説明

モノパイル式基礎の構築方法

【課題】 沿岸域の埋め立て地などの地盤又は海底地盤に風力発電施設などの支持手段であるモノパイル式基礎を構築する方法を提供する。
【解決手段】 地盤の支持層上に軟弱層が堆積している場合に、モノパイルが根入れされる部位を未改良地盤として残し、その周辺の軟弱層を、水平方向に一定の範囲まで、深さ方向には前記軟弱層の高さ全域の範囲で地盤改良する。その後、未改良地盤の部位を掘削し、その掘削部分にモノパイルを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、沿岸域の埋め立て地などの地盤又は海底地盤に風力発電施設などの支持手段であるモノパイル式基礎を構築する方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出量を低減するべく、火力発電等の代替手段として自然エネルギーを利用する風力発電が、米国、欧州などを中心として大規模に実施されている。
【0003】
我が国でも風力発電は実施されているが、内陸地において風力発電で要求される断続的に一定以上の安定した風力を得ようとすると、起伏が激しい地域に限定され、当該地域では、風が巻き込むなどの影響で、一方向からの風を得ることはできず、良好な風力発電が難しい。また、広い敷地を確保することができず大規模に実施できないなどの地理的事情がある。それに比べて、沿岸域の埋め立て地や海上では断続的に一定以上の安定した風力を一方向から得やすく、しかも大規模に実施できる利点を有するので、風力発電施設を沿岸域の埋め立て地や海上へ構築できるように、従来からケーソン式や組杭式などの基礎構造が種々開発されている。なかでも地盤の沈下や波力による影響を受け難く、その他の基礎構造に比べて安価に構築できるモノパイル式(単杭式)基礎が注目されている。
【0004】
前記モノパイル式基礎は、風力発電施設などを支持するモノパイルの下端部を、海底地盤の支持層まで根入れした構造である。通例、前記モノパイルは大口径(一例として、4000mm程度)の鋼管杭から成り、このモノパイルを打設用の大型専用船を用いて現地に根入れする。なお、特許文献1には、モノパイルをプレキャストコンクリート杭で構成した技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−207948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モノパイル式基礎は、支持層までの深さが浅い遠浅の欧州沿岸を中心として、根入れ長さが短くて済むため、多数実施され主流となりつつある。しかし、我が国沿岸の海底地盤は、支持層までの深さが深く、同支持層上に軟弱層が厚く堆積している。軟弱層は支持力を発揮しないので、支持層の深くまでモノパイルを根入れする必要があり、結果としてモノパイルの根入れ長さが長くなって根入れ作業が大変である。また、大口径のモノパイルは高価なので、長くなる分コストが嵩む問題点がある。
【0006】
上記のような大口径のモノパイルを根入れ(打設)するには大きな反力が必要で、海上では大型専用船に反力を得て根入れできるが、陸上では大きな反力を得る手段が無く、大口径のモノパイルを根入れできないのが実情である。一方、海上では大型専用船を用いて根入れすることはできるが、大掛かりになり、コストが嵩むなどの問題点を有する。
【0007】
本発明の目的は、モノパイルが根入れされる部位周辺の軟弱層を一定範囲まで地盤改良することで、モノパイルを支持層の深くまで根入れしなくても風力発電施設などを堅固に支持でき、それ故に、根入れ長さが短くて済み、根入れ作業が容易でコストの削減を図れる、モノパイル式基礎の構築方法を提供することである。
【0008】
本発明の次の目的は、陸上、海上を問わずに簡易な重機で、容易にモノパイルを根入れできる、モノパイル式基礎の構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るモノパイル式基礎の構築方法は、
風力発電施設などのモノパイル式基礎を、沿岸域の埋め立て地などの地盤に構築する方法であって、
前記地盤の支持層上に軟弱層が堆積している場合に、モノパイルが根入れされる部位を未改良地盤として残し、その周辺の軟弱層を、水平方向に一定の範囲まで、深さ方向には前記軟弱層の高さ全域の範囲で地盤改良する工程と、
