説明

モノマー、樹脂及び該樹脂を用いたレジスト組成物、並びに、該レジスト組成物を用いた半導体装置の製造方法

【課題】レジストに必要な透明性や酸反応性を損なうことなく、装置汚染の原因となる溶出や脱ガスの恐れが少ない酸発生側鎖としてのスルホニウム塩含有側鎖を含有する樹脂、及び該樹脂の構成成分としてのモノマーの提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表されることを特徴とするモノマー。
【化16】


・・・一般式(1)
前記一般式(1)において、R及びRは、−H基及び−CH基のいずれかであり、各々同一でも異なっていても良い。前記一般式(1)において、Rは、フェニル基及びアダマンチル基のいずれかを示す。前記一般式(1)において、Qは、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なモノマ、該モノマーを構成成分とするスルホニウム塩含有側鎖を含有する樹脂、及び該樹脂を用いたレジスト組成物、並びに、該レジスト組成物を用いた半導体装置の製造方法に関する。詳しくは、樹脂自体が露光によって分解して酸を発生する部分を有し、酸発生剤の膜中の分布の偏りが無く、従って、溶出や脱ガスの可能性が低く、高感度で微細なパターンの形成を可能にするモノマー、樹脂、及び該樹脂を用いたレジスト組成物、並びに、該レジスト組成物を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体集積回路は高集積化が進み、それに伴って最小パターンサイズは100nm以下の領域に及んでいる。微細パターンの形成には、薄膜を形成した被処理基板上(被加工面)をレジスト膜で被覆し、選択露光を行った後に現像してパターンを作り、これをマスクとしてドライエッチングを行い、その後にレジストパターンを除去することにより所望のパターンを得る露光技術が非常に重要である。
【0003】
パターンの微細化を図るためには、露光光源の短波長化と露光光源の特性に応じた高解像度を有するレジスト材料の開発の両方が必要とされる。現在は、ArFエキシマレーザ露光装置が市販されているが非常に高価であり、さらに、露光光源を短波長化するためには、露光装置の更新が必要となり、莫大なコストを要する。また、短波長露光に対応するためのレジスト材料開発も容易ではないため、露光光源の短波長化だけで微細化を進めることは非常に困難である。
【0004】
そこで、最近、新しい露光技術として液浸露光法が注目されている。これは、露光装置の投影レンズとウェハの間に屈折率nが空気よりも大きな液体を満たすことで、従来よりも解像度を向上することができるものである。
露光装置の解像度は以下の計算式(1)で表される。
解像度R=係数k×光源波長λ/開口数NA・・・計算式(1)
上記計算式(1)から分かるように、露光光源の光源波長λが短く、投影レンズの開口数NAが大きいほど解像度Rが向上する(解像度Rの値が小さくなる)。ここで、開口数NAは、NA=n×sinαで表され、nは露光光が通過する媒質の屈折率を表し、αは露光光が形成する角度を表す。通常、露光は大気中で行われるため、屈折率n=1であるが、液浸露光法では、投影レンズとウェハの間に屈折率n=1よりも大きい液体を満たす露光方式である。よって、液浸露光法では、開口数NA=n×sinαにおいて、屈折率が1からn(1より大きな数)に拡大されることになり、同一の露光光の入射角αでは、NAがn倍に拡大されるため解像度R(最小解像寸法)を1/nに縮小することができる。また、NAの値が同じ場合であっても、nを拡大することによってαを小さくできるために焦点深度をn倍に拡大することができるという利点がある。
【0005】
このような空気よりも屈折率の大きな液体を使った液浸法は、顕微鏡の分野では既知の技術であるが、微細加工技術への本格的な適用に向けた開発は始まったばかりであり、問題点も徐々に明らかになってきている。その大きな問題点の一つとして、投影レンズとウェハの間の液体(ここでは具体例として水を挙げる)にレジスト膜が曝されることで、露光の際にレジスト膜中に発生する酸が水中に染みだす(溶出する)ことによるレジストの感度低下が挙げられる。また、レジスト膜中に水が浸透した状態でエキシマレーザ光が照射された場合、従来のドライの雰囲気では起きなかった化学反応によってレジスト本来の性能が損なわれたり、溶出物によって露光装置のレンズ等を汚す原因になると言われている。
【0006】
さらに次世代の露光技術として、EUV(極端紫外線、波長13.5nm)光源を用いた微細加工技術の開発も近年盛んになってきており、最近、α−デモツールと呼ばれる露光装置が試験稼働を始めており、レジスト開発の環境も徐々に整いつつある。従って、高真空中で行われるEUV露光技術に対応可能なレジストの開発もまた望まれている。高真空中での露光における最大の課題は、レジスト膜からの脱ガス(アウトガス)を低減させると同時に、感度、解像度、ラフネスと言ったレジストに本来要求される性能を実現させることである。脱ガスが多いと、反射投影光学系にコンタミネーションが堆積し、光学系ミラーの反射率が低下するため、こうした脱ガスを可能な限り低減させるレジスト材料の開発もまた急務である。最近の研究によって、化学増幅型レジストに含まれる酸発生剤の露光による分解生成物がミラーを著しく汚染する脱ガスの発生源として注目されている。
【0007】
こうした液浸露光におけるレンズ等の汚染は、従来LC−MSなどで定量されている酸発生剤のアニオン部分ではなく、露光により分解するカチオン部分の分解物が主な汚染源である可能性が指摘されていることから、カチオン部分が溶出しにくい構造のものが望まれる。また、EUV露光においても、ミラーの汚染は炭化水素系物質が主要因であるとの報告があり、どちらの露光法においても酸発生剤のカチオン部分の構造への工夫が必須であると考えられる。
【0008】
上記したように、液浸露光法、EUV露光法のいずれでも、レジスト自体やそれに含まれる主たる汚染要因の酸発生剤による露光装置等の汚染防止を考慮する必要があるが、いたずらに含有量を下げると、感度や解像度の低下を招くため、こうした手段は採用しにくい。酸発生剤の構造を最適化し、前記した溶出や脱ガス低減を図る方法も試みられているが、リソグラフィ性能と両立させることは非常に難しく、開発に時間がかかるのは言うまでもない。
【0009】
こうした問題を克服するため、従来のように酸発生剤を添加するのではなく、基材樹脂自体に酸発生側鎖を導入し、溶出や脱ガス低減を図る方法も提案されており、有力な解決策の一つとして注目されている(例えば、特許文献1〜4参照)。この手法では、酸発生側鎖がレジスト膜中に均等に存在することに加え、樹脂側鎖の酸解離性基にも距離的に近いことから、従来の酸発生剤添加に比べ、一般的により少ない含有量でレジストが機能することが知られており、脱ガスや溶出にさらに有利に働く。しかしながら、こうした酸発生剤側鎖を有するモノマ、およびこれを用いた樹脂は多くは知られておらず、また多くは芳香族環を複数有するためArF光源での透明性も低下するなど問題もあり、材料の選択肢を広げ、容易に製造することができる材料の開発が望まれている。また、上述したように、カチオン部分が溶出あるいは脱ガスしにくい構造を併せ持つものはこれまでのところ知られていない。
【0010】
【特許文献1】特開2004−162040号公報
【特許文献2】特開2007−161987号公報
【特許文献3】米国特許第7,049,044号公報
【特許文献4】特開2007−197718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、レジストに必要な透明性や酸反応性を損なうことなく、装置汚染の原因となる溶出や脱ガスの恐れが少ない酸発生側鎖としてのスルホニウム塩含有側鎖を含有する樹脂、及び該樹脂の構成成分としてのモノマーを提供することを目的とする。
また、本発明は、前記樹脂を用いたレジスト組成物、及び前記レジスト組成物を用いて微細なレジストパターンを形成する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に列挙した通りである。即ち、
本発明のモノマーは、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【化2】

