説明

モルタル組成物及びこれを用いた軽量モルタル硬化体

【課題】紙資源の活用を図るとともに、その硬化体の比重と強度とをバランス維持させることができ、現場施工が容易で生産性と施工性に優れた盛土工法を行うことのできるモルタル組成物及びこれを用いた軽量モルタル硬化体を提供する。
【解決手段】酢酸ビニル又はパラフィンワックスなどの撥水剤成分を含む紙解砕繊維分が、セメント100質量部に対して15〜40質量部の割合で分散含有されていることを特徴とするモルタル組成物。モルタル組成物100質量部に対して水分150〜300質量部を添加して空気を巻き込ませながら攪拌混合して硬化させ、その硬化後の比重が1.3〜1.5、圧縮強度が900〜3000kN/mとなる軽量モルタル硬化体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙管や紙パイプなどを解砕した紙解砕繊維原料を含むモルタル組成物及びこれを用いた軽量モルタル硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場や家庭などから廃棄される古紙などの紙資源を再生して保全する技術が進んでいる。例えば、古紙と溶解材を撹拌機の中で撹拌して印刷インクなどの不純物を分離除去したものなどが再生紙の素材として利用されている。
一方、セメントモルタル用組成物は、道路舗装部、橋脚,軌道,トンネル構造物などの周辺補修が必要な各種工事や補修部分などへの充填施工、軟弱地盤等への地盤構築を行う盛土工法などの用途に用いられている。
このような紙資源を用いたセメントモルタル組成物に関連して、特許文献1(特開2000−344560号公報)には、粉砕古紙を水溶性合成樹脂エマルジョンによりペーパースラリー化し、該ペーパースラリーと水硬性セメントとを混練した組成物を成形して固化するペーパーモルタルセメント組成物の製造方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2003−3476号公報)には、高品位改良処理盛土材料をもって周囲を囲む外周盛土を造成し、該外周盛土によって囲まれた部分に低品位改良処理盛土材料を充填して硬化させる盛土工法が記載され、この高品位改良処理盛土材料及び低品位改良処理盛土材料に混合する添加材としてセメント系固化材の他、古紙破砕物を使用する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−344560号公報
【特許文献2】特開2003−3476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の紙資源を含む軽量モルタル硬化体は、圧縮強度と、引張強度、せん断強度、曲げ強度とを同時に改善するものではない。また、軽量モルタル硬化体の強度は一般に比重に依存して、軽量化により強度が低下し易いため、紙資源の有効活用に繋がっていないという問題があった。
特に特許文献1のペーパーモルタル組成物では、粉砕古紙を水溶性合成樹脂エマルジョンによりペーパースラリー化したスラリーと水硬性セメントとを混練するので、粉砕古紙の水に対する親和性が大きく、攪拌機などを用いたセメントとの混合過程においてその混合物中に充分な量の気泡を調整して保持させることができず、その硬化後の施工体に所定の比重と強度とをバランスさせた状態で発現させることができないという問題があった。さらに、予め調整したペーパースラリー中の古紙破砕物が凝集し易いため、施工時の時間調整や攪拌状態などの現場施工管理が困難であるという問題もあった。
特許文献2の古紙破砕物を混合した盛土工法のものでは、特許文献1のものと同様に古紙破砕物と処理盛土材料との混合が湿潤状態で行われるので、これらを均一混合させるのに際して多大の手間と時間を要し、高品位の盛土工法が実現しにくいという課題があった。
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、紙資源の活用を図るとともに、その硬化体の比重と強度とをバランス維持させることができ、現場施工が容易で生産性と施工性に優れた盛土工法を行うことのできるモルタル組成物及びこれを用いた軽量モルタル硬化体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明のモルタル組成物は、撥水剤成分を含む紙解砕繊維分が、セメント100質量部に対して15〜40質量部の割合で分散含有するように構成される。
