説明

モータグレーダのキャブ

【課題】 モータグレーダにおける前方視界及び作業視界を充分に確保することができ、特に、フロア前端部の下方にある作業機部分を見る領域を増大させることのできるモータグレーダのキャブを提供する。
【解決手段】 一対のAピラー26の上端部間にフロア幅に近い幅を有する上部前面窓30を配設し、フロア22が矩形形状の左右両先端部における角部をカットした形状に構成する。Aピラー26の下端部は、前記カット部の後方側の部位と連結する。各カット部に沿って左右一対の下部前面窓32の下部窓枠をそれぞれ配設する。隣接する各下部前面窓32の側部窓枠を縦桟38として構成し、上部前方窓30の下部窓枠としての横桟38と各下部前面窓32の上部窓枠33aとで囲繞される領域に上部板35を配設する。これにより、キャブ20内からフロア22の前方下方部における前方視界を良好に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータグレーダのキャブに関し、特に、ブレード両端部に対する視界性の向上を図ったモータグレーダのキャブに関するものである。尚、本発明において、前方とは車輌の前方側を示す用語として用い、左右方向とは、車輌の後方側からキャブを見たときの左右方向を示す用語として用いている。
【背景技術】
【0002】
一般にモータグレーダは、路面、地面などを平滑な地面となるように整地する車輪式の土木機械である。地面を整地するブレードは、上下方向への昇降、上下方向での傾斜、車輌の前後方向に対しての傾斜、車輌の左右方向へのスライド、所定の旋回軸周りの旋回等を行うことができるように構成されている。
【0003】
モータグレーダによって、路面や地面を精度良くかつ能率的に仕上げるため、作業者は、作業後における作業状況やこれから作業を行う前方の作業場所の様子を良く見ている。特に、作業後の整地状態が平らに形成されているか否かを確認することによって、ブレードの設定角度等の修正を行ったりしている。
【0004】
このため、作業視界や前方視界が良好となるようにしたモータグレーダが強く求められており、前方視界を確保するため、前面窓を大きく拡げた構成のものが多く用いられている。また、作業後の整地状況等を確認するため、前方視界のうちで下方部の視界を確保できる構成のものが用いられている。
【0005】
この構成のものでは、前面窓をフロアの所まで拡げた構成となっている。特に、前面窓をフロアの所まで拡げた構成のモータグレーダでは、車体屈折時でも作業機に対して正対して見ることができ、作業機周辺にわたり広視界を実現することができる。
【0006】
前面窓をフロアの所まで拡げた構成を備えたモータグレーダとしては、特許文献1に記載されたモータグレーダ等が提案されている。特許文献1に記載されたモータグレーダを本願発明における従来例1として、図5にはその全体的な斜視図を示している。
【0007】
図5に示すように、キャブ50の前面部には、フロントガラス51と一対の右側のぞき窓52aと左側のぞき窓52bとが設けられており、一対ののぞき窓52a、52bはフロントガラス51の下部に配されている。
尚、フロントガラス51と一対ののぞき窓52a、52bとによって、前面窓が構成されている。また、符号58で示す部材は、のぞき窓52a、52bにそれぞれ設けられたワイパーである。
【0008】
ところで、特許文献1に記載されたモータグレーダでは、キャブ50内からのぞき窓52a、52bを透して見たフロア下部の前方視界について、これを説明する斜視図が記載されていない。このため、特許文献1に記載されたモータグレーダと同様の構成を有する別のモータグレーダにおけるキャブ50の要部斜視図を示す図6、及び同キャブ50内から見たフロア54下部の前方斜視図を示す図7を用いて、説明を続けていくことにする。
【0009】
また、図6及び図7において、図5と同様の構成については、図5において用いた部材符号と同じ部材符号を用いることでその説明を省略する。
尚、図6では、キャブ後部に配設されるエンジンルーム等の構成は、省略して示している。図7では、操縦レバー等の構成を省略するとともに、ブレード53を前後方向に傾けた状態、即ち、図7において、左上方から右下方に向けて傾けた状態を示している。
【0010】
図6、図7において、フロントガラス51及び一対ののぞき窓52a、52bには、平板状の窓ガラスが用いられている。特許文献1に記載されたモータグレーダでは、フロントガラス51及び一対ののぞき窓52a、52bに平板状の窓ガラスガそれぞれ用いられている旨の説明は行われていない。
