説明

モータ

【課題】本発明は、コミテータの長大化と、コアの長大化とを同時に達成させると共に、モータの短小化をも可能にしたモータを提供する。
【解決手段】モータ1は、シャフト6に固定されたコア5にコイルCが巻かれた回転子4と、モータケース2に固定されると共にコア5に対向して配置されたマグネット3a,3bと、コア5の外周面に配置された電気絶縁部22dと、電気絶縁部22d上に配置された整流子本体30aを有するコミテータ30と、整流子本体30aに接触するブラシ40と、を備えている。バネ材からなる板状のブラシ40は、軸線L方向に延在すると共に、マグネット3a,3b間の周方向における隙間Rに配置されている。ブラシ40の先端には、モータケース2側に向けて曲げられた拡開部40dが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機器用・民生機器用ブラシ付DC(直流)モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開平2000−262017号公報がある。この公報に記載されたモータは、シャフトに固定されたロータと、モータケースに固定されたマグネットとを備えている。モータケースの開口側は、ブラケットにより蓋がなされ、モータケースの閉鎖側には、シャフトの一側を回転自在に支持するための第1の軸受が固定され、ブラケットの中央には、シャフトの他側を回転自在に支持するための第2軸受が固定されている。さらに、第2の軸受とロータの端部との間には、コミテータが配置され、このコミテータには、ブラケットに端子部が固定された一対のブラシが接触している。各ブラシは、モータケースの径方向に延在して、コミテータにバネ力をもって押圧されている。
【0003】
【特許文献1】特開平2000−262017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のモータの全長に関して、コミテータのスペースとコアのスペースとで大部分が占有され、コミテータを長くすると、ロータを短くしなければならず、ロータを長くするとコミテータを短くしなければならない。コミテータを長くするとブラシの大型化が図られ、コミテータとブラシとの接触安定性を高めることができるが、ロータが短くなり、モータトルクが小さくなってしまう。また、ロータを長くすると、モータトルクが大きくなるが、コミテータ及びブラシが小さくなり、コミテータとブラシとの接触安定性が悪化する。このように、決められた全長内で何れの対策も施し難いといった問題点を有している。特に、モータの全長を短くするようなモータの短小化を行った場合、コミテータは、短小化させ難いので、コアの短小化を余儀なくされ、トルクの低減をもたらすことになる。
【0005】
本発明は、コミテータの長大化と、コアの長大化とを同時に達成させると共に、モータの短小化をも可能にしたモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シャフトに固定されたコアにコイルが巻かれた回転子と、モータケースに固定されると共にコアに対向して配置されたマグネットと、を有するモータにおいて、
コアの外周面に配置された電気絶縁部と、
電気絶縁部上に配置された整流子本体を有するコミテータと、
整流子本体に接触するブラシと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このモータにおいては、コアの外周面に配置した電気絶縁部上にコミテータの整流子本体が設けられるので、整流子本体を、コアの全長にまで最大限延在させることができる。これによって、コミテータの長大化を図ることができる。また、モータの全長を決定するにあたり、コミテータの整流子本体のスペースを考慮しなくてもよいため、コアの長大化を図ることができる。従来のモータケースと本発明のモータケースとを同じ全長にした場合、本発明のモータにあっては、コミテータ及びブラシの長大化及びコアの長大化を同時に達成させることができる。また、従来のモータトルクと本発明のモータトルクを同じにした場合、本発明のモータにあっては、全長を短くするような短小化が可能になる。さらに、従来のように、含油軸受とロータの端部との間にコミテータが配置されていると、含油軸受から漏れ出した油がコミテータに流れ込み、コミテータやブラシの摩耗を増大させる不具合が起り、また、コミテータが含油軸受の摩耗粉の影響も受けるが、本発明は、このような事態をも回避させることができる。
【0008】
また、バネ材からなる板状のブラシは、軸線方向に延在すると共に、マグネット間の周方向における隙間に配置されると好適である。
このような構成を採用すると、バネ材からなるブラシの長大化を可能にするので、バネ定数の大きなブラシの使用を可能にし、コミテータに対してブラシを安定して接触させることができる。これによって、回転子の回転ムラによるブラシの接触ムラを低減させることができ、モータを安定して回転させることができる。さらに、ブラシは、マグネット間の周方向における隙間に配置されているので、モータケースの内部空間を有効利用して、ブラシの設置が、マグネットとコアを近づけることの妨げにならず、モータの短小化の一助をなす。
【0009】
また、ブラシの先端には、モータケース側に向けて曲げられた拡開部が形成されていると好適である。
