説明

モータの冷却装置

【課題】熱量の増大に伴って、減磁するモータ1を熱電素子10によって冷却し、熱によるモータ1の性能低下を抑制すること。
【解決手段】ロータ4とロータ軸2との間に熱電素子10を配置して、熱電素子10の吸熱部8によってロータ4に生じた熱を奪い、また発熱部9に生じた熱は、発熱部9に接触しロータ軸2の内部に貫通して設けられた冷却通路7に熱輸送できるように構成されている。その結果、ロータに生じた熱を積極的に奪うように構成されているので、熱によるモータ性能の低下を抑制もしくは防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はモータに関し、特に温度の上昇によって磁力が低下するモータの冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータはステータとロータとの電磁気作用によってロータにトルクを生じさせるものである。一例としてロータに永久磁石を取り付け、その外周に配置したステータに回転磁界を生じさせるように構成されたモータが知られている。
【0003】
一方、磁力はコイルや永久磁石の温度が高くなると相対的に低下することが知られている。またコイルでのジュール損やロータが磁界を横切ることなどによって熱が発生する。この種の熱による温度の上昇を抑えることが従来おこなわれている。例えば特許文献1にはインホイールモータで発生した熱を利用して熱電素子により発電し、エネルギ損失によって生じた熱を電力として回収することが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−144021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置は、インホイールモータのケーシングの外面に熱電素子を配置し、この熱電素子を挟んでインホイールモータとは反対側に電動ファンを設けることにより、熱電素子の表裏両面の間に温度差を与え、これにより発電をおこなうように構成されている。すなわち特許文献1の装置は、インホイールモータのケーシングから熱を奪って発電するように構成されている。そのため熱電素子でエネルギ回収するためには、インホイールモータ全体の温度がある程度高くなる必要がある。言い換えると、ステータやロータなどの温度がかなり高くならないと、熱電素子の表裏両面の間に充分な温度差が生じない。その結果、ステータやロータなどの磁力が低下したり、車両としての動力性能が低下するなどの可能性があった。
【0006】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、出力トルクに対して熱影響を回避して車両の動力性能を向上させることのできるモータの冷却装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ロータ軸に取り付けられたロータの外周側に該ロータとの間で電磁気作用によりトルクを生じさせるステータが配置されたモータの冷却装置において、前記ロータ軸と前記ロータとの間に、熱電素子が設けられ、該熱電素子は通電されることにより前記ロータ軸側が発熱部となりかつ前記ロータ側が吸熱部となるように構成され、さらに前記ロータ軸から熱を奪う冷却機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ロータ軸もしくは前記ロータには、前記ステータとの相対回転によって起電力を生じる発電用コイルが取り付けられ、該発電用コイルで発生した電力が前記熱電素子に供給されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記ロータは永久磁石を備えるとともに、前記ステータは回転磁界を発生するコイルを備え、前記発電用コイルと前記ロータ軸もしくは前記ロータとの間には、前記ロータ軸もしくは前記ロータから前記発電用コイルにトルクを伝達するとともに前記発電用コイルの回転数を前記ロータの回転数とは異ならせる伝動機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記伝動機構は、互いに差動回転する三つの回転要素を備え、いずれか一つの回転要素が前記ロータ軸もしくは前記ロータに連結され、他の一つの回転要素が前記発電用コイルに連結され、更に他の一つの回転要素が反力要素とされた差動回転機構によって構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記回転要素の回転を選択的に止めるブレーキ機構を更に備えていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記モータの温度が予め定めた閾値以上であることを判断する温度判断手段と、前記モータの温度が前記閾値以上であることが前記判断手段によって判断された場合に前記ブレーキ機構によって前記反力要素の回転を止めるブレーキ制御手段とを更に備えていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記閾値は、前記ロータの磁力が低下する温度として予め定めた温度であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明において、前記冷却機構は、前記ロータ軸を貫通して冷却用熱輸送媒体を流通させる冷却通路を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、ロータに生じた熱を熱電素子の吸熱部によって奪うことができ、ロータの温度の上昇によってロータの磁力が低下することを防止もしくは抑制することができる。