説明

モノクローナル抗体MBR1によって同定される乳ガン関連抗原の合成及びこれらの使用

【課題】オリゴ糖合成のための新規な戦略及びプロトコールを提供する。
【解決手段】構造(I)(但し、RはHである。)を有する化合物の合成方法、並びにヒト乳ガン細胞に対して抗体を誘導するためのワクチンとして、これらのアジュバント治療に有用な関連オリゴ糖を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願の全体にわたって、種々の文献を、本文中でかっこ内に引用した。これらの刊行物の開示は、本発明の属する分野の状態をより完全に開示するために参照文献として全体を本出願の一部となす。
【0002】
生物系の生体構造物質として、及びエネルギー貯蔵ユニットとしての炭水化物の機能は、良く認識されている。対照的に、生物学的プロセスに関連したシグナル分子としての炭水化物の役割はごく最近認識された(M.L. Phillips, E. Nudelman, F.C.A. Gaeta, M. Perez, A.K. Singhal, S. Hakomori, J.C. Paulsen, Science, 1990, 250, 1130; M.J. Polley, M.L. Phillips, E. Wagner, E. nudelman, A.K. Sighal, S. Hakomori, J.C. Paulsen, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991, 88, 6224; T. Taki. Y. Hirabayashi, H. Ishikawa, S. Kon, Y. Tanaka, M. Matsumoto, J. Biol. Chem., 1986, 261, 3075; Y. Hirabayashi, A. Hyogo, T. Nakao, K. Tsuchiya, Y, Suzuki, M. Matsumoto, K. Kon, S. Ando, ibid., 1990, 265, 8144; O. Hindsgaul, T. Norberg, J. Le Pendu, R.U. Lemieux, Carbohydr. Res., 1982, 109, 109; U. Spohr, R.U. Lemieux, ibid., 1988, 174, 211)。細胞相互作用を媒介する際に炭水化物が関与する範囲を解明することは、当今の生物医学的研究における調査の重要な分野となっている。詳細な生体構造情報を有する炭水化物分子は、遊離して存在するよりも複合糖鎖(例えば糖タンパク及び糖脂質)として存在する傾向がある。均一な形態で該複合体を単離することにしばしば付随する複雑さ、及び天然に存在するこれら複合体から完全な炭水化物を回収する際の困難性がある場合、合成によるアプローチの適用が明白になる(グリコシル化の最近の総説として、Paulsen, H., Angew. Chemie Int. Ed. Engl., 1982, 21, 155; Schmidt, R.R., Angew. Chemie Int . Ed. Engl., 1986, 25, 212; Schmidt, R.R., Comprehensive Organic Synthesis, 第6巻、1(2)章、Pergamon Press, Oxford, 1991; Schmidt, R.R.,「炭水化物、医療化学における合成法と応用(Carbohydrates, Synthetic Method and Applications in Medical Chemistry)」パートI、4章、VCH Publishers, Weinheim, New York, 1992を参照。グリコシド合成におけるグリコシルドナーとしてのグリカールの使用については、Lemieux R.U., Can. J. Chem., 1964, 42, 1417; Lemieux. R.U., Faser-Raid, B., Can. J. Chem., 1965, 43, 1460; Lemieux, R.U., Morgan, A.R., Can. J. Chem., 1965, 43, 2190; Thiem, J., Karl. H., Schwentner, J., Synthesis, 1978, 696; Thiem. J. Ossowski, P., Carbohydr. Chem., 1984, 3, 287; Thiem, J., Prahst, A., Went, T., Libigs. Ann. Chem., 1986, 1044; Thiem, J., in Trends in Synthetic Carbohydrate Chemistry, Horton, D., Hawkins, L.D., McGarvvey, G.L., 編、ACSシンポジウムシリーズ #386、米国化学会、Washington, D.C. 1989, 8章、を参照。)。
【0003】
糖タンパク及び糖脂質双方に含まれる血液型物質の炭水化物ドメインは、赤血球、上皮細胞及び種々の分泌物に分布している。これらの系の初期の焦点は血液型の特異性を決定する際のこれらの中心的な役割に集中した(R.R. Race及びR. Sanger, ヒトの血液型(Blood Groups in Man)、第6版、Blackwell, Oxford, 1975)。しかし、このような決定子は、細胞接着及び結合現象に広範囲に関係していることが認識されている(例えば、M.L. Phillips, E. Nudelman, F.C.A. Gaeta, M. Perez, A.K. Singhal, S. Hakomori, J.C. Paulsen, Science, 1990, 250, 1130を参照。)。更に、複合体形成した形態で、血液型物質に関連した集合体は、種々の腫瘍の攻撃に対するマーカーとして働く(K.O. Lloyd, Am. J. Clinical Path., 1987, 87, 129; K.O. Loiyd, Cancer Biol., 1991, 2, 421)。炭水化物ベースの腫瘍抗原因子は、薬物輸送又は理想的には免疫治療における供給源として診断レベルでの応用が見出される(Toyokuni, T., Dean, B., Cai, S., Boivin, D., Hakomori, S.,及びSinghal, A.K., J. Am. Chem. Soc., 1994, 116, 395; Dranoff, G., Jaffee, E., Lazenby, A., Golumbek, P., Levitsky, H., Brose, K., Jackson, V., Hamada, H., Paardoll, D., Mulligan, R., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993, 90, 3539; Tao, M-H., Levy, R., Nature, 1993, 362, 755; Boon, T., Int. J. Cancer, 1993, 54, 177; Livingston, P.O., Curr. Opin. Immunol., 1984, 2, 103; K.Shigeta, et al., J. Biol. Chem., 1987, 262, 1358)。
【0004】
本発明は、オリゴ糖合成のための新規な戦略及びプロトコールを提供する。目的は、相対的に複雑なドメインが高立体特異的に組み立てられ得るようにこのような構築を簡略化することである。複合糖鎖合成における主要な進歩には、高収斂性(convergence)の達成と保護基の操作に関連した負荷を軽減することが要求される。他の要求は、キャリアータンパク又は脂質との複合体形成に対して適切な準備を行い、炭水化物決定子を誘導することである(Bernstein, M.A.及びHall, L.D., Carbohydr. Res., 1980, 78, C1; Lemieux, R.U., Chem., Soc., Rev., 1978, 7, 423; R.U. Lemieux, et, al., J. Am. Chem. Soc., 1975, 97, 4076)。これは、合成により誘導された炭水化物が、生物学的な応用に適したキャリアーに取り込まれる場合に、決定的な条件となる。
【0005】
ガン細胞に対して選択的な、又は理想的には特異的な抗原は、活性な免疫性を惹起するのに有用であることが示されうる(Hakomori, S., Cancer Res., 1985, 45, 2405-2414; Feizi, T., Cancer Surveys, 1985, 4, 245-269)。新規な炭水化物パターンは、しばしば、形質転換された細胞によって、細胞表面糖タンパクとして、又は膜アンカー糖脂質として提供される。特に、抗体産生を刺激する、よく選別された合成複合糖質は、癌(これは、これらの細胞表面に等価な構造タイプを提供する。)に対する活性な免疫性を付与しうる(Dennis, J., Oxford Glycosystems Glyconews Second, 1992; Lioyd, K.O.,ワクチンを用いた癌の特異的免疫療法(Specific Immunotherapy of Cancer with Vaccines), 1993, New York Academy of Sciences,内の pp.50-58)。治療を成功させるための可能性は、標的細胞に対する抗原をより限定することによって改善される。スフィンゴ糖脂質は、Hakomori及び共同研究者によって乳ガン細胞系MCF−7から単離され、モノクローナル抗体MBr1によって免疫学的に特徴づけられた(Bremer, E.G. et al., J. Biol. Chem., 1984, 259, 14773-14777; Menard, S, et al., Cancer Res., 1983, 43, 1295-1300)。新規なスフィンゴ糖脂質構造1b(図8)が、メチル化及び酵素分解プロトコールに基づいて、この乳房腫瘍関連抗原に対して提案された。決定的ではないが、提案された構造と一致したH−NMRスペクトルが、微量の単離された抗原から得られた。提案された構造の個々のセクターは未知ではないが、完全な構造が乳ガン系の研究に基づいて初めて開示された。MBr1は、正常なヒト乳腺細胞及び卵巣ガン細胞系にも結合することに注意すべきである。従って、完全体としての1bは形質転換された乳房細胞に制限されないようである。この他に、1bのより小さなサブセクションは、抗体認識及び結合能力を十分に有する。(1bのDEFフラグメントの合成が報告されており、MBr1と結合することが示されている。Lay, L.; Nicotra, F.; Panza, L.; Russo, G., Helv. Chim. Acta, 1994, 77, 509-514)
本明細書で説明される方法によって製造される化合物は、ヒト乳房腫瘍細胞と免疫反応性のMBr1抗体を誘導することができるワクチンとして補助的治療に有効な抗原である。このような補助的治療は、乳ガンの再発の割合を減少させ、手術後の生存率を増加させる可能性を有する。AJCCステージIIIメラノーマに対して外科的に治療された122人の患者であって、メラノーマ分化抗原GM2(MBr1を好む他の腫瘍抗原は、細胞表面の炭水化物である。)から調製されたワクチンで治療された者に関し、臨床試験で、免疫処理に先立って抗体を欠く患者において疾患を起こさない期間の非常に有意な増加を示した(P.O. Livingston, et al., J. Clin Oncol., 12, 1036 (1994))。
【0006】
本発明は、1bを大量に合成する方法、並びにより小さな糖脂質よりも免疫原性の高いオリゴ糖鎖の人工的なタンパク質複合体を合成する方法を提供する。抗原には、B及びC部分の間のα−結合、並びにβ−結合した環Dgal-NAc残基を含めた新規な特徴的配列が含まれる(フコース残基を欠く関連した構造(SSEA−3)の合成に対しては、Ogawa, T., Tetrahedron Lett.., 1988, 29, 5681-5684を参照。)。本発明は、(i)1bの全合成、(ii)Hakomoriの抗原が実際に1bに対応することの厳密な証明、及び(iii)1bの生物複合体形成しうる変形体の合成を提供する。合成の簡潔性は、グリカール組立法の効率(これは、スルホンアミドグリコシル化のための強力な方法によって増大される。)によってもたらされる(例えば、14b〜15bの変換を参照。図10)。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、1994年3月15日に提出された米国出願番号08/213,053の一部継続出願であり、該出願の内容は参照文献として本出願の一部をなす。
【0008】
本発明は、米国立衛生研究所からの補助金GM−15240−02、GM−16291−01、及びAI−16943による政府の補助でなされた。従って、米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0009】
本発明は、下記構造を有する化合物を合成する方法を提供する。
【化1】

【0010】
但し、RはHである。
【0011】
本発明はまた、下記構造を有する三糖セラミドを合成する方法を提供する。
【化2】

【0012】
更に、本発明は、下記構造を有するメルカプト三糖(mercaptotrisaccharide)を合成する方法を提供する。
【化3】

【0013】
本発明はまた、下記構造を有する六糖セラミドを合成する方法を提供する。
【化4】

【0014】
本発明はまた、下記構造を有する六糖セラミドを合成する方法を提供する。
【化5】

【0015】
本発明はまた、下記構造を有するアリル六糖を合成する方法を提供する。
【化6】

【0016】
本発明は、下記構造を有する六糖を合成する方法を提供する。
【化7】

【0017】
更に、本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【化8】

【0018】
但し、nは約0から約9の間の整数である。
【0019】
本発明はまた、下記構造を有する化合物を提供する。
【化9】

【0020】
但し、nは約0から約9の間の整数である。
【0021】
本発明はまた、下記構造を有する化合物を提供する。
【化10】

【0022】
但し、nは約0から約9の間の整数である。
【発明の詳細な説明】
【0023】
本発明は、以下の構造を有する化合物を提供する。
【化11】

【0024】
但し、Aは、(i)ω−アミノ基又はω−(C=O)−基を有するアミノ酸、(ii)ペプチドのアミノ酸残基であって、該残基がω−アミノ基又はω−(C=O)−基を有するもの、及び(iii)タンパク質のアミノ酸残基であって、該残基がω−アミノ基又はω−(C=O)−基を有するものよりなる群から選択される。Rは、H、OH、NH又はNHR(但し、RはSOPh、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアシル基、又はアリール基である。)である。Mは下記構造を有する。
【化12】

【0025】
nは0から18の整数であり、nが1より大きい場合、各Mは独立に同じであるか又は異なっている。pは、0又は1の何れかである。R、R、R及びRは、独立に同じであるか又は異なっており、H又はOHであるが、同じ炭素に結合したR及びRが双方ともOHとはならず、同じ炭素に結合したR及びRが双方ともOHとはならないという条件が付く。炭素原子と酸素原子の間の波線は各々炭素原子でのR又はS配置を表す。X及びYは独立に、同じであるか又は異なっており、H又はOである。kは1よりも大きい整数であるか、又は1に等しいが、Aがω−アミノ基又はω−(C=O)−基を有するアミノ酸である場合、kは1に等しいという条件が付く。
【0026】
一態様では、本発明は、Aがリジン又はリジン残基である上記化合物を提供する。
【0027】
もう一つの態様では、本発明は、Aがグルタミン酸又はグルタミン酸残基である上記化合物を提供する。
【0028】
もう一つの態様では、本発明は、Aがアスパラギン酸又はアスパラギン酸残基である上記化合物を提供する。
【0029】
本発明はまた、Aが球状タンパク質のアミノ酸残基である上に開示した化合物を提供する。一態様では、本発明は、球状タンパク質がウシ血清アルブミン及びヒト血清アルブミンよりなる群から選択される上記化合物を提供する。
【0030】
一態様では、本発明は、kが1である上記化合物を提供する。
【0031】
もう一つの態様では、本発明は、n及びpが双方とも0に等しい上記化合物を提供する。
【0032】
本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【化13】

【0033】
但し、RはH、OH、NH又はNHR(但し、RはSOPh、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアシル基、又はアリール基である。)である。Mは、下記構造を有する。
【化14】

【0034】
nは、0から18の整数であり、nが1より大きい場合、各Mは独立に、同じであるか又は異なっている。R、R、R及びRは独立に、同じであるか、異なっており、H又はOHであるが、同じ炭素に結合したR及びRが双方ともOHとはならず、同じ炭素に結合したR及びRが双方ともOHとなることはないという条件が付く。炭素原子と酸素原子の間の波線は、炭素原子でのR又はS配置を表す。Rは置換されたアリル基又は無置換アリル基である。
【0035】
本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【化15】

【0036】
但し、nは1から18の整数である。RはH又は直鎖又は分岐鎖のアシル基である。RはH、OH、NH又はNHR(但し、RはSOPh、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアシル基、又はアリール基である。)である。Rは、置換されたアリル基又は無置換アリル基である。
【0037】
一態様では、本発明はnが1である化合物を提供する。
【0038】
本発明は、更に、下記構造を有する化合物を提供する。
【化16】

【0039】
但し、RはH又は直鎖又は分岐鎖のアシル基である。RはH、OH、NH又はNHR(但し、RはSOPh、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアシル基、又はアリール基である。)である。Rは置換されたアリル又は無置換アリルである。
【0040】
本発明は、下記構造を有する化合物を提供する。
【化17】

【0041】
但し、RはH又は直鎖又は分岐鎖のアシル基である。RはH、OH、NH又はNHR(但し、RはSOPh、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアシル基、又はアリール基である。)である。Rは置換されたアリル又は無置換アリルである。nは1から18の整数である。
【0042】
一態様では、本発明は、nが1である化合物を提供する。
【0043】
本発明は下記構造を有する化合物を提供する。
【化18】

【0044】
但し、RはH又は直鎖若しくは分岐鎖のアシル基である。
【0045】
本発明はまた、下記構造を有する化合物を合成する方法を提供する。
【化19】

【0046】
但し、Rは置換されたアリル基又は置換アリル基である。
【0047】
該方法は、(a)下記構造の化合物を合成すること、
【化20】

【0048】
但し、Rはトリアルキルシリル、アリールジアルキルシリル、アルキルジアリールシリル又はトリアリールシリル基である。
【0049】
(b)ステップ(a)の化合物を下記構造の化合物と、適切な条件下で反応し、
【化21】

【0050】
下記構造を有する化合物を形成すること、
【化22】

【0051】
但し、Rはトリアルキルシリル、アリールジアルキルシリル、アルキルジアリールシリル又はトリアリールシリル基である。
【0052】
(c)ステップ(b)で形成された化合物を下記構造を有する化合物と、適切な条件下で反応し、
【化23】

【0053】
下記構造を有する化合物を形成すること、
【化24】

【0054】
但し、Rはトリアルキルシリル、アリールジアルキルシリル、アルキルジアリールシリル又はトリアリールシリル基である。
【0055】
(d)ステップ(c)で形成された化合物を適切な条件下で脱保護し、再度保護して下記構造を有する化合物を形成すること、
【化25】

【0056】
但し、RはTIPSである。
【0057】
(e)ステップ(d)で形成された化合物を適切な条件下でヨードスルホンアミド化し、下記構造を有する化合物を形成すること、
【化26】

【0058】
(f)ステップ(e)で形成された化合物を下記構造を有する化合物と適切な条件下で反応し、
【化27】

【0059】
下記構造を有する化合物を形成すること、
【化28】

【0060】
但し、RはHである。
【0061】
(g)ステップ(f)で形成された化合物を適切な条件下で脱保護し、パーアセチル化して下記構造を有する化合物を形成すること、
【化29】

【0062】
(h)ステップ(g)で形成された化合物を適切な条件下でエポキシド化し、そのエポキシドを形成し、適切な条件下で該エポキシドを反応して下記構造を有する化合物を形成すること、及び、
【化30】

【0063】
但し、Rは置換されたアリル基又は無置換アリル基である。
【0064】
(i)ステップ(h)で形成された化合物を適切な条件下で処理し、下記構造を有する化合物を形成すること、
【化31】

【0065】
但し、Rは置換されたアリル基又は無置換アリル基である。
【0066】
のステップを具備した方法である。上記方法において、種々の反応及び処理に必要な適切な条件は、以下の実験の詳細の部に見出しうる。しかし、示された特定の試薬及び溶媒、並びに反応又は処理に必要な特定の条件は、当業者に周知の他の適切な試薬、溶媒及び条件に置き換えうる。
【0067】
アリル化合物は、アミン又はカルボン酸側鎖を介してペプチド又はタンパク質に結合される。本発明を実施する場合、生物複合体(bioconjugate)はBarnstein及びHallのプロトコールに従って製造される(Carbohydr. Res. 1980, 78, C1)。
【0068】
アリル基はオゾン化され、アルデヒド及びカルボン酸の何れかを形成し、これは末端アミンと縮合され、それぞれイミン又はアミドを形成する。イミンは、水素化ホウ素ナトリウムでアミンに還元される。この他には、アルデヒドは、当分野で公知の手順を用いて還元的にアミノ化され、アミンを形成する。このアミンは側鎖末端カルボン酸と反応され、アミド複合体を形成する。
【0069】
本発明は、治療に効果的な量の上記化合物及び薬学的に許容しうる担体を含有する薬学的組成物を提供する。
【0070】
薬学的に許容しうる担体は、当業者に周知であり、これらには、0.01〜0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸バッファー又は0.8%食塩水が含まれるが、これらに限定されない。加えて、このような薬学的に許容しうる担体は、水性若しくは非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンでありうる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性担体には、食塩水及び緩衝媒体を含めた、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン又は懸濁液が含まれる。非経口ビヒクル(vehicles)には、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸化されたリンガー又は固定オイルが含まれる。静脈内ビヒクルには、液体及び栄養補給剤、リンガーデキストロース等をベースとするもののような電解質補給剤等が含まれる。防腐剤及び他の添加物も存在しうる。これは例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等である。
【0071】
本発明は、更に、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)により起こる疾患に悩まされている患者を治療するための方法であって、治療に効果的な量の上記薬学的組成物を患者に投与し、これによって該疾患に悩まされている患者を治療することを具備した方法を提供する。
【0072】
一態様では、本発明は、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍に悩まされている患者を治療する方法を提供する。
【0073】
もう一つの態様では、本発明は、胃部アデノカルチノーマに悩まされている患者を治療する方法を提供する。
【0074】
加えて、本発明は、患者の胃上皮ヘのヘリコバクターピロリの接着を阻害する方法であって、患者の胃上皮ヘのヘリコバクターピロリの接着を阻害するのに効果的な、上記化合物の所定量を患者に投与することを具備した方法を提供する。
【0075】
本発明はまた、下記構造を有する化合物を合成する方法を提供する。
【化32】

