説明

モータ取付構造、レンズ鏡筒及びカメラ

【課題】作業性が向上したモータ取付構造を提供する。
【解決手段】本発明のモータ取付構造100は、回転軸15Sが延びる被取付面15Fを有し、回転軸15Sの周りに、第1の径d1を有する凸部15Aが形成されているモータ15と、回転軸15Sに取り付けられるとともに、複数の歯部15Hを有し、中心から該歯部15Hの頂部までの第2の径d2が第1の径d1よりも大きく、中心から歯部15H間の底部までの第3の径d3が第1の径d1よりも小さいギア15Gと、ギア15Gが取り付けられた状態でモータ15の回転軸15Sを該回転軸15Sに沿った方向から挿入可能な開口部40が設けられたモータ取付部材13Aとを含み、開口部40は、径が第3の径d3よりも大きく、凸部15Aが嵌合する嵌合部41Aと、ギア15Gの歯部15Hの形状に対応して備えられ、第2の径d2よりも大きな径を有する凹部41Bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ取付構造、レンズ鏡筒及びカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを固定部材に取り付ける場合、その固定部材に円形穴を形成し、その穴にモータの軸を挿入する。そして、モータに突設された円筒形のフランジをその円形穴に嵌合してモータを位置決めし、モータを固定部にビス止めする。その後、挿入された軸にギアを圧入する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−116280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、モータをビス止めした後にギアを圧入すると、作業性の悪化の原因となる。
【0005】
本発明の課題は、作業性が向上したモータ取付構造、レンズ鏡筒及びカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、回転軸(15S)が延びる被取付面(15F)を有し、該被取付面(15F)における前記回転軸(15S)の周りに、第1の径(d1)を有する凸部(15A)が形成されているモータ(15)と、前記モータ(15)の前記回転軸(15S)に取り付けられるとともに、複数の歯部(15H)を有し、中心から該歯部(15H)の頂部までの第2の径(d2)が前記第1の径(d1)よりも大きく、前記中心から前記歯部(15H)間の底部までの第3の径(d3)が前記第1の径(d1)よりも小さいギア(15G)と、前記ギア(15G)が取り付けられた状態で前記モータ(15)の前記回転軸(15S)を該回転軸(15S)に沿った方向から挿入可能な開口部(40)が設けられたモータ取付部材(13A)とを含み、前記開口部(40)は、径が前記第3の径(d3)よりも大きく、前記凸部(15A)が嵌合する嵌合部(41A)と、前記ギア(15G)の前記歯部(15H)の形状に対応して備えられ、前記第2の径(d2)よりも大きな径を有する凹部(41B)とを有することを特徴とするモータ取付構造(100)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータ取付構造(100)であって、前記モータ(15)の前記被取付面(15F)における、前記凸部(15A)の外側には、該モータ(15)を前記モータ取付部材(13A)に固定するための取付ねじ(17)を螺合するねじ孔(15B)が設けられ、前記開口部(40)には、前記取付ねじ(17)を前記ねじ孔(15B)に向かって挿入可能な、ねじ挿入部(42)も連続して設けられていること、を特徴とするモータ取付構造(100)である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータ取付構造(100)であって、前記ねじ孔(15B)に対応する2つの孔(16B)が設けられ、前記ギア(15G)が取り付けられた前記モータ(15)の前記回転軸(15S)を前記モータ取付部材(13A)の前記開口部(40)より挿入して前記凸部(15A)を前記嵌合部(41A)に嵌合させた状態で、前記モータ取付部材(13A)と前記ギア(15G)との間に、前記回転軸(15S)の一方から挿入可能なL字形の補強板(16)を備えること、を特徴とするモータ取付構造(100)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ取付構造(100)であって、前記モータ(15)は、ぶれ補正レンズ(10)におけるロックリング(15)を駆動するモータ(15)であること、を特徴とするモータ取付構造(100)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ取付構造(100)であって、前記モータ(15)は、電磁絞りを駆動するモータ(15)であること、を特徴とするレンズ鏡筒モータ取付構造(100)である。
