説明

モリブデンおよび第VIII族金属を含む触媒ならびに水素化脱硫水素蒸留物のためのその使用

【課題】低硫黄蒸留生成物を製造するために、蒸留物供給原料の水素化脱硫において有用な触媒および方法を提供する。
【解決手段】該蒸留物水素化脱硫触媒は、無機酸化物材料、三酸化モリブデンならびに第VIII族金属化合物(この第VIII族金属化合物は、ニッケル化合物およびコバルト化合物からなる群から選択される。)を含む混合物を焼成して作製される焼成混合物を含み、前記焼成混合物は、金属換算のモリブデンと焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると7重量%から22重量%の範囲内のモリブデン含有量ならびにその元素形態での第VIII族金属と焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると3重量%から12重量%の範囲内の第VIII族金属含有量を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒および低硫黄濃度を有する炭化水素生成物の製造方法に関する。本発明は、さらに、超低硫黄蒸留生成物の製造方法およびそのような方法での使用のための蒸留物水素化脱硫触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
米国の政令は、現在100万当たり15部(ppm)に設定されている最大硫黄濃度制限を伴う走行時ディーゼルに対して許されている最大硫黄濃度についてさらに厳格な制限を課している。欧州連合は、50ppm未満のディーゼル燃料に対する硫黄濃度制限を設定している。その他の組織体は、ディーゼルでは5から10ppmと低い硫黄のなお一層厳格な要件を支持している。これらの低硫黄濃度制限により、低硫黄蒸留生成物を製造するために、高濃度の硫黄を含む蒸留物供給原料の水素化脱硫で好適に使用され得る改善された蒸留物水素化脱硫触媒を開発するための業界による努力が為されつつある。
【0003】
一般的な従来の水素化処理触媒は、米国特許第5,223,472号(Simpsonら)に開示されており、この特許はその水素化処理触媒が、第VIII族金属および第VIB族金属で浸漬されたアルミナ担体であることを教示している。この触媒は、相対的に狭い細孔サイズ分布ならびに0.1から5.0重量%の第VIII族金属および2.0から10.0重量%の第VIB族金属を含むことにより特徴付けられると述べられている。この好ましい触媒は、成形された担体粒子を、溶解した金属水素化成分を含む浸漬溶液を使用して浸漬することにより作製される。第VIB族金属成分が最終触媒において必要とされる場合、浸漬溶液で使用され得る第VIB族金属化合物は、第VIB族金属を含む塩化合物を含めて、水性媒体に可溶であるものから選択される。この特許では、三酸化モリブデンと無機担体材料とを共混練することにより水素化処理触媒中へのモリブデン水素化成分の導入については全く言及されていない。
【0004】
米国特許第5,686,375号(Iyerら)は、下層を形成したニッケルおよびモリブデンのオーバーレイを含む好ましい触媒と一緒に、下層を形成した第VIII族金属成分を含む水素化処理触媒に言及している。この特許は、多数のニッケルおよびモリブデン化合物が、三酸化モリブデンの前駆体を含めて、浸漬または共混練にとって有用であることに言及しているが、下層を形成したモリブデン成分を有するその触媒担体の調製で、多孔質耐火性担体材料と一緒に三酸化モリブデンを共混練することに特に言及していない。この特許は、しかし、浸漬に代わる共混練により、下層を形成したニッケルを含む担体上へのモリブデンの導入に言及している。しかし、無機担体材料と三酸化モリブデンおよび第VIII族金属化合物とを共混練し、次いで、得られた混合物を焼成して触媒を形成することにより超低硫黄蒸留物を作製するための水素化触媒の調製については‘375号特許には全く教示されていない。
【0005】
米国特許第4,888,316号(Gardnerら)には、モリブデンおよび/またはタングステンおよび/またはニッケルおよび/またはコバルトを含む使用済み水素化触媒で作製される水素化触媒が開示されている。使用済み触媒は粉砕工程に掛けられ、それによって適用な粒径まで粉砕される。粉砕された使用済み水素化触媒はアルミナ材料と混合され、水素化触媒を得るために焼成される成形粒子へ形成される。この特許は、モリブデン水素化成分を、三酸化モリブデンと無機担体材料とを共混練して水素化処理触媒へ導入することについては全く言及していない。
【0006】
国際公開02/32570号(Bhan)は、アルミナと、第VIB族金属、場合により第VIII族金属を含む市販の水素化処理触媒を粉砕して製造した微粉とを混合し、得られた混合物を粒子に、好ましくは、押出しにより形成し、次いで、形成された粒子の焼成により作製される水素化処理触媒を開示している。最終品の触媒中の第VIB族金属の適切な量は触媒の0.5重量%から10重量%であり、モリブデンの場合は、2重量%から6重量%が好ましい。この特許は、三酸化モリブデンと無機担体材料とを共混練することにより水素化処理触媒中へモリブデン水素化成分を導入することまたはモリブデン塩と無機担体材料とを共混練することが望ましくないということについて言及していない。
【0007】