【0076】
但し、RはHである。
【0077】
該方法は、(a)(i)下記構造を有する化合物を適切な条件下でエポキシ化剤と反応し、エポキシドを形成すること、
【化33】

【0078】
(ii)ステップ(a)(i)で形成されたエポキシドを適切な条件下で、RNF(但し、各Rは独立に、同じであるか、又は異なっており、直鎖又は分岐鎖のアルキル、アラルキル又はアリール基である。)で開裂し、フルオロアルコールを形成すること、及び(iii)ステップ(b)(ii)で形成されたフルオロアルコールを適切な条件下で、非求核性塩基及び式CCHX(但し、XはBr、Cl、I又はFである。)を有する有機ハライドでアルキル化し、下記構造を有する化合物を形成すること、
【化34】

【0079】
(b)(i)下記構造を有する化合物を合成すること、
【化35】

【0080】
(c)(i)ステップ(b)で形成された化合物を適切な条件下でエポキシ化剤で処理し、エポキシドを形成すること、及び(ii)ステップ(c)(i)で形成されたエポキシドを下記構造を有する化合物と、
【化36】

【0081】
適切な条件下でカップリングし、下記構造を有する化合物を形成すること、
【化37】

【0082】
(d)(i)ステップ(c)(ii)で形成された化合物を適切な条件下で非求核性塩基及び式CCHX(但し、XはBr、Cl、I又はFである。)を有する有機ハライドでアルキル化すること、及び(ii)ステップ(d)(i)で形成された化合物を適切な条件下で、RNF(但し、各Rは独立に同じであるか、又は異なっており、直鎖又は分岐鎖のアルキル、アラルキル又はアリール基である。)で脱シリル化すること、(iii)ステップ(d)(ii)で形成された化合物を適切な条件下で金属アルコキシドで処理し、脱保護された二糖を形成すること、及び(iv)ステップ(d)(iii)で形成された二糖を適切な条件下でアルキル化し、下記構造を有する選択的に脱保護された二糖を形成すること、
【化38】

【0083】
(e)ステップ(d)(iv)で形成された選択的に脱保護された二糖を適切な条件下で、ステップ(a)(iii)で形成された化合物とカップリングし、保護された三糖を形成すること、及び(ii)ステップ(e)(i)で形成された保護された三糖を適切な条件下で脱保護し、下記構造を有する三糖を形成すること、
【化39】

【0084】
但し、RはHである。
【0085】
を具備する。ステップ(a)において、反応(i)は、過酢酸、m−クロロ安息香酸、トリフルオロ酢酸、及び過酸化水素を含めた種々のエポキシ化剤を用いて行われうる。好ましい試薬は、3,3−ジメチルジオキシランである。ジクロロメタンのような非求核性の不活性溶媒を使用する。反応(a)(ii)は、エーテル系溶媒を含めた溶媒の範囲、好ましくはテトラヒドロフラン中でテトラブチルアンモニウムフルオライドを含めた有機アンモニウムフルオライド塩を用いて行われうる。ステップ(iii)は、DMFのような非求核性溶媒中、水素化ナトリウムのような非求核性塩基を用いて行われうる。ステップ(b)において、示された化合物は、本明細書で開示されるように調製されうる。ステップ(c)(i)は、ジクロロメタンのような非求核性の不活性溶媒中において、過酢酸、m−クロロ安息香酸、トリフルオロ酢酸、及び過酸化水素を含めた種々のエポキシ化剤を用いて行われうるが、3,3−ジメチルジオキシランが好ましい。カップリングステップ(c)(ii)は、THFのような不活性溶媒中、塩化亜鉛のような金属触媒を用いて行われうる。ステップ(d)(i)は、DMFのような非求核性溶媒中、水素化ナトリウムのような非求核性塩基を用いて行われうる。ステップ(d)(ii)において、脱シリル化は、エーテル系溶媒を含めた溶媒の範囲、好ましくはテトラヒドロフラン中、テトラブチルアンモニウムフルオライドを含めた有機アンモニウムフルオライドを用いて行われる。炭酸エステルは、メタノールのようなアルコール性媒体中、ナトリウムメトキシドのような金属アルコキシドを用いて開裂される。ステップ(d)(iv)は、ベンゼンのような不活性溶媒中、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイドのような有機アンモニウムブロマイドの存在下において、(n−BuSn)Oのような金属酸化物を用いて選択的に行われる。ステップ(e)は、モレキュラーシーブを含む、エーテルのような溶媒中において、SnClのようなハロゲン化金属塩の存在下、過塩素酸銀及び2,6−ジ−t−ブチルピリジンの存在下で行われるカップリングである。PMBの酸化的除去は、DDQのような酸化剤を用いて、不活性溶媒系(これは、好ましくは不均一系、例えば水/ジクロロメタンでありうる。)で行われうる。
【0086】
本発明はまた、以下の構造を有する三糖セラミドを合成する方法を提供する。
【化40】

【0087】
該方法は、(a)下記構造を有する三糖を合成すること、
【化41】

【0088】
但し、RはPMBである。
【0089】
(b)(i)ステップ(a)で形成された三糖を適切な条件下でエポキシ化剤と反応し、三糖エポキシドを形成すること、及び(ii)ステップ(b)(i)で形成された三糖エポキシドを適切な条件下で下記構造を有する化合物と反応し、
【化42】

【0090】
下記構造を有する保護された三糖セラミドを形成すること、
【化43】

【0091】
(c)(i)ステップ(b)(ii)で形成されたセラミドを適切な条件下でアルキル化すること、及び(ii)ステップ(c)(i)で形成された化合物を適切な条件下で選択的に脱保護し、三糖セラミドを形成すること、を具備する。
【0092】
ステップ(a)において、三糖は本明細書に開示された方法で合成されうる。ステップ(b)(i)は、ジクロロメタンのような非求核性の不活性溶媒中、過酢酸、m−クロロ安息香酸、トリフルオロ酢酸、及び過酸化水素を含めた種々のエポキシ化剤、好ましくは3,3−ジメチルジオキシランを用いて行われる。カップリングステップ(b)(ii)は、THFのような不活性溶媒中、セラミド前駆体のトリブチルスズエーテル及び塩化亜鉛のような金属触媒を用いて行われうる。ステップ(c)(i)において、アシル化は、ジクロロメタンのような不活性有機溶媒中、トリエチルアミン及びDMAPの存在下、直鎖又は分岐鎖のアルキル無水物、好ましくは無水酢酸、又はハライドを用いて行われる。PMB保護基は、酸化的に、好ましくは先に説明したように除去される。
【0093】
本発明は、更に、下記構造を有するメルカプト三糖を合成する方法を提供する。
【化44】

【0094】
該方法は、(a)(i)下記構造を有する化合物を合成すること、
【化45】

【0095】
(ii)ステップ(a)(i)の化合物を適切な条件下で下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化46】

【0096】
下記構造を有する二糖を形成すること、
【化47】

【0097】
(b)ステップ(a)(ii)で形成された二糖を適切な条件下で下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化48】

【0098】
下記構造を有する三糖を形成すること、
【化49】

【0099】
(c)ステップ(b)で形成された三糖を適切な条件下でヨードスルホンアミド化し、下記構造を有するヨードスルホンアミドを形成すること、及び
【化50】

【0100】
(d)ステップ(c)で形成されたヨードスルホンアミドを適切な条件下でチオラートと反応し、メルカプト三糖を形成することを具備する。
【0101】
ステップ(a)(ii)は、ステップ(a)(i)の化合物(これは、本明細書で説明した方法で得ることができる。)を、ジクロロメタンのような非求核性の不活性溶媒中において過酢酸、m−クロロ安息香酸、トリフルオロ酢酸及び過酸化水素を含めた種々のエポキシ化剤、好ましくは3,3−ジメチルオキシランと反応し、次いでステップ(a)(ii)のジオール単糖とカップリンすることによって行われる。ステップ(a)(ii)は、THFのような不活性溶媒中、塩化亜鉛のような金属触媒を使用して行われうる。フルオロ糖(fluorosugar)とのカップリングは、モレキュラーシーブを含んだエーテルのような溶媒中、SnClのようなハロゲン化金属塩の存在下、過塩素酸銀及び2,6−ジ−t−ブチルピリジンの存在においてステップ(b)で行われる。ステップ(c)は、モレキュラーシーブの存在下、I(coll)パークロレート及びPhSONHを用いて行われる。ステップ(d)はDMFのような不活性溶媒中、アルキルチオール及びLiHMDSのような塩基を用いて行われる。
【0102】
本発明はまた、下記構造を有する六糖セラミドを合成する方法を提供する。
【化51】

【0103】
この方法は、(a)下記構造を有する化合物を適切な条件下で、
【化52】

【0104】
下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化53】

【0105】
下記構造を有する化合物を形成すること、
【化54】

【0106】
(b)ステップ(a)で形成された化合物を適切な条件下でエポキシ化剤と反応し、六糖エポキシドを形成すること、及び(ii)六糖エポキシドを適切な条件下で下記構造を有するスズエーテルと反応し、
【化55】

【0107】
六糖アルコールを形成すること、(c)ステップ(b)(ii)で形成された六糖アルコールを適切な条件下でアシル化し、下記構造を有する六糖アセテートを形成すること、
【化56】

【0108】
(d)ステップ(c)で形成された六糖アセテートを適切な条件下、パルミチン酸無水物の存在下で還元的にアシル化し、六糖セラミドを形成すること、(e)六糖セラミドを適切な条件下で脱シリル化し、部分的に脱保護して、部分的に脱保護された六糖セラミドを形成すること、(f)(i)部分的に脱保護された六糖セラミドを適切な条件下で還元し、脱保護された六糖セラミドアセテートを形成すること、及び(ii)脱保護された六糖セラミドアセテートを適切な条件下でアシル化し、六糖セラミドパーアセテートを形成すること、及び(g)六糖セラミドパーアセテートを適切な条件下でケン化し、六糖セラミドを形成すること、を具備する。
【0109】
ステップ(a)は、不活性溶媒中、モレキュラーシーブの存在下、メチルトリフレートのようなトリフレートエステルを用いて行われる。ステップ(b)(i)は、ジクロロメタンのような不活性溶媒中、過酢酸、m−クロロ安息香酸、トリフルオロ酢酸、及び過酸化水素を含めた種々のエポキシ化剤、好ましくは3,3−ジメチルオキシランを用いて行われる。ステップ(b)(ii)は、THFのような不活性溶媒中、Znトリフレートのような金属塩の存在下においてセラミド前駆体のスズエーテル、好ましくはトリ−n−ブチルスズエーテルを用いて行われる。ステップ(c)はトリエチルアミン及びDMAPのような塩基の存在下で無水酢酸を用いて行われる。ステップ(d)は、酢酸エチルのような不活性溶媒中、パルミチン酸無水物の存在下で、リンドラー触媒のような貴金属触媒及び水素ガスを用いて行われる。脱シリル化ステップ(e)は、THF中でテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライドのような有機アンモニウムフルオライドを用いて行われる。炭酸エステルは、メタノールのようなアルコール中、NaOMeのような金属アルコキシドを用いて開裂される。ステップ(f)(i)において、還元は、液体アンモニア及びTHFのような不活性溶媒中、リチウム又はナトリウムのような金属を用いて行われる。ステップ(f)(ii)は、ジクロロメタンのような不活性溶媒中、EtN及びDMAPのような塩基の存在下で無水酢酸を使用して行われる。パーアセテートは、メタノールのようなアルコール中、ナトリウムメトキシドのような金属アルコキシドを用いてケン化される。
【0110】
本発明はまた、下記構造を有する六糖セラミドを合成する方法を提供する。
【化57】

【0111】
該方法は、(a)下記構造を有する化合物を適切な条件下で、
【化58】

【0112】
下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化59】

【0113】
下記構造を有する六糖を形成すること、
【化60】

【0114】
及び(b)(i)ステップ(a)で形成された六糖を、パルミチン酸無水物の存在下、適切な条件下で還元し、パルミトイルアミドを形成すること、(ii)適切な条件下でパルミトイルアミドをRNF(各Rは独立に同じであるか、又は異なっており、直鎖又は分岐鎖のアルキル、アラルキル又はアリール基である。)で脱シリル化し、部分的に脱保護された六糖を形成すること、(iii)ステップ(b)(ii)で形成された六糖を適切な条件下で脱保護し、脱保護された六糖を形成すること、(iv)ステップ(b)(iii)で形成された六糖を適切な条件下でアシル化し、六糖セラミドパーアセテートを形成すること、及び(v)六糖セラミドパーアセテートを適切な条件下でケン化し、六糖セラミドを形成することを具備する。
【0115】
ステップ(a)は、不活性溶媒中、モレキュラーシーブの存在下でメチルトリフレートのようなトリフレートエステルを用いて行われる。ステップ(b)(i)は、酢酸エチルのような不活性溶媒中、パルミチン酸無水物の存在下、リンドラー触媒のような貴金属触媒及び水素ガスを用いて行われる。ステップ(b)(ii)は、THF中でテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライドのような有機アンモニウムフルオライド塩を用いて行われる。ステップ(b)(iii)において、還元は、液体アンモニア及びTHFのような不活性溶媒中でリチウム又はナトリウムのような金属を用いて行われる、ステップ(b)(iv)は、ジクロロメタンのような不活性溶媒中、EtN及びDMAPのような塩基の存在下で無水酢酸を用いて行われる。ステップ(v)において、パーアセテートカーボネートは、メタノールのようなアルコール中、ナトリウムメトキシドのような金属アルコキシドを用いてケン化される。
【0116】
本発明はまた、下記構造を有するアリル六糖を合成する方法を提供する。
【化61】

【0117】
該方法は、(a)下記構造を有する化合物を、適切な条件下で
【化62】

【0118】
下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化63】

【0119】
但し、RはHである。
【0120】
下記構造を有する六糖を形成すること、
【化64】

【0121】
(b)(i)ステップ(a)で形成された化合物を適切な条件下でRNF(但し、各Rは、独立に同じであるか、又は異なっており、直鎖又は分岐鎖のアルキル、アラルキル又はアリール基である。)で脱シリル化し、部分的に脱保護された六糖を形成すること、(ii)ステップ(b)(i)で形成された六糖を適切な条件下で脱保護すること、及び(iii)ステップ(b)(ii)で形成された化合物を適切な条件下でパーアシル化し、下記構造を有する六糖パーアセテートを形成すること、
【化65】

【0122】
(c)(i)ステップ(b)(iii)で形成された六糖パーアセテートを適切な条件下でエポキシ化剤と反応し、六糖エポキシドパーアセテートを形成すること、(ii)ステップ(c)(i)で形成された六糖エポキシドパーアセテートを適切な条件下でアリルアルコールと処理し、アリル六糖パーアセテートを形成すること、及び(iii)アリル六糖パーアセテートを適切な条件下でケン化し、アリル六糖を形成すること、を具備する。
【0123】
ステップ(a)は、不活性溶媒中、モレキュラーシーブの存在下、メチルトリフレートのようなトリフレートエステルを用いて行われる。ステップ(b)(i)は、THF中、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライド塩のような有機アンモニウムフルオライド塩を用いて行われる。ステップ(b)(ii)は、メタノールのようなアルコール中、ナトリウムメトキシドのような金属アルコキシドを用いて行われ、次いで、液体アンモニア及びTHFのような不活性溶媒中、リチウム、好ましくはナトリウムのような金属を用いて還元が行われる。ステップ(b)(iii)は、ジクロロメタンのような不活性溶媒中、EtN及びDMAPのような塩基の存在下で無水酢酸を用いて行われる。ステップ(c)(i)は、ジクロロメタンのような非求核性の不活性溶媒中、過酢酸、m−クロロ安息香酸、トリフルオロ酢酸、過酸化水素を含めた種々のエポキシ化剤、好ましくは3,3−ジメチルオキシランを用いて行われる。ステップ(c)(ii)は、不活性溶媒中、アリルアルコールを用いて行われる、ステップ(c)(iii)では、パーアセテートカーボネートは、メタノールのようなアルコール中、ナトリウムメトキシドのような金属アルコキシドを用いてケン化される。
【0124】
本発明は、下記構造を有する六糖を合成する方法を提供する。この方法は、
【化66】

【0125】
(a)下記構造を有する化合物を適切な条件下で
【化67】

【0126】
下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化68】

【0127】
下記構造を有する化合物を形成すること、
【化69】

【0128】
(b)(i)ステップ(a)で形成された化合物を適切な条件下で、アシル化すること、及び(ii)ステップ(b)(i)で形成された化合物を適切な条件下でエポキシ化剤と反応し、下記構造を有するエポキシドを形成すること、
【化70】

【0129】
(c)(i)エポキシドを適切な条件下でRNF(但し、各Rは、独立に同じであるか、異なっており、直鎖又は分岐鎖のアルキル、アラルキル又はアリール基である。)で処理すること、及び(ii)ステップ(c)(i)で形成された化合物を適切な条件下でアルキル化し、下記構造を有する化合物を形成すること、
【化71】

【0130】
但し、RはH又はアシルである。
【0131】
(d)ステップ(c)(ii)で形成された化合物を適切な条件下で下記構造を有する化合物とカップリングし、六糖を形成すること、を具備する。
【化72】

【0132】
ステップ(a)は、不活性溶媒中、テトラフルオロホウ酸銀のような金属触媒を用いて行われる。ステップ(b)(i)は、ジクロロメタンのような不活性溶媒中、EtN及びDMAPのような塩基の存在下で無水酢酸を用いて行われる。ステップ(b)(ii)は、ジクロロメタンのような非求核性の不活性溶媒中、過酢酸、m−クロロ安息香酸、トリフルオロ酢酸、及び過酸化水素を含めた種々のエポキシ化剤、好ましくは3,3−ジメチルオキシランを用いて行われる。ステップ(c)(i)は、THF中、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライドのような有機アンモニウムフルオライド塩を用いて行われる。ステップ(c)(ii)は、不活性溶媒中、水素化ナトリウムのような非求核性塩基を用いて行われる。ステップ(d)は、ジ−t−ブチルピリジンのような不活性溶媒中で過塩素酸銀の存在下、二塩化スズのような金属塩触媒を用いて行われる。更なる変換は、保護された生成物、又はタンパク質若しくは他のキャリアーとの複合体を与える。
【0133】
本発明は更に、下記構造を有する化合物を提供する。
【化73】

【0134】
但し、nは約0から約9の間の整数である。
【0135】
示されたアリルグリコシドは、本明細書で示したグリカールカップリング法を使用して製造され、これは、本明細書中で開示した一般的な反応を用いて、又は当分野で標準的な方法によりタンパク質キャリアーに結合されうる。例えば、アリルグリコシドは、本明細書に開示された化合物9bを適切に保護された8bとカップリングし、次いで12bとカップリングし、更にアリルアルコールとカップリングして一連の適切な脱保護をすることによって製造されうる。
【0136】
本発明はまた、下記構造を有する化合物を提供する。
【化74】

【0137】
但し、nは約0から約9の間の整数である。
【0138】
示されたアリルグリコシドは、本明細書で示したグリカールカップリング法、アリル化及び一連の脱保護を用いて製造され(図12参照)、これは、本明細書中で開示した一般的な反応を用いて、又は当分野で標準的な方法によりタンパク質キャリアーに結合されうる。
【0139】
本発明はまた、下記構造を有する化合物を提供する。
【化75】