・・・一般式(1)
前記一般式(1)において、R及びRは、−H基及び−CH基のいずれかであり、各々同一でも異なっていても良い。前記一般式(1)において、Rは、フェニル基及びアダマンチル基のいずれかを示す。前記一般式(1)において、Qは、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。
【0013】
該モノマーにおいては、スルホニウム塩を含有するので、このモノマーを構成成分とする樹脂をレジスト基材樹脂の少なくとも一部に用いることにより、酸発生側鎖をレジスト膜中に均等に存在させることに加えて、側鎖の酸解離性基が距離的に近いことから、より少ない含有量でレジストを機能させることができ、もって、レジストに必要な透明性や酸反応性を損なうことなく、装置汚染の原因となる溶出や脱ガスの恐れを少なくすることができる。
【0014】
本発明の樹脂は、前記モノマーを構成成分とするスルホニウム塩含有側鎖を含有することを特徴とする。
【0015】
該樹脂においては、スルホニウム塩含有側鎖が取り込まれているので、樹脂をレジスト基材樹脂の少なくとも一部に用いることにより、酸発生側鎖をレジスト膜中に均等に存在させることに加えて、側鎖の酸解離性基が距離的に近いことから、より少ない含有量でレジストを機能させることができ、もって、レジストに必要な透明性や酸反応性を損なうことなく、装置汚染の原因となる溶出や脱ガスの恐れを少なくすることができる。
【0016】
本発明のレジスト組成物は、前記樹脂をレジスト基材樹脂の少なくとも一部に用いること特徴とする。
【0017】
該レジスト組成物においては、前記樹脂をレジスト基材樹脂の少なくとも一部に用いることにより、酸発生側鎖をレジスト膜中に均等に存在させることが可能になることに加えて、側鎖の酸解離性基が距離的に近いことから、より少ない含有量で酸脱離反応を進行させることができ、もって、レジストに必要な透明性や酸反応性を損なうことなく、装置汚染の原因となる溶出や脱ガスの恐れを少なくすることができる。
【0018】
本発明の半導体装置の製造方法は、被加工面上に、前記レジスト組成物からなるレジスト膜を形成する工程と、大気中での露光、真空中での露光、及び液浸露光のいずれかにより、前記レジスト膜に露光光を選択的に照射する工程と、前記レジスト膜を現像し、前記レジスト膜のパターンを形成する工程とを含むことを特徴とする。
該半導体装置の製造方法では、被加工面上に、前記レジスト組成物からなるレジスト膜が形成され、大気中での露光、真空中での露光、及び液浸露光のいずれかにより、前記レジスト膜に露光光が選択的に照射され、前記レジスト膜が現像され、前記レジスト膜のパターンが形成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、前記目的を達成することができる。
本発明によれば、少ない酸発生剤含有量で高感度化し、ラフネスが小さい微細加工を可能にするモノマーと、これを含んでなる樹脂及び該樹脂を用いたレジスト組成物、並びに、該レジスト組成物を用いた半導体装置の製造方法を提供することができる。また、溶出や脱ガスの恐れが少なく、ArF液浸露光のみならず次世代のEUV露光法でも有利に使用でき、デバイス製造の量産性に大きく寄与するモノマーと、これを含んでなる樹脂及び該樹脂を用いたレジスト組成物、並びに、該レジスト組成物を用いた半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(モノマー)
本発明のモノマーは、一般式(1)で表される化合物である。このモノマーは、スルホニウムカチオン部が、重合されて得られる樹脂の側鎖に存在する構造を取ることにより、溶出や脱ガスを低減するものである。以下、モノマー及びその製造方法について説明する。
【0021】
【化3】

