説明

モータ

【課題】モータ性能が高く、軽量で、静粛性に優れることを両立する小型DCブラシモータを提供すること。
【解決手段】電磁回転体に対向するように配置されたリング状のボンド磁石とリング状のモータヨークとモータケースとからなるDCブラシモータ装置において、リング状のボンド磁石の外周面とリング状のモータヨークの内周面は圧入状態であり、更に、モータヨークの外周面が樹脂材料からなるモータケースで接合されていることを特徴とするDCブラシモータ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
モータ性能が高く、軽量で、静粛性に優れる小型DCブラシモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の悪化とともに、自動車等に使用されるモータにおいては小型・軽量化が必須の課題となってきており、達成するため各種の対応策が検討されている。
また、更なる静粛性が求められている。
【0003】
近年、このような用途に用いられる小型DCブラシモータにおいては、従来、使用されていたフェライト焼結磁石を2極用いたモータが汎用されていた。本発明者らは、高い磁気特性を有し、高い寸法精度を有し、リング状に成形可能な異方性希土類ボンド磁石を用い、薄型で4極以上に配向着磁した薄型リング磁石とし、更に、モータの寸法緒元を制御することで、フェライト焼結磁石を2極配置した汎用モータのモータ性能指標(トルク定数/体積)を大幅に向上させた。現在、このタイプのモータが動力用として用途を拡大しつつある。(特許文献1)
しかしながら、このモータにおいては、軽量化は大幅に達成できたものの、更なる軽量化と静粛性が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−244870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、モータ性能が高く、軽量で、静粛性に優れる小型DCブラシモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者等は、モータ性能が高く、軽量で、静粛性に優れる小型DCブラシモータを提供するため、種々の観点から検討した結果、以下の発明を構成するに至った。
請求項1に記載のDCブラシモータ装置は、電磁回転体に対向するように配置されたリング状のボンド磁石とリング状のモータヨークとモータケースとからなるDCブラシモータ装置において、リング状のボンド磁石の外周面とリング状のモータヨークの内周面は圧入状態であり、更に、モータヨークの外周面が樹脂材料からなるモータケースに接合されていることを特徴とする。
ここで、本発明のモータケースとは、ケース部とキャップ部から構成される。ケース部は、主として、軸受け、電磁回転体、磁石、モータヨーク(従来のモータ装置では、モータケースのケース部がモータヨークを兼ねる)等からなる磁気回路部を覆う部分である。キャップ部は、主として、ブラシ、コミテータ、軸受け等からなるブラシ機構部を覆う部分である。
このモータケースは、ケース部とキャップ部を別途設けて、その後、接合しても良いし、ケース部とキャップ部を一体に設けても良い。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、従来のDCブラシモータ装置に比べ、モータの特性を維持したまま、大幅な軽量化、静粛性の向上を同時に達成することができる。
【0008】
この理由はたとえば以下のように理由付けられる。従来のDCブラシモータ装置は、図2に示すように、例えば磁石8が接着されたモータケース9(特にケース部91)では通常、金属材料である軟鉄等の鉄系材料を用いているため、ブラシとコミテータ間の摺動部で発生する機械音、軸受け部での機械音、磁気回路部での磁気音等を十分に減衰することなくモータ外部に伝播していた。また、モータケースのキャップ部は樹脂材料若しくは金属材料が使用されていいた。それを本発明では、磁気回路部を構成するモータヨークを磁気回路に必要な部分のみとしつつ、リング状のボンド磁石をモータヨークに圧入した状態とし、更に、モータケースを鉄系材料にしたものと比べて密度が大幅に小さく、音の減衰性に優れる特徴を有する樹脂材料で覆い尽くし、かつ、モータヨークと樹脂材料を接合状態とすることで、大幅な軽量化がなされ、種々の騒音がモータ内部から外部へ伝播される過程で大きく減衰することで、大幅な静粛性が達成されると考えられる。
なお、本発明の効果は、樹脂材料相当の密度と音の減衰性能を有する材料であれば、樹脂材料に置換して構成することができる。
【0009】
本明細書において接合とは、モータの使用状態で接合部全周にわたり隙間が発生しないことを意味する。但し、接合の方法によっては、モータヨークとモータケース等の接合部材の表面粗度の状態により局所的に小さな隙間が発生する程度の状態は静粛性に問題のない範囲で許容する。つなぎ部を接合状態とすることで、単なる機械的係合時のようなモータヨークとモータケース間での隙間をなくし、音の発生を防止しつつ、音の減衰を確保すことができる。
接合には、モータケースへのモータヨークの圧入による接合、モータヨークに対する樹脂材料の一体射出成形によるモータケースの接合、モータケースとモータヨークの溶着による接合等がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
更なる発明としてのDCブラシモータ装置は、電磁回転体に対向するように配置されたリング状のボンド磁石とリング状のモータヨークとケース部とキャップ部からなるモータケースとよりなるDCブラシモータ装置において、リング状のボンド磁石の外周面とリング状のモータヨークの内周面は圧入状態であり、更に、モータヨークの外周面が樹脂材料からなるモータケースのケース部に接合されており、モータケースのケース部とキャップ部が接合されていることを特徴とする。
【0011】
この発明は基本的に、請求項1の発明と同じであるが、モータケースをケース部とキャップ部に分けたことを明示した発明である。発明の効果は同様である。
また、この場合は、金型にリング状のモータヨークにリング状のボンド磁石を圧入した状態でセットし、モータケースのケース部に相当するキャビティを設けた金型を構成した後で、樹脂材料をキャビティに一体射出成形することで、回転軸の軸精度が増すため、本発明の効果に、更に、磁気音の低減による静粛性の更なる向上を図ることができる。この時、回転軸の軸精度が向上しているので、エアギャップを縮めることができ、それに伴ってモータ性能指標の向上によるモータ装置の軽量化を図ることもできる。
【0012】
