説明

モード合分波器、光送受信装置及び光通信システム

【課題】本発明は、モードの合波の精度を良くし、合波時の損失を低減し、既存のファイバデバイスを用いてモード多重伝送を実現することを目的とする。
【解決手段】本発明は、第n次モード(nは正の整数)を有する光信号及び第(n+m)次モード(mは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である第1導波路11と、第1導波路11の第(n+m)次モードと結合可能である第n次モード(nは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である第2導波路12と、第2導波路12が伝搬する第n次モードを有する光信号を、第1導波路11の第(n+m)次モードを有する光信号に変換し、第1導波路11が伝搬する第n次モードを有する光信号に、変換後の第1導波路11の第(n+m)次モードを有する光信号を合波するモード合波部と、を備えることを特徴とするモード合波器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチモード光ファイバを利用する光通信システムにおいて、複数のモードを有する光信号の生成又は分波を行なう技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光ファイバネットワークにおけるトラフィックは増大しており、伝送高速度化や多値変調技術や波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)など、様々な手法を用いて伝送容量の拡大を図ってきた。しかしながら、既設の伝送路や従来の伝送方式を用いた伝送容量の拡大が将来的に困難になると予想されるため、波長領域の拡大、新たな伝送ファイバや伝送方式が検討されている。
【0003】
波長領域を拡大する方法として、現在利用されていない波長帯を利用して、広波長域のWDMを実現して、伝送容量を拡大する検討もなされている。しかしながら、伝送損失が波長帯により異なるため、使用できる波長帯は限定されると考えられる。さらに、広波長域にわたり増幅が可能な光増幅器も実現が困難であるため、広波長域のWDMを実現するためには多くの課題がある。
【0004】
新たな伝送ファイバに関しては、非特許文献1では、ファイバ非線形による波形歪を抑圧するために、実効断面積(Aeff)を拡大できるファイバ構造が提案されている。ファイバ非線形の抑圧は、ファイバへ入力できる入力パワーの増加につながり、伝送高速度化や更なる多値化を可能にするなど、優位性を得られる。しかし、Aeffの拡大は単一モード動作を前提としており、曲げ損失と単一モード動作がトレードオフの関係にあるため、Aeffの大幅な拡大が困難という課題がある。
【0005】
新たな伝送方式に関しては、非特許文献2では、無線の伝送方式において周波数利用効率を向上させるために利用されている直交した周波数成分を利用するOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が、非特許文献3では、マルチモード光ファイバを適用するMIMO(Multiple Input Multiple Output)が、検討されている。しかし、送受信器において複雑な信号処理を必要とするため、演算処理の高速化などの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−288911号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T.Matsui,T.Sakamoto,K.Tsujikawa and S.Tomota,“Single−mode photonic crystal fiber with low bending loss and Aeff of > 200μm2 for ultra high−speed WDM transmission,” OFC2010,PDPA2 (2010).
【非特許文献2】Benn C.Thomsen,“MIMO enabled 40Gb/s transmission using mode division multiplexing in multimode fiber,” OFC2010,OThM6 (2010).
