説明

モールドおよびその製造方法

【課題】複雑なパターン形状を容易にかつ少ない工程で作製でき、さらに凹凸の高さがそろったモールドとその製造方法を提供する。
【解決手段】モールド1は、基板3の一つの面に凸状のレジストパターン5が形成された構造を有している。基板3表面に、スピンまたはスプレー法でレジストを塗布し、レジスト層7を形成する。次に、電子線によりパターンをレジスト層に描画し、現像を経て基板上にレジストパターン5を得る。レジストパターン5をプラズマ照射またはイオン注入法により硬化し、モールド1を得る。またこれらの工程を繰り返すことにより、モールド13を得る。複雑なパターン形状を容易にかつ少ない工程で作製でき、さらに凹凸の高さがそろったモールドとその製造方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリントに用いられるモールドおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、数十ナノメートルの微細パターン転写が容易で、しかも低コストで量産加工できる技術としてナノインプリント技術が注目されている。ナノインプリントとは、ナノレベルの微小な凹凸のあるモールドを、樹脂などの被加工基板に押し付けて型の形状を転写する微細成形加工技術である。主に、熱転写方式と光硬化方式とに分類される。
ナノインプリントプロセスにおいて、モールドは成形加工品の品質に影響を及ぼすため、モールドの素材開発と、その素材への三次元の微細形状加工技術の開発が求められている。
【0003】
このモールドの製造方法は、リソグラフィとエッチングにより為されるのが一般的である(例えば、特許文献1)。特許文献1では、モールドの材料となる基板表面へのレジスト塗布、露光、現像を行い、レジストをマスクとしたエッチングを行うことで、モールドを得ている。また、複雑な三次元パターン形状を有し、かつ加工が容易であるモールドの開発が進められている(例えば、特許文献2)。特許文献2では、基板と、該基板の一方の表面に形成された高さの異なる複数の凸部とを有し、該凸部のうち高さの高い凸部は少なくとも2種類以上の材料を少なくとも2層以上積層した積層構造を有すスタンパについて開示されている。
【特許文献1】特開平10−96808号公報
【特許文献2】特開2004−71587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のモールド作製方法では、同一面内に異なる面積のパターン、ないし同一面積であっても形状が異なるパターンがモールドに存在する場合、面内のパターン全てが同一の深さになるようにエッチングすることは困難である。また特許文献2のように、同一高さのパターン各層を異なるエッチングレートの材料で構成する場合、膜材料及び膜形成装置にコストがかかり、またそのプロセスに時間を要すため、生産性の向上が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは複雑なパターン形状を容易にかつ少ない工程で作製でき、さらに凹凸の高さがそろったモールドとその製造方法を提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するために本発明の第1の発明は、ナノインプリント用モールドであって、基板と、前記基板の上面にレジストにより形成された微小凹凸(以降これをレジストパターンと呼称する)とを有し、前記レジストパターンがプラズマ照射、またはイオン注入により硬化が為されていることを特徴とするモールドである。
また、前記レジストパターンが、少なくとも1種類以上のレジストで少なくとも1層以上積層した構造であることを特徴としている。
また、前記基板が凹凸を有していることを特徴としている。
【0007】
また、第2の発明は、ナノインプリント用モールドの製造方法であって、基板の上面にレジスト層を塗布する工程(a)と、前記レジスト層に凹凸のパターンを形成する工程(b)と、形成された凹凸のパターンを含むレジストを硬化する工程(c)とを有することを特徴とするモールドの製造方法である。
また、ナノインプリント用モールドの製造方法であって、前記微小凹凸上に第2のレジスト層を塗布する工程(d)と、前記レジスト層にレジストパターンを形成する工程(e)と、レジストを硬化する工程(f)とを有し、工程(d)〜工程(f)を繰り返すことを特徴とするモールドの製造方法である。
前記工程(c)及び(f)は、プラズマ照射により硬化することを特徴とする。
また、前記工程(c)及び(f)は、イオン注入により硬化することを特徴とする。
また、前記基板が凹凸を有していることを特徴とするモールドの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、複雑なパターン形状を容易にかつ少ない工程で作製でき、さらに凹凸の高さがそろったモールドとその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態に係るナノインプリント用モールド及びその製造方法について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るモールド1の断面図である。モールド1は、基板3の一つの面に凸状のレジストパターン5が形成された構造を有している。
【0011】
基板3について、特に限定されないが、一般に、以下の材料が用いられる。半導体材料として、シリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)、炭化シリコン(SiC)、および窒化シリコン(SiN)等が挙げられる。金属材料として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、および銅(Cu)等がある。さらに、誘電体材料としてセラミックスが、またガラス及び光学材料として石英、ソーダガラス、立方晶窒化ホウ素等が用いられる。
【0012】
凸状のレジストパターン5の材料として、プラズマ照射やイオン注入により硬化するレジストを使用する。
レジストの硬化プロセスは、昇温によるレジスト表面の炭化、及び不純物原子、イオン、ラジカルがレジスト内部に含まれる原子や官能基と反応し強固な結合状態を形成することである。またプラズマ照射の場合、プラズマ発生時に生じるUV光によってレジストの硬化が促進される場合もある。よって本発明に使用するレジスト材料は特に限定されないが、レジストの含有成分により、使用するプラズマ及びイオンの種類が決定される。
レジストパターン5の厚さは、目的とするパターンの深さによるが、パターンの幅と深さの比を示すアスペクト比で表すと、アスペクト比が0.1〜100であることが好ましい。
【0013】
次に、モールド1の製造方法を説明する。図3は基板3を出発材料とするフローチャートを示し、図4はその作製工程を示す。
