説明

モルヒナン化合物

本発明は、新規なモルヒナン化合物及びその薬学的に許容される塩に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む組成物並びにNMDA拮抗薬活性も有するσ1受容体作動薬を投与することにより有利に治療される疾患及び状態を治療する方法におけるそのような組成物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2008年9月19日に出願の米国仮出願第61/098,511号の優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、新規なモルヒナン化合物及び薬学的に許容されるその塩に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む組成物並びにNMDA拮抗薬活性も有するシグマ1受容体作動薬を投与することにより有利に治療される疾患及び状態を治療する方法におけるそのような組成物の使用を提供する。
【0003】
背景
その化学名(+)−3−メトキシ−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナンによっても公知であるデキストロメトルファンは、現在、最も広く使用されている鎮咳薬の1つである。
【0004】
上記の生理作用に加えて、デキストロメトルファンは、σ2受容体の作動薬、N-メチル-D−アスパラギン酸(NMDA)拮抗薬及びα3β4ニコチン性受容体拮抗薬でもある。デキストロメトルファンは、グルタミン酸などの神経伝達物質が脳における受容体を活性化することを阻害する。ドーパミン及びセロトニンの取込みも阻害される。
【0005】
デキストロメトルファンは、OTC鎮咳薬品用に承認されている。デキストロメトルファンは、声の震え(voice spasms)を有する対象の治療に関する第I相臨床試験及びレット症候群の治療に関する第III相臨床試験に現在かけられている(http://www.clinicaltrials.gov)。デキストロメトルファンは、過敏性腸症候群を有する対象における疼痛プロセシング機序を明らかにする第II相臨床試験において他の薬物と共に試験されている(http://www.clinicaltrials.gov/)。デキストロメトルファンは、メタドン維持対象における痛覚過敏(hyperalgesia)の治療に関する第I相臨床試験にもかけられている(http://www.clinicaltrials.gov/)。
【0006】
さらに、臭化水素酸デキストロメトルファンと硫酸キニジンの組合せは、糖尿病性神経障害に伴う疼痛の治療に関する第III相臨床試験に現在かけられている(http://www.clinicaltrials.gov)。Zenvia(登録商標)としても公知である、この薬物の組合せは、アルツハイマー病、卒中、パーキンソン病及び外傷性脳損傷に罹患した対象における、偽性球麻痺情動としても公知である不随意感情表出障害(IEED)の治療に関する第III相臨床試験にかけられている(http://www.clinicaltrials.gov)。
【0007】
デキストロメトルファンは、肝臓で代謝される。分解は、O−及びN−脱メチル化から始まって、一次代謝物デキストロルファン及び3−メトキシ−モルヒナンが生成し、その両方がそれぞれさらに3−ヒドロキシ−モルヒナンにN−及びO−脱メチル化される。これらの3つの代謝物は、治療活性があると考えられている。主要な代謝触媒は、デキストロメトルファン及び3−メトキシモルヒナンのO−脱メチル化反応に関与するシトクロムP450酵素2D6(CYP2D6)である。デキストロメトルファン及びデキストロルファンのN−脱メチル化は、関連するCYP3Aファミリーの酵素により触媒される。デキストロルファンと3−ヒドロキシモルヒナンの複合体がその摂取の数時間以内にヒト血漿及び尿中に検出することができる。
【0008】
デキストロメトルファン乱用は、その活性代謝物デキストロルファンに関連付けられている。デキストロメトルファンに起因するPCP様効果は、デキストロルファンによってより確実にもたらされ、したがって、ヒトにおける乱用の可能性は、デキストロルファンへのデキストロメトルファンの代謝に帰せられる可能性がある(Miller'SCら、Addict Biol、2005年、10巻(4号)、325〜7頁、Nicholson'KLら、Psychopharmacology(Berl)、1999年9月1日、146巻(1号)、49〜59頁、Pender'ESら、Pediatr Emerg Carc、1991年、7巻、163〜7頁)。デキストロメトルファンの向精神作用に関する一研究は、高代謝群(EM)であるヒトは低代謝群(PM)と比較して乱用の可能性が高いことを報告したことを見出しており、デキストロルファンがデキストロメトルファンの乱用の可能性に寄与しているという証拠を提供している(Zawertailo LAら、J Clin Psychopharmacol、1998年8月、18巻(4号)、332〜7頁)。
【0009】
集団のかなりの割合がCYP2D6酵素の機能欠損を有する。したがって、デキストロメトルファンの主要代謝経路がCYP2D6を必要とするので、その活性の低下は、CYP2D6欠損対象においてはるかに長い作用持続時間とより大きい薬物の作用をもたらす。内因性機能欠損に加えて、抗うつ薬などのある種の薬剤は、CYP2D6酵素の強力な阻害剤である。一部のヒトにおいてその代謝がより遅いデキストロメトルファンは、特に他の薬剤(単数又は複数)と併用で、重篤な有害事象をもたらしうる。
【0010】
体内で薬物の持続時間が推奨時間より長いことは、有益な効果の持続をもたらす可能性があるが、望ましくない副作用を生じさせ又は長びかせもする可能性がある。デキストロメトルファン療法の推奨用量での望ましくない副作用には、悪心、食欲不振、下痢、傾眠、めまい及び不能症などがある。
【0011】
デキストロメトルファンの類似体であり、(+)−(9α,13α,14α)−3,17−ジメチルモルヒナンというその化学名によっても公知であるジメモルファンは、非麻薬性鎮咳薬である。ジメモルファンの鎮咳活性は、髄質の咳中枢に対する直接的作用によるものと考えられている(Ida'H.、Clin Ther.、1997年3月〜4月、19巻(2号)、215〜31頁)。
【0012】
ジメモルファンは、その鎮咳特性に加えて、デキストロメトルファン(DM)及び/又は高親和性DMσ受容体のN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)拮抗作用によりおそらく生じる抗痙攣及び神経保護作用を有することが示された(Chou'Y-C.ら、Brain Res.、1999年3月13日、821巻(2号)、516〜9頁)。σ−1受容体における活性化は、DMと同様にラット及びマウスにおいて抗痙攣作用をもたらすことが認められたが、DM及びその代謝物であるデキストロルファンによって引き起こされる行動上の副作用は伴わない(Shin'E.J.ら、Br J Pharmacol.、2005年4月、144巻(7号)、908〜18頁及びShin'E.J.ら、Behavioural Brain Research、2004年、151巻、267〜276頁)。
【0013】
ヒトにおけるジメモルファンの代謝は、シトクロム450触媒N−脱メチル化並びに3−メチル酸化により進行することが知られている。健常男性ではジメモルファンの用量の98%超が代謝され、その代謝物のいずれも鎮咳作用を有さないことが示された(Chou Y-C.ら、Life Sci.、2005年7月1日、77巻(7号)、735〜45頁及びChou Y-C.ら、J Pharm Sci.、2009年7月、1〜15頁)。
【0014】
さらに、デキストロメトルファンの2つのエーテル類似体、すなわち「デキストロエトルファン」とも本明細書で呼ぶ[(+)−3−エトキシ−17−メチルモルヒナン]及び「デキストロイソプロポルファン」とも本明細書で呼ぶ[(+)−3−(2−プロポキシ)−17−メチル−モルヒナン]は、抗痙攣活性(Newman'A.ら、J Med Chem.、1992年、35巻(22号)、4135〜42頁及びTortella'F.ら、J Pharmacol and Exp Therap.、1994年、268巻(2号)、727〜733頁)並びにラットにおける神経保護作用(Tortella'F.ら、Neurosci. Lett.、1995年、198巻(2号)、79〜82頁)を示した。
【0015】
したがって、デキストロメトルファン、ジメモルファン、デキストロエトルファン及びデキストロイソプロポルファンの有益な活性を有し、他の利点、例えば、少ない有害副作用並びに、その薬理学的有効期間をさらに延長させ、対象の服薬遵守を向上させ、また潜在的には、母集団薬物動態変動を低下させ、且つ/又は危険な薬物−薬物相互作用の可能性を低減させ、若しくはデキストロルファンなどの有害な代謝物の生成に起因するデキストロメトルファン乱用の可能性を低減させるために低い易代謝性も有する新規な化合物を提供することが望ましい。
【0016】
概要
本発明で提供するものは、以下の式I
【0017】
【化1】

の化合物
又はその薬学的に許容される塩である[式中、
は、−O−(C〜C)アルキル及び−(C〜C)アルキルから選択され、ここでRは、1個又は複数個の重水素原子で場合によって置換されており、
は、CH、CHD、CHD及びCDから選択され、
ただし、少なくとも1個の重水素原子がR又はRに存在する。]。
【0018】
いくつかの実施形態において、Rは、CH又はCDである。いくつかの実施形態において、Rは、−O−CHCH、−O−CDCD、−O−CDCH、−O−CHCD、−O−CH(CH、−O−CD(CD、−O−CH(CD、−O−CD(CH、−O−CHCH(CH、−O−CDCH(CH、−O−CHCD(CD、−O−CHCH(CD、−O−CDCD(CH、−O−CDCH(CD、−O−CHCD(CD又は−O−CDCD(CDである。
【0019】
いくつかの実施形態において、Rは、1個又は複数個の重水素原子で置換された−O−(C〜C)アルキルである。
【0020】
いくつかの実施形態において、Rは、−O−CDCD、−O−CDCH、−O−CHCD、−O−CD(CD、−O−CH(CD、−O−CD(CH、−O−CDCH(CH、−O−CHCD(CD、−O−CHCH(CD、−O−CDCD(CH、−O−CDCH(CD、−O−CHCD(CD又は−O−CDCD(CDである。
【0021】
いくつかの実施形態において、Rは、−O−CDCD、−O−CDCH、−O−CHCD、−O−CD(CD、−O−CH(CD又は−O−CD(CHである。
【0022】
いくつかの実施形態において、Rは、−O−CDCD又は−O−CD(CDである。
【0023】
いくつかの実施形態において、Rは、−O−CD(CDである。
【0024】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、下に示す表1における化合物のいずれか1つから選択される。
【0025】
【表1】

【0026】
式1の化合物のいくつかの実施形態において、Rは、1個又は複数個の重水素原子で場合によって置換されている−(C〜C)アルキルである。これらの実施形態の一部において、Rは、CH又はCDである。これらの実施形態の一部において、Rは、−CH、−CD、−CHCH、−CDCD、−CDCH、−CHCD、−CH(CH、−CD(CD、−CH(CD、−CD(CH、−CHCH(CH、−CDCH(CH、−CHCD(CH、−CHCH(CD、−CDCD(CH、−CDCH(CD、−CHCD(CD又は−CDCD(CDである。これらの実施形態の一部において、Rは、−CD、−CDCD、−CDCH、−CHCD、−CD(CD、−CH(CD、−CD(CH、−CDCH(CH、−CHCD(CH、−CHCH(CD、−CDCD(CH、−CDCH(CD、−CHCD(CD又は−CDCD(CDである。これらの実施形態の一部において、Rは、−CD、−CDCD又は−CDCD(CDである。これらの実施形態の一部において、Rは、−CDである。これらの実施形態の一部において、Rは、−CH、−CHCH、−CH(CH又は−CHCH(CHであり、Rは、CDから選択される。
【0027】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、
【0028】
【化2】

