説明

モノニトリル含有リガンドを有する白金錯体

本明細書には、白金に共有結合された1つのニトリル置換基(モノニトリル)、DNA又はRNAの塩基と水素結合を形成可能な1以上の窒素供与体リガンド、及びインビボにおいて加水分解されて活性種を形成することができ、次いでDNA又はRNAのグアニン塩基又はアデニン塩基と配位付加体を形成することができる脱離基(すなわち、L及びL)を有する新規な白金系錯体が開示される。また、本明細書には、前記白金錯体の合成スキーム、ならびに薬学的に有効な用量(投与量)の前記新規な白金錯体を投与することによって種々の型の癌を治療する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年6月30日に提出され、「モノニトリル含有リガンドを有する白金錯体(PLATINUM COMPLEXES WITH MONONITRILE−CONTAINING LIGANDS)」と題された米国仮出願番号第60/695,638号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、モノニトリル含有リガンド(モノニトリル含有配位子)を有する新規な白金錯体、その薬学的に許容可能な塩、及び/又はその誘導体、ならびにこれら前述のモノニトリル含有リガンドを有する白金錯体、その薬学的に許容可能な塩、及び/又はその誘導体の合成方法に関する。より詳細には、本発明は、癌細胞の増殖を阻害する目的のため、モノニトリル含有リガンドを有する白金錯体、その薬学的に許容可能な塩、及び/又はその誘導体を使用すること、モノニトリル含有リガンドを有する白金錯体及びその誘導体の薬学的に許容可能な処方物、ならびにモノニトリル含有リガンドを有する白金錯体及びその誘導体の投与方法(例えば、様々な種類の癌を患うヒトに対する前記処方物の投薬、投与スケジュール、及び投与経路)に関する。
【0003】
(発明の背景)
抗新生物薬物であるシスプラチン(cis−ジアンミンジクロロ白金又は「CDDP」)、ならびにカルボプラチン及びオキサリプラチンを含む関連する白金系薬物は、種々の悪性腫瘍の治療において広範に使用される。これらの悪性腫瘍としては、卵巣、肺、結腸、膀胱、胚細胞腫瘍、及び頭頸部の癌が挙げられるがこれらに限定されない。白金錯体は、一つにはアクア化(すなわち、反応性アクア(aqua)種を形成すること)によって作用することが報告され、そのようなアクア種の一部は、細胞内において優位であり、後にプリン塩基とDNA鎖内配位キレート架橋を形成し、それによってDNAを架橋し得る。この機構は、主に鎖内架橋を介して、及びまれに鎖間架橋を介して働き、それによってDNAの構造及び機能を崩壊させ、このような働きが癌細胞に対して細胞毒性であると考えられている。白金抵抗性癌細胞は、これらの薬剤の細胞毒性作用に対して回復力を有する(resilient)。ある癌は、白金薬剤の殺傷効果に対して新生の(de novo)固有の自然抵抗性を示し、初期の白金化合物治療の後にアポトーシス、ネクローシス又は退行に陥らない。対照的に、他の型の癌は、初期の治療の後の腫瘍退行によって証明されるように、白金薬物に対して細胞毒性の感受性を示すが、その後、白金抵抗性のレベルが上昇する。このことは、白金薬物による治療後の感応性の減少及び/又は腫瘍の増殖から明らかである(すなわち、「獲得抵抗性」)。したがって、腫瘍細胞を効果的に殺傷する新たな白金薬剤が絶えず探求されているが、これらの薬剤もまた、他の白金薬剤で観察される腫瘍(媒介)性の(tumor−mediated)薬物抵抗性機構に鈍感であるか又はあまり感受性がない。
【0004】
この問題を解決するための試みにおいて、ある調査グループ(Uchiyamaら、Bull.Chem.Soc.Jpn.54:181−85(1981)を参照。)は、シスプラチンの各アミン基の代わりにニトリル基を有するシスプラチン錯体(IUPAC命名法:cis−ビスベンゾニトリルジクロロ白金(II))を開発している。この錯体の構造式を以下に示す。
【0005】
【化1】

【0006】
一般に、ニトリル−リガンド系白金錯体は、現在販売されている白金系薬物よりも極性が小さく親油性(すなわち、疎水性)が高いので、極性の小さな溶媒に溶解できる。極性の小さな溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−dimethylformide)、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられるがこれらに限定されない。このような高い親油性により、このような錯体は細胞膜の脂質二重層を介する容易な拡散/輸送によって、現在利用されている類似の化学療法剤よりも、癌細胞により速やかに吸収される。したがって、親油性が高いほど、癌細胞内のDNAに対する細胞毒性抗腫瘍効果に関与できる白金種の利用可能な濃度が増大する。
【0007】
さらに、このニトリル基の窒素上の孤立電子対はsp混成軌道に位置し、アミンリガンドのsp混成軌道よりも窒素原子核に近い。それゆえ、白金錯体において、白金と電子を共有する孤立電子対に対するニトリルリガンドの窒素原子核の引力は、アンミンリガンドの窒素原子核の引力よりも大きい。この効果によって、白金(II)と脱離基との間のイオン効果が減少し、これらの共有結合性が増大する。結果として、脱離基が置換(アクア化を含む。)によって置き換わることがより困難になり、それゆえ、アンミン白金錯体と比較して、ニトリルN−供与体である白金錯体において、観察されるアクア化の速度はより遅くなる。ニトリルリガンド系白金錯体及びその加水分解によって形成される中間的な白金錯体は共に、アンミンリガンド系白金錯体に比べて、裸のDNA(naked DNA)に対する反応速度が遅いようである。白金錯体とDNA塩基との架橋形成の速度が遅いほど、腫瘍性の白金−DNA修復機構(これは、重要な白金薬物抵抗性機構の一つである。)に対して影響が小さいと想定される。さらに、薬理学的、毒物学的な化学物質及び薬物抵抗性回避の機構の点から同様に重要なことは、以下に記載されるニトリル−、アジド−、及びR−N=N−を含有する白金錯体が、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチンなどよりも実質的に化学反応性が小さいと予測されることである。それゆえ、これらのニトリル−、アジド−、及びR−N=N−を含有する白金錯体は、インビボ(in vivo(生体内))において存在するチオール、ジスルフィド、及びタンパク質/ペプチド;詳細には、腫瘍性の白金薬物抵抗性に関与する硫黄含有生理学的チオール、ジスルフィド、及びペプチド/アミノ酸(グルタチオン、システイン、ホモシステイン、メチオニン、及び他の全ての硫黄含有物及びイミダゾール含有物(例えば、ヒスチジン)、又はアルギニンもしくはリジンのジ−、トリ−及びそれ以上のペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。)との反応が実質的により遅く、それにより、これらの化合物との望ましくない白金−硫黄及び白金−窒素共役を回避する。したがって、これらの新規なニトリル、アジド、及び他の窒素リガンド系白金錯体は、新生な(de novo)及び獲得された腫瘍性のシスプラチン抵抗性を回避して、他の公知の白金薬物に対して自然抵抗性及び獲得抵抗性(natural and acquired resistance)の両方を有する癌細胞を殺傷する可能性を有する。以下に記載される白金錯体は、また、より多量のこの白金種が元々の化学物質によって細胞内に送達される程度まで、白金種の化学反応性の低下を抑制できると考えられる。細胞内DNA付加体の形成に利用可能な改善された白金の送達は、これらの新規な白金種とタンパク質ならびに生理学的チオール及びジスルフィドとの非効果的かつ非特異的な反応の量を実質的に低減することによって調整される。このような反応は、従来の白金錯体の抗腫瘍効果を妨げ得るか又は低減させ得る。
【0008】
シスプラチンの加水分解反応を、以下のスキームIに示す。
【0009】
【化2】