【0011】
しかし、特に、特許文献1における図4及び図5(ともに不図示)には、本明細書の図7で示したフロントガラス51及びのぞき窓52a、52bのウィンドガラスに相当するものがそれぞれ平板状のものとして記載されている。このことから、特許文献1のフロントガラス51及びのぞき窓52a、52bにも、図6及び図7で示すものと同様に、平板状の窓ガラスが用いられており、図5におけるフロントガラス51及びのぞき窓52a、52bは略同一面上に配されていることが分かる。
【0012】
図7に示すように、運転席からのぞき窓52a、52bを透して前方の下方部を見ると、ブレード53の後方部における視界を多少確保することができ、ブレード53で整地された状態をある程度確認することができる。しかし、ブレード53の左右方向における視界やブレード53後方における視界は、フロア54の先端縁部54Aや一般にAピラーと呼ばれている前支柱55(以下、Aピラーと呼ぶ。)によって遮られて見え難いという欠点を有している。
即ち、図7で示すブレード53の状態では、右側のぞき窓52aを透して地面側を見た下方部の視界は、フロア54の先端縁部54Aによってブレード53の後方部が非常に見え難い状況となっている。このため、ブレード53の右側の部位によって整地された状態を確認することは、作業者が運転席に座ったままの状態からでは非常に難しくなっている。
【0013】
このため、作業者は、その都度体を左右に体を傾けたり、立ち上がったりして、のぞき窓52a、52bの窓枠やAピラー55を避けながら前方を見て、ブレード53で整地された状態を確認することが求められる。
【0014】
尚、一般に図6においてキャブ50の側部における3本の支柱について、前方側のものをAピラー55、中間部のものをBピラー56、後方部のものをCピラー57と呼んでいる。また、Aピラー55は、のぞき窓52a、52bにおける側部窓枠としても兼用されている。
【0015】
ところで、のぞき窓が形成されていないブルドーザの運転室に関するものではあるが、Aピラーによる遮蔽の影響を少なくしたブルドーザの運転室が特許文献2において提案されている。特許文献2に記載されたブルドーザの運転室を本願発明における従来例2として、図8にはその全体的な斜視図を示している。
【0016】
図8に示すように、フロアの前方側両端部をそれぞれ前方側にかけて斜めにカットした六角錐台形状に運転室60が構成されている。運転室60の最前面側における左右のAピラー61は、上部61aから中間部61bにかけて前傾した形状に形成され、中間部61bから底部61cにかけては順次拡大した間隔で、かつ後傾した形状に構成されている。
【0017】
即ち、左右のAピラー61は、上部61aから底部61cに向かって運転室60の左側の側面から見て「くの字」状、右側の側面から見て「逆くの字」状に構成されている。つまり、Aピラー61は上部61aから中間部61bにかけて、中間部61bが上部61aよりも前に出るように傾斜して設けられている。
【0018】
また、Aピラー61の中間部61bから底部61cにかけては、順次間隔を拡大してドア62の下部に近接する位置で最大となるように構成されており、かつ底部61cは中間部61bよりも後方に位置するように傾斜して設けられている。Aピラー61の上部61aと中間部61bとの間には、前方窓64が配設されている。
【0019】
ドア62の下端縁は、運転室60のフロアにおける斜めにカットしたカット部と平行に配設された構成となっている。これにより、ドア62も上部から下部にかけて錐面なるように傾斜した状態に取付けられている。
【0020】
このドア62の構成によって、ドア62のところに前方視界域63を確保することができる。これにより、作業者は運転席に腰かけた位置において、運転姿勢を変えることなく、ドア62に形成した前方視界域63を透して前方作業機の両端側を見ることができる。
【特許文献1】米国特許第4007958号明細書
