説明

モノブロック電槽を備えた蓄電池

【課題】 電解液の注入時や車両に搭載し走行する場合などにおいて、液漏れのないモノブロック電槽を備えた蓄電池を提供する。
【解決手段】 電槽1内の各隔壁3の下部を、二股に分岐下垂して電槽底壁に連接した二重の膨出隔壁3a,3aに形成する一方、該隔壁3の上部の両側面にその幅方向に間隔に存し、複数条の垂直リブ5,5,…を配設すると共に該垂直リブ5,5間に垂直凹溝6を形成し、各セル室2内に収容される極板群7の両端面の下部を対向する該膨出隔壁3a,3a又は垂直リブ5,5を介して該膨出隔壁3a,3aで挟持し、その上部を対向する該垂直リブ5,5,…及び5,5,…で挟持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノブロック電槽を備えた蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池、特に、自動車や二輪車用等の車両用蓄電池は、モノブロック電槽の内部を複数の隔壁により複数のセル室に区画し、これらセル室に夫々ストラップと中間極柱を備えた極板群を収容し、相隣る極板群を隔壁を介して対向する中間極柱間を溶接して接続し、その両端から正,負極柱を該電槽に気液密に施した蓋を通して正,負端子とし、更に、各セル室に一定量の電解液を注入して構成されるが、近年、この種車両用蓄電池の軽量化が推進され、極板の厚さを薄くすることがなされている。しかし乍ら、一方、蓄電池の大きさ、即ち、電槽の外形寸法は、車両への取り付けなどの観点から、規定により定められている。従って、厚さを薄くした極板を用いセパレータを介し積層して組み立てた極板群をセル室に収容すると、該極板群の積層方向の両端面とセル室の対向隔壁との間に空間が生じ、隔壁で極板群を挟持固定できなくなる。この問題を解消するために、下記の特許文献1では、「極板の高さにほぼ相当する深さを有し、且つ電槽底面内で開口する凹部をセル間に設けて成るモノブロック電槽を備えた蓄電池」が提案されている。
而して、この提案によれば、上記の凹部をモノブロックのセル間に設けることによって、外形寸法を変えることなく軽量化を果たすことができるようにしたものである。而して、この「電槽底面内で開口する凹部」とは、具体的には、セル室を画成する隔壁を、セル室内に収容される極板群の極板の高さ、即ち、正,負極板をセパレータを介して積層して成る積層体から成る極板群の高さにほぼ相当する高さの所から二股に分岐下垂して電槽底壁に連接する二重の膨出隔壁間に挟まれて形成されたものであることが、その明細書及び図面の記載から分かる。
【特許文献1】実開昭52-108542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし乍ら、上記特許文献1に開示のものブロック電槽を用いて蓄電池を製造する場合に、次のような不都合をもたらすことが判った。
その各セル室内に、所定量の電解液を注入するに当たり、速やかに注入すると、注入された電解液が外部に漏れ出ることがしばしば見られるので、徐々に注入しなければならず、注入作業に時間がかかり作業能率が悪い。その原因は、該極板群の両端面の極柱を該両極板と略同じ高さの対向する膨出隔壁で挟持するようにしたため、所定量の電解液を速やかに注入すると、注入された電解液は、極板群に速やかに浸透せず、極板群の上部空間に滞留し、遂には、注液口より外部に溢れ出る傾向があるためと考えられる。従って、また、注液後にも、極板群上にしばしば滞留している電解液が、注液直後の充電作業において漏出し、或いはその蓄電池を車両に搭載して走行した場合にも液口栓からの液漏れを生ずることが確認された。
本発明は、かゝる従来の課題を解消し、上記のような液漏れを防止したモノブロック電槽を備えた蓄電池を提供することに在る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、請求項1に記載の通り、電槽内の各隔壁の下部を、二股に分岐下垂して電槽底壁に連接した二重の膨出隔壁に形成する一方、該隔壁の上部の両側面にその幅方向に間隔に存し、該膨出隔壁面と同じ面位置まで突出させた複数条の垂直リブ又は該膨出隔壁面より突出させると共に下垂させ、その下垂部を該膨出隔壁と合体せしめた複数条の垂直リブを配設すると共に該垂直リブ間に垂直凹溝を形成し、各セル室内に収容される極板群の両端面の下部を対向する該膨出隔壁又は垂直リブを介した該膨出隔壁で挟持し、その上部を対向する該垂直リブで挟持するようにしたことを特徴とするモノブロック電槽を備えた蓄電池に存する。
