説明

モルタルの被覆方法及びモルタルで被覆された受振構造物

【課題】構造物が供用中の道路橋のように、継続的に振動がある受振構造物の下地表面にモルタルを被覆する場合であっても、当該モルタルが振動による変形、垂れ又は剥落が生じ難いモルタルの被覆方法及びモルタルで被覆された受振構造物を提供すること。
【手段】本発明は、受振構造物の下地表面に特定の樹脂シートを配設し且つ該樹脂シート表面にモルタルを被覆すること。シート配設工程と上記モルタル被覆工程の順序が特定であると好適である。また、軟質樹脂シートが、特定の硬度であると好適である。また、モルタルが耐火被覆モルタルであると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタルの被覆方法及びモルタルで被覆された受振構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の表面に、耐火被覆モルタル等のモルタルを被覆することがある。構造物が道路橋のように継続的に振動がある場合は、構造物の下地表面にモルタルを被覆しても、振動によりモルタルが構造物表面から剥落する虞がある。これは、モルタルが硬化した上で充分な強度に達する前に、振動によりモルタルに与えられる応力が、モルタルの強度(例えば、付着強度、圧縮強度、曲げ強度、せん断強度など)を上回った場合に、被覆したモルタルの一部又は全部が変形又は垂れが生じ、破壊又は剥離を起こし、或いは剥落してしまう。
【0003】
さて、モルタルが構造物表面から剥落等することを防ぐ方法として、例えば、モルタル表面に繊維シートを貼り付ける方法(例えば、特許文献1参照)、モルタル表面にエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等からなるプライマー層およびウレタン硬化物によって形成された補強層を設ける方法(例えば、特許文献2参照)等がある。これらの方法は、下地表面の下側にモルタルを被覆する場合、即ち、構造物の天井部分、庇部分の下側等にモルタルを被覆する場合は有効であることがある。しかし、構造物が供用中の道路橋のように、全面車両通行止めをしない限り常に振動がある構造物の表面にモルタルを被覆する場合は、構造物の下地表面が略垂直な部分や構造物の下地表面の下面に被覆したモルタルが、被覆したモルタルが充分な強度となる前に振動が与えられ、上記の剥落を防止する方法を施しても、モルタルが下地表面から剥落、剥離又はずり落ちてしまう虞が高かった。勿論、被覆したモルタルが充分な強度となるまでの時間について全面車両通行止めを行いモルタルを被覆すればこのような問題は起こらないが、交通渋滞の発生、回り道をするために余計に消費される燃料に基づく二酸化炭素の発生や輸送コストの増大等の社会的損失が大きくなるため、構造物表面にモルタルを被覆するために充分な時間全面車両通行止めが行われないことも多い。
【0004】
そこで、構造物が供用中の道路橋のように、継続的に振動がある構造物(本明細書中において「受振構造物」ということがある。)の下地表面にモルタルを被覆しても、当該モルタルが剥落し難いモルタルの被覆方法及びモルタルで被覆された構造物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−255517号公報
【特許文献2】特開2008−285972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題の解決、即ち、本発明は、モルタルの被覆方法及びモルタルで被覆された受振構造物を提供することを目的とする。より詳しくは、本発明は、構造物が供用中の道路橋のように、継続的に振動がある受振構造物の下地表面にモルタルを被覆する場合であっても、当該モルタルが振動による変形、垂れ、破壊、剥離又は剥落が生じ難いモルタルの被覆方法及びモルタルで被覆された受振構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、本発明は、受振構造物の下地表面に特定の樹脂シートを配設し且つ該樹脂シート表面にモルタルを被覆することにより、前記課題を解決することを見出し本発明を完成させた。本発明は、以下の(1)〜(4)で表すモルタル被覆方法、並びに(5)及び(6)で表すモルタルで被覆された受振構造物である。