【特許文献2】特開平5−106240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献1に示したようなのぞき窓52a、52bを有するモータグレーダでは、のぞき窓52a、52bの下部窓枠がキャブ50のフロア54における前端縁部に沿って設けられている。しかしながら、図7で示すように、フロア54の前端縁部54Aは、キャブ50の前方方向に対して直角に形成されている。このため、どうしても、作業者の足元側における作業視界は、フロア54によって遮られてしまうことになる。従って、作業者が立ち上がったとしても、フロア54直下側にあるブレード53の作業領域を広く視認することはできなかった。
【0022】
特許文献2に示したような運転室では、ドア62のところに前方視界域63を確保することができる。しかしながら、ドア62はキャブ60の前方側に対して斜めに配された構成となるため、一対のAピラー61間の間隔が狭まった状態として構成されることになり、しかも、一対のAピラー61は天井まで伸びた構成となっている。このため、前方窓64は縦長の構成となり、左右方向の横幅を広く構成することができなくなり、幅広な前方視界を確保することが難しかった。
【0023】
また、前方窓64の下方部には、特許文献1に示したようなのぞき窓が形成されていない。このため、運転室60のフロア前端縁部の下方における様子を視認することができなかった。仮に、特許文献2において前方窓64の下方部にのぞき窓を形成したとしても、運転室60のフロアの前端縁部は図7で示したのと同様に、運転室60の前方方向に対して直角に形成されている。従って、作業者の足元側における作業視界は、運転室60のフロアによって遮られてしまうことになる。
【0024】
また、Aピラー61のところには、ドア62を閉めたときにドア62をロックするためのロック機構等を配設しておかなければならない。このため、Aピラー61の幅やドア62のドア枠におけるAピラー側の幅を大きく形成しておかなければならず、Aピラー61やドア62のドア枠によって遮られる視界領域を狭めることが難しかった。
【0025】
本願発明では、モータグレーダにおける前方視界及び作業視界を充分に確保することができ、特に、フロア前端部の下方にある作業機部分を見る領域を増大させることのできるモータグレーダのキャブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明の課題は請求項1〜6に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願第1発明では、キャブ前面部の上部には上部前面窓及び下部には左右一対の下部前面窓がそれぞれ配され、前記上部前面窓と前記各下部前面窓とが、それぞれ平板状の窓ガラスを備えてなるモータグレーダのキャブにおいて、前記上部前面窓は、車体前後軸を含む鉛直面に対して直交して配設され、前記各下部前面窓が、それぞれの窓ガラス面を拡げたときに互いの面が前方側で交差する状態に配設され、
前記キャブのフロアにおける前方側の左右両端部が、それぞれ前方側にかけて斜めにカットされた形状に形成されてなり、前記各下部前面窓の下部窓枠が、前記斜めにカットされた左右両端部に沿ってそれぞれ配設されてなり、前記上部前面窓の左右側部窓枠における各下端部と、前記各下部前面窓の側部窓枠のうちでそれぞれ後方側の側部窓枠の上端部とが、連続して構成されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0027】
本願第2発明では、上部前面窓と左右一対の下部前面窓との配置関係を特定したことを主要な特徴となしている。
本願第3発明では、下部前面窓の上部窓枠と上部前面窓の下部窓枠とで囲繞される空間部を覆う上面板の構成を特定したことを主要な特徴となしている。
【0028】
本願第4発明では、上部前面窓の配置構成を特定したことを主要な特徴となしている。
本願第5発明では、上部前面窓と左右一対の下部前面窓との他の配置関係を特定したことを主要な特徴となしている。
本願第6発明では、本願第5発明における上部前面窓の配置構成を特定したことを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0029】
本願発明では、平板状の窓ガラスを用いて上部前面窓と同上部前面窓の下方に設けた左右一対の下部前面窓とを構成することができ、しかも、フロア幅と略同じ幅を有する上部前面窓で幅広の前方視界を確保することができる。また、左右一対の下部前面窓についても、フロア前端部の下方に作業機を操作して動かしてきたとしても、各下部前面窓を透しての充分な視界を確保できる大きさの窓として構成することができる。しかも、下部前面窓の大きさとしては、ワイパーを取り付けて作動できる大きさにすることができる。