その後、前記未改良地盤の部位を掘削し、その掘削部分にモノパイルを構築する工程と、
から成ることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明に係るモノパイル式基礎の構築方法は、
風力発電施設などのモノパイル式基礎を、海底地盤に構築する方法であって、
前記海底地盤の支持層上に軟弱層が堆積している場合に、モノパイルが根入れされる部位を未改良地盤として残し、その周辺の軟弱層を、水平方向に一定の範囲まで、深さ方向には前記軟弱層の高さ全域の範囲で地盤改良する工程と、
その後、前記未改良地盤の部位を掘削し、その掘削部分にモノパイルを構築する工程と、
から成ることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載したモノパイル式基礎の構築方法において、
掘削部分に鋼管杭を根入れし、同鋼管杭と改良地盤との隙間にコンクリートなどを充填して一体化しモノパイルを構築することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2に記載したモノパイル式基礎の構築方法において、
掘削部分に、プレキャストコンクリート杭の分割片を積み重ねてプレストレスを導入し、プレキャストコンクリート杭を形成して、同プレキャストコンクリート杭と改良地盤との隙間にコンクリートなどを充填して一体化しモノパイルを構築することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1又は2に記載したモノパイル式基礎の構築方法において、
掘削部分に鉄筋を配置してコンクリートを打設し、場所打ち杭を形成すると共に改良地盤と一体化してモノパイルを構築することを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載したモノパイル式基礎の構築方法において、
モノパイルの内部に掘削土を埋め戻すこと、又はコンクリートを充填することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項1又は2に記載したモノパイル式基礎の構築方法において、
(イ)軟弱層の地盤改良に必要とされる水平方向の範囲は、予め設定した改良地盤の滑動抵抗力、抵抗モーメント、支持力、端し圧を満たし、
(I)改良地盤の滑動抵抗力は、以下の[数1]によって求めること、
[数1] H<R/Fs
但し、Fs:安全率、H:改良地盤に作用する水平力、R:改良地盤の滑動抵抗力
(II)改良地盤の抵抗モーメントは、以下の[数2]によって求めること、
[数2] M<MR/Fs
但し、Fs:安全率、M:改良地盤に作用する転倒モーメント、MR:改良地盤の抵抗モーメント
(III)改良地盤の支持力は、以下の[数3]によって求めること、
[数3] t<q/Fs
但し、Fs:安全率、t:支持層の地盤反力、q:改良地盤の支持力
(IV)改良地盤の端し圧は、以下の[数4]によって求めること、
[数4] t<qu/Fs
但し、Fs:安全率、t:改良地盤の端し圧、qu:改良地盤の設計基準強度
(ロ)モノパイルの直径、肉厚は、予め設定された応力度、支持力、根入れ長さを満たし、
(V)モノパイルの応力度は、以下の[数5]によって求めること、
[数5] σ=P/A+Mp/Z<σa
但し、P:モノパイルに作用する鉛直力、A:モノパイルの断面積、Mp:モノパイルに作用する最大モーメント、Z:モノパイルの断面係数、σa:許容応力度
(VI)モノパイルの支持力は、以下の[数6]によって求めること、
[数6] P<Ru/Fs
但し、Fs:安全率、P:モノパイルに作用する鉛直力、Ru:モノパイルの支持力
(VII)モノパイルの根入れ長さは、以下の[数7]によって求めること、
[数7] L>3/β
但し、L:モノパイルの根入れ長さ、β:仮想固定点
をそれぞれ特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1又は請求項2若しくは請求項7に記載したモノパイル式基礎の構築方法において、
