モールドの製造方法および磁気記録媒体の製造方法
【課題】ドットパターンを有する領域と,ドットパターンを有しない領域と,を備えるモールドを高精度で作成可能とする。
【解決手段】実施形態のモールドの製造方法は,第1の高分子に親和な基板上に,第2の高分子に対して親和な第1の層を形成する工程と,第1の層に,第1,第2の開口を形成する工程と,第2の開口内にレジストを充填,硬化する工程と,ブロックコポリマーを含む第2の層を形成,自己組織化する工程とを含む。
【解決手段】実施形態のモールドの製造方法は,第1の高分子に親和な基板上に,第2の高分子に対して親和な第1の層を形成する工程と,第1の層に,第1,第2の開口を形成する工程と,第2の開口内にレジストを充填,硬化する工程と,ブロックコポリマーを含む第2の層を形成,自己組織化する工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は,モールドの製造方法および磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクの高密度化手段の一つとして,ビットパターンドメディア(BPM)が検討されている。BPMは,磁性ドットを有する磁性領域と,磁性ドットを有しない非磁性領域と,を有する。磁性領域を磁性ドットに区分することで,熱揺らぎによるビット反転を抑え,記録密度の向上が可能となる。また,非磁性領域は磁性領域と組み合わせてサーボ領域として利用できる。
【0003】
ここで,次世代磁気記録媒体(HDD媒体)としてのBPM媒体では,微細かつ高密度な磁性ドットが必要となる。また,磁性領域と非磁性領域を高精度で区分する必要がある。
しかしながら,微細かつ高密度な磁性ドットを有する磁性領域と,磁性ドットを有しない非磁性領域と,を高精度で形成するのは,必ずしも容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2009/0092803号公報
【特許文献2】特開2010−123239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は,ドットパターンを有する領域と,ドットパターンを有しない領域と,を備えるモールドを高精度で作成可能とするモールドの製造方法および磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のモールドの製造方法は,第1の高分子に対して第2の高分子より大きな親和性を有する基板上に,前記第2の高分子に対して前記第1の高分子より大きな親和性を有する第1の層を形成する工程と,前記第1の層に,第1の開口と,この第1の開口よりサイズが大きい第2の開口と,を形成する工程と,前記第2の開口内にレジストを充填,硬化する工程と,前記第1の開口内および前記第1の層上に,前記第1及び第2の高分子を有するブロックコポリマーを含む第2の層を形成する工程と,前記ブロックコポリマーを自己組織化して,前記第1の開口に対応して配置され,かつ前記第1の高分子を含むドット列を形成する工程と,前記硬化されたレジストを除去する工程と,前記ドット列をマスクとして,前記基板を加工して,前記ドット列に対応する形状を有する第1の領域と,前記第2の開口に対応する,平坦な第2の領域と,を有するモールドを形成する工程と,前記第1,第2の層を除去する工程と,を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態に係るモールドMの製造手順を表すフロー図である。
【図2A】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2B】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2C】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2D】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2E】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2F】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2G】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2H】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2I】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2J】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2K】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2L】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図3A】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図3B】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図3C】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図3D】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図4A】モールドMを用いる磁気記録媒体の製造手順を表す図である。
【図4B】モールドMを用いる磁気記録媒体の製造手順を表す図である。
【図4C】モールドMを用いる磁気記録媒体の製造手順を表す図である。
【図5A】磁気記録媒体の一例の電子顕微鏡写真である。
【図5B】磁気記録媒体の一例の電子顕微鏡写真である。
【図6】磁性ドットのピッチと記録密度の関係を表すグラフである。
【図7】磁気記録再生装置300の構成図である。
【図8】磁気ディスク321の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下,図面を参照して,実施形態を詳細に説明する。
図1は,一実施形態に係るモールドMの製造手順を表すフロー図である。図2A〜図2Lは,図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す断面図である。図3A〜図3Dは,図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す斜視図である。図4A〜図4Cは,モールドMを用いる磁気記録媒体の製造手順を表す図である。
【0009】
モールドMは,BPM製造用インプリントモールドとして利用できる。図1等に示すように,次のようにモールドMが製造される。
【0010】
(1)モールド基材(基板)11上へのケミカルガイド層(第1の層)12の形成(ステップS11,図2A)
モールド基材11上にケミカルガイド層12を形成する。モールド基材11は,モールドMを形成するための素材である。後述のように,ジブロックコポリマーBPの自己組織化を用いて,ドット(微小な突起)111を有するモールドMが形成される(図2L参照)。
【0011】
ジブロックコポリマーBPは,ポリマー(高分子)P1(例えば,PDMS(polydimethylsiloxane)),ポリマーP2(例えば,PS(poly styrene))をブロック重合させたものである。ジブロックコポリマーBPとして,例えば,PS(poly styrene)−PDMS(polydimethylsiloxane),PS−PMMA(polymenthyl methacrylate (ポリメタクリル酸メチル)),PMMA−PMAPOSS(polymethacrylate containing polyhedral oligomeric silsesquioxane),PS−PEO(polyethylene oxide)を挙げられる。
【0012】
ジブロックコポリマーBPは,ある条件でアニールすると,自己組織化する。即ち,ポリマーP1,P2がミクロな層分離を起こし,例えば,ポリマーP2中にポリマーP1が球状(または柱状やラメラ状)に凝集する。この際,ポリマーP1,P2の構成材料やその分子量を選択することで,所望のピッチ(例えば,30nm)で,ポリマーP1を球状に凝集できる(ポリマーP1のドット(微小な凝集体)列の形成)。
【0013】
ジブロックコポリマーBPの自己組織化を用いることで,ナノオーダーで大面積のパターンを短時間(例えば,数分から数時間程度)で形成できる。数日から数週間の時間を要する電子線露光に対して,自己組織化は大きな優位性がある。また,自己組織化は,電子線露光装置のような高価な設備は必要なく,設備コストの面でも有利である。
【0014】
モールド基材11は,ジブロックコポリマーBPの第1のポリマーP1に対して,第2のポリマーP2より親和性を有する材料から構成される。この材料として,例えばSi,石英,ガラス,プラスチック,金属(Niやステンレスなど)が挙げられる。
なお,モールド基材11の表面が,第1のポリマーP1に対して,第2のポリマーP2より親和性を有する材料から構成されれば良い。