【0010】
中性pH(すなわち、pH7)の脱イオン水中、シスプラチンはモノアクア/モノヒドロキシ白金錯体に加水分解され、この加水分解物は、さらにジアクア錯体に加水分解されることはあまりないようである。しかし、シスプラチンは、無機塩(例えば、硝酸銀など)を用いるクロロリガンドの沈殿反応によって、モノアクア及びジアクア錯体を容易に形成し得る。また、クロロリガンドは、アクア化中間体を経ることなく、求核剤(例えば、窒素及び硫黄電子供与体など)の存在によって置換され得る。
【0011】
シスプラチンは、ヒト血漿中で比較的安定であり、そこでは高濃度のクロリドがシスプラチンのアクア化を妨げる。しかし、いったんシスプラチンが腫瘍細胞に入ると、そこではクロリドの濃度が非常に低いので、シスプラチンの一方の又は双方のクロロリガンドが水で置換されて(上記に示されるように)アクア活性中間体形態を形成し、この中間体形態は、次々にDNAのプリン(すなわち、アデニン及びグアニン)と速やかに反応して、安定な白金−プリン−DNA付加体を形成する。これらのビス−ニトリル白金錯体に関連する一つの制限は、これらのDNA付加体はシスプラチン−DNA付加体ほど安定ではないということである。なぜなら、シスプラチンのアンミン基はDNA構造体との局所的な水素結合に関与してこれらのDNA−白金錯体を安定化させるからである。ビス−ニトリル白金錯体とDNA構造体との間の局所的水素結合の相互作用の欠如が、ビス−ニトリル白金錯体とDNAとの結合親和性を減少させるのかもしれない。したがって、DNA塩基を有するこれらの付加体は、腫瘍性の白金−DNA修復機構に対して、より影響を受け易いかもしれない。それゆえ、DNA塩基と(の結合親和性を増大させて)より安定な複合体を形成し得、かつ腫瘍細胞によって速やかに吸収され得る、これまでに存在しなかった新規な白金錯体が必要とされている。これらの錯体は、シスプラチン及び現在利用可能な化学療法剤のいずれかよりも、化学療法抵抗性腫瘍に対して著しく有効であるかもしれない。
【0012】
(発明の要旨)
本明細書には、白金に共有結合された1つのニトリル置換基、DNA又はRNAの塩基と水素結合を形成可能な1以上の窒素供与体リガンド、及びインビトロ(in vitro)及びインビボ(in vivo)において加水分解されて活性種を形成し得、次いでDNA又はRNAのグアニン塩基又はアデニン塩基と配位錯体を形成し得る脱離基(すなわち、L及びL)を有する新規な白金系錯体が開示される。本明細書に開示されるこれらの新規な白金系錯体中の脱離基の加水分解の反応スキームは、上記のシスプラチンについての反応スキームに類似し、そこでは、脱離基部位での中間体として、OH/OH;OH;及びOHが挙げられる。さらに、本明細書には、DNAと水素結合又は静電結合可能である多数のL及びL(脱離基)置換によって白金原子上のcis(シス)配置におけるR及びRにおいてアジド基、置換アジド基(例えば、R−N=N=N−)、及びR−N=N−基を有する新規な白金系錯体が開示される。
【0013】
ビス−ニトリル白金錯体とは異なり、モノニトリル白金錯体は、アンミン供与体リガンドを保持し、そして白金原子核に近い領域において強力な水素結合力を与える。白金部分とDNA塩基との間の水素結合は、これらの結合親和性を増大させることができ、そして生じた付加体を安定化する。したがって、この安定化効果は、腫瘍性の白金−DNA修復を減少又はさらには排除して、治療指数を増大させることに役立ち得る。これらの白金錯体はまた、ニトリル官能基の親油性の増大に起因して、腫瘍細胞中により容易に輸送されてシスプラチン抵抗性腫瘍細胞による薬物の取り込みを増大させると考えられる。
【0014】
これらの新規な錯体は、そのままの(intact)又は新生DNA又はRNAと白金配位錯体を形成可能であり、それによって合成、転写、又は複製を妨げるか又は実際に停止させるので、抗新生物剤として、及びインビトロ又はインビボにおいてDNA又はRNAの合成を調節するか又は妨げることにおいて有用であるようである。
【0015】
本明細書に開示される新規な白金系錯体としては、L及びLのいずれか一方又は両方が脱離基である構造体が挙げられるがこれに限定されない。この錯体は、細胞内環境において加水分解されて、これらの脱離基の位置で第1のヒドロキシル基を生成し、次いでプロトン化されて水を生成する。これらの脱離基は、この分子を求核置換反応し易くし、細胞内条件下(例えば、グアニン−N7)で求核剤によって直接置換できる。これらの脱離基は、細胞内環境において加水分解されて、これらの脱離基の位置で第1のヒドロキシル基を生成し、次いでプロトン化されて水を生成する。そのように、DNA(又はRNAである可能性もある。)オリゴヌクレオチドのグアニン塩基又はアデニン塩基とのその7位での反応を介して、白金は速やかにそのオリゴヌクレオチドとキレート化され、そしてそのキレート体と他のオリゴヌクレオチドとを架橋可能であり、それにより、さらなるオリゴヌクレオチド鎖伸長を阻害するか又は妨げる。一般に、L及びLは共に脱離基であるべきであるが、本明細書に記載される錯体は、たとえL及びLのうちの一方のみが脱離基である場合であっても、しばしば核酸との複合体(complex)を形成可能である。
【0016】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載する好ましい実施形態は、完全であることを意図するものではなく、開示された正確な形態に本発明を限定することを意図するものでもない。これらの好ましい実施形態は、本発明の原理並びにその適用及び実用的使用を説明することにより、当業者がその教示を最善に理解できるように選択及び記載される。
【0017】
(定義)
全ての定義は、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary、第14版、John Wiley&Sons,Inc.,Publishers(2001)及びAmerican Hospital Formulary Service,Drug Information,American Society of Health−System Pharmacists,Publishers(1999)によって規定された。
【0018】
「骨格」とは、所定の式で表される分子の不変の構造部を意味する。
【0019】
「求核剤」とは、原子核に一対の電子を供与して共有結合を形成するイオン又は分子を意味する;電子を受容する原子核は、求電子剤と呼ばれる。これは、有機化合物における炭素共有結合においてはもとより、例えば、Lewisの概念に従う酸及び塩基の形成においても存在する。
【0020】
「薬学的に許容可能な塩」とは、ヒトへの投与に対して安全であると認められる薬物の塩誘導体を意味する。本発明において、モノニトリル白金錯体は種々の塩を含み、無機塩(例えば、硝酸銀、硫酸銀)及びアルカリ土類金属塩が挙げられるがこれらに限定されない。
【0021】
「フラグメント」、「部分」、又は「置換基」は分子の可変部であり、式中においてR、X、又は他の記号などの可変記号によって示される。置換基は、以下の1以上からなるものであってもよい:
「C−Cアルキル」とは、一般に、x個〜y個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐鎖状脂肪族炭化水素を意味する。例としては、「C−Cアルキル」(「低級アルキル」とも称される。)(全部で6以下の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状炭化水素で構成される。)、及びC−C16アルキル(全部で1〜16個の炭素原子を有する炭化水素で構成される。)などが挙げられる。本願において、用語「アルキル」は、1〜20個の原子を有する直鎖状又は分岐鎖状炭化水素で構成されると定義され、このアルキルは飽和であってもよいし不飽和であってもよく、また、窒素、硫黄、及び酸素などのヘテロ原子を含んでもよい;
「C−Cアルキレン」とは、「x」個〜「y」個の−CH−基で形成される橋架け(bridging)部分を意味する。本発明において、用語「アルキレン」は、その両末端の炭素において2つの他の原子に結合される、全部で1〜6個の炭素原子を有する橋架け炭化水素(−CH−)(ここで、xは1〜6である。)で構成されると定義される;
「C−Cアルケニル又はアルキニル」とは、2つの炭素原子間に少なくとも1つの二重結合(アルケニル)又は三重結合(アルキニル)を有する直鎖状又は分岐鎖状炭化水素を意味する;
「ハロゲン」又は「ハロ」とは、クロロ、フルオロ、ブロモ、又はヨードを意味する;
「アシル」とは、−C(O)−R(ここで、Rは水素、C−Cアルキル、アリール、C−Cアルケニル、C−Cアルキニルなどである。)を意味する;
「アシルオキシ」とは、−O−C(O)−R(ここで、Rは水素、C−Cアルキル、アリールなどである。)を意味する;
「C−Cシクロアルキル」とは、全部でx個〜y個の炭素原子を有する環(単数又は複数)を有する縮合しているか又は縮合していない1以上の環からなる炭化水素環又は環系を意味し、ここで少なくとも1つの環結合は完全に飽和している;
「アリール」とは、一般に、環原子が全て炭素原子からなる縮合しているか又は縮合していない1以上の環、好ましくは1〜3個の環からなる芳香環又は環系を意味する。本発明において、用語「アリール」は、全部で5〜8個の炭素原子からなる環成分を有する縮合しているか又は縮合していない芳香環系(好ましくは全部で1〜3個の環)で構成されると定義される;
「アリールアルキル」とは、アルキル部分(連結鎖)を介して骨格に結合された、上記に定義されるアリール部分を意味する;
「アリールアルケニル」及び「アリールアルキニル」とは、「アリールアルキル」と同様であるが、連結鎖において1以上の二重結合又は三重結合を有するものを意味する;
「アミン」とは、アンモニア(NH)から1以上の水素原子がアルキル基で置換されることによって得られると考えられ得る窒素の有機錯体の一種を意味する。アミンは、1つ、2つ、又は3つの水素原子が置換されているかどうかに応じて、第一級、第二級、又は第三級である。「短鎖アミン」とは、アルキル基が1〜10個の炭素原子を含むものである;
「アンミン」とは、窒素原子が直接金属に結合するような様式におけるアンモニアと金属物質との結合によって形成される配位類似体を意味する。窒素が炭素原子に直接結合しているアミンとは異なることに留意すべきである;
「アジド」とは、特性式R(Nを有する任意の群の錯体を意味する。Rは、ほぼ任意の金属原子、水素原子、ハロゲン原子、アンモニウム基、錯体[CO(NH]、[Hg(CN)M](M=Cu、Zn、Co、Ni)、メチル、フェニル、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、p−ニトロベンジル、硝酸エチルなどの有機基であってもよい。アジド基は、環構造よりもむしろ鎖構造を有する;
「イミン」とは、炭素−窒素二重結合を有する窒素含有錯体の一種(すなわち、R−CH=NH)を意味する;及び
「複素環」とは、縮合されているか又は縮合されていない1以上の環(好ましくは1〜3個の環)の環状部分であって、1つの環の少なくとも1つの原子が炭素原子ではないものを意味する。好ましいヘテロ原子としては、酸素、窒素、及び硫黄、又はこれらの原子の2以上の組み合わせが挙げられる。用語「複素環」としては、フラニル、ピラニル、チオニル、ピロリル、ピロリジニル、プロリニル、ピリジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサチアゾリル、ジチオリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニル、オキサジニル、チアゾリルなどが挙げられる。
【0022】
「置換(された)」とは、あるフラグメント(部分)を、任意の、いくつかの又は全ての水素原子を本明細書中に示されるような部分(または複数の部分)で置換することによって修飾することをいう。水素原子を置換して置換錯体を形成するための置換基としては、ハロ、アルキル、ニトロ、アミノ(N−置換、及びN,Nジ置換アミノも含む。)、スルホニル、ヒドロキシ、アルコキシ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンゾキシ、ベンゾイル、及びトリフルオロメチルが挙げられる。
【0023】
本明細書において使用されるように、「化学療法剤(chemotherapeutic agent)」又は「化学療法剤(chemotherapy agent)」又は「抗新生物剤」とは、新生物の増殖又は転移を低減、予防、緩和、抑制、及び/又は遅延するかあるいは新生物のネクローシスもしくはアポトーシス又は任意の他の機構によって直接的に新生細胞を殺傷する薬剤をいう。化学療法剤としては、例えば、フルロピリミジン;ピリミジンヌクレオシド;プリンヌクレオシド;抗葉酸剤、白金錯体;アントラサイクリン/アントラセンジオン;エピポドフィロトキシン(epipodopodophyllotoxin);カンプトテシン;ホルモン;ホルモン錯体;抗ホルモン;酵素、タンパク質、及び抗体;ビンカアルカロイド;タキサン;抗微小管剤(antimirotubule agents);アルキル化剤;代謝拮抗物質;トポイソメラーゼ阻害剤;抗ウイルス剤;及びその他の細胞毒性及び細胞増殖抑制性薬剤が挙げられる。「化学療法」は、化学療法剤(chemotherapeutic agent)、化学療法剤(chemotherapy agent)、又は抗新生物剤を用いる治療をいう。
【0024】
本明細書において使用されるように、本発明の化合物又は組成物に関して「有効量」又は「薬学的に有効な量」とは、新生物疾患を患う被験体に所望の生物学的、薬理学的、又は治療学的結果をもたらすのに十分な量をいう。その結果とは、予期されたか又は観察された副作用、毒性、障害又は状態の根底にある病態生理学又は病因の低減、予防、緩和、遅延、それを解決するための時間の短縮、その徴候又は症状の緩和であってもよいし、それに対する医学的に有利な効果、又は任意の他の所望される生体系の改変の発揮であってもよい。本発明において、この結果としては、一般に、化学療法に付随する毒性の低減、予防、緩和、発現の遅延、重篤度の減弱、及び/もしくは解決の早さ、又は反転(reversal);治療の頻度及び/又は回数の増加;ならびに/あるいは化学療法の期間の延長が挙げられる。
【0025】
本明細書において使用されるように、用語「低減する(reducing)」には、被験体における新生物又は癌の低減、予防、緩和、発現の遅延、重篤度の減弱、及び/又は解決の早さが含まれ、前記新生物もしくは癌の全てもしくは一部においてさらなる発生もしくはより深刻な形態の発生を予防すること、又は前記被験体において新生物もしくは癌を改善もしくは制御することも含まれる。
【0026】
本明細書において使用されるように、「有害な症状」又は「有害な副作用」とは、患者によって報告される発現又は状態を意味する(例えば、悪心、悪寒、抑うつ、しびれ、刺痛、食欲不振、味覚不全など);一方、「有害な徴候」とは、患者の状態、有害な事象又は疾患の生理学的に観察可能な発現である客観的な所見を意味する(例えば、触知可能な紫斑、斑丘疹、クモ状血管腫、クヴォステク徴候、バビンスキー徴候、トルソー徴候、後弓反張など)。
【0027】
本明細書には、(i)白金に共有結合した1つの(すなわち、モノ)ニトリル置換基;(ii)DNA又はRNAの塩基と水素結合を形成可能な1以上の窒素供与体リガンド、及び(iii)インビボで加水分解されて活性種を形成し得、次いでDNA又はRNAのグアニン塩基又はアデニン塩基と配位錯体を形成可能し得る脱離基を有する新規な白金系錯体が開示される。本明細書に開示されるこれらの新規な白金系錯体における脱離基の加水分解についての反応スキームは、上記に示されるシスプラチンについてのスキーム(このスキームにおいて、脱離基部位での中間体としてOH/OH;OH;及びOHが挙げられる。)と類似する。
【0028】
さらに、本明細書には、L及びL(脱離基)置換によって白金原子上のcis配置のR及びRにおいてアジド基、置換アジド基(例えば、R−N=N=N−)、及びR−N=N−基を有する新規な白金系錯体、ならびにその新規な誘導体が開示される。これらの脱離基としては、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、及びホスファートが挙げられるがこれらに限定されない。R置換としては、アルキル、複素環などが挙げられるがこれらに限定されない。これらの上述の白金系錯体もまた新規であり、DNAと水素結合又は静電結合可能であることにも留意すべきである。
【0029】
ビス−ニトリル白金錯体とは異なり、モノニトリル白金錯体は、アンミン供与体リガンドを保持し、そして白金原子核に近い領域において強力な水素結合力を与える。白金部分とDNA塩基との間の水素結合は、これらの結合親和性を増大させ、そして生じた付加体を安定化する。これらの白金錯体はまた、ニトリル官能基の親油性の増大に起因して、腫瘍細胞中により容易に輸送されると考えられる。
【0030】
これらの新規な錯体は、そのままの(intact)又は新生DNA又はRNAと白金配位錯体を形成可能であり、それによって合成、転写、又は複製を妨げるか又は停止させるので、抗新生物剤として、及びインビトロ又はインビボにおいてDNA又はRNAの合成を調節するか又は妨げることにおいて有用であるようである。
【0031】
本明細書に開示される新規な白金系錯体としては、以下の構造式(例えば、式A、B、及びC)が挙げられるがこれらに限定されない:
【0032】
【化3】

