説明

モノリス状有機多孔質アニオン交換体およびその製造方法

【課題】取り扱いが容易であって、耐熱性及び耐酸化性に優れ、流体透過時の圧力損失が低く、アニオン交換容量の大きなモノリス状有機多孔質アニオン交換体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】四級化アミノアルコキシスチレン構成単位と、一分子中に少なくとも二つのビニル基を有する架橋性モノマーから誘導される構成単位とを有し、該架橋性モノマーから誘導される構成単位が全構成単位に対して1〜5モル%である直径が1〜50μmの四級化アミノアルコキシスチレン架橋重合体粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に20〜100μmの三次元的に連続した空孔を有するモノリス状有機多孔質アニオン交換体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤や脱イオン水製造装置等に用いられるアニオン交換体として有用な、耐熱性及び耐酸化性に優れたモノリス状有機多孔質アニオン交換体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内にメソポアを有する連続気泡構造を有するモノリス状多孔質体としては、シリカ等で構成された無機多孔質体が知られている(米国特許第5624875号)。そして、該無機多孔質体はクロマトグラフィー用充填剤として活発な用途開発がなされている。しかし、この無機多孔質体は親水性であるため、吸着剤として用いるためには、表面の疎水処理等の煩雑かつコストアップを伴う操作が必要であった。また、この無機多孔質体はアルカリに弱いため、イオン交換樹脂において通常行われる、アルカリを用いた再生操作が実施できないばかりでなく、単に中性の水中に長時間保持した場合でも、シリカの加水分解によって生じるシリケートイオンが水中に溶出するため、純水や超純水を製造するためのイオン交換体として用いることは不可能であった。さらに、上記無機多孔質体はその製法上、連続した空孔であるメソポアが最大でも20μm以下であるため流体を透過させる際の圧力損失が高く、低圧力損失下で大流量の水を処理する必要のある脱イオン水製造装置に充填し、イオン交換体として用いることは困難であった。
【0003】
また、同様の構造を有するモノリス状有機多孔質体や該多孔質体にイオン交換基を導入したモノリス状有機多孔質イオン交換体が特開2002-306976号に開示されている。該有機多孔質体や有機多孔質イオン交換体は、上記無機多孔質体の欠点を克服したものであって、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が5μm程度のメソポアの開口となる連続マクロポア構造を有しているため、吸着剤、クロマトグラフィー用充填剤および脱イオン水製造装置等に用いられるイオン交換体として有用である。しかし、該有機多孔質イオン交換体はその構造上の制約から、実用的に要求される低い圧力損失を達成しようとすると体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させていくと圧力損失が増加するといった欠点を有していた。すなわち、低い圧力損失を達成する有機多孔質イオン交換体の水湿潤状態での体積当たりのイオン交換容量は、最大でも0.2mg当量/mlと低いものであった。
【0004】
一方、上記連続気泡構造以外の構造を有するモノリス状有機多孔質体としては、粒子凝集型構造を有する多孔質体が特表平7−501140号等に開示されている。しかし、この方法で得られた多孔質体は連続した空孔が最大でも約2μmと小さく、低圧で大流量の処理を行うことが要求される工業規模の脱イオン水製造装置等に用いることはできなかった。
【0005】
また、特開2008−81721号公報には、アミノアルコキシスチレンと架橋性モノマーを水難溶解性のアゾ系重合開始剤を用いて水性媒体中、懸濁重合させて耐熱性に優れた四級アンモニウム基含有架橋アニオン交換体を得る方法が開示されている。しかし、この四級アンモニウム基含有架橋アニオン交換体は、球状粒子であるため、例えば電気式脱イオン水製造装置の脱塩室を形成する脱イオンモジュールに充填するためには相当の時間と熟練した労力を必要とする。また、球状のため粒子同士の接触面積が小さいのでイオンの流れが該接点部に集中し、電気抵抗を高める原因となっていた。
【特許文献1】特開2002-306976号公報
【特許文献2】特表平7−501140号公報
【特許文献3】特開2008−81721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、上記従来の技術の問題点を解決したものであって、取り扱いが容易であって、耐熱性及び耐酸化性に優れ、流体透過時の圧力損失が低く、アニオン交換容量の大きなモノリス状有機多孔質アニオン交換体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、(1)架橋性モノマーの使用量を従来技術に比べ格段に低く設定して静置重合すると、モノリス状有機多孔質体の連続空孔の大きさが格段に大きくなること、(2)更に、モノマーとして特定構造を有するアミノアルコキシスチレン類を用い、静置重合後アミノ基を四級化することで耐熱性及び耐酸化性が格段に向上すること、(3)このモノリス状有機多孔質アニオン交換体は、吸着やイオン交換が迅速かつ均一であるばかりでなく、連続空孔が格段に大きいため、低圧、大流量の水処理にも適応可能であり、更に粒子状のものに比べて取り扱いが容易であって、耐熱性及び耐酸化性にも優れることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(1);
【化1】

(式中、R、R、Rは同一または異なって、炭素数1〜8の炭化水素基またはアルカノール基を示し、Xはアニオンを示し、nは4〜12の整数を示す。)で表される構成単位と、一分子中に少なくとも二つのビニル基を有する架橋性モノマーから誘導される構成単位とを有し、
該架橋性モノマーから誘導される構成単位が全構成単位に対して1〜5モル%である直径が1〜50μmの四級化アミノアルコキシスチレン架橋重合体粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に20〜100μmの三次元的に連続した空孔を有し、全細孔容積が1〜5ml/gであり、厚みが2mm以上であり、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3mg当量/ml以上であり、アニオン交換基が該多孔質アニオン交換体中に均一に分布しているモノリス状有機多孔質アニオン交換体を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、下記一般式(2);
【化2】

(式中、R、Rは同一または異なって、炭素数1〜8の炭化水素基を示し、nは4〜12の整数を示す。)で表されるアミノアルコキシスチレン類、
一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋性モノマー、
アミノアルコキシスチレン類及び架橋性モノマーは溶解するがアミノアルコキシスチレン類が重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、
及び重合開始剤からなる混合物を調製し、該混合物を静置下重合させることでモノリス状有機多孔質体を製造する際に、架橋性モノマーをアミノアルコキシスチレン類と架橋性モノマーの合計量に対して1〜5モル%用い、
次いで上記モノリス状有機多孔質体と下記一般式(3);
−Y (3)
(式中、Rは炭素数1〜8の炭化水素基もしくはアルカノール基を示し、Yはハロゲン原子を示す。)で表される有機ハロゲン化合物とを反応させるモノリス状有機多孔質アニオン交換体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のモノリス状有機多孔質アニオン交換体は、連続空孔の空孔径が従来の連続気泡構造のモノリスに比べて格段に大きいため、被処理水を低圧、大流量で通水することが可能であり、更に耐熱性や耐酸化性にも優れるため、高温条件下や酸化性雰囲気下での脱塩やイオン伝導体として好適に用いることができる。また、所定の厚みを有するモノリス状であるため、粒子状のものに比べて取り扱いが容易である。また、本発明の製造方法によれば、前記モノリス状有機多孔質アニオン交換体を簡易に且つ確実に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のモノリス状有機多孔質アニオン交換体の基本構造は、直径が1〜50μm、好ましくは2〜40μm、特に好ましくは3〜30μmの四級化アミノアルコキシスチレン架橋重合体粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に20〜100μm、好ましくは25〜80μmの三次元的に連続した空孔を有する粒子凝集型構造であり、この三次元的に連続した空孔が液体や気体の流路となる。四級化アミノアルコキシスチレン架橋重合体粒子の直径が1μm未満であると、骨格間の連続した空孔が20μm未満と小さくなってしまうため好ましくなく、50μmを超えると、液体または気体とモノリス状有機多孔質アニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。また、骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の大きさが20μm未満であると、水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、一方、100μmを越えると、液体または気体とモノリス状有機多孔質アニオン交換体との接触が不十分となり、イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。上記四級化アミノアルコキシスチレン架橋重合体粒子の大きさは、SEMを用いることで簡便に測定できる。また、骨格間に存在する三次元的に連続した空孔の大きさは、水銀圧入法により求めたものであり、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。
