説明

モノクローナル抗体hPAM4

【課題】一価及び多価の単一特異性抗体、並びに多価多重特異性抗体を提供する。
【解決手段】一以上の同一結合部位を有する抗体、さらに、その結合部位が一つの標的抗原又は異なる標的抗原上の異なるエピトープに対して親和性を有するか、あるいは一つの標的抗原とハプテンに対して親和性を有する二以上の結合部位を有する各結合部位は標的抗原又は標的抗原上のエピトープと結合する抗体。さらに、宿主内でのこれらの機能的抗体の発現に有用な組換えベクター。より詳しくは、PAM4と呼ばれる腫瘍関連抗体。さらに、ヒト化及びヒトPAM4抗体、並びに診断及び治療におけるこのような抗体の使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は一価及び多価の単一特異性抗体、並びに多価多重特異性抗体に関する。詳しくは、本発明は、PAM4と呼ばれる、MUCI抗原特異的抗体に関する。本発明はさらにヒト化及びヒトPAM4抗体並びにそのフラグメント、並びに診断及び治療におけるこのような抗体及びそのフラグメントの使用に関する。
【0002】
一つの態様では、本発明の抗体は一以上の同一結合部位を有し、各結合部位は標的抗原又は標的抗原上のエピトープに対して親和性を有する。もう一つの態様では、本発明の抗体は標的抗原上の同じ、若しくは異なるエピトープ、又は同じ、若しくは異なる標的抗原に対して親和性を有する二以上の結合部位を有するか、あるいは、少なくとも一つの結合部位が標的抗原に対して親和性を有し、少なくとも一つの結語部位がハプテンに対して親和性を有する。本発明はまた、宿主内で本明細書に記載の抗体を発現するのに有用な組換えベクターも記載する。
【0003】
背景技術
膵臓は体がグルコースをエネルギーに変換するのを助けるインスリンと、体が食物を消化するのを助ける酵素を産生する。膵臓癌は、主として膵管の細胞に起こる膵臓の悪性増殖である。この疾病は9番目に多い癌の形態であるが、男性及び女性での癌での主要な死因のそれぞれ4番目及び5番目である。膵臓の癌はほぼ常に死に至り、5年後の生存率は3%に満たない。
【0004】
膵臓癌の最も一般的な症状は黄疸、異常な痛みと体重減少であり、これらは存在する他の因子とともに、本質的に特異的なものではない。従って、腫瘍増殖の初期ステージで膵臓癌を診断するのは難しい場合が多く、相当な疑ぐりと徹底的な診断的精密検査(検査のための手術を含む場合が多い)を必要とする。内視鏡超音波検査法及びコンピューター断層撮影法は膵臓癌の診断に現在利用できる最良の非侵襲的手段である。しかし、小さな腫瘍の信頼できる検出、並びに巣状膵炎から膵臓癌を見分けることは厄介である。残念ながら、現在のことろ、大多数の患者は、腫瘍がすでに被膜の外へ拡がって周囲の器官へ浸潤し、かつ/又は著しく転移した後期ステージで診断されている(Gold et al., Crit. Rev. Oncology/Hematology, 39:147−54, (2001))。この疾病の後期検出が一般的で、「初期」膵臓癌の診断は臨床の場ではまれである。
【0005】
膵臓癌に利用できる現行の治療手順は治癒にも至らず、実質的な生存期間の向上にも至っていない。外科的切除が生存の機会を与える唯一の物理療法である。しかし、腫瘍量が大きいため、10%〜25%の患者が「治癒的切除」の候補者となるに過ぎない。外科的処置を受けた患者でも、5年の生存期間はなお不十分であり、平均約10%でしかない。
【0006】
膵臓癌の初期検出及び診断、並びに疾病の適切なステージ判断が生存上の利益の向上をもたらすであろう。いくつかの研究室では、血流中への腫瘍関連マーカーの放出、並びに生検検体内でのマーカー物質の検出に基づく診断法の開発を進めている。膵臓癌の最良の腫瘍関連マーカーはCA19.9の免疫アッセイである。このシアリル化Leエピトープ構造のレベルの上昇は膵臓癌患者の70%で見られたが、検査した巣状膵炎検体ではいずれも見られなかった。しかし、CA19.9レベルは他のいくつかの悪性及び良性症状でも上昇が見られたことから、現在、このアッセイは診断に使用できない。しかし、アッセイはモニタリングには有用であり、術後のCA19.9血清レベルにおける継続的上昇は予後が短いことを示す。多くの他のモノクローナル抗体(MAb)は発達の種々のステージで診断のための免疫アッセイを用いて報告されている。これらには、限定されるものではないが、DUPAN2、SPAN1、B72.3、Ia3及び種々の抗CEA抗体が含まれる。
【0007】
人工の抗体、特に、MAb及び操作抗体又は抗体フラグメントが幅広く試験され、膵臓癌、並びに癌、自己免疫疾患、感染症、炎症性疾患、及び心血管疾患をはじめとする他の種々のヒト疾患の検出及び治療において重要なものであることがわかってきた(Filpula and McGuire, Exp. Opin. Ther. Patents (1999) 9: 231−245)。抗体又は抗体由来薬剤の臨床的有用性は、主として、特定の疾患に関連した特定の標的抗原とのその結合能に依存している。選択性は、とりわけ、診断薬又は治療薬が体内の正常組織に対して毒性がある場合に、ヒト疾患の検出及び治療段階において診断薬又は治療薬、例えば、同位元素、薬物、毒素、サイトカイン、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、酵素阻害剤、オリゴヌクレオチド、増殖因子、オリゴヌクレオチド、放射性核種、脈管形成因子阻害剤、又は金属を標的位置に送達するのに有用である。放射性標識抗体は、卵巣癌、結腸癌、及びリンパ腫をはじめとする多くの悪性腫瘍において、ある程度の成功をもって用いられている。またこの技術は、膵臓癌にも有用であることが分かっている。しかし、抗CEA抗体及びB72.3以外のものでは臨床上の情報は存在しない。
【0008】
このような抗体系の潜在的な制限については、Goldenberg, The American Journal of Medicine, 94: 298−299 (1993)に記載されている。検出及び治療技術において重要なパラメーターは、標的細胞が存在する部位に特異的に局在した注入投与量及び摂取率、すなわち、正常組織周辺に存在する放射能濃度に対する特異的に結合した抗体の濃度の比である。抗体を血流に注入すると、それは代謝、排出されるため、多くのコンパートメントを通過する。抗体は位置を突きとめ、標的細胞抗原と結合することが可能でなければならないが、その一方で体の他の部分も通過する。抗原のターゲッティングを制御する因子としては、位置、大きさ、抗原密度、抗原接近可能性、病理組織の細胞組成、及びターゲッティングする抗体の薬物動態学が挙げられる。抗体による腫瘍ターゲッティングに特異的に影響を与えるその他の因子としては、腫瘍及びその他の組織の両方における標的抗原の発現、及び放射性標識した抗体の血液クリアランスが遅いために起こる骨髄毒性が挙げられる。標的腫瘍細胞が付着するターゲッティング抗体の量は、腫瘍の血管形成及び抗体浸透を妨げる障害、並びに腫瘍内圧力によって影響を受ける。特に放射線免疫療法では、非標的器官、例えば、肝臓、腎臓又は骨髄による非特異的取り込みがこの技術のもう一つの潜在的制限となり、骨髄照射では線量制限毒性がしばしば起こる。
【0009】
標的部位への薬剤の送達のために提案される一つのアプローチはダイレクト・ターゲッティングと呼ばれ、診断用又は治療用放射性同位元素を含む抗体を用いて特異的抗原をターゲッティングするよう設計された技術である。腫瘍に関しては、このダイレクト・ターゲッティングアプローチでは、その抗原によって標的腫瘍を認識する放射性標識抗腫瘍単一特異性抗体を用いる。この技術は標識された単一特性抗体を患者に注入し、標的腫瘍に抗体を局在させ、診断又は治療上の効用を得ることを含む。結合していない抗体は体内から除去する。このアプローチは他の哺乳類疾患を診断又は治療するためにも使用できる。
【0010】
もう一つ提案される解決法は、「親和性増強系(Affinity Enhancement System, AES)」と呼ばれ、特に、診断用又は治療用放射性同位元素を含む抗体による腫瘍ターゲッティングの欠陥を克服するよう設計された技術である[米国特許第5,256,395号(1993)、 Barbet et al., Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 14: 153−166 (1999)]。AESでは、放射性標識した二価ハプテンと、標的腫瘍及び放射性ハプテンの両方を認識する抗腫瘍/抗ハプテン二重特異性抗体を用いる。この手法ではまた、価数のより高いハプテン及び特異性のより高い抗体を用いてもよい。この技術では、抗体を患者に注入し、それを標的腫瘍に局在させることを含む。結合していない抗体が血流からクリアリングされるに十分な時間の後、放射性標識したハプテンを投与する。ハプテンは標的細胞の部位に局在する抗体−抗原複合体と結合し、診断上又は治療上の効用が得られ、同時に、結合していないハプテンは体内から急速にクリアリングされる。Barbetは、後者が腫瘍表面と結合すると二価ハプテンが二重特異性抗体と架橋し得るという可能性を記述している。結果として、放射性標識複合体はより安定となり、より長い時間腫瘍に留まる。この系は哺乳類の疾患を診断又は治療するために使用できる。
【0011】
当該技術分野では、ダイレクト・ターゲッティング系で有用な多価多重特異性抗体の生産、及び親和性増強系で有用な多価多重特異性抗体の生産の必要がある。詳しくは、膵臓癌に有用な診断手段として働き、かつ、標的抗原において高い取り込みを示し、血中濃度は低く、正常な組織及び細胞を有毒な医薬から最適に保護する抗体の必要がある。
【0012】
発明の概要
本発明では、MUC1のアミノ末端とリピートドメインの開始部との間に位置するドメインに結合する抗体、融合タンパク質及びそのフラグメントが意図される。ある好ましい態様では、抗体、融合タンパク質及びそのフラグメントはPAM4抗体である。本発明のPAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントはムチンを用いた感作及び/又は選択により誘導され、好ましくは膵臓癌のムチンに対して反応性がある。従って、本発明のPAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントは好ましくは膵臓癌細胞に関連する抗原と結合する。
【0013】
ある好ましい態様では、PAM4抗体又はそのフラグメントはヒト化又は完全ヒト型であるか、あるいは、PAM4融合タンパク質はヒト化又は完全ヒトPAM4抗体若しくはそのフラグメントを含む。また、PAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントは少なくとも一つの治療薬及び/又は診断薬と結合させることができることも好ましい。
【0014】
本明細書では、マウスPAM4 MAbの相補性決定領域(CDR)と、ヒト抗体の軽鎖及び重鎖可変領域並びにヒト抗体の軽鎖及び重鎖定常領域のフレームワーク(FR)領域とを含んでなる、ヒト化PAM4抗体又はそのフラグメントであって、ヒト化PAM4 MAbの軽鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SASSSVSSSYLYを含んでなるCDR1;アミノ酸配列STSNLASを含んでなるCDR2;及びアミノ酸配列HQWNRYPYTを含んでなるCDR3を含んでなり;かつ、ヒト化PAM4 MAbの重鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYVLHを含んでなるCDR1;アミノ酸配列YINPYNDGTQYNEKFKGを含んでなるCDR2;及びアミノ酸配列GFGGSYGFAYを含んでなるCDR3を含んでなる、ヒト化PAM4抗体又はそのフラグメントが意図される。ある好ましい態様では、ヒト化PAM4抗体又はそのフラグメントの軽鎖及び重鎖可変領域のFRは、対応するマウスPAM4 MAbのFRから置換されている少なくとも一つのアミノ酸を含んでなる。さらに好ましくは、ヒト化PAM4抗体又はそのフラグメントは、図1Bのマウス重鎖可変領域、PAM4 VHアミノ酸配列のアミノ酸残基5、27、30、38、48、66、67、及び69からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸を含む。また、該マウスMAb由来のアミノ酸が、図1Aのマウス軽鎖可変領域、PAM4V配列のアミノ酸残基21、47、59、60、85、87、及び100からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸であるヒト化PAM4抗体又はそのフラグメントも好ましい。最も好ましくは、ヒト化PAM4抗体又はそのフラグメントは、図1AのPAM4 Vヌクレオチド配列及び図1BのPAM4 VHヌクレオチド配列を含んでなり、かつ/又は図4AのhPAM4 Vアミノ酸配列及び図4BのhPAM4 Vアミノ酸配列を含んでなる。
【0015】
本発明のもう一つの態様は、本発明の抗体、融合タンパク質若しくはそのフラグメントのいずれか一つの抗体又はそのフラグメントを含んでなり、その抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントが少なくとも一種の診断/検出薬に結合されている抗体成分を含んでなる癌細胞をターゲッティングする診断免疫複合体である。
【0016】
好ましくは、診断/検出薬は、放射性核種、造影剤、及び光活性診断/検出薬からなる群から選択される。さらに好ましくは、診断/検出薬は20〜4,000keVのエネルギーを有する放射性核種であるか、又は、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、又はその他のγ、β、若しくは陽電子放射核種からなる群から選択される放射性核種である。また、好ましくは、診断/検出薬は、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)及びエルビウム(III)を含んでなる金属などの常磁性イオン、又はバリウム、ジアトリアゾエート、エチオド化オイル、クエン酸ガリウム、イオカルム酸、イオセタム酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパン酸、イオプロセム酸、イオセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオセメ酸、イオタスル、イオテトル酸、イオサラム酸、イオトロキシ酸、イオキサグル酸、イオキソトリアゾ酸、イポデート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾエート、プロピリオドン及び塩化タリウムなどの放射線不透過性物質である。
【0017】
また、好ましくは、診断/検出薬はフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリセリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド及びフルオロスカミンからなる群から選択される蛍光標識化合物、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びシュウ酸エステルからなる群から選択される化学発光標識化合物、又はルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンからなる群から選択される生物発光化合物である。もう一つの態様では、本発明の診断免疫複合体は手術中、内視鏡的、又は血管内腫瘍診断に用いられる。
【0018】
本発明のもう一つの態様は、本発明の抗体、融合タンパク質若しくはそのフラグメントのいずれか一つの抗体又はそのフラグメントを含んでなり、その抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントが少なくとも一種の治療薬に結合されている抗体成分を含んでなる癌細胞をターゲッティングする治療免疫複合体である。
【0019】
好ましくは、治療薬は放射性核種、免疫調節剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、オリゴヌクレオチド、酵素阻害剤、光活性治療薬、細胞傷害剤、脈管形成阻害剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
一つの態様では、bcl−2発現を阻害するアンチセンス分子などのオリゴヌクレオチドが、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする米国特許第5,734,033号(Reed)に記載されており、本発明の免疫複合体又は抗体融合タンパク質の治療薬部分に結合されているか、又は治療薬部分を形成し得る。あるいは、このオリゴヌクレオチドは本発明の裸の、又は結合されているPAM4抗体又はそのフラグメントと同時投与してもよいし、逐次投与してもよい。ある好ましい態様では、このオリゴヌクレオチドは癌遺伝子又はbcl−2などB細胞悪性腫瘍の癌遺伝子産物に対して向けられていることが好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0021】
ある好ましい態様では、治療薬は薬物又は毒素などの細胞傷害剤である。また、好ましくは、薬物はナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、ゲムシタビン、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトセシン、SN−38、ドキソルビシン、及びそれらの類似体、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗有糸分裂剤、抗脈管形成剤、アポトーシス剤、メトトレキサート、CPT−11、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
もう一つの態様では、治療薬はオリゴヌクレオチドである。例えば、このオリゴヌクレオチドはbcl−2及びp53のような癌遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのアンチセンスオリゴヌクレオチドであってよい。
【0023】
もう一つの態様では、治療薬はリシン、アブリン、アルファトキシン、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌(Staphylococcal)内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、及びシュードモナス内毒素、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される毒素、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される免疫調節剤、32P、33P、47Sc、64Cu、67Cu、67Ga、86Y、90Y、111Ag、111In、125I、131I、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、177Lu、186Re、188Re、189Re、212Pb、212Bi、213Bi、211At、223Ra及び225Ac、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される放射性核種、又は色素原及び色素からなる群から選択される光活性治療薬である。
【0024】
さらに好ましくは、治療薬はマレイン酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ−V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、及びアセチルコリンエステラーゼからなる群から選択される酵素である。
【0025】
本明細書では、PAM4標的抗原に対して親和性を有する一を超える抗原結合部位とハプテン分子に対して親和性を有する一以上のハプテン結合部位を含んでなる、多価多重特異性抗体又はそのフラグメントが意図される。好ましくは、抗体又はそのフラグメントはヒト化又は完全ヒト抗体若しくはそのフラグメントである。また、好ましくは、多価多重特異性抗体又はそのフラグメントは診断/検出及び/又は治療薬をさらに含んでなる。
【0026】
本明細書ではまた、PAM4標的抗原に対して親和性を有する少なくとも一つの結合部位と、少なくとも一種の診断薬及び/又は治療薬を運び得る
【化1】


からなる群から選択されるターゲッティング可能な構築物/複合体に対して親和性を有する少なくとも一つの結合部位を含んでなる、二重特異性抗体又はそのフラグメントが記載される。本発明で用いるのに好適な他のターゲッティング可能な構築物が、「D−アミノ酸ペプチド」と題された、2003年6月13日出願の米国仮出願(McBride)、代理人整理番号018733/1206に開示されている。
【0027】
本発明のもう一つの態様は、少なくとも二つのPAM4 MAb又はそのフラグメントを含んでなり、そのMAb又はそのフラグメントが本発明の抗体及びそのフラグメントのいずれかを含んでなる、抗体融合タンパク質又はそのフラグメントである。また、好ましくは、抗体融合タンパク質又はそのフラグメントは本発明の抗体及びそのフラグメントのいずれか一つの、少なくとも一種の第一のPAM4 MAb又はそのフラグメントと、本発明の抗体及びそのフラグメントのMAb又はそのフラグメント以外の、少なくとも一種の第二のMAb又はそのフラグメントを含んでなる。好ましくは、第二のMAbは、CA19.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、B72.3、CC49、CEA、aLe、Lewis抗原Le(y)により定義される抗体、及びCSApに対する抗体、インスリン様増殖因子(IGF)、テネイシン、IL−6、MUC2、MUC3、MUC4、TAG−72、EGFR、CD40、血小板由来増殖因子、IL−6、脈管形成因子(例えば、VEGF)、癌遺伝子の産物及びHER2/neuからなる群から好ましくは選択される癌腫関連抗体である。本発明の抗体融合タンパク質又はそのフラグメントは少なくとも一種の診断及び/又は治療薬をさらに含み得る。
【0028】
また、本発明では、
(a)本明細書に記載の抗体のいずれか一つのPAM4抗体又はそのフラグメント;
(b)(a)に記載の少なくとも二種のMAb又はそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質又はそのフラグメント;
(c)本発明のPAM4抗体又はそのフラグメントの該MAb又はそのフラグメントを含んでなる少なくとも一種の第一のPAM4 MAb又はそのフラグメントと、本発明の抗体又はそのフラグメントのいずれか一つのMAb又はそのフラグメント以外の、少なくとも一種の第二のMAb又はそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質又はそのフラグメント;並びに
(d)本発明の抗体又はそのフラグメントのいずれか一つの該MAb又はそのフラグメントを含んでなる少なくとも一種の第一のMAb又はそのフラグメントと、本発明の抗体又はそのフラグメントのいずれか一つのMAb又はそのフラグメント以外の、少なくとも一種の第二のMAb又はそのフラグメントを含んでなり、該第二のMAbが癌関連抗体である、抗体融合タンパク質又はそのフラグメント
からなる群から選択されるMAb又はそのフラグメントをコードする核酸を含んでなるDNA配列である。好ましくは、この癌関連抗体は、CA19.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、B72.3、CC49、CEA、aLe、Lewis抗原Le(y)により定義される抗体、CD40に対する抗体、脈管形成因子(例えば、VEGF)、癌遺伝子の産物、MUC1、MUC−2、MUC−3、MUC−4、TAG−72、EGFR、インスリン様増殖因子(IGF)、血小板由来増殖因子、テネイシン、IL−6、及びHER2/neuからなる群から選択される。
【0029】
また、本発明には、本発明の抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントのいずれか一つのDNA配列を含んでなる発現ベクター及び宿主細胞が記載される。
【0030】
本発明のもう一つの態様は、診断薬若しくは治療薬又はそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(i)少なくとも一種の診断/検出薬及び/又は治療薬に結合されたPAM4抗体又はそのフラグメントを含んでなる組成物を準備し、かつ、(ii)本発明の抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントのいずれか一つの診断又は治療複合体をそれを必要とする被験体に投与することを含んでなる方法である。好ましくは、診断/検出薬は放射性核種、造影剤、及び光活性診断/検出薬からなる群から選択され、治療薬は好ましくは薬物、毒素、細胞傷害剤、サイトカイン、免疫調節剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、増殖因子、放射性核種からなる群から選択される。
【0031】
また、本明細書では、診断/検出薬、治療薬又はそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(a)PAM4抗原に対して親和性を有し、かつ、一以上のハプテン結合部位を含む本発明の多価多重特異性抗体又はそのフラグメントのいずれか一つの抗体又はそのフラグメントを被験体に投与すること;(b)一定量の非抗体が被験体の血流からクリアリングされるに十分な時間待つこと;及び(c)該被験体に、該抗体の結合部位と結合する、診断/検出薬、治療薬又はそれらの組み合わせを含んでなる担体分子を投与することを含んでなる方法が意図される。好ましくは、この担体分子は抗体の一を超える結合部位に結合する。さらに好ましくは、この診断/検出薬又は治療薬は、同位元素、薬物、毒素、サイトカイン、オリゴヌクレオチド、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、酵素阻害剤、増殖因子、放射性核種及び金属からなる群から選択される。
【0032】
ある態様では、bcl−2発現を阻害するアンチセンス分子などのオリゴヌクレオチドが、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする米国特許第5,734,033号(Reed)に記載されており、本発明の免疫複合体又は抗体融合タンパク質の治療薬部分に結合されているか、又は治療薬部分を形成し得る。あるいは、このオリゴヌクレオチドは本発明の裸の、又は結合されているPAM4抗体又はそのフラグメントと同時投与してもよいし、逐次投与してもよい。ある好ましい態様では、このオリゴヌクレオチドは癌遺伝子又はbcl−2などB細胞悪性腫瘍の癌遺伝子産物に対して向けられていることが好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0033】
本発明では、癌を診断又は治療する方法であって、(a)PAM4抗原に対して親和性を有し、かつ、一以上のハプテン結合部位を含む本発明の多価多重特異性抗体又はそのフラグメントのいずれか一つの抗体又はそのフラグメントをそれを必要とする被験体に投与すること;(b)一定量の非結合抗体が被験体の血流からクリアリングされるに十分な時間待つこと;及び(c)該被験体に、該抗体の結合部位と結合する、診断/検出薬、治療薬又はそれらの組み合わせを含んでなる担体分子を投与することを含んでなる方法が記載される。ある好ましい態様では、癌は膵臓癌である。また、好ましくは、この方法は罹患組織の手術中同定、罹患組織の内視鏡的同定、又は罹患組織の血管内同定に使用できる。
【0034】
本発明のもう一つの態様は、被験体において悪性腫瘍を治療する方法であって、(a)該被験体に、PAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は本発明の抗体、融合タンパク質若しくはそのフラグメントのいずれか一つの抗体融合タンパク質又はそのフラグメントを含んでなり、該PAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントが少なくとも一種の治療薬に結合されている、治療上有効量の抗体又はそのフラグメントを投与すること;及び(b)該PAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントを医薬上好適な賦形剤中に調剤することを含んでなる方法である。好ましくは、この方法は、本発明の抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントのいずれでもない第二のMAb又はそのフラグメントをさらに含んでなる。さらに好ましくは、この第二のMAb又はそのフラグメントは裸のMAb又はそのフラグメントである。また、好ましくは、第二のMAb又はそのフラグメントはCA19.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、B72.3、CC49、CEA、aLe、Lewis抗原Le(y)により定義される抗体、CSApに対する抗体、MUC1、MUC−2、MUC−3、MUC−4、TAG−72、EGFR、CD40、脈管形成因子(例えば、VEGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、IL−6、癌遺伝子の産物、及びHER2/neuからなる群から選択される。
【0035】
本明細書では、被験体において悪性腫瘍を診断する方法であって、(a)該被験体に、PAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は本発明の抗体、融合タンパク質若しくはそのフラグメントのいずれか一つのPAM4抗体融合タンパク質又はそのフラグメントを含んでなり、該PAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又はPAM4抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントが少なくとも一種の診断/検出薬に結合されている、診断上有効量の診断複合体を投与すること;及び(b)所望により、該PAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントを医薬上好適な賦形剤中に調剤することを含んでなる方法が意図される。
【0036】
本発明のもう一つの態様は、被験体において癌細胞を治療する方法であって、(i)該被験体に、裸のPAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は本発明の裸の抗体、融合タンパク質若しくはそのフラグメントのいずれか一つの、裸の抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントを含んでなる、治療上有効量の組成物を投与すること、及び(ii)該裸のPAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントを医薬上好適な賦形剤中に調剤することを含んでなる方法である。好ましくは、この方法は、本発明の裸の抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントのいずれでもない第二の裸の抗体又はそのフラグメントをさらに含んでなる。例えば、この第二の抗体又はそのフラグメントはCA19.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、B72.3、CC49、CEA、aLe、Lewis抗原Le(y)により定義される抗体、CSApに対する抗体、MUC1、MUC−2、MUC−3、MUC−4、TAG−72、EGFR、CD40、脈管形成因子(例えば、VEGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、IL−6、癌遺伝子の産物、及びHER2/neuからなる群から選択され得る。
【0037】
本発明はまま、被験体において悪性腫瘍を診断する方法であって、(i)裸のPAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は本発明の裸の抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントのいずれか一つの裸の抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントを含んでなる組成物を用いて、該被験体からの検体に対してin vitro診断アッセイを行うことを含んでなる方法を記載する。好ましくは、悪性腫瘍は癌である。さらに好ましくは、癌は膵臓癌である。
【0038】
本発明のもう一つの態様は、被験体においてPAM4抗原を発現する罹患組織を手術中に同定する方法であって、(A)PAM4抗原を発現する標的組織と特異的に結合する少なくとも一つのアームと、ターゲッティング可能な複合体と特異的に結合する少なくとも一つの他のアームとを含んでなる、有効量の二重特異性抗体又は抗体フラグメントを投与すること(ここで、標的組織と特異的に結合する該一つのアームはhPAM4抗体又はそのフラグメントである);及び(B)下記:
【化2】


