説明

モータ

【課題】アーマチャやブラシの温度上昇を抑制することができるモータを提供すること。
【解決手段】モータはアーマチャに駆動電流を供給するためのブラシ39〜41を保持するブラシホルダ21と、ブラシホルダ21に設けられるとともに、共通ブラシ41とグランド間に電気的に接続され、過電流により温度が第1設定温度(例えば170度)まで上昇するとオフ状態となり第1の設定温度より低い第2設定温度(例えば130度)まで下降するとオン状態となるサーキットブレーカ46と、ブラシホルダ21に設けられ、サーキットブレーカ46とグランドとを電気的に接続するためのアースターミナル45とを備え、過電流に基づいてサーキットブレーカ46にて回路が遮断される。アースターミナル45には、サーキットブレーカ46とグランド側の放熱部品(ギヤハウジング)との間の熱伝導を抑制するための迂回路部45cが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーキットブレーカを備えたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータとしては、ブラシホルダに設けられるとともにブラシとグランド間に電気的に接続され、過電流により温度が第1設定温度(例えば170度)まで上昇するとオフ状態となり第1の設定温度より低い第2設定温度(例えば130度)まで下降するとオン状態となるサーキットブレーカを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなモータでは、例えば過負荷等によりモータがロックされると過電流となりサーキットブレーカの温度が上昇し、その温度が第1設定温度まで上昇するとサーキットブレーカはオフ状態となり回路が遮断される。よって、過電流の状態が長く続くことは防止される。その後、サーキットブレーカは、アースターミナルを介して接続されたグランド側の放熱部品にて放熱さることで冷却され、その温度が第1の設定温度より低い第2設定温度まで下降するとオン状態となり回路が復帰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−6434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなモータでは、回路が復帰したときにモータがロックされたままの状態であると、上記動作(遮断と復帰)を繰り返すことになる。そして、例えば、ワイパ装置用のモータであって、特に寒冷地で積雪等によりモータがロックされる場合では、サーキットブレーカが第1設定温度から第2設定温度まで下降する時間が短くなり、回路が早期に復帰されてしまう場合がある。すると、モータがロックされた状態での電流波形のデューティ比(過電流となっている時間の比率)が大きくなることでアーマチャの温度上昇が発生してしまうという問題がある。このことは、アーマチャやブラシの温度上昇に基づく例えば絶縁皮膜の焼損等のモータの損傷を招く原因となる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、アーマチャやブラシの温度上昇を抑制することができるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、アーマチャに駆動電流を供給するためのブラシを保持するブラシホルダと、前記ブラシホルダに設けられるとともに、前記ブラシとグランド間に電気的に接続され、過電流により温度が第1設定温度まで上昇するとオフ状態となり前記第1の設定温度より低い第2設定温度まで下降するとオン状態となるサーキットブレーカと、前記ブラシホルダに設けられ、前記サーキットブレーカとグランドとを電気的に接続するためのアースターミナルとを備え、過電流に基づいて前記サーキットブレーカにて回路が遮断されるモータであって、前記アースターミナルには、前記サーキットブレーカと前記グランド側の放熱部品との間の熱伝導を抑制する抑制部が設けられたことを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、例えば過負荷等によりモータがロックされると過電流となりサーキットブレーカの温度が上昇し、その温度が第1設定温度まで上昇するとサーキットブレーカはオフ状態となり回路が遮断される。よって、過電流の状態が長く続くことは防止される。その後、サーキットブレーカは、アースターミナルを介して接続されたグランド側の放熱部品にて放熱が行われることで冷却され、その温度が第1の設定温度より低い第2設定温度まで下降するとオン状態となり回路が復帰される。そして、このとき、モータがロックされたままの状態であると、上記動作を繰り返すことになる。
