説明

モールドプレス用光学ガラス

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モールドプレスに使用するプリフォーム材、およびこのプリフォーム材からのモールドプレスに適したモールドプレス用光学ガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、光学機器の小型化、高性能化が著しく進行している。これを受けて、光学機器に使用されるレンズ等の光学素子にも、軽量化、小型化および高性能化が求められている。そこで、非球面レンズを使用することによって、使用するレンズ枚数の削減をはかることが出来るため、各種光学機器の設計において、非球面レンズの使用が主流になりつつある。非球面レンズの製造方法としては、ゴブあるいはガラスブロック等から得られたプリフォーム材を加熱軟化させ、これを高精度な面を持つ金型でプレス成形する、いわゆるモールドプレスが主流となってきている。この方法の特徴は、成形後にレンズを研削、研磨する工程を省略出来るため、レンズ等の光学素子を低コストで、大量に生産できるところにある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記モールドプレスによる製法の低コスト、大量生産という目的を達成するためには、モールドプレスに用いられる金型が繰り返し使用できることが望ましい。そのためには、低温軟化性を有するガラス、すなわちガラス転移点(Tg)が低いガラスを使用することにより、モールドプレス時の温度をできるだけ低くして、金型の表面酸化を極力抑える必要がある。現在、金型の耐熱温度から得られるモールドプレスの上限温度は650〜700℃であり、これに伴いガラスの転移点(Tg)の上限は、550〜600℃程度であるが、金型の表面酸化の進行を抑えて金型の寿命を延ばすためには、低ければ低いほど好ましい。一方、光学機器の非球面レンズに用いられるガラスは、種々の光学定数を有するものが求められており、その中で、屈折率(nd)が1.65〜1.73、アッベ数(νd)が50〜60程度の光学定数を有するものが求められている。従来、このような光学定数を示すガラスは、硼酸ランタン系組成が代表的であり、例えば、特公昭48−61517号公報、特開昭54−3115号公報等に、種々のガラスが開示されている。しかし、これらのガラスは、一般的にガラス転移点が高く、モールドプレス用のガラスとしては不適当であると言える。
【0004】ところで、現在、前記プリフォーム材の製造方法として、ガラス融液を流出管の先端から滴下し、滴下したガラスを金型等で受けて成形し、冷却してプリフォーム材を得る方法がある。この方法によってプリフォームを得る代表的な例が特開平6−122526号公報、特開平8−319124号公報等に記載されている。この方法は、量産性が高く、製造コストにおいて現在最も安価であり、しかもこの方法によって得られたプリフォーム材は、球状あるいはレンズの最終形状に近い両凸レンズ状であるため、モールドプレス時の形状変化量を小さくすることができ、最終的に得られるレンズ自体の量産性も向上できる効果を有している。
【0005】一方、ガラスブロック材から切断によりプリフォーム材を得る方法もある。しかし、この方法はブロック材の切断後、ボール形状への加工工程が必要であったり、あるいは加工しない場合には直方体からレンズ形状に成形する際、形状の変化量が大きくなり成形時間がかかる。したがって、コスト的にも量産性の点からも、ガラス融液を滴下する前述の方法の方が格段に優れている。
【0006】ところで、前記の融液を滴下する成形方法では、ガラスの融液の粘度が低過ぎると、表面の曲面が滑らかで、球状あるいは両凸レンズ状に近い形状のプリフォーム材が得難くなってしまう。一方、ガラス融液の粘度が高過ぎると、流出管先端から連続的に流れ出るガラス融液の滴下の状態を適宜制御して、1回の成形に必要な量のみ分離することが難しくなり、プリフォーム材を製造しにくくなる。
【0007】また、ガラスの失透温度はプリフォーム材製造時の融液の温度より低いことが要求される。つまり、ガラス融液の粘度が所望の値より低いと、前述の理由により、ガラス融液の粘度を上げるべく、温度を下げる必要がある。失透温度が所望の粘度が得られる融液温度より高いと、その所望の粘度になるように融液温度を下げたときに、融液に微結晶が生じ、その結果、プリフォーム材に失透が生じてしまい、光学ガラス用に使用できなくなる。特に粘度の低いガラスではこのような傾向が顕著となる。より具体的に説明すれば、失透温度が高いと、滴下によるプリフォーム材の成形が可能となる粘度になる温度で、流出管の先端でガラス融液に失透が生じて、プリフォーム材の表面や内部に失透が入り、プリフォーム材の歩留まりが著しく低下してしまう。これを避けるためには、一定時間(約1〜3時間)毎に流出管先端の温度を失透が消失する温度まで上げなければならず、滴下法により、高品質のプリフォーム材を安定に連続して製造することは著しく困難となる。