・・・一般式(1)
【0022】
前記一般式(1)において、R及びRは、−H基及び−CH基のいずれかであり、各々同一でも異なっていても良い。また、前記Rとして、トリフルオロメチル基も好適に使用できる。前記一般式(1)において、Rとして、フェニル基、アダマンチル基、これらの誘導体を好適に使用できる。チオピラン環上には、イオウ原子のαもしくはβ位にケトン基を有していても良い。前記一般式(1)において、Qとして、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基等が挙げられる。また、QSOとしては、Qを含むパーフルオロアルカンスルホン酸アニオン、パーフルオロジスルホンイミド、ビストリフルオロメタンスルホンイミドなどのアニオンを好適に使用できる。
【0023】
このようなモノマーとしては、例えば、以下のような化合物を挙げることができる。下記の式中、アニオン部Yは、下記のパーフルオロアルキルスルホン酸、ジスルホンイミド及びビススルホンイミドのいずれかのアニオンを表す。
【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
<モノマーの製造方法>
これらのモノマーは公知の方法に準じて合成することが可能であり、得られる樹脂において側鎖となる部分にチオピランを有するモノマー前駆体は、一般的には、酸クロリドとアルコール体、もしくはチオール体のエステル化反応によって得ることができる。さらに詳述すれば、例えば乾燥させた塩化メチレンなどの溶媒にアルコール/チオール体とトリエチルアミンなどの塩基性触媒を等モル仕込んで、0℃〜−20℃に冷却後、例えばアクリル酸クロリドを滴下ロートから攪拌下に滴下し、原料の消失を薄層クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーで確認後、トリエチルアミン塩を除去し、例えばカラムクロマトグラフィーで精製することによって容易に目的化合物を得ることができる。
【0029】
得られたモノマー前駆体と、例えばフェナシルブロマイドをアセトニトリルやニトロメタン中室温で混合することによって、容易に対応するスルホニウムブロマイドが得られる。これと、例えば、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムをニトロメタン中室温で混合することによって、目的とするスルホニウムパーフルオロブタンスルホネートを得ることができる。また、これを再結晶することによって、さらに精製することが可能である。
【0030】
(樹脂)
前記樹脂としては、前記モノマーを構成成分とするスルホニウム塩含有側鎖を含有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、その他の構成成分(モノマー成分)との共重合体であってもよい。
【0031】
<樹脂中におけるモノマーの含有量>
前記樹脂(ポジ型レジスト用樹脂)中における本発明のモノマーの含有量であるが、露光波長での透明性や、目的とする感度、解像度などの面から十分考慮して決定すると良い。好ましい範囲としては、0.1〜50mol%が挙げられるが、より好ましくは1〜10mol%の範囲である。
【0032】
<その他の構成成分>
前記モノマーと共重合させるその他の構成成分(モノマー成分)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酸反応性基を有する構成成分が好ましい。ポジ型レジスト用樹脂は、通常それ自体がほぼアルカリ不溶であるが、前記酸反応性基が反応した後は、樹脂がアルカリ可溶性になる。
【0033】
<<酸反応性基>>
前記酸反応性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来から使用されている各種のものが使用できる。
具体的には、前記酸反応性基としては、t−ブチル基に代表される3級エステル類や、エトキシエチル基に代表されるアセタール基、2−オキソシクロヘキシル基、2−アルキル−2−アダマンチル基、1−アルキル−1−シクロペンチル基、1−アルキル−1−シクロヘキシル基、2−アダマンチルオキシメチル基、1−メチルアダマンチルオキシメチル基などが好ましい。中でも、2−アルキル−2−アダマンチル基、2−アダマンチルオキシメチル基、1−メチルアダマンチルオキシメチル基などの縮合炭化水素基を有する酸反応性基は、レジストに必要なエッチング耐性と193nmでの透明性を兼ね備えているため、より好ましい。また、EUV露光に適用する場合では、上述した酸反応性基以外に、アセタール系官能基、tert−ブトキシカルボニル(tBOC)基なども好ましく使用できる。
【0034】
また、前記ポジ型レジスト用樹脂は、前記酸反応性基を有するモノマー成分を構成成分とし、ラクトン誘導体からなるモノマー成分を構成成分とすることも好ましい。ラクトン環は、極性が高いため、レジストパターンの密着性に寄与するほか、弱いアルカリ可溶性をも有しているため、露光部分に好適なアルカリ可溶性を付与できる。
【0035】
<<ラクトン誘導体>>
前記ラクトン誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、各種γ−ブチロラクトン基、δ−ラクトン基の他、ノルボルナンやシクロヘキサン環と複合した脂環式ラクトンが好ましい。脂環式ラクトンは、エッチング耐性にも寄与できるため、特に好ましい。
【0036】
前記一般式(1)で表されるモノマーユニット、前記酸反応性基を有するモノマー成分、及び前記ラクトン誘導体からなるモノマー成分を、それぞれ構成成分として含む樹脂の場合、これらの組成比は任意であるが、解像性及びエッチング耐性が両立できる比率に調整することが重要である。
【0037】
さらに、前記一般式(1)で表されるモノマーを構成成分とするスルホニウム塩含有側鎖を含有するポジ型レジスト用樹脂には、上記した以外の機能を有するモノマー成分を含んでいても良い。このようなモノマー成分としては、例えば、得られる樹脂において側鎖となる部分にカルボキシル基、ヘキサフルオロカルビノール基などのアルカリ可溶性基を有するもの、2−ヒドロキシエチル基や3−ヒドロキシアダマンチル基などに代表される水酸基を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、レジスト自体の基板密着性や、露光部のアルカリ溶解速度などを総合的に判断して含有量を慎重に決める必要がある。前記一般式(1)で表されるモノマーユニットを構成成分とするスルホニウム塩含有側鎖を含有するポジ型レジスト用樹脂は、上述したような特徴を備えたモノマーユニットを適宜含有して良い。好ましい樹脂の形態としては、アクリル系モノマーを構成成分とする樹脂、ノルボルネン系モノマーユニットを構成成分とするハイブリッド型樹脂、スチレンモノマーやパラヒドロキシスチレン系モノマーが組み合わされてを構成成分とする樹脂、あるいはこれらを含む比較的分子量の低い(2,000以下)のオリゴマーやガラス状分子など、適用する波長や必要なエッチング耐性などから総合的に判断して良い。