【0009】
そして、アースターミナルには、サーキットブレーカとグランド側の放熱部品との間の熱伝導を抑制する抑制部が設けられるため、サーキットブレーカが第1設定温度から第2設定温度まで下降する時間を長くすることができ、モータがロックされた状態での電流波形のデューティ比(過電流となっている時間の比率)を小さくすることができる。よって、デューティ比(過電流となっている時間の比率)が大きくなることで発生するアーマチャやブラシの温度上昇を抑制することができる。即ち、前記抑制部を備えず、サーキットブレーカが第1設定温度から第2設定温度まで下降する時間が短い場合では、モータがロックされた状態での電流波形のデューティ比(過電流となっている時間の比率)が大きくなることでアーマチャやブラシの温度上昇が発生するが、これを回避することができる。その結果、アーマチャやブラシの温度上昇に基づくモータの損傷を回避することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のモータにおいて、前記抑制部は、迂回した形状の迂回路部であることを要旨とする。
同構成によれば、抑制部は、迂回した形状の迂回路部であるため、簡単な構成で具体的に請求項1に記載の発明の効果を得ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のモータにおいて、前記迂回路部は、前記アースターミナルの板厚方向と直交する幅方向に、その幅以上に最短経路から外れてから戻る迂回した形状とされたことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、迂回路部は、アースターミナルの板厚方向と直交する幅方向に、その幅以上に最短経路から外れてから戻る迂回した形状とされるため、サーキットブレーカとグランド側の放熱部品との間の熱伝導を十分効果的に抑制することができるとともに、板材からアースターミナルを打ち抜く際に同時に容易に形成することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載のモータにおいて、前記迂回路部は、前記幅方向が前記アーマチャの径方向と沿うように配置されたことを要旨とする。
同構成によれば、迂回路部は、前記幅方向がアーマチャの径方向と沿うように配置されるため、例えば、アーマチャ側から飛散してくるブラシの摩耗粉が迂回路部を短絡して前記熱伝導を抑制する効果を阻害してしまうことが防止される。言い換えると、例えば、迂回路部の板厚方向がアーマチャの径方向と沿うように配置されると、アーマチャ側から飛散してくるブラシの摩耗粉を受け止め易く、そのブラシの摩耗粉が迂回路部を短絡してしまい易い構成となり、前記熱伝導を抑制する効果を阻害してしまう虞があるが、これを防止することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項2に記載のモータにおいて、前記迂回路部は、前記アースターミナルの板厚方向に、その板厚以上に最短経路から外れてから戻る迂回した形状とされたことを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、迂回路部は、アースターミナルの板厚方向に、その板厚以上に最短経路から外れてから戻る迂回した形状とされるため、ばね性を有することになり、例えば、アースターミナルの寸法誤差等を吸収することができ、その端子をサーキットブレーカの端子との接続位置に合わせて、容易且つ良好な接続を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アーマチャやブラシの温度上昇を抑制することができるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態におけるモータの一部断面図。
【図2】本実施の形態におけるブラシホルダの斜視図。
【図3】本実施の形態におけるブラシホルダの平面図。
【図4】本実施の形態におけるブラシホルダの一部分解斜視図。
【図5】別例における迂回路部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図4に従って説明する。
図1に示すように、モータ1は、車両のフロントガラスに付着した雨滴等を払拭する車両用ワイパ装置の駆動源として用いられるものである。このモータ1は、モータ本体2及び減速部3から構成されている。
【0019】