【0008】特開昭60−221338号公報には、低いガラス転移点を有する硼酸ランタン系の光学ガラスが開示され、また、特開平5−58669号公報には、モールドプレス成形に適した硼酸ランタン系の光学ガラスが開示されている。しかし、これらのガラスは、プリフォーム材製造に適した粘度が得られる温度より失透温度が高いため、上記のような問題が生じてしまう。
【0009】一方、ガラス融液の粘度がプリフォーム形成時の所望の値より高い場合、粘度を下げるべくガラス融液の温度を高温にすることから、失透の問題は生じないが、プリフォーム材用の金型への焼き付きや金型の表面酸化による早期消耗等の問題が発生する。実験によれば、950℃以下でプリフォーム材を成形すれば、全く問題はない。
【0010】すなわち、モールドプレス用光学ガラスは、先に述べたようにガラス転移点が低いことに加えて、プリフォーム材の成形に適した粘度が得られる融液温度よりも失透温度が低いことが望ましい。さらに、この成形に適した粘度が得られる融液温度が、プリフォーム成形に用いる金型の耐熱温度を考慮して、できるだけ低いことが好ましいのである。
【0011】さらに、PbO成分を含有するガラスは、モールドプレス時に金型と融着しやすいために、金型の繰り返し使用が困難であることから、モールドプレス用光学ガラスとしては不適当であると言える。また、F2成分を含有するガラスは、プリフォーム材を成形する際に、ガラス融液の表面層から、F2成分が選択的に揮発しプリフォーム材に曇りが生じたり、プリフォーム材をモールドプレスする時にF2成分が揮発して金型に付着し、金型表面に曇りが生じたりする等の理由により、モールドプレス用光学ガラスとしては適していない。
【0012】本発明は前記従来のガラスにみられる諸欠点を改善し、屈折率(nd)1.65〜1.73、アッベ数(νd)50〜60の範囲の光学定数、および低温軟化性、すなわち低いガラス転移点(Tg)を有し、かつ、プリフォーム材の成形に適した粘度が得られる融液温度よりも低い失透温度を有し耐失透性に優れた、モールドプレス用光学ガラスを提供し、また、このような性質を有するとともにPbO成分やF2成分を含有しない、モールドプレス用光学ガラスを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明者等は、硼珪酸ランタン系ガラスの融液を滴下させて、プリフォーム材の成形実験を重ねた結果、滴下によるプリフォーム材成形に適したガラス融液の粘度η(poise)の範囲がlogη=1.5〜2.5の範囲であることを見出した。さらに、上記ガラス融液の粘度η(poise)の範囲において、失透が生じない安定なガラスを得るために、前記特開平5−58669号公報に記載されているようにSrO成分とZrO2および/またはTa25成分とを含有した組成系に、さらにY23を共存させてみた。しかし、意外にも安定したガラスは得られず、Y23成分を含有する組成系では、さらに、CaO成分を共存させることにより、従来のガラスよりも失透温度が100℃以上も向上することが分かった。つまり、ごく限られた特定の組成範囲のSiO2−B23−La23−Y23−Ta25−CaO−Li2O系組成において、前記所望の範囲の光学定数および低いガラス転移点を有し、耐失透性が一段と優れ、プリフォーム材の製造およびモールドプレスにおいて必要とされる諸特性について、総合的に優れた光学ガラスが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】すなわち、前記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、屈折率(nd)1.65〜1.73およびアッベ数(νd)50〜60の範囲の光学定数を有し、ガラス転移点(Tg)が480〜580℃の範囲の硼珪酸ランタン系ガラスからなり、透明な融液状態から温度を下げていったときに微結晶を生じる温度である失透温度が、粘度η(poise)がlogη=2.5であるときの融液の温度未満であることを特徴とするモールドプレス用光学ガラスである。
【0015】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモールドプレス用光学ガラスにおいて、重量%で、SiO2 10〜20%B23 23〜35%ただし、SiO2+B23 36〜50%La23 10〜21%Y23 5〜15%Gd23 0〜10%ただし、La23+Y23+Gd23 15〜40%Ta25 1〜10%ZrO2 0〜 8%CaO 5〜20%ZnO 0〜10%SrO 0〜20%BaO 0〜20%ただし、ZnO+CaO+SrO+BaO 10〜35%ただし、Y23+Ta25+CaO 14%以上Li2O 2.5〜8%Sb23 0〜 1%の割合で含まれる、これらの組成からなることを特徴とする。
