説明

モノリス状有機多孔質イオン交換体、その使用方法、製造方法及び製造に用いる鋳型

【課題】化学的に安定で、流体透過時の圧力損失が低く、イオン交換容量を大きくできるモノリス状有機多孔質イオン交換体、その製造方法およびその製造方法に用いる鋳型を提供すること。
【解決手段】三次元的に連続した有機ポリマーの骨格間に三次元的に連続した空孔を有する厚みが5mm以上の連続空孔構造の有機多孔質体に、厚み方向に延びる半径0.05〜0.30mmの直線状または螺旋状の貫通孔が厚み方向に直交する方向に多数形成されたものであり、且つイオン交換基が均一に導入されてなるモノリス状有機多孔質イオン交換体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的に安定で、流体透過時の圧力損失が低く、イオン交換容量を大きくできるモノリス状有機多孔質イオン交換体、その使用方法、製造方法及び製造方法で用いる鋳型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2003−246809号公報には、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に半径が0.01〜10μmのメソポアを有する連続マクロポア構造を有し、全細孔容積が1〜50ml/gであり、更に細孔分布曲線の主ピークにおける半値幅を該主ピークの半径で除した値が0.5以下であり、且つイオン交換基を含有してなる有機多孔質イオン交換体が開示されている。該有機多孔質イオン交換体は特に吸着速度に優れており、特に水中の微量イオンの捕捉能力に優れている。
【0003】
一方、粒子凝集型構造を有する多孔質体が特表平7−501140号等に開示されている。この粒子凝集型モノリス状有機多孔質体は、約200nm未満の小さな孔と、直径が約600nm以上から約3000nmに及ぶ大きな孔が形成されており、クロマトグラフィーカラムに好適なプラグである。
【0004】
このような有機多孔質イオン交換体は、水処理機器に限らず、分析機器などの充填材として有望である。これら装置に組み込む吸着材あるいはイオン交換材料には低い通水抵抗が望まれる。通水抵抗を低減することで、充填容器の耐圧性能を低く設定できる、大量の被処理水を短時間で処理できるなどのメリットがあるからである。
【特許文献1】特開2003−246809号公報(請求項5)
【特許文献2】特表平7−501140号(第4頁左下欄第3行〜第8行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2003−246809号公報に記載の有機多孔質イオン交換体はイオン交換容量を大きくするために、油溶性モノマーの比率を高めて重合すると通水経路となる連続マクロポア構造中の共通の開口が小さくなるため、通水差圧が高くなるという問題があった。また、特表平7−501140号に記載の方法で得られた多孔質体は、前記の如く、連続した空孔径が最大でも約3μmと小さく、低圧で大流量の処理を行うことが要求される工業規模の脱イオン水製造装置等に用いることはできないという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記従来の技術の問題点を解決したものであって、化学的に安定で、流体透過時の圧力損失が低く、イオン交換容量を大きくできるモノリス状有機多孔質イオン交換体、その製造方法およびその製造方法に用いる鋳型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、三次元的に連続した有機ポリマーの骨格間に三次元的に連続した空孔を有する厚みが5mm以上の連続空孔構造の有機多孔質体に、厚み方向に延びる半径0.05〜0.25mmの直線状または螺旋状の貫通孔が厚み方向に直交する方向に多数形成されたものであり、且つイオン交換基が均一に導入されてなるものであれば、化学的に安定で、流体透過時の圧力損失が低く、イオン交換容量を大きくできることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、三次元的に連続した有機ポリマーの骨格間に三次元的に連続した空孔を有する厚みが5mm以上の連続空孔構造の有機多孔質体に、厚み方向に延びる半径0.05〜0.25mmの直線状または螺旋状の貫通孔が厚み方向に直交する方向に多数形成されたものであり、且つイオン交換基が均一に導入されてなるモノリス状有機多孔質イオン交換体を提供するものである。
【0009】
また、前記モノリス状有機多孔質イオン交換体は円柱形状物であって、該円柱形状物を2つ以上として端面同士を当接させ、隣接する円柱状物同士を軸中心として所定角度回動させて積層し、容器に充填して使用するモノリス状有機多孔質イオン交換体の使用方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、ビニルモノマー、界面活性剤、水及び必要に応じて重合開始剤や架橋剤を混合し、該混合物を撹拌して油中水滴型エマルジョンを調製する工程と、容器内の該油中水滴型エマルジョン中に針の長手方向が厚み方向となるように多数の針を配置し、静置下重合する工程と、重合体から該多数の針を外す工程と、得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入する工程とを有するモノリス状有機多孔質体の製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる液状混合物を調製する工程と、容器内の該液状混合物中に針の長手方向が厚み方向となるように多数の針を配置し、静置下重合する工程と、該重合体から該多数の針を取り外す工程と、得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入する工程とを有するモノリス状有機多孔質イオン交換体の製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記製造方法で用いる鋳型であって、脚部により所定の高さに保持される台座の所定領域に、半径0.05〜0.25mmの針が通る貫通穴を多数形成し、該貫通穴を通らない大きさのストッパー部を後端に形成した該針を、該針の先端から該貫通穴に通して吊り下げ状に支持したものである鋳型を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のモノリス状有機多孔質イオン交換体は、水中の微量イオンを効果的に捕捉する能力に優れ、且つ通水差圧を低減しつつイオン交換容量を高くすることができる。また、連続空孔構造が、連続マクロポア構造である場合、モノマー濃度比率を高めることで共通の開口が小さくなっても、特定形状の大きな貫通孔が多数形成されているため、低圧、大流量の水処理が可能となる。また、連続空孔構造が、粒子凝集型空孔構造の場合、これまでにない大変ユニークな構造を採り、前記同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のモノリス状有機多孔質イオン交換体(以下、単に「モノリス」とも言う。)の基本構造は、三次元的に連続した有機ポリマーの骨格間に三次元的に連続した空孔を有する厚みが5mm以上の連続空孔構造の多孔質体に、厚み方向に延びる所定形状の貫通孔が厚み方向に直交する方向に形成されたものである。すなわち、本発明のモノリスは、貫通孔と連続空孔構造の空孔とは互いに繋がっており、貫通孔において、液体や気体が低い圧力損失で流れる大きな流路を形成し、連続空孔構造において、液体や気体が浸透する該貫通孔よりも小さな流路を形成する。
