説明

モールド変圧器

【課題】
従来は、モールド変圧器の負荷電流を計測して、その負荷電流値で風冷ファンを制御していた。この構成では短時間の負荷電流の増減では変圧器のコイル温度に大きな変動が生じないケースがあった。また、風冷ファンは変圧器のコイルの温度でファン制御を行う方がより確実であるが、ダイヤル温度計を使用した場合、それ自体は温度を表示し警報を発する機器で、ダイヤル温度計自体で他の機器を制御することはできなかった。
【解決手段】
本発明は、風冷式モールド変圧器において、感温部と測温抵抗体を一体化した測温体センサをモールド変圧器のコイル近傍に配置し、感温部はダイヤル温度計に接続して温度を表示し、測温抵抗体はコンバートメータに接続し、温度信号を電気信号に変換し、制御系は該電気信号を入力し、モールド変圧器の下側に配置した風冷ファンをON−OFF制御し変圧器を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド変圧器特に風冷式モールド変圧器の温度を表示して監視することと風冷ファンの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
モールド変圧器は、難燃性、コンパクト、低騒音などの理由によりビルなどの受配電変圧器として多く利用されている。
【0003】
モールド変圧器の冷却は、一般に空気の自然対流で行うものがほとんどであるが、変圧器の容量が大きくなると、自然対流では冷却できず冷却風をコイルや鉄心に強制的に当てて冷却する風冷式モールド変圧器が採用されている。
【0004】
また、従来は、モールド変圧器の負荷電流を計測して、その負荷電流値で風冷ファンを制御していた。このような構成においては、変圧器のコイルの温度は、短時間の負荷電流の増減ではコイルの温度に大きな変動が生じないケースがあった。風冷ファンは、変圧器のコイルの温度を計測し、その温度の値でファンの制御を行う方がより確実であるが、ダイヤル温度計自体は温度を表示し、警報を発する機器であり、ダイヤル温度計自体で他の機器を制御することはできなかった。
また、測温抵抗体は、他の機器への数値を出力することは可能であるが、ダイヤル温度計と測温抵抗体はそれぞれ測温部を有し、測定場所の違いにより測定値に誤差を生じていた。
【0005】
本発明は測温体センサを一体化したが、本発明の測温体センサの構成に近い構造が特許文献1(特開平9−96573号公報)に記載されている。
さらに、変圧器のコイルの温度を計測する構成が特許文献2(特開平9−229775号公報)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−96573号公報
【特許文献2】特開平9−229775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1(特開平9−96573号公報)には、2種類の巻線温度計を一括して容器に挿入する構成を採用することによって測定結果が一致し、また、巻線温度計を油密に容器に挿入取付けるための容器の加工を減らしてコストダウンに資するため、その構成を、巻線温度計3のダイヤル温度計式の感温部31と、抵抗式の感温部である測温抵抗体32とを1つの感温筒34に収納した構成が開示されている。しかしながら、特許文献1とは本願発明のように感温部と測温抵抗素子を一体化した構成は異なる。
【0008】
また、特許文献2(特開平9−229775号公報)には、従来技術の説明として、「鉄心21の外側に低圧巻線22と高圧巻線24が冷却ダクト23を介して巻装され、これらの巻数22,24はそれぞれ樹脂25によりモールドされている。ダイヤル温度計の感温部26は、冷却ダクト23の上部に、所要の空気中絶縁距離をおいた位置に固定されている。ダイヤル温度計の温度表示部28は感温部26と蛇管27により接続されていることが開示されている。しかし、特許文献2はヒートポンプを介して温度計測を行っているため構成は異なる。
【0009】
また、一般に、風冷式モールド変圧器は、風冷ファンを常時運転し続け、冷却するものと、モールド変圧器の自冷容量を超えた場合に風冷ファンを運転するものとがあるが、本発明はモールド変圧器の自冷容量を超えた場合に風冷ファンを運転するものに関する発明である。
【0010】
モールド変圧器の自冷容量の監視において、負荷電流を計測し、設定した電流値を超えた場合に風冷ファンの運転を行うが、負荷電流の短時間内の増減に対してコイルの温度は徐々に上昇または下降するため、負荷電流を用いて風冷ファンを制御した場合、コイルの温度が風冷する温度に達する前にファン運転を開始するなどタイミングがずれていた。
【0011】
本発明の目的は、従来の負荷電流ではなく、コイルまたはコイル近傍の温度データを計測し、この温度データで風冷ファンを制御する風冷式モールド変圧器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、感温部と測温抵抗体を一体化した測温体センサをモールド変圧器のコイル近傍に配置し、該感温部はダイヤル温度計に接続して温度を表示し、前記測温抵抗体はコンバートメータに接続し、温度信号を電気信号に変換し、制御系は該電気信号を入力し、前記モールド変圧器の下側に配置した風冷ファンを制御することを特徴とする。
