説明

モノマー含有組成物からモノマーを分離するための方法

【課題】可能な限り選択的かつ効率的に、少ない分離工程で、所望の純度を有するモノマーをモノマー含有組成物から分離するための方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つの二重結合を含むモノマーを、モノマーと少なくとも1種の不純物を含む組成物Zから分離するための方法であって、150℃以下の融点と20℃で1ミリバールの蒸気圧とを有する添加剤に組成物Zを接触させて分離相を形成する工程と、前記モノマーを前記分離相から分離する工程と、を含む方法、モノマー製造装置、モノマー含有組成物からモノマーを分離するための添加剤の使用、前記方法によって得られるモノマー、前記モノマーを含む化学製品、化学製品の製造におけるモノマーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの二重結合を含むモノマー(以下、「モノマー」と呼ぶ)、特に(メタ)アクリル酸をモノマー含有組成物から分離するための方法、モノマー製造装置、モノマー含有組成物からモノマーを分離するための添加剤の使用、本発明に係る方法によって得られるモノマー、本発明に係るモノマーを含む化学製品、化学製品の製造における(または製造のための)本発明に係るモノマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係るモノマーは、合成材料を合成するために使用される当業者に公知のモノマーである。本発明に係るモノマーは、28〜300g/モル、好ましくは30〜250g/モル、特に好ましくは70〜200g/モルの分子量を有する。このようなモノマーとしては、好ましくはスチレン、α−メチルスチレンなどの炭化水素のみを含むCH−モノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミドなどの炭素と水素に加えて少なくとも酸素または窒素を含むCHO/N−モノマーが挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「メタクリル酸」及び「アクリル酸」という命名法上の名称を有する化合物を意味するものとして使用する。これらの化合物のうち、本発明ではアクリル酸が好ましい。
【0003】
アクリル酸は、酸素含有ガスを使用したプロピレンの接触気相酸化によって得る場合が多い。この場合、最初に触媒による酸化によってプロピレンをアクロレインに転化させ、第2の工程では同様に触媒を使用してアクロレインをアクリル酸に転化させる(例えば、ドイツ特許出願公開第19 62 431号、ドイツ特許出願公開第29 43 707号、欧州特許出願公開第257 565号、国際公開第99/14181A1号を参照)。メタクリル酸は、イソブチレン、tert−ブタノール、メタクロレイン、イソブチルアルデヒドの接触気相酸化によっても合成することができる。
【0004】
しかし、プロピレンまたはイソブチレンの接触気相酸化といったモノマーの合成では、(メタ)アクリル酸以外に副生成物が多量に生成し、得られる合成材料は生成物をさらに処理するには純度が不十分であるため、その後の処理を直接行うことができない。プロピレンの気相酸化の場合には、特に酢酸、プロピオン酸、アルデヒド、水が不純物として生成する。
【0005】
しかし、可能な限り純粋で副生成物が少ない(メタ)アクリル酸が望まれている。例えば、体液を吸収するための物品には、アクリル酸は架橋された水吸収性ポリアクリレートとして使用される。そのような物品としては、乳児、幼児、成人の失禁のためのおむつや、月経に関連する女性用衛生用品が挙げられる。これらの物品の用途では、物品はかなり長い時間(通常は数時間)にわたって皮膚と接触した状態で使用される。これらの物品には体液が吸収されるため、物品は長時間にわたって皮膚または粘膜と湿った状態で接触する。そのため、ポリアクリレートからなるポリマーに対する毒物学的な要求は非常に高い。ポリアクリレートの製造では、高純度の出発物質、特に純度の高いアクリル酸しか使用することができない。
【0006】
したがって、高純度の(メタ)アクリル酸を得るために、(メタ)アクリル酸をできるだけ選択的に分離できるように(メタ)アクリル酸の製造プロセスで得られる気相酸化生成物を処理することが課題となっている。
【0007】
気相酸化生成物からのアクリル酸の分離に関しては、多くの方法が従来技術に記載されている。
【0008】
ドイツ特許出願公開第21 36 396号は、75重量%のジフェニルエーテルと25重量%のジフェニルの混合物を使用して、プロピレンまたはアクロレインの接触酸化で得られた反応ガスから対向流吸収によってアクリル酸を分離することを開示している。ドイツ特許出願公開第24 49 780号は、対向流吸収の前に、直接凝縮器(冷却装置)内での溶媒の部分的蒸発によって高温の反応ガスを冷却することを開示している。
【0009】
アクリル酸を含む反応生成物を高沸点溶媒において吸収する以外に、接触酸化によって生成した反応水を完全に凝縮する方法が知られている。この場合、共沸混合物による蒸留(日本国特許第1124766号、日本国特許第71 18 766号)または抽出(ドイツ特許出願公開第21 64 676号)によってアクリル酸水溶液が得られ、必要に応じて結晶化(国際公開第99/14181A1号)を行うことができる。
【0010】
上述した反応ガスからのアクリル酸の分離方法に関わらず、得られるアクリル酸の純度は架橋ポリアクリレートからなる超吸収体の製造に直接使用するには不十分である。アクリル酸をポリアクリレートに処理する場合には、単体または混合物としてのマレイン酸、オリゴマー、酢酸、プロピオン酸、アルデヒド、水が特に問題となる。
【0011】
対向流吸収によって得られる(メタ)アクリル酸含有溶媒混合物または完全凝縮によって得られる(メタ)アクリル酸水溶液からの(メタ)アクリル酸の分離や、副生成物からの(メタ)アクリル酸の分離は、蒸留、結晶化、またはこれらの組み合わせによって行うことができる(例えば、ドイツ特許出願公開第196 00 955号を参照)。しかし、単純な蒸留では、アクリル酸と沸点の近い副生成物、特にプロピオン酸(プロピオン酸:140.9℃、アクリル酸:141.6℃))を分離することができない。単一の結晶化工程による結晶化工程では満足できる純度の(メタ)アクリル酸は得られないことが多い。また、結晶化時に共晶組成物が得られる場合があり、その場合には、結晶化によって不純物として生成した副生成物から(メタ)アクリル酸を分離することはほぼ不可能である。
【0012】
米国特許第4,230,888号は、食塩の存在下での結晶化によるアクリル酸の精製方法を開示しており、共晶点は食塩の添加によって影響を受ける。この方法の欠点は、食塩を溶液として添加しなければならないため、溶媒によって望ましくない成分が分離する系に導入されてしまうことである。また、食塩は結晶化したアクリル酸とともに高濃度で沈殿するため、望ましくない多相固体−液体混合物が形成される。この混合物においては、食塩の結晶がアクリル酸の結晶以外に存在しているため、これらの固体を分離しなければならない。このような分離は非常に困難である。また、食塩の使用は腐食性が高いために不利である。
【0013】
国際公開第02/074718号は、沸点の近い混合物を分離するための蒸留におけるイオン性液体の使用を開示している。モノマーの熱安定性は低いため、モノマーの蒸留によって、望ましくないモノマーの反応生成物が生成したり、自発的な重合によってモノマーの処理が中断される場合がある。
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第19 62 431号
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第21 36 396号
【特許文献3】日本国特許第1124766号
【特許文献4】米国特許第4,230,888号
【特許文献5】国際公開第02/074718号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、モノマーまたは(メタ)アクリル酸をモノマー含有組成物または(メタ)アクリル酸含有組成物から分離するための方法に関する従来技術の欠点を克服することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、可能な限り選択的かつ効率的に、少ない分離工程で、作業を中断することなく、所望の純度を有するモノマーをモノマー含有組成物から分離するための方法を提供することにある。
【0016】
本発明のさらなる目的は、可能な限り選択的かつ効率的に、少ない分離工程で、作業を中断することなく、所望の純度を有するモノマーをモノマー含有組成物から分離するための装置を提供することにある。
【0017】
本発明のさらなる目的は、可能な限り純度の高いモノマーを提供することにある。
【0018】
本発明のさらなる目的は、モノマー含有組成物からモノマーを分離する場合に、モノマー含有組成物におけるモノマー以外に含まれる不純物の含有量を分離後に得られるモノマーにおいて可能な限り減少させることにある。
【0019】
本発明のさらなる目的は、水含有量を増加させることによって高いモノマー(アクリル酸)純度を有するモノマー水相、特にアクリル酸水溶液を得ることにある。このようなアクリル酸水溶液は、水吸収性ヒドロゲル形成ポリマーの製造のための溶液重合、エマルション重合、懸濁重合に非常に有益である。これらのポリマーの製造では、蒸留によって得られた高純度で水を含まないアクリル酸は、アクリル酸水溶液として重合処理に導入するために水と混合している。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の目的は、モノマー含有組成物からモノマーを分離するための方法、この方法を実施するための装置、モノマー含有組成物からモノマーを分離するための添加剤の使用、本発明に係る方法によって得られるモノマー、本発明に係るモノマーを少なくとも含む繊維、成形体、膜、発泡体、超吸収ポリマー、廃水処理、分散染料、化粧品、織物、皮革加工、製紙用の特殊ポリマー、衛生用品、本発明に係るモノマーの繊維、成形体、膜、発泡体、超吸収ポリマー、廃水処理、分散染料、化粧品、織物、皮革加工、製紙用の特殊ポリマー、衛生用品における使用によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る方法は、少なくとも1つ、好ましくは1つの二重結合を含むモノマーを、モノマー及びモノマーとは異なる少なくとも1種の不純物を含む組成物Zから分離、好ましくは選択的に分離するための方法であって、本明細書に記載した試験方法によって測定した融点が150℃以下、好ましくは125℃以下、特に好ましくは100℃以下であるとともに、好ましくは−80℃以上、特に好ましくは−60℃以上、さらに好ましくは−55℃以上であって、本明細書に記載した試験方法によって測定した蒸気圧が20℃において1ミリバール以下、好ましくは0.1ミリバール以下、特に好ましくは0.01ミリバール以下、さらに好ましくは0.001ミリバール以下である添加剤に組成物Zを接触させて分離相を形成する工程と、モノマーを分離相から分離する工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明に係るモノマーは、合成材料を合成するために使用される当業者に公知のモノマーである。モノマーは、28〜300g/モル、好ましくは30〜250g/モル、特に好ましくは70〜200g/モルの分子量を有する。このようなモノマーとしては、好ましくはスチレン、α−メチルスチレンなどの炭化水素のみを含むCHモノマー、好ましくは(メタ)アクリル酸、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミドなどの炭素と水素に加えて少なくとも酸素または窒素を含むCHO/Nモノマーが挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「メタクリル酸」及び「アクリル酸」という命名法上の名称を有する化合物を意味する。これらの化合物のうち、本発明ではアクリル酸が好ましい。CHO/Nモノマーとしては、炭素二重結合に加え、酸性基またはその塩、エステルなどの酸性基の誘導体、好ましくは酸性基またはその塩を有するモノマーが好ましい。このようなモノマーとしては、(メタ)アクリル酸またはその塩、メチルメタクリレート、メチルアクリレートまたはブチルアクリレートが好ましく、アクリル酸が特に好ましい。
【0023】
モノマーの合成またはモノマーの処理時に生成する、モノマーとは異なる全ての物質は不純物とみなすことができる。処理時に生成する不純物としては、水以外には有機化合物が挙げられ、特にモノマーが結合する有機化合物、好ましくは処理時(好ましくは冷却工程)にモノマーを溶解する有機化合物が挙げられる。特に好ましい不純物は水である。
【0024】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、i.イオン性液体、ii.高分岐ポリマー、好ましくはハイパーブランチ(超分岐)ポリマー、またはiii.イオン性液体及び高分岐ポリマーの少なくとも2種の混合物を少なくとも実質的に含む添加剤を使用する。
【0025】
i.イオン性液体
本発明に係る「イオン性液体」という用語は、塩、好ましくは融点が100℃未満の有機塩、特に好ましくは大気条件下(20℃、1013ミリバール)で液体状態である塩を意味する。
【0026】
一般に、イオン性液体は、特に溶媒としての使用可能性などの有利な特性によって特徴づけられ、新しい革新的な溶媒と見なされている。イオン性液体は沸点が高いため、適度な条件下では、イオン性液体は蒸気圧がほぼ0であり、液粘度も比較的低い。そのため、イオン性液体によって生成物の処理が容易になるとともに高い純度を達成することができる。また、処理された生成物にはイオン性液体がほとんど残らない。また、イオン性液体は、アニオンとカチオンの組み合わせの多様性によって、非常に柔軟な溶媒の概念を提供し、適切な組み合わせと濃度を選択することによって本発明が解決しようとする技術的課題に正確に適合させることができる。本発明に係る好適なイオン性液体に関しては国際公開第02/074718A2号(特に3〜14ページ)を参照し、国際公開第02/074718A2号の開示内容は本明細書の開示内容の一部をなすものとする。また、本発明では、英国のシオニックス社(Scionix Ltd.)から入手できるようなイオン性液体の混合物の使用も考えられる。この点に関しては、Aldrichimica Acta 第35巻,第3号,75〜83ページ,2002を参照し、当該文献も本明細書の開示内容の一部をなすものとする。
【0027】
本発明に係る好ましいイオン性液体は、窒素原子またはリン原子を含む有機化合物をカチオンとして含む。特に好ましいカチオンは、A.イミダゾリウムイオン、B.ピリジニウムイオン、C.アンモニウムイオン、D.ホスホニウムイオンからなる群から選択され、それらの構造を以下に示す。
【0028】
【化1】