(1)受振構造物の下地表面に軟質樹脂シートを配設する工程、及び該軟質樹脂シート表面にモルタルを被覆する工程とを備えるするモルタル被覆方法。
(2)上記シート配設工程の後に、上記モルタル被覆工程を行う上記(1)のモルタル被覆方法。
(3)上記軟質樹脂シートが、ショアD硬度60以下の樹脂シートである上記(1)又は(2)のモルタル被覆方法。
(4)上記モルタルが耐火被覆モルタルである上記(1)〜(3)何れかのモルタル被覆方法。
(5)構造物の下地表面に軟質樹脂シートを具備し、更に、該軟質樹脂シート表面にモルタルを具備するモルタルで被覆された受振構造物。
(6)上記(1)〜(3)何れかのモルタル被覆方法によって、上記軟質樹脂シート表面にモルタルを具備する上記(5)のモルタルで被覆された受振構造物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構造物が供用中の道路橋のように、継続的に振動がある受振構造物の下地表面にモルタルを被覆する場合であっても、当該モルタルが振動による変形、垂れ、破壊、剥離又は剥落が生じ難いモルタルの被覆方法及びモルタルで被覆された受振構造物が得られる。また、本発明によれば、表面に被覆したモルタルの効果を備えた受振構造物が得られる。例えば、被覆するモルタルが耐火被覆モルタルの場合、耐火性を備える受振構造物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ステンレス製金網の概略図である。
【図2】試験体一部分の模式的な断面図である。
【図3】剥落確認試験用試験体の模式的な斜視図である。
【図4】剥落確認試験用試験体の加振箇所を示した模式的な平面図である。
【図5】用いたタッピン螺子の側面図である。
【図6】モルタルを被覆する前の剥落確認試験用試験体の一部分の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のモルタル被覆方法は、受振構造物の下地表面に軟質樹脂シートを配設する工程(シート配設工程)、及び該軟質樹脂シート表面にモルタルを被覆する工程(モルタル被覆工程)とを備えるするモルタル被覆方法である。
【0011】
本発明におけるモルタルとは、結合材と骨材を含有するものを云い、例えば、セメントモルタル、ポリマーモルタル、ポリマーセメントモルタル、吹付けロックウール等がある。結合材としては、有機質結合材及び無機質結合材の何れを用いることも、また更に両者を併用することもできる。本発明に用いる有機質結合材としては、天然樹脂、合成樹脂及びその原材料が挙げられ、エチレン、ブタジエン、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、炭素数4以上の長鎖脂肪酸ビニルエステル、シロキサン、アクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル並びにこれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上の重合体、或いは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アスファルト、ゴムアスファルト等が好ましいものとして例示できる。前記の重合体としては、アクリロニトリル・スチレン共重合体、スチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・ネオデカン酸ビニルエステル(商品名:ベオバ)共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキルエステル・シリコーン共重合体及びエチレン・酢酸ビニル共重合体から選ばれる共重合体であるのが好ましい。有機質結合材の形態は、液体、エマルション、固体の何れでもよいが、液体、エマルション又は粉末であると、他の材料との混合性が良いことから好ましい。
【0012】