地盤改良は、セメント又はセメント系固化材を攪拌混合する深層混合処理工法、又は同深層混合処理工法に石炭灰を安定剤として添加する深層混合処理工法を用いて実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るモノパイル式基礎の構築方法において、モノパイルが根入れされる部位周辺に形成した改良地盤は弾性係数が大きいので、モノパイルの根入れ長さを短くでき、モノパイルを支持層の深くまで根入れしなくても風力発電施設などを堅固に支持できる。そのため、モノパイルの根入れ長さが短くて済み、根入れ作業が容易で、工期の短縮を図ることもできる。しかも、根入れ長さが短くて済む分、モノパイルの全長を短くできるので、コストの削減を図れる。
【0018】
また、モノパイルを根入れする際に、大きな反力を確保する必要が無く、改良地盤の略中央部に形成した未改良地盤の部位を掘削し、その掘削部分にモノパイルを構築するので、モノパイルの根入れ作業は簡易な重機を用いて陸上、海上を問わず容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
沿岸域の埋め立て地などの地盤又は海底地盤の支持層上に軟弱層が堆積している場合に、モノパイルが根入れされる部位を未改良地盤として残し、その周辺の軟弱層を、水平方向に一定の範囲まで、深さ方向には前記軟弱層の高さ全域の範囲で地盤改良する。その後、前記未改良地盤の部位を掘削し、その掘削部分にモノパイルを構築する。
【実施例1】
【0020】
請求項1、4及び請求項7、8に記載した発明に係るモノパイル式基礎の構築方法(以下、単に構築方法と云う場合がある。)の実施例を、図1〜図5に基づいて説明する。本実施例の構築方法は、風力発電施設1の支持手段であるモノパイル式基礎2を、沿岸域の埋め立て地の地盤(以下、単に地盤と云う場合がある。)3に構築するために実施され、特に、前記地盤3の支持層4上に軟弱層5が厚く堆積している場合に好適に実施される。
【0021】
先ず、図2に示すように、モノパイル6が根入れされる部位、すなわちモノパイル6の外径と略等しい長さを一辺とする矩形領域(但し、広さや形状は限定されない。)を未改良地盤7として残し、その周辺の軟弱層5を、水平方向に一定の範囲まで、深さ方向には前記軟弱層5の高さ全域の範囲で必要最小限度に地盤改良し改良地盤8を形成する。
【0022】
その後、図3及び図4に示すように、改良地盤8を土留め壁として用い周辺から土砂や地下水の浸入を防ぎながら、前記未改良地盤7を掘削し、その掘削部分にモノパイル6を構築する。具体的には、前記掘削部分に十分な支持力が発現する深さまで鋼管杭9を根入れ(挿入)する。そして、前記鋼管杭9(モノパイル6)の外周と改良地盤8の内周との隙間にコンクリート10を充填し一体化する(以上、請求項1及び請求項4記載の発明)。改良地盤8は弾性係数が大きいので、モノパイル6の根入れ長さを短くでき、モノパイル6を支持層4の深くまで根入れしなくても風力発電施設1を堅固に支持できる。そのため、モノパイル6の根入れ長さが短くて済み、根入れ作業が容易で、工期の短縮を図ることもできる。しかも、根入れ長さが短くて済む分、モノパイル6の全長を短くできるので、コストの削減を図れる。
【0023】
また、モノパイル6を根入れする際に、大きな反力を確保する必要が無く、未改良地盤7を掘削し、その掘削部分にモノパイル6を構築するので、モノパイル6の根入れ作業は簡易な重機を用いて容易にできる。
【0024】
ちなみに、モノパイル6の内部に掘削土11を埋め戻す、又はコンクリートを充填すると、モノパイル6を一層安定させることができ好都合である(請求項6記載の発明)。
【0025】
上記した改良地盤8の必要最小限度の範囲は、次のように設定する。具体的には、改良地盤8の範囲は、予め設定した改良地盤8の滑動抵抗力、抵抗モーメント、支持力、端し圧を満たすように設定する(図5を参照、但し、図5は陸上及び海上の双方の場合を想定している。)。なお、以下に示す[数1]〜[数4]に用いられている記号の説明は重複した記載を省略している。
【0026】
(I)改良地盤8の滑動抵抗力Rは、以下の[数1]によって求める。
[数1] H<R/Fs
Fs:安全率、H:改良地盤8に作用する水平力
ここで、改良地盤8の滑動抵抗力Rは、R=(Wupper+Wpile+Wdm)×tanφ+Ppで定義される。また、改良地盤8に作用する水平力Hは、暴風時がH=Fwind+Fwave+Pa、地震時がH=Eupper+Epile+Paで定義され、算出した両値を満たすように設定する。安全率Fsは、一例として暴風時を1.2、地震時を1.0に設定し、両値を満たすように設定する。
