説明

モレキュラーイメージング用の超音波造影剤

本発明は、金属ナノ粒子を有する新しいタイプの造影剤と、それを用いたイメージング方法とに関する。これら金属ナノ粒子は、安定且つバイオコンパチブルであり、ターゲット付けした視覚化のためにバイオターゲット特異性分子に結合されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査(sonography)及び超音波イメージング、特にモレキュラーイメージング用の新しいタイプの造影剤(UCA)と、それを用いたイメージング方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ15年において、多くの安全且つ実用的な超音波造影剤(UCA)が開発されてきた。これらの大部分は、ガス充填した微小気泡(microbubble)にベースが置かれ、これらがドップラ信号を強める。外殻(shell)は、たんぱく質、脂質、界面活性剤又はポリマーの何れかであり、これらは肺を通過することを可能にする数ミクロンの粒子サイズを持つ。その上、気泡に基づくUCAは圧縮可能であり、これが非線形の動作を生じさせる、すなわちこれら造影剤が通例は臨床研究に用いられる超音波の固有周波数で共鳴する。
【0003】
微小気泡の造影剤が有効であると証明されたとしても、これら造影剤は、例えば限られた持続時間及びこれら造影剤を特有の器官にターゲット付けすることの難しさのような重大な制限を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら欠点を解決するために、外殻でカプセル化した液滴からなるUCAが開発されてきた。Hall C. S.他(2000, J. Acoust. Soc. Am. 108(6): 2049-3057)は、超音波イメージング時に、250nmの脂質のカプセル化した(非ガスの)パーフルオロカーボン(perfluorocarbon)乳液滴の効率を研究している。これら粒子は、抗体を介して組織にターゲット付けされることができ、これにより追加の分子情報を提供する。
【0005】
理想的には、超音波造影剤は、以下の特徴をできるだけ多く持つべきである。その特徴は、
−例えば30分以上の間にわたりターゲット付けされた器官において検出を可能にするような、血液内での安定且つ十分な持続時間、
−毛細血管を通ることを可能にするために、8ミクロンよりも小さな粒子サイズ、
−無毒、又は許容できる毒性、
−十分な反射強調、
−製造及び臨床使用の容易さ、及び
−高度に特有のターゲット付けを可能にすること、
である。
【0006】
その上、超音波造影剤は、例えばフィリップスの超音波イメージングシステムのような現在の超音波イメージングシステムを用いて好ましくは応用可能となるべきである。
【0007】
MRI用の造影剤として用いられるために磁気特性を持つ金属又は金属酸化物を有する異なる粒子は開発されてきた。米国特許公報US 5,310,539は、解離しない信号誘導性の金属と結合されるメラニンを有する画像強調剤を開示し、ここで金属を含む信号は好ましくは磁性又は常磁性金属である。US2002/0136693は、磁性の複金属酸化物/水酸化物又は磁性金属及び場合により錯形成剤により成る磁性粒子を含有する、診断で使用される医薬を開示している。US2003/0082237は、ブロックコポリペプチド(block copolypeptide)又はホモポリマーの高分子電解質により、小胞体(vesicle)からなる内部又は外部層を持つ球体に構成されるナノ粒子を開示している。ナノ粒子からなる内部又は外部層の何れか一方は、金属又は金属酸化物を有することができ、これらはサイト選択医療イメージングに対し自由に機能的にされる。
【0008】