【0033】
ここで、L及びLのいずれか一方又は両方は、細胞内環境において加水分解されて、(i)まずヒドロキシル基がこれらの脱離基の位置で生成され、(ii)次いで水が生成されて、脱離基が不安定なかつ求核置換反応に適応する分子を離れる。そのように、DNA(又はRNAである可能性もある。)オリゴヌクレオチドのグアニン塩基又はアデニン塩基とのその7位での反応を介して、白金は速やかにそのオリゴヌクレオチドとキレート化され、そしてそのキレート体と他のオリゴヌクレオチドとを架橋可能であり、それにより、さらなるオリゴヌクレオチド鎖の伸長を阻害するか又は妨げる。
【0034】
適切なL及びL部分の例としては、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、及びホスファートが挙げられるがこれらに限定されない。一般に、L及びLは共に脱離基であるべきであるが、本明細書に記載される錯体は、たとえL及びLのうちの一方のみが脱離基である場合であっても、しばしば核酸と複合体(complex)を形成可能である。
【0035】
上記に開示される錯体においてR、R、Rを有するN基は、典型的にはキャリアリガンドであり、このキャリアリガンドとしては、第一級、第二級、又は第三級アミン基;ピリジン、ピロール、ピラゾール、又はイミダゾール(ここで、R、R、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アセタート、又は:
【0036】
【化4】

