説明

モノパルス給電回路

【課題】本発明は、複数のアンテナに並行して到来した到来波の和と差とのパターンを得ることにより、その到来波の到来方向の計測等を可能とするモノパルス給電回路に関し、従来例に比べて構成が簡略化され、かつ実装上の制約の緩和が大幅に図られると共に、軽量化および小型化が可能であることを目的とする。
【解決手段】互いに貫通して交叉する導波路を形成する第一の導波管と、前記第一の導波管の側壁の内、前記導波路が交叉する部位に突設され、前記導波路を拡張する第二の導波管とを備え、前記導波路の4つの末端から前記部位までの長さは、個別に点対称に配置された2対のアンテナの個々の給電点から前記4つの末端をそれぞれ介して前記部位に至る4つの区間の伝搬路長が同じとなる値に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナに並行して到来した到来波の和と差とのパターンを得ることにより、その到来波の到来方向の計測等を可能とするモノパルス給電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダや衛星通信の分野では、目標や通信衛星の方向を精度よく求めることにより、測位、測距あるいは通信衛星の捕捉および追尾を実現するために、モノパルス給電方式が適用される。
【0003】
図4は、モノパルス給電方式が適用された空中線系の構成例を示す図である。
【0004】
図において、4つのアンテナ31UL、31UR、31LL、31LRの給電点は、マジックT32
の第一の端子および第二の端子と、マジックT32の第一端子および第二の端子とにそれぞれ接続される。マジックT32、32の第三の端子は、マジックT32MLの第一の端子および第二の端子にそれぞれ接続される。マジックT32、32の第四の端子は、マジックT32MRの第一の端子および第二の端子にそれぞれ接続される。
【0005】
なお、以下では、上記マジックT32、32、32ML、32MRによって構成される回路を「モノパルス給電回路」と称し、符号「40」を付して示す。
【0006】
マジックT32ML、32MRの第三の端子および第四の端子は、制御部50の対応するアナログポートに接続される。制御部50の第一のディジタル入出力ポートは、アンテナ31UL、31UR、31LL、31LRの方位角θAZの可変および設定を物理的に行う方位角可変機構60AZの制御端子に接続される。制御部50の第二のディジタル入出力ポートは、アンテナ31UL、31UR、31LL、31LRの仰角θELの可変および設定を物理的に行う仰角可変機構60ELの制御端子に接続される。
【0007】
このような構成の空中線系では、各部が以下の通りに連係する。
マジックT32は、アンテナ31UL、31URにそれぞれ到来した受信波の和Σと差Δとを出力する。これらの和Σと差Δとは、一般に、アンテナ31UL、31URに到来した受信波の方位角θAZU に対して、図5(a)に実線と点線とで示される。さらに、このような和Σで正規化された差Δの値(=Δ/Σ)は、図5(a)に太線の破線で示すように、差Δのヌル点に対する方位角θAZU の偏差の奇関数となる。
【0008】
すなわち、アンテナ31UL、31URに到来した受信波の方位角θAZU は、上記和Σと差Δとの対により特定可能である。
したがって、アンテナ31LL、31LRに到来した受信波の方位角θAZL は、図5(b)に示すように、マジックT32によって同様に出力された和Σと差Δとの対により特定可能である。
【0009】
さらに、マジックT32ML、T32MRは、それぞれ上記和Σ、Σの対と、差Δ、Δの対とに同様の処理を施すことにより二次元に拡張し、このような受信波の送信源の方向を示す方位角θAZおよび仰角θELのそれぞれの和ΣAZ、ΣELと差ΔAZ、ΔELとを得る。したがって、これらの和ΣAZ、ΣELおよび差ΔAZ、ΔELには、アンテナ31UL(31UR)とアンテナ31LL(31LR)とにそれぞれ到来した受信波の伝搬路長の相違に起因する誤差が含まれない。
【0010】
一方、制御部50は、例えば、方位角可変機構60AZおよび仰角可変機構60ELを介して、アンテナ31UL、31UR、31LL、31LRの方位角θAZおよび仰角θELを所定の頻度(周期)で監視しつつ、以下の処理を行う。
【0011】
(1) 和ΣAZ、ΣELの和Σを求める。
(2) 上記和Σで正規化された差ΔAZの値(=ΔAZ/Σ)を求める。