【0006】
(2)本発明のモルタル組成物は、前記(1)において、前記撥水剤成分が酢酸ビニル又はパラフィンワックスであることにも特徴を有している。
【0007】
(3)本発明のモルタル組成物は、前記(1)又は(2)において、前記紙解砕繊維分100質量部に対する前記撥水剤成分の含有量が1〜10質量部であることにも特徴を有している。
【0008】
(4)本発明の軽量モルタル硬化体は、前記(1)〜(3)のモルタル組成物100質量部に対して水分150〜300質量部を添加して空気を巻き込ませながら攪拌混合して硬化させ、その硬化後の比重が1.3〜1.5、圧縮強度が900〜3000kN/mであることを特徴とする。
(5)本発明のモルタル組成物の硬化方法は、前記(1)〜(3)のモルタル組成物100質量部に対して水分150〜300質量部を添加して空気を巻き込ませながら攪拌混合して硬化させ、その硬化後の比重が1.3〜1.5、圧縮強度が900〜3000kN/mとなる軽量モルタル硬化体を作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撥水剤成分を含む紙解砕繊維分がセメントに対して特定割合となるように分散含有されるので、このモルタル組成物を用いた軽量モルタル硬化体に気泡を含む空隙部分を均一かつ効率的に形成させることができ、軽量でしかも所定強度を有した軽量モルタル硬化体とすることができる。こうして、紙資源の有効活用を図ることができるとともに、現場施工管理が容易で生産性と施工性に優れた盛土工法として適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態のモルタル組成物は、撥水剤成分を含む紙解砕繊維分が、セメント100質量部に対して15〜40質量部の割合で分散含有するように構成される。紙解砕繊維分には撥水剤成分が含まれているので、現場などにおける混合攪拌作業において、セメントに分散された紙解砕繊維分の周囲に充分な量の気泡を巻き込んだ軽量で、かつ気泡を均一性に分散させた軽量のモルタル組織を容易かつ確実に形成させることができる。
【0011】
紙解砕繊維分は、工場やオフィス等から回収される紙管、新聞紙、雑誌等の紙類、及び製紙工場から排出される製紙パルプスラッジなどを微細繊維状にしたものが適用できる。なお、紙管は、原料紙やプラスチックシートなどの芯体や粘着テープの芯体などに使われており、この紙管は古紙を酢酸ビニルなどの接着剤を用いて積層して巻回して円筒状に形成したものである。
紙解砕繊維分としては、紙管や古紙などの回収品の他に、例えば、おがくず、木材チップ、ヤシガラ、もみがらなどを、切断したり破砕したりして繊維に解砕して綿状や粉末状にしたものなどが挙げられる。このような紙管や古紙などの回収品の乾燥は、一般的には公知の乾燥機等を用いて行う。
乾燥時の下限温度は50℃、望ましくは80℃であり、上限温度は150℃、望ましくは110℃である。乾燥時間は10〜60分間行うことが好ましい。この他、自然乾燥等により処理することも可能である。
紙解砕繊維分とするには、公知の粉砕機などを用いて、所定サイズ、例えば、1〜10mmのサイズの繊維長に解砕することが望ましい。この繊維長が1mm未満である場合、好ましい表面積を有さず、軽量モルタル硬化体として所定の強度が得られない可能性が高い。一方、繊維分の大きさが10mmを超えると、セメントとの均一分散が困難となる傾向が生じるので好ましくない。
【0012】
撥水剤成分は、前記紙解砕繊維分と混合され、紙解砕繊維とセメントとの間に気泡を保持させるためのものであって、酢酸ビニルやパラフィンワックス、石油樹脂、アスファルト、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が適用できる。中でも酢酸ビニルや、パラフィンワックス、特にアニオン系のパラフィンワックスはその撥水性と価格面から望ましい。パラフィンワックスなどをエマルジョン化させて紙解砕繊維分に含有させる場合には、所定の界面活性剤を添加するとよい。なお、界面活性剤を多量に使用すると、界面活性剤が系中に残存することとなって撥水効果に対して逆に作用し、予期した効果をあげることができない。そこで撥水剤と併用する界面活性剤として、加熱処理によって容易に分解する界面活性剤を用いてこの欠点を補うことも可能である。
【0013】