【0140】
但し、nは約0から約9の間の整数である。
【0141】
示されたアリルグリコシドは、本明細書で示したグリカールカップリング法を用いて製造され、これは、本明細書中で開示した一般的な反応を用いて、又は当分野で標準的な方法によりタンパク質キャリアーに結合されうる。
【0142】
当業者によれば、種々の糖水酸基に対して保護基の組み合わせを変化することは、本発明の範囲内にある。
【0143】
本発明は、ヒト患者に抗体を誘導する方法であって、該抗体がヒト乳房腫瘍細胞と免疫反応し、該方法が、下記構造を有する化合物の所定量を単独で、又は抗体を誘導するのに効果的な、適切な免疫学的アジュバントに結合して該患者に投与することを具備した方法を提供する。
【化76】

【0144】
一態様では、本発明は、誘導される抗体がMBr1抗体である方法を提供する。もう一つの態様では、本発明は、患者が臨床的に回復中である場合の方法、又は、患者が外科手術によって治療されている場合には、一部の切除されていない患部の発達を制限する方法を提供する。もう一つの態様では、本発明は、アジュバントがタンパク質キャリアー、バクテリア又はリポソームである方法を提供する。更にもう一つの態様では、本発明は、アジュバントがカルメット−ゲラン杆菌(BCG)である方法を提供する。
【0145】
本発明は、患者内の乳ガンの再発を防止する方法であって、上に示された化合物を、単独で、又は適切な免疫学的キャリアー、アジュバント又はビヒクルに結合して患者にワクチン接種することを具備した方法を提供する。
【0146】
本発明はまた、患者に抗体を誘導する方法であって、該抗体がヒト乳房腫瘍細胞と免疫反応性であり、該方法が、下記構造を有する化合物の所定量を患者に、単独で、又は抗体を誘導するのに効果的な、適切な免疫学的アジュバントに結合して投与することを具備した方法を提供する。
【化77】

【0147】
但し、nは約0から約9の間の整数である。
【0148】
一態様では、本発明は、誘導される抗体がMBr1抗体である方法を提供する。もう一つの態様では、本発明は、患者が臨床的に回復中である場合の方法、又は、患者が外科手術によって治療されている場合には、一部の切除されていない患部の発達を制限する方法を提供する。もう一つの態様では、本発明は、アジュバントがタンパク質キャリアー、バクテリア又はリポソームである方法を提供する。更にもう一つの態様では、本発明は、アジュバントがカルメット−ゲラン杆菌である方法を提供する。
【0149】
本発明は、患者内の乳ガンの再発を防止する方法であって、上に示された化合物を、単独で、又は適切な免疫学的キャリアー、アジュバント又はビヒクルに結合して患者にワクチン接種することを具備した方法を提供する。
【0150】
本発明はまた、患者に抗体を誘導する方法であって、該抗体がヒト乳房腫瘍細胞と免疫反応性であり、該方法が、下記構造を有する化合物の所定量を患者に、単独で、又は抗体を誘導するのに効果的な、適切な免疫学的アジュバントに結合して投与することを具備した方法を提供する。
【化78】

【0151】
但し、nは約0から約9の間の整数である。
【0152】
一態様では、本発明は、誘導される抗体がMBr1抗体である方法を提供する。もう一つの態様では、本発明は、患者が臨床的に回復中である場合の方法、又は、患者が外科手術によって治療されている場合には、一部の切除されていない患部の発達を制限する方法を提供する。もう一つの態様では、本発明は、アジュバントがタンパク質キャリアー、バクテリア又はリポソームである方法を提供する。更にもう一つの態様では、本発明は、アジュバントがカルメット−ゲラン杆菌である方法を提供する。
【0153】
本発明はまた、患者内の乳ガンの再発を防止する方法であって、上に示された化合物を、単独で、又は適切な免疫学的キャリアー、アジュバント又はビヒクルに結合して患者にワクチン接種することを具備した方法を提供する。
【0154】
加えて、本発明は、患者に抗体を誘導する方法であって、該抗体がヒト乳房腫瘍細胞と免疫反応性であり、該方法が、下記構造を有する化合物の所定量を患者に、単独で、又は抗体を誘導するのに効果的な、適切な免疫学的アジュバントに結合して投与することを具備した方法を提供する。
【化79】

