説明

モルフィナン化合物

【課題】新規なモルフィナン化合物およびそれらの誘導体、その医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、および水和物の提供。
【解決手段】モルフィナン化合物を含む組成物、ならびにNMDAアンタゴニスト活性をも備えたσ1受容体アゴニストの投与によって有益に処置される疾患および状態を処置する方法におけるそれらの組成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引照
本出願は、35 U.S.C. §119のもとで、米国仮特許出願Nos.60/915,130、2007年5月1日出願;60/916,662、2007年5月8日出願;および60/976,004、2007年9月28日出願に基づく優先権を主張し、それらの内容全体をすべて本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、新規なモルフィナン化合物およびそれらの誘導体、その医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、および水和物に関する。本発明は、本発明化合物を含む組成物、ならびにNMDAアンタゴニスト活性をも備えたσ受容体アゴニストの投与によって有益に処置される疾患および状態を処置する方法におけるそれらの組成物の使用をも提供する。
【背景技術】
【0003】
デキストロメトルファンは現在最も広く用いられている鎮咳薬のひとつである。化学名(+)−3−メトキシ−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルフィナンによっても知られているデキストロメトルファンは、臭化水素酸デキストロメトルファンおよび硫酸キニジンを含む製剤の形でZenvi(登録商標)およびNeurodex(登録商標)として市販されている。
【0004】
前記に述べた生理活性のほか、デキストロメトルファンはσ受容体アゴニスト、N−メチル−D−アスパラギン酸(NDMA)アンタゴニスト、およびα3β4ニコチン酸受容体アンタゴニストでもある。デキストロメトルファンは、グルタミン酸などの神経伝達物質が脳内の受容体を活性化するのを阻害する。ドーパミンおよびセロトニンの取込みも阻害される。
【0005】
デキストロメトルファンは一般用鎮咳剤としての使用が承認されている。現在、音声痙攣を伴う対象についての第I相臨床試験およびレット症候群(Rett Syndrome)の処置についての第III相臨床試験中である(http://www. clinicaltrials.gov)。デキストロメトルファンは、他の薬物と共に、過敏性腸症候群を伴う対象において疼痛処置機序を解明する第II相臨床試験が行われている(http://www.clinicaltrials.gov/)。デキストロメトルファンは、メタドン維持対象における痛覚過敏の処置のための第I相臨床試験中でもある(http://www.clinicaltrials.gov/)。
【0006】
さらに、臭化水素酸デキストロメトルファンと硫酸キニジンの組合わせは、現在、糖尿病性神経障害性疼痛の処置のための第III相臨床試験中である(http://www.clinicaltrials.gov)。この薬物組合わせは、アルツハイマー病、卒中、パーキンソン病および外傷性脳傷害を伴う対象において、不随意情動発現障害(IEED)(偽性延髄性情動(pseudobulbar affect)としても知られる)の処置ための第III相臨床試験中でもある(http://www.clinicaltrials.gov)。
【0007】
デキストロメトルファンは肝臓で代謝される。O−およびN−脱メチルから分解が開始して、一次代謝産物であるデキストロルファンおよび3−メトキシ−モルフィナンを形成する;これらは両方ともさらにそれぞれN−および0−脱メチルされて、3−ヒドロキシ−モルフィナンになる。これら3種類の代謝産物は療法活性であると考えられる。主要な代謝触媒はシトクロムP450酵素2D6(CPY2D6)であり、これはデキストロメトルファンおよび3−メトキシモルフィナンのO−脱メチル反応に関与する。デキストロメトルファンおよびデキストロルファンのN−脱メチルは、関連のCPY3Aファミリーの酵素により触媒される。デキストロルファンおよび3−ヒドロキシモルフィナンのコンジュゲートを、摂取して数時間以内にヒトの血漿および尿中に検出できる。
【0008】
デキストロメトルファン中毒はそれの活代謝産物デキストロルファンに関連づけられている。デキストロメトルファンに起因するPCP様作用はデキストロルファンによってより確実に発生し、したがってヒトにおける中毒潜在性はデキストロメトルファンが代謝されてデキストロルファンになることに起因する可能性がある(Miller, SC et al., Addict Biol, 2005, 10(4): 325-7., Nicholson, KL et al., Psychopharmacology (Berl), 1999 Sep 1, 146(1): 49-59., Pender, ES et al., Pediatr Emerg Care, 1991, 7: 163-7)。デキストロメトルファンの向精神作用に関する1研究により、高メタボライザー(extensive metabolizer)(EM)には低メタボライザー(poor metabolizer)(PM)と比較してより高い中毒が報告されることが見いだされ、これはデキストロルファンがデキストロメトルファン中毒潜在性に関与することの証拠を提供する(Zawertailo LA, et al., J Clin Psychopharmacol, 1998 Aug, 18(4): 332-7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Miller, SC et al., Addict Biol, 2005, 10(4): 325-7
【非特許文献2】Nicholson, KL et al., Psychopharmacology (Berl), 1999 Sep 1, 146(1): 49-59
【非特許文献3】Pender, ES et al., Pediatr Emerg Care, 1991, 7: 163-7
【非特許文献4】Zawertailo LA, et al., J Clin Psychopharmacol, 1998 Aug, 18(4): 332-7
【発明の概要】
【0010】
集団の有意割合がCYP2D6酵素の機能欠損を伴う。デキストロメトルファンの主要な代謝経路はCYP2D6を必要とするので、したがってCYP2D6欠損対象においてその活性低下ははるかに長い作用持続時間およびより大きな薬物作用を生じる。内因性の機能欠損のほか、ある種の薬剤、たとえば抗うつ薬は、CYP2D6の阻害効力をもつ物質である。ある人々においてはデキストロメトルファンは代謝がより遅いため、特に他の薬剤(1以上)と組み合わせた場合に重篤な有害事象をもたらす可能性がある。
【0011】
ある薬物が推奨期間より長く体内に留まると、有益な効果の継続が得られる可能性はあるが、望ましくない副作用が発生または持続する可能性もある。推奨量のデキストロメトルファン療法における望ましくない副作用には、吐き気、食欲不振、下痢、傾眠、めまいおよびインポテンスが含まれる。
【0012】
したがって、デキストロメトルファンの有益な活性をもち、かつ代謝傾向の低下による他の有益性、たとえば副作用の減少をも備えた化合物を提供すること、さらにそれの薬理学的有効寿命を延長し、対象のコンプライアンスを高め、かつ潜在的に集団薬物動態変動性を低下させ、および/またはそれの危険な薬物−薬物相互作用の潜在性を低下させ、またはデキストロルファンなどの代謝産物の形成によるデキストロメトルファン中毒の可能性を低下させることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、カニクイザル(cynomolgus monkey)肝ミクロソームにおける種々の本発明化合物の経時安定性を示す。
【図2】図2は、ヒト肝ミクロソームにおける種々の本発明化合物の経時安定性を示す。
【図3】図3は、2D6 Supersomes(商標)における種々の本発明化合物の経時安定性を示す。
【図4】図4は、キニジン共投与なしのサルにおける化合物101、デキストロメトルファン、ならびにジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログおよびデキストロルファンの血漿中濃度を示す。
【図5】図5は、キニジン共投与下でのサルにおける化合物101、デキストロメトルファン、ならびにジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログおよびデキストロルファンの血漿中濃度を示す。
【図6】図6は、キニジン濃度の関数としてのサルにおける化合物101、デキストロメトルファン、ならびにジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログおよびデキストロルファンの尿中濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
用語“改善する”および“処置する”は互換性をもって用いられ、治療処置および/または予防処置を含む。両用語とも、疾患(たとえば本明細書に記載する疾患または障害)の発現または進行を低下、抑制、軽減、減少、制止、または安定化することを意味する。
【0015】
“疾患”は、細胞、組織または臓器の正常な機能に損傷または妨害をもたらすいずれかの状態または障害を意味する。
【0016】
合成に用いる化学物質の起源に応じて、合成された化合物に自然界での同位体存在率(isotopic abundance)に若干の変動が生じることは認識されるであろう。したがって、デキストロメトルファンの製品は本来、少量のジュウテリウム化されたおよび/または13Cを含有するアイソトポログを含むであろう。この変動性にもかかわらず、自然界に存在する安定な水素および炭素の同位体の濃度は、本発明化合物の安定同位体置換度と比較してわずかであり、実質的ではない。たとえばWada E et al, Seikagaku 1994, 66:15; Ganes LZ et al, Comp Biochem Physiol A Mol Integr Physiol 1998, 119:725を参照。本発明化合物において、特定の位置がジュウテリウムを含むと指定された場合、その位置におけるジュウテリウムの存在率は自然界でのジュウテリウム存在率である0.015%より実質的に大きいと理解される。ジュウテリウムを含むと指定した位置は、その化合物中のジュウテリウムと指定した各原子において少なくとも3000の最小同位体富化係数(45%のジュウテリウム含有率)をもつ。
【0017】
本明細書中で用いる用語“同位体富化係数(isotopic enrichment factor)”は、その同位体存在率と自然界でのその特定同位体の存在率との比を意味する。
【0018】
他の態様において、本発明化合物は指定したジュウテリウム原子それぞれについて下記の同位体富化係数をもつ:少なくとも3500(指定したジュウテリウム原子それぞれについて52.5%のジュウテリウム含有率)、少なくとも4000(60%のジュウテリウム含有率)、少なくとも4500(67.5%のジュウテリウム含有率)、少なくとも5000(75%のジュウテリウム含有率)、少なくとも5500(82.5%のジュウテリウム含有率)、少なくとも6000(90%のジュウテリウム含有率)、少なくとも6333.3(95%のジュウテリウム含有率)、少なくとも6466.7(97%のジュウテリウム含有率)、少なくとも6600(99%のジュウテリウム含有率)、または少なくとも6633.3(99.5%のジュウテリウム含有率)。
【0019】
本発明化合物において、具体的に特定の同位体と指定しない原子はいずれも、その原子の安定な同位体のいずれかを表わすものとする。別途記載しない限り、ある位置を“H”または“水素”と具体的に指定した場合、その位置は自然界に存在する同位体組成の水素をもつと理解される。
【0020】
用語“アイソトポログ(isotopologue)”は、1以上の位置における同位体組成(たとえばH対D)以外は本発明の特定の化合物と同じ化学構造および化学式をもつ種を表わす。したがって、アイソトポログはその同位体組成において本発明の特定化合物と異なる。
【0021】
本明細書中で用いる用語“化合物”は、そのいずれかの塩類、溶媒和物または水和物をも含むものとする。
【0022】
本発明化合物の塩は、酸とこの化合物の塩基性基、たとえばアミノ官能基との間、または塩基とこの化合物の酸性基、たとえばカルボキシル官能基との間で形成される。他の態様によれば、この化合物は医薬的に許容できる酸付加塩である。
【0023】
本明細書中で用いる用語“医薬的に許容できる”は、適正な医学的判断の範囲においてヒトその他の哺乳動物の組織と接触させて使用するのに適切であって、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを生じない成分を表わし、妥当な損益比に対応する。“医薬的に許容できる塩”は、レシピエントに投与した際に直接または間接的に本発明化合物を供給できるいずれかの無毒性塩を意味する。“医薬的に許容できる対イオン”は、塩のイオン部分であって、レシピエントに投与した際にその塩から遊離した場合に有毒でないものである。
【0024】
医薬的に許容できる塩類を形成するために一般的に用いられる酸には、無機酸、たとえば二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸、ならびに有機酸、たとえばパラ−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸(bitartaric acid)、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸、ならびに関連する無機酸および有機酸が含まれる。したがって、そのような医薬的に許容できる塩類には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、クロリド、ブロミド、ヨージド、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジ酸塩、ヘキシン−1,6−ジ酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩、および他の塩類が含まれる。1態様において、医薬的に許容できる酸付加塩には、鉱酸、たとえば塩酸および臭化水素酸により形成されるもの、特に有機酸、たとえばマレイン酸により形成される塩が含まれる。