【0030】
更に、下部前面窓の下部窓枠は、先端側の両端部を斜めにカットしたフロア上で、しかもカットした両端部に沿って配設することができる。これにより、フロア前端部の下方にある作業機部分に対する視界性を向上させたフロア形状を有効に利用することができ、フロア前端部の下方にある作業機部分に対する視認領域を大幅に拡大することができる。
従って、作業者が体を左右に傾けたり、立ち上がったりしなくても、フロア前端部の下方にある作業機部分に対する視認領域を大幅に拡大することができる。
【0031】
更にまた、特許文献2に記載されたように、ドアをキャブの前方側に対して斜めに取り付ける構成にする必要がないので、フロア幅と略同じ幅を有する上部前面窓を構成することができるとともに、キャブ内の居住空間を拡げることができ、キャブ内での居住性を高めることができる。
【0032】
また、上部前面窓の左右側部窓枠と、左右一対の下部前面窓における後方側の側部窓枠とをそれぞれ連続して一体的に構成することができるので、連続して一体的に構成した側部窓枠をAピラーとして構成しておくことができる。しかも、少なくともAピラーの中間部から下端部側、即ち、下部前面窓における側部窓枠に該当する部分を、フロア側に対して上方側を前傾させた構成とすることができるので、フロア前端部の下方にある作業機部分に対する視認領域を拡大することができる。
【0033】
また、本願第2発明、第3発明の構成を採用することによって、左右一対の下部前面窓を出窓形式に構成することができる。しかも、第3発明の構成を採用することによって、作業者の前方視界を妨げないように、下部前面窓の各上部窓枠と上部前面窓の下部窓枠とで囲繞される空間部を覆う上面板の上部を、上部前面窓の下部窓枠から前下がり状態に構成しておくことができる。上面板を前下がり状態に傾斜させる角度としては、例えば、上部前面窓の下部窓枠によって作業者の前方視界が遮られる領域内に前記上面板が収まるような角度として設定しておくことができる。
【0034】
第4発明の構成を採用することによって、上部前面窓を透した前方視界が太陽光による影響によって阻害されてしまうのが防止でき、しかも、キャブの前方側の天井部における空間領域を広げることができる。
【0035】
更に、本願第5発明、第6発明の構成を採用することによって、左右一対の下部前面窓による出窓のような一部分が出っ張った構成を無くすことができ、上部前面窓と左右一対の下部前面窓との間をそれぞれの窓枠からなる稜線部で連結した構成とすることができる。また、第6発明の構成を採用することによって、上部前面窓を透した前方視界が太陽光による影響によって阻害されてしまうのが防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明のモータグレーダの構成としては、以下で説明する形状、配置構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0037】
図1は、モータグレーダを側方から見た車体前部における作業機1の外観図である。即ち、フロントフレーム2の前方側における外観図を示している。車体後部における運転部17の外観図は図2に示している。また、キャブ20内からフロア22と下部前面窓32を透して見えるブレード5の様子とを示す前方斜視図を図3に示している。
【0038】
モータグレーダの車体の前部には、図1に示すように前輪4や土を切削したりする作業を行うブレード5等が設けられ、車体の後部には、図2に示すように後輪18やキャブ20等が設けられた構成となっている。車体の前部は、フロントフレーム2によって車体の後部に連結されている。フロントフレーム2は、車体の後部に対して水平方向に相対的な回動を可能として車体後部に連結されている。
【0039】
本願発明では、後述するようにキャブ20の前面部における上部前面窓及び左右一対の下部前面窓の配置構成を特徴としている。このため、図2においては後輪18とキャブ20との概略図を示しており、バックミラー、エンジンルーム等の構成については省略している。また、図3では、操縦レバー等の構成を省略するとともに、ブレード5の左側を前方に右側を後方に傾けた状態で示している。
【0040】
尚、キャブの前面部における配置構成を除く他の構成については、本願発明では、以下で説明する構成に限定されることなく、モータグレーダとして使用されている他の構成を採用することができるものである。