また、本発明に用いる無機質結合材としては、ポルトランドセメント、アルミナセメント、混合セメント、超速硬セメント等の水硬性セメント、消石灰や石膏等の気硬セメント、硫黄などが例示できる。特に水硬セメントが、取り扱い易く且つ早期に強度が得易いことから好ましい。この水硬性セメントとしては、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、並びにこれらポルトランドセメント又はエコセメントに、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメント、太平洋セメント社製「ジェットセメント」(商品名)や住友大阪セメント社製「ジェットセメント」(商品名)等の超速硬セメント、アルミナセメント等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0013】
また、本発明に用いる骨材としては、モルタルやコンクリートに使用可能な骨材であればよく、例えば、川砂、海砂、山砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生細骨材、スラグ細骨材、珪砂、石粉、川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、再生粗骨材、スラグ粗骨材等が挙げられ、これらの一種又は二種以上の使用が可能である。本発明で用いるモルタルに、軽量骨材を含有させることが、当該モルタルが振動による変形、垂れ又は剥落が生じ難いことから好ましい。この軽量骨材としては、無機質軽量骨材や有機質軽量骨材の何れでも良く、併用することもできる。無機質軽量骨材としては、例えば天然鉱物の発泡又は膨張した物質である膨張バーミキュライト,パーライト,膨張頁岩,軽石,シラスバルーン等の他、シリカゲルを発泡させた物,各種のスラグを造粒して発泡させた物,ガラス屑を造粒して発泡させた物,粘土粉体を造粒して発泡させた物等のような人工軽量骨材が使用できる。また、無機質軽量骨材として、製鉄所の高炉から副生する高炉スラグ、玄武岩、安山岩、輝緑岩などの天然石をキュポラ、電気炉等で融解した後に、遠心力、空気、水蒸気などの流体圧で吹製して繊維化したロックウール(岩綿、スラグウール、ミネラルウールとも称される)を、解砕機等で粒状にしたロックウール粒状綿も使用できる。また、有機質軽量骨材としては、合成樹脂又はゴム等のかさ比重2以下である固形且つ水に不溶又は難溶である有機物が使用でき、その好ましい例としてはポリスチレン,ポリエチレン,ポリエチレン−酢酸ビニル共重合物,ポリプロピレン,ポリウレタン,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,天然ゴム,合成ゴム等がある。その形状は、粒状物、発泡体などが使用できる。また、炭酸カルシウムやフライアッシュ等の無機質粉末を有機質に混ぜて形成した無機質粉末含有の有機質軽量骨材(例えば、発泡炭酸カルシウム)等を用いることができる。
【0014】
本発明に用いる軟質樹脂シートとしては、スポンジ状樹脂シート、軟質樹脂板、軟質樹脂織物等が挙げられる。この軟質樹脂シートに用いる樹脂としては、シリコーンゴム,ウレタンゴム,スチレン・ブタジエンゴム,ブチルゴム,アクリルゴム,クロロプレンゴム等の合成ゴム、天然ゴム、軟質ポリエチレン、軟質ポリプロピレン、軟質ポリビニル樹脂、ポリスチレン等が好ましいものとして例示できる。本発明に用いる軟質樹脂シートは、ショアD硬度60以下の樹脂シートであることが好ましい。また、本発明に用いる軟質樹脂シートは、シートの厚みが0.5〜20mmのものが好ましく、より好ましくは1〜15mmの軟質樹脂シート、更に好ましくは2〜10mmの軟質樹脂シートとする。軟質樹脂シートの厚みが0.5mmよりも薄いと、構造物の振動が被覆するモルタルに伝わり易く、軟質樹脂シートの厚みが20mmよりも厚いと、カッター又は鋏みによる切断が行えないためシート配設工程に労力が著しく掛かる。
【0015】
受振構造物の下地表面に軟質樹脂シートを配設する方法は、特に限定されない。例えば、受振構造物の下地表面の形状に合わせて軟質樹脂シートを成形した後に該構造物の下地表面に軟質樹脂シートを止める方法、受振構造物の下地表面に軟質樹脂シートを止めた後に下地表面の形状に合わせて軟質樹脂シートを成形する方法などがある。構造物の下地表面を1枚の軟質樹脂シートで覆いきれない場合は、複数の軟質樹脂シートにより覆うようにする。このとき、各軟質樹脂シートを一部又は全部重ねても良いし、1cm程度の隙間を空けても良い。また、受振構造物の下地表面に軟質樹脂シートを止める方法は、接着剤による接着、溶着、釘打ち、鋲打ち、ステープル、螺子止め、ボルト止め等を用いることができる。軟質樹脂シートの全面を接着剤等で受振構造物の下地表面に止めるよりも、部分的に下地表面に止める方が、構造物の振動が被覆するモルタルに伝わり難いことから好ましい。例えば、軟質樹脂シート裏面(下地表面側の面)に点又は線状に接着剤付け接着する方法、点又は線状に溶着する方法、釘打ち、鋲打ち、ステープル、螺子止め、ボルト止め等がある。