紙解砕繊維分に含有させる撥水剤成分としては、原料となる紙管などに予め含まれる接着剤としての酢酸ビニルを利用することができる。また、撥水剤成分としては、その融点が65〜75℃のアニオン系パラフィンワックスをエマルジョン化したものを用いることもできる。これによって紙解砕繊維分を水を含んだセメントと撹拌混合したときに、その周囲に所定量の気泡を保持させることができる。
【0014】
撥水剤成分を含む紙解砕繊維分が、セメント100質量部に対して15質量部より少なくなると軽量モルタル硬化体の充分な強度を確保することができず軽量モルタルとしての効果を発揮できない、逆に40質量部を超えると硬化後の圧縮強度が極端に低下する傾向が生じるので好ましくない。
【0015】
本実施形態のモルタル組成物では、前記撥水剤成分が酢酸ビニル又はパラフィンワックスとすることができる。これによって、紙管などの古紙原料に予め含まれる酢酸ビニルやパラフィンワックスなどを有効に利用して、コスト性に優れたモルタル組成物を提供することができる。
【0016】
本実施形態のモルタル組成物は、前記紙解砕繊維分100質量部に対する前記撥水剤成分の含有量が1〜10質量部とすることができる。これによって、紙解砕繊維分を撥水剤成分によって被覆してその周囲に所定量の気泡を保持させることができる。
この撥水剤成分の紙解砕繊維分に対する構成比率が1質量部より少なくなると撥水効果が十分に得られず、10質量部を超えると所定の気泡含有量が減少する傾向が現れるので好ましくない。
【0017】
本実施形態のモルタル組成物を用いた軽量モルタル硬化体は、モルタル組成物100質量部に対して水分150〜300質量部を添加して空気を巻き込ませながら攪拌混合して硬化させ、その硬化後の比重が1.3〜1.5、圧縮強度が900〜3000kN/mとする。これによって、トンネル構造物などの周辺補修工事や、軟弱地盤等への盛土工法による地盤構築工事などに適用できる品質信頼性に優れた軽量モルタル硬化体を安価に提供することができる。
なお、モルタル組成物100質量部に対して添加する水分が150質量部より少ないとセメントと紙解砕繊維分との均一分散が困難となり、逆に300質量部を超えると、圧縮強度などが極端に減少する傾向が生じる。
また、モルタル硬化体の比重が1.3より小さくなると、硬化体としての形態維持が困難となり、比重が1.6を超えると現場におけるハンドリングなどの施工性が悪くなる。さらに、圧縮強度が900kN/mより小さいと、盛り土やトンネル補修などの充填材として用いる場合にその耐久性の維持が困難であり、逆に圧縮強度が3000kN/mを超えると、セメントに関わる原料コストが必要以上に増加することになるので好ましくない。
【0018】
本実施形態のモルタル組成物を用いた軽量モルタル硬化体は、軽量盛土の素材として適用することができる。
【0019】
土質工学会の「盛土の調査・設計から施工まで」によると、盛土に関する留意事項として、盛土の安定土の沈下、周辺に及ぼす影響、盛土構造物の排水、盛土のり面保護の4点があげられている。また、盛土構造物が築造される地盤の特性(軟弱地盤、透水性地盤、傾斜不安定地盤であるか否かなど)に応じて、それぞれ適用される盛土の種類や、調査、設計、施工の考え方が異なることが指摘されている。
【0020】
盛土の安定性についていえば、盛土は自重、間隙水圧の増加、施工機械や交通荷重による振動などに対して安定でなくてはならない。平坦で通常の地盤においては特に問題はないが、軟弱地盤とか傾斜不安定地盤の場合は、盛土安定性を確認する必要がある。盛土の安定性は一般にすべり破壊に対する安全率の値で評価され、1.2〜1.3程度を最小安全率とした目標値で考える。地盤の強度は含水比等により変化するものでなく常に一定であり、盛土自体の重量が軽いほど安定性が高くなり軽量盛土の優位性が担保されることになる。
【0021】
盛土の沈下に関しては、軟弱地盤上の盛土や高含水比の粘性土を材料とした盛土では、大きな沈下が長時間にわたり続くことになる。土粒子間の水分が、増加荷重により周辺に排除されることにより、地盤が沈下する。砂質土は水分の移動が容易で増加荷重により簡単に沈下が終了するが、粘性土の水分の移動は非常に遅く沈下が完了するまでには長時間の時間が要求される。沈下時間は盛土の種類には関係ないが、盛土重量が軽いほど沈下量は少なく軽量盛土が優れているとされる。
【0022】