米国特許第6,030,915号(de Boer)は、再生使用済み水素化処理触媒微粉を、水素化処理触媒の製造で使用する水素化処理触媒を開示している。この特許は、さらに、追加の水素化金属が、触媒組成物中へ導入される水素化金属の水溶性塩を含む浸漬溶液を使用して浸漬により触媒組成物へ添加され得ることを示している。また、追加の金属を触媒組成物中へ導入する代替方法が、固体状態または溶解された金属成分と、再生使用済み水素化処理触媒微粉、バインダー、および場合により、添加剤の混合物との混合を含むこととして示されている。固体状態の金属は固体モリブデン酸化物を含んでもよい。‘915号特許は、その触媒の調製において、バインダーを含んでもよい、少なくとも1つの添加剤と混合される再生使用済み水素化処理触媒微粉を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,223,472号明細書
【特許文献2】米国特許第5,686,375号明細書
【特許文献3】米国特許第4,888,316号明細書
【特許文献4】国際公開第02/32570号
【特許文献5】米国特許第6,030,915号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
低い生産コストを有し、超低硫黄蒸留生成物を生成するために、硫黄含有蒸留物供給原料の水素化脱硫で有用な触媒を有することは望ましいことである。さらに、良好な硫黄除去活性を有し、その硫黄除去活性で低い減少率を示すことにより高度に安定性である水素化処理触媒が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、それ故に、無機酸化物材料、三酸化モリブデンならびに第VIII族金属化合物(この第VIII族金属化合物は、ニッケル化合物およびコバルト化合物からなる群から選択される。)を含む混合物を焼成して作製される焼成混合物を含み、前記焼成混合物は、金属換算のモリブデンと焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると7重量%から22重量%の範囲内のモリブデン含有量ならびにその元素形態での第VIII族金属と焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると3重量%から12重量%の範囲内の第VIII族金属含有量を有する、超低硫黄蒸留生成物の製造における蒸留物水素化脱硫触媒として使用するための組成物が提供される。
【0011】
また、好適な蒸留物脱硫プロセス条件下で、第一硫黄濃度を含む蒸留物供給原料を、三酸化モリブデン、ニッケル化合物および無機酸化物材料を含む混合物の成形された粒子を焼成することにより作製された焼成混合物を含む蒸留物水素化脱硫触媒(前記蒸留物水素化脱硫触媒は、金属換算と前記蒸留物水素化脱硫触媒の全重量とに基づいて7から22重量%のモリブデンおよび金属換算と前記蒸留物水素化脱硫触媒の全重量とに基づいて3重量%を超えるニッケルを含む。)と接触させること、ならびに第二硫黄濃度を有する前記超低硫黄蒸留生成物を生成することを含む、超低硫黄蒸留生成物の製造方法が提供される。
【0012】
なお、さらに、無機材料、三酸化モリブデン粉末およびニッケル化合物を共混練して混合物を形成すること、前記混合物を粒子に成形することならびに前記粒子を焼成して、焼成混合物を得ること、を含み、前記焼成混合物は、金属換算のモリブデンと焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると7重量%から22重量%の範囲内のモリブデン含有量ならびにその元素形態での第VIII族金属と焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると3重量%から12重量%の範囲内の第VIII族金属含有量を有する、超低硫黄蒸留生成物の製造における蒸留物水素化脱硫触媒として使用するための組成物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による触媒の水素化脱硫活性および比較触媒の水素化脱硫活性のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
新規な触媒組成物は、超低硫黄濃度を有する蒸留生成物を作製するために、高硫黄濃度を有する蒸留物供給原料の水素化脱硫において特に有用であることが解った。この触媒は特に高い硫黄除去活性を有し、また、この触媒は、そのような用途で使用される場合に硫黄除去のためのその触媒活性における低い減少速度を示す点で、高度に安定である。この触媒は、さらに、ある種の従来の触媒を製造するのに一般に必要とされるよりも少ない製造工程が必要とされる点で、他の水素化処理触媒と比較して低い製造コストを有する。
【0015】
蒸留物供給原料の水素化脱硫で有効な本発明の触媒は、一般に、無機酸化物材料、高濃度のモリブデン成分および高濃度の第VIII族金属成分を含む焼成混合物である。焼成混合物を形成するために焼成されるべきこの混合物は、三酸化モリブデン、第VIII族金属化合物および無機酸化物材料を含むことが必須である。この混合物は最初に粒子に成形され、次いで、焼成混合物を得るために焼成されることが好ましい。言及した通り、焼成混合物は、金属換算のモリブデンと焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると7重量%から22重量%の範囲内の量で焼成混合物中に存在するモリブデン成分の高濃度および金属換算の第VIII族成分と焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると3重量%から12重量%の範囲内の量で焼成混合物中に存在する第VIII族金属成分の高濃度を有することである。
