説明

モータドライブ回路

【課題】電源電圧よりも大きな逆起電力の発生によって生じる誘導ブレーキ電流を抑制することができるモータドライブ回路を提供する。
【解決手段】 一方向通電形DCブラシレスモータの固定子に設けられた電磁石のコイル61への電流供給するモータドライブ回路1において、コイル61に電流を供給する直流電源12と、コイルの両端子にそれぞれ直列に接続され、当該コイル61と直流電源12との接続の開閉を同時に行うスイッチング素子SW1,SW2と、コイル61に一方向のみ直流電流が流れるようにスイッチング素子に対して並列にそれぞれ接続される第1ダイオードD1及び第2ダイオードD2と、静電容量が10以上200μF以下であり、スイッチング素子に並列に接続されるコンデンサ13と、該コンデンサ13に回生電流が流れるように直流電源12のプラス端子側に接続される逆流阻止用ダイオードD3とを備えるモータドライブ回路1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向通電形のDCブラシレスモータに用いられるモータドライブ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、DCブラシレスモータについては、双方向通電形のものが主流になっている。この双方向通電形のDCブラシレスモータの場合、高速回転時に逆起電力が大きくなるため、q軸電機子電流(トルク電流)が減少してしまう。この問題を解決するためにd軸電機子電流を流す方法が採用されている。しかしながら、d軸電機子電流は、銅損や鉄損の増加をもたらすので、モータの効率は一般的には低下する。
【0003】
また、DCブラシレスモータには、一方向通電形のものがある。この一方向通電形のDCブラシレスモータとしては、例えば、本発明者らが発明した高速回転に適し、より高い電磁トルクを得るために、磁力により生ずる回転トルクと回転子の回転角度との関係において、電磁石に直流一定電流を連続通電した場合に回転子を負の方向に回転させる大値狭角度トルクを発生させる回転角度領域で前記電磁石への電流を遮断し、回転子を正の方向に回転させる小値広角度トルクを発生させる回転角度領域で電磁石に電流を流すことにより、回転子に磁力による回転力を付与するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3897043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の一方向通電形DCブラシレスモータでは、電流の非通電期間(負のトルクが発生するため、コイルに電流を流さない期間)において、永久磁石がコイルに接近しているので、絶対値に関して電源電圧よりも大きな負の逆起電力が生じることにより、ブレーキの作用をする誘導電流(以下、誘導ブレーキ電流とする)が生じる。特に、高速回転時には、誘導起電力が大きくなるため、電流の非通電期間にコイルに誘導ブレーキ電流が流れ、この影響を受けてモータは減速する。また、この誘導ブレーキ電流により、銅損や鉄損が増加するので、モータの効率が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、電源電圧よりも大きな逆起電力の発生によって生じる誘導ブレーキ電流を抑制することができる安価で簡単なモータドライブ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載のモータドライブ回路は、一方向通電形のDCブラシレスモータの固定子に設けられた複数の電磁石のコイルへの電流の供給を制御して、回転子に設けられた永久磁石に磁力を作用させることにより前記回転子を回転させるモータドライブ回路において、前記複数の電磁石のコイルに電流を供給するための直流電源と、前記コイルの両端子の間にそれぞれ直列に接続され、当該コイルと前記直流電源との接続の開閉を同時に行う2つのスイッチング素子と、前記コイルに一方向のみの直流電流が流れるように前記それぞれのスイッチング素子に対して並列にそれぞれ接続される第1のダイオード及び第2のダイオードと、静電容量が10μF以上200μF以下であり、前記スイッチング素子に並列に接続されるコンデンサと、該コンデンサに回生電流が流れるように前記直流電源のプラス端子側に接続される逆流阻止用ダイオードとを備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載のモータドライブ回路は、前記コンデンサとして、損失が少なく、且つ耐用年数の長いフィルムコンデンサを用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のモータドライブ回路によれば、静電容量が10μF以上200μF以下という小さな静電容量のコンデンサを用いているので、電源電圧よりも大きな逆起電力の発生によって生じる誘導ブレーキ電流がコンデンサへと流れると、コンデンサ電圧が上昇し、誘導ブレーキ電流を減少させて、零にすることができる。このように速度の上昇を妨げ、銅損や鉄損を増加させる誘導ブレーキ電流を抑制することができるので、一方向通電形DCブラシレスモータの効率を向上させることができる。また、毎回の通電初期に電源電圧よりも高いコンデンサ電圧がコイルに印加されるので、電流上昇速度が大きくなり、回転速度を増加させる場合の通電期間の減少による電流不足の対策となる。尚、このモータドライブ回路の端子に接続されるコイルの並列回路数を増加させることによって回転速度を増加させることができる。