からなる群から選択されるターゲッティング可能な複合体を投与すること
を含んでなる方法である。
【0039】
また本明細書には、被験体においてPAM4抗原を発現する罹患組織を内視鏡的に診断する方法であって、(A)PAM4抗原を発現する標的組織と特異的に結合する少なくとも一つのアームと、ターゲッティング可能な複合体と特異的に結合する少なくとも一つの他のアームとを含んでなる、有効量の二重特異性抗体又は抗体フラグメントを投与すること(ここで、標的組織と特異的に結合する該一つのアームはhPAM4抗体又はそのフラグメントである);及び(B)下記:
【化3】


からなる群から選択されるターゲッティング可能な複合体を投与することを含んでなる方法も記載される。
【0040】
本明細書では、被験体においてPAM4抗原を発現する罹患組織を血管内同定する方法であって、(A)PAM4抗原を発現する標的組織と特異的に結合する少なくとも一つのアームと、ターゲッティング可能な複合体と特異的に結合する少なくとも一つの他のアームとを含んでなる、有効量の二重特異性抗体又は抗体フラグメントを投与すること(ここで、標的組織と特異的に結合する該一つのアームはhPAM4抗体又はそのフラグメントである);及び(B)下記:
【化4】


からなる群から選択されるターゲッティング可能な複合体を投与すること
を含んでなる方法が意図される。
【0041】
もう一つの態様は、内視鏡手順、血管内カテーテル、又は手術中に病変部を検出する方法であって、(a)このような手順を受ける被験体に二重特異性抗体F(ab)又はそのF(ab’)フラグメント、ダイアボディー、トリアボディー、又はテトラボディーを注射して(ここで、該二重特異性抗体又はそのフラグメント、ダイアボディー、トリアボディー、又はテトラボディーは、PAM4抗原と特異的に結合する第一の抗体結合部位を有し、かつ、ハプテンと特異的に結合する第二の抗体結合部位を有する)、この抗体フラグメントを標的部位に結合させること;(b)所望により、この二重特異性フラグメントが注射から約24時間以内に循環からあまりクリアリングされない場合には、ガラクトシル化抗イディオタイプクリアリング剤を用いて非標的抗体フラグメントをクリアリングし、標的部位に迅速に局在し、腎臓からクリアリングする二価の標識ハプテンを注射すること;(c)最初の注射から48時間以内に、検出手段を用いて、標的部位における付着標識の上昇レベルの近距離検出によりハプテンの存在を検出し、該手順を行うこと(ここで、該検出は造影剤又はサブトラクション剤を用いずに行われる)を含んでなる方法である。
【0042】
手術、血管内手順、内視鏡手順中の近距離病変部検出のための方法であって、(a)このような手順に対する被験体に有効量のhPAM4免疫複合体又はそのフラグメントを非経口注射すること;(b)注射から48時間以内にその手順を行うこと;(c)該標識抗体又はそのフラグメントの存在を検出するための検出手段を用いて、接近を受けた被験体内部を近距離でスキャンすること;及び(d)検出手段で、このような部位における該標識抗体又はそのフラグメントの上昇レベルを検出することにより、該標識抗体又はそのフラグメントの付着部位を限局化することを含んでなる方法も本発明で意図される。
【0043】
概説
特に断りのない限り、単数形表現の名詞は複数形の場合も意味する。本明細書において「PAM4抗体」は、マウス、ヒト、及びヒト化PAM4抗体を含む。
本発明は膵臓癌の診断、検出、ステージ判定、及び治療に有用なモノクローナル抗体PAM4に関する。好ましくは、本発明のPAM4抗体及びそのフラグメントはヒト化されているか、又は完全ヒト型である。マウスPAM4(mPAM4)抗体は、異種移植されたRIP−1ヒト膵臓癌腫に由来する膵臓癌ムチンを免疫原として用いることにより開発されたMUC1抗体である。Gold et al., Int. J Cancer, 57:204−210 (1994).このmPAM4抗体は標的膵臓癌抗原上の独特かつ新規なエピトープを認識する。実施例1に記載されているものなどの免疫組織化学染色研究では、PAM4 MAbが、乳癌、膵臓癌及びその他の癌細胞によって発現されたMUC1抗原のアミノ末端とリピートドメインの開始部の間に位置するドメインに結合し、正常なヒト組織には結合が制限されることが示されている。本発明のPAM4抗体は相対的に膵臓癌に特異的であることから、膵臓癌細胞と優先的に結合する。ある好ましい態様では、PAM4抗体及びそのフラグメントはヒト化されている。PAM4抗体は標的エピトープと反応性があり、迅速にインターナライズされ得る。このエピトープは主として膵臓癌に関連する抗原により発現され、巣状膵炎に関連する抗原では発現されない。動物モデルにおいて放射性標識PAM4 MAbを用いた限局化及び治療研究では、腫瘍ターゲッティング及び治療効果が示されている。
【0044】
本発明のPAM4抗体は、多くの器官及び腫瘍種によって産生される抗原である、MUC1のアミノ末端とリピートドメインの開始部の間に位置するドメインであるPAM4抗原と結合する。本発明の好ましいPAM4抗体は膵臓癌細胞と優先的に結合する。実施例2のPAM4モノクローナル抗体などのPAM4 MAbを用いた研究では、この抗体がいくつかの重要な特性を示し、臨床診断及び治療適用の候補となることが示されている。PAM4抗原は診断及び治療に有用な標的となるので、初期の研究で記載されている非PAM4抗体(CA19.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、B72.3、aLe、及びLewis抗原)により認識されるエピトープとは異なる膵臓癌抗原のエピトープを認識するMabを得ることが望ましい。
【0045】
本発明のPAM4抗体と組み合わせて、又はともに用いるのに好適な抗体としては、例えば、抗体CA19.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、B72.3、CC49、CEA、aLe、Lewis抗原Le(y)により定義される抗体、又は癌胎児性抗原(CEA)、結腸特異的抗原−p(CSAp)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、EGFR、脈管形成因子(例えば、VEGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子及びIL−6に対する抗体、並びに癌遺伝子の産物、及びEpstein et al.による特許(米国特許第6,071,491号、同第6,017,514号、同第5,019,368号及び同第5,882,626号)に記載のものなど、腫瘍壊死物質に対する抗体が挙げられる。このような抗体は現行のPAM4抗体免疫検出及び免疫治療法を補うのに有用であろう。治療適用では、腫瘍細胞に対するエフェクター細胞機能に関与する免疫調節剤に促進作用又は阻害作用のある抗体もまた、PAM4抗体単独又は他の腫瘍関連抗体(一例としてCD40に対する抗体がある)と組み合わせたPAM4抗体と組み合わせると有用であり得る。Todryk et al., J Immunol Methods, 248:139−147(2001); Turner et al., J Immunol, 166:89−94 (2001).また、癌遺伝子のマーカー若しくは産物に対する抗体、又はVEGFなどの脈管形成因子に対する抗体も用いられる。VEGF抗体は、Thorpe et al, 米国特許第6,342,221号、同第5,965,132号及び同第6,004,554号に記載されており、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0046】
さらに、臨床サンプル中でPAM4抗原を検出するのに有用な二重決定基固相酵素免疫検定法(ELISA)の開発のためには、別のPAM4様抗体が利用できることが不可欠である。ELISA実験は実施例4及び7に記載されている。
【0047】
本発明はMUC1のアミノ末端とリピートドメインの開始部の間に位置するドメインに結合し、かつ、診断及び治療法に使用できるヒト化及び完全ヒト抗体及びそのフラグメントを記載する。ある好ましい態様では、PAM4抗体はヒト化されている。また、好ましくは、本発明のPAM4抗体は膵臓癌細胞に優先的に結合する。非ヒトモノクローナル抗体はヒト宿主によっては外来タンパク質として認識され、繰り返し注射すると体液性の過敏感反応を招く可能性があることから、マウスPMA4配列のヒト化は患者が受け得る有害な免疫応答を軽減することができる。マウスに基づくモノクローナル抗体に関しては、これはしばしばヒト抗マウス抗体(HAMA)応答と呼ばれる。ヒト化PAM4抗体又はそのフラグメントのフレームワーク領域のいくつかのヒト残基がそれらのマウス対応物で置換されていることが好ましい。また、Vとして、二種の異なるヒト抗体由来のフレームワーク領域の組み合わせを用いるのも好ましい。この抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のそれに由来する。
【0048】
本発明のもう一つの好ましい態様は、ヒトPAM4抗体である。ヒト抗体は、例えば、抗原投与に応答して特定のヒト抗体を産生するよう「操作」されているトランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術では、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子座のエレメントを、内在する重鎖及び軽鎖遺伝子座のターゲッティング破壊を含む胚幹細胞系統に由来するマウス株へ導入する。このトランスジェニックマウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスを用いてヒト抗体を分泌するハイブリドーマを作出することができる。トランスジェニックマウス由来のヒト抗体を得る方法は、Green et al., Nature Genet. 7:13 (1994), Lonberg et al., Nature 368:856 (1994)、及びTaylor et al., Int. Immun. 6:579 (1994)により記載されている。また、完全ヒト抗体も、遺伝子又は染色体トランスフェクション法、並びにファージディスプレー技術により構築することができ、これらは総て当該技術分野で公知である。例えば、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのヒト抗体及びそのフラグメントのin vitro生産に関しては、McCafferty et al., Nature 348:552−553 (1990)を参照。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子を糸状バクテリオファージの主働又は微働外被タンパク質遺伝子のフレーム内にクローン化し、ファージ粒子表面の機能的抗体フラグメントとして提示する。この糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含んでいるので、抗体の機能的特性に基づいて選択すればまた、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子が選択されることになる。このように、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレーは種々の形式で行うことができる。総説としては、例えば、Johnson and Chiswell, Current Opiniion in Structural Biology 3:5564−571 (1993)参照。
【0049】
本発明の抗体及びそのフラグメントは、ヒト膵臓腫瘍由来の粗ムチン調製物に対して惹起するのが好ましい。これに関して、これに関して、PAM4抗体はPAM4抗原の実質的に純粋な調製物を用いて得ることができる。実質的に純粋なタンパク質とは、本来そのタンパク質に伴っている細胞成分が実質的に混入しないタンパク質である。
【0050】
定義
以下の説明において、多数の専門用語が使用されており、以下、本発明の理解を容易にするために定義を示す。
【0051】
本明細書において、抗体とは、全長(すなわち、天然に存在する又は通常の免疫グロブリン遺伝子フラグメント組換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン分子(例えばIgG抗体)、又は抗体フラグメントのような、免疫グロブリン分子の免疫学的に有効な(すなわち、特異的に結合する)部分をいう。
【0052】
抗体フラグメントとは、F(ab’)、F(ab)、Fab’、 Fab、Fv、scFvなどのような抗体の部分をいう。構造に関係なく、抗体フラグメントは全長抗体により認識される同じ抗原と結合する。例えば、抗CD20モノクローナル抗体フラグメントは、CD20のエピトープと結合する。「抗体フラグメント」とはまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のようにふるまういずれの合成又は遺伝子操作タンパク質も含む。例えば、抗体フラグメントとしては、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメントのような可変領域からなる単離されたフラグメント、軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカー(「scFvタンパク質」)により接続されている組換え単鎖ポリペプチド分子、及び超過変領域を模倣したアミノ酸残基からなる最小認識ユニットが挙げられる。
【0053】
裸の抗体(naked antibody)は一般的に治療薬又は診断/検出薬と結合していない抗体である。しかし、それはまた診断/検出薬又は治療薬と結合していない抗体フラグメントであってもよい。これは抗体分子のFc部分が、細胞溶解を引き起こす作用をするようメカニズムを設定する補体結合及びADCC(抗体依存性細胞傷害)のようなエフェクター機能を提供するためである。しかし、治療機能のためにはこのFc部分は必要なく、アポトーシスなどの他のメカニズム機能を果たす可能性がある。裸の抗体には、ポリクローナル及びモノクローナル抗体の双方、並びに融合タンパク質、及びキメラ、ヒト化又はヒト抗体のようなある種の組換え抗体が含まれる。
【0054】
キメラ抗体は、一つの種、好ましくは齧歯類の抗体由来の抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含み、この抗体分子の定常ドメインはヒト抗体の定常領域に由来する組換えタンパク質である。獣医学領域への適用のためには、このキメラ抗体の定常ドメインは、ネコ又はイヌのような他の種由来のものであってもよい。
【0055】
ヒト化抗体(humanized antibody)は、一つの種、例えば齧歯類抗体由来の抗体のCDRが齧歯類抗体のH及びL可変鎖からヒトH及びL可変ドメインに移された組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインに由来する。
【0056】
ヒト抗体は、抗原刺激に応答して特定のヒト抗体を産生するために「操作された」トランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術では、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子座のエレメントが、内在性重鎖及び軽鎖遺伝子座が標的破壊されている胚幹細胞株由来のマウス系統に導入される。このトランスジェニックマウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスをヒト抗体を分泌するハイブリドーマを作製するために使用することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al., Nature Genet. 7:13 (1994), Lonberg et al., Nature 368:856 (1994),及びTaylor et al., Int. Immun. 6:579(1994)に記載されている。完全ヒト抗体はまた、遺伝子又は染色体トランスフェクション法並びにファージディスプレー技術により構築でき、これらは総て当該技術分野で公知である。例えば、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのin vitroにおけるヒト抗体及びそのフラグメントの産生に関しては、McCafferty et al., Nature 348:552−553(1990)を参照。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子がフレーム内で糸状バクテリオファージの主要又は微量コートタンパク質遺伝子へクローニングされ、機能的抗体フラグメントとしてファージ粒子表面上に提示される。この糸状粒子はファージゲノムの単鎖DNAコピーを含み、抗体の機能特性に基づいて選択すれば、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子が選択されることになる。このように、ファージはB細胞のいくつかの特性を模倣する。ファージディスプレーはさまざまな形式で行うことが可能であり、総説としては例えば、Johnson and Chiswell, Current Opinion in Structural Biology 3:5564−571 (1993)を参照。
【0057】
ヒト抗体はまた、in vitro活性化B細胞により産生させることができる。引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照。
【0058】
治療薬は、個別に、同時に又は逐次に、抗体部分とともに又は抗体部分(すなわち抗体、又は抗体フラグメント、又はサブフラグメント)と結合させて投与される分子又は原子であり、疾病の治療に有用である。治療薬の例としては、抗体、抗体フラグメント、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性薬又は色素及び放射性同位元素が挙げられる。
【0059】
診断/検出薬は、抗体部分(すなわち抗体、又は抗体フラグメント、又はサブフラグメント)と結合させて投与される分子又は原子であり、その抗原を含む細胞を限局化することにより疾病の診断に有用である。有用な診断/検出薬としては、限定されるものではないが、放射性同位元素、色素(ビオチン−ストレプトアビジン複合体など)、造影剤、蛍光化合物又は分子、及び核磁気共鳴イメージング(MRI)のための増強剤(例えば、常磁性イオン)などがある。米国特許第6,331,175号はMRI技術及びMRI増強剤に結合させた抗体の調製について記載しており、その全開示内容は引用することにより本明細書の一部とする。好ましくは、これらの診断/検出薬は放射性同位元素、核磁気共鳴イメージングで使用する増強剤、及び蛍光化合物からなる群から選択される。抗体成分に放射性金属又は常磁性イオンを付加するためには、イオンを結合させるための多様なキレート基を付着させた長いテールを有する試薬と反応させる必要があろう。このようなテールは、ポリリシン、多糖、又は例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリミキシン、及びこの目的のために有用なことが公知の基といった、キレート基に結合できるペンダント基を有する他の誘導体化又は誘導体化可能な鎖であり得る。キレート剤は標準的な化学法を用いて抗体に結合させる。キレート剤は通常、免疫反応性の損失が最小で、凝集及び/又は内部架橋が最小となる分子との結合を形成し得る基により抗体に連結される。キレート剤を抗体に結合させるその他の、もっと特殊な方法及び試薬は、1989年4月25日出願の「Antibody Conjugates」と題されたHawthorneの米国特許第4,824,659号に開示されており、その開示内容は引用することにより本明細書の一部とする。特に有用な金属−キレートの組み合わせとしては、125I、131I、123I、124I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N、15O及び76Brのような一般エネルギー範囲60〜400keVの診断用同位元素とともに用いられる2−ベンジルDTPA並びにそのモノメチル及びシクロヘキシル類似体が含まれ、ラジオイメージングに用いられる。同じキレート剤がマンガン、鉄及びガドリニウムのような非放射性金属と錯化した場合は、本発明の抗体とともに使用するとMRIに有用である。NOTA、DOTA、及びTETAのような大環状のキレート剤は種々の金属及び放射性金属とともに、最も詳しくは、それぞれガリウム、イットリウム、及び銅などの放射性核種とともに用いられる。このような金属−キレート錯体は、環のサイズを目的の金属にあわせて調整することにより極めて安定にすることができる。大環状ポリエーテルのような他のリング型キレート剤は、RAITのための223Raのような、安定に結合する核種を対照とするものであり、本発明に包含される。
【0060】
免疫複合体(immunoconjugate)は、少なくとも一種の治療薬及び/又は診断/検出薬に結合された抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントである。診断/検出薬は、放射性核種又は非放射性核種、造影剤(核磁気共鳴イメージング、コンピューター断層撮影法又は超音波診断法など)を含んでなり、この放射性核種はγ、β、α、オージェ電子、又は陽電子放射性同位元素であり得る。
【0061】
発現ベクターは、宿主細胞中で発現される遺伝子を含んでなるDNA分子である。通常、遺伝子発現は構成又は誘導プロモーター、組織特異的調節エレメント及びエンハンサーをはじめとする、特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子は調節エレメントに「作動可能なように連結されている」といわれる。
【0062】
組換え宿主は、クローニングベクター又は発現ベクターのどちらかを含む任意の原核又は真核細胞であってもよい。この語はまた、それらの原核又は真核細胞、並びに宿主細胞の染色体若しくはゲノム、又は宿主細胞の細胞中にクローニングされた遺伝子を含むように遺伝子操作されたトランスジェニック動物も含む。好適な哺乳類宿主細胞としては、SP2/0細胞及びNS0細胞のような骨髄腫細胞、並びにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ハイブリドーマ細胞株及び抗体発現に有用な他の哺乳類宿主細胞が挙げられる。また、mAb及び他の融合タンパク質の発現に特に有用なものはWO 0063403 A2に開示されているヒト細胞株PER.C6であり、CHO、COS、 Vero、 HeLa、 BHK及びSP2などの従来の哺乳類細胞株に比べて2〜200倍の組換えタンパク質を産生する。免疫系が改変された特別なトランスジェニック動物は完全なヒト抗体を作製するために特に有用である。
【0063】
本明細書において、抗体融合タンパク質とは、特異性が同じ又は異なる二以上の同じ又は異なる天然抗体、単鎖抗体若しくは抗体フラグメントのセグメントが連結されている、組換え生産された抗原結合分子である。融合タンパク質の原子価は、この融合タンパク質が抗原又はエピトープに対して有している結合アーム又は結合部位の総数を示し、すなわち、一価、二価、三価又は多価などである。抗体融合タンパク質が多価であるということは、抗原に対する結合において複数の相互作用を利用できることを意味し、従って、抗原に結合する結合力が高まる。特異性は、抗体融合タンパク質がいくつの抗原又はエピトープに結合できるかを示し、すなわち、一重特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性などである。これらの定義により、例えばIgGのような天然の抗体は、結合腕を二本持つために二価であるといえるが、この抗体は一つのエピトープに結合するために一重特異性である。一重特異性、多価融合タンパク質は、エピトープに対して一を超える結合部位を有するが、同じ抗原上の同じ又は異なるエピトープとしか結合せず、例えばダイアボディーは同じ抗原と反応性のある二つの結合部位を有する。融合タンパク質、異なる抗体成分の多価若しくは多重特異性の組み合わせ、又は同じ抗体成分の複数のコピーを含んでもよい。この融合タンパク質はさらに治療薬を含んでもよい。このような融合タンパク質に好適な治療薬の例としては、免疫調節剤(「抗体−免疫調節剤融合タンパク質」)及び毒素(「抗体−毒素融合タンパク質」)が挙げられる。好ましい一つの毒素としては、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)であり、好ましくは組換えRNアーゼである。
【0064】
多重特異性抗体(multispecific antibody)は、同時に少なくとも二つの異なる構造の標的、例えば二つの異なる抗原、同じ抗原上の二つの異なるエピトープ、又はハプテン及び/又は抗原、若しくはエピトープに結合できる抗体である。一つの特異性は、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞及び肥満細胞抗原又はエピトープに対するものであろう。もう一つの特異性は、B細胞上のCD20、CD19、CD21、CD23、CD46、CD80、HLA−DR、CD74、MUC1及びCD22のような、同じ細胞種上の異なる抗原に対するものであり得る。多重特異性、多価抗体は一を超える結合部位を有する構築体であり、その結合部位は異なる特異性を有する。例えばダイアボディーでは、一つの結合部位は一つの抗原と反応し、もう一方は他の抗原と反応する。
