説明

モータの冷却構造

【課題】本発明は、モータの冷却構造に関し、伝熱体の突出部が腐食環境下に置かれる状況でも、その突出部が腐食し或いは破損するのを防止することにある。
【解決手段】モータコイルの発する熱を受熱し、モータ外に突出した突出部からモータ外部へ放熱する伝熱体を設ける。この伝熱体を熱伝導性の比較的高い材料(例えば銅)により構成する。また、伝熱体の突出部を覆うキャップを設ける。このキャップを耐腐食性の比較的高い材料(例えばアルミニウム)により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの冷却構造に係り、特に、モータコイルの発する熱を受熱し、モータ外に突出した突出部からモータ外部へ放熱する伝熱体を備えるモータの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを冷却する冷却構造が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。この冷却構造は、モータのコイルとモータケースとの間を接続する伝熱体であるヒートパイプを備えている。かかる冷却構造においては、モータコイルで発せられた熱がヒートパイプを介してモータケースに取り付けられた放熱フィンに伝達される。このため、モータで発せられた熱をモータ外部へ放熱することができ、モータを効率よく冷却することが可能となる。
【特許文献1】特開2006−282158号公報
【特許文献2】特開2006−248273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ヒートパイプの材料には熱伝導性の比較的高い銅が用いられることが一般的であるが、銅は耐腐食性や強度,耐久性に劣る性質を有する。このため、ヒートパイプの放熱側がモータ外に突出する冷却構造では、モータが車両のインホイルモータとして用いられて車両の床下やアクスル部などの腐食環境下に置かれると、その突出部が腐食や破損を生じ易くなる可能性がある。
【0004】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、モータ外に突出した突出部を有するヒートパイプの腐食や破損を防ぐことが可能なモータの冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、モータコイルの発する熱を受熱し、モータ外に突出した突出部からモータ外部へ放熱する伝熱体を備えるモータの冷却構造であって、前記伝熱体の前記突出部を覆うキャップを備えるモータの冷却構造により達成される。
【0006】
この態様の発明において、モータコイルの発する熱を受熱しモータ外部へ放熱する伝熱体は、モータ外に突出した放熱のための突出部を有している。そして、この突出部は、キャップにより覆われている。このため、本発明によれば、伝熱体の突出部が腐食し或いは破損するのを防止することが可能となる。
【0007】
尚、上記したモータの冷却構造において、前記伝熱体は、熱伝導性の比較的高い材料により構成され、前記キャップは、耐腐食性の比較的高い材料により構成されることとすればよい。
【0008】
この態様の発明によれば、伝熱体の一部である突出部のみが耐腐食性の比較的高いキャップにより覆われるので、伝熱体の他の部位での受熱性を高く維持することができる。従って、本発明によれば、伝熱体の受熱性を損なうことなく、その腐食や破損を防ぐことができる。
【0009】
この場合、前記伝熱体は、銅により構成され、前記キャップは、アルミニウムにより構成されることとしてもよい。
【0010】
ところで、上記したモータの冷却構造において、前記伝熱体は、ヒートパイプからなることとすればよい。
【0011】
また、上記したモータの冷却構造において、前記ヒートパイプは、内部にモータケース内を循環する冷却液体が流れる伝熱体であることとすればよい。
【0012】
この態様の発明によれば、ヒートパイプ内部にモータケース内を循環する冷却液体が流れるので、ヒートパイプによる熱交換効率を向上させることができる。
【0013】
また、上記したモータの冷却構造において、前記ヒートパイプは、側面にモータコイルが接触する伝熱体であることとすればよい。
【0014】
この態様の発明によれば、モータコイルとヒートパイプとの受熱面積が大きくなるので、受熱効率を向上させることができる。
【0015】
更に、上記したモータの冷却構造において、前記突出部に前記キャップを介して接触する放熱フィンを備えることとすればよい。
【0016】
この態様の発明によれば、ヒートパイプの放熱側の放熱面積が大きくなるので、放熱効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、伝熱体の突出部が腐食し或いは破損するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施例であるモータの冷却構造を備える車両ホイールの断面図を示す。また、図2は、本実施例のモータの冷却構造の要部断面図を示す。本実施例のモータ10は、例えば、車輪を駆動させる駆動力を発生する装置であり、車両ホイール12に内蔵されるインホイルモータである。
【0020】