【0016】
本発明の1つの重要な態様は混合物に関し、この混合物から、粒子が、モリブデン源として、三酸化モリブデン以外の形態にある他のモリブデン化合物(例えばモリブデンの塩など)を使用する代りに、三酸化モリブデン、好ましくは、乾燥粉末または微細化粒子の懸濁液もしくはスラリーとして含まれていてよい微細化粒子の形態にある三酸化モリブデンを使用して作製されるために成形される。したがって、成形された粒子へ形成され、その後焼成される混合物は、三酸化モリブデンとして以外の形態、例えばモリブデン塩化合物などの形態にあるモリブデン化合物を実質的に含まない。
【0017】
ここにおいて、三酸化モリブデンの形態以外の形態にあるモリブデン化合物を実質的に含まないという場合、成形された粒子に成形または形成され、その後適切な焼成条件下で焼成される混合物が、本明細書の他の場所でさらに十分に説明されるように、三酸化モリブデン以外のモリブデン化合物、例えばモリブデン塩化合物または無機モリブデン化合物の少量未満もしくは極少量未満を含むということを意味する。三酸化モリブデン以外のモリブデン化合物の例として、モリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、酢酸モリブデン、臭化モリブデン、塩化モリブデン、硫化モリブデンおよび炭化モリブデンが挙げられる。したがって、この混合物は、三酸化モリブデン以外のモリブデン化合物を、混合物の全乾燥重量を基にして2重量%未満含むことが望ましい。この混合物は、三酸化モリブデン以外のモリブデン化合物を1重量%未満、さらに好ましくは0.5重量%未満含むことが好ましい。
【0018】
本発明の別の実施形態において、この混合物は、三酸化モリブデン、第VIII族金属(特に、ニッケルまたはコバルト)化合物および無機酸化物材料から本質的になっていてよい。「から本質的になる」の語句または他の類似表現は、ここにおいては、この混合物を構成している要素または成分を定義する場合に使用され、三酸化モリブデン以外の実質的な量のモリブデン化合物がこの混合物からは排除されるということを意味する。この語句は、しかし、この混合物の参照成分から、他の化合物、例えばリン化合物を含む促進剤成分などの実質的な量が排除されることを意味するものではない。三酸化モリブデン以外のモリブデン化合物の材料量は、最終の触媒の触媒的機能性に材料の影響を与える、この混合物において含まれるそのような化合物の量である。これらの触媒的機能性は、本明細書の他の場所で詳細に検討される。
【0019】
混合物中に含まれる三酸化モリブデンの量は、最終焼成混合物が、焼成混合物の全重量に基づく重量%を用いると金属換算で7重量%から22重量%(MoOに基づくと、10.5から18重量%)の範囲内のモリブデン含有量を有するような量であるべきである。しかし、三酸化モリブデンの量は、最終焼成混合物が、金属換算で10から20重量%(酸化物換算で15から30重量%)、好ましくは12から18重量%(酸化物換算で18から27重量%)、最も好ましくは14から16重量%(酸化物換算で21から24重量%)の範囲内のモリブデン含有量を有するような量で混合物中に含まれることが望ましい。
【0020】
三酸化モリブデン成分に加えて、この混合物は第VIII族金属化合物をさらに含む。第VIII族金属化合物としては、ニッケル化合物およびコバルト化合物からなる化合物の群から選択されることが好ましく、これらの中で最も好ましいのはニッケル化合物である。
【0021】
第VIII族成分の源は、この混合物の他の成分と混合されることができ、最終焼成混合物を形成するために焼成される粒子に成形することのできる適切な第VIII族化合物いずれかから選択され得る。第VIII族化合物としては、例えば、第VIII族金属の水酸化物、ナイトレート、アセテートおよび酸化物が挙げられ得る。
【0022】
この混合物に含まれる第VIII族化合物の量は、焼成混合物の全重量に基づく重量%を用いると金属換算で3重量%(ニッケルであれば、NiO換算で3.82重量%)から金属換算で12重量%(ニッケルであれば、NiO換算で15.3重量%)の範囲内の第VIII族金属含有量を有する最終焼成混合物を与えるような量であるべきである。しかし、第VIII族金属の量は、金属換算で4重量%(ニッケルであれば、NiO換算で5.1重量%)から金属換算で11重量%(ニッケルであれば、NiO換算で14重量%)、好ましくは4.5重量%(ニッケルであれば、NiO換算で5.7重量%)から10.5重量%(ニッケルであれば、NiO換算で13.4重量%)、最も好ましくは5重量%(ニッケルであれば、NiO換算で6.4重量%)から10重量%(ニッケルであれば、NiO換算で12.7重量%)の範囲内の第VIII族金属含有量を有する最終焼成混合物を与えるような量で混合物中に含まれることが望ましい。
【0023】
三酸化モリブデン成分および第VIII族金属化合物に加えて、この混合物は無機酸化物材料をさらに含む。本発明の触媒にとって必要とされる表面構造特性を与える好適な多孔質無機耐火性酸化物のいずれも、混合物の無機酸化物材料成分として使用されて得る。可能な好適なタイプの多孔質無機耐火性酸化物の例として、シリカ、アルミナおよびシリカ−アルミナが挙げられる。アルミナおよびシリカ−アルミナが好ましい。
【0024】
この混合物に含まれる無機酸化物材料の量は、焼成混合物の全重量に基づく重量%を用いると最終焼成混合物において50から90重量%の範囲内の量の無機酸化物材料を与えるような量である。好ましくは、焼成混合物における無機酸化物材料の量は、55から88重量%、最も好ましくは60から86重量%の範囲内である。