【0012】
また、該モノリス状有機多孔質アニオン交換体は、1〜5ml/g、好ましくは1〜4ml/gの全細孔容積を有するものである。全細孔容積が1ml/g未満であると、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過液体または気体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、該モノリス状有機多孔質アニオン交換体の体積当りのアニオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。
【0013】
また、該モノリス状有機多孔質アニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下差圧係数と呼ぶ)で示すと、0.005〜0.1MPa/(m・LV)の範囲にあることが好ましい。差圧係数及び全細孔容積が上記範囲にあれば、これをアニオン交換体として用いた場合、液体または気体との接触面積が大きく、かつ液体または気体の円滑な流通が可能となるため、優れた性能が発揮できる。
【0014】
四級化アミノアルコキシスチレン架橋重合体粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分の架橋密度(架橋性モノマーから誘導される構成単位が全構成単位に対して占める割合)は、1〜5モル%、好ましくは1〜4モル%である。架橋密度が1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、上記骨格間に三次元的に連続して存在する空孔が小さくなってしまい、圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。なお、架橋性モノマーから誘導される構成単位の構造は、架橋性モノマーが重合して生成する構造である。
【0015】
該モノリス状有機多孔質アニオン交換体の骨格部分の主要構成単位は、前記一般式(1)で表される四級化アミノアルコキシスチレンユニットである。
【0016】
一般式(1)中の炭素数1〜8の炭化水素基とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などの直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1〜8のアルキル基;ビニル基、プロペニル基等、上記アルキル基に対応する炭素数2〜8のアルケニル基を挙げることができる。好適には、炭素数1〜6の炭化水素基が用いられる。また、一般式(1)中の炭素数1〜8のアルカノール基とは、上記の炭化水素基にヒドロキシル基が導入されたものを指し、具体例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシシクロヘキシル基等が挙げられる。好適には、炭素数1〜6のアルカノール基が用いられる。一般式(1)中、炭素数8を超える炭化水素基を用いると、アニオン交換容量が低下してしまうため、好ましくない。
【0017】
一般式(1)中Xで示されるアニオンには特に制限はなく、具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、シアン化物イオン、炭酸水素イオン、硫酸水素イオン、燐酸二水素イオン、次亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン、蟻酸イオン、酢酸イオン、酒石酸イオン、安息香酸イオン、フェノラートイオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等が挙げられる。また、アニオンとしては、上記の一価イオンのみならず、硫酸イオンや燐酸イオン、ポリアクリル酸等の多価イオンであっても良い。
【0018】
一般式(1)中のnは、4〜12、好ましくは4〜10、更に好ましくは4〜8である。nが3以下であると、耐酸化性が急激に低下するため好ましくない。一方、nが12を越えると、アニオン交換容量が低下してしまうため、好ましくない。また、nが8を超えると、原料であるアミノアルコキシスチレンの沸点が上昇して蒸留精製が困難となり、工業的に製造コストが増大する。
【0019】
本発明のモノリス状有機多孔質アニオン交換体は、その厚みが2mm以上である。本発明の有機多孔質アニオン交換体はモノリス形状を有するものであり、膜状の多孔質アニオン交換体とは区別される。厚みが2mm未満であると、被処理液中のアニオン捕捉量が低下してしまうため好ましくない。該モノリス状有機多孔質アニオン交換体の厚みは、2mm以上あれば問題ないが、好適には2mm〜1000mmである。
【0020】
本発明のモノリス状有機多孔質アニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3mg当量/ml以上、好ましくは0.5mg当量/ml以上、1.5mg当量/ml以下のイオン交換容量を有しているものである。特開2002-306976号に記載されているような連続気泡構造を有するモノリス状有機多孔質イオン交換体では、実用的に要求される低い圧力損失を達成しようとすると体積当りのイオン交換容量が低下する、体積当りの交換容量を増加させていくと圧力損失が増加するといった欠点を有していたが、本発明のモノリス状有機多孔質アニオン交換体は、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を格段に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.5mg当量/ml未満であると、破過までに処理できるイオンを含んだ水の量、即ち脱イオン水の製造能力が低下してしまうため好ましくない。なお、本発明のモノリス状有機多孔質アニオン交換体に関して、その重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、アニオン交換基が多孔質体内部にまで均一に導入されているため、その値は2〜5mg当量/gとなる。
【0021】
本発明のモノリス状有機多孔質アニオン交換体において、導入されたアニオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の内部にまで均一に分布している。ここで言う「アニオン交換基が均一に分布している」とは、アニオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。アニオン交換基の分布状況は、EPMAやSIMS等を用いることで、比較的簡単に確認することができる。
【0022】
従来のベンジルトリメチルアンモニウム構造を有するアニオン交換体は、耐熱性や耐酸化性が低く、四級アンモニウム基からメチル基が脱離して三級アミノ基が生成したり、トリメチルアミンが脱離してアルコールが生成する分解反応が進行し、中性塩分解容量の低下が問題となっていた。これに対して、本発明のモノリス状アニオン交換体は、骨格部分の主要構成単位が、特定の四級化アミノアルコキシスチレンユニットであるため、耐熱性及び耐酸化性に優れ、高温条件下や酸化性雰囲気下で長時間使用してもアニオン交換容量の低下が認められない。
【0023】
次に、モノリス状有機多孔質アニオン交換体の製造方法について説明する。すなわち、当該モノリス状有機多孔質アニオン交換体は、前記一般式(2)で表されるアミノアルコキシスチレン類、特定量の架橋性モノマー、有機溶媒および重合開始剤とを混合し、静置状態でこれを重合させてモノリス状有機多孔質体を製造し、それと有機ハロゲン化合物を反応させて製造する。
【0024】
本発明で用いられる、一般式(2)で表されるアミノアルコキシスチレン類の具体例としては、p−(4−N,N−ジメチルアミノブトキシ)スチレン、p−(4−N,N−ジエチルアミノブトキシ)スチレン、p−(4−N,N−ジ−n−プロピルアミノブトキシ)スチレン、p−(4−N,N−ジ−i−プロピルアミノブトキシ)スチレン、p−(4−N,N−ジ−n−ブチルアミノブトキシ)スチレン、p−(4−N,N−ジ−i−ブチルアミノブトキシ)スチレン、p−(4−N,N−ジ−s−ブチルアミノブトキシ)スチレン、p−(4−N,N−ジ−t−ブチルアミノブトキシ)スチレン、p−(5−N,N−ジメチルアミノペンチルオキシ)スチレン、p−(5−N,N−ジエチルアミノペンチルオキシ)スチレン、p−(5−N,N−ジ−n−プロピルアミノペンチルオキシ)スチレン、p−(5−N,N−ジ−i−プロピルアミノペンチルオキシ)スチレン、p−(5−N,N−ジ−n−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、p−(5−N,N−ジ−i−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、p−(5−N,N−ジ−s−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、p−(5−N,N−ジ−t−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、p−(6−N,N−ジメチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、p−(6−N,N−ジエチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、p−(6−N,N−ジ−n−プロピルアミノヘキシルオキシ)スチレン、p−(6−N,N−ジ−i−プロピルアミノヘキシルオキシ)スチレン、p−(6−N,N−ジ−n−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、p−(6−N,N−ジ−i−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、p−(6−N,N−ジ−s−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、p−(6−N,N−ジ−t−