【非特許文献3】C.P.Tsekrekos and A.M.J.Koonen,“Mode−selective spatial filtering for increased robustness in a mode group diversity multiplexing link,” Opt.Lett.32,1041−1043 (2007).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、光ファイバの伝搬モードを利用した多重方法が提案されている。しかし、所望の高次モードを励振する方法が提案されておらず、単一波長で利用することを前提としているため、大容量化の実現が困難という課題がある。
【0009】
非特許文献3では、光ファイバの伝搬モードを利用するためのモード合分波器が提案されている。ここで、光ファイバでの励振位置をモードごとに異ならせることによりモード結合を行ない、光ファイバでの受信位置をモードごとに異ならせることによりモード分離を行なう。つまり、精度の良いモードの合分波方法及び多数のモードの多重・分離方法が提案されていないため、多重信号間の損失やクロストークが存在することから、構成が複雑になり長距離大容量伝送の実現が困難という課題がある。
【0010】
特許文献1及び非特許文献3では、伝搬モードが複数存在する光ファイバを利用して、光ファイバの伝搬モードそれぞれをキャリアとして利用するモード多重伝送において、既存のファイバデバイスは基本モードでの動作が前提であるため、既存のファイバデバイスをそのまま用いてモード多重伝送を実現することは困難である。
【0011】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、モードの合波や分波の精度を良くし、合波時の損失や分波時のクロストークを低減し、既存のファイバデバイスを用いてモード多重伝送を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、モード合分波器において、第1導波路は、第n次モードを有する光信号及び第(n+m)次モード(n及びmは正の整数)を有する光信号を伝搬可能であり、第2導波路は、第n次モード(nは正の整数)を有する光信号を伝搬可能であり、第1導波路の第(n+m)次モード及び第2導波路の第n次モードが結合可能であるようにした。
【0013】
モード合波時には、第1導波路が第n次モードを有する光信号を入力され、第2導波路が第n次モードを有する光信号を入力され、第1導波路が第n次モード及び第(n+m)次モードを有する光信号を出力するようにした。
【0014】
モード分波時には、第1導波路が第n次モード及び第(n+m)次モードを有する光信号を入力され、第2導波路が第n次モードを有する光信号を出力し、第1導波路が第n次モードを有する光信号を出力するようにした。
【0015】
具体的には、本発明は、第n次モード(nは正の整数)を有する光信号及び第(n+m)次モード(mは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である第1導波路と、前記第1導波路の第(n+m)次モードと結合可能である第n次モード(nは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である第2導波路と、前記第2導波路が伝搬する第n次モードを有する光信号を、前記第1導波路の第(n+m)次モードを有する光信号に変換し、前記第1導波路が伝搬する第n次モードを有する光信号に、変換後の前記第1導波路の第(n+m)次モードを有する光信号を合波するモード合波部と、を備えることを特徴とするモード合波器である。
【0016】
この構成によれば、モードの合波の精度を良くし、合波時の損失を低減するモード合波器を提供することができる。
【0017】
また、本発明は、n=nであることを特徴とするモード合波器である。
【0018】
また、本発明は、n=n=1であり、第n次モード及び第n次モードは基本モードであることを特徴とするモード合波器である。
【0019】
この構成によれば、第1導波路及び第2導波路は共通して同一モード例えば基本モードを有する光信号を入力するため、同一モード例えば基本モードを有する光信号を出力する既存の送信機を用いてモード多重伝送を実現することができる。
【0020】
また、本発明は、第n次モード(nは正の整数)を有する光信号及び第(n+m)次モード(mは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である第1導波路と、前記第1導波路の第(n+m)次モードと結合可能である第n次モード(nは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である第2導波路と、前記第1導波路が伝搬する第(n+m)次モードを有する光信号を、前記第2導波路の第n次モードを有する光信号に変換し、前記第1導波路が伝搬する第n次モードを有する光信号及び第(n+m)次モードを有する光信号から、変換後の前記第2導波路の第n次モードを有する光信号を分波するモード分波部と、を備えることを特徴とするモード分波器である。