【0015】
ケミカルガイド層12は,第2のポリマーP2に対して,第1のポリマーP1より親和性を有する材料から構成される。この材料として,例えば,PS(poly styrene),PDMS(polydimethylsiloxane),PMMA(polymenthyl methacrylate),シランカップリング材が挙げられる。
なお,ケミカルガイド層12の表面が,第2のポリマーP2に対して,第1のポリマーP1より親和性を有する材料から構成されれば良い。
【0016】
ここで,ケミカルガイド層12は,下地のモールド基材11の構成材料に化学的にアンカリングされていることが望ましい。ケミカルガイド層12とモールド基材11の結合が強固となり,後述のように,マスクレジスト層13の除去に用いられるエッチング溶液の適用範囲が広がる。
【0017】
例えば,ケミカルガイド層12の材料として,アルコキシ基を持つPS分子を用いることで,ケミカルガイド層12をモールド基材11に化学的にアンカリング可能となる。このPS分子のアルコキシ基は、加水分解によりシラノール基となる。このシラノール基がモールド基材11表面の水酸基と反応することで(脱水縮合反応)、ケミカルガイド層12がモールド基材11にアンカリングされる。
【0018】
(2)ケミカルガイド層12のパターニング(ステップS12,図2B〜図2E,図3A)
ケミカルガイド層12をパターニングする。即ち,ケミカルガイド層12に,第1,第2の開口121,122を形成する。なお,図3Aは,後述のマスクレジスト層13を除外した状態を表している。
【0019】
第1の開口121は,ケミカルガイドとして機能し,後述のジブロックコポリマー層15(ジブロックコポリマーBPの層)を自己組織化するときに,ポリマーP1のドット列の基準となる。第1の開口121ではポリマーP1に親和性を有するモールド基材11が露出される。一方,第1の開口121の周囲には,ポリマーP2に親和性を有するケミカルガイド層12が配置される。この結果,ジブロックコポリマーBPを自己組織化したときに,第1の開口121にポリマーP1のドットが優先的に配置される。複数の第1の開口121を周期的に配置することで,ポリマーP1のドットの配置を制御できる。即ち,ポリマーP1のドット列の周期は,第1の開口121の配置の周期に従う。
【0020】
第1の開口121は,例えば,直径D(例えば,D=15nm)の円形状である(図2E参照)。後述のように,1[Tb/inch2]以上の記録密度Cの磁気記録媒体を作成するために,第1の開口121のサイズを15[nm]以下とする必要がある。また,第1の開口121は,円形状以外の形状,例えば,楕円形状,矩形状等でも良い。ポリマーP1のドット列の配置の基準となる範囲で,第1の開口121の形状に自由度が認められる。但し,縦横比の大きな形状(扁平な楕円形状,細長い長方形等)は,第1の開口121の開口121に対するポリマーP1のドットの位置の不確実性を招くので好ましくない。即ち,第1の開口121は縦横比が1に近いことが好ましい。
【0021】
第2の開口122は,後述の物理ガイド14を配置するための領域である。物理ガイド14は,ジブロックコポリマー層15(ポリマーP1のドット列)の形成を阻止するマスクとして機能する。第2の開口122は,磁気記録媒体のサーボ領域に対応させることができる。
【0022】
第2の開口122は,例えば,直径Dの4倍以上の幅W(例えば,W≧60nm)の矩形状である(図2E参照)。但し,第2の開口121は,一般に,物理ガイド14が突出した領域を有することから(図3B,図5B参照,磁気記録媒体のサーボ領域(図3Dの領域A02に対応)に対応させる),単純な矩形状ではなく,複数の矩形を組み合わせた形状であることが多い。
【0023】
第2の開口122のサイズは,第1の開口121のサイズより大きい。既述のように,第1の開口121は,例えば,直径Dの円形状であり,第2の開口122が,幅Wの矩形状である。この場合,幅Wは,直径Dより大きい。ここで,第1,第2の開口121の縦横比が1と異なる可能性がある。特に,第2の開口122は,縦横比が1と異なる可能性が大きい。このような場合,小さい方のサイズ(幅等)を基準として,第1,第2の開口121,122のサイズを比較する。例えば,第2の開口122の縦方向の幅W1が横方向の幅W2より大きい場合,狭い幅W1を第1の開口121のサイズ(例えば,直径D)と比較する。
【0024】
ケミカルガイド層12のパターニングは,例えば,次の手順1)〜3)で実行できる。
【0025】
1)ケミカルガイド層12へのマスクレジスト層13の形成(図2B)
ケミカルガイド層12にマスクレジスト層13を形成する。マスクレジスト層13として,例えば,アクリル系フォトポリマー,エポキシ系フォトポリマー,ノボラック系,PMMA系,PVA(polyvinyl alcohol)系の樹脂材料を適用できる。
【0026】
以下,マスクレジスト層13をパターニングする。ここでは,一例として,インプリント法によるパターニングを説明する。
【0027】
2)マスクレジスト層13へのインプリントモールドM0の押し当て(図2C)
マスクレジスト層13にインプリントモールドM0を押し当てる。
【0028】
インプリントモールドM0は,次のようにして予め作成しておく。即ち,インプリントモールドM0の基材(素材)に,レジスト(マスク材料)の層を形成する。電子ビームの露光,および現像により,レジストをパターニングする。パターニングされたレジストをマスクとして,インプリントモールドM0の基材を加工する。このようにして,インプリントモールドM0が形成される。
【0029】
なお,電子ビームの露光パターンは,例えば,BPM用のガイドパターン(サーボパターン及び配列制御用パターン)である。この場合,インプリントモールドM0は,ガイドパターン転写用のインプリントモールドである。
【0030】
3)マスクレジスト層13の硬化(図2C,図2D)
インプリントモールドM0を押し当てた状態で,マスクレジスト層13を硬化する。この結果,マスクレジスト層13がインプリントモールドM0に対応する形状にパターニングされる。例えば,紫外線の照射,冷却,または加圧により,マスクレジスト層13を硬化する。
【0031】
紫外線の照射によりマスクレジスト層13を硬化する場合,マスクレジスト層13の材料として,紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂が用いられる。
冷却によりマスクレジスト層13を硬化する場合,マスクレジスト層13の材料として,熱可塑性樹脂が用いられる。加熱して軟化した状態のマスクレジスト層13にレプリカモールドM1を押しつけ,その後,マスクレジスト層13を冷却して,硬化させる。
加圧によりマスクレジスト層13を硬化する場合,マスクレジスト層13の材料に溶媒が添加される。マスクレジスト層13を加圧することで,マスクレジスト層13中から溶媒が押し出され,レジスト層22が硬化される。
【0032】
4)ケミカルガイド層12の加工(図2E)
パターニングされたマスクレジスト層13をマスクとして,ケミカルガイド層12を加工する。ケミカルガイド層12を,例えば,酸素プラズマによりドライエッチングする。この結果,ケミカルガイド層12に第1,第2の開口121,122が形成される。
【0033】
(3)物理ガイド14の形成(ステップS13,図2F,図2G,図3B)
1)モールド基材11上への物理ガイド14の形成(図2F)。
第2の開口122に物理ガイド14用のレジスト(ガイドレジスト)の溶液を流し込む。この流し込みに,例えば,スピンコート法,ディップ法,インクジェット法を利用できる。スピンコート法では,モールド基材11を回転させて,ガイドレジストの溶液を滴下する。ディップ法では,ガイドレジストの溶液中にモールド基材11を浸漬する。インクジェット法では,モールド基材11に近接して配置されたノズルの微細な開口からガイドレジストの溶液を噴出させる。
【0034】
ここで,ガイドレジスト材料の分子量や粘度を適切に選択すれば,第1の開口121を埋めず,第2の開口122(非磁性領域に対応)のみを埋めることができる。
【0035】
例えば,第1の開口121の直径Dを15nmとする。また,第2の開口122の幅Wを60nmとする。この直径15nmは,次世代高密度HDDのターゲットとなる1Tb/in2の密度に対応するホールパターンの寸法である。そのとき,第2の開口122(非磁性領域)の一番狭い所は,15nmの4倍(言い換えればドット/スペースの2周期分)の60nmとなる。
【0036】
直径15nmの第1の開口121と,幅60nmの第2の開口122に,ガイドレジスト材料をスピンコート法により塗布する実験を行った。表1及び表2は,第1,第2の開口121,122への充填の有無を表す。表1がガイドレジスト材料(スチレン−PMMA共重合体)の分子量と充填の有無との関係を示す。表2がガイドレジスト材料(PMMA系)の粘度と充填の有無との関係を示す。表中,「○」,「×」がそれぞれ,充填可能,充填不能を表す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表1,表2に示されるように,分子量や粘度が十分に小さければ,第2の開口122(比較的大きなパターン)のみならず,第1の開口121(微細なパターン)にも,ガイドレジスト材料が充填される。分子量や粘度が大きくなると,第1の開口121(微細なパターン)にはガイドレジスト材料が充填されなくなる。分子量や粘度がさらに大きくなると,第2の開口122(比較的大きなパターン)にもガイドレジスト材料が充填されなくなる。
