説明

モルトフィードの排出装置

【課題】ホッパーからのモルトフィードの排出量をより正確かつ確実に制御して過積載等を防止する。
【解決手段】モルトフィード排出装置100は、モルトフィードを一時的に貯留するホッパー10と、ホッパー10からのモルトフィードの排出を制御するバルブ20と、ホッパー10内のモルトフィードの重量とともにホッパー10の重量を測定する測定器30と、測定器30によって測定される重量に基づいてバルブ20を制御する制御器40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルトフィードを荷台等に排出する排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールや発泡酒等の麦芽を主原料とするアルコール飲料は、仕込み及び煮沸を経て調整されたマイシェを濾過して得られた麦汁を醗酵させることによって製造されうる。濾過工程では、麦汁濾過槽において、マイシェからモルトフィード(麦芽の糟)が取り除かれて麦汁が抽出させる。
【0003】
濾過後に麦汁濾過槽に残ったモルトフィードは、例えば、エアー搬送によってホッパーを含む排出装置に送られてホッパーに一時的に貯留される。ホッパーに貯留されたモルトフィードは、その後、運搬車の荷台又は容器等に積まれて処理設備に搬送されうる。
【特許文献1】特開平10−167230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、モルトフィードの排出装置は、例えば、ホッパー、そのホッパーの排出口に設けられたバルブ、バルブを操作するための操作パネル等で構成されうる。モルトフィードを搬送する作業者は、操作パネルを介してバルブを操作しながら荷台にホッパーを積み込む。この際に、運搬車による搬送作業を効率的に行うためには、規定積載量の直前までモルトフィードを荷台に積む必要がある。
【0005】
しかしながら、以下のような理由により、規定積載量の直前までモルトフィードを荷台に積むことは困難である。まず、図5に模式的に示すように、モルトフィード12は、ホッパー10内においてブリッジ12aを形成しやすい。ブリッジ12aは、ホッパー10の断面積が小さくなる部分においてモルトフィード12が押し圧によって押し固められることによって発生しうる。ブリッジが形成されると、ホッパーからのモルトフィードの排出が滞り、モルトフィードの排出をバルブで制御することが難しくなる。そのために、作業者が誤ってバルブを開きすぎると、モルトフィードのブリッジが崩壊したときに一気にモルトフィードがホッパーから排出されることになる。
【0006】
また、バルブの動作は遅れを伴うため、バルブが操作パネルによる設定に従うまでに相応の時間を有する。したがって、規定積載量の直前でバルブを全閉状態にしようとしても、その動作遅れ分の判断を誤ると、規定積載量を超えて荷台にモルトフィードが積まれることがある。
【0007】
このような問題は、熟練によってある程度は解消可能であるものの、注意不足等による過積載を完全になくすことは難しい。また、不慣れな作業者に対して、ブリッジの発生やバルブ動作の遅れ等を予期して適切にバルブを制御することを期待することは難しい。
【0008】
本発明は、上記の課題認識を基礎としてなされたものであり、例えば、ホッパーからのモルトフィードの排出量をより正確かつ確実に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の排出装置は、モルトフィードを排出する排出装置として構成される。前記排出装置は、モルトフィードを一時的に貯留するホッパーと、前記ホッパーからのモルトフィードの排出を制御するバルブと、前記ホッパー内のモルトフィードの重量とともに前記ホッパーの重量を測定する測定器と、前記測定器によって測定される重量に基づいて前記バルブを制御する制御器とを備える。
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、前記制御器は、前記測定器によって測定される重量の減少速度が所定値を超えた場合に前記バルブの開度を低下させることが好ましい。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、前記排出装置は、前記前記ホッパーから排出すべきモルトフィードの排出重量を設定する設定器と、前記制御器は、前記測定器による測定結果に基づいて、前記設定器によって設定された排出重量から所定重量を減じた重量のモルトフィードが前記ホッパーから排出された時点で前記バルブの閉動作を開始することが好ましい。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、前記排出装置は、前記測定器によって測定される重量の減少速度に関する情報を表示する表示器を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、ホッパーからのモルトフィードの排出量をより正確かつ確実に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の好適な実施形態のモルトフィード排出装置100の構成を模式的に示す図である。なお、この明細書において、モルトフィードとは、麦芽の糟を主成分とするが、例えば、麦芽以外の副原料の糟等を含みうるものとする。
【0016】
モルトフィードは、搬送路2を通して、例えばエアー搬送によって麦汁濾過槽から排出装置100に送られてくる。排出装置100は、その基本構成として、モルトフィードを一時的に貯留するホッパー10を備えている。ホッパー10は、支持脚(支持体)50によって、測定器30を介して支持されている。測定器30は、ホッパー10内のモルトフィードの重量とともにホッパー10の重量を測定することができるように配置されている。
【0017】
搬送路2は、支持機構4によって支持され、ホッパー10と搬送路2とは、例えば、ベローズ6等によって連結され、搬送路2が測定器30による測定に影響を及ぼさないように構成されている。このような構成に代えて、搬送路2を柔軟な素材で構成してもよいし、搬送路2に柔軟性をもたせてもよい。このような構成によって、モルトフィードを含むホッパー10の重量が測定器30に加わる。
【0018】
ホッパー10の下部には、ホッパー10内に一時的に貯留されたモルトフィードの排出を制御するバルブ20が設けられている。バルブ20の開度或いは開閉を制御することによって、ホッパー10から運搬車の荷台60等へのモルトフィードの排出を制御することができる。
【0019】
バルブ40は、制御器40によって制御される。図2は、制御器40の構成例を示す図である。制御器40は、例えば、操作部410と、プロセッサ420とを含む。プロセッサ420は、操作部410から提供される信号及び測定器30から提供される信号(重量を示す信号)に基づいてバルブ20を制御する。
【0020】
