説明

ヤシの葉からの抽出物およびその製造方法

ヤシ科の植物からの葉を前処理する段階;極性溶媒を用いて前処理葉を抽出する段階;前処理葉用いた極性溶媒から前処理葉を除去する段階;および薬草抽出物を得るために用いた極性溶媒を濃縮する段階を含む、薬草抽出物を調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高コレステロール、高血圧、高脂血症、動脈硬化、肥満、酸化的ストレス、臓器損傷および個体のこのような状態に関連するまたはこのような状態によって生じる他の病気の管理において該抽出物の使用または関連製品の使用によって防止または補助できるヤシの葉からの抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
心血管関連疾患は、近年の人口において増加する健康の関心事になりつつある。心血管疾患の主な原因の1つは、悪い食習慣およびデスクワーク中心のライフスタイル、特にコレステロール、脂肪または過剰カロリーを含む食品の過剰消費である。毎日の身体活動および運動の欠如が、更に病気の状態を進める。それにもかかわらず、家族性高コレステロール血症、高血圧、肥満および糖尿病などの遺伝子異常もまた、外部環境因子のインターベンションに先立って遺伝的個体の心血管の問題の素因である。関連する心血管の問題の治療および緩和のための商業的に利用できる多数の医薬製品があるが、個体の心血管疾患の進行を防止することまたは心血管系を改善することのいずれかが可能な食事製品を、そのような調理済み製品の規則的使用により毎日採ることが理想的である。
【0003】
研究者らは、異なった植物種からの代謝物が心血管疾患を防止する証明された性質を含むことを示した。その後、活性成分として植物の代謝物を含む異なった健康増進製品が開発された。例えば、Villooらは、特許出願WO2006090198(特許文献1)を出願し、その請求項の部分はアルジュナ(Terminalia arjuna)の植物からの抽出物を含む調理済み製品に関する。この出願は、アルジュナの抽出物が該抽出物を消費する時に心血管疾患を治療できることを特許請求している。
【0004】
他の日本特許第9206043号(特許文献2)は、紅茶用の棕櫚(hemp palm)科の植物からの葉の調製のための単純な方法を採用する棕櫚茶を製造するための調製および方法に関する他の出願を出願した。
【0005】
米国特許第2007036821号(特許文献3)は、その抗血栓性のために消費される海藻からの抽出物に関する他の出願である。この出願は、該海藻からの抽出物をシリアル、パン、飲料、ヘルスバー、ジュース、濃縮物、缶詰、アイスクリームなどの食品の調製に利用することを特許請求している。
【0006】
ブルガリア特許第100600号(特許文献4)は、心血管に関する変性性および虚血性疾患の予防として消費される規定食を特許請求し、特許請求された効果を実施するための主な成分としてサンザシ抽出物および天然の蜂蜜から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願WO2006090198
【特許文献2】日本特許第9206043号
【特許文献3】米国特許第2007036821号
【特許文献4】ブルガリア特許第100600号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの製品を使用することによって、心血管系を改善するために毎日の食事に加えるのに適した植物抽出物または薬草抽出物を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の更なる目的は、対象に前記薬草抽出物またはその誘導製品を経口投与することにより、心血管系を改善するまたは心血管関連疾患(抗高血圧、抗動脈硬化、抗高コレステロール、抗肥満、抗高脂血症、抗酸化的、血管弛緩などの1つ以上の作用)を防止する方法を開示することである。
【0010】
本発明の更に別の目的は、ヤシ(Arecaceae)科の葉から所望のフェノール化合物/フラボノイドを単離するのに特に有用な抽出方法を開示することである。開示した方法は、活性植物代謝物を単離でき、その心血管疾患の保護の治療効果を損なうことなく、効率的な収率を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態の1つが個体の心血管系の健康管理を促進する極性抽出溶媒を用いてヤシ科の植物の葉由来の抽出物を含む調理済み組成物である本発明によって、先述の目的の少なくとも1つが全体的にまたは部分的に満たされる。