WO02/11771は、たんぱく質に凝集した金属ナノ粒子を超音波造影剤として開示している。幾つかの粒子があるたんぱく質に凝集されるので、この凝集(クラスタ)自身は超音波により検出され、高いバックグラウンドと低い信号対ノイズ比とを提供する。Bekeredjian他は、超音波造影剤として金を結合した微小管の潜在的な使用を開示している(2002, Ultrasound in Med. & Biol.28(5):691-695)。このような金を結合した微小管は、従来の造影剤(微小気泡)よりも長いコントラスト活動の持続性を表す。しかしながら、絶対的な強度は一般的に低い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属ナノ粒子を有する新しいタイプの造影剤を提供する。これら粒子は、凝集する場合、身体の組織に対する強い音響インピーダンス差による音響反射板であり、現在の商業的なUCA(微小気泡)よりも安定している有利であり、これらは現在のターゲット付けされる造影剤と同じように変更されることができる。これらナノ粒子を備えるフィルムを得る際に、反射強調が得られることが示される。造影剤は、超音波検査の全ての形式、例えばBモード、ドップラシフト超音波検査等と共に用いられることができる。
【0010】
これにより、本発明は35.10g/cmsより上、特に50.10g/cmsより上の音響インピーダンスを持つ金属ナノ粒子を有する造影剤に関する。
【0011】
特に、本発明によれば、金属ナノ粒子を有する造影剤は、無毒であり、化学的に安定している。
【0012】
特に、本発明によれば、金属ナノ粒子は好ましくは、1nmから100nm、特に1nmから50nmの直径を有する。
【0013】
本発明の造影剤は、例えばポリマーコーティングによりコーティングされる金属ナノ粒子を有する。
【0014】
本発明による造影剤として使用する金属ナノ粒子はさらにターゲット付けされる、すなわちこれら粒子がバイオターゲット薬剤、例えば細胞、組織、寄生虫のような微生物又は生体分子を有し、例えば前記抗体又はその抗体のフラグメントのたんぱく質、DNA若しくはRNAの特有のターゲット薬剤は単なる一例である。
【0015】
本発明の金属ナノ粒子はさらに、これら粒子を治療用薬剤でコーティングする又は薬品をコーティングに含むことにより薬品を送達するのに用いられることができる。
【0016】
本発明の特定の実施例は、金属が非磁性金属である金属ナノ粒子を有する造影剤に関する。他の実施例によれば、この金属粒子は、貴金属又は1つ以上の貴金属例えば金、銀、プラチナ、パラジウム、タングステン、タンタル若しくはレニウムの混合物である金属を有する。本発明の特定の実施例によれば、金属ナノ粒子は金から構成される。任意には、前記金属粒子は金属酸化物を有する、又は安定する薄い酸化物層を持つか若しくはバイオニュートラル(bio-neutral)/バイオコンパチブル(bio-compatible)コーティングを持ってもよい。
【0017】
本発明の他の態様は、本発明の金属ナノ粒子を診断用薬剤、特にターゲット型の超音波造影イメージングのような超音波における超音波造影剤として使用することに関する。従って、本発明は、超音波造影イメージングにおいて使用するための、造影剤の製造時における上述した特徴を1つ以上有する金属ナノ粒子の使用に関する。これは、それらに限定されないが、細胞マーカー、病原体等のような特有のターゲットの検出に使用するのと同じく、組織又は組織の一部を視覚化するための金属ナノ粒子の使用も含んでいる。
【0018】
その上、本発明の特定の態様によれば、前記金属のナノ粒子は、本発明の粒子を複合イメージング技術に使用することを可能にする他の撮像手段を用いて検出されることも可能である。
【0019】
本発明の他の態様は、本発明による造影剤を動物又は人間の患者へ投与し、この動物又は人間の超音波イメージング検査を行う診断方法である。あるいはまた、本発明の態様によれば、造影剤は、生体外(ex vivo)の診断するための動物又は人間の組織に投与される。
【0020】
本発明は、超音波造影剤の調合及び設計と同様、超音波造影剤における金属ナノ粒子の使用にも関する。
【0021】
本発明による金属ナノ粒子は、1から100nm、好ましくは50nmよりも小さい、特に好ましくは30nm以下の直径を有する。これら粒子の形状は、本発明において決定的なもの又は制限するものとは考えない。如何なる規則的な(例えば球形、多角形等)又は不規則な形状も用いることができる。同様に、幾つかの応用において、ある一定のサイズ範囲が有利であったとしても、粒子サイズの分布は本発明において決定的なもの又は制限するものとは考えない。溶液(すなわち化学合成)及び結露における凝集、又はフレーム若しくはスプレー技術(Gutsch他、2002, KOMA 20:24-34; Axelbaum, 2001, Powder Metall. 43(3):323-325)を含むナノ粒子を製造する異なる方法が開示されるが、レーザー切除、流動液体真空蒸着(VERL)及び化学気相成長法(CVD)の最近開示される技術も適している。追加又は代替的に、適当なサイズのナノ粒子分布がフィルタリングにより得られることができる。本発明において有効な粒子サイズに固体を研磨する如何なる従来方法も用いられることができる。ある実施例によれば、前記製造方法は、集合又は凝集しない金属ナノ粒子となる。