【0041】
図1に示すように、後端部が図示せぬ車輌後部に対して水平方向に回動自在に連結されたフロントフレーム2は、前端部においてフロントアクスル装置19を介して一対の前輪4を支持している。また、フロントフレーム2は、支持手段15を介してドローバ3の先端を連結している。ドローバ3は支持手段15を介して、上下方向、左右方向及び支持手段を中心とした揺動を行うことができるように配設されている。
【0042】
支持手段15は、少なくとも2軸以上の回動を許容する回動機構によって構成されている。回動機構としては、例えば、ボールジョイント機構、トラニオン機構あるいはユニバーサルジョイント機構を用いることができる。
【0043】
ドローバ3とフロントフレーム2との間には、一対のリフトシリンダ11a,11bとリフタブラケット7が配設されている。各リフトシリンダ11a,11bの一端はそれぞれ支持手段を介してドローバ3に連結され、それぞれの他端は、それぞれ支持手段を介してフロントフレーム2に支持されたリフタブラケット7に連結されている。
【0044】
図1では、リフタブラケット7にそれぞれ連結される各リフトシリンダ11a,11bの部位として、各リフトシリンダ11a,11bの端部においてリフタブラケット7に連結した構成を示しているが、各リフトシリンダ11a,11bの端部をリフタブラケット7よりも上方に突出するように配設することもできる。
【0045】
各リフトシリンダ11a,11bをドローバ3及びリフタブラケット7に連結する各支持手段は、支持手段15と同様に少なくとも2軸以上の回動を許容する回動機構によって構成されている。
また、リフタブラケット7は、フロントフレーム2に対して図示せぬ油圧モータ等により回動可能に配設されている。リフタブラケット7が回動するときの回転軸は、フロントフレーム2とドローバ3との連結点である支持手段15における回動点を略通る直線となるように配設されている。
【0046】
ドローバ3とリフタブラケット7との間には、ドローバシフトシリンダ12が配設されている。リフタブラケット7は、ドローバシフトシリンダ12の一端を連結するドローバシフトブラケット8としての機能も備えている。ドローバシフトシリンダ12の一端とリフタブラケット7とは、支持手段を介して連結されている。
【0047】
また、ドローバシフトシリンダ12の他端とドローバ3とは、支持手段を介して連結されている。これらの支持手段も、支持手段15と同様に少なくとも2軸以上の回動を許容する回動機構によって構成されている。
【0048】
ドローバ3には、旋回サークル9が旋回可能に配設されている。旋回サークル9は、ドローバ3に取り付けられたサークル回転機16によって、旋回駆動される。旋回サークル9には、ブレード5が横方向にスライド自在に支持されている。ブレード5にはスライドレール5aが設けられ、同スライドレール5aは旋回サークル9に取り付けたブレードサポート9aによってスライド可能に支持されている。
【0049】
ブレードサポート9aとブレード5との間には、サイドシフトシリンダ13が配設されている。サイドシフトシリンダ13の伸縮作動により、ブレード5はブレードサポート9aに支持され、横方向にスライドすることができる。更に、ブレード5と旋回サークル9との間には、チルトシリンダ14が設けられており、ブレード5のチルト角を制御することができる。
【0050】
図2、図3を用いて、本願発明における特徴部の構成であるキャブ20の前面部の構成、キャブ20の前面部に設けられた上部前面窓及び左右一対の下部前面窓の配置構成について説明する。
【0051】
フロントフレーム2の後部に搭載されたキャブ20は、フロア22と、フロア22に対して立設固定した左右一対のAピラー26、Bピラー27及びCピラー28と、Aピラー26乃至Cピラー28上に載置固定された矩形形状の屋根21とから構成されている。フロア22は、矩形形状の前方側における左右両端部を斜めにカットした形状に構成されている。キャブ20内には、運転席23、ハンドル36、図示せぬ操作レバー、操縦機器、計器類、クーラ等が配設されている。
【0052】