【0015】
本発明のモノリスは、その厚みが5mm以上であり、膜状の多孔質体とは区別される。厚みが5mm未満であると、イオン交換容量が極端に低下してしまうため好ましくない。該有機多孔質イオン交換体の厚みは、好適には5mm〜1000mmである。
【0016】
本発明のモノリスを構成する連続空孔構造としては、互いに繋がっているマクロポアとマクロポアの該繋がり部分が半径0.01〜10μmの開口となり、且つ全細孔容積が2〜20ml/gの連続マクロポア構造(以下、単に「連続マクロポア構造」とも言う。)又は架橋構造単位を有する半径0.5〜25μmの有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に空孔半径が10〜50μmの三次元的に連続した空孔を有する粒子凝集型空孔構造(以下、単に「粒子凝集型空孔構造」とも言う。)が挙げられる。
【0017】
連続マクロポア構造は、互いに繋がっているマクロポアとマクロポアの該繋がり部分が半径0.01〜10μm、好ましくは0.1〜10μmの開口を有する構造である。すなわち、連続マクロポア構造は、通常、半径0.2〜250μmのマクロポアとマクロポアが重なり合い、この重なる部分が開口となる構造を有するもので、その部分がオープンポア構造のものである。オープンポア構造は、液体や気体を流せば該マクロポアと該開口で形成される空孔構造内が流路となる。マクロポアは、連続マクロポア構造中、概ね同じ半径のものが均一に分散されているが、上記数値範囲を越える更に大きなポアが不均一に所々点在していてもよい。
【0018】
マクロポアとマクロポアの重なりは、1個のマクロポアで1〜2個、多くのものは3〜10個である。開口の半径が0.01μm未満であると、液体または気体透過時の圧力損失が大きくなるため好ましくない。一方、開口の半径が10μmを越えると、骨格構造の密度が減少することで、体積当りのイオン交換容量が減少してしまい、その結果、吸着特性やイオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。
【0019】
連続マクロポア構造は、全細孔容積が2〜20ml/g、好ましくは3〜20ml/gである。全細孔容積が小さ過ぎると、単位断面積当りの通水量が小さくなってしまい、流体が流れ難くなるため好ましくない。一方、全細孔容積が大き過ぎると、骨格部分のポリマーの占める割合が低下し、多孔質体の強度が著しく低下したり、イオン交換基を多く導入できない等の点で好ましくない。連続マクロポア構造中の全細孔容積は、水銀圧入法により測定することができる。連続マクロポア構造を形成する骨格部分のポリマーは、架橋構造を有する有機ポリマー材料を用い、該ポリマー材料はポリマー材料を構成する全構成単位に対して、10〜90モル%の架橋構造単位を含むことが好ましい。架橋構造単位が10モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、90モル%を越えると、イオン交換基の導入が困難となり、イオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。連続マクロポア構造における全細孔容積は、SEMにより平均マクロポア径を求めることで概ね知ることができる。
【0020】
連続マクロポア構造を構成する材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化ポリオレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸グリシジル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー;スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のモノマー及び、必要に応じて架橋剤を重合させて得られるポリマーでも、複数のモノマー及び、必要に応じて架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸・アルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0021】
粒子凝集型空孔構造において、有機ポリマー粒子の半径が小さ過ぎると、骨格間の連続した空孔半径が小さくなり過ぎるため好ましくなく、大き過ぎると、液体または気体とモノリス状多孔質体等との接触が不十分となり、その結果、イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。また、骨格間に存在する三次元的に連続した空孔半径の大きさが小さ過ぎると、水や気体等の流体を透過させた際の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、一方、大き過ぎると、液体または気体と有機多孔質体や有機多孔質イオン交換体との接触が不十分となり、イオン交換特性が低下してしまうため好ましくない。上記有機ポリマー粒子の大きさは、SEMを用いることで簡便に測定できる。また、骨格間に存在する三次元的に連続した空孔径の大きさは、凝集型空孔構造部分に対する水銀圧入法により求めたものであり、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。
【0022】
また、粒子凝集型空孔構造は、前記連続マクロポア構造と同様の全細孔容積を有する。また、当該構造を構成する骨格部分の有機ポリマー材料は、ビニルモノマーからなる構成単位と、分子中に2個以上のビニル基を有する架橋剤構造単位とを有するものであり、該ポリマー材料はポリマー材料を構成する全構成単位に対して、好ましくは1〜5モル%、特に好ましくは1〜4モル%の架橋構造単位を含んでいる。架橋構造単位が少な過ぎると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、多くなり過ぎると、上記骨格間に三次元的に連続して存在する空孔径が小さくなってしまい、圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。
【0023】
本発明において、貫通孔は、連続空孔構造の有機多孔質体の厚み方向に延びる半径0.05〜0.30mm、好ましくは0.08〜0.20mmの直線状または螺旋状の孔であって、厚み方向に対して直交する方向に所定のピッチで多数形成されたものである。貫通孔の半径が小さ過ぎると通水差圧の低減効果はほとんど見られないため好ましくなく、大き過ぎると、貫通孔内壁と貫通孔を流れる液体との接触効率が低下しイオン交換帯長さが著しく長くなる点で好ましくない。貫通孔は、直線状のものが、鋳型構造が簡易でよく、孔径の制御がし易く、また針の引き抜きが容易である点で好ましい。
【0024】
直線状の貫通孔としては、厚み方向に真っ直ぐ延びる貫通孔、やや傾斜状に延びる貫通孔、やや先細りの貫通孔等が挙げられる。なお、やや先細りは通液方向を逆方向とすれば、やや先拡径となるものであり、本発明においては、やや先細りとやや先拡径は同義である。傾斜状の貫通孔としては、貫通孔全てが同じ方向のもの、それぞれが任意の方向に延びるものが挙げられる。