Wupper:風力発電施設1の自重、Wpile:モノパイル6の自重、Wdm:改良地盤8の自重、φ:内部摩擦角、Fwind:風荷重、Fwave:波荷重(本実施例は陸上であるため考慮しない。)、Pa:主働土圧、Eupper:風力発電施設1に作用する地震荷重、Epile:モノパイル6に作用する地震荷重
【0027】
(II)改良地盤8の抵抗モーメントMRは、以下の[数2]によって求める。
[数2] M<MR/Fs
M:改良地盤8に作用する転倒モーメント
ここで、改良地盤8の抵抗モーメントMRは、MR=(Wupper+Wpile+Wdm)×r+Pa×y7で定義される。また、改良地盤8の転倒モーメントMは、暴風時がM=Fwind×y1+Fwave×y2+Pa×y3、地震時がM=Eupper×y4+Epile×y5+Edm×y6+Pa×y3で定義され、算出した両値を満たすように求める。安全率Fsは、一例として暴風時を1.2、地震時を1.1に設定し、両値を満たすように求める。
Edm:改良地盤8に作用する地震荷重、y1:地盤3の軟弱層5底面から風荷重Fwindの作用点までの高さ、y2:地盤3の軟弱層5底面から波荷重Fwaveの作用点までの高さ(本実施例では陸上であるため考慮しない。)、y3:地盤3の軟弱層5底面から主働土圧Paの作用点までの高さ、y4:地盤3の軟弱層5底面から風力発電施設1に作用する地震荷重Eupperの作用点までの高さ、y5:地盤3の軟弱層5底面からモノパイル6に作用する地震荷重Epileの作用点までの高さ、y6:地盤3の軟弱層5底面から改良地盤8に作用する地震荷重Edmの作用点までの高さ
【0028】
(III)改良地盤8の支持力qは、以下の[数3」によって求める。
[数3] t<q/Fs
t:支持層4の地盤反力
安全率Fsは、一例として暴風時を2.5、地震時を1.5に設定し、両値を満たすように求める。
【0029】
(IV)改良地盤8の端し圧tは、以下の[数4]によって求める。
[数4] t<qu/Fs
qu:改良地盤8の設計基準強度
安全率Fsは、一例として暴風時を3.0、地震時を2.0に設定し、両値を満たすように求める。
【0030】
上記モノパイル6(鋼管杭9)は、風力発電施設1の荷重、風等の外力に十分耐え得る直径、肉厚とされており、同モノパイル6の直径、肉厚は、予め設定した応力度、支持力、根入れ長さを満たすように設定する。なお、以下に示す[数5]〜[数7]に用いられる記号の説明も、上記[数1]〜[数4]と同様に重複した記載を省略している。
【0031】
(V)モノパイル6の応力度σは、以下の[数5]によって求める。
[数5] σ=P/A+Mp/Z<σa
P:モノパイル6に作用する鉛直力、A:モノパイル6の断面積、Mp:モノパイル6に作用する最大モーメント、Z:モノパイル6の断面係数、σa:許容応力度
ここで、モノパイル6に作用する鉛直力Pは、P=Wupper+Wpileで定義される。また、許容応力度σaは、一例として暴風時を190N/mm、地震時を285N/mmに設定し、両値を満たすように求める。
【0032】
(VI)モノパイル6の支持力Ruは、以下の[数6]によって求める。
[数6] P<Ru/Fs
ここで、モノパイル6の支持力Ruは、Ru=c×Asc+2N×Assで定義される。
c:軟弱層5の粘着力(c=qu/2で定義される。)、Asc:モノパイル6の改良地盤8内の全表面積、Ass:モノパイル6の支持層4内の全表面積
【0033】
(VII)モノパイル6の根入れ長さLは、以下の[数7]によって求める。
[数7] L>3/β
β:仮想固定点(β={Es/(4EI)}1/4で定義される。)、Es:改良地盤8の弾性係数、E:モノパイル6の弾性係数、I:モノパイル6の断面二次モーメント
【0034】
以上の[数1]〜[数7]に基づいて改良地盤8の範囲、及びモノパイル6の直径、肉厚を設定することで、大掛かりな実験などをすることなく、簡易に且つ迅速に適切な改良地盤8の範囲、モノパイル6の直径、肉厚を設定することができる。
【0035】
なお、地盤改良は特に限定せず、セメント又はセメント系固化材を攪拌混合する通例の深層混合処理工法、又は同深層混合処理工法に石炭灰を安定剤として添加する深層混合処理工法(所謂FGC(フライアッシュ・ジプサム・セメント)−DM工法)を用いて実施することができる(請求項9記載の発明)。FGC−DM工法は、安定剤として石炭灰と必要に応じて石膏をセメント又はセメント系固化材に添加するので、通例の深層混合処理工法ではスラリー量が少なく均一な攪拌混合が困難な低強度域の地盤改良が可能である。