【0029】
イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオンまたはホスホニウムイオンは、R,R’,R,R,R,Rが、直鎖または分岐状の飽和または不飽和、好ましくは飽和炭化水素またはポリオキシアルキレン、好ましくは炭素数1〜40、特に好ましくは炭素数1〜30、さらに好ましくは炭素数1〜10の炭化水素であることが好ましい。特に好ましいR,R’,R,R,R,R基は、互いに独立して、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、ペンチル基からなる群から選択され、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−へキシル基またはシクロヘキシル基が特に好ましい。これらの炭化水素基は他の官能基を有することもでき、それによってイオン性液体の所望の特性を調節することができる。
【0030】
これらのカチオン以外に、アルカリ金属カチオンNa,Kがカチオンとして好ましく、Naが特に好ましい。
【0031】
本発明に係る好ましいイオン性液体は、アニオンとして、ハロゲン、硫酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アルミン酸ハロゲン、ホウ酸ハロゲン、アンチモン酸ハロゲン、硝酸塩、ハロゲン化銅、ハロゲン化スズ、アルキルハロゲン化アルミニウム、アルキル亜硫酸塩、カルボン酸塩またはトリアルキルホウ酸塩からなる群から選択されるアニオンを含むことが好ましい。
【0032】
特に好ましいアニオンは、以下の群から選択されるアニオンである。
a.Cl
b.AlCl
c.AlCl
d.AlCl10
e.BCl
f.BF
g.PF
h.SbF
i.NO
j.HSO
k.CHCOO
l.CFCOO
m.CFSO
n.(CFSO
o.CuCl
p.CuCl
q.CuCl
r.SnCl
s.SnCl
t.AlEtCl
u.AlEtCl
v.n−CSO
w.CCOO
x.CH−C−SO
y.Et(C13)B
【0033】
大文字で示すカチオンと小文字で示すアニオンの考えられる各組み合わせは、イオン性液体を使用する本発明に係る方法の実施形態を構成するものである。本発明に係る方法の好ましい実施形態は、以下のイオンの組み合わせを含むイオン性液体を使用する方法である。
【0034】
Aa,Ab,Ac,Ad,Ae,Af,Ag,Ah,Ai,Aj,Ak,Al,Am,An,Ao,Ap,Aq,Ar,As,At,Au,Av,Aw,Ax,Ay,Ba,Bb,Bc,Bd,Be,Bf,Bg,Bh,Bi,Bj,Bk,Bl,Bm,Bn,Bo,Bp,Bq,Br,Bs,Bt,Bu,Bv,Bw,Bx,By,Ca,Cb,Cc,Cd,Ce,Cf,Cg,Ch,Ci,Cj,Ck,Cl,Cm,Cn,Co,Cp,Cq,Cr,Cs,Ct,Cu,Cv,Cw,Cx,Cy,Da,Db,Dc,Dd,De,Df,Dg,Dh,Di,Dj,Dk,Dl,Dm,Dn,Do,Dp,Dq,Dr,Ds,Dt,Du,Dv,Dw,Dx,Dy。
【0035】
これらのイオン性液体のうち、以下の構造を有するイオン性液体が特に好ましい。
【0036】
【化2】

【0037】
本発明に係る方法では、上述したイオン性液体は、単独または少なくとも2種の異なるイオン性液体の混合物として添加剤に使用することができる。本発明において好ましいその他のイオン性液体とその製造方法は、Angewandte Chemie,2000,112,p.3926〜3945に記載されている。この文献の開示内容はこの参照によって本明細書に組み込まれ、本発明の開示内容の一部をなすものとする。
【0038】
本発明に係る方法において好ましく使用されるイオン性液体は、以下の一般式で表されるカチオンの少なくとも1種を含む。
【0039】
(1)
【0040】
=CR (2)
【0041】
(3)
【0042】
=CR (4)
【0043】
式中、R,R,R,Rは、同一又は異なって、水素原子、任意に二重結合を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、任意に二重結合を含む炭素数5〜40の脂環式炭化水素残基、炭素数6〜40の芳香族炭化水素残基、炭素数7〜40のアルキルアリール残基、1以上のヘテロ原子(酸素、NH、NR’、(R’は任意に二重結合を含む炭素数1〜30のアルキル残基、特にCHである))を含む炭素数2〜20の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、−O−C(O)−,−(O)C−O−,−NH−C(O)−,−(O)C−NH−,−(CH)N−C(O)−,−(O)C−N(CH)−,−S(O)−O−,−O−S(O)−,−S(O)−NH−,−NH−S(O)−,−S(O)−N(CH)−,−N(CH)−S(O)−,末端OH,OR’,NH,N(H)R’,N(R’)(R’は任意に二重結合を含む炭素数1〜30のアルキル残基である)からなる群から選択される1以上の官能基を含む、任意に二重結合を含む炭素数2〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、任意に二重結合を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基または脂環式炭化水素残基、または−(R−O)−Rで示されるブロック状または統計的に構成された(statistically composed)ポリエーテルを表し、Rは炭素数2〜4の直鎖または分岐状の炭化水素残基を表し、nは1〜100、好ましくは2〜60であり、Rは、水素、任意に二重結合を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、任意に二重結合を含む炭素数5〜40の脂環式炭化水素残基、炭素数6〜40の芳香族炭化水素残基、炭素数7〜40のアルキルアリール残基、または−C(O)−R残基を表し、Rは、任意に二重結合を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、任意に二重結合を含む炭素数5〜40の脂環式炭化水素残基、炭素数6〜40の芳香族炭化水素残基、または炭素数7〜40のアルキルアリール残基を表す。
【0044】
カチオンとして使用することができるイオンは、任意に置換されていてもよい、4〜10員環、好ましくは5〜6員環の複素環に少なくとも1つの3価窒素原子を有する飽和または不飽和環式化合物または芳香族化合物から誘導されるイオンである。そのようなカチオンは、下記一般式(5),(6),(7)で簡単に(すなわち、分子中の二重結合の正確な位置と数を与えずに)示され、複素環はさらなるヘテロ原子を任意に含むことができる。
【0045】
【化3】