モータ本体2のヨークハウジング4は、導電性金属材料からなり、略有底円筒状に形成されている。ヨークハウジング4の内周面には対向する二対(計4つ)のマグネット5が固定され、各マグネット5の内側にはアーマチャ(回転子)6が回転可能に収容されている。ヨークハウジング4の底部には、アーマチャ6の回転軸7の基端部を回転可能に支持する軸受8が設けられている。ヨークハウジング4の開口部4aには、減速部3のギヤハウジング10が、突出した回転軸7の先端側を覆うように組み付けられている。
【0020】
ギヤハウジング10は、アルミニウム合金等の導電性金属材料からなり、ヨークハウジング4の開口部4aとほぼ同形状をなす開口部10aを有している。そして、ギヤハウジング10は、回転軸7の先端側及び図示しないウォームホイール等を収容可能な形状に形成されている。ギヤハウジング10内には、回転軸7の中央部を回転可能に支持する軸受11が設けられるとともに、回転軸7の先端部を回転可能に支持する軸受(図示略)が設けられている。前記軸受11より先端側の回転軸7にはウォーム(図示略)が形成され、そのウォームはウォームホイールと噛合されている。ウォームホイールの軸中心には出力軸(図示略)が設けられ、減速部3では回転軸7の回転を減速して出力可能とされている。尚、このギヤハウジング10は、導電性金属材料からなる図示しない取付ブラケットを介して車両のボディに対して取り付けられて電気的にグランド接続されている。そして、出力軸には、車両用ワイパ装置のリンク機構を介してワイパアームが駆動連結されることになり、出力軸が回転することにより、ワイパアームが所定の払拭動作を行うことになる。
【0021】
又、ギヤハウジング10の開口部10a内には、前記モータ本体2の一部を構成するブラシホルダ21(図2〜図4参照)が組み付けられている。このブラシホルダ21は、絶縁材からなり略円環状をなすホルダベース22を備えている。このホルダベース22(ブラシホルダ21)は、その中央部に回転軸7及び該回転軸7に固定された整流子6aが挿通されるように配置される。
【0022】
ホルダベース22には、2つのノイズ防止用のチョークコイル31,32と、3つのブラシ支持ターミナル33〜35と、3つのブラシホルダ部材36〜38と、正極側の低速用のブラシ39及び高速用のブラシ40と、低速用及び高速用のブラシ39,40と共にして使用される負極側の共通ブラシ41と、3つの捩りコイルばね42〜44と、アースターミナル45と、サーキットブレーカ46とが組付けられる。
【0023】
チョークコイル31,32は、例えば棒状のフェライト磁心31a,32aにコイルが巻かれたものであり、ホルダベース22に立設された収容部22a内にそれぞれ収容され、その下端部が、ギヤハウジング10のコネクタ部10b(図1参照)に接続される図示しない外部電源の外部コネクタ(その正極側ターミナル)にそれぞれ電気的に接続されることになる。
【0024】
ブラシ支持ターミナル33〜35及びアースターミナル45は、導電性金属板材からプレス装置等により打ち抜かれて折曲形成されてなる。そして、低速用のブラシ39に対応したブラシ支持ターミナル33は、一方のチョークコイル31の上端部に接続されるとともに、低速用のブラシ39と対応した位置まで延びてブラシ支持部33aがホルダベース22の上面に敷設されている。又、高速用のブラシ40に対応したブラシ支持ターミナル34は、他方のチョークコイル32の上端部に接続されるとともに、高速用のブラシ40と対応した位置まで延びてブラシ支持部34aがホルダベース22の上面に敷設されている。又、負極側の共通ブラシ41に対応したブラシ支持ターミナル35は、ホルダベース22のブレーカ保持部22bと対応した位置から負極側の共通ブラシ41と対応した位置まで延びてブラシ支持部35aがホルダベース22の上面に敷設されている。尚、低速用のブラシ39と対応した位置のブラシ支持部33aは、前記チョークコイル31,32から機械的にほぼ180°離間した負極側の共通ブラシ41と対応した位置のブラシ支持部35aに対して回転方向(図3において時計回り方向)に機械的に90°離間した位置に設けられる。又、高速用のブラシ40と対応した位置のブラシ支持部34aは、前記負極側の共通ブラシ41と対応した位置のブラシ支持部35aに対して、前記低速用のブラシ39と対応した位置のブラシ支持部33aの反対側で反回転方向(図3において反時計回り方向)に機械的に90°より大きな角度離間した位置に設けられる。
【0025】