【0037】
(ここで、Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル、又はスルホキシドを含む置換基である。)である。)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
キャリアリガンドは、この錯体において電荷的(又は電気的)に中性であるべきであり、キャリアリガンド及びR基(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアセタート、又は他の適切な官能基)は、DNAとのキレート化を立体的に妨げるほど大きくないのが望ましい。上記に示されるように、キャリアリガンド位置におけるアミン基は、DNA付加体の安定化を助け得る水素結合を形成することができる。
【0039】
本発明において上述の式CのXは、飽和又は不飽和であり得る1〜20個の原子を有する直鎖状又は分岐鎖状炭化水素で構成されると定義されるアルキル鎖であって、窒素、硫黄、及び酸素などのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0040】
及びRは同一又は異なって、F、Cl、Br、I、N、S、又はOR(ここで、ORは、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、又は水などである。)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0041】
既に論じたように、本願において、用語「アルキル」は、1〜20個の原子を有する直鎖状又は分岐鎖状炭化水素で構成されると定義され、このアルキルは飽和であってもよいし不飽和であってもよく、また、窒素、硫黄、及び酸素などのヘテロ原子を含んでもよい。用語「アルキレン」は、その両末端の炭素において2つの他の原子に結合される、全部で1〜6個の炭素原子を有する橋架け(bridging)炭化水素(−CH−)(ここで、xは1〜6である。)で構成されると定義される。用語「アリール」は、全部で5〜8個の炭素原子からなる環成分を有する縮合しているか又は縮合していない芳香環系(好ましくは全部で1〜3個の環)で構成されると定義される。
【0042】
下記のスキームIIは、DNA塩基と配位付加体を形成する、本明細書に開示される新規なモノニトリル系白金錯体を例示する。
【0043】
【化5】

【0044】
上記スキームIIから確認されるように、これらの錯体(1)において、あるアンミンリガンド及びあるニトリルリガンドとの非対称的な性質は、予期される2つの脱離基での加水分解における速度の違いを生じる。前述の反応スキームを参照すると、おそらく、求核ヒドロキシル基が、最初にアンミンリガンドのtrans(トランス)位でクロロと置換してモノヒドロキシ種(7)を形成し、これはさらにプロトン化されてモノアクア種(8)を形成する。モノヒドロキシ及びモノアクア中間体は、すみやかにDNA塩基(すなわち、グアニン又はアデニン)と反応してDNA付加体(12、13)を形成する。次いで、付加体(12)は、さらにモノアクア種(14)に加水分解されて付加体(13)を形成してもよいし、又はDNA塩基と直接反応して付加体(13)を形成してもよい。モノヒドロキシ(7)及びモノアクア(8)はまた、さらにモノヒドロキシ−モノアクア種(9)、ジアクア種(10)、及びジヒドロキシ種(11)に加水分解され得る。生理学的条件下においては、白金モノヒドロキシ種(7)が主に存在し、ジアクア種(10)及びジヒドロキシ種(11)は共に、非常に小さい濃度でのみ存在する。
【0045】
下記の方法I及びIIは、本発明において開示されるようなニトリル官能基を含む新規な白金系錯体の製造に使用できる2つの一般的な合成方法である。方法I及びIIは、利用される合成の基本的な方法、続いて実際の実験の反応条件及び反応体のより詳細な説明を例証する。しかし、方法IIに関する合成手順は実際には実施されなかったが、下記の合成の実験方法論に従うことによって所望の生成物が得られることは十分予想されることに留意すべきである。
【0046】
(方法I)
種々のモノニトリル含有白金錯体を調製するための詳細な手順を、スキームIII及びスキームIVに記載する。置換アンミンハロゲン白金錯体を、加熱反応条件で極性溶媒(例えば、N,N−ジメチルアセトアミド)中においてテトラアルキルアンモニウムハロゲン塩(例えば、テトラエチルアンモニウムクロリド)で処理して、アンミントリクロロプラチナートを生成し、次いで、この生成物をさらにアルカリ又はアルカリ土類金属塩と反応させて、対応する白金酸塩を生成する。
【0047】
続いて、種々の反応条件下における上記塩とアルキル又はアリールニトリルとの反応により、新規なモノニトリル含有白金錯体(1)を得る。モノニトリル錯体を無機塩(例えば、硝酸銀、硫酸銀など)で処理して、使用される化学量論量の試薬に応じて対応するモノアクア又はジアクア白金錯体(3)を生成する。白金錯体(2)は、臭化/ヨウ化アルカリ又はアルカリ土類金属を添加することによって得ることができ、さらに、モノアクア及びジアクア錯体に変換され得る。この反応性モノアクア及びジアクア中間体は、脱離基としてのL及びLを用いて種々のモノニトリル白金錯体(4)を合成するために使用され得る。酸化試薬(例えば、過酸化水素)による錯体(4)の酸化により、軸方向(axial)リガンド(R及びR)を含有するモノニトリル白金(IV)錯体(5)が得られる。上記の全ての白金錯体は、化学療法効果及び抗新生物効果を有すると予測される。
【0048】
【化6】

【0049】
ここで、L、Lは同一又は異なって、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、フラン、チオフラン、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスホナート、アルキルホスホナート、ホスホロチオラート、アルキルホスホロチオラート、ホスホルアミド、アルキル=ホスホルアミド(alkyl phosphoramide)、ホスファート、ホスフィット、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート(alkyl phosphoramidates)、及びホスホルアミダートが挙げられるがこれらに限定されない。
【0050】
方法Iに示された最初の2つの反応を、Cai,L.らによる文献(J.Med.Chem.44:2959−2965(2001))に記載されるように実施した。出発材料としてこれらの2つの反応を利用して、方法Iの残りの反応を設計及び実施した。
【0051】
下記に示される反応において、テトラクロロ白金酸カリウム及びシスプラチン(cis−ジアンミンジクロロ白金)を、シグマ−アルドリッチ社(Sigma−Aldrich Co.)から購入した。全ての錯体の高分解能質量分析(HRMS)を、オハイオ州立大学において質量分析実験室によって測定した。H NMR及び195Pt核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、バイオニューメリック・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテッドにおいてVarian 300分光計によって得た。
【0052】
【化7】