また熱電素子で生じた熱をロータ軸から冷却機構によって奪うことができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果と同様の効果に加えて、発電コイルがロータ軸もしくはロータに設けられているので、ロータの回転に伴って起電することができる。また熱電素子に供給する電力を外部から導入する必要がないので、外部電源を必要としない。
【0017】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明による効果と同様の効果に加えて、発電コイルの回転数がロータ軸もしくはロータの回転数と同期しないので、発電コイルとロータ軸もしくはロータとの間に回転数の差が生じて起電することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明による効果と同様の効果に加えて、三つの回転要素の組み合わせに応じた起電力を得ることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明による効果と同様の効果に加えて、例えばロータの冷却が必要のない場合には、ブレーキ機構をフリーとすることによって発電量を抑えることができるので、発電コイルが回転させられることによって生じるモータの引き摺り損失を低減もしくは抑えることができる。
【0020】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明による効果と同様の効果に加えて、反力要素の回転を規制するブレーキ機構は、モータの温度に応じてブレーキの係合もしくは解放を制御されるように構成されているので、その熱量に応じた発電ができる。またその発電した電力によってロータを適宜に冷却することができる。
【0021】
請求項7の発明によれば、請求項6の発明による効果と同様の効果に加えて、ロータの磁力が低下する減磁温度を閾値としているので、減磁温度を超えない制御をおこなうことができ、モータの出力トルクに対する熱影響を回避することができる。
【0022】
請求項8の発明によれば、前記1ないし7のいずれかの発明による効果と同様の効果に加えて、冷却通路を流通する冷却用熱輸送媒体によって熱電素子の発熱部の熱量が奪われるので、ロータもしくはロータ軸に熱が滞ることが抑制もしくは防止される。またロータの磁力を減磁させる熱を移動させることができるので、ロータの冷却性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
つぎにこの発明をより具体的に説明する。図1にこの発明に係るモータ1の冷却装置の一例を模式的に示してある。この発明に係るモータ1の一例は、ロータ軸2に設けられてその内部に永久磁石3が配置されたロータ4と、コイル5に通電することによって磁界を生じさせてロータ4にトルクを付与するステータ6とから構成されたいわゆる永久磁石形同期モータ1である。また図示しないが、この発明に係るモータ1はその温度を検出するモータ温度Tセンサーや要求トルクTrqまたは電流値Aを検出し、演算処理するECUを備え、電気的に制御できるようになっている。
【0024】
ロータ4とロータ軸2との間にこの発明における熱電素子10が配置されている。またこの発明における冷却機構として、ロータ軸2の内部にロータ軸2を貫通して冷却用熱輸送媒体を流通させる冷却通路7が構成されている。ここで熱電素子10は通電されることによって吸熱部8と発熱部9とを生じるように構成されたペルチェ素子10であり、吸熱部8がロータ4側に発熱部9が冷却通路7側になるように配置されている。ペルチェ素子10を通電するための電源11は、例えばバッテリなどを用いてもよい。また冷却用熱輸送媒体は、例えばモータ1を潤滑もしくは冷却するためのオイルでもよい。ここに示す例では冷却用熱輸送媒体にオイルを使用した。このオイルはオイルポンプ12によって冷却通路7を強制的に流通するように構成されている。またオイルは従来一般的に用いられているものであり、温度によって粘度が変化して低温ほど粘度が増大する特性を有している。
【0025】
上記のように構成された冷却装置によれば、以下のようにしてロータ4が冷却される。先ず、前述したペルチェ素子10に対して電源11から電流を流す。その場合、ペルチェ素子10におけるロータ4側の部分が吸熱部8となり、これとは反対のロータ軸2側が発熱部9となるように電流の向きを設定する。モータ1を駆動することによりロータ4で熱が生じると、その熱は上記のように通電しているペルチェ素子10における吸熱部8に伝達され、さらに発熱部9と接触して配置された冷却通路7を流通するオイルに伝熱される。したがってロータ4に発生した熱を積極的に奪うように構成されているので、ロータ4に配置された永久磁石3の減磁を防止もしくは抑制することができる。その結果、熱によるモータ1の性能低下を防止もしくは抑制することができる。