【0155】
但し、nは約0から約9の間の整数である。
【0156】
一態様では、本発明は、誘導される抗体がMBr1抗体である方法を提供する。もう一つの態様では、本発明は、患者が臨床的に回復中である場合の方法、又は、患者が外科手術によって治療されている場合には、一部の切除されていない患部の発達を制限する方法を提供する。もう一つの態様では、本発明は、アジュバントがタンパク質キャリアー、バクテリア又はリポソームである方法を提供する。更にもう一つの態様では、本発明は、アジュバントがカルメット−ゲラン杆菌である方法を提供する。
【0157】
本発明はまた、患者内の乳ガンの再発を防止する方法であって、先に示された化合物を、単独で、又は適切な免疫学的キャリアー、アジュバント又はビヒクルに結合して患者にワクチン接種することを具備した方法を提供する。
【実施例】
【0158】
実験の詳細
一般的手順
全ての空気に敏感な反応及び湿気に敏感な反応は、特に示さない限り、アルゴン雰囲気下、炎で乾燥した装置中で行った。空気に敏感な液体及び溶液は、シリンジ又はカニューレを介して移し替えた。可能な場合には、反応を薄層クロマトグラフィー(TLC)でモニターした。大まかな溶媒の除去は、Buchiロータリーエバポレーターで、アスピレータによる減圧下で行い、少量の溶媒は、真空ポンプにより0.1〜0.5mmHgで除去した。
【0159】
融点(mp)は矯正されておらず、エレクトロサーマルシリーズIA9100デジタル融点測定器を用い、軟質ガラスキャピラリー管で行った。
【0160】
赤外吸収スペクトル(IR)は、パーキン−エルマー1600シリーズ、フーリエー変換装置を用いて記録した。サンプルは、特に断らない限り、NaClプレート上にそのまま(neat)のフィルムとして調製した。吸収バンドは、波数(cm-1)で記録した。関連した帰属可能なバンドのみを報告した。
【0161】
プロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルは、ブルッカーAMX−400スペクトロメーターを用い、400MHzで測定した。ケミカルシフトは、テトラメチルシラン(TMS;δ=0ppm)からの低磁場をppmで記載した。多重度は通常の方式で略記した。即ち、s=一重線、d=二重戦、t=三重線、q=四重線、m=多重線、br=幅広である。
【0162】
炭素核磁気共鳴(13C NMR)スペクトルは、ブルッカーAMX−400スペクトロメーターを用い、複合パルスデカップリングをしながら100MHzで測定した。サンプルは1H NMRスペクトルと同様に調製し、ケミカルシフトは、TMS(0ppm)に比して記載した。残留CHClを内部標準(δ=77.0ppm)として使用した。
【0163】
全ての高分解能質量分析スペクトル(HRMS)分析は、内部標準としてパーフルオロケロセン(PFK)を用い、JEOL JMX-DX 303HF質量分析計で電子衝撃イオン化法(EI)により測定した。低分解能質量スペクトル(MS)は、Delsi-Nermag R-10-10質量分析計で、電子衝撃イオン化法(EI)又は示されたキャリアーガス(アンモニア又はメタン)を用いる化学イオン化法(CI)で測定した。ガスクロマトグラフィー/質量スペクトル(GCMS)に対しては、キャリアーガスとしてヘリウムを用い、DB−5を融解させたキャピラリーカラム(30m、0.25mm厚さ)を使用した。典型的な条件は、60〜250℃、40℃/分の温度プログラムを使用した。
【0164】
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、プレコーティングされたガラスプレート(シリカゲル60、0.25mm厚さ)を用いて行った。視覚化は、254nmのUVランプを用いての発光、又はアニスアルデヒド染色液(3.5ml酢酸中の9.2mlのp−アニスアルデヒド、12.5mlの濃硫酸及び338mlの95%エタノール(EtOH))への浸漬と着色のための加熱により行った。
【0165】
フラッシュシリカゲルクロマトグラフィーは、標準のプロトコールに従って行った。
【0166】
特に断らない限り、全ての溶媒及び試薬は、市販品のグレードであり、以下に示す以外、購入したまま使用した。以下の溶媒は、かっこ内に示した乾燥方法を用いて、アルゴン下で蒸留した:CHCl(CaH);THF(Na/ケチル);EtO(Na/ケチル);ジイソプロピルアミン(CaH)。
【0167】
略語
OTf トリフレート
TLC 薄層クロマトグラフィー
EtOAc 酢酸エチル
TIPS トリイソプロピルシリル
PMB p−メトキシベンジル
Bn ベンジル
Ac アセテート
hex ヘキサン
THF テトラヒドロフラン
coll コリジン
LiHMDS リチウム ヘキサメチルジシラジド
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMAP 2−ジメチルアミノピリジン
DDQ 2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン
TABF テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオライド
M.S. モレキュラーシーブ
r.t. 室温
r.b. 丸底フラスコ。
【0168】
例1
ポリマーに結合されたグリカール18の調製
ポリマーに結合されたガラクタール7(500mg;S.J. Danishefsky, et al., J. Am. Chem. Soc., 1992, 8331)を100mlのポリマーフラスコに置き、減圧下に乾燥した。N下、0℃に冷却し、乾燥CHCl(20ml)及び新たに調製したMurray溶液(30ml;R.W. Murray and R. Jeyaraman, J. Org. Chem. 1985, 2847)を加えた。0℃で〜90分攪拌した後、溶液をNの圧力を用いて濾過した。酸化の手順を繰り返した。得られた7のエポキシドを真空ラインに、乾燥するまで〜3時間保持した。グルカール19の溶液(8mlの乾燥THF中1.0g)を加え、混合物を−23℃(ドライアイス−CCl)でで冷却した。ZnClのTHF溶液(0.8ml、1.0M)を加えた。混合物をゆっくりr.t.に暖め(〜2時間以上)、次いで一夜r.t.で攪拌した。ポリマーに結合したグルカール18を3×20mlのTHFで軽く洗浄し、真空ラインで乾燥した。
【0169】
ポリマーに結合された四糖20の調製
ポリマーに結合されたグルカール18及びSn(OTf)(0.08g、1.92mmol)を混合し、減圧下に乾燥した。N下で0℃に冷却し、ジ−t−ブチルピリジン(1.7ml、7.57mmol)を含む、フコシルドナー10の20ml乾燥THF溶液を加えた。混合物をゆっくりr.t.に暖め、一夜攪拌した。ポリマーを2×20mlの乾燥THF、2×20mlの乾燥ジオキサン、20mlのDMSO、及び2×20mlのTHFで洗浄した。得られたポリマーに結合した四糖20を真空ラインに保持し、乾燥した。
【0170】
四糖グリカール21の調製
ポリマーに結合された四糖20(50mg)を2mlのTHF中で攪拌し、各0.2mlの、TBAF及びAcOHのTHF1.0M溶液で処理した。混合物を一夜40℃で攪拌した。ポリマーを3×5mlのTHFで洗浄した。合わせた洗浄液を濃縮し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけ(2:1 EtOAc:hex)、無色のゴム状物として四糖グリカール21を得た。収量9.0mg。
【0171】
例2
ジオール18’の調製
ガラクタール7’(0.100g;0.304mmol)の5ml乾燥CHCl溶液を、0℃、N雰囲気下で、10mlのMurray溶液(新たに調製したもの)で処理し、0℃で40分攪拌した。TLC(1;1 EtOAc:hex)では、7’の痕跡は全く示されなかった。溶媒を、乾燥N気流を用いて蒸発させた。残渣としての7’のエポキシドを真空ラインに〜2時間保持した。N雰囲気下でエポキシドにグルカール誘導体3’(0.150g、0.496mmol)の3ml乾燥THF溶液を加えた。−78℃に冷却し、ZnClの1.0MEtO溶液(0.50ml、0.50mmol)を加えた。混合物をゆっくりr.t.に暖め(〜2時間以上)、一夜攪拌した。TLC(1:1 EtOAc:hex)は、反応が完結したことを示した。飽和NaHCO水溶液(20ml)を加え、次いで混合物をEtOAc(3×20ml)で抽出した。有機層をMgSOで乾燥した。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(1:3 EtOAc:hex)で、無色の固体としてジオール18’を得た。収量:173mg(89%)。[α]D23 −9.8°(c=1.0、CHCl)。
【0172】
四糖22の調製
ジオール18’(86mg、0.133mmol)及びフコシルドナー10(0.290g、0.665mmol)を、ベンゼンを用いて、共沸して乾燥した。この混合物を0.65mlのジ−t−ブチルピリジンと共に3mlの乾燥THFに溶解し、次いで、カニューレを介してSn(OTf)(0.30g、0.72mmol)及び4ÅのMS(500mg)を含有するフラスコに、0℃、N雰囲気下で加えた。混合物を0℃で、〜7時間攪拌した。TLC(1:3 EtOAc:hex)によりジオール18’の痕跡は全く示されなかった。混合物を飽和NaHCO水溶液(100ml)とEtOAc(2×100ml)の間に分配した。有機層をMgSOで乾燥した。有機層をEtOAcを用いてシリカを通して濾過し、粗生物を得た。該粗生物を、次にシリカのクロマトグラフィー(1:9 EtOAc:hex)で精製し、四糖22を得た。収量:170mg(86%)。
【0173】
ヨードスルホンアミド23の調製
手順1
四糖グリカール22(120mg、81.1mmol)及びPhSONH(20mg、0.13mmol)をベンゼンを用いて共沸により乾燥した。4ÅのMS(0.2g)を加えた(グローブバッグ)。N下で0℃に冷却した後、乾燥CHCl(1.0ml)を加えた。混合物を、炎で乾燥したセライト及び4ÅのMSのプラグを通し、カニューレを介して、I(coll)ClOの溶液(100mgのAg(coll)ClO、5mlのコリジン、及び60mgのIから1mlの乾燥CHCl中で調製した。)で処理した。混合物を0℃で40分攪拌した。TLC(1:4 EtOAc:hex)により、主成分としてヨードスルホンアミド23が示された。混合物を、セライトを通して濾過し、これをEtOで軽く洗浄した。有機層を、飽和Na水溶液、飽和CuSO水溶液、食塩水で抽出し、MgSOで乾燥した。シリカのカラムクロマトグラフィー(1:4 EtOAc:hex)により、無色の固体としてヨードスルホンアミド23を得た。収量:115mg(80%)。
【0174】
手順2
四糖グリカール22(200mg、0.135mmol)、PhSONH(42mg、0.27mmol)、及び200mgの粉末状4ÅMSの2.0ml乾燥CHCl溶液を、0℃、N雰囲気下で、I(coll)ClO(120mgのAg(coll)ClO及び67mgのIから1mlの乾燥CHCl中で調製した。)と処理した。混合物を0℃(ホイルを用いて光から保護した。)30分攪拌した。TLC(1:2 EtOAc:hex)により、若干のグリカールと共に、主にヨードスルホンアミドが示された。0℃で更に〜1時間後、TLCでは、観測しうる改善は見られなかった。混合物を、セライトを通して濾過し、これをEtOで洗浄し、飽和Na水溶液、飽和CuSO水溶液、食塩水で抽出した後、有機層をMgSOで乾燥した。シリカのカラムクロマトグラフィー(1:3 EtOAc:hex)で、無色固体として23を得た。
収量:165mg(69%)。[α]D23=−85.7°(c=1.0、CHCl)。
【0175】
六糖25の調製
ヨードスルホンアミド23(60mg、34mmol)を35mlのr.b.中で、200mgの粉末状4ÅMS(グローブバッグ)で処理した。N下で、このフラスコに保護されたラクタール24のTHF溶液(1.5ml)を加えた。混合物を−78℃に冷却し、AgBF(40mg、0.206mmol)の0.25ml乾燥THF溶液を加えた。混合物を攪拌し、ゆっくり一夜r.t.に暖めた。混合物を45℃に暖め、〜35時間攪拌した。TLCでは、微量のヨードスルホンアミドのみが示された。飽和NHCl水溶液(5ml)を加え、混合物を3×10mlのEtOAcで抽出した。有機層をMgSOで乾燥した。シリカのカラムクロマトグラフィー(1:3 EtOAc:hex)により、無色の油状物として25を得た。収量:42mg(55%)
[α]D23=−33.8°(c2.0、CHCl)。
【0176】
六糖25aの調製
六糖25(55mg、24.4mmol)の〜1.5mlTHF溶液を、0℃でTBAF(0.25ml、1.0MTHF溶液、0.25mmol)で処理し、r.t.で一夜攪拌した。TLC(1:9 MeOH:CHCl)により、25aと、より極性の低い物質の3:1混合物が示された。追加の1.0MTBAF(0.10ml)を加え、混合物をr.t.で一夜攪拌した。TLCは、反応が完結したことを示した。溶媒を、Nの気流を用いて除去した。シリカのクロマトグラフィー(1:19 MeOH:CHCl)で、〜1:2の、2種類の化合物に相当する混合物を得た。該2種類の混合物は、2,4−環状カーボネート基が存在するか、存在しないかのみが異なる。粗収量:2種類の生成物の全重量として35mg。粗製混合物は、そのまま次の反応に使用した。
【0177】
パーアセチル化された六糖26の調製
六糖25a(36mg)の0.25ml乾燥THF溶液を、〜8mlの明るい青色のNa/NH溶液に、−78℃(ドライアイス浴)、N雰囲気下でカニューレを介して加えた。ドライアイス浴を除去した後、混合物を還流したNH(ドライアイスコンデンサー)中で15分攪拌した。2mlの乾燥MeOHを(ゆっくり!)加えた後、得られた混合物を、N気流を吹き込んでNHを除去しながら攪拌した。MeOH溶液をDowex 50 X8 [H+]でpHが〜8から9になるまで処理し、次いで、濾過した。樹脂をMeOHで洗浄した。残渣を濃縮し、真空ラインに保持して乾燥した。N雰囲気下で、残渣を1mlの乾燥ピリジン及び0.5mlのAcOで処理し、一夜r.t.で撹拌した。TLC(EtOAc)で、六糖26が主要成分であることが示された。濃縮し、残渣をシリカのカラムクロマトグラフィー(1:4 hex:EtOAc)で精製した。
【0178】
六糖17の調製
六糖26(10.0mg、6.3mmol)を0℃、N下で0.5mlの乾燥CHClで処理した。ジオキシラン溶液(0.20ml)を加え、混合物を0℃で〜40分攪拌した。TLC(EtOAc)では、痕跡量の26も示されなかった。溶媒をN気流で蒸発させた。エポキシドを真空ラインで〜2時間乾燥した。エポキシドを、N雰囲気下で0.5mlのアリルアルコール(塩基性アルミナを通して乾燥させたもの)及び0.5ml乾燥THFで処理した。−78℃に冷却し、乾燥EtO中の1.0MのZnCl(10ml)を加えた。ゆっくりr.t.に暖めた後、混合物を一夜攪拌した。飽和NaHCO水溶液(5ml)を加え、混合物を3×5mlのEtOAcで抽出した。合わせた有機層を、MgSOで乾燥し、濾過し、油状物になるまで濃縮した。該油状物を真空ラインで〜2時間乾燥した。残渣を、ピリジン:AcO(2:1、1.5ml)で一夜攪拌しながら処理した。溶媒を除去し、残渣をシリカのカラムクロマトグラフィー(1:4 hex:EtOAc)で精製し、無色の固体として六糖17を得た。収量:5.5mg。
【0179】
結果と考察
複合体形成可能な形態での、ルイスY血液型決定子の高収斂合成
Le決定子の構築は、図2に示されるように、ラクタール(1a)から開始される(W.N. Haworth, E.L. Hirst., M.M.T. Plant, R.J.W.Reynolds, J. Chem. Soc., 1930, 2644)。両一級水酸基を、これらのTBDPSエーテルとして標準的な条件下で保護し、3’及び4’ヒドロキシ官能基は、環状カーボネートとして一つの基で保護される2a。2つのα−結合したフコース残基の立体特異的な導入によって四糖グリカール3aが、一段階で、51%の収率で得られる。使用されるドナーは、公知のフルオロ糖5a(S.J. Danishefsky, J. Oriyama, D.A. Griffith, C-H. Wong, D.P. Dumas, J. Am. Chem. Soc., 1992, 114, 8329)であり、Mukaiyamaのオリジナルの条件を修飾して調製した(T. Mukaiyama, Y. Murai, S. Shoda, Chem. Lett., 1981, 431)。グリカール3aは、グルコース残基のN−アセチル官能基を欠くLeハプテンに相当する。次に、問題は、この基、並びにガラクトーススペーサーモジュールを導入することである。
【0180】
先に開発された方法論(D.A. Griffith, S.J. Danishefsky, "On the Sulfonamidoglycosilation of Glycals. A Route to Origosaccharides With 2-Amidohexose Subynits+", J. Am. Chem. Soc., 1990, 112, 5811)は、これらの目的を達成するのに適していることが判明した。グリカール3aをヨードニウムジコリジンパークロレート及びベンゼンスルホンアミドと処理し、ヨードスルホンアミド4aを得る。テトラフルオロホウ酸銀の存在下、ガラクタール(9a)の3−スタニルエーテルを用いるアザグリコシル化(S.J. Danishefsky, K. Koseki, D.A. Griffith, J. Gervay, J.M. Peterson, F.E. McDonald, T. Oriyama, J. Am. Chem. Soc., 1992, 114, 8331)で五糖グリカール6aを図3に示すように75%の収率で得た。6aが得られれば、一連のアザグリコシル化を繰り返すか、該グリカールをそのエポキシドとして活性化し、更にグリコシル化を続けることができる。Leハプテンが複合体形成可能な形態に変形できることを示すためには、アリルグリコシドの形成が重要である。スルホンアミド基を目的のアセトアミド基に変換する可能性を示した。グリカール6aを示されたように二段階で脱保護する。パーアセチル化してアセトアミドグリカール7aを得た。ジメチルジオキシランで該グリカールをそのエポキシドに活性化し(R.L. Halcomb, S.J. Danishefsky, J. Am. Chem. Soc., 1989, 111, 6661)、次いで塩化亜鉛の存在下においてアリルアルコールでエポキシドを開環し、所望のパーアセチル化されたβ−アリル五糖が得られる。該五糖を、メトキシドを作用させて脱アセチル化し、標的のLeハプテンをそのβ−アリルグリコシド8aとして得た。(8a:[α]D -72.7°(c.1 MeOH); IR(薄層フィルム) 3350, 2940, 2900, 2830, 1650, 1550, 1365, 1300, 1155, 1070, 1030; 1H NMR(400 MHz, CD3OD)δ5.95(m, 1H), 5.32(d, J=17.25 Hz, 1H), 5.14-5.19(m, 2H), 5.04(d, J=3.83 Hz, 1H), 5.02(d, J=3.50 Hz, 1H). 4.68(d, J=8.15 Hz, 2H), 4.51(d, J=5.70 Hz, 1H) 3.40-4.38(m, 27H). 1.96(s, 3H), 1.23(m, 6H); HRMS(FAB) cald for C35H56NO24Na 900.3325 found 900.3310)。
【0181】
8aのオゾン化によって誘導されるアルデヒドは、Bernstein及びHallの方法でキャリアータンパクと複合体形成されうる。
【0182】
この合成は、公知のLe決定子への最も直接的なルートである(O. Hindsgaul, T. Norberg, J. Le Pendu, R.U. Lemieux, Carbohydr. Res. 1982, 109, 109; U. Spohr, R.U. Lemieux, ibid, 1988, 174, 211;以前の合成に対しては、J.C. Jacquinet, P. Sinay, J. Org. Chem., 1977, 42, 720; S. Nilsson, H. Lohn, T. Norberg, Glycoconjugate J. 1989, 6, 21; R.R. Schmidt, a. Topfer, Tetrahedron Lett. 1991, 32, 3353; W. Kinzy, A. Low, Carbohydrate. Res. 1993, 245, 193を参照)。この方法は、各ステップで立体特異的であり、これは、ドナーとアクセプターの双方としてグリカールが幅広く利用可能であることを示しており、1,2−グリカールエポキシド及び推定されるこれらのN−スルホニルアジリジン対照物を利用することができる。この方法は、多数の類似体の製造を可能にし、複合体形成の戦略のバリエーションを広げることができる。
【0183】
3a及び6aの合成を以下に示す。
【0184】
3a:2.00g(2.47mmol)のラクタールカーボネート2aに、4.44g(9.86mmol)のフコシルフルオライド5aを加えた。混合物を5回ベンゼンで共沸し、2時間高真空下に置いた。アルゴン雰囲気下で、2.77ml(12.33mmol)のジ−t−ブチルピリジン及び16mlの乾燥エーテルを加えた。2.0gの新たに活性化した4Aモレキュラーシーブを加え、混合物を1時間室温で攪拌した。アルゴンのグローブバック中で、2.34g(12.33mmol)の塩化第一スズ(SnCl)及び2.56g(12.33mmol)の過塩素酸銀(AgClO)を加えた。フラスコに還流冷却器を付け、反応物を72時間還流させた。反応を、5mlの飽和重炭酸塩で停止させ、セライトのバッドを通して濾過した。50mlの酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸塩で2回、飽和硫酸銅で2回、及び飽和食塩水で2回洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮した。20%酢酸エチル/ヘキサンでフラッシュクロマトグラフィーにかけ、2.10g(51%)の白色発泡体の3aを得た。
【0185】
3a: [α]D-78.9(c.555, CHCl3); IR(薄層フィルム) 3040, 3000, 2905, 2860, 2830, 1820, 1800, 1710, 1635, 1585, 1570, 1480, 1460, 1440, 1415, 1370, 1350, 1300, 1260, 1205, 1145, 1100, 950, 735, 695, 1H NMR(400MHz, CDCl3)δ8.09(d, J=8.12 Hz, 2H), 8.00(d, J=8.26 Hz, 2H) 7.66(m, 4H), 7.59(d= J=6.74 Hz, 4H), 7.56(t, J=7.27 Hz, 1H), 7.30-7.50(m, 22H) 7.16-7.26(m, 10H) 7.09(m, 2H), 6.99(t, J=7.59 Hz, 2H) 6.89(t, J=7.97 Hz, 1H), 6.43(d, J=6.08 Hz, 1H), 5.46(bs, 1H), 5.38(bs, iH), 5.35(d, J=3.42 Hz, 1H), 4.89(d, J=11.35 Hz, 1H), 4.75-4.80(m, 4H), 4.72(d, J=5.88 Hz, 2H), 4.69(d, J=4.27 Hz, 2H), 4.36-4.55(m, 5H), 4.28(q, J=6.51 Hz, 1H), 4.17(bd, J=5.46 Hz, 1H), 3.90-4.00(m, 6H), 3.85(d, J=2.99 Hz, 1H), 3.82(d, J=2.89 Hz, 1H), 3.56-3.78(m, 4H), 1.07(m, 24H); HRMS(FAB): calcd for C99H106O20Si2Na 1694.6740 found 1694.6787。
【0186】
6a:230mg(0.12mmol)のヨードスルホンアミド4aを、乾燥ベンゼンで5回共沸し、高真空下に2時間置いた。15等量のスズエステル9a(561mg(1.80mmol)の6a−TIPS−ガラクタール及び673μl(1.32mmol)のビス(トリブチルスズ)オキシドの80mlベンゼン溶液から、新たに活性化した4Aモレキュラーシーブを備えたDean-Starkトラップを用いて水を一夜共沸して除くことによって調製した。)の2.4mlのTHF溶液を加えた。この溶液にアルゴン雰囲気下、攪拌しながら200mgの新たに活性化した4Aモレキュラーシーブを加えた。室温で1時間攪拌した。−78℃に溶液を冷却し、カニューレを介して、187mg(0.96mmol)のテトラフルオロホウ酸銀の2.4mlTHF溶液を加えた。15時間以上かけて室温に暖め、明るい黄色に変わった反応物に2mlの飽和重炭酸塩を加えて反応を停止させた。反応混合物をセライトのパッドを通して分液ロートに濾過した。セライトのパッドを酢酸エチルで徹底的に洗浄した。有機層を飽和重炭酸塩で2回、及び飽和食塩水で2回洗浄した。有機層をMgSOで乾燥した。濃縮し、25%酢酸エチル/ヘキサンでクロマトグラフィーにかけ、193mg(75%)の白色発泡体6aを得た。
【0187】
6a: [α]D-126.4°(c, 505, CHCl3), IR(薄層フィルム) 3500, 3040, 3000, 2905, 2840, 1820, 1800, 1705, 1635, 1590, 1440, 1410, 1255, 1195, 1100, 1080, 1035, 815, 730, 695; 1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ8.09(app t, 4H), 7.08-7.65(m, 46H), 6.90(t, J=7.65 Hz, 3H), 6.76(d, J=6.91 Hz, 2H), 6.12(d, J=6.59 Hz, 1H), 5.50(bs 1H), 5.45(bs 1H), 5.28(app t, 2H), 3.03-4.91(m, 36H), 1.09(m, 45H); LRMS (FAB): cald for C120H141NO26SSi3Na 2153 found 2153。
【0188】
固体支持体上での複雑に分岐したオリゴ糖ドメインの組立のための戦略:生物複合体形成可能な形態でのルイスドメインの簡潔な合成への応用
Le(タイプ1)ドメインの組立は、ラクタールを便利な出発物質として使用するLe(タイプ2)標的よりも相対的にかなり困難な仕事である。タイプ1決定子の場合、ラクタールは有効な出発物質ではない。Le系の合成では、ポリマーをベースとしたオリゴ糖構築方法を適用する機会があった(S.J. Danishefsky, K.F. McCLure, J.T. Randolph, R.B. Ruggeri, Science 1993, 260, 1307)。この戦略は、図4にまとめてある。この戦略では、ポリマーに結合されたグリカール1を1,2−アンヒドロ誘導体2の直接の変換を経て糖供与用に活性化する。2と受容体であるグリカール3の反応で4が得られる。直接のエポキシ化と受容体3との反応を繰り返す。この方法の自己管理性及び合成の最後での簡単な「1回の」精製は、有用な特性である。
【0189】
本発明は、ポリマー結合法の重要な追加の側面を開示する。このロジックは図5に示されている。各グリコシル化で、唯一のC水酸基が生じる、原則的には(及び実際には、以下を参照)、この水酸基は、溶液ベースのドナーとの反応で糖受容体として機能しうる。支持体にまだ保持されている5のグリカール結合は、更に伸長されうる。この方法では、Cでの分岐は保護基の使い分けの要求を最小限にしながら達成される(複雑なサポニンの合成でのこの戦略の応用に対して、J.T. Randolph, S.J. Danishefsky, J. Am. Chem. Soc., 1993, 115, 8473を参照)。
【0190】
原則的には、この分岐は、伸長する鎖の何れの位置でも実行することができる。このような伸長に対しては、伸長するドメインの「ポリマー側」(非還元末端)上に生じる全ての先に生じた水酸基をふさぐ必要があるであろう。従って、ポリマーに結合されたオリゴ糖は、適切な場合には、ドナー又はアクセプターとして供される。
【0191】
