説明

モルタル供試体およびそれを用いたセメントの品質管理システム

【課題】 モルタル供試体を水中にて養生している間に、バーコードシールがモルタル供試体の表面から剥がれることのないモルタル供試体を用いてモルタル供試体の強度測定の情報を生産に関する情報と試験依頼に関する情報とを関連付けた情報として通信ネットワークを介して管理サーバに蓄積することにより、人手による転記ミスを防止し、部署間での情報の共有化と品質管理の効率化を図る。
【解決手段】 背板面にバーコードシールを貼付した耐食性クリップにより、端部が留められていることを特徴とするモルタル供試体を用いて、モルタル供試体の強度測定の情報を、生産に関する情報と試験依頼に関する情報とを関連付けた情報として通信ネットワークを介して管理サーバに蓄積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル供試体およびそれを用いたセメントの品質管理システムに関するもので、特に、モルタル供試体の強度測定の情報を、生産に関する情報と試験依頼に関する情報と関連付けた情報として通信ネットワークを介して管理サーバに蓄積することができるセメントの品質管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セメントの品質管理の重要な試験項目の一つとしてモルタル供試体の強度試験があり、その試験方法は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」により詳細に定められている。
その試験方法のなかで、モルタル供試体の大きさは、曲げ試験の供試体は断面40×40mm、長さ160mmの角柱を用い、圧縮試験用の供試体は曲げ試験に使用した供試体の両切片を用いると規定されている。
ここで、このモルタル供試体は、強度測定に供する前に、成形後1日(湿気箱中24時間)、3日(湿気箱中24時間、水中2日間)、7日(湿気箱中24時間、水中6日間)および28日(湿気箱中24時間、水中27日間)、および91日(湿気箱中24時間、水中90日間)を経た後に行うとされている。
【0003】
ここで、モルタル供試体を水中にて養生する際に、養生槽に浸漬されている他のモルタル供試体と区別して目的の供試体を容易に選び出せるように、セメントの生産に関する情報(生産工場名、生産日、セメント種別等)を各モルタル供試体の表面に墨で手書きしていた。
しかし、このような人手による手書きによる方法は、セメントの生産に関する情報の転記ミスによるモルタル供試体の取り違えが起こるという課題があった。さらには、モルタル供試体の強度測定を行った後に、試験結果を報告書としてまとめる際には、このような手書きによる情報を再度、人手によりパソコンへ再入力する操作が必要となり効率的でないという課題があった。
【0004】
このような課題に対して、脱型したコンクリート製品の表面にバーコードシールを貼付するコンクリート二次製品の品質管理方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】 特開平11−34035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、モルタル供試体の表面に直接、バーコードシールを貼付する方法は、モルタル供試体の表面に水分や油分が多いため、モルタル供試体の表面とバーコードシールとの付着強度が弱いという課題があった。
【0006】
さらには、モルタル供試体を水中にて養生している間に、バーコードシールがモルタル供試体の表面から剥がれるという課題もあった。
【0007】
したがって本発明の目的は、モルタル供試体を水中にて養生している間に、バーコードシールがモルタル供試体の表面から剥がれることのないモルタル供試体を提供することである。
さらには、本発明のモルタル供試体を用いて、モルタル供試体の強度試験の情報を、生産に関する情報と試験依頼に関する情報と関連付けた情報として通信ネットワークを介して管理サーバに蓄積することにより、人手による転記ミスを防止し、部署間での情報の共有化と品質管理の効率化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した本発明の目的は、背板面にバーコードシールを貼付した耐食性クリップにより、端部が留められていることを特徴とするモルタル供試体によって達成される。
【0009】