ブラシホルダ部材36〜38は、導電性金属板材からプレス装置等により打ち抜かれて折曲形成されてなり、一対の平行な側壁とそれらの上端を繋ぐ上壁とからなる。そして、ブラシホルダ部材36〜38は、側壁の下端から延びる固定片が前記ブラシ支持部33a〜35a及びホルダベース22を貫通して折曲げられる(かしめられる)ことで固定されている。そして、各ブラシ39〜41は、ブラシ支持部33a〜35aとブラシホルダ部材36〜38とで形成される略四角筒状の内部に径方向に移動可能に収容保持される。又、各ブラシ39〜41は、それぞれピッグテール39a〜41aを介してブラシ支持部33a〜35aに電気的に確実に接続される。又、各ブラシ39〜41は、ホルダベース22に立設されたばね支持柱22cに外嵌されて支持された捩りコイルばね42〜44によって径方向内側(整流子6a側)に付勢されている。
【0026】
アースターミナル45は、ホルダベース22の前記ブレーカ保持部22bと対応した位置からホルダベース22の取付け部22d(図3参照)と対応した位置まで延びて配置されている。
【0027】
詳しくは、まず本実施の形態のブレーカ保持部22bは、図2に示すように、ホルダベース22における前記負極側の共通ブラシ41と前記高速用のブラシ40との間であって負極側の共通ブラシ41寄りで下方が開口した有底四角筒状に上方に膨出するように形成されている。そして、ブレーカ保持部22bには、サーキットブレーカ46が下方から挿入されて保持される。又、この状態で、サーキットブレーカ46の第1及び第2端子46a,46bは、ブレーカ保持部22bの底部(上方を覆う面)を貫通して上方に突出して配置される。又、この第1端子46aには、前記ブラシ支持ターミナル35の端子35bが電気的に接続される。又、前記サーキットブレーカ46は、内部にバイメタルスイッチを収容してなり、過電流により温度が第1設定温度(例えば、170度)まで上昇するとオフ状態となり回路を遮断し、前記第1の設定温度より低い第2設定温度(例えば、130度)まで下降するとオン状態に復帰するものである。
【0028】
又、取付け部22dは、図3に示すように、ホルダベース22における前記負極側の共通ブラシ41と前記高速用のブラシ40との間であって高速用のブラシ40寄りで上下(表裏)に貫通するとともに径方向外側が開口した形状に形成されている。この取付け部22dには、上下方向に貫通する筒状のゴムブッシュ47が径方向外側から嵌着される。尚、ホルダベース22における前記負極側の共通ブラシ41と前記低速用のブラシ39との間にも、図3に示すように、同様の取付け部22eが形成され、同様のゴムブッシュ48が嵌着されている。
【0029】
そして、アースターミナル45は、図2及び図4に示すように、サーキットブレーカ46の第2端子46bに接続されるブレーカ側端子45aと、前記ゴムブッシュ47の上面に面接触するグランド側端子45bと、ブレーカ側端子45aとグランド側端子45bとを繋ぐ抑制部としての迂回路部45cとを備える。迂回路部45cは、サーキットブレーカ46(ブレーカ側端子45a)とグランド側(グランド側端子45b)の放熱部品(本実施の形態ではギヤハウジング10)との間の熱伝導を抑制すべく迂回した形状とされている。尚、迂回した形状とは、単に障害物を避けるために1回屈曲しただけの形状は含まない形状であって、最短距離での経路から一度外れて戻る形状である。具体的には、本実施の形態の迂回路部45cは、アースターミナル45の板厚方向と直交する幅方向(板面に平行な方向)が前記アーマチャ6の径方向と沿うブレーカ保持部22bの側壁に沿って配置されている。そして、迂回路部45cは、前記幅方向に、その幅以上に最短経路(上下に延びる経路)から外れてから戻る迂回した形状とされている。より詳しくは、迂回路部45cはブレーカ側端子45a側の上方から下方に延びる第1経路45dと、その先端から第1経路45dの径方向に沿った幅以上に径方向内側に延びる第2経路45eと、その先端から下方に延びる第3経路45fと、その先端から径方向外側に延びて戻る第4経路45gと、その先端から下方に延びる第5経路45hとからなる。
【0030】
そして、ホルダベース22(ブラシホルダ21)は、前記取付け部22d,22e及びゴムブッシュ47,48を貫通してギヤハウジング10の雌ねじ10c(図1に片方のみ図示)に螺合されるネジ49,50によってギヤハウジング10に固定されている。この際、アースターミナル45のグランド側端子45bは、ネジ49の頭によって締結され、グランド接続された放熱部品としてのギヤハウジング10に接続される(押圧接触されるとともに電気的にも接続される)ことになる。
【0031】
上記モータ1では、例えば、外部電源からチョークコイル31、ブラシ支持ターミナル33、低速用のブラシ39を介して整流子6a(アーマチャ6の巻線)に駆動電流が供給され、更に負極側の共通ブラシ41、ブラシ支持ターミナル35、サーキットブレーカ46、アースターミナル45、ギヤハウジング10の順に電流が流れることになる。