糖鎖を小さな単位に分割する際に最初に払われた努力によって、四糖グリカール6を同定した。これは最終目的としてのH−タイプの血液型特異性に結びつく。ポリマーに支持されたガラクタール7(ポリマー支持体として、刊行物に記載された手順を用いて機能化された1%ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンを使用した:T-H. Chan, W.-Q. Huang, J. Chem,. Soc., Chem. Commun. 1985, 909; M.J. Farrall. J.M.J. Frechet, J. Org. Chem., 1976, 41, 3877)を3,3−ジメチルジオキシラン(R.W. Murray, R. Jeyaraman, J. Org. Chem. 1985, 50, 2847)の溶液と反応し、対応する1,2−アンヒドロ糖グリコシルドナーを得る。これを、ZnClの存在下、グルカール誘導体8の溶液で処理し、9(R.L. Halcomb, S.J. Danishefsky, J. Am. Chem. Soc. 1989, 111, 6661)を得る。このポリマーに結合された二糖は、Sn(OTf)の存在下におけるフコシルフルオライド10(K.C. Nicoloau, C.W. Hummel, Y. Iwabuchi, J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 3126)の溶液との処理で、グリコシルアクセプターとして作用し、11を与える。テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)を用いて、支持体から三糖グリカールを回収し、7から50%の全収率で12を得た。
【0192】
次に、ポリマーから回収された三糖は更なる合成に使用することができる。この目的に対しては、化合物12をTIPSClとの反応でシリルエーテル13に変換する。該シリルエーテルをPhSONHの存在下、I(coll)ClOを作用させてヨードスルホンアミド誘導体14に変換した。AgBFの存在下での14とグリカールスズエステル誘導体15との反応で、16を77%の収率で得た(D.A. Griffith, S.J. Danishefsky, J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 5811)。四糖グリカール16を脱保護し、パーアセチル化して、6を得た(S.J. Danishefsky, K. Koseki, D.A. Griffith, J. Gervay, J.M. Peterson, F.E. MsDonald, T. Oriyama, J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 8331)。
【0193】
このように、連続したポリマー−ベース及び溶液−ベースの方法によって、完全なH−タイプの決定子の合成を達成した。次の標的は、より複雑なLe六糖17でる。方法は、図6に示したような手順に従った。ポリマーに結合されたガラクタール7を、3,3−ジメチルジオキシランでエポキシ化し、次いで、グルカール誘導体19と反応し18に変換する。次に、二糖ジオールををSn(OTf)の存在下でフコシルドナー10を用いてビスフコシル化し、20を得る。TBAFで支持体から回収し、21を得た。これは、7から40%の全収率で得られた。化合物21を、TIPSClと反応し、22を得た。
【0194】
I(coll)ClOとPhSONHを用いて、22から得られるヨードスルホンアミド23を、AgBFの存在下でラクタール誘導体24と反応し、六糖グリカール25を55%の収率で得た。25の脱保護は2段階で達成され(シリルエーテルを除去するためのTBAFと、これに続く、芳香族保護基を除去するためのNa/NH還元)、粗生成物をパーアセチル化し、26を51%の全収率で得た。化合物26を、1,2−アンヒドロ糖誘導体を経て、アリルグリコシド17に変換した。これは、Bernstein及びHallの方法でタンパク質と引き続きカップリングするために、オゾン分解でアルデヒド(R=CHCHO)に活性化しうる。
【0195】
要するに、本発明は、生物認識に重要な分岐パターンを含む、複雑な炭水化物ドメインの合成のための固体支持体グリカール組立法に拡張される。特に、ヒト胃上皮組織へのH. pyloriの結合に対する決定子が、保護基の操作の一部の複雑さを十分に回避しながら簡単に、立体特異的に形成される。
【0196】
実験手順:
6:1H NMR(400 MHz, CDCl3); δ6.39(d, 1H, J=6.2 Hz, H1ガラクタール), 5.65(d, 1H, J=8.9 Hz, NHAc), 5.35(d, 1H, J=3.8 Hz), 5.33(m, 1H), 5.29(d, 1H, J=2.6 Hz), 5.27(d, 1H, J=3.1 Hz), 5.17-5.09(m, 2H), 4.97-4.90(m, 2H), 4.81(dd, 1H, J=3 Hz, J=6.1 Hz, H2ガラクタール), 4.75(d, 1H, J=8.0 Hz), 4.52(m, 1H), 4.48(dd, 1H, J=12.0 Hz), 4.44-4.06(m, 8H), 3.88-3.77(m, 4H), 3.61(m, 1H), 2.18-1.97(m, 33H, COCH3), 1.18(d, 3H, J=6.5 Hz, CH3フコース); 13C NMR(CDCl3): δ170.80, 170.77, 170.72, 170.67, 170.62, 170.34, 170.21, 170.09, 170.01, 169.99, 169.65, 144.92(C1ガラクタール), 100.22, 98.83, 98.58, 95.55, 74.48, 73.38, 73.13, 73.06, 71.48, 71.01, 70.68, 67.97, 67.42, 67.18, 67.05, 65.94, 64.83, 62.35, 62.22, 60.88, 60.37, 54.21, 23.23, 22.15, 20.85, 20.82, 20.79, 20.76, 20.65, 20.61, 20.57, 15.51, (C6フコース); IR(薄層フィルム): 3368.7(NH), 2965.6, 2934.6, 1746.5(C=O), 1537.5, 1435.9, 1371.3, 1228.5, 1065.0, 1046.0; [α]D23=-51.1°(c 1.8, CH2Cl2); HRMS(FAB); calcd. for C46H63NNaO28: m/z=1100.3434, found 1100.3436。
【0197】
21:ポリマー結合されたガラクタール7(0.85mmolグリカール/gを導入)を、フリット化した吹き出し口を備えた丸底フラスコに置き、これをCHClにN下で懸濁し、0℃に冷却し、次いで3,3−ジメチルジオキシランの溶液で処理した。この混合物を、0℃で40分(テフロン(登録商標)でコートした磁気撹拌棒で)攪拌し、この後、可溶物をフリット化した吹き出し口を介して(N圧)で濾過して除いた。ポリマーに結合された1,2−アンヒドロ糖を、次の段階用に物質を乾燥するため、数時間排気(約0.1Torr)した。この物質を再度N下に置き、次いで19(THF中、0.5M溶液として〜10モル等量)で処理した。この懸濁液を−40℃に冷却し、ZnCl(THF中、1.0M溶液として〜2モル等量)で処理した。反応混合物をゆっくりrtまで暖め(約2時間以上)、次いで更に3〜4時間攪拌した。可溶物を濾過により除き、ポリマー18をTHFで数回洗浄し、次いで減圧下に乾燥した。化合物18に、グローブバッグ中で、固体状のSn(OTf)(〜等モル量)を加え、混合物をN下に置き、0℃に冷却し、その後10(THF中、0.2M溶液として、〜5モル等量)及びジ−tert−ブチルピリジン(〜8モル等量)で処理した。この懸濁液をrtまで暖め、8〜10時間攪拌した。混合物を無水THF(2回)、ジオキサン(2回)、再度THFで軽く洗浄し、次いで減圧下に乾燥した。化合物20(100mg)をTHFに懸濁し、AcOHとTBAFの1:3混合物(TBAF中、〜0.2M、〜10モル等量)で処理し、混合物を40℃で18時間攪拌した。ポリマーをTHF(3回)で軽く洗浄し、洗浄液を合わせ、濃縮し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(1:1EtOAc:ヘキサン)で精製した。化合物21(18mg)を無色固体として得た(7から40%の全収率)。
【0198】
1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ7.40-7.25(m, 30H, Ar H), 6.18(d, 1H, J=6.0 Hz, H1 , グルカール), 5.26(d, 1H, J=3.5 Hz, H1フコース), 5.09(d, 1H, J=3.7 Hz, H1フコース), 4.96(t, 2H, J=10.8 Hz, PhCH2), (4.90-4.56(m, 13H), 4.43(m, 1H), 4.15-4.06(m, 4H), 3.97(dt, 1H, J=8.3 Hz, J=2.4 Hz), 3.87-3.65(m, 10H), 3.64(d, 1H), 3.57(d, 1H), 2.69(br, 1H, OH), 2.52(br, 1H, OH), 1.11(d, 3H, J=7.0 Hz, CH3フコース), 1.09(d, 3H, J=7.0 Hz, CH3フコース); 13C NMR(CDCl3); δ153.37(C=O), 145.75(C1グルカール), 138.60, 138.52, 138.19, 137.61, 128.55, 128.52, 128.44, 128.24, 128.16, 128.07, 127.62, 127.56, 127.45, 98.71, 98.38, 97.65, 97.34, 79.26, 78.87, 78.67, 78.01, 77.79, 77.65, 76.37, 76.10, 74.92, 74.40, 74.16, 73.95, 72.86, 72.64, 72.53, 67.43, 67.29, 61.31, 60.90, 16.65(C6フコース), 16.53(C6フコース); IR(薄層フィルム): 3467.0(OH), 3029.6, 2923.6, 1807.2(C=O), 1647.3, 1496.0, 1453.5, 1358.1, 1240.2, 1095.6, 1049.2, 738.5, 697.2; [α]D23=-82.5°(c 0.4, CH2Cl2); HRMS(FAB); calcd. for C67H74NaO18: m/z=1189.4772, found 1189.4757。
【0199】
25:23(60mg、34μmol)及び粉末状の4Aモレキュラーシーブ(200mg)の混合物へ、N下でカニューレを介して24(0.21mmol)の無水THF(1.5ml)溶液を加えた。この攪拌懸濁液を、−78℃に冷却し、次いでAgBF(0.21mmol)の0.25ml無水THF溶液で処理した。この混合物を攪拌し、ゆっくりと一夜rtに暖めた。明るい黄色になった懸濁液を、攪拌しながらTLC(2.5 EtOAc:ヘキサン)で23の痕跡が全く示されなくなるまで更に36時間加熱した。この混合物を飽和NHCl(5ml)で処理し、次いでEtOAc(3×10ml)で抽出し、有機層をMgSOで乾燥した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(1:3 EtOAc:ヘキサン)で精製し、無色の油状物として25(42mg、55%)を得た。
【0200】
1H NMR(400 MHz, アセトン-d6): δ8.17(d, 2H, J=7.3 Hz, PhSO2), 7.50-7.20(m, 33H, ArH), 6.52(d, 1H, J=10.5 Hz, NH), 6.30(dd, 1H, J=6.0 Hz, H1グルカール), 5.35-5.32(m, 2H), 5.25(d, 1H, J=7.9 Hz), 5.15(m, 2H), 4.99-4.92(m, 3H), 4.86-4.52(m, 14H), 4.45(dd, 1H, J=7.91 Hz, J=2.4 Hz), 4.32-4.23(m, 3H), 4.22(dd, 1H), 4.17(d, 1H, J=10.1 Hz), 4.08-3.84(m, 18H), 3.79-3.73(m, 2H), 3.66(m, 1H), 3.55(t, 1H, J=6 Hz), 3.50(dd, 1H, J=9.7 Hz), 1.33(d, 3H, J=6.5 Hz, CH3フコース), 1.31(d, 3H, J=6.4 Hz, CH3フコース), 1.20-0.98(m, 84H, 3x Si(i-Pr)3); 13C NMR(アセトン-d6), 145.66(C=O), 132.72, 131.48, 131.45, 131.28, 131.16, 130.77, 130.48, 121.31, 120.11, 119.86, 119.78, 119.25, 95.63, 94.70, 91.37, 89.64, 89.31, 86.52, 73.38, 72.24, 71.00, 70.71, 70.37, 69.80, 69.59, 69.06, 68.23, 67.92, 67.38, 67.10, 66.49, 65.67, 65.33, 64.60, 64.34, 64.03, 63.45, 63.30, 59.46, 58.83, 58.37, 54.45, 53.32, 49.86, 19.67(C6フコース), 18.42(C6フコース), 9.55, 9.48, 9.45, 9.31, 9.23, 3.82, 3.70, 3.64; IR(薄層フィルム): 3491.9(OH), 3030.1, 2941.2, 2865.5, 1835.8, 1819.5, 1649.8, 1496.2, 1462.3, 1349.9, 1245.5, 1155.2, 1095.1, 1049.4, 882.2, 734.8, 692.0; [α]D23=33.8°(c 2.0, CH2Cl2); HRMS(FAB): calcd for 12C12013CH179NNaO29SSi4: m/z=2278.1292, found 2278.1296。
【0201】
17: 1H-NMR(400 MHz, CD3OD): δ6.00(m, 1H, J=5.6 Hz, CH2CH=CH2), 5.37(dd, 1H, J=1.6 Hz, J=7.3 Hz, CH2CH=CH2), 5.20(dd, 1H, J=1.6 Hz, J=9.5 Hz, CH2CH=CH2), 5.18(d, 1H, J=3.9 Hz, H1フコース), 5.10(d, 1H, J=3.8 Hz, H1フコース), 4.64(d, 1H, J=6.9 Hz), 4.45(d, 1H, J=7.4 Hz), 4.43-4.23(m, 2H), 4.27(dd, 1H, J=9.3 Hz, J=10.6 Hz), 4.23-4.11(m, 2H), 4.02-3.29(m, 31H), 2.06(s, 3H, NAc), 1.31(d, 3H, J=6.6 Hz, CH3フコース, 1.29(d, 3H, J=6.6 Hz, CH3フコース); 13C NMR(CD3OD): δ173.2(C=O), 135.73(CH2CH=CH2), 105.13, 103.30, 102.49, 101.62, 99.63, 96.86, 80.79, 80.67, 78.44, 76.67, 76.49, 75.89, 74.80, 74.59, 73.94, 73.61, 73.40, 71.55, 71.38, 71.16, 70.42, 70.26, 70.14, 67.77, 67.30, 67.21, 62.79, 62.34, 61.99, 55.54, 22.97 (NAc), 16.65(2 C's, C6フコース); IR(薄層フィルム): 3376.6 (OH), 2924.2, 1652.5(C=O), 1383.1, 1032.4; [α]D23=-12.8°(c 0.25, MeOH); HRMS(FAB): calcd. for C41H69NNaO29: m/z=1062.3853, found 1062.3837。
【0202】
ヒト乳房腫瘍関連抗原の合成に応用されるグリカール組立法
本発明は、六糖の収斂的合成であって、2つの三糖ドメインがカップリングに容易に反応しうる形態で効果的に組み立てられたものを提供する。ABC三糖の合成を図8に示す。この三糖のα−結合は、確立された条件(Gordon, D.M.; Danishefsky, S.J., Carbohydrate Res., 1990, 206, 361-366)を用いて、フルオロ糖ドナー4bを使用して形成されうる。適切な二糖アクセプターの調製は、5b(Danishefsky, S.J.; Behar, V.; Randolph, J.T.; Lloyd, K.O., J. Am. Chem. Soc., 1995, 0000)から開始される。5b自身は、グリカールのカップリングから得られる。ベンジル化と、次の脱シリル化、カーボネートの除去、及び選択的なジベンジル化で二糖6bが得られる。このようにして得られたアクセプターを、修飾されたMukaiyamaの条件(Mukaiyama, T.; Murai, Y.; Shoda, S., Chem.Lett., 1981, 431-433)を使用してフルオロ糖4bと反応し、三糖グリカール7bを得た。PMBエーテルを脱保護し、ABC三糖8bを得た。これを適切なDEF三糖ドナーとのカップリングに使用した。
【0203】
DEF三糖の合成を図9に示した。ガラクタール9bのエポキシ化とアクセプター10bとの標準のカップリング(Halcomb, R.L.; Danishefsky, S.J., J. Am. Chem. Soc., 1989, 111, 6661-6666)で位置選択的に二糖11bを得た。フルオロ−フコース12bを使用したフコシル化(Dejter-Juszynski, M.; Flowers, H.M., Carbohydr. Res., 1973, 28, 61)で、5:1の比のモノグリコシル化位置異性体を得た。主異性体は所望の三糖13bであった。この物質を、標準的な条件下で処理し、トランス−ジアキシャルヨードスルホンアミド14bを得た。
【0204】
14bのようなヨードスルホンアミドを用いるABC三糖受容体との直接のカップリング(Griffeth, D.A.; Danishefsky, S.J., J. Am. Chem. Soc., 1990, 112, 5811-5819; Danishefsky, S.J.,; McDonald, F.E.; Oriyama, T., J. Am. Chem. Soc., 1992, 114, 8331-8333)はうまくいかず、三糖中に異なったドナー官能基を導入した。実際には、ヨードスルホンアミド14bを過剰のリチウムエタンチオレートで処理し、エチルチオグリコシド15bを得た(図10)。本発明者らにより確立された先例により、15bから所望のβ−結合した生成物を与える、スルホンアミドの関与を予想することができる(Griffith, D.A., Ph.D.学位論文、エール大学、1992年)。ドナー15bを、アクセプター8bの存在下でMeOTfと処理すると、10:1の六糖異性体混合物が得られた。主生成物16bが70〜85%の収率で得られた。
【0205】
セラミドの結合と、最終生成物の取得は、16bのエポキシ化と、引き続きのZn(OTf)で促進されるスズエーテル17bとの反応で開始される(Liu, K.K.-C.; Danishefsky, S.J., J. Am. Chem. Soc., 1993, 115, 4933-4934)。このセラミドカップリングの収率は低いが、この反応が三糖7bで行われた場合、対応する生成物が66%の収率で得られた。次にこの物質を使用して18bを得た。アセチル化の後、セラミド側鎖を、パルミチン酸無水物の存在下でH下においてリンドラー触媒を用いてアジド官能基を還元し、18bを得た。脱シリル化とケン化を行った後、金属を溶解しての脱保護を行い、MeOHで反応を停止した。粗製混合物をパーアセチル化し、次いでケン化することでグリコスフィンゴリピッド1bを得た。アノメリックプロトンのケミカルシフト及びカップリング定数のみが天然物に対して報告されている。合成した1bのスペクトルはこのデータと完全に一致した。更に、この生成物を精密質量分析、並びにH及び13C NMRで特徴づけた。合成した物質はまた、モノクローナル抗体MBr1に結合することが示された。
【0206】
加えて、本発明は対応するアリルグリコシドを提供する(図11)。上記のような16bの脱保護、及びアセチル化で、六糖グリカールのパーアセテートを得た。エポキシ化、アリルアルコールとの反応、及びケン化でアリルグリコシド19bを得た。
【0207】
Le決定子の場合と同様に、19bのアリル基のオゾン分解を、タンパク質のリジン残基への還元的カップリングに向けた段階として行った。
【0208】
3bの合成:
3−O−(4−メトキシベンジル)−D−ガラクタール
D−ガラクタール(2b)(3.70g、25.3mmol)及びジブチルスズオキシド(6.30g、1.0等量)の乾燥ベンゼン(150ml)懸濁液を、水を共沸により除去しながら、2時間還流下に加熱した。反応物を冷却し、PMBCl(3.80ml、1.1等量)及びテトラブチルアンモニウムブロマイド(9.10g、1.1等量)で処理し、4時間還流した。反応物をシリカカラムを通して濾過し、EtOAc/ヘキサン(4:1)で溶出した。生成物を含むフラクションを濃縮し、残渣をヘキサンで粉末化し、4.50g(67%)の生成物を白色の結晶性固体として得た。
【0209】
mp(ヘキサン), 117-118°C; (a)23= -23.0°(CHCI3, c=1.1); IR(KBr) 3313(br), 1645, 1513, 1228, 1082, 821 cm-1 1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ7.28(2H, d, J=8.4 Hz), 6.89(2H, d, J=8.4 Hz), 6.44(1H, dd, J=6.4 Hz), 4.70(1H, dt J=6.3, 1.9 Hz), 4.59-4.52(2H, ABq, J=11.4 Hz), 4.20-4.18(1H, m), 4.04-3.97(1H, m), 3.90-3.82(2H, m), 3.81(3H, s), 2.73(1H, d, J=3.1 Hz, C4-OH), 2.54(1H, dd, J=8.2, 4.2 Hz, C6-OH); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ159.46, 145.02, 142.05, 129.46, 113.95, 99.36, 76.12, 70.17, 70.14, 63.65, 62.74, 55.26; LRMS(NH3) 284(M+ NH4)+, 266(M)+, 249。
【0210】
4,6−ジ−O−ベンジル−3−O−(4−メトキシベンジル)−D−ガラクタール(3b)
3−O−(4−メトキシベンジル)−D−ガラクタール(2.28g、8.56mmol)及び臭化ベンジル(3.75ml、3.68mol等量。新たに塩基性アルミナを通したもの)のDMF(30ml)溶液を、N下、0℃でNaH(1.37g、4.0mol等量)で二回分けて処理した。反応物を0.5時間0℃で、更にrtで1時間攪拌した。反応物を50gの砕いた氷に注意深くあけ、100mlの水で希釈し、次いでEtOAc/ヘキサン(1:1、100ml×3)で抽出した。有機抽出物を水(100ml×2)で洗浄し、乾燥(NaSO)し、濃縮した。15%EtOAc−ヘキサンでフラッシュクロマトグラフィーにかけ、3.58g(94%)の表題化合物を透明な液体として得た。
【0211】
[α]23D=-48.2°(CHCI3, c=0.85); IR(neat) 3030, 2867, 1645, 1613, 1513, 1247, 1092, 821, 736 cm-1; 1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ7.34-7.23(12H, m), 4.62(1H, d, J=12.0 Hz), 4.59-4.51(2H, ABq, J=11.7 Hz), 4.50-4.39(2H, ABq, J=11.9 Hz); 13C-NMR(100 MHz, CDCl3) δ159.04, 143.99, 138.30, 137.90, 130.43, 128.26, 128.20, 128.03, 127.77, 127.57, 127.56, 113.67, 100.00, 75.58, 73.28, 73.17, 71.13, 70.42, 70.28, 68.35, 55.15; LRMS(NH3) 464(M+ NH4+, 100), 326(18), 309(48), 253(17)。
【0212】
4bの合成
ガラクタール3b(3.20g、7.17mmol)のCHCl溶液を、N下、0℃でジメチルジオキシラン(0.09M、80ml)で処理し、全てのガラクタールが消費されるまで(0.5〜1時間、TLC ヘキサン中30%のEtOAc)攪拌した。揮発成分を乾燥Nの気流で0℃において除去した。残渣を30mlの乾燥THFにN下、0℃で溶解し、TBAF(36ml、モレキュラーシーブ上で保存したもの)で処理し、次いで周囲温度で20時間攪拌した。暗褐色の溶液を、シリカのパッド(〜4cmの深さ)を通して濾過し、EtOAc(200ml)で洗浄した。濾液を水(200ml×3)で洗浄し、乾燥(MgSO)し、濃縮した。残渣を30%EtOAc−ヘキサン(50ml)に再溶解し、シリカの短いカラム(10cm d×4cm h)を通して濾過し、同じ溶媒系(1L)で洗浄した。濾液を濃縮し、2.59gのフルオロヒドリンを>90%の純度で得た。残渣を、N下、0℃で乾燥DMF(30ml)に溶解し、臭化ベンジル(958μl、1.5等量、塩基性アルミナを通して新たに濾過したもの)で、最後にNaH(322mg、60%懸濁物、1.5等量)で処理し、0℃で30分、rtで30分攪拌した。反応物を100gの氷にあけて、反応を停止し、1:1 EtOAc:ヘキサン(150ml×2)で抽出した。有機抽出物を水(150ml×2)で洗浄し、乾燥(MgSO)し、減圧下に濃縮した。10%EtOAc−ヘキサンでフラッシュクロマトグラフィーにかけ、2.00g(49%)の表題化合物を黄色がかった液体として得た。
【0213】
[α]23D= +15.3°(CHCl3, c=0.85); IR (CHCl3フィルム) 2916, 1612, 1513, 1248, 1103, 1056, 734cm-1; 1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ7.35-7.24(17H, m), 6.84(2H, d, J=8.4 Hz), 5.15(1H, dd, J=53.2, 7.0 Hz), 4.92(1Hz, d, J=11.6 Hz), 4.48-4.74(2H, ABq, J=11.8 Hz), 3.96-3.89(1H, m), 3.86 (1H, br s), (3H, s), 3.65-3.56(3H, m), 3.51(1H, dd, J=9.8, 2.8 Hz); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ159.22, 138.33, 138.11, 137.62, 130.16, 129.19, 128.40, 128.29, 128.21, 128.04(2C), 127.90, 127.81, 127.69, 127.59, 113.77, 110.20(d, J=214 Hz), 80.60(d, J=11.3 Hz), 79.00(d, J=20.5 Hz), 74.92, 74.52, 73.59(d, J=5.0 Hz), 73.54, 72.99, 72.70, 68.34, 55.20; LRHS(NH3) 454(M + NH4+, 100)。
【0214】
6bの合成
TIPS−カーボネートガラクタール5b(Danishefsky, S.J.; Behar, V.; Randolph, J.T.; Lloyd, K., J. Am. Chem. Soc., 1995, 0000)(4.28g、5.62mmol)のTHF(25ml)−MeOH(5ml)溶液をTBAF溶液(1.0M、6.75ml、1.2等量)で処理した。6時間後、追加のTBAF(4ml)を加え、更に3時間攪拌した。反応物を濃縮し、4:1 EtOAc−ヘキサンで直接にクロマトグラフィーにかけ、2.20gのトリオールを得た。環状カーボネートの残りの混合物及び混合カーボネートを、MeOH中でMeONa(1.0ml、25wt%)で加水分解し、クロマトグラフィーで精製した。全収量は3.02g(93%)であった。この物質を直接ジベンジル化のステップに使用した。