請求項6に記載の発明は請求項4又は5に記載のモータ取付構造(100)を備えるレンズ鏡筒(2)である。
請求項7に記載の発明は請求項4又は5に記載のモータ取付構造(100)を備えるカメラ(1)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業性が向上したモータ取付構造、レンズ鏡筒及びカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明におけるモータ取付構造を適用したレンズ鏡筒を備えるカメラの概念図である。
【図2】ブレ補正ユニットの背面側から見た分解斜視図である。
【図3】図2のモータ取付構造である。
【図4】モータ装着部におけるモータ装着用開口部を示す図である。
【図5】モータ装着用開口部へのギアの嵌挿状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明におけるモータ取付構造100(図2に示す)の一実施形態を適用したレンズ鏡筒2を備えるカメラ1の概念図である。
なお、図1および後述する各図には、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ1の位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をX軸プラス方向、正位置において上側に向かう方向をY軸プラス方向、正位置において被写体に向かう方向をZ軸プラス方向とする。また、以下の説明では、光軸OAと平行な方向を「前後」とし、被写体側を「前面側」、他端側を「背面側」とそれぞれ称する。
【0011】
カメラ1は、レンズ鏡筒2と、このレンズ鏡筒2が着脱可能なカメラ本体3とを備える。なお、本発明は、このようにレンズ鏡筒2がカメラ本体3に対して着脱可能な構成に限らず、レンズ鏡筒2とカメラ本体3とが一体に構成されたものにも適用可能である。
【0012】
レンズ鏡筒2は、図示しない撮像光学系と、ブレ検出センサ21X,21Yと、ブレ補正ユニット10等を備えている。
カメラ本体3は、レリーズスイッチ31を備えている。
ブレ検出センサ21X,21Yは、角速度センサにより形成されたブレ検出部である。ブレ検出センサ21X,21Yは、レンズ鏡筒2の光軸OAと直交する面内における、直交する2方向の検出軸(X軸およびY軸と平行な軸)周りの角速度を検出し、レリーズスイッチ31の操作時に、これら2方向各々の加速度成分を出力する。後述するブレ補正ユニット10におけるブレ補正動作は、通常、この2方向(X軸およびY軸方向)のブレに起因する像ブレを補正することにより行われる。
【0013】
ブレ補正ユニット10は、レンズ鏡筒2における撮影光学系の一部を構成するレンズLと、当該レンズLを移動駆動するアクチュエータとしての一対(2組)のボイスコイルモータ51X,51Yと、一対(2組)の位置検出装置52X,52Y等を備えている。なお、ボイスコイルモータは、以下、VCMと略記する。
【0014】
VCM51XはX軸上に配設されてレンズLをX軸方向に移動駆動し、VCM51YはY軸上に配設されてレンズLをY軸方向に移動駆動する。
位置検出装置52XはX軸上に配設されてレンズLのX軸方向における移動量を検知し、位置検出装置52YはY軸上に配設されてレンズLのY軸方向における移動量を検知する。
【0015】
そして、ブレ補正ユニット10は、ブレ検出センサ21X,21Yによるブレの検出結果に基づいて不図示の演算部が算出したレンズLの駆動方向及び駆動量に従って、VCM51X,51Yを駆動し、レンズLを、被写体像の像ブレを打ち消す方向に移動して、撮像素子やフィルムの結像面における像ブレを補正する。レンズLの移動量は、位置検出装置52X,52Yによる検知結果に基づいてフィードバック制御される。
【0016】
つぎに、図1に加えて図2を参照して、ブレ補正ユニット10について詳細に説明する。
図2は、ブレ補正ユニット10の背面側から見た分解斜視図である。
ブレ補正ユニット10は、前面側(Z軸+側=被写体側)から順に、ユニットフレーム11と、レンズ保持枠12と、カバー13と、ロックリング14等を備えている。
【0017】
ユニットフレーム11は、当該ブレ補正ユニット10の基部を構成する部材であって、レンズ鏡筒2の内部に図示しないズームリングの回転によって光軸方向に移動操作可能に設けられる。