【0032】
次に、上記実施の形態の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)例えば、特に寒冷地で積雪等によるワイパアームへの過負荷によりモータ1の回転がロックされると過電流が生じてサーキットブレーカ46の温度が上昇し、その温度が第1設定温度(例えば170度)まで上昇するとサーキットブレーカ46はオフ状態となり回路が遮断される。よって、過電流の状態が長く続くことは防止される。その後、サーキットブレーカ46は、アースターミナル45を介して接続されたグランド側のギヤハウジング10にて放熱が行われることで冷却され、その温度が第1の設定温度より低い第2設定温度(例えば130度)まで下降するとオン状態となり回路が復帰される。そして、このとき、モータ1の回転がロックされたままの状態であると、上記動作を繰り返すことになる。
【0033】
そして、アースターミナル45には、サーキットブレーカ46とグランド側のギヤハウジング10との間の熱伝導を抑制するための迂回路部45cが設けられるため、サーキットブレーカ46が第1設定温度から第2設定温度まで下降する時間を長くすることができる。これにより、モータ1の回転が(長時間)ロックされた状態での電流波形のデューティ比(過電流となっている時間の比率)を小さくすることができる。よって、デューティ比(過電流となっている時間の比率)が大きくなることで発生するアーマチャ6やブラシ39〜41の温度上昇を抑制することができる。即ち、前記迂回路部45cを備えず、サーキットブレーカ46が第1設定温度から第2設定温度まで下降する時間が短い場合では、モータ1がロックされた状態での電流波形のデューティ比(過電流となっている時間の比率)が大きくなることでアーマチャ6やブラシ39〜41の温度上昇が発生するが、これを回避することができる。具体的には、本実施の形態のモータ1の場合では、前記デューティ比が30%を越えると、アーマチャ6やブラシ39〜41の温度上昇が発生する。そして、実験結果では、寒冷地の条件下において迂回路部45cを備えない場合のデューティ比は45%となる。そこで、本実施の形態では、寒冷地の条件下においてデューティ比が30%以下の25%となるように迂回路部45cを設けたため、アーマチャ6やブラシ39〜41の温度上昇を回避することができる。その結果、アーマチャ6やブラシ39〜41の温度上昇に基づくモータ1の損傷を回避することができる。
【0034】
(2)サーキットブレーカ46とグランド側のギヤハウジング10(放熱部品)との間の熱伝導を抑制するための抑制部を、迂回した形状の迂回路部45cとした、即ち、サーキットブレーカ46からグランド側のギヤハウジング10までの熱伝導の伝達経路となるアースターミナル45を積極的に長く形成したため、簡単な構成で具体的に上記(1)に記載の効果を得ることができる。尚、熱伝導を抑制するための抑制部として、アースターミナル45のサーキットブレーカ46とグランド側のギヤハウジング10との間の一部で狭小にして熱伝導を抑制することもできるが、この場合、熱伝導抑制効果に比べて電気抵抗も大きく増加してしまうため、上述の如く迂回した形状の迂回路部45cを設ける構成とすることが好ましい。
【0035】
(3)迂回路部45cは、アースターミナル45の板厚方向と直交する幅方向に、その幅以上に最短経路から外れてから戻る迂回した形状とされるため、サーキットブレーカ46とギヤハウジング10との間の熱伝導を十分効果的に(殆ど電気抵抗を増加させることなく)抑制することができるとともに、板材からアースターミナル45を打ち抜く際に同時に容易に形成することができる。
【0036】
(4)迂回路部45cは、前記幅方向がアーマチャ6の径方向と沿うように配置されるため、例えば、アーマチャ6側から飛散してくるブラシ39〜41の摩耗粉が付着し迂回路部45cを短絡して前記熱伝導を抑制する効果を阻害してしまうことが防止される。言い換えると、例えば、迂回路部の板厚方向がアーマチャ6の径方向と沿うように配置されると、アーマチャ側から飛散してくるブラシ39〜41の摩耗粉を受け止め易く、そのブラシの摩耗粉が迂回路部を短絡してしまい易い構成となり、前記熱伝導を抑制する効果を阻害してしまう虞があるが、これを防止することができる。特に本実施の形態のように、迂回路部45cを最短経路から径方向内側に外してから戻る形状とすると、迂回路部45cの径方向内側に開口がないことになり、前記第2経路45eと第4経路45gとの間にブラシ39〜41の摩耗粉が入り込み難くなるため、迂回路部45cが短絡され難く熱伝導を抑制する効果が阻害されてしまうことが低減される。