【0053】
(白金錯体合成の具体例)
I. EtN[PtCl(NH)]アンミントリクロロ白金酸テトラエチルアンモニウム;K[PtCl(NH)]アンミントリクロロ白金酸カリウムの調製
シスプラチン(8.1g)及びテトラエチルアンモニウムクロリド(5.64g)を300mLのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した混合物を、アルゴンでバブリングしながら100℃で7時間加熱した。得られた暗橙色の溶液を最終体積が約50mLになるまで濃縮した。この混合物にヘキサンとエチルアセタートとの溶液(400mL;1:1v/v)を加えた。得られた懸濁液を冷凍庫(−5℃)中に14時間置いた。その後、淡黄白色の溶液をデカンテーションし、橙色油を100mLの脱イオン水で抽出した。黄色の沈殿物を濾過し、濾液を凍結乾燥して、純粋なアンミントリクロロ白金酸テトラエチルアンモニウムの黄色固体を得た。上記の白金酸塩を100mLの脱イオン水に溶解し、酸交換樹脂をその溶液に加えた。この混合物を30分間攪拌したのち、樹脂を濾過した。濾液を10mLまで濃縮し、10mLの飽和KCl溶液を加えた。得られた溶液を冷蔵庫(2℃)に16時間置き、所望のアンミントリクロロ白金酸カリウム生成物(橙色固体、2.62g;41%)を得た。
【0054】
195Pt NMR δ−1880ppm。KPtNHClのHRMSによる予測分子量:394.824736;測定値:394.824202。
【0055】
II. cis−アンミンベンゾニトリルジクロロ白金(II);CClPt;PtCl(NH)(CCN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を4mLの脱イオン水に溶解した溶液に、0.2mLのベンゾニトリルを加えた。得られた混合物を12時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して粗生成物を得た。テトラヒドロフラン及びアセトンからの再結晶により、純粋な生成物(黄白色固体、25mg;17%)を得た。
【0056】
H NMR(アセトン−d中):δ:7.89(m,2H)、7.80(m,1H)、7.63(m,2H)、4.08(br,H)。195Pt NMR δ−2244ppm。CClPtNaのHRMSによる予測分子量:407.9604361amu(原子質量単位);測定値:407.96028amu。
【0057】
III. cis−アンミンジクロロ(3−メトキシベンゾニトリル)白金(II);C10ClOPt;PtCl(NH)(3−CHOCCN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を3mLの脱イオン水に溶解した溶液に、65μLの3−メトキシベンゾニトリルを加えた。得られた混合物を15時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して粗生成物を得た。この粗成生物を、さらに再結晶により精製して、所望の純粋な生成物(黄白色固体、25mg;17%)を得た。
【0058】
H NMR(アセトン−d中):δ:7.77(d,J=8.1Hz,1H)、7.51(m,2H)、7.37(m,1H)、4.10(br,3H)、3.93(s,3H)。195Pt NMR δ−2262ppm。C10ClOPtNaのHRMSによる予測分子量:437.971001amu;測定値:437.97080amu。
【0059】
IV. cis−アンミンジクロロ(3−メトキシプロピオニトリル)白金(II);C10ClOPt;PtCl(NH)(3−CHOCHCHCN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を4mLの脱イオン水に溶解した溶液に、0.3mLの3−メトキシプロピオニトリルを加えた。得られた混合物を24時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して粗生成物を得た。テトラヒドロフラン及びアセトンからの再結晶により、純粋な生成物(黄白色固体、38mg;29%)を得た。
【0060】
H NMR(アセトン−d中):δ:3.25(t,2H)、3.68(t,2H)、3.94(br,3H)。195Pt NMR δ−2248ppm。C10ClOPtNaのHRMSによる予測分子量:389.97100amu;測定値:389.97047amu。
【0061】
V. cis−アンミンジクロロ(3−エトキシベンゾニトリル)白金(II);C12ClOPt;PtCl(NH)(3−EtOCCN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を5mLの脱イオン水に溶解した溶液に、0.2mLの3−エトキシベンゾニトリルを加えた。得られた混合物を24時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して粗生成物を得た。テトラヒドロフラン及びアセトンからの再結晶により、純粋な生成物(黄白色固体、12mg)を得た。
【0062】
H NMR(DMF−d中):δ:7.96(m,1H)、7.52(m,2H)、7.38(m,1H)、4.62(br,3H)、4.15(q,2H)、1.32(t,3H)。195Pt NMR δ−2250ppm。C12ClOPtNaのHRMSによる予測分子量:451.986667amu;測定値:451.98697amu。
【0063】
VI. cis−アンミンシクロヘキサンカルボニトリルジクロロ白金(II);C14ClPt;PtCl(NH)(C11CN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を4mLの脱イオン水に溶解した溶液に、0.1mLのシクロヘキサンカルボニトリルを加えた。得られた混合物を12時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して粗生成物を得た。テトラヒドロフラン及びアセトンからの再結晶により、純粋な生成物(黄白色固体、50mg;35%)を得た。
【0064】
H NMR(DMF−d中):δ:4.57(br,3H)、3.36(m,1H)、1.88(m,2H)、1.70(m,3H)、1.46(m,3H)。195Pt NMR δ−2244ppm。C14ClPtNaのHRMSによる予測分子量:414.007386amu;測定値:414.00786amu。
【0065】
VII. cis−アンミンシクロプロピルシアニドジクロロ白金(II);CClPt;PtCl(NH)(CCN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を4mLの脱イオン水に溶解した溶液に、0.4mLのシクロプロピルシアニドを加えた。得られた混合物を24時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して黄色生成物を得た。テトラヒドロフラン及びアセトンからの再結晶により、所望の純粋な生成物を得た。
【0066】
H NMR(アセトン−d中):δ:3.87(br,3H)、1.93(m,1H)、1.20(m,4H)。195Pt NMR δ−2238ppm。CClPtNaのHRMSによる予測分子量:371.960436amu;測定値:371.96202amu。
【0067】
VIII. cis−アンミンジクロロ(3−フロニトリル)白金(II);CClOPt;PtCl(NH)(COCN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を5mLの脱イオン水に溶解した溶液に、3−フロニトリル(47mg)を加えた。得られた混合物を36時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して黄色生成物を得た。テトラヒドロフラン及びアセトンからの再結晶により、所望の純粋な生成物を得た。
【0068】
H NMR(アセトン−d中):δ:8.61(m,1H)、7.85(m,1H)、6.96(m,1H)、4.05(br,3H)。195Pt NMR δ−2239ppm。CClPtNaのHRMSによる予測分子量:397.939701amu;測定値:397.93959amu。
【0069】
IX. cis−アンミンジクロロ(2−メトキシベンゾニトリル)白金(II);C10ClOPt;PtCl(NH)(2−CHOCCN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を4mLの脱イオン水に溶解した溶液に、0.3mLの2−メトキシベンゾニトリルを加えた。得られた混合物を24時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して粗生成物を得た。テトラヒドロフラン及びアセトンからの再結晶により、所望の純粋な生成物(黄白色固体、15mg)を得た。
【0070】
H NMR(アセトン−d中):δ:7.75(m,2H)、7.25(d,1H)、7.13(t,1H)、4.01(br,3H)、3.96(s,3H)。195Pt NMR δ−2241ppm。C10ClOPtNaのHRMSによる予測分子量:437.971001amu;測定値:437.966919amu。
【0071】
X. cis−アンミンシクロペンタンカルボニトリルジクロロ白金(II);C12ClPt;PtCl(NH)(CCN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を4mLの脱イオン水に溶解した溶液に、0.3mLのシクロペンタンカルボニトリルを加えた。得られた混合物を24時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して粗生成物を得た。テトラヒドロフラン及びアセトンからの再結晶により、純粋な生成物(黄白色固体、20mg)を得た。
【0072】
H NMR(アセトン−d中):δ:3.96(br,3H)、3.31(m,1H)、1.70(m,8H)。195Pt NMR δ−2227ppm。C12ClPtNaのHRMSによる予測分子量:399.991736amu;測定値:399.989054amu。
【0073】
XI. cis−アンミンジクロロ(2−メトキシフェニルアセトニトリル)白金(II);C12ClOPt;PtCl(NH)(2−CHOCCHCN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を6mLの脱イオン水に溶解した溶液に、2−メトキシフェニルアセトニトリル(208mg)を加えた。得られた混合物を24時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して粗生成物を得た。その粗生成物をテトラヒドロフラン及びアセトンから再結晶して、所望の純粋な生成物(黄白色固体、10mg)を得た。
【0074】
H NMR(アセトン−d中):δ:7.30(m,2H)、7.00(t,1H)、6.92(t,1H)、3.83(s,3H)、3.71(s,2H)。195Pt NMR δ−2250ppm。C12ClOPtNaのHRMSによる予測分子量:451.986651amu;測定値:451.987617amu。
【0075】
XII. cis−アンミンジクロロ(4−ヒドロキシメチルベンゾニトリル)白金(II);C10ClOPt;PtCl(NH)(4−OHCHCN)の調製
K[PtNHCl](150mg)を8mLの脱イオン水に溶解した溶液に、4−ヒドロキシメチルベンゾニトリル(200mg)を加えた。得られた混合物を24時間加熱攪拌した。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水及びエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して粗生成物を得た。その粗生成物をテトラヒドロフラン及びアセトンから再結晶して、所望の純粋な生成物(黄白色固体、30mg)を得た。
【0076】
H NMR(アセトン−d中):δ:7.84(d,2H)、7.61(d,2H)、4.73(s,2H)、4.02(br,3H)。195Pt NMR δ−2254ppm。C10ClOPtNaのHRMSによる予測分子量:437.971001amu;測定値:437.96984amu。
【0077】
XIII. 提案されるcis−アンミンクロロヨードシクロヘキサンカルボニトリル白金(II)(cis−amminechloroidocyclohexanecarbonitrileplatinum(II))の調製方法
K[PtNHCl](150mg)を4mLの脱イオン水に溶解し、0℃においてこの溶液にヨウ化ナトリウム(1.1当量)を加える。混合物を約15分間攪拌し、シクロヘキサンカルボニトリル(1.1当量)をこの混合物に加える。次いで、得られる混合物を約2時間攪拌する。黄白色沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄後、ジエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥して粗生成物を得る。テトラヒドロフラン及びアセトンからの再結晶により、純粋な生成物を得る。
【0078】
XIV. 提案されるcis−アンミンジヨードシクロヘキサンカルボニトリル白金(II)の調製方法
5mLの脱イオン水中のPtCl(NH)(C11CN)(100mg)に、2当量の硫酸銀を加える。次いで、この反応混合物を約24時間攪拌し、沈殿物を濾過する。濾液(3)に1N 臭化水素酸水溶液(5mL)を加え、得られる混合物を約2時間攪拌する。沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄後、ジエチルエーテルで洗浄して、所望の黄色生成物を得る。
【0079】
XV. 提案されるcis−アンミンジアセタトシクロヘキサンカルボニトリル白金(II)の調製方法
5mLの脱イオン水中のPtCl(NH)(C11CN)(100mg)に、2当量の硫酸銀を加える。この反応混合物を約24時間攪拌し、沈殿物を濾過する。濾液(3)に酢酸ナトリウム(2当量)を加え、得られる混合物を約24時間攪拌する。次いで、沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄後、ジエチルエーテルで洗浄して、所望の黄色生成物を得る。
【0080】
XVI. 提案されるジアセタトジクロロアンミンシクロヘキサンカルボニトリル白金の調製方法
1.5mLの酢酸中のPtCl(NH)(C11CN)(100mg)に、一部のものとして(in one aliquot)9当量の無水酢酸を加える。反応混合物を数分間攪拌し、この混合物に1.5当量の過酸化水素水溶液(30%)を加える。次いで、この混合物を約1時間攪拌する。メタノールをゆっくりと加えて反応を終了させる。沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄後、ジエチルエーテルで洗浄して、所望の黄色生成物を得る。
【0081】
XVII. 提案されるジクロロジヒドロキシアンミンシクロヘキサンカルボニトリル白金(IV)の調製方法
実施例IVで得た前記錯体を15%の塩酸に溶解した溶液及び塩化メチレンの混合物を45分間攪拌する。その後、水溶液を分離し、pH7.0に中和する。沈殿物を濾過し、脱イオン水及びジエチルエーテルで洗浄して、所望の白金(IV)化合物を黄色生成物として得る。
【0082】
XVIII. 提案されるシクロヘキサンカルボニトリルトリクロロ白金(II)の調製方法
(N(CH[PtCl]又はK[PtCl]を5mLの脱イオン水に溶解した溶液に、シクロヘキサンカルボニトリル(1mmol)を加える。次いで、この反応混合物を約10日間攪拌する。固形物を濾過し、濾液を乾燥するまで蒸発させる。残渣に少量のアセトンを加え、固形物を濾過する。次いで、この濾液を蒸発させて所望の生成物を得る。
【0083】
XIX. 提案されるcis−ジクロロメチルアンミンシクロヘキサンカルボニトリル白金(II)の調製方法
シクロヘキサンカルボニトリル トリクロロ白金(II)を脱イオン水に溶解した溶液に、メタノールに溶解させたメチルアミン(2当量)を加える。次いで、室温でこの反応混合物を約24時間攪拌し、黄色沈殿物を濾過し、水及びアセトンで洗浄し、高真空下で乾燥して所望の生成物を得る。
【0084】
XX. 提案されるcis−エチルアンミンジクロロシクロヘキサンカルボニトリル白金(II)の調製方法
シクロヘキサンカルボニトリル トリクロロ白金(II)を脱イオン水に溶解した溶液に、メタノールに溶解させたエチルアミン(2当量)を加える。次いで、室温でこの反応混合物を約24時間攪拌し、黄色沈殿物を濾過し、水及びアセトンで洗浄し、高真空下で乾燥して所望の生成物を得る。
【0085】
インビトロにおける実験結果の具体例
実験によって、前記の2つの錯体及びシスプラチンの癌細胞系(A27880/WT)に対する細胞毒性を比較した。これらの錯体の化学式α及びβ(及びシスプラチンの化学式)は下記の通りである。
【0086】
【化8】