【0013】
また、前記測温体は、前記モールド変圧器のコイル近傍に配置し、前記コイル近傍の雰囲気温度を計測し、予め前記コイル近傍の雰囲気温度とコイル温度の関係式を求めておき、前記雰囲気温度よりコイル温度を換算して求めることを特徴とする。
【0014】
また、温度センサである感温部と測温抵抗体を設けた測温体をモールド変圧器のコイルの横のモールド部に孔を設け、該孔に該測温体を挿入、配置し、該感温部はダイヤル温度計に接続して温度を表示し、前記測温抵抗体はコンバートメータに接続し、温度信号を電気信号に変換し、制御系は該電気信号を入力し、前記モールド変圧器の下側に配置した風冷ファンを制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、温度を測定する測定箇所を同一とし、それぞれの測定値誤差を極力少なくすることで正確な運転状態を把握することができる。また、温度計によるアナログ温度表示と測温抵抗体による制御よりコイル自体の温度上昇に適した風冷ファンの運転が可能となる。
【0016】
温度計計器部に測温抵抗体を内蔵することで測温抵抗体の単独配線を簡素化することができ、部品低減、作業性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の測温体センサを用いて風冷ファンを制御する風冷式モールド変圧器を示す。
【図2】風冷式モールド変圧器の正面図及び側面図である。
【図3】測温体センサ及びダイヤル温度計を示す。
【図4】モールド変圧器に測温体を設置し、測温するときの部分斜視図である。
【図5】図4におけるコイル近傍の雰囲気温度とコイルの表面温度の関係を表す図である。
【図6】本発明の別の実施例の構成を表す測温状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
(実施例1)
本発明の測温体センサを用いて、コイルの温度を表示、又は風冷ファンを制御し冷却する風冷式モールド変圧器を図1に示す。
【0019】
図1において、1はモールド変圧器、2は測温体センサ、3はダイヤル温度計、4はコンバートメータ、5は風冷ファン6を制御する制御部、25は警報装置である。
【0020】
測温体センサ2については後述するが、測温体センサ2は感温部と測温抵抗素子の2種類の温度センサを一体にして使用している。そして、感温部はダイヤル温度計に接続され、ダイヤル温度計から警報装置25に接続される。測温抵抗素子はコンバートメータ4に接続され、コンバートメータ4にて測温抵抗素子の信号を電気信号に変換する。コンバートメータ4は温度信号を電気信号に変換するもので、コンバートメータ4は制御部5に接続する。
制御部5では、温度信号が電気信号に変換された信号で風冷ファン6を制御する。この風冷ファン6を制御する制御系は、測温体センサ2の値によって風冷ファン6をON−OFFするオープンループ制御である。
【0021】
次に、モールド変圧器1の構成について、図2を用いて説明する。
【0022】
図2(a)はモールド変圧器で、特に3相3脚の特別高圧(以下、特高という)モールド変圧器の正面図を示し、図2(b)はその側面図を示す。
図2において、7は樹脂で周囲を成形されたコイル、8はケイ素鋼板やアモルファス鋼板より形成された鉄心、9はタップ切替え部、10‥ベース、35,36下締め金具、11は一次側端子、12は二次側端子、13は防振装置で、防振装置13には変圧器本体の振動が外部に伝わらないように防振構造を有している。
14は巻線の巻始めで、15は巻線の巻終わりを示し、線材を用いて図2のように、たすき掛けなどで結線を構成している。33,34は上締め金具で、下締め金具43,44とでモールド本体を固定している。
コイル7は樹脂でモールドされ、また、風冷ファン6は、コイル7の下側の前後に6か所座に取り付け、設置してコイル7の方向に向いている。また、風冷ファン6はシロッコファンを用い、シロッコファンは多翼ファンとも呼ばれ、回転方向に対して多数の羽根が取り付けられて、比較的低い静圧の範囲で用いられる。
【0023】
次に、図3を用いて本発明の測温体センサ及びダイヤル温度計について説明する。
【0024】
測温体センサ2は、材質SUSのフレキシブルチューブ22の先端に設けられている。先端はテフロン(登録商標)熱収縮チューブで形成され、その大きさは直径5mmで、中部内はSUSのパイプとなっている。このパイプ内に測温抵抗体素子と感温部が挿入されて一体化されている。
測温抵抗体素子は、Pt100(温度0℃にて100Ω)を用い、3導線式でシングルエレメントを採用している。
3導線式は、測温抵抗体素子の一端に2本、他の一端に1本の導線を接続した形式で、導線抵抗の影響を除去し、信頼性の高い計測方法である。
【0025】
また、Pt100は高温用であれば、計測温度範囲は0〜650℃である。
測温抵抗体素子は、フレキシブルチューブを通り、ダイヤル温度計3の端子21a,21b,21cより温度信号が出力される。
ダイヤル温度計3の端子21a,21b,21cはコンバートメータ4と接続され、コンバートメータ4にて測温抵抗体の温度信号を電気信号に変換する。