周辺に及ぼす影響から盛土構造の構築に際しては、盛土周辺の地盤や諸施設に過大な変形を及ぼさないよう配慮する必要がある。周辺地盤に影響を及ぼす程度は地盤の種類により異なるが盛土重量によりすべり破棄と同様な土粒子の移動が生じ理論的には盛土周辺の地盤が盛り上がることになる。軽量盛土を使用すれば周辺地盤に対する影響は確実に軽減されることになる。
【0023】
また、盛土の材料が高含水比の粘性土の場合、降雨や洪水時に盛土内地下水位が上昇し、地すべりや盛土のり面の崩壊を起こすことがあり、盛土構造物の排水も重要課題である。通常、盛土材料には排水性の優れた材料が使用されるが、周辺で入手困難な場合は排水性の高い材料を混入させる場合が多い。
【0024】
すなわち、軽量材料を用いる軽量盛土では、普通、軽量で排水性の高い材料を混入させる盛土材の配合に注意する必要があり、盛土の軽量化と排水性を極度に高めた場合、盛土材の流失や強度に影響を与えないことを確認すべきである。
本実施形態のモルタル硬化体をこのような軽量盛土の代替素材とすることによって、トンネル補修工事などにおいて必要な所定圧縮強さを維持しながら盛土の軽量化と排水性とをバランスさせることができ、周辺環境への影響を最小限度に抑制しつつ盛土安定性に優れた施工を行うことができる。
【0025】
また、本実施形態の軽量モルタル硬化体は、トンネル壁周囲の空隙部分を充填する補修工事や、軟弱地盤、法面等の地盤構築の際に、地盤中に充填、あるいは埋設することにより適用することができる。軽量モルタル硬化体作成は、モルタル組成物100質量部に対して水分150〜300質量部を添加して、空気を巻き込ませながら攪拌混合してスラリー状とする。そして、スラリーを地盤中に注入充填するか、あるいは地盤にまき出した後、硬化させて地盤構築材として適用することができる。また、このようなスラリー中にフライアッシュや、珪藻土、水滓スラグ、土、砂等を添加することも可能である。
軽量モルタル硬化体を製造するためのセメント材としては、ポルトランドセメント系、アルミナセメント系、高炉セメント系などを適用することができ、これに必要に応じてスラグ系、または水ガラス系の無機固結材、またはウレタン系、エポキシ系アクリル系、歴青系の有機固結材等を添加してもよい。
【0026】
なお、モルタル組成物を水と混合してスラリー状にして、トンネル壁周囲の地盤空隙部に充填する場合は、混合プラントを使用することができる。このようなプラントは、河川浚渫土又は建設汚泥などとセメント系固化材及び各種固化助剤とを混合攪拌するためのミキサーやモルタル組成物などの貯留タンクを有し、貯留タンクからそれぞれフィーダーを介して必要量がミキサー内に投入できるようになっている。このミキサー内に河川浚渫土砂等をバックホーなどにより投入し、本発明のモルタル組成物、水、添加する固化材び固化助剤の種類や添加量を調節して混練することにより、盛土材料が得られるようにすることができる。
【実施例】
【0027】
本実施例では工場や家庭などから回収した紙管を原料として用いた。該紙管は、撥水剤成分となる酢酸ビニルを含むものであり、紙管原料における酢酸ビニルは4.0質量部、紙(セルロース分)は約88.5質量部であった。この回収した紙管原料を公知の回転式粉砕機やシュレッダーなどにより、所定サイズ(1〜10mmのサイズ)に解砕した。
次に、得られた紙解砕繊維分とポルトランドセメントなどのセメント成分とを、所定割合、例えば、紙解砕繊維分とセメントとの質量比が15〜40%の範囲となるように調整して、乾燥状態で均一に混合してこれをモルタル組成物とした。そして、このモルタル組成物100質量部に対して水分150〜300質量部を添加し、空気を巻き込ませながら攪拌混合させ、これを型枠などに流込んで保持し、ブロック状の軽量モルタル硬化体を得た。この軽量モルタル硬化体は、その硬化後の比重が1.31及び1.46、圧縮強度が900〜3000kN/mであった。
【0028】
本実施例では、モルタル組成物における各成分の適正値を定めるために、表1に示すような配合の試験片(a)〜(d)を作成して、その圧縮強さを測定した。
【0029】
【表1】

【0030】
これら表1に示す各試験片(a)〜(d)の数値は各成分の質量比を表しており、紙解砕繊維分の(A)で示すものは、紙解砕繊維分100質量部に対し撥水剤としての酢酸ビニルを1質量部以上含有する紙管原料を用いたものであり、紙解砕繊維分(B)で示すものは、同じく撥水剤としての酢酸ビニルの含有量が1質量部未満の紙管原料を用いたものである。なお、この圧縮強さ試験は、JIS_R5201に規定する試験方法に準じた方法により測定した。