【0046】
式中、Rは上に定義した通りであり、Rは、水素、任意に二重結合を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、任意に二重結合を含む炭素数5〜40の脂環式炭化水素残基、炭素数6〜40の芳香族炭化水素残基、または炭素数7〜40のアルキルアリール残基を表し、Xは、酸素原子、硫黄原子または置換窒素原子を表す(X=O,S,NR’)。
【0047】
上述したような環状窒素化合物の例としては、ピロリジン、ジヒドロピロール、ピロール、イミダゾリン、オキサゾロニン(oxazolonine)、オキサゾール、チアゾリン、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、インドール、カルバゾール、ピペリジン、ピリジン、異性体であるピコリン、ルチジン、キノリン、イソキノリンが挙げられる。一般式(5),(6),(7)で示される環状窒素化合物は、置換されていなくてもよく(R=H)、単一または複数の残基Rで置換されていてもよく、複数の残基Rで置換されている場合には、各R基は異なっていてもよい。
【0048】
カチオンとして使用できるイオンは、4〜10員環、好ましくは5〜6員環の複素環に少なくとも1つの3価窒素原子を有する飽和または不飽和環状化合物または芳香族化合物から誘導されるイオンである。これらの化合物は、炭素原子または窒素原子において置換されていてもよい。また、これらの化合物は、任意に置換されたベンゼン環及び/またはシクロヘキサン環による多核構造の形成によって縮環(annelated)されていてもよい。そのような化合物の例としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、n−メチルイミダゾール、ジヒドロピラゾール、ピラゾリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、2,3−、2,5−、2,6−ジメチルピラジン、キモリン(cimoline)、フタラジン、キナゾリン、フェナジン、ピペラジンが挙げられる。特に、イミダゾール及びイミダゾールのアルキル及びフェニル誘導体から誘導される一般式(8)で示されるカチオンは、イオン性液体の成分として証明されている。
【0049】
カチオンとして使用することができる他のイオンは2つの窒素原子を含み、一般式(8)で示される。
【0050】
【化4】

【0051】
式中、R,R,R10,R11,R12は、同一又は異なって、水素原子、任意に二重結合を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、任意に二重結合を含む炭素数5〜40の脂環式炭化水素残基、炭素数6〜40の芳香族炭化水素残基、炭素数7〜40のアルキルアリール残基、1以上のヘテロ原子(酸素原子、NH、NR’、(R’は任意に二重結合を含む炭素数1〜30のアルキル残基である))を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、−O−C(O)−,−(O)C−O−,−NH−C(O)−,−(O)C−NH−,−(CH)N−C(O)−,−(O)C−N(CH)−,−S(O)−O−,−O−S(O)−,−S(O)−NH−,−NH−S(O)−,−S(O)−N(CH)−,−N(CH)−S(O)−,末端OH,OR’,NH,N(H)R’,N(R’)(R’は任意に二重結合を含む炭素数1〜30のアルキル残基である)からなる群から選択される1以上の官能基を含む、任意に二重結合を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、任意に二重結合を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基または脂環式炭化水素残基、または−(R−O)−Rで示されるブロック状または統計的に構成された(statistically composed)ポリエーテルを示し、Rは、炭素数2〜4の炭化水素残基を表し、nは1〜100であり、Rは、水素原子、任意に二重結合を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、任意に二重結合を含む炭素数5〜40の脂環式炭化水素残基、炭素数6〜40の芳香族炭化水素残基、炭素数7〜40のアルキルアリール残基、または−C(O)−R残基を表し、Rは、任意に二重結合を含む炭素数1〜30の直鎖または分岐状の脂肪族炭化水素残基、任意に二重結合を含む炭素数5〜40の脂環式炭化水素残基、炭素数6〜40の芳香族炭化水素残基、または炭素数7〜40のアルキルアリール残基を表す。
【0052】
本発明で好ましく使用されるイオン性液体は、アニオンと結合した上述したカチオンの少なくとも1種を含む。好ましいアニオンは、ハロゲン化物、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)アミド、アルキルトシラート、アリールトシラート、パーフルオロアルキルトシラート、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキル硫酸塩、アリール硫酸塩、ポリエーテル硫酸塩、ポリエーテルスルホン酸塩、パーフルオロアルキル硫酸塩、スルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、過フルオロアルキルスルホン酸塩、過フルオロアリールスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、アリールカルボン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、過塩素酸塩、テトラクロロアルミン酸塩、サッカリン塩(saccharinate)である。その他の好ましいアニオンは、ジシアンアミド、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ポリエーテルリン酸塩、リン酸塩である。
【0053】
本発明に係る方法で使用されるイオン性液体は、1〜10,000mPa・s、好ましくは2〜5,000mPa・s、特に好ましくは5〜1,000mPa・s、さらに好ましくは10〜500mPa・sの、DIN 53 019による20℃での粘度を有することが好ましい。イオン性液体は、20℃において液体であり、1,000mPa・s未満、好ましくは500mPa・s未満、さらに好ましくは100mPa・s未満の粘度を有することが好ましい。
【0054】
ii.高分岐ポリマー
本明細書において、「ハイパーブランチ(超分岐)ポリマーまたは高分岐ポリマー」という用語は、任意に不規則的に形成された球状の分子構造と、分子中に存在する多くの官能基とによって特徴づけられる革新的な材料を意味する。分子設計における高い分岐度は、例えば、低融点、低溶液粘度、多くの溶媒と比較して優れた溶解挙動といった特性の組み合わせをもたらす。
【0055】
高分岐・球状ポリマーは、専門文献では「樹枝状ポリマー(dendritic polymer)」と記載されている。樹枝状ポリマーは、「デンドリマー」と「ハイパーブランチポリマー」という2つのカテゴリーに分類することができる。デンドリマーは、樹木のような球状構造を有する非常に規則的な三次元単分散ポリマーである。デンドリマーの構造は、対称中心を示す多官能中心核と、繰り返し単位の放射状に対称的な異なる層と、末端基という3つの領域によって特徴づけられる。デンドリマーとは異なり、ハイパーブランチポリマーの分岐と構造は多分散で不規則的である。デンドリマーと、それぞれが3つの結合可能部位を有する繰り返し単位からなる高分岐ポリマーの例を以下に示す。
【0056】
【化5】

【0057】
デンドリマーとハイパーブランチポリマーの合成の様々な可能性に関してはChem.Eng.Technol.2002,25,p.237〜253を参照し、当該文献はこの参照によって本明細書に組み込まれ、本発明の開示内容の一部をなすものとする。当該文献に記載されている高分岐ポリマーも、本発明において好ましい高分岐ポリマーである。
【0058】
ハイパーブランチポリマーは、本発明に係る方法において高分岐ポリマーとして好ましく使用することができる。ハイパーブランチポリマーは、1分子あたり少なくとも3個の繰り返し単位、好ましくは1分子あたり少なくとも10個の繰り返し単位、さらに好ましくは1分子あたり少なくとも100個の繰り返し単位、より好ましくは1分子あたり少なくとも200個の繰り返し単位、さらに好ましくは1分子あたり少なくとも400個の繰り返し単位を有することが好ましい。各繰り返し単位は、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの結合可能部位を有する。少なくとも3個の繰り返し単位、好ましくは少なくとも10個の繰り返し単位、さらに好ましくは少なくとも20個の繰り返し単位が、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの結合可能部位において、少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個の他の繰り返し単位と結合している。ハイパーブランチポリマーは、10,000個以下、好ましくは5000個以下、特に好ましくは2500個以下の繰り返し単位を有する。
【0059】
好ましい実施形態では、高分岐ポリマーは1分子あたり少なくとも3個の繰り返し単位を有し、各繰り返し単位は少なくとも3つの結合可能部位を有し、繰り返し単位の少なくとも3個は少なくとも2つの結合可能部位を有する。
【0060】
「繰り返し単位」という用語は、ハイパーブランチ分子内で連続的に繰り返される構造を好ましくは意味する。「結合可能部位」という用語は、他の繰り返し単位と結合することができる繰り返し単位中の機能的構造を好ましくは意味する。上述したデンドリマーまたはハイパーブランチポリマーの例に関しては、繰り返し単位は以下に示す3つの結合可能部位(X、Y、Z)を有する構造である。
【0061】
【化6】