のいずれか1つから選択される。
【0029】
式Iの化合物のいくつかの実施形態において、重水素として表されていない原子は、その天然同位体存在度で存在する。
【0030】
式Iの化合物及び薬学的に許容される担体を含む、発熱物質を含まない医薬組成物も提供する。いくつかの実施形態において、該組成物は、情動不安定;偽性球麻痺情動(Pseudobulbar affect);自閉症;神経障害;神経変性疾患;脳損傷;意識障害(disturbances of consciousness disorders);心血管疾患;緑内症;遅発性ジスキネジア;糖尿病性神経障害;網膜症;ホモシステイン誘発性アポトーシスにより引き起こされる疾患又は障害;ホモシステインのレベルの上昇により引き起こされる疾患又は障害;慢性疼痛、難治性疼痛、神経障害性疼痛、交感神経により媒介される疼痛及び胃腸機能不全に伴う疼痛を含むが、これらに限定されない疼痛;てんかん発作;耳鳴;性機能不全;難治性咳;皮膚炎;嗜癖障害;レット症候群(RTT);制御されていない咽頭筋痙攣に起因する発声障害;メトトレキサート神経毒性;癌によりもたらされる疲労;並びに化学物質への曝露に関連する状態から選択される疾患又は状態に罹患している又は罹患しやすい患者の治療に有用な第2の治療薬をさらに含む。そのような化学物質は、例えば、(i)例えば、神経ガスなどの戦争若しくは戦闘に使用される物質、又は(ii)産業汚染物質などの毒物を含んでいてよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、第2の治療薬は、キニジン、硫酸キニジン、オキシコドン及びガバペンチンから選択される。
【0032】
治療上有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、情動不安定;偽性球麻痺情動;自閉症;神経障害;神経変性疾患;脳損傷;意識障害;心血管疾患;緑内症;遅発性ジスキネジア;糖尿病性神経障害;網膜症;ホモシステイン誘発性アポトーシスにより引き起こされる疾患又は障害;ホモシステインのレベルの上昇により引き起こされる疾患又は障害;慢性疼痛、難治性疼痛、神経障害性疼痛、交感神経により媒介される疼痛及び胃腸機能不全に伴う疼痛を含むが、これらに限定されない疼痛;てんかん発作;耳鳴;性機能不全;難治性咳;皮膚炎;嗜癖障害;レット症候群(RTT);制御されていない咽頭筋痙攣に起因する発声障害;メトトレキサート神経毒性;癌によりもたらされる疲労;並びに化学物質への曝露に関連する状態から選択される疾患又は状態に罹患している又は罹患しやすい対象を治療する方法も提供する。いくつかの実施形態において、該対象は、糖尿病性神経障害に伴う疼痛に罹患している又は罹患しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】CYP2D6 SUPERSOMES(商標)中の本発明の化合物の代謝安定性を示す図である。
【図2】パネルA及びパネルB。ヒト肝ミクロソーム中のデキストロエトルファン(パネルA)、デキストロイソプロポルファン(パネルB)、及び本発明の化合物の代謝安定性を示す図である。
【図3】ヒト肝ミクロソーム中のジメモルファン及び本発明の化合物の代謝安定性を示す図である。
【0034】
詳細な説明
定義
「改善する(ameliorate)」及び「治療する(treat)」という用語は、同義で用い、治療的処置及び/又は予防的処置(発生の可能性を低減する)を含む。両用語は、疾患(例えば、本明細書で詳細に述べた疾患又は障害)の発生又は進行を減少、抑制、減弱、軽減、抑止又は安定化する、疾患の重症度を軽減する、或いは疾患に伴う症状を改善することを意味する。
【0035】
「疾患」は、細胞、組織又は器官の正常な機能に障害を与える又は妨げる状態又は障害を意味する。
【0036】
合成に用いられる化学物質の起源に依存する合成化合物中の天然同位体存在度のある程度の変動が起こることが認識される。したがって、デキストロメトルファン又はデキストロメトルファン類似体の製剤は、少量の重水素化アイソトポログを本質的に含む。天然で豊富な安定水素及び炭素同位体の濃度は、このような変動にもかかわらず、本発明の化合物の安定同位体置換の程度と比較して小さく、重要でない。例えば、Wada Eら、Seikagaku、1994年、66巻、15頁;Gannes LZら、Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol、1998年、119巻、725頁を参照されたい。特に断らない限り、位置が具体的に「H」又は「水素」と指定されている場合、その位置は、その自然の存在度の同位体組成の水素を有すると理解される。また特に断らない限り、位置が具体的に「D」又は「重水素」と指定されている場合、その位置は、0.015%である重水素の自然存在度より少なくとも3340倍大きい存在度の重水素を有すると理解される(すなわち、「D」又は「重水素」という用語は重水素の少なくとも50.1%の取込みを示す)。
【0037】
「同位体濃縮係数(isotopic enrichment factor)」という用語は、本明細書で用いているように、本発明の化合物における特定の位置におけるDの同位体存在度と当該同位体の天然に存在する存在度との比を意味する。重水素の自然の存在度は、0.015%である。
【0038】
他の実施形態において、本発明の化合物は、化合物上の重水素化の可能な部位と指定される部位に存在する各重水素について少なくとも3500(52.5%の重水素の取込み)、少なくとも4000(60%の重水素の取込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素の取込み)、少なくとも5000(75%の重水素)、少なくとも5500(82.5%の重水素の取込み)、少なくとも6000(90%の重水素の取込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素の取込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素の取込み)、少なくとも6600(99%の重水素の取込み)又は少なくとも6633.3(99.5%の重水素の取込み)の同位体濃縮係数を有する。重水素化の部位と指定される部位に存在する各重水素の同位体濃縮係数は、他の重水素化部位と無関係であると理解される。例えば、化合物に重水素化の2つの部位が存在する場合、1つの部位は52.5%重水素化されていることがありうるが、他の部位は75%重水素化されていることがありうる。得られる化合物は、同位体濃縮係数が少なくとも3500(52.5%)である化合物であるとみなされる。
【0039】
「アイソトポログ(isotopologue)」という用語は、同位体置換の位置及び/又は1つ若しくは複数の位置における同位体濃縮のレベル(例えば、H対D)を除いて、本発明の特定の化合物と同じ化学構造及び式を有する化学種を意味する。
【0040】
「化合物」という用語は、本明細書で用いているように、分子の構成原子間に同位体変化が存在する可能性があることを除いて、同一の化学構造を有する分子の集合を意味する。したがって、表示された重水素原子を含む特定の化学構造によって表される化合物が当該構造における指定された重水素位置の1つ又は複数に水素原子を有するより少量のアイソトポログも含むことは、当業者には明らかであろう。本発明の化合物中のそのようなアイソトポログの相対的な量は、化合物を作製するのに用いられる重水素化試薬の同位体純度及び化合物を調製するのに用いられる各種合成段階における重水素の取込みの効率を含む多くの要因に依存する。しかし、上述のように、そのようなアイソトポログの相対的な量は、化合物の49.9%未満である。
【0041】
本発明の化合物の塩は、酸とアミノ官能基などの化合物の塩基性基との、又は塩基とカルボキシル官能基などの化合物の酸性基との間で形成される。他の実施形態によれば、該化合物は、薬学的に許容される酸付加塩である。
【0042】
「薬学的に許容される」という用語は、本明細書で用いているように、適切な医学的判断の範囲内にあり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴うことなくヒト及び他の哺乳動物の組織と接触させて使用するのに適し、妥当なベネフィット/リスク比に見合った成分を意味する。「薬学的に許容される塩」は、受容者への投与に際し本発明の化合物を直接的又は間接的に供給することができる任意の適切な塩を意味する。「薬学的に許容される対イオン」は、受容者への投与に際し塩から放出されたときに有毒でない塩のイオン部分である。
【0043】
薬学的に許容される塩を形成させるために一般的に用いられる酸としては、二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸並びにパラトルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、重酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラブロモフェニルスルホン酸、カルボン酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸及び酢酸などの有機酸並びに関連無機及び有機酸などがある。したがって、そのような薬学的に許容される塩は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩及びその他の塩を含む。一実施形態において、薬学的に許容される酸付加塩は、塩酸及び臭化水素酸などの鉱酸により形成されたもの及び特にマレイン酸などの有機酸により形成されたものを含む。
【0044】
「安定化合物」という用語は、本明細書で用いているように、それらの製造を可能にするのに十分な安定性を有し、本明細書で詳述した目的(例えば、治療用製品、治療用化合物の製造に用いる中間体、単離可能又は貯蔵可能な中間化合物への配合、治療薬に反応する疾患又は状態を治療すること)のために有用であるのに十分な期間にわたり化合物の完全性を維持している化合物を意味する。
【0045】
「立体異性体」は、鏡像異性体及びジアステレオマーの両方を意味する。「D」は、重水素を意味する。「Tert」、「」及び「t」はそれぞれ、第三級を意味する。「US」は、アメリカ合衆国を意味する。「FDA」は、食品医薬品局を意味する。「NDA」は、新薬承認申請を意味する。「rt」又は「RT」は、室温を意味する。「h」は、時間を意味する。「DMF」は、ジメチルホルムアミドを意味する。「TsOH」は、p−トルエンスルホン酸を意味する。
【0046】
本明細書を通して、可変基は、一般的に言及する(例えば、「各R」)か、又は具体的に言及する(例えば、R又はR)ことがありうる。特に示さない限り、可変基を一般的に言及する場合、それは、当該の特定の可変基のすべての個別の実施形態を含むことを意味する。
【0047】
治療用化合物
本発明は、以下の式I
【0048】
【化3】

の化合物
又はその薬学的に許容される塩を提供する[式中、
は、−O−(C〜C)アルキル又は−(C〜C)アルキルであり、ここでRは、1個又は複数個の重水素原子で場合によって置換されており、
は、CH、CHD、CHD又はCDであり、
ただし、少なくとも1個の重水素原子がR又はRに存在する。]。
【0049】
本化合物の好ましい立体化学は、レボルファノールの右旋性鏡像異性体として存在するデキストロメトルファンなどのモルヒナン化合物の立体化学に基づいている。
【0050】
本発明の一実施形態は、Rが1個又は複数個の重水素原子で場合によって置換されている−O−(C〜C)アルキルである式Iの化合物を提供する。この実施形態の一態様において、Rは、−O−CHCH、−O−CDCD、−O−CDCH、−O−CHCD、−O−CH(CH、−O−CD(CD、−O−CH(CD、−O−CD(CH、−O−CHCH(CH、−O−CDCH(CH、−O−CHCD(CH、−O−CHCH(CD、−O−CDCD(CH、−O−CDCH(CD、−O−CHCD(CD又は−O−CDCD(CDである。
【0051】
他の態様において、Rは、−O−CDCD、−O−CDCH、−O−CHCD、−O−CD(CD、−O−CH(CD、−O−CD(CH、−O−CDCH(CH、−O−CHCD(CH、−O−CHCH(CD、−O−CDCD(CH、−O−CDCH(CD、−O−CHCD(CD又は−O−CDCD(CDである。
【0052】
他の態様において、Rは、−O−CDCD、−O−CDCH、−O−CHCD、−O−CD(CD、−O−CH(CD又は−O−CD(CHである。
【0053】
他の態様において、Rは、−O−CDCD又は−O−CD(CDである。他の態様において、Rは、−O−CDCDである。
【0054】
他の態様において、Rは、−O−CD(CDである。
【0055】
式Iの他の実施形態は、Rが重水素化−O−(C〜C)アルキルであり、Rが−CD又は−CHである式Iの化合物を提供する。この実施形態の一態様において、Rは、−CDである。他の態様において、Rは、−CHである。
【0056】
の上の態様のそれぞれをRの上の態様のそれぞれと組み合わせて、本発明のさらなる実施形態を形成することができる。
【0057】
が−O−(C〜C)アルキルである特定の化合物の例は、以下の表1
【0058】
【表2】