【0065】
二重特異性抗体(bispecific antibody)は、同時に二つの異なる構造の標的に結合できる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)及び二重特異性抗体フラグメント(bsFab)は、例えば、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞及び肥満細胞抗原又はエピトープに特異的に結合する少なくとも一つのアーム、及び治療薬又は診断/検出薬を担持するターゲッティング可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他のアームを有する。分子工学技術を用いて種々の二重特異性融合タンパク質を作製できる。一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は一価であり、例えば一つの抗原に対する一つの結合部位を有するscFvと第二の抗原に対する単一結合部位を有するFabフラグメントからなる。もう一つの形態においては、この二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば一つの抗原に対する一つの結合部位を有するIgG及び第二の抗原に対する二つの結合部位を有する二つのscFvからなる。
【0066】
ヒト化及びヒトPAM4抗体の調製
特定の抗原に対するモノクローナル抗体は当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、Kohler and Milstein, Nature 256:495(1975)、及びColigan et al.(eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, VOL. 1, pages 2.5. 1−2.6.7(John Wiley & Sons 1991)[以下「Coligan」]を参照。要するに、PAM4 MAbは、マウスにPAM4抗原を含む組成物を注射し、血清サンプルを採取して抗体産生の存在を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を採取し、そのBリンパ球と骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマを作製し、そのハイブリドーマをクローニングし、PAM4抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、PAM4抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、PAM4抗体をハイブリドーマ培養物から単離することにより得ることができる。本発明のPAM4抗体はPAM4抗原、すなわち、MUC1のアミノ末端とリピートドメインの開始部の間に位置するドメインと結合する。本発明のPAM4抗体は膵臓癌細胞と優先的に結合する。
【0067】
免疫原に対する最初の抗体惹起の後に、その抗体の配列を決定し、次いで組換え技術により作製することができる。マウス抗体及び抗体フラグメントのヒト化は当業者に周知である。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重及び軽可変鎖由来のマウス相補性決定領域をヒト可変ドメインに移し、次いでフレームワーク領域中のヒト残基をマウスの対応物で置換することにより作製する。ヒト化モノクローナル抗体由来の抗体成分を使用することによってマウス定常領域の免疫原性に伴う潜在的な問題が防げる。
【0068】
本発明の完全ヒト抗体、すなわち、ヒトPAM4はトランスジェニック非ヒト動物から得ることができる。例えば、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とするMendez et al., Nature Genetics, 15: 146−156 (1997); 米国特許第5,633,425号参照。例えば、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスから回収することができる。このマウス体液性免疫系は、内在する免疫グロブリン遺伝子を不活化し、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによりヒト化する。ヒト免疫グロブリン遺伝子座は極めて複雑で、多数の離散セグメントを含み、それはヒトゲノムのほぼ0.2%を占める。トランスジェニックマウスが十分な抗体レパートリーを産生できることを保証するには、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子座の大きな部分をマウスゲノムに導入しなければならない。これは、生殖系構造においてヒト重鎖又は軽鎖免疫グロブリン遺伝子座のいずれかを含む酵母人工染色体(YAC)の形成に始まる段階的なプロセスで達成される。それぞれの挿入配列はほぼ1Mbのサイズなので、YAC構築体は免疫グロブリン遺伝子座の重複フラグメントの相同的組換えを必要とする。一つは重鎖遺伝子座、もう一つは軽鎖遺伝子座を含む二つのYACを、YAC含有酵母スフェロプラストとマウス胚幹細胞の融合を通じてマウスに個々に導入する。次いで、胚幹細胞クローンをマウス胚盤胞にマイクロインジェクションする。得られたキメラ雄動物を、生殖細胞系を通じてYACを伝達する能力に関してスクリーニングし、マウス抗体産生を欠損しているマウスと交配させる。一種はヒト重鎖遺伝子座を含み、もう一種はヒト軽鎖遺伝子座を含む二種のトランスジェニック系統を繁殖させ、免疫感作に応答してヒト抗体を産生する後代をつくる。
【0069】
マウス免疫グロブリン可変ドメインのクローニングのための一般的な技術は、例えば、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、刊行物Orlandi et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:3833 (1989)に記載されている。ヒト化MAbを産生する技術は、例えば、Carter et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 89:4285 (1992)、Singer et al., J Immun. 150:2844 (1992)、Mountain et al. Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 10:1 (1992)、及びColigan at pages 10.19.1−10.19.11に記載されており、これらはそれぞれ引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0070】
一般に、PAM4抗体のV(可変軽鎖)及びV(可変重鎖)配列はRT−PCR、5’−RACE及びcDNAライブラリースクリーニングなどの種々の分子クローニング手順によって得ることができる。特に、MAb PAM4のV及びV遺伝子は、ハイブリドーマ細胞からそれぞれRT−PCR及び5’−RACEによりPCR増幅によりクローニングし、それらの配列をDNAシーケンシングにより決定した。それらの忠実性を確認するため、クローニングしたV及びV遺伝子を、引用することにより本明細書の一部とするOrlandi et al., (Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86: 3833 (1989))が記載しているように、細胞培養にてAbとして発現させることができる。このV遺伝子配列に基づき、次にヒト化PAM4抗体を、引用することにより本明細書の一部とするLeung et al. (Mol. Immunol., 32:1413 (1995))が記載しているように設計及び構築することができる。cDNAは一般的な分子クローニング技術(Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd Ed (1989))により、マウス又はヒト化PAM4抗体を産生する、いずれの公知のハイブリドーマ系統又はトランスフェクション細胞系統から調製してもよい。実施例7はhPAM4 MAbに対して用いたヒト化方法を記載している。
【0071】
抗体は一般に細胞培養培地から次のようにして単離することができる。トランスフェクトーマ培養物を血清フリー培地に適用する。ヒト化抗体の生産のためには、HSFMを用い細胞を回転瓶中500mlの培養物として細胞を増殖させる。培養物を遠心分子し、上清を0.2μメンブランで濾過する。濾過した培地をAタンパク質カラム(1×3cm)に流速1ml/分で通す。次にこの樹脂を約10倍カラム量のPBSで洗浄し、10mMEDTAを含有する0.1Mグリシンバッファー(pH3.5)を用いて、Aタンパク質結合抗体をカラムから溶出させる。1.0ml画分を、10μlの3M Tris(pH8.6)の入った試験管に回収し、280/260nmの吸光度からタンパク質濃度を求める。ピーク画分をプールし、PBSの対して透析し、例えばCentricon 30(Amicon, Beverly, MA)を用いて抗体を濃縮する。抗体濃度は上記のようにELISAにより測定し、その濃度をPBSを用いて約1mg/mlに調整する。保存のためにはサンプルにアジ化ナトリウム0.01%(w/v)を加えると便宜である。
【0072】
PAM4抗体の調製に用いるプライマーのヌクレオチド配列は下記実施例7に述べられている。ある好ましい態様では、ヒト化PAM4抗体又は抗体フラグメントはマウスPAM4 MAbの相補性決定領域(CDR)、及びヒト抗体の軽鎖及び重鎖可変領域とヒト抗体の軽鎖及び重鎖定常領域のフレームワーク(FR)領域を含んでなり、ここでヒト化PAM4の軽鎖可変領域のCDRは、アミノ酸配列SASSSVSSSYLYを含んでなるCDR1;アミノ酸配列STSNLASを含んでなるCDR2;及びアミノ酸配列HQWNRYPYTを含んでなるCDR3を含んでなり;かつ、ヒト化PAM4 MAbの重鎖可変領域のCDRはアミノ酸配列SYVLHを含んでなるCDR1;アミノ酸配列YINPYNDGTQYNEKFKGを含んでなるCDR2;及びアミノ酸配列GFGGSYGFAYを含んでなるCDR3を含んでなる。また、好ましくは、ヒト化抗体の軽鎖及び重鎖可変領域のFRは、マウスPAM4 MAbの対応するFRから置換された少なくとも一つのアミノ酸を含んでなる。
【0073】
PAM4 MAbは十分確立されている種々の技術によりハイブリドーマ培養物から単離及び精製することができる。このような単離技術としては、タンパク質Aセファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan at pages 2.7.1−2.7.12及びpages 2.9.1−2.9.3を参照。また、Baines et al., “Purification of Immunoglobulin G (IgG),” in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 79−104 (The Humana Press, Inc. 1992)も参照。
【0074】
PAM4 MAbは当業者に周知の種々の技術によって同定することができる。例えば、PAM4 MAbのPAM4抗原に対する結合能力は、間接的免疫蛍光アッセイ、フローサイトメトリー分析、又はウエスタン分析を用いて確認することができる。
【0075】
PAM4抗体フラグメントの生産
本発明はPAM4抗体フラグメントの使用を意図する。特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術により作製し得る。抗体フラグメントは、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、sFvなどの抗体の抗原結合部分である。例えば、F(ab)’フラグメントは、抗体分子のペプシン消化により作製でき、Fab’フラグメントは、F(ab’)フラグメントのジスルフィド結合を還元することにより作製できる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号及び同第4,331,647号、並びにそこに含まれている参照文献により記載されており、これらの特許はその全開示内容を引用することにより本発明の一部とされる。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89: 230 (1960); Porter, Biochem. J. 73: 119 (1959), Edelman et al., in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL. 1, page 422 (Academic Press 1967)、及びColigan at pages 2.8.1−2.8.10及び2.10.−2.10.4も参照。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab’フラグメントの迅速で容易な同定を可能にするには、Fab’発現ライブラリーを構築することができる(Huse et al., 1989, Science, 246:1274−1281)。本発明は抗体及び抗体フラグメントを包含する。
【0076】
単鎖Fv分子(scFv)は、Vドメイン及びVドメインを含んでなる。このV及びVドメインは組み合わさって標的結合部位を形成している。これらの二つのドメインはペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合されている。scFv分子は、VドメインがscFv分子のN末端部である場合、V−L−V、又はVドメインがscFv分子のN末端部である場合、V−L−Vと表される。scFv分子の作製方法、及び好適なペプチドリンカーの設計方法は、米国特許第4,704,692号、同第4,946,778号、R. Raag and M. Whitlow,“Single Chain Fvs.”FASEB Vol 9:73−80(1995)及びR. E. Bird and B. W. Walker,“Single Chain Antibody Variable Regions,”TIBTECH, Vol 9:132−137(1991)に記載されている。これらの参照文献は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0077】
抗体フラグメントは、全長抗体のタンパク質加水分解、又はフラグメントをコードするDNAの、大腸菌(E.coli)若しくは他の宿主中での発現により調製することができる。抗体フラグメントは、常法により全長抗体のペプシン又はパパイン消化により得られる。例えば、抗体フラグメントは抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab’)で示される約100Kdのフラグメントを得ることにより作製することができる。このフラグメントはチオール還元剤、及び所望によりジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の遮断基を用いてさらに切断することができ、約50Kd Fab’一価フラグメントが得られる。あるいは、パパインを用いる酵素的切断により二つの一価Fabフラグメントと一つのFcフラグメントが直接的に生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号及び同第4,331,647号、並びにそこに含まれる参照文献に記載されており、これらの特許は引用することによりその全開示内が本明細書の一部とされる。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89:230(1960); Porter, Biochem. J 73:119(1959)、Edelman et al., in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL. 1, page 422(Academic Press 1967)、及び Coligan at pages 2.8. 1−2.8.10及び2.10.−2. 10.4.も参照。
【0078】
抗体フラグメントのもう一つの形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRは抗体の可変領域のセグメントであり、抗体が結合するエピトープに対し相補的な構造であり、残りの可変領域よりもさらに変化に富んでいる。従って、CDRはしばしば超過変領域と呼ばれる。可変領域は三つのCDRを含んでなる。CDRペプチドは、対象となる抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得られる。このような遺伝子は、例えば抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて調製される。例えば、Larrick et al., Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991); Courtenay−Luck,“Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies, ”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 166−179 (Cambridge University Press 1995);及びWard et al.,“Genetic Manipulation and Expression of Antibodies, ”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al., (eds.), pages 137−185(Wiley−Liss, Inc. 1995)参照。
【0079】
重鎖を分離して一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成し、さらにフラグメントを切断するような抗体を切断する他の方法、又は他の酵素学的、化学的又は遺伝学的技術も、それらのフラグメントが無傷の抗体により認識される抗原に結合する限り用いてよい。
【0080】
ヒト化及びヒトPAM4抗体融合タンパク質の生産
本発明の抗体融合タンパク質は、官能基間のグルタルアルデヒド結合からより特異的な結合まで、種々の常法により調製することができる。本明細書に記載の融合タンパク質を含んでなる抗体及び/又は抗体フラグメントは好ましくは、別のものに直接共有結合させるか、リンカー部分を介して、又は例えばアミン、カルボキシル、フェニル、チオール若しくはヒドロキシル基など、抗体又はフラグメント上の一以上の官能基を介して共有結合させる。グルタルアルデヒドの他、例えばジイソシアネート、ジイソチオシアネート、ビス(ヒドロキシスクシンイミド)エステル、カルボジイミド、マレイミドヒドロキシスクシンイミドエステルなどの種々の通常のリンカーを使用できる。
【0081】
ヒト化及びヒトPAM4融合タンパク質を生産する簡単な方法としては、グルタルアルデヒドの存在下で抗体又はフラグメントを混合するものがある。最初のシッフの塩基結合は例えば第二級アミンへのホウ化水素還元により安定化させることができる。非位置特異的リンカーとしてグルタルアルデヒドの代わりにジイソチオシアネート又はカルボジイミドを使用することもできる。本発明の一つの態様では、抗体融合タンパク質は、一つのヒト化又はヒトPAM4 MAb又はそのフラグメント含んでなり、このMAbはMUC1抗原のアミノ末端とリピートドメインの開始部の間に位置するドメインと結合する。この融合タンパク質及びそのフラグメントは膵臓癌細胞と優先的に結合する。この一価単一特異性MAbは抗原のダイレクト・ターゲッティングに有用であり、ここではMAbが治療薬、診断/検出薬、又はそれらの組み合わせに結合され、そのタンパク質がそれを必要とする患者に直接投与される。
【0082】
本発明のPAM4抗体融合タンパク質及びそのフラグメントは、代わりに、少なくとも二種のヒト化又はヒトPAM4 MAb又はそのフラグメントを含んでもよく、ここで、この少なくとも二種のMAb又はそのフラグメントはPAM4抗原の異なるエピトープと結合する。例えば、これらのMAbは抗原特異的ダイアボディー、トリアボディー及びテトラボディーを作出することができ、これらは多価であるが、PAM4抗原に対して単一特異的である。二以上のscFv分子の非共有結合的結合が機能的なダイアボディー、トリアボディー及びテトラボディーを形成することができる。単一特異性ダイアボディーは同種のscFvのホモ二量体であり、各scFvは、選択された抗体に由来する、短いリンカーによって同じ抗体のVドメインに連結されたVドメインを含んでなる。ダイアボディーは二つのscFvの非共有結合的結合によって形成された二価の二量体であり、二つのFv結合部位が生じる。トリアボディーは三つのscFvからなる三価の三量体の形成によるもので、三つの結合部位が生じ、また、テトラボディーは四つのscFvからなる四価の四量体であり、四つの結合部位が生じている。数種の単一特異性ダイアボディーが、VH1−リンカー−VL1を含んでなる組換え遺伝子構築物を含む発現ベクターを用いて作製されている。Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444−6448 (1993); Atwell et al., Molecular Immunology 33: 1301−1302 (1996); Holliger et al., Nature Biotechnology 15: 632−631(1997); Helfrich et al., Int. J. Cancer 76: 232−239 (1998); Kipriyanov et al., Int. J. Cancer 77: 763−772 (1998); Holiger et al., Cancer Research 59: 2909−2916(1999)参照。scFvの構築方法は米国特許第4,946,778号(1990)及び同第5,132,405号(1992)で開示されている。scFvに基づく多価多重特異性結合タンパク質の作製方法は、米国特許第5,837,242号(1998)、同第5,844,094号(1998)及びWO98/44001(1998)で開示されている。多価単一特異性抗体融合タンパク質は、同じ抗原上又は別の抗原上に存在し得る二以上の同種のエピトープと結合する。価数の増加にはさらなる相互作用、親和性の増強、及び滞留時間の延長が見込まれる。これらの抗体融合タンパク質はダイレクト・ターゲッティング系で使用することができ、ここでは抗体融合タンパク質が治療薬、診断/検出薬、又はそれらの組み合わせに結合され、それを必要とする患者に直接投与される。
【0083】
本発明の好ましい態様は、PAM4標的エピトープ、及び膵臓癌抗原に関連する一以上のさらなるエピトープに対して親和性を有する一を超える抗原結合部位を含んでなる多価多重特異性抗体又はそのフラグメントである。この融合タンパク質は、同じ又は異なる抗原上に存在し得る少なくとも二つの異なるエピトープと結合するので、多重特異性である。例えば、この融合タンパク質は一を超える抗原結合部位を含んでよく、第一のものは一つのPAM4抗原エピトープに対して親和性を有し、第二のものはTAG−72又はCEAなどの別の標的抗原に対して親和性を有する。別の例として、CA19.9 MAb(又はそのフラグメント)及びPAM4 MAb(又はそのフラグメント)を含んでもよい、二重特異性PAM4抗体融合タンパク質がある。このような融合タンパク質はCA19.9、並びにMUC1のアミノ末端とリピートドメインの開始部の間に位置するドメインに対して親和性を有する。本発明ではまた、少なくとも二つの異なるPAM4抗原エピトープに対して親和性を有する一を超える抗原結合部位を含んでなる融合タンパク質も意図される。
【0084】
本発明の抗体融合タンパク質及びそのフラグメントはダイレクト・ターゲッティング系で使用することができ、ここでは抗体融合タンパク質が治療薬、診断/検出薬、又はそれらの組み合わせに結合され、それを必要とする患者に直接投与される。
【0085】
本発明のもう一つの好ましい態様は、PAM4標的エピトープに対して親和性を有する一を超える抗原結合部位と、ハプテン分子に対して親和性を有する少なくとも一つのハプテン結合部位を含んでなる多価多重特異性抗体及びそのフラグメントである。例えば、二重特異性PAM4抗体融合タンパク質は679MAb(又はそのフラグメント)及びPAM4 MAb(又はそのフラグメント)を含んでもよい。モノクローナル抗体679はトリペプチド部分ヒスタミンスクシニルグリシル(HSG)を含む分子に、高い親和性で結合する。このような二重特異性PAM4抗体融合タンパク質は、例えば、上記のように679からF(ab’)フラグメントを得ることにより調製することができる。679F(ab’)フラグメントの鎖内ジスルフィド結合は、軽鎖−重鎖結合が起こらないよう注意しながらシステインで穏やかに還元し、Fab’−SHフラグメントを形成させる。このSH基をビス−マレイミドリンカー(1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビス−マレイミド)で活性化させる。PAM4 MAbをFab’−SHに変換した後、活性化させたMR23 Fab’−SHフラグメントと反応させて二重特異性PAM4抗体融合タンパク質を得る。このようなものなどの二重特異性抗体融合タンパク質はアフィニティー増強系で用いることができ、ここでは標的抗原が融合タンパク質でプレターゲッティングされ、次に、プレターゲッティングにより形成された抗体−抗体複合体と結合する診断薬又は治療薬でターゲッティングされる。