【0016】また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のモールドプレス用光学ガラスにおいて、重量%で、SiO2 10〜20%B23 23〜35%ただし、SiO2+B23 36〜50%La23 10〜18%Y23 5〜15%Gd23 0〜10%ただし、La23+Y23+Gd23 15〜40%Ta25 1〜10%ZrO2 0〜 8%CaO 5〜20%ZnO 0〜10%SrO 0〜20%BaO 0〜20%ただし、ZnO+CaO+SrO+BaO 10〜35%ただし、Y23+Ta25+CaO 14%以上Li2O 2.5〜8%Sb23 0〜1%の割合で含まれる、これらの組成からなることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明のモールドプレス用光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を、前記のとおりに、限定した理由を以下に述べる。
【0018】すなわち、ガラス形成成分であるSiO2成分は、ガラスの耐失透性向上と化学的耐久性維持のため、10%以上含有させる必要があるが、20%を超えると低温軟化性を維持し難くなる。また、B23成分は、ガラスに低温軟化性を与えるのに有効なガラス形成成分であるが、その量は、ガラスの耐失透性および化学的耐久性を維持するため、23〜35%の範囲とすべきである。ただし、SiO2およびB23成分の合計量は、耐失透性と目標の光学定数を維持するため、36〜50%の範囲とすべきである。
【0019】La23、Y23、Gd23の各成分は、ガラスの屈折率を高め、低分散化させるのに有効な成分である。La23成分は、ガラスの屈折率を所望の値にするため10%以上含有させる必要があるが、耐失透性維持のため21%以下にすべきであり、特に耐失透性の優れたガラスを得るためには、その量を18%以下とすることが好ましい。Y23成分は、屈折率を高めるうえ、ガラスの耐失透性を改善する効果のある成分であることから必須成分としたが、その量が5%未満では目的とする耐失透性を得難く、15%を超えて含有させるとガラスはかえって失透しやすくなる。Gd23成分は、光学定数調整のため任意に含有させることができるが、これも耐失透性維持のために10%までとすべきである。また、目標とする光学定数を維持し、より失透に対して安定なガラスを得るために、これら三つの成分の合計量を15〜40%の範囲にする必要がある。
【0020】Ta25成分はガラスの失透性を大幅に改善することから本発明のガラスに必須の成分であるが、その量が1%未満では顕著な効果がみられず、また10%を超えるとガラスはかえって失透しやすくなる。
【0021】ZrO2成分は光学定数の調整とガラスの化学的耐久性を改善させる目的で任意に含有させることができるが、耐失透性維持のため8%以下にする必要がある。
【0022】ZnO成分は、ガラスの化学的耐久性の中でも特に耐水性を改善する効果のある成分である。また、Li2O成分の少ない系のガラスにおいて、化学的耐久性を損なわずに、ガラス転移点を下げる効果が大きい。よって、これらの効果を得るために本発明のガラスに任意に導入することができるが、耐失透性を維持するために10%以下にする必要がある。
【0023】CaO、SrOおよびBaOの各成分は光学定数の調整とガラスの安定化のためにそれぞれ20%まで導入することができるが、20%を超えるとかえってガラスは失透しやすくなるばかりか、ガラスの化学的耐久性も悪化してしまう。特にCaO成分は、ガラスの失透性を改善する効果が大きいため必須成分としたが、より失透に対して安定なガラスを得るためには、その量を5%以上にする必要がある。さらに、ZnO、SrOおよびBaO各成分の1種または2種以上の合計量と必須成分であるCaO成分との合計量が10〜35%の範囲であると、ガラスの耐失透性が最も良好となる。
【0024】本発明において、従来にない優れた耐失透性を示すガラスを得るために特に重要なのは、Y23Ta25およびCaOの3成分を共存させる点にあり、これら各成分の含有量の範囲は、上記述べたとおりであるが、さらにこれら3成分の合計量を14%以上にすることにより、ガラス融液の粘度η(poise)が滴下によるプリフォーム材の製造に適した範囲、すなわち、logη=1.5〜2.5の範囲となる融液の温度範囲において、失透が全く発生せず、耐失透性という点で安定なガラスとなる。