この発明の場合は、モータケースのケース部とキャップ部の間につなぎ部があるので、そこを接合状態とする点が特徴である。つなぎ部を接合状態とすることで、単なる機械的係合時のようなモータケースのケース部とキャップ部の間の隙間をなくし、音の発生を防止しつつ、音の減衰を確保することができる。
この接合には、モータケースのケース部とキャップ部の間の圧入による接合、モータケースのケース部とキャップ部に対して更に樹脂材料による一体射出成形による接合、若しくは、モータケースのケース部とキャップ部の溶着による接合等がある。
【0013】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
(第1実施例)
図1は本実施例のモータ装置の一例を示す。図は、本発明のDCブラシモータの実施例の切断正面図である。本実施例のモータ装置1は、モータ性能が高く軽量化と静粛性の向上を目的としている。本実施例のモータ装置1は、磁気回路部においては、電磁回転体11、ボンド磁石12、モータヨーク13、モータケースのケース部141等からなる。また、ブラシ機構は、ブラシ21、コミテータ22等で構成される。電磁回転体11及びコミテータ22は回転軸31に固定され、回転軸は、二つの回転軸受け32で回転可能に支持されている。
【0014】
ボンド磁石12はリング形状をしている。ここでは、材質としては最大エネルギー積が160kJ/mの異方性希土類ボンド磁石を使用している。モータ性能を向上させるためには、異方性希土類ボンド磁石を使用することが好ましい。その磁気特性は、最大エネルギー積で111〜200kJ/mを有する。単位体積若しくは単位重量当たりのトルク定数であらわされるモータ性能指標を向上させるには、この異方性希土類ボンド磁石を薄くして使用することが望ましい。厚さは0.7mmから3mm程度が望ましい。ここでは、2mm厚の磁石を使用した。モータ外径の増加に伴い、厚さは更に大きくなる場合もある。磁極数は6極である。主としてラジアル方向に配向・着磁してある。磁極数は4極以上が好ましい。軽量化をしようとしているフェライト焼結を使用しているモータが2極であれば、4極以上に、4極であれば、6極以上とすることが好ましい。
【0015】
モータヨーク13もリング形状をしている。このリング形状の円筒度・真円度が高い程良い。材質は、軟鉄等の軟磁性材料が用いられる。
ボンド磁石12の外周面とモータヨーク13の内周面は圧入により接合された状態となっている。これにより、ボンド磁石12とモータヨーク13間の隙間を防止し、音の発生を防止している。更に、この圧入により、異方性希土類ボンド磁石は、モータヨーク13の内径にならって、ボンド磁石12の内周面も高い円筒度・真円度を有することができる。これにより、ボンド磁石12と電磁回転体13とのエアギャップを縮めることができ、モータ性能指標を向上することができる。
【0016】
ボンド磁石12とモータヨーク13を一体化したものは、樹脂材料を一体射出成形によりモータケース14のうちのケース部141に接合される。
一体射出成形の方法は、本実施例では、本明細書第0011欄で記載したとおりに行なった。これにより、本実施例のモータ装置1は大幅な軽量化と大幅な静粛性が達成される。
【0017】
また、図1のモータケース14のケース部141とキャップ部142の係合部の拡大図を図2に示す。モータケース14のケース部141とキャップ部142が、それぞれの接合面1411と接合面1421で、圧入状態となっている。本実施例においては、当接面を全周に渡って圧入によって接合している。これは、モータケースのキャップ部142の接合面1421の外径に対し、モータケースのケース部141の接合面1411の内径を小さくすることにより、両者を軸方向に嵌め合わせることにより圧入による接合とすることができる。このように、つなぎ部を接合状態とすることで、単なる機械的係合時のようなモータケース14のケース部141とキャップ部142の間の隙間をなくし、音の発生を防止しつつ、音の減衰を確保することができる。
【0018】
別の実施例として、上記の圧入状態において更に、モータケース14のケース部141の当接面1412とキャップ部142の当接面1422を溶着によって溶着部(図示せず)を形成した。この場合は、より強固な接合となり、静粛性と強度がより向上する。
【0019】
以上のように発明を構成することにより、モータ装置1の各構成要素を全て樹脂材料により、覆い尽くすことができ、大幅な軽量化と静粛性の向上を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、DCブラシモータ装置に使用できる。特に、軽量化、静粛性が必要とされる用途に有用である。特に、自動車用の動力用モータ装置に有用である。但し、自動車用だけに用途を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のDCブラシモータの実施例の切断正面図である。
【図2】本発明のモータケースのケース部とキャップ部の係合部の拡大図
【図3】従来例のDCブラシモータの実施例の切断正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 モータ装置
11 電磁回転体
12 ボンド磁石
13 モータヨーク
14 モータケース
141 ケース部
142 キャップ部
1411 ケース部の接合面
1421 キャップ部の接合面
1412 ケース部の当接面
1422 キャップ部の当接面
21 ブラシ
22 コミテータ
31 回転軸
32 軸受け
8 従来例の磁石
9 従来例のモータケース
91 ケース部
92 キャップ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁回転体に対向するように配置されたリング状のボンド磁石とリング状のモータヨークとモータケースとからなるDCブラシモータ装置において、
リング状のボンド磁石の外周面とリング状のモータヨークの内周面は圧入状態であり、更に、モータヨークの外周面が樹脂材料からなるモータケースで接合されていることを特徴とするDCブラシモータ装置。































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−95198(P2009−95198A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265967(P2007−265967)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000116655)愛知製鋼株式会社 (141)
【Fターム(参考)】