更に本発明は、請求項2に記載の通り、上記の発明において、該電槽の極板群の積層方向の両端壁を、その両端のセル室に収容される極板群の高さとほぼ等しい高さに相当する壁部において、内方へ屈曲膨出した端壁に形成すると共に、該膨出端壁の内面にその幅方向に所定の間隔を存し、複数条の垂直凹溝を形成したことを特徴とするモノブロック電槽を備えた蓄電池に存する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に係る発明によれば、肉薄の正,負極板をセパレータを介し積層して成る極板群を各セル室に収容するときは、その両端面の極板の下部は対向する膨出隔壁又は垂直リブを介して膨出隔壁で挟持され、その上部は対向する複数条の垂直リブで挟持されるので、電槽の外形寸法を変えることなく、極板群を固定できると共に軽量な蓄電池が得られるばかりでなく、中間の各セル室に電解液を注入するときは注入された電解液は、極板群の両端面に圧接した複数条の垂直リブ間に形成された夫々の凹溝内を流下し、極板群に両側から浸透し、極板群の上部空間に電解液が滞留し、外部に溢れ出ることがない。また、両端のセル室に電解液を注入するときは、注入された電解液は、極板群の一端面に圧接した垂直リブ間に形成された夫々の凹溝内を流下し、極板群の1側から浸透するので、極板群の上部空間に電解液が滞留し外部に溢れ出ることがないので、従来のような電解液注入時の液漏れがなく、所定量の電解液の注入を迅速且つ円滑に完了することができ、注入作業能率を向上できる。その注液後、直ちに充電した時や車両に搭載し、走行した場合にも、電解液が漏出することを防止できる。
請求項2に係る発明によれば、電槽の両端のセル室に収容された極板群を挟持することができるばかりでなく、電槽の両端のセル室内へ注入した電解液は、極板群の1側面に圧接した垂直リブ間の夫々の凹溝を流下し極板群の1側から浸透することに加え、極板群の他側面に圧接した膨出端壁に形成した夫々の垂直凹溝を流下し極板群の他側から浸透するので、上記の電解液の注入時などにおける電解液の漏出防止効果が増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施形態の1例を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明のモノブロック電槽の1例の平面図、図2はその一部裁断側面図、図3はその底面図、図4はその横断面図を示す。
図面でAは、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂を射出成形して作製したモノブロック電槽を示す。該モノブロック電槽Aは、長方形の四周壁から成る該電槽1と、その内部を6個のセル室2,2,…に区画する5枚の隔壁3,3,…とから成ることは従来のモノブロック電槽と同じ構成である。本発明によれば、各該隔壁3の下部を、二股に分岐傾斜した後下垂して電槽底壁1bに連接した二重の膨出隔壁3a,3aに形成する。従って、該二重の膨出隔壁3a,3aによりその間には電槽底面に開口する凹部4が形成されることとなる。而して、各膨出隔壁3aの断面形状は、垂直壁面3a1と傾斜壁面3a2を有するものに形成されている。
5枚の隔壁3,3,…に対応する5個の底面に開口する凹部4,4,…は、その底面の幅方向の略全長に亘る1つの長手の凹部に形成してもよいが、電槽1の補強のため、図3に示すように、その底面の幅方向の中央において分割壁1cで2つに分割されたものに形成した。
一方、その各隔壁3の上部の両側面には、その幅方向に所望の間隔を存し、複数条の、実施例では6条の垂直リブ5,5,…を配設し、その垂直リブ間5,5に垂直凹溝6,6,…を形成した。
而して、各垂直リブ5の突出度を膨出隔壁3aの垂直壁面3a1と同じつら位置とした場合は、各セル室2内に、肉薄とした正極板及び負極板をセパレータを介して積層して成る極板群7を挿入したとき、該正極板7の両端面の下部は、対向する該膨出隔壁3a,3aにより挟持され、その上部は対向する垂直リブ5,5により挟持され、極板群全体は各セル室2内に安定堅牢に収容された蓄電池が得られる。
【0007】