【0038】
(レジスト組成物)
前記レジスト組成物としては、前記一般式(1)で表されるモノマーを構成成分とするスルホニウム塩含有側鎖を含有する樹脂を含有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記レジスト組成物がポジ型レジスト組成物である場合は、感度や解像度の微調整に、前記樹脂の他に従来汎用されている酸発生剤を含有していてもよい。また、前記レジスト組成物が、溶剤、クエンチャー、界面活性剤を含有していてもよい。
【0039】
<酸発生剤>
前記酸発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知のものを使用でき、例えば汎用されるトリフルオロメタンスルホン酸塩やパーフルオロブタンスルホン酸塩の他、環境問題で懸念されているPFAS(パーフルオロアルキルスルホン酸)フリーな構造にすることが可能なジスルホンイミド塩などが好適に使用できる。これらは、スルホニウム塩含有側鎖を含有する基材樹脂を補助する目的で加えられる。添加量は、感度や解像度との兼ね合いとなるが、概ね樹脂100部に対して0.01〜10質量部程度が好ましい。
【0040】
<溶剤>
前記溶剤としては、前記レジスト組成物がポジ型レジスト組成物である場合、一般的にレジストに用いられている溶剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂や酸発生剤、その他添加剤などの総合的な溶解性、および塗布性を考慮して選択することが好ましい。このような溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノン、乳酸エチル、シクロヘキサノンなどが好適に挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、補助溶剤を添加することも可能であり、前記補助溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチロラクトンなどが好ましく、100℃〜200℃程度の沸点を有し、樹脂の溶解度が良好な有機溶剤が特に好ましい。このような有機溶剤ならば、塗布時の急速な乾燥も抑えられ、塗布に好適である。
【0041】
<クエンチャー>
前記クエンチャーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トリ−n−オクチルアミン、2−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、ジフェニルアミン、トリエターノールアミン等に代表される窒素含有化合物が好ましい。これらクエンチャーの添加は、露光コントラストの向上に役立つものとして知られている。
【0042】
<界面活性剤>
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ナトリウム塩、カリウム塩等の金属イオンを含有しない非イオン性のものが好ましく、より詳しくはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物系、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレン誘導体系、ソルビタン脂肪酸エステル系、グリセリン脂肪酸エステル系、第1級アルコールエトキシレート系、フェノールエトキシレート系、シリコーン系、フッ素系からなる群から選ばれたものが好ましい。また、イオン性界面活性剤であっても、非金属塩系であれば、上述した以外の種類のものであっても良く、それらに代替しても基本的効果は同様に得られると考えられる。これら界面活性剤は、主に塗布性の向上を目的として適宜添加される。
【0043】
また、後述する実施例においては、スルホニウム塩を含有するモノマーユニットや前記モノマーユニットを構成成分とするスルホニウム塩含有側鎖を含有する樹脂(重合体)の製造法を取り上げたが、これら製造方法はあくまで一例であって、他の公知の手法によっても同様に得られることは言うまでもない。また、半導体装置の製造方法も取り上げたが、本発明の効果は微細パターンを有する以下のそれぞれに対しても適用して同様の作用によって得られる。例として、マスクパターン、レチクルパターン、磁気ヘッド、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、SAWフィルタ(弾性表面波フィルタ)等の機能部品、光配線の接続に利用される光部品、マイクロアクチュエータ等の微細部品等が挙げられる。また、半導体デバイスの例として、フラッシュメモリの製造工程を具体的に説明したが、これにとらわれずロジックデバイスの製造工程やDRAM、FRAM等の製造工程に適用しても同様の効果を得ることができることは言うまでもない。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
化合物の同定および評価は、NMR(JEOL JNM−GX500)、IR(Shimazu IRPrestige−21)、液体クロマトグラフ質量分析計(MS測定)(Agilent LC−MS1100series)、紫外・可視分光光度計(UV測定)(日立U−3200)、GPC(分子量測定)(東ソーHLC−8200)を用いて行った。
【0046】
(実施例1)
(スルホニウム塩含有モノマー(II)の合成)
メタクリル酸4−メチル−テトラヒドロ−2H−チオピラン−4−イル1.0g、フェナシルブロマイド1.19gを50mLの3つ口フラスコに入れ、10mLのアセトニトリルを加え、テフロン(登録商標)コーティングされたスターラーバーを入れ、室温で攪拌した。しばらくすると溶液は白濁した。そのまま20時間室温で反応させた。キリヤマロートで析出物を吸引濾過し、析出物は十分にジエチルエーテルで洗浄し、白色結晶を得た。先の洗浄液を濃縮し、得られた結晶をごく少量のニトロメタンで溶解させ、そこへ大量のジエチルエーテルを添加し、得られた結晶をキリヤマロートで吸引濾過した。先の結晶と併せて1.47gのスルホニウムブロマイド(I)を得た(収率73.8%)。
【0047】
<NMR測定結果>
H−NMR(500MHz、DMSO−d、内部標準TMS、δin ppm):1.55(d,3H)、1.92(d,3H)、2.19−2.7(m,4H)、3.49(m,4H)、5.55(dd,2H)、5.71(m,1H)、6.10(d,1H)、7.64−8.11(m,5H)
【0048】
<IR測定結果>
IR(KBr,cm−1):2,857、1,715、1,674、1,301、1,215、1,169、758
【0049】
【化8】