(3) 差ΔAZのヌル点に対する方位角θAZの偏差を示す関数(既述の「奇関数」に相当する。)の値VAZが上記値(=ΔAZ/Σ)となる角度として、受信波の方位角θAZを求める。
【0012】
(4) 和Σで正規化された差ΔELの値(=ΔEL/Σ)
(5) 差ΔELのヌル点に対する仰角θELの偏差を示す関数(既述の「奇関数」に相当する。)の値VELが上記値(=ΔEL/Σ)となる角度として、受信波の仰角θELを求める。
(6) 方位角可変機構60AZおよび仰角可変機構60ELを介して、このようにして求められた受信波の方位角θAZおよび仰角θELに、アンテナ31UL、31UR、31LL、31LRの方位角および仰角を設定する。
【0013】
したがって、アンテナ31UL、31UR、31LL、31LRの方位角θAZおよび仰角θELは、これらのアンテナ31UL、31UR、31LL、31LRに到来する受信波の送信源の方向に精度よく安定に維持される。
【0014】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下の特許文献1ないし特許文献3がある。
(1) 「送信局から輻射される直線偏波の電波を受信し、受信点における交差する第1基準軸と第2基準軸からみた2次元の電波到来方位角度と偏波面角度を計測するための電波到来方位・偏波計測用アンテナ装置であって、前記2本の基準軸の交点に対して対称に且つ第1基準軸上に各々の中心がくるように配置された第1アンテナと第2アンテナとからなる第1のアンテナ対と、前記2本の基準軸の交点に対して対称に且つ第2基準軸上に各々の中心がくるように配置された第3アンテナと第4アンテナとからなる第2のアンテナ対とを備え、第1アンテナと第2アンテナを夫々右旋円偏波アンテナで構成し、第3アンテナと第4アンテナを夫々左旋円偏波アンテナで構成し、第1のアンテナ対の出力から前記アンテナ対の直前での電磁界に対応するベクトル和信号を出力し、第2のアンテナ対の出力から前記アンテナ対の直前での電磁界に対応するベクトル和信号を出力する手段とを備える」ことにより、「小型かつ安価であって、偏波面を送信局からの直線偏波に対して一定の角度に保持できる」点に特徴がある電波到来方位・偏波計測用アンテナ装置…特許文献1
【0015】
(2) 「高周波信号発生器と、該高周波信号発生器に接続され、外部から与えられる制御信号により該高周波信号発生器出力の振幅を調整できる可変減衰器と、該可変減衰器の出力側に入力側が接続され、外部から与えられる制御信号により、入力された信号の位相を調整して出力するアナログ可変移相器と、アンテナの指向角度を検出する角度センサーと、要求特性たるアンテナの指向角度と出力信号の振幅との関係を示すデータと、アンテナの指向角度と出力信号の位相との関係を示すデータと、素子固有の特性たる前記可変減衰器に与える制御電圧と該可変減衰器の減衰量との関係を示すデータと、該可変減衰器の減衰変化に付随して発生する該可変減衰器の位相変化量との関係を示すデータと、前記可変移相器に与える制御電圧と該可変移相器の移相量との関係を示すデータとを記憶するメモリーと、上記角度センサーの出力を、上記メモリー内のアンテナの指向角度と出力信号の振幅との関係を示すデータにおける指向角度と見なし要求値たる出力信号の振幅を得て、該出力信号の振幅の0dBからの変化が即ち上記可変減衰器の減衰量であり、この減衰量を上記メモリー内の可変減衰器に与える制御電圧と該可変減衰器の減衰量との関係を示すデータに当てはめて得られる制御電圧を生成すると共に、上記角度センサーの出力を上記メモリー内の指向角度と出力信号の位相との関係を示すデータにおける指向角度と見なして得られる要求値たる出力信号の位相と、上記可変減衰器に与えた減衰量を上記メモリー内の可変減衰器の減衰量変化に付随して発生する該可変減衰器の位相変化量との関係を示すデータに当てはめて得られた位相変化量との差分の逆符号分が上記可変移相器で実現すべき移相量であり、この移相量を上記メモリー内の可変移相器に与える制御電圧と該可変移相器の移相量との関係を示すデータに当てはめて得られる制御電圧を生成する制御部とを有し、上記可変減衰器とアナログ可変移相器によって、前記高周波信号発生器の出力信号の振幅と位相を制御することによって、モノパルス追尾方式を利用した電波センサにおける誤差信号に相当する信号であって、アンテナ指向角度に対応する振幅と位相に設定された信号を擬似的に出力する」ことにより、「可変減衰器の位相変化分を補正することが可能で高精度なモノパルス信号を出力することのできる」点に特徴がある高精度電センサ擬似装置…特許文献2
