説明

モラクセラ・カタラーリスのタンパク質、核酸配列およびその使用

【課題】モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)の外膜タンパク質ポリペプチドおよびそれから誘導されるポリペプチド(まとめて「OMP21」という)、OMP21をコードするヌクレオチド配列、ならびにOMP21と特異的に結合する抗体の提供。
【解決手段】OMP21、OMP21に対する抗体、またはOMP21をコードするヌクレオチドを含有する医薬組成物。動物(好ましくはヒト)においてモラクセラ・カタラーリスおよびOMP21に対する免疫応答を引き出す方法、動物(好ましくはヒト)のモラクセラ感染症を治療および診断する方法、ならびにそのためのキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は1990年10月1日に出願された出願第09/164,714号の優先権利益を主張する。本発明は一般的に、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)の外膜から得られる「OMP21」(以下の第3節に定義されている)と呼ばれる単離されたまたは実質的に精製されたタンパク質に関する。本発明はまた、そのアミノ酸配列およびOMP21と特異的に結合する細胞傷害性抗体を含む抗体も包含する。本発明はさらに、予防用または治療用組成物を含む医薬組成物を包含し、該医薬組成物はワクチンを含む免疫原性組成物であってよい。本発明はさらに、モラクセラ・カタラーリス感染症に関係する哺乳類動物の障害を予防し、治療しまたは改善する方法、およびモラクセラ・カタラーリスに対して免疫応答を誘導する方法を提供する。本発明はさらに、OMP21をコードする単離されたヌクレオチド配列、それらと相同的な配列と相補的な配列、該配列を有するベクター、該ベクターを含有する宿主細胞、ならびにそれらを含んでなるワクチンを含む免疫原性組成物であってよい予防用または治療用組成物を提供する。診断方法およびキットも含まれる。
【背景技術】
【0002】
モラクセラ・カタラーリスは、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス(Moraxella (Branhamella) catarrhalis)またはブランハメラ・カタラーリス(Branhamella catarrhalis)としても公知であり、かつてはナイセリア・カタラーリス(Neisseria catarrhalis)またはミクロコッカス・カタラーリス(Micrococcus catarrhalis)として公知であった、ヒトの気道中にしばしば見出されるグラム陰性菌である。モラクセラ・カタラーリスは、当初は無害な片利共性生物と考えられていたが、現在ではヒトの上気道感染および下気道感染における重要な病原体であると認識されている。ヒトにおいてモラクセラ・カタラーリスは、慢性肺疾患を有する成人における重篤な下気道感染、免疫低下患者における全身感染症、および乳児および子供における中耳炎および副鼻腔炎を引き起こす(非特許文献1および2ならびにそれらに引用されている文献)。モラクセラ・カタラーリス感染症の発病過程を理解し、そのような感染症に対する有用な治療処置および予防手段を開発する試みにおいて、モラクセラ・カタラーリスの外部表面成分の研究が行われている。特に、その外膜タンパク質(OMP)は、考えうるビルレンス因子および潜在的なワクチン抗原として、かなり注目されている。モラクセラ・カタラーリスは、20個を超える異なるOMPを有し、これらのうちの6〜8個のOMP(OMP A〜H)が優勢な種である(非特許文献3)。OMP A〜Hの分子量は、それぞれ、98〜21kDの範囲にある(非特許文献4〜7)。50株のモラクセラ・カタラーリスからの外膜調製物のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によるタンパク質プロフィールの比較は、OMP A〜Hのほぼ均一なパターンを示している(非特許文献8)。
【0003】
無傷の細菌中または細菌由来の外膜小胞中において前記OMPのいくつかは、該OMPに結合する抗体の産生を惹起する表面露出エピトープを提示する。これらの抗原性OMPには、OMP EおよびOMP G(非特許文献9);OMP C/D(非特許文献10);CopB、80kDのOMP(非特許文献11)、およびUspA(非特許文献12)が含まれる。
【0004】
モラクセラ・カタラーリスの外膜タンパク質の表面露出エピトープに対する抗体の潜在的治療能力は、疾患の動物モデルがないので、一般的に細胞傷害(殺菌)活性により試験されている。モラクセラにより発症する疾患に対する唯一の天然宿主はヒトである。しかし、他の研究はモラクセラの肺クリアランスの動物モデルにおける抗体の役割を研究した。該モデルは、制御された数のモラクセラ・カタラーリス細胞をBALB/c VAF/Plusマウスの肺に直接的にボーラス接種し、次いで該細菌の肺クリアランス率を検査することに関わるものであった(非特許文献13)。モラクセラ・カタラーリスの各種の臨床単離株は様々なクリアランス率を示すが、感染部位への顆粒球補充のレベルと相関がある該クリアランス率はすべて比較的速い。CopBおよびUspAの表面露出エピトープに対するモノクローナル抗体による受動免疫は、モラクセラ・カタラーリスの肺クリアランス率を増加させた(非特許文献14および15)。モラクセラ・カタラーリスにより発症する感染症の診断、ならびに予防および治療処置のための組成物および方法の必要性は残っている。
【0005】
宿主細胞表面に対する細菌病原体の付着は、定着(colonization)を促進し、病理発生を開始させる。非特許文献16を参照されたい。グラム陰性菌は、典型的には、宿主細胞表面上の糖タンパク質および/または糖脂質の特定のオリゴ糖に結合する表面レクチンを発現する。そのようなレクチンは、しばしば、線毛(piliもしくはfimbriae)と結合する。細菌の付着はまた、宿主細胞表面との疎水性および/または荷電相互作用からもたらされる非特異的結合により生じることもある。
【0006】
気道の細胞に対するモラクセラ・カタラーリス付着のメカニズムは、まだ十分には理解されていない。該生物は、培養されたヒト鼻咽頭上皮細胞に付着する。他の研究は、抗線毛抗体による線毛の変性または処理が線毛化(fimbriated)株による付着を減少させたため、線毛がそのような細胞に対する付着において何らかの役割を果たしうることを示唆している。しかし、調査したいくつかの株の中で最も高度に付着する株は非線毛化株であったため、線毛に媒介される結合がこの付着の唯一の原理であるとは考えられない。したがって、他の未確認成分が該細菌の付着に関わっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Helminenら, 1993, Infect. Immun. 61:2003-2010
【非特許文献2】Catlin, B.W., 1990, Clin. Microbiol. Rev. 3:293-320
【非特許文献3】MurphyおよびLoeb, 1989, Microbial Pathogen. 6:159-174
【非特許文献4】BartosおよびMurphy, 1988, J. Infect. Dis. 158:761-765
【非特許文献5】Helminenら, 1993, Infect. Immun. 61:2003-2010
【非特許文献6】Murphyら, 1993, Molecul. Microbiol. 10:87-97
【非特許文献7】Sarwarら, 1992, Infect. Immun. 60:804-809
【非特許文献8】BartosおよびMurphy, 1988, J. Infect. Dis. 158:761-765
【非特許文献9】MurphyおよびBartos, 1989, Infect. Immun. 57:2938-2941
【非特許文献10】Sarwarら, 1992, Infect. Immun. 60:804-809
【非特許文献11】Helminenら, 1993, Infect. Immun. 61:2003-2010
【非特許文献12】Helminenら, 1994, J. Infect. Dis. 170:867-872
【非特許文献13】Unhanandら, 1992, J. Infect. Dis. 165:644-650
【非特許文献14】Helminenら, 1993, J. Infect. Immun. 61:2003-2010
【非特許文献15】Helminenら, 1994, J. Infect. Dis. 170:867-872
【非特許文献16】E.H. Beachey, 1981, J. Infect. Dis. 143:325-345
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、モラクセラ・カタラーリス株の単離されたまたは実質的に精製されたOMP21タンパク質を提供することにあり、該タンパク質の見かけの分子量は、推定アミノ酸配列から予測するかまたはドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(「SDS-PAGE」)により決定すると約16kD〜約20kDである。本明細書および特許請求の範囲に使われる用語「OMP21」は、モラクセラ・カタラーリスから得られる天然の、野生型OMP21タンパク質を含む16kd〜20kdの分子量を有するタンパク質の全ての形、および本明細書第3.1節に定義された「OMP21由来ポリペプチド」を全体として包含することを意図する。好ましくは、OMP21は配列番号1もしくは7またはそれらと実質的に相同的な配列のいずれかを有する。さらに好ましくは、OMP21は外膜タンパク質である。よりさらに好ましくは、OMP21は鼻咽頭結合ドメインを有する。
【0009】
本発明はモラクセラ・カタラーリスの任意の市販株および臨床単離株から取得可能であるOMP21を含むことを意図するが、好ましいのは毒性(virulent)臨床単離株から得られるOMP21である。OMP21は少なくとも70%の純度であり、好ましくは少なくとも90%の純度であり、そしてそれらの水溶液の形態であってもよい。
【0010】
本発明の他の目的は、OMP21をコードする単離された核酸分子を提供することである。好ましいのは、配列番号1もしくは7またはそれらと実質的に相同的な配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含んでなるOMP21をコードする核酸配列である。また、配列番号2〜6と8〜20のいずれかの配列、それらの相補的配列、それらと実質的に相同的な配列、およびそれらのいずれかの断片を含んでなる単離された核酸分子;配列番号1もしくは7のいずれかの推定アミノ酸配列、それらの相補的配列、それらと実質的に相同的な配列、およびそれらのいずれかの断片をコードするDNA配列;ならびに上記の配列のいずれか1つとハイブリダイズする核酸配列も含まれる。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸は、好ましくは上記の配列のいずれかと約70%、さらに好ましくは約90%の配列同一性を有する。
【0011】
本発明の他の目的は、宿主を形質転換するために、または配列番号6の核酸分子、その相補的配列、それと実質的に相同的な配列およびそれらの断片を含んでなるOMP21をコードする配列を宿主へ送達するように適合させた組換え発現ベクターを提供することである。さらに好ましくは、該組換え発現ベクターは、宿主の形質転換のために適合され、前記OMP21を宿主により発現するために核酸分子と機能しうる形で結合された発現手段を含有する。さらに好ましくは、該発現ベクターの発現手段はOMP21の宿主からの分泌または精製のためのリーダー配列をコードする核酸部分を含む。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のさらなる態様は、上記の発現ベクターを含んでなる形質転換された宿主細胞および形質転換された宿主細胞から産生が可能であるOMP21を含む。
【0013】
本発明はさらに、モラクセラ・カタラーリスの弱毒化および/または不活性化された品種を包含し、該品種は遺伝子工学的に操作されてOMP21が「ノックアウト」された遺伝子を有し、したがって転写されず(「欠失突然変異」)、その結果、該生物による付着が低下している。本発明に含まれるのはまた、本明細書に参照によりその全文が組み入れられるPCT公報WO97/41731に記載されたOMP21とOMP106の二重欠失を有するモラクセラ・カタラーリスの品種であり、したがって、該生物は非付着性である。
【0014】
本発明はさらに、予防用および治療用組成物を含む医薬組成物を包含し、該医薬組成物は宿主に投与されると免疫応答を産生するワクチンを含む免疫原性組成物であってよく、下記成分:
a) OMP21;
b) OMP21をコードする核酸分子もしくは断片またはそれらの相補体;
c) 配列番号6の配列を有する核酸分子、それと相補的な配列、ストリンジェントな条件下でそれとハイブリダイズする核酸配列、またはそれらの断片;
d) b)またはc)で定義した核酸分子と、OMP21の宿主による発現のために該核酸分子に機能的に連結された発現手段とを含む発現ベクターを含有する形質転換宿主から得られるOMP21;
e) OMP21をコードする核酸もしくは断片またはそれらの類似体を含んでなる組換えベクター;および
f) e)のベクターを含んでなる形質転換細胞、
からなる群より選択される少なくとも1種の成分と、場合によっては1種以上のアジュバントと、場合によっては製薬上許容される担体または希釈剤とを含んでなる。
【0015】
本発明はさらに、予防用および治療用組成物を含む医薬組成物を包含し、該医薬組成物はワクチンを含む免疫原性組成物であってよく、弱毒化および/または不活性化された本発明で提供されるモラクセラ・カタラーリス品種、場合によってはアジュバント、および場合によっては製薬上許容される担体または希釈剤を含んでなる。
【0016】
本発明はさらに、場合によっては他成分と組み合わせ、融合し、またはコンジュゲートした上記の医薬組成物を包含し、該他成分は免疫原であってよく、かつ限定されるものでないが、脂質、リン脂質、リポ多糖を含む炭水化物、他のタンパク質、および本明細書に提供されまたは当業者には公知である、限定されるものでないが、前記第2節に記載されたものを含む弱毒化または不活性化した全生物を含んでよい。好ましい任意成分は、任意のモラクセラ属(Moraxella)、ナイセリア属(Neisseria)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、またはヘモフィルス属(Haemophilus)の弱毒化されたおよび/もしくは不活性化された全生物、またはそれら由来のタンパク質もしくは炭水化物が挙げられる。ワクチンを含む好ましい免疫原性組成物は、OMP106および1以上のアジュバントと組み合わせたOMP21を含んでなる。
【0017】
また、動物に免疫応答を産生するための、該動物に上記の免疫原性組成物の有効量を投与することを含んでなる方法も含まれる。
【0018】
本発明の他の態様は、上記の任意の免疫原性組成物に対して産生した抗血清、ならびに該免疫原性組成中に存在するOMP21もしくはそれをコードする核酸および他の免疫原性成分を含む免疫源と特異的に結合する抗血清中に存在する抗体に関わる。
【0019】
本発明はまた診断試薬を含み、該診断試薬は単離されたOMP21、OMP21をコードする核酸分子、該核酸を含んでなる免疫原性組成、抗血清、抗体、ベクター、および該ベクターを含んでなる形質転換細胞などの上記態様のいずれかを含むことができる。
【0020】
また、試験サンプル中のOMP21、モラクセラ・カタラーリス、抗OMP21抗体または抗モラクセラ・カタラーリス抗体を検出するための方法および診断キットも含まれ、該方法は、
a) 試験サンプルを本発明の抗原性もしくは免疫原性組成物またはそれに対する抗体と接触させて抗原:抗体免疫複合体を形成するステップ、およびさらに、
b) ステップa)で形成された任意の免疫複合体を、試験サンプル中の該抗原または該抗体の存在を示すものとして検出するステップ、
を含んでなる。
【0021】
該方法はさらに形成された任意の免疫複合体を定量化することを含んでなる。
【0022】
OMP21、モラクセラ・カタラーリス、またはそれらに対する抗体を検出するための診断キットは、本発明の抗体および/または抗原性もしくは免疫原性組成物、該抗体または抗原性もしくは免疫原性組成物を該抗体を有すると疑われる試験サンプルと接触させるための容器手段、ならびに該抗原性もしくは免疫原性組成物と該抗体との間で形成される抗原:抗体免疫複合体を測定するための試薬手段を含んでなる。
【0023】
本発明のさらなる態様は、サンプル中のOMP21をコードする核酸の存在を決定する方法を提供し、該方法は、
a) サンプルを本発明で提供される核酸分子と接触させ、該核酸分子およびそれと特異的にハイブリダイズしうるサンプル中のOMP21をコードする任意の核酸分子を含んでなる2本鎖を生成させるステップ;および
b) 生成された2本鎖を検出するステップ、
を含んでなる。
【0024】
本発明はまた、サンプル中のOMP21をコードする核酸の存在を判定するための診断キットおよびそのための試薬も提供し、該診断キットおよび試薬は、
a) 本発明で提供される核酸分子;
b) サンプルを該核酸分子と接触させ、該核酸分子およびそれと特異的にハイブリダイズしうるサンプル中のOMP21をコードする任意の核酸分子を含んでなる2本鎖を生成させるための手段;および
b) 生成された2本鎖を検出するための手段、
を含んでなる。
【0025】
本発明にはまた、本発明で提供される有効量の医薬組成物を投与することを含んでなる処置を必要とする、動物、好ましくはヒトのモラクセラ・カタラーリスに関連する障害を予防、治療または軽減する方法も含まれる。好ましい障害としては、モラクセラ・カタラーリス細菌感染症、中耳炎、呼吸感染症、副鼻腔炎および肺炎が含まれる。好ましいワクチンおよび医薬組成物としては、モラクセラ・カタラーリス株が原因で起こる疾患に対する防御またはそのための治療を施すための、動物、好ましくはヒトにin vivo投与するための製剤が含まれる。微小粒子製剤、カプセル剤、またはリポソーム製剤として製剤化された組成物も好ましい。
【0026】
定義および略語
抗OMP21=抗OMP21ポリペプチド抗体または抗血清
ATCC=American Type Culture Collection
ブレブ(blebs)=モラクセラ・カタラーリスの天然の外膜小胞
免疫原および免疫原性=細胞性または体液性免疫応答を引き起こす能力を有する
kD=キロダルトン
モラクセラ・カタラーリス(M. catarrhalis)=M. c.;モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis);モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス(Moraxella (Branhamella) catarrhalis);ブランハメラ・カタラーリス(Branhamella catarrhalis);ナイセリア・カタラーリス(Neisseria catarrhalis)またはミクロコッカス・カタラーリス(Micrococcus catarrhalis)
OG=n-オクチル β-D-グルコピラノシドまたはオクチルグルコシド
OMP21=モラクセラ・カタラーリスの外膜から得られる、推定アミノ酸配列により予測するかまたはSDS-PAGEにより決定すると約16kD〜20kDの分子量を有する「野生型」タンパク質;および任意の供給源から化学合成および組換え合成を含む任意の手段により得られるOMP21由来ポリペプチド
OMP21由来ポリペプチド=モラクセラ・カタラーリスの外膜から得られる、分子量約16kD〜約20kDを有する野生型タンパク質(「野生型OMP21」)の1以上のアミノ酸欠失、挿入または置換を含有する任意の変異体もしくは類似体;野生型OMP21の任意の断片またはその任意の変異体もしくは類似体;野生型OMP21の全部もしくは一部または任意の断片、その変異体もしくは類似体のC末端またはN末端または内部セグメントに融合した異種ポリペプチドを含んでなる任意のキメラタンパク質
OMP=外膜タンパク質
OMPs=外膜タンパク質類
PBS=リン酸バッファー食塩水
PA=ポリアクリルアミドゲル
ポリペプチド=任意の長さ、好ましくは8個以上のアミノ酸残基を有するペプチド
SDS=ドデシル硫酸ナトリウム
SDS-PAGE=ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
本明細書で定義されるヌクレオチドまたは核酸配列は、塩基に関する以下の1文字の記号で表される。
【0027】
A(アデニン)
C(シトシン)
G(グアニン)
T(チミン)
U(ウラシル)
M(AまたはC)
R(AまたはG)
W(AまたはT/U)
S(CまたはG)
Y(CまたはT/U)
K(GまたはT/U)
V(AまたはCまたはGであり;T/Uではない)
H(AまたはCまたはT/Uであり;Gではない)
D(AまたはGまたはT/Uであり;Cではない)
B(CまたはGまたはT/Uであり;Aではない)
N(AまたはCまたはGまたはT/U)または(不明)
本明細書で定義されるペプチドおよびポリペプチド配列は、アミノ酸残基に関する以下の1文字また3文字の記号で表される。
【0028】
1文字 3文字 アミノ酸
A Ala (アラニン)
R Arg (アルギニン)
N Asn (アスパラギン)
D Asp (アスパラギン酸)
C Cys (システイン)
Q Gln (グルタミン)
E Glu (グルタミン酸)
G Gly (グリシン)
1文字 3文字 アミノ酸
H His (ヒスチジン)
I Ile (イソロイシン)
L Leu (ロイシン)
K Lys (リシン)
M Met (メチオニン)
F Phe (フェニルアラニン)
P Pro (プロリン)
S Ser (セリン)
T Thr (トレオニン)
W Trp (トリプトファン)
Y Tyr (チロシン)
V Val (バリン)
X Xaa (不明)
以下の発明の詳細な説明、発明の特定の実施形態の非限定的な実施例、および添付図面を参照することにより、本発明に対する理解はより完全なものとなるであろう。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、多くの用途を有している。例えば、本発明を限定するものではないが、本発明のOMP21、抗体、および核酸は、モラクセラ・カタラーリス感染の臨床的または医学的診断、ならびにモラクセラ・カタラーリスの病原性、毒性、および感染性といった特性および宿主防御機構に関する科学的研究のための試薬として有用である。例えば、本発明のDNAおよびRNAは、ハイブリダイゼーションまたはPCR増幅により生体試料中のモラクセラ・カタラーリスの存在を同定するためのプローブとして使用することができる。このDNAおよびRNAはまた、モラクセラ・カタラーリスOMP21に近縁なポリペプチドをコードする可能性のある他の細菌を同定するのに使用することができる。
【0030】
本発明のOMP21は、本発明のポリペプチドを含有する組成物をアフィニティクロマトグラフィーによりさらに精製するために使用することができるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を調製するのに使用されうる。このポリペプチドおよびペプチドはまた、試料中のモラクセラ・カタラーリスに対する抗体の存在についてスクリーニングするための標準的なイムノアッセイで使用することができる。本発明の細胞傷害抗体は、モラクセラ・カタラーリス感染に対する受動免疫に有用である。OMP21およびOMP21をコードする核酸は、ワクチンなど、モラクセラ・カタラーリス感染を治療または予防するための医薬組成物中の有効成分としてさらに使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】モラクセラ・カタラーリスブレブまたは全モラクセラ・カタラーリス細胞のオクチルグルコシド(OG)抽出物の外膜タンパク質プロフィールの変性PAGEによる比較を示す。レーン上の数字(81176、23246、25238および49143)は、ATCC株の名称を意味する。予め染色されたSDS-PAGE標準物(BioRadカタログ番号161-0305)を、分子量マーカーとして使用した。該標準物は、括弧内に示すおよその分子量を有する以下のポリペプチドよりなるものであった:ウサギ筋ホスホリラーゼB(106kD)、ウシ血清アルブミン(80kD)、ニワトリ卵白オボアルブミン(49.5kD)、ウシカルボニックアンヒドラーゼ(32.5kD)、ダイズトリプシンインヒビター(27.5kD)、ニワトリ卵白リゾチーム(18.5kD)。ゲル内の分子量マーカーの位置は矢印により図の左側に示されており、該マーカーのいくつかの分子量(kD)が該矢印の上に付されている。
【図2】ゲルへの添加前にサンプルバッファー中で25℃(レーン1〜3)または100℃(レーン4〜6)でインキュベートしたATCC株49143から精製したOMP21を用いた、還元剤の存在する条件における4〜20%勾配変性ポリアクリルアミドゲル中のOMP21の分子量評価を示す。ゲル中のタンパク質を還元銀染色により可視化した。広範囲SDS-PAGE標準物(NOVEX、カタログ番号LC5677)を分子量マーカーとして使った(左に示す)。標準物は次のポリペプチド(括弧内におよその分子量を示す)からなるものであった:ウサギ骨格筋ミオシン(200kD);大腸菌(E.coli)β-ガラクトシダーゼ(116kD);ホスホリラーゼB(97.4kD);ウシ血清アルブミン(66.2kD);グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(55.4kD);乳酸デヒドロゲナーゼ(36.5kD);カルボニックアンヒドラーゼ(31kD);トリプシンインヒビター(21.5kD);リゾチーム(14.4kD);アプロチニン(6kD)。ゲル中の分子量マーカーの位置は図の左側に線により記し、線上にマーカーの分子量(kD)を付した。
【図3】モラクセラ・カタラーリス株49143由来のOMP21の決定された核酸配列を示す。
【図4】モラクセラ・カタラーリス株49143由来のOMP21の推定されたアミノ酸配列を示す。
【図5】第11節の実施例に記載したモラクセラ・カタラーリス染色体DNAのHindIII制限エンドヌクレアーゼ消化物のRFLPサザンブロット分析を示す。最初のレーンはサイズマーカー(M)を含有し;他のレーン(B、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、17、20)は消化物とハイブリダイズしたバンドを含有し、該バンドは全ておよそ1.8kbのサイズである。
【図6】第10.5節の実施例に記載した野生型モラクセラ・カタラーリスおよびOMP21欠失突然変異(ノックアウト)DNAのPstI制限エンドヌクレアーゼ消化物のサザンブロット分析を示す。記載のプローブを使い、野生型モラクセラ・カタラーリスDNA(MC2926)のPstI消化物中におよそ8kbのDNA断片が検出されている。同じプローブはノックアウト体(KO1、KO4)の消化物中におよそ4.5kbのDNA断片を検出している。サイズマーカーを左に示す。
【図7】OMP21(OMP21ポリペプチドの位置は矢印により示した)に対するウサギ抗血清をプローブとして使った複数のモラクセラ・カタラーリス株(図7A(上側パネル)および7B(下側パネル)の両方に示した)のタンパク質抽出物のウェスタンブロットを示す。予め染色した分子量マーカー(NOVEX、カタログ番号LC5725)は次のポリペプチド(括弧内におよその分子量を示す)からなるものであった:ミオシン(250kD);ホスホリラーゼB(148kD);グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(60kD);カルボニックアンヒドラーゼ(42kD);ミオグロビン(30kD);リゾチーム(17kD);アプロチニン(6kD);およびインスリン(4kD)。
【図8】OMP21に対するウサギ抗血清をプローブとして使ったモラクセラ・カタラーリス株のOMP21欠失突然変異体のタンパク質抽出物のウェスタンブロットを示す。親株のオクチルグルコシド抽出物(レーン2)およびOMP21欠失突然変異モラクセラ・カタラーリス株(レーン3〜5)。使用したトランスファおよびウェスタンブロット方法ならびに分子量マーカー(レーン1)は図7Aおよび図7Bに示したブロットを得るために使用したものと同一である。
【図9】OMP21およびOMP21欠失突然変異体の地図を示す。遺伝子ターゲッティング構築物を相同的組換えにより挿入した後の遺伝子座上に置かれた構造と比較した野生型株中のOMP21遺伝子座の組織を示す。該地図はまた、以下の実施例に記載した制限エンドヌクレアーゼ切断部位ならびに80bpおよび543bpのDNA断片も示す。そのためのキットを開示する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
5.1.OMP21ポリペプチド
本発明のOMP21ポリペプチドは、SDS-PAGEにおいて約16kD〜約20kDの見掛けの分子量を有するモラクセラ・カタラーリス株または品種の外膜タンパク質である。本発明によれば、モラクセラ・カタラーリスの外膜タンパク質は、モラクセラ・カタラーリスブレブ中に存在するか、または緩衝溶液中の界面活性剤[限定するわけではないが、例えば、n-オクチルβ-D-グルコピラノシド(OG)、EmpigenBBTM(N-ドデシル-N,N-ジメチル-グリシン、CalBiochem)およびサルコシル]により室温でモラクセラ・カタラーリスブレブまたは無傷細胞から抽出されうるポリペプチドである。モラクセラ・カタラーリスの外膜よりなる天然の小胞であるモラクセラ・カタラーリスブレブの説明については、MurphyおよびLoeb, 1989, Microbial Pathogenesis 6:159-174を参照されたい。
【0033】
また、OMP21ポリペプチドは、HarlowおよびLane(Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, Appendix I, 1988)に記載されているような組成を用いるSDSを含有するPAにおける変性ゲル電気泳動による測定で約16kD〜約20kDの見掛けの分子量を有する、モラクセラ・カタラーリスブレブまたは無傷細胞の抽出物に含まれるポリペプチドとして同定することができる。特定の実施形態では、モラクセラ・カタラーリス株ATCC 49143の界面活性剤抽出物に含まれるOMP21ポリペプチドは、見掛けの分子量が約16〜20kDである。界面活性剤抽出物を100℃で5分間熱処理しても、OMP21ポリペプチドの見掛けの分子量は変化しない[HarlowおよびLane(前掲)に記載されている組成を使用し、還元剤(β-メルカプトエタノール)を含有する4〜20%勾配のPAGにおけるSDS-PAGEにて測定]。図2を参照されたい。
【0034】
特定の実施形態では、OMP21ポリペプチドは、ATCC 49143、ATCC 25238、ATCC 25240、ATCC 43617、ATCC 43618、ATCC 43627およびATCC 43628などのモラクセラ・カタラーリス株のいずれかから得られるものであるが、これらに限定されない。OMP21ポリペプチドの好ましい起源は、ATCC 49143である。
【0035】
特定の実施形態では、OMP21は、好ましくはアミノ末端に、アミノ酸配列:AISYGNSADAQPYVGAKIGQVDAKQINGKNTAYGIYAGYN(配列番号1)またはそれと実質的に相同な配列を含む。別の特定の実施形態では、OMP21は、推定アミノ酸配列(配列番号7)またはそれと実質的に相同な配列を含む。
【0036】
本明細書中では、「実質的に相同な」配列は、同一サイズの参照配列に対して、または、当該技術分野で公知のコンピュータ相同性プログラムまたは検索アルゴリズムによってアライメントもしくは比較を行う際の参照配列と比較して、少なくとも80%、好ましくは80%を超える、より好ましくは90%を超える同一性を有する。限定するわけではないが、例えば、有用なコンピュータ相同性プログラムとしては以下のものが挙げられる:KarlinおよびAltschul 1990, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 87:2264-68; 1993, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 90:5873-77に記載の統計学的方法を用い、有意性に基づいて配列類似性を検索するために作製された発見的探索アルゴリズムであるBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)(www.ncbi.nlm.nih.gov)(Altschulら, 1990, J. of Molec. Biol., 215:403-410, The BLAST Algorithm; Altschulら, 1997, Nuc. Acids Res. 25:3389-3402)。5種類の具体的なBLASTプログラムは、以下のタスクを実行するものである:
1)BLASTPプログラムは、アミノ酸の問い合せ配列をタンパク質配列データベースと比較する。
【0037】
2)BLASTNプログラムは、ヌクレオチドの問い合せ配列をヌクレオチド配列データベースと比較する。
【0038】
3)BLASTXプログラムは、ヌクレオチドの問い合せ配列(両鎖とも)の6通りのフレームを概念的に翻訳した産物を、タンパク質配列データベースと比較する。
【0039】
4)TBLASTNプログラムは、タンパク質の問い合せ配列を、6通り全てのリーディングフレーム(両鎖とも)において翻訳したヌクレオチド配列データベースと比較する。
【0040】
5)TBLASTXプログラムは、ヌクレオチドの問い合せ配列の6通りのフレーム翻訳を、ヌクレオチド配列データベースの6通りのフレーム翻訳と比較する。
【0041】
Smith-Waterman(データベース:European Bioinformatics Institute wwwz.ebi.ac.uk/bic sw/)(Smith-Waterman, 1981, J. of Molec. Biol., 147:195-197)は、配列アライメントの数学上厳密なアルゴリズムである。
【0042】
FASTA(Pearsonら, 1988, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 85:2444-2448を参照)は、Smith-Watermanのアルゴリズムの発見的近似である。BLAST、Smith-WatermanおよびFASTAアルゴリズムの手順および利点に関する一般的な説明については、Nicholasら, 1998, “A Tutorial on Searching Sequence Databases and Sequence Scoring Methods”(www.psc.edu)およびその引用文献を参照されたい。
【0043】
限定するわけではないが、例えば、同一性(%)を決定するのに有用なコンピュータ相同性アルゴリズムとパラメータとしては、さらに下記のものが挙げられる。
【0044】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸(例えば、OMP21配列と他の既知配列間)の同一性(%)を決定するには、比較が最適となるように配列をアライメントさせる(例えば、第2のアミノ酸または核酸配列とのアライメントが最適になるよう、第1のアミノ酸または核酸配列の配列中にギャップを挿入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合には、その位置においてこれらの分子は同一である。2つの配列間の同一性(%)は、配列間で共有される同一位置の数の関数であり、即ち、同一性(%)=同一位置の数/位置(例えば、重複位置)の総数×100である。1つの実施形態では、2つの配列は同一の長さである。
【0045】
2つの配列間の同一性(%)の決定は、数学的なアルゴリズムを用いて行うことができる。限定するわけではないが、2つの配列の比較に利用される数学的なアルゴリズムの好適な例は、KarlinおよびAltschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci USA 87:2264-2268に記載のアルゴリズムを、KarlinおよびAltschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877に記載されているように改変したものである。このようなアルゴリズムは、Altschulら, 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410に記載のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)を用いて実行でき、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列が得られる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いて実行でき、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列が得られる。比較を行うためにギャップを考慮したアライメントを得るには、Altschulら, 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されているようなGapped BLASTを使用することができる。あるいは、PSI-Blastを使用して、分子間の距離関係を検出する反復検索を実行することも可能である(同著)。BLAST、Gapped BLAST、およびPSI-Blastプログラムを利用する場合には、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。限定するわけではないが、配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの別の好適な例は、MyersおよびMiller, CABIOS(1989)に記載のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、CGC配列アライメントソフトウエアパッケージの一部をなすALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを用いる場合には、PAM120 weight residue table、ギャップ長ペナルティ=12、ギャップペナルティ=4を用いることができる。配列分析用の他のアルゴリズムは、当該技術分野で公知であり、TorellisおよびRobotti (1994) Comput. Appl. Biosci., 10:3-5に記載されているようなADVANCEおよびADAM、並びにPearonおよびLipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444-8に記載されているFASTAが挙げられる。FASTAでは、ktupは、検索の精度および速度を設定する制御オプションである。ktup=2の場合には、アライメントさせた残基の対を調べることにより、比較すべき2つの配列中の類似領域を見つけ出し、ktup=1の場合には、アライメントさせたアミノ酸を1つずつ調べる。ktupは、タンパク質配列の場合には2または1に設定でき、DNA配列の場合には1〜6に設定できる。ktupが特定されていない場合のデフォルトは、タンパク質の場合には2であり、DNAの場合には6である。FASTAパラメータに関する詳しい説明は、http://bioweb.pasteur.fr/docs/man/man/fasta.1.html#sect2を参照されたい(引用により、その内容を本明細書に含めるものとする)。
【0046】
あるいは、Higginsら, 1996, Methods Enzymol. 266:383-402に記載されているようなCLUSTAL Wアルゴリズムを用いてタンパク質配列アライメントを行ってもよい。
【0047】
2つの配列間の同一性(%)は、上述したような技術と同様の技術を利用して決定でき、ギャップは考慮してもしなくてもよい。同一性(%)の計算では、厳密な一致のみを数える。
【0048】
本発明の種々の態様では、本発明のポリペプチドは、SDS-PAGEにおける既知分子量マーカーの泳動に対する該ポリペプチドの泳動に基づくそれらの見掛けの分子量により特性づけられる。当該技術分野で公知の任意の分子量基準をSDS-PAGEで使用することができるが、好ましい分子量マーカーは、炭酸脱水酵素、トリプシンインヒビターおよびリゾチームを含む。当業者であれば、本発明のポリペプチドが、ゲル系の型の相違(例えば、緩衝液の相違、ゲル、架橋剤またはSDSの種類および濃度の相違)に応じて異なって泳動し得ることが明らかであろう。また、当業者であれば、該ポリペプチドが、SDS-PAGEで使用する分子量マーカーに応じて異なる見掛けの分子量を有する可能性があることも明らかであろう。従って、本発明のポリペプチドの分子量の特性づけは、任意のSDS-PAGE系において、該ポリペプチドに関して本明細書に開示されている見掛けの分子量と僅かに異なる見掛けの分子量を示しうる任意の分子量マーカーを用いた場合のポリペプチドを包含(cover)するように行われると意図される。
【0049】
5.2. OMP21由来ポリペプチド
OMP21由来ポリペプチドは、用語「OMP21」に包含されるものとし、6個以上のアミノ酸、好ましくは8個以上のアミノ酸、より好ましくは9個以上のアミノ酸、さらに好ましくは10個以上のアミノ酸を有するOMP21ポリペプチドの断片であってよい。完全長OMP21ポリペプチドは、その免疫原性に必要でない1個以上のアミノ酸残基を含有していてもよい。これは、例えば、OMP21ポリペプチドの特定のエピトープを形成するアミノ酸残基だけが免疫原性活性に必要である場合に言えるかもしれない。不必要なアミノ酸配列は、当該技術分野で周知の技術により除去することができる。例えば、トリプシン、パパインまたは関連のタンパク質分解酵素などの酵素を使用する限定的なタンパク質分解消化、または臭化シアンなどの薬剤を使用する化学的切断を行ない、次いでその消化産物または切断産物を分画することにより、不要なアミノ酸配列を除去することができる。
【0050】
また、本発明のOMP21由来ポリペプチドは、改変されたOMP21ポリペプチドまたはその断片(即ち、野生型OMP21配列の1以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を有するOMP21ポリペプチドまたは断片)であってもよい。このような改変は、得られるポリペプチド産物の免疫原性を増強するものでもよく、あるいはこのような活性に何ら影響を及ぼさないものであってもよい。使用し得る改変技術としては、米国特許第4,526,716号に開示されている技術を挙げることができる。
【0051】
限定するわけではないが、例えば、配列内の1個以上のアミノ酸残基を、機能上等価な同様の極性を有する別のアミノ酸で置換することができ、サイレント変異が生じる。配列内のアミノ酸を置換するものとしては、該アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。極性の中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが挙げられる。負に荷電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0052】