モータの組立てにあたって、モータケース内にブラシを軸線方向に差し込むと、整流子本体にブラシの拡開部が一旦当接する。その後、拡開部をガイドとして、ブラシが外側に押し広げられ、ブラシを軸線方向に押し込むだけで、整流子本体にブラシを容易に装着させることができる。このような工夫は、治具等を使わずしてブラシを容易に押し広げることができ、モータの組立て作業性を良好にしている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コミテータの長大化と、コアの長大化を同時に達成させると共に、モータの短小化をも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るモータの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、モータ1は、コアードモータからなると共に、円筒状の金属製のモータケース2を備えている。このモータ1は、小型のモータに属するものであり、モータケース2は、直径約10〜20mmで長さ約15〜40mmの円筒形を有し、ヨークをなす小さなモータケース2内に固定子3と回転子4とが収容されている。
【0013】
モータケース2の内壁面には、2個のマグネット(固定子)3a,3bが対向して固定され、一方のマグネット3aのN極と他方のマグネット3bのS極とをモータケース2内で対向させている。さらに、モータケース2の内部には、鉄芯からなるコア5にコイルCが巻かれてなる回転子4が収容されている。
【0014】
そして、磁性鋼からなるコア5の中心にはシャフト6が圧入され、コア5にコイルCを巻くにあたって、電気絶縁特性を有する樹脂(例えばポリアセタール)からなるインシュレータ10によって、コイルCとコア5との電気的な絶縁が図られている。
【0015】
モータケース2の後端に形成された開口には、電気絶縁性の樹脂材からなるブラケット11が嵌め込まれている。コア5を貫通するシャフト6の一側は、モータケース2の前端側に設けられた含油軸受7によって支持され、シャフト6の他側は、ブラケット11に固定された含油軸受8によって支持されている。また、モータケース2の後端に設けられた爪片2aをブラケット11の凹部11a内で内側に折り曲げることで、ブラケット11がモータケース2に固定される。
【0016】
図1及び図3に示すように、回転子4のインシュレータ10は、コア5を覆う第1及び第2のインシュレータ21,22と、後述するコミテータ30の部分的な電気絶縁を図る第3のインシュレータ23とからなり、第1のインシュレータ21は、コア5にその前端側から嵌め込まれ、第2のインシュレータ22は、コア5にその後端側から嵌め込まれる。各インシュレータ21,22は、コア5に絶縁コーティングを施す必要性を無くすことを目的にし、コア5の表面とコイルCとの間を離間させるためのものである。
【0017】
第1のインシュレータ21の中央には、シャフト6が貫通する円筒状のボス部21aが設けられ、このボス部21aには、径方向に突出する3本のT字状部21bが一体に形成されている。各T字状部21bは、コア5のT字状部5aに対応する形状を有すると共に、コア5の前端面に当接する。
【0018】
さらに、隣接するT字状部21b間でT字状部21bの縁からシャフト6の軸線L方向に3個のコイル支持片21cが突出する。コイル支持片21cは、軸線Lに直交する断面がC字状に形成されると共に、軸線L方向に延在してコア5のT字状部5a間に形成されたコイル収容空間S内に外側から差し込まれる。
【0019】
第2のインシュレータ22の中央には、シャフト6が貫通する円筒状のボス部22aが設けられ、このボス部22aには、径方向に突出する3本のT字状部22bが一体に形成されている。各T字状部22bは、コア5のT字状部5aに対応する形状を有すると共に、コア5の後端面に当接する。
【0020】
隣接するT字状部22b間でT字状部22bの縁からシャフト6の軸線L方向に3個のコイル支持片22cが突出する。コイル支持片22cは、軸線Lに直交する断面がC字状に形成されると共に、軸線L方向に延在してコア5のT字状部5a間に形成されたコイル収容空間S内に外側から差し込まれる。
【0021】
さらに、第2のインシュレータ22には、T字状部22bの外周端から軸線L方向に延在するコミテータ絶縁部(電気絶縁部)22dが一体的に形成され、コミテータ絶縁部22dは、コア5の外周面5bを略覆うように湾曲している。
【0022】
3枚一組の各コミテータ30は、コア5の外周面5b上に配置されたコミテータ絶縁部22d上に当接される整流子本体30aと、整流子本体30aの後端部から直角に延在してT字状部22bに当接する脚部30bと、脚部30bの端部から直角に延在してボス部22aに当接する湾曲状の突出部30cとからなる。そして、この整流子本体30aは、湾曲してコア5の外周面5bを略覆うように軸線L方向に延在し、長大化が図られている。
【0023】
コイルCとコミテータ30の脚部30bとの電気的な絶縁を図るための第3のインシュレータ23は、脚部30bに当接するI字状部23aと、各突出部30cを包囲するボス部23bとからなり、ボス部23bによって、各突出部30cを第2のインシュレータ22のボス部22aに圧着させることで、各コミテータ30をコア5に確実に固定させることができる。
【0024】
コア5に各部品21,22,23,30を組み付けた後、コイルCは、コア5の各T字状部5aに巻かれ、各コイルCの配線CLは、各コミテータ30の突出部30cに半田により接続される。また、コミテータ30の突出部30cには、リングバリスタ45が固定され、配線CLは、リングバリスタ45と突起部30cとに接続される。