【0010】
請求項2記載のモータドライブ回路によれば、コンデンサとしてフィルムコンデンサを用いているので、モータドライブ回路において通常用いられる大きな静電容量を有する電解コンデンサに比べて損失が少ないので、モータドライバを含めたモータの効率が増加する。また、損失が少ないので、温度上昇も少ないことと、本質的に劣化し難いことから、耐久性を向上させることができる。また、静電容量が小さい場合には、小型化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るモータドライブ回路を備える一方向通電形ブラシレスモータの構成の一例を示す概略平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係るモータドライブ回路の構成の一例を示す回路図である。
【図4】一方向通電形DCブラシレスモータ3の回転角度θと電磁トルクTeの関係を示すθ−Te特性図である。
【図5】コンデンサ電圧とモータドライブ出力端子電流(電機子巻線電流)の関係を示す波形図であって、(a)は本発明に係るモータドライブ回路を用いた場合の波形図、(b)は従来のモータドライブ回路を用いた場合の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るモータドライブ回路1について、図面を参照しながら説明する。このモータドライブ回路1は、一方向通電形のDCブラシレスモータ2に用いられるものである。
【0013】
一方向通電形DCブラシレスモータ2(以下、DCブラシレスモータ2とする)としては、例えば、図1及び図2に示すようなものがある。このDCブラシレスモータ2は、平板状の永久磁石3が4個配置された回転体(回転子)4と、該回転体4を軸支するフレーム(固定子)5と、該フレーム5に固定される複数の電磁石6とを備えている。
【0014】
回転体4は、回転軸となるシャフト7に2枚の円盤8と1枚の円盤81がスペーサ70を介して所定間隔で固定されており、各円盤8の下面に周方向に等間隔で4個の平板状の永久磁石3が配設されている。また、フレーム5には永久磁石3に対応して等間隔で4箇所に電磁石6が固定されている。
【0015】
永久磁石3は、表面及び裏面に磁極が形成された平板状のものであり、具体的にはネオジウム系の希土類磁石からなる。このように、表面と裏面にN極及びS極が形成された平板状の永久磁石3を用いることにより、各磁極面積を広くすることができるので、回転トルクの増加を図ることができる。図1に示すように、永久磁石3は、円盤8に数mm程度埋め込まれることにより固定されており、図2に示すように、1枚の円盤8に対して周方向に等間隔となるように4個固定されている。つまり、各永久磁石3は、円盤8の周縁部分に周方向に90°の角度間隔をあけて配設されている。尚、この永久磁石3の固定方法は特に限定されるものではなく、適宜プラスチック等を用いて円盤8へ固定すれば良い。また、永久磁石3の個数も特に限定されるものではないが、本実施形態のように、永久磁石3を周方向に等間隔で配置することが好ましい。
【0016】
また、各永久磁石3は、図2に示すように、円盤8(回転体4)の中心Oから永久磁石3の重心を結ぶ直線L1と、永久磁石3の磁極方向、即ち表面及び裏面上の法線方向の直線L2とが交わる角度αが、円盤8の中心O方向からみた場合に約30°以上60°以下となるように配置されている。永久磁石3のN極又はS極のうちいずれかの面が円盤8の外方へ向けられており、永久磁石3に対して所定の磁気ギャップを隔てて設けられる電磁石5の極性は対向する永久磁石3の外方の磁極と同極になっている。
【0017】
同様にして、別の円盤8にも先と逆の極を外方に向けられた4個の永久磁石3が固定され、各4個の永久磁石3が固定され2枚の円盤8を互いの永久磁石3が周方向に同位置となるようにスペーサ70を介して重ね合わされている。すなわち、永久磁石3は、DCブラシレスモータ2に合計8個設けられている。また、2枚の円盤8と1枚の円盤81の計3枚の円盤もスペーサ70を介して重ね合わされている。
【0018】