【0040】
ここでは,ガイドレジスト材料が,第2の開口122に充填され,第1の開口121には充填されないことが好ましい。表1より,その条件を満たす分子量は24000以上60000以下であることが判る。また,表2より,同じくその条件を満たす粘度は,1500mPa・s以上10000mPa・s以下であることが判る。
【0041】
ここで,表2で示す粘度は、25℃におけるものである。しかしながら、レジスト材料はプロセスマージンが取れるよう使用温度領域(室温領域)でその粘度が比較的安定であるように設計されている。従って、室温領域(20℃以上25℃以下)の温度であれば、表2の粘度を満たす。
【0042】
2)マスクレジスト層13の除去(図2G,図3B)
物理ガイド14の形成後に,マスクレジスト層13をウエットエッチングで除去する。この除去にドライエッチングを用いた場合,ケミカルガイド層12に好ましくない影響を及ぼす可能性がある。即ち,ケミカルガイド層12がエッチングされる可能性がある。あるいは,ケミカルガイド層12がその化学的特性を失う可能性がある(例えば,第2のポリマーP2に対する親和性が失われる)。ウエットエッチングの溶液は,マスクレジスト層13(マスクレジスト)を溶解し,かつ物理ガイド14(ガイドレジスト)を溶解しないように選択される。
【0043】
マスクレジストがノボラック系の場合,ウエットエッチングの溶液として,酸もしくはアルカリ溶液を選択できる。酸もしくはアルカリ溶液によって,ノボラック系のマスクレジストを除去できる。このとき,ガイドレジストとして,酸・アルカリに不溶な,スチレン系,PMMA系のフォトポリマーなどが好ましい。
【0044】
マスクレジストがPVA系の場合,ウエットエッチングの溶液として,純水を選択できる。純水によってPVA系のマスクレジストを除去できる。このとき,ガイドレジストとして,純水に不溶な,スチレン系,エポキシ系,ノボラック系の材料などが好ましい。
【0045】
また,エッチング溶液がケミカルガイド層12を実質的に侵食しないことも重要である。エッチング溶液が,酸,アルカリ,または純水であれば,ケミカルガイド層12の構成材料(ケミカルガイド材料)として用いられるPS,PDMS,PMMAや一般のシランカップリング材は侵食されない。更に,ケミカルガイド層12がモールド基材11表面にアンカリングされているならば,エッチング溶液は有機溶剤(例えばアニソールやPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Propylene Glycol Monomethyl Ether Acetate)))でも良い。
【0046】
(4)ジブロックコポリマー層15(第2の層)の形成(ステップS14,図2H)
ジブロックコポリマー層15を形成する。このために,物理ガイド14間(並びにケミカルガイド層12上)に,液状のジブロックコポリマーBP(望ましくはPS−PDMS,その他,PS−PMMA,PMMA−PMAPOSS,PS−PEOなど)を流し込む。
【0047】
(5)ジブロックコポリマーBPの自己組織化(ステップS15,図2I,図3C)
ジブロックコポリマーBPをアニールする。この結果,ジブロックコポリマー層15が,ポリマーP1,P2に分離されたジブロックコポリマー層15aに変化する。ポリマーP1(例えば,PDMS)のドット151の列が形成され,その周りをポリマーP2が取り囲む。既述のように,このドット151の列は,第1の開口121(ケミカルガイド)に対応して,配列される。
【0048】
なお,ドット151に替えて,ポリマーP1のシリンダーを用いることができる。即ち,ジブロックコポリマーBPを自己組織化して形成される形状がシリンダー形状でも良い。後述のモールド基材11の加工において,ポリマーP1の形状がシリンダー形状の場合でも,エッチング加工により,ドット形状のドット111が形成されるからである。
【0049】
(6)物理ガイド14の除去(ステップS16,図2J,図3D)
物理ガイド14を,例えば,酸素(O2)プラズマを用いたドライエッチングにより除去する。物理ガイド14が除去された領域にはドット151(もしくはシリンダー)が存在しない。既述のように,この領域は,例えば,磁気記録媒体の非磁性領域に対応する。
【0050】
ここでは,このドライエッチングにより,ポリマーP2もエッチングされる。即ち,ポリマーP1(例えば,PDMS)のドット151をマスクとして,ポリマーP2(PS)がエッチングされる。その結果,ドット151の背後にポリマーP2のドット152およびケミカルガイド層12のドット111が形成される。
【0051】
後述のように,図3Dに示す領域A01,A02はそれぞれ,BPMのデータ領域,サーボパターン領域に対応する。
【0052】
(7)モールド基材11の加工(ステップS17,図2K,図2L)
ポリマーP1(例えば,PDMS)のドット151をマスクとして,モールド基材11を加工する。この加工に,例えば,CF4のドライエッチングを利用できる。この結果,ドット151に対応するドット111が形成される(図2K参照)。
【0053】
その後,ウェットエッチングまたは酸素(O2)プラズマを用いたドライエッチングを用いて,残存するマスク(ドット151,152,121)を除去する。このようにして,ドット111を有する領域A0,平坦な領域A1を有するモールドMが形成される(図2L参照)。
【0054】
このモールドMは,データ領域およびサーボパターン領域を有する磁気記録媒体(BPM等)を製造するためのインプリントモールドとして,利用できる。領域A0,A1を適宜に配置することで,ドットが高精度に配列されたデータ領域,ドットの集合体の有り無しによって形成されたサーボパターン領域の双方を形成できる。既述のように,図3Dに示す領域A01,A02がそれぞれ,データ領域,サーボパターン領域に対応する。
【0055】
その後,必要に応じて,このモールドMを複製したレプリカモールドM1を作成する(図4A)。例えば,電鋳法(電気メッキ),射出成形法,押出成形法,熱転写法などによって,モールドMを型として,レプリカモールドM1が作成される。なお,モールドMを複製せずにそのまま用いても良い。
【0056】
磁性体層21上に設けたレジスト層22に,レプリカモールドM1のパターンを転写する(図4B)。この転写に,インプリント法を利用できる。例えば,レジスト層22にレプリカモールドM1を押しつけた状態で,液状のレジスト層22を硬化する。例えば,紫外線の照射,冷却,加圧により,レジスト層22を硬化する。
【0057】
紫外線の照射によりレジスト層22を硬化する場合,レジスト層22の材料として,紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂が用いられる。
冷却によりレジスト層22を硬化する場合,レジスト層22の材料として,熱可塑性樹脂が用いられる。加熱して軟化した状態のレジスト層22にレプリカモールドM1を押しつけ,その後,レジスト層22を冷却して,硬化させる。
加圧によりレジスト層22を硬化する場合,レジスト層22の材料に溶媒が添加される。レジスト層22を加圧することで,レジスト層22中から溶媒が押し出され,レジスト層22が硬化される。
この中でも,紫外線の照射を用いる手法が,より微細なパターンを正確に転写できる点で好ましい(UVインプリント法)。
【0058】
パターン化されたレジスト層22をマスクとして,例えば,ドライエッチングやミリングなどで磁性体層21を加工し,レジスト層22を除去する。この結果,ドット211を有する領域A20と,ドット211を有しない領域A21を有する磁性体膜21aが形成される(図4C参照)。なお,磁性体層21は,通例,ガラス等の基板上に形成される。
【0059】
その後,磁気記録媒体(BPM等)が作成される。この作成に,平坦化,表面研磨(テープバーニッシュ),ルブ(潤滑剤)塗布などの工程が用いられる。平坦化工程では,磁性体膜21aのドット211を非磁性体で埋め込み,平坦化される。表面研磨では,例えば,テープ状の研磨材料で,平坦化された磁性体膜21aが磨かれる。潤滑剤の塗布は,磨かれた磁性体膜21aの表面をさらに平滑化するためのものである。
【0060】
図5A,図5Bは,磁気記録媒体(BPM)の一例の電子顕微鏡写真である。図5A,図5Bの領域A01,A02は,データ(データトラック)領域,サーボパターン領域に対応する。領域A01(データトラック領域)では,開口121に対応するように磁性ドットが整然と配列される。領域A02(サーボパターン領域)では,ドットの有る領域と無い領域により,サーボパターンが形成される。即ち,物理ガイド14の配置により,ドットの無い領域が形成される。
【0061】