【0215】
1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ7.35-7.24(15H, m), 6.43(1H, d, J=6.3 Hz), 4.87(1H, dd, J=6.3, 3.4 Hz), 4.84(1H, d, J=11.4 Hz), 4.63(2H, 明確な s), 4.61(1H, d, J=11.4 Hz), 4.53-4.47(3H, m), 4.19-4.16(3H, m), 3.87-3.84(2H, m), 3.78-3.66(3H, m), 3.46(2H, 明確な d, J=4.6 Hz), 3.29(1H, t, J=5.5 Hz), 3.08(1H, br), 2.73(2H, br); 13C-NMR(100 MHz, CDCl3) δ144.70, 138.41, 138.22, 137.83, 128.45, 128.33(2C), 128.12, 127.84, 127.73, 127.64, 127.57, 102.28, 99.74, 78.99, 76.03, 74.64, 74.07, 73.24(2C), 73.17, 72.64, 70.20, 69.10, 67.79, 62.15。
【0216】
上記のようにして得たトリオールグリカール(2.95g、5.1mmol)、ジブチルスズオキシド(1.33g、1.05等量)及びビストリブチルスズオキシド(1.69ml、0.65等量)の乾燥ベンゼン(50ml)混合物をN下で、水を共沸により除去しながら、5時間還流した。反応物を沸点以下に冷却し、臭化ベンジル(2.43ml、4.0モル等量)及びテトラブチルアンモニウムブロマイド(3.29g、2.0等量)で処理した。ベンゼン10mlを蒸留で除き、反応物を16時間還流した。反応物を直接にシリカカラムに導入し、15〜20%のEtOAc−ヘキサンで溶出して、3.48g(90%)の生成物6bを透明な油状物として得た。
【0217】
[α]23D= -3.3°(CHCl3, c=0.87); IR(CHCl3フィルム) 2867, 1652, 1454, 1364, 1097, 736cm-1; 1H-MNR(400 MHz, CDCl3) δ7.35-7.21(25H, m), 6.45(1H, d, J=6.2 Hz), 4.88(1H, dd, J=6.2, 3.9 Hz), 4.83(1H, d, J=10.9 Hz), 4.69(2H, 明確な s), 4.68(1H, d, J=10.9 Hz), 4.59(2H, 明確な s), 4.55(1H, d, J=7.8 Hz), 4.49(2H, 明確な s), 4.47(2H, 明確な s), 4.29(1H, dd, J=9.6, 5.8 Hz), 4.18(1H, t, J=4.4 Hz), 4.13 (1H, m), 3.99(1H, br s), 3.85(1H, dd, J=10.6, 6.4 Hz), 3.75-3.60(4H, m), 3.47-3.41(2H, m); 13C-NMR(100 MHz, CDCl3) δ144.43, 138.64, 138.42, 137.99, 137.84, 137.80, 128.40, 128.34, 128.26, 128.23, 128.18, 128.15, 127.82, 127.75, 127.69, 127.67, 127.65, 127.55, 127.51, 127.46, 127.31102.56, 99.56, 80.57, 78.69, 75.72, 75.10, 73.57, 73.32, 72.94, 72.28, 71.94, 70.12, 68.90, 67.85, 66.62; LRMS(NH3) 776(M + NH4+, 100)。
【0218】
7bの合成
ラクタール6b(1.32g、1.74mmol、1.0等量)及びフルオロ糖4b(1.49g、2.60mmol、1.5等量)をエーテル中で混合し、濃縮した。この混合物を、乾燥ベンゼン(25ml×2)でエバポレーションして乾燥し、真空中で2時間乾燥し、次いでグローブバッグ中でジ−t−ブチルピリジン(389uL、1.0等量)で処理し、窒素雰囲気下で乾燥エーテル(18ml)に溶解した。別の50mlフラスコに、4A M.S.(4.0g)を入れ、減圧下に炎で乾燥し、室温に冷却した。無水過塩素酸銀(360mg、1.0等量)及びSnCl(329mg、1.0等量)をグローブバッグ中で加え、窒素でフラッシュした。塩混合物を水浴中に置き、糖の溶液を、両方に先端を設けた針を通して導入し、混合物を2分間超音波にかけた。反応物をアルミニウムホイルでラップし、45時間rtで攪拌した。濾液(200ml)を希NaHCO(100ml×2)で洗浄し、乾燥(MgSO)し、濃縮した。15〜20%のEtOAc/ヘキサンでフラッシュクロマトグラフィーにかけ、三糖(1.107g、49%)と不純なラクタールを得た。三糖部分を2%エーテル−塩化メチレンで再度クロマトグラフィーにかけ、879mg(39%)の所望のα−生成物及び195mg(8.6%)のβ−生成物を得た。不純物を含むラクタールのフラクションを3〜4%のエーテル−塩化メチレンで再度クロマトグラフィーにかけ、479mg(36%)の純粋なラクタールを得た。回収された出発物質を基にして77%のカップリング(61%のα−生成物)収率であった。
【0219】
[α]23D=+41.8°(CHCl3, c=1.8); IR(CHCl3フィルム) 2867, 1648, 1513, 1496, 1453, 1364, 1248, 1097, 735 cm-1; 1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ7.33-7.12(42H, m) 6.83(2H, d, J=8.4 Hz), 6.45(1H, d, J=6.0 Hz), 5.03(1H, d, J=2.3 Hz), 4.91-4.76(6H, m), 4.68-4.40(12H, m), 4.23-3.97 (11H, m), 3.86-3.82(1H, dd, J=2.3 Hz), 3.76(3H, s), 3.69-3.64(2H, m), 3.53(1H, t, J=8.7 Hz), 3.47-3.43(1H, m), 3.40-3.36(1H, m), 3.34-3.31(1H, dd, J=9.9, 2.8 Hz), 3.22(1H, dd, J=8.3, 4.8 Hz); 13C-NMR(100 MHz, CDCl3) δ158.93, 144.59, 138.98, 138.84, 138.78, 138.64, 138.58, 138.06, 138.02(2C), 130.82, 129.04, 128.33, 128.24, 128.21, 128.15, 128.08, 128.05, 127.83, 127.81, 127.72, 127.64, 127.58, 127.55, 127.50, 127.44, 127.41, 127.36, 127.33, 127.31, 113.65, 103.02, 100.39, 100.01, 80.93, 78.93, 78.70, 76.53, 76.11, 75.14, 74.84, 74.79, 74.35, 73.91, 73.59, 73.36, 73.15, 73.10, 72.98, 72.15, 72.10, 71.99, 70.55, 69.25, 67.92(2C), 67.69, 55.19。
【0220】
8bの合成
PMB−三糖(37mg、0.028mmol)のCHCl(1ml)溶液を0℃に冷却した。この反応物を、シリカカラムに直接導入し、20%EtOAc−ヘキサンで溶出して所望の生成物を28mg(84%)得た。
【0221】
[α]23D= +45.6°(CHCl3, c=1.78); IR(CHCl3フィルム) 2866, 1648, 1496, 1453, 1248, 1097, 735 cm-1; 1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ7.36-7.15(40H, M), 6.43(1H, d, J=6.2 Hz), 5.09, (1H, d, J=3.3 Hz), 4.85(1H, dd, J=6.2, 3.6 Hz), 4.83-4.65(5H, m), 4.61-4.41(9H, m), 4.29-4.08(8H, m), 4.02(1H, d, J=2.6 Hz), 3.97(1H, d, J=2.2 Hz), 3.93(1H, t, J=8.4 Hz), 3.86-3.78(2H, m), 3.67-3.61(2H, m), 3.53(1H, dd, J=8.5, 4.8 Hz); 13C-NMR(100 MHz, CDCl3) δ144.38, 138.78, 138.62, 138.47, (2C), 138.20, 138.00, 137.88, (2C, 128.31, 128.29, 128.23, 128.19 , 128.16, 128.05, 127.88, 127.83, 127.62, 127.57, 127.49, 127.45, 127.43, 127.41, 127.37, 127.32, 127.23, 102.68, 99.89, 99.34, 80.82, 78.72, 77.49, 77.10, 75.88, 75.13, 75.03, 74.23, 73.62, 73.05, 73.01, (3C), 72.62, 72.19 (2C), 70.46, 69.66, 68.92, 67.85, 67.74, 67.54。
【0222】
11bの合成
グリカール9b(4.32g、3.14mmol)をCHCl(20ml)に溶解し、0℃に冷却した。次に、これを0℃でジメチルジオキシラン(219ml、〜3.14mmol)と処理した。エポキシ化は、約1時間で完結し、次に反応混合物を乾燥Nの気流を用いて乾燥するまで濃縮した。残渣を、ベンゼン(20ml)で一回更に共沸し、真空ラインに0℃で30分置き、その後、THF(60ml)に溶解し、−78℃に冷却した。上記溶液に、カニューレを介して、共沸により乾燥させたガラクタール10b(3.32g、10.95mmol、20mlTHF)、次いでZnCl(26.3ml、1.0Mエーテル溶液)を加えた。反応混合物を室温まで暖め、一夜攪拌した。飽和NaCO水溶液(40ml)で処理した後、反応混合物を濃縮し、エーテル(500ml)で抽出した。有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、乾燥(MgSO)し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(1:4 EtOAc−ヘキサン)で精製し、6.20gの11bを白色の発泡体として得た(87.4%)。
【0223】
IR(CHl3フィルム) xyz cm-1; 1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ6.45(1H, dd, J=6.4, 1.6 Hz), 4,85(1H, dd, J=6.4, 2.0 Hz), 4.72-4.68(2H, m), 4.65(1H, dd, J=7.2 Hz), 4.55(1H, m), 4.21(1H, m), 4.08(1H, dd, J=9.6, 5.6 Hz), 3.96-3.82(6H, m), 3.33(1H, d, J=3.2 Hz, OH), 3.27(1H, d, J=2.8 Hz, OH), 1.16-1.04(42H, m); 13C-NMR(100 MHz, CDCl3) δ154.45, 145.75, 99.14, 98.27, 77.83, 76.59, 74.27, 72.04, 71.62, 70.86, 64.52, 62.57, 61.60, 17.84, 11.78, 11.77.; LRMS(NH3) 664(M + NH4+, 100), 647(M +1 +, 5), 422(21), 380(25)。
【0224】
13bの合成
二糖11b(2.64g、4.08mmol)を共沸により3回乾燥し、2,6−ジ−tert−ブチルピリジンを含有するTHF(20ml)中でフルオロフコース12b(1.64g、3.77mmol)、モレキュラーシーブ(4A、4.0g)と混合した。この溶液を、カニューレを介して、AgClO(1.56g、7.54mmol)、SnCl(1.43g、7.54mmol)及びモレキュラーシーブ(4A、4.0g)のTHF(15ml)溶液を含むフラスコに−40℃で加えた。反応混合物を−40℃で30分攪拌し、次いで、フルオロフコースが消失するまで5℃で34時間攪拌した。飽和NaHCO(40ml)で、5℃において処理した後、混合物をEtOAc(700ml)で抽出した。有機層を飽和NaClで洗浄し、乾燥(MgSO)し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、1.93gの所望の三糖グリカール13b(使用したフルオロフコースを基準にして48%)を得、微量の他のモノフコシル生成物のみを含む500mgの二糖を回収した。
【0225】
15bの合成
共沸により乾燥した、グリカール13b(1.11g、1.05mmol)及びベンゼンスルホンアミド(0.82g、5.24mmol)の混合物をTHF(20ml)にモレキュラーシーブ(4A、2.6g)と共に溶解した。この混合物を−40℃に冷却し、次いで、I(0.54g、2.09mmol)とAg(sym-coll)COl(0.986g、2.29mmol)のTHF(20ml)溶液を、Iの茶色が消失するまで室温で約30分攪拌して、in situで調製したI(sym-coll)COlにカニューレを介して加えた。混合物を1時間以内に0℃まで暖め、更に1時間攪拌した。飽和Na水溶液で反応を停止した後、混合物を濾過し、EtOAc(3×100ml)で抽出した。合わせた有機層を飽和CuSO(100ml)、飽和NaCl(100ml×2)で洗浄し、乾燥(NaSO)した。濃縮後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(1:4 EtOAc−ヘキサン)で精製し、981mgの無色油状物を、所望のα−トランス−ジアキシャルヨードスルホンアミド及びそのシス異性体との21混合物として得た。次に、ヨードスルホンアミド混合物を、エタンチオール(226.3mg、3.64mmol)及びリチウムヘキサメチルジシリルアジド(1.46ml、1.46mmol)のDMF(10ml)溶液を含むフラスコに−40℃で攪拌しながら加えた。反応混合物を−40℃で一夜攪拌し、次いで飽和NaHCO水溶液で反応を停止し、エーテル(3×100ml)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、乾燥(NaSO)した。濃縮後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(3:97 EtOAc−CHCl)で精製し、438mgの15b(33%)及び333mgのそのままのシスヨードスルホンアミドを得た。
【0226】
16bの合成
アクセプターである三糖8b(92mg、0.077mmol、1.0等量)、チオグリコシド15b(198mg、2.0等量)、及び新たに活性化した4Å−MS(560mg)の混合物を、N下、rtでCHCl−EtO(1:2、3.9ml)に懸濁し、10分間攪拌した。反応物を0℃に冷却し、次いでメチルトリフレート(52.4uL、6.0等量)で処理した。反応物を0℃で4.5時間、更に15℃に暖めながら1.5時間攪拌した。反応をTEA(1.0ml)で停止させ、反応物をシリカのパッドを通して濾過し、EtOで軽く洗浄した。濾液(70ml)を飽和NaHCO水溶液(50ml×2)で洗浄し、乾燥(NaSO)し、濃縮した。粗生成物をHPLC(ヘキサン中17%のEtOAc、15ml/分、260nmUV検出)で精製し、158mg(85%)の所望の生成物及び27.7mgのα−結合した副生成物(約55%純度)を得た。
【0227】
保持時間 = 22min; [α]23D =-13.3°(CHCl3, c=1.4); IR(CHCl3フィルム) 2940, 2865, 1792, 1652, 1454, 1161, 1101, 734 cm-1; 1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ7.8(2H, m), 7.38-7.06(58H, m), 6.43(1H, d, J=6.1 Hz), 5.15(1H, br s), 5.07(1H, d, J=3.6 Hz), 5.03(1H, d, J=3.6 Hz), 4.99(1H, d, J=11.6 Hz), 4.89-4.61(12H, m), 4.54-4.46(4H, m), 4.42(2H, app s), 4.38(1H, d, J=11.9 Hz), 4.34-4.26(3H, m), 4.21-4.18(4H, m), 4.13-4.03(7H, m), 3.98-3.76(14H, m), 3.70-3.61(4H, m), 3.46-3.27(7H, m), 2.84(1H, OH), 1.16(3H, d, J=6.4 Hz), 1.13-1.02(42H, m); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ155.35, 144.55, 140.78, 138.99, 138.75, 138.68, xxx, 138.54, 138.43, 138.13, 138.03, 137.94, 137.82, 132.31, 128.81, 128.52, xxx, 128.38, 128.36, 128.27, 128.24, 128.20, 128.16, 128.02, 127.93, 127.72, 127.66, 127.58, 127.48, 127.43, 127.37, 127.20, 103.41, 102.75, 99.79, 99.55, 98.29, 97.76, 80.49, 80.39, 79.09, 78.91, 78.25, 77.68, xxx, 76.51, 75.88, 75.09, 74.99, 74.91, 74.73, 74.15, 74.02, 73.92, 73.52, 73.19, 73.10, 72.94, 72.67, 72.25, 72.07, 71.76, 71.56, 71.33, 70.33, 69.45, 69.32, 68.48, 68.08, 67.86, 67.75, 61.97, 61.60, 56.14, 17.99, 17.96, 17.95, 17.92, 16.75, 11.86; HRMS(FAB) calcd for C138H169NO30SSi2Na (M+Na) 2432.0920, found 2432.0970。
【0228】
19bの合成
六糖グリカール16b(85mg、0.035mmol)のTHF(6ml)溶液を、N下、rtにおいてTBAF(1.0M、353uL、10等量)で処理した。rtで38時間後、反応物を約1mlまで濃縮し、次いで、EtOAc(60ml)に溶解し、水(30ml×2)で洗浄し、乾燥(NaSO)し、濃縮した。CHCl中4%のMeOHでフラッシュクロマトグラフィーにかけ、70.0mg(98%)の脱シリル−脱カーボネート生成物を得た。
【0229】
[α]23D= 1.8°(CHCl3フィルム) 2868, 1652, 1455, 1157, 1094, 735 cm-1; 1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ7.80(2H, d, J=7.4 Hz), 7.47(2H, d, J=7.2 Hz), 7.37-6.95(56H, m), 6.45(1H, d, J=6.3 Hz), 5.86(1H, br s), 5.35(1H, d, J=11.6 Hz), 5.30(1H, D, J=2.8 Hz), 4.95 (1H, d, J=11.3 Hz), 4.89(1H, d, J=3.5 11z), 4.8644.67(9H, m), 4.54-4.39(9H, m), 4.34(1H, dd, J=10.4, 2.8 Hz), 4.26-4.06(9H, m), 3.98-3.45(23H, m), 3.41(1H, d, J=10.0 Hz), 3.29-3.20(5H, m), 0.73(3H, d, J=6.3 Hz); 13C-NMR(100 MHz, CDCl3) δ144.87, 142.49, 139.49, 139.11, 138.87, 138.63, 138.54, 138.37, 138.00, 137.98, 137.97, 137.18, 131.64, 128.74, 128.52, 128.43, 128.33, 128.28, 128.25, 128.21, 128.02, 127.99, 127.97, 127.80, 127074, 127.67, 127.63, 127.61, 127.54, 127.53, 127.50, 127.44, 127.33, 127.31, 127.02, 126.86, 103.39, 102.78, 100.75, 100.09, 99.80, 99.75, 81.42, 80.64, 78.98, 78.86, 77.82, 77.40, 77.26, 76.26, 75.16, 75.09, 75.07, 74.95, 74.69, 74.30, 73.58, 73.17, 73.11, 72.71, 72.67, 72.65, 72.55, 72.36, 72.18, 69.65, 69.53, 68.54, 68.18, 68.08, 67.85, 67.79, 67.21, 54.95, 16.60。
【0230】
下、−78℃で、液体アンモニア(約8ml)に金属ナトリウム(95mg)を加え、2分間攪拌した。この青色の溶液に、上記の六糖グリカール(70mg、33.8umol)の乾燥THF(2ml)溶液を加えた。78℃で45分後、反応を無水メタノール(4ml)で停止した。ほとんどのアンモニアを窒素の気流で除去し(最終容積は約4mlであった。)、反応物を約10mlのメタノールで希釈した。この溶液に、Dowex 50-X8(890mg、洗浄し、乾燥したもの)を加え、5分攪拌した。この溶液を濾過し、メタノールで軽く洗浄し、最後にアンモニアを含むメタノール(5ml)で洗浄し、濾液を減圧下に濃縮した。残渣及びDMAP(2.4mg)をN下に置き、DMF(1.0ml)、THF(1.0ml)及びTEA(1.0ml)に懸濁し、次いでAcO(0.3ml)で処理した。20時間後(EtOAcでTLC分析した。)、反応物を水(40ml)にあけ、EtOAc(40ml×2)で抽出し、希NaHCO(30ml)、水(30ml)で洗浄し、乾燥(NaSO)し、濃縮した。CHCl中80%のEtOAcでフラッシュクロマトグラフィーにかけ、52.0mg(93%)の生成物を白色の発泡体として得た。
【0231】
mp 132-134°C; [α]23D=+4.7°(CHCl3, c=1.4); IR(CHCl3フィルム) 1742, 1652, 1371, 1227, 1069 cm-1; 1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ6.68(1H, d, J=6.8 Hz), 6.42(1H, d, J=6.0 Hz), 5.58(1H, d, J=3.2 Hz), 5.47(1H, d, J=3.4 Hz), 5.40-5.37(2H, m), 5.29(1H, dd, J=10.9, 3.1 Hz), 5.25-5.15(5H, m) 5.06(1H, dd, J= 11.2, 3.3 Hz), 5.02(1H, d, J=3.6 Hz), 4.99-4.92(2H, m), 4.84-4.81(2H, m), 4.67(1H, d, J=7.8 Hz), 4.56-4.51(2H, m), 4.45-4.38(3H, m), 4.29(1H, dd, J=10.6, 3.4 Hz), 4.22-3.95(13H, m, 3.90-3.77(3H, m), 2.19-1.92(51H, m), 1.15(3H, d, J=6.4 Hz); 13C-NMR(100 MHz, CDCl3) δ172.40, 171.45, 170.84, 170.54, 170.52, 170.48, 170.45, 170.40, 170.39, 170.34, 170.23, 169.99, 169.82, 169.74, 169.36, 169.00, 145.43, 102.01, 101.17, 98.83, (2C), 98.45, 94.24, 75.65, 74.95, 73.98, 73.64, 73.49, 72.32, 71.84, 71.53, 71.44, 70.81, 70.74, 70.66, 70.12, 69.77, 68.97, 68.71, 68.67, 68.02, 67.97, 67.88, 67.60, 67.35, 64.43, 61.88, 61.81, 61.42, 61.29, 61.04, 56.18, 23.06, 21.02, 20.81, 20.76, 20.68, 20.64, 20.62, 20.58, 20.57, 20.55, 20.49, 20.43, 15.88。
【0232】
上記のパーアセチル六糖グリカール(52mg)を2分割(22mgと30mg)した。次に、六糖グリカール(22.0mg、13.4umol)の乾燥CHCl(2ml)溶液を、N下、0℃でアリルアルコール(5ml)で処理した。この混合物を室温で15時間攪拌した。過剰のアリルアルコールを減圧下に除去した。他のバッチ(30mg)を同様に処理した。粗生物物を合わせ、85% EtOAc−CHClでクロマトグラフィーにかけ、35.8mg(66%)の低極性生成物、及び15.7mg(29%)のより極性な生成物を得た。33.2mg(19umol)の低極性物質をN下で、無水メタノール(14ml)に溶解し、MeONaのメタノール溶液(165uL、25重量%)で処理した。6時間後、反応物をDowex 50-X8(200mg、洗浄し、乾燥したもの)で中和し、濾過し、濃縮して表題化合物19bを定量的な収率で得た。
【0233】
mp 204-206°(dec); [α]23D- +5.5°(MeOH, c=0.67); IR(MeOHフィルム) 3356(br), 2923, 1658, 1374, 1071 cm-1; 1H-NMR(400 MHz, CD3OD) δ5.99-5.93(1H, m), 5.24(1H, d, J=3.8 Hz), 5.18-5.14(1H, m), 4.93(1H, d, J=3.9 Hz), 4.56-4.54(2H, m), 4.42-4.06(10H, m), 3.99(1H, s), 3.91-3.47(26H, m), 3.41-3.37(1H, m), 3.27(1H, t, J=8.8 Hz), 2.01(3H, s), 1.24(3H, d, J=6.5 Hz); 13C-NMR (100 MHz, CD3OD, 対照 =δ49.05) δ174.55, 135.73, 117.57, 105.48, 105.42, 103.94, 103.26, 102.79, 101.08, 81.21, 80.67, 80.05, 79.20, 78.09, 76.79, 76.56, 76.48, 76.44, 76.41, 75.54, 74.86, 74.68, 73.57, 72.63, 72.50, 71.57, 71.16, 70.64, 70.41, 69.68, 68.16, 62.67, 62.64, 62.57, 61.96, 61.63, 53.11, 23.58, 16.78。
【0234】
構造体1bの予備合成の目的で、セラミド前駆体をABC三糖に結合した(スキーム5)。7bのエポキシ化、次いでZn(OTf)で促進されるセラミド前駆体17b(そのトリブチルスズエーテルとして)との反応で、20bを得た。アセチル化及びPMBの除去を円滑に行い、21bを得た。これを適切なDEF三糖ドナーとのカップリングに供した。
【0235】
三糖15bを、アクセプター21bの存在下でMeOTfで処理すると、六糖異性体の4:1混合物を得た。主生成物22bを50%の収率で得た。
【0236】