【0026】
また図2にこの発明に係るモータ1の冷却装置の他の例を模式的に示してある。ペルチェ素子10の電源11としてステータ6に発生させた回転磁界を横切るように発電用コイル17が配置されている。また差動作用のある伝動機構を用いてロータ4と発電用コイル17との間に回転数の差ΔNrを生じさせて、ステータ6に発生させた回転磁界と発電コイルとから発電されるように構成されている。その伝動機構は、三つの回転要素からなるシングルピニオン型の差動回転機構13である。図2では、サンギア14は入力要素としてロータ軸2に連結され、リングギア16は反力要素とされ、キャリア15は出力要素として発電用コイル17に連結されている。また発電用コイル17は、コイルが巻かれたかご型回転子17から構成されている。かご型回転子17とステータ6に発生させた回転磁界とから発電された電力は、スリップリング18を介してペルチェ素子10に供給されるように構成されている。付言すると、永久磁石形同期モータ1はステータ6の回転磁界とロータ4とが同期している。そのため差動回転機構13によってロータとかご型回転子17との間に回転数の差ΔNrを生じさせて、ステータ6に発生させた回転磁界をかご型回転子17に横切らせることによって発電できるように構成されている。ここで、かご型回転子17を発電コイルとした構成例を示してあるが、ステータ6に発生させた回転磁界を横切って発電できるコイルを有する回転子であればよい。
【0027】
図3に前述した差動回転機構13の共線図を示してある。ロータ4の回転はステータ6に発生させた回転磁界と同期しているので、ロータ4の回転数Nrotorとステータ6に発生させた回転磁界の回転数Nstatorとは同一と見なすことができる。サンギア14はロータ軸2に連結されており、その回転数Nはロータ4の回転数Nrotorと同一になる。またリングギア16は反力要素とされている。その結果、ロータ4の回転数Nrotorに対してかご型回転子17が連結されたキャリア15の回転数Nを減速することができる。すなわちロータ4の回転数Nrotorとキャリア15の回転数Nとが同期せず、これらの間に回転数の差ΔNが生じるので、ステータ6に発生させた回転磁界をかご型回転子17のコイルが横切ることによって発電することができる。
【0028】
図2に示した構成は、ステータ6に発生させた回転磁界を横切ることによってかご型回転子17のコイルに起電された電力はスリップリング18を介してペルチェ素子10に供給される。その結果、ロータ4に生じた熱はペルチェ素子10の吸熱部8に奪われてロータ4が冷却される。また発熱部9の熱は発熱部9に接触して配置された冷却通路7を流通するオイルに伝熱される。したがってロータ4の熱を積極的に奪うように構成されているので、ロータ4に挿入された永久磁石3の減磁を防止もしくは抑制することができる。また熱によるモータ1の性能低下を防止もしくは抑制することができる。
【0029】
図4にこの発明に係るモータ1の冷却装置のさらに他の例を模式的に示してある。ペルチェ素子10の電源11としてステータ6に発生させた回転磁界を横切るように発電用コイル17が配置されている。また差動作用のある伝動機構を用いてロータ4と発電用コイル17との間に回転数の差ΔNrを生じさせて、ステータ6に発生させた回転磁界と発電コイルとから発電されるように構成されている。発電用コイル17は、コイルが巻かれたかご型回転子17から構成されている。差動回転機構13のサンギア14は入力要素としてロータ軸2に連結され、リングギア16は出力要素としてかご型回転子17に連結され、キャリア15は反力要素とされている。またスリップリング18がステータ6に発生させた回転磁界とかご型回転子17とが発電した電力をペルチェ素子10に供給できるように構成されている。付言すると、永久磁石形同期モータ1はステータ6の回転磁界とロータ4とが同期している。そのため差動回転機構13によってロータ4とかご型回転子17との間に回転数の差ΔNrを生じさせて、ステータ6に発生させた回転磁界をかご型回転子17に横切らせることによって発電できるように構成されている。ここで、かご型回転子17を発電コイルとした構成例を示してあるが、ステータ6に発生させた回転磁界を横切って発電できるコイルを有する回転子であればよい。
【0030】
図5に示した差動回転機構13の共線図を示してある。ロータ4の回転はステータ6に発生させた回転磁界と同期しているので、ロータ4の回転数Nrotorとステータ6に発生させた回転磁界の回転数Nstatorとは同一と見なすことができる。サンギア14はロータ軸2に連結されており、その回転数Nはロータ4の回転数Nrotorと同一になる。またキャリア15は反力要素とされている。その結果、ロータ4の回転数Nrotorに対してかご型回転子17が連結されたリングギア16の回転数Nを減速することができる。すなわちロータ4の回転数Nrotorとリングギア16の回転数Nとが同期せず、これらの間に回転数の差ΔNが生じるので、ステータ6に発生させた回転磁界をかご型回転子17のコイルが横切ることによって発電することができる。