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、p−(7−N,N−ジメチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、p−(7−N,N−ジエチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、p−(7−N,N−ジ−n−プロピルアミノヘプチルオキシ)スチレン、p−(7−N,N−ジ−i−プロピルアミノヘプチルオキシ)スチレン、p−(7−N,N−ジ−n−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、p−(7−N,N−ジ−i−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、p−(7−N,N−ジ−s−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、p−(7−N,N−ジ−t−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、p−(8−N,N−ジメチルアミノオクチルオキシ)スチレン、p−(8−N,N−ジエチルアミノオクチルオキシ)スチレン、p−(8−N,N−ジ−n−プロピルアミノオクチルオキシ)スチレン、p−(8−N,N−ジ−i−プロピルアミノオクチルオキシ)スチレン、p−(8−N,N−ジ−n−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、p−(8−N,N−ジ−i−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、p−(8−N,N−ジ−s−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、p−(8−N,N−ジ−t−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、p−(9−N,N−ジメチルアミノノナニルオキシ)スチレン、p−(9−N,N−ジエチルアミノノナニルオキシ)スチレン、p−(9−N,N−ジ−n−プロピルアミノノナニルオキシ)スチレン、p−(9−N,N−ジ−i−プロピルアミノノナニルオキシ)スチレン、p−(9−N,N−ジ−n−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、p−(9−N,N−ジ−i−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、p−(9−N,N−ジ−s−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、p−(9−N,N−ジ−t−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、p−(10−N,N−ジメチルアミノデカニルオキシ)スチレン、p−(10−N,N−ジエチルアミノデカニルオキシ)スチレン、p−(10−N,N−ジ−n−プロピルアミノデカニルオキシ)スチレン、p−(10−N,N−ジ−i−プロピルアミノデカニルオキシ)スチレン、p−(10−N,N−ジ−n−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、p−(10−N,N−ジ−i−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、p−(10−N,N−ジ−s−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、p−(10−N,N−ジ−t−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、p−(11−N,N−ジメチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、p−(11−N,N−ジエチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、p−(11−N,N−ジ−n−プロピルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、p−(11−N,N−ジ−i−プロピルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、p−(11−N,N−ジ−n−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、p−(11−N,N−ジ−i−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、p−(11−N,N−ジ−s−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、p−(11−N,N−ジ−t−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、p−(12−N,N−ジメチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、p−(12−N,N−ジエチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、p−(12−N,N−ジ−n−プロピルアミノドデカニルオキシ)スチレン、p−(12−N,N−ジ−i−プロピルアミノドデカニルオキシ)スチレン、p−(12−N,N−ジ−n−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、p−(12−N,N−ジ−i−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、p−(12−N,N−ジ−s−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、p−(12−N,N−ジ−t−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、m−(4−N,N−ジメチルアミノブトキシ)スチレン、m−(4−N,N−ジエチルアミノブトキシ)スチレン、m−(4−N,N−ジ−n−プロピルアミノブトキシ)スチレン、m−(4−N,N−ジ−i−プロピルアミノブトキシ)スチレン、m−(4−N,N−ジ−n−ブチルアミノブトキシ)スチレン、m−(4−N,N−ジ−i−ブチルアミノブトキシ)スチレン、m−(4−N,N−ジ−s−ブチルアミノブトキシ)スチレン、m−(4−N,N−ジ−t−ブチルアミノブトキシ)スチレン、m−(5−N,N−ジメチルアミノペンチルオキシ)スチレン、m−(5−N,N−ジエチルアミノペンチルオキシ)スチレン、m−(5−N,N−ジ−n−プロピルアミノペンチルオキシ)スチレン、m−(5−N,N−ジ−i−プロピルアミノペンチルオキシ)スチレン、m−(5−N,N−ジ−n−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、m−(5−N,N−ジ−i−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、m−(5−N,N−ジ−s−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、m−(5−N,N−ジ−t−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、m−(6−N,N−ジメチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、m−(6−N,N−ジエチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、m−(6−N,N−ジ−n−プロピルアミノヘキシルオキシ)スチレン、m−(6−N,N−ジ−i−プロピルアミノヘキシルオキシ)スチレン、m−(6−N,N−ジ−n−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、m−(6−N,N−ジ−i−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、m−(6−N,N−ジ−s−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、m−(6−N,N−ジ−t−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、m−(7−N,N−ジメチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、m−(7−N,N−ジエチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、m−(7−N,N−ジ−n−プロピルアミノヘプチルオキシ)スチレン、m−(7−N,N−ジ−i−プロピルアミノヘプチルオキシ)スチレン、m−(7−N,N−ジ−n−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、m−(7−N,N−ジ−i−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、m−(7−N,N−ジ−s−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、m−(7−N,N−ジ−t−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、m−(8−N,N−ジメチルアミノオクチルオキシ)スチレン、m−(8−N,N−ジエチルアミノオクチルオキシ)スチレン、m−(8−N,N−ジ−n−プロピルアミノオクチルオキシ)スチレン、m−(8−N,N−ジ−i−プロピルアミノオクチルオキシ)スチレン、m−(8−N,N−ジ−n−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、m−(8−N,N−ジ−i−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