また、円盤81には、センサ検出盤9が同軸となるように固定されている。センサ検出盤9は、円盤81よりも若干大径の透明なプラスチック板であり、円盤81の周縁から突出した部分の所定部位にテープ等を貼り付けることにより、該部位を位置検出センサ10が検出するように構成されている。
【0019】
各円盤8、81の中心にはシャフト7が貫通されており、これらシャフト7、円盤8、81、永久磁石3、及びセンサ検出盤9が固定されて、回転体4として一体に回転するようになっている。また、図1に示すように、回転体4の周縁部分には、各円盤8、81の周縁部間に渡るようにフィルム11が貼り付けられている。このように回転体4の周縁をフィルム11で封止することにより、回転体4が回転した場合にフィルム11で封止された回転体4の内部の空気が回転体4とともに回転するため、永久磁石3等が空気抵抗を受けることが少なくなる。これにより、回転体4の空気抵抗を減少させてDCブラシレスモータ2の回転効率を向上させることができる。尚、フィルム11は、永久磁石3と電磁石6との磁力の作用に影響しない素材であって、薄手のものが好ましく、例えばプラスチックフィルム等を用いることができる。
【0020】
電磁石6は、図1に示すように、U字の鉄芯60にコイル61が巻かれたものであり、コイル61に電流が流れることにより鉄芯60の両端部に夫々磁極が形成される。これにより、永久磁石3に磁力を生じさせて回転体4を回転させる。図1に示すように、電磁石6は、その各磁極が各円盤8間に二段に構成された永久磁石3に対応するようにして、所定の磁気ギャップ長で配置されている。また、対応する二段の永久磁石3は、電磁石6の磁極と同極で対面するように、すなわち、電磁石6のN極に対応する永久磁石3はN極を外方へ向けて円盤8に固定されており、電磁石6のS極に対応する永久磁石3はS極を外方へ向けて円盤8に固定されている。このような電磁石6が、図2に示すように、回転体4の永久磁石3の配置に対応して、フレーム5に周方向に90°異なる位置に4個固定されている。このように、回転体4に固定する一組の永久磁石3を二段の構成とし、電磁石6をU字状として該二段の永久磁石3に対応させて、電磁石6の両極から発生する磁束をともに回転体4を回転させるための磁力発生に用いることにより、DCブラシレスモータ2の電力から動力へのエネルギーの変換効率が向上する。
【0021】
また、電磁石6は、円盤8(回転体4)の中心Oから電磁石6の重心を結ぶ直線(不図示)と、電磁石6の磁束中心軸(不図示)とが交わる角度が円盤8の中心O方向からみた場合に0°以上20°以下となるようにフレーム5に固定されている。これにより、前記角度を0°とする場合と比較して、平均電磁トルクが増大するという利点がある。尚、永久磁石3の固定角度の変更は、DCブラシレスモータ2を分解する必要があるため困難であるが、電磁石6の固定角度の変更は、容易に行うことができる。また、図面では、上記の角度が0°の場合を示しているが、電磁石6は、実際には、上記の角度が0°以上20°以下となるように固定されていれば良い。
【0022】
フレーム5は、回転体4を軸支するとともに、電磁石6及び位置検出センサ10を固定するものであり、図1に示すように、2枚のフレーム板50が所定間隔で互いに対向するように連結されている。回転体4は、対向するフレーム板50間において、シャフト7が軸支されていることにより、フレーム5に回転自在に設けられている。従って、2枚のフレーム板50は、回転体4の外径より十分に大きなものである。また、図には示していないが、シャフト7を軸支する各フレーム板50にはベアリングが適宜設けられている。
【0023】
また、フレーム5には、センサ検出盤9に対応して位置検出センサ10が設けられている。この位置検出センサ10としては、回転体4とともに回転するセンサ検出盤9の所定部位を検出できれば周知且つ任意のものを使用できる。また、位置検出センサ10は、各電磁石6のコイル61に電圧を供給するために各電磁石6に接続される本発明のモータドライブ回路1と接続されており、電磁石6に電圧を供給するタイミングをこのモータドライブ回路1に与えている。
【0024】
このモータドライブ回路1は、図3に示すように、複数の電磁石6のコイル61に電流を供給するための直流電源12と、このコイル61の両端子P1,P2にそれぞれ直列に接続され、当該コイルと前記直流電源12との接続の開閉を同時に行う2つのスイッチング素子SW1、SW2と、コイル61に一方向のみの直流電流が流れるようにスイッチング素子SW2に並列に接続される第1のダイオードD1及びスイッチング素子SW1に並列に接続される第2のダイオードD2と、スイッチング素子SW1、SW2に並列に接続されるコンデンサ13と、該コンデンサ13に回生電流が流れるように直流電源12のプラス端子に接続される逆流阻止用ダイオードD3とを備えるものである。尚、図3のモータドライブ回路1では、モータドライブ回路端子P1、P2間に接続されるコイルの並列回路数が2つものを例としているが、コイル61の接続の仕方は適宜変更しても良い。