【0087】
これらの実験では、細胞を異なる濃度の各薬剤とともに1時間および2時間インキュベートした後、細胞生存をSRB(スルホローダミンB)アッセイによって測定した。表1にこれらの実験結果を示す。表中「EC50」は50%有効濃度(すなわち、IC50)を表す。EC50の値について、本発明に開示される新規なモノニトリル含有白金錯体がシスプラチンよりも低いことから、これらの錯体が細胞傷害性薬剤として、より強力かつ有効であることが示唆されることが確認できる。
【0088】
【表1】

【0089】
(投薬及び投与)
上記の実験結果から適切な治療的投薬を決定するための推定基準が得られる。通常の動物実験も用量(投与量)範囲のパラメータを明確にする推定基準(すなわち、典型的には、ヒトの被験体及び動物の体重比較に基づく基準)となるであろう。ヒトの臨床研究は、さらに最適な投薬を、慣用の用量(投与量)範囲の研究、又は推定された好ましい用量(投与量)に基づく単回投与試験によって明確にできるであろう。
【0090】
本明細書に記載された化合物は、全身に有効性をもたらす任意の適切な方法によって投与されてもよい。このような方法としては、静脈内投与、非経口的投与、及び経口投与が挙げられるがこれらに限定されない。適切な処方物及び賦形剤は周知であり、シスプラチン投与に用いられるものと同じ又は同様であると考えられ、標準的な文献(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Company,Easton,PA,(2004)が挙げられる。)に詳しく記述されている。
【0091】
本明細書において参照又は記載された全ての特許、出版物、科学論文、ウェブ・サイト、ならびに他の文献及び資料は、本発明の属する分野における当業者の技術レベルを示し、このような参照された文献及び資料の各々は、あたかも、言及することによりその全体がそれぞれ組み入れられるか又はその全体が本明細書に示されている場合と同じ程度で参照されることにより組み入れられる。出願人らは、いかなるこのような特許、出版物、科学論文、ウェブ・サイト、電子的に入手可能な情報、及び他の参照される資料又は文献からのいかなる及び全ての資料及び情報を本明細書に物理的に組み入れる権利を留保する。
【0092】
本特許の記述説明部分は全ての特許請求の範囲を包含する。さらに、全ての特許請求の範囲は、全ての当初の特許請求の範囲ならびに任意の及び全ての優先権書類からの全ての特許請求の範囲を含み、言及することにより、本明細書の記述説明部分にその全体が組み入れられる。また、出願人らは任意の及び全てのそのような特許請求の範囲を本出願の記述説明部分または任意の他の部分に物理的に組み入れる権利を留保する。それゆえ、例えば、いかなる場合であっても、本特許は、請求項の表現が本特許の記述部分中に厳密にその通りの言葉で記載されていないという主張にもとづいて、根拠なく、その請求項に対する記述部分が与えられていないとは解釈されない。
【0093】
特許請求の範囲は法律に従って解釈される。しかし、任意の特許請求の範囲又はその一部の解釈が容易である又は難解であるという主張又は認識にもかかわらず、特許をもたらす出願(単数又は複数)の手続の間に任意の特許請求の範囲又はその一部を修正又は補正することは、いかなる場合であっても、先行技術の一部を成さない本特許の任意の及び全ての均等物に対する権利が放棄されたと解釈されない。
【0094】
本明細書に開示された特徴の全ては、任意の組み合わせで組み合わされてもよい。その結果、別に述べない限り、開示された特徴はそれぞれ、包括的な一連の均等物又は同様の特徴の単なる例でしかない。
【0095】
本発明はその詳細な説明に関連して記載されているが、前述の詳細な説明は説明を意図するものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定されるということが理解されるべきである。それゆえ、本発明の具体的な実施形態は、説明を目的として本明細書に記載されてはいるが、種々の修正形態が本発明の精神及び範囲から逸脱することなくなされ得ることは、前述から理解されるであろう。他の態様、効果、及び修正形態は上記の特許請求の範囲の範囲内にあり、本発明は添付の特許請求の範囲による場合以外は限定されない。
【0096】
本明細書に記載された具体的な方法及び組成物は好ましい実施形態の代表例であり模範例であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。他の課題、態様、及び実施形態は本明細書を考慮することにより当業者に想起されるものであり、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神に包含される。本明細書に開示された本発明に対する種々の置換及び修正形態は本発明の範囲及び精神から逸脱することなくなされることは当業者には容易に理解される。本明細書に説明的に記載された本発明は、本質的なものとして本明細書に詳細に開示されていない、任意の要素(単数又は複数)又は限定(単数又は複数)がない場合において適切に実施されてもよい。それによって、例えば、本明細書中の各例、本発明の実施形態又は実施例において、用語「構成する」、「含む」、「含有する」などは、限定されることなく広く解釈されるべきである。本明細書に説明的に記載された方法及び処理は、異なる工程順で適切に実施されてもよく、本明細書又は特許請求の範囲に示される工程順に必ずしも限定されない。
【0097】
使用されている用語及び表現は、限定用語ではなく記述用語として用いられ、このような用語及び表現の使用には、示された及び記載された特徴及びその一部の任意の均等物を除外する意図はないが、種々の修正形態が、請求される本発明の範囲内で可能であることが認められる。それゆえ、本発明は種々の実施形態及び/又は好ましい実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されてはいるが、本明細書に開示された概念の任意の及び全ての修正形態及び変更が当業者によってなされてもよく、そのような修正形態及び変更は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内にあることが理解される。
【0098】
本発明は、本明細書中に広く一般的に記載されている。包括的な開示の範囲内にある狭義の種及びやや包括的な分類も、各々本発明の一部をなす。任意の内容をその種(genus)から除くという条件又は消極的な限定による本発明の包括的な記載も含まれる。ただし、削除されたものが本明細書中に詳細に列挙されているか否かには無関係である。
【0099】
文脈において特に明らかに規定されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」には複数形も含まれ、表現「X及び/又はY」は、「X」又は「Y」、又は「X」及び「Y」の両方を意味し、また、名詞に続く文字「s」はその名詞の複数形及び単数形の両方を表すことも理解されるべきである。さらに、本発明の特徴又は様態がマーカッシュ群の形式で記載されるところでは、本発明が包含し、それによってマーカッシュ群の任意の個々の要素及び任意の下位概念の要素の形式で記載され、出願人らは、マーカッシュ群の任意の個々の要素又は任意の下位概念の要素に特に言及するように出願又は特許請求の範囲を改訂する権利を留保するということを意図しており、このことは、当業者には明らかである。
【0100】
他の実施形態は上記の請求の範囲の範疇にある。本特許は、本明細書に詳細に及び/又は明確に開示された具体的な例又は実施形態又は方法に限定されると解釈されるものではない。いかなる場合であっても、本特許は、米国特許商標局のいかなる審査官又はいかなる関係者又は当局員による見解によって限定されて解釈されない。ただし、出願人らによる応答書面にこのような見解が具体的に及び無制限に又は無条件にはっきりと採用された場合には、その限りではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の置換基が結合した白金錯体:
(i)ニトリル含有基;
(ii)第一級、第二級もしくは第三級アミン、ピリジン、ピロール、ピラゾール、又はイミダゾールからなる群から選択され、かつDNA又はRNAの塩基と水素結合を形成可能なキャリアリガンド;及び
(iii)水又は水酸化物イオンで置換されて活性種を形成し得る少なくとも1つの脱離基。
【請求項2】
脱離基がインビボにおいてアクア化種(aquated species)で置換され、それによって生じた錯体が、グアニン塩基又はアデニン塩基においてDNA又はRNAと複合体を形成し得る請求項1記載の錯体。
【請求項3】
脱離基として、カルボキシラート、アルコキシル、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスファート、カルボニル、ホスフィット、ホスフィド、又はホスフィンからなる群から選択される一つの脱離基が存在する請求項1記載の錯体。
【請求項4】
脱離基として、同一の又は異なる2つの脱離基が存在し、各脱離基が、カルボキシラート、アルコキシル、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスファート、ホスフィット、ホスフィド、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート、又はホスホルアミダートからなる群から選択される一種である請求項1記載の錯体。
【請求項5】
活性種が、同一又は異なって、ヒドロキシル、アコ又はOH/OHである請求項4記載の錯体。
【請求項6】
ニトリル含有基が、錯体とDNAとのキレート化を妨げるほど大きくない請求項1記載の錯体。
【請求項7】
キャリアリガンドが錯体において電荷的に中性であり、かつ錯体とDNAとのキレート化を妨げるほど大きくない請求項1又は6記載の錯体。
【請求項8】
キャリアリガンドがRNとして表され、Rがアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アセタート基、又は
【化1】