図6は,磁性ドットのピッチPと記録密度Cの関係を表すグラフである。ポイントS1〜S3はそれぞれ,ピッチPが30,17,12[nm]で,記録密度Cが0.8,2.5,5.0[Tb(Tera bit)/inch2]である。記録密度Cの目標を1[Tb/inch2]以上とすると,ピッチPとして約30[nm]以下となり,磁性ドットの直径は,その半分の約15[nm]以下となる。第1の開口121のサイズは,磁性ドットのサイズに対応することから,1[Tb/inch2]以上の記録密度Cを達成するために,第1の開口121のサイズを15[nm]以下とする必要がある。
【0062】
(磁気記録再生装置)
図7は,本実施形態のビットパターンド型磁気記録媒体(BPM)を用いた磁気記録再生装置300の構成図である。
【0063】
磁気記録再生装置300は,情報を記録するための磁気ディスク321を有する。磁気ディスク321は,剛構成であり,ビットパターンド型磁気記録媒体で構成される。磁気ディスク321は,スピンドル322に装着され,図示しないスピンドルモータによって一定回転数で回転駆動される。スライダー323は,磁気ディスク321に情報を記録,再生するための,例えば,単磁極型記録ヘッド及びMRヘッドを搭載する。スライダー323は,薄板状の板ばねからなるサスペンション324の先端に取付けられる。サスペンション324は図示しない駆動コイルを保持するボビン部等を有するアーム325の一端側に接続される。
【0064】
アーム325の他端側には,リニアモータの一種であるボイスコイルモータ326が設けられる。ボイスコイルモータ326は,図示しない駆動コイルおよび磁気回路とから構成される。駆動コイルは,アーム325のボビン部に巻かれた導線から構成される。磁気回路は,駆動コイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークにより構成される。
【0065】
アーム325は,固定軸327の上下2カ所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され,ボイスコイルモータ326によって回転揺動駆動される。すなわち,磁気ディスク321上におけるスライダー323の位置は,ボイスコイルモータ326によって制御される。なお,蓋体328は磁気記録再生装置300を密閉する蓋である。
【0066】
図8に示すように,磁気ディスク321は,例えば,放射状のサーボパターン領域329を有する。サーボパターン領域329は,アドレス情報を記憶した領域である。磁気ディスク321に情報を記録及び再生する際には,記録再生ヘッドの位置決めのために,アドレス情報が用いられる。
【0067】
以上のように,本実施形態によれば,ドット111の列(ドットパターン)を有する領域A0と,ドット111の列(ドットパターン)を有しない領域A1と,を備えるモールドMを高精度で作成できる。ケミカルガイド(第1の開口121に対応)を用いることで,安価でスループットの良い自己組織化法を用いた高精度のドット列の作成が可能となる。また,物理ガイド14(第2の開口122に対応)を用いることで,領域A0,A1の境界の位置を高精度とすることができる。即ち,ケミカルガイド(第1の開口121に対応)と物理ガイド14(第2の開口122に対応)を併用することで,ドット111の配列および領域A0,A1の境界の双方の位置精度の向上を図っている。
【0068】
ここで,本実施形態を,BPMに替えて,オーダード媒体に適用できる。オーダード媒体は,1マークが数ドットで構成される媒体であり,1マークが1ドットに対応するビットパターンド媒体と異なる。
【0069】
グラニュラ連続膜からドットを形成し,オーダード媒体とすることが考えられる。グラニュラ連続膜は,制御されていない比較的ランダムな磁区の集まりで構成されることから,熱揺らぎ等により磁区が反転する可能性がある。オーダード媒体において,個々のドットが孤立し,かつ精度良く配列していれば,グラニュラ連続膜媒体に対して,熱揺らぎ等への耐性を向上し,品質の良いマークの形成が可能となる。
【0070】
ビットパターンド媒体同様,このオーダード媒体においても,精度良く配列されたドットが必要であり,またサーボパターンが同時に加工されることがコスト面などから望ましい。よって,ケミカルガイドでドットを精度良く配列し,物理ガイドによりサーボパターンも形成する本実施形態の手法は,オーダード媒体においても有効である。
【0071】
また,更に他の実施例として半導体分野への応用が考えられる。半導体においても,自己組織化現象(例えば,ラメラ状のミクロ層分離)により短時間に精度良く微細配線を形成する試みがなされている。これにも配線の位置精度向上のためケミカルガイドが有効である。半導体において,配線パターンのある領域と無い領域を設ける必要がある。その際に,物理ガイドを併用することで,これらの境界(パターン)を高精度かつ任意に形成できる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが,これらの実施形態は,例として提示したものであり,発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は,その他の様々な形態で実施されることが可能であり,発明の要旨を逸脱しない範囲で,種々の省略,置き換え,変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は,発明の範囲や要旨に含まれるとともに,特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
M モールド
11 モールド基材
111 ドット
12 ケミカルガイド層
121,122 開口
13 マスクレジスト層
14 物理ガイド
15 ジブロックコポリマー層
15a ジブロックコポリマー層
151,152 ドット
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は,モールドの製造方法および磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクの高密度化手段の一つとして,ビットパターンドメディア(BPM)が検討されている。BPMは,磁性ドットを有する磁性領域と,磁性ドットを有しない非磁性領域と,を有する。磁性領域を磁性ドットに区分することで,熱揺らぎによるビット反転を抑え,記録密度の向上が可能となる。また,非磁性領域は磁性領域と組み合わせてサーボ領域として利用できる。
【0003】
ここで,次世代磁気記録媒体(HDD媒体)としてのBPM媒体では,微細かつ高密度な磁性ドットが必要となる。また,磁性領域と非磁性領域を高精度で区分する必要がある。
しかしながら,微細かつ高密度な磁性ドットを有する磁性領域と,磁性ドットを有しない非磁性領域と,を高精度で形成するのは,必ずしも容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開2009/0092803号公報
【特許文献2】特開2010−123239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は,ドットパターンを有する領域と,ドットパターンを有しない領域と,を備えるモールドを高精度で作成可能とするモールドの製造方法および磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のモールドの製造方法は,第1の高分子に対して第2の高分子より大きな親和性を有する基板上に,前記第2の高分子に対して前記第1の高分子より大きな親和性を有する第1の層を形成する工程と,前記第1の層に,第1の開口と,この第1の開口よりサイズが大きい第2の開口と,を形成する工程と,前記第2の開口内にレジストを充填,硬化する工程と,前記第1の開口内および前記第1の層上に,前記第1及び第2の高分子を有するブロックコポリマーを含む第2の層を形成する工程と,前記ブロックコポリマーを自己組織化して,前記第1の開口に対応して配置され,かつ前記第1の高分子を含むドット列を形成する工程と,前記硬化されたレジストを除去する工程と,前記ドット列をマスクとして,前記基板を加工して,前記ドット列に対応する形状を有する第1の領域と,前記第2の開口に対応する,平坦な第2の領域と,を有するモールドを形成する工程と,前記第1,第2の層を除去する工程と,を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態に係るモールドMの製造手順を表すフロー図である。