【0012】
調理済み組成物の更なる実施形態は、好適には抽出物が製品に便利に加えられ得るような濃縮した形で調製されることである。
【0013】
ヤシ科の植物から所望の抽出物を効果的に単離するために、好適な極性抽出溶媒が、水、アルコール、アセトン、クロロホルムおよびそのいずれかの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0014】
本発明の更なる実施形態は、対象の心血管系の健康管理を促進するための方法に関し、その方法は有機抽出溶媒を用いてヤシ科の植物からの葉の抽出物の有効量を対象に経口投与する段階を含む。
【0015】
本発明はまた、ヤシ科の植物由来の乾燥葉を極性溶媒中に浸漬する段階;該浸漬した乾燥葉を極性溶媒から除去する段階;および極性溶媒を濃縮して薬草抽出物を得る段階を含む薬草抽出物の調製法を開示する。
【0016】
同様に、抽出において効率的であることが見出された極性溶媒は、水、アルコール、アセトンおよびクロロホルムのいずれか1つまたは組み合わせである。
【0017】
抽出効率を改善するための更なる実施形態は、極性抽出溶媒中に浸漬する前に乾燥葉を小片に分断またはペーストまたは粉末の形に粉砕する前処理段階を含む。
【0018】

本発明の更に他の実施形態において、ヤシ科の植物の葉は、好適にはギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)、アメリカアブラヤシ(Elaeis oleifera)、ナツメヤシ(Phoenix dactylifera)およびCocos nucifera(ココヤシ)のいずれか1つからまたは組み合わせから得られるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】試験したSprague Drawleyラットの実験の異なる間隔における体重を示すグラフである。
【図2a】高血圧を誘発するためにNω−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME)で処理された試験されたラット群に投与された製品の抗高血圧効果を示すグラフである。
【図2b】高血圧が誘発されなかった正常な試験ラット群に投与された調理済み製品に降圧作用および毒性がないことを示すグラフである。(本発明の詳細な説明)
【0020】
当業者は、本発明が目的を実施し、結果および挙げられた利点およびその点で固有なものを得るためによく適応されることを容易に理解するであろう。本明細書に記載する実施形態は本発明の範囲の制限を意図するものではない。
【0021】
本明細書を通して用いられる用語「心血管系の健康管理の促進」は、抗高血圧、抗動脈硬化、抗高コレステロール、抗肥満、抗高脂血症、抗酸化、血管弛緩などの1つ以上の作用を意味する。先述の作用は、他の成分、投与される対象の年齢、性別などと組み合わせて、異なる摂取量または用量、抽出物の供給の形態で開始され得る。
【0022】
本明細書を通して使用される用語「薬学的に有効な量」は、対象に対して毒性作用なしに、または最小の毒性作用で所望の作用の引き金になる対象に経口投与される活性成分、即ち抽出物の量を意味する。当業者は、有効量か年齢、性別、病気の状態、人種、体重、抽出物の製剤、製剤中の他の活性成分の利用性などの外部因子のために個々に変化し得ることを知るべきである。
【0023】
本発明の好適な実施形態に関して、ヤシ科の植物からの薬草抽出物の調製方法を開示する。該方法は、基本的にヤシ科の植物からの葉の前処理;極性溶媒を用いて前処理葉からの抽出;使用した極性溶媒からの前処理葉の除去;および使用した極性溶媒を濃縮して薬草抽出物を得る段階を含む。開示の方法は、対象の経口摂取時に心血管系に対して治療作用または健康促進作用を提供する好ましいフェノール化合物/フラボノイド、ペプチドまたは活性代謝物を単離するのに有効であることが見出される。
【0024】
開示した方法の他の好適な実施形態によれば、葉は、抽出にかける前に前処理される。前処理プロセスは、葉の表面に捕獲された汚染または物理的汚染物質を清浄するための洗浄段階を含み得る。他の前処理段階は、好適には本技術分野のいずれかの公知の手段または方法よって葉の水分含量を減らし、抽出速度および収量を改善する。好適な実施形態において、葉は40−120℃でオーブン中で乾燥される。乾燥温度は、あまりに高く設定されるべきではない。何故ならば、そのような温度は葉の中に含まれる活性代謝物およびフェノール化合物/フラボノイドを分解する可能性があるからである。好適な温度は、40℃から60℃の範囲であろう。