【0016】
モルタル被覆工程において、軟質樹脂シート表面にモルタルを被覆する方法は、特に限定されない。例えば、吹付け工法、鏝塗り、型枠を設置し型枠と軟質樹脂シートの間にモルタルを打ち込む又は充填する方法等がある。吹付け工法又は/及び鏝塗りにより、軟質樹脂シート表面にモルタルを被覆することが型枠を設置する必要が無いことから好ましい。また、軟質樹脂シートと被覆するモルタルの接着力を高める等の目的で、モルタルを被覆する前の軟質樹脂シート表面に、スチレン・ブタジエンゴムエマルション,アクリル樹脂エマルション,エポキシ樹脂等のプライマーを塗布しても良い。
【0017】
本発明のモルタル被覆方法は、鋼製道路橋、鉄筋コンクリート製道路橋、コンクリートと鋼殻の合成構造からなる道路橋、鋼製鉄道橋、鉄筋コンクリート製鉄道橋、鉄筋コンクリート製タービン建屋、鋼製工場屋根等の新設工事或いは補修工事又は補強工事に好適に用いることができる。また、本発明のモルタル被覆方法は、これら受振構造物の上面、下面、壁面、内部の何れにも用いることができる。尚、道路橋及び鉄道橋には、高架橋が含まれる。
【0018】
また、本発明のモルタルで被覆された受振構造物は、受振構造物の下地表面に軟質樹脂シートを具備し、更に、該軟質樹脂シート表面にモルタルを具備するモルタルで被覆された構造物である。ここでいう軟質樹脂シート及びモルタルは、上記のものと同じものである。本発明のモルタルで被覆された構造物は、上記何れかのモルタル被覆方法により、構造物の下地表面に具備した軟質樹脂シート表面にモルタルを被覆された受振構造物であると好適である。モルタルが耐火被覆モルタルであると、本発明のモルタルで被覆された受振構造物が耐火構造物となることから好適である。
【実施例】
【0019】
[実施例1]
[樹脂シート硬さ試験]
剥落確認試験試験に使用する樹脂シートにおいて、JIS Z 2246「ショア硬さ試験」に従い硬さを測定した。試験片は40mm×40mm×10mmとし、D型試験機を使用した。測定結果を表1に示した。
【0020】
【表1】

【0021】
[剥落確認試験用試験体作製]
鋼橋に用いられる普通鋼材としては、一般構造用圧延鋼材(JIS G 3101)、溶接構造用圧延鋼材(JIS G 3106)、溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材(JIS G 3114)があるが、本試験においては一般構造用圧延鋼材(JIS G 3101)を使用した。鋼橋床桁に耐火被覆材(モルタル)を被覆する場合を模擬した試験体を作製した。鋼橋床桁におけるH型鋼フランジ下部を参考に、300×2000×9mmの鋼板(SS400)を用い、この鋼板に樹脂エマルション(プライマー)を塗布した樹脂シート(平板)11を図1に示したステンレス製金網2(線径1.6mm、線間隔50mm、格子間隔(目開き)48.4mm)とともに図5に示したタッピン螺子5を用いて螺子止めをした。このとき、樹脂シート11のプライマーを塗布した面が、ステンレス製金網2と接するように配置した。各タッピン螺子の間隔(螺子中心部分の距離)は、鋼板長手方向では300mm、鋼板短手方向では200mmとした。つまり、12個のタッピン螺子5を用いて、ステンレス製金網2とともに樹脂シート11を螺子止めにより鋼板1に固定した。鋼板1のタッピン螺子5を取り付ける位置には、予め直径4.6mmの刃を用いてドリルで深さ7mmの孔(下孔9)を空けておいた。また、螺子止めするときに、平ワッシャー6をタッピン螺子5とステンレス製金網2の間に挟み込んだ。用いた樹脂シート11の形状は、300×2000mmで、厚みは2mm、5mm及び10mmのものを用いた。また、用いたステンレス製金網2は、一部分が凹み金網取付部12を形成しており、この部分にタッピン螺子を用いて、樹脂シート11とともに鋼板1に螺子止めをした。このとき、樹脂シート11からステンレス製金網2の上端部までの距離は15mmであった。また、タッピン螺子5には、タッピングする為に設けられている溝14が備わっている。モルタルを被覆する前の剥落確認試験用試験体の一部分の模式的な斜視図を図6に示した。