【0025】
螺旋状の貫通孔の形状としては、特に制限されないが、極力直線に近いものが、有機ポリマー中に形成し易い点で好ましい。螺旋形状の好ましいものは、螺旋形状の中心軸からの径方向の長さ(平面視の半径に相当)が0.5mm以内、螺旋形状の厚み方向の1ピッチの長さ(P)が、P/厚み(同じ単位)で1以下のものである。螺旋形状は、規則性のない捻り形状のものも含まれる。
【0026】
貫通孔は、厚み方向に対して直交する方向に多数形成されるが、隣接する貫通孔間のピッチは一定であっても、一定でなくてもよく、適宜決定される。モノリス状有機多孔質体の見かけの体積に対する貫通孔の膨潤時の体積比率は、通常0.5〜16%、好ましくは1〜8%である。この体積比率が0.5%未満では、通水差圧の低減効果はほとんど見られないため好ましくなく、体積比率が12%を超えると、貫通孔内壁と貫通孔を流れる液体との接触効率が低下するか、あるいは貫通孔の形成本数が多くなり、製作し難い点で好ましくない。
【0027】
本発明のモノリスは、モノリス状有機多孔質体の骨格表面及び骨格内部に更にイオン交換基を均一に導入したものであり、そのイオン交換容量としては、特に制限されないが、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.2mg当量/ml以上、好ましくは0.3mg当量/ml以上のイオン交換容量を有しているものである。水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.2mg当量/ml未満であると、破過までに処理できるイオンを含んだ水の量、即ち脱イオン水の製造能力が低下してしまうため好ましくない。
【0028】
導入されたイオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMAやSIMS等を用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、イオン交換基が、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
【0029】
有機多孔質体に導入するイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
【0030】
次に、本発明のモノリス状有機多孔質体の製造方法について説明する。すなわち、当該製造方法は、ビニルモノマー、界面活性剤、水及び必要に応じて重合開始剤や架橋剤を混合し、該混合物を撹拌して油中水滴型エマルジョンを調製するI-A工程と、容器内の該油中水滴型エマルジョン中に針の長手方向が厚み方向となるように多数の針を配置し、静置下重合するII-A工程と、重合体から該多数の針を取り外すIII-A工程と、得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入するIV-A工程とを有する第1の製造方法及びビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる液状混合物を調製するI-B工程と、容器内の該液状混合物中に針の長手方向が厚み方向となるように多数の針を配置し、静置下重合するII-B工程と、該重合体から多数の針を取り外すIII-B工程と、得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入するIV-B工程とを有する第2の製造方法が挙げられる。
【0031】
第1の製造方法を説明する。I-A工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、水に対する溶解性が低く、親油性のモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマーである。
【0032】
I-A工程で用いられる任意の構成要素である架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。
【0033】
I-A工程で用いられる界面活性剤は、ビニルモノマーと水を混合した際に、油中水滴型(W/O)エマルジョンを形成できるものであれば特に制限はなく、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等の非イオン界面活性剤;オレイン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤を用いることができる。これら界面活性剤は、1種単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、油中水滴型エマルジョンとは、油相が連続相となり、その中に水滴が分散しているエマルジョンを言う。上記界面活性剤の添加量は、油溶性モノマーの種類及び、目的とするエマルジョン粒子の大きさによって大幅に変動するため一概には言えないが、油溶性モノマーと界面活性剤の合計量に対して約2〜70%の範囲で選択することができる。
【0034】
I-A工程で用いられる任意の構成要素である重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。
【0035】
I-A工程において、ビニルモノマー、界面活性剤、水及び必要に応じて重合開始剤や架橋剤とを混合し、油中水滴型エマルジョンを形成させる際の混合方法としては、特に制限はなく、各成分を一括して一度に混合する方法、油溶性モノマー、界面活性剤及び油溶性重合開始剤である油溶性成分と、水や水溶性重合開始剤である水溶性成分とを別々に均一溶解させた後、それぞれの成分を混合する方法などが使用できる。エマルジョンを形成させるための混合装置についても特に制限はなく、通常のミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いることができ、目的のエマルジョン粒径を得るのに適切な装置を選択すればよい。また、混合条件についても特に制限はなく、目的のエマルジョン粒径を得ることができる攪拌回転数や攪拌時間を、任意に設定することができる。なお、上記油溶性成分と水溶性成分の混合比は、重量比で(油溶性成分)/(水溶性成分)=5/95〜30/70、好ましくは10/90〜25/75の範囲で任意に設定することができる。これにより、全細孔容積を2〜20ml/g、好ましくは3〜10ml/gのものを製造することができる。
【0036】
開口の半径0.01〜10μmは、油中水滴型エマルジョンを得る工程において、ビニルモノマーの添加量、界面活性剤の添加量、攪拌混合における攪拌回転数及び攪拌時間などを適宜に決定することで達成することができる。また、攪拌混合の際、アルコール、カルボン酸あるいは炭化水素を共存させることにより調整することもできる。開口の半径0.01μm近傍は、ビニルモノマーの添加量や界面活性剤の添加量を多くしたり、攪拌回転数を高めたり、攪拌時間を長くとることにより、逆に半径100μm近傍は、界面活性剤の添加量を少なくしたり、攪拌回転数を低くしたり、攪拌時間を短くすることで達成することができる。
【0037】