【0016】
(3) 「障害物を検出したい高度と距離方向にアンテナのメインビームが照射されるようにメインビームを指向し、障害物となる地形からの反射波に対してモノパルス方式により、和パターンのエコー信号とビームの中心がヌル地点となる仰角方向の差パターンのエコー信号をそれぞれ受信し、上記和パターンの受信信号において受信信号の雑音レベルより大きい振幅を持つ信号をクラッタとして和パターンの受信信号と差パターンの受信信号とから測角を行い、上記クラッタが検出された距離に対応する障害物を検出したい高度の仰角値と検出されたクラッタの仰角値との比較を行い、障害物を検出したい高度の仰角値よりも検出されたクラッタの仰角値が小さい場合に、クラッタを障害物と判定し、特定高度より上方に存在する障害物を検出する」ことにより、「特定高度より上方に存在する障害物を精度良く検出できる」点に特徴がある航空機搭載用地形回避レーダ装置…特許文献3
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第3002612号公報
【特許文献2】特願昭62−318525号公報
【特許文献3】特許第2569778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上述した従来例では、4つのマジックT32、32、32ML、32MRが備えられなければならないために、回路の構成が複雑となって高価となり、特に、平面アンテナ等への適用のために必要な小型化や軽量化が阻まれていた。
【0019】
本発明は、従来例に比べて構成が簡略化され、かつ実装上の制約の緩和が大幅に図られると共に、軽量化および小型化が可能であるモノパルス給電回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に記載の発明では、第一の導波管は、互いに貫通して交叉する導波路を形成する。第二の導波管は、前記第一の導波管の側壁の内、前記導波路が交叉する部位に突設され、前記導波路を拡張する。前記導波路の4つの末端から前記部位までの長さは、個別に点対称に配置された2対のアンテナの個々の給電点から前記4つの末端をそれぞれ介して前記部位に至る4つの区間の伝搬路長が同じとなる値に設定される。
【0021】
すなわち、第二の導波管の末端には、上記2対のアンテナにそれぞれ到来した2対の受信波の差がこれらの対毎のベクトル和として並行して伝達される。
【0022】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のモノパルス給電回路において、前記2対のアンテナの個々の給電点から前記4つの末端に至る個々の給電路の伝搬路長が同じであり、かつ前記4つの末端から前記部位にそれぞれ至る個々の伝搬路長が同じである。
【0023】
すなわち、第一の導波管の管内に形成される導波路の長さが共通に設定されるにもかかわらず、第二の導波管の末端には、既述の2対の受信波の差が対毎のベクトル和として伝達される。
【0024】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のモノパルス給電回路において、前記2対のアンテナの全てまたは一部は、複数の素子を有するアレーアンテナである。
【0025】
すなわち、モノパルス給電に代えてあるいは並行して所望の形態による給電が可能であるならば、本発明が適用された空中線系は、単一のアンテナ素子だけでは実現できない多様な機能を併せて実現することができる。
【0026】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のモノパルス給電回路において、給電制御手段は、前記モノパルス給電回路に適した形態とその他の形態とに切り替えて、前記アレーアンテナを構成する各素子アンテナの給電を行う。
【0027】
すなわち、アレーアンテナの給電は、モノパルス給電と、そのモノパルス給電とは異なる他の形態による給電との何れかで適宜行われる。
【0028】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のモノパルス給電回路において、直交分離手段は、前記第二の導波管よって拡張された導波路で垂直偏波と水平偏波との成分を分離して得る。
【0029】
このようにして得られる垂直偏波と水平偏波との成分は、2対のアンテナに対毎に到来した受信波の差に該当する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、マジックTのように寸法および重量が大きい素子が備えられることなく、モノパルス給電のために必要であるアンテナの対毎に到来した受信波の差の計測が可能となる。