に示すもの
又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0059】
本発明の他の実施形態は、Rが1個又は複数個の重水素原子で場合によって置換されている−(C〜C)アルキルである式Iの化合物を提供する。この実施形態の一態様において、Rは、−CH、−CD、−CHCH、−CDCD、−CDCH、−CHCD、−CHCHCH、−CDCHCH、−CDCDCH、−CDCDCD、−CHCDCH、−CHCDCD、−CHCHCD、−CH(CH、−CD(CD、−CH(CD、−CD(CH、−CHCHCHCH、−CDCHCHCH、−CDCDCHCH、−CDCDCDCH、−CDCDCDCD、−CDCHCDCH、−CDCHCHCD、−CDCHCDCD、−CHCDCHCH、−CHCHCDCH、−CHCHCHCD、−CHCDCDCH、−CHCDCHCD、−CHCHCDCD、−CH(CH)CHCH、−CD(CH)CHCH、−CD(CD)CHCH、−CD(CD)CDCH、−CD(CD)CDCD、−CD(CH)CDCH、−CD(CH)CDCH、−CD(CH)CHCD、−CH(CD)CHCH、−CH(CH)CDCH、−CH(CH)CHCD、−CH(CD)CDCH、CH(CD)CHCD、−CH(CH)CDCD、−CHCH(CH、−CDCH(CH、−CHCD(CH、−CHCH(CD、−CDCD(CH、−CDCH(CD、−CHCD(CD又は−CDCD(CDである。他の態様において、Rは、−CH、−CHCH、−CH(CH又は−CHCH(CHであり、Rは、CDから選択される。他の態様において、Rは、−CD、−CDCD、−CDCH、−CHCD、−CD(CD、−CH(CD、−CD(CH、−CDCH(CH、−CHCD(CH、−CHCH(CD、−CDCD(CH、−CDCH(CD、−CHCD(CD又は−CDCD(CDである。他の態様において、Rは、−CD、−CDCD又は−CDCD(CDである。他の態様において、Rは、−CDである。Rのこれらの態様のそれぞれをRの以下の態様と組み合わせて、本発明のさらなる実施形態を提供することができる。
【0060】
本発明の他の実施形態は、Rが重水素化(C〜C)アルキルであり、Rが−CH又は−CDである式Iの化合物を提供する。この実施形態の一態様において、Rは、−CHである。他の態様において、Rは、−CDである。
【0061】
が−(C〜C)アルキルである式Iの特定の化合物の例は、下に示す化合物108、109及び110
【0062】
【化4】

又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0063】
実施形態の他の組において、上で示した実施形態のいずれかにおいて重水素と指定されていない原子は、その天然同位体存在度で存在する。
【0064】
実施形態の他の組において、式Iの化合物は、精製されており、例えば、式Iの化合物は、それぞれ存在する式Iのアイソトポログの総量の少なくとも50.1重量%(例えば、少なくとも52.5%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、98.5%、99%、99.5%又は99.9%)の純度で存在する。したがって、いくつかの実施形態において、式Iの化合物を含む組成物は、アイソトポログの少なくとも50.1重量%が挙げられている化合物であるならば、化合物のアイソトポログの分布を含みうる。
【0065】
実施形態の他の組において、式Iの化合物は、単離された形で提供され、例えば、化合物は、細胞又は生物体内に存在せず、化合物は実際にはそれに一般的に付随する成分の一部又はすべてから分離されている。
【0066】
いくつかの実施形態において、Dを有すると指定されている式Iの化合物における位置は、式Iの化合物の指定されている位置(単数又は複数)に少なくとも50.1%(例えば、少なくとも52.5%、少なくとも60%、少なくとも67.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%)の最小の重水素取込みを有する。したがって、いくつかの実施形態において、式Iの化合物を含む組成物は、アイソトポログの少なくとも50.1%が指定された位置(単数又は複数)にDを含むならば、該化合物のアイソトポログの分布を含みうる。
【0067】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、該化合物の他のアイソトポログを「実質的に含まず」、例えば、49.9%未満、25%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満又は0.5%未満の他のアイソトポログが存在する。
【0068】
式Iの化合物の合成は、本明細書で開示する代表的な合成及び実施例を参照することにより、また例えば、Schnider'O.及びGrussner'A.、Helv. Chim. Acta.、1951年、34巻、2211頁;Grussner'A. 及びSchnider'O.、GB713146(1954年);Toyo Pharma K.K.、日本JP60089474A(1983年);Newman'A. H.ら、J. Med. Chem.、1992年、35巻、4135頁に開示されているものと同様な手順及び中間体を用いることにより容易に達成することができる。そのような方法は、本明細書に示す化合物を合成するために対応する重水素化及び場合によって他の同位体含有試薬及び/又は中間体を用いることにより、或いは化学構造に同位原子を導入するための当技術分野で公知の標準的合成プロトコールを用いることにより実施することができる。
【0069】
代表的な合成
式Iの化合物を調製するのに用いることができる次の重水素化試薬及びビルディングブロックは市販されている:ヨードエタン−d、エチル−2,2,2−dヨージド、エチル−1,1−dヨージド、イソプロピル−dヨージド、イソプロピル−dブロミド、イソプロピル−1,1,1,3,3,3−dヨージド及び1,1,1,3,3,3−dブロミド。
【0070】
が−O−(C〜C)アルキルである式Iの化合物を合成する好都合な方法をスキーム1に示す。
スキーム1.式Iの化合物(Rが−O−(C〜C)アルキルである)の合成
【0071】
【化5】

【0072】
Newman'A. H.ら、Journal of Medicinal Chemistry、1992年、35巻、4135〜4142頁に記載されている手順に従って三臭化ホウ素により公知の17−エトキシカルボニル−3−メトキシ−モルヒナン(10)(その調製については、Murdter'T. E.ら、Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals、2002年、45巻、1153〜1158頁を参照されたい)を処理することにより、17−エトキシカルボニル−3−ヒドロキシ−モルヒナン(11)が得られる。前述の論文に記載されている手順と同様に炭酸カリウムの存在下で適切に重水素化したヨウ化アルキルにより3−ヒドロキシ−モルヒナン11を処理することにより、重水素化17−エトキシカルボニル−3−アルコキシ−モルヒナン(12)が得られる。Newmanにより記載されているのと同様な方法でTHF中で水素化リチウムアルミニウム又は重水素化リチウムアルミニウムによりモルヒナン12のカルバミン酸エステルを還元することにより、それぞれ式Iの重水素化3−アルコキシ−17−メチル−モルヒナン(13)又は3−アルコキシ−17−トリデューテロメチル−モルヒナン(14)化合物が得られる。
【0073】
が−(C〜C)アルキルである式Iの化合物を合成する好都合な方法をスキーム2に示す。
スキーム2.式Iの化合物(Rが−(C〜C)アルキルである)の合成
【0074】
【化6】

【0075】
US2005/0256147A1にKim'C.-H.により記載されている手順に従ってN−フェニル−トリフルオロメタンスルホンイミドにより17−エトキシカルボニル−3−ヒドロキシ−モルヒナン(11)を処理することにより、対応するフェノールトリフラート(15)が得られる。前述の特許からの手順と同様な方法で15と適切に重水素化した(C〜C)アルキルボロン酸(16)とのパラジウム触媒クロスカップリングにより、重水素化17−エトキシカルボニル−3−(C〜C)アルキル−モルヒナン(17)が得られる。Newman'A. H.ら、Journal of Medicinal Chemistry、1992年、35巻、4135〜4142頁に記載されている手順と同様にTHF中で水素化リチウムアルミニウム又は重水素化リチウムアルミニウムによりモルヒナンのカルバミン酸エステル17を還元することにより、それぞれ式Iの重水素化3−(C〜C)アルキル−17−メチル−モルヒナン又は3−(C〜C)アルキル−17−トリデューテロメチル−モルヒナン化合物が得られる。
【0076】
スキーム2で用いるアルキルボロン酸試薬16は、スキーム3で上述のように調製する。
スキーム3.アルキルボロン酸エステル16の合成
【0077】
【化7】