【0021】
この構成によれば、モードの分波の精度を良くし、分波時のクロストークを低減するモード分波器を提供することができる。
【0022】
また、本発明は、n=nであることを特徴とするモード分波器である。
【0023】
また、本発明は、n=n=1であり、第n次モード及び第n次モードは基本モードであることを特徴とするモード分波器である。
【0024】
この構成によれば、第1導波路及び第2導波路は共通して同一モード例えば基本モードを有する光信号を出力するため、同一モード例えば基本モードを有する光信号を入力する既存の受信機を用いてモード多重伝送を実現することができる。
【0025】
また、本発明は、モード合波器と、前記第1導波路に第n次モードを有する光信号を出力する第1送信機と、前記第2導波路に第n次モードを有する光信号を出力する第2送信機と、を備えることを特徴とする光送信装置である。
【0026】
この構成によれば、モードの合波の精度を良くし、合波時の損失を低減し、同一モード例えば基本モードを有する光信号を出力する既存の送信機を用いてモード多重伝送を実現する光送信装置を提供することができる。
【0027】
また、本発明は、モード分波器と、前記第1導波路から第n次モードを有する光信号を入力される第1受信機と、前記第2導波路から第n次モードを有する光信号を入力される第2受信機と、を備えることを特徴とする光受信装置である。
【0028】
この構成によれば、モードの分波の精度を良くし、分波時のクロストークを低減し、同一モード例えば基本モードを有する光信号を入力する既存の受信機を用いてモード多重伝送を実現する光受信装置を提供することができる。
【0029】
また、本発明は、光送信装置と、光受信装置と、前記光送信装置及び前記光受信装置を接続し、前記第1導波路の第n次モードを有する光信号及び前記第1導波路の第(n+m)次モードを有する光信号を伝送するマルチモード光ファイバと、を備えることを特徴とする光通信システムである。
【0030】
この構成によれば、モードの合波や分波の精度を良くし、合波時の損失や分波時のクロストークを低減し、同一モード例えば基本モードを有する光信号を入出力する既存の送受信機を用いてモード多重伝送を実現する光通信システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、モードの合波や分波の精度を良くし、合波時の損失や分波時のクロストークを低減し、既存のファイバデバイスを用いてモード多重伝送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1のモード合分波器の構成を示す図である。
【図2】実施形態2のモード合分波器の構成を示す図である。
【図3】実施形態2における比屈折率差及び導波路幅の関係を示す図である。
【図4】実施形態2における比屈折率差及び相互作用長の関係を示す図である。
【図5】実施形態2における使用波長及び規格化透過率の関係を示す図である。
【図6】実施形態2のモード合分波器の設計方法を示す図である。
【図7】実施形態3のモード合分波器の構成を示す図である。
【図8】実施形態4の光通信システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0034】
(実施形態1)
実施形態1のモード合分波器の構成を図1に示す。モード合分波器1は、第1導波路11及び第2導波路12から構成される。第1導波路11は、第n次モード(nは正の整数)を有する光信号及び第(n+m)次モード(mは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である。第2導波路12は、第n次モード(nは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である。第1導波路11の第(n+m)次モード及び第2導波路12の第n次モードは、結合可能であり、このことについて説明する。
【0035】
図1の下側は、第1導波路11及び第2導波路12において、実際の屈折率を実線で示し、各モードの実効屈折率を破線で示す。実際の屈折率は、第1導波路11及び第2導波路12のコア部分で大きくなり、第1導波路11及び第2導波路12のクラッド部分で小さくなる。第1導波路11の第(n+m)次モードの実効屈折率は、第2導波路12の第n次モードの実効屈折率とほぼ一致し、第1導波路11の第n次モードの実効屈折率より小さい。よって、第1導波路11の第(n+m)次モード及び第2導波路12の第n次モードは、位相整合が図られて結合可能である。
【0036】
モード合分波器1がモード合波器として機能する場合について説明する。図1の左側が入力側であり、図1の右側が出力側である。第1導波路11は、第n次モードを有する光信号を入力される。第2導波路12は、第n次モードを有する光信号を入力される。第1導波路11及び第2導波路12が並行するモード合波部では、第2導波路12が伝搬する第n次モードを有する光信号を、第1導波路11の第(n+m)次モードを有する光信号に変換し、第1導波路11が伝搬する第n次モードを有する光信号に、変換後の第1導波路11の第(n+m)次モードを有する光信号を合波する。このように、第n次モード及び第(n+m)次モードを有する光信号が、モード合波されている。