Aピラー26とBピラー27との間には、この間を開閉するドア24が設けられており、ドア24の外枠を構成するドアフレーム25の一部が、Bピラー27に対して不図示の蝶番等のヒンジ結合を介して開閉自在に取り付けられている。ドア24は、キャブ20の両側面に設けておくことも、片面側に設けておくこともできる。図2では、キャブ20の左側に配設したドア24は、実線状態が開放された状態を示し、点線状態が閉じられた状態を示している。
【0053】
ドア24には、上部と下部とに大きなドア窓24a、24bが構成されており、Bピラー27とCピラー28との間に配設した窓37とともに、キャブ20内からの側方向への視界を広く確保することができ、側方向の視界を良好に保っている。
【0054】
一対のCピラー28間には大型の後部窓29が配設されており、キャブ20内からの後方視界を良好に保っている。キャブ20の前方部には、左右方向の間隔を屋根21の前端部の間隔と略同じにした1対のAピラー26が平行に設けられている。また、Aピラー26の底部26cから上部26aにかけて前傾した形状に、Aピラー26は構成されている。
【0055】
図2では、Aピラー26における前傾した角度として、中間部26bに対して上部26aを前傾させた角度と、底部26cに対して中間部26bを前傾させた角度とを異ならせた例を示しているが、底部26cに対して上部26aまでを同じ角度だけ前傾させた構成にしておくこともできる。
【0056】
また、中間部26bに対して上部26aを前傾させた角度と、底部26cに対して中間部26bを前傾させた角度とのうちで、どちら側の前傾させた角度を大きくするかは、キャブ20の設計上適宜なし得ることである。図2では、中間部26bに対して上部26aを前傾させた角度よりも底部26cに対して中間部26bを前傾させた角度の方を大きくした例を示している。
即ち、Aピラー26をキャブ20の左側方側から見ると「くの字」状に構成されており、右側方側から見ると「逆くの字」状に構成されている。
【0057】
キャブ20の前面に配された一対のAピラー26間には、上部前面窓30と左右一対の下部前面窓32とが配設されている。Aピラー26は、上部前面窓30の両側部窓枠31b、31c及び上部前面窓30の下方に配設した左右一対の下部前面窓32におけるそれぞれのドア24側での側部窓枠33cを兼ねた構成となっている。
【0058】
即ち、上部前面窓30は、車体前後軸を含む鉛直面に対して直交して配設され、各下部前面窓32は、それぞれのガラス面を拡げたときに広げた面同士が交差する配設構成となっており、上部前面窓30の左右側部窓枠31b、31cの各下端部と、下部前面窓32の側部窓枠のうちでそれぞれドア24側の側部窓枠33cの上端部とが連続した構成となっている。
【0059】
また、上部前面窓30の上部窓枠31aは、屋根21の前端縁として構成されており、上部前面窓30の下部窓枠31dは、一対のAピラー26の中間部を連結する横桟39として構成されている。
下部前面窓32の前方側の側部窓枠33bは、共通の縦桟38として構成されており、下部前面窓32の下部窓枠33dは、先端部側を斜めにカットしたフロア22の前記カット部に沿って設けられている。
【0060】
尚、上部前面窓30の各窓枠31a〜31dをそれぞれ、屋根21の前端縁、一対のAピラー26及び一対のAピラー26の中間部を連結する横桟39として構成する代わりに、屋根31の前端縁、一対のAピラー26及び横桟39にそれぞれ取り付けた構成とすることもできる。
【0061】
また、各下部前面窓32の前方側の側部窓枠33b及び後方側の側部窓枠33cをそれぞれ、縦桟38及びAピラー26として構成する代わりに、縦桟38及びAピラー26にそれぞれ取り付けられた構成とすることもできる。各下部前面窓32の上部窓枠33a、縦桟38の上端部及び横桟39によって囲繞される空間部は、上面板35によって覆われている。各下部前面窓32の上部窓枠33aを、上面板35の一部として構成することも、上面板35の縁部に取り付けられた構成とすることもできる。
【0062】
図示例では、一対の下部前面窓32を車体前後軸を含む鉛直面に対して左右対称に配設した構成例を示しているが、左右の下部前面窓32の大きさを異ならせて配設することも、左右の下部前面窓32における水平方向、垂直方向、あるいは左右方向における傾き角度をそれぞれ異ならせて配設しておくこともできる。例えば、フロア22の先端部側の両端部を斜めにカットするとき、左右におけるカット形状を異ならせて構成しておくことで、左右の下部前面窓32の大きさや左右方向における傾き角度を異ならせて構成することができる。
【0063】