【0078】
WO2005/082911A1にDawildowski'D.らにより記載されている手順と同様にペンタン中での元素状リチウムによる適切に重水素化したハロゲン化(C〜C)アルキル(20)の処理により、対応する(C〜C)アルキルリチウムアニオンが得られ、Brown'H. C.ら、Organometallics、1985年、4巻、816〜821頁により記載されている手順と同様に、これを直ちにホウ酸トリイソプロピルで処理し、続いて水性塩化水素により加水分解することにより、適切に重水素化された(C〜Cアルキル)ボロン酸(16)を得ることができる。
【0079】
上で示した特定のアプローチ及び化合物は、限定することを意図するものでない。本明細書におけるスキームにおける化学構造は、同じ可変基名(すなわち、R又はR)により識別されるか否かにかかわりなく、本明細書における化合物の式における対応する位置の化学基の定義(部分、原子等)と対応して本明細書において定義される可変基を示す。他の化合物の合成に用いる化合物の構造における化学基の適切性は、当業者の知識の範囲内にある。式Iの化合物及び本明細書におけるスキームに明示されていない経路内のものを含むそれらの合成前駆体を合成するその他の方法は、当技術分野の通常の技術の化学者の手段の範囲内にある。適用可能な化合物を合成するのに有用な合成化学変換及び保護基方法論(保護及び脱保護)は、当技術分野で公知であり、例えば、Larock R、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers(1989年);Greene TWら、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、John Wiley and Sons(1999年);Fieser Lら、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994年);並びにPaquette L編、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995年)及びその後続の版に記載されているものを含む。
【0080】
本発明により想定される置換基及び可変基の組合せは、安定化合物の生成をもたらすもののみである。
【0081】
組成物
本発明は、式I(例えば、本明細書における式のいずれかを含む)の化合物又は前記化合物の薬学的に許容される塩及び許容される担体を含む発熱物質のない組成物も提供する。一実施形態において、該組成物は、有効量の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。好ましくは、本発明の組成物は、医薬用に配合されていて(「医薬組成物」)、担体が薬学的に許容される担体である。担体(単数又は複数)は、製剤の他の成分と適合性があり、薬学的に許容される担体の場合に薬剤に用いられる量でその受容者に有害でないという意味で「許容される」。
【0082】
本発明の医薬組成物に用いることができる薬学的に許容される担体、アジュバント及び媒体は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩又は電解質、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂を含むが、これらに限定されない。
【0083】
必要な場合、医薬組成物中の本発明の化合物の溶解度及び生物学的利用能は、当技術分野で周知の方法により増大させることができる。1つの方法として、製剤における脂質賦形剤の使用などがある。「Oral Lipid-Based Formulations: Enhancing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs(Drugs and the Pharmaceutical Sciences)」、David J. Hauss編、Informa Healthcare、2007年;及び「Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery: Basic Principles and Biological Examples」、Kishor M. Wasan編、Wiley-Interscience、2006年を参照されたい。
【0084】
生物学的利用能を増大させる他の公知の方法は、LUTROL(商標)及びPLURONIC(商標)(BASF Corporation)などのポロキサマー又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーと共に場合によって配合される本発明の無定形の化合物を用いることである。米国特許第7,014,866号並びに米国特許公開20060094744及び20060079502を参照されたい。
【0085】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、鼻、局所(口腔及び舌下を含む)、膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与に適するものを含む。特定の実施形態において、本明細書における式の化合物を経皮的に投与する(例えば、経皮貼付剤又はイオン導入法を用いて)。他の製剤は、好都合には単位剤形、例えば、錠剤、徐放性カプセル剤並びにリポソームで提供することができ、薬学の分野で周知の方法により調製することができる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott Williams & Wilkins、Baltimore、MD(第20版、2000年)を参照されたい。
【0086】
そのような調製方法は、投与すべき分子を1つ又は複数の補助的成分を構成する担体などの成分と合わせる段階を含む。一般的に、組成物は、有効成分を液体担体、リポソーム若しくは微細な固体担体又は両方と均一且つ緊密に結合させ、次に、必要な場合、その生成物を成形することによって調製する。
【0087】
特定の実施形態において、組成物を経口投与する。経口投与に適する本発明の組成物は、所定量の有効成分をそれぞれ含むカプセル剤、サシェ剤若しくは錠剤などの個別の単位;散剤又は粒剤;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁剤;水中油型液体乳剤;油中水型液体乳剤;リポソーム中充填;又はボーラス等として提供することができる。軟ゼラチンカプセル剤は、化合物の吸収速度を有利に増加させる可能性がある、そのような懸濁剤を含めるのに有用でありうる。
【0088】
経口用の錠剤の場合、一般的に用いられる担体は、乳糖及びトウモロコシデンプンなどである。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も一般的に添加される。カプセル剤の形での経口投与の場合、有用な希釈剤は、乳糖及び乾燥トウモロコシデンプンなどである。水性懸濁剤を経口投与する場合、有効成分を乳化剤及び懸濁化剤と混合する。所望の場合、特定の甘味及び/又は着香及び/又は着色剤を添加することができる。
【0089】
経口投与に適する組成物としては、香味付き基剤、通常、ショ糖及びアラビアゴム又はトラガント中に成分を含むロゼンジ;並びにゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアラビアゴムなどの不活性基剤中に有効成分を含むパステル剤(pastilles)などがある。
【0090】
非経口投与に適する組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬及び製剤を意図する受容者の血液と等張性にする溶質を含んでいてよい水性及び非水性滅菌済み注射液剤;並びに懸濁化剤及び粘稠化剤を含んでいてよい水性及び非水性滅菌済み懸濁剤などである。製剤は、単位用量又は多用量容器、例えば、密封アンプル及びバイアル入りで提供することができ、使用の直前に滅菌済み液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥(freeze dried、lyophilized)状態で保存することができる。即時注射液剤及び懸濁剤は、滅菌済み散剤、粒剤及び錠剤から調製することができる。
【0091】
そのような注射液剤は、例えば、滅菌済み注射用水性又は油脂性懸濁剤の形であってよい。この懸濁剤は、適切な分散剤又は湿潤剤(例えば、Tween80)及び懸濁化剤を用いて当技術分野で公知の手法により配合することができる。滅菌済み注射用製剤は、例えば、1,−ブタンジオール中溶液のような、非経口で許容される非毒性の希釈剤又は溶媒中滅菌済み注射用溶液又は懸濁液であってもよい。用いることができる許容される媒体及び溶媒の主なものは、マンニトール、水、リンゲル液及び等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌済み固定油は、溶媒又は懸濁媒体として好都合に用いられる。この目的のために、合成モノ又はジグリセリドなどのあらゆる無刺激性の固定油を用いることができる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にポリオキシエチル化形のオリーブ油又はヒマシ油などの薬学的に許容される天然油と同様に、注射剤の調製に有用である。これらの油液剤又は懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤を含んでいてもよい。
【0092】
本発明の医薬組成物は、直腸投与のために坐剤の形で投与することができる。これらの組成物は、本発明の化合物を、室温で固体であるが、直腸温で液体であり、したがって、直腸内で溶融して活性成分を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。そのような物質は、ココアバター、蜜ろう及びポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されない。
【0093】
本発明の医薬組成物は、鼻エアロゾル又は吸入により投与することができる。そのような組成物は、医薬処方の分野で周知の技術により調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フッ化炭素及び/又は当技術分野で公知の他の可溶化剤又は分散剤を用いて生理食塩水中溶液として調製することができる。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡されたRabinowitz JD及びZaffaroni AC、米国特許第6,803,031号を参照されたい。
【0094】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が、局所適用によって容易に到達できる部位又は器官を対象とする場合に特に有用である。皮膚への局所適用のために、医薬組成物は、担体に懸濁又は溶解した活性成分を含む適切な軟膏剤を用いて配合すべきである。本発明の化合物の局所投与用の担体は、鉱油、液状石油、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水を含むが、これらに限定されない。或いは、医薬組成物は、担体に懸濁又は溶解した活性化合物を含む適切なローション剤又はクリーム剤を用いて配合することができる。適切な担体は、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を含むが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、直腸坐薬製剤により、又は適切な浣腸製剤で下部腸管に局所的に適用することもできる。局所経皮貼付剤及びイオン導入投与も本発明に含まれる。
【0095】
主題の治療薬(subject therapeutics)の適用は、対象となる部位に適用されるように、局所的であってよい。対象となる部位に主題の組成物を供給するために、注射、カテーテル、トロカール、発射体(projectiles)、プルロニックゲル、ステント、薬物徐放性ポリマー又は内部アクセスを可能にする他のデバイスの使用などの種々の技術を用いることができる。
【0096】
したがって、さらなる他の実施形態によれば、本発明の化合物は、人工器官、人工弁、血管移植片、ステント又はカテーテルなどの埋め込み型医療デバイスを被覆するための組成物に含めることができる。適切なコーティング及び被覆埋め込み型デバイスの一般的調製は、当技術分野で公知であり、米国特許第6,099,562号、第5,886,026号及び第5,304,121号に例示されている。コーティングは、一般的に、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル及びそれらの混合物などの生体適合性ポリマー材料である。コーティングは、組成物に放出制御特性を付与するためにフルオロシリコーン、多糖、ポリエチレングリコール、リン脂質又はそれらの組合せの適切なトップコートにより場合によってさらに被覆することができる。侵襲性デバイスのコーティングは、それらの用語が本明細書で用いられているように、薬学的に許容される担体、アジュバント又は媒体の定義に含めるべきである。
【0097】
他の実施形態によれば、本発明は、デバイスを上述のコーティング組成物と接触させる段階を含む、埋め込み型医療デバイスを被覆する方法を提供する。デバイスの被覆が哺乳動物に埋め込む前に行われることは、当業者には明らかである。
【0098】
他の実施形態によれば、本発明は、埋め込み型薬物放出デバイスを本発明の化合物又は組成物と接触させる段階を含む、埋め込み型薬物放出デバイスに含浸させる方法を提供する。埋め込み型薬物放出デバイスは、生分解性ポリマーカプセル若しくはブレット、非分解性拡散性ポリマーカプセル及び生分解性ポリマーウエーハを含むが、これらに限定されない。
【0099】
他の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物が治療活性を示すように、本発明の化合物又は化合物を含む組成物で被覆されている埋め込み型医療デバイスを提供する。
【0100】
他の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物が埋め込み型薬物放出デバイスから放出され、治療活性を示すように、本発明の化合物又は化合物を含む組成物を含浸した、又は含む埋め込み型薬物放出デバイスを提供する。
【0101】
対象からの除去のために器官又は組織にアクセスできる場合、そのような器官又は組織を本発明の組成物を含む培地に浸すことができ、本発明の組成物を器官上に塗布することができ、或いは本発明の組成物を他の任意の好都合な方法で適用することができる。
【0102】
他の実施形態において、本発明の組成物は、第2の治療薬をさらに含む。第2の治療薬は、デキストロメトルファンと同じ作用機序を有する化合物と共に投与したとき有利な特性を有することが公知である又はそのような特性を示す化合物又は治療薬から選択することができる。そのような薬剤は、米国特許第4,316,888号、第4,446,140号、第4,694,010号、第4,898,860号、第5,166,207号、第5,336,980号、第5,350,756号、第5,366,980号、第5,863,927号、RE38,115、第6,197,830号、第6,207,164号、第6,583,152号及び第7,114,547号並びに米国特許公開第2001/0044446号、第2002/0103109号、第2004/0087479号、第2005/0129783号、第2005/0203125号及び第2007/0191411号に記載されているものを含むが、これらに限定されない、デキストロメトルファンとの併用で有用であると示されたものを含む。
【0103】
好ましくは、第2の治療薬は、情動不安定;偽性球麻痺情動;自閉症;例えば、認知症、筋委縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリック病としても公知である)、アルツハイマー病、パーキンソン病及び多発性硬化症などの神経障害及び神経変性疾患;例えば、卒中、外傷性脳損傷、虚血性事象、低酸性素事象及び神経死などの脳損傷;意識障害;末梢血管疾患、心筋梗塞及びアテローム動脈硬化症などの心血管疾患;緑内症、遅発性ジスキネジア;糖尿病性神経障害;網膜症;ホモシステイン誘発性アポトーシスにより引き起こされる疾患又は障害;ホモシステインのレベルの上昇により引き起こされる疾患又は障害;慢性疼痛;難治性疼痛;異痛症、ヒペルパチー(hyperpathia)、痛覚過敏(hyperalgesia)、異常錯感覚、知覚障害、求心路遮断性疼痛及び有痛性感覚脱失痛(anesthesia dolorosa pain)などの神経障害性疼痛、交感神経により媒介される疼痛;例えば、過敏性腸症候群を含む胃腸機能不全に伴う疼痛;口痛;てんかん発作;耳鳴;性機能不全;難治性咳;皮膚炎;例えば、興奮剤、ニコチン、モルヒネ、ヘロイン、他のアヘン剤、アンフェタミン、コカイン及びアルコールへの嗜癖又は依存性などの嗜癖障害;レット症候群(RTT);例えば、外転筋痙攣性発声障害、内転筋痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害及び声の震えを含む制御されていない咽頭筋痙攣に起因する発声障害;メトトレキサート神経毒性;並びに癌によりもたらされる疲労から選択される疾患又は状態の治療又は予防に有用な薬剤である。
【0104】