、m−(8−N,N−ジ−s−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、m−(8−N,N−ジ−t−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、m−(9−N,N−ジメチルアミノノナニルオキシ)スチレン、m−(9−N,N−ジエチルアミノノナニルオキシ)スチレン、m−(9−N,N−ジ−n−プロピルアミノノナニルオキシ)スチレン、m−(9−N,N−ジ−i−プロピルアミノノナニルオキシ)スチレン、m−(9−N,N−ジ−n−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、m−(9−N,N−ジ−i−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、m−(9−N,N−ジ−s−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、m−(9−N,N−ジ−t−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、m−(10−N,N−ジメチルアミノデカニルオキシ)スチレン、m−(10−N,N−ジエチルアミノデカニルオキシ)スチレン、m−(10−N,N−ジ−n−プロピルアミノデカニルオキシ)スチレン、m−(10−N,N−ジ−i−プロピルアミノデカニルオキシ)スチレン、m−(10−N,N−ジ−n−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、m−(10−N,N−ジ−i−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、m−(10−N,N−ジ−s−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、m−(10−N,N−ジ−t−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、m−(11−N,N−ジメチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、p−(11−N,N−ジエチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、m−(11−N,N−ジ−n−プロピルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、m−(11−N,N−ジ−i−プロピルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、m−(11−N,N−ジ−n−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、m−(11−N,N−ジ−i−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、m−(11−N,N−ジ−s−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、m−(11−N,N−ジ−t−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、m−(12−N,N−ジメチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、m−(12−N,N−ジエチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、m−(12−N,N−ジ−n−プロピルアミノドデカニルオキシ)スチレン、m−(12−N,N−ジ−i−プロピルアミノドデカニルオキシ)スチレン、m−(12−N,N−ジ−n−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、m−(12−N,N−ジ−i−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、m−(12−N,N−ジ−s−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、m−(12−N,N−ジ−t−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、o−(4−N,N−ジメチルアミノブトキシ)スチレン、o−(4−N,N−ジエチルアミノブトキシ)スチレン、o−(4−N,N−ジ−n−プロピルアミノブトキシ)スチレン、o−(4−N,N−ジ−i−プロピルアミノブトキシ)スチレン、o−(4−N,N−ジ−n−ブチルアミノブトキシ)スチレン、o−(4−N,N−ジ−i−ブチルアミノブトキシ)スチレン、o−(4−N,N−ジ−s−ブチルアミノブトキシ)スチレン、o−(4−N,N−ジ−t−ブチルアミノブトキシ)スチレン、o−(5−N,N−ジメチルアミノペンチルオキシ)スチレン、o−(5−N,N−ジエチルアミノペンチルオキシ)スチレン、o−(5−N,N−ジ−n−プロピルアミノペンチルオキシ)スチレン、o−(5−N,N−ジ−i−プロピルアミノペンチルオキシ)スチレン、o−(5−N,N−ジ−n−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、o−(5−N,N−ジ−i−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、o−(5−N,N−ジ−s−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、o−(5−N,N−ジ−t−ブチルアミノペンチルオキシ)スチレン、o−(6−N,N−ジメチル
アミノヘキシルオキシ)スチレン、o−(6−N,N−ジエチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、o−(6−N,N−ジ−n−プロピルアミノヘキシルオキシ)スチレン、o−(6−N,N−ジ−i−プロピルアミノヘキシルオキシ)スチレン、o−(6−N,N−ジ−n−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、o−(6−N,N−ジ−i−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、o−(6−N,N−ジ−s−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、o−(6−N,N−ジ−t−ブチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、o−(7−N,N−ジメチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、o−(7−N,N−ジエチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、o−(7−N,N−ジ−n−プロピルアミノヘプチルオキシ)スチレン、o−(7−N,N−ジ−i−プロピルアミノヘプチルオキシ)スチレン、o−(7−N,N−ジ−n−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、o−(7−N,N−ジ−i−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、o−(7−N,N−ジ−s−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、o−(7−N,N−ジ−t−ブチルアミノヘプチルオキシ)スチレン、o−(8−N,N−ジメチルアミノオクチルオキシ)スチレン、o−(8−N,N−ジエチルアミノオクチルオキシ)スチレン、o−(8−N,N−ジ−n−プロピルアミノオクチルオキシ)スチレン、o−(8−N,N−ジ−i−プロピルアミノオクチルオキシ)スチレン、o−(8−N,N−ジ−n−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、o−(8−N,N−ジ−i−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、o−(8−N,N−ジ−s−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、o−(8−N,N−ジ−t−ブチルアミノオクチルオキシ)スチレン、o−(9−N,N−ジメチルアミノノナニルオキシ)スチレン、o−(9−N,N−ジエチルアミノノナニルオキシ)スチレン、o−(9−N,N−ジ−n−プロピルアミノノナニルオキシ)スチレン、o−(9−N,N−ジ−i−プロピルアミノノナニルオキシ)スチレン、o−(9−N,N−ジ−n−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、o−(9−N,N−ジ−i−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、o−(9−N,N−ジ−s−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、o−(9−N,N−ジ−t−ブチルアミノノナニルオキシ)スチレン、o−(10−N,N−ジメチルアミノデカニルオキシ)スチレン、o−(10−N,N−ジエチルアミノデカニルオキシ)スチレン、o−(10−N,N−ジ−n−プロピルアミノデカニルオキシ)スチレン、o−(10−N,N−ジ−i−プロピルアミノデカニルオキシ)スチレン、o−(10−N,N−ジ−n−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、o−(10−N,N−ジ−i−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、o−(10−N,N−ジ−s−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、o−(10−N,N−ジ−t−ブチルアミノデカニルオキシ)スチレン、o−(11−N,N−ジメチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、o−(11−N,N−ジエチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、o−(11−N,N−ジ−n−プロピルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、o−(11−N,N−ジ−i−プロピルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、o−(11−N,N−ジ−n−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、o−(11−N,N−ジ−i−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、o−(11−N,N−ジ−s−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、o−(11−N,N−ジ−t−ブチルアミノウンデカニルオキシ)スチレン、o−(12−N,N−ジメチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、o−(12−N,N−ジエチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、o−(12−N,N−ジ−n−プロピルアミノドデカニルオキシ)スチレン、o−(12−N,N−ジ−i−プロピルアミノドデカニルオキシ)スチレン、o−(12−N,N−ジ−n−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、o−(12−N,N−ジ−i−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、o−(12−N,N−ジ−s−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン、o−(12−N,N−ジ−t−ブチルアミノドデカニルオキシ)スチレン等を挙げることができる。好適なものとしては、p−(4−N,N−ジメチルアミノブトキシ)スチレン、p−(6−N,N−ジメチルアミノヘキシルオキシ)スチレン、p−(8−N,N−ジメチルアミノオクチルオキシシ)スチレンが挙げられる。
【0025】
これらのアミノアルコキシスチレン類の製造方法は公知の方法に準拠すればよく、アミノアルコキシフェニルマグネシウムハライドを、触媒の存在下にビニルハライドと反応させることにより、効率よく製造できる。触媒としては、パラジウム系触媒、ニッケル系触媒、マンガン系触媒、鉄系触媒、コバルト系触媒及びロジウム系触媒が挙げられ、これらの一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。ビニルハライドとしては、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル及びヨウ化ビニルが挙げられ、これらの中で、塩化ビニルまたは臭化ビニルが経済的でかつ入手の容易性から好適である。
【0026】
当該反応は、通常、溶媒存在下で行われる。使用される反応溶媒としては、エーテル系溶媒、含酸素系溶媒、含窒素系溶媒、芳香族系炭化水素溶媒及び脂肪族系炭化水素溶媒等が挙げられる。反応温度は、通常、−10℃〜溶媒還流温度である。反応終了後は、酸洗浄、水洗浄、アルカリ洗浄等を適当に組み合わせて副生した無機塩類や未反応原料を除去し、更に蒸留や再結晶等の通常の精製技術により、目的とするアミノアルコキシスチレン類を得ることができる。
【0027】
本発明で用いられる、一分子中に少なくとも二個以上のビニル基を有する架橋性モノマーは、後述する有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋性モノマーの具体例としては、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、ビス(ビニルフェニル)スルホン、ビス(ビニルフェニル)エタン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、メチレンビス(アクリルアミド)、エチレンビス(アクリルアミド)等が挙げられる。これら架橋性モノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋性モノマーは、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋性モノマーは、アミノアルコキシスチレンと架橋性モノマーの合計量に対して1〜5モル%、好ましくは1〜4モル%の割合で用いることが重要である。理由は明確ではないが、架橋性モノマーの使用量は得られるモノリス状有機多孔質体の多孔構造に大きな影響を与え、架橋性モノマーの使用量が5モル%を超えると、骨格間に形成される連続空孔の大きさが小さくなってしまうため好ましくない。一方、架橋性モノマー使用量が1モル%未満であると、多孔質体の機械的強度が不足し、通水時に大きく変形したり、多孔質体の破壊を招いたりするため好ましくない。
【0028】
なお、本発明の目的を逸脱しない範囲内において、第三成分としてその他のビニル系モノマーを共重合しても良く、そのようなビニル系モノマーの具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、t−ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、1−エトキシエトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸メチル、スチレンスルホン酸エチル、スチレンスルホン酸シクロヘキシル等のスチレン系単量体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−又はi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル系単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−又はi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等のアクリル酸エステル系単量体等を挙げることができる。
【0029】
本発明で用いられる有機溶媒は、アミノアルコキシスチレンや架橋性モノマーは溶解するがアミノアルコキシスチレンが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ポリアミノアルコキシスチレンに対する貧溶媒である。該有機溶媒の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類;オクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類等が挙げられる。これらのうち、ポリエーテル類を有機溶媒として用いると、静置重合により粒子凝集構造が形成されやすくなると共に、三次元的に連続した空孔が大きくなるため好ましい。また、ベンゼンやトルエンのようにポリアミノアルコキシスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。
【0030】
本発明で用いられる重合開始剤は、アゾ系開始剤が用いられる。重合開始剤として、過酸化物系開始剤を用いると、アミノアルコキシスチレン類と過酸化物が酸化・還元反応を起こして、dead-end重合を引き起こすため重合体が得られない。それに対して、アゾ系開始剤は酸化能力が低いためdead-end重合とはならない。好適なアゾ系開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)が挙げられる。これらアゾ系開始剤の使用量は、全モノマー量に対して0.01〜2モル%である。
【0031】
重合条件は、開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。重合終了後、内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、アセトン等の溶剤で抽出してモノリス状有機多孔質体を得る。
【0032】
次に、上記モノリス状有機多孔質体と前記一般式(3)で示される有機ハロゲン化合物と反応について説明する。前記一般式(3)中、Rは炭素数1〜8の炭化水素基もしくはアルカノール基を示し、Yはハロゲン原子を示す。
【0033】
一般式(3)で示される有機ハロゲン化合物の具体例としては、メチルクロライド、メチルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルクロライド、エチルブロマイド、エチルヨーダイド、n−プロピルクロライド、n−プロピルブロマイド、n−プロピルヨーダイド、i−プロピルクロライド、i−プロピルブロマイド、i−プロピルヨーダイド、n−ブチルクロライド、n−ブチルブロマイド、n−ブチルヨーダイド、i−ブチルクロライド、i−ブチルブロマイド、i−ブチルヨーダイド、s−ブチルクロライド、s−ブチルブロマイド、s−ブチルヨーダイド、t−ブチルクロライド、t−ブチルブロマイド、t−ブチルヨーダイド、クロロメチルアルコール、ブロモメチルアルコール、ヨードメチルアルコール、1−クロロエタノール、1−ブロモエタノール、1−ヨードエタノール、2−クロロエタノール、2−ブロモエタノール、2−ヨードエタノール、1−クロロプロパノール、1−ブロモプロパノール、1−ヨードプロパノール、2−クロロプロパノール、2−ブロモプロパノール、2−ヨードプロパノール、3−クロロプロパノール、3−ブロモプロパノール、3−ヨードプロパノール、1−クロロブタノール、1−ブロモブタノール、1−ヨードブタノール、2−クロロブタノール、2−ブロモブタノール、2−ヨードブタノール、3−クロロブタノール、3−ブロモブタノール、3−ヨードブタノール、4−クロロブタノール、4−ブロモブタノール、4−ヨードブタノール等を挙げることができる。
【0034】