【0025】
本発明の触媒のモリブデン成分の源が三酸化モリブデンにより主として与えられることの要件に加えて、明確に定められた金属導入および他の触媒特性との組合せの本発明の触媒の表面特性は、ある濃度の硫黄を有する蒸留物供給原料の水素化脱硫において、超低硫黄濃度を有する蒸留生成物を生成するために特に有用な触媒を提供する。本発明の触媒の性能にとって重要な1つのこのような表面特性は、触媒が特定の狭い範囲内にある平均細孔径を有すること、およびさらに、触媒が少量割合の、マクロ細孔内に含まれる全細孔容積を有することである。また、所望の触媒特性を与えるために、本発明の触媒の細孔の平均細孔径は、一般に、50オングストローム(Å)から100Åの範囲内である。好ましくは、細孔の平均細孔径は、60から95オングストローム、最も好ましくは70から90オングストロームの範囲内である。
【0026】
本発明の触媒は、上述の平均細孔径の特定の狭い範囲を有することに加えて、本発明の触媒のマクロ細孔内に含まれる少量割合の全細孔容積を有していなければならないことである。マクロ細孔という用語は、350オングストロームを超える細孔径を有する細孔と定義される。本発明の触媒にとって、マクロ細孔内に含まれる全細孔容積の4.5%未満、好ましくは4%未満、最も好ましくは3.5%未満を有することが望ましい。また、本発明の触媒の細孔構造にとって、1000オングストロームを超える直径を有するマクロ細孔内に含まれる全細孔容積の1%未満であることが望ましく、1000オングストロームを超える直径を有するマクロ細孔内に含まれる全細孔容積の0.9%未満であることがさらに望ましく、最も望ましいのは、1000オングストロームを超える直径を有するそのマクロ細孔内に含まれる全細孔容積の0.8%未満である。
【0027】
本発明の触媒のさらに重要な性質は、触媒として、著しく広い表面積を有することである。それは、細孔径の狭い分布および本発明の触媒の多数の重要な機能性に寄与する本発明の触媒の製造でのモリブデン源としての三酸化モリブデンの使用との組合せにおける著しく広い表面積の特定の組合せである。本発明の触媒は、250m/gを超える妥当な広い表面積を有することが望ましい。好ましくは、本発明の触媒の表面積は、275m/gを超え、最も好ましくは、表面積は300m/gを超える。
【0028】
本発明の方法は、既に言及した通り、ある濃度の硫黄を含む蒸留物炭化水素供給原料の水素化脱硫で使用される場合に特に良好な性質を示す新規な触媒を与えることが見出された。本発明の触媒の多数の有益な触媒特性は、はっきりはしていないが、それでもなお本発明の触媒を製造する新規な方法と関係し、また、そのような製造における代替モリブデン源の使用とは対照的に、触媒のモリブデン成分の主要源としての三酸化モリブデンの使用とも関係しているものと考えられる。この理由は、酸性でありおよび三酸化モリブデンがアルミナと組合された場合に、自体をアルミナマトリック内にさらに効果的に組み込まれ分散されるという、他の独特な性質を有する三酸化モリブデンと関係しているということが推測される。事実、硫化された本発明の触媒のある走査型電子顕微鏡写真の検査は、代替モリブデン含有水素化処理触媒と比較して、減少した高さおよび長さを有するスタックを伴う著しく程度の低い二硫化モリブデン(MoS)スラブスタッキングが存在することを示唆する。
【0029】
本発明の触媒を製造するための本発明の方法は、多数の従来の製造方法と比較して、水素化触媒を製造するためのさらに経済的な手段を提供する。この新規な方法は触媒成分の混合のための単独工程を含み、このことによって、水素化金属および促進剤をそのような単独工程において混合物中へ導入する。多数の従来の方法は、これに反して、触媒成分を組成物中へ導入するために複数工程、例えば、初めに担体構造を調製し、次いで、別の浸漬工程によるなどを使用する。実際、モリブデン成分を本発明の触媒中へ導入するためにモリブデン塩またはその溶液の使用を含むことは本発明の方法にとって望ましくない。一般に、従来の方法は、モリブデンを触媒の担体構造中へ導入するためにモリブデン塩溶液の使用を教示している。したがって、本発明の方法は、幾つかの触媒製造処理工程を排除する点で多数の従来の製造方法よりもさらに経済的であることができる。
【0030】
本発明の蒸留物水素化脱硫触媒を製造する本発明の方法により与えられる別の利点は、本発明の方法が、超低硫黄蒸留生成物を与えるのに必要な触媒特性およびその他の利点を有する蒸留物水素化脱硫触媒にとって必要とされる高濃度金属の均一導入を可能とすることである。本発明の触媒は、高濃度のモリブデン成分および高濃度の第VIII族金属成分を有することが必要とされる。水素化金属を担体材料中へ導入して水素化処理触媒を作製するために使用される一般的な浸漬方法は、特に、担体粒子が特に大きなサイズである場合、通常は高濃度水準の金属の導入を可能とせず、この浸漬方法は、担体粒子において均一な高濃度の水素化金属の導入を可能にしない。本明細書で説明されている本発明の方法は、これに反して、触媒の触媒形状中への均一な高濃度のモリブデンおよび第VIII族金属成分を導入することができ、これにより、金属を触媒担体粒子に導入するための典型的な浸漬方法の使用に伴う問題の幾つかを克服する。
【0031】