一実施形態において、第2の治療薬は、キニジン、硫酸キニジン、LBH589(Novartis)、オキシコドン及びガバペンチンから選択される。
【0105】
他の実施形態において、本発明は、本発明の化合物と上述の第2の治療薬のいずれかの1つ又は複数との別個の剤形を提供し、該化合物と第2の治療薬が互いに合されている。「互いに合された」という用語は、本明細書で用いているように、別個の剤形が一緒に包装されているか、或いは別個の剤形が一緒に販売され、投与される(互いに24時間以内の逐次的に又は同時に)ことを意図されていることが容易に明らかであるように別の方法で互いにつながれていることを意味する。
【0106】
本発明の医薬組成物の一実施形態において、本発明の化合物は有効な量で存在する。本明細書で用いているように、「有効量」という用語は、適切な投与計画で投与した場合に、治療されている障害の重症度、持続時間又は進行を低減又は改善し、治療されている障害の進展を予防し、治療されている障害の後退をもたらし、或いは他の療法の予防又は治療効果を増大又は改善するのに十分である量を意味する。
【0107】
動物及びヒトに対する用量(体表1平方メートル当たりのミリグラムに基づく)の相互関係は、Freireichら(1966年)、Cancer Chemother. Rep.、50巻、219頁に記載されている。体表面積は、対象の身長及び体重から近似的に求めることができる。例えば、Scientific Tables、Geigy Pharmaceuticals、Ardsley、N.Y.、1970年、537頁を参照されたい。
【0108】
一実施形態において、本発明の化合物の有効量は、当業者により認識されている種々の要因に応じて1日1回、2回又は3回まで投与することができる0.4mg〜400mg、4.0mg〜350mg、10mg〜90mg又は30mg〜45mg(両端の値を含む)の範囲にありうる。
【0109】
有効用量はまた、当業者により認識されているように、治療される疾患、疾患の重症度、投与経路、対象の性、年齢及び一般健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療処置との併用の可能性及び治療医師の判断によって異なる。例えば、有効用量の選択の指針は、デキストロメトルファンに関する処方情報を参照することによって決定することができる。
【0110】
第2の治療薬を含む医薬組成物については、第2の治療薬の有効量は、その薬剤のみを用いる単剤療法で通常用いられる用量の約0.01%〜100%である。これらの第2の治療薬の通常の単剤療法での用量は、当技術分野で周知である。それぞれそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、例えば、Wellsら編、Pharmacotherapy Handbook、第2版、Appleton and Lange、Stamford、Conn.(2000年);PDR Pharmacopoeia、Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000、Deluxe Edition、Tarascon Publishing、Loma Linda、Calif.(2000年)を参照されたい。
【0111】
上で言及した第2の治療薬の一部は本発明の化合物と相乗的に作用することが予想される。これが起こる場合、第2の治療薬及び/又は本発明の化合物の有効用量は、単剤療法で必要な有効量より減少する。これは、第2の治療薬又は本発明の化合物の毒性副作用を最小限にし、有効性の相乗的改善、投与若しくは使用の容易さの改善及び/又は化合物の調製若しくは配合の全体的な費用の低減などの利点がある。
【0112】
治療の方法
他の実施形態において、本発明は、細胞を式Iの1つ又は複数の化合物と接触させることを含む、細胞中のシグマ1及びシグマ2受容体、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)の活性、又はα3β4ニコチン性受容体の活性を調節する方法を提供する。
【0113】
他の実施形態において、本発明は、式Iの化合物を投与することによって、グルタミン酸などの神経伝達物質が脳内の受容体を活性化することを阻害する、且つ/又はドーパミン及びセロトニンの取込みを阻害する方法を提供する。
【0114】
他の実施形態によれば、本発明は、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩又はそのような化合物を含む組成物を対象に投与する段階を含む、デキストロメトルファンにより有利に治療される疾患又は状態に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療する方法を提供する。そのような疾患及び状態は、当技術分野で周知であり、米国特許第4,316,888号、第4,446,140号、第4,694,010号、第4,898,860号、第5,166,207号、第5,336,980号、第5,350,756号、第5,366,980号、第5,863,927号、RE38,115、第6,197,830号、第6,207,164号、第6,583,152号及び第7,114,547号並びに米国特許公開第2001/0044446号、第2002/0103109号、第2004/0087479号、第2005/0129783号、第2005/0203125号及び第2007/0191411号に開示されているが、これらに記載されているものに限定されない。
【0115】
そのような疾患及び状態は、情動不安定;偽性球麻痺情動;自閉症;例えば、認知症、筋委縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリック病としても公知である)、アルツハイマー病及び多発性硬化症などの神経障害及び神経変性疾患;意識障害;例えば、末梢血管疾患、卒中、心筋梗塞及びアテローム動脈硬化症などの心血管疾患;緑内症、遅発性ジスキネジア;糖尿病性神経障害;網膜症;ホモシステイン誘発性アポトーシスにより引き起こされる疾患又は障害;ホモシステインのレベルの上昇により引き起こされる疾患又は障害;慢性疼痛を含むが、これに限定されない疼痛;難治性疼痛;異痛症、ヒペルパチー(hyperpathia)、痛覚過敏(hyperalgesia)、異常錯感覚、知覚障害、求心路遮断性疼痛及び有痛性感覚脱失痛などの神経障害性疼痛、交感神経により媒介される疼痛;例えば、過敏性腸症候群を含む胃腸機能不全に伴う疼痛;及び口痛;てんかん発作;耳鳴;性機能不全;難治性咳;皮膚炎;例えば、興奮剤、ニコチン、モルヒネ、ヘロイン、他のアヘン剤、アンフェタミン、コカイン及びアルコールへの嗜癖又は依存性などの嗜癖障害;レット症候群(RTT);例えば、外転筋痙攣性発声障害、内転筋痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害及び声の震えを含む制御されていない咽頭筋痙攣に起因する発声障害;メトトレキサート神経毒性;癌によりもたらされる疲労;並びに化学物質への曝露に関連する状態を含むが、これらに限定されない。
【0116】
1つの特定の実施形態において、本発明の方法を用いて、糖尿病性神経障害;レット症候群(RTT);例えば、外転筋痙攣性発声障害、内転筋痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害及び声の震えを含む制御されていない咽頭筋痙攣に起因する発声障害;メトトレキサート神経毒性;並びに癌によりもたらされる疲労から選択される疾患又は状態に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療する。
【0117】
1つの特定の実施形態において、該方法を用いて神経障害性疼痛に罹患している、又は罹患しやすい対象を治療する。他の実施形態において、該方法を用いて偽性球麻痺情動に罹患している対象を治療する。
【0118】
他の特定の実施形態において、該方法を用いて全身性てんかん発作又は部分てんかん発作に罹患している対象を治療する。
【0119】
本明細書で述べる方法は、対象を述べた特定の治療を必要とすると特定する方法も含む。そのような治療を必要とする対象を特定することは、対象又は医療専門家の判断であってよく、主観的(例えば、意見)又は客観的(例えば、試験又は診断方法により測定可能)であってよい。
【0120】
他の実施形態において、上の治療の方法のいずれかは、対象に1つ又は複数の追加の第2の治療薬を併用投与するさらなる段階を含む。第2の治療薬は、デキストロメトルファンとの併用投与に有用であることが公知である任意の第2の治療薬から選択することができる。第2の治療薬の選択は、治療する特定の疾患又は状態にも依存する。本発明の方法に用いることができる第2の治療薬の例は、本発明の化合物及び第2の治療薬を含む組合せ組成物に用いる上述のものである。
【0121】
特に、本発明の併用療法は、式Iの化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又はそのような化合物若しくは塩を含む組成物;及び硫酸キニジンをそれを必要とする対象に併用投与することを含み、対象は糖尿病性神経障害に罹患している、又は罹患しやすい。
【0122】
他の実施形態において、本発明は、式Iの化合物又はそのような化合物を含む組成物;及びLBH589をそれを必要とする対象に併用投与することにより非小細胞肺癌又は悪性胸膜中皮腫に罹患している対象を治療する方法を提供する。
【0123】
「併用投与」という用語は、本明細書で用いているように、追加の第2の治療薬を、単一剤形(本発明の化合物及び上述のような第2の治療薬を含む本発明の組成物など)の一部として、又は別個の多剤形として本発明の化合物と一緒に投与することができることを意味する。或いは、追加の薬剤は、本発明の化合物の投与の前に、連続的に又は後に投与することができる。そのような併用療法処置において、本発明の化合物及び第2の治療薬(単数又は複数)の両方は、従来の方法により投与される。対象への本発明の化合物及び第2の治療薬の両方を含む本発明の組成物の投与は、治療過程中の他の時点における前記対象への同じ治療薬、他のいずれかの第2の治療薬又は本発明のいずれかの化合物の別々の投与を排除しない。
【0124】
これらの第2の治療薬の有効量は、当業者に周知であり、投与に関する指針は、本明細書で引用した特許及び公開特許出願、並びにWellsら編、Pharmacotherapy Handbook、第2版、Appletion and Lange、Stamford、Conn.(2000年);PDR Pharmacopoeia、Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000、Deluxe Edition、Tarascon Publishing、Loma Linda、Calif.(2000年)及び他の医学教科書に見出すことができる。しかし、第2の治療薬の最適有効量範囲を決定することは、当業者の権限の範囲内に十分ある。
【0125】
本発明の一実施形態において、第2の治療薬を対象に投与する場合、本発明の化合物の有効量は、第2の治療薬を投与しない場合のその有効量より少ない。他の実施形態において、第2の治療薬の有効量は、本発明の化合物を投与しない場合のその有効量より少ない。このような方法で、いずれかの薬剤の高い用量に伴う望ましくない副作用を最小限にすることができる。他の可能な利点(制限なしに投与計画の改善及び/又は薬物費用の低減を含む)は、当業者に明らかである。
【0126】
さらなる他の態様において、本発明は、対象における上述の疾患、障害又は症状の治療又は予防のための単一組成物又は別々の剤形としての薬剤の製造における単独又は上述の第2の治療薬の1つ若しくは複数と一緒の式Iの化合物の使用を提供する。本発明の他の態様は、対象における本明細書で述べた疾患、障害又はその症状の治療又は予防に用いる式Iの化合物である。
【0127】
診断方法及びキット
本発明の化合物及び組成物は、溶液又は血漿などの生物学的試料中のデキストロメトルファンの濃度を決定し、デキストロメトルファンの代謝を検討するための方法並びに他の分析試験における試薬としても有用である。
【0128】
一実施形態によれば、本発明は、
a)生物学的試料の溶液に既知濃度の式Iの化合物を加える段階、
b)溶液又は生物学的試料を、式Iの化合物と対応する非重水素化類似体とを区別する測定デバイスにかける段階、
c)式Iの化合物の検出された量を生物学的試料又は溶液に加えた式Iの化合物の既知濃度と相関させるために測定デバイスを較正する段階、及び
d)前記較正済み測定デバイスにより生物学的試料中の対応する非重水素化類似体の量を測定する段階、及び
e)式Iの化合物の検出量と得られた濃度との相関を用いて試料の溶液中の対応する非重水素化類似体の濃度を決定する段階
を含む、式Iの化合物の非重水素化類似体の溶液又は生物学的試料中の濃度を決定する方法を提供する。
【0129】
対応する非重水素化類似体と式Iの化合物とを区別することができる測定デバイスは、同位体存在度が互いに異なる2つの化合物を区別することができる任意の測定デバイスを含む。具体例としての測定デバイスは、質量分析計、NMR分光計又はIR分光計などである。
【0130】
他の実施形態において、溶液又は生物学的試料中の式Iの化合物の非重水素化類似体の量を決定する方法であって、
a)既知量の式Iの化合物を溶液又は生物学的試料に加える段階、
b)2つの化合物を区別することができる測定デバイスで式Iの化合物の少なくとも1つのシグナル及び対応する非重水素化類似体の少なくとも1つのシグナルを検出する段階、
c)式Iの化合物の検出された少なくとも1つのシグナルを溶液又は生物学的試料に加えた式Iの化合物の既知量と相関させる段階、及び
d)式Iの化合物の検出された少なくとも1つのシグナルと式Iの化合物の溶液又は生物学的試料に加えた量との相関を用いて溶液又は生物学的試料中の対応する非重水素化類似体の量を決定する段階
を含む方法を提供する。
【0131】
他の実施形態において、本発明は、式Iの化合物を代謝酵素源とある期間接触させる段階、及び、該期間の後に式Iの化合物の量を式Iの化合物の代謝産物と比較する段階を含む、式Iの化合物の代謝安定性を評価する方法を提供する。
【0132】
関連実施形態において、本発明は、式Iの化合物の投与の後の対象における式Iの化合物の代謝安定性を評価する方法を提供する。この方法は、対象への式Iの化合物の投与の後のある期間対象から血清、血液、組織、尿又は便試料を得る段階;及び血清、血液、組織、尿又は便試料中の式Iの化合物の量を式Iの化合物の代謝産物と比較する段階を含む。
【0133】
本発明はまた、偽性球麻痺障害、糖尿病性神経障害、レット症候群(RTT);例えば、外転筋痙攣性発声障害、内転筋痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害及び声の震えを含む制御されていない咽頭筋痙攣に起因する発声障害;メトトレキサート神経毒性;並びに癌によりもたらされる疲労を治療するために用いるキットを提供する。これらのキットは、(a)式Iの化合物又はその塩を含む医薬組成物(前記医薬組成物は容器内にある)並びに(b)偽性球麻痺障害;糖尿病性神経障害;レット症候群(RTT);例えば、外転筋痙攣性発声障害、内転筋痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害及び声の震えを含む制御されていない咽頭筋痙攣に起因する発声障害;メトトレキサート神経毒性;並びに癌によりもたらされる疲労を治療するために医薬組成物を用いる方法を述べている説明書を含む。
【0134】
入れ物は、前記医薬組成物を保持することができる任意の容器又は他の密閉若しくは密閉可能デバイスであってよい。例としては、ビン、アンプル、各部分若しくは室が前記組成物の1回用量を含む分割若しくは多室ホルダービン、各部分が前記組成物の1回用量を含む分割フォイルパケット(a divided foil packet)、又は前記組成物の1回用量を供給するディスペンサーなどがある。該入れ物は、薬学的に許容される材料製の当技術分野で公知の従来の任意の形状又は形のもの、例えば、紙若しくは厚紙箱、ガラス若しくはプラスチックビン若しくはジャー、再密封性バッグ(例えば、異なる入れ物に入れるための錠剤の「詰め替え」を保持するための)又は治療計画に従ってパックから押し出すための個別の用量を含むブリスターパックであってよい。用いる入れ物は、関係する正確な剤形に依存し、例えば、従来の厚紙箱は、液体懸濁剤を保持するのに一般的に用いられない。複数の入れ物を一緒に単一包装で用いて、単一剤形を販売することができることは実現可能である。例えば、錠剤をビンに入れることができ、それを次に箱の中に入れる。一実施形態において、入れ物はブリスターパックである。
【0135】
本発明のキットは、医薬組成物の単位用量を投与又は量り分けるためのデバイスも含んでいてよい。そのようなデバイスは、前記組成物が吸入可能組成物である場合には吸入器、前記組成物が注射可能組成物である場合には注射器及び針、前記組成物が経口液体組成物である場合には注射器、スプーン、ポンプ又は容積標識を有する若しくは有さない容器、或いはキットに存在する組成物の投与製剤に適切な他の任意の測定又は送達デバイスなどでありうる。
【0136】
本発明のキットの実施形態において、第2の有効成分を含む組成物は、式Iの化合物を含む組成物を含む容器と別個の容器又は入れ物に入れることができる。
【実施例】
【0137】
実施例1.(+)−3−(エトキシ−d)−17−(メチル−d)−(9α,13α,14α)−モルヒナン塩酸塩(100)の合成
化合物100は、下に概説するように調製した。合成の詳細は以下の通りである。
【0138】
【化8】