【0086】
二重特異性抗体は、例えばジスルフィド結合を切断し、全IgG又は好ましくはF(ab’)フラグメントの混合物を再形成し、一を超えるハイブリドーマを融合して一を超える特異性を有する抗体を生産するなどの種々の従来法、また、遺伝子操作により作製することができる。二重特異性抗体融合タンパク質は異なる抗体の還元的切断によって生じるFab’フラグメントの酸化的切断によって作製されてきた。これは二つの異なる抗体のペプシン消化によって生じた二つの異なるF(ab’)フラグメントを混合し、還元的切断によりFab’フラグメントの混合物を形成し、次いで、酸化的にジスルフィド結合を再形成して、元のエピトープの各々に特異的なFab’部分を含む二重特異性抗体融合タンパク質を含むF(ab’)フラグメントの混合物を作製することにより行うのが有利である。抗体融合タンパク質の調製のための一般的技術は、例えばNisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 93: 470 (1961)、Hammerling et al., J. Exp. Med. 128: 1461 (1968)、及び米国特許第4,331,647号に見出せる。本発明では、少なくとも一つの第一のPAM4 MAb又はそのフラグメントと、本発明のPAM4 MAb又はそのフラグメント以外の少なくとも一つの第二のMAb又はそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質又はそのフラグメントが意図される。
【0087】
より選択性の高い結合は、マレイミドヒドロキシスクシンイミドエステルなどのヘテロ二官能性リンカーを用いることで達成することができる。このエステルと抗体又はフラグメントとの反応により抗体又はフラグメント上のアミン基が誘導体化され、次にこの誘導体は例えば遊離スルヒドリル基を有する抗体Fabフラグメント(あるいは、例えばトラウトの試薬によりスルヒドリル基が付加されたより大きなフラグメント又は完全抗体)と反応させることができる。このようなリンカーは同じ抗体の基を架橋しているとは考えにくく、結合の選択性は向上する。
【0088】
抗原結合部位から離れた部位で抗体又はフラグメントを連結するのが有利である。これは、例えば上記のように切断された鎖内スルヒドリル基に連結することで達成することができる。別法としては、酸化された炭化水素部分を有する抗体を、少なくとも一つの遊離アミン官能基を有する別の抗体と反応させることを含む。これにより最初のシッフ塩基(mime)結合が生じ、これは好ましくは、例えばホウ化水素還元により第二級アミンへ還元することにより安定化され、最終複合体が形成される。このような部位特異的結合が、小分子に関しては米国特許第4,671,958号に、大きな付加物に関しては米国特許第4,699,784号に開示されており、これらは引用することにより本明細書の一部とされる。
【0089】
多重特異性PAM4抗体融合タンパク質は、二重特異性ヒト化又はヒトPAM4抗体融合タンパク質にPAM4抗原結合部分を付加することにより得ることができる。例えば、二重特異性抗体融合タンパク質は、上記のビス−マレイミド活性化手順を用いて、二重特異性融合タンパク質を第三のPAM4 MAb又はフラグメントと結合させる際に用いられる一以上のスルヒドリル基を導入するために2−イミノチオランと反応させることができる。これらの抗体融合タンパク質生産技術は当業者に周知である。例えば、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする米国特許第4,925,648号参照。
【0090】
12アミノ酸残基長よりも長いリンカー(例えば15又は18残基のリンカー)を有するScFvでは、同じ鎖上のVとVドメイン間の相互作用が可能であり、一般に単量体、二量体(ダイアボディーと呼ばれる)、及び少量のより高次の多量体の混合物が生じる(Kortt et al., Eur. J. Biochem. (1994) 221: 151−157)。しかし、5以下のアミノ酸残基のリンカーを有するScFvでは、同じ鎖上のVとVドメインの分子内対合は妨げられ、異なる鎖上のVとVドメインの対合が促される。3〜12残基の間のリンカーでは主として二量体が形成される(Atwell et al., Protein Engineering (1999) 12: 597−604)。0〜2残基の間のリンカーでは、scFvの三量体(トリアボディーと呼ばれる)、四量体(テトラボディーと呼ばれる)、又はより高次のオリゴマー構造が形成されるが、オリゴマー化の厳密なパターンはリンカーの長さの他、Vドメインの組成並びに方向に依存するようである。例えば、抗ノイラミニダーゼ抗体NC10のscFvでは、0残基のリンカーと用いた場合、主として三量体(VからV方向)又は四量体(VからV方向)が生じた(Dolezal et al., Protein Engineering (2000) 13: 565−574)。1及び2酸基のリンカーを用いてNC10から構築されたscFvでは、VからV方向で、主としてダイアボディーが形成されたが(Atwell et al., Protein Engineering (1999) 12: 597−604)、これに対して、VからV方向では四量体、三量体、二量体及びより高次の多量体が形成された(Dolezal et al., Protein Engineering (2000) 13: 565−574)。抗CD19抗体HD37から、VからV方向で、構築されたscFvについては、0残基リンカーではもっぱら三量体が形成され、1残基リンカーではもっぱら四量体が形成された(Le Gall et al., FEBS Letters (1999) 453: 164−168)。
【0091】
発現ベクター及び宿主細胞
発現ベクターは、宿主細胞中で発現される遺伝子を含んでなるDNA分子である。通常、遺伝子発現は構成又は誘導プロモーター、組織特異的調節エレメント及びエンハンサーをはじめとする特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子は調節エレメントに「作動可能なように連結されている」といわれる。プロモーターは構造遺伝子の転写を指令するDNA配列である。構造遺伝子はメッセンジャーRNA(mRNA)へと転写されるDNA配列であり、これは次に特定のポリペプチドに特徴的なアミノ酸配列へと翻訳される。典型的には、プロモーターは構造遺伝子の転写開始部位に隣接して遺伝子の5’領域に置かれる。プロモーターが誘導プロモーターであれば、誘導因子に応答して転写速度が高まる。これに対し、プロモーターが構成プロモーターであれば、転写速度は誘導因子によって調節を受けない。エンハンサーは転写の開始部位に対してエンハンサーの距離又は方向に関係なく、転写効率を高め得るDNA調節エレメントである。
【0092】
単離されたDNA分子とは、生物のゲノムDNAに組み込まれていないDNAの断片である。例えば、クローニングされたPAM4抗原遺伝子は、哺乳類細胞のゲノムDNAから分離されているDNA断片である。単離されたDNA分子の別の例としては、生物のゲノムDNAに組み込まれていない化学合成されたDNA分子がある。相補的DNA(cDNA)は、逆転写酵素によってmRNA鋳型から形成された一本鎖DNA分子である。逆転写の開始には、典型的にはmRNAの一部に相補的な短い合成オリゴヌクレオチドがプライマーとして用いられ、第一鎖DNAが生成する。当業者はまた、このような一本鎖DNA分子及びその相補的DNA鎖からなる二本鎖DNA分子に対しても「cDNA」を用いる。
【0093】
クローニングベクターは、プラスミド、コスミド又はバクテリオファージなど、宿主細胞で自律的に複製する能力を有するDNA分子である。クローニングベクターは典型的には一又は少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含み、この部位に、ベクターの必須の生物学的機能を失わずに定量可能な様式で外来DNA配列、並びにクローニングベクターで形質転換された細胞の同定及び選択に用いるのに好適なマーカー遺伝子を挿入することができる。マーカー遺伝子は典型的にはテトラサイクリン耐性又はアンピシリン耐性を与える遺伝子を含む。組換え宿主としては、クローニングベクターか発現ベクターのいずれかを含むいずれの原核又は真核細胞であってもよい。この用語はまた、宿主細胞の染色体又はゲノム中にクローニングされた遺伝子を含むよう遺伝子操作された原核又は真核細胞も含まれる。発現とは、遺伝子産物の生合成をさす。例えば、構造遺伝子の場合、発現とは、その構造遺伝子のmRNAへの転写及びmRNAの一以上のポリペプチドへの翻訳を含む。
【0094】
好適な宿主細胞としては微生物又は哺乳類宿主細胞が挙げられる。好ましい宿主としては、MAb及びその他の融合タンパク質の生産のために開発されたヒト細胞系統PER.C6がある。よって、本発明の一つの好ましい態様は、PAM4 MAb、複合体、融合タンパク質又はそのフラグメントをコードするDNA配列を含む宿主細胞である。PER.C6細胞(WO97/00326)は、ヒトホスホグリセンリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターの制御下にAd血清型5(Ad5)E1A−及びE1B−コード配列(Ad5ヌクレオチド459−3510)を含むプラスミドを用いた、ヒト胎児網膜一次細胞のトランスフェクションにより作製されたものである。E1A及びE1Bはそれぞれアデノウイルス初期遺伝子活性化タンパク質1A及び1Bである。これらの方法及び組成物は、例えばグリコシル化により翻訳後修飾されている、目的のヒト組換えタンパク質の安定発現を作り出すのに特に有用である。PER.C6は完全に同定されたヒト細胞系統であり、また、実験室での実践に応じて開発されたものであるなど、いくつかの特徴によりPER.C6は組換えタンパク質の生産のための宿主として特に有用なものとなる。さらに、PER.C6はいずれのヒト由来又は動物由来タンパク質も含まない規定の血清フリー培地中の懸濁培養物として増殖させることができ、その増殖は倍加時間約35時間の、回転瓶、シェーカーフラスコ、スピンフラスコ及びバイオリアクターに適合している。最後に、E1Aが存在すると、CMVエンハンサー/プロモーターの制御下にある遺伝子の発現がアップレギュレートされ、E13が存在すると、おそらくは組換えトランスジーンの過剰発現によって増強されたp53依存性のアポトーシスが妨げられる。ある態様では、この細胞は従来の哺乳類細胞系統よりも200倍高い組換えタンパク質及び/又はタンパク質性物質を産生することができる。
【0095】
治療及び診断に用いるヒト化及びヒトPAM4抗体
本発明では、被験体の悪性腫瘍を診断又は治療する方法であって、該被験体に、PAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントを含んでなる、治療上有効量の治療用複合体を投与することを含んでなる方法が意図され、ここでは、PAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントは少なくとも一種の診断薬及び/又は治療薬と結合され、医薬上好適な賦形剤中に調剤されている。また、癌を診断又は治療する方法であって、PAM4抗原に対する一以上の抗原結合部位及び一以上のハプテン結合部位を含んでなる多価多重特異性抗体又はそのフラグメントを、それを必要とする被験体に投与すること、一定量の非抗体が被験体の血流からクリアリングされるに十分な時間待つこと、及び該被験体に、その多価多重特異性抗体又はそのフラグメントの結合部位と結合する診断/検出薬、治療薬又はそれらの組み合わせを含んでなる担体分子を投与することを含んでなる方法が好ましい。ある好ましい態様では、癌は膵臓癌である。もう一つの態様では、抗体は多価多重特異性抗体又はそのフラグメントである。
【0096】
in vitro診断のためのMAbの使用は周知である。例えば、Carlsson et al., Bio/Technology 7 (6): 567 (1989)参照。例えば、MAbは生検サンプル由来の組織における腫瘍関連抗原の存在を検出するのに用いることができる。MAbはまた、ラジオイムノアッセイ、固相酵素免疫検定法、及び蛍光免疫アッセイなどの技術を用い、臨床液体サンプル中の腫瘍関連抗原の量を測定するためにも使用できる。
【0097】
腫瘍標的化MAbと毒素との複合体はin vivoにおいて癌細胞を選択的に死滅させるために使用できる(Spalding, Bio/Technology 9(8): 701 (1991); Goldenberg, Scientific American Science & Medicine 1(1): 64 (1994))。例えば、試験動物モデルにおける治療研究では、細胞傷害性放射性核種を有する抗体の抗腫瘍活性が証明されている。動物モデル及び治療研究の考察については実施例3及び5を参照。(Goldenberg et al., Cancer Res. 41: 4354 (1981), Cheung et al., J. Nat’l Cancer Inst. 77: 739 (1986)、及びSenekowitsch et al., J. Nucl. Med. 30: 531 (1989))。
【0098】
ヒト化及び完全ヒト抗体並びにそのフラグメントは治療法及び診断法に用いるのに好適である。従って、本発明では、診断薬若しくは治療薬又はそれらの組み合わせを標的に送達する方法であって、(i)少なくとも一種の診断薬及び/又は治療薬に結合されたPAM4抗体又はそのフラグメントを含んでなる組成物を準備すること、及び(ii)その診断又は治療用抗体複合体をそれを必要とする被験体に投与することを含んでなる方法が意図される。ある好ましい態様では、PAM4抗体及びそのフラグメントはヒト化されているか、完全ヒト型である。もう一つの態様では、本発明のヒト化及び完全ヒトPAM4抗体並びにそのフラグメントは悪性腫瘍を治療する方法で用いられる。
【0099】
また、本明細書では、本発明の抗体のいずれかのPAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントを含んでなる抗体成分を含んでなる、癌細胞を標的とする診断又は治療複合体も記載され、ここではこの抗体成分は少なくとも一種の診断薬又は少なくとも一種の治療薬に結合されている。好ましくは、診断複合体は光活性診断/検出薬、超音波検出剤、又はMRI造影剤である。さらに好ましくは、診断/検出薬は20〜4,000keVの間のエネルギーを有する放射性核種である。
【0100】
本発明のもう一つの態様は、悪性腫瘍を診断又は治療する方法であって、治療上又は診断上有効量の、少なくとも一種の裸のPAM4抗体若しくはそのフラグメント、及び/又はPAM4融合タンパク質若しくはそのフラグメントを投与すること、及び所望によりPAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントを医薬賦形剤中に調剤することを含んでなる方法である。
【0101】
治療用組成物は少なくとも一種のヒト化又は完全ヒトPAM4抗体又はそのフラグメントを単独かつ非結合型で、他のヒト化又はキメラ抗体、ヒト抗体、治療薬又は免疫調節剤など、他の抗体又はそのフラグメントと結合して、あるいは結合させずに組み合わせて含有する。同じ又は異なるエピトープ又は抗原に対する裸の又は結合型の抗体を本発明の一以上のPAM4抗体又はそのフラグメントと組み合わせてもよい。
【0102】
よって、本発明は、PAM4融合タンパク質及びそのフラグメントを含むPAM4抗体及びそのフラグメントの、裸の抗体又はフラグメントとして単独での投与、あるいは多モード療法としての投与を意図する。好ましくは、この抗体はヒト化又は完全ヒトPAM4抗体又はそのフラグメントである。本発明の多モード療法はさらに、裸の抗体、融合タンパク質の形での、又は免疫複合体としての他の抗体の投与を伴う、裸の抗PAM4抗体による免疫療法を含む。例えば、ヒト化又は完全ヒトPAM4抗体は別の裸のヒト化PAM4若しくはその他の抗体、あるいは同位元素、一以上の化学療法剤、サイトカイン、毒素又はそれらの組み合わせと結合されたヒト化PAM4若しくはその他の抗体と組み合わせてもよい。例えば、本発明は、CA19.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、B72.3、CC49、la3、aLe抗体、他のLewis抗原(例えば、Le(y))、並びに癌胎児性抗原(CEA)、結腸特異的抗原−p(CSAp)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、HER2/neu、EGFR、脈管形成因子(例えば、VEGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、テネイシン、血小板由来増殖因子、及びIL−6に対する抗体、並びに癌遺伝子の産物及び腫瘍壊死物質に対する抗体などの他の膵臓腫瘍関連抗体の前に、又は組み合わせて、又はその後に、裸の又は結合型のPAM4抗体又はそのフラグメントを処置することを意図する。これらの固形腫瘍抗体は裸であってもよいし、あるいはとりわけ薬物、毒素、同位元素、内部照射又は免疫調節剤と組み合わせてもよい。また、本発明では、ヒト化又は完全ヒトPAM4抗体と毒素の融合タンパク質を用いてもよい。裸の抗体として、又は部分的に裸で、部分的に治療薬又は免疫調節剤と結合したものとして多くの異なる組み合わせを構築してもよい。あるいは、細胞傷害剤などの他の治療薬又は放射線と組み合わせて投与する(連続的、同時又は逐次に施与する)ために、種々の裸の抗体の組み合わせを用いてもよい。
【0103】
診断薬又は治療薬に結合された本明細書に記載の単一特異性結合タンパク質はPAM4陽性腫瘍を直接ターゲッティングする。これらの単一特異性分子は標的抗原と選択的に結合し、分子上の結合部位の数が増すにつれ、標的細胞に対する親和性が増し、所望の場所に見られる滞留時間が長くなる。さらに、非抗原結合分子は身体から速やかにクリアリングされ、正常組織の暴露が最小となる。多重特異性抗体の使用はAES系におけるものであり、ここで、PAM4はその後の診断薬又は治療薬の特異的送達のために陽性腫瘍をプレターゲッティングする。これらの薬剤はヒスタミンスクシニルグリシル(HSG)含有ペプチドによって運ばれる。679と呼ばれるマウスモノクローナル抗体(IgG1,K)は高い親和性でトリペプチド部分HSGを含む分子と結合する(Morel et al, Molecular immunology, 27, 995−1000, 1990)。679 MAbはhPAM4とともに、HSGと標的抗原に結合する二重特異性抗体を形成することができる。また、この代わりにハプテンを用いてもよい。これらの抗体は標的抗原に選択的に結合し、親和性の増強及び所望の場所での滞留時間の延長を可能とする。さらに、非抗原結合ダイアボディーは身体から速やかにクリアリングされ、正常組織の暴露が最小となる。PAM4抗体及びそのフラグメント並びに複合体は、癌などの哺乳類の疾患の診断及び治療に使用することができる。
【0104】
本発明に従う診断又は治療を目的とした診断薬又は治療薬の標的への送達は、PAM4抗体又はそのフラグメントを診断薬又は治療薬とともに準備すること、及びその抗体をそれを必要とする被験体に投与することを含む。さらに診断では、既知の技術を用いて結合したタンパク質を検出する工程が必要である。
【0105】
この適用に関して、「診断」又は「治療」の用語は互換的に使用できる。診断は通常、組織の特定の組織学的状態を判定することをさし、検出は特定の抗原を含む組織、病変部又は生物を認識及び限局化する。
【0106】
本発明の抗体及びそれらのフラグメントの、診断薬又は治療薬を伴う投与は、哺乳類では静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜腔内、髄腔内、局所的カテーテルを通じた潅流、又は直接病巣注射により行うことができる。抗体を注射により投与する場合には、投与は点滴、又は単回若しくは複数回のボーラス注射によればよい。
【0107】
診断薬又は治療薬を伴う抗体は医薬上許容される注射用ビヒクル、好ましくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、生理的pH及び濃度で、ヒト又は哺乳類の治療及び診断用キットとして提供してもよい。この製剤は、特にヒトでの使用を意図する場合には無菌であることが好ましい。このようなキットの任意の成分としては、安定剤、緩衝剤、標識試薬、放射性同位元素、常磁性化合物、クリアランスを促進するための第二の抗体、及び通常のシリンジ、カラム、バイアルなどが挙げられる。
【0108】
裸の抗体での療法
治療上有効量の裸のヒト化及び完全ヒトPAM4抗体若しくはそれらのフラグメント、又はPAM4融合タンパク質若しくはそのフラグメントは、医薬上許容される賦形剤中に調剤することができる。また、裸のヒト化及び完全ヒトPAM4抗体及びそれらのフラグメントの効力は、これらの裸の抗体を、一以上の他の裸の抗体、あるいは薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、オリゴヌクレオチド、ホルモンアンタゴニスト、酵素、酵素阻害剤、治療用放射性核種、脈管形成阻害剤などをはじめとする一以上の治療薬と結合され、PAM4抗体又はそのフラグメントと同時に、又は逐次に、又は指示された投与計画に従って投与される、ヒト化及び完全ヒトPAM4抗体の一以上の免疫複合体で補うことにより増強することもできる。裸のPAM4抗体及びそのフラグメントを補い得る裸の抗体は同じ腫瘍種に向けられたものでもよいし、あるいは、選択された裸の抗体の抗腫瘍作用を増強すべく補充することができる免疫調節細胞(例えば、CD40細胞)に対して向けられたものでもよい。
【0109】
PAM4免疫複合体
本発明はまた、治療又は診断のため、少なくとも一種の治療薬及び/又は診断/検出薬に結合されたヒト化及びヒトPAM4抗体並びにそのフラグメントの使用を意図する。免疫療法では、その目的は、非標的組織への暴露を最小限にしつつ、細胞傷害量の放射活性、毒素、又は薬物を標的細胞へ送達することである。本発明のPAM4抗体は、膵臓腫瘍の診断及び治療に使用できる。
【0110】
本発明のいずれの抗体、抗体融合タンパク質及びその断片を、一種以上の治療薬又は診断/検出薬と結合させてもよい。一般に、一種の治療薬又は診断/検出薬がそれぞれの抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントに結合されるが、一を超える治療薬及び/又は診断/検出薬を同じ抗体又は抗体フラグメントに結合させることもできる。Fc領域が存在しなければ(例えば免疫複合体の抗体成分としても用いられる抗体が抗体フラグメントである場合)、全長抗体又は抗体フラグメントの軽鎖可変領域へ炭水化物部分を導入することができる。例えば、Leung et al., J. Immunol. 154: 5919 (1995); Hansen et al., 米国特許第5,443,953号(1995), Leung et al., 米国特許第6,254,868号参照(ここで、これらは総て、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)。この操作された炭水化物部分を用いて治療薬又は診断/検出薬を結合させる。
【0111】
抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にペプチドを結合させる方法は当業者に周知である。例えば、Shih et al., Int. J. Cancer 41: 832 (1988); Shih et al., Int. J. Cancer 46: 1101 (1990);及びShih et al., 米国特許第5,057,313号を参照(ここで、これらは総て、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)。一般的な方法としては、炭水化物部分が酸化された抗体成分を、少なくとも一つの遊離アミン基を有し、かつ、複数のペプチドが付加された担体ポリマーと反応させることを含む。この反応により最初のシッフ塩基(イミン)結合が生じ、これは第二級アミンへの還元により安定化され最終の複合体を形成し得る。
【0112】
本発明の抗体融合タンパク質及びそのフラグメントは二種以上の抗体又はそのフラグメントを含んでなり、この融合タンパク質を構成する各々の抗体は少なくとも一種の治療薬及び/又は診断/検出薬を含むことができる。例えば、抗体融合タンパク質は一つの抗体(二つの抗原結合部位)及び抗体フラグメント、二つの抗体フラグメント、又は二つの抗体を含んでよい。次に、この抗体融合タンパク質は少なくとも一種の診断/検出薬及び/又は治療薬と結合させることができる。