雰囲気下、パルミチン酸無水物の存在下でリンドラー触媒を用いてアジド官能基を還元してセラミド側鎖を構築し、18bを直接に得た。脱シリル化に続いて、金属を溶解してのスルホンアミド及びベンジル基の脱保護を行い、MeOHで反応を停止し、カーボネートとアセテート基を除去した。粗製混合物をパーアセチル化して78%の収量でパーアセチル化した六糖を得た。NaOMeを用いたこの物質のケン化で天然物1bを96%の収率で得た。1bのアノメリックプロトンのカップリング定数及びケミカルシフトは、報告されているデータと一致した。加えて、生成物を精密質量分析、並びにH及び13C NMRで特徴づけた。
【0237】
20bの合成
ベンジル化されたセラミド前駆体(475mg、1.14mmol)を4mlのPhHに溶解した。ビス(トリブチルスズ)エーテル(0.29ml、0.34g、0.57mmol)を加え、反応容器(Dean-Starkトラップを備えたもの)を還流するように加熱した。3時間後、反応物を冷却し、Nの気流下で濃縮した。別のフラスコに、グリカール7bを1ml無水CHClに溶解し、得られた溶液を0℃に冷却し、3,3−ジメチルジオキシラン(2.8ml、0.25mmol、0.09Mアセトン溶液)の溶液を加えた。45分後、この溶液をNの気流下、次いで減圧下で濃縮した。スズエーテルを1mlの無水THFに溶解し、Zn(OTf)(170mg、0.468mmol)の1mlTHF混合物に−78℃でカニューレを介して加えた(1×0.5mlのTHFで洗浄)。反応物を12時間かけて室温まで暖め、次いで蒸留水で反応を停止した。水層をEtOAcで3回抽出した。有機層を合わせ、無水MgSOで乾燥した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(3:1 ヘキサン/EtOAc、3×16cm、シリカゲル)にかけ、265mg(66%)の標的化合物20bを得た。
【0238】
1H NMR(CDCl3) δ7.43-7.15(m, 45H), 7.03(d, J=8.6 Hz, 2H), 6.79(d, J=8.6 Hz, 2H), 5.76(dt, J=6.7, 15.4 Hz, 1H), 5.43(dd, J=8.5, 15.4 Hz, 1H), 5.07(d, J=3.5 Hz, 1H), 5.05(d, J=12.0 Hz, 1H), 4.90(d, J=12.9 Hz, 2H), 4.83-4.77(m, 3H), 4.69(d, J=12.0 Hz, 1H), 4.61(d, J=11.9 Hz, 1H), 4.54-4.45 (m, 3H), 4.42-4.25(m, 7H), 4.18-4.05(m, 6H), 4.01-3.91(m, 4H), 3.83(dd, J=4.4, 10.6 Hz, 1H), 3.79(s, 3H), 3.71-3.65(m, 4H), 3.57-3.32(m, 7H), 3.20(m, 1H), 2.29(bs, 1H), 2.11(bq, J=6.7 Hz, 2H), 1.42-1.29(m, 22H), 0.91(t, J=6.6 Hz, 3H); 13C NMR(CDCl3) δ158.8, 139.1, 139.0, 138.7, 138.6, 138.34, 138.29, 138.2, 138.1, 130.8, 128.7, 128.55, 128.50, 128.4, 128.33, 128.28, 128.26, 128.12, 128.06, 127.84, 127.76, 127.7, 127.64, 127.60, 127.5, 127.45, 127.36, 125.8, 113.5, 102.7, 100.6, 81.9, 81.5, 79.4, 77.4, 77.0, 76.7, 76.6, 76.4, 75.5, 74.9, 74.7, 74.4, 73.9, 73.3, 73.2, 73.11, 73.06, 72.3, 72.1, 70.0, 69.4, 68.7, 68.1, 67.9, 67.7, 64.2, 55.2, 32.4, 31.9, 29.70, 29.65, 29.5, 29.4, 29.2, 29.0, 22.7, 14.2; IR(薄層フィルム) 3447, 3062, 3029, 2923, 2853, 2099, 1612, 1586, 1514, 1496, 1454, 1364 cm-1; [α]23D +25.0(c 0.70)。
【0239】
21bの合成
上記の三糖(256mg、0.147mmol)を2mlの無水CHClに溶解した。トリエチルアミン(0.105ml、76mg、0.753mmol)、DMAP(2mg、0.02mmol)及び無水酢酸(0.042ml、45mg、0.445mmol)を順次加えた。反応物を1時間攪拌し、次いで飽和NaHCO水溶液で反応を停止した。抽出物を無水MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(4:1 ヘキサン/EtOAc、2×16cm、シリカゲル)で精製し、235mg(90%)の所望の化合物を得た。
【0240】
1H NMR (CDCl3) δ7.42-7.17(m, 45H), 7.03(d, J=8.6 Hz, 2H), 6.81(d, J=8.6 Hz, 2H), 5.75(dt, J=6.7, 15.4 Hz, 1H), 5.43(dd, J=8.6, 15.4 Hz, 1H), 5.07(d, J=3.4, 1H), 4.99-4.90(m, 4H), 4.85(d, J=11.3 Hz, 2H), 4.77(d, J=11.9 Hz, 1H), 4.76(d, J=12.4 Hz, 1H), 4.70(d, J=12.0 Hz, 1H), 4.62(d, J=11.7 Hz, 1H), 4.57-4.52(m, 3H), 4.49-4.34(m, 7H), 4.30(d, J=11.8 Hz, 1H), 4.25(d, J=11.8 Hz, 1H), 4.14-4.06(m, 7H), 4.01-3.95(m, 2H), 3.91(dd, J=5.6, 8.6 Hz, 1H), 3.85(dd, J=4.3, 11.1, Hz, 1H), 3.80(s, 3H), 3.74(d, J=9.8 Hz, 1H), 3.69(dd, 7.7, 9.9 Hz, 1H), 3.63-3.51(m, 5H), 3.43-3.34(m, 3H), 3.22(dd, J=4.6, 8.2 Hz, 1H), 2.12(dd, J=6.8, 13.6, 2H), 1.87(s, 3H), 1.43-1.30(m, 22H), 0.93,(t, J=6.6 Hz, 3H); 13C NMR(CDCl3) δ169.3, 158.8, 139.1, 139.0, 138.69, 138.65, 138.6, 138.31, 138.26, 138.2, 138.1, 138.0, 130.8, 128.8, 128.6, 128.41, 128.35, 128.30, 128.28, 128.14, 128.0, 127.9, 127.8, 127.64, 127.60, 127.58, 127.51, 127.47, 127.38, 126.0, 113.5, 102.7, 100.8, 1006, 81.5, 79.9, 79.5, 79.4, 79.3, 77.4, 77.1, 76.8, 75.5, 75.3, 74.9, 74.5, 74.2, 73.9, 73.2, 73.1, 73.0, 72.4, 72.2, 72.1, 70.2, 69.4, 68.1, 68.0, 67.9, 67.5, 63.8, 55,2, 32.4, 32.0, 29.72, 29.67, 29.5, 29.4, 29.2, 29.1, 22.7, 20.9, 14.2; IR(薄層フィルム) 3028, 2923, 2852, 2098, 1751, 1611, 1513, 1496, 1453, 1365, 1232 cm-1; [α]23D +20.3(c 0.45)。
【0241】
上述のようにして得た三糖(230mg、0.129mmol)を、4mlのCHClに溶解した。蒸留水(1ml)を加え、混合物を0℃に冷却した。DDQ(35mg、0.15mmol)を加え、反応物を1時間攪拌した。反応を、飽和NaHCO水溶液を加えて停止した。水層をCHClで3回抽出した。有機層を合わせ、洗浄して、無水MgSOで乾燥した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(4:1 ヘキサン/EtOAc、2×16cm、シリカ)で182mg(85%)の標的化合物21bを得た。
【0242】
1H NMR(CDCl3) δ7.38-7.13(m, 45H), 5.73(dt, J=6.7, 15.4 Hz, 1H), 5.41(dd, J=8.6, 15.4 Hz, 1H), 5.09(d, J=3.2 Hz, 1H), 4.98(d, J=12.5 Hz, 1H), 4.95(dd, J=8.0, 9.2 Hz, 1H), 4.87(d, J=11.2 Hz, 1H), 4.80(d, J=11.3 Hz, 1H), 4.77(d, J=10.9 Hz, 1H), 4.70(d, J=11.4 Hz, 1H), 4.65-4.50(m, 6H), 4.45-4.42(m, 3H), 4.38-4.34(m, 3H), 4.28(bs, 2H), 4.15(d, J=11.7 Hz, 1H), 4.11(d, J=11.8 Hz, 1H), 4.08-4.01(m, 3H, 3.98-3.94(m, 3H), 3.88(dd, J=5.5, 8.5 Hz, 1H), 3.82(dd, J=4.3, 7.0 Hz, 1H), 3.77(dd, J=3.1, 10.1 Hz, 1H), 3.70(d, J=9.8 Hz, 1H), 3.64-3.51(m, 5H), 3.46(dd, J=5.4, 9.4, 1H), 3.39(m, 1H), 3.34-3.30(m, 2H), 3.21(dd, J=4.7, 8.4 Hz, 1H), 2.09(m, 2H), 1.90(s, 3H), 1.84(d, J=5.1 Hz, 1H), 1.41-1.27(m, 22H), 0.90(t, J=6.5 Hz, 3H); 13C NMR(CDCl3) δ169.3, 165.9, 139.3, 138.7, 138.6, 138.5, 138.3, 138.2, 138.1, 138.0, 128.5, 128.4, 128.32, 128.27, 128.25, 128.17, 128.00, 127.94, 127.91, 127.8, 127.75, 127.70, 127.67, 127.61, 127.55, 127.49, 127.45, 127.21, 125.9, 107.8, 102.6, 100.8, 99.4, 81.4, 80.6, 79.3, 77.5, 77.3, 77.0, 76.9, 76.7, 75.5, 75.3, 75.2, 74.3, 73.2, 73.1, 73.0, 72.9, 72.3, 72.1, 70.1, 70.0, 69.1, 68.1, 68.0, 67.8, 67.4, 63.8, 32.4, 31.9, 29.7, 29.6, 29.5, 29.4, 29.2, 29.1, 22.7, 20.9, 14.1; IR(薄層フィルム) 3570, 3087, 3062, 3029, 2924, 2853 2099, 1950, 1873, 1752, 1496, 1453, 1366, 1231 cm-1; [α]23D +17.6(c 1.40)。
【0243】
22bの合成
チオグリコシド15b(188mg、0.151mmol)及びアクセプター21b(125mg、0.0751mmol)をベンゼンにより2回共沸で乾燥した。次に、この混合物を2.6mlの無水エーテル及び1.3mlのCHClに溶解し、この溶液に500mgの4Åモレキュラーシーブを加えた。この混合物を1時間攪拌し、次いで0℃に冷却し、MeOTf(0.051ml、74mg、0.45mmol)を加えた。反応物を9時間0℃で攪拌した。次に、トリエチルアミン(1ml)を加え、シリカのプラグを通して濾過し、EtOで洗浄した。濾液を飽和NaHCO水溶液で洗浄し、無水MgSOで乾燥した。分取HPLC(85:15 ヘキサン/EtOAc)で精製し、108mg(50%)の標的化合物22bを得た。反応物のb/a比は4:1であった。
【0244】
1H NMR(CDCl3) δ7.75(d, J=7.2 Hz, 2H), 7.46-7.05(m, 63H), 5.75(dt, J=6.8, 15.2 Hz, 1H0, 5.43(dd, J=8.6, 15.5 Hz, 1H), 5.13(m, 2H), 5.09(d, 3.6 Hz, 1H), 5.05(d, J=11.6 Hz, 1H), 5.00(d, J=11.5 Hz, 1H), 4.94-4.86(m, 5H), 4.83-4.65(m, 14H), 4.59(d, 11.7 Hz, 2H), 4.53-4.43(m, 6H), 4.39-4.31(m, 4H), 4.23(d, J=11.9 Hz, 1H), 4.18(d, J=11.9 Hz, 1H), 4.15-4.08(m, 2H), 4.05-3.57(m, 31H), 3.54(d, J=9.1 Hz, 1H), 3.49-3.45(m, 2H), 3.38(m, 1H), 3.31-3.23(m, 3H), 2.92-2.89(m, 2H), 2.75(bt, 6.0 H, H), 2.12(bq, J=6.9 Hz, 2H), 1.85(s, 3H), 1.20-1.09(m, 42H), 0.92(t, J=6.6 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3) δ169.1, 165.9, 155.5, 140.9, 139.2, 139.0, 138.8, 138.64, 138.59, 138.47, 138.43, 138.3, 138.2, 138.10, 138.07, 138.0, 132.1, 129.1, 128.69, 128.65, 128.56, 128.43, 128.40, 128.36, 128.35, 128.26, 128.17, 128.12, 128.08, 127.97, 127.77, 127.66, 127.64, 127.60, 127.54, 127.49, 127.45, 127.41, 127.3, 126.0, 103.0, 102.7, 100.8, 99.7, 99.2, 98.0, 81.2, 80.6, 79.5, 79.2, 79.0, 78.3, 77.7, 76.8, 76.5, 75.5, 75.3, 75.1, 75.03, 74.97, 74.91, 74.87, 74.0, 73.2, 73.10, 73.07, 72.98, 72.93, 72.6, 72.3, 72.1, 72.0, 71.32, 71.25, 70.2, 69.4, 69.32, 69.25, 68.1, 67.9, 67.5, 68.3, 62.1, 62.0, 56.1, 32.4, 31.9, 29.71, 29.68, 29.66, 29.48, 29.38, 29.2, 29.1, 22.7, 20.7, 18.13, 18.11, 18.01, 17.98, 16.9, 14.2, 11.9; IR(薄層フィルム) 3344, 3030, 2924, 2864, 2101, 1789, 1754, 1496, 1453, 1366, 1232 cm-1
【0245】
18bの合成
六糖22b(66mg、0.023mmol)を1mlのEtOAcに溶解した。リンドラー触媒(66mg)を加え、次いでパルミチン酸無水物(23mg、0.046mmol)を加えた。この系を減圧下でパージし、次いで1atmのH下に置いた。24時間後、反応物をシリカゲルのプラグを通して濾過し、EtOAcで洗浄し、濃縮した。分取HPLC(4:1 ヘキサン/EtOAc)で精製し、64mg(90%)の所望の生成物18bを得た。
【0246】
1H NMR(CDCl3) δ7.72(d, J=7.2 Hz, 2H), 7.42-7.02(m, 63H), 5.65(d, J=9.1 Hz, 1H), 5.62(dt, J=6.6, 15.3 Hz, 1H), 5.31(dd, J=8.6, 15.3 Hz, 1H), 5.10(m, 2H), 5.05(d, J=3.6 Hz, 1H), 5.02(d, J=11.5 Hz, 1H), 4.96(d, J=11.4 Hz, 1H), 4.90-4.62(m, 13H), 4.57-4.38(m, 8H), 4.32-4.26(m, 3H), 4.21-4.07(m, 9H), 4.01-3.41(m, 31H), 3.30(m, 1H), 3.23(m, 3H), 2.20(m, 4H), 1.82(s, 3H), 1.52(bm, 2H), 1.32-1.19(m, 53H), 1.15-1.08(m, 42H), 0.88(t, J=6.8 Hz, 6H); IR(薄層フィルム) 3531, 3346, 3063, 3030, 2924, 2854, 1790, 1748, 1674, 1496, 1454, 1365, 1236 cm-1; [α]23D -17.9 (c 0.65)。
【0247】
1bの合成
上記のようにして得た六糖(20mg、0.0065mmol)を0.5mlのTHFに溶解した。テトラブチルアンモニウムフルオライド(1.0MTHF溶液、0.050ml、0.050mmol)を加え、反応物を2時間攪拌した。この溶液をシリカのプラグを通して濾過し、EtOAcで抽出し、濃縮した。残渣を1mlの無水MeOHに溶解し、NaOMe(10mg、0.19mmol)を加えた。反応物を3時間攪拌し、40mgのDowex-50樹脂で中和し、濾過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(1.5×4cm、10〜40uシリカゲル、95:5 CHCl/MeOH)で16.5mg(94%)の所望の化合物を得た。
【0248】
1H NMR(CDCl3) δ7.78(d, J=7.6 Hz, 2H), 7.46(d, J=7.4 Hz, 2H), 7.41-6.97(m, 61H), 6.02(d, J=9.1 Hz, 1H), 5.76(bs, 1H), 5.67(dt, J=6.6, 15.3 Hz, 1H), 5.37-5.30(m, 2H), 5.19(d, J=2.6 Hz, 1H), 4.96(d, J=11.3 Hz, 1H), 4.93(d, J=3.4 Hz, 1H), 4.90-4.83(m, 3H), 4.78-4.66(m, 7H), 4.56(d, J=11.1 Hz, 1H), 4.53(d, J=10.2 Hz, 1H), 4.47-4.32(m, 5H), 4.28-4.06(m, 14H), 4.01-3.13(m, 36H), 2.73(bt, 1H), 2.61(bs, 1H), 2.54(bs, 1H), (2.05(m, 4H), 1.50 (m, 2H), 1.38-1.23(m, 46H), 0.88(t, J=6.6 Hz, 6H), 0.78(d, 6.3 Hz, 3H); 13C NMR(CDCl3) δ173.4, 142.4, 139.5, 139.0, 138.7, 138.5, 138.33, 138.26, 138.14, 138.09, 137.9, 137.2, 137.1, 131.6, 129.0, 128.8, 128.54, 128.47, 128.37, 128.32, 128.27, 128.22, 128.17, 128.14, 128.05, 127.99, 127.79, 127.73, 127.68, 127.63, 127.59, 127.49, 127.46, 127.37, 127.32, 126.98, 126.58, 104.1, 102.83, 102.76, 100.3, 100.2, 82.1, 81.5, 81.2, 79.6, 79.2, 79.0, 78.0, 77.3, 77.0, 76.7, 75.6, 75.3, 75.1, 75.0, 74.8, 74.6, 73.5, 73.4, 73.2, 73.0, 72.7, 72.6, 71.9, 70.1, 69.6, 68.5, 68.2, 68.0, 67.5, 62.4, 61.9, 54.8, 52.3, 36.9, 32.3, 31.9, 29.71, 29.67, 29.54, 29.50, 29.43, 29.37, 29.28, 29.20, 25.7, 22.7, 16.7, 14.1; IR(薄層フィルム) 3424, 3062, 3023, 2923, 2852, 1641, 1530, 1496, 1453, 1362, 1325 cm-1; [α]23D -3.2(c 0.83)。
【0249】
フラスコにドライアイスコンデンサーを取り付け、4mlのNHを充填した。ナトリウム(18mg、0.78mol)を加え、得られた青色溶液に、29mgの上記六糖(0.010mmol)を加えた。反応物を−78℃で45分攪拌した。反応を、MeOH(3ml)を添加して停止した。窒素を溶液上から吹き付け、NHを蒸発させた。反応物を170mgのDowex-50樹脂で中和し、濾過し、濃縮した。得られた残渣を、1mlの4:1 THF/DMFに溶解した。トリエチルアミン(0.5ml)を加え、次いでDMAP(3mg)及び無水酢酸(0.200ml)を加えた。2時間後、反応物を減圧下に濃縮した。フラッシュカラム(1.5×5cm、10〜40mシリカ、9:1 EtOAc/ヘキサン)で精製し、18mg(78%)のパーアセテートを得た。この六糖のサンプル(15mg、0.0065mmol)を0.5mlの無水MeOHに溶解し、NaOMe溶液(30%MeOH溶液、0.010ml、0.05mmol)を加えた。この溶液を2時間攪拌し、9mgのDowex-50樹脂で中和し、濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(1.5×4cm、C−18逆相シリカ、MeOH)で精製し、9.6mgの天然物1を得た。スペクトルデータは、Hakomoriらによって報告されたものと一致した。
【0250】
生物学的結果
MBR1六糖を、以下に示すような天然の「B」型及び非天然の「A」型の2形態で調製した。
【0251】
天然型の構造(「β」)は、以下の通りである。
【0252】
Fuca1→GalB1→3GalNAcB1→3Galα1→4GlB1→4GcB1→1Cer
非天然型の構造「α」は、以下の通りである
Fucα1→2GalB1→3GalNAcα1→3Galα1→4GalB1→1Cer
双方ともモノクローナル抗体(mAb)MBr1との免疫反応性の試験を促進するためにセラミドに結合されている。
【0253】
薄層クロマトグラフィー(TLC)により、2つの調製物は、同じ単一のバンドとして移動した。免疫TLC(Ritter, G., et al., Cancer Res. 50, 1403-10 (1990)参照)は、両形態ともMBr1モノクローナル抗体と特異的に反応することを示したが、β−型は10倍以上強く反応したことを示した(比較染色は、1/10の抗原の量を示した。)。mAbMBr1とβ型構造の高レベルの反応性を、フローサイトメトリー阻害アッセイを用いて確認した。mAbMBr1とMCF−7のような乳ガン細胞系との反応性は、8μg/mlのβ結合した調製物で98%阻害されたが、8μgのα−結合した調製物では6%のみ阻害された。GD3ガングリオシド(負の対照)は全てにおいて阻害を示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】図1は、ネオ糖タンパクに導かれるグリカールの組立を示す。
【図2】図2は、4aの合成を示す。試薬:a)TBDPSCL、イミダゾール/DMF、84%;b)カルボニルジイミダゾール、触媒量のイミダゾール、THF(65%);c)5a、ジ−tert−ブチルピリジン、AgClO、SnCl、エーテル(51%);PhSONH、1(sym-coll)ClO(94%)。
【図3】図3は、8aの合成を示す。試薬:a)9a、AgBF、4Aモレキュラーシーブ、THF(75%);b)i.TBAF、THF;ii.Na/NH;iii.AcO、pyr.;c)i.3,3−ジメチオキシラン;アリルアルコール、ZnCl(72%);ii.NaOMe、MeOH(定量的)。
【図4】図4は、グリカール組立法を用いたオリゴ糖鎖の固相合成のための戦略を示す。
【図5】図5は、複雑な炭水化物の1,2−分岐パターンを組み立てるための固相支持体法の応用を示す。
【図6】図6は、H−タイプ2の血液型に特異性を有する四糖の合成を示す。試薬:(a)1.3,3−ジメチルジオキシラン、CHCl;2.8、ZnCl、THF;(b)10、Sn(OTf)、ジ−tert−ブチルピリジン、THF;(c)TBAF、AcOH、THF;(d)TIPSCl、イミダゾール、DMF;(e)I(coll)ClO、PhSONH、CHCl;(f)15、AgBF、4A M.S.、THF、(g)1.TBAF、AcOH、THF;2.Na/NH;AcO、ピリジン。
【図7a】図7a及び7bは、生物複合体形成可能な形態のLe六糖の合成を示す。試薬:(a)1.3,3−ジメチルジオキシラン、CHCl;2.19、ZnCl、THF;(b)10、Sn(OTf)、ジ−tert−ブチルピリジン、THF;(c)TBAF、AcOH、THF;(d)TIPSCl、イミダゾール、DMF;(e)I(coll)ClO、PhSONH、CHCl;(f)24、AgBF、4A M.S.、THF、(g)1.TBAF、AcOH、THF;2.Na/NH;AcO、ピリジン;(h)1.3,3−ジメチルジオキシラン、CHCl;2.アリルアルコール、ZnCl;NaOMe、MeOH。
【図7b】図7a及び7bは、生物複合体形成可能な形態のLe六糖の合成を示す。試薬:(a)1.3,3−ジメチルジオキシラン、CHCl;2.19、ZnCl、THF;(b)10、Sn(OTf)、ジ−tert−ブチルピリジン、THF;(c)TBAF、AcOH、THF;(d)TIPSCl、イミダゾール、DMF;(e)I(coll)ClO、PhSONH、CHCl;(f)24、AgBF、4A M.S.、THF、(g)1.TBAF、AcOH、THF;2.Na/NH;AcO、ピリジン;(h)1.3,3−ジメチルジオキシラン、CHCl;2.アリルアルコール、ZnCl;NaOMe、MeOH。
【図8】図8は、MBr1抗原の構造及び三糖中間体の反応経路を示す。試薬:a.n−BuSnO、PMBCl、TBABr、PhH、70%;b.NaH、BnBr、DMF、95%;c.(i)3,3−ジメチルジオキシラン、CHCl;(ii)TBAF、THF;(iii)NaH、BnBr、DMF、40%(3ステップ);d.NaH、BnBr、DMF、80%;e.(i)TBAF、THF;(ii)NaOMe、MeOH、93%(2ステップ);f.(n−BuSn)O、BnBr、TBABr、PhH、90%;g.SnCl、AgClO、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、4Åモレキュラーシーブ、EtO、40%α(4.5:1α:β);h.DDQ、CHCI、HO、84%。
【図9】図9は、三糖中間体への反応経路を示す。試薬:a.(i)3,3−ジメチルジオキシラン、CHCI;(ii)10a、ZnCl、THF、87%;b.SnCl、AgClO、EtO、47%;c.I(coll)ClO、PhSONH、4Åモレキュラーシーブ、47%。
【図10】図10(a)は、六糖MBr1抗原への反応経路を示す。試薬:a.EtSH、LiHMDS、DMF、75%。B.8b(0.5等量)、MeOTf、4Åモレキュラーシーブ、70〜85% B、(10:1 B α);c.(i)3,3−ジメチルジオキシラン、CHCl、(ii)17b(5等量)、Zn(OTf)、20%;d.AcO、EtN、DMAP、CHCl、95%;e.リンドラー触媒、H、パルミチン酸無水物、EtOAc、90%;f.(i)TBAF、THF;(ii)NaOMe、MeOH、94%;g.(i)Na、NH、THF;(ii)AcO、EtN、DMAP、CHCl、80%;h.NaOMe、MeOH、定量的。図10(b)は、アリルグリコシドへの反応経路を示す。試薬:a.TBAF、THF、94%;b.(i)Na、NH、THF;(ii)AcO、EtN、DMAP、THF、DMF、85%;c.(i)3,3−ジメチルジオキシラン、CHCl、(ii)アリルアルコール、65%(+29%のα−マンノ異性体);d.NaOMe、MeOH、定量的。
【図11】図11は、六糖抗原MBr1を製造するための中間体への反応経路を示す。
【図12】図12は、4+2合成アプローチによる六糖抗原MBr1への反応経路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造を有する化合物を合成する方法であって、
【化1】