【0031】
また、本発明では、構成の簡略化に併せて標準化が図られ、価格性能比の向上が図られる。
さらに、本発明が適用されたアレーアンテナは、モノパルス給電に基づく無線伝送路の形成や維持と、その無線伝送路に適したビームフォーミング、ナルステアリング等との双方が行われる無線伝送系にも適用可能となる。
【0032】
また、本発明は、構成の標準化が図られ、このような標準化の下で多様な無線伝送系に対する柔軟な適用が可能となる。
【0033】
したがって、本発明が適用された無線伝送系は、スペースや重量等のような実装にかかわる制約が緩和され、しかも、所望の伝送路の形成および安定な維持が安価に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態の主要部の詳細な構成を示す図である。
【図3】本実施形態の主要部の他の構成例を示す図である。
【図4】モノパルス給電方式が適用された空中線系の構成例を示す図である。
【図5】モノパルス給電の動作原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図において、図4に示すものと機能および構成が同じ要素については、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0036】
本実施形態と図4に示す従来例との構成の相違点は、以下の点にある。
(1) 図4に示すモノパルス給電回路40に代えて、モノパルス給電回路10が備えられる。
(2) 複数のパッチアンテナ(図示されない。)が平面上に配置されてなる平面アンテナ20がアンテナ31UL、31UR、31LL、31LRに代えて備えられる。
【0037】
(3) 図2に示すように、その平面アンテナ20が開口面がその開口面の中心に対して点対称な4つのブロックに区分されてなるアンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LRが、アンテナ31UL、31UR、31LL、31LRに代えて、モノパルス給電回路10の4つのポートにそれぞれ接続される。
(4) そのモノパルス給電回路10の第一ないし第四の出力が制御部50の対応するアナログ入力ポートに接続される。
【0038】
モノパルス給電回路10は、図2に示すように、以下の要素から構成される。
(1) 平面アンテナ20(アンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LR)の開口面の背面に配置され、かつ互いに交叉して貫通すると共に、断面形状が矩形である十字路状の導波路(以下、「十字導波路」という。)を管内に有する交叉導波管22
【0039】
(2) 交叉導波管22の頂部の内、上記十字導波路が交叉する部位(以下、「交叉部位」という。)に突設され、かつ断面形状が矩形であってその導波路を交叉導波管22の外部に拡張する突設導波管23
【0040】
(3) 上記交叉部位の下方にある十字導波路の底面に形成された孔を介してその導波路内に内部導体が突出した状態で支持された同軸ケーブルで構成されるプローブ24
(4) アンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LRにそれぞれ含まれるパッチアンテナのトーナメント給電を実現し、かつ一端が交叉導波管22(十字導波路)の4つの端部に結合する給電路25UL、25UR、25LL、25LR
【0041】
(5) 突設導波管23の側部の内、既述の十字導波路との連結点と反対側にある側端部の近傍にあって、互いに直交する側面のそれぞれに内部導体が突出した2本の同軸ケーブルの対として構成されるOMT(Ortho Mode Transducer)26
【0042】
以下、本実施形態の原理を説明する。
給電路25ULは、アンテナサブアレイ21ULに含まれる全てのパッチアンテナに対して共通の給電路長Lf1による給電が可能な線路として構成される。
【0043】
また、給電路25UR、25LL、25LRは、同様に、アンテナサブアレイ21UR、21LL、21LRにそれぞれ含まれる全てのパッチアンテナに対して共通の給電路長Lf1による給電が可能な線路として構成される。
【0044】
したがって、以下のアンテナサブアレイと給電路との対は、それぞれ図4に示すアンテナ31UL、31UR、31LL、31LRと同様に4つのアンテナとして機能する。