・・・(I)
【0050】
1.47gのスルホニウムブロマイド(I)、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム1.37gを200mLのナス型フラスコに入れ、100mLのニトロメタンを加え、テフロン(登録商標)コーティングされたスターラーバーを入れ、室温で24時間攪拌した。ロータリーエバポレータで反応溶液を約50mLに濃縮し、不溶物を濾別し、得られた濾液をさらに濃縮し油状物を得た。少量のMIBKを加え、不溶物を濾紙で濾過し、得られた有機溶液を濃縮した。得られた粗結晶を、約2mLの酢酸ブチルで再結晶を行い、キリヤマロートで吸引濾過し目的のスルホニウム塩(II)を白色結晶として0.87g得た(収率38.2%)。
【0051】
【化9】

・・・(II)
【0052】
<NMR測定結果>
H−NMR(500MHz、DMSO−d、内部標準TMS、δin ppm):1.54(s,3H)、1.92(s,3H)、2.21−2.57(m,4H)、3.2−3.59(m,4H)、5.45(s,2H)、5.70(s,1H)、6.10(s,1H)、7.64−8.10(m,5H)
【0053】
<IR測定結果>
IR(KBr,cm−1):2,920、1,713、1,676、1,277、1,256、1,132、658
【0054】
<MS測定結果>
(ESI positive ion):M319(C1823S=319.43)
(ESI negative ion):M299(CS=299.09)
【0055】
(実施例2)
(スルホニウム塩含有モノマー(IV)の合成)
メタクリル酸4−メチル−テトラヒドロ−2H−チオピラン−4−イル1.45g、1−アダマンチルブロモメチルケトン2.05gを100mLの3つ口フラスコに入れ、15mLのアセトニトリルを加え、テフロン(登録商標)コーティングされたスターラーバーを入れ、室温で20時間反応させた。その後、40℃のオイルバスにフラスコを移し、さらに6時間反応させた。ロータリ−エバポレータで溶媒を留去させ、粗結晶を得た。そこへジエチルエーテルを30mL加え、30℃程度に暖め、スパーテルで粗結晶を砕き、キリヤマロートで析出物を吸引濾過し、析出物は十分にジエチルエーテルで洗浄し、白色結晶を得た。先の洗浄液を自然濃縮させ、得られた結晶をキリヤマロートで吸引濾過した。先の結晶と併せて2.46gのスルホニウムブロマイド(III)を得た(収率74.3%)。
【0056】
【化10】