【0025】
本明細書中で用いる用語“水和物”は、非共有分子間力により結合した化学量論的量または非化学量論的量の水をさらに含有する化合物を意味する。
【0026】
本明細書中で用いる用語“溶媒和物”は、非共有分子間力により結合した化学量論的量または非化学量論的量の溶媒、たとえば水、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、2−プロパノールなどをさらに含有する化合物を意味する。
【0027】
本発明化合物(たとえば式Iの化合物)は、たとえばジュウテリウム置換その他の結果として、不斉炭素原子を含有する場合がある。そのため、本発明化合物は個々の鏡像異性体、または2種類の鏡像異性体の混合物として存在する可能性がある。したがって本発明化合物には、ラセミ混合物、および可能性のある他の立体異性体を実質的に含まない個々の立体異性体それぞれが、共に含まれるであろう。本明細書中で用いる用語“他の立体異性体を実質的に含まない”は、25%未満の他の立体異性体、好ましくは10%未満の他の立体異性体、より好ましくは5%未満の他の立体異性体、最も好ましくは2%未満の他の立体異性体、すなわち“X”%未満の他の立体異性体(ここでXは0〜100の数値である)が存在することを意味する。特定の化合物について個々の鏡像異性体を入手または合成する方法は当技術分野で周知であり、最終化合物または出発物質もしくは中間体に対して実用可能なものとして適用できる。
【0028】
本明細書中で用いる用語“安定な化合物”は、それらの製造を可能にするのに十分な安定性をもち、かつ本明細書に詳述する目的(たとえば療法用製剤中への配合、療法用化合物の製造に使用するための中間体、単離または貯蔵できる中間化合物、療法薬に応答性である疾患または状態の処置)に有用であるのに十分な期間その化合物の統合性を維持する化合物を表わす。
【0029】
“D”は、ジュウテリウムを表わす。
【0030】
“立体異性体”は、鏡像異性体およびジアステレオマーの両方を表わす。
【0031】
本明細書全体において、可変基を全般的に表記する場合があり(たとえば“各R”)、あるいは具体的に表記する場合がある(たとえばRまたはR)。別途指示しない限り、可変基を全般的に表記した場合、それはその可変基のすべての具体的態様を含むものとする。
【0032】
療法用化合物
本発明は、式Iの化合物を提供し、これにはその医薬的に許容できる塩類、溶媒和物および水和物が含まれる:
【化1】

式中:
は、CH、CHD、CHD、CD、CHF、およびCFから選択され;
は、CH、CHD、CHD、およびCDから選択される。
ある態様において、RがCHである場合はRはCHまたはCDではない。他の態様において、RがCDである場合はRはCHではない。
【0033】
1態様において、Rは、CHD、CHD、CD、CHF、およびCFから選択される。他の態様において、RはCHD、CHD、およびCDから選択される。さらに他の態様において、RはCDである。他の態様において、RはCFである。さらに他の態様において、RはCHFである。
【0034】
1態様において、RはCH、CHD、またはCDである。他の態様において、RはCHである。他の態様において、RはCDである。
【0035】
さらに他の態様において、化合物は表1に示すいずれか1つの化合物から選択される:
【表1】

【0036】
他の一組の態様において、前記に示したいずれかの態様でジュウテリウムと指定されていない原子はいずれもそれの自然界での同位体存在率で存在する。
【0037】
他の一組の態様において、式Iの化合物は単離または精製されている;たとえば式Iの化合物は、存在する式Iの化合物のアイソトポログの全量の少なくとも50重量%(たとえば少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、98.5%、99%、99.5%または99.9%)の純度で存在する。したがって、ある態様において、式Iの化合物を含む組成物は本発明化合物のアイソトポログが分布したものを含むことができ、ただし少なくとも50重量%のアイソトポログはそこに挙げた化合物である。
【0038】
ある態様において、式Iの化合物中のDをもつと指定した位置はいずれも、式Iの化合物のその指定位置(1以上)において少なくとも45%(たとえば少なくとも52.5%、少なくとも60%、少なくとも67.5%、少なくとも75%、少なくとも82.5%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%)の最小ジュウテリウム含有率をもつ。したがって、ある態様において、式Iの化合物を含む組成物は本発明化合物のアイソトポログが分布したものを含むことができ、ただし少なくとも45重量%のアイソトポログはその指定位置(1以上)にDを含む。
【0039】
ある態様において、式Iの化合物はその化合物の他のアイソトポログを“実質的に含まない”;たとえば、50%未満、25%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満、または0.5%未満のアイソトポログが存在する。
【0040】
式Iの化合物の合成は、合成化学の当業者が容易に達成できる。関連の方法および中間体は、たとえばKim HC et al., Bioorg Med Chem Lett 2001, 11:1651、およびNewman AH et al., J Med Chem 1992, 35:4135に示されている。
【0041】
そのような方法は、ジュウテリウム化されかつ場合により他の同位体を含む対応する試薬および/または中間体を用いて本明細書に記載する化合物を合成することにより、あるいは同位体原子を化学構造に導入するための当技術分野で既知の標準的な合成プロトコルにより実施できる。
【0042】
合成例
式Iの化合物を合成するための好都合な方法は、デキストロメトルファンの製造に用いる合成法において、適切なジュウテリウム化された中間体および試薬を代わりに用いる。式Iの化合物は、下記に示す既知の中間体X、XIおよびXIIのいずれか1つから、および既知の方法で容易に入手できる関連中間体から製造できる。
【化2】

【0043】
スキームIは、式Iの化合物への一般経路を示す。
【化3】

【0044】
スキームIは、RがCHではない式Iの化合物を製造するための一般経路を示す。HBr塩10をNHOHで処理した後、N−脱メチルして11を得る。このアミン11をクロロギ酸エチルによりアシル化するとカルバメート12が得られ、次いでこれをBBrによりO−脱メチルしてアルコール13を得る。化合物13を塩基の存在下で、適宜ジュウテリウム化されたヨードメタンにより処理するとエーテル14が得られ、これをジュウテリウム化アルミニウムリチウム(LAD)により還元してR=CDである式Iの化合物を得るか、あるいは水素化アルミニウムリチウム(LAH)により還元してR=CHである式Iの化合物を得る。R=CHである式Iの化合物を得るためには、カルバメート12を直接にLADで処理して、RがCDである化合物を製造する。
【0045】
種々のR基(式Iに定めたもの)は、当技術分野で一般に知られている方法に従って、R−アルキル化剤、たとえばハロゲン化アルキル(たとえば、ヨード−R)を用いる適切なフェノール中間体のO−アルキル化により導入できる。種々のR基(式Iに定めたもの)は、当技術分野で一般に知られている方法に従って、R−アルキル化剤、たとえばハロゲン化アルキル(たとえば、ヨード−R)を用いる適切なフェノール中間体のN−アルキル化により、またはジュウテリウム化試薬、たとえばジュウテロボランを用いるN−ホルミル基の還元により導入できる。
【0046】
前記に示した特定の方法および化合物は限定のためのものではない。本明細書中のスキームの化学構造は、同一の可変基名(すなわち、RまたはR)で示すか否かによらず、本明細書中の化学式の対応する位置の化学基の定義(部分、原子など)と同等に定めた可変基を示す。ある化合物構造中の化学基が他の化合物の合成に用いるのに適するかは当業者の知識の範囲内である。
【0047】
本明細書中のスキームに明白に示さなかった経路内のものを含めて、式Iの化合物およびそれらの合成前駆物質を合成するための他の方法は、当業者の手段の範囲内にある。利用できる化合物の合成に有用な合成化学変換および基の保護方法(保護および脱保護)は当技術分野で既知であり、たとえば下記に記載のものが含まれる:Larock R, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); Greene TW et al., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999); Fieser L et al., Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);およびPaquette L, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)、ならびにその後続版。
【0048】
本発明により考慮される置換基および可変基の組合わせは、安定な化合物が形成されるものだけである。
【0049】
組成物
本発明は、発熱物質を含まない組成物であって、有効量の式I(たとえば、本明細書中のいずれかの式を含む)の化合物、またはその化合物の医薬的に許容できる塩、溶媒和物もしくは水和物;および許容できるキャリヤーを含む組成物をも提供する。好ましくは、本発明の組成物は医薬用として配合され(“医薬組成物”)、その際、キャリヤーは医薬的に許容できるキャリヤーである。キャリヤー(1以上)は、配合物の他の成分と適合性であり、かつ医薬的に許容できるキャリヤーの場合には医薬中に使用する量でレシピエントに対して有害でないという意味で、“許容できる”。
【0050】
本発明の医薬組成物中に使用できる医薬的に許容できるキャリヤー、佐剤およびビヒクルには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、たとえばヒト血清アルブミン、緩衝剤、たとえばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩類または電解質、たとえば硫酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂。
【0051】
必要ならば、医薬組成物中における本発明化合物の溶解度および生物学的利用能を、当技術分野で周知の方法によって高めることができる。1方法には、配合物中に脂質賦形剤を使用することが含まれる。参照:“Oral Lipid-Based Formulations: Enhancing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs (Drugs and the Pharmaceutical Sciences)”, David J. Hauss, ed. Informa Healthcare, 2007;および“Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery: Basic Principles and Biological Examples”, Kishor M. Wasan, ed. Wiley-Interscience, 2006。
【0052】
生物学的利用能を高めるための他の既知の方法は、非晶質形態の本発明化合物を、場合によりポロキサマー(poloxamer)、たとえばLUTROL(商標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーと配合して使用することである。参照:米国特許7,014,866;ならびに米国特許出願公報2006/0094744および2006/0079502。
【0053】
本発明の医薬組成物には、経口、直腸、鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与に適切なものが含まれる。ある態様において、本明細書中の式の化合物を経皮投与する(たとえば経皮パッチまたはイオントフォレーゼ法)。他の配合物は、単位剤形、たとえば錠剤、持続放出カプセル剤で、およびリポソーム中において提供するのが好都合であり、医薬の技術分野で周知であるいずれかの方法により製造できる。たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, ペンシルベニア州フィラデルフィア(17th ed. 1985)を参照。
【0054】
そのような製造方法は、投与すべき成分を、1種類以上の補助成分を構成するキャリヤーなどの成分と混和する工程を含む。一般に組成物は、有効成分を、液体キャリヤー、リポソームもしくは微細に分割した固体キャリヤー、または両方と均一かつ密に混和し、次いで必要ならば生成物を造形することにより製造される。
【0055】
ある態様においては、本発明化合物を経口投与する。経口投与に適切な本発明組成物は、それぞれ予め定めた量の有効成分を含有する個別の単位、たとえばカプセル剤、サッシェもしくは錠剤;散剤もしくは顆粒剤;水性液体もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁液剤;水中油型の乳濁液剤;油中水型の乳濁液剤;充填リポソーム;またはボーラスなどとして提供できる。軟ゼラチンカプセルはそのような懸濁液を収容するのに使用でき、これにより化合物の吸収速度を有益に高めることができる。
【0056】
経口用錠剤の場合、一般に用いられるキャリヤーには、乳糖およびトウモロコシデンプンが含まれる。滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムも一般に添加される。カプセル剤形での経口投与について、有用な希釈剤には乳糖および乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。水性懸濁液剤を経口投与する場合、有効成分を乳化剤および懸濁化剤と組み合わせる。所望により、ある種の甘味剤および/または着香剤および/または着色剤を添加してもよい。