本発明のOMP21由来ポリペプチドはまた、OMP21コード配列に実質的に相同な(例えば、各種の実施形態では、同一サイズのアミノ酸配列に対して、または、当該技術分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアライメントを行う際にアライメントさせる配列と比較して、少なくとも60%もしくは70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%同一の)領域を含む分子であってもよく、あるいは、コードされている核酸が、高度にストリンジェントな条件下、中程度にストリンジェントな条件下、または低度もしくは非ストリンジェントな条件下でOMP21コード配列にハイブリダイズ可能な分子であってもよい。
【0053】
限定するわけではないが、例えば、有用なコンピュータ相同性プログラムとしては、以下のものが挙げられる:KarlinおよびAltschul(1990, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 87:2264-68; 1993, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 90:5873-77)に記載の統計学的方法を用い、有意性に基づいて配列類似性を検索するために作製された発見的探索アルゴリズムであるBasic Local Alignment Search Tool(BLAST) (www.ncbi.nlm.nih.gov)(Altschulら, 1990, J. of Molec. Biol., 215:403-410, The BLAST Algorithm; Altschulら, 1997, Nuc. Acids Res. 25:3389-3402)。2種類の具体的なBLASTプログラムは、以下のタスクを実行するものである:
1)BLASTPプログラムは、アミノ酸の問い合せ配列をタンパク質配列データベースと比較し、
2)BLASTNプログラムは、ヌクレオチドの問い合せ配列をヌクレオチド配列データベースと比較するため、実質的に相同なアミノ酸配列およびヌクレオチド配列をそれぞれ同定するのに有用である。
【0054】
使用し得る別のアルゴリズムは、Smith-WatermanアルゴリズムおよびFASTAアルゴリズムである。ヌクレオチド(および/またはアミノ酸)配列の同一性(%)を決定するのに有用なコンピュータ相同性アルゴリズムとパラメータに関するさらなる例と説明を含む詳細については、前出の第5.1.節を参照されたい。
【0055】
本発明の範囲内には、OMP21ポリペプチド断片、または翻訳時もしくは翻訳後に、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解酵素による切断、抗体分子もしくは他の細胞性リガンドへの結合等によって示差的に修飾された他の誘導体もしくは類似体であるOMP21由来ポリペプチドが含まれる。数多くの化学的修飾のいずれも、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的な化学的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイシンの存在下での代謝合成等の既知の技術(但し、これらに限定されない)によって行うことができる。
【0056】
さらに、必要であれば、非古典的なアミノ酸または化学的なアミノ酸類似体を、置換または付加としてOMP21ポリペプチド配列へ導入することもできる。非古典的なアミノ酸としては、通常のアミノ酸のD-イソ型、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロ-アミノ酸、デザイナー(designer)アミノ酸、例えば、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸、およびアミノ酸類似体一般が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、アミノ酸はD(右旋性)またはL(左旋性)であってよい。
【0057】
さらに、OMP21由来ポリペプチドは、完全なOMP21ポリペプチドまたはその一部もしくは断片のアミノ末端またはカルボキシル末端または内部に融合した1種以上の異種ポリペプチドを含むキメラポリペプチドであってもよい。このようなキメラポリペプチドを含む有用な異種ポリペプチドとしては、a)宿主細胞中でのOMP21由来ポリペプチドの輸送、トランスロケーションおよび/またはプロセシングを促進するプレおよび/またはプロ配列、b)アフィニティー精製配列、並びにc)有用な任意の免疫原性配列(例えば、微生物病原体の表面露出タンパク質のエピトープの1以上をコードする配列)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
好ましくは、本発明のOMP21由来ポリペプチドは、野生型OMP21と免疫学的に交差反応性であり、従ってモラクセラ・カタラーリスに対する免疫応答を動物中に惹起する能力を有する。より好ましくは、本発明のOMP21由来ポリペプチドは、モラクセラ・カタラーリスの天然OMP21ポリペプチドの外表面エピトープ(即ち、無傷モラクセラ・カタラーリス細胞に存在するOMP21ポリペプチドの表面露出エピトープ)の1以上を形成する配列を含む。このような好ましいOMP21由来ポリペプチドは、無傷モラクセラ・カタラーリス細胞に対して産生された抗体(例えば、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドで固定されたモラクセラ・カタラーリス細胞により惹起された抗体;このような抗体を本明細書中では「抗全細胞」抗体と称することにする)に対するその特異的結合能により同定することができる。例えば、OMP21ポリペプチドの限定的または完全なプロテアーゼ消化からのポリペプチドまたはペプチドを、標準的な方法を用いて分画し、抗全細胞抗体に対するそれらの結合能に関して試験する。反応性ポリペプチドは、好ましいOMP21由来ポリペプチドを含む。当該技術分野で公知の方法により、それらを単離し、それらのアミノ酸配列を決定する。
【0059】
また、抗全細胞抗体を使用して、OMP21ポリペプチドをコードするモラクセラ・カタラーリスゲノムDNAのランダムな断片またはクローン化ヌクレオチド配列を発現する細菌ライブラリーをスクリーニングすることにより、これらの好ましいOMP21由来ポリペプチドを同定することができる。例えば、Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, NY, Vol. 1, 第12章を参照されたい。該反応性クローンを同定し、それらのインサートを単離し、配列決定して、このような好ましいOMP21由来ポリペプチドのアミノ酸配列を決定する。
【0060】
5.3.OMP21の単離および精製
本発明は、単離されたOMP21を提供する。本明細書中、用語「単離(された)」とは、該産物が、天然では結合している他の生物学的物質を有意に含有しないことを意味する。即ち、例えば、単離されたOMP21は、約70重量%〜94重量%純粋なOMP21である。好ましくは、本発明のOMP21は精製されている。本明細書中、用語「精製(された)」とは、OMP21が、天然では結合している他の生物学的物質を実質的に含有しないことを意味する。即ち、精製されたOMP21は、少なくとも95重量%純粋なOMP21、好ましくは、少なくとも98重量%純粋なOMP21、最も好ましくは、少なくとも99重量%純粋なOMP21を意味する。
【0061】
本発明のOMP21は、任意のモラクセラ・カタラーリス株または品種の全細胞抽出物を含むタンパク質抽出物から単離することができる。好ましくは、該タンパク質抽出物は、モラクセラ・カタラーリス(ATCC 49143、ATCC 25238、ATCC 25240、ATCC 43617、ATCC 43618、ATCC 43627およびATCC 43628株のいずれかを含むが、これらに限定されない)の外膜小胞(即ち、ブレブ)または全細胞の界面活性剤抽出物である。このような抽出物の好ましい起源は、ATCC 49143である。OMP21の別の起源は、OMP21をコードするクローン化配列を発現する遺伝子発現系からのタンパク質調製物である(後記第5.8.節を参照されたい)。
【0062】
OMP21は、当業者に周知の任意の生化学的技術およびアプローチを用いて、それらの起源物質から単離・精製することができる。1つのアプローチでは、標準的な技術によりモラクセラ・カタラーリス外膜を得、界面活性剤などの可溶化化合物を使用して外膜タンパク質を可溶化する。好ましい可溶化溶液は、約1.5%(w/v)のオクチルグルコピラノシド(OG)を含有する可溶化溶液である。別の好ましい可溶化溶液は、約1.0%のEmpigenBBTM(N-ドデシル-N,N-ジメチル-グリシン、CalBiochem)を含有する可溶化溶液である。OMP21は、可溶化画分中に存在する。該抽出物中の細胞破片および不溶性物質を、好ましくは遠心分離により分離・除去する。該抽出物中のポリペプチドを濃縮し、SDS含有Laemmliゲルサンプル緩衝液中、100℃で5分間インキュベートし、次いで4〜20%勾配の変性SDS-PAGEにおける電気泳動により分画する。Laemmli, 1970, Nature 227:680-685を参照されたい。次いで、前記のとおりにOMP21と同定されたバンドまたは画分(例えば、界面活性剤抽出物中に存在する銀染色されたポリペプチドバンド)を、OMP21を含有する画分またはゲル切片から直接単離することができる。好ましい実施形態では、OMP21は、変性SDS-PAGEにおけるその泳動距離または速度をトリプシンインヒビター(21.5kD)およびリゾチーム(14.4kD)と比較することにより測定した場合に、16〜約20kDの見掛けの分子量を有する。
【0063】
OMP21を精製する別の方法は、抗OMP21抗体を使用するアフィニティークロマトグラフィーによるものである(第5.5節を参照されたい)。好ましくは、モノクローナル抗OMP21抗体を使用する。該抗体は、臭化シアンまたはスクシンアミドエステルにより活性化されたアガロースゲル(Affi-Gel, BioRad, Inc.)、あるいは当業者に公知の他の方法により活性化されたアガロースゲルに共有結合させる。該タンパク質抽出物を、前記のとおりにゲル上にのせる。接触は、OMP21が該抗体に結合するのに十分な時間および標準的な反応条件下で行なう。好ましくは、固相支持体は、クロマトグラフィーカラム中で使用する物質である。次いでOMP21を該抗体から外し、これにより、単離された、または好ましくは精製された形態のOMP21の回収が可能となる。
【0064】
OMP21断片は、単離または精製されたOMP21の化学的および/または酵素的切断あるいは分解により製造することができる。また、OMP21は、OMP21の既知アミノ酸配列に基づいて、また、キメラポリペプチドの場合には、異種ポリペプチドの既知アミノ酸配列に基づいて、当該技術分野で周知の方法により化学的に合成することもできる。例えば、Creighton, 1983, Proteins: Structures and Molecular Principles, W.H. Freeman and Co., NYを参照されたい。
【0065】
また、OMP21は、OMP21をコードする配列を含む組換えヌクレオチド構築物を発現する遺伝子発現系において製造することもできる。本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、当業者に周知の技術に従って合成し、および/または、クローニングし、発現させることができる。例えば、Sambrookら, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Press, NY, 第9章を参照されたい。
【0066】
OMP21は、標準的なタンパク質精製技術を適用することにより分画および精製し、本明細書に記載の知見および教示に従って修飾および適用することができる。特に、好適なOMP21断片、即ち、天然OMP21の外表面エピトープを形成するOMP21断片は、OMP21の単離および精製に関して上述したアフィニティー法(例えば、抗OMP21抗体を使用するアフィニティー精製)に従って単離・精製することができる。
【0067】
必要であれば、本発明のポリペプチドを、電気泳動、遠心分離、ゲル濾過、沈殿、透析、クロマトグラフィー(イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、免疫吸着アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、ゲル浸透高速液体クロマトグラフィーなど)、等電点電気泳動、並びにそれらの変法および組合わせを含む(但し、これらに限定されない)標準的なタンパク質またはペプチド精製技術を用いてさらに精製することができる。
【0068】
分子をその物理的または化学的特性に応じて分離するように設計された方法において、これらの技術の1以上を連続的に使用することができる。これらの特性には、該タンパク質の疎水性、電荷、結合能および分子量が含まれる。それぞれの技術を適用した後で得られた物質の種々の画分を、分子量または抗OMP21抗体に対する結合能に関して試験する。次いで、このような活性を示す画分を、連続的な方法の後続の技術に付し、新たに得られた画分を再び試験する。前記の特性を有する唯一の分が残り、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはクロマトグラフィーに付し場合に、その画分が単一のバンドまたは単一の構成要素だけを生成するようになるまで、この方法を繰返す。
【0069】
5.4.OMP21免疫原および抗OMP21抗体
本明細書および特許請求の範囲中では、本発明の「抗体」は、当業者に公知の従来慣用の任意の方法によって取得することが可能であり、限定するわけではないが、Antibodies A Laboratory Manual (E. Harlow, D. Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている方法等が挙げられる。前記文献は、引用によりその全内容を本明細書に含めるものとする。用語「抗体」は、ポリクローナル、モノクローナル、精製IgG、IgA、IgMおよびこれらのフラグメントといった(但し、これらに限定されない)全ての形態を含むものとする。
【0070】
本発明は、OMP21に特異的に結合する抗体を提供する。このような抗体を産生するには、下記の群:
a)OMP21、
b)OMP21をコードする核酸分子またはその断片もしくは相補配列、
c)配列番号6の配列を有する核酸分子、その相補配列、高度のストリンジェンシー条件下で該分子にハイブリダイズする核酸配列、またはこれらの断片、
d)形質転換宿主から得られるOMP21[該宿主は、上記b)またはc)で規定した核酸分子と、宿主に該OMP21を発現させるための該核酸分子に機能し得る形で連結した発現手段とを含む発現ベクターを保有する]、
e)OMP21をコードする核酸またはその断片もしくは類似体を含む組換えベクター、
f)上記e)のベクターを含む形質転換細胞から選択される少なくとも1つの単離されたまたは好ましくは精製された成分、任意に1種以上のアジュバント、および任意に製薬上許容される担体または希釈剤を含む組成物を、免疫原として有効な量で動物へ投与する。
【0071】
上記組成物はさらに、任意に、脂質、リン脂質、炭水化物(リポ多糖類等)、別のタンパク質、および、本明細書に記載または当業者に公知の弱毒化または不活化した生物全体(前出の第2節に記載したもの等、但しこれらに限定されない)といった、免疫原であってよい別の成分と併用、融合または結合させてもよい。好適な任意の成分としては、任意のモラクセラ属、ナイセリア属またはヘモフィルス属のタンパク質が挙げられる。ワクチン等の好適な免疫原性組成物は、単離されたOMP21をOMP106および1種以上のアジュバントと共に含むものである。
【0072】
1つの実施形態では、モラクセラ・カタラーリス細胞またはブレブの外膜の界面活性剤抽出物中に存在する他の外膜タンパク質から、OMP21をSDS-PAGE(前記第5.2節を参照)により分離し、OMP21を含有するゲル切片を免疫原として用いてウサギに注射し、ポリクローナルOMP21抗体を含有する抗血清を産生させる。ポリクローナル抗体を産生するためにマウスおよびモルモットを免疫したり、モノクローナル抗OMP21抗体を産生するハイブリドーマ系の作製のためにマウスを免疫するのに、同じ免疫原を使用することができる。特定の実施形態では、ATCC 49143、ATCC 25238、ATCC 25240、ATCC 43617、ATCC 43618、ATCC 43627およびATCC 43628株のいずれかから単離または精製されたOMP21を含有するPA切片を免疫原として使用する。好ましい実施形態では、ATCC 49143株から単離または精製されたOMP21を含有するPA切片を免疫原として使用する。
【0073】
他の実施形態では、OMP21のペプチド断片を免疫原として使用する。好ましくは、精製されたOMP21のペプチド断片または化学的に合成したOMP21のペプチド断片を使用する。該ペプチドは、単離または精製されたOMP21のプロテアーゼ消化、化学的切断、あるいは化学合成により製造することができ、次いで単離または精製すればよい。このような単離または精製されたペプチドを免疫原として直接使用することができる。特定の実施形態では、有用なペプチド断片には、配列AISYGNSADAQPYVGAKIGQVDAKQINGKNTAYGIYAGYN(配列番号1)または6以上のアミノ酸長のその任意の部分を有するペプチド断片が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、該ペプチドは、図3に示すような配列(配列番号7)を有する。
【0074】
また、有用な免疫原は、担体分子、好ましくは担体タンパク質に結合したOMP21を含むことが可能である。担体タンパク質は、免疫学において一般に使用される任意の担体タンパク質であってよく、ウシ血清アルブミン(BSA)、ニワトリアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などが含まれるが、これらに限定されない。ハプテンタンパク質結合体については、例えば、Hartlowら, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1988、またはRoitt, I.ら, IMMUNOLOGY, C.V. Mosby Co., St. Louis, MO (1985)またはKlein, J., IMMUNOLOGY, Blackwell Scientific Publications, Inc., Cambridge, MA, (1990)などの標準的な免疫学のテキストを参照されたい。
【0075】
さらに別の実施形態では、OMP21の外表面エピトープの1つ以上に特異的に結合する抗体を製造するために、無傷のモラクセラ・カタラーリス細胞またはそれから調製したブレブを免疫原として使用する。免疫前に、該細胞またはブレブをホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドなどの物質で固定化してもよい。HarlowおよびLane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor NY, 1988, 第15章を参照されたい。このような抗全細胞抗体はモノクローナル抗体であることが好ましい。精製されたOMP21をスクリーニングリガンドとして使用することにより、所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ系を同定することができる。これらの抗体を誘導するためには、任意のモラクセラ・カタラーリス株(ATCC 49143、ATCC 25238、ATCC 25240、ATCC 43617、ATCC 43618、ATCC 43627およびATCC 43628を含むが、これらに限定されない)の細胞またはブレブを免疫原として使用する。好ましくは、これらの抗体を誘導するための免疫原として、ATCC 49143株の細胞またはブレブを使用する。
【0076】
一般に、動物(広範な脊椎動物種を使用し得るが、最も一般的なのはマウス、ラット、モルモット、ハムスターおよびウサギである)を、本発明のOMP21、その核酸配列またはその免疫原性断片もしくは誘導体で、アジュバントまたは免疫原の有効性を高める任意の薬剤の不在下または存在下にて免疫し、一定の間隔で追加免疫する。任意の簡便な方法によって、所望の抗体の有無について動物の血清をアッセイする。前記動物の血清または血液は、ポリクローナル抗体の供給源として使用できる。
【0077】
全細胞またはブレブでの免疫により産生されたポリクローナル抗体は、他のモラクセラ・カタラーリスの外膜タンパク質に結合する抗体(「非抗OMP21抗体」)を含有するため、サンプル中に他のモラクセラ・カタラーリス外膜タンパク質またはこれらの他の外膜タンパク質と交差反応する物質が含まれていることが分かっているかまたはその疑いがある場合には、該ポリクローナル抗体の使用はより厄介なものとなる。このような場合には、所定のサンプルまたはバンドの抗全細胞抗体による結合をいずれも、OMP21に特異的に結合する抗体(例えば、抗OMP21)による同一サンプルまたはバンドの同時結合により、あるいは抗OMP21抗体またはOMP21を競合体として使用する競合試験(即ち、抗OMP21抗体またはOMP21を反応混合物に加えると、抗全細胞抗体に対するサンプルの結合が低下するかまたは損なわれる)により確認しなければならない。あるいは、標準的なアプローチおよび方法により、「非抗OMP21」抗体を含有するこのようなポリクローナル抗血清から、このような抗体を除去すればよい。例えば、OMP21を有さないことが分かっている欠失突然変異体モラクセラ・カタラーリス品種またはモラクセラ・カタラーリス株の細胞を用いて沈殿させることにより、あるいはこのような細胞またはこのような細胞の外膜タンパク質を含むカラムに吸収させることにより、非抗OMP21抗体を除去することができる。
【0078】
さらに別の実施形態では、本発明の抗体を惹起するのに有用な免疫原は、前記の個々の免疫原のいずれかの2以上の混合物を含み、OMP21とOMP106の混合物が好適である。
【0079】