・・・(III)
【0057】
<NMR測定結果>
H−NMR(500MHz,DMSO−d,内部標準TMS,δin ppm):1.52(d,3H),1.65(m,3H),1.81(m,6H),1.91(s,3H),2.03(s,3H),2.13−2.72(m,4H),3.40(dd,4H),5.01(d,2H),5.70(d,1H),6.09(d,1H)
【0058】
<IR測定結果>
IR(KBr,cm−1):2,907、2,851、1,718、1,687、1,452、1,302、1,165、1,096、1,013、935
【0059】
2.46gのスルホニウムブロマイド(III)、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム1.12gを100mLのナス型フラスコに入れ、55mLのニトロメタンを加え、テフロン(登録商標)コーティングされたスターラーバーを入れ、室温で18時間攪拌した。ロータリーエバポレータで溶媒を留去し、粗結晶を得た。約5mLの酢酸エチルで再結晶を行い、キリヤマロートで吸引濾過し目的のスルホニウム塩(IV)を白色結晶として2.70g得た(収率95.4%)。
【0060】
【化11】

・・・(IV)
【0061】
<NMR測定結果>
H−NMR(500MHz,DMSO−d,内部標準TMS,δin ppm):1.51(s,3H)、1.66(m,6H)、1.81(s,6H)、1.91(s,3H)、2.03(s,3H)、2.11−2.73(m,4H)、3.33(dd,4H)、5.06(d,2H)、5.72(s,1H)、6.01(s,1H)
【0062】
<IR測定結果>
IR(KBr,cm−1):2,930、1,710、1,636、1,250、1,169、1,026、638
【0063】
<MS測定結果>
(ESI positive ion):M357(C2233S=357.55)
(ESI negative ion):M149(CFS=149.07)
【0064】
(実施例3)
(酸発生側鎖含有樹脂(V)の合成)
実施例1で合成したスルホニウム塩含有モノマー(II)0.25g、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル0.71g、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル0.43g、メタクリル酸γ−ブチロラクトン−3−イル0.19g、を100mLのナス型フラスコに入れ4.4mLのTHFを加え、テフロン(登録商標)コーティングされたスターラーバーを入れ、窒素ガスを15分間バブリングさせ反応系内から酸素を十分に除去した。ラジカル重合開始剤としてAIBN0.16gを加え、リービッヒ冷却管をつけた3つ口フラスコを60℃のオイルバスに入れ5時間反応させた。得られた反応溶液を室温に冷やし、THFで約10mLに希釈し、250mLのヘキサンに攪拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。ガラスフィルターで濾別後、得られた樹脂を50℃の真空乾燥炉に入れ、6時間乾燥させた。得られた樹脂を約10mLのTHFに溶解し、再び250mLのヘキサンで沈殿させ、濾別、真空乾燥させ、再度上記の操作を行って、目的の樹脂(V)を得た。収量1.07g(収率65.5%)、重量平均分子量は5,250(標準ポリスチレン換算)、分散度Mw/Mn=1.20であった。
【0065】
<IR測定結果>
IR(KBr disk,cm−1):3,443、2,916、2,860、1,790、1,721、1,450、1,256、1,161、1,101、993
【0066】
【化12】

・・・(V)
【0067】
(実施例4)
(酸発生側鎖含有樹脂(VI)の合成)
実施例2で合成したスルホニウム塩含有モノマー(IV)0.6g、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル1.12g、メタクリル酸γ−ブチロラクトン−3−イル0.74g、を100mLのナス型フラスコに入れ7mLのMIBKを加え、テフロン(登録商標)コーティングされたスターラーバーを入れ、窒素ガスを15分間バブリングさせ反応系内から酸素を十分に除去した。ラジカル重合開始剤としてAIBN0.26gを加え、リービッヒ冷却管をつけた3つ口フラスコを60℃のオイルバスに入れ5時間反応させた。得られた反応溶液を室温に冷やし、THFで約10mLに希釈し、300mLのヘキサンに攪拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。ガラスフィルターで濾別後、得られた樹脂を50℃の真空乾燥炉に入れ、6時間乾燥させた。得られた樹脂を約10mLのTHFに溶解し、300mLのメタノール−ジエチルエーテル(5:1)混合溶液で沈殿させ、濾別、真空乾燥させ、再度上記の操作を行って、目的の樹脂(VI)を得た。収量0.86g(収率36.5%)、重量平均分子量は3,680(標準ポリスチレン換算)、分散度Mw/Mn=1.14であった。
【0068】
<IR測定結果>
IR(KBr disk,cm−1):3,483、2,911、2,860、1,789、1,724、1,258、1,103、1,030、638
【0069】
【化13】