【0022】
本発明の金属ナノ粒子の重要な特徴は、それら粒子の音響インピーダンスであり、これが粒子を超音波造影剤として使用するのに適合させる。音響インピーダンス(Z)は、媒体における密度(ρ)と音速(c)との積であると規定される(Kinsler他、1982, Fundamentals of acoustics. 3rd edition, John Wiley and sons, New York)。本発明の金属ナノ粒子の音響インピーダンスは、身体組織の音響インピーダンスよりもかなり高くすべきであり、大部分の身体組織の音響インピーダンスは、1.3−1.7×10g/cms(平均で1.58×10g/cms)の範囲内にある。本発明は、当該発明の金属ナノ粒子が少なくとも35×10g/cms、特に少なくとも50×10g/cmsの音響インピーダンスを持つことを規定している。最大の音響インピーダンスは、本発明を制限する要素ではないが、約120×10g/cmsであると考えられる。
【0023】
本発明の状況に適する音響インピーダンスを持つ金属の例は、金、銀、プラチナ、タングステン、タンタル又はレニウム若しくはそれらの混合物、さらにはプラチナ及びイリジウムのような金属の合金である。金属ナノ粒子に使用する金属は好ましくは、化学的に安定且つ無毒であるか、又は適当なコーティングにより化学的に安定させた金属である。この点に関し特に興味のあるのは、適当な音響インピーダンスの特徴を安定性及び限られた毒性と組み合わせた金属である。ある実施例によれば、前記金属は貴金属である。本発明の特定の態様によれば、前記金属は非磁性である。
【0024】
特定の実施例によれば、本発明の金属粒子は、
a)それら粒子の中心が中空ではない
b)以下に説明されるコーティング層を除き、粒子が1つ以上の金属から本質的に構成される、すなわち固体金属コアから形成されると共に、たんぱく質、多糖類又は他の構造化合物のような非金属化合物(外面層を除く)とは関連しない、すなわちそれらは固体金属粒子である
ことを意味している本質的に固体金属粒子である。
【0025】
本発明の特定の実施例によれば、金属粒子は、粒子の凝集を減少させるために、安定且つ無毒のコーティングを有する。このコーティングは好ましくはバイオニュートラル及び/又はバイオコンパチブルである。この目的に適したコーティングは、従来技術に開示されてあり、天然及び合成炭水化物、合成ポリアミノ酸又は(アプタマー(aptamer)を含む)生理学的に許容される合成ポリマー及びそれらの派生物を含んでいる。
【0026】
炭水化物は、例えばポリガラクツロン酸(polygalacturonic acid)のようなペクチン及びペクチンの断片(fragment)のような天然及び合成構造多糖類、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)及びヘパリン類似物質(例えばヘパリン(heparin)、ヘパラン(heparan)、ケラタン(keratan)、デルマタン(dermatan)、コンドロイチン(chondroitin)及びヒアルロン酸(hyalurnoic acid))、デキストラン(dextran)、セルロース(cellulose)、例えばアルギン酸(alginate)、カラギナン(carrageenan)及びキトサン(chitosan)のような海洋多糖類、並びにそれらの派生物を含む。
【0027】