一般式(3)で示される有機ハロゲン化合物とアミノアルコキシスチレン架橋重合体からなるモノリス状有機多孔質体とを反応させるのは定法に従って行えばよく、例えば有機ハロゲン化合物を溶解した溶媒中にモノリス状有機多孔質体を浸漬させ、反応を行う等の方法が挙げられる。溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セロソルブ類等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホロアミド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。これらは単独或いは混合することにより用いることができる。場合によっては、これら溶媒を用いることなく、有機ハロゲン化合物と架橋重合体を直接反応させることも可能である。
【0035】
反応温度は、使用する有機ハロゲン化合物の種類により異なるが、通常、20〜200℃で常圧下または加圧下で実施される。反応時間は、反応温度及び使用する有機ハロゲン化合物の種類により異なるが、通常0.5〜48時間である。使用する有機ハロゲン化合物の添加量は、モノリス状有機多孔質体中の三級アミノ基に対して1〜10倍モルである。使用量が1倍モル未満の場合には、四級化反応が十分に進行せず、又10倍モル以上の場合には経済的に不利となる。
【0036】
本発明のモノリス状イオン交換体は、耐熱性及び耐酸化性に優れているため、通常のアニオン交換体の用途である2床3塔式純水製造装置等や電気式脱イオン水製造装置の脱塩室に充填して用いられるばかりでなく、通常のアニオン交換体では耐酸化性に劣るため使用することができなかった、電気式脱イオン水製造装置の陽極室へ充填して用いることができる。また、水を電気分解して酸性水やアルカリ性水を製造する電解水製造装置において、酸化性雰囲気となる陽極近傍にも充填して用いることができる。更に、ボイラーの復水脱塩装置に充填して用いると、その耐熱性の高さから、復水の温度を従来の60℃以下から100℃程度にまで高めることができ、エネルギーロスを大幅に低減できる。また、復水脱塩装置は酸化性雰囲気下にさらされる場合が多いため、本発明のアニオン交換体を用いることでイオン交換体の交換頻度が低減できる。
【0037】
実施例
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0038】
参考例1
(p-(4-N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレンの合成)
窒素雰囲気下、攪拌装置及び還流装置を備えた1200mlフラスコ中に、20〜50メッシュの金属マグネシウム11.6g、テトラヒドロフラン40.0g、臭化エチル2.8gを仕込み、溶媒還流条件下にて30分加熱攪拌した。その後、p-(4-N,N-ジメチルアミノブトキシ)クロロベンゼン90.8gをテトラヒドロフラン60.0gに溶解させた溶液を4時間かけて滴下した。更に、温度を維持して5時間攪拌し、p−(4-N,N-ジメチルアミノブトキシ)フェニルマグネシウムクロライドのテトラヒドロフラン溶液を得た。次いで、当該溶液に[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル2.16g及びテトラヒドロフラン40.0gを加えた後に反応溶液を10℃まで冷却し、臭化ビニルガス51.2gを同温度にて2時間かけて吹き込み、更に同温度にて1時間攪拌した。反応終了後、塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液にて反応液を処理し、得られた有機層をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製して、純度98.8%のp-(4−N,N−ジメチルアミノブトキシ)スチレン60.8gを得た。なお、同化合物は、質量分析、元素分析及びNMRにて同定した。
【実施例1】
【0039】
p-(4-N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレン39.5g、ジビニルベンゼン(純度80%)0.47g、ポリエチレングリコール(分子量400)60gおよび2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.4gを混合し、均一に溶解させた。p-(4-N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレンとジビニルベンゼンの合計量に対して、ジビニルベンゼンは1.6モル%であった。次に当該p-(4−N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレン/ジビニルベンゼン/ポリエチレングリコール(分子量400)/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物をポリエチレン製円筒容器に入れ、窒素で3回パージした後密封し、静置下60℃で24時間重合させた。重合終了後、厚さ約30mmのモノリス状の内容物を取り出し、アセトンで10時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、ポリエチレングリコールを除去した後、85℃で一夜減圧乾燥した。得られた円筒型モノリス状多孔質体の直径は63mmであった。
【0040】
このようにして得られたp-(4-N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.6モル%含有した有機多孔質体の内部構造を、SEMにより観察した結果を図1に示す。図1から明らかなように、当該有機多孔質体は直径が約15μmの架橋ポリ[p-(4−N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレン]粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成していることがわかる。また、当該有機多孔質体の細孔分布を水銀圧入法により測定したところ、細孔分布曲線はシャープであり、細孔分布曲線の極大値(直径)は24μmであった。なお、当該有機多孔質体の全細孔容積は、2.5ml/gであった。
【0041】
上記の方法で製造した有機多孔質体20.0gにテトラヒドロフラン900mlを加え、40℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、ヨウ化メチル62.8gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた。反応終了後、反応母液を抜き出し、メタノールで洗浄し、更に純水で洗浄してモノリス状多孔質アニオン交換体を得た。得られたアニオン交換体の直径は97mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.63mg当量/mlであった。水湿潤状態の有機多孔質イオン交換体の細孔径を、有機多孔質体の細孔径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積ったところ、37μmであった。同様に、骨格を形成している粒子の大きさを見積ると、粒子径は23μm、全細孔容積は、2.5ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.071MPa/(m・LV)であり、実用上問題のない、低い圧力損失であった。
【0042】
次に、モノリス状多孔質アニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、EPMAによりヨウ化物イオンの分布状態を観察した。その結果、ヨウ化物イオンは、アニオン交換体表面および骨格内部に均一に分布しており、四級アンモニウム基がアニオン交換体表面のみならず、骨格内部においてもマイクロメーターオーダーで均一に導入されていることを確認した。
【0043】
<耐熱性試験1>
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体をOH形に再生した後、50℃の超純水で30分間通水洗浄した。この洗浄済みアニオン交換体を30ml採取し、脱気超純水100mlに分散させ、窒素気流下密閉して100℃で95日間静置した。加熱試験終了後、アニオン交換体を取り出し、中性塩分解容量を測定したところ、0.63mg当量/mlであり、中性塩分解容量の低下は認められず、良好な耐熱性を示した。耐熱性の指標である強塩基性アニオン交換容量残存率は、100%であった。
【0044】
<耐酸化性試験1>
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体をCl形にした後、室温の超純水で30分間通水洗浄した。この洗浄済みアニオン交換体を30ml採取し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(残留塩素濃度:300mg/L、pH=8.2)300mlに分散させ、密閉して35℃で11日間静置した。試験終了後、アニオン交換体を取り出し、中性塩分解容量を測定したところ、0.60mg当量/mlであり、中性塩分解容量の低下はわずかであり、良好な耐酸化性を示した。耐酸化性の指標である強塩基性アニオン交換容量残存率は、95%であった。
【実施例2】
【0045】
p-(4-N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレン39.5gに代えて39.0gとしたこと、ジビニルベンゼン0.47gに代えて0.90gとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、架橋導入量3.0モル%のモノリス状アニオン交換体を得た。モノリス状多孔質体の内部構造をSEMにより観察した結果、図1と同様に、架橋ポリ[p-(4−N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレン]粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成していた。
【0046】