まず、モルタルミキサーの混練容器に、セメント、紙解砕繊維分及び水をトータルして約5kg投入し、モルタルミキサーを回転させて3分間練混してスラリーとした。この水と混練されたスラリー状のモルタル組成物を縦横長さが4×4×16cmの型枠に鋳込み、2週間及び4週間かけて養生硬化させて軽量モルタル硬化体を形成し、所定サイズとなる試験片(a)〜(d)とした。この試験片(a)〜(d)をJIS_R5201に規定する圧縮試験方法に準じてそれぞれの圧縮強さ及び比重を測定した。この結果を表2に示す。
なお、測定した試験片の数は、それぞれ6個とし、表2にはその平均値を示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表2に示すように、試験片(a)、(b)における圧縮強度試験の数値は、その平均値がいずれも915〜2450kN/mと良好な結果が得られているが、試験片(c)、(d)ではそれぞれの平均値が310kN/m、145kN/mと強度不足となっていることが分かる。
また、酢酸ビニルの含有量が少ない紙解砕繊維分(B)を用いた試験片(c)、(d)は、2週間経過しても硬化せず圧縮強さや比重を測定ができなかったので、4週のもののみの測定結果を示している。これは、試験片自体が水分を含んでいて、試験室の室温20℃で安定していたのにもかかわらず、その水分により養生温度を低下させ硬化時間が長くなったことも一因と思われる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明では、ミキサーなどにより混合攪拌するモルタル組成物中に空隙部分を均一かつ効率的に形成させることができ、軽量でしかも所定強度を有した軽量モルタル硬化体とすることができる。こうして紙資源の活用を図ることができるとともに、トンネル補修工事などに伴う盛土施工や、セメントブロックの構築などに際して広く適用することができる。
【0034】
以上説明したように本発明は、撥水剤成分を含む紙解砕繊維分がセメントに対して特定割合となるように分散含有させ、このモルタル組成物を混合攪拌する際に気泡を含む空隙部分を均一かつ効率的に形成させるようにしたことを要旨とするものであり、これに属するものは本発明の権利範囲である。例えば、本実施例では特定比率となるモルタル組成物を例に説明したが、本発明はこれら具体的な数値のものに限定されるものではなく、混合攪拌時における気泡巻き込み効果を有するものに広く適用される。これによって、紙資源の大量活用を図るとともに、現場施工における生産性と施工性に優れた工法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水剤成分を含む紙解砕繊維分が、セメント100質量部に対して15〜40質量部の割合で分散含有されていることを特徴とするモルタル組成物。
【請求項2】
前記撥水剤成分が酢酸ビニル又はパラフィンワックスであることを特徴とする請求項1記載のモルタル組成物。
【請求項3】
前記紙解砕繊維分100質量部に対する前記撥水剤成分の含有量が1〜10質量部であることを特徴とする請求項1又は2記載のモルタル組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のモルタル組成物100質量部に対して水分150〜300質量部を添加して空気を巻き込ませながら攪拌混合して硬化させ、その硬化後の比重が1.3〜1.5、圧縮強度が900〜3000kN/mであることを特徴とする軽量モルタル硬化体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のモルタル組成物100質量部に対して水分150〜300質量部を添加して空気を巻き込ませながら攪拌混合して硬化させ、その硬化後の比重が1.3〜1.5、圧縮強度が900〜3000kN/mとなる軽量モルタル硬化体を作成することを特徴とするモルタル組成物の硬化方法。

【公開番号】特開2008−254987(P2008−254987A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102078(P2007−102078)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(505190105)村上商事株式会社 (6)
【Fターム(参考)】