【0025】
このように構成された回転子4の整流子本体30aに接触する一対のブラシ40は、バネ材からなると共に、長く平たい板状として軸線L方向に延在する。ブラシ40は、ブラケット11を軸線L方向に貫通するように固定されたターミナル41に対して溶接により固定される基端部40aと、整流子本体30aに接触して給電を可能にする摺動部40bと、基端部40aと摺動部40bとの間で延在する連結部40cと、ブラシ40の先端に形成されて、モータケース2側に向けて曲げられた拡開部40dとからなる。
【0026】
このような構成のブラシ40を採用すると、バネ材からなる板状のブラシ40の長大化を可能にするので、バネ定数の大きなブラシの使用を可能にし、コミテータ30に対してブラシ40を安定して接触させることができる。これによって、回転子4の回転ムラによるブラシの接触ムラを低減させることができ、モータを安定して回転させることができる。
【0027】
拡開部40dを採用すると、モータ1の組立て時に、モータケース2内の整流子本体30aとブラシ40とを接触させるに際、ブラシ40をモータケース2内に軸線L方向に差し込むと、整流子本体30aにブラシ40の拡開部40dが一旦当接する。その後、拡開部40dをガイドとして、ブラシ40が外側に押し広げられ、ブラシ40を軸線L方向に押し込むだけで、整流子本体30aにブラシ40を容易に装着させることができる。このような工夫は、治具等を使わずしてブラシ40を容易に押し広げることができ、モータ1の組立て作業性を良好にしている。
【0028】
さらに、図1及び図2に示すように、マグネット3a,3b間の周方向における隙間Rにブラシ40を配置させているので、モータケース2の内部空間を有効利用して、ブラシ40の設置が、マグネット3a,3bとコア5を近づけることの妨げにならず、モータ1の短小化の一助をなす。
【0029】
このようなモータ1においては、コア5の外周面5bに配置したコミテータ絶縁部(電気絶縁部)22d上にコミテータ30の整流子本体30aが設けられるので、整流子本体30aを、コア5の全長にまで最大限延在させることができる。これによって、コミテータ30の長大化を図ることができる。
【0030】
また、モータ1の全長を決定するにあたり、コミテータ30の整流子本体30aのスペースを考慮しなくてもよいため、コアの長大化を図ることができる。従来のモータケースと本発明のモータケース2とを同じ全長にした場合、本発明のモータ1にあっては、コミテータ30及びブラシ40の長大化及びコア5の長大化を同時に達成させることができる。
【0031】
また、従来のモータトルクと本発明のモータトルクを同じにした場合、本発明のモータにあっては、全長が短くなるような短小化が可能になる。さらに、従来のように、含油軸受とロータの端部との間にコミテータが配置されていると、含油軸受から漏れ出した油がコミテータに流れ込み、コミテータやブラシの摩耗を増大させる不具合が起こり、また、コミテータが含油軸受の摩耗粉の影響も受けるが、本発明に係るモータ1では、このような事態をも回避させている。
【0032】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、二色成形によって整流子本体30aが第2のインシュレータ22のコミテータ絶縁部22dに固着されていてもよい。また、コア5に絶縁コーティングを施し、電気絶縁部であるこの絶縁コーティング上に整流子本体30aを配置させたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るモータの一実施形態を示し、図2のA−A断面図である。
【図2】図1に示されたモータの背面図である。
【図3】本発明のモータに適用される回転子及びブラシを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1…モータ、2…モータケース、3a,3b…マグネット、4…回転子、5…コア、6…シャフト、22d…コミテータ絶縁部(電気絶縁部)、30…コミテータ、30a…整流子本体、40…ブラシ、40d…拡開部、C…コイル、L…軸線、R…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに固定されたコアにコイルが巻かれた回転子と、モータケースに固定されると共に前記コアに対向して配置されたマグネットと、を有するモータにおいて、
前記コアの外周面に配置された電気絶縁部と、
前記電気絶縁部上に配置された整流子本体を有するコミテータと、
前記整流子本体に接触するブラシと、を備えたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
バネ材からなる板状の前記ブラシは、軸線方向に延在すると共に、前記マグネット間の周方向における隙間に配置されたことを特徴とする請求項1記載のモータ。
【請求項3】
前記ブラシの先端には、前記モータケース側に向けて曲げられた拡開部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−130846(P2010−130846A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304947(P2008−304947)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】