得られたアニオン交換体の直径は90mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.76mg当量/mlであった。水湿潤状態の有機多孔質イオン交換体の細孔径を、有機多孔質体の細孔径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積ったところ、31μmであった。同様に、骨格を形成している粒子の大きさを見積ると、粒子径は15μm、全細孔容積は、2.4ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.091MPa/(m・LV)であり、実用上問題のない、低い圧力損失であった。
【0047】
次に、モノリス状多孔質アニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、EPMAによりヨウ化物イオンの分布状態を観察した。その結果、四級アンモニウム基のアニオン交換体表面および骨格内部での均一導入が確認できた。
【0048】
<耐熱性試験2>
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体の代わりに実施例2で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体を用いた以外は、実施例1と同様の操作で耐熱性試験を行った。加熱試験終了後の中性塩分解容量は0.75mg当量/mlであり、中性塩分解容量の低下はほとんど認められなかった。耐熱性の指標である強塩基性アニオン交換容量残存率は99%であり、良好な耐熱性を示した。
【0049】
<耐酸化性試験2>
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体の代わりに実施例2で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体を用いた以外は、実施例1と同様の操作で耐酸化性試験を行った。試験終了後の中性塩分解容量は0.73mg当量/mlであり、中性塩分解容量の低下はわずかであった。耐酸化性の指標である強塩基性アニオン交換容量残存率は96%であり、良好な耐酸化性を示した。
【0050】
参考例2
(p-(6−N,N-ジメチルアミノヘキシルオキシ)スチレンの合成)
窒素雰囲気下、攪拌装置及び還流装置を備えた2000mlフラスコ中に、20〜50メッシュの金属マグネシウム12.0g、テトラヒドロフラン200.0g、臭化エチル3.0gを仕込み、溶媒還流条件下にて30分加熱攪拌した。その後、系を5℃まで冷却し、p−(6-N,N-ジメチルアミノヘキシルオキシ)ブロモベンゼン157.0gをテトラヒドロフラン300.0gに溶解させた溶液を5℃で4時間かけて滴下した。更に、温度を維持して2時間攪拌し、p−(6-N,N-ジメチルアミノヘキシルオキシ)フェニルマグネシウムブロマイドのテトラヒドロフラン溶液を得た。次いで、当該溶液に無水塩化コバルト2.6gを加え、次いで塩化ビニルガス38.0gを15℃にて2時間かけて吹き込み、更に同温度にて1時間攪拌した。反応終了後、塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液にて反応液を処理し、得られた有機層をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製して、純度96.0%のp-(6-N,N-ジメチルアミノヘキシルオキシ)スチレン98.0gを得た。なお、同化合物は、質量分析、元素分析及びNMRにて同定した。
【実施例3】
【0051】
参考例1で得たp−(4-N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレン39.5gに代えて参考例2で得たp−(6−N,N-ジメチルアミノヘキシルオキシ)スチレン39.5gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、架橋導入量1.8モル%のモノリス状アニオン交換体を得た。
【0052】
得られたアニオン交換体の直径は94mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.57mg当量/mlであった。水湿潤状態の有機多孔質イオン交換体の細孔径を、有機多孔質体の細孔径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積ったところ、35μmであった。同様に、骨格を形成している粒子の大きさを見積ると、粒子径は20μm、全細孔容積は、2.4ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.078MPa/(m・LV)であり、実用上問題のない、低い圧力損失であった。
【0053】
次に、モノリス状多孔質アニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、EPMAによりヨウ化物イオンの分布状態を観察した。その結果、四級アンモニウム基のアニオン交換体表面および骨格内部での均一導入が確認できた。
【0054】
<耐熱性試験3>
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体の代わりに、実施例3で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体を用いた以外は、実施例1と同様の操作で耐熱性試験を行った。加熱試験終了後の中性塩分解容量は0.55mg当量/mlであり、中性塩分解容量の低下はほとんど認められなかった。耐熱性の指標である強塩基性アニオン交換容量残存率は96%であり、良好な耐熱性を示した。
【0055】
<耐酸化性試験3>
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体の代わりに、実施例3で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体を用いた以外は、実施例1と同様の操作で耐酸化性試験を行った。試験終了後の中性塩分解容量は0.54mg当量/mlであり、中性塩分解容量の低下はわずかであった。耐酸化性の指標である強塩基性アニオン交換容量残存率は95%であり、良好な耐酸化性を示した。
【0056】
参考例3
(p−(3-N,N-ジメチルアミノプロポキシ)スチレンの合成)
窒素雰囲気下、攪拌装置及び還流装置を備えた1000mlフラスコ中に、20〜50メッシュの金属マグネシウム11.6g、テトラヒドロフラン40.0g、臭化エチル2.6gを仕込み、溶媒還流条件下にて30分加熱攪拌した。その後、p-(3-N,N-ジメチルアミプロポキシ)クロロベンゼン96.8gをテトラヒドロフラン60.0gに溶解させた溶液を4時間かけて滴下した。更に、温度を維持して5時間攪拌し、p−(3-N,N-ジメチルアミノプロポキシ)フェニルマグネシウムクロライドのテトラヒドロフラン溶液を得た。次いで、当該溶液に無水塩化鉄0.32g及びテトラヒドロフラン80.0gを加えた後に反応溶液を10℃まで冷却し、塩化ビニルガス27.6gを同温度にて3時間かけて吹き込み、更に同温度にて1時間攪拌した。反応終了後、塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液にて反応液を処理し、得られた有機層を減圧蒸留して、純度95%のp-(3−N,N-ジメチルアミノプロポキシ)スチレン83.4gを得た。なお、同化合物は、質量分析、元素分析及びNMRにて同定した。
比較例1
【0057】
参考例1で得たp-(4-N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレン39.5gの代わりに、参考例3で得たp-(3−N,N-ジメチルアミノプロポキシ)スチレン39.5gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、架橋導入量1.5モル%のモノリス状アニオン交換体を得た。
【0058】
得られたアニオン交換体の直径は106mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.63mg当量/mlであった。水湿潤状態の有機多孔質イオン交換体の細孔径を、有機多孔質体の細孔径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積ったところ、40μmであった。同様に、骨格を形成している粒子の大きさを見積ると、粒子径は20μm、全細孔容積は、2.5ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.051MPa/(m・LV)であり、実用上問題のない、低い圧力損失であった。
【0059】
次に、モノリス状多孔質アニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、EPMAによりヨウ化物イオンの分布状態を観察した。その結果、四級アンモニウム基のアニオン交換体表面および骨格内部での均一導入が確認できた。
【0060】
<耐熱性試験4>
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体の代わりに比較例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体を用いたこと、試験期間95日間に代えて6日間としたこと以外は、実施例1と同様の操作で耐熱性試験を行った。加熱試験終了後の中性塩分解容量は0.12mg当量/mlであり、試験期間を短縮したにもかかわらず、中性塩分解容量は大幅に低下した。耐熱性の指標である強塩基性アニオン交換容量残存率は19%であり、その耐熱性は実施例に比べ著しく劣るものであった。
【0061】
<耐酸化性試験4>
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体の代わりに比較例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体を用いたことを除いて、実施例1と同様の操作で耐酸化性試験を行った。試験終了後の中性塩分解容量は0.30mg当量/mlであり、中性塩分解容量は大幅に低下した。耐酸化性の指標である強塩基性アニオン交換容量残存率は48%であり、実施例に比べ、著しい耐酸化性の低下が認められた。