本発明の触媒を製造するための本発明の方法は、粒子に成形されまたは塊状化され、次いで、焼成され、それによって焼成混合物を与える混合物を形成するために好適な出発材料の混合または共混練を含む。焼成混合物はそれ自体、高度に安定な水素化脱硫触媒として使用され得、またはこの触媒は、その使用前もしくは使用中に、水素または硫黄もしくは硫黄化合物、例えば、元素硫黄、硫化水素もしくは有機硫黄化合物などでの処理を含む任意の数の知られた方法で活性化され得る。
【0032】
本発明の方法の最初の工程は、触媒の出発材料を組合せて混合物を形成する工程を含む。混合物の調製において必須の出発材料は、好ましくは粉末形態にある三酸化モリブデンおよび無機酸化物材料、例えば、アルミナ、シリカおよびアルミナ−シリカからなる群から選択される無機酸化物材料を含む。また、第VIII族金属成分、好ましくはコバルト成分またはニッケル成分、さらに好ましくはニッケル成分は、混合物の形成において三酸化モリブデンおよび無機酸化物材料とさらに組合され得る。第VIII族金属成分は、乾燥もしくは溶液に溶解された両方の第VIII族金属塩化合物、または上述のものを含む任意の他の第VIII族金属化合物を含む第VIII族金属の好適な源のいずれかであってよい。
【0033】
この混合物の形成は、タンブラー、静止シェルまたはトラフ、ミュラーミキサー(これは、バッチ式または連続式である。)および衝撃ミキサーのような適切な型の固体−混合装置の使用、ならびに固体および液体を混合するためのまたは押出し可能なペースト状混合物の形成のためのバッチ式または連続ミキサーのような適切な型の使用を含むがこれらに限定されない当業者に知られた方法または手段のいずれかにより行われ得る。バッチミキサーの適切な型としては、チェンジキャンミキサー、静止タンクミキサー、任意の適切な型の混合刃を備えた双腕混練混合機が挙げられるがこれらに限定されない。連続ミキサーの適切な型としては、一軸または二軸スクリュー押出機、トラフおよびスクリューミキサーならびにパグミルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0034】
触媒の出発材料の混合は、混合物を適切に均質化するために必要な適切ないずれかの時間中に行われ得る。一般に、ブレンド時間は、2または3時間までの範囲内であり得る。
【0035】
「共混練」という用語は、本明細書では広い意味で使用され、少なくとも列挙された出発材料が一緒に混合されて混合物の個々の成分の混合物、好ましくは、このような混合物の個々の成分の実質的に均一または均質な混合物である混合物を形成することを意味する。この用語は、任意の知られた押出し方法により押出物粒子へ押出しまたは形成することのできるような性質を示すペーストを生成するための出発材料の混合を含ませるために十分に広い範囲にあることが意図される。しかし、また、この用語は、成形、錠剤化、プレス、ペレット化、押出しおよびタンブリングを含むがこれらに限定されない、当業者に知られた方法のいずれかにより、形成された粒子、例えば、回転楕円体、ピルもしくはタブレット、円柱、不規則押出物または単にゆるく結合した塊状体もしくはクラスターなどに塊状化することのできる、好ましくは実質的に均質である混合物を生成するための出発材料の混合を包含することが意図される。
【0036】
既に言及したように、本発明の触媒の少なくとも主要なモリブデン源が主に三酸化モリブデンであることが本発明の方法の重要な態様である。触媒の出発材料の混合または共混練では、細粉化固体または懸濁液のように細分割状態にあることが三酸化モリブデンにとって好ましい。触媒の製造で使用される粒状三酸化モリブデンの粒径としては、0.5mm(500ミクロン(μm))未満の最大寸法、好ましくは0.15mm(150μm)未満、さらに好ましくは0.1mm(100μm)未満、最も好ましくは0.075mm(75μm)未満の最大寸法を有することが最良である。
【0037】
はっきり解ってはいないが、実用的に可能な程度に小さな粒子の形態であることが、本発明の触媒の製造で使用される三酸化モリブデンに関し、本発明に有利であると考えられ、したがって、それ故に、触媒製造で使用されるモリブデン粒子のサイズについて下限を設けることは望ましくない。しかし、触媒の製造で使用される三酸化モリブデンの粒径は、0.2μmを超えるそのサイズまでに下限を持つことができることが理解される。したがって、本発明の触媒の製造で混合物の形成で使用される三酸化モリブデンの粒径は、好ましくは0.2から150μm、さらに好ましくは0.3から100μm、最も好ましくは0.5から75μmの範囲内である。一般に、三酸化モリブデン粒子のサイズ分布は、乾燥粉末または懸濁液かその他かに拘らず、粒子の少なくとも50%が2から15μmの範囲内の最大寸法を有する。
【0038】
触媒の出発材料が適切に混合され、および粒子に形成されたら、乾燥工程が、混合物または成形された粒子内に含まれるある量の水分または揮発分を除去するために都合よく使用され得る。粒子の乾燥は、過剰の水分または揮発分を除去するために好適ないずれかの温度で行われて得るが、好ましくは、乾燥温度は約75℃から250℃の範囲内である。粒子を乾燥するための時間は、焼成工程前に粒子の揮発分含有量において所望量の減少を与えるのに必要な適切ないずれもの時間である。
【0039】