(1) アンテナサブアレイ21ULと給電路25ULとの対
(2) アンテナサブアレイ21URと給電路25URとの対
(3) アンテナサブアレイ21LLと給電路25LLとの対
(4) アンテナサブアレイ21LRと給電路25LRとの対
【0045】
一方、交叉導波管22の4つの端部(以下、「ポート」という。)では、上記給電路25UL、25UR、25LL、25LRは、何れも、基本モード(TE10モード)でその交叉導波間22の管内に結合する。
【0046】
交叉導波管22の管内においてこれらの4つのポートから既述の交叉部位に至る区間の実効的な伝搬路長は、何れも共通の値(=Lf2)に予め設定される。
【0047】
突設導波管23は、管軸が上記交叉部位に垂直となる姿勢でその交叉部位に突設される。
さらに、OMT26を構成する2本の同軸ケーブルの内導体は、以下の条件の全てを満たす。
【0048】
(1) 既述の交叉部位から突設導波管23の管内に拡張された給電路(導波路)の長さLf3が所定の精度で同じと見なし得る。
(2) 個々の内導体に到達し得る電磁波(アンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LRによって受信され得る受信波)の磁界(電界)の方向が物理的に直交する。
(3) 平面アンテナ20の方位角θAZおよび仰角θELが変化し得る方向に対してそれぞれ平行である。
【0049】
なお、このような電磁波(受信波)は、以下の第一ないし第四の導波路(給電路)をそれぞれ介してOMT26に伝達される。
(1) アンテナサブアレイ21ULから給電路25UL、十字導波路および突設導波管23の管内を介して形成される第一の導波路(給電路)
(2) アンテナサブアレイ21URから給電路25UR、十字導波路および突設導波管23の管内を介して形成される第二の導波路(給電路)
【0050】
(3) アンテナサブアレイ21LLから給電路25LL、十字導波路および突設導波管23の管内を介して形成される第三の導波路(給電路)
(4) アンテナサブアレイ21LRから給電路25LR、第四の導波路および突設導波管23の管内を介して形成される第四の導波路(給電路)
【0051】
すなわち、OMT26を構成する2本の同軸ケーブルの内導体には、アンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LRの給電点からそれぞれから共通の長さ(=Lf1+Lf2+Lf3)の給電路を介して上記4つの受信波が並行して引き渡され、かつ既述の方位角θAZおよび仰角θELの偏差分の方向に偏波が一致した受信波の差をそれぞれ示す2つの電気信号が誘起される。
したがって、このような2つの電気信号は、従来例における差ΔAZ、ΔELに相当する。
【0052】
また、プローブ24には、アンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LRの給電点からそれぞれから共通の長さ(=Lf1+Lf2+Lf3)の給電路を介して並行して引き渡された4つの受信波の全てが到達する。
したがって、プローブ24に誘起する電気信号は、従来例における和Σ(=ΣAZ+ΣEL)に相当する。
【0053】
制御部50は、このようにして与えられる差ΔAZ、ΔELおよび和Σに基づいて従来例と同様の処理を行うことにより、受信波の方位角θAZおよび仰角θELを求め、かつ方位角可変機構60AZおよび仰角可変機構60ELを介して、これらの受信波の方位角θAZおよび仰角θELに、平面アンテナ20の方位角および仰角を設定する。
【0054】
このように本実施形態に係るモノパルス給電回路10は、従来のモノパルス給電回路40との対比においては、部品の数が大幅に少なくかつ低廉小型化が可能であって、マジックTを含むことなく構成されるため、軽量化が図られ、しかも、ほぼ同等の性能や特性が得られる。
【0055】
したがって、本実施形態によれば、本来的に寸法や重量が小さい平面アンテナ20の特徴が損なわれることなく、所望の送信局との間における無線伝送路の確保、あるいは通信衛星や放送衛星の捕捉が精度よく安定に実現され、かつランニングコストを含む総合的なコストの大幅な削減が可能となる。
【0056】
また、本実施形態によれば、上述した低廉小型化および軽量化によって、モノパルスコンパレータ等が搭載されるべき平面アンテナ20の背面等の機構(ペデスタル)に要求される機械的な強度が大幅に軽減され、通信衛星や放送衛星の追尾および捕捉等に供されるアンテナ系の価格性能比が大幅に向上する。