【0037】
本発明では、非特許文献3と異なり、光ファイバでの励振位置をモードごとに異ならせてモード結合を行なうことはなく、第1導波路11及び第2導波路12の相互間で、異なるモード間の結合を図ることによりモード合波を行なう。よって、モードの合波の精度を良くし、合波時の損失を低減するモード合波器を提供することができる。
【0038】
モード合波時において、n=nであってもよく、n=n=1であり、第n次モード及び第n次モードは基本モードであってもよい。このときには、第1導波路11及び第2導波路12は共通して同一モード例えば基本モードを有する光信号を入力するため、同一モード例えば基本モードを有する光信号を出力する既存の送信機を用いてモード多重伝送を実現することができる。実施形態2−4では、n=n=1であり、第n次モード及び第n次モードは基本モードであるとして、説明を行なう。
【0039】
モード合分波器1がモード分波器として機能する場合について説明する。図1の右側が入力側であり、図1の左側が出力側である。第1導波路11は、第n次モード及び第(n+m)次モードを有する光信号を入力される。第1導波路11及び第2導波路12が並行するモード分波部では、第1導波路11が伝搬する第(n+m)次モードを有する光信号を、第2導波路12の第n次モードを有する光信号に変換し、第1導波路11が伝搬する第n次モードを有する光信号及び第(n+m)次モードを有する光信号から、変換後の第2導波路12の第n次モードを有する光信号を分波する。このように、第n次モード及び第(n+m)次モードを有する光信号が、モード分波されている。
【0040】
本発明では、非特許文献3と異なり、光ファイバでの受信位置をモードごとに異ならせてモード分離を行なうことはなく、第1導波路11及び第2導波路12の相互間で、異なるモード間の結合を図ることによりモード分波を行なう。よって、モードの分波の精度を良くし、分波時のクロストークを低減するモード分波器を提供することができる。
【0041】
モード分波時において、n=nであってもよく、n=n=1であり、第n次モード及び第n次モードは基本モードであってもよい。このときには、第1導波路11及び第2導波路12は共通して同一モード例えば基本モードを有する光信号を出力するため、同一モード例えば基本モードを有する光信号を入力する既存の受信機を用いてモード多重伝送を実現することができる。実施形態2−4では、n=n=1であり、第n次モード及び第n次モードは基本モードであるとして、説明を行なう。
【0042】
(実施形態2)
実施形態2のモード合分波器の構成を図2に示す。モード合分波器1は、第1導波路11及び第2導波路12から構成される。第1導波路11の第1高次モード及び第2導波路12の基本モードは、結合可能である。モード合波時には、実施形態1と同様に、第1導波路11及び第2導波路12に基本モードを有する光信号が入力され、第1導波路11から基本モード及び第1高次モードを有する光信号が出力される。モード分波時には、実施形態1と同様に、第1導波路11に基本モード及び第1高次モードを有する光信号が入力され、第1導波路11及び第2導波路12から基本モードを有する光信号が出力される。
【0043】
図2の下側は、第1導波路11及び第2導波路12において、実際の屈折率の分布を示す。第1導波路11及び第2導波路12のコア部分の屈折率はnであり、第1導波路11及び第2導波路12のクラッド部分の屈折率はnであり、比屈折率差はΔ=(n−n)/(2n)である。伝搬の方向に垂直な面内で、第1導波路11の断面形状は、幅がw1であり高さがh(=w2)である矩形形状であり、第2導波路12の断面形状は、幅がw2であり高さがh(=w2)である矩形形状である。伝搬の方向に垂直な面内で、第1導波路11及び第2導波路12の相互間の導波路間隔はgであり、伝搬の方向で、第1導波路11及び第2導波路12が並行する相互作用長はLである。
【0044】
第2導波路12についてのw2、h、Δは、使用波長帯において基本モードのみが存在するように設定される。第1導波路11についてのw1、h、Δは、使用波長帯において基本モード及び第1高次モードが存在し、第1導波路11の第1高次モード及び第2導波路12の基本モードが結合するように設定される。gは結合効率が高くなるように狭めに設定されて、Lは結合効率が高くなるように長めに設定される。
【0045】
実施形態2における比屈折率差及び導波路幅の関係を図3に示す。使用波長帯は、1450nm以上を想定している。図3に示した比屈折率差の範囲内では、第1導波路11の幅は第2導波路12の幅のおよそ2.6倍とすればよいことが分かる。
【0046】
実施形態2における比屈折率差及び相互作用長の関係を図4に示す。相互作用長は、導波路間隔が2μmと3μmであるときに、結合効率が所望効率になるよう計算した。相互作用長は、x偏波及びy偏波を有する光信号が入射されるときについて計算した。第1導波路11及び第2導波路12の断面形状は矩形形状であるが、相互作用長の偏波依存性はほとんど認められず、モード合分波器1は偏波多重と併用して使用できることが分かる。