【0062】
各結合単位の結合は、重縮合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、基転移重合、配位重合または開環重合によって発生し得る。
【0063】
特に好ましいハイパーブランチポリマーは、結合単位が2つの結合可能部位を有するポリマーである。この点において、好ましいハイパーブランチポリマーはポリグリセリン、ポリエステル、ポリエステルアミドである。これらのポリマーのうち、ペルストルプ社(Perstorp AB)からBoltorn(登録商標)として入手できるハイパーブランチポリエステル、オランダのDSM BVからHybrane(登録商標)として入手できるハイパーブランチポリエステルアミドが特に好ましい。ハイパーブランチポリマーの他の例としては、ハイパーポリマー社(Hyperpolymers GmbH)のポリグリセリンポリマーPG−2,PG−5,PG−8が挙げられる。ハイパーポリマー社のポリエチレンイミンPEI−5,PEI−25も例として挙げられる。
【0064】
本発明に係る方法において添加剤として使用されるハイパーブランチポリマーは、上述した融点と蒸気圧以外に、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくは全てを有することが好ましい。
【0065】
(α1)MALDI−TOF(DIN 55 672)に従ってゲル透過クロマトグラフィーによって測定したMw/Mn比(Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である)が、1〜20、特に好ましくは1.1〜10、さらに好ましくは1.2〜5。
【0066】
(α2)MALDI−TOF(DIN 55 672)に従ってゲル透過クロマトグラフィーによって測定した重量平均分子量(Mw)が、100〜100,000g/モル、特に好ましくは500〜10,000g/モル、さらに好ましくは1,000〜5,000g/モル。
【0067】
(α3)DIN 53 019による20℃での粘度が、1〜10,000mPa・s、好ましくは2〜5,000mPa・s、特に好ましくは5〜1,000mPa・s、さらに好ましくは10〜500mPa・s。
【0068】
(α4)ハイパーブランチポリマーまたはその混合物が、100℃、好ましくは150℃、より好ましくは200℃、さらに好ましくは300℃まで安定である。「安定」という用語は、各温度までポリマーの分解がガスクロマトグラフィーによって観察されないことを意味し、例えば、気体分解生成物、特に二酸化炭素または水の生成量が1ppm未満、好ましくは0.1ppm未満、特に好ましくは0.01ppm未満であることを意味する。
【0069】
各特性及び特性の2つ以上の組み合わせは、ハイパーブランチポリマーの好ましい実施形態を構成するものである。特に好ましいハイパーブランチポリマーは、以下の特性または特性の組み合わせによって特徴づけられるポリマーである。α1,α2,α3,α4,α1α2,α1α3,α1α4,α2α3,α2α4,α3α4,α1α2α3,α1α2α4,α1α3α4,α2α3α4,α1α2α3α4。
【0070】
iii.イオン性液体及び高分岐ポリマーの混合物
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、純粋なイオン性液体または純粋な高分岐ポリマーを添加剤として使用する。別の実施形態では、少なくとも2種の異なるイオン性液体または少なくとも2種の異なる高分岐ポリマーの混合物を使用することが好ましい。また、イオン性液体と高分岐ポリマーの混合物を添加剤として使用することもできる。
【0071】
本発明に係る方法で使用される添加剤、特にイオン性液体は、60重量%の水と40重量%のアクリル酸からなる二成分系に接触させた場合に、1バールの圧力と95℃の温度における分離係数(separation factor)が、水とアクリル酸の純粋な二成分系に対して、少なくとも29%、好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも200%増加することによって特徴づけられる。分離係数の増加は以下のように定義される。
【0072】
分離係数の増加(%)=100×[(添加剤を添加した場合の分離係数−添加剤を添加しない場合の分離係数)/添加剤を添加しない場合の分離係数]
【0073】
分離係数は、Verhahrenstechnik 1974,8,p.343〜347に記載された方法に従ってヘッドスペース/気体クロマトグラフィー及びWLC分析によって測定する。分離係数は、Destillation Design,Henry Z.Kister,1992,p.3ffに定義されている。
【0074】
また、本発明に係る方法に使用される添加剤、特にイオン性液体または高分岐ポリマーは、組成物Zの少なくとも1つの成分との十分な混和性によって溶液を形成することによって好ましくは特徴づけられる。本発明では、20℃の温度及び1013ミリバールの圧力において、少なくとも0.2g、特に好ましくは0.4g、さらに好ましくは少なくとも0.6gの添加剤、好ましくはイオン性液体または高分岐ポリマーが、添加剤、好ましくはイオン性液体または高分岐ポリマーと(メタ)アクリル酸含有組成物との間に相分離が発生することなく、1グラムの組成物Zと混和することができることが好ましい。
【0075】
通常、組成物Zは、モノマー以外に少なくとも1種の不純物を含む。本発明の実施形態では、本発明に係る方法において、組成物Zと接触させた添加剤が、少なくとも1種の不純物に対してよりもモノマーに対して高い「親和性(affinity)」を示すことが好ましい。「親和性」とは、イオン相互作用、双極子相互作用またはファンデルワールス相互作用を意味し、高い親和性を有する系は、添加剤とモノマーまたは少なくとも1種の不純物を含み、例えば、添加剤とモノマーまたは少なくとも1種の不純物の凝集塊または複合体として存在する。この実施形態では、添加剤とモノマーはSM系を形成し、SM系は組成物Z、したがって少なくとも1種の不純物から分離され、必要に応じてモノマーと添加剤に分離される。ここで、例えば、添加剤に対して行うことができるさらなる精製工程によって、添加剤を直接または間接的に組成物Zに戻すことが好ましい。
【0076】
本発明に係る別の実施形態では、本発明に係る方法において組成物Zと接触させた添加剤が、モノマーに対してよりも少なくとも1種の不純物に対して高い親和性を示すことが好ましい。この実施形態では、添加剤と少なくとも1種の不純物または2種以上の不純物の混合物はSV系を形成し、SV系は組成物Z、したがってモノマーから分離され、必要に応じて1種の不純物または2種以上の不純物の混合物と添加剤とに分離される。ここで、例えば、添加剤に対して行うことができるさらなる精製工程によって、添加剤を直接または間接的に組成物Zに戻すことが好ましい。
【0077】
本発明に係る方法の別の実施形態では、分離相は抽出工程で使用される。抽出工程において、E−多相系(E−multiphase system)が分離相から形成される。モノマーは、E−多相系の1つの相において、E−多相系の他の相においてよりも濃度が高いことが好ましい。本発明に係る「抽出」という用語は吸着・吸収も含む。例えば、気体洗浄、固体による液体吸収などが挙げられる。
【0078】
本発明に係る方法の別の実施形態では、分離相は蒸留工程で使用される。この場合、D−多相系(D−multiphase system)が蒸留工程で分離相から形成される。モノマーは、D−多相系の1つの相において、D−多相系の他の相においてよりも濃度が高いことが好ましい。
【0079】
本発明に係る方法の別の実施形態では、分離相は結晶化工程で使用される。結晶化工程では、K−多相系(K−multiphase system)が分離相から形成され、K−多相系は少なくとも1つの固体結晶相を有する。モノマーは、K−多相系の1つの相、好ましくは結晶相において、K−多相系の他の相においてよりも濃度が高いことが好ましい。
【0080】
本発明に係る方法の別の実施形態では、分離相は膜による分離工程で形成される。この場合、M−多相系(M−multiphase system)が膜分離時に分離相から形成される。モノマーは、M−多相系の1つの相において、M−多相系の他の相においてよりも濃度が高いことが好ましい。膜を使用する場合には、添加剤を少なくとも部分的に膜に組み込むことが好ましい。膜の使用に関しては、Luis C.Branco,Angewandte Chemie 2002,114,No.15,p.2895ffを参照する。
【0081】
当業者に公知であり、適切と考えられるあらゆる方法を、抽出、蒸留または結晶化工程で使用することができる。結晶化に関しては、層または懸濁結晶化が好ましく、懸濁結晶化が特に好ましい。結晶化に関しては、国際公開第02/055469A1号を参照し、その開示内容は本願の開示内容の一部をなすものとする。
【0082】
本発明に係る方法の実施形態に関して上述した変形及びプロセス形態は、単独または組み合わせて使用することができる。この場合、少なくとも2つの同様な系を形成する変形を連続して使用することが特に好ましい。また、異なるプロセス形態を異なる変形で使用することができる。
【0083】
本発明に係る方法では、組成物Zとして、プロピレンまたはイソブチレンの気相酸化による(メタ)アクリル酸の合成で得られる組成物を使用することが好ましい。上述した添加剤を接触させる(メタ)アクリル酸含有組成物ZAとしては、以下の組成物が好ましい。
【0084】
(β1)酸素を使用したプロピレンまたはイソブチレンの不均一触媒による気相酸化の反応混合物として得られる気相組成物ZA1。気相酸化は、固体触媒を使用して、好ましくは40〜400℃の温度で行われ、プロピレンの酸化の場合には、中間体としてのアクロレインを介した2段階の工程で好ましくは行われる。
【0085】
(β2)(メタ)アクリル酸含有高沸点溶媒混合物として得られる組成物ZA2。固体触媒を使用して、好ましくは40〜400℃の温度で行われる、酸素を使用したプロピレンまたはイソブチレンの不均一触媒による気相酸化によって得られる気体反応混合物が対向流吸収によって高沸点溶媒混合物に吸収される場合に得られる。
【0086】