II-A工程は、容器内の油中水滴型エマルジョン中に多数の針を厚み方向に延出するように配置し、静置下重合する工程である。II-A工程においては、容器内に油中水滴型エマルジョンを導入し、その後、多数の針を設置してもよく(第1の方法)、容器内に多数の多数の針を設置し、その後、油中水滴型エマルジョンを導入してもよい(第2の方法)。なお、重合終了後の有機ポリマーと針の離型性を高めるために離型剤を予め針に塗布しても良い。離型剤としては、シリコンオイル、界面活性剤などが挙げられる。
【0038】
II-A工程で用いる多数の針は、静置時及び重合時にその形状を保持してエマルジョンやポリマー中に存在し、重合後は該容器から取り除かれポリマー中に当該形状の貫通孔を形成するものである。多数の針が直線針である場合、例えば図1及び図2の剣山状の鋳型を用いればよい。図1(A)は鋳型の平面図、(B)は鋳型の正面図、図2は台座への針の支持方法を説明する図である。図1の剣山状の鋳型10は、脚部1により設置面から所定の高さに保持される台座2の所定領域3に、半径0.05〜0.25mmの直線針4が通る貫通穴5を多数形成し、貫通穴5を通らない大きさのストッパー部6を後端(頭部)7に形成した直線針4を、直線針4の先端から貫通穴5に通して吊り下げ状に支持したものである。所定領域3は図1では、四角形の板状物の中央部に位置する平面視が四角形の領域である。かかる領域の形状はこれに限定されず、製造されるモノリスの形状や容器形状により適宜決定される。通常は、平面視が円形である。
【0039】
また、直線針4の長さは脚部1の長さよりやや短くするのが、吊り下げられた直線針4を鉛直に且つ安定して台座2に支持することができる点で好ましい。なお、直線針4の長さを短くすることで、下方部分のモノリスは貫通孔の無い部分が製造されるが、当該部分は厚みの直角方向に切断することで、厚み方向に貫通孔を形成することができる。また、台座2の貫通穴5の内径は直線針4の本体7が隙間なく通る程度のものが、台座2の面に対して針の垂直性が保持できる点で好ましい。
【0040】
II-A工程においては、剣山状の鋳型10の針部を収容し、脚部1の内側に設置できる容器を準備する。この容器の中に、剣山状の鋳型10の多数の針4が入るように、セットし、その後、容器内に油中水滴型エマルジョンを静かに注入していく。なお、容器の中に先ず油中水滴型エマルジョンを注入し、その後、剣山状の鋳型10を設置してもよい。
【0041】
剣山状の鋳型10によれば、直線針4を着脱自在にすることで、洗浄が容易になり、繰り返し使用ができる。また、直線針4とすることで、貫通孔の制御が容易になる。加えて万が一、直線針4が曲がってしまった場合でも曲がった直線針4だけを交換することができる。また直線針4にポリエチレン等の高分子化合物(離型剤)を塗布する際にも均一な離型剤の塗布が行い易い。また、直線針4の頭部にストッパー部6を設けることで、台座2から直線針4が脱落することを防止すると共に、摘み易いため、抜き差しが容易となる。
【0042】
台座2は、耐薬品性や加工性に優れるものが好ましい。これにより、重合及び洗浄工程での有機溶媒による材料の変形や劣化を防止することができ、また、微細な穴を精度よく空けることができる。溶液やエマルジョンに浸漬する側の直線針4の先端形状としては、抜き取る際に針と溶液やエマルジョンの接触部における連続空孔構造をもったゲル組織を著しく傷つけるようなものでなければいずれの形状でも構わないが、例えば、平型、ドーム型、山形などが挙げられる。
【0043】
図1の剣山状の鋳型10は、螺旋状の貫通孔を形成する場合にも適用できる。すなわち、上記剣山状の鋳型10において、直線針4に代えて螺旋状針を使用すればよい。この際、台座2の貫通穴5は、当該螺旋形状に見合った形状とすることが好ましく、隣接する螺旋針が抜き差しの際に干渉しないよう、平面視での径方向の長さを小さくするかあるいは隣接する針との間隔(ピッチ)を大きくすることが好ましい。
【0044】
II-A工程において、重合条件は、モノマーの種類、重合開始剤の種類により様々な条件が選択できる。例えば、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等を用いたときには、不活性雰囲気下の密封容器内において、30〜100℃で1〜48時間加熱重合させればよい。
【0045】
III-A工程は、重合体から多数の針を取り除く工程である。すなわち、重合終了後、剣山状の鋳型10から有機ポリマー中の貫通孔の形状を保持したまま多数の針4を抜き取る。針4の抜き取りは、一本毎に抜き取る方法、部分的に纏めて抜き取る方法、あるいは全部一度に抜き取る方法など適宜選択して行なう。螺旋針の場合は、一本毎に軸中心としてまわしながら抜き取ることが、ポリマー内に形成された貫通孔の形状を損傷させることが無い点で好ましい。次ぎに、容器から内容物を取り出し、未反応ビニルモノマーと有機溶媒の除去を目的に、2−プロパノール等の溶剤で抽出してモノリス状有機多孔質体を得る。
【0046】
IV-A工程は、得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入する工程である。当該工程で得られたモノリス状有機多孔質イオン交換体は、モノリス状有機多孔質体の骨格表面及び骨格内部にイオン交換基を均一に導入したものであって、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.2mg当量/ml以上、好ましくは0.3〜5.0mg当量/mlである。このように、予めモノリス状有機多孔質体を製造し、その後、イオン交換基を導入する方法が、モノリス状有機多孔質イオン交換体の多孔構造を厳密にコントロールできる点で好ましい。
【0047】
上記モノリス状有機多孔質体の表面及び骨格内部にイオン交換基を均一に導入する方法としては、特に制限はなく、高分子反応やグラフト重合等の公知の方法を用いることができる。例えば、スルホン酸基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロ硫酸や濃硫酸、発煙硫酸を用いてスルホン化する方法;有機多孔質体の表面及び骨格内部にラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、スチレンスルホン酸ナトリウムやアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換によりスルホン酸基を導入する方法等が挙げられる。また、四級アンモニウム基を導入する方法としては、有機多孔質体がスチレン-ジビニルベンゼン共重合体等であればクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法;有機多孔質体をクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により製造し、三級アミンと反応させる方法;有機多孔質体の表面及び骨格内部にラジカル開始基や連鎖移動基を導入し、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレートやN,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルアクリルアミドをグラフト重合する方法;同様にグリシジルメタクリレートをグラフト重合した後、官能基変換により四級アンモニウム基を導入する方法等が挙げられる。また、ベタインを導入する方法としては、有機多孔質体に三級アミンを導入した後、モノヨード酢酸を反応させ導入する方法等が挙げられる。