コーティングとして用いられる合成ポリマーは、ポリアミノ酸、ポリアクリレート(polyacrylate)及びポリスチレン(polystyrene)を含むが、これらに限定されない。ポリアミノ酸の中で、リジン(lysine)のホモ及びコポリマー、グルタミン酸及びアスパラギン酸並びにそれらのエステル(ester)(例えばメチル及びエチルエステル)は、考えられるコーティングの非限定的な例である。その上、例えばポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ無水物(polyanhydride)、ポリホスファゼン(polyphosphazene)又はポリカプロラクトン(polycaprolactone)のマルチブロックのようなマルチブロックコポリマーでのコーティングも考えられる。特定の実施例によれば、金属ナノ粒子は、異なるコーティングの組み合わせを備える。
【0028】
あるいはまた、適当な薄さの酸化物層が無毒であるならば、金属粒子は、この層でコーティングされることも可能である。このようなコーティングは、粒子に電荷を与え、これら粒子間に電気的斥力が生じる。しかしながら、このようなコーティングは、イオンが(例えば血液中において)粒子の凝集を引き起こす電気的斥力を減少させるので、低いイオン濃度での組織において金属ナノ粒子を使用するのに特に適する。
【0029】
本発明によるコーティング剤は、例えばアミン、活性エステル、アルコール及びカルボキシラートのような反応性官能基を含んでいる。このような官能基は前記粒子の表面上に生物学的に活性な分子、特にバイオターゲット特異性造影剤(bio-target specific agent)を結合するのに用いられる。適当なバイオターゲット特異性造影剤は、細胞−、例えば線虫(nematode)又はバクテリアのような寄生虫である微生物−、器官−又は例えばペプチド又はたんぱく質のような組織特異性分子、若しくは抗体又はこれら抗体の断片でもよい。特有の異質及び/又は毒性薬剤に向けられる分子又は官能基は、バイオターゲット特異性造影剤という用語に含まれる。前記コーティングはさらに、粒子の電荷、親油性(lipophilicity)若しくは親水性に、又は細胞膜を介し挿入される能力に影響を与える分子を有してもよい。
【0030】
本発明の特定の実施例は、特有の器官又は組織にターゲット付けされた金属ナノ粒子に関する。これは、組織又は器官特異性分子を前記ナノ粒子の表面に結合することにより達成される。上記1つの分子は抗体であり、器官又は組織特異性抗原に向けられる。例えば、上記抗体は腫瘍関連抗原又は抗ミオシン(antimyosin)に対し特異性である多クローン性又は単クローン性抗体とすることも可能である。接合に用いられることができる多クローン性又は単クローン性抗体の非限定的な実施例は、特に細胞膜に見られる抗原に主に向けられている抗体を含んでいる。例えば、多クローン性又は単クローン性抗体自体及び/又はこれら抗体の断片(Fab、F(ab)2)は、腫瘍を視覚化するのに適し、これらは、例えば癌胎児性抗原(CEA)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(.beta.-hCG)又は糖たんぱく質(glycoprotein)のような腫瘍に見られる他の抗原に向けられる。抗ミオシン、インスリン及びフィブリン抗体及び/又は抗体の断片もとりわけ適している。あるいはまた、前記分子は組織特性の表示パターンを持つレセプタに対するリガンド(ligand)である。本発明の状況において、細胞マーカー(cellular marker)という用語は、特有の細胞、細胞のタイプ、組織、組織のタイプ、器官又は器官のタイプの識別を可能にする如何なる分子を言及するのに用いられる。
【0031】
本発明の他の特定の実施例は、薬物送達薬剤として使用する又は組み合わせた診断及び治療用途の薬物でコーティングされた、すなわちコーティングに内包された薬物を持つ粒子に関する。治療薬剤は、広範にわたる薬物から選択されることができ、治療ターゲットにより決められる。
【0032】
任意には、前記粒子は、肝臓による摂取を最少にするために、血液成分の摂取を最少にする親水性コーティング及び/又は粒子−細胞間の相互作用に対する立体バリアを前記粒子に供給する材料でさらにコーティングされる。このような材料の一例は、tetronic 908(米国特許公報US 4,904,497)として知られるブロックコポリマーである。
【0033】
造影剤は、治療及び診断における音波の全ての応用、例えばドップラシフト又はBモード超音波検査に用いられることができる。米国特許公報US6,165,440に記載されるように、超音波は、腫瘍の血管の穿孔、間質(interstitium)における微小対流(microconvection)及び/又はがん細胞膜の穿孔を得るために用いられる。この原理に次いで、本発明のコーティングされた金属ナノ粒子は、正常な組織への最少量の熱的及び機械的損傷で、高分子治療薬剤をがん細胞への強化された送達を得るために用いられることができる。