【0057】
経口投与に適切な組成物には、着香した基剤、通常はショ糖およびアラビアゴムまたはトラガントゴム中に成分を含むロゼンジ剤;ならびに不活性基剤、たとえばゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアラビアゴム中に有効成分を含むパステル剤(psstille)が含まれる。
【0058】
非経口投与に適切な組成物には、水性および非水性の無菌注射液剤が含まれ、これらは酸化防止剤、緩衝剤、制菌薬、および配合物を意図する対象の血液と等張にする溶質を含有することができ;ならびに水性および非水性の無菌懸濁液剤が含まれ、これらは懸濁化剤および増粘剤を含有することができる。配合物を1回量または多数回量の容器、たとえば密封したアンプルおよびバイアルに入れて提供することができ、また使用直前に無菌液体キャリヤー、たとえば注射用水を添加するだけでよい凍結乾燥(freeze dried(lyophilized))状態で貯蔵することができる。即時調合型の注射用の液剤および懸濁液剤は無菌の散剤、顆粒剤および錠剤から調製できる。
【0059】
そのような注射液剤は、たとえば無菌の注射用水性または油性懸濁液剤であってもよい。この懸濁液剤は、当技術分野で既知の方法に従って適切な分散剤または湿潤剤(たとえばTween 80)および懸濁化剤を用いて配合できる。無菌注射用製剤は、非経口用として許容できる無毒性の希釈剤または溶剤中における無菌の注射用液剤または懸濁液剤、たとえば1,3−ブタンジオール中における液剤であってもよい。使用可能な許容できるビヒクルおよび溶剤には、マンニトール、水、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらに、無菌の固定油が溶剤または懸濁媒質として一般的に用いられる。この目的には、合成モノ−またはジグリセリドを含めたいかなる銘柄の固定油も使用できる。脂肪酸、たとえばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体は、注射用製剤の調製に有用である;医薬的に許容できる天然油、たとえばオリーブ油またはヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチル化形のものも同様である。これらの油性の液剤または懸濁液剤は、長鎖アルコール系の希釈剤または分散剤を含有してもよい。
【0060】
本発明の医薬組成物は、直腸投与用坐剤の形で投与することができる。これらの組成物は、本発明化合物を、室温では固体であるが直腸温度では液体であるため直腸内で融解して有効成分を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することにより調製できる。そのような物質にはカカオ脂、密ろうおよびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明の医薬組成物は鼻内エアゾール剤または吸入により投与することができる。そのような組成物は医薬配合技術分野で周知の方法に従って調製でき、生理食塩水中の液剤として、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当技術分野で既知である他の可溶化剤もしくは分散剤を用いて調製できる。たとえば、Rabinowitz JD and Zaffaroni AC、米国特許6,803,031、Alexza Molecular Delivery Corporationに譲渡、を参照。
【0062】
本発明の医薬組成物の局所投与は、目的とする処置が局所適用によって容易に到達できる領域または臓器に関係する場合に特に有用である。皮膚に限定した局所投与のためには、キャリヤーに懸濁または溶解した有効成分を含有する適切な軟膏剤として医薬組成物を配合すべきである。本発明化合物を局所投与するためのキャリヤーには鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化用ろう、および水が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、キャリヤーに懸濁または溶解した有効化合物を含有する適切なローション剤またはクリーム剤として医薬組成物を配合することができる。適切なキャリヤーには鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート(polysorbate)60、セチルエステルろう、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が含まれるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、直腸坐剤配合物により、または適切な浣腸配合物中において、下部腸管に局所適用することもできる。局所−経皮パッチおよびイオントフォレーゼ投与も本発明に含まれる。
【0063】
本発明の療法薬の適用は、目的部位に投与されるように局所的であってもよい。本発明組成物を目的部位に供給するために種々の方法を採用できる:たとえば注射;カテーテル、トロカール、発射物(projectile)、プルロニック(pluronic)ゲル、ステント、持続薬物放出ポリマー、または内部到達可能な他の器具の使用。
【0064】
したがってさらに他の態様によれば、埋込み用医療器具、たとえばプロテーゼ、人工弁、人工血管、ステントまたはカテーテルをコーティングするための用組成物に本発明化合物を含有させることができる。適切なコーティング、およびコーティングした埋込み器具の一般的な製造は当技術分野で既知であり、米国特許6,099,562;5,886,026;および5,304,121に例示されている。コーティングは一般に生体適合性ポリマー材料、たとえばヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびその混合物である。制御放出特性を組成物に付与するために、コーティングを場合によりフルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはその組合わせである適切なトップコートでさらに覆ってもよい。侵襲器具のためのコーティングは、本明細書中で用いる用語、医薬的に許容できるキャリヤー、佐剤またはビヒクルの定義に含まれるものとすべきである。
【0065】
他の態様によれば、本発明は、埋込み用医療器具のコーティング方法であって、医療器具を前記のコーティング用組成物と接触させる工程を含む方法を提供する。器具のコーティングが哺乳動物への埋込みの前に行われることは当業者に自明であろう。
【0066】
他の態様によれば、本発明は、埋込み用の薬物放出器具に含浸させる方法であって、薬物放出器具を本発明の化合物または組成物と接触させる工程を含む方法を提供する。埋込み用の薬物放出器具には、生分解性ポリマーのカプセルまたは弾丸(bullet)、非分解性拡散性ポリマーのカプセル、および生分解性ポリマーのウエファースが含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
他の態様によれば、本発明は、本発明化合物が療法活性であるように本発明化合物または本発明化合物を含む組成物でコーティングした、埋込み用医療器具を提供する。
【0068】
他の態様によれば、本発明は、本発明化合物が器具から放出されかつ療法活性であるように本発明化合物または本発明化合物を含む組成物を含浸または含有させた、埋込み用の薬物放出器具を提供する。
【0069】
対象から摘出されているため臓器または組織に到達できる場合、本発明の組成物を含有する媒質にそれらの臓器または組織を浸漬するか、本発明の組成物を臓器に塗布するか、あるいは本発明の組成物を他のいずれか好都合な方法で適用することができる。
【0070】
他の態様において、本発明の組成物はさらに第2の療法薬を含むことができる。第2の療法薬は、デキストロメトルファンと同じ作用機序をもつ化合物と共に投与した場合に有利な特性をもつことが知られているかまたは有利な特性を示すいずれかの化合物または療法薬から選択することができる。そのような薬剤には、デキストロメトルファンと組み合わせた際に有用であると指示されたものが含まれる;これには下記に記載のものが含まれるが、これらに限定されない:米国特許Nos.4,316,888;4,446,140;4,694,010;4,898,860;5,166,207;5,336,980;5,350,756;5,366,980;5,863,927;RE38,115;6,197,830;6,207,164;6,583,152;および7,114,547;ならびに米国特許出願公報2001/0044446;2002/0103109;2004/0087479;2005/0129783;2005/0203125;および2007/0191411。
【0071】
好ましくは、第2療法薬は下記のものから選択される疾患または状態の治療または予防に有用な薬剤である:情動不安定;偽性延髄性情動;自閉症;神経障害および神経変性性疾患、たとえば認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ロイ−ゲーリッヒ病(Leu Gehrig’s disease)としても知られる)、アルツハイマー病、パーキンソン病、および多発性硬化症;意識異常障害;脳傷害、たとえば卒中、外傷性脳傷害、虚血事象、低酸素事象、および神経死;意識異常障害;心血管疾患、たとえば末梢血管疾患、心筋梗塞、およびアテローム性硬化症;緑内障、遅発性ジスキネジー;糖尿病性神経障害;網膜障害性疾患;ホモシステイン誘発性アポトーシスにより起きる疾患または障害;ホモシステインレベルの上昇により起きる疾患または障害;慢性疼痛;難治性疼痛;神経障害性疼痛、交感神経仲介疼痛、たとえば異痛症、痛覚過敏(hyperpathia)、痛覚異常過敏(hyperalgesia)、異感覚(dysesthesia)、錯感覚paresthesia)、求心路遮断痛(deafferentation pain)、および有痛性無感覚痛(anesthesia dolorosa pain);たとえば過敏性腸症候群を含む消化器機能障害に関連する疼痛;口痛;てんかん性発作;耳鳴;性的機能障害;難治性咳;皮膚炎;耽溺性障害、たとえば興奮薬、ニコチン、モルヒネ、ヘロイン、他のアヘン製剤、アンフェタミン、コカイン、およびアルコールの耽溺または依存症;レット症候群(RTT);喉頭筋痙攣の無調節による音声障害、たとえば外転筋痙攣性発声障害、内転筋痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害、および音声振戦を含む;メトトレキセート神経毒性;ならびに癌により起きる疲労。
【0072】
1態様において、第2療法薬はキニジン、硫酸キニジン、LBH589(Novartis)、オキシコドン(oxycodone)、およびガバペンチン(gabapentin)から選択される。
【0073】
他の態様において、本発明は、本発明化合物およびいずれか1種類以上の前記第2療法薬の別個の剤形を提供し、その際、本発明化合物と第2療法薬は互いに関連している。本明細書中で用いる用語“互いに関連している”は、別個の剤形が一緒に包装されていること、またはそれらの別個の剤形は一緒に販売および投与(互いに24時間以内に、連続して、または同時に)するためのものであることが容易に分かるように他の形で互いに添えられていることを意味する。
【0074】
本発明の医薬組成物中に、本発明化合物は有効量で存在する。本明細書中で用いる用語“有効量”は、適正な投与方式で投与した場合に、処置される障害の重症度、持続時間もしくは悪化を軽減もしくは改善し、処置される障害の進行を阻止し、処置される障害を回復させ、または他の療法の予防効果もしくは治療効果を増強もしくは改善するのに十分な量を表わす。
【0075】
動物およびヒトに対する用量の相互関係(体表面積1平方メートル当たりのミリグラム数に基づく)は、Freireich et al., (1966) Cancer Chemother. Rep 50: 219に記載されている。体表面積は、対象の身長と体重から概算できる。たとえばScientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardsley, N.Y., 1970, 537を参照。
【0076】
1態様において、本発明化合物の有効量は0.4mgから400mgまで、4.0mgから350mgまで、10mgから90mgまで、または30mgから45mgまで(各数値を含む)の範囲であってよい。
【0077】
有効量は、当業者に認識されるように、処置される疾患、疾患の重症度、投与経路、対象の性別、年齢および全般的な健康状態、賦形剤の使用、他の療法処置との併用、たとえば他の薬剤の使用の可能性、ならびに担当医の判断によっても異なるであろう。たとえば、有効量の選択のための指針はデキストロメトルファンに関する処方情報を参照して決定できる。
【0078】
本発明化合物およびそれを含む医薬組成物は、モル基準で同量のデキストロメトルファンを含む医薬組成物(“モル等量デキストロメトルファン組成物”)と比較して、より長いクリアランスを示し、投与後12時目における、より高い血漿曝露濃度を生じる。したがって、1態様において本発明は、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象にそれを投与すると、同じ投与方式で投与したモル等量デキストロメトルファン組成物の血漿曝露濃度より高い血漿曝露濃度を生じる組成物を提供する。
【0079】
他の態様において、血漿曝露濃度は、同等の対象に投与したモル等量デキストロメトルファン組成物が生じるデキストロメトルファンの血漿曝露濃度の少なくとも110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、またはそれ以上である。
【0080】
他の態様において、本発明は、10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象にその医薬組成物を投与すると、250〜750ナノグラム(ng)−時間(h)/mL(AUC)の範囲の血漿曝露濃度を生じる組成物を提供する。
【0081】