【0057】
なお、本実施形態では、突設導波管23の内壁面は、図2に示すように、交叉導波管22の内壁面に対して45度傾いている。
しかし、本実施形態は、このような構成に限定されず、例えば、図3に示すように、以下の通りに構成されてもよい。
【0058】
(1) 平面アンテナ20の矩形の開口面の対角線を中心として仰角と方位角とが可変される軸が設けられる。
(2) アンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LRは、平面アンテナ20の開口面が上記対角線で区分された4つの領域にそれぞれ配置されたパッチアンテナの集合として構成される。
【0059】
(3) 突設導波管23は、内壁面が交叉導波管22の内壁面に平行となる状態で既述の交叉部位に突設される。
(4) 上記パッチアンテナの形状は、矩形に限定されず、例えば、円形であってもよい。
【0060】
また、本実施形態では、平面アンテナ20は、受信専用のアンテナであってビームフォーミングの対象となっていない。
【0061】
しかし、本発明は、このようなアンテナに限定されず、例えば、アンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LRにそれぞれ含まれるパッチアンテナ毎に、給電路の移相量、あるいは装荷される(可変)リアクタンス素子のリアクタンスが適切に設定されることによってビームフォーミングが別途行われるにもかかわらず、これらの位相量やリアクタンスが所定の頻度や周期で既定値に設定されて行われるモノパルス給電(通信衛星の捕捉等のために行われる。)にも、適用可能である。
【0062】
さらに、このようなアンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LRにそれぞれ備えられるパッチアンテナの数、配置および形状は、既述の作用効果が達成されるならば、如何なるものであってもよい。
【0063】
また、これらのアンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LRは、何れも、例えば、ホーンアンテナ等の単一のアンテナで代替されてもよい。
【0064】
さらに、本実施形態は、突設導波管23は、交叉導波管22と同様に導波路の断面形状が矩形である導波管となっている。
しかし、このような突設導波管23は、既述の基本モードによる導波路が交叉導波管22の管内から延長可能な形状および寸法を有するならば、円形導波管で代替されてもよい。
【0065】
また、本発明は、通信衛星や放送衛星の捕捉に供されるアンテナに限定されず、対向する送信端が固定局と移動局との何れの場合であっても、その送信端との間における無線伝送路を安定に形成し、あるいは維持するために適用可能である。
【0066】
さらに、本発明は、このような無線伝送路に適用される多元接続方式、変調方式(変調の有無を含む。)、チャネル構成、周波数配置、ゾーン構成の如何にかかわらず適用可能である。
【0067】
また、本実施形態では、給電路25UL、25UR、25LL、25LRの長さの何れもが同じであり、かつ既述の十字導波路の各端部と交叉部位との間に個別に形成される4つの導波路の全ての長さが共通となっている。
【0068】
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、以下の何れかの条件が成立する場合には、給電路25UL、25UR、25LL、25LRの長さと、「4つの給電路」の長さとは、如何なるものであってもよい。
【0069】
(1) アンテナサブアレイ21UL、21UR、21LL、21LRの実効的な給電点から上記4つの導波路を介してOMT26に至る給電路の長さが実効的に共通となる。
(2) その給電路の長さの相違が電気的な移相量の調節により吸収可能である。
【0070】
さらに、本実施形態では、OMT26は、突設導波管23の端部に固設されているが、これらのOMT26と端部との双方もしくは何れか一方の構造の下で着脱可能に設けられてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、既述の和Σは、必ずしもプローブ24によって得られなくてもよく、そのプローブ24に代わる如何なるハードウェアによって得られてもよい。