これらの方法のうち、スルホン酸基を導入する方法については、クロロ硫酸を用いてスチレン-ジビニルベンゼン共重合体にスルホン酸基を導入する方法が、四級アンモニウム基を導入する方法としては、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体にクロロメチルメチルエーテル等によりクロロメチル基を導入した後、三級アミンと反応させる方法やクロロメチルスチレンとジビニルベンゼンの共重合により有機多孔質体を製造し、三級アミンと反応させる方法が、イオン交換基を骨格表面及び骨格内部に均一かつ定量的に導入できる点で好ましい。なお、導入するイオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等のカチオン交換基;四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ポリエチレンイミン基、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等のアニオン交換基;アミノリン酸基、ベタイン、スルホベタイン等の両性イオン交換基が挙げられる。
【0048】
イオン交換容量の調整は、多孔質体と反応試薬の選択により適宜決定できる。例えば、0.2mg当量/gといったカチオン交換容量の多孔質体を製造する場合には、濃硫酸やクロロスルホン酸といったスルホン化試薬との反応性が低いジビニルベンゼンを主成分とする多孔質体をスルホン化することで達成できる。また、グラフト反応によりカチオン交換基を導入する場合は、多孔質体に導入するラジカル開始基や連鎖移動基の導入量をやや低く抑えることで、カチオン交換容量をやや低くすることができる。一方、カチオン交換容量を高くしたい場合には、スルホン化試薬との反応性が高いスチレンを主成分とする多孔質体をスルホン化する。また、グラフト反応を用いる場合には、多孔質体に導入するラジカル開始基や連鎖移動基の導入量を多くすればよい。また、アニオン交換容量や両性イオン交換容量の場合も、前記カチオン交換容量の場合と同じ方法で行うことができる。
【0049】
次ぎに、第2の製造方法について説明する。I-B工程は、ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる液状混合物を調製する工程である。
【0050】
I-B工程で用いられるビニルモノマーとしては、分子中に重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒に対する溶解性が高い親油性のモノマーであれば、特に制限はない。これらビニルモノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。これらモノマーは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。I-B工程で好適に用いられるビニルモノマーは、スチレン、ビニルベンジルクロライド等のスチレン系モノマーである。
【0051】
I-B工程で用いられる架橋剤は、分子中に少なくとも2個の重合可能なビニル基を含有し、有機溶媒への溶解性が高いものが好適に用いられる。架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート等が挙げられる。これら架橋剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい架橋剤は、機械的強度の高さと加水分解に対する安定性から、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等の芳香族ポリビニル化合物である。架橋剤は、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して1〜5モル%、好ましくは1〜4モル%の割合で用いる。架橋剤の使用量は得られる粒子凝集型空孔構造に大きな影響を与え、架橋剤を5モル%を超えて用いると、骨格間に形成される連続空孔の大きさが小さくなってしまうため好ましくない。一方、架橋剤使用量が1モル%未満であると、多孔質体の機械的強度が不足し、通水時に大きく変形したり、多孔質体の破壊を招いたりするため好ましくない。
【0052】
I-B工程で用いられる有機溶媒は、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒、言い換えると、ビニルモノマーが重合して生成するポリマーに対する貧溶媒である。該有機溶媒は、ビニルモノマーの種類によって大きく異なるため一般的な具体例を列挙することは困難であるが、例えば、ビニルモノマーがスチレンの場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類;ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン等の鎖状飽和炭化水素類等が挙げられる。これらのうち、アルコール類を有機溶媒として用いると、静置重合により粒子凝集構造が形成されやすくなると共に、三次元的に連続した空孔が大きくなるため好ましい。また、ベンゼンやトルエンのようにポリスチレンの良溶媒であっても、上記貧溶媒と共に用いられ、その使用量が少ない場合には、有機溶媒として使用することができる。
【0053】
I-B工程で用いられる重合開始剤としては、熱及び光照射によりラジカルを発生する化合物が好適に用いられる。重合開始剤は油溶性であるほうが好ましい。本発明で用いられる重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や重合温度等によって大きく変動するが、ビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して、約0.01〜5%の範囲で使用することができる。また、液状混合物中には、重合終了後の有機ポリマーと針の離型性を高めるために離型剤を配合することができる。離型剤としては、シリコンオイル、界面活性剤などが挙げられる
【0054】
II-B工程は、容器内のビニルモノマー、架橋剤、有機溶媒及び重合開始剤を含む液状混合物中に多数の針を設置し、静置下重合する工程である。II-B工程は、II-A工程において、油中水滴型エマルジョンに代えて、液状混合物と読み替えればよいため、詳細な記載は省略する。なお、II-B工程の重合条件において、有機溶媒に溶解したビニルモノマーの重合が早く進む条件で行なえば、半径0.5μmに近い有機ポリマー粒子が沈降し凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成させることができる。ビニルモノマーの重合が早く進む条件とは、ビニルモノマー、架橋剤、重合開始剤及び重合温度などにより異なり一概には決定できないものの、架橋剤を増やす、モノマー濃度を高くする、温度を高くするなどである。このような重合条件を加味して、半径0.5〜25μmの有機ポリマー粒子を凝集させる重合条件を適宜決定すればよい。また、その骨格間に空孔半径が10〜50μmの三次元的に連続した空孔を形成するには、架橋剤をビニルモノマーと架橋剤の合計量に対して1〜5モル%とすればよい。また、多孔質体の全細孔容積を2〜29ml/gとするには、ビニルモノマー、架橋剤、重合開始剤及び重合温度などにより異なり一概には決定できないものの、概ね有機溶媒、モノマー、架橋剤の合計使用量に対する有機溶媒使用量が、30〜80%、好適には40〜70%のような条件で重合すればよい。