変換した電気信号は、図1に示すように制御部5に送られ、制御部5は測温抵抗体の信号が所定の値を超えたら風冷ファンを駆動する制御を行う。所定の値を越えなければ風冷ファン6は運転を止め、風冷ファン6をON−OFF制御する。
【0026】
感温部は、ダイヤル温度計に接続され、ダイヤル温度計には温度のメモリが表示され、針によって温度目盛りを指し、温度が一目で分かるようになっている。
また、感温部の信号は、端子20a,20bに出力され、この端子20a,20bには警報装置25が接続される。そして、温度がある所定値以上になると警報を発する。
【0027】
図4は、特高用モールド変圧器に測温体を設置し、コイル近傍の温度を計測する部分斜視図を示す。
図4において、30は一次側高圧コイル、7は二次側高圧コイル、31はコイル間空気絶縁部、37はコイル間空気絶縁部の温められた雰囲気の空気の流れを示している。32は測温体センサを支持固定している支持板で、33,34は上締め付け金具、35は一次側端子、36は二次側端子である。
特高用モールド変圧器において、一次側高圧コイル30と二次側高圧コイル7のコイル間には、特別高圧であるため絶縁距離を確保しなければならない。従って測温体センサ2をコイルの横に挿入して計測することはできない。よってコイルから離れた箇所でコイル近傍の雰囲気温度を計測することになる。
【0028】
また、予めコイル温度とコイル近傍の雰囲気温度の関係を取っておき、雰囲気温度よりコイル温度を算出した値で風冷ファンをON−OFF制御する。
【0029】
図5にコイル温度とコイル近傍の雰囲気温度の関係(実測)の一例を示す。
図5の特性図において、縦軸は温度上昇値(K:ケルビン)、横軸は経過時間(h)とし、上の特性曲線がコイルの上昇値(K)を表し、下の特性曲線がダイヤル温度計上昇値(K)を表している。ここでコイル上昇値はコイルの表面温度を示している。
【0030】
図5において、ダイヤル温度計での温度が9時間くらいまでは徐々に5〜6K上昇すると、コイルの温度は20K近く上昇する傾向を示している。これらの特性を利用して、コイルの雰囲気温度から、コイルの温度の対応を算出し、風冷ファンの制御を行う。
(実施例2)
図6は、一般の特高でない低圧のモールド変圧器に測温体センサを設置した別の実施例を示す図である。
図6において、測温体センサ2は導体40の近くのコイルレジン部に細長い孔を設け、この孔に測温体センサ用ガイド41を挿入して、測温体センサ2を挿入して固定する。
このような構成においては、導体に近い処に感温部と測温抵抗体素子の温度センサを一体にして配置しているため、導体40の温度をばらつきなく高精度に計測することができる。その結果、正確な温度を表示することができ、風冷ファン6を効率良く制御することができる。
【符号の説明】
【0031】
1‥モールド変圧器 2‥測温体センサ 3‥ダイヤル温度計
4‥コンバートメータ 5‥制御部 6‥風冷ファン
7‥コイル 8‥鉄心 9‥タップ切替え部
10‥ベース 11‥1次側端子 12‥2次側端子
13‥防振装置 14‥巻始め 15‥巻終わり
20a,20b‥端子 21a,21b,21c‥端子
22‥蛇管
25‥警報装置 30‥二次側高圧コイル
31‥コイル間空気絶縁部 32‥センサ支持板 33,34‥上締め金具
43,44‥下締め金具 37‥雰囲気の空気の流れ
36‥変圧器つり耳 40‥導体
41‥センサ用ガイド 42‥コイルレジン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温部と測温抵抗体を一体化した測温体センサをモールド変圧器のコイル近傍に配置し、
該感温部はダイヤル温度計に接続して温度を表示し、
前記測温抵抗体はコンバートメータに接続し、温度信号を電気信号に変換し、
制御系は該電気信号を入力し、前記モールド変圧器の下側に配置した風冷ファンを制御することを特徴とする風冷式のモールド変圧器。
【請求項2】
請求項1記載の風冷式のモールド変圧器において、
前記測温体は、前記モールド変圧器のコイル近傍に配置し、
前記コイル近傍の雰囲気温度を計測し、
予め前記コイル近傍の雰囲気温度とコイル温度の関係式を求めておき、前記雰囲気温度よりコイル温度を換算して求めることを特徴とする風冷式のモールド変圧器。
【請求項3】
温度センサである感温部と測温抵抗体を設けた測温体をモールド変圧器のコイルの横のモールド部に孔を設け、該孔に該測温体を挿入、配置し、
該感温部はダイヤル温度計に接続して温度を表示し、
前記測温抵抗体はコンバートメータに接続し、温度信号を電気信号に変換し、
制御系は該電気信号を入力し、前記モールド変圧器の下側に配置した風冷ファンを制御することを特徴とする風冷式のモールド変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−4776(P2013−4776A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135057(P2011−135057)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)