【0062】
比較例2
参考例1で得たp-(4-N,N-ジメチルアミノブトキシ)スチレンの使用量39.5gに代えて36.0gとしたこと、ジビニルベンゼンの使用量0.47gに代えて4.0gとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、架橋導入量13.0モル%のモノリス状アニオン交換体を得た。
【0063】
得られたアニオン交換体の直径は76mm、体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で1.06mg当量/mlであった。水湿潤状態の有機多孔質イオン交換体の細孔径を、有機多孔質体の細孔径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積ったところ、8μmと実施例に比べ小さい値であった。同様に、骨格を形成している粒子の大きさを見積ると、粒子径は5μm、全細孔容積は、1.5ml/gであった。その結果、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.26MPa/(m・LV)と実施例に比べ大幅に高く、工業的な低圧・大流量の処理に用いることは不可能であった。
【0064】
比較例3
ビニルベンジルクロライド19.2g、ジビニルベンゼン1.1g、ソルビタンモノオレエート2.3gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.3gを混合し、均一に溶解させた。次に当該ビニルベンジルクロライド/ジビニルベンゼン/ソルビタンモノオレエート/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式攪拌装置である真空攪拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて、13.3kPaの減圧下、公転回転数1800回転/分、自転回転数600回転/分で2.5分間攪拌し、油中水滴型エマルションを得た。乳化終了後、系を窒素で十分置換して密封し、静置下70℃で24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、イソプロパノールで18時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、水およびソルビタンモノオレエートを除去し、次いで85℃で一昼夜減圧乾燥した。
【0065】
このようにして得られたビニルベンジルクロライド/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を5モル%含有した有機多孔質体の内部構造を、SEMにより観察した結果を図2に示す。図2から明らかなように、当該有機多孔質体は、連続気泡構造を有していた。また、当該有機多孔質体の細孔分布を水銀圧入法により測定したところ、細孔分布曲線の極大値(直径)は9μm、当該有機多孔質体の全細孔容積は、6.3ml/gであった。
【0066】
上記の方法で製造した有機多孔質体を厚み約15mmの円盤状に切断した後、テトラヒドロフラン1500mlを加え、40℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、トリメチルアミン30%水溶液140gを徐々に加え、昇温して40℃で24時間反応させた。反応終了後、反応母液を抜き出し、メタノール、純水の順に洗浄し、モノリス状多孔質アニオン交換体を得た。得られたアニオン交換体の体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で0.17mg当量/mlであった。水湿潤状態の有機多孔質イオン交換体の細孔径を、有機多孔質体の細孔径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積ったところ14μm、全細孔容積は、6,3ml/gであった。また、水を透過させた際の圧力損失の指標である差圧係数は、0.12MPa/(m・LV)であった。
【0067】
次に、モノリス状多孔質アニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。その結果、塩化物イオンは、アニオン交換体表面および骨格内部に均一に分布しており、四級アンモニウム基がアニオン交換体表面のみならず、骨格内部においてもマイクロメーターオーダーで均一に導入されていることを確認した。
【0068】
<耐熱性試験5>
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体の代わりに比較例3で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体を用いた以外は、実施例1と同様の操作で耐熱性試験を行った。加熱試験終了後の中性塩分解容量は0.08mg当量/mlであり、中性塩分解容量の低下が認められた。耐熱性の指標である強塩基性アニオン交換容量残存率は48%であり、その耐熱性は実施例に比べ、劣るものであった。
【0069】
<耐酸化性試験5>
実施例1で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体の代わりに比較例3で得られたモノリス状有機多孔質アニオン交換体を用いた以外は、実施例1と同様の操作で耐酸化性試験を行った。試験終了後の中性塩分解容量は0.10mg当量/mlであり、中性塩分解容量の低下が認められた。耐酸化性の指標である強塩基性アニオン交換容量残存率は59%であり、実施例に比べ、耐酸化性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のモノリス状有機多孔質アニオン交換体は、吸着容量やイオン交換容量が大きく圧力損失が低い上に、耐熱性や耐酸化性に優れるといった特長を有しているため、2床3塔式純水製造装置や電気式脱イオン水製造装置の脱塩室又は陽極室に充填して用いることができる。また、水を電気分解して酸性水やアルカリ性水を製造する電解水製造装置の酸化性雰囲気となる陽極近傍にも充填して用いることができる。また、ボイラーの復水脱塩装置に充填して用いると、その耐熱性の高さから、復水の温度を高めることができ、エネルギーロスを大幅に低減できる。また、各種のクロマトグラフィー用充填剤;固体塩基触媒として有用であり、広範な用途分野に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例1で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM写真である。
【図2】比較例3で得られたモノリス状有機多孔質体のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】

(式中、R、R、Rは同一または異なって、炭素数1〜8の炭化水素基またはアルカノール基を示し、Xはアニオンを示し、nは4〜12の整数を示す。)で表される構成単位と、一分子中に少なくとも二つのビニル基を有する架橋性モノマーから誘導される構成単位とを有し、
該架橋性モノマーから誘導される構成単位が全構成単位に対して1〜5モル%である直径が1〜50μmの四級化アミノアルコキシスチレン架橋重合体粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に20〜100μmの三次元的に連続した空孔を有し、全細孔容積が1〜5ml/gであり、厚みが2mm以上であり、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3mg当量/ml以上であり、アニオン交換基が該多孔質アニオン交換体中に均一に分布していることを特徴とするモノリス状有機多孔質アニオン交換体。
【請求項2】
前記nが4〜8の整数であることを特徴とする請求項1記載のモノリス状有機多孔質アニオン交換体。
【請求項3】
下記一般式(2);
【化2】

(式中、R、Rは同一または異なって、炭素数1〜8の炭化水素基を示し、nは4〜12の整数を示す。)で表されるアミノアルコキシスチレン類、
一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する架橋性モノマー、
アミノアルコキシスチレン類及び架橋性モノマーは溶解するがアミノアルコキシスチレン類が重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、
及び重合開始剤からなる混合物を調製し、該混合物を静置下重合させることでモノリス状有機多孔質体を製造する際に、架橋性モノマーをアミノアルコキシスチレン類と架橋性モノマーの合計量に対して1〜5モル%用い、
次いで上記モノリス状有機多孔質体と下記一般式(3);
−Y (3)
(式中、Rは炭素数1〜8の炭化水素基もしくはアルカノール基を示し、Yはハロゲン原子を示す。)で表される有機ハロゲン化合物とを反応させることを特徴とするモノリス状有機多孔質アニオン交換体の製造方法。
【請求項4】
前記nが4〜8の整数であることを特徴とする請求項3記載のモノリス状有機多孔質アニオン交換体の製造方法。
【請求項5】
前記架橋性モノマーが、芳香族ポリビニル化合物であることを特徴とする請求項3又は4記載のモノリス状有機多孔質アニオン交換体の製造方法。
【請求項6】
前記重合開始剤が、アゾ系重合開始剤であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のモノリス状有機多孔質アニオン交換体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−115569(P2010−115569A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288616(P2008−288616)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】