操作部410は、例えば、開始スイッチ411、終了スイッチ412、重量設定器413、表示器414、バルブ開度指示部415等を含みうる。開始スイッチ411は、作業者がモルトフィードの排出の開始(すなわち、バルブ20の開動作)を指示するために使用される。終了スイッチ412は、作業者がモルトフィードの排出の終了(すなわち、バルブ20の閉動作)を指示するために使用される。重量設定器413は、ホッパー10から排出すべきモルトフィードの重量を作業者が設定するために使用される。表示器414は、例えば、ホッパー10からのモルトフィードの排出速度、排出量や警告等の情報を表示するために使用されうる。バルブ開度指示部415は、作業者がバルブ20の開度を指示(設定)するために使用される。
【0021】
プロセッサ420は、排出速度演算部421、バルブ制御部422等を含みうる。排出速度演算部421は、ホッパー10からのモルトフィードの排出速度(これは測定器30によって測定される重量の減少速度に対応する)を測定器30から提供される信号(モルトフィードを含むホッパー10の重量)に基づいて演算する。バルブ制御部422は、排出速度演算部421から提供されるモルトフィードの排出速度、開始スイッチ411から提供されるバルブ20の開動作の指示、終了スイッチ412から提供されるバルブ20の閉動作の指示、バルブ開度指示部415から提供されるバルブ20の開度、測定器30から提供される信号(モルトフィードを含むホッパー10の重量)等に基づいて、バルブ20の開閉動作及び開度を制御する。
【0022】
バルブ制御部422は、以下で説明する介入動作を除いて、開始スイッチ411、終了スイッチ412、バルブ開度指示部415から提供される指示にしたがってバルブ20を制御する。例えば、開始スイッチ411からバルブ20の開動作が指示されると、バルブ制御部422は、バルブ開度指示部415によって指示されている開度までバルブ20を開く。また、終了スイッチ412からバルブ20の閉動作が指示されると、バルブ制御部422は、バルブ20を閉じる。
【0023】
以下、バルブ20の制御に関する介入動作について説明する。介入動作は、例えば、ホッパー10からのモルトフィードの排出速度(すなわち、測定器30によって測定される重量の減少速度)が所定値(許容レベル)を超えた場合にバルブ20の開度を低下させる排出速度制御動作、及び/又は、重量設定器413によって設定された排出重量から所定重量(余裕重量)を減じた重量のモルトフィードがホッパー10から排出された時点でバルブ20の閉動作を開始する強制閉動作を含みうる。
【0024】
図3は、バルブ制御部422による排出速度制御動作を例示的に示す図である。モルトフィードの排出速度が所定値(許容レベル)以内である場合には、曲線Aとして例示的に示すように、バルブ制御部422は、開始スイッチ411からのバルブ20の開動作の指示にしたがってバルブ開度指示部415によって指示されている開度までバルブ20を開き、終了スイッチ412からのバルブ20の閉動作の指示にしたがってバルブ20を閉じる。一方、例えば、作業者がバルブ開度指示部415に過剰な開度を入力することによって、曲線Bに例示的に示すように、モルトフィードの排出速度が所定値(許容レベル)を超える場合には、バルブ制御部422は、バルブ20の開度を強制的に低くして、モルトフィードの排出速度が所定値(許容レベル)に収まるようにする。これにより、前述のブリッジの発生、或いは、経験不足、注意不足等によって過剰な開度が入力された場合のモルトフィードの過剰な排出が防止される。
【0025】
図4は、バルブ制御部422による強制閉動作を例示的に示す図である。バルブ制御部422は、重量設定器413によって設定された排出重量(積載重量)から所定重量(余裕重量)を減じた重量(以下、介入レベル)のモルトフィードがホッパー10から排出された時点(図4中の”閉動作開始”)で、作業者の操作に基づくバルブ20の制御に介入して、バルブ20の閉動作を開始する。一方、介入レベルに達する前に、終了スイッチ412が操作された場合には、バルブ制御部422は、作業者による終了スイッチ412の操作にしたがってバルブ20を制御する。これにより、終了スイッチ412の操作の遅れによって重量設定器413によって設定された排出重量(積載重量)を超えてモルトフィードが排出されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の好適な実施形態のモルトフィード排出装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】制御器の構成例を示す図である。
【図3】バルブ制御部による排出速度制御動作を例示的に示す図である。
【図4】バルブ制御部による強制閉動作を例示的に示す図である。
【図5】ホッパー内に形成されるモルトフィードのブリッジを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0027】
2 搬送路
4 支持機構
6 ベローズ
10 ホッパー
20 バルブ
30 測定器
40 制御器
50 支持脚
60 荷台
100 モルトフィード排出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルトフィードを排出する排出装置であって、
モルトフィードを一時的に貯留するホッパーと、
前記ホッパーからのモルトフィードの排出を制御するバルブと、
前記ホッパー内のモルトフィードの重量とともに前記ホッパーの重量を測定する測定器と、
前記測定器によって測定される重量に基づいて前記バルブを制御する制御器と、
を備えることを特徴とする排出装置。
【請求項2】
前記制御器は、前記測定器によって測定される重量の減少速度が所定値を超えた場合に前記バルブの開度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の排出装置。
【請求項3】
前記ホッパーから排出すべきモルトフィードの排出重量を設定する設定器と、
前記制御器は、前記測定器による測定結果に基づいて、前記設定器によって設定された排出重量から所定重量を減じた重量のモルトフィードが前記ホッパーから排出された時点で前記バルブの閉動作を開始することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排出装置。
【請求項4】
前記測定器によって測定される重量の減少速度に関する情報を表示する表示器を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−39100(P2007−39100A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−226852(P2005−226852)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】