【0025】
直流電源12は、コイル61に電力供給を行うためのものであり、直流安定化電源や鉛蓄電池等が用いられる。スイッチング素子SW1、SW2は、このコイル61と前記直流電源12との接続の開閉を行うためのものであり、SW1とSW2が同時にオンされると、コイル61と直流電源12が接続され、コイル61に直流電源12の電源電圧が供給されて、直流電流が流れる。尚、スイッチング素子SW1、SW2としては、FET(Field effect transistor:電界効果トランジスタ)やNPN形トランジスタ等が用いられる。
【0026】
また、コンデンサ13には、従来は静電容量が大きい電解コンデンサが用いられているが、ここでは、静電容量が10μF以上200μF以下であるコンデンサ13を用いる。このコンデンサ13は、静電容量が小さいので、フィルムコンデンサを利用することができる。電解コンデンサは、一般的に損失が大きく、且つ劣化しやすいが、コンデンサ13としてフィルムコンデンサを用いることにより、損失が減少するので、モータドライバを含めたモータの効率が増加する。また、損失が少ないので、温度上昇も少なく、本質的に劣化し難いことから、耐久性が向上するので、モータドライブ回路1の寿命を改善することができる。また、静電容量が小さい場合には、小型化することもできる。
【0027】
次に、このDCブラシレスモータ2を回転させる際の通電方法について説明する。このDCブラシレスモータ2の1つの電磁石6に一定の電流を流し、二段一対の永久磁石3だけを用いた場合、図4に示すようなθ−Te特性が得られる。尚、θは回転体4の回転角度、Teは電磁トルクであり、+θ方向は、回転体4の反時計回りの方向、−θは、回転体4の時計回りの方向を示している。ここで、この電磁トルクTeは0°以上360°以下で積分すると、その値は0となる。すなわち、電磁トルクTeの合計は零である。図4に示すように、大値狭角度トルクTaで電磁トルクTeが発生しているが、これは電磁石6の二つの磁極に対して接近している永久磁石3の各磁極が反発力及び吸引力として作用し、合計すると時計回り方向である−θ方向へのトルクを発生させるからである。θ=0°では永久磁石3と電磁石6とが作用して+θ方向へのトルクが発生する。また、安定平衡点(安定平衡状態の動作点)X1はθ=−25°と40°で生じ、不安定平衡点(不安定平衡状態の動作点)X2はθ=−1°と−60°で生じる。尚、安定平衡点X1及び不安定平衡点X2の発生する回転角度は、永久磁石3と電磁石6との位置関係、例えば磁気ギャップ長により変化するものである。また、四対の永久磁石3を用いた場合、永久磁石3から+90°及び−90°離れたところにも永久磁石3が存在するので、それらを考慮すると、図中の小値広角度トルクTbと小値広角度トルクTcは重なって正の大きな値となり、大値狭角度トルクTaは変化しない。
【0028】
DCブラシレスモータ2では、大値狭角度トルクTaを利用せずに小値広角度トルクTb及び小値広角度トルクTcを利用している。これにより、パルス幅の広い電流を電磁石6のコイル61に流すことになるので、高速回転においても電流の制御が容易になる。従って、図4に示すように、−60°≦θ≦−25°、及び−1°≦θ≦40°においてコイル61に電流を流すように制御される。このように、小値広角度トルクTbと小値広角度トルクTcとの双方を利用すれば、パルス電流を生成すべきθの幅が広くなり、また、電磁トルクも大きくなる。このような電流の制御は、センサ検出盤9の所定領域、すなわち、−25°≦θ≦−1°の24°の幅の領域内に位置検出センサ10が検出可能なようにテープ等を貼り付けることにより実現できる。
【0029】
このように、DCブラシレスモータ2によれば、磁力により生じる回転トルク(電磁トルク)Teと回転角度θとの関係において、大値狭角度トルクTaを発生させる回転角度θの回転角度領域でコイル61への電流(直流電流)を遮断し、大値狭角度トルクTa以外の小値広角度トルクTb及び小値広角度トルクTcを発生させる回転角度θの回転角度領域でコイル61へ一方向通電することにより、回転体4に磁力による回転力を与えることとしたので、コイル61に流す電流のパルス幅が広くなり、高速回転においても電流の制御が容易となり、高速回転化を可能にする。
【0030】
しかしながら、このDCブラシレスモータ2では、電流のオフ期間(負のトルクを生じるので、電流をコイルに流さない期間)に永久磁石3がコイル61に接近しているので、図3に示すコンデンサ電圧Vcよりも絶対値の大きな負の逆起電力Vrが生じて、コンデンサ13にブレーキの作用をする誘導電流(誘導ブレーキ電流)が流れようとする。尚、この誘導ブレーキ電流はダイオードD1,D2を通る。誘導ブレーキ電流は、銅損や鉄損を増加させるため、DCブラシレスモータ2の効率を低下させるので、望ましくないものである。
【0031】