また、各垂直リブ5の突出度を、該膨出隔壁3aの該垂直壁面3a1の突出度より突出させると共に下垂させ、その下垂部は該膨出隔壁3aに合体させるように構成してもよい。
更に詳細には、図示の例では、該膨出隔壁3aの該垂直壁面3a1より0.1mm程度該垂直壁面3a1とほぼ同じつら位置に僅かに突出させると共に下垂させ、その下垂部を該膨出隔壁3aの該垂直壁面3a1と一体となり、且つセル室2の底面に達する長手の垂直リブ5に形成したものを示す。かくして、各セル室2内に肉薄とした正極板及び負極板をセパレータを介して積層して成る極板群7を挿入したときの挿入抵抗が少なくなると共に、その極板群7の両端面の下部は対向する垂直リブ5を介して膨出隔壁3a1,3a1で挟持され、その上部は対向する垂直リブ5,5で挟持されるので、極板群7を各セル室2内に安定堅牢に収容された蓄電池が得られる。
【0008】
該膨出隔壁3aの高さと該垂直リブ5の高さを合わせた全高は、予め、セル室2に収容される極板群の高さより高くなるように、図示の例では、僅か高くなるように設定した。本発明において、「該隔壁3の下部」とは、セル室に収容される極板群の高さより低いセル室2の底面からの高さ個所を意味する。このことは、該隔壁3の下部に設けた膨出隔壁3aの上端は、該極板群の高さより低い位置に在り、而して、膨出隔壁3aの上部の側面に設ける垂直リブ5は、その上端が該極板群の上端と少なくとも略同じ高さ、即ち、極板群の両端面の極板の上端と少なくとも略同じ高さとなるように設けられるようにすることを意味する。
【0009】
また、該電槽1の両端壁1a,1aは、その両端のセル室2,2内に収容される上記の極板群の高さにほぼ等しい高さに相当し、その端面を圧接するに適した垂直壁面が形成するように内方へ屈曲膨出させた膨出端壁に形成した。図示の例では、該膨出端壁1a,1aの夫々は、その内面に幅方向に一定の間隔を存して、上端からセル室2の底面に達する垂直凹溝9を凹設し、その相隣る垂直凹溝9,9間に、極板群7の端面を圧接するリブ10を形成した。かくして、その両端の各セル室2内に極板群を挿入したとき、その極板群の両端面は、その内側の隔壁3の下部の膨出隔壁3a及びその上部の側面に配設した垂直リブ5,5,…と膨出端壁1aのリブ10,10,…により挟持されるようにすると共に、垂直凹溝9,9,…は電解液流入用通路として作用するようにした。
【0010】
かくして、上記のように構成したモノブロック電槽Aの各セル室2に仮想線で示すように極板群7を収容するときは、上記のようにセル室2内に挟持固定されると同時に、セル室2,2,…を区画する各隔壁3には、その上部3bの両側面にはその幅方向に各垂直リブ5,5が配設されているので、中間の各セル室2に挿入された極板群7の両端面と、これに圧接した該垂直リブ5,5,…との間には、垂直凹溝6,6,…による電解液流入用通路が形成されることとなる。また、電槽1の両端の各セル室2に収容された極板群7の両端面の一方の端面は、これに圧接した垂直リブ5,5,…との間には垂直凹溝6,6,…による電解液流入用通路が形成される。
【0011】
上記のように、本発明の該モノブロック電槽Aに極板群7を組み込んだ後、常法により、各相隣る極板群7,7の正,負ストラップから立ち上がる中間極柱をセル間接続用貫通孔8,8,…を介して互いに溶接して、直列に接続し、モノブロック電槽Aに気液密に蓋(図示しない)を施すと同時に、両端の極板群に設けた正,負極柱を蓋の挿通孔より外部に挿通突出させ、各セル室2に対応して蓋に設けた注液口より所定の一定量の電解液を注入した後、液口栓を施し、蓄電池とする。
【0012】
本発明の上記のモノブロック電槽Aは、その各セル室2に所定量の電解液を注入したとき、その中間のセル室2,2,…へ注入された電解液は、速やかに極板群7の両側の電解液流入用通路を流下し、極板群7内にその両側面から浸透するので、極板群7の上部空間に滞留し外部へ溢出することがなく所定量の電解液の注入作業が円滑、迅速に行うことができ、従来のモノブロック電槽の電解液の漏出の問題が解消される。この場合、前記のように、該垂直リブ5,5,…が該膨出隔壁3aの該垂直壁面3a1まで下垂合体させるときは、これら垂直リブ5,5,…間に電解液注入用通路が形成されるので、更に液漏れ防止効果が向上する。また、両端の各セル室2へ注入された電解液は、極板群7の内側の端面に圧接した夫々の隔壁3に配設の垂直リブ5,5,…間に形成されている電解液流入用通路を流下し、極板群7内にその1側から浸透し、極板群7の上方に滞留することなく所定量の電解液の注入作業が円滑、迅速に行うことができ、電解液の漏出を防止できる。また、製造した蓄電池への注入作業終了後直ちに充電しても電解液の漏出がなく、更にまた、蓄電池を自動車、自動二輪車などに搭載し、走行しても、電解液の漏出は全く認められなかった。