【0025】
採用され得る他の前処理段階は、浸漬段階に先立つ乾燥葉の小断片への調製またはペーストまたは粉末への粉砕である。断片化部分または粉砕された葉は極性抽出溶媒に曝露される乾燥葉の利用できる接触表面を大きく増加でき、従って、抽出法の速度および収量を増加する。可能ならば、前処理葉は極性抽出溶媒の異なる種類を用いる抽出の複数の機会にかけ最適な収量を得てよい。
【0026】
前処理葉の極性抽出溶媒への単なる浸漬は、抽出溶媒の極性引力により好適なフェノール化合物/フラボノイドの抽出を可能にするが、このプロセスは、抽出が行われる期間中、抽出溶媒および前処理葉の両方の抽出混合物の攪拌または、熱および圧力の使用により加速され得る。葉から抽出物されたフェノール化合物/フラボノイドは、主にポリフェノール、小さなペプチドおよび他の生物活性化合物から構成されていることに留意することが重要である。
【0027】
従って、抽出の効率は抽出溶媒中のpHの変化に対して敏感である。開示した方法の最も好適な実施形態において、抽出内容のpHは、最適収量および抽出速度を達成するためにpHは1から10、最も好適にはpH3から8の範囲内であるものとする。好適には、抽出溶媒のpHは、抽出溶媒のpHが反応に有利なことを保証するために抽出の間、綿密に観察される。pHのいずれかの移動は、塩酸、水酸化ナトリウムなどのpH調節剤を用いて好適な範囲に調整され戻され得る。更に、抽出系に熱エネルギーの適切な量を適用することは、抽出速度および収量を増大する他の可能な方法である。用いられる極性溶媒によって、加熱は、40℃から120℃の範囲内が最も好適である。加熱の高温において変性が起こる可能性があることを考慮に入れるべきである。
【0028】
好適な実施形態における開示された方法に用いられる葉は、ギニアアブラヤシ、アメリカアブラヤシ、ナツメヤシおよびココヤシの植物種に由来するが、これらに限定されないことに留意することが重要である。
【0029】
上述の植物種から得られる抽出物は、味および香りにおいて心地よく、従って特に調理済みの製品に加えられるのに適している。
【0030】
開示された方法の更なる実施形態に従って、好適に用いられる極性抽出溶媒は、水、アルコール、アセトンおよびクロロホルムのいずれか1つまたは組み合わせであるが、これらに限定されない。葉から抽出される所望のフェノール化合物/フラボノイドは、主としてポリフェノールおよび小さなペプチドで構成されているが、これらに限定されない。これらのフェノール化合物/フラボノイドの高い極性のために、植物マトリックスからこれらの所望の化合物を抽出するのに極性溶媒が有効であることが見出されている。極性抽出溶媒の有効量を用いて最適収量を得るために、前処理葉の極性抽出溶媒に対する比率は、好適には1−3:6−10(w/v)である。
【0031】
好適には、抽出に付された後前処理葉は、処分のための本技術分野のいずれかの公知の手段および方法で分離され得る。真空濾過は、通常利用されるので、最も好適である。同様に、異なる方法によって、極性抽出溶媒フェノール化合物/フラボノイドを濃縮するための用いた極性抽出溶媒の蒸発が行われ得る。例えば、熱エネルギーまたは真空乾燥を用いる使用した抽出溶媒の乾燥。使用した抽出極性溶媒の消散によるフェノール化合物/フラボノイドの濃縮はフェノール化合物/フラボノイドがペーストまたは粉末状に濃縮される段階に最後に到達する。フェノール化合物/フラボノイド抽出物のこのペーストまたは粉末状はついで様々な用途に用いられ得る。
【0032】
極性抽出溶媒を用いたヤシ科の植物の葉からの抽出物を含む、個体の心血管系の健康管理を促進する調理済み組成物を含む本発明の他の実施形態に注意を向ける。本明細書に挙げる調理済み製品は、パン、うどん、糖菓、チョコレート、飲料などのいずれかの通常毎日消費される加工食品であり得る。
【0033】
当業者は、前記抽出物が、食品加工のコース中に加工された調理済み製品中に加えられ得ることを理解するであろう。従って、それについてのいずれかの修飾は本発明の範囲から逸脱しないであろう。
【0034】