【0055】
III-B工程は、重合体から多数の針を除去する工程である。III-B工程は、III-A工程と同様であり、その説明を省略する。IV-B工程は得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入する工程である。IV-B工程は、IV-A工程と同様であり、その説明を省略する。
【0056】
本発明のモノリスの使用方法を図3を参照して説明する。図3(A)は円柱状物を3つに輪切りした状態を示す図、(B)は輪切りにした小円柱状物を軸中心にそれぞれ所定角度回動した状態を示す図、(C)は(B)の3つの小円柱状物の平面図である。本発明の使用方法において、モノリス状有機多孔質イオン交換体20は円柱形状物であって、円柱形状物の切断方向が径方向となるように輪切りして3つの小円柱状物21、22、23を得る。なお、所定形状の貫通孔は、図では省略するが、貫通孔が軸方向となるように多数形成されている。次いで、隣接する小円柱状物同士21と22、22と23を軸中心としてそれぞれ所定角度α、(β−α)回動させて積層し、円筒容器に充填して使用する。小円柱状物同士をそれぞれ所定の角度回動させるのは、流体が流れる貫通孔同士の重なりを避けるためである。流体が流れる貫通孔同士の重なりがあると、貫通孔が主な通液経路となって、流体がショートパスし、イオン交換帯長さが長くなるため好ましくない。従って、小円柱状物同士をそれぞれ回動する所定の角度とは、流体が流れる貫通孔同士の重なりが実質的に無いような角度が好ましい。円形端面24における貫通孔の面積比率は0.5〜4%であること、貫通孔の半径は0.05〜0.25mmであることから、回動する角度は僅かでよく、例えば、1〜数度程度で十分である。このような積層方法とすることで、通水抵抗を低く抑えながら、イオン交換帯長さを短くできる。
【0057】
また、前記実施の形態例は、円柱形状物を径方向に輪切りして3つの小円柱状物21、22、23を得るものであるが、本発明はこれに限定されず、例えば円柱形状物を径方向に輪切りして2つ又は4つ以上の小円柱状物を得、次いで、隣接する小円柱状物同士を軸中心としてそれぞれ所定角度回動させて積層物Aとしてもよい。また、本願発明の円柱形状物のモノリス状有機多孔質イオン交換体と三次元的に連続した有機ポリマーの骨格間に、三次元的に連続した空孔構造を有する厚みが5mm以上の貫通孔の無い連続空孔構造物との積層物Bであってもよい。貫通孔の無い連続空孔構造物は、本願発明の製造方法において、多数の針を使用することなく製造されたものである。
【0058】
また、該円柱形状物は、輪切りすることなく、別バッチで2つ以上を製造し、得られた2つ以上の円柱形状物の端面同士を当接させ、隣接する円柱状物同士を軸中心として所定角度回動させて積層物Dとしてもよい。この場合、同形状の鋳型を使用して、バッチ差を極力無くすことでショートパスの発生しない積層物とすることもできる。
【0059】
本発明のモノリスの使用方法において、積層枚数は該イオン交換体の厚みおよび通水線速度にもよるが、厚さ5mm以上のイオン交換を2枚以上用い、少なくとも積層高さ6cm以上となるように積層するのが好ましい。6cm以下では該イオン交換体が本来有するイオン交換帯長さを確保できないため好ましくない。本発明の使用方法において、モノリスを1種類以上多段に積層することで、水中の不純物イオンの除去効果を高めるなどの効果が期待できる。例えば多孔質陽イオン交換体と多孔質陰イオン交換体を互いに積層することで、純水製造装置のモジュールへ応用できる。
【0060】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0061】
スチレン43.1g、ジビニルベンゼン2.3g、ソルビタンモノオレエート1.9g、水180g、アゾビスイソブチロニトリル0.26gを直径74mmのポリエチレン製容器内において均一混合し、油中水滴型エマルジョンを調製した(I-A工程)。所定領域3を円形領域とした以外は図1と同じ構造の剣山状の鋳型を用いて、容器中のエマルジョンに多数の剣山(針)を浸漬し、60℃、24時間静置重合した(II-A工程)。用いた剣山はシリコンオイルを塗布したものであった。なお、針は半径0.1mm、長さ70mmのものを用い、針の先端と容器の底とは2mm離れていた。重合終了後、台座から針を1本ずつ引き抜き、最後に脚部付き台座をはずした。図4は針を抜いた後の多孔質体の電子顕微鏡写真である。図4のモノリスは、連続空孔構造に直線状の孔が形成され、連続空孔構造の空孔と直線状の孔が互いに繋がって、流路を形成していることがわかる。続いて多孔質体をソックスレー抽出器にてアセトンで不純物を抽出した後、24時間真空条件下で乾燥させ、厚み3mmの底部を切り落として、貫通孔を有する有機多孔質体を得た(III-A工程)。
【0062】
続いてこの有機多孔質体を陽イオン交換型にするため、得られた有機多孔質体を切断して13.5gを分取し、ジクロロメタン900mlを加え35℃で60分加熱した後、室温まで冷却し、クロロ硫酸71.6gを徐々に加え、35℃で24時間反応させた(IV-A工程)。得られた陽イオン交換型モノリスの直径は114mmであった。
【0063】
得られたイオン交換体の水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量は0.38当量/ml、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される共通の開口の半径を有機多孔質体の細孔径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、8μmであった。また、水湿潤状態の有機多孔質イオン交換体の直線貫通孔の半径を、容器直径と水湿潤状態のカチオン交換体の直径をもとに見積もったところ、0.15mmであった。すなわち、針の引き抜き時、直径74mmの容器に半径0.1mmの直線貫通孔が開いており、イオン交換基付与後は、114mmに膨らんだため、0.1mm×(114mm/74mm)=0.15mmとなる。また、直線貫通孔の体積分率は6%であった。
【0064】
なお、剣山状の鋳型を用いず、直線状の貫通孔を形成しない以外は実施例1と同様の方法で、有機多孔質イオン交換体を作製し、水銀圧入法により全細孔容積を求めた。すなわち、連続マクロポア構造における全細孔容積は4.3ml/gであった。
【0065】
(通水試験)
外径12mm、内径10mmのPFAチューブに通水方向の長さ3cmの該有機多孔質陽イオン交換体を充填した。該交換体の純水通液時の流速と通水差圧の関係を測定し、図5中の直線の傾きから圧力損失係数を求めた。得られた圧力損失係数は0.029MPa/m・LVであった。イオン交換帯長さの測定においてはチューブに通水方向の長さ5cmの該有機多孔質陽イオン交換体を充填し、NaCl濃度4mNの被処理水を通水した。また、通水線速度10m/h、破過開始から終了までの時間116分におけるイオン交換帯長さは23cmであった。
【0066】
