説明

モータ安全弁の制御方法

【課題】弁体6はコイルバネ4の付勢力によって弁口13を閉弁しているので、弁口13の周縁に弁体6は押し付けられている。その状態が長時間に及ぶと、弁体6が弁口13の周縁に粘着する場合が生じる。弁体6の連結された可動鉄片5を可動電磁石3で吸着して、ステッピングモータ2で引き上げることにより弁口13を開弁する構成であるが、弁体6が弁口13の周縁に粘着していると、弁体6を引き剥がすのに大きな力が必要となり、ステッピングモータ2を大型化しなければならない。
【解決手段】弁口13が閉弁されている時間が所定時間継続した場合には、可動電磁石3が可動鉄片5に当接した位置からさらに可動電磁石3を下方に前進させ、弁体6を弾性変形させる。この弾性変形により弁口13の周縁に対する弁体6の粘着が解除され、その後可動電磁石を引き上げる際に大きな力を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動鉄片に連結され、ガスが流出する弁口を開閉する弁体を備え、この弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段と、付勢手段の付勢力に抗して可動鉄片を吸着保持させる可動電磁石と、可動電磁石を弁体の開閉方向に進退させるモータとを有するモータ安全弁の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のモータ安全弁は、ステッピングモータ等によって前後方向に移動自在な可動電磁石を有しており、この可動電磁石の先端にさらに前後方向に移動自在な可動鉄片を備えている。この可動鉄片の先端にはゴム製の弁体が取り付けられており、さらに可動電磁石側との間にコイルバネが取り付けられており、弁体は可動電磁石の前進方向に付勢されている。
【0003】
一方、可動電磁石の前進方向には弁口が形成されており、可動鉄片を可動電磁石に吸着させない状態では可動鉄片と共に弁体がコイルバネの付勢力により前進し、弁口を閉弁するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
弁口を開弁する際には、可動電磁石を前進させて可動鉄片に可動電磁石の先端を当接させ、さらに可動電磁石を励磁して可動鉄片を吸着させた状態でモータを作動させ可動電磁石を後退させる。すると、可動鉄片は可動電磁石に吸着されたまま後退するので、可動鉄片の先端に取り付けられている弁体も同様に後退して弁口が開弁される。
【特許文献1】特開2003−232462号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のモータ安全弁では、弁口を弁体が閉弁している状態ではコイルバネの付勢力によって弁体が弁口の周縁に押し付けられている。可動電磁石が上方に退避した場合でも確実に弁口を閉鎖するようにコイルバネの強さが設定されているので、特に可動電磁石が可動鉄片に近づいてコイルバネが圧縮された状態では、弁体は弁口の周縁に強く押し付けられることになる。この状態が長時間継続すると、弁体が弁口の周縁に粘着し、弁体を弁口の周縁から引き離すのに大きな力が必要になる。そのため、可動電磁石を後退させるためのモータを大型化しなければならないという不具合が生じる。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、モータを大型化することなく、確実に弁体を後退させて開弁することのできるモータ安全弁の制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明によるモータ安全弁の制御方法は、可動鉄片に連結され、ガスが流出する弁口を開閉する弁体を備え、この弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段と、付勢手段の付勢力に抗して可動鉄片を吸着保持させる可動電磁石と、可動電磁石を弁体の開閉方向に進退させるモータとを有するモータ安全弁の制御方法において、弁体が弁口を閉鎖している状態が所定時間継続したあとに弁体を開弁させる際に、モータを作動させて可動電磁石が可動鉄片に当接した状態から可動電磁石をさらに前進させて可動鉄片を押し、弁体を弁口に押し付けて弾性変形させたあと、可動電磁石を後退させて開弁することを特徴とする。
【0008】
弁体は一般にゴム製であるので、モータを作動させて可動鉄片を前進方向に押せば、弁体は弁口に押し付けられて弾性変形する。すると、弁口の周縁と弁体との粘着部分が剥がされる。このように、弁体と弁口の周縁との粘着を解除したあと、可動鉄片を吸着した状態でモータを作動させて可動電磁石を後退させる。
【0009】
なお、この制御方法によれば、弁体が弁口の周縁に押し付けられる。仮に弁口の周縁に鋭利な部分があると、弁体が傷ついて弁体の寿命が短くなる。特に弁口の内周縁が90度に加工されていると、弁体が傷つきやすい。そこで、上記制御方法は上記弁口の少なくとも内周縁がなだらかに面取り加工されたモータ安全弁について適用されることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明の制御方法によれば、たとえ弁体が弁口の周縁に粘着していても、弁体を後退させる前に弁体と弁口の周縁との粘着を解除するので、モータを大型化しなくても、弁体を後退させて弁口を開弁させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照して、1は本発明の制御方法が適用されるモータ安全弁の一例である。このモータ安全弁のハウジング11にはガスが流入する流入口12とガスが流出する弁口13とが設けられている。ハウジング11の上部にはステッピングモータ2が取り付けられている。このステッピングモータ2は入力されるパルス数に比例して回転するものであり、かつ正逆回転自在に切り替えることができる。