上の記述に規定したように、抽出物の調製に用いられる葉は、ヤシ科の植物から得られる。より好適には、該植物は、ギニアアブラヤシ、アメリカアブラヤシ、ナツメヤシおよびココヤシの植物のいずれか1つまたは組み合わせであるがこれらに限定されない。本発明の発明者は、先述の種から得られる抽出物が、得られた抽出物を調理済み製品に最少の精製プロセスを加えて居心地良く加えられる心地のよい味および香りの両方を有することを見出した。
【0035】
好適な実施形態によると、調理済み製品に加えられる抽出物は、先に開示した方法にだけ限定されないいずれかの既知の方法から得られ得る。他の実施形態によれば、抽出物は、濃縮形で調製され、好適には抽出物が調理済み製品の様々な製剤に調製されることを可能にするペーストまたは粉末状である。
【0036】
好適な実施形態に沿って、抽出物は極性抽出溶媒に感受性のある植物代謝物であるものとする。心血管系の健康促進性を有するフェノール化合物/フラボノイドおよび小さなペプチドは、葉中の高い極性のそのような代謝物である。従って、ヤシ科の植物の葉からの抽出物は、好適には水、アルコール、アセトン、クロロホルムおよびそのいずれかの組み合わせの極性抽出溶媒から得られる。
【0037】
抽出物の心血管系の健康管理促進の顕著な性質の観点において、本発明の更なる実施形態は、極性抽出溶媒を用いてヤシ科の植物からの葉の抽出物の有効量を経口で対象に投与する段階を含む対象における心血管系の健康管理を促進する方法を含む。
実施された実験から、この実施形態に採用された抽出物が抗高血圧、抗酸化的、抗動脈硬化、抗高コレステロール、抗高脂血症、抗肥満、血管弛緩および類似の作用を示すことは明らかである。更に、ヤシ科の植物は、ギニアアブラヤシ、アメリカアブラヤシ、ナツメヤシおよびココヤシのいずれか1つまたは組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0038】
抽出物を摂取すると、摂取した成分は、心血管疾患の発展または前進を防止する予防として作用するだけでなく、病気の状態を軽減または治癒さえする治療組成物としても作用する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次の実施例は、本発明がここに記載した具体的な実施形態に制限されるなんらの意図なしに、本発明を更に説明することを意図する。
【実施例1】
【0040】
抽出条件は以下のように実施された:
油ヤシの葉を集め、清浄、水洗および小片に切断し、および40℃で一晩オーブン乾燥した。乾燥物をブレンダーを用いて粉砕し、抽出物アルコール(1:10v/v)で3回およびアセトンまたはクロロホルムおよびアルコールの混合物で3回抽出した。ポリフェノール抽出の媒体として他の溶媒を用い得る。これは、固体マトリックス(植物組織)から液体マトリックス(溶媒)を用いて拡散により可溶性フェノール化合物を分離するために設計されたプロセスである。フラボン、フラボノールおよびカテキンの抽出において、アルコール、クロロホルムおよびアセトンは、良好な収量を与えた。抽出は数回行った。合わせた抽出物を40℃で真空乾燥し、使用まで貯蔵した。
【実施例2】
【0041】
抗高血圧、抗動脈硬化、抗高コレステロール、抗肥満、抗高脂血症、抗酸化的および臓器保護性の評価をヤシの葉の異なる種類からの異なる製品について実施した。
【0042】
ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分の抗肥満、抗脂血症、抗高コレステロール、および抗動脈硬化の性質を記載する。ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された高コレステロール食で12週間飼育した動物は、低い体重増加、低い総血漿コレステロール(TC)5低い血漿トリグリセリド(TG)および低い悪玉低密度リポ蛋白質コレステロールおよび低い血漿マロンジアルデヒド(MDA)(これらは、蛋白質、DNAおよび細胞膜と反応し得、更なる臓器および組織損傷(図1および表1)を生じる脂質酸化物である。ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分具体的には油ヤシの葉で補給された高コレステロール食動物は、高コレステロール食だけの動物と比べて、血漿善玉高密度リポ蛋白質コレステロール(HDL−C)の増加傾向、および低いAI(アテローム指数)を示した。これらのヤシの葉抽出物(インスタントおよび薬草茶の両方)およびヤシの葉機能性成分は、変性性疾患のリスクを減らすための機能性飲料ヤシ抽出物およびヤシの葉機能性成分としての使用に関して、顕著な抗肥満、抗高脂血症、抗酸化的、低アテローム指数、抗高コレステロール作用、抗高血圧および臓器保護作用を示した。
