら、J.Immunol.151:2296(1993);ChothiaとLesk、J.Mol.Biol.196:901(1987)、Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Prestaら、J.Immunol.151:2623(1993)、米国特許第:5723323号、同第5976862号、同第5824514号、同第5817483号、同第5814476号、同第5763192号、同第5723323号、同第5,766886号、同第5714352号、同第6204023号、同第6180370号、同第5693762号、同第5530101号、同第5585089号、同第5225539号;同第4816567号、PCT/:第US98/16280号、同第US96/18978号、同第US91/09630号、同第US91/05939号、同第US94/01234号、同第GB89/01334号、同第GB91/01134号、同第GB92/01755号;第WO90/14443号、同第WO90/14424号、同第WO90/14430号、第EP 229246号、Colligan、Ausubel、HarlowとLane、上記(それぞれ引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)、その中で引用される包含される参考文献に記述されるものを挙げることができるいずれかの既知の方法を使用して実施し得る。
【0034】
抗体は、場合によっては、本明細書に記述されかつ/若しくは当該技術分野で既知のところのヒト抗体のレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ヒト以外の霊長類など)の免疫化によってもまた生成し得
る。所望の抗体を産生する細胞をこうした動物から単離し得、そして本明細書に記述される方法のような適する方法を使用して不死化し得る。
【0035】
ヒト抗原に結合するヒト抗体のレパートリーを産生し得るトランスジェニックマウスは既知の方法により製造し得る(例えば、限定されるものでないが、Lonbergらに交付された米国特許第:5,770,428号、同第5,569,825号、同第5,545,806号、同第5,625,126号、同第5,625,825号、同第5,633,425号、同第5,661,016号および同第5,789,650号、;Jakobovitsら 第WO 98/50433号、Jakobovitsら 第WO 98/24893号、Lonbergら 第WO 98/24884号、Lonbergら 第WO 97/13852号、Lonbergら 第WO 94/25585号、Kucherlapateら 第WO 96/34096号、Kucherlapateら 第EP 0463 151 B1号、Kucherlapateら 第EP 0710 719 A1号、Suraniら 米国特許第5,545,807号、Bruggemannら 第WO 90/04036号、Bruggemannら 第EP 0438 474
B1号、Lonbergら 第EP 0814 259 A2号、Lonbergら 第GB 2 272 440 A号、Lonbergら Nature 368:856−859(1994)、Taylorら、Int.Immunol.6(4)579−591(1994)、Greenら、Nature Genetics 7:13−21(1994)、Mendezら、Nature Genetics 15:146−156(1997)、Taylorら、Nucleic Acids Research 20(23):6287−6295(1992)、Tuaillonら、Proc Natl
Acad Sci USA 90(8)3720−3724(1993)、Lonbergら、Int Rev Immunol 13(1):65−93(1995)およびFishwaldら、Nat Biotechnol 14(7):845−851(1996)(それぞれ引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる))。一般に、これらのマウスは、機能的に再配列されるか若しくは機能的再配列を受け得る最低1種のヒト免疫グロブリン遺伝子座からのDNAを含んでなる最低1種の導入遺伝子を含んでなる。こうしたマウス中の内因性免疫グロブリン遺伝子座は、内因性遺伝子によりコードされる抗体を産生する該動物の能力を排除するように破壊若しくは欠失し得る。
【0036】
本発明の方法は、従って抗体のより効率的な生成方法を提供する。従って、本発明は、本発明の改良された方法を使用して製造される抗体もまた提供する。本発明の方法を使用して製造される抗体は治療、診断および/若しくは研究目的上使用し得る。
【0037】
本発明を全般的に記述したので、それは、具体的説明のために提供されかつ制限するとして意図していない以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【実施例1】
【0038】
アジュバントとしてのPGE2は抗体力価を有意に増大した
卵アルブミン(OVA)に対する抗体を生成するため、Balb/cマウスをアジュバント中に乳化した25μgのOVAで免疫した。PGE2の効果を試験するため、該マウスに免疫化3時間前、ならびに免疫化24および48時間後に再度、1nmolのPGE2を腹腔内に(i.p.)注入した。対照群については、マウスに免疫化3時間前に等容量のPBSを注入した(i.p.)。マウスは第14日(i.p.)および第28日(皮下で)に25μgのOVAで追加免疫した。抗OVA力価を第27日および第35日に測定した。表1に示されるとおり、PGE2でのBalb/cマウスの処置は抗OVA力価を有意に高めた。
【0039】
【表1】

【0040】
困難な標的に対する抗体の生成に対するPGE2の効果を評価するため、抗体応答を生じさせるのが困難であることが既知の名目上免疫原(AgX)を使用した。簡潔には、Balb/cマウスを、25μgのOVA若しくはAgXいずれかで上に概説された同一スケジュールに従って免疫し、そして2回のi.p.注入後の第27日に力価測定した。表2に示されるとおり、PGE2添加はわずか2回の免疫原注入後に抗OVA力価を高めた。従って、PGE2はBalb/cマウスにおける免疫応答を高め、そして免疫化スケジュールを短縮するのに使用しうる。
【0041】
より重要なことに、PGE2は、2回の注入後に抗AgX力価もまた2〜3倍増大させた。反対の(against)抗体を生成することのこの免疫原の困難な性質を考えればこれは大きな増大である。従って、PGE2は、強免疫原に対してのみならずしかしまた困難な/名目上の免疫原に対しても免疫応答を高めるのにBalb/cマウスで使用し得る。
【0042】
【表2】

【0043】
要するに、本発明は、高度に効率的である新規アジュバントとしてPGE2を提供することにより現在既知かつ/若しくは利用されるアジュバントの欠点を成功裏に扱い、そして最小限の副作用を誘発するか若しくは副作用を誘発しない。
【0044】
本発明は前述の記述および実施例にとりわけ記述されるもの以外の方法で実施し得ることが明らかであろう。本発明の多数の改変および変形が上の教示に照らして可能であり、そして従って本発明の範囲内にある。
【0045】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原および有効補助量のPGE2を宿主に投与することを含んでなる、宿主における免疫原に対する免疫応答を高める方法。
【請求項2】
免疫原およびPGE2が同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
免疫原およびPGE2が続けて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
宿主がげっ歯類である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
宿主がBalb/cマウスである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
PGE2の有効補助量が約0.1nmolないし約10nmolの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
投与が、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内、皮内若しくは足蹠注入よりなる群から選択される適する経路を介する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
免疫原に対する抗体の製造方法であって、
免疫原および有効補助量のPGE2を宿主に投与してそれにより該免疫原に対する免疫応答を高めること、ならびに該免疫原と特異的に反応性である抗体若しくは抗体を産生する細胞についてスクリーニングすること
を含んでなる、上記方法。
【請求項9】
抗体を産生する細胞を骨髄腫細胞と融合すること、および
該免疫原と特異的に反応性である融合細胞を単離すること
をさらに含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
免疫原およびPGE2が同時に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
免疫原およびPGE2が続けて投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
宿主がげっ歯類である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
宿主がBalb/cマウスである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
PGE2の有効補助量が約0.1nmolないし約10nmolの範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
投与が、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内、皮内若しくは足蹠注入よりなる群から選択される適する経路を介する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法により製造された最低1種の抗体。
【請求項17】
請求項8に記載の方法により製造された最低1種の抗体。

【公表番号】特表2010−505769(P2010−505769A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530651(P2009−530651)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/079968
【国際公開番号】WO2008/040009
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509087759)セントコア・オーソ・バイオテツク・インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】