【0034】
本発明の粒子は、経管(enteral)又は経静脈(parenteral)に投与するための診断組成物に任意に製薬される。例えば、経静脈の薬剤は、本発明によるコーティングされた金属粒子の無菌水溶液又は懸濁液を有利に含んでいる。適切な薬剤の溶液又は懸濁液を製剤するための様々な技術が従来知られている。このような溶液は薬剤を許容可能にする緩衝剤及び任意には、電解液(例えば塩化ナトリウム)又は酸化防止剤のような添加剤も含むが、これらに限定されない。経静脈の調合物は、直接注入されるか、又は生薬(galenical)(例えばメチルセルロース、ラクトース、マンニトール)及び/又は界面活性剤(例えばレシチン、Tweens.RTM.、Myrj.RTM)において慣例的である1つ以上の補助剤と調合して注入される。
【0035】
従来の賦形剤(excipient)は、前記造影剤と有害に反応しない経静脈、経管又は局所応用に適する薬剤として許容される有機又は無機キャリヤ物質である。適切な薬剤として許容される補助剤は、水、食塩水、アルコール、アラビアゴム(gum arabic)、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク(talc)、珪酸、粘性パラフィン(viscous paraffin)、香料油(perfume oil)、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペンタエリトリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を含むが、これらに限定されない。製剤が安定化され、所望するのであれば、浸透圧、緩衝材、カラーリング、フレーバーリング及び/又は芳香性物質に影響を及ぼす、例えば潤滑油、防腐剤、湿潤剤(wetting agent)、乳化剤、食塩のような補助薬剤、並びに活性化合物と有害に反応しない同様なものと調合される。
【0036】
経管に投与するための処方剤は、従来知られているように広く変化している。一般的に、このような処方剤は水溶液又は懸濁液において診断上効率的な量の金属粒子を含んでいる。シロップ、エリクシル(elixir)等が使用されることができ、ここで甘くした賦形剤が用いられる。あるいはまた、この処方剤は、錠剤、糖衣錠、坐薬又はタルク及び/又は炭水化物キャリャ又はバインダ等を有するカプセルに入れることができ、このキャリヤは好ましくはラクトース及び/又はコーンスターチ及び/又はポテトスターチである。
【0037】
経静脈の応用に対しては、坐薬を含む、懸濁液、乳液又はインプラントと同じく、注入可能な無菌溶液、好ましくは油又は水溶液が特に適している。アンプル(ampoule)は、便利な単位用量である。金属ナノ粒子を含む造影剤は好ましくは、例えば注入可能な溶液として、経静脈の応用に用いられる。
【0038】
本発明の診断組成物は、超音波手順において従来のやり方で用いられる。これら診断組成物は、適当な視覚化を提供するのに十分な量を、温血動物にイメージングすべき器官又は組織に対し局部的又は系統的に投与され、次いでこの動物は医療診断手順を受ける。上記投与量は、イメージングされるべき器官と同様に、用いられる診断技術にも依存して広く変化する。
【0039】
本発明の造影剤は一般的に、1μモルから1モル、好ましくは1リットル当たり0.1から100ミリモルの金属を含み、通常は0.001から100μモル、好ましくは体重のキログラム当たり0.1から10μモルの金属で投与される。これらは人間を含む動物に対し経管又は経静脈に投与可能である。通例、診断測定は投与後約5から30分で始められる。
【0040】
本発明の特定の実施例によれば、本発明の診断組成物は、イメージング、すなわち組織サンプル若しくは器官における組織構造又はターゲットモルを生体外、すなわち動物又は人間身体から完全に又は部分的に分離した組織サンプル又は器官上における視覚化に用いられる。
【0041】