【0043】
高コレステロール食(C)単独で飼育された動物(表1)と比べて、ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された動物は、低い体重増加を示した。ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された正常食餌の動物は、正常食餌の動物と比べて顕著な体重増加に違いはなく、これはこれらのヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分が正常な健康な動物の体重を顕著に増加または減少しないことを示唆している。
【0044】

高コレステロール食(C)で飼育した動物は、血漿TCが6週間中に67%および12週間中に83%だけ増加し、これは正常な対照動物(N)よりも顕著に高かった。ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された高コレステロール食で飼育した動物は、高コレステロール食(C)単独で飼育した動物と比べて低い血漿TC価(61%だけ低い)を示した。
【0045】
ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分(NE、NCおよびNS)で補給された正常動物の血漿TC値は、対照の食餌(N)で飼育された動物と顕著な違いを示さなかった。実験の始めから終わりまで(12週間)高コレステロール食単独(C)で飼育された動物の血漿TG濃度の増加があった。12週間後、ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された高コレステロール食で飼育した動物は、補給(C)しない動物と比べて−66%の顕著な低血漿TG濃度を示した。
【0046】
表1は、ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分(CE)で補給された高コレステロールで飼育した動物の血漿HDL−Cは、高コレステロール食単独(C)よりも顕著に高かったことを示す。ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された高コレステロール飼育動物の血漿HDL−Cは、高コレステロール食(C)単独に比べて、60%の顕著な増加を示した。高コレステロール群(C)は、対照群(N)に比べて顕著に高いLDL−C濃度を示した。ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された高コレステロール飼育動物の血漿LDL−Cは、高コレステロール食(C)単独で飼育された動物に比べて−61%の顕著な減少を示した。
【0047】
データは、ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された高コレステロール食で飼育された動物は血漿TCおよびLDL−Cの濃度が低下していることを示した。更にその結果は、ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分(特に油ヤシの葉)で補給された高コレステロール食で飼育された動物は、高コレステロール食(C)単独で飼育された動物と比べてHDL−Cの濃度が増加したことを示した。ヤシの葉薬草茶で補給された高コレステロール食は、ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給されていない高コレステロール群と比べて、血漿HDL−Cの増加、TGの低下、LDL−C濃度の低下および低アテローム指数(AI)の傾向を示した。
【0048】
LDL−C/HDL−Cの比で表わされるアテローム指数(表1)は、高コレステロール食単独と比べて、ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された高コレステロール食で顕著に減少した。これらの効果は、これらの指数の観察された減少がヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分が、動脈硬化およびCVDに対するリスクを低下する重要な保護の役割を果たすことを示すので有益である。
【0049】