本明細書中に前記した免疫原での動物(好ましくは、ウサギ、モルモット、チンチラ、ラット、マウス、ヒツジ、ヤギ、ウシまたはウマ)の免疫は、ポリクローナル抗体を含有する抗血清またはモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ系を得るための当業者に周知の以下の方法に従って行なう。
【0080】
モノクローナル抗体は、本明細書中に含まれる教示で示される標準的な技術により製造することができる。このような教示は、例えば、米国特許第4,271,145号および米国特許第4,196,265号に開示されている。簡単に説明すると、動物を該免疫原で免疫する。
【0081】
モノクローナル抗体を単離する一般的な方法としては、許容される抗体力価が検出された時点で、動物を安楽死させ、融合を行うために脾臓を無菌的に摘出する。脾臓細胞を特異的に選択した不死化ミエローマ細胞系と混合し、次いで混合物を、細胞融合を促進する薬剤(典型的には、ポリエチレングリコール等)へ曝露する。このような条件下では、ランダムに融合が起こり、融合細胞と各細胞型の未融合細胞との混合物が得られる。融合に使用するミエローマ細胞系は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン)等の選択培地の使用によって、融合混合物からの培養で生存し続ける細胞が、免疫感作ドナー由来の細胞とミエローマ細胞とのハイブリッドのみとなるように、特異的に選択する。融合後、細胞を希釈して選択培地で培養する。選択した抗原に対する所望の特異性を有する抗体の有無について培養培地をスクリーニングする。細胞培養物が単一細胞を起源とすることが確認されるまで、目的の抗体を含有する培養物を限界希釈によってクローン化する。モノクローナル抗体を作製する他の方法は公知であり、このような方法も本発明に含まれる。例えば、組換え細菌から選択された組換えモノクローナル抗体も本発明に含まれる。
【0082】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を産生させるための免疫方法は、当該技術分野で周知である。皮下、静脈内、腹腔内、皮内、筋肉内、粘膜またはこれらの組合せを含む多数の経路のいずれかにより、該免疫原を投与することができる。当該技術分野で周知の方法および物質を用いて、該免疫原を可溶性形態、凝集物形態で投与したり、任意に物理的担体および/またはアジュバントに結合させたり、混合することができる。当業者に周知のカラムクロマトグラフィー法を用いて、該抗血清および抗体を精製することができる。
【0083】
本発明では、モラクセラ・カタラーリス株のOMP21は免疫交差反応性である。従って、1つのモラクセラ・カタラーリス株または品種のOMP21に対して産生された抗体は、他のモラクセラ・カタラーリス株および品種のOMP21に特異的に結合する。例えば、ATCC 49143株のOMP21により誘導されたポリクローナル抗OMP21抗体は、同種OMP21(即ち、ATCC 49143株のOMP21)だけでなく、他のモラクセラ・カタラーリス株(ATCC 43628、ATCC 43627、ATCC 43618、ATCC 43617、ATCC 25240およびATCC 25238を含むが、これらに限定されない)のOMP21にも特異的に結合する。
【0084】
本発明の抗体(抗OMP21抗体を含むが、これに限定されない)を使用して、OMP21の単離および精製を容易なものとすることができる。また、該抗体は、OMP21をコードするインサートを有する発現ライブラリー中のクローンを同定するためのプローブとして使用することができる。また、生物学的試料中のモラクセラ・カタラーリスを特異的に検出および/または定量するために、イムノアッセイ(例えば、ELISA、RIA、ウエスタン)において該抗体を使用することもできる。
【0085】
また、本発明の抗体は、特に、細胞傷害性の抗体を受動免疫で使用して、ヒトを含む動物のモラクセラ・カタラーリス感染症を予防または軽減することができる(本明細書中では、細胞傷害抗体は、該抗体に結合した細菌のオプソニン作用および/または補体殺傷を増強する抗体である)。本発明の1以上の免疫原に対して産生されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の有効濃度を宿主に投与して、このような効果を得ることができる。投与する抗体の正確な濃度は、それぞれの特異的抗体調製物によって異なるが、当業者に周知の標準的な技術を用いて決定することができる。種々の技術(ワクチンの送達に関する第5.5.節に記載の技術を含むが、これに限定されない)を用いて、該抗体の投与を行なうことができる。
【0086】
5.5.医薬組成物
本発明はまた、治療用および予防用組成物を含む医薬組成物を提供する。こうした医薬組成物は、ヒトを含む動物のモラクセラ・カタラーリス感染症を、治療、予防または改善するのに有用なワクチンを含む免疫原組成物であってもよい。好ましい医薬組成物はワクチンである。
【0087】
本医薬組成物は好ましくはワクチンであり、当業者に公知の技術で調製することが可能であって、更には、例えば第5.4節に開示されているいずれかのOMP21免疫原の免疫学的または治療学的有効量を含むものであって、これら免疫原は、脂質、リン脂質、リポ多糖類を含む炭水化物、およびモラクセラもしくはその他の細菌起源のタンパク質、生物体全体またはその小単位、製薬上許容される担体、おそらく適切なアジュバント、ならびにおそらくワクチン等の医薬組成物中に従来から見出されているその他の物質を含む、1つまたはそれ以上の他の免疫原と、任意に組み合わせたり、融合したり、コンジュゲート化したりすることがある。
【0088】
好ましいその他の免疫原としては、あらゆるモラクセラ(Moraxella)、ナイセリア(Neisseria)、シュードモナス(Pseudomonas)、 ストレプトコッカス(Streptococcus)もしくはヘモフィルス(Haemophilus)、または弱毒化もしくは不活性化された全生物体、またはそうした生物体に由来するタンパク質もしくは炭水化物等がある。ワクチンを含む更に好ましい免疫原組成物は、OMP106および1つもしくはそれ以上のアジュバント、または米国特許第 5,679,547号に記載されているHin47(本特許はそのまま参照として本明細書に含まれるものである)と組み合わせたOMP21を含むカクテルワクチンである。このカクテルワクチンは、1回の投与でいくつかの病原体に対する免疫が得られるという利点を有する。その他の免疫原としては、例えば、公知のDPTワクチンで使用されるものなどがある。
【0089】
本発明の別の実施形態によれば、本発明のワクチンは、第5.4節で開示されているいずれかの免疫原の免疫学的有効量、および追加的に本発明の不活性化または弱毒化されたモラクセラ・カタラーリス品種(cultivar)を含む。不活性化または弱毒化されたモラクセラ・カタラーリス品種は、化学処理(ホルマリン等)、熱処理および放射線照射などの当該分野で公知の方法を使用して得られるものであるが、これらの方法に限定されるものではない。ただ1つの病原体の抗原性物質を含有するワクチンは、単価ワクチンである。いくつかの病原体の抗原性物質を含有するワクチンは混合ワクチンであり、これも本発明に包含されてもいる。こうした混合ワクチンは、例えば、種々の病原体もしくは同一の病原体の種々の菌株由来の、または種々の病原体の組合わせ由来の物質を含む。
【0090】
ワクチンはまた、体液性免疫応答(HIR)および細胞媒介性免疫(CMI)を、改善、増強、または効果的に誘導するための、1つまたはそれ以上のアジュバントを含有してもよい。アジュバントは、投与部位近辺で抗原を貯留することによって、免疫系の細胞に対する抗原の緩徐かつ徐放性の放出を促進するデポー(貯留)効果を産出するために作用してもよい。またアジュバントは、免疫系の細胞を抗原貯留物(antigen depot)に誘発し、それら細胞の免疫応答誘発を引き出すことも可能である。
【0091】
理想的なアジュバントの望ましい性質としては以下のようなものが挙げられる。:
(1)毒性の欠如
(2)持続性の免疫応答を促進する能力
(3)製造の簡便性、および長期間保存における安定性
(4)必要に応じて、種々の経路で投与される抗原に対して、CMIおよびHIRの両方を誘発する能力
(5)他のアジュバントとの相乗作用
(6)抗原提示細胞(APC)集団と選択的に相互作用する能力
(7)適切なTH1またはTH2細胞特異免疫応答を特異的に誘発する能力
(8)抗原に対する適切な抗体のアイソタイプレベル(IgA等)を選択的に増大させる能力
長年、免疫刺激剤またはアジュバントが使用されてきた。リポ多糖類などの内的アジュバントは、通常、ワクチンとして使用される不活化または弱毒化された細菌の成分である。外的アジュバントは、通常、抗原と非共有的に結合する免疫モジュレーターであり、宿主の免疫応答を増強させるように調製されている。このように、非経口的に送達された抗原に対する免疫応答を増強させるアジュバントが同定されてきた。水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム(通常、一括してミョウバン(alum)と総称される)は、ヒトおよび獣医用ワクチンにおけるアジュバントとして日常的に使用されている。ジフテリアや破傷風トキソイドに対する抗体応答を増強させるミョウバンの効果は十分に証明されており、HBsAgワクチンには、アジュバントとしてミョウバンが使用されてきた。いくつかの適用ではミョウバンの有用性が十分に証明されている一方で、限界もある。例えば、ミョウバンは、インフルエンザワクチン接種においては効果がなく、細胞媒介性免疫応答を一定して誘発しない。
【0092】
その他の外的アジュバントとしては、膜タンパク質抗原と複合体化するサポニン(免疫刺激複合体)、鉱油を伴ったプルロニックポリマー、鉱油中の不活化ミコバクテリア、フロイント完全アジュバント、ムラミールジペプチド(MDP)およびリポ多糖類(LPS)等の細菌性産物、リピドA、およびリポソームなどを挙げてもよい。
【0093】
参考として本明細書にとり入れる、1989年8月8日にLockhoffらに付与された米国特許第4,855,283号は、免疫修飾物質またはアジュバントとして、各々N-グリコシルアミド、N-グリコシルウレア、およびN-グリコシルカルバメートにおいて、それぞれ糖残基がアミノ酸によって置換された糖脂質類似体を教示している。このように、Lockhoffらは、N-ホスホ糖脂質(glycosphospholipids)およびN-グリセロ糖脂質が、単純性疱疹ウイルスワクチンおよび仮性狂犬病ウイルスワクチンの両方において、強力な免疫応答を誘発する能力を有していると報告した(米国特許第4,855,283号)。いくつかの糖脂質は、アノマー炭素原子を介して糖と直接結合する、長鎖アルキルアミンおよび脂肪酸から合成されたものであり、天然に存在する脂質残基の機能と類似したものであった。
【0094】
Moloneyに付与された米国特許第4,258,029号(参考として本明細書にとり入れる)は、破傷風トキソイドワクチンならびにホルマリン不活化タイプI、IIおよびIII灰白髄炎ウイルスワクチンと結合した際、アジュバントとして機能するオクタデシルチロシン塩酸塩(OTH)を教示している。また、合成ペプチドの免疫原性を増強するために、この化合物の脂質化(lipidation)も行なわれてきた。
【0095】
従って本発明によれば、OMP21を含む医薬組成物は、ミョウバン、QS21、腸毒性大腸菌由来の熱不安定性毒素、コレラ毒素(CT)、またはカルメット-ゲラン杆菌(BCG)、およびこれらが変異または修飾された型、などのアジュバントを更に含んでもよいが、これらに限定されるわけではない。
【0096】
「免疫学的有効量」という用語は、本明細書において、細胞性または体液性免疫応答を誘導するのに十分な量を意味する。必要な量はOMP21の免疫原性、およびワクチンを投与する被検体の種や体重に依って変化しうるが、本明細書が提供する教示に従い、当業界で公知の常法を使用して決定することができる。好ましくは、ワクチンが、抗OMP21抗体等の抗体を産出する被検体の体内で免疫応答を誘発し、より好ましくは、細菌性結合を中和する抗体がオプソニン作用を示すか、または殺菌性である。さらに好ましくは、この免疫応答は、モラクセラ・カタラーリス感染症を予防できるか、またはあらゆる既往のもしくは後成のモラクセラ・カタラーリス感染症の症状を緩和できるものである。本発明の好適かつ非限定的な実施形態では、有効量のワクチンが、ワクチン接種前の抗体価の少なくとも2倍、より好ましくは3倍、抗細菌性抗体価を向上させる。
【0097】
一般的には、免疫原の量は、1投与量当たり0.1〜500μgである。本発明の好適、特異的かつ非限定的な実施形態では、約0.1〜100μg、好ましくは10〜50μgが宿主に投与される。また本発明の組成物は、更に適当な製薬上の担体を含んでもよい。こうした担体は当業者には公知であり、例えば安定剤、希釈剤、賦形剤および緩衝液などを含む。適当な安定剤としては、ソルビトール、乳糖、マンニトール、デンプン、ショ糖、デキストランおよびグルコース等の炭水化物、ならびにアルブミンまたはカゼイン等のタンパク質が挙げられる。適当な希釈剤としては、生理食塩水、ハンクス塩およびリンゲル液が挙げられる。適当な賦形剤としては、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールおよびこれらの組合せなどを挙げることができる。適当な緩衝液としては、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ土類金属炭酸塩が挙げられる。その他の適当な製薬上の担体については、当該分野における標準的な参考文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Companyに記載されており、この文献をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【0098】
本明細書に記載の教示により、本発明のワクチンは当業者に公知の技術によって調製される。一般的に免疫原は担体と混合されて、溶液、懸濁液または乳濁液を形成する。前記で検討した添加物の1つまたはそれ以上を担体内に入れてもよく、または逐次添加してもよい。ワクチン調製物は、例えば保存目的で、凍結乾燥などにより乾燥させてもよい。乾燥させた場合は、適切な液状担体を添加して、乾燥ワクチンを液状ワクチン中に逐次復元してもよい。
【0099】
本ワクチンは、ヒトまたは他の動物に投与される。本ワクチンは、1回または複数回投与されることが可能である。最初の投与および追加投与に関する適切な方法もまた一様ではないが、最初の投与の後に逐次投与を行なってもよい。投与量もまた投与経路に依るものであってもよく、さらに宿主のサイズによっても変化する。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性製剤、または粉剤などの形体をとることが可能であり、OMP21の約0.0001〜95重量%、好ましくは0.001〜10重量%を含んでもよい。ワクチンは公知の投与経路で投与されてもよい。本明細書に記載のワクチン製剤を導入するために、多くの方法が使用されてもよい。これらの方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口(胃内)、鼻内、膣内、または直腸内経路、およびその他の粘膜経路を含むが、これらに限定されるものではない。あるいは、坐剤や経口薬など、その他の投与方法が望ましい場合もある。好ましい経路は、筋肉内または皮下注射である。
【0100】
5.6.検出方法
OMP21は、固相酵素免疫測定法(ELISA)、RIAおよびその他の非固相酵素免疫測定法、または当技術分野で公知の手法などのイムノアッセイにおける抗原として、テストサンプルにおいて抗菌性抗体、抗モラクセラ・カタラーリス抗体、および抗OMP21タンパク質抗体を検出するのに有用である。ELISAアッセイでは、ポリスチレンマイクロタイタープレートのウェルなど、タンパク質を結合しうる表面などの選択された表面にOMP21を固定する。完全に吸着されていないOMP21を洗浄して除去した後、ウシ血清アルブミン(BSA)溶液など、テストサンプルに対して抗原的に中立であることが分かっている非特異的タンパク質を、選択した表面に結合させうる。これにより、固定化表面の非特異的吸着部位が遮断され、抗血清が表面に非特異的に結合することによって引き起こされるバックグランドを低減できる。
【0101】
その後、免疫複合体(抗原/抗体)の形成を誘導するような方法で、固定化表面にテストサンプルを接触させて試験する。テストサンプルとしては、ヒト血液、血清、血漿、唾液、尿、便、痰、ならびに感染した耳および/または生物学的物質などから臨床的に単離されたその他の流体サンプルなど、ヒトの流体サンプルまたは固体サンプルなどがあるが、これらに限定されない。これには、BSA溶液、ウシγグロブリン(BGG)および/またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/Tweenなどの希釈剤でサンプルを希釈または溶解したものなども含まれる。その後、サンプルをほぼ20℃〜37℃程度の温度で2〜4時間インキュベートしうる。インキュベーションに続いて、サンプルが接触している表面を洗浄して、非免疫複合体物質を除去する。洗浄方法には、PBS/Tweenまたはホウ酸塩緩衝液などの溶液での洗浄などがある。テストサンプルと結合OMP21との特異的免疫複合体が形成され、続いてそれを洗浄した後、該免疫複合体を一次抗体に特異的な二次抗体にさらすと、免疫複合体形成の発生率およびその量までも測定しうる。テストサンプルがヒトに由来する場合、二次抗体はヒトイムノグロブリン、通常IgGに特異的な抗体である。
【0102】
検出方法を提供するため、二次抗体は、例えば、適切な発色体基質を用いてインキュベーションすると発色するといった酵素活性などの関連した活性を有していてもよい。その結果、例えば、可視的な分光測光器を用いて発色具合を測定することにより定量化できる。
【0103】
その他の実施形態は、本発明によって所望のイムノアッセイを行うのに必要とされる不可欠な試薬すべてを含む診断キットを含んでなる。診断キットは、必要な試薬を入れた1つ以上の容器の組合せとして、市販用にパッケージされた形で提供しうる。そのようなキットには、従来のキットの内容物いくつかと組み合わせて、本発明のモラクセラ細菌またはその抗原部分、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が含まれていてもよい。従来のキットの内容物は、当業者にとっては容易に理解されるものであり、例えば、本明細書中にその全文が参照として組み入れられているAntibodies A Laboratory Manual (E. Harlow, D. Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989) など、多数の刊行物で開示されている。従来のキットの内容物には、例えば、マイクロタイタープレート、アッセイ混合物のpHを維持するバッファー(Tris, HEPESなどであるが、これらに限定されない)、コンジュゲートされたペルオキシダーゼ抗マウスIgG(または、一次抗体が由来する動物に対する抗IgGのいずれか)などのコンジュゲートされた二次抗体、およびその他の標準的試薬などが含まれる。
【0104】
5.7.OMP21をコードする核酸
本発明はOMP21をコードする核酸も提供する。OMP21のオープンリーディングフレーム全体を含むヌクレオチド配列を図3および配列番号6に示す。OMP21のオープンリーディングフレームによりコードされる推定アミノ酸配列を図4および配列番号7に示す。
【0105】
本発明の核酸は1本鎖であっても2本鎖であってもよい。本発明は、前述の配列とハイブリダイズしうるか、または相補的な核酸も提供する。特定の態様において、OMP21ポリペプチドまたはOMP21由来ポリペプチドをコードする核酸の、少なくとも10、25、50、100、200または250個の隣接するヌクレオチドに相補的な配列を含む核酸を提供する。ある特定の態様において、低ストリンジェントな条件下でOMP21ポリペプチドをコードする核酸(例えば、配列番号10または12を有するもの)、またはOMP21由来ポリペプチドをコードする核酸とハイブリダイズすることのできる核酸を提供する。
【0106】
限定するためではなく、例示として、そのような低ストリンジェントな条件を用いた方法は以下の通りである(ShiloおよびWeinberg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6789-6792も参照のこと)。すなわち、DNA含有フィルターを、35%ホルムアミド、5X SSC、50 mMトリス-HCl (pH 7.5)、5 mM EDTA、0.1% PVP、0.1% Ficoll、1% BSAおよび500μg/mlの変性サーモン精子DNA含有溶液で、40℃で6時間前処理する。以下の変更を加えた同様の溶液でハイブリダイゼーションを行う。すなわち、0.02% PVP、0.02% Ficoll、0.2% BSA、100μg/mlのサーモン精子DNA、10% (wt/vol)硫酸デキストラン、および5-20X 106 cpm 32Pで標識したプローブを用いた。フィルターをハイブリダイゼーション混合液で、18〜20時間40℃でインキュベートして、その後、2X SSC、25mMトリス‐HCl (pH 7.4)、5mM EDTAおよび0.1% SDS含有溶液で1.5時間55℃で洗浄する。洗浄液を新しい液と取り替えて更に1.5時間60℃でインキュベートする。フィルターをブロットして乾燥させ、オートラジオグラフィーで露光する。必要であれば、フィルターを65〜68℃で3回目の洗浄を行い、再度フィルムに露光する。用いうるその他の低ストリンジェントな条件は、当技術分野で公知である(例えば異種間のハイブリダイゼーションに用いられるような条件)。
【0107】