本発明の造影剤の用途は、それらに限定されないが、例えば組織、その組織の一部又は(トレーサーのような)それの構造物を視覚化及び診断するような従来の造影イメージングに対し述べられてきた全ての応用を含んでいる広範囲の応用に考慮される。例えば造影イメージングは、心臓血管システム(例えば壁運動解析、心筋血流、心筋における梗塞又は虚血領域の特定、血塊の特定)又は肝臓(肝機能、肝臓腫瘍の検出)の視覚化に用いられる。考えられる他の造影イメージングの応用は、それらに限定されないが、消化管の視覚化、腫瘍の視覚化、精巣及び卵巣捻転の特定、腎臓及び他の移植臓器の評価、体温の遠隔測定、生理学的な圧力及び造影剤を誘導及び制御する局部的な薬剤の送達を含んでいる。
【0042】
ある態様によれば、本発明の診断組成物は、異なるイメージング方法で組み合わされた使用に用いられる。これにより、それらの特性に依存して、本発明の金属ナノ粒子は、X線分析に使用するのに適当である。これにより本発明の特定の実施例は、組み合わされたイメージング方法で使用するための診断組成物に関する。
【0043】
ここで使用されるように、“有する”とは、明言した特徴、ステップ又は構成要素の存在を明記すると解釈されるが、1つ以上の特徴、ステップ又は構成要素若しくはそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。ここで単数表現しているものが複数あることを除外しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明を記載される特定の実施例に限定するとは意図しない以下の実施例は、ここで参照することにより包含される添付する図面と組み合わせて理解される。
【0045】
例1−パーフルオロカーボン乳液滴に対する金薄膜の反射強調の論理計算
ある層の反射強調は、数理モデルを用いて計算されることができ、ここで
‘r(k)’は非圧縮性材料の振幅反射係数ある、
‘t’は、例えば水のような媒体1、例えば超音波コントラスト層/造影剤のような媒体2、及び例えば基板のような媒体3の間における複素伝達係数である、
‘r’は、例えば水のような媒体1、例えば超音波コントラスト層/造影剤のような媒体2、及び例えば基板(図1参照)のような媒体3の間における複素反射係数である、
‘k’は、前記コントラスト層における超音波の波数である、
‘d’は、前記コントラスト層の厚さである。
【0046】
そして前記強調は、20.log.(|r(k)|/|r|)である。
【0047】
‘r(k)’は、非圧縮性材料の振幅反射係数であり、rは、造影剤のない基体表面の振幅反射係数である。
【0048】
250nmのパーフルオロカーボン乳液滴の層に対し計算されるような強調は、脾臓組織の音響特性(1.6×10g/cms)を持つ材料上にある上記粒子の層を観察した超音波反射強調と相応に一致する。その音響インピーダンスは人間の組織の平均音響インピーダンス(1.58×10g/cms)に非常に近い。
【0049】
図2は、人間の服地上にある250nmの液体パーフルオロカーボン、脂質のカプセル化したナノ粒子乳液層(PFO)に対する50nmの金層の論理的に計算された反射強調を周波数の関数として示す。
【0050】
50nmの金層の反射強調は、250nmの液体パーフルオロカーボン、脂質のカプセル化したナノ粒子乳液層により得られる反射強調よりも高いと分析することができる。
【0051】
例2−周波数を関数とした50nmのプラチナ層、50nmのタングステン層、50nmの金層及び50nmのタンタリウム層の論理的な予測反射強調
図3は、周波数を関数とした50nmのプラチナ層、50nmのタングステン層、50nmの金層及び50nmのタンタル層の論理的な予測反射強調を示す。
【0052】
例3−50nmの金層の反射強調の測定
50nmの金が2μmのポリカーボネート(PC)フォイル上に蒸着されている。22MHzのトランスデューサを装備するTaberna Pro Medicum社のデジタル超音波イメージングシステムは、蒸着した金層を備える及び備えない前記PCフォイルの反射を測定するのに用いられる。2umのPCフォイル及び50nmの蒸着した金を備える2umのPCフォイルのまとめられた反射強度(ピークエリア)が図4に示される。
【0053】
2μmのポリカーボネートフォイルの上にある50nmの蒸着した金は、4dBの反射強調を提供する。
【0054】
例4−銀ナノ粒子層の反射強調の測定