高コレステロール食(C)で飼育した動物は、対照動物(N)と比べて、高いMDA濃度、特に週12におけるMDAの上昇を示した。ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された高コレステロール食で飼育された動物は、補給(C)されていない動物と比べて、12週後に顕著に低いMDA濃度を示し、これらのヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分は脂質の過酸化を遅らせることを示している。最終製品MDAによって示される高い脂質の過酸化は、フリーラジカルおよび酸化状態による高い酸化的傷害に関係している。
<表1>

*−p<0.05vsN対照、#−p<0.05vsC対照
【実施例3】
【0050】
ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分の抗酸化性を表2、3および4に記す。
表2は、高血圧動物(SHR)の赤血球SOD、GSH−Px5およびCAT活性が、対照正常血圧動物(N)と比べて顕著に増加したことを示し、動物の増加した酸化状態を示している。ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分で補給された高血圧動物(SHR)、(SHR+OPLE)は、顕著な減少した赤血球SOD、GSH−Px、およびCAT活性を示し、それを正常血圧動物の正常濃度近くに戻す。SOD、GSH−Px、およびCATは、酸化的ストレスに対する抗酸化酵素防御の最前線であり、反応性酸素を過酸化水素および水に変換する。SOD、GSH−Px5およびCATの低下した活性は、油ヤシの葉抽出物で補給された高血圧動物における減少した酸化的ストレスを示す。同様な結果が、高血圧によって最も普通に影響される臓器、即ち腎臓、心臓および脳で観察される。
<表2>

対照=正常血圧動物;OPLE=ヤシの葉抽出物で処理された正常血圧動物;カプトプリル=カプトプリルで処理された正常血圧動物;SHR=自然発生/遺伝的高血圧動物;SHR+OPLE=OPLEで処理されたSHR;SHR+カプトプリル=カプトプリルで処理されたSHR*P<0.05vs正常血圧対照;#P<0.05vs高血圧SHR
<表3>

対照=正常血圧動物;OPLE=ヤシの葉抽出物で処理された正常血圧動物;カプトプリル=カプトプリルで処理された正常血圧動物;SHR=自然発生/遺伝的高血圧動物;SHR+OPLE=OPLEで処理されたSHR;SHR+カプトプリル=カプトプリルで処理されたSHR*P<0.05vs正常血圧対照;#P<0.05vs高血圧SHR
【実施例4】
【0051】
L−NAME誘発高血圧動物へのヤシの葉薬草茶(インスタントおよび葉の両方)抽出物およびヤシの葉機能性成分の抗高血圧および保護的性質を下図2に示す。
血圧
図2は、L−NAME誘発高血圧群における血圧のデータを纏める。オリジナルのヤシの葉抽出物(OPLE)の同時投与によって顕著に軽減したL−NAME誘発時間依存性血圧上昇の治療。
収縮期血圧(SBP)は、L−NAME+OPLE動物で週1直後から試験を通して低く、OPLEで治療されていない動物における値に対して、正常範囲(<140mmHg)内に留まった。軽減は、L−NAME+抗高血圧薬カプトプリルおよび対照正常血圧動物のそれらと類似していた。
しかし、収縮期血圧は、OPLEで補給された正常血圧動物で低下しなかった。(図2)
【実施例5】
【0052】
ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分の心臓および腎臓への臓器保護性を下表4に示す。
SHR群はすべて、対照に比べて顕著に低い体重を有した。腎臓/体重は、すべての群で同様であった。L−NAME+OPLEラットにおける心臓/体重値は、L−NAMEラットのそれらと顕著に異ならなかった。しかし、L−NAME+カプトプリルラットは、L−NAMEに比べ心臓/体重比は低かった。SHRおよびSHR+カプトプリルの心臓/体重比は、対照ラットのそれより顕著に高かったが、SHR+OPLEラットにおいて、その比は、SHRのそれより顕著に低く、対照ラットと類似していた。
<表4>

L−NAME=Nω−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル;データは、平均±SEMで示す。
*P<0.05vsL−NAME誘発高血圧ラット
#P<0.05vs正常血圧対照
+P<0.05vsSHR(自然発生/遺伝的高血圧ラット)
【実施例6】
【0053】