【0139】
(+)−3−メトキシ−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン(遊離塩基、8)の合成
反応容器に(+)−3−メトキシ−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナンHBr塩(7;3.00g、8.5mモル)、CHOH中NH(2.0M、8.5mL、17.0mモル)及び撹拌棒を加えた。反応混合物をRTで1時間撹拌した。得られた物質をロータリーエバポレーターで濃縮し、次いで、CHCl(50mL)及びHO(50mL)で希釈した。層を分離し、水層をCHCl(50mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、2.88gの8を綿毛状白色固体として得た。
【数1】

【0140】
(+)−3−メトキシ−(9α,13α,14α)−モルヒナン(9)の合成
固体の(+)−3−メトキシ−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン(8;6.79g、25.1mモル)を、CHCl及び撹拌棒と共に反応容器に入れた。KCO(13.85g、100.2mモル)を加え、塩化アセチル(7.866g、100.2mモル)を加える前に、混合物をN雰囲気中でRTで10分間撹拌した。依然としてN雰囲気中の得られた反応混合物を還流条件下で7時間撹拌し、次いで、セライトのパッドによりろ過した。有機ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた粗物質をCHOHに溶解し、還流条件下で1時間撹拌した。溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、次いで、真空中で乾燥して、6.78gの9を灰色がかった白色固体として得た。
【数2】

【0141】
(+)−17−エチルカルバメート−3−メトキシ−(9α,13α,14α)−モルヒナン(10)の合成
撹拌棒を入れた反応容器に、CHCl(100mL)に溶解した9(6.025g、2.48mモル)を加えた。ジイソプロピルエチルアミン(DIEA;16.32g、126.3mモル)を加え、クロロギ酸エチル(13.094g、76.8mモル)を加える前に、混合物を窒素中室温で10分間撹拌した。反応混合物を窒素中還流条件下で3時間撹拌し、その時点でTLC(20%酢酸エチル/ヘキサン)により出発物質の完全な消費が示された。有機層を除去し、最初に1M HClで、次に飽和NaHCOで洗浄した。各洗浄からの水層を合わせ、50mlのCHClで逆抽出した。逆抽出からの有機層を洗浄からの有機層と合わせ、合わせた有機層をNaSO上で乾燥した。次いで、有機溶液をろ過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、次いで、自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(0〜30%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、5.37gの10を透明淡黄色油として得た。
【数3】

【0142】
(+)−17−エチルカルバメート−3−ヒドロキシ−(9α,13α,14α)−モルヒナン(11)の合成
撹拌棒を入れた反応容器中でカルバメート10(2.43g、7.4mモル)をCHCl(20mL)に溶解し、得られた溶液を0℃に冷却した。BBr(9.24g、36.9mモル)を加え、反応混合物をN雰囲気中0℃で20分間撹拌した(その時点で20%酢酸エチル/ヘキサンでのtlcにより反応が完結したことが示された)。氷中27%NHOHの溶液を撹拌棒を含むビーカーに入れ、撹拌しながら反応混合物を徐々に加えた。得られた混合物を20分間撹拌し、次いで、4:1CHCl/CHOH(200mL)で抽出した。有機層をNaSO上で乾燥し、ろ過し、次いで、ロータリーエバポレーターで濃縮した。粗物質を自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(1%NHOHを含むCHOH/CHCl、0〜10%)により精製した。純粋画分をロータリーエバポレーターで濃縮して、1.48gの11を白色固体として得た。
【数4】

【0143】
(+)−3−(エトキシ−d)−17−エトキシカルボニル−(9α,13α,14α)−モルヒナン(20)の合成
DMF(25mL)中アルコール11(1.50g、4.8mモル)の溶液に撹拌しながらKCO(2.00g、14.5mモル、3.05当量)及びヨードエタン−d(1.15g、7.1mモル、1.50当量)を加えた。反応混合物をN雰囲気中室温(rt)で一夜撹拌し、HOの添加により反応を停止させ、EtO(3×30mL)で抽出した。合わせた有機物をNaSO上で乾燥し、ろ過し、真空中で黄色油に濃縮した。自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(0〜40%EtOAc/ヘキサン)により精製して、中間体20(1.53g、収率91%)を得た。
【0144】
(+)−3−(エトキシ−d)−17−(メチル−d)−(9α,13α,14α)−モルヒナン塩酸塩(100)の合成
−78℃で撹拌したTHF(10mL)中LiAlD(0.184g、4.4mモル、2.0当量)のスラリーにTHF(5mL)中カルバメート20(0.763g、2.2mモル)の溶液を加えた。rtで1時間撹拌した後、tlcにより反応が検出されず、追加の2.0当量のLiAlD(0.184g、4.4mモル、2.0当量)を加えた。反応混合物をrtで一夜撹拌し、次いで、ガスの発生が止まるまで硫酸マグネシウム七水和物を加えることにより反応を停止させた。混合物をろ過し、真空中で濃縮し、得られた粗物質を自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/CHOH/NHOH−90/10/1)により精製して、遊離アミン100を得た。この物質をCHOH中1.25M HClに溶解し、減圧下で濃縮し、高真空中で乾燥して、14.3mgの生成物100をHCl塩として得た。
【数5】

【0145】
実施例2.(+)−3−(エトキシ−d)−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン塩酸塩(104)の合成
化合物104は、カルバメート20の104への還元のためにLiAlDの代わりにLiAlHを用いたことを除いて、上の実施例1で略述したように調製した。
【0146】
【化9】

【0147】
(+)−3−(エトキシ−d)−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン塩酸塩(104)の合成
−78℃で撹拌したTHF(10mL)中LiAlH(0.166g、4.4mモル、2.0当量)のスラリーにTHF(5mL)中カルバメート20(0.763g、2.2mモル)の溶液を加えた。1時間後に追加の2.0当量のLiAlH(0.184g、4.4mモル、2.0当量)を加えた。反応混合物をrtで一夜撹拌し、次いで、ガスの発生が止まるまで硫酸マグネシウム七水和物を加えることにより反応を停止させた。混合物をろ過し、真空中で濃縮し、得られた粗物質を自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(CHCl/CHOH/NHOH−90/10/1)により精製して、遊離アミン104を得た。この物質をCHOH中1.25M HClに溶解し、減圧下で濃縮し、高真空中で乾燥して、31mgの生成物104をHCl塩として得た。
【数6】