【0113】
よって、抗体融合タンパク質の一以上の抗体又はフラグメントは結合した一を超える治療薬及び/又は診断/検出薬を含むことができる。さらに、これらの治療薬は同一である必要はなく、異なる治療薬であってもよく、例えば、薬物及び放射性同位元素を同じ融合タンパク質へ結合させることができる。特に、IgGは131Iで放射性標識し、薬物と結合させることができる。この131IはIgGのチロシンへ導入でき、薬物はIgGリジンのεアミノ基へ結合させることができる。また、治療薬及び診断/検出薬は双方とも還元されたSH基、及び炭水化物側鎖に結合させることもできる。
【0114】
多種多様な診断薬及び治療薬(例えば、薬物、毒素、オリゴヌクレオチド、免疫調節剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、酵素阻害剤、治療用放射性核種、脈管形成阻害剤など)が、本発明の抗体と同時若しくは逐次投与可能であり、又は有利には本発明の抗体と結合させることができる。本明細書に列挙された治療薬は、上記のように裸の抗体とは別に投与しても有用である薬剤である。治療薬としては、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、ゲムシタビン、エピトフィロトキシン、タキサン、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質、SN−38、COX−2阻害剤、抗有糸分裂剤、抗脈管形成剤及びアポトーシス剤、特にドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、カンプトテカン、及びこれら又は他の種類の抗癌剤由来の他のものなどが挙げられる。同時又は逐次投与のため、あるいは免疫複合体及び抗体融合タンパク質の調製のために有用な他の癌化学療法剤としては、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、プラチナ錯体、ホルモンなどが挙げられる。好適な化学療法剤はREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(Mack Publishing Co. 1995及びGOODMAN AND GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, 7th Ed. (MacMillan Publishing Co. 1985)、並びにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。実験薬のような他の好適な化学療法剤も、当業者に公知である。
【0115】
一つの態様では、本発明のヒト化PAM4抗体及びそのフラグメントをベムシタビンに結合させる。もう一つの態様では、本発明の裸の、又は結合型のヒト化PAM4抗体又は抗体フラグメントの前、後又は同時にゲムシタビンを与える。好ましくは、結合型のヒト化PAM4抗体又は抗体フラグメントを放射性核種に結合させる。
【0116】
毒素は動物、植物又は微生物起原のものであり得る。シュードモナス外毒素のような毒素も複合化し得るし、あるいは本発明のPAM4及びhPAM4抗体の免疫複合体の治療薬部分を形成することができる。このような複合体又は他の融合タンパク質の調製に適切に使用される他の毒素としては、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌内毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、及びシュードモナス内毒素が挙げられる。例えば、Pastan et al., Cell 47:641(1986)、及びGoldenberg, CA−A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)参照。本発明で用いるのに好適なさらなる毒素は当業者に公知であり、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする米国特許第6,077,499号に開示されている。
【0117】
サイトカインのような免疫調節剤もまた結合させ得るし、あるいはPAM4及びhPAM4免疫複合体の治療薬部分を形成することができるし、あるいは本発明のヒト化又はヒトPAM4抗体若しくはそのフラグメント、又はPAM4融合タンパク質若しくはそのフラグメントに結合させずに投与することができる。PAM4融合タンパク質又はそのフラグメントは、異なる抗原に結合する一以上の抗体又はそのフラグメントを含んでなり得る。例えば、融合タンパク質はPAM4抗原並びに免疫調節細胞又は因子と結合し得る。あるいは、被験体に、裸のPAM4抗体、融合タンパク質、又はそのフラグメントを与え、サイトカインを個別に投与することができ、このサイトカインは裸のPAM4抗体の投与前、同時又は投与後に投与することができる。本明細書において「免疫調節剤」としては、サイトカイン、幹細胞増殖因子、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、並びにインターロイキン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18及びIL−21)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)及び顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、−β及び−γ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子、エリスロポエチン及びトロンボポエチンなどの造血因子が挙げられる。好適な免疫調節剤部分の例としては、IL−2、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、L−21、インターフェロン−γ、TNF−αなどが挙げられる。
【0118】
あるいは、本発明の抗体及びフラグメントは、抗体を酵素と連結することにより、検出可能なように標識することができる。この抗体−酵素複合体を適当な基質の存在下でインキュベートすると、酵素部分は基質と反応して、例えば分光光度的、蛍光測定的又は視覚的手段により検出することができる化学部分を生じる。抗体を検出可能に標識するために使用できる酵素の例としては、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ−V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0119】
治療薬又は診断/検出薬は、ジスルフィド結合形成を介して還元された抗体成分のヒンジ領域に結合することができる。あるいは、このようなペプチドはN−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体成分に結合させることができる。Yu et al., Int. J. Cancer 56 : 244(1994)。このような結合に関する一般的な技術は当該技術分野で周知である。例えば、Wong, CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS−LINKING (CRC Press 1991); Upeslacis et al.,“Modification of Antibody by Chemical Methods, ”in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al.(eds), pages 187−230(Wiley−Liss, Inc. 1995); Price, “Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies, ”in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 60−84(Cambridge University Press 1995)参照。あるいは、治療薬又は診断/検出薬は抗体のFc領域の炭化水素部分を介して結合させることもできる。この炭化水素基は、チオール基に結合している同じ薬剤の付加量を増大させるためにも使用できるし、あるいはこの炭化水素部分は異なるペプチドに結合するためにも使用できる。
【0120】
本発明の方法では、ターゲッティング可能な構築物は罹患組織を検出するのに有用な一以上の放射性同位元素を含んでもよい。特に有用な診断用放射性核種としては、限定されるものではないが、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、32P、11C、13N、15O、186Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、又はその他のγ、β、若しくは陽電子放射核種が挙げられ、好ましくは20〜4,000keVの範囲、より好ましくは25〜4,000keVの範囲、いっそうより好ましくは25〜1,000keVの範囲、なおより好ましくは70〜700keVの範囲の崩壊エネルギーを有するのが好ましい。有用な陽電子放出放射性核種の総崩壊エネルギーは好ましくは<2,000keV、より好ましくは1,000keV未満、最も好ましくは<700keVである。γ線検出を用いる診断/検出薬として有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、5lCr、57Co、58Co、59Fe、67Cu、67Ga、75Se、97Ru、99mTc、l11In、114mIn、123I、125I、131I、169Yb、197Hg、及び201Tlが挙げられる。有用なガンマ線放出放射性核種の崩壊エネルギーは好ましくは20〜2000keV、より好ましくは60〜600keV、最も好ましくは100〜300keVである。
【0121】
本発明の方法では、ターゲッティング可能な構築物は罹患組織の治療に有用な一種以上の放射性同位元素を含んでよい。特に有用な治療用放射性核種としては、限定されるものではないが、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、64Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、及び2llPbが挙げられる。治療用放射性核種は好ましくは20〜6,000keVの範囲、好ましくはオージェ放射核種に関しては60〜200keVの範囲、β放射核種については100〜2,500keV、及びα放射核種については4,000〜6,000keVの崩壊エネルギーを有する。有用なβ放射核種の最大崩壊エネルギーは好ましくは20〜5,000keV、より好ましくは100〜4,000keV、最も好ましくは500〜2,500keVである。また、オージェ放射粒子を伴って実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、Co−58、Ga−67、Br−80m、Tc−99m、Rh−103m、Pt−109、In−111、Sb−119、I−125、Ho−161、Os−189m及びIr−192がある。有用なβ粒子放射性核種の崩壊エネルギーは好ましくは<1,000keV、より好ましくは<100keV、最も好ましくは<70keVである。また、α粒子の生成を伴って実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。このような放射性核種としては、限定されるものではないが、Dy−152、At−211、Bi−212、Ra−223、Rn−219、Po−215、Bi−211、Ac−225、Fr−221、At−217、Bi−213及びFm−255が挙げられる。有用なα粒子放出放射性核種の崩壊エネルギーは好ましくは2,000〜10,000keV、より好ましくは3,000〜8,000keV、最も好ましくは4,000〜7,000keVである。
【0122】
例えば、67Cuは61.5というその半減期とβ粒子とγ線を豊富に供給することから放射線免疫療法のためのより有望な放射性同位元素と考えられるが、これはキレート剤p−ブロモアセタミド−ベンジル−テトラエチルアミン四酢酸(TETA)を用いてPAM4抗体と結合させることができる。Chase,前掲。あるいは、エネルギーに富んだβ粒子を放出する90Yは、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を用いてPAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントに結合させることができる。
【0123】
可能性のあるさらなる放射性同位元素としては、11C、13N、150、75Br、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rh、142Pr、143Pr、161b、166Ho、919Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201Tl、225Ac、76Br、169Ybなどが挙げられる。
【0124】
もう一つの態様では、放射線増感剤を本発明の裸の、又は結合型のPAM4抗体又はそのフラグメントと組み合わせて使用することができる。例えば、放射性増感剤は放射性標識PAM4抗体又は抗体フラグメントと組み合わせて使用することができる。放射線増感剤は、放射性標識抗体又は抗体フラグメント単独で処理した場合に比べ、効力の増強が可能である。放射線増感剤は、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、D. M. Goldenberg (ed. ), CANCER THERAPY WITH RADIOLABELED ANTIBODIES, CRC Press (1995)に記載されている。
【0125】
熱中性子活性化療法のためホウ素付加物を付加した担体を有する本発明のPAM4抗体若しくはそのフラグメント、又はPAM4融合タンパク質若しくはそのフラグメントも通常同様にして達成される。しかし、中性子照射を行う前に非標的PAM4免疫複合体がクリアリングされるまで待つのが有利である。クリアランスはPAM4抗体に結合する抗体を用いて促進することができる。この一般原理を記載したものとしては、米国特許第4,624,846号を参照。例えば、カルボランなどのホウ素付加物をPAM4抗体に結合させることができる。カルボランは当該技術分野で周知のようにペンダント側鎖上のカルボキシル官能基を用いて調製することができる。アミノデキストランなどの担体へのカルボランの結合はカルボラン及び縮合物のカルボキシル基を担体上のアミンで活性化されることにより達成することができる。次に、この中間複合体をPAM4抗体と結合させる。PAM4抗体複合体を投与した後、熱中性子の照射でホウ素付加物を活性化し、α放射により崩壊して毒性の高い、短期の作用を生じる放射性原子へと変換させる。
【0126】
さらに本発明は、被験体の癌を診断する方法を含む。診断は、医薬上好適な賦形剤中に調剤した診断上有効量の診断用複合体を投与し、該標識を検出することによって達成すればよい。PAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントは診断/検出薬と結合させてもよいし、又は、診断/検出薬とは結合させずに、診断/検出薬の投与前、同時若しくは投与後に投与してもよい。診断/検出薬として使用できる放射性薬剤は上記で述べた。好適な非放射性診断/検出薬は磁気共鳴イメージング、X線、コンピューター断層撮影法又は超音波法に好適な造影剤である。磁気イメージング剤としては、例えば、本発明の抗体とともに用いる場合は、マンガン、鉄及びガドリニウムなどの非放射性金属を、2−ベンジル−DTPA並びにそのモノメチル及びシクロヘキシル類似体を含む金属キレート剤の組み合わせと錯化したものを含む。引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、2001年10月10日出願の米国出願番号09/921,290参照。
【0127】
本発明で意図されるMRI造影剤のような造影剤としては、例えば、ガドリニウムイオン、ランタンイオン、ジスプロシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン又はその他同等の標識、CT造影剤、及び超音波造影剤が本発明における使用に好適である。
【0128】
本発明に好適な常磁性イオンとしては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)及びエルビウム(III)が挙げられ、ガドリニウムが特に好ましい。
【0129】
X線イメージングなどのその他の場合に有用なイオンとしては、限定されるものではないが、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及び特にビスマス(III)が挙げられる。蛍光標識としては、ローダミン、フルオレセイン及びレノグラフィンが挙げられる。ローダミン及びフルオレセインはイソチオシアネート中間体を介して結合させる場合が多い。
【0130】
また、金属は磁気共鳴イメージング技術用のものなど、診断/検出薬においても有用である。これらの金属としては、限定されるものではないが、ガドリニウム、マンガン、鉄、クロム、銅、コバルト、ニッケル、ジスプロシウム、レニウム、ユーロピウム、テルビウム、ホルミウム及びネオジムが挙げられる。抗体成分に放射性金属又は常磁性イオンを付加するためには、イオンを結合させるための多様なキレート基を付着させた長い尾部を有する試薬と反応させる必要があろう。このような尾部は、ポリリシン、多糖、又は例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリミキシン、及びこの目的のために有用なことが公知の基といった、キレート基に結合できるペンダント基を有する他の誘導体化又は誘導体化可能な鎖であり得る。キレート剤は標準的な化学法を用いてPAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントに結合させる。キレート剤は通常、免疫反応性の損失が最小で、凝集及び/又は内部架橋が最小となる分子との結合を形成し得る基により抗体に連結される。キレート剤を抗体に結合させるその他の、もっと特殊な方法及び試薬は、1989年4月25日出願の「Antibody Conjugates」と題されたHawthorneの米国特許第4,824,659号に開示されており、引用することによりその開示内容を本明細書の一部とする。特に有用な金属−キレートの組み合わせとしては、一般エネルギー範囲20〜2,000keVの診断用同位元素とともに用いられる2−ベンジルDTPA並びにそのモノメチル及びシクロヘキシル類似体が挙げられる。同じキレート剤がマンガン、鉄及びガドリニウムのような非放射性金属と錯化した場合は、本発明の抗体とともに使用するとMRIに有用である。NOTA、DOTA、及びTETAのような大環状のキレート剤は種々の金属及び放射性金属とともに、最も詳しくは、それぞれガリウム、イットリウム、及び銅などの放射性核種とともに用いられる。このような金属−キレート錯体は、環のサイズを目的の金属にあわせて調整することにより極めて安定にすることができる。大環状ポリエーテルのような他のリング型キレート剤は、RAITのための223Raのような、安定に結合する核種を対照とするものであり、本発明に包含される。
【0131】
X線及びコンピューター断層撮影を増強するためには放射線不透性剤及び造影剤が用いられるが、これらにはヨウ素化合物、バリウム化合物、ガリウム化合物、タリウム化合物などが含まれる。特定の化合物としては、バリウム、ジアトリアゾエート、エチオド化オイル、クエン酸ガリウム、イオカルム酸、イオセタム酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパン酸、イオプロセム酸、イオセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオセメ酸、イオタスル、イオテトル酸、イオサラム酸、イオトロキシ酸、イオキサグル酸、イオキソトリアゾ酸、イポデート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾエート、プロピリオドン及び塩化タリウムが含まれる。
【0132】
本発明の抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントはまた、蛍光化合物で標識することもできる。蛍光標識MAbの存在は抗体を適当な波長の光に曝し、生じた蛍光を検出することにより決定される。蛍光標識化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリセリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド及びフルオロスカミンが挙げられる。蛍光標識抗体は特にフローサイトメトリー分析に有用である。
【0133】
あるいは、本発明の抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントは、抗体と化学発光化合物を結合させることにより検出可能に標識することができる。化学発光タグ付きMAbの存在は、化学反応の経過の間に生じる発光の存在を検出することにより決定される。化学発光標識化合物の例としては、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びシュウ酸エステルが挙げられる。
【0134】
同様に、生物発光化合物を用いて本発明の抗体及びそのフラグメントを標識することもできる。生物発光は触媒タンパク質が化学発光反応の効力を高める生体系で見られる一種の化学発光である。生物発光タンパク質の存在は発光の存在を検出することにより決定される。標識に有用な生物発光化合物としては、ルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンが挙げられる。
【0135】
よって、被験体において悪性腫瘍を診断する方法であって、被験体由来の検体(体液、組織又は細胞)に対して、裸のPAM4 MAb若しくはそのフラグメント、又は裸の抗体融合タンパク質若しくはそのフラグメントを含んでなる組成物を用いてin vitro診断アッセイを行うことを含んでなる方法が記載される。細胞又は組織においてPAM4の存在を検出するには免疫組織化学が使用できる。好ましくは、診断される悪性腫瘍は癌である。最も好ましくは、癌は膵臓癌である。
【0136】
これに加えて、DTPA、DOTA、TETA又はNOTAのようなキレート剤又は好適なペプチドに、蛍光分子のような検出可能な標識又は、重金属若しくは放射性核種のような細胞傷害剤を結合させることができる。例えば、治療上有用な免疫複合体は、光活性薬又は色素を抗体融合タンパク質に結合させることにより得られる。蛍光色素のような蛍光組成物、及び他の色素原、又は可視光線に感受性のあるポルフィリンのような色素は好適な光線を病巣に当てることにより病巣の検出及び治療に使用されてきた。治療においては、これは光照射、光療法又は光線力学療法と呼ばれている(Jori et al. (eds.), PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto 1985); van den Bergh, Chem. Britain 22:430(1986))。さらに、光療法を行うためにはモノクローナル抗体が光活性化色素と結合させられてきた。Mew et al., J.Immunol. 130:1473(1983);前掲, Cancer Res. 45:4380 (1985); Oseroff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8744 (1986);前掲, Photochem. Photobiol. 46:83 (1987); Hasan et al., Prog. Clin. Biol. Res. 288:471 (1989); Tatsuta et al., Lasers Surg. Med.9:422 (1989); Pelegrin et al., Cancer 67:2529(1991)。しかし、これらの初期の研究には、特に抗体フラグメント又はサブフラグメントの使用を伴った内視鏡療法の適用は含まれていなかった。従って本発明は、光活性薬又は色素を含んでなる免疫複合体の治療的使用を意図する。
【0137】
治療目的では、本発明のPAM4抗体及びそのフラグメントは治療上有効量で患者に投与する。抗体は、投与される量が生理学上有意であれば、「治療上有効量」で投与されると言われる。その存在が受容患者の生理に検出可能な変化をもたらす場合に、薬剤は生理学上有意である。
【0138】