本実施例において、モータ10は、モータ回転軸の外周に取り付け固定されたロータ14と、ロータ14の外周側に配設されるステータ16と、を備えている。このモータ回転軸は、車両ホイール12の回転軸に減速機を介して接続されている。ロータ14及びステータ16は、モータケース18内に収容されている。モータケース18には、外側(図1における左側)から円盤状のモータケースカバー20がボルト締結されている。モータケース18及びモータケースカバー20は、金属製(例えばアルミニウム製)の部材である。モータ10のモータ回転軸は、モータケース18及びモータケースカバー20に支持軸受を介して回転可能に支持されている。
【0021】
ステータ16は、内部にロータ14を収容可能に円筒状に形成されており、その内壁とロータ14の外壁とが径方向に所定距離離間するように配置されている。ステータ16は、円筒外壁に設けられた突出部においてモータケース18に取り付け固定されている。ステータ16は、ステータコアと、そのステータコアに巻回されるコイル22と、を有している。コイル22は、エナメル被覆線により構成され、或いは、樹脂により樹脂モールドされてステータコアに固定支持されている。このコイル22への通電が制御ユニットにより制御されることにより、ロータとステータ16との間に電磁力が発生してロータが回転駆動される。
【0022】
また、モータ12には、モータ12を冷却する冷却装置30が取り付けられている。冷却装置30は、伝熱体であるヒートパイプ32を備えている。ヒートパイプ32は、パイプ状に形成されており、モータ回転軸に対して平行に延びている。ヒートパイプ32は、モータケース18内においてモータ10のステータ16の外周側に配設されており、コイル22に隣接して配置されている。ヒートパイプ32は、その側面がコイル22に接触している。尚、ヒートパイプ32は、ステータ外周側に複数本設けられることとしてもよい。
【0023】
ヒートパイプ32は、熱伝導性が比較的高い一方、耐腐食性、強度、及び耐久性が比較的劣る材料である例えば銅により構成されている。上記したモータケースカバー20には、所定の大きさの貫通孔20aが形成されている。ヒートパイプ32の先端(図1及び図2において左側)は、モータケースカバー20の貫通孔20aを貫通してモータ10の外に突出している。すなわち、ヒートパイプ32は、その一部がコイル22に接触するようにモータケース20内に収容されるものであるが、貫通孔20aからモータ外に突出する突出部32aを有している。
【0024】
ヒートパイプ32の内部には、モータケース18内を循環する冷却液体(オイル)が流れている。すなわち、リザーバから汲み上げられた冷却液体は、ヒートパイプ32内を含むモータケース18内を循環して再びリザーバに戻されるが、その流通の過程においてモータ10で発生する熱を奪って伝達する役割を有している。
【0025】
ヒートパイプ32の突出部32aの外周側には、筒状のキャップ34が設けられている。キャップ34は、突出部32a全体を覆っており、モータケースカバー20に取り付け固定されている。ヒートパイプ32は、拡管されてキャップ34内に固定されている。すなわち、ヒートパイプ32の突出部32は、キャップ34により二重構造とされている。キャップ34は、ヒートパイプ32の材料(例えば銅)に比べて耐腐食性、強度、及び耐久性が高い材料である例えばアルミニウムにより構成されている。キャップ34は、モータケース18やモータケースカバー20と同様の金属により形成されている。
【0026】
ヒートパイプ32の突出部32aには、放熱フィン36が接触している。放熱フィン36は、軸方向に並んだ複数の板からなるものであり、キャップ34の外周に取り付けられている。すなわち、放熱フィン36は、キャップ34を介して突出部32aに接触している。放熱フィン36は、ヒートパイプ32からの放熱を促進する機能を有している。尚、放熱フィン36は、モータケースカバー20に接触していてもよい。
【0027】
上記した冷却装置30において、ヒートパイプ32は、モータケース18内でモータ10のコイル22の発する熱を受熱し、その熱をモータケース18外の突出部32側に伝達する。そして、突出部32から放熱フィン36へ伝熱して、放熱フィン36から外気へ放熱させる。従って、かかる冷却装置30によれば、モータケース18内でモータ10の発した熱をヒートパイプ32を用いてモータケース18外の放熱フィン36を介して外気へ放出することで熱交換を実施して、モータ10を冷却することが可能となっている。
【0028】
尚、ヒートパイプ32の内部には、循環する冷却液体が流れる。このため、ヒートパイプ32による熱交換が効率的に行われる。従って、本実施例の冷却装置30によれば、ヒートパイプ32による熱交換効率を向上させることができる。
【0029】
また、ヒートパイプ32は、その側面においてコイル22に接触している。このため、ヒートパイプ32のモータ10側からの受熱面積が大きく確保される。従って、本実施例の冷却装置30によれば、ヒートパイプ32による受熱効率を向上させることができる。
【0030】