その他の特定の実施形態において、高ストリンジェントな条件下でOMP21ポリペプチドまたはOMP21由来ポリペプチドをコードする核酸とハイブリダイズしうる核酸を提供する。限定するためではなく、例示として、そのような高ストリンジェントな条件を用いた方法は以下の通りである。すなわち、DNA含有フィルターのプレハイブリダイゼーションを、6X SSC, 50 mMトリス-HCl (pH 7.5), 1mM EDTA, 0.02% PVP, 0.02% Ficoll, 0.02% BSAおよび500μg/mlの変性サーモン精子DNA含有バッファーで、8時間から一晩65℃で行う。フィルターを、100μg/mlの変性サーモン精子DNAおよび5-10×106 cpmの32Pで標識したプローブを含有したプレハイブリダイゼーション混合液で48時間65℃でハイブリダイズさせる。フィルターを、2X SSC, 0.01% PVP, 0.01% Ficollおよび0.01% BSA含有溶液で、37℃で1時間洗浄する。これに続いて、オートラジオグラフィーを行う前に、0.1X SSCで、50℃で45分間洗浄する。用いうるその他の高ストリンジェントな条件は、当技術分野で公知である。
【0108】
その他の特定の実施形態において、適度にストリンジェントな条件下でOMP21ポリペプチドまたはOMP21由来ポリペプチドをコードする核酸とハイブリダイズしうる核酸を提供する。
【0109】
核酸のハイブリダイゼーションを促進するその他の様々なストリンジェントな条件を用いうる。例えば、6X SSCで約45℃でハイブリダイゼーションを行い、続いて2xSSCで50℃で洗浄しうる。あるいは、洗浄段階での塩濃度は、50℃で約5xSSCという低ストリンジェントな条件から、50℃で約2xSSCという中程度のストリンジェントな条件、50℃で約0.2x SSCという高ストリンジェントな条件まで変化しうる。更に洗浄段階での温度は、室温という低ストリンジェントな条件から、約42℃の中程度にストリンジェントな条件、約65℃の高ストリンジェントな条件にまで上昇させうる。その他の条件は、0.5M NaHPO4 (pH 7.2)/1mM EDTA/7% SDSで68℃でハイブリダイズするか、または50%ホルムアミド/0.25M NaHPO4 (pH 7.2)/0.25M NaCl/1mM EDTA/7% SDSでハイブリダイズし、続いて、40mM NaHPO4 (pH 7.2)/1mM EDTA/5% SDSで42℃で洗浄するか、または40 mM NaHPO4 (pH 7.2)/1mM EDTA/1% SDSで50℃で洗浄するなどの条件があるが、それらに限定されない。温度、塩濃度を両方変化させることもでき、あるいは一方は変化させて、どちらかを変化させずに一定にしておいてもよい。
【0110】
低、中程度、高ストリンジェントな条件は当業者に公知であり、特定の核酸配列の塩基組成、および該核酸がどの生物に由来しているかによって変化するであろう。そのような条件に関する手引きは、例えば、Sambrookら, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press, N.Y., pp. 9.47-9.57;およびAusubelら, 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照のこと。
【0111】
限定はしないがNMAP由来ポリペプチドをコードする核酸のフラグメントまたはその一部(5.2節参照)など、NMAP由来ポリペプチドをコードする核酸およびOMP21アンチセンス核酸を更に提供する。容易に分かるように、本明細書で用いる「OMP21ポリペプチドまたはOMP21由来ポリペプチドをコードする核酸のフラグメントまたはその一部をコードする核酸」とは、列挙したOMP21ポリペプチドまたはOMP21由来ポリペプチドをコードする核酸のフラグメントまたはその一部のみをコードする核酸を指しており、OMP21ポリペプチドまたはOMP21由来ポリペプチドタンパク質をコードする核酸のその他の隣接部分も連続的な配列としてコードする核酸ではないことが理解されよう。
【0112】
上述の核酸と実質的に相同性のヌクレオチド配列も包含する。本明細書で使用する場合、「実質的に相同性の」配列は、当技術分野で公知のコンピューター相同性プログラムまたは検索アルゴリズムによってアライメントまたは比較を行うと、サイズが同一の参照配列と、少なくとも70%、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上同一である。
【0113】
有用なコンピューター相同性プログラムの例として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる。Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)(www.ncbi.nlm.nih.gov)( Altschulら、1990, J. Molec. Biol., 215:403-410,「BLASTアルゴリズム」;Altschulら、1997, Nuc. Acids Res. 25:3389-3402) 。これは、KarlinおよびAltschulの統計的方法(1990, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 87:2264-68; 1993, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 90:5873-77)を用いて、優位性があると認められる配列類似性について検索するように作られたヒューリスティックな検索アルゴリズムである。5つの特定のBLASTプログラムが提供され、BLASTNプログラムはヌクレオチド検索配列をヌクレオチド配列データベースに対して比較する。有用な別のアルゴリズムとしては、Smith-WatermanおよびFASTAアルゴリズムがある。詳細については、ヌクレオチド(および/またはアミノ酸)配列のパーセント同一を決定するための有用なコンピューター相同性アルゴリズムおよびパラメーターについてのさらなる例および説明を記載している第5.1節を参照されたい。
【0114】
1つの態様において、本発明の核酸は、当該分野で公知の方法を使用して合成されうる。具体的には、OMP21のアミノ酸配列の一部またはすべてを、当業者に公知の技術(例えば、エドマン分解法(例えば、Creighton, 1983, Proteins: Structures and Molecular Principles, W.H. Freeman & Co., N.Y., pp. 34-49))を使用して決定してもよい。得られるアミノ酸配列は、通常の化学的アプローチまたは重複DNA断片のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を使用して、オリゴヌクレオチドからOMP21をコードするDNAを合成するための指針として使用される。
【0115】
別の態様において、アミノ酸配列は、縮重オリゴヌクレオチドの合成のための指針として使用でき、これはまた、モラクセラ・カタラーリスゲノムライブラリー中のOMP21コード配列についてスクリーニングするために使用することができる。このようなライブラリーは、任意のモラクセラ・カタラーリス株の細胞からDNAを単離することにより調製されうる。好ましくは、ゲノムライブラリーおよびPCR増幅の両方のための、OMP21ポリペプチドコード配列の供給源として使用されるDNAは、モラクセラ・カタラーリス株(ATCC49143、ATCC25238、ATCC25240、ATCC43617、ATCC43618、ATCC43627、およびATCC43628を含むが、これらに限定されない)の細胞から調製される。
【0116】
ゲノムライブラリーの調製において、DNA断片が作成され、その一部は、モラクセラ・カタラーリスOMP21の一部またはすべてをコードするであろう。該DNAは、種々の制限酵素を使用して特定の部位で切断されてもよい。あるいは、マンガンの存在下でDNaseを使用してDNAを断片化するか、または超音波処理によりDNAを物理的に剪断することができる。次にDNA断片は、標準的方法(例えば、アガロースゲル電気泳動およびポリアクリルアミドゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィーおよびショ糖勾配遠心分離があるが、これらに限定されない)により、サイズに従って分離することができる。次にDNA断片を適切なベクター(プラスミド、コスミド、バクテリオファージラムダまたはT、および酵母人工染色体(YAC)があるが、これらに限定されない)に挿入することができる。(例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York; Glover, D.M. (ed.), 1985, DNA Cloning: A Practical Approach, MRL Press, Ltd., Oxford, U.K. Vol. I, II.)。ゲノムライブラリーは、標識プローブに対する核酸ハイブリダイゼーションによりスクリーニングされうる(Benton and Davis, 1977, Science 196:180; Grunstein and Hogness, 1975, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 72:3961)。
【0117】
ゲノムライブラリーは、当該分野で公知の最適なアプローチを使用して、OMP21の任意のペプチドのアミノ酸配列または任意のその相補体に対応する、スクリーニングプローブとしての標識縮重オリゴヌクレオチドでスクリーニングされうる。あるいは、その断片をプローブとして使用しうる。使用されるプローブは好ましくは、15ヌクレオチドまたはそれより長い。
【0118】
OMP21をコードする挿入体DNAを有するライブラリー中のクローンは、1以上の縮重オリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズするであろう。ゲノムライブラリーに対するこのようなオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションは、当該分野で公知の方法を使用して行われる。例えば、ハイブリダイゼーションは、50℃で2×SSC、1.0%SDSで行われ、同じ条件下で洗浄される。
【0119】
さらに別の態様において、OMP21の一部またはすべてをコードするヌクレオチド配列のクローンはまた、モラクセラ・カタラーリス発現ライブラリーをスクリーニングして得られる。例えば、モラクセラ・カタラーリスDNAは単離され、ランダム断片が調製され、発現ベクター(例えばバクテリオファージ、プラスミド、ファージミドまたはコスミド)に連結され、その結果ベクター中の挿入された配列は、続いてベクターが宿主細胞に導入されることにより発現されうる。次に種々のスクリーニングアッセイを使用して、発現されたOMP21について選択する。ある例では、当該分野で公知の方法を使用して所望のクローンを同定するのに、本発明の種々の抗OMP21抗体(第5.5節を参照)が使用できる。例えば、Harlow and Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring harbor, NY. Appendix IVを参照。このライブラリーからのクローンまたはプラークを抗体と接触させて、結合するクローンを同定する。
【0120】
ある実施形態では、OMP21をコードするDNAを含有するコロニーまたはプラークは、Olsvick et al., 29th ICAAC, Houston, Tex. 1989(引用により本明細書中に組み込まれる)に従って、DYNAビーズを使用して検出することができた。抗OMP21抗体は、トシル化されたDYNAビーズM280に架橋され、これらの抗体含有ビーズは次に、OMP21を発現するコロニーまたはプラークに、その粒子上またはコロニー表面で吸着させるために使用されるであろう。OMP21を発現するコロニーまたはプラークは、ビーズを結合するものとして同定される。
【0121】
あるいは、抗OMP21抗体は、適当な支持体(例えば、シリカまたはセライト(商標)樹脂)に非特異に固定化される。次にこの物質は、前段落で説明したようにOMP21を発現する細菌コロニーに吸着させるために使用される。
【0122】
別の態様では、PCR増幅を使用して、モラクセラ・カタラーリスゲノムDNAからのOMP21の一部またはすべてをコードする実質的に純粋なDNAを産生する。既知のOMP21ポリペプチドアミノ末端配列に対応するオリゴヌクレオチドプライマー(縮重であってもなくても)は、5’プライマーとして使用できる。カルボキシ末端をコードするDNA配列の逆相補体であるオリゴヌクレオチド配列(縮重であってもなくても)は、 3’プライマーとして使用する。
【0123】
PCRは、例えばPerkin-Elmer Cetus サーマルサイクラーとTaqポリメラーゼ(Gene Amp(商標))を使用して行うことができる。PCR反応で使用するために、いくつかの異なる縮重プライマーを合成することを選択できる。またPCR反応をプライミングするために使用されるアニーリング条件のストリンジェンシーを変更して、モラクセラ・カタラーリスDNA中の、縮重プライマーと対応する配列との間のヌクレオチド配列の類似性の程度を大きくまたは小さくすることができる。OMP21ポリペプチドをコードする配列のセグメントがうまく増幅された後、このセグメントを分子的にクローン化し配列決定し、完全なゲノムクローンを単離するためのプローブとして使用することができる。次にこれは、既に記載したように、遺伝子の完全なヌクレオチド配列の決定、その発現の解析、および機能的解析のためのそのタンパク質生成物の産生を可能にする。
【0124】
1つのモラクセラ・カタラーリス株または品種(cultivar)から、OMP21ポリペプチドコード配列がいったん単離されると、他のモラクセラ・カタラーリス株および品種から、OMP21ポリペプチドコード配列を単離するために、同じアプローチを使用することができる。本発明のOMP21ポリペプチド(またはその断片)をコードするDNAまたはRNA配列を使用して、当該分野で公知の一般的技術を使用して、および上述のようにして、中程度から高ストリンジェントな条件下でこれにハイブリダイズする他のDNAまたはRNA配列を得ることができることは、当業者は理解できるであろう。
【0125】
高ストリンジェントな条件下での1つのモラクセラ・カタラーリス株または品種からのOMP21配列とのハイブリダイゼーションにより、他の菌株および品種からの対応する配列が同定されるであろう。高ストリンジェントな条件は、プローブの長さと塩基組成により変わる。そのような条件を決定するための公式は、当該分野で公知である。Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, NY, Chapter 11を参照。本明細書において、300塩基対より長いプローブに適用される高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件では、0.1×SSC/0.1%SDSで68℃で少なくとも1時間、最終洗浄を行う(Ausubel, et al., Eds., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. I, Greene Pbulishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc. New York, page 2.10.3)。具体例では、ハイブリダイゼーションにおける高ストリンジェントな洗浄は、2×SSC、1%SDS、50℃で約20〜約30分である。
【0126】
当業者は、当該分野で公知のアプローチを使用して、OMP21ポリペプチドコード配列の完全なクローンを同定することができるであろう。単離されたクローン中に含有されるOMP21ポリペプチドコード配列の程度は、クローン化された挿入体を配列決定し、オープンリーディングフレーム(ORFs)によりコードされるポリペプチドの推定サイズを、OMP21のサイズと比較することにより、および/または推定アミノ酸配列を、精製されたOMP21の既知のアミノ酸配列と比較することにより、確認される。OMP21ポリペプチドコード配列の部分クローンが単離されれば、部分的クローンの挿入体をハイブリダイゼーションプローブとして使用して、完全なクローンが単離されるであろう。あるいは、完全なOMP21コード配列は、重複した挿入体をアライメントすることにより、部分クローンから再構成することができる。
【0127】
完全なクローンは、OMP21のアミノ酸配列に一致する推定アミノ酸配列を有するORFを有する任意のものであるか、または、OMP21の完全なアミノ酸配列が入手できない場合は、OMP21のペプチド断片のアミノ酸配列に一致する推定アミノ酸配列を含むORFを有し、かつそのORFの産物がOMP21と一致する分子量を有するものである。さらに、完全なクローンは、これらのインサートが発現ベクター中に配置された場合に、OMP21のアミノ末端に特異的な抗体およびOMP21のカルボキシル末端に特異的な抗体に結合するポリペプチドを生ずる能力により同定される。
【0128】
OMP21をコードする核酸配列は、当該分野で周知の方法により作製される。1つの態様では、OMP21をコードする配列は、本明細書に開示する教示を考慮して、組換えDNA法により得られる。例えば、OMP21のコード配列を改変して、OMP21の免疫原性に影響を与えないアミノ酸置換、または免疫原性を改良するアミノ酸置換を引き起こす。様々な方法が使用でき、オリゴヌクレオチド指向性部位特異的突然変異誘発が挙げられるが、これに限定されない。上記および当該分野で公知の他の技術を用いて、BotsteinおよびShortle, 1985, Science 229:1193-1210に記載される、置換、挿入、欠失、および転位のような単一のまたは複数の突然変異を引き起こしうる。
【0129】
さらに、OMP21コード配列を有するDNAは、制限酵素またはエキソヌクレアーゼ消化により末端を切り詰めてもよい。ライゲーションまたはPCR増幅により、OMP21コード配列に異種コード配列を付加してもよい。さらに、OMP21の全体または一部をコードするDNAは、OMP21の既知または推定アミノ酸配列、およびこの配列に対する所望の変更に基づき、化学的にまたはPCR増幅を使用して合成しうる。
【0130】
OMP21コード配列を含有する同定かつ単離されたDNAは、適当なクローニングベクター中に挿入されうる。当該分野で公知の多数のベクター-宿主系が使用できる。可能性のあるベクターには、プラスミドまたは改変ウイルス(しかし、これらに限定されない)があるが、ベクター系は使用される宿主細胞と適合性がなければならない。そのようなベクターには、ラムダ誘導体のようなバクテリオファージ、またはpBR322もしくはpUCプラスミド誘導体のようなプラスミドがあるが、これらに限定されない。クローニングベクターへの挿入は、例えば、相補的な付着末端を有するクローニングベクターにDNA断片を連結することにより行われる。しかし、DNAを断片化するために使用するものと相補的な制限部位がクローニングベクター中に存在しない時、DNA分子の端部は酵素的に改変してもよい。あるいはまた、ヌクレオチド配列(リンカー)をDNA末端に連結することにより、任意の所望部位を作製してもよく、これらの連結されたリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードする特定の化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを含有していてもよい。別の方法では、切断したDNAを、ホモポリマーテイリングにより修飾してもよい。組換え分子は、形質転換、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーションなどにより宿主細胞中に導入することができ、その結果、その遺伝子配列の多くのコピーが作製される。
【0131】
別の方法では、OMP21コード配列を含有する所望のDNAは、「ショットガン」法で適当なクローニングベクター中に挿入後、同定および単離される。例えばサイズ分画による所望の配列の富化を、クローニングベクターへの挿入前に行ってもよい。
【0132】
特定の実施形態では、OMP21コード配列を含有する組換えDNA分子による宿主細胞の形質転換により、そのようなコード配列の多くのコピーの作製を可能にする。すなわち、形質転換体を増殖させ、形質転換体から組換えDNA分子を単離し、必要に応じて、単離された組換えDNAから挿入されたコード配列を回収することにより、コード配列が多量に得られる。
【0133】
5.8.OMP21の組換え産生
OMP21は、遺伝子工学技術により産生されうる。この場合、OMP21は、このポリペプチドをコードするDNAにより形質転換されている適当な宿主細胞により産生される。OMP21をコードするヌクレオチド配列は、適当な発現ベクター(すなわち、挿入されたポリペプチドコード配列の転写と翻訳に必要なエレメントを含有するベクター)中に挿入することができる。OMP21をコードするヌクレオチド配列は、適切な条件下で(例えば、正しい配向および正確なリーディングフレームで、かつRNAポリメラーゼ結合配列およびリボソーム結合配列を含む適当な発現配列によって)発現されるようにベクター中に挿入される。
【0134】
ポリペプチドコード配列を発現させるために、様々な宿主細胞-ベクター系が利用できる。これらには、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)を感染させる哺乳動物細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)を感染させる昆虫細胞系;酵母ベクターを含有する酵母、またはバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNAで形質転換された細菌のような微生物があるが、これらに限定されない。好ましくは、宿主細胞は細菌であり、最も好ましい細菌は、大腸菌(E. coli)、枯草菌(B. subtilis)またはサルモネラ菌(Salmonella)である。
【0135】