【実施例2】
【0036】
本実施例のモノパイル6は、図6に示すようにプレキャストコンクリート杭12で形成している。
具体的には、前記プレキャストコンクリート杭12は、所定の高さで輪切りにされた複数個(本実施例では3個)の分割片12a‥で構成しており、プレストレスを導入するための鉄筋13を通す穴(図示を省略)を有する。この分割片12a‥を掘削部分に積み重ねて、同心とした前記穴に鉄筋13を通してプレストレスを導入し、プレキャストコンクリート杭12を形成する。そして、前記プレキャストコンクリート杭12(モノパイル6)と改良地盤8との隙間にコンクリート10を充填し一体化する(請求項4記載の発明)。
【0037】
ちなみに、上記実施例1と同様に、モノパイル6の内部に掘削土11を埋め戻す、又はコンクリートを充填すると、モノパイル6を一層安定させることができ好都合である(請求項6記載の発明)。
【実施例3】
【0038】
本実施例のモノパイル6は、図7に示すように場所打ち杭14で形成している。
具体的には、掘削部分に、予め組み上げた鉄筋籠15を配置(挿入)してコンクリート16を打設し、場所打ち杭14を形成すると共に改良地盤8と一体化する(請求項5記載の発明)。
【実施例4】
【0039】
上記実施例1〜3の構築方法は沿岸域の埋め立て地の地盤3で実施したが、図示は省略するが海上でも略同様に実施できる。
即ち、海底地盤の支持層上に軟弱層が厚く堆積している場合に、モノパイルが根入れされる部位を未改良地盤として残し、その周辺の軟弱層を、水平方向に一定の範囲まで、深さ方向には前記軟弱層の高さ全域の範囲で地盤改良する。その後、前記未改良地盤の部位を掘削し、その掘削部分にモノパイルを構築する(請求項1記載の発明)。沿岸域の埋め立て地の地盤3、つまり陸上の場合と同様に、モノパイルを根入れする際に、大きな反力を確保する必要が無く、未改良地盤の部位を掘削し、その掘削部分にモノパイルを構築するので、モノパイルの根入れ作業は簡易な重機を用いて容易にできる。
【実施例5】
【0040】
上記実施例1〜4の構築方法は風力発電施設1の支持手段としてモノパイル基礎2を構築したが、煙突などの支持手段として構築しても良い。
【実施例6】
【0041】
図1等に示したモノパイル6は改良地盤8の範囲内の深さまで根入れしているが、この限りでない。すなわち、必要に応じて支持層4に到達する深さまで根入れしても良く、その場合は、未改良地盤7の直下に位置する支持層4まで掘削し、その掘削部分にモノパイル6を構築する。
【実施例7】
【0042】
なお、以上に本発明の実施例を説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のモノパイル式基礎の構築方法によって構築されたモノパイル基礎と同モノパイル基礎に支持された風力発電施設を概念的に示した立面図である。
【図2】(A)、(B)は実施例1のモノパイル式基礎の構築方法の工程図である。
【図3】(A)、(B)は実施例1のモノパイル式基礎の構築方法の工程図である。
【図4】(A)、(B)は実施例1のモノパイル式基礎の構築方法の工程図である。
【図5】モノパイル式基礎の力学特性を概念的に示した立面図である。
【図6】(A)、(B)は、実施例2のモノパイル式基礎の構築方法によって構築されたモノパイル基礎を示した図である。
【図7】(A)、(B)は、実施例3のモノパイル式基礎の構築方法によって構築されたモノパイル基礎を示した図である。
【符号の説明】
【0044】
1 風力発電施設
2 モノパイル式基礎
3 沿岸域の埋め立て地の地盤
4 支持層
5 軟弱層
6 モノパイル
7 未改良地盤
8 改良地盤
9 鋼管杭
10 コンクリート
11 掘削土
12 プレキャストコンクリート杭
12a 分割片
14 場所打ち杭
15 鉄筋籠
16 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電施設などのモノパイル式基礎を、沿岸域の埋め立て地などの地盤に構築する方法であって、