他の態様において、本発明は、10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象にその医薬組成物を投与すると、400〜1600ng−h/mL(AUC)の範囲の血漿曝露濃度を生じる組成物を提供する。
【0082】
他の態様において、本発明は、10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象にその医薬組成物を投与すると、500〜1500ng−h/mL(AUC)の範囲の血漿曝露濃度を生じる組成物を提供する。
【0083】
他の態様において、本発明は、10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象にその医薬組成物を投与すると、1000〜1500ng−h/mL(AUC)の範囲の血漿曝露濃度を生じる組成物を提供する。
【0084】
他の態様において、本発明は、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象にそれを投与すると、同じ投与方式で投与したモル等量デキストロメトルファン組成物と比較して代謝産物生成の速度および量が低下する組成物を提供する。
【0085】
他の態様において、本発明は、10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象にそれを投与すると、1000ng−h/mL以下のジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度を生じる組成物を提供する。
【0086】
他の態様において、本発明は、10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象にそれを投与すると、750ng−h/mL以下のジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度を生じる組成物を提供する。
【0087】
他の態様において、本発明は、10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象にそれを投与すると500ng−h/mL以下のジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度を生じる組成物を提供する。
【0088】
他の態様において、本発明は、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象にそれを投与すると、同じ投与方式で投与したモル等量デキストロメトルファン組成物から生じるデキストロメトルファンおよびデキストロルファンの血漿曝露濃度と比較して、式Iの化合物の血漿曝露濃度の上昇およびデキストロメトルファン代謝産物アイソトポログ、特にジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度の低下が共に生じる組成物を提供する。
【0089】
他の態様において、本発明は、10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物であって、対象に定常状態条件で12時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の血漿曝露濃度をもたらす組成物を提供する。
【0090】
第2療法薬を含む医薬組成物について、第2療法薬の有効量は、その薬剤のみを使用する単剤療法方式に普通に用いられる用量の約0.01%〜100%である。これらの第2療法薬の普通の単剤療法用量は当技術分野で周知である。たとえばWells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, カリフォルニア州ロマリンダ(2000)を参照;それらのそれぞれを全体として本明細書に援用する。
【0091】
前記に述べた第2療法薬のあるものは本発明化合物と相乗作用すると予想される。これが起きる場合、第2療法薬および/または本発明化合物の有効量を単剤療法に必要な量から減らすことができるであろう。これは、第2療法薬または本発明化合物の毒性副作用を最小限に抑え、有効性を相乗的に改善し、投与しやすさまたは使いやすさを改善し、ならびに/あるいは化合物の製造および配合の総経費を減らすという利点をもつ。
【0092】
したがって、1態様において本発明は、10〜60mgの式Iの化合物および2.5〜30mgのキニジンを含む医薬組成物であって、対象に定常状態条件で12〜24時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の最大血漿曝露濃度をもたらし、その組成物を対象に投与するとキニジンなしで投与した同モル量の式Iの化合物と比較してジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度が低下する組成物を提供する。
【0093】
他の態様において、本発明は、10〜60mgの式Iの化合物および2.5〜20mgのキニジンを含む医薬組成物であって、対象に定常状態条件で12〜24時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の最大血漿曝露濃度をもたらし、その組成物を対象に投与するとキニジンなしで投与した同モル量の式Iの化合物と比較してジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度が低下する組成物を提供する。
【0094】
他の態様において、本発明は、10〜60mgの式Iの化合物および2.5〜10mgのキニジンを含む医薬組成物であって、対象に定常状態条件で12〜24時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の最大血漿曝露濃度をもたらし、その組成物を対象に投与するとキニジンなしで投与した同モル量の式Iの化合物と比較してジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度が低下する組成物を提供する。
【0095】
他の態様において、本発明は、15〜45mgの式Iの化合物および2.5〜30mgのキニジンを含む医薬組成物であって、対象に定常状態条件で12〜24時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の最大血漿曝露濃度をもたらし、その組成物を対象に投与するとキニジンなしで投与した同モル量の式Iの化合物と比較してジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度が低下する組成物を提供する。
【0096】
他の態様において、本発明は、20〜35mgの式Iの化合物および2.5〜30mgのキニジンを含む医薬組成物であって、対象に定常状態条件で12〜24時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の最大血漿曝露濃度をもたらし、その組成物を対象に投与するとキニジンなしで投与した同モル量の式Iの化合物と比較してジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度が低下する組成物を提供する。
【0097】
他の態様において、本発明は、式Iの化合物およびキニジンを含む医薬組成物であって、同等の対象において同じ投与方式に従って投与した同量のキニジンをさらに含むモル等量デキストロメトルファン組成物の投与により生じるデキストロメトルファンおよびデキストロルファンの尿中濃度と比較して、対象においてより高い式Iの化合物の尿中濃度およびより低いジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの尿中濃度をもたらす組成物を提供する。
【0098】
処置方法
他の態様において、本発明は、細胞におけるσ受容体、N−メチル−D−アスパラギン酸(NDMA)の活性、またはα3β4ニコチン酸受容体の活性を調節する方法であって、細胞を1種類以上の式Iの化合物と接触させることを含む方法を提供する。
【0099】
他の態様において、本発明は、式Iの化合物を投与することにより、神経伝達物質、たとえばグルタミン酸が脳における受容体を活性化するのを阻害する方法、ならびに/あるいはドーパミンおよびセロトニンの取込みを阻害する方法を提供する。
【0100】
他の態様によれば、本発明は、デキストロメトルファンによって有益に処置される疾患に罹患しているかまたは罹患しやすい対象を処置する方法であって、その対象に、有効量の式Iの化合物[式中:Rは、CH、CHD、CHD、CD、CHF、およびCFから選択され;Rは、CH、CHD、CHD、およびCDから選択される]またはその化合物を含む組成物を投与する段階を含む方法を提供する。そのような疾患は当技術分野で周知であり、下記に開示されているが、これらに限定されない:米国特許Nos.4,316,888;4,446,140;4,694,010;4,898,860;5,166,207;5,336,980;5,350,756;5,366,980;5,863,927;RE38,115;6,197,830;6,207,164;6,583,152;および7,114,547;ならびに米国特許出願公報2001/0044446;2002/0103109;2004/0087479;2005/0129783;2005/0203125;および2007/0191411。
【0101】
そのような疾患には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:情動不安定;偽性延髄性情動;自閉症;神経障害および神経変性性疾患、たとえば認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ロイ−ゲーリッヒ病としても知られる)、アルツハイマー病、パーキンソン病、および多発性硬化症;意識異常障害;脳傷害、たとえば卒中、外傷性脳傷害、虚血事象、低酸素事象、および神経死;意識異常障害;心血管疾患、たとえば末梢血管疾患、卒中、心筋梗塞、およびアテローム性硬化症;緑内障、遅発性ジスキネジー;糖尿病性神経障害;網膜障害性疾患;ホモシステイン誘発性アポトーシスにより起きる疾患または障害;ホモシステインレベルの上昇により起きる疾患または障害;慢性疼痛;難治性疼痛;神経障害性疼痛、交感神経仲介疼痛、たとえば異痛症、痛覚過敏、痛覚異常過敏、異感覚、錯感覚、求心路遮断痛、および有痛性無感覚痛;たとえば過敏性腸症候群を含む消化器機能障害に関連する疼痛;口痛;てんかん性発作;耳鳴;性的機能障害;難治性咳;皮膚炎;耽溺性障害、たとえば興奮薬、ニコチン、モルヒネ、ヘロイン、他のアヘン製剤、アンフェタミン、コカイン、およびアルコールの耽溺または依存症;レット症候群(RTT);喉頭筋痙攣の無調節による音声障害、たとえば外転筋痙攣性発声障害、内転筋痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害、および音声振戦を含む;メトトレキセート神経毒性;ならびに癌により起きる疲労。
【0102】
特定の1態様においては、本発明方法を用いて、糖尿病性神経障害、レット症候群(RTT);喉頭筋痙攣の無調節による音声障害、たとえば外転筋痙攣性発声障害、内転筋痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害、および音声振戦を含む;メトトレキセート神経毒性;ならびに癌により起きる疲労から選択される疾患または状態に罹患しているかまたは罹患しやすい対象を処置する。
【0103】
特定の1態様においては、式Iの化合物[式中:Rは、CH、CHD、CHD、CD、CHF、およびCFから選択され;Rは、CH、CHD、CHD、およびCDから選択される]またはその化合物を含む組成物を用いて、神経障害性疼痛に罹患しているかまたは罹患しやすい対象を処置する。他の態様においては、前記化合物を用いて、偽性延髄性情動を伴う対象を処置する。
【0104】
本明細書に記載する方法には、前記の特定の処置を必要とする対象を同定する方法も含まれる。そのような処置を必要とする対象の同定は、対象またはヘルスケア専門家が判断するものであってもよく、主観的(たとえば個人的見解)または客観的(たとえば検査または診断法により測定できるもの)であってもよい。
【0105】
本明細書に記載する方法においては、有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物を対象に投与し、同じ投与方式で投与したモル等量デキストロメトルファン組成物の血漿曝露濃度より高い血漿曝露濃度を得る。血漿曝露濃度は、同等の対象に投与したモル等量デキストロメトルファン組成物が生じるデキストロメトルファンの血漿曝露濃度の少なくとも110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、またはそれ以上である。
【0106】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象に10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、その医薬組成物を対象に投与すると250〜750ナノグラム(ng)−時間(h)/mL(AUC)の範囲の血漿曝露濃度を生じる方法を提供する。
【0107】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象に10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、その医薬組成物を対象に投与すると400〜1600ng−h/mL(AUC)の範囲の血漿曝露濃度を生じる方法を提供する。
【0108】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象に10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、その医薬組成物を対象に投与すると500〜1500ng−h/mL(AUC)の範囲の血漿曝露濃度を生じる方法を提供する。
【0109】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象に10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、その医薬組成物を対象に投与すると1000〜1500ng−h/mL(AUC)の範囲の血漿曝露濃度を生じる方法を提供する。