【0037】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態の迂回路部45cは、サーキットブレーカ46とグランド側の放熱部品(ギヤハウジング10)との間の熱伝導を抑制することができれば、他の抑制部に変更してもよい。
【0038】
例えば、上記実施の形態の迂回路部45cを、図5に示すように迂回した形状の迂回路部51に変更してもよい。この迂回路部51は、前記アースターミナル45の板厚方向に、その板厚以上に最短経路から外れてから戻る(2回外れて2回戻る)迂回した形状とされている。このようにすると、迂回路部51は、ばね性を有することになり、例えば、アースターミナル45の寸法誤差等を吸収することができ、その端子(ブレーカ側端子45a)をサーキットブレーカ46の端子(第2端子46b)との接続位置に合わせて、容易且つ良好な接続を行うことができる。
【0039】
又、例えば、上記実施の形態の迂回路部45cは、最短経路から径方向内側に外れてから戻る形状としたが、最短経路から径方向外側に外れてから戻る形状としてもよいし、それらが組み合わされた(2回外れて2回戻る)形状としてもよい。
【0040】
又、例えば、上記実施の形態の迂回路部45cは、アースターミナル45の板厚方向と直交する幅方向がアーマチャ6の径方向に沿うように配置されるとしたが、これに限定されず、例えば、迂回路部の板厚方向がアーマチャ6の径方向と沿うように配置してもよい。
【0041】
・上記実施の形態では、サーキットブレーカ46は、第1設定温度が170度で第2設定温度が130度のものを用いたが、これに限定されず、第1及び第2設定温度が他の値のサーキットブレーカを用いてもよい。
【0042】
・上記実施の形態では、正極側の低速用のブラシ39と高速用のブラシ40とを備えたモータ1に具体化したが、正極側のブラシが1個のモータに具体化してもよい。又、上記実施の形態では、車両用ワイパ装置の駆動源として用いられるモータ1に具体化したが、これに限定されず、他の装置に用いられるモータに具体化してもよい。
【符号の説明】
【0043】
6…アーマチャ、10…ギヤハウジング(放熱部品)、21…ブラシホルダ、39〜41…ブラシ、45…アースターミナル、45c,51…迂回路部(抑制部)、46…サーキットブレーカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーマチャに駆動電流を供給するためのブラシを保持するブラシホルダと、
前記ブラシホルダに設けられるとともに、前記ブラシとグランド間に電気的に接続され、過電流により温度が第1設定温度まで上昇するとオフ状態となり前記第1の設定温度より低い第2設定温度まで下降するとオン状態となるサーキットブレーカと、
前記ブラシホルダに設けられ、前記サーキットブレーカとグランドとを電気的に接続するためのアースターミナルと
を備え、過電流に基づいて前記サーキットブレーカにて回路が遮断されるモータであって、
前記アースターミナルには、前記サーキットブレーカと前記グランド側の放熱部品との間の熱伝導を抑制する抑制部が設けられたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記抑制部は、迂回した形状の迂回路部であることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記迂回路部は、前記アースターミナルの板厚方向と直交する幅方向に、その幅以上に最短経路から外れてから戻る迂回した形状とされたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のモータにおいて、
前記迂回路部は、前記幅方向が前記アーマチャの径方向と沿うように配置されたことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記迂回路部は、前記アースターミナルの板厚方向に、その板厚以上に最短経路から外れてから戻る迂回した形状とされたことを特徴とするモータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−223656(P2011−223656A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87016(P2010−87016)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】