(ここで、Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル、又はスルホキシドからなる群から選択される置換基である。)
からなる群から選択される請求項1記載の錯体。
【請求項9】
ニトリル含有基が、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、及びアセタート基からなる群から選択される請求項6記載の錯体。
【請求項10】
キャリアリガンドが、DNA又はRNAの塩基と水素結合を形成可能である請求項1記載の化合物。
【請求項11】
脱離基の置換の後、生成した化合物が、グアニン塩基又はアデニン塩基においてDNA又はRNAと複合体を形成し得る請求項1記載の化合物。
【請求項12】
生成した化合物が、相補DNA鎖を、そのプリン塩基において架橋し得る請求項11記載の化合物。
【請求項13】
下記構造式を有する白金錯体。
【化2】

[式中、(i)L、L、又はL及びLの両方は、水又は水酸化物イオンで置換されて活性種を形成可能な脱離基であり;
(ii)RNは、第一級、第二級もしくは第三級アミン、ピリジン、ピロール、ピラゾール、又はイミダゾールからなる群から選択され;Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、芳香族、アセタート、又は
【化3】

(ここで、Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル、又はスルホキシドからなる群から選択される置換基である。)
からなる群から選択され;かつ
(iii)Rは、アルキル、アルキル、シクロアルキル、アリール、もしくはアセタート、又は錯体とDNAとのキレート化を空間的に又は立体的に妨げるほど大きくない他の官能基からなる群から選択される。]
【請求項14】
がHであり、かつRがhex−シクロアルキル又はアリールメトキシである請求項13記載の化合物。
【請求項15】
がHであり、かつRがメトキシベンゾである請求項13記載の化合物。
【請求項16】
がHであり、かつRがメトキシ−プロピオである請求項13記載の化合物。
【請求項17】
がHであり、かつRがエトキシベンゾである請求項13記載の化合物。
【請求項18】
がHであり、かつRがシクロプロピルシアノである請求項13記載の化合物。
【請求項19】
がHであり、かつRがフロである請求項13記載の化合物。
【請求項20】
がHであり、かつRが2−メトキシ−ベンゾである請求項13記載の化合物。
【請求項21】
がHであり、かつRがシクロペンタンである請求項13記載の化合物。
【請求項22】
がHであり、かつRがメトキシ−フェニルである請求項13記載の化合物。
【請求項23】
がHであり、かつRがヒドロキシ−メチルベンゼンである請求項13記載の化合物。
【請求項24】
がHであり、かつRがシクロペンタンカルボである請求項13記載の化合物。
【請求項25】
がHであり、かつRがシクロヘキサンカルボである請求項13記載の化合物。
【請求項26】
がHであり、かつRが2−メトキシフェニルアセトである請求項13記載の化合物。
【請求項27】
がHであり、かつRが4−ヒドロキシメチルベンゾである請求項13記載の化合物。
【請求項28】
シクロヘキサンカルボニトリル トリクロロ白金化合物。
【請求項29】
cis−ジクロロメチルアンミンシクロヘキサンカルボニトリル白金化合物。
【請求項30】
cis−エチルアンミンジクロロシクロヘキサンカルボニトリル白金化合物。
【請求項31】
下記式の化合物。
【化4】

[式中、L、L、又はL及びLの両方は、水、水酸化物イオン、又は他の求核剤によって置換可能であり;
Nは、第一級、第二級もしくは第三級アミン、ピリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾールからなる群から選択され;Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アセタート、又は
【化5】

(ここで、Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル、又はスルホキシドからなる群から選択される置換基である。)
からなる群から選択され;かつ
Xは、飽和又は不飽和であり得る1〜20個の原子を有するアルキル基又はアルキル鎖である。]
【請求項32】
下記式の化合物。
【化6】

[式中、L、L、又はL及びLの両方は、水、水酸化物イオン、又は他の求核剤によって置換可能であり;
Nは、第一級、第二級もしくは第三級アミン、ピリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾールからなる群から選択され、R、R及びRは同一又は異なって、アルキル、シクロアルキル、アリール、アセタート、又は
【化7】

(ここで、Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル、又はスルホキシドからなる群から選択される置換基である。)
からなる群から選択され;かつ
Xは、飽和又は不飽和であり得る1〜20個の原子を有するアルキル基又はアルキル鎖である。]
【請求項33】
1〜20個の原子を有するアルキル鎖が、窒素、硫黄、及び酸素を1以上含む請求項32記載の化合物。
【請求項34】
又はLが同一又は異なって、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、フラン、チオフラン、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスホナート、アルキルホスホナート、ホスホロチオラート、アルキルホスホロチオラート、ホスホルアミド、アルキル=ホスホルアミド、ホスファート、ホスフィット、ホスフィド、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート、及びホスホルアミダートからなる群から選択される請求項13、31、又は32の何れか一項に記載の化合物。
【請求項35】
活性種が、ヒドロキシル、アコ、又はOH/OHである請求項13、31、又は32の何れか一項に記載の化合物。
【請求項36】
白金で構成される化合物であって、
(i)ニトリル含有基が結合されており;
(ii)ヌクレオチドの1つのグアニン塩基又はアデニン塩基が水素結合されており;
(iii)ヒドロキシル基、アコ基、もしくはOH/OH、又はカルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、フラン、チオフラン、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスホナート、アルキルホスホナート、ホスホロチオラート、アルキルホスホロチオラート、ホスホルアミド、アルキル=ホスホルアミド、ホスファート、ホスフィット、ホスフィド、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート、及びホスホルアミダートからなる群から選択される脱離基が結合されており;かつ
(iv)第一級、第二級もしくは第三級アミン、ピリジン、ピロール、ピラゾール、又はイミダゾールからなる群から選択されるキャリアリガンドが結合されている、化合物。
【請求項37】
白金で構成される化合物であって、
(i)ニトリル含有基が結合されており;
(ii)ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの2つのグアニン塩基又はアデニン塩基が水素結合されており;かつ
(iii)第一級、第二級もしくは第三級アミン、ピリジン、ピロール、ピラゾール、又はイミダゾールからなる群から選択されるキャリアリガンドが結合されている、化合物。
【請求項38】
以下の構造を含む化合物。
【化8】