【0110】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象に同じ投与方式で投与したモル等量デキストロメトルファン組成物と比較して代謝産物生成の速度および量を低下させるのに有効な量の式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0111】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象に10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、それを対象に投与すると1000ng−h/mL以下のジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度を生じる方法を提供する。
【0112】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象に10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、それを対象に投与すると750ng−h/mL以下のジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度を生じる方法を提供する。
【0113】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象に10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、それを対象に投与すると500ng−h/mL以下のジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度を生じる方法を提供する。
【0114】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象に10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、それを対象に投与すると、同じ投与方式で投与したモル等量デキストロメトルファン組成物から生じるデキストロメトルファンおよびデキストロルファンの血漿曝露濃度と比較して、式Iの化合物の血漿曝露濃度の上昇およびデキストロメトルファン代謝産物アイソトポログ、特にジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度の低下が共に生じる方法を提供する。
【0115】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象に10〜60mgの式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含み、その組成物は対象に定常状態条件で12時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の血漿曝露濃度をもたらす方法を提供する。
【0116】
他の態様において、前記の処置方法はいずれも対象に1種類以上の第2療法薬を共投与する追加段階を含む。第2療法薬の選択は、デキストロメトルファンとの共投与に有用であることが知られているいずれかの第2療法薬から行なうことができる。第2療法薬の選択は、処置される個々の疾患または状態にも依存する。本発明方法に使用できる第2療法薬の例は、本発明化合物および第2療法薬を含む組合わせ組成物に使用するために前記に述べたものである。
【0117】
特に、併用療法は、それを必要とする対象に式Iの化合物[式中:Rは、CH、CHD、CHD、CD、CHF、およびCFから選択され;Rは、CH、CHD、CHD、およびCDから選択される]またはその化合物を含む組成物;および硫酸キニジンを共投与することを含み、その際、対象は糖尿病性神経障害に罹患しているかまたは罹患しやすい。
【0118】
他の態様において、本発明は、その処置を必要とする対象に式Iの化合物[式中:Rは、CH、CHD、CHD、CD、CHF、およびCFから選択され;Rは、CH、CHD、CHD、およびCDから選択される]またはその化合物を含む組成物;およびLBH589を共投与することにより、小細胞性肺癌または悪性胸膜中皮腫に罹患している対象を処置する方法を提供する。
【0119】
本明細書中で用いる用語“共投与する”は、第2療法薬を本発明化合物と一緒に単一剤形の一部として(たとえば、本発明化合物および前記の第2療法薬を含む本発明組成物として)、または別個の複数剤形で投与しうることを意味する。あるいは、この追加薬剤を本発明化合物の投与前に、投与に続いて、または投与後に投与することができる。そのような併用療法処置において、本発明化合物および第2療法薬(1種類以上)を両方とも常法により投与する。本発明化合物および前記の第2療法薬の両方を含む本発明組成物を対象に投与することは、その同一療法薬、他のいずれかの第2療法薬、またはいずれかの本発明化合物を、その対象に処置期間中の他の時点で別個に投与することを除外しない。
【0120】
これら第2療法薬の有効量は当業者に周知であり、投与のための指針は本明細書中で参照した特許および公開特許出願、ならびにWells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, カリフォルニア州ロマリンダ(2000)、ならびに他の医学テキスト中にみられる。しかし、第2療法薬の最適有効量範囲を決定するのは当業者が容易になしうる範囲内である。
【0121】
第2療法薬を対象に投与する本発明の1態様において、本発明化合物の有効量は第2療法薬を投与しない場合に本発明化合物の有効量である量より少ない。他の態様において、第2療法薬の有効量は本発明化合物を投与しない場合に第2療法薬の有効量である量より少ない。こうして、高用量のいずれかの薬剤に付随する不都合な副作用を最小限に抑えることができる。他の潜在的な利点(限定ではないが、投薬方式の改善および/または薬物経費の低下が含まれる)は当業者に自明であろう。
【0122】
さらに他の観点において、本発明は、対象において前記に述べた疾患、障害または症状を治療または予防するための医薬(単一組成物または別個の剤形として)の製造に際して、式Iの化合物を単独で使用すること、または1種類以上の前記の第2療法薬と一緒に使用することを提供する。本発明の他の観点は、本明細書に記載する疾患、障害、またはその症状の治療または予防に使用するための式Iの化合物である。
【0123】
したがって、他の態様において本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、10〜60mgの式Iの化合物および2.5〜30mgのキニジンを共投与することを含み、これにより対象において定常状態条件で12〜24時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の最大血漿曝露濃度を組成物がもたらし、その組成物を対象に投与するとキニジンなしで投与した同モル量の式Iの化合物と比較してジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度が低下する方法を提供する。
【0124】
したがって、他の態様において本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、10〜60mgの式Iの化合物および2.5〜20mgのキニジンを共投与することを含み、これにより対象において定常状態条件で12〜24時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の最大血漿曝露濃度を組成物がもたらし、その組成物を対象に投与するとキニジンなしで投与した同モル量の式Iの化合物と比較してジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度が低下する方法を提供する。
【0125】
したがって、他の態様において本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、10〜60mgの式Iの化合物および2.5〜10mgのキニジンを共投与することを含み、これにより対象において定常状態条件で12〜24時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の最大血漿曝露濃度を組成物がもたらし、その組成物を対象に投与するとキニジンなしで投与した同モル量の式Iの化合物と比較してジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度が低下する方法を提供する。
【0126】
したがって、他の態様において本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、15〜45mgの式Iの化合物および2.5〜30mgのキニジンを共投与することを含み、これにより対象において定常状態条件で12〜24時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の最大血漿曝露濃度を組成物がもたらし、その組成物を対象に投与するとキニジンなしで投与した同モル量の式Iの化合物と比較してジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度が低下する方法を提供する。
【0127】
したがって、他の態様において本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、20〜35mgの式Iの化合物および2.5〜30mgのキニジンを共投与することを含み、これにより対象において定常状態条件で12〜24時間毎に反復投与した後に約1750から約250ng−h/mLまでの式Iの化合物の最大血漿曝露濃度を組成物がもたらし、その組成物を対象に投与するとキニジンなしで投与した同モル量の式Iの化合物と比較してジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの血漿曝露濃度が低下する方法を提供する。
【0128】
したがって、他の態様において本発明は、その処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、式Iの化合物およびキニジンを共投与することを含み、これにより同等の対象において同じ投与方式に従って投与した同量のキニジンをさらに含むモル等量デキストロメトルファン組成物の投与により生じるデキストロメトルファンおよびデキストロルファンの尿中濃度と比較して、対象においてより高い式Iの化合物の尿中濃度およびより低いジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの尿中濃度をもたらす方法を提供する。
【0129】
診断法およびキット
本発明の化合物および組成物は、溶液または生体試料(たとえば血漿)中のデキストロメトルファンの濃度を測定する方法、デキストロメトルファンの代謝を調べる方法、および他の分析試験における、試薬としても有用である。
【0130】
1態様によれば、本発明は、溶液または生体試料中のデキストロメトルファンの濃度を測定する方法であって、下記の工程を含む方法を提供する:
a)既知濃度の式Iの化合物を溶液または生体試料に添加し;
b)デキストロメトルファンを式Iの化合物から識別する測定機器に溶液または生体試料を装入し;
c)式Iの化合物の検出量が生体試料または溶液に添加した式Iの化合物の既知濃度と相関するように測定機器を校正し;そして
d)校正した測定機器で生体試料中のデキストロメトルファンの量を測定し;そして
e)検出量と式Iの化合物について得られた濃度との相関関係を用いて溶液または生体試料中のデキストロメトルファンの濃度を判定する。
【0131】
デキストロメトルファンを対応する式Iの化合物から識別しうる測定機器には、同位体存在率のみが互いに異なる2種類の化合物を識別しうるいずれかの測定機器が含まれる。測定機器の例には、質量分析計、NMR分光計、またはIR分光計が含まれる。
【0132】
1態様においては、溶液または生体試料中のデキストロメトルファンの量を測定する方法であって、下記を含む方法が提供される:
a)既知量の式Iの化合物を溶液または生体試料に添加し;
b)式Iの化合物についての少なくとも1つの信号およびデキストロメトルファンについての少なくとも1つの信号を、これら2種類の化合物を識別しうる測定機器で検出し;
c)式Iの化合物についての少なくとも1つの信号と溶液または生体試料に添加した式Iの化合物の既知量との相関関係を求め;そして
d)式Iの化合物について検出した少なくとも1つの信号と溶液または生体試料に添加した式Iの化合物の量との相関関係を用いて溶液または生体試料中のデキストロメトルファンの量を判定する。
【0133】
他の態様において、本発明は、式Iの化合物の代謝安定性を評価する方法であって、式Iの化合物をある期間、代謝酵素源と接触させ、そして式Iの化合物の量をその期間後の式Iの化合物の代謝産物と比較する工程を含む方法を提供する。
【0134】
関連態様において、本発明は、式Iの化合物を投与した後の対象における式Iの化合物の代謝安定性を評価する方法を提供する。この方法は、式Iの化合物を対象に投与した後、ある期間で血清、血液、組織、尿または便試料を対象から採取し;そして式Iの化合物の量を血清、血液、組織、尿または便試料中の式Iの化合物の代謝産物と比較する工程を含む。
【0135】
本発明は、糖尿病性神経障害、レット症候群(RTT);喉頭筋痙攣の無調節による音声障害、たとえば外転筋痙攣性発声障害、内転筋痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害、および音声振戦を含む;メトトレキセート神経毒性;ならびに癌により起きる疲労を処置するために使用するキットをも提供する。これらのキットは下記のものを含む:(a)式Iの化合物またはその塩、水和物もしくは溶媒和物を含む医薬組成物であって、容器に入れた組成物;ならびに(b)その医薬組成物を、偽性延髄性情動;糖尿病性神経障害、レット症候群(RTT);喉頭筋痙攣の無調節による音声障害、たとえば外転筋痙攣性発声障害、内転筋痙攣性発声障害、筋緊張性発声障害、および音声振戦を含む;メトトレキセート神経毒性;ならびに癌により起きる疲労の処置に使用する方法を述べた指示。