【0047】
実施形態2における使用波長及び規格化透過率の関係を図5に示す。使用波長帯は、1450nmから1650nmまでを想定している。基本モードについての規格化透過率は、第1導波路11に入力される基本モードを有する光信号の強度に対する、第1導波路11から出力される基本モードを有する光信号の強度の比率である。第1高次モードについての規格化透過率は、第2導波路12に入力される基本モードを有する光信号の強度に対する、第1導波路11から出力される第1高次モードを有する光信号の強度の比率である。図5の上段、中段、下段では、Δ=0.35%、0.45%、0.60%である。gは2μmであり、Lは上記のΔ及びgに対して図4に基づき計算したものである。
【0048】
図5のいずれの場合でも、基本モードについての規格化透過率は、全使用波長帯において100%に近くなり、第1高次モードについての規格化透過率は、全使用波長帯において90%を超えている。図5のいずれの場合でも、基本モード及び第1高次モードについての規格化透過率は、全使用波長帯において偏波依存性はほとんど認められない。
【0049】
実施形態2のモード合分波器の設計方法を図6に示す。第2導波路12について、Δ及びw2を決定する(ステップS1)。第2導波路12において、使用波長帯で単一モードのみが存在するかどうかを確認する(ステップS2)。ステップS2においてYESであれば、ステップS3に進む。ステップS2においてNOであれば、ステップS1に戻り、第2導波路12について、Δ及びw2を再度決定する。ステップS1、S2において、有限要素法などの導波路解析を適用することができる。
【0050】
第1導波路1について、w1を決定する(ステップS3)。第1導波路11の第1高次モードと第2導波路12の基本モードが結合可能であるかどうかを確認する(ステップS4)。ステップS4においてYESであれば、ステップS5に進む。ステップS4においてNOであれば、ステップS3に戻り、第1導波路1について、w1を再度決定する。ステップS3、S4において、有限要素法などの導波路解析を適用することができる。
【0051】
gとLを決定する(ステップS5)。所望の結合効率が得られるかどうかを確認する(ステップS6)。ステップS6においてYESであれば、設計を終了する。ステップS6においてNOであれば、ステップS5に戻り、gとLを再度決定する。ステップS5、S6において、ビーム伝搬法などの伝搬解析を適用することができる。
【0052】
第2導波路12の屈折率分布及び断面形状は、使用波長において基本モードのみが存在するならば、図2の下側に示した屈折率分布及び断面形状に限られない。第1導波路11の屈折率分布及び断面形状は、使用波長において基本モード及び第1高次モードが存在し、第1導波路11の第1高次モード及び第2導波路12の基本モードが結合するならば、図2の下側に示した屈折率分布及び断面形状に限られない。
【0053】
(実施形態3)
実施形態3のモード合分波器の構成を図7に示す。モード合分波器1は、モード合分波器1−1及びモード合分波器1−2を縦列に配置する。モード合分波器1−1は、第1導波路11−1及び第2導波路12−1から構成される。モード合分波器1−2は、第1導波路11−2及び第2導波路12−2から構成される。第1導波路11−1及び第1導波路11−2は、相互に接続されている。第1導波路11−1の第1高次モード及び第2導波路12−1の基本モードは、結合可能である。第1導波路11−2の第2高次モード及び第2導波路12−2の基本モードは、結合可能である。
【0054】
モード合波時について説明する。まずモード合分波器1−1において、第1導波路11−1及び第2導波路12−1に基本モードを有する光信号が入力され、第1導波路11−1から基本モード及び第1高次モードを有する光信号が出力される。次にモード合分波器1−2において、第1導波路11−2に基本モード及び第1高次モードを有する光信号が入力され、第2導波路12−2に基本モードを有する光信号が入力され、第1導波路11−2から基本モード、第1高次モード及び第2高次モードを有する光信号が出力される。
【0055】
モード分波時について説明する。まずモード合分波器1−2において、第1導波路11−2に基本モード、第1高次モード及び第2高次モードを有する光信号が入力され、第2導波路12−2から基本モードを有する光信号が出力され、第1導波路11−2から基本モード及び第1高次モードを有する光信号が出力される。次にモード合分波器1−1において、第1導波路11−1に基本モード及び第1高次モードを有する光信号が入力され、第2導波路12−1から基本モードを有する光信号が出力され、第1導波路11−1から基本モードを有する光信号が出力される。
【0056】