乾燥または未乾燥粒子は、酸素含有流体、例えば空気などの存在下で、所望の焼成の程度を達成するのに適した温度で焼成される。一般に、焼成温度は450℃(842°F)から760℃(1400°F)の範囲内である。粒子が焼成される温度条件は、最終焼成混合物の細孔構造の制御にとって重要であり得る。形成された粒子における三酸化モリブデンの存在により、必要とされる細孔構造を有する焼成混合物を与えるために必要とされる焼成温度は、無機酸化物材料、特に、三酸化モリブデンを含まない無機酸化物材料を含む他の組成物を焼成するために必要とされる一般的な温度よりも高い。しかし、いずれにしても、最終焼成混合物を与えるために粒子が焼成される温度は、本明細書で詳細に説明されたように、細孔構造特性を有する最終焼成混合物を与えるために制御される。好ましい焼成温度は、510℃(950°F)から730℃(1346°F)、最も好ましくは、540℃(1004°F)から705℃(1301°F)の範囲内である。
【0040】
本発明の触媒、すなわち、焼成混合物は、低硫黄中間蒸留物炭化水素生成物を作製するために、ある濃度の硫黄または硫黄化合物を有する中間蒸留物炭化水素供給原料の水素化脱硫方法での使用に特に適している。さらに具体的に言えば、この触媒は、超低硫黄蒸留生成物、例えば50ppmw未満、好ましくは25ppmw未満、さらに好ましくは15ppmw未満、最も好ましくは10ppmw未満の硫黄濃度を有する超低硫黄ディーゼル生成物などの製造方法で使用され得る。
【0041】
本明細書で参照される蒸留物供給原料は、約140℃(284°F)から約410℃(770°F)の範囲で、大気圧での沸騰温度を有する精製装置炭化水素流を含むことが意図される。これらの温度は、蒸留物供給原料の凡その初期および最終沸騰温度である。蒸留物供給原料という用語の意味内に含まれることが意図される精油装置流の例としては、参照された沸騰範囲内で沸騰する直留蒸留物燃料、例えば、ケロシン、ジェット燃料、軽質ディーゼル油、暖房用油および重質ディーゼル油など、ならびに分解蒸留物、例えば、FCCサイクル油、コーカー軽油および水素添加分解装置蒸留物などが挙げられる。本発明の方法の好ましい供給原料は、約140℃(284°F)から約400℃(752°F)のディーゼル沸騰範囲で沸騰する中間蒸留物である。
【0042】
中間蒸留物供給原料の硫黄濃度は、高濃度、例えば、元素硫黄の重量および硫黄化合物を含む蒸留物供給原料の総重量に基づく、蒸留物供給原料の約2重量%までの範囲内であることができる。しかし、一般に、本発明の方法の蒸留物供給原料は、0.01重量%(100ppmw)から1.8重量%(18,000)の範囲内の硫黄濃度を有する。しかし、さらに一般には、硫黄濃度は、0.1重量%(1000ppmw)から1.6重量%(16,000ppmw)、最も一般に0.18重量%(1800ppmw)から1.1重量%(11,000ppmw)の範囲内である。蒸留物供給原料の硫黄含有量についての本明細書での参照は、蒸留物供給原料で、または水素化脱硫蒸留物生成物で普通に見出され、硫黄原子を含む化合物であって、一般に有機硫黄化合物を含む化合物についてであることが理解される。
【0043】
本発明の焼成混合物(触媒)は、水素の存在ならびに高められた全圧力および温度を含み得る好適な水素化脱硫条件下で本発明の触媒と蒸留物供給原料との接触を与える好適ないずれかの反応器システムの一部として使用され得る。このような好適な反応システムは、固定触媒床システム、沸騰触媒床システム、スラリー化触媒システムおよび流動触媒床システムを含むことができる。好ましい反応器システムとは、蒸留物供給原料を反応容器中へ導入するための反応器供給入口手段、例えば供給ノズルなど、および反応容器から、反応器流出物または処理された炭化水素生成物または超低硫黄蒸留物生成物を回収するための反応器流出物出口手段、例えば流出物出口ノズルなどを備えた反応容器内に本発明の触媒の固定床を含む場合のシステムである。
【0044】
本発明の方法は、一般に、689.5kPa(100psig)から13,789kPa(2000psig)、好ましくは1896kPa(275psig)から10,342kPa(1500psig)、さらに好ましくは2068.5kPa(300psig)から8619kPa(1250psig)の範囲内の水素化脱硫反応圧で操作する。
【0045】
水素化脱硫反応温度は、一般に200℃(392°F)から420℃(788°F)、好ましくは260℃(500°F)から400℃(752°F)、最も好ましくは320℃(608°F)から380℃(716°F)の範囲内である。
【0046】
蒸留物供給原料が本発明の方法の反応帯域へ供給される際の流量は、一般に、0.01/時間から10/時間の範囲内の液体毎時空間速度(LHSV)を与える。本明細書で使用される「液体毎時空間速度」という用語は、蒸留物供給原料が供給される反応帯域に含まれる触媒の容量で割った、時間当たりの容量で蒸留物供給原料が本発明の方法の反応帯域へ供給される際の速度の数値比を意味する。好ましいLHSVは、0.05/時間から5/時間、さらに好ましくは0.1/時間から3/時間、最も好ましくは0.2/時間から2/時間の範囲内である。
【0047】
本発明の方法の反応帯域へ蒸留物供給原料と一緒に水素を供給することが好ましい。この例では、水素は時に水素処理ガスと称される。水素処理ガス割合は、反応帯域へ供給される蒸留物供給原料の量に関する水素の量であり、一般に、1781m/m(10,000SCF/bbl)までの範囲である。処理ガス割合としては、89m/m(500SCF/bbl)から1781m/m(10,000SCF/bbl)の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、178m/m(1,000SCF/bbl)から1602m/m(9,000SCF/bbl)、最も好ましくは、356m/m(2,000SCF/bbl)から1425m/m(8,000SCF/bbl)である。
【0048】