【0136】
容器は、医薬組成物を保持しうるいずれかの器または密封したもしくは密封可能な装置であってもよい。例には、ボトル、アンプル、分割されたもしくはマルチチャンバー型のホルダーボトルであって各区画もしくは各チャンバーが1回量の組成物を収容したもの、分割されたホイルパケットであって各区画が1回量の組成物を収容したもの、または1回量の組成物を分配するディスペンサーが含まれる。容器は、医薬的に許容できる材料で作成された、当業者に知られているいずれかの一般的な形状または形態のもの、たとえば紙もしくはボール紙の箱、ガラスもしくはプラスチックのボトルもしくはジャー、再密封可能なバッグ(たとえば、別の容器に入れる“詰替え用”錠剤を保持するためのもの)、または療法計画に従ってパックから押し出すための個々の用量を入れたブリスターパックであってよい。用いる容器は、関連の剤形そのものに依存する可能性があり、たとえば一般的なボール紙の箱は一般に懸濁液剤を保持するのには用いられない。単一剤形を販売するために単一パッケージ内に1以上の容器を一緒に用いることができる。たとえば、錠剤をボトルに入れ、次いでこれを箱に入れる場合がある。1態様において、容器はブリスターパックである。
【0137】
本発明のキットは、医薬組成物の1回量を投与または計量するための器具をも含むことができる。そのような器具には、組成物が吸入用組成物である場合には吸入器;組成物が注射用組成物である場合には注射器と注射針;組成物が経口液体組成物である場合には注射器、スプーン、ポンプ、または容量マーキング付きもしくはマーキングなしの容器;またはキット中に存在する組成物の製剤に適切な他のいずれかの計量もしくは送達器具を含めることができる。
【0138】
ある態様において、本発明のキットは容器の別個の器内に、本発明化合物と共投与するのに使用するための第2療法薬、たとえば前記に挙げたもののうち1種類を含む医薬組成物を収容することができる。
【実施例】
【0139】
実施例1.化合物100、101および108の合成
【0140】
以下に記載するそれぞれの工程および番号付き中間体は、前掲のスキーム1中の対応する工程および中間体を表わす。
【0141】
(+)−3−メトキシ−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルフィナン(10b).反応器に(+)−3−メトキシ−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルフィナン、HBr塩(3.00g,8.5mmol)、CHOH中のNH(2.0M,8.5mL,17.0mmol)、および撹拌バーを添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。得られた材料をロータリーエバポレーターで濃縮し、次いでCHCl(50mL)およびHO(50mL)で希釈した。層を分離し、水層をCHCl(50mL)で抽出した。有機層を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、2.88gの10bを綿毛状の白色固体として得た。
【0142】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.12 (ddd, J1=24.7, J2=12.6, J3=3.8, 1H), 1.23-1.43 (m, 5H), 1.49-1.52 (m, 1H), 1.62-1.65 (m, 1H), 1.72 (td, J1=12.6, J2=4.9, 1H), 1.81 (dt, J1=12.6, J2=3.3, 1H), 2.07 (td, J1=12.6, J2=3.3, 1H), 2.33-2.47 (m, 5H), 2.57 (dd, J1=18.1, J2=5.5, 1H), 2.79 (dd, J1=5.5, J2=3.3, 1H), 2.98 (d, J=18.1, 1H), 6.68 (dd, J1=8.2, J2=2.7, 1H), 6.80 (d, J =2.7, 1H), 7.02 (d, J =8.8, 1H).
【0143】
(+)−3−メトキシ−(9α,13α,14α)−モルフィナン(11).固体10b(6.79g,25.1mmol)を反応器にCHClおよび撹拌バーと共に入れた。KCO(13.85g,100.2mmol)を添加し、混合物を室温でN雰囲気下に10分間撹拌した後、塩化アセチル(7.866g,100.2mmol)を添加した。得られた反応混合物をなおN雰囲気下で還流条件下に7時間撹拌し、次いでセライトのパッドにより濾過した。有機濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた粗製物質をCHOHに溶解し、次いで還流条件下で1時間撹拌した。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、次いで真空乾燥して、6.78gの11を灰白色固体として得た。
【0144】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.04-1.13 (m, 1H), 1.19-1.29 (m, 1H), 1.37-1.66 (m, 6H), 2.37 (d, J=13.5, 2H), 2.54 (bs, 1H), 2.80 (s, 2H), 2.95-2.99 (m, 1H), 3.12-3.18 (m, 2H), 3.48 (s, 1H), 3.71 (s, 3H), 6.76 (dd, J1=8.3, J2=2.6, 1H), 6.80 (d, J =2.3, 1H), 7.07 (d, J =8.3, 1H).
【0145】
(+)−17−エチルカルバメート−3−メトキシ−(9α,13α,14α)−モルフィナン(12).撹拌バーを備えた反応器に、CHCl(100mL)に溶解した11(6.025g,2.48mmol)を添加した。ジイソプロピルエチルアミン(DIEA;16.32g,126.3mmol)を添加し、混合物を室温で10分間、窒素下に撹拌した後、クロロギ酸エチル(13.094g,76.8mmol)を添加した。反応混合物を還流条件下で窒素下に3時間撹拌し、この時点でtlc(20%酢酸エチル/ヘキサン)は出発物質11が完全に消費されたことを示した。有機層を分離し、まず1M HCl、次いで飽和NaHCOで洗浄した。それぞれの洗液からの水層を合わせて50mLのCHClで逆抽出した。逆抽出からの有機層を洗液からの有機層と合わせ、この合わせた有機層をNaSOで乾燥させた。次いで有機溶液を濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、次いで自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(0−30%酢酸エチル/ヘキサン)で精製して、5.37gの12を透明な淡黄色の油として得た。
【0146】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.06 (ddd, J1=25.3, J2=12.6, J3=3.8, 1H), 1.21-1.39 (m, 7H), 1.45-1.60 (m, 3H), 1.65-1.70 (m, 2H), 2.34-2.37 (m, 1H), 2.54-2.69 (m, 2H), 3.04-3.12 (m, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.86 (ddd, J1=42.3, J2=13.7, J3=3.8, 1H), 4.12 (q, J=7.14, 2H), 4.31 (dt, J1=56.6, J2=4.3, 1H), 6.71 (dd, J1=8.8, J2=2.2, 1H), 6.82 (d, J =2.7, 1H), 7.00 (見掛けのt, J =8.2, 1H).
【0147】
(+)−17−エチルカルバメート−3−ヒドロキシ−(9α,13α,14α)−モルフィナン(13).撹拌バーを備えた反応器内で、カルバメート12(2.43g,7.4mmol)をDCM(20mL)に溶解し、得られた溶液を0℃に冷却した。BBr(9.24g,36.9mmol)を添加し、反応混合物をN雰囲気下に0℃で20分間撹拌した(この時点で、20%酢酸エチル/ヘキサン中のtlcは反応が完了したことを示した)。氷中の27% NHOH溶液を、撹拌バーを入れたビーカーに装入し、撹拌しながら反応混合物を徐々に添加した。得られた混合物を20分間撹拌し、次いで4:1 CHCl/CHOH(200mL)で抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、次いでロータリーエバポレーターで濃縮した。粗製物質を自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(CHOH、1% NHOH含有/CHCl,0−10%)により精製した。純粋な画分をロータリーエバポレーターで濃縮して、1.48gの13を白色固体として得た。
【0148】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.04-1.12 (m, 1H), 1.22-1.36 (m, 7H), 1.45-1.59 (m, 3H), 1.63-1.67 (m, 2H), 2.30-2.33 (m, 1H), 2.52-2.66 (m, 2H), 3.06 (dt, J1=18.4, J2=5.9, 1H), 3.84 (ddd, J1=35.8, J2=13.8, J3=6.1, 1H), 4.10-4.18 (m, 2H), 4.31 (dt, J1=53.9, J2=3.1, 1H), 6.64 (m, 1H), 6.78 (s, 1H), 6.93 (見掛けのt, J =7.8, 1H).
【0149】
(+)−17−エチルカルバメート−3−d−メトキシ−(9α,13α,14α)−モルフィナン(14;R=CD).生成物13(1.48g,4.7mmol)を、撹拌バーを備えた反応器内でDMF(20mL)に溶解した。この溶液にKCO(2.97g,21.5mmol)を添加した。混合物をN雰囲気下に室温で10分間撹拌した後、CDI(1.02g,7.0mmol)を添加した。得られた反応混合物を室温で一夜撹拌し、この時点でtlc(20%酢酸エチル/ヘキサン)は反応が完了したことを示した。混合物をHOで希釈し、次いでエチルエーテル(3x30mL)で抽出した。有機層を合わせてNaSOで乾燥させ、濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮すると、透明な黄色の油が得られた。自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(0−20%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、純粋な画分をロータリーエバポレーターで濃縮して、793mgの生成物を得た。
【0150】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.01-1.11 (m, 1H), 1.22-1.39 (m, 7H), 1.45-1.59 (m, 3H), 1.62-1.70 (m, 2H), 2.34-2.37 (m, 1H), 2.54-2.69 (m, 2H), 3.04-3.12 (m, 1H), 3.84 (ddd, J1=43.2, J2=13.8, J3=4.8, 1H), 4.09-4.17 (m, 2H), 4.31 (dt, J1=56.4, J2=3.4, 1H), 6.71 (dd, J1=8.4, J2=2.5, 1H), 6.82 (d, J=2.7, 1H), 7.00 (見掛けのt, J =8.2, 1H).
【0151】
(+)−3−d−メトキシ−17−d−メチル−(9α,13α,14α)−モルフィナン(化合物101).撹拌バーを備えた反応器に、THF(5mL)およびLAD(100mg,2.4mmol)を添加した。このスラリーを0℃に冷却し、続いて生成物14(R=CD,397mg,1.2mmol)のTHF(5mL)中における溶液を添加した。反応混合物をN雰囲気下で2時間撹拌し、この時点でtlc(20%酢酸エチル/ヘキサン)は反応が完了したしたことを示した。次いでガスの発生が止むまで硫酸マグネシウム・7水和物を添加することにより混合物を反応停止した。エチルエーテル(25mL)をフラスコに添加し、スラリーを濾過し、有機濾液をロータリーエバポレーターで濃縮すると油が生成した。この粗生成物を自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(CHOH、1% NHOH含有/CHCl,0−10%)により精製し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、次いでジオキサン中の飽和HBr溶液に溶解した。混合物を10分間撹拌し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、次いで3日間真空乾燥して、204mgの化合物101を得た。
【0152】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.08 (ddd, J1=25.1, J2=12.6, J3=3.3, 1H), 1.22-1.32 (m, 1H), 1.35-1.48 (m, 4H), 1.60 (dd, J1=39.0, J2=12.6, 2H), 2.02 (dt, J1=13.2, J2=4.0, 1H), 2.17 (d, J=11.9, 1H), 2.34 (t, J=13.5, 2H), 2.75-2.80 (m, 1H), 2.88 (dd, J1=18.8, J2=5.3, 1H), 3.01 (d, J=18.5, 1H), 3.15 (s, 1H), 6.73 (d, J=8.6, 1H), 6.81 (s, 1H), 7.05 (d, J =8.6, 1H). HPLC (方法: 150 mm C18-RPカラム−勾配法5−95% ACN;波長: 254 nm):保持時間: 6.74分. MS (M+H+): 278.4.