診断/検出薬は、抗体部分、すなわち、抗体若しくは抗体フラグメント、又はサブフラグメント、融合タンパク質、及びそのフラグメントに結合させて投与し得る分枝又は原子であり、疾病関連抗原を含む細胞を限局化することにより疾病を診断/検出する上で有用である。有用な診断/検出薬としては、限定されるものではないが、放射性同位元素、色素(ビオチン−ストレプトアビジン複合体を伴うものなど)、放射線不透過性物質(例えば、ヨウ素、バリウム、ガリウム及びタリウム化合物など)、造影剤、蛍光化合物又は分子、及び磁気共鳴イメージング(MRI)のための増強剤(例えば、常磁性イオン)が挙げられる。米国特許第6,331,175号はMRI技術及びMRI増強剤に結合された抗体の調製を記載し、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。好ましくは、診断/検出薬は核イメージング、内視鏡検査及び血管内検査のための放射性同位元素、磁気共鳴イメージング又は超音波検査法で用いる増強剤、X線及びコンピューター断層撮影法のための放射線不透過剤及び造影剤、並びに内視鏡蛍光透視法を含む蛍光透視法のための蛍光化合物からなる群から選択される。抗体と結合されているか、又は二重特異性プレターゲッティング法で用いられる蛍光剤及び放射活性剤は、特にγ、β及び陽電子放射核種を伴い、引用することによりその全開示内を本明細書の一部とするGoldenbergの米国特許第5,716,595号、同第6,096,289号及び米国出願番号09/348,818に開示されているような、悪性腫瘍などの罹患組織又は細胞塊に関連する標的抗原の内視鏡検査、手術中検査又は血管内検査に特に有用である。内視鏡適用は、結腸などの内視鏡検査が可能な構造に換算している場合に用い得る。陽電子放射断層撮影法に有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、F−18、Mn−51、Mn−52m、Fe−52、Co−55、Cu−62、Cu−64、Ga−68、As−72、Br−75、Br−76、Rb−82m、Sr−83、Y−86、Zr−89、Tc−94m、In−110、I−120及びI−124が挙げられる。有用な陽電子放出放射性核種の総崩壊エネルギーは好ましくは<2,000keV、より好ましくは1,000keV未満、最も好ましくは<700keVである。γ線検出を用いる診断/検出薬として有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、Cr−51、Co−57、Co−58、Fe−59、Cu−67、Ga−67、Se−75、Ru−97、Tc−99m、In−1ll、m−114m、I−123、I−125、I−131、Yb−l69、Hg−197、及びTl−201が挙げられる。有用なγ線放出放射性核種の崩壊エネルギーは好ましくは20〜2000keV、より好ましくは60〜600keV、最も好ましくは100〜300keVである。
【0139】
in vitro診断
本発明は生体サンプルをPAM4抗原の存在に関してin vitroスクリーニングするための、PAM4抗体(PAM4融合タンパク質及びそのフラグメントを含む)の使用を意図する。このような免疫アッセイでは、PAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントは以下に記載されるように、液相で用いてもよいし、固相担体に結合させてもよい。ある好ましい態様では、PAM4抗体又はそのフラグメントはヒト化されている。また、好ましくは、PAM4抗体又はそのフラグメントは完全ヒト型である。さらに好ましくは、PAM4融合タンパク質はヒト化又は完全ヒトPAM4抗体を含んでなる。
【0140】
生体サンプルがPAM4抗原を含むかどうかを判定するためのスクリーニング方法の一例として、ラジオイムノアッセイ(RIA)がある。例えば、RIAの一形態では、試験下の物質を放射性標識PAM4抗原の存在下でPAM4抗原MAbと混合する。この方法では、試験物質の濃度は、MAbと結合している標識PAM4抗原の量と反比例し、遊離している標識PAM4抗原の量と直接相関する。他の好適なスクリーニング法も当業者には容易に明らかになろう。
【0141】
あるいは、PAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントが固相担体に結合されているin vitroアッセイを行うこともできる。例えば、ポリマーをコーティングしたビーズ、プレート又は試験管などの不溶性の支持体にMAbを結合させるためには、MAbをアミノデキストランのようなポリマーに結合させればよい。
【0142】
他の好適なin vitroアッセイも当業者には容易に明らかになろう。検出可能なように標識されたPAM4抗体及びPAM4抗原の固有濃度はインキュベーションの温度及び時間、並びにその他のアッセイ条件はサンプル中のPAM4抗原の濃度、サンプルの性質などをはじめとする種々の因子によって異なる。PAM4抗体のサンプルの結合活性は周知の方法に従って測定することができる。当業者ならば通常の実験を用いて各測定に関して実施可能で最適なアッセイ条件を決定することができるであろう。
【0143】
特定の条件に関する慣例又は必要に応じて洗浄、攪拌、振盪、濾過などの他の工程をアッセイに加えてもよい。
【0144】
生体サンプル中のPAM4抗原の存在は固相酵素免疫検定アッセイ(ELISA)を用いて判定することができる。直接競合ELISAでは、純粋又は半精製抗原調製物を、試験する体液又は細胞抽出物に不溶な固相支持体に結合させ、検出可能なように標識した一定量の可溶性抗体を加えれば、固相抗原と標識抗体の間で形成された二元複合体の検出及び/又は定量が可能となる。
【0145】
これに対し、「二部位ELISA」又は「サンドイッチアッセイ」としても知られる「二重決定基」ELISAでは少量の抗原しか必要とせず、このアッセイでは抗原の大量精製の必要はない。このように二重決定基ELISAは、臨床サンプル中の抗原の検出に関しては直接競合ELISAと呼ばれる。例えば、生検験体中のc−myc癌タンパク質の定量のための二重決定基ELISAの使用(Field et al., Oncogene 4: 1463 (1989); Spandidos et al., AntiCancer Res. 9: 821 (1989))参照。
【0146】
二重決定基ELISAでは、一定量の非標識MAb又は抗体フラグメント(「キャプチャー抗体」)を固相支持体に結合させ、試験サンプルをキャプチャー抗体と接触させ、検出可能なように標識した可溶性抗体(又は抗体フラグメント)を加えればキャプチャー抗体、抗原及び標識抗体の間で形成された三元複合体の検出及び/又は定量が可能となる。抗体フラグメントとは、F(ab’)、F(ab)、Fab’、 Fabなどのような抗体の部分をいう。本発明では、抗体フラグメントPAM4抗原のエピトープと結合するPAM4 MAbの部分である。「抗体フラグメント」とはまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のようにふるまういずれの合成又は遺伝子操作タンパク質も含む。例えば、抗体フラグメントとしては、軽鎖可変領域からなる単離されたフラグメント、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメント、及び軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーにより連結されている組換え単鎖ポリペプチド分子が挙げられる。抗体融合タンパク質とは、同じ、又は異なる特異性を有する同じ、又は異なる単鎖抗体又は抗体フラグメントの、二以上のセグメントが連結されている、組換え生産された抗原結合分子である。融合タンパク質は単一の抗体成分、異なる抗体成分の多価又は多重特異性の組み合わせ、又は同じ抗体成分の複数コピーを含み得る。融合タンパク質はさらに、診断/検出薬及び/又は治療薬に結合された抗体又は抗体フラグメントを含んでもよい。PAM4抗体には、ヒト化、ヒト及びマウス抗体、その抗体フラグメント、免疫複合体及びそのフラグメント、並びに抗体融合タンパク質及びそのフラグメントが含まれる。
【0147】
二重決定基ELISAを行う方法は周知である。例えば、Field et al.,前掲、Spandidos et al.,前掲、及びMoore et al., “Twin−Site ELISAs for fos and myc Oncoproteins Using the AMPAK System,” in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 273−281 (The Humana Press, Inc. 1992)参照。
【0148】
二重決定基ELISAでは、可溶性抗体又は抗体フラグメントは、キャプチャー抗体によって認識されるエピトープとは異なるPAM4エピトープと結合しなければならない。二重決定基ELISAは生検サンプル中にPAM4抗原が存在するかどうかを確認するために行うことができる。あるいは、このアッセイは体液の臨床サンプル中に存在するPAM4抗原を定量するために行うこともできる。この定量アッセイは精製されたPAM4抗原の希釈物を含めて行うことができる。
【0149】
本発明のPAM4 MAb、融合タンパク質及びそのフラグメントはまたアッセイキットの製造にも適している。このようなキットはバイアル、試験管などのような一以上の密閉収容手段(これらの各収容手段は免疫アッセイの個々のヨウ素を含む)に収容するように区画化されている輸送手段を含んでなってもよい。
【0150】
例えば、固相支持体に固定化されたキャプチャー抗体を含む収容手段と、液相として検出可能なように標識された抗体を含むさらなる収容手段が存在してもよい。さらなる収容手段にはPAM4抗原の連続希釈物を含む標準液を含んでもよい。PAM4抗原の標準液は、横座標にプロットしたPAM4抗原の濃度と縦座標上の検出シグナルを用いて標準曲線を作成するために使用できる。PAM4抗原を含むサンプルから得られた結果をこのようなプロットから推定し、生体サンプル中のPAM4抗原の濃度を得ることができる。
【0151】
本発明のPAM4抗体、融合タンパク質及びそのフラグメントはまた、組織学的験体から作製した組織切片中のPAM4抗原の存在を検出するためにも使用できる。このようなin situ検出を用いてPAM4抗原の存在を判定したり、また、検査組織におけるPAM4抗原の分布を調べたりすることができる。in situ検出は、検出可能なように標識したPAM4抗体を凍結組織切片に適用することで達成することができる。研究によれば、PAM4抗原はパラフィン包埋切片において保存される。in situ検出の一般技術は当業者に周知である。例えば、Ponder, “Cell Marking Techniques and Their Application,” in MAMMALIAN DEVELOPMENT: A PRACTICAL APPROACH 113−38 Monk (ed.) (IRL Press 1987)、及びColigan at pages 5.8.1−5.8.8参照。
【0152】
PAM4抗体、融合タンパク質及びそのフラグメントは好適ないずれかのマーカー部分、例えば放射性同位元素、酵素、蛍光標識、色素、色素原、化学発光標識、生物発光標識又は常磁性標識で検出可能なように標識することができる。このような検出可能なように標識されたPAM4抗体を作製及び検出する方法は当業者に周知であり、また、以下にもさらに詳細に記載する。
【0153】
マーカー部分はγカウンター又はシンチレーションカウンターを用いるなどの手段、又はオートラジオグラフィーによって検出される放射性同位元素であってもよい。ある好ましい態様では、診断用複合体はγ線、β線又は陽電子放出同位元素である。本明細書においてマーカー部分とは、所定の条件下でシグナルを生じる分子をさす。マーカー部分の例としては、放射性同位元素、酵素、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識及び常磁性標識が挙げられる。本明細書において、診断薬又は治療薬とは、診断又は治療に有用な複合体を形成するように抗体部分と結合されている分子又は原子である。診断薬又は治療薬の例としては薬物、毒素、オリゴヌクレオチド、免疫調節剤、サイトカイン、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、酵素阻害剤、同位元素、他の抗体、キレート剤、色素、色素原、ホウ素化合物、及びマーカー部分が挙げられる。
【0154】
一つの態様では、bcl−2発現を阻害するアンチセンス分子などのオリゴヌクレオチドが、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする米国特許第5,734,033号(Reed)に記載されており、本発明の免疫複合体又は抗体融合タンパク質の治療薬部分に結合されているか、又は治療薬部分を形成し得る。あるいは、このオリゴヌクレオチドは本発明の裸の、又は結合されているPAM4抗体又はそのフラグメントと同時投与してもよいし、逐次投与してもよい。ある好ましい態様では、このオリゴヌクレオチドは癌遺伝子又はbcl−2などB細胞悪性腫瘍の癌遺伝子産物に対して向けられていることが好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0155】
当業者ならば本発明に従って使用できる他の好適な標識を知っている。マーカー部分とPAM4抗体との結合は当該技術分野で公知の標準技術を用いて達成することができる。これに関する典型法は、Kennedy et al., Clin. Chim. Acta 70:1 (1976)、Schurs et al., Clin. Chim. Acta 81:1 (1977)、Shih et al., Int’l J. Cancer 46:1101 (1990)に記載されている。
【0156】
上記のin vitro及びin situ検出法を診断又は病状の病期判定の補助に用いてもよい。例えば、このような方法は膵臓癌など、PAM4抗原を発現する腫瘍を検出するのに用いることができる。
【0157】
in vovo診断
本発明はまた、in vivo診断のためのPAM4抗体の使用も意図する。放射性標識MAbを用いた診断イメージングの方法は周知である。イムノシンチグラフィー技術では、例えば抗体をγ線放出放射性同位元素で標識し、患者へ導入する。γ線を放出する放射性同位元素の位置及び分布を検出するにはガンマカメラを用いる。例えば、Srivastava (ed.), RADIOLABELED MONOCLONAL ANTIBODIES FOR IMAGING AND THERAPY (Plenum Press 1988), Chase, “Medical Applications of Radioisotopes,” in REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition, Gennaro et al. (eds.), pp. 624−652 (Mack Publishing Co., 1990)、及びBrown, “Clinical Use of Monoclonal Antibodies,” in BIOTECHNOLOGY AND PHARMACY 227−49, Pezzuto et al. (eds.) (Chapman & Hall 1993)参照。
【0158】
診断イメージングでは、放射性同位元素をPAM4抗体に直接又は中間的官能基を用いることで間接的に結合させればよい。有用な中間的官能基としては、エチレンジアミン四酢酸及びジエチレントリアミン五酢酸などのキレート剤が挙げられる。例えば、Shih et al.,前掲、及び米国特許第5,057,313号参照。
【0159】
患者に送達する線量は最小の半減期、最小の身体残留、及び検出と正確な測定が可能な最少の同位元素量の最良の組み合わせとして同位元素を選択することで可能な限り低レベルに維持される。PAM4抗体と結合させることができ、かつ、診断イメージングに適当な放射性同位元素の例としては99mTc及び111Inがある。
【0160】
PAM4抗体、融合タンパク質及びそのフラグメントはまた、in vivo診断目的での常磁性イオン及び種々の放射線造影剤で標識することができる。磁気共鳴イメージングに特に有用な造影剤は、ガドリニウム、マンガン、ジスプロシウム、ランタン、又は鉄イオンを含んでなる。さらなる薬剤としては、クロム、銅、コバルト、ニッケル、レニウム、ユーロピウム、テルビウム、ホルミウム又はネオジムが挙げられる。PAM4抗体及びそのフラグメントはまた、超音波造影/増強剤と結合させることもできる。例えば、超音波造影剤はヒト化PAM4 IgG又はそのフラグメントを含んでなるリポソームである。また、超音波造影剤はガス充填されたリポソームであるのが好ましい。
【0161】
ある好ましい態様では、二重特異性抗体は造影剤と結合させることができる。例えば、二重特異性抗体は超音波イメージングで用いるための一種以上のイメージ増強剤を含んでなってもよい。ある好ましい態様では、造影剤はリポソームである。リポソームはリポソームの外面に共有結合された二価のDTPA−ペプチドを含んでなるのが好ましい。リポソームがガス充填されているのがいっそう好ましい。
【0162】
医薬上好適な賦形剤
治療適用においてPAM4抗体の作用期間を制御するためにさらなる薬学的方法を用いてもよい。徐放性製剤はPAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントと複合体形成するか、それらを吸着するポリマーの使用を通じて調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)マトリックス及びステラリン酸二量体とセバシン酸の無水共重合体マトリックスが挙げられる。Sherwood et al., Bio/Technology 10: 1446 (1992)。このようなマトリックスからのPAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントの放出速度はPAM4抗体、融合タンパク質又はそのフラグメントの分子量、マトリックス内のPAM4抗体の量、及び分散している粒子の大きさによって異なる。Saltzman et al., Biophys. J. 55: 163 (1989); Sherwood et al.,前掲。その他の固相投与形はAnsel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition (Lea & Febiger 1990)、及びGennaro (ed.), REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)及びそれらの改訂版(1990)に記載されている。
【0163】
被検体に送達されるヒト化及びヒトPAM4抗体及びそのフラグメントは、抗体、免疫複合体、融合タンパク質又はそのフラグメント単独から構成されるか、又は一以上の医薬上好適な賦形剤、一以上の付加的成分又はこれらのある組み合わせを含み得る。
【0164】
本発明の免疫複合体、裸の抗体及びそのフラグメントは医薬上有用な組成物を調製するための公知の方法に従って調剤され、それによりこの免疫複合体又は裸の抗体は混合物中で医薬上好適な賦形剤と合わさる。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は医薬上好適な賦形剤の一例である。他の好適な賦形剤は当業者に周知である。例えば、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition (Lea & Febiger 1990)、及びGennaro(ed.), REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)及びそれらの改訂版を参照。
【0165】
本発明の免疫複合体又は裸の抗体は、例えばボーラス注射又は点滴による静脈内投与のために調剤できる。注射製剤は、例えばアンプルのような単位投与形、又は保存剤を加えた複数回投与用容器で提供することができる。この組成物は油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションの形態をとってもよく、沈殿防止剤、安定剤及び/又は分散剤のような処方剤を含むことができる。あるいは、その活性成分は使用前に例えば滅菌パイロジェンフリー水のような好適なビヒクルで構成するための粉末形態であってもよい。
【0166】
また、免疫複合体、裸の抗体、及びそのフラグメントは哺乳類に皮下投与又は他の非経口経路でも投与できる。ある好ましい態様では、PAM4抗体又はそのフラグメントは一用量当たり20〜2000mgタンパク質の用量で投与される。さらに、投与は点滴でも単回又は複数回のボーラス注射によってもよい。一般に、ヒトにおいては投与される免疫複合体、融合タンパク質又は裸の抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の健康状態、及び以前の病歴といった因子によって異なる。通常、単回の静脈点滴として約1mg/kg〜20mg/kgの範囲の用量の免疫複合体、抗体融合タンパク質又は裸の抗体をレシピエントに与えるのが望ましいが、状況によってはより低い、又はより高い用量を投与してもよい。この用量は必要に応じで繰り返してもよく、例えば、1週間に1回の投与を4〜10週間、好ましくは1週間に1回の投与を8週間、そしてより好ましくは、1週間に1回の投与を4週間繰り返してもよい。また、1週間おきの投与を数ヶ月といったように低い頻度で投与してもよい。用量及び日程を適宜調節して、種々の非経口経路により投与してよい。
【0167】
本発明のPAM4抗体、融合タンパク質及びそのフラグメントは医薬上有用な組成物を調製する既知の方法に従って調剤することができ、それによりPAM4抗体は混合物中で医薬上許容される担体と合わさる。組成物は、その投与が受容患者によって許容される場合、「医薬上許容される担体」であると言われる。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は医薬上許容される担体の一例である。他の好適な担体は当業者に周知である。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Ed. (1990)参照。
【0168】
治療目的では、治療上有効な量の免疫複合体、又は裸の抗体を哺乳類に投与する。ヒト以外の動物被検体もまた意図されるが、本発明の好適な被検体は通常ヒトである。抗体製剤は、投与される量が生理学上有意であれば、「治療上有効量」で投与されると言われる。薬物は、その存在が受容哺乳類の生理に検出可能な変化をもたらす場合に、生理学上有意である。
【実施例】
【0169】
以下の実施例は本発明の態様を例示するものであり、特許請求の範囲を何ら限定するものではない。
【0170】
下記実施例はPAM4 MAb及びCaPan1ヒト膵臓癌を用いた実験的研究を述べる。CaPan1ヒト膵臓癌は皮下及び正所双方の異種移植片として担持される。MAb及び薬剤は生存期間に著しい向上をもたらした。高濃度のPAM4モノクローナル抗体は、異種移植ヒト腫瘍モデルをターゲッティングし、最初の患者群の大多数の膵臓腫瘍をターゲッティングすることが示される。患者の血液中のPAM4反応性抗原を定量するためにin vitro免疫アッセイを用いると、膵炎並びに他の疾病及び正常群から膵臓癌を識別する能力が有望であることが明らかである。
【0171】
PAM4 MAbを用いた臨床試験は、患者の大部分の病変部がターゲッティングされたこと、及び正常組織における取り込みが示されなかったことを示している。線量計測によれば、10〜20cGy/mCiを腫瘍に送達することができ、腫瘍対赤色髄比は3:1〜10:1であったことが示された。これらのデータは、PAM4が膵臓癌の治療の第一相試験の進展に有用であることを示唆している。
【0172】
実施例1 免疫組織化学染色研究
正常成体組織に対する免疫組織化学によれば、PAM4反応性エピトープが胃腸管に制限され、染色は弱かったが、明らかに陽性であることを示した(表1)。膵管、細導管、腺房及び島細胞を含む正常な膵臓組織は染色は陰性であった。抗原として組織ホモジネートを用いたPAM4に基づく酵素免疫アッセイは全般的に免疫組織化学データを支持した(表2)。PAM4エピトープは正常な膵臓及びその他の非胃腸管組織には存在しなかった。腫瘍組織では、PAM4は25のうち21の膵臓癌(85%)と反応性があった(表3)。PAM4反応性は腫瘍同定のステージと相関しているようであった。例えば、よく分化した膵臓腫瘍及びある程度分化した膵臓腫瘍21のうち20が陽性であり、一方、分化の不十分な腫瘍では4つのうち1つだけが陽性であった。一般に、分化の不十分な腫瘍は総ての膵臓癌の10%に満たない。
これらの研究により、PAM4反応性及び組織分布(正常なものと癌の双方)は、CAl9.9、DUPAN2、SPAN1、Nd2、B72.3、及びLewis抗原に関して報告されているものとは異なることが示された。これらのMAbのあるもので行った交差遮断研究と考え合わせると、そのデータはPAM4 MAbは独特かつ新規なエピトープを認識することを示唆する。CA19.9、DUPAN2、及びaLeと比べた場合、PAM4はその組織分布により制限があるものと思われ、高いパーセンテージの膵臓腫瘍と反応性がある。さらに、同じ濃度でも反応全体の強度が大きく、腫瘍内の高いパーセンテージの細胞と反応性がある。最後に、PAM4は、慢性膵炎検体12のうち3と弱い反応性を示すに過ぎず、一方、CA19.9及びDUPAN2は12総ての検体と強い反応性を示した。特異性は用いるアッセイのタイプ及び試験する組織の範囲及び数、正常膵臓組織と腫瘍膵臓組織を識別するPAM4の能力によって異なることが認識されるが、は臨床適用の発展的検討を行うためには、癌検体の大きなパーセンテージと反応するその能力並びに高い反応強度が重要な原理であった。
【0173】
【表1】