本発明の方法から生成された脱硫蒸留生成物は、蒸留物供給原料に関して低いまたは減少した硫黄濃度を有する。本発明の方法の特に有利な態様は、本発明の方法が徹底的に脱硫されたディーゼル生成物、すなわち、超低硫黄ディーゼル生成物を与えることができることである。既に本明細書で言及した通り、低硫黄蒸留生成物は、50ppmw未満または本明細書の他の場所で説明されている他の言及されたいずれかの濃度である硫黄濃度を有することができる。
【0049】
以下の実施例は本発明をさらに例示するために提供されるが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0050】
実施例I
この実施例は、触媒Aおよび比較触媒Bの調製を説明する。
【0051】
触媒A
触媒Aは、初めに、316.4重量部の脱イオン水に、724.71重量部の硝酸コバルト(Co(NO・6HO)を溶解して水性コバルト溶液を形成し、加熱し、その後水性コバルト溶液を冷却することにより調製した。水性コバルト溶液をミュラーミキサー内で、3134.8重量部の2%シリカ−アルミナ、新しいCo/Mo/P/Ni水素化触媒(2.9重量%のCo、12.0重量%のMo、0.09重量%のP、および0.02重量%のNi)の粉砕微粉680.3重量部、301.1重量部の三酸化モリブデン粉末、30重量部の市販の押出し助剤、3465.7重量部の脱イオン水および硝酸と一緒に混合した。この混合物を、1.3mm三分割ダイスを使用して押出した。押出物を100℃で乾燥した。
【0052】
乾燥した押出物粒子のアリコート部分をそれぞれ空気中で2時間、593℃(1100°F)および677℃(1250°F)で焼成した。最終焼成混合物は、4.3重量%のコバルト金属(CoO換算で5.47重量%)、15.3重量%のモリブデン金属(22.95重量%MoO)および0.03重量%のリン金属(P換算で0.03重量%)を含んでいた。以下の表1は、それぞれの焼成温度で焼成した乾燥押出物粒子のある性質を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
触媒B
触媒Bは、初めに、200重量部の脱イオン水に、264.9重量部の硝酸コバルト(Co(NO・6HO)を溶解して水性コバルト溶液を形成することにより調製した。水性コバルト溶液をミュラーミキサー内で、3278.7重量部の広い細孔アルミナ、新しいCo/Mo/P/Ni水素化触媒(2.9重量%のCo、12.0重量%のMo、0.09重量%のP、および0.02重量%のNi)の粉砕微粉680.3重量部、301.1重量部の三酸化モリブデン粉末、30重量部の市販の押出し助剤および28.46.8重量部の脱イオン水と一緒に混合した。この混合物を、1.3mm三分割ダイスを使用して押出した。押出物を100℃で乾燥した。
【0055】
乾燥した押出物粒子のアリコート部分をそれぞれ空気中で2時間、593℃(1100°F)および677℃(1250°F)で焼成した。最終焼成混合物は、2.2重量%のコバルト金属(CoO換算で2.8重量%)、7.9重量%のモリブデン金属(11.85重量%MoO)および0.02重量%のリン金属(P換算で0.04重量%)を含んでいた。以下の表2は、それぞれの焼成温度で焼成した乾燥押出物粒子のある性質を示す。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例II
この実施例は、実施例Iで説明した触媒を試験するのに使用される方法を説明する。この方法は、100ppm未満の硫黄を有する生成物を生成するために蒸留物供給原料の硫黄含有量の除去を与える。
【0058】
単一反応管システムを、このテストを実施するために使用した。加熱ブロックは、5つの帯域炉で加熱される管状50インチ5/8−インチIDステンレススチール(317 SS)反応器を含んでいた。温度制御は、反応器の長さ方向軸に取り付けた、触媒床の中心に位置するRTDプローブで測定される反応器内部温度に基づいた。それぞれの管状反応器に、触媒Aまたは触媒Bの50cmを積み上げ床配置で入れた。70−80メッシュサイズ炭化ケイ素粒子の6−インチを含む前および後反応器帯域が反応器帯域の底部および頂部に置かれた。流動分布を改善し、油、触媒、およびガス接触を最大にするために、触媒を、70−80メッシュ炭化ケイ素と1:1比で混合した。
【0059】
触媒床を、以下の手順を使用して硫化することにより活性化した。
水素ガスを、周囲圧力で、1200SCF/(供給物のB)の速度で反応器へ導入し、供給物を、周囲温度で、1.5/時間のLHSVを与えるための速度で反応器へ導入した。供給物は、およそ2.5重量%の全硫黄水準までTNPSでスパイクされた直留ディーゼルであった(供給物の性質は表2で示される)。供給物が床を通り抜けたら、触媒温度を、65°F/時間の速度で450°Fまで漸進的に上昇させ、次いで、450°Fで4時間保った。次いで、温度を、50°F/時間の速度で450°Fから650°Fまで上げ、次いで、650°Fで2時間保った。その後、システムを冷却させた。その後、スパイクされていない供給物を、1.0/時間のLHSVを与えるための速度で反応器へ導入し、400°Fの温度で維持し、水素を、1200SCF/(供給物のB)の速度および300psigの全圧力で導入した。
【0060】
反応器へ入れたディーゼル供給原料はMayan原油からのものであった。ASTM方法D−2887で決定された供給原料の蒸留特性は表3で示される。表4は供給原料のある種のその他の性質を示す。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