また、上記した本発明の目的は、セメントを製造し管理する生産部と、生産部からの依頼により前記モルタル供試体の強度試験を行う試験部と、管理サーバと、が互いに通信ネットワークを介して接続されているセメントの品質管理システムであって、前記試験部にはバーコードシールの情報を読み取るリーダーと、前記モルタル供試体の強度試験データに関連する情報とを前記管理サーバへ送信する手段とを備え、かつ、前記管理サーバに蓄積された、生産部の生産および依頼試験に関する情報と、前記バーコードシールの情報と、前記強度試験データに関連する情報と、が前記通信ネットワークを介して生産部および試験部において閲覧可能に管理されていることを特徴とする前記のモルタル供試体を用いたセメントの品質管理システムによっても達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、モルタル供試体を水中にて養生している間に、バーコードシールがモルタル供試体の表面から剥がれることのないモルタル供試体を提供することができる。
さらには、本発明のモルタル供試体を用いて、モルタル供試体の強度試験の情報を、産に関する情報と試験依頼に関する情報とを関連付けた情報として通信ネットワークを介して管理サーバに蓄積することにより、人手による転記ミスを防止し、部署間での情報の共有化と品質管理の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明では、背板面にバーコードシールを貼付した耐食性クリップにより、端部が留められていることを特徴とするモルタル供試体を提案している。
【0013】
本発明に係るクリップの斜視図を図1に示した。図1において、1はクリップであり、その背板面には、バーコードシール2が貼付されている。
また、本発明に係るクリップを端部に留めたモルタル供試体の斜視図を図2に示した。
図2において、3はモルタル供試体であり、その端部(図面では、両端部)は、背板面にバーコードシール2を貼付した耐食性クリップ1が留められている。
【0014】
ここで、本発明で耐食性クリップとする理由は、耐食性がないと水中で錆びるからである。したがって、クリップの材料としては、耐食性とバネ性の両方の特性を備えることが好ましく、特に、ステンレス鋼を用いることが好ましい。本発明では、幅40mmで、厚み0.5mmのステンレス鋼を用い、これを図1に示すような所望形状に加工してクリップとした。
【0015】
次に、セメントを製造し管理する生産部からの試験依頼に基づいて、生産に関する情報(本発明では、生産工場名、生産日、セメント種別等)と試験依頼に関する情報(本発明では、モルタル強度試験依頼番号、依頼日等)とを関連付けた情報をバーコード化したものをシール表面に印刷したバーコードシールを作成して、これを図1に示した耐食性クリップの背板面に貼付した。
【0016】
このようにして得られた、背板面にバーコードシールを貼付した耐食性クリップを、モルタル供試体の端部に留めて、図2に示したような本発明の実施例に係るモルタル供試体を得た。次に、得られたモルタル供試体を27日間水中にて養生したが、バーコードシールがクリップの背板面から剥がれることはなかった。
【0017】
また、本発明では、セメントを製造し管理する生産部と、生産部からの依頼により前記モルタル供試体の強度試験を行う試験部と、管理サーバと、が互いに通信ネットワークを介して接続されているセメントの品質管理システムであって、前記試験部にはバーコードシールの情報を読み取るリーダーと、前記モルタル供試体の強度試験データを前記管理サーバへ送信する手段とを備え、かつ、前記管理サーバに蓄積された、生産部の生産および依頼試験に関する情報と、前記バーコードシールの情報と、前記強度試験データに関連する情報と、が前記通信ネットワークを介して生産部および試験部において閲覧可能に管理されていることを特徴とする前記のモルタル供試体を用いたセメントの品質管理システムを提案している。
【0018】
ここで、本発明に係るセメントの品質管理システムについて、図3及び図4を用いて説明する。図3は、本発明に係るセメントの品質管理システム概略構成を示す図であり、図4は、その管理システムの概要を示すフローチャート図である。
【0019】
本発明に係るセメントの品質管理システムの概略構成は、図3に示すように、セメントを製造する生産部と、生産部からの依頼により前記モルタル供試体の強度試験を行う試験部と、管理サーバと、が互いに通信ネットワークを介して接続されているセメントの品質管理システムである。なお、前記通信ネットワークには、生産部以外の依頼試験顧客が接続されていても良い。
ここで、前記試験部にはバーコードシールの情報を読み取るリーダーと、前記モルタル供試体の強度試験データを前記管理サーバへ送信する手段とを備え、かつ、前記管理サーバに蓄積された、生産部の生産および依頼試験に関する情報と、前記バーコードシールから読み取った情報と、前記強度試験データに関連する情報と、が前記通信ネットワークを介して生産部および試験部において閲覧可能に管理されていることを特徴としている。
【0020】
次に、本発明のセメントの品質管理システムの概要について図4を用いてさらに説明する。
(生産部内での作業フロー)