宿主細胞と互換性のある種由来のレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターを、発現系でOMP21をコードする遺伝子を発現させるのに使用できる。発現ベクターは、挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを全て含んでいる。ベクターは、通常、複製部位、および形質転換細胞において表現型選択を可能にする標識配列を有する。例えば、大腸菌は、アンピシリン耐性細胞およびテトラサイクリン耐性細胞とするための遺伝子を含むpBR322を用いて形質転換できる。別の例としては、pTrc99A、pUC19、pUC18、pKK223-3、pEX1、pCAL、pET、pSPUTK、pTrxFus、pThioHis、pTrcHis、pTrcHis2およびpLExが挙げられるが、これらに限定されない。プラスミドまたはファージはまた、宿主細胞が自身のタンパク質を発現するために使用できるプロモーターも含むか、それを含むように改変しなければならない。
【0136】
さらに、宿主と適合するレプリコンおよび制御配列を含むファージベクターは、これらの宿主と共に用いて形質転換ベクターとして使用できる。例えば、ラムダGEMTM-11中のファージは、大腸菌LE392などの宿主細胞を形質転換するのに用いることのできる組換えファージベクターを作製するのに利用できる。
【0137】
組換えDNA構築に一般的に使用されるプロモーターとしては、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーター系、ならびに米国特許第4,952,496号に記載されているT7プロモーター系などの他の微生物プロモーターが挙げられる。プロモーターのヌクレオチド配列に関する詳細は公知であり、当業者はそれらを遺伝子と機能的に連結できる。使用される特定のプロモーターは、通常、所望の結果に応じて選択されるものである。OMP21遺伝子、その断片、その類似体またはその変異体の発現に適した宿主、例えば、大腸菌、バチルス(Bacillus)属、ヘモフィルス(Haemophilus)、菌類、酵母、ボルデテラ(Bordetella)、またはバキュロウイルス発現系が用いられうる。
【0138】
ベクターの発現エレメントは、その効力と特異性が様々である。使用する宿主-ベクター系に応じて、多数の適切な転写および翻訳エレメントのうちの任意のものが使用されうる。特定の実施形態では、OMP21配列ならびに宿主細胞のプレおよび/またはプロ配列を含むキメラタンパク質が発現される。他の特定の実施形態では、OMP21配列とアフィニティ精製ペプチドを含むキメラタンパク質が発現される。別の特定の実施形態では、OMP21および有用な免疫原性ペプチドまたはポリペプチドを含むキメラタンパク質が発現される。好適な実施形態において、発現されたOMP21は、天然OMP21の外表面エピトープまたは受容体結合ドメインを形成する配列を含有する。
【0139】
ベクターにDNA断片を挿入するための当該分野で公知の任意の方法を使用して、適当な転写/翻訳制御シグナルおよびポリペプチドコード配列からなるキメラ遺伝子を含有する発現ベクターを構築できる。これらの方法には、in vitro組換えDNAおよび合成法ならびにin vivo組換え体(遺伝子組換え)がある。OMP21をコードする核酸配列の発現は、第2の核酸配列により調節して、挿入された配列が組換えDNA分子で形質転換された宿主中で発現されるようにしてもよい。例えば、挿入された配列の発現は、当該分野で公知の任意のプロモーター/エンハンサーエレメントにより制御されうる。挿入された配列の発現を制御するために使用されうるプロモーターには、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、動物細胞での発現のためのSV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’側の末端反復配列中に含有されるプロモーター(Yamamotoら, 1980, Cell 22:787-797)、ヘルペス・チミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら, 1982, Nature 296:39-42);細菌細胞中での発現のためのβ-ラクタマーゼのプロモーター(Villa-Kamaroffら, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727-3731)、tac(DeBoerら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:21-25)、λPL、またはtrc(Scientific American, 1980, 242:74-94中の「組換え細菌からの有用なタンパク質」(Useful proteins from recombinant bacteria)も参照);植物細胞中での発現のためのノパリン・シンセターゼプロモーター領域またはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardnerら, 1981, Nucl. Acids Res. 9:2871)、および、光合成酵素リブロースビスリン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrellaら, 1984, Nature 310:115-120);Ga14プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターなどの酵母または他の菌類由来のプロモーターエレメント。
【0140】
OMP21コード配列を含有する発現ベクターは、以下の3つの一般的アプローチにより同定することができる:(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子の機能の有無、および(c)挿入された配列の発現。第1のアプローチでは、発現ベクターに挿入された外来遺伝子の存在を、挿入されたOMP21コード配列に相同な配列を含むプローブを使用して、核酸ハイブリダイゼーションにより検出できる。第2のアプローチでは、ベクターへの外来遺伝子の挿入により引き起こされる特定の「マーカー」遺伝子の機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける封入体形成など)の有無に基づき、組換えベクター/宿主系を同定し選択できる。例えば、OMP21コード配列がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入されると、インサートを含有する組換え体はマーカー遺伝子の機能の欠如により同定することができる。第3のアプローチでは、組換え体により発現される外来遺伝子産物をアッセイすることにより、組換え発現ベクターを同定することができる。このようなアッセイは、in vitroアッセイ系でのOMP21の物理的または機能的性質(例えばOMP21リガンドもしくは受容体への結合、または本発明の抗OMP21抗体との結合)に基づくものである。
【0141】
特定の組換えDNA分子が同定され単離されると、当該分野で公知のいくつかの方法を使用してこれを増やすことができる。適当な宿主系と増殖条件が確立されると、組換え発現ベクターを多量に増殖し調製することができる。前述したように、使用される発現ベクターには、以下のベクターまたはその誘導体があるが、これらに限定されない。すなわち、一部ではあるが列記すると、ヒトまたは動物ウイルス(例えば、ワクシニアウイルスまたはアデノウイルス);昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルス);酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えば、ラムダ)、ならびにプラスミドおよびコスミドDNAベクターがある。
【0142】
さらに、挿入された配列の発現をモジュレートする宿主細胞株、または所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾しプロセシングする宿主細胞株を選択してもよい。特定のプロモーターからの発現は、特定のインデューサーの存在下で増加させることができる;すなわち、遺伝子工学的に作製したOMP21の発現は、制御されうる。さらに、異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳時および翻訳後プロセシングおよび修飾に対して特徴的かつ特異的な機構を有する。適当な細胞株または宿主系は、発現される外来タンパク質の所望の修飾およびプロセシングを確実にするように選択することができる。
【0143】
5.9.用途
本発明は、多くの用途を有している。例えば、本発明を限定するものではないが、本発明のOMP21、抗体、および核酸は、モラクセラ・カタラーリス感染の臨床的または医学的診断、ならびにモラクセラ・カタラーリスの病原性、毒性、および感染性といった特性および宿主防御機構に関する科学的研究のための試薬として有用である。例えば、本発明のDNAおよびRNAは、ハイブリダイゼーションまたはPCR増幅により生体試料中のモラクセラ・カタラーリスの存在を同定するためのプローブとして使用することができる。このDNAおよびRNAはまた、モラクセラ・カタラーリスOMP21に近縁なポリペプチドをコードする可能性のある他の細菌を同定するのに使用することができる。
【0144】
本発明のOMP21は、本発明のポリペプチドを含有する組成物をアフィニティクロマトグラフィーによりさらに精製するために使用することができるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を調製するのに使用されうる。このポリペプチドおよびペプチドはまた、試料中のモラクセラ・カタラーリスに対する抗体の存在についてスクリーニングするための標準的なイムノアッセイで使用することができる。本発明の細胞傷害抗体は、モラクセラ・カタラーリス感染に対する受動免疫に有用である。OMP21およびOMP21をコードする核酸は、ワクチンなど、モラクセラ・カタラーリス感染を治療または予防するための医薬組成物中の有効成分としてさらに使用できる。
【0145】
特定の問題または環境に対する本発明の教示の応用は、本明細書中に記載の教示を考慮すれば当業者の能力の範囲内にあることが理解されよう。
【0146】
以下の実施例は、あくまで例示のために記載されるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。形態の変更および等価物の置換は、便宜上行う副次的なものであるとみなされる。本明細書では、特定の用語を用いているが、これらの用語は、説明上用いられており、限定するものではない。
【0147】
本開示および実施例に明確に記載せずに使用した分子遺伝学、タンパク質生化学、および免疫学の方法は、科学文献に詳細に報告されており、十分に当業者の技量内にある。
【実施例】
【0148】
6.実施例:OMP21ポリペプチド、および、これをコードする遺伝子の単離と特徴づけ
6.1.材料と方法
6.1.1.OMP21の界面活性剤による抽出
モラクセラ・カタラーリスの各菌株を、4l用フラスコ内で、1lのミューラーヒントン流体培養基(Mueller Hinton broth)中で、200rpmにて35℃で増殖させた。外膜タンパク質(OMP)の調製は、細胞50mg(湿重量)をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の1.5%のn-オクチルβ-D-グルコピラノシド(即ち、オクチルグルコシド;OG)またはEmpigenBBTM(N-ドデシル-N,N-ジメチル-グリシン、CalBiochem) 0.67mlで30分間室温にて処理することにより単離した。細胞を5分間微量遠心分離によりペレットにし、上清を界面活性剤抽出物として使用した。多くのモラクセラ・カタラーリスの菌株から得たこれらの抽出物のタンパク質プロフィールを、分画遠心分離により単離した、モラクセラ・カタラーリスから外膜タンパク質類(OMPs)が高度に富化されているブレブ(即ち、外膜液胞)(MurphyおよびLoeb、1989、Microbial Pathogen. 6:159-174)のタンパク質プロフィールと比較すると、界面活性剤抽出物は、モラクセラ・カタラーリスの外膜タンパク質を主に含有していることを示す(図1)。このことは、ブレブから調製する外膜タンパク質に比べて、界面活性剤による抽出が、外膜タンパク質がより高収量で得られるより迅速な方法を提供することを示した。
【0149】
6.1.2.OMP21のアミノ末端配列決定
モラクセラ・カタラーリスATCC49143を、37℃にてミューラーヒントン流体培養基(Mueller Hinton broth)中で増殖させ、細胞を回収し、1mM硫酸マグネシウムを含むPBSに懸濁した。懸濁液を超音波処理し、低速で遠心分離した。その上清を高速で遠心分離して、ペレットを回収した。ペレットを、高速遠心分離により2回洗浄した。再懸濁したペレットは、SDSを含むPAGEサンプルバッファーと混合し、沸騰している水浴中で5分間インキュベートした。タンパク質は、SDSを含む12%のポリアクリルアミドゲル(PA)上で分離し、電気的ブロッティングによりPVDF膜に移し、つづいてクマシーブルー R-250にて染色した。その後、アミノ末端配列決定のために、膜のOMP21のバンドを含む領域を切り出した。
【0150】
6.1.3.抗OMP21抗血清
OMP21に対する抗血清を、DEAE SEPHAROSETMイオン交換クロマトグラフィーカラムにて、モラクセラ・カタラーリス株ATCC49143のOG抽出物からOMP21ポリペプチドを分離することにより調製した。OMP21を含む画分をウサギに注射して、OMP21ポリペプチドに対する抗血清を作成した。さらに、アフィニティー精製抗体を調製するために、モラクセラ・カタラーリスから得たブレブをウサギに注射し、OMP21を固定化した臭化シアン活性化アガロースゲルを用いて精製した。該ゲルは抗血清と反応し、非反応性の抗体およびタンパク質はゲルから洗い出した。反応性抗体は、100mMグリシン(pH 2.5)を用いて該ゲルから溶出した。溶出した抗体は、PBSで洗浄し濃縮した。該濃縮液は、モラクセラ・カタラーリスのOMP-21欠失突然変異体と反応させて、さらに精製した。6.1.4節に記載のウェスタンブロットにより、該抗血清を分析し、7節に記載の、モラクセラ・カタラーリスに対する補体媒介在性細胞傷害活性、および10節(後述)に記載の鼻咽頭結合性の阻害を試験した。
【0151】
6.1.4.ウェスタンブロット
モラクセラ・カタラーリスを、ミューラーヒントン流体培養基(Mueller Hinton broth)中で5%CO2下で35℃にて、48時間増殖させた。細胞を遠心分離により回収し、外膜タンパク質をOGを用いて抽出した。抽出物は、その後、150μlのPAGEサンプルバッファー(4%ドデシル硫酸ナトリウムおよび20%グリセロールを含有する360mM Trisバッファー[pH 8.8])に懸濁して混合し、懸濁液を100℃で5分間インキュベートした。可溶化した細胞を、Laemmliに従って4-20%濃度勾配ポリアクリルアミドゲル上で分離した。分離されたタンパク質を、1.5時間100Vで、電気泳動的にPVDF膜に転写した。これは、ゲルからのタンパク質の移動を促進するために、0.05%ドデシル硫酸ナトリウムを転写バッファーに添加した以外はすでに報告されている方法(Thebaine et al. 1797, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 4350-4354) に従った。続いて、PVDF膜は、0.5%カゼインナトリウム、0.5%ウシ血清アルブミン、および1%ヤギ血清を含む、ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水25mlで前処理した。以後のインキュベーションは全て、この前処理バッファーを用いて行った。
【0152】
PVDF膜を、OMP21ポリペプチド(上記)を免疫したウサギから得た血清を1:500希釈液25mlとともに、室温で1時間インキュベートした。PVDF膜はその後、洗浄バッファー(150mM 塩化ナトリウム、0.05% Tween-20を含有する20mM Trisバッファー [pH7.5])で2回洗浄した。PVDF膜を、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG (Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove Penn. カタログ番号;111-035-003)の1:5000希釈液25mlとともに、室温で30分間インキュベートした。PVDF膜は、その後、洗浄バッファーで4回洗浄し、Sigma Chemical Co. (St. Louis, Mo.カタログ番号D-4418)により供給される、3,3'ジアミノベンジジン四塩化物および過酸化尿素を用いて、各4分間ずつ発色させた。
【0153】
6.1.5.OMP21の外表面局在性
モラクセラ・カタラーリスATCC49143は、35-37℃にて水浴振盪器を用いて、ミューラーヒントン流体培養基(Mueller Hinton broth)中で増殖させた。細胞を遠心分離によりペレット化した後、等容量の、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコ改変リン酸緩衝化生理食塩水に再懸濁した。細胞を炭酸結合バッファー(50mM 炭酸水素ナトリウム、pH9.6)中に希釈し、一部を96ウェルELISAプレートのウェルに入れ、2〜8℃で一晩保存した。翌日、PBS/Tweenでプレートを洗浄し、非特異的タンパク質ブロック剤とともにインキュベートした後、再び洗浄した。該ウェルを、抗OMP21抗血清または同一の動物から採取した免疫前血清を様々な希釈率にPBS/Tweenで希釈したもの100μl、あるいはPBS 100μlで、2時間処理し、その後、PBS/Tweenで3回洗浄した。マウスまたはウサギIgGに対するペルオキシダーゼ標識ヤギ抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、カタログ#111-035-003)の希釈液100μlでウェルを処理した。ウェルを1時間インキュベートし、PBS/Tweenで3回洗浄した。ペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard and Perry Laboratories, Inc, Gaithersburg, MD、カタログ番号50-76-00)を各ウェルに加え、10分間インキュベートして反応させた。基質停止溶液(Kirkegaard and Perry Laboratories, Inc, Gaithersburg, MD、カタログ番号50-85-05)を加え、450nmにおける吸光度を各ウェルについて測定した。
【0154】
6.2.結果
6.2.1.OMP21の外表面局在
マウス抗OMP21抗血清をELISAに用いて、モラクセラ・カタラーリス細胞の外表面上にOMP21ポリペプチドが露出しているかどうかを調べた。完全なモラクセラ・カタラーリス細胞は、抗OMP21抗血清と反応したが、免疫前血清またはPBSで処理した細胞は反応しなかった。このことは、完全なモラクセラ・カタラーリス細胞では、OMP21ポリペプチドが抗OMP21抗体と反応性を有することを示す。この結果により、OMP21ポリペプチドはモラクセラ・カタラーリスの外表面に露出していることが示される。この見解は、OMP21ポリペプチドが接着および鼻咽頭結合に関与していることと一致し、さらにOMP21ポリペプチドは、ワクチンとして有用であることを示す。
【0155】
6.2.2.OMP21ポリペプチドの特性
OMP21ポリペプチドは、外膜タンパク質である。この結論は、モラクセラ・カタラーリス細胞を界面活性剤で抽出するとOMP21ポリペプチドが可溶化するという知見により支持される。
【0156】
モラクセラ・カタラーリスのオクチルグルコシド抽出物を用いて、さらに該抽出物をドデシル硫酸ナトリウムとともに100℃でインキュベートし、変性ポリアクリルアミドゲルでタンパク質を分離すると、モラクセラ・カタラーリスの様々な菌株から得たOMP21ポリペプチドの見かけの分子量が推定できる。具体的には、ATCC25238、ATCC25240、ATCC43617、ATCC43618、ATCC43627、およびATCC43628のOMP21ポリペプチドの見かけの分子量は、約16kD〜約20kDの範囲内であると推定される(図2)。ATCC49143株のOMP21ポリペプチドはゲル切片から抽出して、配列決定を行った。ATCC49143の外膜から単離した成熟OMP21ポリペプチドN末端配列決定では、次の配列:AISYGNSADAQPYVGAKIGQVDAKQINGKNTAYGIYAGYN (配列番号1)が得られた。
【0157】
6.2.3.OMP21ポリペプチドの保存性
多くのモラクセラ・カタラーリスの菌株および関連する細菌種の外膜タンパク質抽出物のウェスタンブロット解析により、抗OMP21抗体が多くのモラクセラ・カタラーリス株の約16kD〜約20kDのポリペプチドに結合することが示された(図8)。これらの結果は以下のことを証明する:1)抗OMP21抗体を使用して、モラクセラ・カタラーリスを特異的に同定し、かつ関連する細菌種から区別することが可能である。モラクセラ・カタラーリスをOMP21がノックアウトされた突然変異体から区別するために、抗体が有用であることを示す図8を参照のこと。2)OMP21ポリペプチドは、モラクセラ・カタラーリスを同定するための診断的用途を有する抗体を作成するために使用できる。3)1つの菌株のOMP21ポリペプチド(例えば、ATCC49143のOMP21)に対する抗体は、他のモラクセラ・カタラーリス株の対応するOMP21ポリペプチドを同定し単離するために使用可能である。
【0158】
7.実施例:OMP21ワクチンの効果:抗OMP21抗血清の細胞傷害活性