ユニットフレーム11は、図2には表れていないがX軸方向とY軸方向にそれぞれマグネット保持部を備えている。これらのマグネット保持部には、VCM51X,51Yの構成要素であるマグネット及びヨークが配設される。
また、ユニットフレーム11は、センサ保持部11Bx,11Byを備えている。センサ保持部11BxはX軸上に位置し、センサ保持部11ByはY軸上に位置している。センサ保持部11Bx,11Byには、図示しないが位置検出装置52X,52Yの構成要素である位置検出素子が装着される。
【0018】
レンズ保持枠12は、中央に円筒状の保持筒部12Aを備えており、この保持筒部12AにレンズLを保持している。
保持筒部12Aの背面側の外周部には、ストッパ突起12Bが設けられている。ストッパ突起12Bは、X軸およびY軸と対応する位置(すなわち周方向に90°間隔で4箇所)にそれぞれ径方向外周側に向けて突設されている。
【0019】
また、レンズ保持枠12は、ユニットフレーム11における図示しないマグネット保持部と対応する位置に、コイル配設部12Cx,12Cyを備えている。コイル配設部12Cx,12Cyには、図示しないがVCM51X,51Yの構成要素である駆動コイルが形成される。さらに、レンズ保持枠12は、ユニットフレーム11におけるセンサ保持部11Bx,11Byと対応する位置に、マグネット保持部12Dx,12Dyを備えている。マグネット保持部12Dx,12Dyには、図示しないが位置検出装置52X,52Yの構成要素である位置検出用マグネットが装着される。
【0020】
ユニットフレーム11とレンズ保持枠12とは、図示しない引張ばねによって近接する側に付勢されて結合され、両者の間には図示しない複数のボールが介設される。これにより、レンズ保持枠12は、ユニットフレーム11に、光軸OA方向には移動不能、且つ、光軸OAと直交する方向にはボールの転動によって移動可能として支持される。
【0021】
ユニットフレーム11の図示しないマグネット保持部に設けられたマグネット及びヨークと、レンズ保持枠12のコイル配設部12Cx,12Cyに形成された図示しない駆動コイルとは、レンズ保持枠12(レンズL)を移動駆動するVCM51X,51Y(図1参照)を構成する。VCM51X,51Yは、駆動コイルに電流を流すことにより、当該駆動コイルを備えるレンズ保持枠12(レンズL)を、光軸OAと直交する面内で移動駆動する。
【0022】
また、ユニットフレーム11のセンサ保持部11Bx,11Byに設けられた図示しない位置検出素子と、レンズ保持枠12のマグネット保持部12Dx,12Dyに設けられた位置検出用マグネットとは、レンズ保持枠12の位置を検出する位置検出装置52X,52Y(図1参照)を構成する。位置検出装置52X,52Yは、レンズ保持枠12に設けられた位置検出用マグネットの移動による磁界の変化を位置検出素子が検知することで、レンズ保持枠12(レンズL)光軸OAと直交する面内での移動量を検知する。
【0023】
カバー13は、外径がユニットフレーム11と略等しい短筒状の部材である。カバー13は、ユニットフレーム11にネジ止め等によって固定され、ユニットフレーム11との間にレンズ保持枠12を移動可能に収容する。
また、カバー13は、モータ装着部13Aを備えており、このモータ装着部13Aに、後述するロックリング14を回転駆動するロックモータ15が取り付けられる。
【0024】
ロックモータ15は、DCモータであって、カバー13におけるモータ装着部13Aに、回転軸15Sを光軸OAと平行とし背面側(Z軸マイナス側)に向けて固定される。このロックモータ15のモータ装着部13Aへの取付構造については、後に詳述する。
ロックモータ15の回転軸15Sには、ギア15Gが固定されており、このギア15Gが後述するロックリング14の外周ギア14Gと噛合する。これにより、ロックモータ15は、その回転によってロックリング14を回転駆動する。
【0025】
ロックリング14は、円環状であって、カバー13の背面側に光軸OAと中心として所定角度回転可能に装着される。このロックリング14は、その回転によってレンズ保持枠12の固定と、固定解除とを行う部材である。
ロックリング14は、カバー13側の内周縁に固定突起14Aを備えている。固定突起14Aは、レンズ保持枠12におけるストッパ突起12Bと同様に周方向に90°間隔で4箇所設けられている。固定突起14Aは、レンズ保持枠12のストッパ突起12Bと周方向における位置が合致すると、その内周がストッパ突起12Bの外周に嵌合するように形成されている。
【0026】