【図2A】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2B】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2C】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2D】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2E】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2F】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2G】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2H】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2I】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2J】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2K】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図2L】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図3A】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図3B】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図3C】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図3D】図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す図である。
【図4A】モールドMを用いる磁気記録媒体の製造手順を表す図である。
【図4B】モールドMを用いる磁気記録媒体の製造手順を表す図である。
【図4C】モールドMを用いる磁気記録媒体の製造手順を表す図である。
【図5A】磁気記録媒体の一例の電子顕微鏡写真である。
【図5B】磁気記録媒体の一例の電子顕微鏡写真である。
【図6】磁性ドットのピッチと記録密度の関係を表すグラフである。
【図7】磁気記録再生装置300の構成図である。
【図8】磁気ディスク321の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下,図面を参照して,実施形態を詳細に説明する。
図1は,一実施形態に係るモールドMの製造手順を表すフロー図である。図2A〜図2Lは,図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す断面図である。図3A〜図3Dは,図1に示す手順で製造されるモールドMの状態を表す斜視図である。図4A〜図4Cは,モールドMを用いる磁気記録媒体の製造手順を表す図である。
【0009】
モールドMは,BPM製造用インプリントモールドとして利用できる。図1等に示すように,次のようにモールドMが製造される。
【0010】
(1)モールド基材(基板)11上へのケミカルガイド層(第1の層)12の形成(ステップS11,図2A)
モールド基材11上にケミカルガイド層12を形成する。モールド基材11は,モールドMを形成するための素材である。後述のように,ジブロックコポリマーBPの自己組織化を用いて,ドット(微小な突起)111を有するモールドMが形成される(図2L参照)。
【0011】
ジブロックコポリマーBPは,ポリマー(高分子)P1(例えば,PDMS(polydimethylsiloxane)),ポリマーP2(例えば,PS(poly styrene))をブロック重合させたものである。ジブロックコポリマーBPとして,例えば,PS(poly styrene)−PDMS(polydimethylsiloxane),PS−PMMA(polymenthyl methacrylate (ポリメタクリル酸メチル)),PMMA−PMAPOSS(polymethacrylate containing polyhedral oligomeric silsesquioxane),PS−PEO(polyethylene oxide)を挙げられる。
【0012】
ジブロックコポリマーBPは,ある条件でアニールすると,自己組織化する。即ち,ポリマーP1,P2がミクロな層分離を起こし,例えば,ポリマーP2中にポリマーP1が球状(または柱状やラメラ状)に凝集する。この際,ポリマーP1,P2の構成材料やその分子量を選択することで,所望のピッチ(例えば,30nm)で,ポリマーP1を球状に凝集できる(ポリマーP1のドット(微小な凝集体)列の形成)。
【0013】
ジブロックコポリマーBPの自己組織化を用いることで,ナノオーダーで大面積のパターンを短時間(例えば,数分から数時間程度)で形成できる。数日から数週間の時間を要する電子線露光に対して,自己組織化は大きな優位性がある。また,自己組織化は,電子線露光装置のような高価な設備は必要なく,設備コストの面でも有利である。
【0014】
モールド基材11は,ジブロックコポリマーBPの第1のポリマーP1に対して,第2のポリマーP2より親和性を有する材料から構成される。この材料として,例えばSi,石英,ガラス,プラスチック,金属(Niやステンレスなど)が挙げられる。
なお,モールド基材11の表面が,第1のポリマーP1に対して,第2のポリマーP2より親和性を有する材料から構成されれば良い。
【0015】
ケミカルガイド層12は,第2のポリマーP2に対して,第1のポリマーP1より親和性を有する材料から構成される。この材料として,例えば,PS(poly styrene),PDMS(polydimethylsiloxane),PMMA(polymenthyl methacrylate),シランカップリング材が挙げられる。
なお,ケミカルガイド層12の表面が,第2のポリマーP2に対して,第1のポリマーP1より親和性を有する材料から構成されれば良い。
【0016】
ここで,ケミカルガイド層12は,下地のモールド基材11の構成材料に化学的にアンカリングされていることが望ましい。ケミカルガイド層12とモールド基材11の結合が強固となり,後述のように,マスクレジスト層13の除去に用いられるエッチング溶液の適用範囲が広がる。
【0017】
例えば,ケミカルガイド層12の材料として,アルコキシ基を持つPS分子を用いることで,ケミカルガイド層12をモールド基材11に化学的にアンカリング可能となる。このPS分子のアルコキシ基は、加水分解によりシラノール基となる。このシラノール基がモールド基材11表面の水酸基と反応することで(脱水縮合反応)、ケミカルガイド層12がモールド基材11にアンカリングされる。
【0018】
(2)ケミカルガイド層12のパターニング(ステップS12,図2B〜図2E,図3A)
ケミカルガイド層12をパターニングする。即ち,ケミカルガイド層12に,第1,第2の開口121,122を形成する。なお,図3Aは,後述のマスクレジスト層13を除外した状態を表している。
【0019】
第1の開口121は,ケミカルガイドとして機能し,後述のジブロックコポリマー層15(ジブロックコポリマーBPの層)を自己組織化するときに,ポリマーP1のドット列の基準となる。第1の開口121ではポリマーP1に親和性を有するモールド基材11が露出される。一方,第1の開口121の周囲には,ポリマーP2に親和性を有するケミカルガイド層12が配置される。この結果,ジブロックコポリマーBPを自己組織化したときに,第1の開口121にポリマーP1のドットが優先的に配置される。複数の第1の開口121を周期的に配置することで,ポリマーP1のドットの配置を制御できる。即ち,ポリマーP1のドット列の周期は,第1の開口121の配置の周期に従う。
【0020】
第1の開口121は,例えば,直径D(例えば,D=15nm)の円形状である(図2E参照)。後述のように,1[Tb/inch2]以上の記録密度Cの磁気記録媒体を作成するために,第1の開口121のサイズを15[nm]以下とする必要がある。また,第1の開口121は,円形状以外の形状,例えば,楕円形状,矩形状等でも良い。ポリマーP1のドット列の配置の基準となる範囲で,第1の開口121の形状に自由度が認められる。但し,縦横比の大きな形状(扁平な楕円形状,細長い長方形等)は,第1の開口121の開口121に対するポリマーP1のドットの位置の不確実性を招くので好ましくない。即ち,第1の開口121は縦横比が1に近いことが好ましい。
【0021】
第2の開口122は,後述の物理ガイド14を配置するための領域である。物理ガイド14は,ジブロックコポリマー層15(ポリマーP1のドット列)の形成を阻止するマスクとして機能する。第2の開口122は,磁気記録媒体のサーボ領域に対応させることができる。
【0022】
第2の開口122は,例えば,直径Dの4倍以上の幅W(例えば,W≧60nm)の矩形状である(図2E参照)。但し,第2の開口121は,一般に,物理ガイド14が突出した領域を有することから(図3B,図5B参照,磁気記録媒体のサーボ領域(図3Dの領域A02に対応)に対応させる),単純な矩形状ではなく,複数の矩形を組み合わせた形状であることが多い。
【0023】
第2の開口122のサイズは,第1の開口121のサイズより大きい。既述のように,第1の開口121は,例えば,直径Dの円形状であり,第2の開口122が,幅Wの矩形状である。この場合,幅Wは,直径Dより大きい。ここで,第1,第2の開口121の縦横比が1と異なる可能性がある。特に,第2の開口122は,縦横比が1と異なる可能性が大きい。このような場合,小さい方のサイズ(幅等)を基準として,第1,第2の開口121,122のサイズを比較する。例えば,第2の開口122の縦方向の幅W1が横方向の幅W2より大きい場合,狭い幅W1を第1の開口121のサイズ(例えば,直径D)と比較する。