【0012】
このステッピングモータ2の回転軸には雄ねじ21が取り付けられている。一方、3は可動電磁石であり、雄ねじ21に螺合しているホルダ31に固定されている。このホルダ31は回り止め部14に進退自在に挿入されている。また、回り止め部14の下端はホルダ31の上方へのストッパとして機能する。可動電磁石3はホルダ31に固定されたケース32で囲まれている。
【0013】
可動電磁石3の下方に対峙して可動鉄片5が配置されている。この可動鉄片5の下端にはゴム製の弁体6が取り付けられている。そして、弁体6とケース32との間にはコイルバネ4が取り付けられている。従って、弁体6はコイルバネ4によって下方に付勢され、図示の状態では、コイルバネ4の付勢力によって弁口13の周縁に押接されている。そのため、弁口13は閉弁されている。
【0014】
この弁口13の周縁の内周縁13aおよび外周縁13bをR加工した。いわゆる面取り加工では、90度の角部は形成されないが、面取りされた上下に角部が残存する。これに対して本実施の形態のようにR加工をすることにより、表面がなだらかに変化し、角部が形成されなくなる。
【0015】
図1に示す状態は可動電磁石3の作動範囲での上昇端位置に可動電磁石3が位置する状態を示している。従って、弁口13を開弁する際には図1に示した位置からステッピングモータ2を作動させて可動電磁石3を下降させる。ただし、ステッピングモータ2は使用中に脱調と呼ばれる現象が生じ、ステッピングモータ2に入力したパルス数と実際の回転量とがずれる場合が生じる。そのため、定期的に補償する必要がある。
【0016】
本実施の形態では、図1に示す状態からホルダ31をさらに上昇させて補償することとした。図1に示す状態からホルダ31を上昇させると、ホルダ31はストッパ15に当接してそれ以上上昇できなくなる。ステッピングモータ2に対して上昇方向のパルスを入力し続けると、ホルダ31が上昇できないので、ステッピングモータ2は強制的に脱調される。その後、入力パルス数をリセットして、図1に示す位置までホルダ31を下降させてパルス数の補償を行う。
【0017】
次に、弁口13を開弁させるためには、可動電磁石3を可動鉄片5に当接する位置まで下降させる(図2参照)。ただし、図1に示した状態から図2に示す状態まで一気に可動電磁石3を下降させるのではなく、不使用時には可動電磁石3が可動鉄片5に近接する位置まで予め下降させておき、例えば点火スイッチ(図示せず)が押し操作されてから弁口13が開弁されるまでの時間を短くする場合がある。
【0018】
この場合には、使用しない間コイルバネ4が圧縮された状態になり、特にその状態で長時間経過すると、弁体6が弁口13の周縁に粘着する場合が生じる。弁口13が閉弁された状態が所定の時間継続されていなければ、図2に示す状態から可動電磁石3を励磁して可動鉄片5を吸着させると共に、ステッピングモータ2を作動させて可動鉄片5および弁体6を引き上げればよいが、弁口13が閉弁された状態が所定時間(例えば72時間)以上継続した場合には、図2に示す状態から可動電磁石3をさらに前進させて可動鉄片5を押し下げるようにした(図3参照)。
【0019】
弁体6はゴム製であるので、可動鉄片5が押し下げられると、図3に示すように弁体6は中央が凹むように変形する。すると、弁体6の下面は弁口13の内周縁を境として外側が反り上がり、弁体6と弁口13の外周縁が粘着していても、剥がれる。なお、上述のように、内周縁13aをR加工しているので、弁体6の下面が傷つくおそれがない。
【0020】
このように、弁体6を弾性変形させた後は可動電磁石3に可動鉄片5を吸着させた状態で可動電磁石3を上昇させて弁口13を開弁する(図4)。なお、図4に示す上昇端位置まで可動電磁石3を一気に後退させても良いが、必要とされるガス流量が確保できるのに必要最小限の開度ずつ開くように、何段階かに分けて可動電磁石3を図4に示す位置まで後退させても良い。
【0021】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用されるモータ安全弁の閉弁状態を示す図
【図2】開弁直前の状態を示す図
【図3】弁体を弾性変形させた状態を示す図
【図4】弁体を全開位置まで後退させた状態を示す図
【符号の説明】
【0023】
1 モータ安全弁
2 ステッピングモータ
3 可動電磁石
4 コイルバネ
5 可動鉄片
6 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動鉄片に連結され、ガスが流出する弁口を開閉する弁体を備え、この弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段と、付勢手段の付勢力に抗して可動鉄片を吸着保持させる可動電磁石と、可動電磁石を弁体の開閉方向に進退させるモータとを有するモータ安全弁の制御方法において、弁体が弁口を閉鎖している状態が所定時間継続したあとに弁体を開弁させる際に、モータを作動させて可動電磁石が可動鉄片に当接した状態から可動電磁石をさらに前進させて可動鉄片を押し、弁体を弁口に押し付けて弾性変形させたあと、可動電磁石を後退させて開弁することを特徴とするモータ安全弁の制御方法。
【請求項2】
上記弁口の少なくとも内周縁がなだらかに面取り加工されたモータ安全弁について適用されることを特徴とする請求項1に記載のモータ安全弁の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−278321(P2007−278321A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101820(P2006−101820)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】