また、ロックリング14の外周縁には、所定角度範囲に外周ギア14Gが形成されている。この外周ギア14Gの形成角度範囲は、後述する当該ロックリング14の回転角度と対応している。外周ギア14Gは、前述したように、カバー13のモータ装着部13Aに固定されたロックモータ15のギア15Gと噛合する。
【0027】
ロックリング14は、前述したように、カバー13の背面側に光軸OAを中心として所定角度回転可能に装着される。その回転角度は、固定突起14Aが、レンズ保持枠12におけるストッパ突起12Bと合致する固定位置と、ストッパ突起12Bから離間する固定解除位置と、の間を移動し得るように設定されている。
【0028】
そして、ロックリング14が固定位置では、固定突起14Aはレンズ保持枠12のストッパ突起12Bの外周側に嵌合する。これにより、固定突起14Aがストッパ突起12Bの径方向の移動を規制して、レンズ保持枠12を光軸OAと直交する面内において移動不能とする。
一方、ロックリング14が固定解除位置では、固定突起14Aはストッパ突起12Bの周方向に離間し、その径方向の移動を規制しない。この状態では、レンズ保持枠12は光軸OAと直交する面内で移動可能となる。
【0029】
上記のように構成されたロックリング14は、ロックモータ15によって固定位置と固定解除位置との間で回転操作され、レンズ保持枠12(レンズL)の固定および固定解除を行う。ロックモータ15の駆動によるロックリング14の回転は、カメラ1の図示しない制御装置によって制御される。そして、ロックリング14は、ブレ補正作用する撮影時には固定解除位置とされ、ブレ補正作用OFF時には固定位置とされてレンズ保持枠12(レンズL)を固定する。
【0030】
つぎに、図2に加えて図3〜図5を参照して、カバー13のモータ装着部13Aへのロックモータ15の取付構造について詳細に説明する。
図3は、図2において二点破線で囲んだモータ取付構造100を説明する図である。図4は、モータ装着部13Aにおけるモータ装着用開口部40を示す図である。図5は、モータ装着用開口部40へのギア15Gの嵌挿状態を示す説明図である。
【0031】
本実施形態におけるモータ取付構造100において、図2および図3に示すように、ロックモータ15は、カバー13におけるモータ装着部13Aの前面側に固定される。ロックモータ15は、その回転軸15Sを光軸OAと平行とした姿勢で配置され、モータ装着部13Aの背面側から補強板16を介して二本の取付ねじ17によって固定される。ロックモータ15の回転軸15Sはモータ装着部13Aの背面側に突出し、回転軸15Sに固定されたギア15Gはロックリング14の外周ギア14Gと噛合する。
【0032】
ロックモータ15は、前述したようにDCモータであって、回転軸15Sが突出する側の端面が装着フランジ面15Fとなっている、装着フランジ面15Fには、半径d1の位置決め嵌合凸部15Aが回転軸15Sと同心状で所定高さに突設されると共に、この位置決め嵌合凸部15Aを挟んで(すなわち回転軸15Sを挟んで)一対のねじ孔15Bが設けられている。
【0033】
カバー13のモータ装着部13Aは、光軸OAと直交する平坦な板状に形成され、光軸OA方向に貫通するモータ装着用開口部40を備えている。
モータ装着用開口部40は、ロックモータ15の位置決め嵌合凸部15A(径d1)が嵌合するモータ位置決め部41(径d1’)と、モータ位置決め部41から外方に向かって凹状に窪んだギア逃げ部41B(径d4)と、ねじ挿入部42(径d5)と、が連続一体化された一つの孔として形成されている。
【0034】
モータ位置決め部41の径d1’は、ロックモータ15の径d1の位置決め嵌合凸部15Aがガタつきなく嵌合する長さであり、位置決め嵌合凸部15Aをモータ位置決め部41に嵌合させることにより、ロックモータ15は所定位置に固定される。
【0035】
ギア逃げ部41Bは、ギア15Gの歯部15Hがモータ装着用開口部40を挿通できるようにするための孔である。このため、ギア逃げ部41Bの径d4は、ギア15Gの中心から歯部15Hの頂部までの径d2より大きくなっている。また、ギア逃げ部41Bの周方向における幅は、モータ位置決め部41が所定量残存するように設定される。つまり、ギア逃げ部41Bは間欠的に形成されている。
【0036】
ねじ挿入部42は、ロックモータ15の位置決め嵌合凸部15Aがモータ挿入部41に嵌合した状態において、ロックモータ15の装着フランジ面15Fに形成されたねじ孔15Bに螺合する取付ねじ17が貫通する孔である。ねじ挿入部42の径(中心と、中心から最も離れた部分との間の距離)d5は、取付ねじ17がねじ孔15Bに挿入可能な大きさになっている。
【0037】
以上、d1〜d5の関係をまとめると以下のようになる。
ギア15Gの中心から、歯部15H間の底部までの径d3は、位置決め嵌合凸部15Aの径d1よりも小さい。