(β3)(メタ)アクリル酸水溶液として得られる組成物ZA3。固体触媒を使用して、好ましくは40〜400℃の温度で行われる、酸素を使用したプロピレンまたはイソブチレンの不均一触媒による気相酸化によって得られる気体反応混合物を好ましくは直接凝縮器で凝縮した場合に得られる。
【0087】
(β4)(メタ)アクリル酸含有溶媒として得られる組成物ZA4。溶媒、好ましくは水に溶解または分散させた触媒を使用して、好ましくは40〜500℃の温度及び1〜200バールの圧力で、酸素を使用したプロピレンまたはイソブチレンの不均一触媒による液相酸化によって得られる。
【0088】
(β5)(メタ)アクリル酸濃度が高いまたは低い(depleted or enriched)、好ましくは(メタ)アクリル酸濃度が高い(メタ)アクリル酸含有相として得られる組成物ZA5。(β2)の(メタ)アクリル酸含有高沸点溶媒混合物、(β3)の(メタ)アクリル酸水溶液または(β4)の(メタ)アクリル酸含有溶媒を、エネルギー供給を必要とする分離工程、好ましくは蒸留または精留することによって得られる。
【0089】
(β6)(メタ)アクリル酸濃度が高いまたは低い、好ましくは(メタ)アクリル酸濃度が高い(メタ)アクリル酸含有相として得られる組成物ZA6。(β2)の(メタ)アクリル酸含有高沸点溶媒混合物、(β3)の(メタ)アクリル酸水溶液または(β4)の(メタ)アクリル酸含有溶媒を、エネルギー供給を必要とする分離工程、好ましくは抽出または結晶化することによって得られる。
【0090】
(β7)(メタ)アクリル酸濃度が高い(メタ)アクリル酸含有組成物として得られる組成物ZA7。(β2)の(メタ)アクリル酸含有高沸点溶媒混合物、(β3)の(メタ)アクリル酸水溶液または(β4)の(メタ)アクリル酸含有溶媒に対して、エネルギー供給を必要とする分離工程とエネルギー供給を必要としない分離工程、好ましくは蒸留と結晶化の組み合わせを行うことによって得られる。
【0091】
本発明に係る方法の実施形態は、塔底部などに蓄積した組成物Zの処理に使用することができる。
【0092】
本発明において、「エネルギー供給を必要とする」とは、熱エネルギーの供給を意味し、攪拌などの機械的エネルギーの供給を意味するものではない。
【0093】
本発明に係るアクリル酸含有組成物Zからアクリル酸を分離するための方法の好ましい実施形態では、(β1),(β2),(β3),(β4),(β5),(β6),(β7)で定義した組成物ZA1〜ZA7から選択されるアクリル酸含有組成物ZAAを使用する。この場合、アクリル酸含有組成物ZAAは以下のZAA成分からなることが好ましい。
【0094】
(γ1)5〜99.994重量%、特に好ましくは10〜99.4重量%、さらに好ましくは50〜97重量%のアクリル酸モノマー、及び不純物として、
(γ2)少なくとも0.001重量%、特に好ましくは少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.5重量%のアクリル酸オリゴマー、好ましくはアクリル酸二量体及びアクリル酸三量体、
(γ3)少なくとも0.001重量%、特に好ましくは少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.5重量%の酢酸、
(γ4)少なくとも0.001重量%、特に好ましくは少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.5重量%のプロピオン酸、
(γ5)少なくとも0.001重量%、特に好ましくは少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.5重量%の少なくとも1種のアルデヒド、
(γ6)少なくとも0.001重量%、特に好ましくは少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.5重量%のマレイン酸またはマレイン酸無水物、
(γ7)少なくとも0.001重量%、特に好ましくは少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.5重量%の、好ましくは成分(γ1)〜(γ6)とは異なり、プロピレンの気相酸化及び/またはその後の気体反応混合物の処理で蓄積するか、他の成分、例えば触媒として添加される少なくとも1種の副生成物、
(γ8)残部を構成する流体、好ましくは水または高沸点溶媒、特にジフェニルエーテルまたはジフェニルまたは少なくともそれらの2種の混合物。
【0095】
なお、(γ1)〜(γ8)の合計は100重量%である。
【0096】
本発明に係る方法では、γ1以外のZAA成分の少なくとも1成分、好ましくは2成分、特に好ましくは全成分が、本発明に係る方法におけるアクリル酸の分離によって、組成物ZAAと比較した場合に、各ZAA成分の含有量よりも少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1重量%、特に好ましくは少なくとも10重量%減少することが好ましい。
【0097】
本発明では、組成物Zは、組成物Zの合計重量に基づいて、5〜99.999重量%、特に好ましくは20〜99重量%、さらに好ましくは40〜80重量%のモノマーを含むことが特に好ましい。組成物Zは、組成物Zの合計重量に基づいて、少なくとも0.001〜90重量%、好ましくは少なくとも1〜80重量%、特に好ましくは少なくとも10〜70重量%の水を含むことが好ましい。
【0098】
組成物Zの添加剤への接触は、組成物Zが接触時の温度及び圧力条件下において流体である場合には、両成分を単純に混合すること、好ましくは、適当な撹拌装置(好ましくは静的混合装置)または対向流下、またはそれらの両方によって混合することによって行う。組成物Zが接触時の温度及び圧力条件下において固体である場合には、融点まで温度を上昇させることによって組成物Zを液体に転換して添加剤と混合するか、固体の状態で添加剤に接触させるが、組成物Zは接触時の温度及び圧力条件下において液体であることが好ましい。
【0099】
抽出の場合には、接触時の添加剤と組成物Zの温度は、好ましくは−20〜200℃、特に好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは10〜100℃である。接触時の圧力は、好ましくは0.001〜100バール、特に好ましくは0.01〜50バール、さらに好ましくは0.1〜10バールである。
【0100】
蒸留の場合には、接触時の添加剤と組成物Zの温度は、好ましくは0〜300℃、特に好ましくは10〜250℃、さらに好ましくは20〜200℃である。接触時の圧力は、好ましくは0.0001〜100バール、特に好ましくは0.001〜10バール、さらに好ましくは0.01〜2バールである。
【0101】
結晶化の場合には、接触時の添加剤と組成物Zの温度は、好ましくは−100〜200℃、特に好ましくは−50〜100℃、さらに好ましくは−30〜100℃である。接触時の圧力は、好ましくは0.0001〜100バール、特に好ましくは0.001〜10バール、さらに好ましくは0.01〜2バールである。
【0102】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、添加剤は、添加剤と組成物Zの合計重量に基づいて、0.01〜95重量%、特に好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは20〜70重量%の量で組成物Zと接触させる。
【0103】
添加剤と接触させた組成物Zからのモノマーの分離は、当業者に公知の分離方法によって行う。エネルギー供給、例えば加熱によるモノマーへの分離方法、特に蒸発、蒸留、精留または抽出精留が好ましい。蒸留には当業者に公知の蒸留塔を使用することができる。篩板、例えば金属からなるデュアルフロー(Dual−Flow)板または交流篩板を有する塔を好ましく使用することができる。精留と抽出精留には、例えば、充填塔(packed column)、板塔または充填塔(packing column)を使用することができる。好適な板塔は、デュアルフロー板、気泡板またはバルブトレーを有する塔である。還流比は例えば1〜10である。
【0104】
本発明では、エネルギー供給を伴う方法を使用する場合、添加剤と接触させた(メタ)アクリル酸含有組成物からの(メタ)アクリル酸の分離は、好ましくは20〜300℃、特に好ましくは30〜250℃、さらに好ましくは40〜200℃の温度及び0.0001〜100バール、特に好ましくは0.001〜10バール、さらに好ましくは0.1〜2バールの圧力で行うことが好ましい。
【0105】
エネルギー供給を伴う分離方法の他に、添加剤と接触させた(メタ)アクリル酸含有組成物からの(メタ)アクリル酸の分離は、抽出または静的または動的結晶化によって行うこともできる。結晶化装置としては、当業者に公知であり、適切と考えられるあらゆる結晶化装置を使用することができる。層及び懸濁結晶化装置がこのカテゴリーに含まれる。懸濁結晶化では、好ましくは、ボイラー結晶化装置、スクラッチ結晶化装置、冷却ディスク結晶化装置、結晶化装置スネイル、ドラム結晶化装置などを使用することができる。懸濁結晶化装置は、好ましくは下流の洗浄塔とともに使用される。結晶化装置に関しては、国際公開第99/14181号を参照し、その開示内容は本願の開示内容の一部をなすものとする。
【0106】
抽出の場合には、エネルギーを供給しない塔が特に好適であり、スプレー、充填または篩板塔が好ましい。本発明で好適なその他の塔としては脈動塔が挙げられ、スプレー、充填、Prochazaka、Karrまたは篩板塔が好ましい。回転部分を有する塔も使用することができる。回転部分を有する塔としては、Scheibel、Kuhni、RDC、ARD塔、RZ、SHE抽出装置が挙げられる。
【0107】
本発明に係る方法の別の実施形態では、エネルギー供給を必要とする分離方法とエネルギー供給を必要としない分離方法とを組み合わせることができる。したがって、最初に組成物Zを添加剤と接触させ、その後モノマーを蒸留によって分離することができる。分離されたモノマーは、さらなる工程で再び添加剤と接触させることができる。次に、添加剤の存在下でモノマーを得られた組成物から結晶化によって分離する。エネルギー供給を必要とする分離方法とエネルギー供給を必要としない分離方法は、濃縮されたモノマーに添加剤を添加した後に、単独または組み合わせて任意の回数繰り返すことができる。例えば、モルフィルター(molfilter)を使用することができる。