しかしながら、コンデンサ電圧Vcが、この逆起電力Vrよりも大きければ、誘導ブレーキ電流は流れない。これまでのコイル61の電磁エネルギーを回生するモータドライブ回路は、図3において静電容量の大きな電解コンデンサが用いられたものである。この場合、静電容量が大きいので、コンデンサ電圧と略同じになる。そのため、誘導ブレーキ電流の影響を受けて、速度上昇が妨げられ、効率が低下する。本発明では、コンデンサ13として、従来用いられていない10μF以上200μF以下という小さな静電容量のコンデンサ13を用いる。そして、場合によっては、SW1,SW2としてそれらのドレイン・ソース間の定格電圧がVcの最大値より大きなFETを採用する。これにより、コンデンサ電圧Vcがこの逆起電力Vrよりも小さければ誘導ブレーキ電流はコンデンサ13に流れるが、コンデンサ電圧Vcは上昇するので、誘導ブレーキ電流は減少し、Vcが逆起電力よりも大きければ零になる。従って、モータドライブ回路1では、このコンデンサ電圧Vcの上昇によって、銅損や鉄損を増加させる誘導ブレーキ電流を抑制することができる。
【0032】
図5は、静電容量が110μFのコンデンサ13を用いた場合と静電容量が4810μFの電解コンデンサを用いた場合のコンデンサ電圧Vcとモータドライブ回路端子P1に流れる電流(電機子巻線電流)iをそれぞれ示す波形図である。尚、図5の縦軸は電流iが1目盛2Aで、コンデンサ電圧Vcが1目盛10Vとしている。また、モータドライブ回路1の電源電圧Vsは20Vとしている。図5に示すように、静電容量が4810μFの電解コンデンサを用いたものでは、オフ期間(負のトルクが発生するため、電流をコイルに流さない期間)において、誘導ブレーキ電流iが生じている。一方、静電容量が110μFのコンデンサ13を用いたモータドライブ回路1では、オフ期間の直後にコンデンサ電圧Vcが上昇している。ここでは、約5.6V上昇している。また、このコンデンサ電圧Vcの上昇によって、オフ期間において誘導ブレーキ電流iが抑制されているのがわかる。また、このコンデンサ電圧Vcの上昇により、オフ期間からオン期間(正のトルクが発生するため、電流を流す期間)に切り替えた時に、高いコンデンサ電圧Vcがコイル61に印加されるので、電流上昇速度が大きくなり、回転速度を増加させる場合の通電期間の減少による電流不足の対策にもなる。
【0033】
本実施形態では、上記のような構成及び通電方式を採用する一方向通電形のDCブラシレスモータ2にモータドライブ回路1を用いた場合を例に説明してきたが、本発明のモータドライブ回路1は、その他従来から周知の一方向通電形のDCブラシレスモータ及びSRモータにも適宜用いることは可能である。このようなモータドライブ回路1を一方向通電形のDCブラシレスモータに用いることにより、電源電圧よりも大きな逆起電力の発生によって生じる誘導ブレーキ電流がコンデンサへと流れ、コンデンサ電圧が上昇し、誘導ブレーキ電流を減少させて、零にすることができるので、銅損や鉄損を増加させる誘導ブレーキ電流を抑制することができる。
【0034】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 モータドライブ回路
2 一方向通電形DCブラシレスモータ
3 永久磁石
4 回転体(回転子)
5 フレーム(固定子)
6 電磁石
61 コイル
12 直流電源
13 コンデンサ
SW1、SW2 スイッチング素子
D1 第1のダイオード
D2 第2のダイオード
D3 逆流阻止用ダイオード
P1、P2 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向通電形のDCブラシレスモータの固定子に設けられた複数の電磁石のコイルへの電流の供給を制御して、回転子に設けられた永久磁石に磁力を作用させることにより前記回転子を回転させるモータドライブ回路において、
前記複数の電磁石のコイルに電流を供給するための直流電源と、前記コイルの両端子にそれぞれ直列に接続され、当該コイルと前記直流電源との接続の開閉を同時に行う2つのスイッチング素子と、前記コイルに一方向のみの直流電流が流れるように前記それぞれのスイッチング素子に対して並列にそれぞれ接続される第1のダイオード及び第2のダイオードと、静電容量が10μF以上200μF以下であり、前記スイッチング素子に並列に接続されるコンデンサと、該コンデンサに回生電流が流れるように前記直流電源のプラス端子側に接続される逆流阻止用ダイオードとを備えることを特徴とするモータドライブ回路。
【請求項2】
前記コンデンサとして、フィルムコンデンサを用いることを特徴とする請求項1記載のモータドライブ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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