【0025】Li2O成分は、ガラスの溶融性および耐失透性を向上させるとともに、ガラスに低温軟化特性を与える重要な成分であり、Li2O成分を本発明のガラスに含有させることによって、モールドプレス用光学ガラスとしての要求物性である580℃以下のガラス転移点を得ることができる。これらの効果を得るためにはLi2O成分を2.5%以上含有させる必要があり、また、その量が8%を超えるとガラスの化学的耐久性および耐失透性がともに悪化してしまう。
【0026】Sb23成分はガラス溶融の際の清澄剤として任意に添加し得るが、その量は1%以下で十分である。
【0027】なお、本発明のガラスに、請求項に記載していない種々の成分を導入し、ガラスの安定性を調べたところ、Al23、MgO、Na2OおよびK2Oの各成分を導入すると、ガラスの安定性が急激に悪化し、所望の耐失透性を得ることができなくなることがわかった。すなわち、これらの各成分は安定なガラスを得るためには、本発明のガラスに含有させてはならない成分であると言える。
【0028】上記のような組成のガラスであれば、本発明の目的とする、融液の性質を有するガラスを得ることができる。具体的に図1に基づいて説明する。Aは、プリフォーム材の成形時の所望の粘度範囲であるlogη=1.5〜2.5を示している。図1中の実線Xは、上記のような組成を有する本発明の光学ガラスの融液温度と粘度の関係の一例を示したものである。実線XがAと重なるM−N部分が、粘度から得られる、このガラスのプリフォームを製造する際に好ましい融液の温度である。本発明のガラスでは、実線Xで示される融液の失透温度は、Mに対応する温度より低いC点である。したがって、logη=2.5以下の粘度になるように融液の温度を制御してプリフォーム材の成形を行えば、失透することはない。また、Nに対応する温度D点については特に制限はないが、ガラスとプリフォーム材の成形に用いる金型との融着を防止するために、D点が950℃程度より低いと、より一層好ましい。この場合、M−Nの温度範囲において、プリフォーム材の成形作業を行えばよい。しかし、本発明においては、D点が950℃程度よりも高くてもよく、その場合は、M−N間であって、950℃程度よりも低い温度で、プリフォーム材の成形を行えばよい。
【0029】
【実施例】以下に、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】表1に、本発明のモールドプレス用光学ガラスの実施例の組成(No.1〜No.14)を示し、表2には各実施例で得られたガラスの屈折率(nd)、アッベ数(νd)、ガラス転移点(Tg)、失透試験の結果、ならびにガラス融液の粘度η(poise)がlogη=1.5および2.5となった時のガラス融液の温度を示した。また、表3には、前述したような従来の光学ガラスの比較例(No.1〜No.6)の組成と、それら光学ガラスの表2で示したものと全く同様の物性、試験結果を示した。
【0031】実施例No.1〜No.14のモールドプレス用光学ガラスは、いずれも酸化物、炭酸塩および硝酸塩等の通常の光学ガラス原料を表1の組成比になるように、所定の割合で秤量混合した後、白金坩堝等に投入し、組成による溶融性の難易度に応じて、1000〜1300℃の温度で、2〜4時間溶融し、攪拌均質化した後、適当な温度に下げて金型等に鋳込み徐冷することにより容易に得られた。
【0032】失透試験は、白金製の50cc坩堝に、上記のようにして得られた各実施例のモールドプレス用光学ガラス試料100gを入れて、電気炉中で各試料を1200〜1300℃の温度で2時間溶融した後、降温して各試料を950℃、900℃、850℃および800℃で24時間保温した後、炉外に取り出して失透の有無を顕微鏡により観察した結果を示したもので、観察の結果、失透が認められないガラスは○印で、表面にのみ失透が認められたガラスは△印で、また内部に失透が認められたガラスは×印で示した。
【0033】また、ガラス融液の所定粘度となったときの温度は、白金球引き上げ法により粘度を測定しつつ、粘度η(poise)がlogη=1.5および2.5となった時のガラス融液の温度を測定した。なお、ガラス融液の失透が激しく粘度測定ができなかった箇所を×印で示した。
【0034】
【表1】


【0035】
【表2】


【0036】
【表3】


【0037】表1にみられるとおり、本発明の実施例のガラスはいずれも所望の光学定数と、また、480〜580℃の範囲の低いガラス転移点(Tg)を有しており、モールドプレスに適している。