上面板35は、横桟39側から縦桟38の上端部にかけて上部が、前下がりとなった状態に構成されている。この構成によって、上部前面窓30の下部窓枠31dによって作業者の前方視界が遮られる領域内に前記上面板が収まるように配設しておくことができる。これにより、上面板35によって、前方視界が阻害されるのを防止しておくことができる。
【0064】
上部前面窓30の窓ガラス30aにおける平板状のガラス面と、各下部前面窓32の窓ガラス32aにおける平板状のガラス面とは、それぞれの面を拡げたときに、それぞれの面の交線が、下方から上方に向かって広がった形状となることができる。これにより、上部前面窓30は、下部前面窓32の配置に左右されずに横幅も広くした矩形形状として構成することができ、上部前面窓30を透して前方視界を広く確保することができる。また、上部前面窓30に嵌める窓ガラス30aとして平板状のガラスを使用することができる。
【0065】
また、上部前面窓30は下部に対して上部を前傾させた状態に配設することができ、太陽光等の光による影響によって、上部前面窓30を透して見る前方視界が阻害されてしまうのを防止することができる。また、上部前面窓30の上部が前傾しているので、キャブの前方側の天井部における空間領域を広げることができる。
【0066】
下部前面窓32は、先端部側を斜めにカットしたフロア22部に設けることができ、しかも、出窓形式にキャブ20の前面部に配することができるので、下部前面窓32に嵌める窓ガラス32aとして平板状のガラスを使用することができる。これによって、図2に示すように横幅の広い窓ガラス32aを使用することができる。また、図示せぬワイパーを作動させてガラス面を拭くのに充分な面積を、下部前面窓32に持たせておくことができる。
【0067】
このように、図3で示すように、先端部側の両端部をそれぞれ斜めにカットしたフロア22のカット部によってフロア22下部の前方視界を広く構成することができ、フロア22下部の前方視界及び斜め前方の視界を充分に確保することができる。しかも、Aピラー26の底部26cに対して中間部26bが前傾しているので、Aピラー26の中間部26bから底部26cの部位によって、フロア22下部の前方視界及び斜め前方の視界を遮る不具合が解消される。
【0068】
これらのことは、図3に示す状態と、従来例としてフロア22下部の前方視界を示した図7と比べてみると、その差が顕著であることが分かる。
特に、ブレード5で作業が終わったブレード5後部の整地された様子を、運転席23に座ったままの状態を確認する場合についてみても、右側の下部前面窓側から見た様子を示す図7の場合よりも格段に広い範囲の地面を見ることができる。これにより、作業の操縦性が大幅に向上し、作業者が安全に、しかも、疲れなく作業機を操縦することができる。
【実施例2】
【0069】
図4は、本願発明に係わる他の実施例を示している。実施例1では、下部前面窓32を出窓形式に構成してキャブ20の前面部に配した構成であるのに対し、実施例2では、上部前面窓の下部窓枠と下部前面窓32の上部窓枠とをそれぞれの窓枠縁に沿って連結した構成としている。この点での構成において、実施例2は実施例1とは異なった構成となっている。
【0070】
他の構成は、実施例1と同様の構成となっている。このため実施例1と同様の構成については、実施例1において用いた部材符号と同じ部材符号を用いることでその説明を省略する。
【0071】
上部前面窓40は、上部側を後傾させた状態に設けておくことによって、下部前面窓42としては実施例1と同様の配置構成としておくことができる。ただ、下部前面窓42の窓枠形状としては、実施例1では矩形形状や台形形状として構成することができるが、実施例2では前方側の側部窓枠43bの長さが後方側の側部窓枠43cの長さよりも短い構成となる。
【0072】
また、上部前面窓40の下部窓枠41dの形状としては、左右側部窓枠41b、41cの各下端部から更に下方に向かって先窄み形状に形成された構成となっている。そして、先窄み形状の両側縁と下部前面窓42の上部窓枠43aとが、互いに窓枠に沿って連結された構成となっている。左右側部窓枠41b、41cの各下端部の位置としては、前方視界が確保できる位置であればよく、実施例1における上部前面窓30の左右側部窓枠31b、31cの各下端部と同じ高さ位置としておくこともできる。
【0073】