【0148】
実施例3.(+)−3−(イソプロポキシ−d)−17−(メチル−d)−(9α,13α,14α)−モルヒナン(102)の合成
化合物102は、下に概説するように調製した。合成の詳細は以下の通りである。
【0149】
【化10】

【0150】
(+)−3−(イソプロポキシ−d)−17−エトキシカルボニル−(9α,13α,14α)−モルヒナン(21)の合成
DMF(25mL)中アルコール11(1.50g、4.8mモル;実施例1に従って生成させた)の溶液に撹拌しながらKCO(2.00g、14.5mモル、3.05当量)及び2−ヨードプロパン−d(0.71mL、7.1mモル、1.50当量)を加えた。反応混合物をN雰囲気中で室温(rt)で一夜撹拌し、HOの添加により反応を停止させ、EtO(3×30mL)で抽出した。合わせた有機物をNaSO上で乾燥し、ろ過し、真空中で無色油に濃縮した。自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(0〜40%EtOAc/ヘキサン)により精製して、中間体21(1.48g、収率85%)を得た。
【0151】
(+)−3−(イソプロポキシ−d)−17−(メチル−d)−(9α,13α,14α)−モルヒナン(102)の合成
−78℃で撹拌したTHF(10mL)中LiAlD(0.340g、8.1mモル、4.0当量)のスラリーにTHF(5mL)中カルバメート21(0.739g、2.0mモル)の溶液を加えた。反応混合物をrtで一夜撹拌し、次いで、ガスの発生が止まるまで硫酸マグネシウム七水和物を加えることにより反応を停止させた。混合物をろ過し、ろ液を真空中で濃縮し、得られた物質をCHOHに溶解した。得られた溶液をフマル酸でpH4に酸性化して、塩の析出を生じさせた。混合物を5分間撹拌し、EtOを加えて、残りを溶液から塩析させた。ろ過により塩を単離し、乾燥して、660mgの最終生成物102をフマル酸塩として得た。
【数7】

【0152】
実施例4.(+)−3−(イソプロポキシ−d)−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン(106)の合成
化合物106は、カルバメート21の106への還元のためにLiAlDの代わりにLiAlHを用いたことを除いて、上の実施例3で略述したように調製した。
【0153】
【化11】

【0154】
(+)−3−(イソプロポキシ−d)−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン(106)の合成
−78℃で撹拌したTHF(10mL)中LiAlH(0.308g、8.1mモル、4.0当量)のスラリーにTHF(5mL)中カルバメート21(0.739g、2.0mモル)の溶液を加えた。反応混合物をrtで一夜撹拌し、次いで、ガスの発生が止まるまで硫酸マグネシウム七水和物を加えることにより反応を停止させた。混合物をろ過し、ろ液を真空中で濃縮し、得られた物質をCHOHに溶解した。得られた溶液をフマル酸でpH4に酸性化して、塩の析出を生じさせた。混合物を5分間撹拌し、EtOを加えて、残りを溶液から塩析させた。ろ過により塩を単離し、乾燥して、330mgの最終生成物106をフマル酸塩として得た。
【数8】

【0155】
実施例5.(+)−3−(メチル−d)−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン(108)の合成
化合物108は、下に略述するように調製した。合成の詳細は以下の通りである。
【0156】
【化12】

【0157】
(+)−17−エチルカルバメート−3−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−(9α,13α,14α)−モルヒナン(22)の合成
CHCl(400mL)中11(9g、28.6mモル、実施例1参照)及びトリエチルアミン(16mL、114mモル)の溶液に氷浴で冷却しながらN−フェニル−トリフルオロメタンスルホンイミド「PhNTf」(20.7g、57.2mモル)を加えた。反応混合物を周囲温度に加温し、一夜撹拌した。混合物をCHCl(500mL)で希釈し、溶液を飽和重炭酸ナトリウム、水及び食塩水で洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で乾燥した。ろ過及び減圧下での濃縮後、粗生成物をシリカゲル上カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン、0〜10%)により精製して、12g(94%)の22を透明油として得た。
【0158】
(+)−17−エチルカルバメート−3−(メチル−d)−(9α,13α,14α)−モルヒナン(23)の合成
THF(500mL)中22(22g、43.8mモル)の溶液にN−メチル−2−ピロリドン「NMP」(26.2mL、153.1mモル)を周囲温度で加えた。反応混合物をNパージにより10分間脱気した。鉄(III)アセチルアセトネート「Fc(acac)」(1.65g、4.4mモル)及びCDMgI(EtO中1M、53mL、47.6mモル、Sigma Aldrich、99原子%D)を加え、反応混合物を加熱して一夜還流した。反応物を冷却し、水(500mL)を加えた。層を分離し、水層をCHCl(3×100mL)で抽出した。合わせた有機物を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮し、シリカゲル上カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン、0〜10%)により精製して、4g(94%、回収された出発物質に基づく)の23及び16gの回収22を得た。
【0159】
(+)−3−(メチル−d)−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン(108)の合成
THF(70mL)中23(1.5g、4.8mモル)の混合物を0℃でLiAlH(THF中1M、19.2mL)で処理した。混合物を周囲温度に加温し、一夜撹拌した。水(1mL)を加えて、反応を停止させ、続いて、NaOH(24%、10mL)を加えた。混合物を30分間撹拌したところ、その時間中に白色固体が析出した。固体をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。粗生成物を分取HPLC(下記の条件を参照)により精製して、108を得た。遊離アミンをMTBE(30mL)に溶解し、加熱して還流した。HPO(イソプロパノール中)を1滴ずつ加えたところ、白色固体の形成がもたらされた。白色固体がもはや析出しなくなったと思われるまで、HPOの添加を続けた。固体をろ過し、MTBE(100mL)で洗浄して、1.2gの固体を得た。物質をMeOH/MTBEで再結晶化して、108をリン酸塩(0.75g、47%)として得た。
【数9】

【0160】
分取HPLCの条件:
Sunfire C18 5um 30×150mmカラム;Waters GIポンプ;
溶媒A=水;溶媒B=アセトニトリル
勾配:
【0161】
【表3】

【0162】
実施例6.(+)−3−メチル−17−(メチル−d)−(9α,13α,14α)−モルヒナン(109)の合成
化合物109は、下に略述するように調製した。合成の詳細は以下の通りである。
【0163】
【化13】

【0164】
(+)−17−エチルカルバメート−3−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン(24)の合成
THF(100mL)中22(3.6g、7.16mモル、実施例5参照)の溶液にN−メチル−2−ピロリドン「NMP」(4.3mL、25.1mモル)を周囲温度で加えた。反応混合物をNパージにより10分間脱気した。鉄(III)アセチルアセトネート「Fe(acac)」(270mg、0.72mモル)及びMeMgBr(EtO中3M、2.9mL、7.8mモル)を加え、反応混合物を加熱して一夜還流した。反応物を冷却し、水(50mL)を加えた。層を分離し、水層をCHCl(3×100mL)で抽出した。合わせた有機物を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮し、シリカゲル上カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン、0〜10%)により精製して、0.84gの24(回収された出発物質に基づき75%)及び2gの回収22を得た。
【0165】
(+)−3−メチル−17−(メチル−d)−(9α,13α,14α)−モルヒナン(109)の合成
THF(30mL)中24(1g、6.2mモル)の混合物を0℃でLiAlD(0.9g、24.8mモル、Cambridge Isotopes、98原子%D)で処理し、反応物を周囲温度に加温し、一夜撹拌した。水(1mL)を加えて、反応を停止させ、続いて、NaOH(24%、5mL)を加えた。混合物を30分間撹拌したところ、その時間中に白色固体が析出した。固体をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。粗生成物をEtOAc(30mL)に溶解し、10%HCl(3×30mL)で抽出した。合わせた水層をCHCl(30mL)で洗浄し、10%NaOHで中和した。次いで、水層をCHCl(3×30mL)で抽出し、合わせた有機物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮して、109を得た。遊離アミンをMTBE(30mL)に溶解し、加熱して還流した。HPO(イソプロパノール中)を1滴ずつ加えたところ、白色固体の形成がもたらされた。白色固体がもはや析出しなくなったと思われるまで、HPOの添加を続けた。固体をろ過し、MTBE(100mL)で洗浄した。生成物をMeOH/MTBEで再結晶化して、109をリン酸塩(0.4g、36%)として得た。
【数10】

【0166】
実施例7.(+)−3−(メチル−d)−17−(メチル−d)−(9α,13α,14α)−モルヒナン(110)の合成
化合物110は、下に略述するように調製した。合成の詳細は以下の通りである。
【0167】
【化14】

【0168】
(+)−3−(メチル−d)−17−(メチル−d)−(9α,13α,14α)−モルヒナン(110)の合成
THF(70mL)中23(2.5g、8mモル、実施例5参照)の混合物を0℃でLiAlD(1.7g、32mモル、Cambridge Isotopes、98原子%D)で処理した。混合物を周囲温度に加温し、一夜撹拌した。水(1mL)を加えて、反応を停止させ、続いて、NaOH(24%、10mL)を加えた。混合物を30分間撹拌したところ、その時間中に白色固体が析出した。固体をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。粗生成物を分取HPLC(実施例5で述べた条件を参照)により精製して、110を得た。遊離アミンをMTBE(50mL)に溶解し、加熱して還流した。HPO(イソプロパノール中)を1滴ずつ加えたところ、白色固体の形成がもたらされた。白色固体がもはや析出しなくなったと思われるまで、HPOの添加を続けた。固体をろ過し、MTBE(100mL)で洗浄して、1.2gの固体を得た。生成物をMeOH/MTBEで再結晶化して、110をリン酸塩(1g、36%)として得た。
【数11】