イオン交換帯長さは、次式;h=C×LV×Δt/(q+0.5×C)に従って求めたものである。なお式中、hはイオン交換帯長さ、Cはイオン濃度、LVは通水線速度、Δtは破過開始から終了までの時間、qはイオン交換容量を表す。なお本来測定にはイオン交換帯長さの2倍以上のイオン交換体の充填高さで測定することが好ましいが、本発明では針の長さが7cmであるため、20cm以上の高さの充填層を作製することが困難であり、上式で見積もらざるを得なかった。
【実施例2】
【0067】
半径0.1mmの針に代えて半径0.15mmの針としたこと、直線貫通孔の体積分率6%に代えて14%にしたこと以外は、実施例1と同様に行い、更に同様の通水試験を行った。
【0068】
その結果、得られたイオン交換体の水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量は0.34mg当量/ml、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される共通の開口の半径を有機多孔質体の細孔径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、8μmであった。水湿潤状態における有機多孔質イオン交換体の直線貫通孔の半径を、容器直径と水湿潤状態のカチオン交換体の直径をもとに見積もったところ、0.23mmであった。また、直線貫通孔の体積分率は14%であった。また、通水試験における圧力損失係数は0.020であった。通水線速度10m/h、破過開始から終了までの時間150分におけるイオン交換帯長さは32cmであった。
【実施例3】
【0069】
実施例1で得られたモノリスを径方向に沿って切断(輪切り)し、同じ長さの小円筒状物を2個得た。次いで隣接する小円柱状物同士を軸中心として数度回動させて容器内に積層した。これにより、互いの貫通孔が実質的に重ならないものとなった。また、実施例1と同様に通水試験を行った。
【0070】
その結果、通水試験における圧力損失係数は0.030MPa/m・LV、通水線速度10m/h、破過開始から終了までの時間41分におけるイオン交換帯長さは8cmであった。
【実施例4】
【0071】
実施例1で得られたモノリスと貫通孔の無いモノリスをそれぞれ同体積で2層積層物を容器内に得た。貫通孔の無いモノリスとは、剣山状の鋳型を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により行い得られた有機多孔質イオン交換体である。2つのイオン交換体の水湿潤状態での体積当りの平均イオン交換容量は0.39mg当量/ml、直線貫通孔の体積分率は3%であった。また、実施例1と同様に通水試験を行った。
【0072】
その結果、通水試験における圧力損失係数は0.043、通水線速度10m/h、破過開始から終了までの時間35分におけるイオン交換帯長さは7cmであった。
【0073】
比較例1
剣山状の鋳型を使用しない以外は実施例1と同じ方法で行った。また、実施例1と同様に通水試験を行った。該イオン交換体の水湿潤状態での体積当りの平均イオン交換容量は0.40mg当量/mlであった。その結果、圧力損失係数は0.058MPa/m・LVであった。通水線速度10m/h、破過開始から終了までの時間22分におけるイオン交換帯長さは4cmであった。
【実施例5】
【0074】
スチレン38.8g、ジビニルベンゼン1.2g、1−ブタノール60gおよび2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.4gを混合し、均一に溶解させた(II-A工程)。スチレンとジビニルベンゼンの合計量に対して、ジビニルベンゼンは1.9モル%であった。次に当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-ブタノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物を直径74mmのポリエチレン製円筒容器に入れ、これに多数の剣山(針)を浸漬し、窒素で3回パージした後密封し、静置下60℃で24時間重合させた(II−B工程)。剣山の針は半径0.1mm、長さ70mmのものを用い、針の先端と容器の底とは2mm離れていた。重合終了後、台座から針を一本ずつ引き抜き、最後に脚部付きの台座をはずした。得られたモノリスを電子顕微鏡観察したところ、半径5μmのほぼ粒揃いの有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に空孔半径が40μmの三次元的に連続した空孔を有する粒子凝集型空孔構造に、直線状の孔が形成され、粒子凝集型空孔構造の空孔と直線状の孔が互いに繋がって、流路を形成していることがわかった。続いてモノリス状の内容物を取り出し、アセトンで10時間ソックスレー抽出し、未反応モノマー、1-ブタノールを除去した後、85℃で一夜減圧乾燥した(III-B工程)。
【0075】
上記の方法で製造した有機多孔質体を、直線状の貫通孔が得られるように、厚み約15mmの円盤状に切断した。これにジクロロメタン900mlを加え、35℃で1時間加熱した後、10℃以下まで冷却し、クロロ硫酸113.5gを徐々に加え、昇温して35℃で24時間反応させた(IV-B工程)。その後、メタノールを加え、残存するクロロ硫酸をクエンチした後、メタノールで洗浄してジクロロメタンを除き、更に純水で洗浄して粒子凝集型モノリス状多孔質カチオン交換体を得た。
【0076】
直線貫通孔の半径は0.14mm、直線貫通孔の体積分率は5%であった。得られたカチオン交換体の体積当りのイオン交換容量は、水湿潤状態で1.11mg当量/mlであった。水湿潤状態の有機多孔質イオン交換体の細孔径を、有機多孔質体の細孔径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、25μmであった。
【0077】
なお、剣山状の鋳型を用いず、直線状の貫通孔を形成しない以外は実施例5と同様の方法で、有機多孔質イオン交換体を作製し、水銀圧入法により全細孔容積を求めた。すなわち、粒子凝集型空孔構造における全細孔容積は2.5ml/gであった。
【0078】
(通水試験)
外径12mm、内径10mmのPFAチューブに通水方向の長さ5cmの該有機多孔質陽イオン交換体を充填した。これにNaCl濃度4mNの被処理水を通水した。該交換体の純水通液時の流速と通水差圧の関係を測定し、得られた圧力損失係数は0.031MPa/m・LVであった。また、通水線速度50m/h、破過開始から終了までの時間85分におけるイオン交換帯長さは22cmであった。
【実施例6】
【0079】
半径0.1mmの針に代えて半径0.15mmの針としたこと、直線貫通孔の体積分率6%に代えて12%にしたこと以外は、実施例5と同様に行い、更に同様の通水試験を行った。
【0080】
その結果、得られたイオン交換体の水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量は1.01mg当量/ml、水銀圧入法により求めた全細孔容積は2.5ml/g、マクロポアとマクロポアの重なりで形成される共通の開口の半径を有機多孔質体の細孔径と水湿潤状態のカチオン交換体の膨潤率から見積もったところ、9μmであった。また、通水試験における圧力損失係数は0.025MPa/m・LVであった。通水線速度50m/h、破過開始から終了までの時間120分におけるイオン交換帯長さは30cmであった。
【実施例7】
【0081】