【0024】
ケミカルガイド層12のパターニングは,例えば,次の手順1)〜3)で実行できる。
【0025】
1)ケミカルガイド層12へのマスクレジスト層13の形成(図2B)
ケミカルガイド層12にマスクレジスト層13を形成する。マスクレジスト層13として,例えば,アクリル系フォトポリマー,エポキシ系フォトポリマー,ノボラック系,PMMA系,PVA(polyvinyl alcohol)系の樹脂材料を適用できる。
【0026】
以下,マスクレジスト層13をパターニングする。ここでは,一例として,インプリント法によるパターニングを説明する。
【0027】
2)マスクレジスト層13へのインプリントモールドM0の押し当て(図2C)
マスクレジスト層13にインプリントモールドM0を押し当てる。
【0028】
インプリントモールドM0は,次のようにして予め作成しておく。即ち,インプリントモールドM0の基材(素材)に,レジスト(マスク材料)の層を形成する。電子ビームの露光,および現像により,レジストをパターニングする。パターニングされたレジストをマスクとして,インプリントモールドM0の基材を加工する。このようにして,インプリントモールドM0が形成される。
【0029】
なお,電子ビームの露光パターンは,例えば,BPM用のガイドパターン(サーボパターン及び配列制御用パターン)である。この場合,インプリントモールドM0は,ガイドパターン転写用のインプリントモールドである。
【0030】
3)マスクレジスト層13の硬化(図2C,図2D)
インプリントモールドM0を押し当てた状態で,マスクレジスト層13を硬化する。この結果,マスクレジスト層13がインプリントモールドM0に対応する形状にパターニングされる。例えば,紫外線の照射,冷却,または加圧により,マスクレジスト層13を硬化する。
【0031】
紫外線の照射によりマスクレジスト層13を硬化する場合,マスクレジスト層13の材料として,紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂が用いられる。
冷却によりマスクレジスト層13を硬化する場合,マスクレジスト層13の材料として,熱可塑性樹脂が用いられる。加熱して軟化した状態のマスクレジスト層13にレプリカモールドM1を押しつけ,その後,マスクレジスト層13を冷却して,硬化させる。
加圧によりマスクレジスト層13を硬化する場合,マスクレジスト層13の材料に溶媒が添加される。マスクレジスト層13を加圧することで,マスクレジスト層13中から溶媒が押し出され,レジスト層22が硬化される。
【0032】
4)ケミカルガイド層12の加工(図2E)
パターニングされたマスクレジスト層13をマスクとして,ケミカルガイド層12を加工する。ケミカルガイド層12を,例えば,酸素プラズマによりドライエッチングする。この結果,ケミカルガイド層12に第1,第2の開口121,122が形成される。
【0033】
(3)物理ガイド14の形成(ステップS13,図2F,図2G,図3B)
1)モールド基材11上への物理ガイド14の形成(図2F)。
第2の開口122に物理ガイド14用のレジスト(ガイドレジスト)の溶液を流し込む。この流し込みに,例えば,スピンコート法,ディップ法,インクジェット法を利用できる。スピンコート法では,モールド基材11を回転させて,ガイドレジストの溶液を滴下する。ディップ法では,ガイドレジストの溶液中にモールド基材11を浸漬する。インクジェット法では,モールド基材11に近接して配置されたノズルの微細な開口からガイドレジストの溶液を噴出させる。
【0034】
ここで,ガイドレジスト材料の分子量や粘度を適切に選択すれば,第1の開口121を埋めず,第2の開口122(非磁性領域に対応)のみを埋めることができる。
【0035】
例えば,第1の開口121の直径Dを15nmとする。また,第2の開口122の幅Wを60nmとする。この直径15nmは,次世代高密度HDDのターゲットとなる1Tb/in2の密度に対応するホールパターンの寸法である。そのとき,第2の開口122(非磁性領域)の一番狭い所は,15nmの4倍(言い換えればドット/スペースの2周期分)の60nmとなる。
【0036】
直径15nmの第1の開口121と,幅60nmの第2の開口122に,ガイドレジスト材料をスピンコート法により塗布する実験を行った。表1及び表2は,第1,第2の開口121,122への充填の有無を表す。表1がガイドレジスト材料(スチレン−PMMA共重合体)の分子量と充填の有無との関係を示す。表2がガイドレジスト材料(PMMA系)の粘度と充填の有無との関係を示す。表中,「○」,「×」がそれぞれ,充填可能,充填不能を表す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表1,表2に示されるように,分子量や粘度が十分に小さければ,第2の開口122(比較的大きなパターン)のみならず,第1の開口121(微細なパターン)にも,ガイドレジスト材料が充填される。分子量や粘度が大きくなると,第1の開口121(微細なパターン)にはガイドレジスト材料が充填されなくなる。分子量や粘度がさらに大きくなると,第2の開口122(比較的大きなパターン)にもガイドレジスト材料が充填されなくなる。
【0040】
ここでは,ガイドレジスト材料が,第2の開口122に充填され,第1の開口121には充填されないことが好ましい。表1より,その条件を満たす分子量は24000以上60000以下であることが判る。また,表2より,同じくその条件を満たす粘度は,1500mPa・s以上10000mPa・s以下であることが判る。
【0041】
ここで,表2で示す粘度は、25℃におけるものである。しかしながら、レジスト材料はプロセスマージンが取れるよう使用温度領域(室温領域)でその粘度が比較的安定であるように設計されている。従って、室温領域(20℃以上25℃以下)の温度であれば、表2の粘度を満たす。
【0042】
2)マスクレジスト層13の除去(図2G,図3B)
物理ガイド14の形成後に,マスクレジスト層13をウエットエッチングで除去する。この除去にドライエッチングを用いた場合,ケミカルガイド層12に好ましくない影響を及ぼす可能性がある。即ち,ケミカルガイド層12がエッチングされる可能性がある。あるいは,ケミカルガイド層12がその化学的特性を失う可能性がある(例えば,第2のポリマーP2に対する親和性が失われる)。ウエットエッチングの溶液は,マスクレジスト層13(マスクレジスト)を溶解し,かつ物理ガイド14(ガイドレジスト)を溶解しないように選択される。
【0043】
マスクレジストがノボラック系の場合,ウエットエッチングの溶液として,酸もしくはアルカリ溶液を選択できる。酸もしくはアルカリ溶液によって,ノボラック系のマスクレジストを除去できる。このとき,ガイドレジストとして,酸・アルカリに不溶な,スチレン系,PMMA系のフォトポリマーなどが好ましい。
【0044】
マスクレジストがPVA系の場合,ウエットエッチングの溶液として,純水を選択できる。純水によってPVA系のマスクレジストを除去できる。このとき,ガイドレジストとして,純水に不溶な,スチレン系,エポキシ系,ノボラック系の材料などが好ましい。
【0045】
また,エッチング溶液がケミカルガイド層12を実質的に侵食しないことも重要である。エッチング溶液が,酸,アルカリ,または純水であれば,ケミカルガイド層12の構成材料(ケミカルガイド材料)として用いられるPS,PDMS,PMMAや一般のシランカップリング材は侵食されない。更に,ケミカルガイド層12がモールド基材11表面にアンカリングされているならば,エッチング溶液は有機溶剤(例えばアニソールやPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Propylene Glycol Monomethyl Ether Acetate)))でも良い。
【0046】
(4)ジブロックコポリマー層15(第2の層)の形成(ステップS14,図2H)
ジブロックコポリマー層15を形成する。このために,物理ガイド14間(並びにケミカルガイド層12上)に,液状のジブロックコポリマーBP(望ましくはPS−PDMS,その他,PS−PMMA,PMMA−PMAPOSS,PS−PEOなど)を流し込む。
【0047】
(5)ジブロックコポリマーBPの自己組織化(ステップS15,図2I,図3C)
ジブロックコポリマーBPをアニールする。この結果,ジブロックコポリマー層15が,ポリマーP1,P2に分離されたジブロックコポリマー層15aに変化する。ポリマーP1(例えば,PDMS)のドット151の列が形成され,その周りをポリマーP2が取り囲む。既述のように,このドット151の列は,第1の開口121(ケミカルガイド)に対応して,配列される。
【0048】
なお,ドット151に替えて,ポリマーP1のシリンダーを用いることができる。即ち,ジブロックコポリマーBPを自己組織化して形成される形状がシリンダー形状でも良い。後述のモールド基材11の加工において,ポリマーP1の形状がシリンダー形状の場合でも,エッチング加工により,ドット形状のドット111が形成されるからである。
【0049】
(6)物理ガイド14の除去(ステップS16,図2J,図3D)