【0153】
(+)−3−d−メトキシ−17−メチル−(9α,13α,14α)−モルフィナン(化合物100).撹拌バーを備えた反応器に、THF(5mL)およびLAH(91mg,2.4mmol)を添加した。スラリーを0℃に冷却し、続いてTHF(5mL)に溶解した生成物14(R=CD,397mg,1.2mmol)を添加した。反応混合物をN雰囲気下で2時間撹拌し、この時点でtlc(20%酢酸エチル/ヘキサン)は反応が完了したしたことを示した。次いでガスの発生が止むまで硫酸マグネシウム・7水和物を添加することにより混合物を反応停止した。エチルエーテル(25mL)をフラスコに添加し、スラリーを濾過し、有機濾液をロータリーエバポレーターで濃縮すると油が生成した。この粗生成物を自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(CHOH、1% NHOH含有/CHCl,0−10%)により精製し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、次いでジオキサン中の飽和HBr溶液に溶解した。混合物を10分間撹拌し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、次いで3日間真空乾燥して、200mgの化合物100を得た。
【0154】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 1.07-1.16 (m, 1H), 1.22-1.32 (m, 1H), 1.34-1.46 (m, 4H), 1.59 (dd, J1=41.0, J2=12.6, 2H), 1.94 (t, J=12.6, 1H), 2.06 (d, J=12.9, 1H), 2.26 (t, J=12.6, 1H), 2.36 (d, J=13.2, 1H), 2.53 (s, 3H), 2.67 (d, J=12.2, 1H), 2.78 (dd, J1=18.8, J2=5.0, 1H), 3.06 (d, J=19.2, 2H), 6.72 (d, J=8.3, 1H), 6.81 (s, 1H), 7.05 (d, J =8.6, 1H). HPLC (方法: 150 mm C18-RPカラム−勾配法5−95% ACN;波長: 254 nm):保持時間: 6.86分. MS (M+H+): 275.2.
【0155】
(+)−3−メトキシ−17−d−メチル−(9α,13α,14α)−モルフィナン(化合物108).撹拌バーを備えた反応器に、THF(2mL)およびLAD(99mg,2.4mmol)を添加した。このスラリーを0℃に冷却し、続いてTHF(3mL)に溶解したカルバメート12(195mg,6.0mmol)を徐々に添加した。反応混合物をN雰囲気下で10分間撹拌し、この時点でtlc(20%酢酸エチル/ヘキサン)は反応が完了したしたことを示した。次いでガスの発生が止むまで硫酸マグネシウム・7水和物を添加することにより混合物を反応停止した。生成した固体をエチルエーテルで洗浄し、濾過し、有機濾液をロータリーエバポレーターで濃縮すると油が生成した。この粗生成物を自動フラッシュカラムクロマトグラフィー(CHOH、1% NHOH含有/CHCl,90%)により精製し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、次いでジオキサン中の飽和HBr溶液に溶解した。混合物を10分間撹拌し、次いでロータリーエバポレーターで濃縮して、74mgの生成物を得た。
【0156】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.96 (ddd, J1=25.4, J2=12.7, J3=3.9, 1H), 1.08-1.18 (m, 1H), 1.24-1.36 (m, 2H), 1.43-1.52 (m, 3H), 1.62 (d, J=12.7, 1H), 1.78 (td, J1=13.7, J2=4.4, 1H), 1.96 (d, J=12.2, 1H), 2.41-2.47 (m, 2H), 2.97 (dd, J1=19.5, J2=5.9, 1H), 3.10-3.18 (m, 2H), 3.60-3.63 (m, 1H), 3.73 (s, 3H), 6.81-6.84 (m, 2H), 7.13 (d, J =9.3, 1H), 9.60 (bs, 1H). HPLC (方法: 150 mm C18-RPカラム−勾配法5−95% ACN;波長: 280 nm):保持時間: 6.91分. MS (M+H+): 275.7.
【0157】
実施例2.ミクロソームアッセイ
【0158】
あるインビトロ肝代謝試験がこれまでに下記の参考文献に記載されており、それぞれを全体として本明細書に援用する:Obach, RS Drug Metab Disp 1999, 27:1350; Houston, JB et al, Drug Metab Rev 1997, 29:891; Houston, JB Biochem Pharmacol 1994, 47:1469; Iwatsubo, T et al, Pharmacol Ther 1997, 73:147;およびLave, T et al, Pharm Res 1997, 14:152。
【0159】
この試験の目的は、プールしたヒトおよびチンパンジーの肝ミクロソームインキュベーション液中における被験化合物の代謝安定性を調べることであった。プールしたヒトおよびチンパンジーの肝ミクロソームに曝露した被験化合物の試料をHPLC−MS(またはMS/MS)検出法により分析した。代謝安定性を調べるために、多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring(MRM))を用いて被験化合物の消失を測定した。
【0160】
実験法:ヒト肝およびカニクイザル肝ミクロソームをXenoTech,LLC(カンザス州レネクサ)から入手した。インキュベーション混合物を下記に従って調製した:
反応混合物の組成
【表2】

【0161】
被験化合物と肝ミクロソームのインキュベーション:補因子を含まない反応混合物を調製した。この反応混合物(補因子を含まないもの)の一定部分を振とう水浴内で37℃において3分間インキュベートした。反応混合物の他の一定部分を陰性対照として調製した。被験化合物を反応混合物および陰性対照の両方に最終濃度0.10、0.25または1μMで添加した。単純有機溶媒(被験化合物を添加しないもの)の添加により反応混合物の一定部分をブランク対照として調製した。補因子の添加により反応を開始し(陰性対照には添加しなかった)、次いで振とう水浴内で37℃においてインキュベートした。一定部分(200μL)を複数時点で三重に取り出し、800μLの氷冷50/50アセトニトリル/dHOと混和して反応を停止した。陽性対照であるテストステロンおよびプロプラノロール、ならびにデキストロメトルファンを、それぞれ被験化合物と同時に別個の反応で実験した。
【0162】
すべての試料をLC−MS(またはMS/MS)により分析した。代謝安定性にはLC−MRM−MS/MS法を用いる。カニクイザル肝ミクロソーム中での試験には最終濃度1μMの各化合物および0.5mg/mLのミクロソームを用いた。図1は、化合物100および化合物101がサル肝ミクロソーム中においてデキストロメトルファンより大きな安定性を備えていたことを証明する。サル肝ミクロソーム中における化合物108の安定性は、デキストロメトルファンのものと類似していた。
【0163】
同様な結果がヒト肝ミクロソームを用いて得られた。図2は、ほぼ45%の化合物101および42%の化合物100が、0.25μMの各化合物を2mg/mLのヒト肝ミクロソームと共に30分間インキュベートした後に元のままであったことを証明する。これに対し、同じ期間後に約33%のデキストロメトルファンが元のままであったにすぎない。化合物108はデキストロメトルファンと類似の安定性を示した。
【0164】
ヒト肝ミクロソーム中におけるデキストロメトルファンと比較した化合物100および101の相対安定性は、低(0.1μM)濃度の化合物ですら同じままであった(データを示していない)。ヒト肝ミクロソームの濃度を低下させると、すべての被験化合物の代謝速度が低下する。0.5mg/mLに30分間曝露した後、ほぼ75%の化合物101および71%の化合物100が元のままであった。デキストロメトルファンはより高い不安定さを示し、30分間のインキュベーション後に約65%が元のままであったにすぎない。
【0165】
実施例3:CYP2D6 SUPERSOMES(商標)中における代謝安定性の評価
【0166】
ヒトCYP2D6+ P450レダクターゼSUPERSOMES(商標)をGenTest(米国マサチュセッツ州ウーバン)から購入した。25pmoleのSUPERSOMES(商標)、2.0mMのNADPH、3.0mMのMgClおよび0.1μMの式Iの各種化合物(化合物100、101、および108)を100mMのリン酸緩衝液(pH7.4)中に含有する反応混合物1.0mLを、三重で、37℃においてインキュベートした。陽性対照は式Iの化合物の代わりに0.1μMのデキストロメトルファンを含有していた。陰性対照には、GenTest(米国マサチュセッツ州ウーバン)から購入した対照昆虫細胞サイトゾル(いずれのヒト代謝酵素も欠如した昆虫細胞ミクロソーム)を用いた。0、2、5、7、12、20および30分目に各試料から一定部分(50μL)を取り出してマルチウェルプレートのウェルに入れ、それぞれに3μMのハロペリドールを内標準として含む50μLの氷冷アセトニトリルを添加して反応を停止した。
【0167】
取り出した一定部分を入れたプレートを、次いで−20℃のフリーザーに15分間入れて冷却した。冷却後、100μLの脱イオン水をプレート内のすべてのウェルに添加した。次いでプレートを遠心機により3000rpmで10分間遠心した。次いで上清の一部(100μL)を取り出し、新たなプレートに入れて質量分析により分析した。
【0168】
図3はSupersomes実験の結果を示す。この場合も、化合物100および101は代謝に対してデキストロメトルファンまたは化合物108よりはるかに安定であった。2D6 Supersomes(商標)と共に30分間インキュベートした後、ほぼ47%の化合物101および40%の化合物100が元のままであった。これに対し、20分の時点で元のデキストロメトルファンは検出できなかった。
【0169】
前記の結果はすべて、本発明化合物のRの位置に存在するジュウテリウムは、デキストロメトルファンと比較してより大きな代謝安定性をその化合物に付与することを示唆する。
【0170】
実施例4:キニジンと組合わせ経口投与した後のカニクイザルにおける被験品C20148およびC10003の薬物動態の評価
【0171】
目的−この試験の目的は、被験品を組合わせ経口投与した後に種々の時点でカニクイザルから血漿試料を採集することであった。これらの試料を、薬物動態パラメーター推定のためにLC/MS/MSによる血漿薬物濃度の測定に用いた。この試験はShanghai Medicilon Inc.の標準操作法(Standard Operating Procedures(SOPs))に従って実施された。このスポンサーが被験化合物および内標準化合物を提供した。
【0172】
動物の状態−用いた動物は、処理の開始時点で年齢3〜4歳、体重4〜6kgのカニクイザルであった。
【0173】
環境および順化−動物室の環境管理は、23±2℃の温度、50〜70%の湿度、および12時間明/12時間暗のサイクルを維持するように設定された。試験操作に適応させるために、必要に応じて12時間暗のサイクルを一時的に中断した。動物を初回投薬前に予め試験操作に順化させた。
【0174】
飼料および水−試験の存命部分の期間全体を通してSL−M1(Shanghai Shilin Biotech Incorporation)を任意に与えた。水は任意に摂取できた。飼料または水中に、この試験を妨げる既知の混入物質はなかった。
【0175】
動物の選択および絶食−試験に用いる動物を全般的な健康状態およびケージ収容への順化に基づいて選択した。経口部門(oral arm)を一夜絶食させた。
【0176】
根拠−新規化学物質の薬物動態特性を評価するためには、マウス、ラット、イヌおよびサルなどの一般的な実験用哺乳動物を用いた試験が必須であり、日常的に用いられている。各グループの動物数は被験動物間の変動性を評価するために必要な最小数である。
【0177】
実験設計−4匹のカニクイザルをこの試験に用いた。
【表3】

“Dex”はデキストロメトルファンを意味する
各被験品を2mg/mLの濃度に溶解し、1mg/kgで投与した
** 配合物は、D5W中の10%ジメチルイソソルビド(DMI)、15%エタノール(ETOH)、35%プロピレングリコール(PG)(v:v:v)からなる
【0178】