位置決め嵌合凸部15Aの径d1は、モータ挿入部41の径d1’に嵌合する大きさである。すなわちd1はd1’と略等しいか、わずかに小さい。
また、位置決め嵌合凸部15Aの径d1及びモータ位置決め部41の径d1’は、ギア15Gの中心から歯部15Hの頂部までの径d2より小さい。
そして、ギア15Gの中心から歯部15Hの頂部までの径d2は、ギア逃げ部41Bにおける径d4より小さい。
さらにギア逃げ部41Bにおける径d4は、ねじ挿入部42の最大径部d5より小さい。
すなわち、d3>d1≧d1’>d2>d4>d5の関係となっている。
【0038】
補強板16は、図3に示すように、モータ装着用開口部40と対応する略半円状の板を、ロックモータ15の回転軸15Sとの干渉を避ける軸逃げ部16Aで切り欠いたような、概略L字形状のステンレス合金鋼等の金属製薄板によって形成されている。
補強板16における、ロックモータ15の装着フランジ面15Fに形成された一対のねじ孔15Bと対応する位置には、それぞれ取付ねじ17が挿入される貫通孔16Bが形成されている。
【0039】
そして、上記のようなモータ装着用開口部40を備えるモータ装着部13Aに対して、ロックモータ15は、その回転軸15Sにギア15Gが固定された状態で、下記のようにしてカバー13の前面側から装着される。
すなわち、回転軸15Sにギア15Gが固定されたロックモータ15を、モータ装着用開口部40(モータモータ挿入部41)に前面側からその軸方向に挿入して、位置決め嵌合凸部15Aを位置決め嵌合部41Aに嵌合させる。
【0040】
ここで、モータ装着用開口部40のモータモータ挿入部41は、径d2であるギア15Gの歯が遊嵌する径d4のギア逃げ部41Bを備えているため、図5に示すようにギア15Gの歯をギア逃げ部41Bに合致させることで、径d1の位置決め嵌合凸部15Aより大径である径d2のギア15Gであってもモータモータ挿入部41に挿入することができる。
【0041】
このようにして、モータ挿入部41の位置決め嵌合部41Aにロックモータ15の位置決め嵌合凸部15Aを嵌合させた後、補強板16をモータ装着部13Aとギア15Gとの間に配置する。すなわち、補強板16を、カバー13の外周側方からモータ装着部13Aとその背面側に突出したギア15Gとの間に差し込んで、軸逃げ部16Aにロックモータ15の回転軸15Sが位置するように配置する。
【0042】
そして、取付ねじ17を、補強板16の背面側から、補強板16の貫通孔16Bとモータ装着用開口部40のねじ挿入部42とに挿通させて、ロックモータ15のねじ孔15Bに締め込む。これにより、ロックモータ15の装着フランジ面15Fをモータ装着部13Aの前面に圧接させて、ロックモータ15のモータ装着部13Aへの取付が完了する。
この取付状態において、ロックモータ15は、その位置決め嵌合凸部15Aがモータ挿入部41の位置決め嵌合部41Aに嵌合して位置決めされ、前述したように、ギア15Gはロックリング14の外周ギア14Gと円滑に駆動力を伝達可能に噛合する状態となる。
【0043】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)カバー13におけるモータ装着部13Aに形成されたモータ装着用開口部40は、ロックモータ15の位置決め嵌合凸部15Aが嵌合する位置決め嵌合部41Aと、ロックモータ15のギア15Gの歯が遊嵌するギア逃げ部41Bとを備えている。このため、位置決め嵌合凸部15Aより大径のギア15Gが固定された状態で、ロックモータ15をその軸方向にカバー13の前面側からモータ装着用開口部40に挿入して、位置決めして取り付けることができる。
その結果、ロックモータ15をモータ装着部13Aに装着した後に、回転軸15Sにギア15Gを圧入固定する作業は必要なく、ロックモータ15の組み立て作業性が向上し、組み立て工数の低減によるコストダウンが可能となる。
また、ギア15Gが固定された状態でロックモータ15を装着するために被装着部材(カバー13)に外周側(ラジアル方向)に開放するスリットを形成する必要がなく、スリットを形成することに起因する被装着部材の強度不足や取付時の変形によるロックモータ15の設置精度の低下を防ぐことができる。
【0044】
(2)モータ装着用開口部40は、モータ挿入部41とねじ挿入部42とが連続一体化された一つの孔として形成されている。このため、成形性が良く、高精度に形成できる。すなわち、モータ挿入部41とねじ挿入部42とが独立していると、両者の間に肉薄の部分が生じて特に樹脂成形では成形不良による歩留まりの低下を招来する虞があるが、本構成ではこのようなことはない。
【0045】