ヤシの葉抽出物およびヤシの葉機能性成分の有益な血管弛緩酸化窒素増強効果
表5に実験ラットの血清で測定した酸化窒素値を纏める。週6において、L−NAMEおよびL−NAME+OPLEラットで、対照ラッに比べ酸化窒素(NO)濃度は顕著に減少した。NOは、L−NAME+OPLEラットで、L−NAMEラットの値と比べて、僅かに増加した。しかし、8週までに、血清NOは、L−NAMEおよびL−NAME+OPLEラットの両方で対照ラットと類似した濃度に戻り、試験の終了まで維持された。L−NAME+OPLEラットで、L−NAMEラットと比べてNOの部分的な増加があるが、顕著でなかった。SHR+OPLEラットで、SHRおよび対照ラットに比べて酸化窒素濃度が顕著に増加した。本試験の終了までに、SHR+カプトプリル群だけが、対照ラットに対して顕著に高い酸化窒素濃度を有した。
<表5>

SHR=自然発生高血圧ラット;+P<0.05vs対照;*P<0.05vsL−NAME;#P<0.05vsSHR
【0054】
本発明は、他の具体的な形で実施されてよく、上述の実施形態だけに限定されないことを理解すべきである。しかし、当業者が容易に想起する、開示したコンセプトの変更および等価物が本明細書に添付する請求項1に記載の範囲に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤシ科の植物の葉からの極性抽出溶媒を用いた抽出物を含む、個体の心血管系の健康管理を促進する調理済み組成物。
【請求項2】
抽出物が濃縮された形で調製される、請求項1に記載の調理済み組成物。
【請求項3】
ヤシ科の植物がギニアアブラヤシ、アメリカアブラヤシ、ナツメヤシおよびココヤシのいずれか1つまたは組み合わせである、請求項1および2に記載の調理済み組成物。
【請求項4】
極性抽出溶媒が、水、アルコール、アセトン、クロロホルムおよびそのいずれかの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1および2に記載の調理済み組成物。
【請求項5】
ヤシ科の植物の葉からの極性抽出溶媒を用いた抽出物の有効量を対象に経口投与する段階を含む、対象における心血管系の健康管理を促進する方法。
【請求項6】
ヤシ科の植物が、ギニアアブラヤシ、アメリカアブラヤシ、ナツメヤシおよびココヤシのいずれか1つまたは組み合わせである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
極性溶媒が、水、アルコール、アセトンおよびクロロホルムのいずれか1つまたは組み合わせである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
下記の段階:
(a)ヤシ科の植物からの葉の前処理;
(b)極性溶媒を用いる前処理葉の抽出;
(c)使用した極性溶媒からの前処理葉の除去;および
(d)使用した極性溶媒を濃縮して薬草抽出物を得ること
を含む薬草抽出物の調製方法。
【請求項9】
ヤシ科の植物がギニアアブラヤシ、アメリカアブラヤシ、ナツメヤシおよびココヤシからなる群から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
極性溶媒が水、アルコール、アセトンおよびクロロホルムのいずれか1つまたは組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前処理が、葉の清浄、葉の乾燥および葉の粉砕のいずれか1つまたは組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
乾燥葉の極性抽出溶媒に対する比が、1−3:6−10(w/v)である、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2010−533169(P2010−533169A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515987(P2010−515987)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/MY2008/000065
【国際公開番号】WO2009/008697
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(505291413)ユニバーシティー プトラ マレーシア (11)
【Fターム(参考)】