OMP21ポリペプチドのワクチンとしての可能性を測定するために、抗OMP21抗体の補体媒介性細胞傷害活性を調べた。アフィニティー精製した、ATCC49143から得たOMP21に対する抗体は、前記6.1.4節で記載したように調製した。モラクセラ・カタラーリスの補体殺傷を媒介する免疫前血清と抗OMP21抗血清の活性を、Zolligerらの記載した「血清殺菌試験」(Serum Bactericidal Test)を使用して調べた(Manual of Clinical Laboratory Immnology, 第3版中の、Immune Responses to Neisseria meningitis、p347-349)が、髄膜炎菌(Neiseria meningitis)細胞の代わりにモラクセラ・カタラーリスの細胞を使用した。
【0159】
結果は、抗OMP21抗血清は、モラクセラ・カタラーリスATCC49143の補体殺傷を媒介したが、OMP21遺伝子の破壊されたモラクセラ・カタラーリスの欠失突然変異体についてはその補体殺傷を媒介しなかったことを示す。
【0160】
8.実施例:omp21遺伝子の単離
8.1.プライマーの製造
配列番号1に示される40個のアミノ酸配列を含むOMP21 N−末端配列情報に基づいて、縮重(degenerate)PCRプライマーを設計した。これらの縮重オリゴヌクレオチドプライマーの配列は以下の通りである:
GAY GCN CAR CCN TAY GT(128重の縮重) 配列番号2
TGY TTN GCR TCN ACY TG(128重の縮重) 配列番号3
GCN GAY GCN CAR CCN TAY GT(512重の縮重) 配列番号4
ATN CCR TAN GCN GTR TTY TT(512重の縮重) 配列番号5

PCR反応物(50μl)は、当業者に周知の方法で製造されたモラクセラ・カタラーリスのゲノムDNA 1μg、最終濃度0.5μMの各オリゴヌクレオチドプライマー、0.2 mMのdNTP、通常2 mM又は4 mMのいずれかのMg++、及び2単位のタグポリメラーゼを含んでいた。PCRは、下記サイクルプログラムを用いたアイダホ・ラピッドサイラー(Idaho Rapidcyler)中で行った:
保持1:94℃、1分間;
サイクル1-3:変性94℃、アニール55℃、伸長72℃、各30秒間で3サイクル;
サイクル4:変性94℃、アニール40℃、伸長72℃、各30秒間で35サイクル;
保持2:72℃、1分間

これらのプライマーペアを、モラクセラ・カタラーリスゲノムDNAを鋳型として用いるPCR反応をプログラムするために用いると、予想通り、それぞれ50及び80 bpのDNA断片を生産した。配列番号2及び3のプライマーペアを用いるPCR反応において80 bpのDNA断片を鋳型として用いて上記の50 bpのDNA断片を増幅することによって、予想される同じ遺伝子座から、これらの断片が増幅された。80 bpのDNA断片は、配列番号21で示される配列を有している。
【0161】
同じ鋳型、プライマー及びMg++条件を用いて非縮重プライマーを用いるPCR反応を行った。オリゴヌクレオチドプライマーペアの特異的アニーリング温度を計算し、増幅の35サイクルの間中用いた。増幅されたDNA断片の長さに従って伸長時間を調節した。
【0162】
8.2.抑制(suppression)PCR
ユニバーサル・ゲノム・ウォーカー・キット(Universal Genome Walker Kit、Clontech社製)及びTthポリメラーゼ・ミックス(Tth Polymerase Mix、Clontech社製)を用いて抑制PCRを行った。縮重プライマーPCRからの80 bpの増幅産物に対する共通配列に基づいて、重なり(nested)遺伝子特異的プライマーを設計した。このウォークのために設計された重なりオリゴヌクレオチドプライマー(28 mer)は下記の通りである:
CCC TAT GTT GGT GCC AAA ATT GGT CAA G (配列番号8)
AGA TGC CAA GCA AAT CAA CGG TAA GAA C (配列番号9)
GTT CTT ACC GTT GAT TTG CTT GGC ATC T (配列番号10)
CTT GAC CAA TTT TGG CAC CAA CAT AGG G (配列番号11)

初期増幅は、キットからのアンカープライマーAP1と配列番号8及び10それぞれとの組み合わせを用いて行った。PCR反応物(50μl)は、多数の6塩基対の平滑断端カッターによって完全に消化されたDNA 5 ngを含んでおり、次いでゲノムウォーカーアダプターに連結されていた。Mg++は1.1 mMであり、dNTPは0.2 mMの濃度で用いた。一次PCRのためのサイクル条件は下記の通りである:
サイクル1:変性94℃、2秒、アニール及び伸長72℃、3分で7サイクル;
サイクル2:変性94℃、2秒、アニール及び伸長67℃、3分で32サイクル;
保持:67℃、4分

二次PCR反応では、1/50希釈の一次PCR反応物の1μlを鋳型として用いた。キットからの重なりアンカープライマー2を、重なり遺伝子特異的プライマーである配列番号9及び11それぞれとの組み合わせで用いた以外は、反応物及びサイクルパラメーターは上記と同様であった。
【0163】
8.3.PCR産物の単離及びサブクローニング
20 bpのDNAラダー(ladder)(Invitrogen社製)をサイズマーカーとして用いて、3.5%ヌシーブアガロースゲル(NuSieve agarose gel、FMC Bioproducts社製)上で、縮重オリゴヌクレオチドプライマーによって生産されたPCR産物を分離した。適切なDNAバンドをゲルから切り取り、ジーンクリーン・グラスミルク(Geneclean Glassmilk、BIO 101)上で回収した。同じ手順を用いて1%アガロースゲルから抑制PCR産物を回収した。全てのゲル精製PCR産物を、EcoRV消化pBluescript II SK(20 ng)に連結し、TOP F’大腸菌コンピテント細胞中に電気穿孔により導入した。37℃、1時間でSOC培地(BRL社製)上での回収後、培養液のアリコートをLB/x-gal/IPTG/Ampプレート上にプレーティングし、37℃で一晩増殖させた。
【0164】
8.4.組換えプラスミドの同定
形質転換体由来の白色コロニーを、商業的に入手可能なT7及びT3プロモーターオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCR反応物中に直接選び入れた。挿入されない(insertless)コロニーは、〜160 bpのDNA増幅産物まで増加したが、50 bp及び80 bpのPCR増幅産物を有するプラスミドは、このアッセイで、それぞれ210及び240 bpのバンドを与えた。幾つかの陽性コロニーを増殖させ、(分子クローニング(Molecular Cloning)などの研究室用ハンドブックに記載されている)当業者に公知の方法によって高品質のプラスミドDNAを製造した。
【0165】
8.5.配列分析
蛍光ジデオキシターミネーション法(fluorescent dideoxytermination method)を用いて、組換えプラスミド中のインサートの配列を決定した。反応物をABIプリズム310ジェネティックアナライザー(ABI Prism 310 Genetic Analyzer)で分析した。T3及びT7プロモータープライマーを用いて、縮重オリゴヌクレオチドプライマーの50及び80 bpの増幅産物を、両方の鎖から配列決定した。抑制PCR由来の500及び1000 bpのDNA断片を同一のプライマーによって最初に配列決定した。完全なomp21のORF配列を得るために、幾つかの遺伝子特異的プライマーを合成し、配列を確認するために用いた。これらのオリゴヌクレオチドの配列を下記に示す:
GCG ACA AAA CCA GCC TAG (配列番号12)
GGT GTT GGT GTT GGC TTT (配列番号13)
CCC CTT TAA AAC ATC GCC AC (配列番号14)

omp21遺伝子全体のヌクレオチド配列は図3に示され、配列番号6として同定される。OMP21のオープンリーディングフレームの推定されるアミノ酸配列は図4に示され、配列番号7として同定される。
【0166】
9.実施例:組換えOMP21の製造
9.1.発現ベクターの構築
発現プラスミドpTrc 99A(Pharmacia社製)中へのクローニングを容易にするために、NcoI部位をOMP21 ORFの開始メチオニンの位置に導入した。DNA配列中のこの変更は、さらにリジンをグルタミン酸に変更することによりOMP21の第2コドンに影響を与える。この変更をより保存的にするために、第2コドンがアラニンをコードするように突然変異させた。OMP21の3’末端での突然変異は、6個のヒスチジンの伸びによって、次いで翻訳停止部位及びHindIII制限部位によってそのORFを拡張した。これらの変化は、下記に示す混合プライマー及び鋳型としてのモラクセラ・カタラーリスゲノムDNAを用いたPCRによって完全に導入された。
【0167】
gga cgc cat ggc aAC TTT AAA AAC ACT ATT GGC AGT ATC AGC TTC (配列番号15)
atc aag ctt agt gat ggt gat ggt gat gAA AAG CCA AAT GAG CGC (配列番号16)

得られた発現構築物をpOMP21xと称した。上記の突然変異を、改変されたインサートの5’及び3’末端を配列決定することによって確認した。
【0168】
9.2.OMP21の発現
発現プラスミドpOMP21xを含む大腸菌を、100 mg/mlのアンピシリンを含むL−培養液中で34℃で、550 nmでの吸光度が0.6になるまで増殖させ、次いでイソプロピルチオ β−ガラクトシダーゼを、1 mMの濃度まで添加した。培養物の増殖を3時間続けた。5000 g、10分間の遠心分離によって細胞を回収した。この細胞(1 g)をPBSに10%(重量/容量)まで懸濁させた。界面活性剤抽出(セクション6.1.2.に記載)及びセクション6.1.4.に記載のSDS-PAGEによって、これらの細胞由来のOMP21を製造した。
【0169】
10.実施例:omp21遺伝子の確認
10.1.omp21遺伝子−ターゲッティングカセットの構築
omp21遺伝子の2つのPCR増幅領域及びカナマイシン・レジスタンス・ジェンブロック(Kanamycin Resistance GenBlock、登録商標、Pharmacia社製)から遺伝子ターゲッティングカセットを組み立てた。プライマーペア、配列番号17及び配列番号18を用いて、ターゲッティング領域、5’からカナマイシン遺伝子までを増幅した。これらの混合プライマーは、モラクセラ・カタラーリスのゲノムDNA由来の〜550 bpのDNA断片を増幅し、それぞれSmaI及びPstI制限部位を、断片の末端に導入する。プライマー、配列番号19及び配列番号20を用いて、カナマイシン遺伝子からの3’ ターゲッティング領域を同様にして増幅した。これらの混合プライマーは、それぞれ末端にPstI及びSalI部位を有する〜1 kbのDNA断片を増幅した。PCR増幅の条件は下記の通りであった:
保持1:94℃、30秒;
サイクル:変性94℃、10秒、アニール60℃、15秒、伸長72℃、45秒で35サイクル
保持2:72℃、1分

PCRプライマーの配列(導入された制限部位には下線を付した)は、下記の通りである:
gacggcccgggCTGGTATCAATTGGCATAGGCGGTAAGTT (配列番号17)
catgctgcagCTTGACCAATTTTGGCACCAACATAGGG (配列番号18)
cactctgcagTAGACGCCAAGCAAATCAACGGTAAGAACA (配列番号19)
gcatgtcgacGTAGATGAGCTACAAGGCGTGATTTGGGAT (配列番号20)

増幅されたDNA断片を、それぞれSmaI及びPstI、又はPstI及びSalIで消化した。0.5 kbのSmaI/PstI DNA断片を、同じクローニング部位のプラスミドpCR−スクリプトAMP SK(+)(Stratagene社製)中にクローニングした。次いで、このインサートを有する組み換え体由来のミニプレップDNAを、PstI及びSalIで制限し、1 kbのPstI/SalIインサートに連結した。次いで、両者に隣り合う領域を有する組み換え体を、Pst Iによって線状にし、カナマイシンカセットを、〜1.2 kbのPstIインサートとして挿入した。機能性を試験するために、形質転換された細菌をKan(50μg/ml)LB寒天上にプレーティングした。得られたカナマイシン耐性コロニーから単離されたプラスミドを、Cla I及びSal Iによる制限消化によってカナマイシンインサートの配向性について分析した。Cla Iは、5’に隣接する0.5 kb断片中で及びカナマイシン耐性遺伝子中で非対称に一度切断する。従って、得られたプラスミドターゲッティング構築物を、pomp21 K.O.(カナマイシン耐性遺伝子及びomp21は、同じ方向に転写される)又はpomp21 O.K.(カナマイシン及びomp21転写は、それぞれ別の方向へ進む)と称する。
【0170】
10.2.コンピテントなモラクセラ・カタラーリス細胞の製造
モラクセラ・カタラーリスの細胞を光学密度(OD600 nm)1まで増殖させ、遠心分離(3000×g)によって回収し、次いで氷冷した蒸留水で2回、15%グリセロールで1回洗浄した。最終の細胞ペレットを、1-2 mlの15%グリセロール中に懸濁し、ドライアイス中で100μlのアリコートで迅速に凍結した。エレクトロコンピテントな(electrocompetent)細胞を−80℃で貯蔵した。
【0171】
10.3.コンピテントな細胞の電気穿孔
エレクトロコンピテントな細胞のアリコート(50μl)を、1μgのプラスミドDNAと混合し、0.1 cmの電気穿孔キュベットに移し、氷上に1分間保持した。その後、下記設定で電気穿孔パルスを与えた(delivered):1500 V、華氏50度及び150μ。パルスされた(pulsed)培養物を、直ちにミューラー−ヒントン(Mueller-Hinton)培地に移し、37℃で6時間インキュベートした。次いで、培養物のアリコートを選択培地プレート(5μg/mlのカナマイシンを含むミューラー−ヒントン培地)上に播き、コロニーが明瞭に見えるようになるまで(24-36時間)37℃でインキュベートした。細菌の無作為サンプルを拾い、再度、画線培養(restreaked)して単一のコロニーを得た。個々のコロニーを、2 mlの上記培養液中で増殖させ、PCR分析のためのゲノムDNAを製造するために用いた。
【0172】
10.4.推定のOMP21欠失突然変異体のPCR分析
KANRモラクセラ・カタラーリスコロニー由来のDNAを、プライマーペア、配列番号17及び配列番号18を用いたPCRによって分析した。伸長時間が最終伸長(保持2)と同じ2分であった以外は、PCR条件は、上記と同じであった。これらのプライマーは、wt DNA由来の〜1.6 kbのDNA断片及びノックアウト構築物由来の〜2.9 kbのDNA断片を増幅する。これらのプライマーは、推定上のノックアウト体の初期スクリーニングのみに用いた。プライマーの性質及び位置によって、このPCR分析は、無作為な又は相同な要素(integrants)の間で区別できなかった。このスクリーニングで陽性と判定された(scored)コロニーを、サザンブロット法によってさらに分析した。
【0173】
10.5.OMP21欠失突然変異体のサザン分析
モラクセラ・カタラーリスのDNAをPst Iで消化した。消化物を0.8%のTAE−アガロースゲル上で分離し、標準プロトコールを用いるナイロン膜に移した。ブロットを、プラスミドpCRスクリプト−omp21から放出された543 bpのNotI/ClaIインサートから製造された32P標識プローブにハイブリダイズさせた。このプローブを用いて、〜8 kbのこのDNA断片を野生型モラクセラ・カタラーリスDNAのPstI消化物中で検出する。同じプローブは、全てのノックアウト体中の〜4.5 kbの制限断片を検出する。結果を図6に示す。その結果、これは遺伝子座が相同組み換えによって改変されている証拠を構成する。
【0174】
11.実施例:omp21のRFLP分析
野生型モラクセラ・カタラーリス由来のゲノムDNAをHindIIIによって消化した。消化物を0.8%のTAE−アガロースゲル上で分離し、標準プロトコールを用いてナイロン膜に移した。ブロットを、omp21をコードする領域にわたる配列を含むクローニングベクターのClaIからNotIの断片から製造された32P標識プローブにハイブリダイズさせた。高ストリンジェンシー洗浄は、50℃で約20〜約30分、2X SSC、1% SDSであった。単一の1.8 kbの断片を試験した全株から検出した。結果を図5に示す。RFLPパターンの統一性は、OMP21遺伝子が、モラクセラ・カタラーリスで非常によく保存されていることを示す。
【0175】
12.実施例:モノクローナル抗OMP21抗体の生産と反応性
BALB/cマウスを、モラクセラ・カタラーリス由来の全外膜で免疫する。これらのマウス由来の脾臓細胞をSP2/0細胞に融合させ、HATを含む培養液によってうまくハイブリダイズしたものを選択することによって、モノクローナル抗体に対するハイブリドーマを製造した。モラクセラ・カタラーリスの全外膜の界面活性剤抽出物を含むELISAを用いて、反応性ハイブリドーマをスクリーニングした。このスクリーニングから、ELISAにおいて様々な活性レベルを有するハイブリドーマがクローン選択で選択され、精製されたOMP21及びモラクセラ・カタラーリスMC2926_OMP21由来の全外膜に対するモノクローナル抗体の活性がELISAによってアッセイされる。
【0176】
13.実施例:鼻咽頭(nasopharyngeal)細胞結合
Galan及びCurtiss(その全体が参照によって本明細書中に組み入れられる、J.E. Galan及びR. Curtiss III. 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6383-6387)によって報告された手順の修飾法を用いて永続的(continuous)細胞株HEp-2に対するモラクセラの結合をアッセイした。モラクセラ・カタラーリスMC2926株及びMC2954株を用いてHEp-2細胞に対するモラクセラの結合をアッセイした。MC2954株は、MC2926の同系株であるが、(上記セクション8の実施例で記載したように)OMP21が壊された遺伝子を有し、それによって、OMP21タンパク質発現のロスを引き起こす。
【0177】
簡単に言えば、これらの株を、ミューラー−ヒントン培養液中で中期対数増殖期(mid-log phase)まで増殖させた。次いで、培養物由来の細菌細胞を、単層のHEp-2細胞上で遠心分離し、1時間細胞に結合させた。非結合細胞を、カルシウムを含むハンクス(Hanks)平衡化(balanced)塩溶液で洗浄した。接着性の細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.1%グリココール酸ナトリウムで処理して単層で除去した。接着性細胞の数を、ミューラー−ヒントン寒天上にプレーティングし、細菌を24時間増殖させて数えた。細菌の結合能力を、HEp-2単層に添加した元の細菌の数に対する結合された細菌のパーセンテージとして表現し、下記表1に示す。
【0178】
【表1】

鼻咽頭細胞結合アッセイの結果は、OMP21が、モラクセラ・カタラーリスの鼻咽頭細胞への結合及び付着性の原因であることを示している。
【0179】
14.微生物の寄託
本明細書中に記載され、言及されているモラクセラ・カタラーリスのOMP21をコードする遺伝子のオープンリーディングフレームを含むプラスミドOMP21X(pOMP21X)を含む大腸菌Top10F’を、ブダペスト条約に従い、及び37 CFR 1.808に従ってこの出願の提出前の1998年9月16日に、アメリカ合衆国20110-2209バージニア州マナサス、ユニバーシティーブールバード10801所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託し、受託番号98878が与えられた。寄託されたもののサンプルは、この合衆国特許出願に基づく特許が許可されたときに公衆に入手可能となるであろう。
【0180】
寄託された具体物(embodiment)は、本発明の例示としてのみ意図されており、本明細書中に記載されクレームされる本発明は、寄託された微生物又はプラスミドの範囲によって限定されるものではない。この出願に記載されているような、任意の機能的同等物、又は、類似の若しくは同等のタンパク質、又は断片若しくはそのアナログをコードする類似の微生物若しくはプラスミドは、本発明の範囲内であることが意図されている。確かに、本明細書中に示され記載されたものに加えて、上記記載及び添付図面から、本発明の種々の修飾が当業者には明らかになるであろう。そのような修飾は、添付の請求の範囲内に入ることが意図されている。
【0181】
本発明の他の同等物は、当業者であれば容易に決定でき、そのような同等物は、本発明に含まれることが意図されている。上記開示は、当業者が、クレームされた発明を過度の実験無しに実施できるために必須と考えられる全ての情報を含む。引用した特許又は出版物は、さらに有用な情報を提供できるので、任意の及び全ての引用物の開示は、ここで、その全体を参照することによって本明細書中に組み入れられる。
【0182】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)株から得られ、SDS-PAGEで測定したときの見かけの分子量が約16kD〜約20kDである、配列番号7のアミノ酸配列を含む、単離されたまたは実質的に精製されたOMP21タンパク質、それに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むOMP21タンパク質、または10以上のアミノ酸残基を含むそのペプチド断片であって、前記OMP21タンパク質に特異的に結合する抗体に特異的に結合するペプチド断片。
【請求項2】