【0174】
【表2】

【0175】
【表3】

【0176】
【表4】

【0177】
実施例2 放射性標識PAM4のin vivo生体分布及び腫瘍ターゲッティング
PAM4の最初の生体分布研究は、予測される分化の範囲にわたる、一連の4種の異なる異種移植ヒト膵臓腫瘍において行った。用いた4つの腫瘍系統AsPc1、BxPc3、Hs766T及びCaPan1は、腫瘍内に131I−PAM4の濃縮を示し(範囲は3日目で21%〜48%ID/g)、同時に投与された非特異的なイソタイプ合致Ag8抗体(範囲は3日目で3.6%〜9.3%ID/g)よりも有意に高かった(p<0.01〜0.001)。この生体分布データを用いて、AsPc1、BxPc3、Hs766T及びCaPan1それぞれに注射量12,230;10,684;6,835;及び15,843cGy/mCiの腫瘍に対する潜在的線量を見積もった。実際の最大許容量(MTD)0.7mCiでは、PAM4は異種移植腫瘍モデルの各々に実質的な線量をもたらすことができた。各腫瘍系統において、放射性標識PAM4の血液レベルは非特異的Ag8よりも有意に低かった(p<0.01〜0.001)。PAM4からの血液への潜在線量はAg8のものより1.4〜4.4倍低かった。PAM4からの腫瘍への線量をPAM4から血液への線量に対してノーマライズしたところ、腫瘍が受け取った線量は2.2;3.3;3.4であり、それぞれ血液よりも13.1倍高かった。重要なことに、非腫瘍組織に対する潜在線量は最小であった。
【0178】
CaPan1腫瘍モデルを用い、PAM4の生体分布を抗CEA抗体であるMN14と比べた。腫瘍内のPAM4の濃度は初期の時点ではMN14よりもずっと高く、3日目の腫瘍:血液比はMN14では2.7±1.9であるのに対し、PAM4では12.7±2.3であった。腫瘍内へのPAM4の取り込みは初期の時点でMN14より有意に高かったが(1日目ではp<0.001;3日目ではp<0.01)、線量計測によれば、14日の試験期間にわたって、MN14に比べ、PAM4から腫瘍へは3.2倍高い線量であったに過ぎなかったことが示された。これはPAM4が腫瘍から迅速にクリアランスされるためであり、従って後の時点では、腫瘍内には2種の抗体とも同等濃度が存在していた。腫瘍からのPAM4の迅速なクリアランスはBxPc3及びHs766Tにおいても注目されたが、AsPc1腫瘍モデルでは見られなかった。これらの知見は、例えば結腸直腸癌におけるG9及びB72.3などの他の抗ムチン抗体に関して報告されているもの(各々、MN14抗体と比べた場合に長い保持時間を示した)とは異なった。PAM4の代謝についての研究から得られた結果は、まず腫瘍細胞に結合した後、抗体が迅速に放出され、おそらくは異化作用を受けるか、又は抗原:抗体複合体として隔離される。これは、血液クリアランスが極めて速いことを除けば、患者における抗体の使用にとって好ましくない意味を持つであろう。これらのデータは、131Iが治療適用のための同位元素の適当な選択肢とはなり得ないことを示唆する。頻繁に投与できる90Y又は188Reのような短命な同位元素がより効果的な試薬であるといえよう。
【0179】
PAM4は、CaPan1腫瘍モデルを除き、正常組織へのターゲッティングの証拠は示されず、CaPan1腫瘍モデルでは、小さいが、実質的に有意な脾臓取り込みが見られた(範囲は3日目で3.1〜7.5%ID/g)。この種の脾臓ターゲッティングは抗ムチン抗体B72.3及びCC49の臨床適用で見られている。重要なことに、これらの研究では、また、脾臓ターゲッティングが抗体の取り込みに影響しなかったし、各スキャンの解釈の妨げとならなかった。これらの研究から、脾臓ターゲッティングが脾臓中の交差反応抗原によるものでなく、F受容体による結合によるものでもなく、むしろ以下の可能性:脾臓にトラップされた抗原の直接ターゲッティング、又は血液中で形成されたか、又は腫瘍部位から放出された抗原:抗体複合体の間接的取り込みの一以上によるものであったことを示唆した。後者には血液中に免疫複合体が存在することが必要であるが、5分といった初期及び7日目といった後期の検体をゲル濾過(HPLC,GF−250カラム)により調べた場合には見られず、放射性標識抗体は本来のものとして溶出した。前者の説明は、CaPan1腫瘍が大量のPAM4反応性抗原を産生し、検討した他の腫瘍細胞系統よりも100〜1000倍高いという点でより可能性が高いと思われる。これらの他の腫瘍系統においてPAM4による脾臓ターゲッティングがないということから、この減少は過剰な抗原産生に関連したものであることが示唆される。いずれにせよ、脾臓ターゲッティングはタンパク質用量をもとの2μgから10μgに引き上げることによって克服することができる。脾臓にトラップされた抗原の多くはおそらく放射性標識抗体よりも非標識PAM4と複合体形成した。タンパク質用量を増すことで、腫瘍又は非腫瘍組織へのPAM4のターゲッティングに悪影響は無かった。実際、タンパク質用量を100μgまで引き上げたところ、CaPan1腫瘍内の放射性標識PAM4濃度が二倍を超えた。
【0180】
実施例3 無胸腺ヌードマウスにおける正所膵臓腫瘍モデルの開発
動物モデルにおける膵臓癌の臨床像をさらに近似させるため、出願者らは膵臓のヘッドに直接腫瘍細胞を注入することにより正所モデルを開発した。正所CaPan1腫瘍は、腹水が貯留し、10〜14週間で死に至るまでは明らかな徴候なく次第に成長した。移植後3〜4週間で、動物は触知可能な約0.2gの腫瘍を発達させた。成長8週間以内に約1.2gの一次腫瘍が、肝臓及び脾臓への転移を伴って見られた(転移腫瘍1〜3個/動物;各腫瘍<0.1g)。10〜14週間で腹水の貯留を伴う横隔膜のシーディング(seeding)が明らかになった。通常、腹水の形成及び副次的な黄疸が腫瘍成長の最初の明らかな徴候であった。腹水は腹腔内における体液の蓄積であり、黄疸は血中の過剰な胆汁色素による皮膚及び眼の黄化である。この時点で腫瘍は1〜2gとかなり大きくなり、動物は死に至るまで長くて3〜4週間でしかなかった。
【0181】
4週齢の正所腫瘍(約0.2g)を担持する動物に投与した腫瘍放射性標識131I−PAM4は、1日目に7.9±3.0の局在インデックス(localization indice)で一次腫瘍への特異的ターゲッティングを示し、14日目には22.8±15.3に高まった。タンパク質の組織への特異的ターゲッティングの形跡は見られなかった。肝臓及び脾臓への腫瘍転移が見られた場合には、両転移ともターゲッティングされ、高い濃度の放射性標識抗体を有した。さらに、約半分の動物が切開部位に皮下腫瘍を発症した。同じ動物の正所及び皮下腫瘍のターゲッティングにおいて有意な差はなく、動物が付加的な腫瘍を持つ持たないにかかわらず、正所腫瘍のターゲッティングにおいて有意な差はなかった。見積もられたPAM4から一次腫瘍及び血液への線量はそれぞれ6,704及び1,655cGy/mCiであった。
【0182】
実施例4 循環腫瘍抗原の定量のための酵素免疫アッセイの開発
発明者らは、ウサギポリクローナル抗膵臓ムチン由来非標識精製IgGとともにPAM4をキャプチャー試薬として用い、次いで検出試薬としてペルオキシダーゼ標識ロバ抗ウサギIgGを用いる酵素免疫アッセイを開発した。このアッセイの使用から次のような結果が得られた。
【0183】
アッセイによって検出された抗原の範囲内で、得られた変動係数値は10%に満たなかった。25の健常個体からの血清を調べたところ、平均±S.D.は4.0±3.1単位であった。次に、陽性応答の限界値を平均+2S.D.=10.2単位に設定した。全37人の膵臓癌患者のうち32人、すなわち86%がこのアッセイで陽性であり、13人の膵炎患者では3人だけが陽性であった。PAM4抗原は直腸結腸癌患者の55%(18/33)で上昇したが、この数字は免疫組織化学によりPAM4と反応性のある結腸直腸癌検体の40%とだいたい同じである。他の癌では、16人の卵巣癌患者のうち4人、20人の乳癌患者のうち5人でPAM4抗原陽性であり、彼らは総て疾病の進展を示した。また、下記の表5で示されるように、膵臓癌の中央値(84.5単位)は、これらの症例の圧倒的多数が後期で大きな腫瘍負荷を有していたとしても、他の総ての癌の群(胆管癌を除く)よりも10倍高いオーダーであった。
【0184】
【表5】

【0185】
これらの知見に加え、管理におけるこのPAM4アッセイの使用の可能性を検討するため、同所モデルで予備試験を行った。同所CaPan1腫瘍(腫瘍重0.15gと推定)の移植後2週間の時点で、血中に検出可能な抗原を有していた動物はいなかった。4週間の時点(腫瘍重は0.2gと推定)では、5個体のうち1個体で検出可能なレベルの抗原(72単位)を示し、6週間の時点(腫瘍重0.4gと推定)では、5個体のうち4個体で定量可能な抗原(範囲は98〜6080単位)を有していた。血清が運ぶ抗原が検出できる最初の時点の決定という点での重大な制限因子は得られる血液の量が限られていることであったが、繰り返し採血できた。その後、血清はアッセイ前に1:10希釈した。
【0186】
実施例5 膵臓癌の試験的放射免疫療法
治療用131I−PAM4の使用に関する最初の試験は、無胸腺マウスで皮下異種移植片として成長させたCaPan1腫瘍を用いて行った。同等量の非特異的Ag8の治療効果とも比較する試験において、0.25gの腫瘍を担持する動物に350μCiの131I−PAM4を投与した。1cmの腫瘍を担持する動物への131I−PAM4の投与のMTDは700μCiである。5週間目よ6週間目で、PAM4処置した動物は劇的な腫瘍退縮を示し、27週間でも8個体のうち5個体で腫瘍のないままであった。無処置並びにAg8処置動物は、腫瘍成長の急速な進行を示し、この二つの対照群の間で有意な差は見られなかった。7週間で、無処置群の腫瘍は最初の時点の20.0±14.6倍成長したが、131I−Ag8処置腫瘍は4.9±1.8倍しか成長しなかった。この時点で、PAM4腫瘍はもとの大きさの0.1±0.1倍に退縮し、無処置(p<0.001)及び非特異的Ag8処置(p<0.01)動物の双方の間に有意差があった。
【0187】
CaPan1腫瘍は131I−PAM4処置に感受性があったが、結果、すなわち、腫瘍の退縮又は進行は最初の腫瘍の大きさをはじめとする多くの因子に依存する。従って、0.25g、0.5g、l.0g、又は2.0gのCaPan1腫瘍負荷を有する動物群を一回量の350μCi 131I−PAM4で処置した。最初の腫瘍の大きさが0.25g及び0.5gの動物の大多数(各群10個体のうち9個体)は少なくとも処置6週間後に腫瘍退縮又は成長阻害を示した。1.0g腫瘍群では、7個体のうち5個体で6週間の間、腫瘍成長がなく、2.0g腫瘍群では、9個体のうち6個体で6週間の間、腫瘍成長がなく、その後、進行した。350μCi一回では翁腫瘍には効果がなく、一回投与はあまり適切な投与計画とは言えないが、毒性試験は放射免疫療法を複数回行うことができることを示している。平均1.0gのCaPan1腫瘍を担持する動物に、350μCi 131I−PAM4を一回か二回、0時点と4週間目に施与するか、無処置とした。無処置群の平均生存期間は3.7+/−1.0週間であった(生存とは腫瘍が5cmに達する時間と定義)。動物は3週間といった早期に死に至り、6週間を過ぎて生き残った動物はいなかった。350μCi 131I−PAM4の一回投与により、生存期間は18.8+/−4.2週間まで有意に延長された(p<0.0001)。動物の死亡の範囲は3週間から25週間まで延長された。26週間の試験期間の終了時に生存していた動物はいなかった。
【0188】
一回投与群に比べて二回投与群では生存期間の有意な延長が見られた。動物の半数が、腫瘍の大きさ1.0〜2.8cmで、26週間の時点で生存しており、平均腫瘍成長率は最初の腫瘍サイズのは1.6+/−0.7倍であった。26週間目に生存していなかった動物については、平均生存期間(17.7+/−5.3週間)は一回投与群と同程度であった。
【0189】
PAM4による治療試験では正所腫瘍モデルも用いた。4週齢の正所腫瘍(腫瘍重0.25gと推定)を担持する動物群を無処置のままか、350μCi 131I−PAM4又は350μCiの131I−非特異的Ag8の一回投与で処置した。無処置動物は10週までに死亡率50%を示し、15週間目に生存しているものはいなかった。腫瘍成長4週間目に非特異的131I−Ag8を投与した動物は7週間で死亡率50%を示し、14週間目に生存しているものはいなかった。この二群の間に統計学的(ログランク解析)に有意な差はなかったが、Ag8処置動物の約半数で放射線毒性が起こった可能性がある。しかし、放射性標識PAM4は、無処置又はAg8処置動物と比べた場合に有意な生存利益をもたらし(p<0.001)、試験の終了時6週間の時点で生存率70%であった。この時点で生存していた動物を屠殺し、腫瘍の大きさを測定した。動物は平均重1.2gの腫瘍を有しており、また、7個体のうち4個体で1又は2箇所の小さな(<0.1g)転移の形跡があった。成長6週間の時点で、これらの腫瘍は8週齢の腫瘍に典型的なものであった。
【0190】
実施例6 理学的ジェムザール(Gemzar)化学療法と131I−PAM4の組み合わせ
ゲムシタビン(ジェムザール)と131I−PAM4放射免疫療法の併用の最初の試験はチェッカーボードアレイとして行い、ジェムザール一回量(0、100、200、500mg/kg)に対して131I−PAM4一回量([MTD=700μCi]MTDの100%、75%、50%、0%)とした。組み合わせのMTDは500mg/kgジェムザールと350μCi 131I−PAM4(50%MTD)であることが分かった。毒性は、最大値を無毒として体重減少により測定するが、体重の20%の減少とする。組み合わせ処置プロトコールはジェムザール単独よりも有意に効果が高かったが、放射免疫療法単独より効果が高いいとは言えなかった。次の試験は、真の相乗的治療効果が見られるかどうかを調べるため、低容量のジェムザールと放射免疫療法で行った。約1cm(体重の約5%)の腫瘍を担持する動物に、0、3、6、9及び12日目にジェムザール100mg/kgを投与し、0日目に100μCiの131I−PAM4を施与した。治療効果が見られ、統計学的に有意(p<0.0001)な退縮(5個のうち2個の腫瘍が0.1cm未満)及び/又はジェムザール単独と比べて腫瘍の成長阻害を伴っていた。さらに注目すべきは、体重の点で、毒性が見られなかったことである。この組み合わせ処置プロトコールは、必要であれば、上記の放射免疫療法単独試験で行ったように、4週目に二回目の処置をはじめ、複数回施与することができる。
【0191】
実施例7 ヒト化PAM4 MAb
本発明の好ましい態様は、膵臓癌ムチンから惹起されたマウスPAM4のヒト化IgGであるモノクローナルMAb hPAM4を用いる。マウスPAM4配列のヒト化は、患者が受けるヒト抗マウス抗体応答を軽減するために用いる。ヒトPAM4を生産するため、マウス免疫グロブリンのの重鎖及び軽鎖可変鎖(V)からマウス相補性決定領域(CDR)をヒトVドメインへ移した後、フレームワーク領域のいくつかのヒト残基をマウスの対応物で置換する。本発明のヒト化モノクローナル抗体はin vitro及びin vivo診断及び治療法で用いるのに好適である。
【0192】
マウスPAM4 MAbの可変(V)領域フレームワーク(FR)配列(図1A及び1B)とKabatデータベースに登録されているヒト抗体とを比較すると、PAM4 V及びVHのFRがそれぞれヒト抗体Walker V及びWil2 VHと最も高い程度の配列ホモロジーを示すことが示された。従って、このWalkerV及びWil2 VH FRをヒトフレームワークとして選択し、これにPAM4V及びVHのマウスCDRをそれぞれグラフトした(図3)。しかし、PAM4重鎖のヒト化のためのWil2 FR4配列を置換するためには、ヒト抗体NEWMのFR4配列を用いた(図3B)。推定CDRをフランキングするPAM4 FRの数個のアミノ酸残基はFR残基以外のAg結合により大きな影響を持つとの考慮に基づき、これらの残基はhPMA4では維持した。これらの残基はVの21M、47W、59P、60A、85S、87F及び100G、並びにVHの27Y、30P、38K、48I、66K、67A及び69Lである。hPAM4 V及びVHのDNA及びアミノ酸配列はそれぞれ図3A及び3Bに示されている。
【0193】
Leung et al. (Leung et al., 1994))が記載しているような改良法を用い、図4に示されているような長いオリゴヌクレオチド合成とPCRの組み合わせを用い、hPAM4のデザインされたV及びVH遺伝子を構築した。hPAM4 VHドメインの構築に関してた、二つの長いオリゴヌクレオチドhPAM4VHA(173−マー)及びhPAM4VHB(173−マー)を自動DNA合成装置(Applied Biosystem)で合成した。
【0194】
hPAM4VHAはhPAM4 Vドメインのnt17〜189に相当する。
【化5】

【0195】
hPAM4VHBはnt169〜341に相補的なhPAM4 VHドメインの開始部を除いたものに相当する。
【化6】

【0196】
hPAM4VHAとVHBの3’末端配列(21nt残基)は互いに相補的である。所定のPCR条件下で、hPAM4VHAとVHBの3’末端をアニーリングして、長いオリゴヌクレオチドの残りの部分によりフランキングされた短い二本鎖DNAを形成する。各アニール末端は一本鎖DNAの転写のためのプライマーとして働き、hPAM4 VHのnt17〜341からなる二本鎖DNAが生じる。このDNAを、二種類の短いオリゴヌクレオチドhPAM4VHBACK及びhPAM4VHFORの存在下でさらに増幅し、全長hPAM4 VHを形成させた。下線部は図4Bで示されるようなサブクローニングのための制限部位である。
【化7】

【0197】
10μLの10×PCRバッファー(500mM KCL、100mM Tris.HCLバッファー,pH8.3、15mM MgCl)、2μmolのhPAM4VHBACK及びhPAM4VKFOR、並びに2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer Cetus, Norwalk, CT)の存在下で最少量のhPAM4VHA及びVHB(経験的に決定)を増幅した。この反応混合物に対して、94℃で1分の変性、45℃で1分のアニーリング及び72℃で1.5分の重合からなる3サイクルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。この手順に続いて、94℃で1分の変性、55℃で1分のアニーリング及び72℃で1分の重合からなる27サイクルのPCR反応を行った。hPAM4 VHの二本鎖PCR増幅産物をゲル精製し、PstI及びBstEII制限部位で制限消化し、重鎖足場ベクターVHpBS2(ここでV配列は、5’末端にフレーム内連結された転写開始コドンと分泌シグナルペプチドを、そして3’末端にイントロン配列をコードするDNA配列を用いて完全に構築されている)の相補的PstI/BstEII制限部位にクローニングした。VHpBS2はVHpBS(Leung et al., Hybridoma, 13:469 (1994))の改良型足場ベクターであり、次のサブクローニング工程を容易にするため、転写開始コドンの16塩基上流にXhoI制限部位を導入したものである。構築したVH遺伝子を発現ベクターpdHL2(IgHエンハンサー及びMTプロモーターの制御下にヒトIgG重鎖及び軽鎖双方のための発現カセット、並びに選択及び増幅のためのマーカーとしてdhfr遺伝子を含む)にXhoI−BamHI制限断片としてサブクローニングした(図4B)。pdHL2の重鎖領域はBamHI制限部位を欠いているので、この連結には可変鎖のBamHI部位とpdHL2ベクターに存在するHindIII部位との間を架橋するためのリンカーの使用が必要である。得られた発現ベクターはhPAM4VHpdHL2と称した。
【0198】
ヒト化V配列の全長DNAを構築するため、hPAM4VKA(157−マー)及びhPAM4VKB(156−マー)を上記のように合成した。hPAM4VKA及びVKBを上記のような二種類の短いオリゴヌクレオチドhPAM4VKBACK及びhPAM4VKFORにより増幅した。
【0199】
hPAM4VKAはhPAM4VKドメインのnt16〜172に相当する。
【化8】

【0200】
hPAM4VKBはnt153〜308に相当するhPAM4Vドメインの開始部を除いたものに相当する。
【化9】

【0201】
hPAM4VKAとVKBの3’末端配列(20nt残基)は互いに相補的である。所定のPCR条件下で、hPAM4VKAとVKBの3’末端をアニーリングして、長いオリゴヌクレオチドの残りの部分によりフランキングされた短い二本鎖DNAを形成する。各アニール末端は一本鎖DNAの転写のためのプライマーとして働き、hPAM4 Vのnt16〜308からなる二本鎖DNAが生じる。このDNAを、二種類の短いオリゴヌクレオチドhPAM4VKBACK及びhPAM4VKFORの存在下でさらに増幅し、全長hPAM4 Vを形成させた。下線部は下記に示されるようなサブクローニングのための制限部位である。
【化10】