・・・(VI)
【0070】
(実施例5)
(モル吸光係数計測)
前記実施例で合成した(II)及び(IV)で表されるスルホニウム塩含有モノマーを用い、それぞれ0.1mmol/Lのアセトニトリル溶液を調製した。それぞれの溶液について、UV測定を行ったところ、下記表1の値が得られた。
【0071】
【表1】

*比較モノマー)下記(VII)の汎用酸発生剤(みどり化学製)を用い、0.01mmol/Lのアセトニトリル(CHCN)で測定した。
【0072】
【化14】

・・・(VII)
以上より、本発明のスルホニウム塩含有モノマー(モノマーII及びIV)は、193nmの波長の光において、汎用酸発生剤の1/3以下のモル吸光係数であり、248nmの波長の光においても、汎用酸発生剤よりも小さいモル吸光係数であり、透明性の観点において優れていることが分かった。
【0073】
(実験例1)
(レジスト調製)
前記実施例で合成した(II)及び(IV)で表されるスルホニウム塩含有モノマー3質量部と、下記(VIII)に示す樹脂100質量部を用い、下表に示す組成で液浸露光用レジストを調製した。レジスト溶剤にはPGMEAを用いて調製し、0.2μmのテフロンメンブランフィルタで濾過した。レジスト膜は、回転塗布後、110℃/60sでベークし形成した。露光はDUV(波長254nm)ランプを用いて行った。露光後はPEB(露光後ベーク)を下記表2に示す温度で60秒間行った。現像は、2.38質量%TMAH現像液で行った。
【0074】
【化15】

・・・(VIII)
【0075】
【表2】

【0076】
上記表2より、モノマーIIを単独で添加したレジストAにおいて、モノマーIIが酸発生剤として機能し、十分な感度が得られることが理解できる。
また、モノマーIVを単独で添加したレジストBにおいて、モノマーIVが酸発生剤として機能するものの、パターンを解像せず、潜像が確認された。これは、実施例5に示すように、露光に用いた250nm付近の波長の光におけるモノマーIVのモル吸光係数が極めて低い(透明性が高すぎる)ためと考えられる。
【0077】
(実施例6)
(レジスト調製)
前記実施例で合成した(V)、(VI)で表される酸発生側鎖含有樹脂を用い、下表に示す組成でレジストを調製し、0.2μmのテフロンメンブランフィルタで濾過した。レジスト膜は、回転塗布後、110℃/60sでベークし形成した。露光はDUV(波長254nm)ランプ、あるいはArFエキシマレーザを用いて行った。露光後はPEB(露光後ベーク)を下表に示す温度で60秒間行った。現像は、2.38質量%TMAH現像液で60秒間行った。各レジストの感度(E)を下記表3に示す。
【0078】
【表3】

上記表3より、レジストD及びEにおいて、193nmの波長の光で良好な感度が得られていることから、酸発生側鎖含有樹脂はそれ自体レジストとして機能することが理解できる。レジストEが254nmの波長の光で低感度なのは、実施例5に示すように露光に用いた250nm付近の波長の光におけるモノマーIVのモル吸光係数が極めて低く、もって樹脂VIにおける酸発生側鎖のモル吸光係数が低いためと考えられる。
【0079】
(実施例7)
(簡易レンズ汚染実験)
上記(VII)に示す汎用酸発生剤、および前記実施例で合成したモノマーの水溶液(II:10ppm、IV:約3ppm(=飽和溶液))をそれぞれ調製し、ArF透過ガラスを装備したフローセルに10mL/minの流速でそれぞれの溶液を流しながら、ArFレーザで1時間連続照射した。レーザの照射量は、ブランクセルの場合15mW/cmであった。1時間後、送液とレーザを止め、フローセルからArF透過ガラスを外し、目視にてガラスへのコンタミネーション析出を判定した。結果を図1(モノマーII)、図2(比較例)及び下記表4に示す。
【0080】
【表4】