ところで、冷却装置30において、ヒートパイプ32は、モータ10具体的にはモータケースカバー20から軸方向に突出する突出部32aを有している。かかる突出部32aは、ヒートパイプ32の本体側と同様に、熱伝導性の比較的高いが、耐腐食性、強度、及び耐久性が比較的劣る例えば銅などの材料により構成されている。このため、仮に突出部32aがそのままの状態で外気に晒されていると、その突出部32aが腐食し易くなり、飛び石などにより破損し易くなる。
【0031】
これに対して、本実施例において、ヒートパイプ32の突出部32a全体は、キャップ34により覆われている。キャップ34は、ヒートパイプ32の一部である放熱側の突出部32aのみを覆っている。キャップ34は、ヒートパイプ32の材料に比べて耐腐食性、強度、及び耐久性が高い例えばアルミニウムなどの材料により構成されている。尚、キャップ34は、アルミニウム以外にも、銅よりも耐腐食性、強度、及び耐久性が高い鉄により構成されていてもよい。
【0032】
かかる構造において、ヒートパイプ32の突出部32aは、直接外気に晒されることはなく、耐腐食性、強度、及び耐久性を有するキャップ34により保護される。このため、その突出部32aが腐食するのを防止することができ、その突出部32aが破損するのを防止することができる。
【0033】
また、かかる構造において、キャップ34は、モータ10のコイル22に隣接する受熱側を覆うものではなく、ヒートパイプ32の一部である放熱側の突出部32aのみを覆うものである。この場合、ヒートパイプ32は、キャップ34により覆われた部位ではなく、熱伝導性の比較的高い部位においてモータ10のコイル22の発する熱を直接に或いは冷却液体を介して受熱することができる。このため、キャップ34の存在に起因してヒートパイプ32の受熱性が損なわれることは回避される。
【0034】
従って、本実施例の冷却装置30の構造によれば、ヒートパイプ32の受熱性を損なうことなく、キャップ34によりそのヒートパイプ32が腐食し或いは破損するのを防止することが可能となっている。
【0035】
尚、本実施例において、ヒートパイプ32の放熱側には、キャップ34を介して複数の板状からなる放熱フィン36が接触している。かかる放熱フィン36によれば、ヒートパイプ32の放熱側の放熱面積が大きく確保される。従って、本実施例の冷却装置30によれば、放熱効率を向上させることが可能である。
【0036】
ところで、上記の実施例においては、モータ10のコイル22が特許請求の範囲に記載した「モータコイル」に、ヒートパイプ32が特許請求の範囲に記載した「伝熱体」に、それぞれ相当している。
【0037】
尚、上記の実施例においては、ヒートパイプ32の放熱側である突出部32aを覆うキャップ34と放熱フィン36とをそれぞれ別体で構成したが、一体的に構成することとしてもよい。また同様に、キャップ34とモータケースカバー20とをそれぞれ別体で構成したが、一体的に構成することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例であるモータの冷却構造を備える車両ホイールの断面図である。
【図2】本実施例のモータの冷却構造の要部断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 モータ
14 ステータ
16 モータケース
18 モータケースカバー
20 コイル
30 冷却装置
32 ヒートパイプ
32a 突出部
34 キャップ
36 放熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータコイルの発する熱を受熱し、モータ外に突出した突出部からモータ外部へ放熱する伝熱体を備えるモータの冷却構造であって、
前記伝熱体の前記突出部を覆うキャップを備えることを特徴とするモータの冷却構造。
【請求項2】
前記伝熱体は、熱伝導性の比較的高い材料により構成され、
前記キャップは、耐腐食性の比較的高い材料により構成されることを特徴とする請求項1記載のモータの冷却構造。
【請求項3】
前記伝熱体は、銅により構成され、
前記キャップは、アルミニウムにより構成されることを特徴とする請求項2記載のモータの冷却構造。
【請求項4】
前記伝熱体は、ヒートパイプからなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載のモータの冷却構造。
【請求項5】
前記ヒートパイプは、内部にモータケース内を循環する冷却液体が流れる伝熱体であることを特徴とする請求項4記載のモータの冷却構造。
【請求項6】
前記ヒートパイプは、側面にモータコイルが接触する伝熱体であることを特徴とする請求項4又は5記載のモータの冷却構造。
【請求項7】
前記突出部に前記キャップを介して接触する放熱フィンを備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項記載のモータの冷却構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−278728(P2009−278728A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125896(P2008−125896)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】