【0013】
尚、本発明の上記のモノブロック電槽において、その各膨出隔壁3aは前記のように、の二股部の相当する部分はセル室2の内方に至るに従い下向きの傾斜面3a2に形成しており、また、各垂直リブ5の上端面は同様にセル室2の内方に至るに従い下向きの傾斜面5aに形成することにより、電解液の流下による極板群7への浸透作用を促進することができる。
【0014】
尚また、上記のモノブロック電槽Aの電槽1の夫々の膨出端壁1a,1aの垂直壁面に、その幅方向に間隔を存し、且つ上端から下端に達し開口する複数条の、実施例では5条の垂直凹溝9,9,…を形成し、その両端の各セル室2内に上記の極板群を挿入したとき、その膨出端壁1aに圧接した極板群7の端面との間に、これら垂直凹溝9,9,…による電解液流入用通路を形成することが好ましい。これにより、各両端のセル室2,2に注入した電解液を電解液流入用通路に深く流入させることができ、従って、これに対面する極板群の1端面へその高さ全長に亘り浸透せしめることができ、電解液の注入作業が一層速やかに行われると共に電解液の漏出防止効果が向上する。
【0015】
次に、本発明のモノブロック電槽の更に具体的な実施例につき説明する。
実施例
本発明のモノブロック電槽Aの寸法の具体例を下記に詳述する。
該電槽1の四周壁の高さは約70mm、該電槽1をセル室2,2,…に区画する各隔壁3の高さは約70mmとし、5枚の該隔壁3,3,…にその上部の1側に左右交互に配設された中間極柱接続用貫通孔8を有する側には、その上方に電槽1より約5mm上方に突出させた台形の突出壁を有する。各該隔壁3の下部に形成した二股に分岐した各膨出隔壁3aの高さはセル室2の底面から約25mmとし、その垂直壁面3a1の高さは約20mm、傾斜壁面3a2の高さは約5mmとし、電槽底面に開口する凹部4の深さは約20mm、開口幅は約5mmとした。該隔壁3の上部3bの両側に突出する各垂直リブ5の高さは約30mm、そのうち、その垂直面の高さは約25mm、その上端の傾斜面5aの高さは約5mm、その隔壁3の側面からの突出度は、図示の例では、膨出隔壁3aの垂直壁面3a1より0.1mm程度突出する約3mm、その幅は約5mmとし、上記の垂直リブ5,5間には5mm幅の垂直凹溝6を形成した。図示の実施例の該垂直リブ5のセル室2の底面から垂直面の上端までの長手の垂直リブ5の垂直面までの高さは約30mmとし、かくして、各セル室2に収容すべき高さ約52mm、積層方向の厚さ略10mmを有する極板群7を収容したとき、極板群7は、該垂直リブ5の垂直面の上端より約2mm上方に突出するようにした。また、電槽1内の中間の各セル室2内の対向する垂直リブ5,5間の幅は、収容される極板群7の両端面の極板に圧接し極板群7を挟持固定するに適した約5mmとした。また、電槽1の両端の端壁1a,1aについては、該隔壁3の垂直リブ5の上端に対応する位置で内方へ膨出させて垂直内面の高さ約55mmを有する膨出隔壁1a,1aに形成し、その各膨出端壁1aの高さ約50mmの垂直内面とこれに対向する内側の隔壁3に配設の各垂直リブ5との間に極板群7を挟持するに適した約10mmの幅となるように両端のセル室2,2内を構成した。また、その膨出端壁1aの垂直内面に凹設した各垂直凹溝9は幅約5mm、深さ約0.5mmとし、相隣る該垂直凹溝9,9内の間隔は約3mmとし、垂直凹溝9,9間に形成した極板群7の端面を圧接するリブ10の幅は約3mmとした。
【0016】
上記のモノブロック電槽Aの二股に膨出する隔壁を成形するに当たり、該底面に開口する凹部4の深さを20mm程度と比較的浅くすることにより、形成鋳型のコア部分の変形がなく、歩溜り良く成形することができ、その深さを例えば30mm程度とすると、コアの長さも長くなり、変形が生じ、歩溜りが悪くなる傾向となるので、その深さを25mm程度までに止めることが好ましいことが判った。
【0017】