【0108】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、添加剤をリサイクルする。これによって、本発明に係る方法を非常に経済的に実施することができる。
【0109】
添加剤と接触させた組成物Zからモノマーを分離した後、添加剤は好ましくは他の副生成物及び未分離のモノマーとともにモノマーが分離された相に残る。モノマーをエネルギー供給を必要とする分離方法、例えば蒸留によって分離する場合、添加剤は好ましくは他の副生成物及び未分離のモノマーとともに塔底生成物として残る。エネルギー供給を必要としない分離方法、例えば結晶化によって(メタ)アクリル酸を分離する場合、添加剤は好ましくは母液に残る。
【0110】
本発明に係る方法において添加剤をリサイクルするために、副生成物及び未分離のモノマーから分離することによって添加剤を精製することが有益である。この場合の分離は、添加剤と接触させた組成物Zからモノマーを分離する上述した場合と同様に、エネルギー供給を必要とする分離方法とエネルギー供給を必要としない分離方法によって行うことができ、好ましい方法は上述した通りである。エネルギー供給を必要とする分離方法とエネルギー供給を必要としない分離方法の組み合わせ、例えば、最初に蒸留を行い、次に蒸留残渣を結晶化させることによって添加剤を精製することができる。蒸発、不活性ガスによる脱着、結晶化(例えば溶融結晶化)、電気分解またはクロマトグラフィーによる抽出(例えば、超臨界二酸化炭素などの超臨界媒体による抽出)によって添加剤を精製することが特に好ましい。
【0111】
特に好ましくは、添加剤からの副生成物と未分離の(メタ)アクリル酸の分離は、好ましくは10〜300℃、特に好ましくは20〜250℃、さらに好ましくは30〜200℃の温度、0.0001〜100バール、特に好ましくは0.001〜10バール、さらに好ましくは0.1〜2バールの圧力での蒸発によって行う。
【0112】
副生成物で汚染された添加剤の添加によって副生成物の濃度が一定して上昇するため、組成物Zからモノマーを分離した後に添加剤をリサイクルすることによって添加剤が濃縮される。
【0113】
リサイクルされた添加剤は、好ましくは、本発明に係る方法で使用される添加剤の合計重量に基づいて、リサイクルされる添加剤の割合が10〜100重量%、特に好ましくは30〜99.5重量%、さらに好ましくは60〜98重量%となるように本発明に係る方法に戻される。
【0114】
本発明に係る方法では、少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種、特に好ましくは少なくとも3種、さらに好ましくは少なくとも5種の不純物の含有量が減少する。含有量の減少は、モノマーに対する不純物の濃度に基づき、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも100%であることが好ましい。
【0115】
本発明で定義されるモノマーを合成するための本発明に係る装置は、
(δ1)気相モノマー合成装置(1a)と、気相モノマー合成装置(1a)に接続された冷却装置(2)とを含むモノマー合成装置(1)、または
(δ2)液相モノマー合成装置(1b)と、
(δ3)液相モノマー合成装置(1b)または冷却装置(2)に接続された任意の第1の精製装置(3)と、
(δ4)(δ4−1)液相モノマー合成装置(1b)、冷却装置(2)、または第1の精製装置(3)に接続されたモノマー含有組成物Zの導管(5)と、(δ4−2)添加剤導管(6)と、(δ4−3)モノマー含有組成物の導管(5)と添加剤の導管(6)が接続された接触領域(7)と、(δ4−4)接触領域(7)の出口に接続された分離モノマーの導管(8)と、を含む第1のモノマー分離装置(4)と、 を流体流通的(in fluid-conducting assembly)に含む。
【0116】
本発明に係る装置の別の実施の形態では、装置は、モノマー分離装置(4)内に、(δ4−5)接触領域(7)に流体伝導的に接続された分離装置(14)をさらに含む。
【0117】
本発明に係る装置の別の実施の形態では、装置は、モノマー分離装置(4)内に、(δ4−5)に加えて、(δ4−6)第1のモノマー分離装置(4)または他の精製装置または双方に接続されたモノマー分離装置(10)を含む。
【0118】
本発明に係る装置の別の実施形態では、装置は、(δ5)添加剤のリサイクル装置(12)を含み、リサイクル装置(12)は、(δ5−1)分離装置(14)に流体伝導的に接続された添加剤を含む組成物の供給ライン(13)と、(δ5−2)分離装置(14)の出口に接続され、添加剤導管(6)または接触領域(7)に流体伝導的に接続された添加剤出口(15)と、(δ5−3)分離装置(14)の出口に接続され、導管(8)に流体伝導的に接続されたモノマー出口(16)と、を含む。
【0119】
本発明に係る装置では、蒸留塔、抽出混合装置または結晶化装置を接触領域(7)として使用することができる。好ましくは接触領域(7)で分離相が形成され、分離相は少なくとも2つの分離成分(例えば、結晶と添加剤及び任意に不純物を含む母液)に分離する。
【0120】
当業者に公知であって、精製されるモノマーに好適なあらゆる塔を使用することができ、本発明に係る方法では蒸留塔を使用することができる。特に、上述した塔が好ましい。
【0121】
当業者に公知であって、精製されるモノマーに好適なあらゆる混合装置を使用することができ、本発明に係る方法では抽出混合装置を使用することができる。静的及び動的混合装置がこのカテゴリーに含まれる。混合装置に関しては、国際公開第99/14181号及び国際公開第02/55469号を参照し、それらの開示内容は本願の開示内容の一部をなすものとする。
【0122】
当業者に公知であって、精製されるモノマーに好適なあらゆる結晶化装置を本発明に係る方法で使用することができる。上述したものに加えて、層結晶化装置及び懸濁結晶化装置を洗浄塔と組み合わせて使用することが好ましい。
【0123】
本発明に係る化学製品は、本発明の方法によって得られる(メタ)アクリル酸を少なくとも含む。本発明に係る化学製品は、繊維、成形体、膜、発泡体、超吸収ポリマー、廃水処理、分散染料、化粧品、織物、皮革加工、製紙用の特殊ポリマー、洗剤、衛生用品を含む。
【0124】
本発明を図面と実施例によってより詳細に説明するが、本発明はこれらの図面と実施例に限定されるものではない。
【0125】
図1では、モノマー合成装置1において、本発明に係るモノマーとして(メタ)アクリル酸が合成される。この場合、モノマー合成装置1は、気相モノマー合成装置1aまたは液相モノマー合成装置1bである。冷却装置2がモノマー合成装置1に接続されており、冷却装置2は気相モノマー合成装置1aに接続されている。冷却装置2または液相モノマー合成装置1bで得られた(メタ)アクリル酸水溶液は第1の精製装置3、例えば蒸留塔で精製される。精製された(メタ)アクリル酸溶液は、導管5を通過して(メタ)アクリル酸分離装置4に導入される。ただし、液相モノマー合成装置1または冷却装置2を導管5を介して(メタ)アクリル酸分離装置4に直接接続することもできる。この場合、モノマー合成装置1は(メタ)アクリル酸水溶液の導管5を含み、導管は対応する液相モノマー合成装置1または冷却装置2に接続されている。(メタ)アクリル酸水溶液は、導管5を介して接触領域7に導入される。添加剤は、添加剤導管6を介して接触領域7に導入される。添加剤は、貯蔵器(図示せず)またはリサイクル装置14から供給することができる。本発明に係る装置の実施形態では、添加剤と(メタ)アクリル酸水溶液の接触後、導管8を介して(メタ)アクリル酸が分離される。分離された(メタ)アクリル酸と少量の水は精製装置11で濃縮される。混合容器に残っている添加剤、任意の不純物、未分離の(メタ)アクリル酸を含む組成物は、導管13を介してリサイクル装置12に供給される。組成物は導管13を通過して分離装置14に導入され、添加剤が濃縮され、不純物は適当な精製法によって添加剤から分離される。濃縮された添加剤は出口15を通過して混合容器7に供給され、添加剤の濃縮時に分離された(メタ)アクリル酸は導管8を介して出口16に供給され、出口16を介して分離装置11に供給される。分離装置11で得られた(メタ)アクリル酸濃度が減少した相は、導管17を介して導管5に送ることができる。
【0126】
図2では、モノマー合成装置1に続いて第1のモノマー分離装置4が設けられ、本発明に係るモノマー分離装置10が第1のモノマー分離装置4に続いて設けられている。モノマー分離装置10には、精製装置または吸水性ポリマー合成装置などの処理装置を接続することができる。
【0127】
試験方法
【0128】
1.融点
融点は融点管を使用して測定した。一端が溶融封止され、内径が約1〜1.5mm、長さが約7〜8cmのガラス管(融点管または融点キャピラリ)に、Thile (Organikum Organisch Chemisches Grundpraktikum, 第16版,1986,VEB Verlag der Wissenschaften,p.73〜74)に従って、物質サンプルを約3〜5mmの高さで配置した。
【0129】
キャピラリの上端に物質を導入した後、サンプルを慎重にタップして下部に配置した。次に、融点管を徐々に加熱し、物質サンプルが融解する温度を測定した。
【0130】
2. 蒸気圧
蒸気圧は、31.07.1992(欧州共同体の公式刊行物A.04)のガイドライン92/69/EWgに従って噴散法によって測定した。
【実施例】
【0131】
実施例1(抽出)
水によって50℃に維持した二重壁混合容器(350ml)に表1に示す原料250mlを入れ、混合物を1分間にわたって激しく撹拌した。撹拌終了後に複数の相が形成された。その組成は表1に示す通りである。1分間の沈降分離後、NaOH溶液によるアクリル酸の滴定及びカールフィッシャー法による水の定量と演算によるBoltorn(登録商標)の定量によって相の組成を決定した。
【0132】
【表1】