投与調製物および投与−化合物101およびデキストロメトルファンをそれぞれ水に2mg/mLになるように溶解した。組合わせ投与量は、各化合物について1mg/mLの濃度が得られるように両者を1:1で混合することにより調製された。投与溶液中の各化合物の濃度をHPLCにより再確認した。キニジンはDMI:EtOH:PG:水(10:15:35:40,v/v/v/v)中に3mg/mLで調製され、別個に投与された。これらの投与調製物をBID(1日2回)、12時間間隔で経口投与(PO)した。デキストロメトルファン/化合物100混合物の投与容量は1mL/kgであった。キニジンの投与容量は、各動物が投与されている用量に基づいて決定された。各被験動物に対する投与用量は、個々の体重に基づいて決定された。体重を各投薬日に測定し、記録した。
【0179】
血液試料採集−血液試料採集を6日目に最終量の経口投与(11回目の投与)の後に行なった。血液(約1mL)を大腿静脈からヘパリンナトリウム抗凝固剤を入れた試験管内に、0.25、0.5、1、1.5、2、3.5、6および8時間目に採集した。血漿を遠心により分離し、試験まで−20℃に貯蔵した。
【0180】
尿試料採集−5日目の2回の投与の間(9回目と10回目の投与の間の12時間)の尿試料をプレートに採集し、容量を定量した。採集した後、尿試料を−20℃に貯蔵し、次いで依頼主に送り返した。
【0181】
許容時間範囲−各時点についての血液試料は、最初の1時間以前の時点については10%以内、および1時間以後の時間については±5分以内に採集された。
【0182】
試料の取扱いおよび貯蔵−血漿試料を得るために遠心するまで、血液を氷上または約5℃に貯蔵した。血液を採集して30分以内に血漿(最大容量)採取のための遠心を行なった。血漿試料を分析するまでドライアイス上または約−20℃に貯蔵した。
【0183】
死前観察−投薬中および血液採集時に、何らかの臨床関連異常について動物を観察した;たとえば飼料消費量、体重、注射位置、活動、または便および尿を含む。
【0184】
試料分析−血漿試料の分析はMedicilon/MPI Inc.のBioanalytical Groupが行なった。血漿および尿中の親化合物(デキストロメトルファンおよび化合物100)および2種類の代謝産物(デキストロルファンおよびデキストロルファン−D3)の両方の濃度を、高速液体クロマトグラフィー/質量分析(HPLC/MS/MS API 3000)法により測定した。試料濃度が検量標準曲線のULOQを超える場合、カニクイザル血漿ブランクによる希釈を行なった。データ取得および管理システムを、ABI Inc.からのAnalyst 1.4ソフトウェアにより作成した。
【0185】
結果を図4、5および6にまとめる。図4は、キニジンを共投与しない場合の、デキストロメトルファンおよびデキストロルファンと比較した化合物101およびジュウテリウム化デキストロルファンの血漿中濃度を示す。図4は、化合物101およびデキストロメトルファンを同量(4mg)でサルに投与した場合、デキストロメトルファンと比較してより高い化合物101の血漿中濃度が見られることを証明する。図4は、化合物101からジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログへの代謝が、デキストロメトルファンからデキストロルファンへの代謝と比較して低下することをも示す。本明細書の背景技術のセクションに指摘したように、デキストロメトルファンの中毒潜在性はデキストロルファンに起因すること、およびヒトにおけるデキストロメトルファン中毒潜在性はデキストロメトルファンへの代謝に起因することがより確実である。したがって図4は、本発明化合物が、デキストロメトルファンアイソトポログからデキストロルファンアイソトポログへの代謝を低下させ、したがってそれらの化合物の中毒潜在性を低下させるのに有用となりうることを示唆する。
【0186】
図5に共投与データをまとめる。この結果は、各化合物を同量のキニジンと共投与した場合、化合物101の血漿中濃度がデキストロメトルファンの血漿中濃度より高いことを指摘する。キニジン量増加の相対効果は、それがデキストロメトルファンに対してもつ効果より化合物101の血漿中濃度に対して大きな効果をもつ。
【0187】
図6は、サルにおける化合物101およびデキストロメトルファン、ならびにジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログおよびデキストロルファンの尿中濃度を、キニジン濃度の関数として示す。化合物101およびデキストロメトルファンの濃度はキニジン濃度の上昇によって影響される。同一のキニジン濃度では、尿中にデキストロメトルファンより化合物101の方が多い。キニジン濃度は尿中の代謝産物濃度にも影響を及ぼす。このデータは、一定のキニジン濃度では尿中にデキストロルファンよりジュウテリウム化デキストロルファンアイソトポログの方が少ないことを指摘する。
【0188】
実施例5:NMDA(PCP)およびシグマ−1受容体への化合物の結合を測定する放射性リガンドアッセイデータ
【0189】
このアッセイは、MDS Pharma Servicesにより下記の参考文献に従って実施された;それらの内容を本明細書に援用する:Siegel BW, Sreekrishna K and Baron BM (1996) Binding of the radiolabeled glycine site antagonist [3H]MDS105,519 to homomeric NMDA-NR1a receptors. Eur J Pharmacol. 312(3):357-365; Goldman ME, Jacobson AE, Rice KC and Paul SM (1985);およびDifferentiation of [.H] phencyclidine and (+)-[.H]SKF-10047 binding sites in rat cerebral cortex. FEBS Lett. 190:333-336. Ganapathy ME, Prasad PD, Huang W, Seth P, Leibach FH and Ganapathy V (1999) Molecular and ligand-binding characterization of the s-receptor in the Jurkat human T lymphocyte cell line. J Pharmacol Exp Ther. 289: 251-260。
【0190】
アッセイ法:
【表4】

既存値
【0191】
結果
【0192】
結合結果を次表に化合物101についてデキストロメトルファンと比較してまとめる:
【表5】

【0193】
さらに記載しなくても当業者は以上の記載および具体例を用いて本発明化合物を製造および利用し、本発明方法を実施しうると考えられる。以上の考察および例は特定の好ましい態様の詳述にすぎないことを理解すべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更および均等物を実施しうることは当業者に自明であろう。前記で考察または引用した報文その他の文献を本明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

またはその医薬的に許容できる塩
[式中:
は、CH、CHD、CHD、CD、CHF、およびCFから選択され;
は、CH、CHD、CHD、およびCDから選択され;
ただし、RがCHである場合はRはCHまたはCDではなく、
さらに、RがCDである場合はRはCHではない]。
【請求項2】
は、CHD、CHD、CD、CHF、およびCFから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は、CHD、CHD、およびCDから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
はCDである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
は、CH、CHD、またはCDである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
はCHである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
はCDである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
はCFである、請求項2に記載の化合物。
【請求項9】
はCHFである、請求項2に記載の化合物。
【請求項10】
は、CH、CHD、およびCDから選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
下記のものから選択される式Iの化合物:
【表1】

【請求項12】
ジュウテリウムとして指定されていない原子はいずれもそれの自然界での同位体存在率で存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物および許容できるキャリヤーを含む、発熱物質を含まない組成物。
【請求項14】
医薬の投与のために配合され、キャリヤーが医薬的に許容できるキャリヤーである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
さらに、情動不安定;偽性延髄性情動;自閉症;神経障害;神経変性性疾患;脳傷害;意識異常障害;心血管疾患;緑内障;遅発性ジスキネジー;糖尿病性神経障害;網膜障害性疾患;ホモシステイン誘発性アポトーシスにより起きる疾患または障害;ホモシステインレベルの上昇により起きる疾患または障害;慢性疼痛;難治性疼痛;神経障害性疼痛;交感神経仲介疼痛;消化器機能障害に関連する疼痛;てんかん性発作;耳鳴;性的機能障害;難治性咳;皮膚炎;耽溺性障害;レット症候群(RTT);喉頭筋痙攣の無調節による音声障害;メトトレキセート神経毒性;および癌により起きる疲労から選択される疾患または状態の治療または予防に有用な第2の療法薬を含む、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項16】
第2の療法薬がキニジン、硫酸キニジン、オキシコドン、およびガバペンチンから選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
情動不安定;偽性延髄性情動;自閉症;神経障害;神経変性性疾患;脳傷害;意識異常障害;心血管疾患;緑内障;遅発性ジスキネジー;糖尿病性神経障害;網膜障害性疾患;ホモシステイン誘発性アポトーシスにより起きる疾患または障害;ホモシステインレベルの上昇により起きる疾患または障害;慢性疼痛;難治性疼痛;神経障害性疼痛;交感神経仲介疼痛;消化器機能障害に関連する疼痛;てんかん性発作;耳鳴;性的機能障害;難治性咳;皮膚炎;耽溺性障害;レット症候群(RTT);喉頭筋痙攣の無調節による音声障害;メトトレキセート神経毒性;および癌により起きる疲労から選択される疾患または状態に罹患しているかまたは罹患しやすい対象を処置する方法であって、それを必要とする対象に、下記を含む療法有効量の医薬組成物を投与する段階を含む方法:
a.式Iの化合物:
【化2】

またはその医薬的に許容できる塩
[式中:
は、CH、CHD、CHD、CD、CHF、およびCFから選択され;
は、CH、CHD、CHD、およびCDから選択され;
ただし、RがCHである場合はRはCHではない]。
b.医薬的に許容できるキャリヤー。
【請求項18】
対象が糖尿病性神経障害性疼痛に罹患しているかまたは罹患しやすい、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
それを必要とする対象に、キニジン、硫酸キニジン、オキシコドン、およびガバペンチンから選択される第2の療法薬を投与する追加段階を含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
対象が糖尿病性神経障害に罹患しているかまたは罹患しやすく、第2の療法薬が硫酸キニジンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
組成物を神経障害性疼痛の処置に使用する、請求項14に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131815(P2012−131815A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−43355(P2012−43355)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【分割の表示】特願2010−506617(P2010−506617)の分割
【原出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(509049012)コンサート ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】