触媒の活性化後に、供給原料を水素ガスと一緒に反応器へ入れた。反応器を300psigの圧力で維持し、供給原料を、1.0/時間の液体毎時空間速度(LHSV)を与えるための速度で反応器へ入れ、水素を1200SCF/bblの割合で入れた。反応器の温度を、どちらも660°Fで固定した。
【0064】
図1では、本発明の触媒Aおよび比較触媒Bに対する稼動時間の関数として、供給原料の10ppm生成物硫黄含有量に合致させるために必要とされる計算した重量平均床温度(WABT)のプロットが示される。図1で示されたデータから観察されるように、本発明の触媒Aは長期にわたる触媒活性を示し、これは、比較触媒の活性よりも著しく高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料、三酸化モリブデンおよびニッケル化合物を共混練して混合物を形成すること、
前記混合物を粒子に成形すること、ならびに
前記粒子を焼成して、焼成混合物を得ること
を含み、前記焼成混合物は、金属換算のモリブデンと焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると7重量%から22重量%の範囲内のモリブデン含有量ならびにその元素形態での第VIII族金属と焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると3重量%から12重量%の範囲内の第VIII族金属含有量を有する、
超低硫黄蒸留生成物の製造における蒸留物水素化脱硫触媒として使用するための組成物の製造方法。
【請求項2】
前記焼成工程が、焼成温度が、約600℃(1112°F)から約760℃(1400°F)の範囲内である、制御された温度条件下で、所望の細孔構造を有する前記焼成混合物を得るのに有効な焼成時間実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所望の細孔構造が、前記焼成混合物の全細孔容積の少なくとも70%が、70オングストロームから150オングストロームの範囲内の径を有する前記焼成混合物の細孔中に存在するような前記焼成混合物についての細孔サイズ分布を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物が、三酸化モリブデン、ニッケル化合物および無機酸化物材料から本質的になる、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物が、モリブデン塩化合物を含まない材料を有する、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記共混練工程が、前記混合物が3から6の範囲内に維持されるpHを有するように実施される、請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
【請求項7】
無機酸化物材料、三酸化モリブデンならびに第VIII族金属化合物(この第VIII族金属化合物はニッケル化合物およびコバルト化合物からなる群から選択される。)を含む混合物を焼成して作製される焼成混合物を含み、前記焼成混合物は、金属換算のモリブデンと焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると7重量%から22重量%の範囲内のモリブデン含有量ならびにその元素形態での第VIII族金属と焼成混合物の全重量とに基づく重量%を用いると3重量%から12重量%の範囲内の第VIII族金属含有量を有する、超低硫黄蒸留生成物の製造における蒸留物水素化脱硫触媒として使用するための組成物。
【請求項8】
前記焼成混合物が、前記焼成混合物の全細孔容積の少なくとも70%が70オングストロームから150オングストロームの範囲内の径を有する前記焼成混合物の細孔中に存在するような細孔サイズ分布を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
適切な蒸留物脱硫プロセス条件下で、第一硫黄濃度を含む蒸留物供給原料を、請求項1、2、3、4、5または6に記載の方法で作製された蒸留物水素化脱硫触媒組成物についての請求項7または8に記載の組成物と接触させること、および
第二硫黄濃度を有する前記超低硫黄蒸留生成物を生成すること
を含む、超低硫黄蒸留生成物の製造方法。
【請求項10】
前記第一硫黄濃度が0.01重量%(100ppmw)から2重量%(20,000ppmw)の範囲内であり、前記第二硫黄濃度が50ppmw未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記適切な蒸留物脱硫プロセス条件が、200℃から420℃の範囲内の水素化脱硫温度、690kPaから13,800kPaの範囲内の水素化脱硫反応圧力および0.1/時間から10/時間の範囲内の液体毎時空間速度を含む、請求項9または10に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−49857(P2013−49857A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−220062(P2012−220062)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2009−523038(P2009−523038)の分割
【原出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】