[式中、(i)Clは、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、アコ、OH/OH基、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、フラン、チオフラン、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスホナート、アルキルホスホナート、ホスホロチオラート、アルキルホスホロチオラート、ホスホルアミド、アルキル=ホスホルアミド、ホスファート、ホスフィット、ホスフィド、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート、及びホスホルアミダートからなる群から選択され;N7(G/A)は、ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドのグアニン塩基又はアデニン塩基の7位に対する結合を示し;
(ii)RNは、第一級、第二級もしくは第三級アミン、又はピリジンであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、芳香族、アセタート、又は
【化9】

(ここで、
(iii)Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル、スルホキシドからなる群から選択される置換基である。)
からなる群から選択され;かつ
(iv)RCNはニトリルであって、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアセタートである。]
【請求項39】
以下の構造13又は14の化合物。
【化10】

[式中、(i)N7(G/A)は、ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドのグアニン塩基又はアデニン塩基の7位に対する結合を示し;
(ii)RNは、第一級、第二級もしくは第三級アミン、又はピリジンであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、芳香族、アセタート、又は
【化11】

(ここで、(iii)Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル、又はスルホキシドからなる群から選択される置換基である。)
からなる群から選択され;かつ
(iv)RCNはニトリルであり、Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアセタートである。]
【請求項40】
以下の構造:
【化12】

[式中、(i)RCNはニトリルであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアセタートからなる群から選択され;Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアセタートであり;かつL及びLは同一又は異なって、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、フラン、チオフラン、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスホナート、アルキルホスホナート、ホスホロチオラート、アルキルホスホロチオラート、ホスホルアミド、アルキル=ホスホルアミド、ホスファート、ホスフィット、ホスフィド、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート、及びホスホルアミダートからなる群から選択され;
(ii)RNは、第一級、第二級もしくは第三級アミン、又はピリジンであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、芳香族、アセタート、又は
【化13】

(ここで、(iii)Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル基、又はスルホキシド基からなる群から選択される置換基である。)
からなる群から選択される。]
を有する化合物を製造する方法であって、
(a)EtN[RNPtCl]又はK[RNPtCl]とRCNニトリルとを反応させる工程[ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアセタートであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アセタート、又は
【化14】

(ここで、Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル、又はスルホキシドを含む置換基である。)];
(b)工程(a)の生成物とAgNO又はAgSOとを反応させる工程;及び
(c)工程(b)の生成物とL及びLとを反応させる工程(ここで、L及びLは同一又は異なって、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、フラン、チオフラン、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスホナート、アルキルホスホナート、ホスホロチオラート、アルキルホスホロチオラート、ホスホルアミド、アルキル=ホスホルアミド、ホスファート、ホスフィット、ホスフィド、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート、及びホスホルアミダートからなる群から選択される。)
を含む、方法。
【請求項41】
工程(a)が、反応混合物においてNaIを含む請求項40記載の方法。
【請求項42】
さらに、工程(c)の生成物とR及びRとを反応させる工程[ここで、R及びRは同一又は異なって、F、Cl、Br、I、N、S、又はOR(ここで、ORは、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、又は水である。)からなる群から選択される。]を含む請求項40又は41記載の方法。
【請求項43】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRがベンゼンである請求項40又は41記載の方法。
【請求項44】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRがメトキシベンゾである請求項40又は41記載の方法。
【請求項45】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRがメトキシ−プロピオである請求項40又は41記載の方法。
【請求項46】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRがエトキシベンゾである請求項40又は41記載の方法。
【請求項47】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRがシクロヘキサンである請求項40又は41記載の方法。
【請求項48】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRがシクロプロピルシアノである請求項40又は41記載の方法。
【請求項49】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRがフロである請求項40又は41記載の方法。
【請求項50】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRが2−メトキシ−ベンゾである請求項40又は41記載の方法。
【請求項51】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRがシクロペンタンカルボである請求項40又は41記載の方法。
【請求項52】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRが2−メトキシフェニルアセトである請求項40又は41記載の方法。
【請求項53】
及びLがクロリドであり、Rが水素であり、かつRが4−ヒドロキシメチルベンゾである請求項40又は41記載の方法。
【請求項54】
以下の構造:
【化15】

[式中、(i)RCNはニトリルであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアセタートであり;Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアセタートであり;かつL及びLは同一又は異なって、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、フラン、チオフラン、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスホナート、アルキルホスホナート、ホスホロチオラート、アルキルホスホロチオラート、ホスホルアミド、アルキル=ホスホルアミド、ホスファート、ホスフィット、ホスフィド、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート、及びホスホルアミダートからなる群から選択され;
(ii)RNは、第一級、第二級もしくは第三級アミン、又はピリジンであり、Rは、アルキル、シクロアルキル、芳香族、アセタート、又は
【化16】

(ここで、Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル、又はスルホキシドからなる群から選択される置換基である。)]
を有する化合物を製造する方法であって、
(a)(MeN)[Pt(L及び/又はL]又はK[Pt(L及び/又はL]とニトリルRCNとを反応させる工程(ここで、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアセタートであり;かつL及びLは同一又は異なって、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、フラン、チオフラン、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスホナート、アルキルホスホナート、ホスホロチオラート、アルキルホスホロチオラート、ホスホルアミド、アルキル=ホスホルアミド、ホスファート、ホスフィット、ホスフィド、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート、及びホスホルアミダートからなる群から選択される。);及び
(b)工程(a)の生成物とRNとを反応させる工程(ここで、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアセタートである。)
を含む、方法。
【請求項55】
(i)白金に共有結合した1つのニトリル官能基;
(ii)少なくとも1つの窒素含有リガンド;及び
(iii)ヒドロキシル又は他の求核基で置換され得る少なくとも1つの脱離基
で構成される白金錯体であって、
癌細胞系A27880/WTに対するスルホローダミンB細胞毒性アッセイにおいて、同アッセイ及びアッセイ条件におけるシスプラチンのEC50よりも小さいEC50を与え得る白金錯体。
【請求項56】
1時間曝露した後、EC50が7.5μM以下である請求項55記載の白金錯体。
【請求項57】
2時間曝露した後、EC50が5μM以下である請求項55記載の白金錯体。
【請求項58】
窒素含有リガンドが、DNA又はRNAの塩基と水素結合を形成可能である請求項55記載の白金錯体。
【請求項59】
脱離基が、DNA又はRNAの相補鎖においてプリンを架橋し得る請求項55記載の白金錯体。
【請求項60】
窒素含有リガンドが、第一級、第二級もしくは第三級アミン、ピリジン、ピロール、ピラゾール、又はイミダゾールからなる群から選択され、ここで、窒素はRNとして表すことができ;Rが、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アセタート、又は
【化17】

(ここで、Z及びZは同一又は異なって、O、N、S、NH、スルホニル、又はスルホキシドからなる群から選択される置換基である。)
である請求項55記載の白金錯体。
【請求項61】
脱離基が、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、フラン、チオフラン、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスホナート、アルキルホスホナート、ホスホロチオラート、アルキルホスホロチオラート、ホスホルアミド、アルキル=ホスホルアミド、ホスファート、ホスフィット、ホスフィド、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート、又はホスホルアミダートからなる群から選択される請求項55記載の白金錯体。
【請求項62】
同一の又は異なる2つの脱離基が存在し、各脱離基が、カルボキシラート、アルコキシル、ヒドロキシル、水、ペルオキシド、硫黄、ジスルフィド、スルホキシド、クロリド、ブロミド、フルオリド、ヨージド、アミン、ピリジン、ピロール、フラン、チオフラン、クロラート、ニトラート、ニトリット、スルファート、スルフィット、ホスホナート、アルキルホスホナート、ホスホロチオラート、アルキルホスホロチオラート、ホスホルアミド、アルキル=ホスホルアミド、ホスファート、ホスフィット、ホスフィド、ホスフィン、チオホスホナート、アルキル=ホスホルアミダート、又はホスホルアミダートからなる群から選択される一種である請求項55記載の白金錯体。
【請求項63】
置換の後、活性種が形成され、この活性種は同一又は異なって、ヒドロキシル、アコ、又はOH/OHである請求項55記載の白金錯体。
【請求項64】
以下の構造αを有する白金錯体。
【化18】

【請求項65】
以下の構造βを有する白金錯体。
【化19】


【公表番号】特表2008−544985(P2008−544985A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519258(P2008−519258)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/002887
【国際公開番号】WO2007/005056
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(500175967)バイオニューメリック・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテッド (27)
【Fターム(参考)】