【0072】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0073】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」に記載しなかった発明の構成および作用効果を「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0074】
[請求項6] 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のモノパルス給電回路において、前記第二の導波管は、前記第二の導波管によって拡張された導波路で垂直偏波と水平偏波との成分を分離して得る直交分離手段が装着可能または着脱可能に構成される。
【0075】
このような構成のモノパルス給電回路は、本発明に基づいてモノパルス給電されるアンテナに到来する受信波の多様な形態に対する柔軟な適応が可能となる。
【0076】
したがって、2対のアンテナの2次元によるモノパルス給電が可能となる。
[請求項7] 請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載のモノパルス給電回路において、
前記導波路の前記部位を伝搬する電力のベクトル和を電気信号として得るプローブを備えた
ことを特徴とするモノパルス給電回路。
【0077】
このような構成のモノパルス給電回路では、請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載のモノパルス給電回路において、プローブは、前記導波路の前記部位を伝搬する電力のベクトル和を電気信号として得る。
【0078】
このようなベクトル和は、一般に、モノパルス給電の対象となるアンテナに到来する受信波の到来角の不確定性を排除するための正規化演算に供することができる。
したがって、本発明に係るモノパルス給電回路では、専用のハードウェアが備えられることなく、上記正規化演算のために参照されるベクトル和を得ることができる。
【符号の説明】
【0079】
10 モノパルス給電回路
20 平面アンテナ
21 アンテナサブアレイ
22 交叉導波管
23 突設導波管
24 プローブ
25 給電路
26 OMT
31 アンテナ
32 マジックT
50 制御部
60AZ 方位角可変機構
60EL 仰角可変機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに貫通して交叉する導波路を形成する第一の導波管と、
前記第一の導波管の側壁の内、前記導波路が交叉する部位に突設され、前記導波路を拡張する第二の導波管とを備え、
前記導波路の4つの末端から前記部位までの長さは、
個別に点対称に配置された2対のアンテナの個々の給電点から前記4つの末端をそれぞれ介して前記部位に至る4つの区間の伝搬路長が同じとなる値に設定された
ことを特徴とするモノパルス給電回路。
【請求項2】
請求項1に記載のモノパルス給電回路において、
前記2対のアンテナの個々の給電点から前記4つの末端に至る個々の給電路の伝搬路長が同じであり、
前記4つの末端から前記部位にそれぞれ至る個々の伝搬路長が同じである
ことを特徴とするモノパルス給電回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモノパルス給電回路において、
前記2対のアンテナの全てまたは一部は、
複数の素子を有するアレーアンテナである
ことを特徴とするモノパルス給電回路。
【請求項4】
請求項3に記載のモノパルス給電回路において、
前記モノパルス給電回路に適した形態とその他の形態とに切り替えて、前記アレーアンテナを構成する各素子アンテナの給電を行う給電制御手段を備えた
ことを特徴とするモノパルス給電回路。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のモノパルス給電回路において、
前記第二の導波管よって拡張された導波路で垂直偏波と水平偏波との成分を分離して得る直交分離手段を備えた
ことを特徴とするモノパルス給電回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−93321(P2012−93321A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242893(P2010−242893)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】