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)株から得られ、SDS-PAGEで測定したときの見かけの分子量が約16kD〜約20kDである、配列番号1のアミノ酸配列を含む、単離されたまたは実質的に精製されたOMP21ポリペプチド、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むOMP21ポリペプチド。
【請求項3】
OMP21タンパク質が外膜タンパク質である、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項4】
OMP21タンパク質が鼻咽頭細胞結合ドメインを有する、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項5】
モラクセラ・カタラーリス株が病原性の臨床分離株である、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項6】
OMP21タンパク質が少なくとも70重量%精製されたものである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項7】
配列番号1または7のアミノ酸配列を有するペプチドまたはその断片と特異的に結合する抗体調製物により認識される、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項8】
OMP21ポリペプチドと特異的に結合する抗体に特異的に結合する、請求項1に記載のOMP21タンパク質のペプチド断片であって、10以上のアミノ酸残基を含むペプチド断片。
【請求項9】
請求項1、2または8に記載のOMP21タンパク質をコードする単離された核酸分子、またはその相補的配列を含む単離された核酸分子。
【請求項10】
コードされるOMP21が配列番号1または7のいずれかのアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の核酸分子。
【請求項11】
下記の核酸配列:
a) 配列番号2〜6および8〜20のいずれかの核酸配列、その相補的配列、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、および
b) 配列番号1または7の推定アミノ酸配列をコードする核酸配列、その相補的配列、または配列番号1または7をコードする核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列、
より選択される配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項12】
ATCCに寄託されて受託番号98878を有する、大腸菌Top10F'(pOMP21X)から得られるプラスミドpOMP21X。
【請求項13】
請求項9、10もしくは11に記載の核酸分子、または請求項12に記載のプラスミドを含んでなる、宿主細胞を形質転換するための組換え発現ベクター。
【請求項14】
請求項9、10もしくは11に記載の核酸分子、およびOMP21の宿主による発現のために該核酸分子に機能的に連結された発現手段を含んでなる、宿主細胞を形質転換するための組換え発現ベクター。
【請求項15】
発現手段がOMP21の宿主細胞からの分泌または精製のためのリーダー配列をコードする核酸部分を含む、請求項14に記載の組換え発現ベクター。
【請求項16】
請求項13に記載の発現ベクターを含有する形質転換宿主細胞。
【請求項17】
請求項14に記載の発現ベクターを含有する形質転換宿主細胞。
【請求項18】
請求項16に記載の形質転換宿主細胞により産生される、単離された組換えOMP21。
【請求項19】
請求項17に記載の形質転換宿主細胞により産生される、単離された組換えOMP21。
【請求項20】
請求項9、10もしくは11に記載の核酸分子、または請求項12に記載のプラスミドを含んでなる、宿主にOMP21コード配列を送達するための組換えベクター。
【請求項21】
請求項9、10もしくは11に記載の核酸分子、およびOMP21の宿主による発現のために該核酸分子に機能的に連結された発現手段を含んでなる、宿主にOMP21コード配列を送達するための組換えベクター。
【請求項22】
請求項1に記載のOMP21タンパク質をコードする核酸を欠失させて転写されないように遺伝子操作されている、モラクセラ・カタラーリスの弱毒化または不活化品種。
【請求項23】
非付着性である、請求項22に記載の弱毒化または不活化品種。
【請求項24】
請求項1に記載のOMP21タンパク質およびOMP106をコードする核酸を欠失させて転写されないように遺伝子操作されている、モラクセラ・カタラーリスの弱毒化または不活化品種。
【請求項25】
非付着性である、請求項24に記載の弱毒化または不活化品種。
【請求項26】
有効量の下記成分:
a) モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)株から得られ、SDS-PAGEで測定したときの分子量が約16kD〜約20kDである、配列番号1または7のアミノ酸配列を含むOMP21ポリペプチド、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むOMP21ポリペプチド、
b) 配列番号7の10以上のアミノ酸残基を含むペプチド断片であって、配列番号7に特異的に結合する抗体に特異的に結合するペプチド断片、
c) 上記a)またはb)に示されるOMP21をコードする核酸分子、またはその相補的配列を含む核酸分子、
d) 配列番号6の配列を含む核酸分子、またはその相補的配列を含む核酸分子、それに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む核酸分子、
e) 上記c)またはd)で定義した核酸分子およびOMP21の宿主による発現のために該核酸分子に機能的に連結された発現手段を含む発現ベクターを含有する形質転換宿主から得られる、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)株から得られ、SDS-PAGEで測定したときの見かけの分子量が約16kD〜約20kDである、配列番号1または7のアミノ酸配列を含むOMP21、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むOMP21、
f) 上記c)またはd)の核酸を含む組換えベクター、および
g) 上記f)のベクターを含有する形質転換細胞、
からなる群より選択される少なくとも1種の成分と、
場合により1種以上のアジュバントと、場合により1種以上の製薬上許容される担体もしくは希釈剤とを含んでなる、予防用組成物、治療用組成物、またはワクチンを含む免疫原組成物でありうる医薬組成物。
【請求項27】
予防用組成物である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
治療用組成物である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項29】
OMP21をコードする核酸を欠失させて転写されないように遺伝子操作されている、モラクセラ・カタラーリスの弱毒化または不活化品種をさらに含んでなる、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項30】
OMP21およびOMP106をコードする核酸を欠失させて転写されないように遺伝子操作されている、モラクセラ・カタラーリスの弱毒化または不活化品種をさらに含んでなる、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記成分が脂質、炭水化物、タンパク質、弱毒化した全生物、および不活化した全生物からなる群より選択される他の成分1種以上と組み合わされているか、該成分に融合またはコンジュゲート化されている、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項32】
脂質がリン脂質である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
炭水化物がリポ多糖である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
全生物がモラクセラ属(Moraxella)、ナイセリア属(Neisseria)、シュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトコッカス属(Streptococcus)およびヘモフィルス属(Haemophilus)からなる群より選択される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記成分が他の成分と組み合わされており、他の成分がモラクセラ属、ナイセリア属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属またはヘモフィルス属由来のタンパク質もしくは炭水化物である、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項36】
他の成分がOMP106である、請求項31または35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
下記成分:
a) モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)株から得られ、SDS-PAGEで測定したときの分子量が約16kD〜約20kDである、配列番号1または7のいずれかのアミノ酸配列を含むOMP21、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むOMP21、
b) 配列番号7の10以上のアミノ酸残基を含むペプチド断片であって、配列番号7に特異的に結合する抗体に特異的に結合するペプチド断片、
c) 上記a)またはb)に示されるOMP21をコードする核酸分子、またはその相補的配列を含む核酸分子、
d) 配列番号6の配列を含む核酸分子、その相補的配列を含む核酸分子、それに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む核酸分子、、
e) 上記c)またはd)で定義した核酸分子と、OMP21の宿主による発現のために該核酸分子に機能的に連結された発現手段とを含む発現ベクターを含有する形質転換宿主から得られる、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)株から得られ、SDS-PAGEで測定したときの見かけの分子量が約16kD〜約20kDである、配列番号1または7のアミノ酸配列を含むOMP21、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むOMP21、
f) 上記c)またはd)の核酸分子を含む組換えベクター、および
g) 上記f)のベクターを含有する形質転換細胞、
からなる群より選択される少なくとも1種の成分と、
場合により1種以上のアジュバントと、場合により1種以上の製薬上許容される担体もしくは希釈剤とを含んでなり、宿主に投与したとき免疫応答を引き出す免疫原組成物。
【請求項38】
予防用組成物である、請求項37に記載の免疫原組成物。
【請求項39】
治療用組成物である、請求項37に記載の免疫原組成物。
【請求項40】
OMP21をコードする核酸を欠失させて転写されないように遺伝子操作されている、モラクセラ・カタラーリスの弱毒化または不活化品種をさらに含んでなる、請求項37に記載の免疫原組成物。
【請求項41】
OMP21およびOMP106をコードする核酸を欠失させて転写されないように遺伝子操作されている、モラクセラ・カタラーリスの弱毒化または不活化品種をさらに含んでなる、請求項37に記載の免疫原組成物。
【請求項42】
前記成分が脂質、炭水化物、タンパク質、弱毒化した全生物、および不活化した全生物からなる群より選択される他の成分1種以上と組み合わされているか、該成分に融合またはコンジュゲート化されている、請求項37に記載の免疫原組成物。
【請求項43】
全生物がモラクセラ属、ナイセリア属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属およびヘモフィルス属からなる群より選択される、請求項42に記載の免疫原組成物。
【請求項44】
前記成分が他の成分と組み合わされており、他の成分がモラクセラ属、ナイセリア属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属またはヘモフィルス属由来のタンパク質もしくは炭水化物である、請求項42に記載の免疫原組成物。
【請求項45】
他の成分がOMP106である、請求項42または44に記載の免疫原組成物。
【請求項46】
下記成分:
a) モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)株から得られ、SDS-PAGEで測定したときの分子量が約16kD〜約20kDである、配列番号1または7のいずれかのアミノ酸配列を含むOMP21ポリペプチド、それに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むOMP21ポリペプチド、または10以上のアミノ酸残基を含むそのペプチド断片であって、前記OMP21ポリペプチドに特異的に結合する抗体に特異的に結合するペプチド断片、
b) OMP21をコードする核酸分子、その相補的配列を含む核酸分子、またはそのいずれかの断片、
c) 配列番号6の配列を含む核酸分子、その相補的配列を含む核酸分子、それに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む核酸分子、またはその断片、
d) 上記a)で定義したOMP21をコードする核酸分子と、OMP21の宿主による発現のために該核酸分子に機能的に連結された発現手段とを含む発現ベクターを含有する形質転換宿主から得られる、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)株から得られ、SDS-PAGEで測定したときの見かけの分子量が約16kD〜約20kDである、配列番号1または7のアミノ酸配列を含むOMP21、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むOMP21、または10以上のアミノ酸残基を含むそのペプチド断片であって、OMP21ポリペプチドに特異的に結合する抗体に特異的に結合するペプチド断片、
e) 上記a)で定義したOMP21をコードする核酸分子を含む組換えベクター、および
f) 上記e)のベクターを含有する形質転換細胞、
からなる群より選択される少なくとも1種の成分と、
場合により1種以上のアジュバントと、場合により1種以上の製薬上許容される担体もしくは希釈剤とを含んでなり、宿主に投与したとき免疫応答を引き出すワクチン。
【請求項47】
OMP21をコードする核酸を欠失させて転写されないように遺伝子操作されている、モラクセラ・カタラーリスの弱毒化または不活化品種をさらに含んでなる、請求項46に記載のワクチン。
【請求項48】
OMP21およびOMP106をコードする核酸を欠失させて転写されないように遺伝子操作されている、モラクセラ・カタラーリスの弱毒化または不活化品種をさらに含んでなる、請求項46に記載のワクチン。
【請求項49】
前記成分が脂質、炭水化物、タンパク質、弱毒化した全生物、および不活化した全生物からなる群より選択される他の成分1種以上と組み合わされているか、該成分に融合またはコンジュゲート化されている、請求項46に記載のワクチン。
【請求項50】
全生物がモラクセラ属、ナイセリア属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属およびヘモフィルス属からなる群より選択される、請求項49に記載のワクチン。
【請求項51】
前記成分が他の成分と組み合わされており、他の成分がモラクセラ属、ナイセリア属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属またはヘモフィルス属由来のタンパク質もしくは炭水化物である、請求項49に記載のワクチン。
【請求項52】
他の成分がOMP106である、請求項49または51に記載のワクチン。
【請求項53】
非ヒト動物に有効量の請求項26に記載の医薬組成物、請求項36に記載の免疫原組成物、または請求項46に記載のワクチンを投与することを含んでなる、動物において免疫応答を引き出す方法。
【請求項54】
請求項26に記載の医薬組成物、請求項37に記載の免疫原組成物、または請求項46に記載のワクチンに対して誘導された抗血清。
【請求項55】
前記の医薬組成物、免疫原組成物またはワクチン中に存在する成分1種以上と特異的に結合する、請求項54に記載の抗血清中に存在する単離された抗体。
【請求項56】
請求項1に記載のOMP21ポリペプチドと特異的に結合する、単離された抗体。
【請求項57】
モラクセラ・カタラーリスの補体殺傷を媒介する細胞傷害性抗体である、請求項55に記載の単離された抗体。
【請求項58】
モラクセラ・カタラーリスの補体殺傷を媒介する細胞傷害性抗体である、請求項56に記載の単離された抗体。
【請求項59】
被験サンプル中の抗モラクセラ・カタラーリス抗体の検出方法であって、下記のステップ:
a) 被験サンプルを請求項26に記載の医薬組成物または請求項37に記載の免疫原組成物に接触させて、抗モラクセラ・カタラーリス抗体の存在下において、モラクセラ・カタラーリス抗原:抗モラクセラ・カタラーリス抗体免疫複合体を形成させること、および
b) ステップa)において形成された免疫複合体を、被験サンプル中の抗モラクセラ・カタラーリス抗体の存在を示すものとして検出すること、
を含んでなる、上記方法。
【請求項60】
c) 形成された免疫複合体の量を測定すること、をさらに含んでなる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
モラクセラ・カタラーリスに対する抗体を検出するための診断キットであって、請求項26に記載の医薬組成物または請求項37に記載の免疫原組成物;該組成物を、モラクセラ・カタラーリスに対する抗体を含むと予想される被験サンプルに接触させるための容器手段;および該組成物と該抗体の間に形成されたモラクセラ・カタラーリス抗原:抗モラクセラ・カタラーリス抗体免疫複合体を検出するための試薬手段;を含んでなる、上記キット。
【請求項62】
被験サンプル中のモラクセラ・カタラーリスの存在を検出する方法であって、下記のステップ:
a) 被験サンプルと請求項55または56に記載の抗体とを、もし存在するなら、モラクセラ・カタラーリスを該抗体と結合させるのに十分な時間接触させて、モラクセラ・カタラーリス抗原:抗モラクセラ・カタラーリス抗体免疫複合体を形成させること、および
b) ステップa)において形成された免疫複合体を、被験サンプル中のモラクセラ・カタラーリスの存在を示すものとして検出すること、
を含んでなる、上記方法。
【請求項63】
c) 形成された免疫複合体の量を測定すること、をさらに含んでなる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
モラクセラ・カタラーリスの存在を検出するための診断キットであって、請求項55または56に記載の抗体;該抗体を、モラクセラ・カタラーリスを含むと予想される被験サンプルに接触させるための容器手段;および該抗体とモラクセラ・カタラーリスの間に形成されたモラクセラ・カタラーリス抗原:抗モラクセラ・カタラーリス抗体免疫複合体を測定するための試薬手段;を含んでなる、上記キット。
【請求項65】
サンプル中のOMP21をコードする核酸の存在を判定する方法であって、下記のステップ:
a) サンプルを請求項9または11に記載の核酸分子に接触させて、該核酸分子およびそれと特異的にハイブリダイズしうるサンプル中のOMP21をコードする核酸分子を含む二本鎖を生成させること、および
b) 生成された二本鎖を検出すること、
を含んでなる、上記方法。
【請求項66】
サンプル中のOMP21をコードする核酸の存在を判定するための診断キットであって、
a) 請求項9または11に記載の核酸分子、
b) 該核酸分子をサンプルに接触させて、該核酸分子およびそれと特異的にハイブリダイズしうるサンプル中のOMP21をコードする核酸分子を含む二本鎖を生成させるための手段、および
c) 生成された二本鎖を検出するための手段、
を含んでなる、上記キット。
【請求項67】
非ヒト動物におけるモラクセラ・カタラーリス関連疾患を予防、治療または軽減する方法であって、かかる処置が必要な動物に、有効量の請求項26に記載の医薬組成物、請求項37に記載の免疫原組成物、または請求項46に記載のワクチン組成物を投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項68】
前記疾患がモラクセラ・カタラーリス細菌感染症、中耳炎、呼吸感染症、副鼻腔炎および肺炎からなる群より選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
モラクセラ・カタラーリスが原因で起こる疾患に対する防御またはそのための治療を施すために宿主へのin vivo投与用に製剤化されている、請求項26、37または46に記載の組成物。
【請求項70】
微小粒子製剤、カプセル剤またはリポソーム製剤として製剤化されている、請求項26、37または46に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−19518(P2011−19518A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172564(P2010−172564)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2000−572357(P2000−572357)の分割
【原出願日】平成11年10月1日(1999.10.1)
【出願人】(500155730)エマージェント プロダクト ディヴェロップメント ゲイゼルスバーグ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】