実施例5で得られたモノリスを径方向に沿って切断(輪切り)し、同じ長さの小円筒状物を2個得た。次いで隣接する小円柱状物同士を軸中心として数度回動させて容器内に積層した。これにより、互いの貫通孔が実質的に重ならないものとなった。また、実施例1と同様に通水試験を行った。
【0082】
その結果、通水試験における圧力損失係数は0.034MPa/m・LV、通水線速度50m/h、破過開始から終了までの時間15分におけるイオン交換帯長さは4cmであった。
【実施例8】
【0083】
実施例5で得られたモノリスと貫通孔の無いモノリスをそれぞれ同体積で2層積層物を容器内に得た。貫通孔の無いモノリスとは、剣山状の鋳型を使用しなかったこと以外は、実施例5と同様の方法により行い得られた有機多孔質イオン交換体である。2つのイオン交換体の水湿潤状態での体積当りの平均イオン交換容量は1.18mg当量/ml、直線貫通孔の体積分率は1.5%であった。また、実施例1と同様に通水試験を行った。
【0084】
その結果、通水試験における圧力損失係数は0.051MPa/m・LV、通水線速度50m/h、破過開始から終了までの時間12分におけるイオン交換帯長さは3cmであった。
【0085】
比較例2
剣山状の鋳型を使用しない以外は実施例5と同じ方法で行った。また、実施例5と同様に通水試験を行った。該イオン交換体の水湿潤状態での体積当りの平均イオン交換容量は1.15mg当量/mlであった。その結果、圧力損失係数は0.060MPa/m・LVであった。通水線速度50m/h、破過開始から終了までの時間6分におけるイオン交換帯長さは1.5cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のモノリスは、連続空孔構造に多数の貫通孔が均一に混在したユニークな構造である。また、連続空孔構造は、有機ポリマー部の比率を高めたことから、イオン交換容量を高めることができると共に、水や気体などの流体を流した際圧力損失を低くでき、2床3塔式純水製造装置や電気式脱イオン水製造装置に充填して用いられるイオン交換体や固体酸/塩基触媒として有用であり、広範な用途分野に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】(A)は剣山状鋳型の平面図、(B)は剣山状鋳型の正面図である。
【図2】は台座への針の支持方法を説明する図である。
【図3】本発明のモノリスの使用方法を説明する図であり、(A)は円柱状物を3つに輪切りした状態を示す図、(B)は輪切りにした小円柱状物を軸中心にそれぞれ所定角度回動した状態を示す図、(C)は(B)の3つの小円柱状物の平面図である。
【図4】本発明のモノリスの切断面の電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1及び比較例1の線流速と通水差圧の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1 脚部
2 台座
3 針が設置される所定領域
4 針
5 針が通る貫通穴
6 ストッパー部
7 針本体部
10 剣山状鋳型
20 円柱状物(モノリス)
21、22、23 小円柱状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元的に連続した有機ポリマーの骨格間に三次元的に連続した空孔を有する厚みが5mm以上の連続空孔構造の有機多孔質体に、厚み方向に延びる半径0.05〜0.30mmの直線状または螺旋状の貫通孔が厚み方向に直交する方向に多数形成されたものであり、且つイオン交換基が均一に導入されてなることを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体。
【請求項2】
前記モノリス状有機多孔質体の見かけの体積に対する前記貫通孔の体積比率が、0.5〜16%であることを特徴とする請求項1記載のモノリス状有機多孔質イオン交換体。
【請求項3】
前記連続空孔構造が、互いに繋がっているマクロポアとマクロポアの該繋がり部分が半径0.01〜10μmの開口となり、且つ全細孔容積が2〜20ml/gの連続マクロポア構造であることを特徴とする請求項1又は2記載のモノリス状有機多孔質イオン交換体。
【請求項4】
前記連続空孔構造が、架橋構造単位を有する半径0.5〜25μmの有機ポリマー粒子が凝集して三次元的に連続した骨格部分を形成し、その骨格間に空孔半径が10〜50μmの三次元的に連続した空孔を有する粒子凝集型空孔構造であることを特徴とする請求項1又は2記載のモノリス状有機多孔質イオン交換体。
【請求項5】
前記粒子凝集型空孔構造の骨格部分は、該架橋構造単位が該有機ポリマー粒子を構成する全構成単位中、1〜5モル%であることを特徴とする請求項4記載のモノリス状有機多孔質イオン交換体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のモノリス状有機多孔質イオン交換体は円柱形状物であって、該円柱形状物を2つ以上として端面同士を当接させ、隣接する円柱状物同士を軸中心として所定角度回動させて積層し、容器に充填して使用することを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体の使用方法。
【請求項7】
ビニルモノマー、界面活性剤、水及び必要に応じて重合開始剤や架橋剤を混合し、該混合物を撹拌して油中水滴型エマルジョンを調製する工程と、
容器内の該油中水滴型エマルジョン中に針の長手方向が厚み方向となるように多数の針を配置し、静置下重合する工程と、
重合体から該多数の針を外す工程と、
得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入する工程とを有することを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体の製造方法。
【請求項8】
ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個のビニル基を有する架橋剤、ビニルモノマーや架橋剤は溶解するがビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる液状混合物を調製する工程と、
容器内の該液状混合物中に針の長手方向が厚み方向となるように多数の針を配置し、静置下重合する工程と、
該重合体から該多数の針を取り外す工程と、
得られた有機多孔質体にイオン交換基を導入する工程とを有することを特徴とするモノリス状有機多孔質イオン交換体の製造方法。
【請求項9】
請求項7及び請求項8の製造方法で用いる鋳型であって、脚部により所定の高さに保持される台座の所定領域に、半径0.05〜0.25mmの針が通る貫通穴を多数形成し、該貫通穴を通らない大きさのストッパー部を後端に形成した該針を、該針の先端から該貫通穴に通して吊り下げ状に支持したものであることを特徴とする鋳型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−35668(P2009−35668A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202650(P2007−202650)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】