2μmのポリカーボネート(PC)フォイルは、50nmの銀粒子の層で被覆され、これら粒子は30nmのサイズを持つ。22MHzのトランスデューサを装備するTaberna Pro Medicum社のデジタル超音波イメージングシステムは、金層を備える及び備えないPCフォイルの反射を測定するのに用いられる。その結果が図5に示される。
【0055】
50nmの銀ナノ粒子の層は、PCフォイルの反射率を2.5倍に増大させる。これにより、金属ナノ粒子のフィルムは、超音波反射板としてのこれら粒子の有用性を実証するかなりの強調を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】理論モデルに用いられる(非圧縮性層の)反射強調に対するパラメタを説明する。
【図2】標準的な人間の組織と同じ音響特性を持つ材料の上にある250nmの液体パーフルオロカーボン層(PFO)に対する50nmの金層の論理的に計算された反射強調を周波数の関数として表す。
【図3】50nmのプラチナ層、50nmのタングステン層、50nmの金層及び50nmのタンタル層の論理的に計算された反射強調を周波数の関数として表す。
【図4】2μmのPCフォイル、及び50nmの蒸着した金を備える2μmのPCフォイルのまとめられた反射強度(ピークエリア)を表す。
【図5】利得(トランスデューサにより生成するdBでの強度)の関数としてまとめられた反射強度(ピークエリア)を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
35×10g/cmsよりも上の音響インピーダンスを持つ固体の金属ナノ粒子を有する造影剤。
【請求項2】
50×15g/cmsよりも上の音響インピーダンスを持つ請求項1に記載の造影剤。
【請求項3】
前記固体の金属ナノ粒子は1nmから100nmの間に直径を有する請求項1に記載の造影剤。
【請求項4】
前記固体の金属ナノ粒子は1nmから50nmの間に直径を有する請求項1に記載の造影剤。
【請求項5】
前記金属は非磁性である請求項1に記載の造影剤。
【請求項6】
前記金属は、金、銀、プラチナ、パラジウム、タングステン若しくはタンタル、レニウム又はそれらの混合物から成るグループから選択される請求項1に記載の造影剤。
【請求項7】
前記金属は貴金属である請求項1に記載の造影剤。
【請求項8】
1つ以上のコーティングをさらに有する請求項1に記載の造影剤。
【請求項9】
前記コーティングは、天然若しくは合成炭水化物、ポリアミノ酸、又は生理学的に許容される合成ポリマー若しくはそれらの派生物を有する請求項8に記載の造影剤。
【請求項10】
前記1つ以上のコーティングは治療薬剤を有する請求項8に記載の造影剤。
【請求項11】
1つ以上のバイオターゲット特異性分子は、前記金属粒子の表面に結合している請求項1に記載の造影剤。
【請求項12】
前記バイオターゲット特異性分子は、細胞マーカー、病原体、異質及び/又は毒性造影剤から成るグループから選択されるターゲットを認識する請求項11に記載の造影剤。
【請求項13】
前記バイオターゲット特異性分子は、抗体又はその抗体の断片である請求項11に記載の造影剤。
【請求項14】
超音波造影剤の製造における請求項1乃至13の何れか一項に記載の金属ナノ粒子の使用。
【請求項15】
請求項1乃至13の何れか一項に記載の造影剤を動物又は人間の患者に投与すると共に、前記動物又は人間の超音波イメージング検査を行う診断方法。
【請求項16】
分離した組織サンプル又は器官をイメージングする方法において、前記1乃至13の何れか一項に記載の前記造影剤を前記組織サンプル又は器官に投与すると共に、当該サンプル又は器官の超音波イメージング検査を行うことを有する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−517858(P2007−517858A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548524(P2006−548524)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050075
【国際公開番号】WO2005/070473
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】