【0022】
この後、普通ポルトランドセメント、膨脹バーミュキライト及び混和材料を含有する市販の耐火被覆材(耐火被覆モルタル)を、ステンレス製金網2を埋設するように吹き付けた後、金鏝により耐火被覆材の厚みが25mmとなるように平らに均し成形したものを試験体とした。比較例の試験体として、樹脂シートを用いずに、鋼板にプライマーを塗布した後にステンレス製金網タッピン螺子を取り付け、他と同様に耐火被覆材で被覆した試験体も作製した。何れの耐火被覆材層の形状も、300×1800×25mmである。このモルタル被覆工程は、20℃の恒温室で行った。
【0023】
[剥落確認試験]
作製した試験体を1時間そのまま静置した後に、耐火被覆材層が鋼板の下側になるように試験体を静かに裏返し、鋼板の端部から50mmの位置を鋼材(支点)4で図3のように支えた。1kgの鋼製ハンマーを垂直位置から略その自重のみで振り下ろして鋼板1に振動を加えた。ハンマーを振り下ろす箇所(加振箇所8)は、図4に示した100mm間隔の格子点(図中○で示した。)として、各加振箇所毎に50回ハンマーを振り下ろし鋼板1に振動を加えた。振動を加え終わった後に、耐火被覆材(モルタル)の剥落の有無を目視で確認した。剥落の有無を、用いた樹脂シートの種類及び厚みとともに表2に示した。尚、耐火被覆材(モルタル)は、振動を加え終わった直後において未硬化であった。
【0024】
【表2】

【0025】
試験結果から、本願発明の実施例に当たる試験体(No.1〜12)は、振動による耐火被覆材の変形、垂れ又は剥落は全く見られなかったが、比較例に当たる試験体(No.13〜15)は、何れも振動による耐火被覆材の剥落が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のモルタル被覆方法は、供用中の道路橋又は供用中の鉄道橋、或いは稼働中のタービン建屋又は稼働中の工場建屋等の継続的に振動がある構造物(受振構造物)の補修工事、補強工事等に使用することができる。また、本発明のモルタルで被覆された受振構造物は、道路橋、鉄道橋、稼働中のタービン建屋及び工場建屋等として用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 鋼板(鋼橋床桁を模したときの受振構造物の下地)
2 ステンレス製金網
3 耐火被覆材(耐火被覆モルタル)
4 鋼材(支点)
5 タッピン螺子
6 平ワッシャ
7 格子点の間隔(100mm)
8 加振箇所
9 下孔
10 試験体
11 樹脂シート
12 金網取付部
13 耐火被覆材層(耐火被覆モルタル)5の厚み
14 タッピングする為に設けられている溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受振構造物の下地表面に軟質樹脂シートを配設する工程、及び該軟質樹脂シート表面にモルタルを被覆する工程とを備えるするモルタル被覆方法。
【請求項2】
上記シート配設工程の後に、上記モルタル被覆工程を行う請求項1記載のモルタル被覆方法。
【請求項3】
上記軟質樹脂シートが、ショアD硬度60以下の樹脂シートである請求項1又は請求項2記載のモルタル被覆方法。
【請求項4】
上記モルタルが耐火被覆モルタルである請求項1〜3何れか記載のモルタル被覆方法。
【請求項5】
受振構造物の下地表面に軟質樹脂シートを具備し、更に、該軟質樹脂シート表面にモルタルを具備するモルタルで被覆された受振構造物。
【請求項6】
請求項1〜3何れかのモルタル被覆方法によって、上記軟質樹脂シート表面にモルタルを具備する請求項5のモルタルで被覆された受振構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96104(P2013−96104A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238175(P2011−238175)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)