【0202】
hPAM4 Vのゲル精製したPCRをPvuII及びBglIIで制限消化し、軽鎖足場ベクターVKpBR2の相補的PvuII/BclII部位にクローニングした。VKpBR2はVKpBR(Leung et al., Hybridoma, 13:469 (1994))の改良型足場ベクターであり、転写開始コドンの16塩基上流にXbaI制限部位を導入したものである。構築されたV遺伝子を、XbaI−BamHI制限断片として、VH配列を含む発現ベクターhPAM4VHpdHL2にサブクローニングした。得られた発現ベクターはhPAM4pdHL2と称した。
【0203】
約30μgのhPAM4pdHL2をSalIで消化することで線状化し、450V及び25μFでのエレクトポレーションによってSp2/0−Ag14細胞へトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、CO細胞培養インキュベーターにて2日間インキュベートし、その後、MTX耐性に関して選択した。2〜3週間で選択に生残したコロニーが出現し、ELISAアッセイにより、ヒト抗体の分泌に関してスクリーニングした。要するに、生存コロニーからの上清(〜100μl)を、ヤギ抗ヒトIgG F(ab’)フラグメント特異的AbをプレコートしたELISAマイクロプレートのウェルに加えた。このプレートを室温で1時間インキュベートした。結合していないタンパク質を洗浄バッファー(0.05%Tween−20を含有するPBS)で3回洗浄することにより除去した。ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトIgG FCフラグメント特異的Abをウェルに加えた。1時間インキュベートした後、PBS中、4mMのo−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(OPD)及び0.04%のHを含有する基質溶液(100μL/ウェル)を洗浄後のウェルに加えた。30分間暗所で発色させ、50μlの4N HSO溶液を加えることで反応を停止した。結合したヒトIgGは、ELISAリーダーにて490nmでの吸光度を読みとることで測定した。陽性細胞クローンを増殖させ、タンパク質Aカラムでのアフィニティークロマトグラフィーにより細胞培養上清からhPAM4を精製した。
【0204】
hPAM4のAg結合活性を、膵臓癌細胞抽出物でコートしたマイクロタイターブレートにおけるELISAアッセイにより確認した。マウスV及びヒトCドメインからなるキメラPAM4との比較においてhPAM4のAg結合親和性を評価するため、PAM4抗原コートプレートを用いるELISA競合結合アッセイを開発した。一定量のHRP結合cPAM4に種々の濃度のcPAM4又はhPAM4を加えたものをコートウェルに加え、室温で1〜2時間インキュベートした。CaPan1 Agに結合したHRP−結合cPAM4の量は、4mMのo−フェニレンジアミンジヒドロクロリド及び0.04%のHを含有する基質溶液を添加した後、490nmでの吸光度を読みとることにより明らかにした。図4の競合結合アッセイによって示されるように、hPAM4及びcPAM4抗体は同等の結合活性を示した。
【0205】
好適な宿主細胞としては微生物又は哺乳類宿主細胞が挙げられる。好ましい宿主細胞系統としては、MAb及びその他の融合タンパク質の生産のために開発されたPER.C6がある。よって、本発明の好ましく態様は、PAM4 MAb、複合体、融合タンパク質又はそのフラグメントをコードするDNA配列を含んでなる宿主細胞である。PER.C6細胞(WO97/00326)は、ヒトホスホグリセンリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターの制御下にAd血清型5(Ad5) E1A及びE1Bコード配列(Ad5ヌクレオチド459〜3510)を含んだプラスミドを用いた、ヒト胎児一次網膜細胞のトランスフェクションにより作出されたものである。E1A及びE1Bはそれぞれアデノウイルス初期遺伝子活性化タンパク質1A及び1Bである。これらの方法及び組成物は、例えばグリコシル化により翻訳後修飾される、目的のヒト組換えタンパク質の安定発現を生じるのに特に有用である。PER.C6は完全に同定されたヒト細胞系統であること、また、医薬品安全性試験実施基準(good laboratory practices)に適合するように開発されたものであるなど、いくつかの特徴から、PER.C6は組換えタンパク質生産のための宿主に特に有用なものである。さらに、PER.C6はヒト又は動物由来タンパク質を含まない規定の血清フリー培地で懸濁培養として増殖させることができ、その増殖は回転瓶、シェーカーフラスコ、スピンフラスコ及びバイオリアクターに適合し、約35時間で倍加する。最後に、E1Aの存在は、CMVエンハンサー/プロモーターの制御下にある遺伝子の発現のアップレギュレーションを引き起こし、E1Bの存在は組換えトランスジーンの過剰発現によって促進される可能性のあるp53依存性アポトーシスを阻害する。一つの態様では、この細胞は通常の哺乳類細胞系統よりも2〜200倍高い組換えタンパク質及び/又はタンパク質性基質を産生することができる。別の好ましい細胞として、Sp210−Ag14がある。
【0206】
実施例8 手術不能膵臓癌腫を有する患者の治療
広範な手術不能膵臓腺癌、実質的な体重減少(30ポンドを超える)、嗜眠及び虚弱を伴う56歳の男性に90Y−PAM4放射性標識ヒト化抗体を30mCiの90−Yの用量で、及び50mgの抗体タンパク質を2時間静脈点滴で投与した。5日後、次に患者にゲムシタビン化学療法の標準的なコースを施与した。数ヶ月後、療法による副作用の形跡がなければ、この治療計画を繰り返す。追跡検査中、数ヶ月後、患者は活動的になり、体重減少も遅くなるものと推測された。膵臓のCTスキャンは、安定疾病又は腫瘍塊の若干の減少を示唆するものと思われた。数ヶ月後に検査を繰り返すと、コンピューター断層撮影法により、腫瘍重の実質的減少を示すはずであり、従って、患者に対し、膵臓腫瘍塊の切除を考慮し得る。
【0207】
実施例9 二重特異的PAM4×734及び99mTc又は111In標識ペプチドハプテンによるプレターゲッティング
プレターゲッティングアプローチを用いた膵臓癌のイメージングに関して、発明者らは、キメラPAM4(cPAM4)Fab’及びマウス734(m734)Fab’からなる二重特異性F(ab’)抗体(bsMAb)を調製した。m734抗体はIn−DTPA複合体を認識する。このbsMAbを125Iで標識し、ヒト膵臓癌異種移植片(CaPan1)を担持する無胸腺ヌードマウスに注射した(7μCi;15μg)。キメラリツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体)及びm734から作製した非ターゲッティングF(ab’)抗体bsMAbを131Iで標識し、対照として同時注射した。種々の時点(注射後4、24、36、48及び72時間後)でマウスを解剖し、組織を摘出し、計数してグラム当たりの注入量%(%ID/g)を求めた。対照bsリツキシマブに比べて、各時点でのbsPAM4の腫瘍取り込み量は有意に高かった(p<0.032より良好)。このタイプのプレターゲッティング系を用いた発明者らのこれまでの実験から、良好な腫瘍:非腫瘍比を得るには1%ID/g未満の血液レベルが必要であることが示唆された。bsPAM4の投与後36時間では、血中1.10±0.40%ID/gであったが、注射後48時間では0.56±0.08%ID/gまで下がった。これら二つの時点での腫瘍取り込みはそれぞれ6.43±1.50%ID/g及び5.37±2.38%ID/gであった。これらの値は、36時間及び48時間の時点でそれぞれ腫瘍中0.65±0.33%ID/g及び0.47±0.19%ID/g(p<0.018及びp<0.0098)であった対照bsリツキシマブよりも有意に高かった。しかし、血液クリアランス速度はまさに同等で、有意な差はなかった。
【0208】
これらのデータに基づき、放射性標識ペプチド−ハプテンをbsMAbの投与後40時間目に投与したCaPan1腫瘍担持マウスでプレターゲッティング実験を行った。二種類のペプチドIMP−192及びIMP−156を用い、各々は734MAbによる認識のための二価DTPAを含有するが、一方は、99mTc安定結合のために特異的な付加的な基を含まない(IMP−192)。腫瘍担持マウス(腫瘍体積〜0.30cm)に125I−bsPAM4(6μCi;15μg)を投与し、40時間後に放射性標識ペプチド−ハプテン(34.5μCi;1.5×10−11モル;bsMAb:ペプチド=10:1)を投与した。一方のマウス群に99mTc標識IMP192を投与し、もう一方のマウス群には111In標識IMP156を投与した。非特異的ターゲッティングの対照としては、放射性標識ペプチドの投与前に125I−bsリツキシマブを投与した二群、及び111In又は99mTc標識ペプチド単独を投与した別の二群を含んだ。
【0209】
ペプチドを投与した後、2時間及び24時間でマウスを屠殺し、腫瘍及び種々の組織について%ID/gを求めた。発明者らのこれまでの知見と一致して、非ターゲッティング対照bsリツキシマブに比べて腫瘍におけるbsPAM4は有意に高く、それぞれ8.2±3.4%及び0.3±0.08%ID/g(p<0.0001)であった。このことから、111In−IMP156(20.2±5.5%ID/g対0.9±0.1%ID/g、p<0.0001)という有意に高い腫瘍取り込みであることが解釈される。bsPAM4でプレターゲッティングされたマウスにおける99mTc−IMP192の腫瘍取り込みも、bsリツキシマブでプレターゲッティングされたもの(16.8±4.8%ID/g対1.1±0.2%ID/g、p<0.0005)よりも有意に高かった。単独で用いた場合の各ペプチドの腫瘍取り込みは、bsPAM4を投与したマウスの場合よりも有意に低かった(それぞれ、99mTc−IMP192及び111In−IMP156に関して0.2±0.05%ID/g及び0.1±0.03%ID/g、p<0.0004及びp<0.0001)。
【0210】
3時間の時点と同様、ペプチド注射後24時間(bsMAb投与から64時間後)での腫瘍中のbsPAM4は、bsリツキシマブよりも有意に高かった(それぞれ6.4±2.2%ID/g対0.2±0.09%ID/g;p<0.0001)。この時点で、bsPAM4でプレターゲッティングされたマウスの腫瘍では11.1±3.5%ID/g 111In−IMP156及び12.9±4.2%ID/g 99mTc−IMP192に対して、bsRITでプレターゲッティングされた腫瘍では0.5±0.2%ID/g及び0.4±0.03%ID/gであった(それぞれp<0.0008及びp<0.0002)。ペプチド単独を投与したマウスでは、bsPAM4プレターゲッティングペプチドの場合と比べ、腫瘍における99mTc−IMP192(0.06±0.02%ID/g、p<0.0007)及び111In−IMP156(0.09±0.02%ID/g、p<0.0002)は有意に低かった。
【0211】
【表6】

【0212】
上記の表はこれらの群について、放射性標識産物の投与後の初期の各時点における種々の組織の腫瘍:非腫瘍比(T:NT)を示している。bsPAM4×m734F(ab’)の投与後4時間において、腫瘍:血液比は2:1より小さかったことに着目することが重要である。しかし、投与後3時間では、プレターゲッティング111In−IMP156及び99mTc−IMP192は、調べた総ての組織に関して有意に高い腫瘍:非腫瘍比を示し、特に腫瘍:血液比は36:1及び9:1に相当した(それぞれp<0.001及びp<0.011)。発明者らが24時間時点の腫瘍:血液比を調べたところ、125I−bsPAM4単独では4:1であるのに対し、プレターゲッティング111In−IMP156及び99mTc−IMP192はそれぞれ274:1及び80:1と、有意に高い値を示した(p<0.0002)。これらのデータは、このプレターゲッティングbsPAM4アプローチが、非腫瘍組織には最小の線量で腫瘍へ高い線量を送達する、半減期の短い高エネルギー放射性同位元素とともに使用できることを強く示唆するものである。
【0213】
当業者には、本発明の生成物、組成物、方法及び方法に対して種々の改変及び変更をなし得ることが自明である。よって、本発明は、それらが付属の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にある限り、このような改変及び変更を含むものとする。
【0214】
上記で挙げた総ての刊行物、特許、及び特許出願の開示は、その各々が個々に引用することにより本明細書の一部とされるのと同等に、引用することによりその全開示内容が明らかに本明細書の一部とされる。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1A】マウスPAM4のクローニングされたV遺伝子及び推定アミノ酸配列を示す。図1AはPAM4 VkのDNA及びアミノ酸配列を示す。図1BはPAM4VHのDNA及びアミノ酸配列を示す。対応するDNA配列によりコードされるアミノ酸配列はヌクレオチド配列の下に一文字コードで示されている。ヌクレオチド配列のナンバリングは右側にある。CDR領域のアミノ酸残基は太字と下線で示されている。アミノ酸残基の上にナンバリングすることで示しているように、アミノ酸残基にはKabatのIg分子ナンバリング法を用いている。文字によりナンバリングされているアミノ酸残基はKabatナンバリング法で定義された挿入残基である。これらの挿入残基はそれまでの残基と同じ進数を有する。例えば、図1Bの残基82、82A、82B及び82Cは、それぞれ82、A、B及びCとして示される。
【図1B】マウスPAM4のクローニングされたV遺伝子及び推定アミノ酸配列を示す。図1AはPAM4 VkのDNA及びアミノ酸配列を示す。図1BはPAM4VHのDNA及びアミノ酸配列を示す。対応するDNA配列によりコードされるアミノ酸配列はヌクレオチド配列の下に一文字コードで示されている。ヌクレオチド配列のナンバリングは右側にある。CDR領域のアミノ酸残基は太字と下線で示されている。アミノ酸残基の上にナンバリングすることで示しているように、アミノ酸残基にはKabatのIg分子ナンバリング法を用いている。文字によりナンバリングされているアミノ酸残基はKabatナンバリング法で定義された挿入残基である。これらの挿入残基はそれまでの残基と同じ進数を有する。例えば、図1Bの残基82、82A、82B及び82Cは、それぞれ82、A、B及びCとして示される。
【図2A】Sp2/0細胞で発現されたキメラPAM4(cPAM4)重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。図2AはcPAM4Vkのアミノ酸配列を示す。図2BはcPAM4VHのアミノ酸配列を示す。これらの配列は一文字コードで示されている。CDR領域のアミノ酸残基は太字と下線で示されている。アミノ酸のナンバリングについては図1の場合と同様である。
【図2B】Sp2/0細胞で発現されたキメラPAM4(cPAM4)重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。図2AはcPAM4Vkのアミノ酸配列を示す。図2BはcPAM4VHのアミノ酸配列を示す。これらの配列は一文字コードで示されている。CDR領域のアミノ酸残基は太字と下線で示されている。アミノ酸のナンバリングについては図1の場合と同様である。
【図3A】ヒト抗体、PAM4及びhPAM4の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。図3Aはヒト抗体WalkerのVアミノ酸配列アライメントをPAM4及びhPAM4とともに示し、図3Bはヒト抗体Wil2(FR1−3)及びNEWM(FR4)のVHアミノ酸配列アライメントをPAM4及びhPAM4とともに示す。ドットは対応するヒト抗体の残基と同じPAM4の残基を示す。囲んだ領域はCDR領域を示す。hPAM4のN末端及びC末端残基(下線)は双方とも用いた足場ベクターにより固定されている。図1同様、残基のナンバリングにはKabatのIg分子ナンバリング法を用いている。
【図3B】ヒト抗体、PAM4及びhPAM4の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列のアライメントを示す。図3Aはヒト抗体WalkerのVアミノ酸配列アライメントをPAM4及びhPAM4とともに示し、図3Bはヒト抗体Wil2(FR1−3)及びNEWM(FR4)のVHアミノ酸配列アライメントをPAM4及びhPAM4とともに示す。ドットは対応するヒト抗体の残基と同じPAM4の残基を示す。囲んだ領域はCDR領域を示す。hPAM4のN末端及びC末端残基(下線)は双方とも用いた足場ベクターにより固定されている。図1同様、残基のナンバリングにはKabatのIg分子ナンバリング法を用いている。
【図4A】Sp2/0細胞で発現されたヒト化PAM4(hPAM4)重鎖及び軽鎖可変領域のDNA及びアミノ酸配列を示す。図4AはhPAM4VのDNA及びアミノ酸配列を示し、図4BはhPAM4VHのDNA及びアミノ酸配列を示す。ヌクレオチド配列のナンバリングは右側にある。対応するDNA配列によりコードされるアミノ酸配列は一文字コードとして示されている。CDR領域のアミノ酸残基は太字と下線で示されている。図1A及び図1B同様、アミノ酸残基にはKabatのIg分子ナンバリング法を用いている。
【図4B】Sp2/0細胞で発現されたヒト化PAM4(hPAM4)重鎖及び軽鎖可変領域のDNA及びアミノ酸配列を示す。図4AはhPAM4VのDNA及びアミノ酸配列を示し、図4BはhPAM4VHのDNA及びアミノ酸配列を示す。ヌクレオチド配列のナンバリングは右側にある。対応するDNA配列によりコードされるアミノ酸配列は一文字コードとして示されている。CDR領域のアミノ酸残基は太字と下線で示されている。図1A及び図1B同様、アミノ酸残基にはKabatのIg分子ナンバリング法を用いている。
【図5】キメラPAM4、cPAM4と比較した場合の、ヒト化PAM4抗体、hPAM4の結合活性を示す。hPAM4は菱形で示され、cPAM4は黒丸で示されている。結果は、CaPan1 Agへの125I−cPAM4結合と競合する場合、hPAM4抗体及びcPAM4の結合活性が匹敵するものであることを示す。キメラ抗体は、ある種に由来する抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含みながら、抗体領域の定常領域はヒト抗体に由来する組換えタンパク質である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスPAM4モノクローナル抗体(MAb)の相補性決定領域(CDR)及びヒト抗体の軽鎖及び重鎖可変領域のフレームワーク領域(FR)を含む軽鎖及び重鎖可変領域と、ヒト抗体の軽鎖及び重鎖定常領域と、を含むヒト化抗体又はそのフラグメントであって、
軽鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SASSSVSSSYLYを含むCDR1、アミノ酸配列STSNLASを含むCDR2及びアミノ酸配列HQWNRYPYTを含むCDR3を含み、かつ、
重鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYVLHを含むCDR1、アミノ酸配列YINPYNDGTQYNEKFKGを含むCDR2及びアミノ酸配列GFGGSYGFAYを含むCDR3を含む、ヒト化抗体又はそのフラグメント。
【請求項2】
軽鎖及び重鎖可変領域のFRが、対応するマウスPAM4 MAbのFRから置換されている少なくとも一つのアミノ酸残基を含む、請求項1に記載のヒト化抗体又はそのフラグメント。
【請求項3】
マウスPAM4 MAb由来の置換されているアミノ酸残基が、配列番号11で示されるマウスPAM4重鎖可変領域のアミノ酸配列の5、27、30、38、48、66、67及び69番目のアミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基である、請求項2に記載のヒト化抗体又はそのフラグメント。
【請求項4】
マウスPAM4 MAb由来の置換されているアミノ酸残基が、配列番号9で示されるマウスPAM4軽鎖可変領域のアミノ酸配列の21、47、59、60、85、87及び100番目のアミノ酸残基からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸残基である、請求項2に記載のヒト化抗体又はそのフラグメント。
【請求項5】
配列番号19で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号16で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載のヒト化抗体又はそのフラグメント。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化抗体又はそのフラグメントを含む抗体成分を含み、該抗体成分が少なくとも一種の診断/検出薬又は治療薬に結合されている、癌細胞をターゲッティングする診断又は治療複合体。
【請求項7】
診断/検出薬が、放射性核種、造影剤及び光活性診断/検出薬からなる群から選択される、請求項6に記載の診断複合体。
【請求項8】
診断/検出薬が放射性核種である、請求項7に記載の診断複合体。
【請求項9】
診断/検出薬が造影剤であり、該造影剤が放射線造影剤である、請求項7に記載の診断複合体。
【請求項10】
造影剤が常磁性イオン又は超音波増強剤である、請求項9に記載の診断複合体。
【請求項11】
造影剤が、ヨウ素化合物、バリウム化合物、ガリウム化合物及びタリウム化合物からなる群から選択される放射線不透過性物質である、請求項9に記載の診断複合体。
【請求項12】
手術中腫瘍診断、内視鏡的腫瘍診断又は血管内腫瘍診断に用いられる、請求項7に記載の診断複合体。
【請求項13】
治療薬が、放射性核種、免疫調節剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、オリゴヌクレオチド、酵素、酵素阻害剤、光活性治療薬、細胞傷害剤、脈管形成阻害剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項6に記載の治療複合体。
【請求項14】
オリゴヌクレオチドが、アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項13に記載の治療複合体。
【請求項15】
治療薬が細胞傷害剤である、請求項13に記載の治療複合体。
【請求項16】
細胞傷害剤が、薬物又は毒素である、請求項15に記載の治療複合体。
【請求項17】
免疫調節剤が、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の治療複合体。
【請求項18】
治療薬が酵素である、請求項13に記載の治療複合体。
【請求項19】
請求項1に記載のヒト化抗体又はそのフラグメントを含む、多価多重特異性抗体又はそのフラグメント。
【請求項20】
ハプテン分子に対して親和性を有する一以上のハプテン結合部位をさらに含む、請求項19に記載の多価多重特異性抗体又はそのフラグメント。
【請求項21】
診断/検出薬又は治療薬をさらに含む、請求項19又は20に記載の多価多重特異性抗体又はそのフラグメント。
【請求項22】
少なくとも二種の請求項1に記載のヒト化抗体又はそのフラグメントを含む、抗体融合タンパク質。
【請求項23】
少なくとも一種の請求項1に記載の第一のヒト化抗体又はそのフラグメントと、少なくとも一種の第二のMAb又はそのフラグメントと、を含み、
該第二のMAb又はそのフラグメントが請求項1に記載のヒト化抗体又はそのフラグメントではない、抗体融合タンパク質。
【請求項24】
第二のMAb又はそのフラグメントがハプテンと結合する、請求項23に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項25】
第二のMAbが癌腫関連抗原と結合する、請求項23に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項26】
第二のMAbが、膵臓癌細胞上の抗原と結合する、又は膵臓癌細胞に由来する抗原と結合する、請求項25に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項27】
抗体融合タンパク質が少なくとも一種の診断/検出薬又は治療薬をさらに含む、請求項22〜26のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質。
【請求項28】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化抗体若しくはそのフラグメント、請求項19若しくは20に記載の多価多重特異性抗体又はそのフラグメント又は請求項22〜26のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項29】
有効量の請求項20に記載の多価多重特異性抗体又はそのフラグメントを被験体に投与し、次いで、
(i)DOTA−Phe−Lys(HSG)−D−Tyr−Lys(HSG)−NH
(ii)DOTA−Phe−Lys(HSG)−Tyr−Lys(HSG)−NH
及び
(iii)Ac−Lys(HSG)D−Tyr−Lys(HSG)−Lys(Tscg−Cys)−NH
からなる群より選択され、かつ、少なくとも一種の診断/検出薬又は治療薬と複合化しているターゲッティング可能な複合体を被験体に投与することを含み、内視鏡的に、若しくは血管内にて、MUC1を発現する罹患組織を、手術中に、同定及び/又は治療する方法において用いられる、
請求項20に記載の多価多重特異性抗体又はそのフラグメントを有効成分として含む医薬。
【請求項30】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒト化抗体又はそのフラグメント、請求項6〜18のいずれか一項に記載の診断若しくは治療複合体、請求項19〜21のいずれか一項に記載の多価多重特異性抗体又はそのフラグメント又は請求項22〜27のいずれか一項に記載の抗体融合タンパク質を有効成分として含み、
MUC1を発現する癌を治療する方法において用いられる医薬。
【請求項31】
請求項20に記載の多価多重特異性抗体若しくはそのフラグメント又は請求項24に記載の抗体融合タンパク質を被験体に注射して、該多価多重特異性抗体若しくはそのフラグメント又は該抗体融合タンパク質を標的部位に結合させ、前記被験体にガラクトシル化抗イディオタイプクリアリング剤を注射して、循環から前記多価多重特異性抗体若しくはそのフラグメント又は前記抗体融合タンパク質をクリアリングし、前記被験体に、前記多価多重特異性抗体若しくはそのフラグメント又は前記抗体融合タンパク質と結合する二価の標識ハプテンを注射して、前記多価多重特異性抗体若しくはそのフラグメント又は前記抗体融合タンパク質と結合した二価の標識ハプテンを検出する(ここで、該検出は造影剤又はサブトラクション剤を用いずに行われる)ことを含む、内視鏡手順、血管内カテーテル又は手術中に病変部を検出する方法のための、
請求項20に記載の多価多重特異性抗体若しくはそのフラグメント又は請求項24に記載の抗体融合タンパク質の使用。
【請求項32】
軽鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SASSSVSSSYLYを含むCDR1、アミノ酸配列STSNLASを含むCDR2及びアミノ酸配列HQWNRYPYTを含むCDR3を含み、
重鎖可変領域のCDRが、アミノ酸配列SYVLHを含むCDR1、アミノ酸配列YINPYNDGTQYNEKFKGを含むCDR2及びアミノ酸配列GFGGSYGFAYを含むCDR3を含み、かつ、
マウスPAM4モノクローナル抗体のMUC1抗原への結合と競合する、ヒト化抗体又はそのフラグメント。
【請求項33】
少なくとも1つの診断/検出薬又は治療薬と結合している、請求項32に記載のヒト化抗体又はそのフラグメント。
【請求項34】
MUC1を発現する癌の治療用医薬の製造のための、請求項32又は33に記載のヒト化抗体又はそのフラグメントの使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−227099(P2010−227099A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92200(P2010−92200)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【分割の表示】特願2004−513326(P2004−513326)の分割
【原出願日】平成15年6月16日(2003.6.16)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】