図7の左下は、第1導波路11−1及び第2導波路12−1において、実際の屈折率の分布を示す。第1導波路11−1及び第2導波路12−1のコア部分の屈折率はnであり、第1導波路11−1及び第2導波路12−1のクラッド部分の屈折率はnである。伝搬の方向に垂直な面内で、第1導波路11−1の断面形状は、幅がw1であり高さがh(=w2)である矩形形状であり、第2導波路12−1の断面形状は、幅がw2であり高さがh(=w2)である矩形形状である。伝搬の方向に垂直な面内で、第1導波路11−1及び第2導波路12−1の相互間の導波路間隔はg1であり、伝搬の方向で、第1導波路11−1及び第2導波路12−1が並行する相互作用長はL1である。
【0057】
図7の右下は、第1導波路11−2及び第2導波路12−2において、実際の屈折率の分布を示す。第1導波路11−2及び第2導波路12−2のコア部分の屈折率はnであり、第1導波路11−2及び第2導波路12−2のクラッド部分の屈折率はnである。伝搬の方向に垂直な面内で、第1導波路11−2の断面形状は、幅がw1であり高さがh(=w2)である矩形形状であり、第2導波路12−2の断面形状は、幅がw3であり高さがh(=w2)である矩形形状である。伝搬の方向に垂直な面内で、第1導波路11−2及び第2導波路12−2の相互間の導波路間隔はg2であり、伝搬の方向で、第1導波路11−2及び第2導波路12−2が並行する相互作用長はL2である。
【0058】
実施形態3における第1導波路11−1、第2導波路12−1、第1導波路11−2及び第2導波路12−2の屈折率分布及び断面形状は、実施形態2における第1導波路11及び第2導波路12の屈折率分布及び断面形状と同様に、設定すればよい。
【0059】
(実施形態4)
実施形態4の光通信システムの構成を図8に示す。光通信システムは、光送信装置T、マルチモード光ファイバF及び光受信装置Rから構成される。光送信装置Tは、モード合波器1M及び以下に説明する第1送信機及び第2送信機から構成される。光受信装置Rは、モード分波器1D及び以下に説明する第1受信機及び第2受信機から構成される。
【0060】
モード合波器1Mとして、実施形態2のモード合分波器1を適用する。第1送信機は、第1導波路11に基本モードを有する光信号を出力する。第2送信機は、第2導波路12に基本モードを有する光信号を出力する。送信機が3個配置されるときには、モード合波器1Mとして、実施形態3のモード合分波器1を適用すればよく、送信機がN個配置されるときには、モード合波器1Mとして、実施形態2のモード合分波器1を(N−1)個縦列に配置したものを適用すればよい。
【0061】
モード分波器1Dとして、実施形態2のモード合分波器1を適用する。第1受信機は、第1導波路11から基本モードを有する光信号を入力する。第2受信機は、第2導波路12から基本モードを有する光信号を入力する。受信機が3個配置されるときには、モード分波器1Dとして、実施形態3のモード合分波器1を適用すればよく、受信機がN個配置されるときには、モード分波器1Dとして、実施形態2のモード合分波器1を(N−1)個縦列に配置したものを適用すればよい。
【0062】
第1送信機及び第2送信機は、使用波長λ〜λを利用する波長多重方式及びx、y偏波を利用する偏波多重方式を併用する。ただし、第1送信機及び第2送信機は、多重方式を適用しなくてもよく、モード多重方式以外のどのような多重方式を適用してもよい。
【0063】
第1(2)送信機は、光源21−1、・・・、21−N(22−1、・・・、22−N)、及び波長合波器71(72)を利用して、使用波長λ〜λを利用する波長多重方式を適用する。第1(2)送信機は、光分波器31−1、・・・、31−N(32−1、・・・、32−N)、偏波コントローラ51X−1、51Y−1、・・・、51X−N、51Y−N(52X−1、52Y−1、・・・、52X−N、52Y−N)、及び光合波器61−1、・・・、61−N(62−1、・・・、62−N)を利用して、x、y偏波を利用する偏波多重方式を適用する。第1(2)送信機は、光変調器41X−1、41Y−1、・・・、41X−N、41Y−N(42X−1、42Y−1、・・・、42X−N、42Y−N)を利用して、各波長及び各偏波を有する光信号の変調処理を実行する。
【0064】
第1受信機及び第2受信機は、使用波長λ〜λを利用する波長多重方式及びx、y偏波を利用する偏波多重方式を併用する。ただし、第1受信機及び第2受信機は、多重方式を適用しなくてもよく、モード多重方式以外のどのような多重方式を適用してもよい。
【0065】
第1(2)受信機は、波長分波器81(82)を利用して、使用波長λ〜λを利用する波長多重方式を適用する。第1(2)受信機は、偏波分波器91−1、・・・、91−N(92−1、・・・、92−N)を利用して、x、y偏波を利用する偏波多重方式を適用する。第1(2)受信機は、受光回路101X−1、101Y−1、・・・、101X−N、101Y−N(102X−1、102Y−1、・・・、102X−N、102Y−N)を利用して、各波長及び各偏波を有する光信号の受光・復調処理を実行する。
【0066】
第1送信機及び第2送信機は、基本モードを有する光信号を処理するのみでよく、高次モードを有する光信号を処理しなくてもよい。第1受信機及び第2受信機も、基本モードを有する光信号を処理するのみでよく、高次モードを有する光信号を処理しなくてもよい。モード合波器1M、マルチモード光ファイバF及びモード分波器1Dのみが、基本モード及び高次モードを有する光信号を処理する。よって、基本モードを有する光信号を入出力する既存の送受信機を用いて、モード多重伝送を実現することができる。