【0169】
実施例8.CYP2D6 SUPERSOMES(商標)中の代謝安定性の評価
ヒトCYP2D6 SUPERSOMES(商標)をGenTest(Woburn、MA、USA)から購入した。試験化合物(化合物100、102、104、106、デキストロメトルファン、各メチル基がCDで置換されているデキストロメトルファンの重水素化類似体(「d−デキストロメトルファン」、化学名(+)−3−d3−メトキシ−17−d3−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン、米国出願番号12/112,936において化合物101と、また図1及び下の表2で「試験化合物」とも呼ばれている)、デキストロメトルファンのエチルエーテル類似体(「デキストロエトルファン」)又はデキストロメトルファンのイソプロピルエーテル類似体(「デキストロイソプロポルファン」))の7.5mM保存溶液をDMSOに溶解して調製した。7.5mM保存溶液をアセトニトリル(ACN)で50μMに希釈した。1000pモル/mL CYP2D6 supersomesを、3mM MgClを含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液pH7.4で62.5pモル/mLに希釈した。希釈したSUPERSOMES(商標)を96ウェルのディープウェルポリプロピレンプレートのウェルに3系列で(in triplicate)加えた。10μLの50μM試験化合物をsupersomesに加え、混合物を10分間予熱した。予熱したNADPH溶液の添加により反応を開始させた。最終反応物容積は、0.5mLであり、0.1Mリン酸カリウム緩衝液pH7.4中50pモル/mL CYP2D6 SUPERSOMES(商標)、1μM試験化合物及び2mM NADPH並びに3mM MgClを含んでいた。反応混合物を37℃でインキュベートし、50μLのアリコートを0、5、10、20及び30分目に除去し、反応を停止させるための内標準を含む50μLの氷冷ACNを含むシャローウェル96ウェルプレートに加えた。プレートを4℃で20分間保存し、その後、ペレット状沈殿タンパク質に遠心分離する前に、100μLの水をプレートのウェルに加えた。上清を他の96ウェルプレートに移し、Applied Bio−systems API 4000質量分析計を用いてLC−MS/MSにより残存親の量について分析した。
【0170】
試験化合物のそれぞれのin vitro半減期(t1/2)は、残存親%(ln)対インキュベーション時間の関係の線型回帰の勾配から計算した。すなわち、in vitro t1/2=0.693/kであり、k=−[残存親%(ln)対インキュベーション時間の線型回帰の勾配]である。データ解析は、Microsoft Excel Softwareを用いて行った。
【0171】
図1及び下の表2にSUPERSOMES(商標)実験の結果を示す。図1において、化合物100及び104に関する曲線が互いに重なっていることに留意されたい。図1及び表2における「試験化合物」は、重水素化デキストロエトルファン(参照により本明細書に組み込まれている米国出願番号12/112,936において化合物101とも呼ばれている、「d6−デキストロメトルファン」、(+)−3−d3−メトキシ−17−d3−メチル−(9α,13α,14α)−モルヒナン)を指す。
【0172】
【表4】

【0173】
試験した重水素化化合物のそれぞれは、CYP2D6 SUPERSOMES(商標)と共にインキュベートした場合、対応する非重水素化試験化合物又はデキストロメトルファンの重水素化形(試験化合物)のいずれよりも長い半減期を示した。したがって、このアッセイにおいて、本発明の化合物は、デキストロメトルファン又は重水素化デキストロメトルファン(試験化合物)より代謝に対して抵抗性が高かった。
【0174】
実施例9.ヒト肝ミクロソームを用いた試験化合物の代謝安定性の決定
ヒト肝ミクロソーム(20mg/mL)は、Xenotech、LLC(Lenexa、KS)から入手した。還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、塩化マグネシウム(MgCl)及びジメチルスルホキシド(DMSO)は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0175】
試験化合物の7.5mM保存溶液をDMSOに溶解して調製した。7.5mM保存溶液をアセトニトリル(ACN)で50μMに希釈した。20mg/mLヒト肝ミクロソームを、3mM MgClを含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液pH7.4で1.25mg/mL(最終1mg/mL)に希釈した。希釈したミクロソーム(375μL)を96ウェルポリプロピレンプレートのウェルに3系列で加えた。10μLの50μM試験化合物をミクロソームに加え、混合物を10分間予熱した。125μLの予熱したNADPHの添加により反応を開始させた。最終反応物容積は、0.5mLであり、0.1Mリン酸カリウム緩衝液pH7.4中1.0mg/mLヒト肝ミクロソーム、1μM試験化合物及び2mM NADPH並びに3mM MgClを含んでいた。反応混合物を37℃でインキュベートし、50μLのアリコートを0、5、10、20及び30分目に除去し、反応を停止させるための内標準を含む50μLの氷冷ACNを含むシャローウェル96ウェルプレートに加えた。プレートを4℃で20分間保存し、その後、ペレット状沈殿タンパク質に遠心分離する前に、100μLの水をプレートのウェルに加えた。上清を他の96ウェルプレートに移し、Applied Bio−systems API 4000質量分析計を用いてLC−MS/MSにより残存親の量について分析した。
7−エトキシクマリンを陽性対照として用いた。
【0176】
試験化合物のin vitro t1/2は、残存親%(ln)対インキュベーション時間の関係の線型回帰の勾配から計算した。
すなわち、in vitro t1/2=0.693/kであり、k=−[残存親%(ln)対インキュベーション時間の線型回帰の勾配]である。
データ解析は、Microsoft Excel Softwareを用いて行った。
【0177】
図2(パネルA及びB)、図3、表3及び表4にこの実験の結果を示す。
【0178】
【表5】

【0179】
デキストロエトルファン及びデキストロイソプロポルファンの両方の場合、アルキルエーテル(R)の重水素化が、非重水素化対応物と比較してヒト肝ミクロソーム中半減期(t1/2)の有意な延長をもたらした。
【0180】
【表6】

【0181】
ジメモルファンの場合、Rの重水素化が、非重水素化対応物と比較してヒト肝ミクロソーム中半減期(t1/2)の有意な延長をもたらした。N−メチル部分(R)の重水素化は、t1/2のさらなる有意な延長をもたらした。
【0182】
さらなる説明なしに、当業者はこれまでの説明及び例示的実施例を用いて本発明の化合物を作製し、利用し、特許請求された方法を実施することができると考えられる。前述の議論及び実施例は特定の好ましい実施形態の単に詳細な説明であることを理解すべきである。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更形態及び均等物を成すことができることは、当業者には明らかであろう。上で述べ又は引用したすべての特許、学術論文及び他の文献は、参照により本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式I
【化15】

の化合物
又はその薬学的に許容される塩[式中、
は、−O−(C〜C)アルキル及び−(C〜C)アルキルから選択され、ここでRは、1個又は複数個の重水素原子で場合によって置換されており、
は、CH、CHD、CHD及びCDから選択され、
ただし、少なくとも1個の重水素原子がR又はRに存在する。]。
【請求項2】
が1個又は複数個の重水素原子で置換されている−O−(C〜C)アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がCH又はCDである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が−O−CDCD、−O−CDCH、−O−CHCD、−O−CD(CD、−O−CH(CD、−O−CD(CH、−O−CDCH(CH、−O−CHCD(CH、−O−CHCH(CD、−O−CDCD(CH、−O−CDCH(CD、−O−CHCD(CD又は−O−CDCD(CDである、請求項1、2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
が−O−CDCD、−O−CDCH、−O−CHCD、−O−CD(CD、−O−CH(CD又は−O−CD(CHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が−O−CDCD又は−O−CD(CDである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が−O−CD(CDである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
下表
【表7】

に示す化合物のいずれか1つ
又はその薬学的に許容される塩から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項9】
が1個又は複数個の重水素原子で場合によって置換されている−(C〜C)アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
がCH又はCDである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
が−CH、−CD、−CHCH、−CDCD、−CDCH、−CHCD、−CH(CH、−CD(CD、−CH(CD、−CD(CH、−CHCH(CH、−CDCH(CH、−CHCD(CH、−CHCH(CD、−CDCD(CH、−CDCH(CD、−CHCD(CD又は−CDCD(CDである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が−CD、−CDCD、−CDCH、−CHCD、−CD(CD、−CH(CD、−CD(CH、−CDCH(CH、−CHCD(CH、−CHCH(CD、−CDCD(CH、−CDCH(CD、−CHCD(CD又は−CDCD(CDである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が−CD、−CDCD又は−CDCD(CDである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
が−CDである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が−CH、−CHCH、−CH(CH又は−CHCH(CHであり、RがCDから選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
【化16】

のいずれか1つ
又はその薬学的に許容される塩から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項17】
重水素として表されていない原子がその天然同位体存在度で存在する、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される担体を含む、発熱物質を含まない医薬組成物。
【請求項19】
情動不安定;偽性球麻痺情動;自閉症;神経障害及び神経変性疾患;脳損傷;意識障害;心血管疾患;緑内症;遅発性ジスキネジア;癌、関節リウマチ;糖尿病性神経障害;網膜症;ホモシステイン誘発性アポトーシスにより引き起こされる疾患又は障害;ホモシステインのレベルの上昇により引き起こされる疾患又は障害;慢性疼痛、難治性疼痛、神経障害性疼痛、交感神経により媒介される疼痛;胃腸機能不全に伴う疼痛;口痛;背痛;中枢痛症候群;複合性局所疼痛症候群;てんかん発作;てんかん性片麻痺;後天性てんかん性失語症(ランドー−クレッフナー症候群);小児幼児難治性てんかん(SMEI);早期幼児てんかん性脳症;脳卒中後発作;熱性発作;外傷後発作;耳鳴;性機能不全;難治性咳;皮膚炎;嗜癖障害;レット症候群(RTT);制御されていない咽頭筋痙攣に起因する発声障害;メトトレキサート神経毒性;並びに癌によりもたらされる疲労から選択される疾患又は状態に罹患している又は罹患しやすい患者の治療に有用な第2の治療薬をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
第2の治療薬がキニジン、硫酸キニジン、オキシコドン及びガバペンチンから選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
治療上有効量の請求項18に記載の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、情動不安定;偽性球麻痺情動;自閉症;神経障害及び神経変性疾患;脳損傷;意識障害;心血管疾患;緑内症;遅発性ジスキネジア;癌;関節リウマチ;糖尿病性神経障害;網膜症;ホモシステイン誘発性アポトーシスにより引き起こされる疾患又は障害;ホモシステインのレベルの上昇により引き起こされる疾患又は障害;慢性疼痛、難治性疼痛、神経障害性疼痛、交感神経により媒介される疼痛;胃腸機能不全に伴う疼痛;口痛;背痛; 中枢痛症候群;複合性局所疼痛症候群;てんかん発作;てんかん性片麻痺;後天性てんかん性失語症(ランドー−クレッフナー症候群);小児幼児難治性てんかん(SMEI);早期幼児てんかん性脳症;脳卒中後発作;熱性発作;外傷後発作;耳鳴;性機能不全;難治性咳;皮膚炎;嗜癖障害;レット症候群(RTT);制御されていない咽頭筋痙攣に起因する発声障害;メトトレキサート神経毒性;並びに癌によりもたらされる疲労から選択される疾患又は状態に罹患している又は罹患しやすい対象を治療する方法。
【請求項22】
対象が糖尿病性神経障害に伴う疼痛に罹患している又は罹患しやすい、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
対象がてんかん発作に罹患している又は罹患しやすい、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
治療上有効量の請求項18に記載の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、化学物質への曝露に関連する状態に罹患している又は罹患しやすい対象を治療する方法。
【請求項25】
治療上有効量の請求項18に記載の医薬組成物をそれを必要とする対象に投与する段階を含む、疼痛に罹患している又は罹患しやすい対象を治療する方法。
【請求項26】
疼痛に罹患している又は罹患しやすい患者の治療に有用な第2の治療薬をさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項27】
化学物質への曝露に関連する状態に罹患している又は罹患しやすい患者の治療に有用な第2の治療薬をさらに含む、請求項18に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−503009(P2012−503009A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527994(P2011−527994)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/057476
【国際公開番号】WO2010/033801
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(509239071)コンサート ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】