この実施例2における構成によって実施例1の場合と同様に、運転席からの前方視界、フロア22下方の作業視界を良好に確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明は、本願発明の技術思想を適用することができる装置等に対しては、本願発明の技術思想を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】モータグレーダの作業機部を示す斜視図である。(実施例1)
【図2】モータグレーダの運転部を示す斜視図である。(実施例1)
【図3】キャブ内からフロアと下部前面窓を透して見えるブレードの様子とを示した斜視図である。(実施例1)
【図4】運転部を示す斜視図である。(実施例2)
【図5】モータグレーダの作業機部を示す斜視図である。(従来例1)
【図6】モータグレーダの運転部を示す斜視図である。(参考図)
【図7】図6のキャブ内から前方下方部を見た斜視図である。(参考図)
【図8】ブルドーザの運転部を示す斜視図である。(従来例2)
【符号の説明】
【0076】
1・・・作業機、 2・・・フロントフレーム、 5・・・ブレード、17・・・運転部、 20・・・キャブ、 22・・・フロア、 24・・・ドア、 26・・・Aピラー、 27・・・Bピラー、 28・・・Cピラー、 30・・・上部前面窓、 32・・・下部前面窓、 35・・・上面板、 38・・・縦桟、 39・・・横桟、 40・・・上部前面窓、 42・・・下部前面窓、 50・・・キャブ、 51・・・フロントガラス、 52a、52b・・・のぞき窓、 54・・・フロア、 55・・・Aピラー、 56・・・Bピラー、 57・・・Cピラー、 60・・・運転室、 61・・・Aピラー、 62・・・ドア、 63・・・前方視界域、 64・・・前方窓。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブ前面部の上部には上部前面窓及び下部には左右一対の下部前面窓がそれぞれ配され、
前記上部前面窓と前記各下部前面窓とが、それぞれ平板状の窓ガラスを備えてなるモータグレーダのキャブにおいて、
前記上部前面窓が、車体前後軸を含む鉛直面に対して直交して配設され、
前記各下部前面窓が、それぞれの窓ガラス面を拡げたときに互いの面が前方側で交差する状態に配設され、
前記キャブのフロアにおける前方側の左右両端部が、それぞれ前方側にかけて斜めにカットされた形状に形成されてなり、
前記各下部前面窓の下部窓枠が、前記斜めにカットされた左右両端部に沿ってそれぞれ配設されてなり、
前記上部前面窓の左右側部窓枠における各下端部と、前記各下部前面窓の側部窓枠のうちでそれぞれ後方側の側部窓枠の上端部とが、連続して構成されてなることを特徴とするモータグレーダのキャブ。
【請求項2】
前記各下部前面窓の隣接部における側部窓枠の上端部が、前記上部前面窓の左右側部窓枠における各下端部よりも前方側に配されてなることを特徴とする請求項1記載のモータグレーダのキャブ。
【請求項3】
前記各下部前面窓の上部窓枠と、前記上部前面窓の下部窓枠とで囲繞される空間部を覆う上面板が、前方側に向かって傾斜した下り傾斜面として形成されてなることを特徴とする請求項2記載のモータグレーダのキャブ。
【請求項4】
前記上部前面窓が、その下部に対してその上部が前傾して設けられてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のモータグレーダのキャブ。
【請求項5】
前記上部前面窓の下部窓枠が、前記上部前面窓における左右側部窓枠の各下端部から更に下方に向かって先窄み形状に形成されてなり、
前記各下部前面窓の上部窓枠と、前記下部窓枠の前記先窄み形状における左右の窓枠とが、それぞれの窓枠縁に沿って連結されてなることを特徴とする請求項1記載のモータグレーダのキャブ。
【請求項6】
前記上部前面窓が、その下部に対してその上部が後傾して設けられてなることを特徴とする請求項5記載のモータグレーダのキャブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−106522(P2008−106522A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290729(P2006−290729)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】