(3)補強板16は、モータ装着用開口部40と略対応する形状でロックモータ15のねじ孔15Bと対応する貫通孔16Bを備えると共に、一方側に開放した軸逃げ部16Aを備えている。これにより、複数(二本)の取付ねじ17に対して一つの部材で対応できるために部品点数の増加を抑制できると共に、外周側方から軸逃げ部16Aをロックモータ15の回転軸15Sに外挿して装着できるために組み立て作業性が良い。
【0046】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態は、本発明をレンズ鏡筒2におけるブレ補正ユニット10のロックモータ装着部位に適用したものである。しかし、本発明におけるモータ取付構造100の適用部位はこれに限らず、たとえば、電磁絞りを駆動するステッピングモータの取付部位等、他のモータ取付部位に適用しても良い。また、モータは、DCモータやステッピングモータに限定されるものではない。
【0047】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0048】
1:カメラ、2:レンズ鏡筒、3:カメラ本体、10:ブレ補正ユニット、13:カバー、13A:モータ装着部、14:ロックリング、14G:外周ギア、15:ロックモータ、15A:位置決め嵌合凸部、15B:ねじ孔、15F:装着フランジ面、15G:ギア、15S:回転軸、16:補強板、16A:軸逃げ部、16B:貫通孔、17:取付ねじ、40:モータ装着用開口部、41:モータ位置決め部、41A:位置決め嵌合部、41B:ギア逃げ部、42:ねじ挿入部、100:モータ取付構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が延びる被取付面を有し、該被取付面における前記回転軸の周りに、第1の径を有する凸部が形成されているモータと、
前記モータの前記回転軸に取り付けられるとともに、複数の歯部を有し、中心から該歯部の頂部までの第2の径が前記第1の径よりも大きく、前記中心から前記歯部間の底部までの第3の径が前記第1の径よりも小さいギアと、
前記ギアが取り付けられた状態で前記モータの前記回転軸を該回転軸に沿った方向から挿入可能な開口部が設けられたモータ取付部材とを含み、
前記開口部は、径が前記第3の径よりも大きく、前記凸部が嵌合する嵌合部と、前記ギアの前記歯部の形状に対応して備えられ、前記第2の径よりも大きな径を有する凹部とを有することを特徴とするモータ取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ取付構造であって、
前記モータの前記被取付面における、前記凸部の外側には、該モータを前記モータ取付部材に固定するための取付ねじを螺合するねじ孔が設けられ、
前記開口部には、前記取付ねじを前記ねじ穴に向かって挿入可能な、ねじ挿入部も連続して設けられていること、
を特徴とするモータ取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータ取付構造であって、
前記ねじ穴に対応する2つの孔が設けられ、前記ギアが取り付けられた前記モータの前記回転軸を前記モータ取付部材の前記開口部より挿入して前記凸部を前記嵌合部に嵌合させた状態で、前記モータ取付部材と前記ギアとの間に、前記回転軸の一方から挿入可能なL字形の補強板を備えること、
を特徴とするモータ取付構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ取付構造であって、
前記モータは、ぶれ補正レンズにおけるロックリングを駆動するモータであること、
を特徴とするモータ取付構造。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のモータ取付構造であって、
前記モータは、電磁絞りを駆動するモータであること、
を特徴とするレンズ鏡筒モータ取付構造。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のモータ取付構造を備えるレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項4又は5に記載のモータ取付構造を備えるカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−247985(P2011−247985A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119263(P2010−119263)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】