このように構成したモノブロック電槽Aに肉薄の正極板1枚と肉薄の負極板2枚とをセパレータを介して交互に積層して成る極板群7を多数用意し、常法により、夫々の極板群7に、極板の耳にストラップ、セル間接続のための中間極柱を具備した中間セル室用のものとストラップに正極柱及び負極柱を具備した両端のセル室用のものを作製し、夫々のセル室2に収容し、相隣る中間極柱を該隔壁の中間極柱接続用貫通孔8を介して溶接し、直列に接続した後、該モノブロック電槽Aに正,負極柱挿通孔を突設した蓋を該正,負極柱を通し乍ら気液密に施し、次いで、注液口により各セル室内に一定量の電解液を速やかに注入した。この注入作業において、全く電解液の溢出がなく注入作業を完了できた。次いで、該蓋の各注液口を排気孔を有する液口栓で塞ぎ、二輪車用鉛蓄電池を製造した。
【0018】
従来例
従来の前記特許文献1に倣い、凹部の高さ、即ち、二股に分岐した膨出隔壁の高さを、セル室に収容される上記極板群の高さにほぼ等しい高さ約54mm(上記実施例のリブの上端の高さに相当)とし、その電槽の両端の膨出端壁の内面には、本発明の凹溝を各全面平坦な垂直面に形成した以外は、上記実施例と同じ構成のモノブロック電槽を成形し、これを用いて上記実施例と同様に、各セル室内に同じ一定量の電解液を時間をかけて徐々に注入した。(実施例と同じ速さで注入すると、液口から溢れることがしばしばあった)。かくして、実施例と同様にして二輪車用鉛蓄電池を製造した。
【0019】
比較試験
更に、上記の実施例の蓄電池と従来例の蓄電池につき、電解液を注液した後、5分間放置後に以下の1CAの充電電流を流し、液口栓の排気孔からの液漏れの有無を調べた。
その結果、従来の蓄電池は充電開始直後に液漏れが確認された。これに対し、本発明の蓄電池は充電開始後1時間経過しても液漏れは認められなかった。
更に、従来例のモノブロック電槽と実施例のモノブロック電槽を用い、夫々の即用蓄電池を製造し、電解液を注液した後、オートバイに搭載してオフロードを15分走行した。その結果、従来の蓄電池からの電解液の漏れが認められた。これに対し、本発明の蓄電池からは全く液漏れは認められなかった。
以上から明らかなように、本発明のモノブロック電槽を用いた蓄電池は、電解液の注液を迅速に行うことができると共に、その注液後直ぐに次の充電などの作業を行っても液が漏れ出ることもなく、また、車両用蓄電池として産業上の利用価値大である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の1例の蓄電池用モノブロック電槽の平面図。
【図2】図1のI-I線裁断面図。
【図3】同電槽の底面図。
【図4】図1のII-II線裁断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 電槽
1a 電槽の膨出端壁
2 セル室
3 隔壁
3a 膨出隔壁
5 垂直リブ
6 垂直凹溝
7 極板群
9 膨出端壁内面の垂直凹溝
10 凸条
A 本発明のモノブロック電槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電槽内の各隔壁の下部を、二股に分岐下垂して電槽底壁に連接した二重の膨出隔壁に形成する一方、該隔壁の上部の両側面にその幅方向に間隔に存し、該膨出隔壁面と同じ面位置まで突出させた複数条の垂直リブ又は該膨出隔壁面より突出させると共に下垂させ、その下垂部を該膨出隔壁と合体せしめた複数条の垂直リブを配設すると共に該垂直リブ間に垂直凹溝を形成し、各セル室内に収容される極板群の両端面の下部を対向する該膨出隔壁又は垂直リブを介した該膨出隔壁で挟持し、その上部を対向する該垂直リブで挟持するようにしたことを特徴とするモノブロック電槽を備えた蓄電池。
【請求項2】
該電槽の極板群の積層方向の両端壁を、その両端のセル室に収容される極板群の高さとほぼ等しい高さに相当する壁部において、内方へ屈曲膨出した端壁に形成すると共に、該膨出端壁の内面にその幅方向に所定の間隔を存し、複数条の垂直凹溝を形成したことを特徴とする請求項1に記載のモノブロック電槽を備えた蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−26711(P2009−26711A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191564(P2007−191564)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】