Boltorn H3200:ペルストルプ社製ハイパーブランチポリマー
【0133】
実施例2(抽出)
3種のイオン性液体(ドイツ・ケルンのソルベント・イノベーション(Solvent Innovation)社から入手できるOMA−HSO4、OMA−MeSO4、OMP−HSO4)について、水溶液中のアクリル酸の抽出効果の試験を行った。その結果、アクリル酸は50.0gで、蒸留物は50.0gだった。水と30.0gのイオン性液体を250mlの円錐状フラスコに秤量し、磁気攪拌機を使用して2時間激しく混合した。次に、混合物を250mlの分液漏斗に移し、分液漏斗を一昼夜にわたって放置して相分離を起こさせた。翌朝、相を分離し、重量を量り、分析した。アクリル酸含有量はHPLCで測定し、水含有量はカール−フィッシャー滴定によって測定し、イオン性液体含有率は、イオン性液体の中心原子に応じて両相の窒素またはリンの元素分析によって測定した。
【0134】
【表2】

【0135】
【表3】

【0136】
【表4】

【0137】
これらの実験によれば、第1のイオン性液体(OMA−HSO4)は最も効果的にイオン性液体の相(軽有機相)にアクリル酸を抽出することができた(高い分配係数D;D=(miorganic/mtotal.organic)/(miaq.Phase/mtotal.aq.phase)。各成分が両相で等しく分配されるD=1への分離によって分配係数が決定される。水の場合には、1未満の数値が特に好ましい。したがって、重い水性液体中へのイオン性液体の損失は(他の2つのイオン性液体よりも分配係数が小さい)第1のイオン性液体で最も大きい。
【0138】
実施例3(結晶化)
表5に示す原料250ml(20℃)を二重壁撹拌容器(350ml)に入れた。次に、エチレングリコールと水の混合物を使用して混合物を−15℃に維持し、0.5K/分の冷却速度で−15℃に冷却した。−10℃で結晶の生成が観察された。表5に示す組成の母液を真空吸引漏斗によって結晶から分離した。その結果、表5に示す組成の結晶142gを得た。組成は実施例1と同様に求めた。
【0139】

【表5】

ECOENG 500:ソルベント・イノベーション社製ハイパーブランチポリマー
【0140】
実施例4(結晶化)
70gの高純度アクリル酸と70gの蒸留水を、55gの硫酸水素N−エチルメチルジイソプロピルアンモニウム(ソルベント・イノベーション社製EMPAH)とともに温度制御可能な撹拌二重壁容器(200ml)に入れた。化合物の組成は表6に示す通りである。混合物を−12℃に冷却すると、第1の結晶が沈殿した。次に、混合物を−17.2℃まで冷却した。容器の含有物を真空濾過器で濾過し、濾液を分析した。水分を含んだ結晶を遠心分離機(4000rpm)で乾燥し、分析した。濾液と乾燥した結晶の組成は表6に示す通りである。分析は、HPLC(アクリル酸)、カール−フィッシャー滴定(水)、窒素元素分析(EMPAH)によって行った。
【0141】
【表6】

【0142】
表7には、EMPAHの代わりに硫酸水素1,3−ジメチルピリジニウム(ソルベント・イノベーション社製DMPH)を使用した実験結果を示す。結晶化温度と終了温度は−18℃と−22.6℃である。実験と分析は、EMPAHの存在下で結晶化させた場合と同様に行った。
【0143】
【表7】

【0144】
実施例は、アクリル酸と水の重量比が1:1のアクリル酸−水混合物からアクリル酸を結晶化できる可能性を示している。通常、水はそのような混合物から結晶化する。イオン性液体を使用することによって、アクリル酸−水の共晶点が変化し、結晶化によるアクリル酸の収量を増加させることができる。
【0145】
実施例5(蒸留)
表8に示す組成物Zと添加剤の混合物5mlを隔壁キャップを有するGCボトル(20ml)に入れた。次に、混合物を加熱可能サンプルホルダー内で95℃に加熱し、ヘッドスペースガスクロマトグラフ(Verfahrenstechnik 8、No.12、334〜347ページ、1974)のニードルをGCボトル内に形成された気体スペースに導入した。気体スペースで生じた気体の組成物をガスクロマトグラフィーによって分離し、熱伝導率測定によって組成を求めた。表8及び図3に組成を示す。
【0146】
【表8】