但し、RはHである。
(a)(i)下記構造を有する化合物を、適切な条件下でエポキシ化剤と反応し、エポキシドを形成すること、
【化2】

(ii)ステップ(a)(i)で形成されたエポキシドを適切な条件下で、RNF(但し、各Rは独立に同じであるか、又は異なっており、直鎖又は分岐鎖のアルキル、アラルキル又はアリール基である。)で開裂し、フルオロアルコールを形成すること、
(iii)ステップ(b)(ii)で形成されたフルオロアルコールを、非求核性塩基及び式CCHX(但し、XはBr、Cl、I又はFである。)を有する有機ハライドを用いて適切な条件下でアルキル化し、下式を有する化合物を形成すること、
【化3】

(b)下記構造を有する化合物を適切な条件下でエポキシ化剤で処理し、エポキシドを形成すること、
【化4】

(c)ステップ(b)で形成されたエポキシドを下記構造を有する化合物と適切な条件下でカップリングし、
【化5】

下記構造を有する化合物を形成すること、
【化6】

(d)(i)ステップ(c)(ii)で形成された化合物を、適切な条件下で非求核性塩基及び式CCHX(但し、Xは、Br、Cl、I又はFである。)を有する有機ハライドでアルキル化すること、及び
(ii)ステップ(d)(i)で形成された化合物を、適切な条件下で、RNF(但し、各Rは独立に同じであるか、又は異なっており、直鎖又は分岐鎖のアルキル、アラルキル又はアリール基である。)で脱シリル化すること、
(iii)ステップ(d)(ii)で形成された化合物を、適切な条件下で金属アルコキシドで処理し、脱保護された二糖を形成すること、
(iv)ステップ(d)(iii)で形成された二糖を、適切な条件下でアルキル化し、選択的に脱保護された下記構造を有する二糖を形成すること、
【化7】

(e)(i)ステップ(d)(iv)で形成された選択的に脱保護された二糖を、適切な条件下でステップ(a)(iii)で形成された化合物とカップリングし、保護されれた三糖を形成すること、及び
(ii)ステップ(e)(i)で形成された保護された三糖を、適切な条件下で脱保護し、下記構造を有する三糖を形成すること、
【化8】

但し、RはHである。
を具備した方法。
【請求項2】
下記構造を有する三糖セラミドを合成するための方法であって、
【化9】

(a)下記構造を有する三糖を合成すること、
【化10】

但し、RはPMBである。
(b)(i)ステップ(a)で形成された三糖を、適切な条件下でエポキシ化剤と反応し、三糖エポキシドを形成すること、及び
(ii)ステップ(b)(i)で形成された三糖エポキシドを、適切な条件下で下記構造を有する化合物と反応し、
【化11】

下記構造を有する保護された三糖セラミドを形成すること、
【化12】

(c)(i)ステップ(b)(ii)で形成されたセラミドを適切な条件下でアシル化すること、及び
(ii)ステップ(c)(i)で形成された化合物を適切な条件下で選択的に脱保護し、三糖セラミドを形成すること、
を具備した方法。
【請求項3】
下記構造を有するメルカプト三糖を合成する方法であって、
【化13】

(a)下記構造を有する化合物を適切な条件下で、
【化14】

下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化15】

下記構造を有する二糖を形成すること、
【化16】

(b)ステップ(a)(ii)で形成された二糖を、適切な条件下で下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化17】

下記構造を有する三糖を形成すること、
【化18】

(c)ステップ(b)で形成された三糖を適切な条件下でヨードスルホンアミド化し、下記構造を有するヨードスルホンアミドを形成すること、
【化19】

及び
(d)ステップ(c)で形成されたヨードスルホンアミドを適切な条件下でチオレートと反応し、メルカプト三糖を形成すること、
を具備した方法。
【請求項4】
下記構造を有する六糖セラミドを合成する方法であって、
【化20】

(a)下記構造を有する化合物を、適切な条件下で、
【化21】

下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化22】

下記構造を有する化合物を形成すること、
【化23】

(b)(i)ステップ(a)で形成された化合物を適切な条件下でエポキシ化剤と反応し、六糖エポキシドを形成すること、及び、
(ii)六糖エポキシドを、適切な条件下で下記構造を有するスズエーテルと反応し、
【化24】

六糖アルコールを形成すること、
(c)ステップ(b)(ii)で形成された六糖アルコールを、適切な条件下でアシル化し、下記構造を有する六糖アセテートを形成すること、
【化25】

(d)ステップ(c)で形成された六糖アセテートを、パルミチン酸無水物の存在下、適切な条件下で還元的にアシル化し、六糖セラミドを形成すること、
(e)六糖セラミドを適切な条件下で脱シリル化し、部分的に脱保護された六糖セラミドを形成すること、
(f)(i)部分的に脱保護された六糖セラミドを適切な条件下で還元し、脱保護された六糖セラミドアセテートを形成すること、
(ii)脱保護された六糖セラミドアセテートを適切な条件下でアシル化し、六糖セラミドパーアセテートを形成すること、及び
(g)六糖セラミドパーアセテートを適切な条件下でケン化し、六糖セラミドを形成すること、
を具備した方法。
【請求項5】
下記構造を有する六糖セラミドを合成する方法であって、
【化26】

(a)下記構造を有する化合物を、適切な条件下で、
【化27】

下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化28】

下記構造を有する六糖を形成すること、
【化29】

及び
(b)(i)ステップ(a)で形成された六糖を、パルミチン酸無水物の存在下、適切な条件下で還元し、パルミトイルアミドを形成すること、
(ii)パルミトイルアミドを、適切な条件下で、RNF(但し、各Rは独立に、同じであるか、又は異なっており、直鎖又は分岐鎖のアルキル、アラルキル又はアリール基である。)で脱シリル化し、部分的に脱保護された六糖を形成すること、
(iii)ステップ(b)(ii)で形成された六糖を適切な条件下で脱保護し、脱保護された六糖を形成すること、
(iv)ステップ(b)(iii)で形成された六糖を、適切な条件下でアシル化し、六糖セラミドパーアセテートを形成すること、
(v)六糖セラミドパーアセテートを適切な条件下でケン化し、六糖セラミドを形成すること、
を具備した方法。
【請求項6】
下記構造を有するアリル六糖を合成する方法であって、
【化30】

(a)下記構造を有する化合物を、適切な条件下で
【化31】

下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化32】

但し、RはHである。
下記構造を有する六糖を形成すること、
【化33】

(b)(i)ステップ(a)で形成された化合物を、適切な条件下でRNF(但し、各Rは独立に同じであるか、又は異なっており、直鎖又は分岐鎖のアルキル、アラルキル又はアリール基である。)で脱シリル化し、部分的に脱保護された六糖を形成すること、
(ii)ステップ(b)(i)で形成された六糖を適切な条件下で脱保護し、脱保護された六糖を形成すること、及び
(iii)ステップ(b)(ii)で形成された化合物を適切な条件下でパーアシル化し、下記構造を有する六糖パーアセテートを形成すること、
【化34】

(c)(i)ステップ(b)(iii)で形成された六糖パーアセテートを適切な条件下でエポキシ化剤と反応し、六糖エポキシドパーアセテートを形成すること、
(ii)ステップ(c)(i)で形成された六糖エポキシドパーアセテートを適切な条件下でアリルアルコールで処理し、アリル六糖パーアセテートを形成すること、及び
(iii)アリル六糖パーアセテートを適切な条件下でケン化し、アリル六糖を形成すること、
を具備した方法。
【請求項7】
下記構造を有する六糖を合成する方法であって、
【化35】

(a)下記構造を有する化合物を適切な条件下で、
【化36】

下記構造を有する化合物とカップリングし、
【化37】

下記構造を有する化合物を形成すること、
【化38】

(b)(i)ステップ(a)で形成された化合物を適切な条件下でアシル化すること、及び
(ii)ステップ(b)(i)で形成された化合物を適切な条件下でエポキシ化剤と反応し、下記構造を有するエポキシドを形成すること、
【化39】

(c)(i)該エポキシドを、適切な条件下でRNF(但し、各Rは独立に同じであるか、又は異なっており、直鎖又は分岐鎖のアルキル、アラルキル又はアリール基である。)で処理すること、及び
(ii)ステップ(c)(i)で形成された化合物を、適切な条件下でアルキル化し、下記構造を有する化合物を形成すること、
【化40−1】

但し、RはH又はアシルである。
(d)ステップ(c)(ii)で形成された化合物を、適切な条件下で下記構造を有する化合物とカップリングし六糖を形成すること、
【化40−2】

を具備した方法。
【請求項8】
下記構造を有する化合物
【化40−3】

但し、nは約0から約9の間の整数である。
【請求項9】
下記構造を有する化合物
【化40−4】

但し、nは約0から約9の間の整数である。
【請求項10】
下記構造を有する化合物
【化40−5】

但し、nは約0から約9の間の整数である。
【請求項11】
ヒト患者に抗体を誘導する方法であって、該抗体が、ヒト乳房腫瘍細胞と免疫反応性であり、下記構造を有する化合物の所定量を、単独で、又は抗体を誘導するのに効果的な適切な免疫学的アジュバントに結合して該患者に投与することを具備した方法。
【化41】

【請求項12】
請求の範囲第11項に記載の方法であって、該誘導される抗体がMBr1抗体である方法。
【請求項13】
請求の範囲第11項に記載の方法であって、該患者が臨床的に回復中であるか、又は該患者が外科手術によって治療されている場合には、一部の除去されていない疾患部分を制限する方法。
【請求項14】
請求の範囲第11項に記載の方法であって、該アジュバントがタンパク質キャリアー、バクテリア又はリポソームである方法。
【請求項15】
請求の範囲第14項に記載の方法であって、該アジュバントがカルメット−ゲラン杆菌である方法。
【請求項16】
患者に抗体を誘導する方法であって、該抗体がヒト乳房腫瘍細胞と免疫反応性であり、請求の範囲第8項に記載の化合物の所定量を、単独で、又は該抗体を誘導するのに効果的な適切な免疫学的アジュバントに結合して、該患者に投与することを具備した方法。
【請求項17】
請求の範囲第16項に記載の方法であって、該誘導される抗体がMBr1抗体である方法。
【請求項18】
請求の範囲第16項に記載の方法であって、該患者が臨床的に回復中であるか、又は該患者が外科手術によって治療されている場合には、一部の除去されていない疾患部分を制限する方法。
【請求項19】
請求の範囲第16項に記載の方法であって、該アジュバントがタンパク質キャリアー、バクテリア又はリポソームである方法。
【請求項20】
請求の範囲第19項に記載の方法であって、該アジュバントが、カルメット−ゲラン杆菌である方法。
【請求項21】
患者に抗体を誘導する方法であって、該抗体がヒト乳房腫瘍細胞と免疫反応性であり、請求の範囲第9項に記載の化合物の所定量を、単独で、又は該抗体を誘導するのに効果的な適切な免疫学的アジュバントに結合して、該患者に投与することを具備した方法。
【請求項22】
請求の範囲第21項に記載の方法であって、該誘導される抗体がMBr1抗体である方法。
【請求項23】
請求の範囲第21項に記載の方法であって、該患者が臨床的に回復中であるか、又は該患者が外科手術によって治療されている場合には、一部の除去されていない疾患部分を制限する方法。
【請求項24】
請求の範囲第21項に記載の方法であって、該アジュバントがタンパク質キャリアー、バクテリア又はリポソームである方法。
【請求項25】
請求の範囲第24項に記載の方法であって、該アジュバントがカルメット−ゲラン杆菌である方法。
【請求項26】
患者に抗体を誘導する方法であって、該抗体がヒト乳房腫瘍細胞と免疫反応性であり、請求の範囲第10項に記載の化合物の所定量を、単独で、又は該抗体を誘導するのに効果的な適切な免疫学的アジュバントに結合して、該患者に投与することを具備した方法。
【請求項27】
請求の範囲第26項に記載の方法であって、該誘導される抗体がMBr1抗体である方法。
【請求項28】
請求の範囲第26項に記載の方法であって、該患者が臨床的に回復中であるか、又は該患者が外科手術によって治療されている場合には、一部の除去されていない疾患部分を制限する方法。
【請求項29】
請求の範囲第26項に記載の方法であって、該アジュバントがタンパク質キャリアー、バクテリア又はリポソームである方法。
【請求項30】
請求の範囲第29項に記載の方法であって、該アジュバントがカルメット−ゲラン杆菌である方法。
【請求項31】
患者の乳ガンの再発を防止する方法であって、請求の範囲第8項に記載の化合物で患者をワクチン接種することを具備した方法。
【請求項32】
患者の乳ガンの再発を防止する方法であって、請求の範囲第9項に記載の化合物で患者をワクチン接種することを具備した方法。
【請求項33】
患者の乳ガンの再発を防止する方法であって、請求の範囲第10項に記載の化合物で患者をワクチン接種することを具備した方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−92109(P2012−92109A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256646(P2011−256646)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【分割の表示】特願2007−315261(P2007−315261)の分割
【原出願日】平成8年4月26日(1996.4.26)
【出願人】(399026731)スローン − ケタリング・インスティテュート・フォー・キャンサー・リサーチ (15)
【Fターム(参考)】