【0038】また、失透試験結果およびガラス融液の粘度η(poise)がlogη=1.5および2.5の時のガラス融液の温度を測定した結果から分かるように、表3に示す従来の光学ガラスでは、ガラス融液の粘度η(poise)がlogη=1.5の時の温度でガラスが失透してしまい、logη=2.5のときには失透のため粘度を測定することさえできない。これに対して、本発明の実施例のガラスは、いずれも、logη=2.5となるときの融液の温度が、失透温度より高く、プリフォーム成形時に失透することはほとんどないことが分かる。また、logη=1.5となるときの融液の温度が、950℃程度以下であるものが多いので、logη=1.5〜2.5の範囲において、金型の耐熱温度以下でプリフォーム材の成形作業を行うことができる。つまり、本発明にかかる実施例の光学ガラスは、プリフォーム材成形時の作業温度範囲において失透が発生せず、優れた耐失透性を有し、いずれもガラス融液の滴下によるプリフォーム材の成形に最適である。
【0039】
【発明の効果】以上述べたとおり、本発明のモールドプレス用光学ガラスは、屈折率(nd)1.65〜1.73、アッベ数(νd)50〜60の範囲の光学定数と、480〜580℃の範囲のガラス転移点(Tg)を有する硼珪酸ランタン系ガラスであり、かつ、失透温度が、ガラス融液の粘度η(poise)がlogη=2.5となるときの融液の温度未満であるから、滴下法によりモールドプレス用プリフォーム材を製造するのに適したガラス融液の粘度η(poise)であるlogη=1.5〜2.5の範囲において失透が全く発生せず、しかも、モールドプレス用光学ガラスとして不適当な成分(PbO、F2等)を含有しないことから、プリフォーム材の成形およびモールドプレスに最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガラス融液の温度と粘度との関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 屈折率(nd)1.65〜1.73およびアッベ数(νd)50〜60の範囲の光学定数を有し、ガラス転移点(Tg)が480〜580℃の範囲の硼珪酸ランタン系ガラスからなり、透明な融液状態から温度を下げていったときに微結晶を生じる温度である失透温度が、粘度η(poise)がlogη=2.5であるときの融液の温度未満であることを特徴とするモールドプレス用光学ガラス。
【請求項2】 重量%で、SiO2 10〜20%B23 23〜35%ただし、SiO2+B23 36〜50%La23 10〜21%Y23 5〜15%Gd23 0〜10%ただし、La23+Y23+Gd23 15〜40%Ta25 1〜10%ZrO2 0〜 8%CaO 5〜20%ZnO 0〜10%SrO 0〜20%BaO 0〜20%ただし、ZnO+CaO+SrO+BaO 10〜35%ただし、Y23+Ta25+CaO 14%以上Li2O 2.5〜8%Sb23 0〜 1%の割合で含まれる、これらの組成からなることを特徴とする請求項1に記載のモールドプレス用光学ガラス。
【請求項3】 重量%で、SiO2 10〜20%B23 23〜35%ただし、SiO2+B23 36〜50%La23 10〜18%Y23 5〜15%Gd23 0〜10%ただし、La23+Y23+Gd23 15〜40%Ta25 1〜10%ZrO2 0〜 8%CaO 5〜20%ZnO 0〜10%SrO 0〜20%BaO 0〜20%ただし、ZnO+CaO+SrO+BaO 10〜35%ただし、Y23+Ta25+CaO 14%以上Li2O 2.5〜8%Sb23 0〜1%の割合で含まれる、これらの組成からなることを特徴とする請求項1に記載のモールドプレス用光学ガラス。

【図1】
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【特許番号】特許第3377454号(P3377454)
【登録日】平成14年12月6日(2002.12.6)
【発行日】平成15年2月17日(2003.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−289765
【出願日】平成10年10月12日(1998.10.12)
【公開番号】特開2000−119036(P2000−119036A)
【公開日】平成12年4月25日(2000.4.25)
【審査請求日】平成12年4月6日(2000.4.6)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【参考文献】
【文献】特開2000−16831(JP,A)
【文献】特開 平8−217484(JP,A)
【文献】特開 平8−59281(JP,A)
【文献】特開 平7−315860(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開4222324(DE,A1)