【0031】
図4に示した構成では、ロータ4とかご型回転子17との回転数の差ΔNrは、図2に示した例と比較して大きくなる。すなわち図4のプラネタリはキャリア15を固定することによりサンギア14に入力されたトルクの回転数は減速、反転されてリングギア16から出力される。そのため図2に示した構成例と比較して、ペルチェ素子10に供給できる電力量を増やすことができる。またステータ6に発生させた回転磁界を横切ることによってかご型回転子17のコイルに起電された電力はスリップリング18を介してペルチェ素子10に供給される。その結果、ローラ3に生じた熱はペルチェ素子10の吸熱部8に奪われて冷却される。また発熱部9の熱は発熱部9に接触して配置された冷却通路7を流通するオイルに伝熱される。したがってロータ4の熱を積極的に奪うように構成されているので、ロータ4に挿入された永久磁石3の減磁を防止もしくは抑制することができる。また熱によるモータ1の性能低下を防止もしくは抑制することができる。
【0032】
図2もしくは図4に示した構成は、ロータ4が回転している間は常に差動回転機構13も回転させられモータに引き摺り損失が生じる。またロータ4が回転している間は発電されるので、ペルチェ素子10による冷却が継続されて、オイルの粘性が高くなることによるオイルの撹拌損失の増加を生じる虞がある。
【0033】
図6にかご型回転子17の発電量を調整可能にした例を模式的に示してある。この発明におけるブレーキ機構19によってかご型回転子17の回転を規制して、その発電量を調整できるように構成されている。すなわちリングギア16に、その回転数Nをブレーキ機構19の係合もしくは解放によって制御できるように設けられている。またキャリア15は反力要素とされている。またスリップリング18がステータ6に発生させた回転磁界とかご型回転子17とが発電した電力をペルチェ素子10に供給できるように構成されている。またブレーキ機構19の係合もしくは解放を制御してステータ6に発生させた回転磁界とかご型回転子17とから発電される電力を調整するECU20を備えている。
【0034】
図7に、図6に示した差動回転機構13の共線図を示してある。ロータ4の回転はステータ6に発生させた回転磁界と同期しているので、ロータ4の回転数Nrotorとステータ6に発生させた回転磁界の回転数Nstatorとは同一と見なすことができる。サンギア14はロータ軸2に連結されており、その回転数Nはロータ4の回転数Nrotorと同一になる。そのためロータ4の回転数Nrotorに対してかご型回転子17が連結されたリングギア16の回転数Nを減速することができる。すなわちロータ4の回転数Nrotorとリングギア16の回転数Nとが同期せず、これらの間に回転数の差ΔNが生じるので、ステータ6に発生させた回転磁界をかご型回転子17のコイルが横切ることによって発電することができる。また例えばブレーキ機構19によるキャリア15の回転数Nが制御されない場合は、ロータ4の回転数Nrotorとリングギア16の回転数Nとの回転数の差ΔNが小さくなるので、モータ1の引き摺り損失を低減もしくは抑えることができる。これとは反対にブレーキ機構19によってキャリア15の回転数Nが制御された場合は、ロータ4の回転数Nrotorとリングギア16の回転数Nとの回転数の差ΔNが大きくなるので、その回転数の差ΔNによって起電力を得ることができる。
【0035】
図8にはブレーキ機構19の制御の一例を示してある。先ずモータ1への要求トルク容量値の絶対値が0か否かが判断される(ステップS1)。
【0036】
このステップS1で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなくこのルーチンを一旦終了する。これとは反対にステップS1で肯定的に判断された場合には、モータ1温度が減磁温度を越えているか否かが判断される(ステップS2)。
【0037】
このステップS2で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなくこのルーチンを一旦終了する。これとは反対にステップS2で肯定的に判断された場合には、モータ1の温度が高いことによって減磁が生じてモータ1の性能が低下するので、ブレーキの係合状態を制御してリングギア16の回転数Nを制御する(ステップS3)。
【0038】
例えばモータ1への要求トルクTrqの絶対値が0であり、またはロータ4の温度が減磁温度Tmf以下である場合は、ブレーキ機構19によるキャリア15の回転数Nは規制されない。そのためロータ4の回転数Nrotorとリングギア16の回転数Nとの回転数の差ΔNが小さくなり、モータ1の引き摺り損失を低減もしくは抑えることができる。これとは反対にモータ1への要求トルクTrqの絶対値が0ではなく、かつロータ4の温度が減磁温度Tmfを越えている場合は、ブレーキ機構19によってリングギア16の回転数Nが規制される。そのためロータ4の回転数Nrotorとリングギア16の回転数Nとの回転数の差ΔNが大きくなり、その回転数の差ΔNによって起電力を得ることができる。