*比較モノマー)上記(VII)の汎用酸発生剤(みどり化学製)を用いた。
【0081】
図1、図2及び表4より、従来の汎用酸発生剤では、レンズに見立てたガラス面の明らかな白濁が生じるのに対し、本発明のスルホニウム塩含有モノマーではガラス表面に白濁は生じず、汚染の原因になりにくいことが理解できる。なお、前記白濁をTOF−SIMSで分析した結果、カチオン部が光分解したと思われる物質が主成分であり、極めて水に溶解しにくい性質を持つことが分かった。
【0082】
(実施例8)
(半導体装置の製造)
図3に示すように、シリコン基板11上に層間絶縁膜12を形成し、図4に示すように、層間絶縁膜12上にスパッタリング法によりチタン膜13を形成した。次に、図5に示すように、ArF液浸露光によりレジストパターン14を形成し、これをマスクとして用い、反応性イオンエッチングによりチタン膜13をパターニングして開口部15aを形成した。引き続き、反応性イオンエッチングによりレジストパターン14を除去するととともに、図6に示すように、チタン膜13をマスクにして層間絶縁膜12に開口部15bを形成した。
【0083】
次に、チタン膜13をウェット処理により除去し、図7に示すように層間絶縁膜12上にTiN膜16をスパッタリング法により形成し、続いて、TiN膜16上にCu膜17を電解めっき法で成膜した。次いで、図8に示すように、CMPにて開口部15b(図6)に相当する溝部のみにバリアメタルとCu膜(第一の金属膜)を残して平坦化し、第一層の配線17aを形成した。
【0084】
次いで、図9に示すように、第一層の配線17aの上に層間絶縁膜18を形成した後、図3〜図8と同様にして、図10に示すように、第一層の配線17aを、後に形成する上層配線と接続するCuプラグ(第二の金属膜)19及びTiN膜16aを形成した。
【0085】
上述の各工程を繰り返すことにより、図11に示すように、シリコン基板11上に第一層の配線17a、第二層の配線20、及び第三層の配線21を含む多層配線構造を備えた半導体装置を製造した。なお、図11においては、各層の配線の下層に形成したバリアメタル層は、図示を省略した。
【0086】
この実施例では、レジストパターン14が、実施例6のレジストDを用いて製造したレジストパターンである。また層間絶縁膜12が誘電率2.7以下の低誘電率材料であり、例えば多孔質シリカ膜(セラメート NCS、触媒化成工業製、誘電率2.25)、あるいは、例えばC、C混合ガス、もしくはCガスをソースとして用いたRFCVD法(パワー400W)によって堆積されたフルオロカーボン膜(誘電率2.4)である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、モノマーIIを用いた場合の簡易レンズ汚染実験結果を示す図である。
【図2】図2は、比較例モノマーを用いた場合の簡易レンズ汚染実験結果を示す図である。
【図3】図3は、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、シリコン基板上に層間絶縁膜を形成した状態を表す。
【図4】図4は、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、図4に示す層間絶縁膜上にチタン膜を形成した状態を表す。
【図5】図5は、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、チタン膜上にレジスト膜を形成し、チタン層にホールパターンを形成した状態を表す。
【図6】図6は、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターンを層間絶縁膜にも形成した状態を表す。
【図7】図7は、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターンを形成した層間絶縁膜上にCu膜を形成した状態を表す。
【図8】図8は、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターン上以外の層間絶縁膜上に堆積されたCuを除去した状態を表す。
【図9】図9は、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターン内に形成されたCuプラグ上及びTiN膜上に層間絶縁膜を形成した状態を表す。
【図10】図10は、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、表層としての層間絶縁膜にホールパターンを形成し、Cuプラグを形成した状態を表す。
【図11】図11は、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、三層構造の配線を形成した状態を表す。
【符号の説明】
【0088】
11 シリコン基板
12 層間絶縁膜
13 チタン膜
14 レジストパターン
15a 開口部
15b 開口部
16 TiN膜
16a TiN膜
17 Cu膜
17a 配線(第一層)
18 層間絶縁膜
19 Cuプラグ(第二の金属膜)
20 配線(第二層)
21 配線(第三層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とするモノマー。
【化1】

・・・一般式(1)
前記一般式(1)において、R及びRは、−H基及び−CH基のいずれかであり、各々同一でも異なっていても良い。前記一般式(1)において、Rは、フェニル基及びアダマンチル基のいずれかを示す。前記一般式(1)において、Qは、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。
【請求項2】
請求項1に記載のモノマーを構成成分とするスルホニウム塩側鎖を含有することを特徴とする樹脂。
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂を、レジスト基材樹脂の少なくとも一部に用いることを特徴とするレジスト組成物。
【請求項4】
前記レジスト基材樹脂が、酸と反応する脂環族基が側鎖となる構成成分と、ラクトン基が側鎖となる構成成分とを含む請求項3に記載のレジスト組成物。
【請求項5】
前記酸と反応する脂環族基が、2−アルキル−2−アダマンチル基である請求項4に記載のレジスト組成物。
【請求項6】
被加工面上に、請求項3乃至5のいずれか1項に記載のレジスト組成物からなるレジスト膜を形成する工程と、大気中での露光、真空中での露光、及び液浸露光のいずれかにより、前記レジスト膜に露光光を選択的に照射する工程と、前記レジスト膜を現像し、前記レジスト膜のパターンを形成する工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記露光光の照射を液浸露光により行い、前記液浸露光に使用する媒体が、水または193nmの波長の光に対する屈折率が水よりも高い液体である請求項6に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−173832(P2009−173832A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16296(P2008−16296)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】