【0067】
なお、マルチモード光ファイバFの伝送経路中で光増幅を実行するときには、本発明のモード分波器を利用して高次モードを基本モードに変換し、基本モードを有する光信号を増幅し、本発明のモード合波器を利用して基本モードを高次モードに変換する。よって、基本モードを有する光信号を増幅する既存の光増幅器を用いて、モード多重伝送を実現することができ、長距離伝送を可能とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係るモード合分波器、光送受信装置及び光通信システムは、モード多重方法に適用することができるのみならず、モード多重方法及び他の多重方法(WDM及び偏波多重など)を併用する方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1、1−1、1−2:モード合分波器
1M:モード合波器
1D:モード分波器
11、11−1、11−2:第1導波路
12、12−1、12−2:第2導波路
T:光送信装置
R:光受信装置
F:マルチモード光ファイバ
21、22:光源
31、32:光分波器
41、42:光変調器
51、52:偏波コントローラ
61、62:光合波器
71、72:波長合波器
81、82:波長分波器
91、92:偏波分波器
101、102:受光回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第n次モード(nは正の整数)を有する光信号及び第(n+m)次モード(mは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である第1導波路と、
前記第1導波路の第(n+m)次モードと結合可能である第n次モード(nは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である第2導波路と、
前記第2導波路が伝搬する第n次モードを有する光信号を、前記第1導波路の第(n+m)次モードを有する光信号に変換し、前記第1導波路が伝搬する第n次モードを有する光信号に、変換後の前記第1導波路の第(n+m)次モードを有する光信号を合波するモード合波部と、
を備えることを特徴とするモード合波器。
【請求項2】
=nであることを特徴とする、請求項1に記載のモード合波器。
【請求項3】
=n=1であり、第n次モード及び第n次モードは基本モードであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のモード合波器。
【請求項4】
第n次モード(nは正の整数)を有する光信号及び第(n+m)次モード(mは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である第1導波路と、
前記第1導波路の第(n+m)次モードと結合可能である第n次モード(nは正の整数)を有する光信号を伝搬可能である第2導波路と、
前記第1導波路が伝搬する第(n+m)次モードを有する光信号を、前記第2導波路の第n次モードを有する光信号に変換し、前記第1導波路が伝搬する第n次モードを有する光信号及び第(n+m)次モードを有する光信号から、変換後の前記第2導波路の第n次モードを有する光信号を分波するモード分波部と、
を備えることを特徴とするモード分波器。
【請求項5】
=nであることを特徴とする、請求項4に記載のモード分波器。
【請求項6】
=n=1であり、第n次モード及び第n次モードは基本モードであることを特徴とする、請求項4又は5に記載のモード分波器。
【請求項7】
請求項1から3のいずれかに記載のモード合波器と、
前記第1導波路に第n次モードを有する光信号を出力する第1送信機と、
前記第2導波路に第n次モードを有する光信号を出力する第2送信機と、
を備えることを特徴とする光送信装置。
【請求項8】
請求項4から6のいずれかに記載のモード分波器と、
前記第1導波路から第n次モードを有する光信号を入力される第1受信機と、
前記第2導波路から第n次モードを有する光信号を入力される第2受信機と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【請求項9】
請求項7に記載の光送信装置と、
請求項8に記載の光受信装置と、
前記光送信装置及び前記光受信装置を接続し、前記第1導波路の第n次モードを有する光信号及び前記第1導波路の第(n+m)次モードを有する光信号を伝送するマルチモード光ファイバと、
を備えることを特徴とする光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−37017(P2013−37017A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170142(P2011−170142)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】