前記地盤の支持層上に軟弱層が堆積している場合に、モノパイルが根入れされる部位を未改良地盤として残し、その周辺の軟弱層を、水平方向に一定の範囲まで、深さ方向には前記軟弱層の高さ全域の範囲で地盤改良する工程と、
その後、前記未改良地盤の部位を掘削し、その掘削部分にモノパイルを構築する工程と、
から成ることを特徴とする、モノパイル式基礎の構築方法。
【請求項2】
風力発電施設などのモノパイル式基礎を、海底地盤に構築する方法であって、
前記海底地盤の支持層上に軟弱層が堆積している場合に、モノパイルが根入れされる部位を未改良地盤として残し、その周辺の軟弱層を、水平方向に一定の範囲まで、深さ方向には前記軟弱層の高さ全域の範囲で地盤改良する工程と、
その後、前記未改良地盤の部位を掘削し、その掘削部分にモノパイルを構築する工程と、
から成ることを特徴とする、モノパイル式基礎の構築方法。
【請求項3】
掘削部分に鋼管杭を根入れし、同鋼管杭と改良地盤との隙間にコンクリートなどを充填して一体化しモノパイルを構築することを特徴とする、請求項1又は2に記載したモノパイル式基礎の構築方法。
【請求項4】
掘削部分に、プレキャストコンクリート杭の分割片を積み重ねてプレストレスを導入し、プレキャストコンクリート杭を形成して、同プレキャストコンクリート杭と改良地盤との隙間にコンクリートなどを充填して一体化しモノパイルを構築することを特徴とする、請求項1又は2に記載したモノパイル式基礎の構築方法。
【請求項5】
掘削部分に鉄筋を配置してコンクリートを打設し、場所打ち杭を形成すると共に改良地盤と一体化してモノパイルを構築することを特徴とする、請求項1又は2に記載したモノパイル式基礎の構築方法。
【請求項6】
モノパイルの内部に掘削土を埋め戻すこと、又はコンクリートを充填することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載したモノパイル式基礎の構築方法。
【請求項7】
(イ)軟弱層の地盤改良に必要とされる水平方向の範囲は、予め設定した改良地盤の滑動抵抗力、抵抗モーメント、支持力、端し圧を満たし、
(I)改良地盤の滑動抵抗力は、以下の[数1]によって求めること、
[数1] H<R/Fs
但し、Fs:安全率、H:改良地盤に作用する水平力、R:改良地盤の滑動抵抗力
(II)改良地盤の抵抗モーメントは、以下の[数2]によって求めること、
[数2] M<MR/Fs
但し、Fs:安全率、M:改良地盤に作用する転倒モーメント、MR:改良地盤の抵抗モーメント
(III)改良地盤の支持力は、以下の[数3]によって求めること、
[数3] t<q/Fs
但し、Fs:安全率、t:支持層の地盤反力、q:改良地盤の支持力
(IV)改良地盤の端し圧は、以下の[数4]によって求めること、
[数4] t<qu/Fs
但し、Fs:安全率、t:改良地盤の端し圧、qu:改良地盤の設計基準強度
(ロ)モノパイルの直径、肉厚は、予め設定された応力度、支持力、根入れ長さを満たし、
(V)モノパイルの応力度は、以下の[数5]によって求めること、
[数5] σ=P/A+Mp/Z<σa
但し、P:モノパイルに作用する鉛直力、A:モノパイルの断面積、Mp:モノパイルに作用する最大モーメント、Z:モノパイルの断面係数、σa:許容応力度
(VI)モノパイルの支持力は、以下の[数6]によって求めること、
[数6] P<Ru/Fs
但し、Fs:安全率、P:モノパイルに作用する鉛直力、Ru:モノパイルの支持力
(VII)モノパイルの根入れ長さは、以下の[数7]によって求めること、
[数7] L>3/β
但し、L:モノパイルの根入れ長さ、β:仮想固定点
をそれぞれ特徴とする、請求項1又は2に記載したモノパイル式基礎の構築方法。
【請求項8】
地盤改良は、セメント又はセメント系固化材を攪拌混合する深層混合処理工法、又は同深層混合処理工法に石炭灰を安定剤として添加する深層混合処理工法を用いて実施することを特徴とする、請求項1又は請求項2若しくは請求項7に記載したモノパイル式基礎の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−83603(P2006−83603A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269562(P2004−269562)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【Fターム(参考)】