【0014】
図4(a)の基板3表面に、スピンまたはスプレー法で図4(b)のようにレジストを塗布し、レジスト層7を形成する(図3のステップ101)。次に、図4(c)に示すように、電子線によりパターンをレジスト層に描画し、現像を経て基板上にレジストパターン5を得る(図3のステップ102)。その他のレジストパターン形成方法として、レーザー描画、UV露光があり、いずれの場合も、現像を経てレジストパターンを得ることができる。
【0015】
なお本明細では、レジストは露光された箇所が現像にて除去される、いわゆるポジ型レジストを用いて説明を行っている。しかし、露光領域が残るネガ型レジストを用いた場合においても同様の効果が得られる。
【0016】
次に、図4(d)に示すように、レジストパターン5をプラズマ照射またはイオン注入法により硬化し、モールド1を得る(図3のステップ103)。
このように本実施の形態によれば、複雑なパターン形状を容易にかつ少ない工程で作製することができる。
【0017】
次に、本発明のその他の実施形態に係るモールド13について説明する。図2(a)は、モールド13の断面図を示す。
【0018】
図2(a)に示したモールド13は、図1に示したモールド1に、さらにレジストパターン11が積層された構造となっている。モールド13を構成する材料については、図1に示したモールド1と同様であるため省略する。但し、使用するレジストは、1層目のレジストパターン5と同じ材料であっても、また異なっていてもよい。
【0019】
次に、図2(a)のモールド13の製造方法について説明する。図4(d)のモールド1を出発材料とする作製工程を図4(d)〜図4(g)に示す。前記モールド1作製方法と同様な方法で、モールド1表面に図4(e)のようにレジストを塗布し、レジスト層9を形成する。次に、図4(f)に示すように、電子線によりパターンをレジスト層に描画し、現像を経て基板上にレジストパターン11を得る。さらに、図4(g)に示すように、レジストパターン11をプラズマ照射またはイオン注入法により硬化し、モールド13を得る。即ち、図3のフローチャートに示した工程を繰り返すことによりモールド13を得ることができる。
【0020】
また、上記工程を更に繰り返すことにより、複数の段差を有する複雑な凹凸状モールドを作製することが可能である。
【0021】
また、上記のようにレジストのみで構成するだけでなく、図2(b)のように、予め凹凸を形成した基板31にレジストを塗布し、微小凹凸(レジストパターン51)を形成することにより複数の段差を有するモールド15を作製することも可能である。
【0022】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上述した作製工程に限定されるものではない。
【0023】
以下に、プラズマ照射により硬化してモールドを作製した場合と、イオン注入により硬化してモールドを作製した場合、それぞれについて実施例を示す。
【実施例1】
【0024】
合成石英ガラス基板上に、レジスト「PMER P−LA900PM」(東京応化工業製)をスピン法により10μmの厚さに塗布した。次に、フォトマスクを使用した紫外線露光にて、パターンをレジスト層に描画した。このとき、線幅2.0μmの1:2のライン&スペース加工を行った。現像を経て、基板上にレジストパターンを得た。さらに、CHFガスを使用したプラズマを照射し、モールドを得ることができた。
【実施例2】
【0025】
シリコンウエハ上に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)をスピン法により300nmの厚さに塗布した。次に、電子線露光装置にて、パターンをレジスト層に描画した。このとき、線幅100nmの1:2のライン&スペース加工を行った。現像を経て、基板上にレジストパターンを得た。さらに、イオン注入装置にてボロン原子(11)を2.1E10/cm注入し、モールドを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
複雑なパターン形状を容易にかつ少ない工程で作製でき、さらに凹凸の高さがそろったモールドとその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係るモールド1の断面図を示す。
【図2】その他の実施形態に係るモールド13、15の断面図を示す。
【図3】モールド1およびモールド13の作製工程のフローチャートを示す。
【図4】モールド1およびモールド13の作製工程の断面図を示す。
【符号の説明】
【0028】
1、13、15………モールド
3、31………基板
5、11、51………レジストパターン
7、9………レジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノインプリント用モールドであって、
基板と、
前記基板の上面にレジストにより形成された微小凹凸と、
を有し、
前記レジストがプラズマ照射、またはイオン注入による硬化が為されていることを特徴とするモールド。
【請求項2】
前記レジストが、少なくとも1種類以上のレジストで少なくとも1層以上積層した構造であることを特徴とする請求項1記載のモールド。
【請求項3】
前記基板が凹凸を有していることを特徴とする請求項1記載のモールド。
【請求項4】
ナノインプリント用モールドの製造方法であって、
基板の上面にレジスト層を塗布する工程(a)と、
前記レジスト層にて微小凹凸を形成する工程(b)と、
レジストを硬化する工程(c)と、
を有することを特徴とするモールドの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のモールドの製造方法であって、
前記の硬化したレジスト上に第2のレジスト層を塗布する工程(d)と、
前記レジスト層にて微小凹凸を形成する工程(e)と、
形成された微小凹凸形状を構成するレジストを硬化する工程(f)と、
を有し、工程(d)〜工程(f)を繰り返すことを特徴とする請求項4記載のモールドの製造方法。
【請求項6】
前記工程(c)及び(f)は、プラズマ照射により硬化することを特徴とする請求項4又は5記載のモールドの製造方法。
【請求項7】
前記工程(c)及び(f)は、イオン注入により硬化することを特徴とする請求項4又は5記載のモールドの製造方法。
【請求項8】
前記基板が凹凸を有していることを特徴とする請求項4記載のモールドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−313814(P2007−313814A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147707(P2006−147707)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】