物理ガイド14を,例えば,酸素(O2)プラズマを用いたドライエッチングにより除去する。物理ガイド14が除去された領域にはドット151(もしくはシリンダー)が存在しない。既述のように,この領域は,例えば,磁気記録媒体の非磁性領域に対応する。
【0050】
ここでは,このドライエッチングにより,ポリマーP2もエッチングされる。即ち,ポリマーP1(例えば,PDMS)のドット151をマスクとして,ポリマーP2(PS)がエッチングされる。その結果,ドット151の背後にポリマーP2のドット152およびケミカルガイド層12のドット111が形成される。
【0051】
後述のように,図3Dに示す領域A01,A02はそれぞれ,BPMのデータ領域,サーボパターン領域に対応する。
【0052】
(7)モールド基材11の加工(ステップS17,図2K,図2L)
ポリマーP1(例えば,PDMS)のドット151をマスクとして,モールド基材11を加工する。この加工に,例えば,CF4のドライエッチングを利用できる。この結果,ドット151に対応するドット111が形成される(図2K参照)。
【0053】
その後,ウェットエッチングまたは酸素(O2)プラズマを用いたドライエッチングを用いて,残存するマスク(ドット151,152,121)を除去する。このようにして,ドット111を有する領域A0,平坦な領域A1を有するモールドMが形成される(図2L参照)。
【0054】
このモールドMは,データ領域およびサーボパターン領域を有する磁気記録媒体(BPM等)を製造するためのインプリントモールドとして,利用できる。領域A0,A1を適宜に配置することで,ドットが高精度に配列されたデータ領域,ドットの集合体の有り無しによって形成されたサーボパターン領域の双方を形成できる。既述のように,図3Dに示す領域A01,A02がそれぞれ,データ領域,サーボパターン領域に対応する。
【0055】
その後,必要に応じて,このモールドMを複製したレプリカモールドM1を作成する(図4A)。例えば,電鋳法(電気メッキ),射出成形法,押出成形法,熱転写法などによって,モールドMを型として,レプリカモールドM1が作成される。なお,モールドMを複製せずにそのまま用いても良い。
【0056】
磁性体層21上に設けたレジスト層22に,レプリカモールドM1のパターンを転写する(図4B)。この転写に,インプリント法を利用できる。例えば,レジスト層22にレプリカモールドM1を押しつけた状態で,液状のレジスト層22を硬化する。例えば,紫外線の照射,冷却,加圧により,レジスト層22を硬化する。
【0057】
紫外線の照射によりレジスト層22を硬化する場合,レジスト層22の材料として,紫外線で硬化する紫外線硬化樹脂が用いられる。
冷却によりレジスト層22を硬化する場合,レジスト層22の材料として,熱可塑性樹脂が用いられる。加熱して軟化した状態のレジスト層22にレプリカモールドM1を押しつけ,その後,レジスト層22を冷却して,硬化させる。
加圧によりレジスト層22を硬化する場合,レジスト層22の材料に溶媒が添加される。レジスト層22を加圧することで,レジスト層22中から溶媒が押し出され,レジスト層22が硬化される。
この中でも,紫外線の照射を用いる手法が,より微細なパターンを正確に転写できる点で好ましい(UVインプリント法)。
【0058】
パターン化されたレジスト層22をマスクとして,例えば,ドライエッチングやミリングなどで磁性体層21を加工し,レジスト層22を除去する。この結果,ドット211を有する領域A20と,ドット211を有しない領域A21を有する磁性体膜21aが形成される(図4C参照)。なお,磁性体層21は,通例,ガラス等の基板上に形成される。
【0059】
その後,磁気記録媒体(BPM等)が作成される。この作成に,平坦化,表面研磨(テープバーニッシュ),ルブ(潤滑剤)塗布などの工程が用いられる。平坦化工程では,磁性体膜21aのドット211を非磁性体で埋め込み,平坦化される。表面研磨では,例えば,テープ状の研磨材料で,平坦化された磁性体膜21aが磨かれる。潤滑剤の塗布は,磨かれた磁性体膜21aの表面をさらに平滑化するためのものである。
【0060】
図5A,図5Bは,磁気記録媒体(BPM)の一例の電子顕微鏡写真である。図5A,図5Bの領域A01,A02は,データ(データトラック)領域,サーボパターン領域に対応する。領域A01(データトラック領域)では,開口121に対応するように磁性ドットが整然と配列される。領域A02(サーボパターン領域)では,ドットの有る領域と無い領域により,サーボパターンが形成される。即ち,物理ガイド14の配置により,ドットの無い領域が形成される。
【0061】
図6は,磁性ドットのピッチPと記録密度Cの関係を表すグラフである。ポイントS1〜S3はそれぞれ,ピッチPが30,17,12[nm]で,記録密度Cが0.8,2.5,5.0[Tb(Tera bit)/inch2]である。記録密度Cの目標を1[Tb/inch2]以上とすると,ピッチPとして約30[nm]以下となり,磁性ドットの直径は,その半分の約15[nm]以下となる。第1の開口121のサイズは,磁性ドットのサイズに対応することから,1[Tb/inch2]以上の記録密度Cを達成するために,第1の開口121のサイズを15[nm]以下とする必要がある。
【0062】
(磁気記録再生装置)
図7は,本実施形態のビットパターンド型磁気記録媒体(BPM)を用いた磁気記録再生装置300の構成図である。
【0063】
磁気記録再生装置300は,情報を記録するための磁気ディスク321を有する。磁気ディスク321は,剛構成であり,ビットパターンド型磁気記録媒体で構成される。磁気ディスク321は,スピンドル322に装着され,図示しないスピンドルモータによって一定回転数で回転駆動される。スライダー323は,磁気ディスク321に情報を記録,再生するための,例えば,単磁極型記録ヘッド及びMRヘッドを搭載する。スライダー323は,薄板状の板ばねからなるサスペンション324の先端に取付けられる。サスペンション324は図示しない駆動コイルを保持するボビン部等を有するアーム325の一端側に接続される。
【0064】
アーム325の他端側には,リニアモータの一種であるボイスコイルモータ326が設けられる。ボイスコイルモータ326は,図示しない駆動コイルおよび磁気回路とから構成される。駆動コイルは,アーム325のボビン部に巻かれた導線から構成される。磁気回路は,駆動コイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石および対向ヨークにより構成される。
【0065】
アーム325は,固定軸327の上下2カ所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され,ボイスコイルモータ326によって回転揺動駆動される。すなわち,磁気ディスク321上におけるスライダー323の位置は,ボイスコイルモータ326によって制御される。なお,蓋体328は磁気記録再生装置300を密閉する蓋である。
【0066】
図8に示すように,磁気ディスク321は,例えば,放射状のサーボパターン領域329を有する。サーボパターン領域329は,アドレス情報を記憶した領域である。磁気ディスク321に情報を記録及び再生する際には,記録再生ヘッドの位置決めのために,アドレス情報が用いられる。
【0067】
以上のように,本実施形態によれば,ドット111の列(ドットパターン)を有する領域A0と,ドット111の列(ドットパターン)を有しない領域A1と,を備えるモールドMを高精度で作成できる。ケミカルガイド(第1の開口121に対応)を用いることで,安価でスループットの良い自己組織化法を用いた高精度のドット列の作成が可能となる。また,物理ガイド14(第2の開口122に対応)を用いることで,領域A0,A1の境界の位置を高精度とすることができる。即ち,ケミカルガイド(第1の開口121に対応)と物理ガイド14(第2の開口122に対応)を併用することで,ドット111の配列および領域A0,A1の境界の双方の位置精度の向上を図っている。
【0068】
ここで,本実施形態を,BPMに替えて,オーダード媒体に適用できる。オーダード媒体は,1マークが数ドットで構成される媒体であり,1マークが1ドットに対応するビットパターンド媒体と異なる。
【0069】
グラニュラ連続膜からドットを形成し,オーダード媒体とすることが考えられる。グラニュラ連続膜は,制御されていない比較的ランダムな磁区の集まりで構成されることから,熱揺らぎ等により磁区が反転する可能性がある。オーダード媒体において,個々のドットが孤立し,かつ精度良く配列していれば,グラニュラ連続膜媒体に対して,熱揺らぎ等への耐性を向上し,品質の良いマークの形成が可能となる。
【0070】
ビットパターンド媒体同様,このオーダード媒体においても,精度良く配列されたドットが必要であり,またサーボパターンが同時に加工されることがコスト面などから望ましい。よって,ケミカルガイドでドットを精度良く配列し,物理ガイドによりサーボパターンも形成する本実施形態の手法は,オーダード媒体においても有効である。
【0071】