【0039】
図6に示した構成は、減磁温度Tmfを越えた場合にロータ4を冷却することができるので、熱によるモータ1の性能低下を防止もしくは抑制することができる。また減磁温度Tmf以下の場合には、回転数の差ΔNを小さくできるので、モータ1の引き摺り損失を低減させることができる。
【0040】
なおこのブレーキ機構19の制御パラメータには、減磁温度Tmfの代わりにモータ1に通電される電流値Aを用いてもよい。すなわちモータ1に通電される電流値Aからモータ1の仕事量およびモータ1に発生される熱量を実験やシミュレーションなどから予め求めることができるので、前述した例と同様の制御をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明に係るモータの冷却装置の構成例を模式的に示す図である。
【図2】この発明に係るモータの冷却装置の他の構成例を模式的に示す図である。
【図3】差動回転機構のキャリアに発電用コイルを連結した場合の共線図である。
【図4】この発明に係るモータの冷却装置のさらに他の構成例を模式的に示す図である。
【図5】差動回転機構のリングギアに発電用コイルを連結した場合の共線図である。
【図6】発電用コイルによる発電量を調整可能にした構成例を模式的に示す図である。
【図7】差動回転機構のリングギアを発電用コイルとした場合の共線図である。
【図8】ブレーキ機構の制御一例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1…モータ、 2…ロータ軸、 4…ロータ、 6…ステータ、 10…ペルチェ素子、 13…差動回転機構、 16…かご型回転子、 18…ブレーキ機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ軸に取り付けられたロータの外周側に該ロータとの間で電磁気作用によりトルクを生じさせるステータが配置されたモータの冷却装置において、
前記ロータ軸と前記ロータとの間に、熱電素子が設けられ、該熱電素子は通電されることにより前記ロータ軸側が発熱部となりかつ前記ロータ側が吸熱部となるように構成され、さらに前記ロータ軸から熱を奪う冷却機構が設けられている
ことを特徴とするモータの冷却装置。
【請求項2】
前記ロータ軸もしくは前記ロータには、前記ステータとの相対回転によって起電力を生じる発電用コイルが取り付けられ、該発電用コイルで発生した電力が前記熱電素子に供給されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のモータの冷却装置。
【請求項3】
前記ロータは永久磁石を備えるとともに、前記ステータは回転磁界を発生するコイルを備え、
前記発電用コイルと前記ロータ軸もしくは前記ロータとの間には、前記ロータ軸もしくは前記ロータから前記発電用コイルにトルクを伝達するとともに前記発電用コイルの回転数を前記ロータの回転数とは異ならせる伝動機構が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のモータの冷却装置。
【請求項4】
前記伝動機構は、互いに差動回転する三つの回転要素を備え、いずれか一つの回転要素が前記ロータ軸もしくは前記ロータに連結され、他の一つの回転要素が前記発電用コイルに連結され、更に他の一つの回転要素が反力要素とされた差動回転機構によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載のモータの冷却装置。
【請求項5】
前記回転要素の回転を選択的に止めるブレーキ機構を更に備えていることを特徴とする請求項4に記載のモータの冷却装置。
【請求項6】
前記モータの温度が予め定めた閾値以上であることを判断する温度判断手段と、
前記モータの温度が前記閾値以上であることが前記判断手段によって判断された場合に前記ブレーキ機構によって前記反力要素の回転を止めるブレーキ制御手段と
を更に備えていることを特徴とする請求項5に記載のモータの冷却装置。
【請求項7】
前記閾値は、前記ロータの磁力が低下する温度として予め定めた温度であることを特徴とする請求項6に記載のモータの冷却装置。
【請求項8】
前記冷却機構は、前記ロータ軸を貫通して冷却用熱輸送媒体を流通させる冷却通路を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のモータの冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−41902(P2010−41902A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205900(P2008−205900)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】