まず、生産部は、生産に関する情報(本発明では、生産工場名、生産日、セメント種別等)を管理サーバへ登録する。次に、試験部に依頼する試験依頼の情報(本発明では、モルタル強度試験依頼番号、依頼日等)を管理サーバへ登録するとともに、試験部に試験依頼を行う。なお、生産部から試験部への試験依頼は従来からの文書による方法でも良いが、本発明の通信ネットワークを介して行っても良い。
【0021】
(試験部内での作業フロー)
試験部は、セメントを製造し管理する生産部からの試験依頼に基づいて、生産に関する情報(本発明では、生産工場名、生産日、セメント種別等)と試験依頼に関する情報(本発明では、モルタル強度試験依頼番号、依頼日等)とを関連付けた情報を管理サーバにも登録するとともに、関連付けた情報をバーコード化したシール(以下、バーコードシールと呼ぶ。)を作成して、これを耐食性クリップの背板面に貼付する。次に、バーコードシールを貼付した耐食性クリップをモルタル供試体の端部(少なくとも一端部で、両端部でも良い。)に留めてから前記にて開示した方法にて水中養生を行う。
【0022】
次に、試験部では、JISで定められた期間水中養生した後のモルタル供試体を水中から取り出し、リーダーによりバーコードシールの情報を読み取り、その内容を強度試験装置内のデータ処理部に送信する。次に、予め決められた試験方法に基づいて強度試験装置によりモルタル供試体の強度試験を行う。このようにして得られた強度試験データは、強度試験装置内のデータ処理部内でバーコードシールの情報と対応付けられた後に、強度試験に関連する情報として通信ネットワークを介して管理サーバへ送信され、試験依頼に関する情報(試験依頼結果)として登録される。ここで、試験依頼結果としては、試験依頼番号、試験実施日、強度試験データ等が生産に関する情報と関連付けられた情報として登録されている。
【0023】
(生産部および試験部内での作業フロー)
次に、生産部および試験部内では、通信ネットワークを介して管理サーバにアクセスし、管理サーバ内に蓄積された試験依頼結果の閲覧を行い、セメントの品質管理を行う。
ここで、試験部において、管理サーバ内に蓄積された試験依頼結果を印刷して文書で生産部に試験結果を報告しても良い。
【0024】
このように、本発明のセメントの品質管理システムは、モルタル供試体の強度試験の情報を、生産に関する情報と試験依頼に関する情報と関連付けた情報として通信ネットワークを介して管理サーバに蓄積し閲覧可能とすることができるため、部署間での情報の共有化と品質管理の効率化に大いに貢献することができる。
【0025】
なお、本発明では、セメントの品質管理システムの中で、モルタル供試体の強度試験を中心として説明したが、本セメントの品質管理システムの中には、化学分析、蛍光X線分析、凝結・粉末度・密度試験、水和熱試験等のその他のセメントの品質管理試験の情報を通信ネットワークを介して本発明の管理サーバに蓄積して管理しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るクリップの斜視図である。
【図2】本発明に係るクリップを端部に留めたモルタル供試体の斜視図である。
【図3】本発明に係るセメントの品質管理システム概略構成を示す図である。
【図4】本発明の管理システムの概要を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0027】
1;クリップ
2;バーコードラベルシール
3;モルタル供試体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背板面にバーコードシールを貼付した耐食性クリップにより、端部が留められていることを特徴とするモルタル供試体。
【請求項2】
セメントを製造し管理する生産部と、生産部からの依頼により前記モルタル供試体の強度試験を行う試験部と、管理サーバと、が互いに通信ネットワークを介して接続されているセメントの品質管理システムであって、前記試験部にはバーコードシールの情報を読み取るリーダーと、前記モルタル供試体の強度試験データに関連する情報を前記管理サーバへ送信する手段とを備え、かつ、前記管理サーバに蓄積された、生産部の生産および依頼試験に関する情報と、前記バーコードシールの情報と、前記強度試験データに関連する情報と、が前記通信ネットワークを介して生産部および試験部において閲覧可能に管理されていることを特徴とする請求項1記載のモルタル供試体を用いたセメントの品質管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−218886(P2007−218886A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66685(P2006−66685)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(398043285)株式会社太平洋コンサルタント (20)
【Fターム(参考)】