【0147】
表8の実施例では以下の添加剤を使用した。
HMIM−BF4(1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸)イオン性液体、ソルベント・イノベーション社
EMIM−BF4(1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸)イオン性液体、ソルベント・イノベーション社
HMIM−PF6
(1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホスフェート)イオン性液体、ソルベント・イノベーション社
商標登録Hybrane S1200(2,5−フランジオン)ジヒドロ−ポリマー、1,1’−イミノビス[2−プロパノール]CAS No.362603−93−8,DSM B.V.,ハイパーブランチポリマー
Polyglycerin PG−5CAS No.25722−70−7P,ハイマーポリマーGmbH,ハイパーブランチポリマー
商標登録Boltorn H40、Perstorp GmbH、ハイパーブランチポリマー
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】添加剤リサイクル装置を含む(メタ)アクリル酸合成装置を示す。
【図2】本発明に係る装置の配置変形の概略図である。
【図3】表8の数値のグラフである。
【符号の説明】
【0149】
1 モノマー合成装置
1a 気相モノマー合成装置
1b 液相モノマー合成装置
2 冷却装置
3 精製装置
4 モノマー/(メタ)アクリル酸分離装置
5 モノマー/(メタ)アクリル酸含有組成物の導管
6 添加剤導管
7 接触領域
8 分離モノマー/(メタ)アクリル酸の導管
10 モノマー/(メタ)アクリル酸分離装置
11 精製装置
12 リサイクル装置
13 添加剤含有組成物の供給管
14 分離装置
15 添加剤の出口
16 モノマー/(メタ)アクリル酸の出口
17 精製装置11からのモノマー/(メタ)アクリル酸濃度減少相の導管
AA アクリル酸
IL 添加剤(イオン性液体またはハイパーブランチポリマー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの二重結合を含むモノマーを、前記モノマー及び前記モノマーとは異なる少なくとも1種の不純物を含む組成物Zから分離するための方法であって、150℃以下の融点と20℃で1ミリバールの蒸気圧を有する添加剤に前記組成物Zを接触させて分離相を形成する工程と、前記モノマーを前記分離相から分離する工程と、を含むことを特徴とするモノマーの分離方法。
【請求項2】
前記添加剤は、i.イオン性液体、ii.高分岐ポリマー、iii.前記イオン性液体及び前記高分岐ポリマーの少なくとも2種の混合物、の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のモノマーの分離方法。
【請求項3】
前記高分岐ポリマーは、1分子あたり少なくとも3個の繰り返し単位を有し、各繰り返し単位は少なくとも3つの結合可能部位を有し、少なくとも3個の前記繰り返し単位は少なくとも3つの結合可能部位を介して少なくとも3個の他の繰り返し単位と結合していることを特徴とする請求項2に記載のモノマーの分離方法。
【請求項4】
前記高分岐ポリマーは1分子あたり少なくとも3個の繰り返し単位を有し、各繰り返し単位は少なくとも3つの結合可能部位を有し、少なくとも3つの前記繰り返し単位は少なくとも2つの結合可能部位を有することを特徴とする請求項2に記載のモノマーの分離方法。
【請求項5】
前記イオン性液体は20℃で液体であり、1〜10,000mPa・sの粘度を有することを特徴とする請求項2に記載のモノマーの分離方法。
【請求項6】
前記添加剤と接触させた前記組成物Zからの前記モノマーの分離は、蒸留、抽出、結晶化、またはこれらの少なくとも2種の組み合わせによって行うことを特徴とする請求項1に記載のモノマーの分離方法。
【請求項7】
前記添加剤及び前記組成物Zの合計重量に対して0.01〜95重量%の量で前記添加剤を前記組成物Zに接触させることを特徴とする請求項1に記載のモノマーの分離方法。
【請求項8】
前記添加剤をリサイクルすることを特徴とする請求項1に記載のモノマーの分離方法。
【請求項9】
前記添加剤のリサイクルはエネルギー供給を必要とする分離工程によって行うことを特徴とする請求項8に記載のモノマーの分離方法。
【請求項10】
前記モノマーが(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項1に記載のモノマーの分離方法。
【請求項11】
前記組成物Zが、(γ1)5〜99.994重量%のアクリル酸モノマー、及び不純物として、(γ2)少なくとも0.001重量%の少なくとも1種のアクリル酸オリゴマー、(γ3)少なくとも0.001重量%の酢酸、(γ4)少なくとも0.001重量%のプロピオン酸、(γ5)少なくとも0.001重量%の少なくとも1種のアルデヒド、(γ6)少なくとも0.001重量%のマレイン酸またはマレイン酸無水物、(γ7)少なくとも0.001重量%の前記成分(γ1)〜(γ6)とは異なる少なくとも1種の副生成物、(γ8)残部を構成する流体(前記成分(γ1)〜(γ8)の合計は100重量%である)を含むアクリル酸含有組成物ZAAであることを特徴とする請求項1に記載のモノマーの分離方法。
【請求項12】
少なくとも1種の不純物の含有量が減少することを特徴とする請求項1に記載のモノマーの分離方法。
【請求項13】
モノマーを合成するための装置であって、
(δ1)気相モノマー合成装置(1a)と、前記気相モノマー合成装置(1a)に接続された冷却装置(2)と、を含むモノマー合成装置(1)、または
(δ2)液相モノマー合成装置(1b)と、
(δ3)前記液相モノマー合成装置(1b)または前記冷却装置(2)に接続された任意の第1の精製装置(3)と、
(δ4)(δ4−1)前記液相モノマー合成装置(1b)、前記冷却装置(2)または前記第1の精製装置(3)に接続されたモノマー含有組成物Zの導管(5)と、(δ4−2)添加剤導管(6)と、(δ4−3)前記モノマー含有組成物導管(5)と前記添加剤導管(6)が接続された接触領域(7)と、(δ4−4)前記接触領域(7)に接続された分離モノマーの導管(8)と、を含む第1のモノマー分離装置(4)と、
を流体流通的に含むことを特徴とするモノマー製造装置。
【請求項14】
(δ5)前記添加剤のリサイクル装置(12)を含み、前記リサイクル装置(12)は、(δ5−1)分離装置(14)に流体流通可能に接続された前記添加剤を含む組成物の入口(13)と、(δ5−2)前記分離装置(14)の出口に接続され、前記添加剤導管(6)または前記接触領域(7)に流体流通可能に接続された前記添加剤の出口(15)と、(δ5−3)前記分離装置(14)の出口に接続され、前記導管(8)に流体流通可能に接続された前記モノマーの出口(16)と、を含むことを特徴とする請求項13に記載のモノマー製造装置。
【請求項15】
1バールの圧力下で100℃以下の融点と20℃で1ミリバールの蒸気圧を有する添加剤の、少なくとも1つの二重結合を含む少なくとも1種のモノマーをモノマー含有組成物から分離するための分離補助剤としての使用。
【請求項16】
請求項1に記載の方法によって得られるモノマー。
【請求項17】
請求項1に記載の方法によって得られる(メタ)アクリル酸を少なくとも含む繊維、成形体、膜、発泡体、水吸収ポリマー、廃水処理、分散染料、化粧品、織物、皮革加工あるいは製紙用の特殊ポリマー、洗剤又は衛生用品。
【請求項18】
請求項1に記載の方法によって得られる(メタ)アクリル酸の、繊維、成形体、膜、発泡体、水吸収ポリマー、衛生用品、洗剤又は廃水処理、分散染料、化粧品、織物、皮革加工あるいは製紙用の特殊ポリマーの製造における使用または製造のための使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの二重結合を含むモノマーを、前記モノマー及び前記モノマーとは異なる少なくとも1種の不純物として0.001重量%(組成物の合計量中)以上の水を含む組成物Zから分離するための方法であって、150℃以下の融点と20℃で1ミリバールの蒸気圧を有する添加剤に前記組成物Zを接触させて分離相を形成する工程と、前記モノマーを前記分離相から分離する工程と、を含むことを特徴とするモノマーの分離方法。
【請求項2】
前記添加剤は、i.イオン性液体、ii.高分岐ポリマー、iii.前記イオン性液体及び前記高分岐ポリマーの少なくとも2種の混合物、の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載のモノマーの分離方法。
【請求項3】
前記高分岐ポリマーは、1分子あたり少なくとも3個の繰り返し単位を有し、各繰り返し単位は少なくとも3つの結合可能部位を有し、少なくとも3個の前記繰り返し単位は少なくとも3つの結合可能部位を介して少なくとも3個の他の繰り返し単位と結合していることを特徴とする請求項2に記載のモノマーの分離方法。
【請求項4】
前記高分岐ポリマーは1分子あたり少なくとも3個の繰り返し単位を有し、各繰り返し単位は少なくとも3つの結合可能部位を有し、少なくとも3つの前記繰り返し単位は少なくとも2つの結合可能部位を有することを特徴とする請求項2に記載のモノマーの分離方法。
【請求項5】
前記イオン性液体は20℃で液体であり、1〜10,000mPa・sの粘度を有することを特徴とする請求項2に記載のモノマーの分離方法。
【請求項6】
前記添加剤と接触させた前記組成物Zからの前記モノマーの選択的な分離は、蒸留、抽出、結晶化、またはこれらの少なくとも2種の組み合わせによって行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノマーの分離方法。
【請求項7】
前記添加剤及び前記組成物Zの合計重量に対して0.01〜95重量%の量で前記添加剤を前記組成物Zに接触させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のモノマーの分離方法。
【請求項8】
前記添加剤をリサイクルすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のモノマーの分離方法。
【請求項9】
前記添加剤のリサイクルはエネルギー供給を必要とする分離工程によって行うことを特徴とする請求項8に記載のモノマーの分離方法。
【請求項10】
前記モノマーが(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のモノマーの分離方法。
【請求項11】
前記組成物Zが、(γ1)5〜99.994重量%のアクリル酸モノマー、及び不純物として、(γ2)少なくとも0.001重量%の少なくとも1種のアクリル酸オリゴマー、(γ3)少なくとも0.001重量%の酢酸、(γ4)少なくとも0.001重量%のプロピオン酸、(γ5)少なくとも0.001重量%の少なくとも1種のアルデヒド、(γ6)少なくとも0.001重量%のマレイン酸またはマレイン酸無水物、(γ7)少なくとも0.001重量%の前記成分(γ1)〜(γ6)とは異なる少なくとも1種の副生成物、(γ8)残部を構成する流体(前記成分(γ1)〜(γ8)の合計は100重量%である)を含むアクリル酸含有組成物ZAAであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のモノマーの分離方法。
【請求項12】
少なくとも1種の不純物の含有量が減少することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のモノマーの分離方法。
【請求項13】
モノマーを合成するための装置であって、
(δ1)気相モノマー合成装置(1a)と、前記気相モノマー合成装置(1a)に接続された冷却装置(2)と、を含むモノマー合成装置(1)、または
(δ2)液相モノマー合成装置(1b)と、
(δ3)前記液相モノマー合成装置(1b)または前記冷却装置(2)に接続された任意の第1の精製装置(3)と、
(δ4)(δ4−1)前記液相モノマー合成装置(1b)、前記冷却装置(2)または前記第1の精製装置(3)に接続されたモノマー含有組成物Zの導管(5)と、(δ4−2)添加剤導管(6)と、(δ4−3)前記モノマー含有組成物導管(5)と前記添加剤導管(6)が接続された接触領域(7)と、(δ4−4)前記接触領域(7)に接続された分離モノマーの導管(8)と、を含む第1のモノマー分離装置(4)と、
(δ5)(δ5−1)分離装置(14)に流体流通可能に接続された前記添加剤を含む組成物の入口(13)と、(δ5−2)前記分離装置(14)の出口に接続され、前記添加剤導管(6)または前記接触領域(7)に流体流通可能に接続された前記添加剤の出口(15)と、(δ5−3)前記分離装置(14)の出口に接続され、前記導管(8)に流体流通可能に接続された前記モノマーの出口(16)と、を含む前記添加剤のリサイクル装置(12)と、
(δ6)前記接触領域(7)の出口に接続され、前記リサイクル装置(12)に接続された入口(13)と、
むことを特徴とするモノマー製造装置。
【請求項14】
1バールの圧力下で100℃以下の融点と20℃で1ミリバールの蒸気圧を有する添加剤の、少なくとも1つの二重結合を含む少なくとも1種のモノマーを、不純物として0.001重量%(組成物の合計量中)以上の水を含むモノマー含有組成物から分離するための分離補助剤としての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−521326(P2006−521326A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504872(P2006−504872)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003211
【国際公開番号】WO2004/085371
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(504341139)ストックハウゼン ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】