また,更に他の実施例として半導体分野への応用が考えられる。半導体においても,自己組織化現象(例えば,ラメラ状のミクロ層分離)により短時間に精度良く微細配線を形成する試みがなされている。これにも配線の位置精度向上のためケミカルガイドが有効である。半導体において,配線パターンのある領域と無い領域を設ける必要がある。その際に,物理ガイドを併用することで,これらの境界(パターン)を高精度かつ任意に形成できる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが,これらの実施形態は,例として提示したものであり,発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は,その他の様々な形態で実施されることが可能であり,発明の要旨を逸脱しない範囲で,種々の省略,置き換え,変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は,発明の範囲や要旨に含まれるとともに,特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
M モールド
11 モールド基材
111 ドット
12 ケミカルガイド層
121,122 開口
13 マスクレジスト層
14 物理ガイド
15 ジブロックコポリマー層
15a ジブロックコポリマー層
151,152 ドット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の高分子に対して第2の高分子より大きな親和性を有する基板上に,前記第2の高分子に対して前記第1の高分子より大きな親和性を有する第1の層を形成する工程と,
前記第1の層に,第1の開口と,この第1の開口よりサイズが大きい第2の開口と,を形成する工程と,
前記第2の開口内にレジストを充填,硬化する工程と,
前記第1の開口内および前記第1の層上に,前記第1及び第2の高分子を有するブロックコポリマーを含む第2の層を形成する工程と,
前記ブロックコポリマーを自己組織化して,前記第1の開口に対応して配置され,かつ前記第1の高分子を含むドット列を形成する工程と,
前記硬化されたレジストを除去する工程と,
前記ドット列をマスクとして,前記基板を加工して,前記ドット列に対応する形状を有する第1の領域と,前記第2の開口に対応する,平坦な第2の領域と,を有するモールドを形成する工程と,
前記第1,第2の層を除去する工程と,
を具備することを特徴とするモールドの製造方法。
【請求項2】
前記第1の開口のサイズが,15nm以下であり,
前記レジストが24000以上で60000以下の分子量の高分子を有する,または前記レジストが,1500mPa・s以上で10000mPa・s以下の粘度を有する
ことを特徴とする請求項1記載のモールドの製造方法。
【請求項3】
前記第2の開口のサイズが,前記第1の開口のサイズの4倍以上である
ことを特徴とする請求項2に記載のモールドの製造方法。
【請求項4】
前記第1,第2の開口を形成する工程が,
前記第1の層上に,第2のレジストの層を形成する工程と,
前記第1,第2の開口に対応する形状となるように,前記第2のレジストの層を加工する工程と,
前記加工された前記第2のレジストの層をマスクとして,前記第1の層をエッチングして,前記第1,第2の開口を形成する工程と,を有し,
前記レジストを充填,硬化する工程の後に,前記加工された前記第2のレジストの層を除去する工程をさらに具備する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモールドの製造方法。
【請求項5】
前記第2のレジストの層を加工する工程が,
前記第2のレジストの層に,前記第1,第2の開口に対応する第1,第2の突起を有するモールドを押し当てる工程と,
前記モールドが押し当てられた,前記第2のレジストの層を硬化する工程と,を有する
請求項4記載のモールドの製造方法。
【請求項6】
前記第2のレジストの材料は,ノボラック系,PMMA系,またはPVA系であることを特徴とする請求項4または5に記載のモールドの製造方法。
【請求項7】
ウエットエッチングによって,前記第2のレジストの層を除去する工程
をさらに具備することを特徴とする請求項6記載のモールドの製造方法。
【請求項8】
磁性膜を有する基板上にレジストの層を形成する工程と,
前記レジストの層に,請求項1記載の製造方法で製造されたモールドまたはこのモールドから複製されたモールドを押し当てる工程と,
前記モールドが押し当てられた,前記レジストの層を硬化して,パターン化する工程と,
前記パターン化されたレジストの層を用いて,前記第1の領域に対応し,磁性ドットの列が配置される磁性領域と,前記第2の領域に対応する非磁性領域と,を有する磁気記録媒体を形成する工程と,
を具備することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項1】
第1の高分子に対して第2の高分子より大きな親和性を有する基板上に,前記第2の高分子に対して前記第1の高分子より大きな親和性を有する第1の層を形成する工程と,
前記第1の層に,第1の開口と,この第1の開口よりサイズが大きい第2の開口と,を形成する工程と,
前記第2の開口内にレジストを充填,硬化する工程と,
前記第1の開口内および前記第1の層上に,前記第1及び第2の高分子を有するブロックコポリマーを含む第2の層を形成する工程と,
前記ブロックコポリマーを自己組織化して,前記第1の開口に対応して配置され,かつ前記第1の高分子を含むドット列を形成する工程と,
前記硬化されたレジストを除去する工程と,
前記ドット列をマスクとして,前記基板を加工して,前記ドット列に対応する形状を有する第1の領域と,前記第2の開口に対応する,平坦な第2の領域と,を有するモールドを形成する工程と,
前記第1,第2の層を除去する工程と,
を具備することを特徴とするモールドの製造方法。
【請求項2】
前記第1の開口のサイズが,15nm以下であり,
前記レジストが24000以上で60000以下の分子量の高分子を有する,または前記レジストが,1500mPa・s以上で10000mPa・s以下の粘度を有する
ことを特徴とする請求項1記載のモールドの製造方法。
【請求項3】
前記第2の開口のサイズが,前記第1の開口のサイズの4倍以上である
ことを特徴とする請求項2に記載のモールドの製造方法。
【請求項4】
前記第1,第2の開口を形成する工程が,
前記第1の層上に,第2のレジストの層を形成する工程と,
前記第1,第2の開口に対応する形状となるように,前記第2のレジストの層を加工する工程と,
前記加工された前記第2のレジストの層をマスクとして,前記第1の層をエッチングして,前記第1,第2の開口を形成する工程と,を有し,
前記レジストを充填,硬化する工程の後に,前記加工された前記第2のレジストの層を除去する工程をさらに具備する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のモールドの製造方法。
【請求項5】
前記第2のレジストの層を加工する工程が,
前記第2のレジストの層に,前記第1,第2の開口に対応する第1,第2の突起を有するモールドを押し当てる工程と,
前記モールドが押し当てられた,前記第2のレジストの層を硬化する工程と,を有する
請求項4記載のモールドの製造方法。
【請求項6】
前記第2のレジストの材料は,ノボラック系,PMMA系,またはPVA系であることを特徴とする請求項4または5に記載のモールドの製造方法。
【請求項7】
ウエットエッチングによって,前記第2のレジストの層を除去する工程
をさらに具備することを特徴とする請求項6記載のモールドの製造方法。
【請求項8】
磁性膜を有する基板上にレジストの層を形成する工程と,
前記レジストの層に,請求項1記載の製造方法で製造されたモールドまたはこのモールドから複製されたモールドを押し当てる工程と,
前記モールドが押し当てられた,前記レジストの層を硬化して,パターン化する工程と,
前記パターン化されたレジストの層を用いて,前記第1の領域に対応し,磁性ドットの列が配置される磁性領域と,前記第2の領域に対応する非磁性領域と,を有する磁気記録媒体を形成する工程と,
を具備することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−63576(P2013−63576A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203435(P2011−203435)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、経済産業省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「超高密度ナノビット磁気記録技術(グリーンITプロジェクト)」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、経済産業省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「超高密度ナノビット磁気記録技術(グリーンITプロジェクト)」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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